(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052342
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】光治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240404BHJP
A61N 5/067 20060101ALI20240404BHJP
A61M 36/10 20060101ALI20240404BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240404BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61N5/067
A61M36/10
A61M25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159001
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518055877
【氏名又は名称】ラクテン・メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤間 大貴
(72)【発明者】
【氏名】末原 達
(72)【発明者】
【氏名】秦 まゆ
【テーマコード(参考)】
4C082
4C267
【Fターム(参考)】
4C082PA06
4C082PC10
4C082PE10
4C082PG11
4C082PG13
4C082PG17
4C082RA02
4C082RC00
4C082RE17
4C082RE35
4C082RE56
4C082RG03
4C267AA06
4C267BB06
4C267BB28
4C267BB47
4C267BB48
4C267CC25
(57)【要約】
【課題】バルーンの拡張時に反射体が損傷しにくい光治療装置を提供する。
【解決手段】発光体を配置される内部空間を形成し長手方向と前記長手方向に延びる軸線とを規定するバルーンと、前記バルーンを収縮形態から拡張形態に変形させる流体の移動経路となるルーメンと、を有し、前記発光体が前記内部空間において前記軸線上に配置され、前記バルーンが、前記発光体から出射された光を前記内部空間に向けて反射する反射体と、前記反射体がないことによって前記光を前記内部空間の外側に向けて透過させる窓部と、を有し、前記反射体が、少なくとも前記長手方向における前記バルーンの一方の端部に、位置によって厚みが異なるように設けられる、光治療装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体を配置される内部空間を形成し長手方向と前記長手方向に延びる軸線とを規定するバルーンと、
前記バルーンを収縮形態から拡張形態に変形させる流体の移動経路となるルーメンと、を有し、
前記発光体が前記内部空間において前記軸線上に配置され、
前記バルーンが、前記発光体から出射された光を前記内部空間に向けて反射する反射体と、前記反射体がないことによって前記光を前記内部空間の外側に向けて透過させる窓部と、を有し、
前記反射体が、少なくとも前記長手方向における前記バルーンの一方の端部に、位置によって厚みが異なるように設けられる、光治療装置。
【請求項2】
前記流体が、前記流体の移動経路となる前記ルーメン内で前記バルーンの前記一方の端部を通って前記内部空間に導入される、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項3】
前記反射体の厚みが、前記バルーンの近位端部において、周壁の所定位置での前記反射体の厚みが端部壁の所定位置での前記反射体の厚みよりも小さくなるように設定される、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項4】
前記反射体の厚みが、前記バルーンの近位端部において、端部壁の所定位置での前記反射体の厚みがそれより径方向内側の前記反射体の厚みよりも小さくなるように設定される、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項5】
前記反射体の厚みが、前記反射体を前記バルーンの周壁に設ける場合に、前記周壁の所定位置での前記反射体の厚みがそれより基端側の前記周壁の所定位置での前記反射体の厚みよりも小さくなるように設定される、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項6】
