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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052352
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】結紮装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159016
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】大澤 直勝
(72)【発明者】
【氏名】山野 純慈
(72)【発明者】
【氏名】飯島 竜太
(72)【発明者】
【氏名】市橋 昌志
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD09
4C160DD22
4C160MM33
4C160NN02
4C160NN09
(57)【要約】
【課題】被結紮体の結紮に際して、被結紮体を結紮する糸を被結紮体に容易に巻き掛けることができる結紮装置を提供する。
【解決手段】結紮装置10によれば、結紮用糸フック34の切欠44、又は再配置用糸フック54の切欠56が第1糸フック挿通穴38と糸送り棒挿通穴42との交差位置よりも第2顎部18の長手方向の先端側に位置し、且つ、糸送り棒64が第1突出位置であるとき、糸送り棒64の糸係合部74は、第1短手方向であるz方向において第1糸フック挿通穴38よりも第1顎部12から離間する側に位置し、且つ、第2短手方向すなわちy方向において、第1フック挿通穴38と重なる位置に配置される。これにより、糸フックによって糸を把持し、被結紮体32の周囲に糸Tを巻き掛けることができる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の本体と、
前記本体の長手方向の一端に接続される第1顎部と
前記本体の長手方向の一端に、前記第1顎部との間に被結紮体を保持する保持位置と前記第1顎部から離間した離間位置との間で移動可能に接続される第2顎部と、
前記被結紮体を結紮する糸に係合する糸係合部を先端に有して前記第1顎部内に収容され、前記糸係合部が前記第1顎部内に位置する引込位置と、前記第2顎部が前記保持位置にあるときに前記糸係合部が前記第1顎部から突出した突出位置との間で移動する糸送り棒と、
前記本体に内装され、前記糸係合部に係合する前記糸を引っかける糸フック部を先端に有する糸引込部材とを、備えた結紮装置であって、
前記第2顎部は、前記長手方向に沿って設けられ前記糸フック部が挿通されるフック挿通穴と、前記第1顎部から前記第2顎部へ向う方向であって前記長手方向と交差する第1短手方向に沿って前記糸送り棒が挿通される糸送り棒挿通穴とを、有し、
前記フック挿通穴と前記糸送り棒挿通穴とは、少なくとも一部が交差しており、
前記糸フック部が前記フック挿通穴と前記糸送り棒挿通穴との交差位置よりも前記第2顎部の前記長手方向の先端側に位置し、且つ前記糸送り棒が前記突出位置であるとき、前記糸送り棒の糸係合部は、前記第1短手方向において前記フック挿通穴よりも下流に位置し、且つ、前記長手方向および前記第1短手方向と交差する第2短手方向において、前記フック挿通穴と重なる位置に配置される
ことを特徴とする結紮装置
【請求項2】
前記糸送り棒は、前記第1短手方向において前記糸係合部よりも上流で、且つ前記第2短手方向において前記糸係合部と重なる位置に凹溝を有し、
前記糸送り棒が前記突出位置であるとき、前記凹溝は前記第1短手方向において前記フック挿通穴と重なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1の結紮装置。
【請求項3】
前記糸引込部材は、前記糸フック部を構成する切欠が形成された筒体と、前記筒体内に摺動可能に差し入れられ、前記切欠との間で前記糸を把持する糸フック把持部材とを有する
ことを特徴とする請求項1の結紮装置。
【請求項4】
前記筒体に形成された切欠は、前記筒体の先端に向かうほど切込みが浅くされ、
前記筒体の先端から離れる側へ前記切欠の開口から直線的に突き出す引掛突起が形成され、
前記糸フック把持部材の先端は、前記切欠が浅い側ほど先端に向かう傾斜面を有している
ことを特徴とする請求項3の結紮装置。
【請求項5】
前記糸フック把持部材の先端の傾斜面に対向する前記筒体の対向面は、前記傾斜面と平行な面である
ことを特徴とする請求項4の結紮装置。
【請求項6】
前記筒体は、前記筒体の前記切欠から先端部分には、前記筒体の径
よりも小さい厚みの偏平部を、備えている。
ことを特徴とする請求項5の結紮装置。
【請求項7】