前記反射体の厚みが、前記長手方向に見て前記窓部を片側に偏らせて設ける場合に、所定位置での前記反射体の厚みがそれより周方向に前記窓部側にずれた所定位置での厚みよりも大きくなるように設定される、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項7】
前記反射体の厚みが、前記窓部との境目を形成する前記反射体の端縁部での厚みがそれ以外の位置での前記反射体の厚みよりも小さくなるように設定される、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項8】
前記反射体の厚みが、前記位置が変化するにつれて徐々に変化するように設定される、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の光治療装置を製造する方法であって、前記反射体をディッピング法によって形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用の光を異常組織に照射するために用いられる光治療装置であって、発光体を配置される内部空間を形成するバルーンと、バルーンを収縮形態から拡張形態に変形させる流体の移動経路となるルーメンと、を有し、バルーンが、発光体から出射された光を内部空間に向けて反射する反射体と、反射体がないことによって光を内部空間の外側に向けて透過させる窓部と、を有する、光治療装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような光治療装置は、バルーンの拡張時に反射体が損傷しにくいことが望ましい。
【0005】
本開示は、バルーンの拡張時に反射体が損傷しにくい光治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は以下のとおりである。
【0007】
[1]
発光体を配置される内部空間を形成し長手方向と前記長手方向に延びる軸線とを規定するバルーンと、
前記バルーンを収縮形態から拡張形態に変形させる流体の移動経路となるルーメンと、を有し、
前記発光体が前記内部空間において前記軸線上に配置され、
前記バルーンが、前記発光体から出射された光を前記内部空間に向けて反射する反射体と、前記反射体がないことによって前記光を前記内部空間の外側に向けて透過させる窓部と、を有し、
前記反射体が、少なくとも前記長手方向における前記バルーンの一方の端部に、位置によって厚みが異なるように設けられる、光治療装置。
【0008】
[2]
前記流体が、前記流体の移動経路となる前記ルーメン内で前記バルーンの前記一方の端部を通って前記内部空間に導入される、[1]に記載の光治療装置。
【0009】
[3]
前記反射体の厚みが、前記バルーンの近位端部において、周壁の所定位置での前記反射体の厚みが端部壁の所定位置での前記反射体の厚みよりも小さくなるように設定される、[1]又は[2]に記載の光治療装置。
【0010】
[4]
前記反射体の厚みが、前記バルーンの近位端部において、端部壁の所定位置での前記反射体の厚みがそれより径方向内側の前記反射体の厚みよりも小さくなるように設定される、[1]~[3]の何れか1項に記載の光治療装置。
【0011】
[5]
前記反射体の厚みが、前記反射体を前記バルーンの周壁に設ける場合に、前記周壁の所定位置での前記反射体の厚みがそれより基端側の前記周壁の所定位置での前記反射体の厚みよりも小さくなるように設定される、[1]~[4]の何れか1項に記載の光治療装置。
【0012】
[6]
前記反射体の厚みが、前記長手方向に見て前記窓部を片側に偏らせて設ける場合に、所定位置での前記反射体の厚みがそれより周方向に前記窓部側にずれた所定位置での厚みよりも大きくなるように設定される、[1]~[5]の何れか1項に記載の光治療装置。
【0013】
[7]
前記反射体の厚みが、前記窓部との境目を形成する前記反射体の端縁部での厚みがそれ以外の位置での前記反射体の厚みよりも小さくなるように設定される、[1]~[6]の何れか1項に記載の光治療装置。
【0014】
[8]
前記反射体の厚みが、前記位置が変化するにつれて徐々に変化するように設定される、[1]~[7]の何れか1項に記載の光治療装置。
【0015】
[9]
[1]~[8]の何れか1項に記載の光治療装置を製造する方法であって、前記反射体をディッピング法によって形成する方法。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、バルーンの拡張時に反射体が損傷しにくい光治療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る光治療装置の拡張形態での斜視図である。
【
図2】
図1に示す光治療装置の径方向から見た平面図である。
【
図3】
図1に示す光治療装置の長手方向から見た平面図である。
【
図5】
図1に示す光治療装置の収縮形態での径方向から見た平面図である。
【
図6】
図1に示す光治療装置の収縮形態での長手方向から見た平面図である。
【
図8】窓部の他の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図9】反射体の厚みの設定について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に例示説明する。
【0019】
図1~
図6に示す本開示の一実施形態に係る光治療装置1は、光免疫療法(photoimmunotherapy:PIT)、光線力学療法(photodynamic therapy:PDT)などの光治療法において、治療用の光を体腔内の異常組織に照射するために用いられる。光は例えばレーザ光である。
【0020】
光治療装置1は、発光体2aを有する発光装置2と、発光体2aを配置される内部空間3を形成し長手方向と長手方向に延びる軸線Oとを規定するバルーン4と、発光体2aの移動経路となるルーメン5(以下、光ルーメン5ともいう)と、バルーン4を
図5~
図6に示す収縮形態から
図1~
図4に示す拡張形態に変形させる流体の移動経路となるルーメン6(以下、流体ルーメン6ともいう)と、を有する。バルーン4は、流体ルーメン6内を移動して内部空間3内に入る流体の圧力によって収縮形態から拡張形態に変形することができる。
【0021】
なお、軸線Oに垂直な直線に沿う方向を軸線Oの径方向、又は単に径方向ともいい、軸線Oを周回する方向を軸線Oの周方向、又は単に周方向ともいう。本実施形態では、軸線Oはバルーン4の中心軸線である。なお、軸線Oは中心軸線に限らない。
【0022】
バルーン4は拡張形態において所定方向に細長く、所定方向として長手方向を規定する。またバルーン4は、軸線Oを中心とし長手方向の両端部が閉塞した筒状をなす。発光体2aは内部空間3において軸線O上の所定位置に配置される。内部空間3内での長手方向における発光体2aの配置は適宜設定できる。
【0023】
バルーン4は、拡張形態において、軸線Oを中心とし長手方向の両端部が閉塞した円筒状をなす。より具体的には、バルーン4は、拡張形態で円筒状をなす周壁7aと、周壁7aの一方の端部に連なり拡張形態で長手方向の外側に突出する凸曲面状をなす一方の端部壁7bと、周壁7aのもう一方の端部に連なり拡張形態で長手方向の外側に突出する凸曲面状をなすもう一方の端部壁7bと、を有する。
【0024】
バルーン4は、両方又はいずれか一方の端部壁7bが拡張形態で凸曲面状以外の凸状をなす構成としてもよい。バルーン4は、周壁7aが拡張形態で楕円筒状など、円筒状以外の筒状をなす構成としてもよい。つまりバルーン4は、拡張形態において軸線Oを中心とし長手方向の両端部が閉塞した、円筒状以外の筒状をなす構成としてもよい。
【0025】
収縮形態は、拡張形態から内部空間3が縮小するようにバルーン4が所定形状に折り畳まれた形態である。所定形状は、複数の襞8が周方向に並ぶように形成された形状であってもよく、例えば
図5~
図6に示すように4つの襞8が形成された形状であってもよい。
【0026】
図4に示すように、発光装置2は、光源(不図示)と、光源から出射された光を発光体2aまで伝える長尺状の導光部2bと、をさらに有する。導光部2bは例えば光ファイバなどの導光体で構成され、一方の端部において光源に連なり、もう一方の端部において発光体2aに連なる。また導光部2bは、導光体に連なり光源に着脱可能な光コネクタを有してもよい。
【0027】
発光体2aは、軸心に沿って長尺状に延び、光源から導光部2bを介して伝わる光を軸心に沿う方向の所定幅に亘る部分から軸心の径方向に出射可能に構成される。より具体的には、発光体2aは、軸心の周方向の全域に向けて光を出射可能である。
【0028】
バルーン4は、発光体2aから出射された光を内部空間3に向けて反射する反射体9と、反射体9がないことによって光を内部空間3の外側に向けて透過させる窓部10と、を有する。より具体的には、バルーン4は、周壁7aと2つの端部壁7bとを有する本体部7と、本体部7の外面の一部を被覆する反射体9と、を有し、本体部7における反射体9に被覆されない部分で窓部10が構成される。本体部7は光透過性材料で形成され、反射体9は光反射性材料で形成される。本体部7は例えば樹脂材料で形成することができ、なかでもポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はナイロンなどで形成することが好ましい。反射体9は例えば各種金属材料(例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛など)で形成することができる。反射体9によれば、発光体2aから出射された光を集めて窓部10を通して限定された範囲に効率的に照射することができる。