前記糸送り棒の糸係合部は、前記長手方向に沿って形成された溝である
ことを特徴とする請求項1の結紮装置。
【請求項8】
前記第2顎部には、前記糸を切断する第1カッタが固定されており、
前記カッタは、前記長手方向において、前記糸送り棒挿通穴と前記本体との間に位置している
ことを特徴とする請求項1の結紮装置。
【請求項9】
前記カッタは前記第2顎部に固定されており、
前記糸送り棒は、前記糸引込部材に糸を把持させるために前記糸送り棒挿通穴から突き出した第1突出位置から、前記第2顎部が前記保持位置のときに前記糸送り棒の糸係合部が前記第1短手方向において前記第1突出位置からさらに突き出した第2突出位置に移動可能である
ことを特徴とする請求項8の結紮装置。
【請求項10】
前記第1顎部内には、前記糸が収納された糸収納部が設けられている
ことを特徴とする請求項1の結紮装置。
【請求項11】
前記糸収納部は、前記長手方向において、前記糸送り棒の前記糸係合部と前記本体との間に位置している
ことを特徴とする請求項10の結紮装置。
【請求項12】
前記糸収納部は、前記糸が巻回されたボビンを含み、
前記ボビンの回転軸は、前記第2短手方向に平行である
ことを特徴とする請求項11の結紮装置。
【請求項13】
前記本体は、前記糸の糸ループを形成する一対の糸ループ軸を備え、
前記一対の糸ループ軸は、前記糸引込部材の前記長手方向の移動を案内する棒案内溝を有する
ことを特徴とする請求項1の結紮装置。
【請求項14】
前記一対の糸ループ軸は、前記第1短手方向に平行な軸線まわりに回転可能に設けられ、相互に噛み合うギヤをそれぞれ備えて相互に逆まわりに回転させられる
ことを特徴とする請求項13の結紮装置。
【請求項15】
前記一対の糸ループ軸は、前記棒案内溝に対して直交する方向の糸案内溝と、前記棒案内溝内において前記糸引込部材により前記本体内に引き込まれた前記糸を、前記糸ループ軸の非ループ形成回転方向の回転に伴って前記糸案内溝内へ移動させる第1糸案内傾斜面と、前記糸ループ軸の前記非ループ形成回転方向とは反対方向のループ形成回転方向の回転に伴って前記糸案内溝内の前記糸を引っかけて前記軸線まわりの糸ループをそれぞれ形成する糸係合角部とをそれぞれ有する
ことを特徴とする請求項14の結紮装置。
【請求項16】
前記糸引込部材は、前記筒体が摺動可能に差し入れられ、前記筒体を突出し可能に嵌め入れる筒状の外筒部材 を有し、
前記外筒部材の先端には、傾斜端面が設けられている
ことを特徴とする請求項3の結紮装置。
【請求項17】
前記糸引込部材と並列な第1位置と、前記糸引込部材と同軸上の第2位置との間で移動する第2糸引込部材を、備える
ことを特徴とする請求項1の結紮装置。
【請求項18】
前記第1顎部と前記第2顎部を前記本体に連結する連結部材をさらに備え、
第2顎部の基端部は、前記第1顎部に対し、前記第2短手方向に平行な第1ピンを介して開閉可能に連結されており、
前記連結部材は、前記筒状の本体の端部に対して前記第1短手方向に平行な第2ピンを介して回動可能に連結されている
ことを特徴とする請求項1の結紮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被結紮体を糸を用いて結紮することができる結紮装置に関し、特に被結紮体の結紮に先立って糸を被結紮体の外周に容易に巻き掛けることができるようにする結紮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の外科等の分野において被結紮体を糸を用いて結紮するに際して、金属製のステープルを用いることなく、被結紮体に巻き掛けた糸状部材を用いて被結紮体を縫合することができる縫合装置が提案されている。たとえば、特許文献1および特許文献2にて提案された縫合装置がそれである。
【0003】
特許文献1にて提案された縫合装置は、予めU字状に形成された縫合糸ストリップが一回の締結操作毎に装着され、装着された縫合糸ストリップを用いて被結紮体が結紮される。この特許文献1にて提案された縫合装置によれば、一回の締結操作毎に縫合糸ストリップを縫合装置に装着しなければならず、糸を用いた結紮が困難であった。
【0004】
特許文献2には、近位シャフト、可撓性の屈曲部、遠位シャフトを連結し、それらに線材を通した可撓性の屈曲部を備え、屈曲部よりも遠位側または屈曲部の遠位部に先端部が連結され、基端部における操作ワイヤを牽引操作することで屈曲部を屈曲させて、線材を血管等の被結紮体の周囲を囲んだ状態とすることのできる医療デバイスが記載されている。この特許文献2の医療デバイスによれば、線材の先端に縫合糸を連結した状態で線材を基端から引き抜くことで、線材を被結紮体の周囲を囲んだ縫合糸に置き換えることができ、その縫合糸に生体外で作成した結び目を生体内に送り込むことで、被結紮体の結紮を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-515637号公報