【0029】
反射体9は、少なくとも長手方向におけるバルーン4の一方の端部(以下、近位端部4bともいう)に、位置によって厚みtが異なるように設けられる。本実施形態では反射体9は、
図4に示すように、位置が軸線Oの径方向外側に変化するにつれて徐々に厚みtが減少するように設けられる。厚みtは1~500um、より具体的には10~450umであることが好ましい。反射体9は、
図4等に示すように、長手方向におけるバルーン4のもう一方の端部(以下、遠位端部4aともいう)にも設ける構成としてもよい。また、反射体9は、
図4等に示すように、窓部10を形成するように、長手方向におけるバルーン4の両端部を除く部分にも設ける構成としてもよい。
【0030】
反射体9の形成方法は特に限定されず、例えば本体部7への塗布によって形成することができる。塗布方法は特に限定されず、例えば、ディッピング法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法などを用いることができる。なかでもディッピング法によれば、軸線Oの径方向外側に向けて反射体9の厚みtが減少するように反射体9を容易に形成することができる。なお、反射体9は本体部7の外面の一部を被覆する構成に限らず、例えば、本体部7の内面の一部を被覆する構成としてもよい。
【0031】
窓部10の配置と形状は特に限定されず、窓部10は例えば、図示するように長手方向におけるバルーン4の遠位端部4aに位置する窓部10の一方の端部(以下、遠位端部10aともいう)から、バルーン4の近位端部4bに向けて延びる構成としてもよい。また、図示するように窓部10の遠位端部10aの極端10cがバルーン4の遠位端部4aの極端4cに位置する構成としてもよい。つまり、窓部10は、長手方向に見た時のバルーン4の中心を含む領域に設けられる構成としてもよい。
【0032】
また、長手方向における窓部10のもう一方の端部(以下、近位端部10bともいう)は、軸線Oの周方向において、全周に亘らない限定された角度範囲に亘って設けられる構成としてもよい。つまり、窓部10の近位端部10bが周方向の一部のみに設けられる構成としてもよい。窓部10が設けられる角度範囲は、図示するように、窓部10の遠位端部10aから近位端部10bに向かうにつれて徐々に狭くなるように設定してもよい。
【0033】
長手方向における窓部10の近位端部10bの極端10dが軸線Oの周方向において全周に亘る範囲に設けられる構成としてもよい。例えば、
図7に示すように、バルーン4の近位端部4bを除く部分全体に窓部10が全周に亘って設けられる構成としてもよい。
【0034】
図8に示すように、窓部10がバルーン4の遠位端部4aと近位端部4bとの間の部分のみに全周に亘って(又は周方向の一部のみに)設けられる構成としてもよい。
【0035】
発光体2aは、光ルーメン5内でバルーン4の近位端部4bの極端4dを通って内部空間3に導入される。光ルーメン5は軸線Oと同軸に配置されるチューブ11(以下、光チューブ11ともいう)によって形成され、光チューブ11はバルーン4の近位端部4bと遠位端部4aを通る。より具体的には、光チューブ11はバルーン4の近位端部4bにおいて端部壁7bに接着され、バルーン4の遠位端部4aにおいて端部壁7bに接着される。また光チューブ11はバルーン4の遠位端部4aにおいて閉塞部材12によって閉塞される。光チューブ11は光透過性を有する。
【0036】
光チューブ11は、発光体2aを上記所定位置に配置するための目印となるX線不透過性を有する造影マーカーなどのマーカーを有してもよい。あるいは光チューブ11は、光ルーメン5内での発光体2aの導入方向の移動を上記所定位置で発光体2aに突き当たることで規制するストッパ部(不図示)を有してもよい。ストッパ部は、光チューブ11に設ける縮径部で構成してもよいし、光チューブ11内に配置する部材で構成してもよい。
【0037】
流体は、バルーン4を収縮形態から拡張形態に変形させるために流体ルーメン6内でバルーン4の近位端部4bを通って内部空間3に導入される。流体ルーメン6は光チューブ11に隣接して並列に配置されるチューブ13(以下、流体チューブ13ともいう)によって形成され、流体チューブ13はバルーン4の近位端部4bを通る。より具体的には、流体チューブ13はバルーン4の近位端部4bにおいて端部壁7bに接着される。また流体チューブ13は内部空間3内で開口する。
【0038】
流体ルーメン6は光ルーメン5に並列に設けられる構成に限らず、例えば、光ルーメン5と同軸に光ルーメン5の径方向外側に設けられる構成としてもよいし、流体ルーメン6としても光ルーメン5としても利用可能な共用のルーメンで構成してもよい。
【0039】
本実施形態の光治療装置1によれば、例えば婦人科がんを治療する場合に、子宮口の手前でバルーン4を収縮形態から拡張形態に変形させて、子宮口付近に窓部10の遠位端部10aから広く光を照射すると同時に、膣壁には窓部10の残りの部分から周方向に限定的に光を照射することができる。したがって、婦人科がんの一定のケースで、膣壁の正常部位への光の照射を抑制しながら安全に異常部位を治療することができる。
【0040】
また、窓部10をバルーン4の遠位端部4aから近位端部4bに向けて全周に亘って設ける構成とした場合には、子宮口から膣壁に跨る部分に限定した部位に全周に亘って広く光を照射することができるので、婦人科がんの一定のケースで、膣壁の正常部位への光の照射を抑制しながら安全に異常部位を治療することができる。
【0041】
また、窓部10がバルーン4の遠位端部4aと近位端部4bとの間の部分のみに設けられる構成とした場合には、膣壁に限定した部位に光を照射することができるので、婦人科がんの一定のケースで、膣壁の正常部位への光の照射を抑制しながら安全に異常部位を治療することができる。
【0042】
本実施形態によれば、いずれの構成とした場合でも、反射体9が、少なくとも長手方向におけるバルーン4の一方の端部に軸線Oの径方向外側に向けて厚みtが減少するように設けられるので、反射体9は、バルーン4が収縮形態から拡張形態に変形する際にその変形量がより大きくなる径方向外側になるほど変形し易く、その結果、バルーン4が収縮形態から拡張形態に変形するバルーン4の拡張時に反射体9を損傷しにくくすることができる(損傷抑制効果)。また、発光体2aからの距離が近くなり易い径方向内側になるほど厚みtが増加する反射体9によって、発光体2aから出射された光を効率的に反射することができる(反射効率向上効果)。
【0043】
本実施形態の反射体9は、少なくとも長手方向におけるバルーン4の一方の端部に、位置によって厚みが異なるように設けられる限り、種々の形態をとってよい。例えば、反射体9の厚みtは次の[1]~[6]に記載されるように設定してもよい。ここで、[1]~[6]は任意に組み合わせることができる。
【0044】
[1]
反射体9の厚みtは、バルーン4の近位端部4bにおいて、周壁7aの所定位置での反射体9の厚みTa(
図9参照)が端部壁7bの所定位置での反射体9の厚みTb(
図9参照)よりも小さくなるように設定してもよい。Taは20~300um、より具体的には40~230umが好ましく、またTbは50~500um、より具体的には150~450umが好ましい。このような構成によれば、窓部10を通した光の照射強度分布に影響を与え易いバルーン4の近位側の端部壁7bの拡張時の形状を、端部壁7bでの反射体9の厚みtによって安定させ易くすることができる。
【0045】
[2]
反射体9の厚みtは、バルーン4の近位端部4bにおいて、端部壁7bの所定位置での反射体9の厚みTbがそれより径方向内側の反射体9の厚みTc(
図9参照)よりも小さくなるように設定してもよい。Tbは、近位端部と周壁7aとの境界における反射体9の厚みをTbの位置とした場合に、100~300um、より具体的には150~250umが好ましい。Tcは、近位端部の極端に近接した部分における反射体9の厚みをTcとした場合に、150~500um、より具体的には200~450umが好ましい。このような構成によれば、バルーン4の近位端部4bでの端部壁7bにおいて、上記の損傷抑制効果と反射効率向上効果を得ることができる。
【0046】
[3]
反射体9の厚みtは、反射体9を周壁7aに設ける場合に、周壁7aの所定位置での反射体9の厚みTd(
図9参照)がそれより基端側の周壁7aの所定位置での反射体9の厚みTaよりも小さくなるように設定してもよい。Taは、周壁7aの遠位端における反射体9の厚みをTaの位置とした場合に、20~300um、より具体的には40~180umが好ましい。Tdは、周壁の近位端における反射体9の厚みをTdの位置とした場合に、50~300um、より具体的には100~230umが好ましい。このような構成によれば、婦人科がんの一定のケースで、体腔(膣腔)形状へのフィッティング性や挿通性を高めることができる。
【0047】
[4]
反射体9の厚みtは、長手方向に見て窓部10を片側に偏らせて設ける場合に、バルーン4の近位端部4b又はそれ以外の部分において、所定位置での反射体9の厚みTb又はTaがそれより断面周方向に窓部10側にずれた所定位置での厚みTe(
図9参照)よりも大きくなるように設定してもよい。Teは20~450um、より具体的には40~430umが好ましい。このような構成によれば、発光体2aから出射された光を窓部10に向けて効率的に反射することができる。