【特許文献2】特開2017-158614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2のいずれにも、被結紮体を糸を用いて結紮するに際して、被結紮体の外周に糸を用いて直接巻き掛ける技術が全く開示されていない。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、被結紮体の結紮に際して、被結紮体を結紮する糸を被結紮体の外周に直接巻き掛けることができる結紮装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の結紮装置の要旨とするところは、(a)柱状の本体と、 前記本体の長手方向の一端に接続される第1顎部と、前記本体の長手方向の一端に、前記第1顎部との間に被結紮体を保持する保持位置と前記第1顎部から離間した離間位置との間で移動可能に接続される第2顎部と、 前記被結紮体を結紮する糸に係合する糸係合部を先端に有して前記第1顎部内に収容され、前記糸係合部が前記第1顎部内に位置する引込位置と、前記第2顎部が前記保持位置にあるときに前記糸係合部が前記第1顎部から突出した突出位置との間で移動する糸送り棒と、前記本体に内装され、前記糸係合部に係合する前記糸を引っかける糸フック部を先端に有する糸引込部材を、備えた結紮装置であって、(b)前記第2顎部は、前記長手方向に沿って設けられ前記糸フック部が挿通されるフック挿通穴と、前記第1顎部から前記第2顎部へ向う方向であって前記長手方向と交差する第1短手方向に沿って前記糸送り棒が挿通される糸送り棒挿通穴とを、有し、(c)前記フック挿通穴と前記糸送り棒挿通穴とは、少なくとも一部が交差しており、(d) 前記糸フック部が前記フック挿通穴と前記糸送り棒挿通穴との交差位置よりも前記第2顎部の前記長手方向の先端側に位置し、且つ前記糸送り棒が前記突出位置であるとき、前記糸送り棒の糸係合部は、前記第1短手方向において前記フック挿通穴よりも下流に位置し、且つ前記長手方向および前記第1短手方向と交差する第2短手方向において、前記フック挿通穴と重なる位置に配置されることにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の結紮装置によれば、糸引込部材の糸フック部がフック挿通穴と前記糸送り棒挿通穴との交差位置よりも第2顎部の前記長手方向の先端側に位置し、且つ、糸送り棒が前記突出位置であるとき、糸送り棒の糸係合部は、前記第1短手方向においてフック挿通穴よりも前記第1顎部から離間する側に位置し、且つ、長手方向および前記第1短手方向と交差する第2短手方向において、フック挿通穴と重なる位置に配置される。これにより、糸送り棒の糸係合部に掛けられた糸は、前記フック挿通穴と前記糸送り棒挿通穴との交差位置よりも前記第2顎部の前記長手方向の先端側に位置する糸フック部によって把持された状態で、糸引込部材が引き込まれることにより、被結紮体の外周に糸を直接巻き掛けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例の結紮装置を示す、斜め上方から見た斜視図である。
図2図1の結紮装置の平面図である。
図3図1の結紮装置の側面図である。
図4図1の結紮装置の基端部側端面を示す裏面図である。
図5図1の結紮装置の縦断面図、すなわち図2の結紮装置のIV-IV視断面図である。
図6図1の結紮装置の水平断面図、すなわち図3の結紮装置のV-V視断面図である。
図7図1の結紮装置に用いられている結紮用糸フックを示す斜視図である。
図8図7の結紮用糸フックの先端部を示す平面図である。
図9図7の結紮用糸フックの先端部を拡大して示す斜視図である。
図10図1の結紮装置に用いられている再配置用糸フックの先端部を示す平面図である。
図11図10の再配置用糸フックの断面を説明する断面図である。
図12図1の結紮装置に用いられている糸送り棒を示す斜視図である。
図13図12の糸送り棒と図8の結紮用糸フックの先端部との位置関係を説明する図である。
図14図12の糸送り棒と図10の再配置用糸フックの先端部との位置関係を説明する図である。
図15図1の結紮装置に備えられた一対の糸ループ軸を説明する斜視図である。
図16図1の結紮装置の作動のうち、被結紮体を下顎部と上顎部との間に把持する被結紮体把持工程を、説明する図である。
図17図1の結紮装置の糸把持作動のうち、ノットプッシャおよび結紮用糸フックを被結紮体に向かって前進させるノットプッシャ前進工程を、説明する図である。