【0048】
[5]
反射体9の厚みtは、窓部10との境目を形成する反射体9の端縁部での厚みTf(
図9参照)がそれ以外の位置での反射体9の厚み(例えば上記の厚みTa、Tbなど)よりも小さくなるように設定してもよい。Tfは、1~200um、より具体的には10~150umが好ましい。このような構成によれば、体腔内でのバルーン4の移動時における体腔周辺組織や反射体9自体への損傷を抑制することができる。
【0049】
[6]
反射体9の厚みtは、位置が変化するにつれて徐々に変化するように設定してもよい。このような構成によれば、上記の効果を高めることができる。なお、これに限らず、反射体9の厚みtは、位置が変化すると段差状に変化するように設定してもよい。
【0050】
本開示は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0051】
したがって、前述した実施形態に係る光治療装置1は、発光体2aを配置される内部空間3を形成し長手方向と長手方向に延びる軸線Oとを規定するバルーン4と、バルーン4を収縮形態から拡張形態に変形させる流体の移動経路となるルーメン6と、を有し、発光体2aが内部空間3において軸線O上に配置され、バルーン4が、発光体2aから出射された光を内部空間3に向けて反射する反射体9と、反射体9がないことによって光を内部空間3の外側に向けて透過させる窓部10と、を有し、反射体9が、少なくとも長手方向におけるバルーン4の一方の端部に、位置によって厚みが異なるように設けられる、光治療装置1である限り、種々変更可能である。
【0052】
例えば、発光体2aは、軸心の周方向の全域に向けて光を出射可能である構成に限らず、例えば、軸心の周方向の一部の領域のみに向けて光を出射可能な構成としてもよい。光治療装置1は、発光体2aを光ルーメン5内での移動によって中空体の内部空間3に導入可能な構成に限らず、例えば、発光体2aを中空体の内部空間3に内蔵した構成としてもよい。
【0053】
なお、前述した実施形態に係る光治療装置1は、流体が、流体の移動経路となるルーメン6内でバルーン4の前記一方の端部を通って内部空間3に導入される、光治療装置1であることが好ましい。
【0054】
前述した実施形態に係る光治療装置1は、反射体9の厚みtが、バルーン4の近位端部4bにおいて、周壁7aの所定位置での反射体9の厚みTaが端部壁7bの所定位置での反射体9の厚みTbよりも小さくなるように設定される、光治療装置1であることが好ましい。
【0055】
前述した実施形態に係る光治療装置1は、反射体9の厚みtが、バルーン4の近位端部4bにおいて、端部壁7bの所定位置での反射体9の厚みTbがそれより径方向内側の反射体9の厚みTcよりも小さくなるように設定される、光治療装置1であることが好ましい。
【0056】
前述した実施形態に係る光治療装置1は、反射体9の厚みtが、反射体9をバルーン4の周壁7aに設ける場合に、周壁7aの所定位置での反射体9の厚みTdがそれより基端側の周壁7aの所定位置での反射体9の厚みTaよりも小さくなるように設定される、光治療装置1であることが好ましい。
【0057】
前述した実施形態に係る光治療装置1は、反射体9の厚みtが、長手方向に見て窓部10を片側に偏らせて設ける場合に、所定位置での反射体9の厚みTbがそれより周方向に窓部10側にずれた所定位置での厚みTeよりも大きくなるように設定される、光治療装置1であることが好ましい。
【0058】
前述した実施形態に係る光治療装置1は、反射体9の厚みtが、窓部10との境目を形成する反射体9の端縁部での厚みTfがそれ以外の位置での反射体9の厚みよりも小さくなるように設定される、光治療装置1であることが好ましい。
【0059】
前述した実施形態に係る光治療装置1は、反射体9の厚みtが、位置が変化するにつれて徐々に変化するように設定される、光治療装置1であることが好ましい。
【0060】
前述した実施形態に係る光治療装置1は、反射体9をディッピング法によって形成する方法によって製造することが好ましい。
【符号の説明】
【0061】
1 光治療装置
2 発光装置
2a 発光体
2b 導光部
3 内部空間
4 バルーン
4a 遠位端部
4b 近位端部
4c 遠位端部の極端
4d 近位端部の極端
5 ルーメン(光ルーメン)
6 ルーメン(流体ルーメン)
7 本体部
7a 周壁
7b 端部壁
8 襞
9 反射体
10 窓部
10a 遠位端部
10b 近位端部
10c 遠位端部の極端
10d 近位端部の極端
11 チューブ(光チューブ)
12 閉塞部材
13 チューブ(流体チューブ)
O 軸線
t 厚み
Ta~Tf 厚み