図18図1の結紮装置の糸把持作動のうち、被結紮体の遠位側の糸を把持する結紮用糸フックをノットプッシャから突き出す結紮用糸フック突出工程を、説明する図である。
図19図1の結紮装置の糸把持作動のうち、糸送り棒を上顎部から突き出すまで上昇させる糸送り棒突出工程を、説明する図である。
図20図1の結紮装置の糸把持作動のうち、結紮用糸フックの筒体から糸フック把持部材を突き出して被結紮体の遠位側の糸を半把持し、糸フック把持部材を少し後退させる糸把持工程を、説明する図である。
図21図1の結紮装置の糸把持作動のうち、糸送り棒を下降させ、ノットプッシャおよび結紮用糸フックを後退させるノットプッシャ後退工程を、説明する図である。
図22図1の結紮装置の糸カット作動のうち、糸フック把持部材において糸を完全把持させ、次いで糸送り棒を上顎部から突き出すまで上昇させて糸を切断する第1糸切断工程を、説明する図である。
図23図1の結紮装置の糸カット作動のうち、糸フック把持部材において糸を半把持させ、次いで結紮用糸フックおよびノットプッシャを結紮装置の基端部まで後退させることで、糸を2つの糸ループ内に差し通す糸差通し工程を、説明する図である。
図24図1の結紮装置の結紮作動のうち、結紮用糸フックを前進させ且つ再配置用糸フックを後退させることで糸に張力を与えつつ、一対の糸ループ軸を逆回転させることで一対の糸ループに巻き掛けられた糸ループを外す糸ループ外し工程を、説明する図である。
図25図1の結紮装置の結紮作動のうち、ノットプッシャおよび結紮用糸フックを被結紮体に向かって前進させると同時に、再配置用糸フックを後退させることで、2つの糸ループを前方へ移動させつつ糸ループを締める糸ループ移動工程を、説明する図である。
図26図1の結紮装置の結紮作動のうち、再配置用糸フックを前進させ且つ結紮用糸フックを後退させて、ノットプッシャに近い側のループを転換して結び目を形成する結び目形成工程を、説明する図である。
図27図26の結び目形成工程前の糸ループを拡大して示す図である。
図28図26の結び目形成工程後において、2つの糸ループのうちのノットプッシャに近い側の糸ループが変換された状態を拡大して示す図である。
図29図1の結紮装置の結紮作動のうち、ノットプッシャを後退させた状態で第2カッタを切断位置まで回転操作することで、結び目から結紮用糸フックおよび再配置用糸フックまでの間の2本の糸を同時に切断する第2糸切断工程を、説明する図である。
図30図1の結紮装置の結紮作動において、第2カッタを切断位置から後退操作し、且つノットプッシャおよび結紮用糸フックを後端まで後退させることで糸を回収する糸回収工程を、説明する図である。
図31図1の結紮装置の結紮作動において、上顎部を開閉することで、結紮が完了した被結紮体が取り出される被結紮体取出工程を、説明する図である。
図32図1の結紮装置の再配置作動において、再配置用糸フックが結紮装置の先端部まで前進させられる再配置用糸フック前進工程を、説明する図である。
図33図1の結紮装置の再配置作動において、図1の結紮装置の糸把持作動のうち、糸送り棒を上顎部から突き出すまで上昇させる糸送り棒突出工程を、説明する図である。
図34図1の結紮装置の再配置作動において、再配置用糸フックの筒体から糸フック把持部材を突き出して糸送り棒により上昇させられた糸を完全把持し、再配置用糸フックを少し後退させる糸把持工程を、説明する図である。
図35図1の結紮装置の再配置作動において、糸送り棒を下降させて下顎部内に収納し、再配置用糸フックを一対の糸ループ軸よりも結紮装置の基端側へ後退させ、一対の糸ループ軸の再配置用糸フックを案内する棒案内溝内に糸を配置する棒案内溝糸配置工程を、説明する図である。
図36】第1の結紮装置の再配置作動において、一対の糸ループ軸を第1回転方向に90度回転させることで、棒案内溝内の糸を棒案内溝に直交する方向の糸溝内へ配置する糸溝内糸配置工程を、説明する図である。
図37】第1の結紮装置の再配置作動において、一対の糸ループ軸を第1回転方向とは反対の第2回転方向に270度回転させることで、一対の糸ループ軸に糸を巻き付けて2つの糸ループを形成する糸ループ形成工程を、説明する図である。
図38】第1の結紮装置の再配置作動において、ノットプッシャを軸回りに回転させつつ、一対の糸ループ軸に糸を巻き付けられた2つの糸ループの糸をくぐらせながら前進させる糸フック配置工程を、説明する図である。
図39図38の糸フック配置工程において、ノットプッシャが基端側の糸ループの周方向糸に接近した状態を示す図である。
図40図38の糸フック配置工程において、ノットプッシャが前進しつつ軸まわりに回転してその先端に形成された傾斜面が基端側の糸ループの周方向糸を超えようとする状態を示す図である。
図41図38の糸フック配置工程において、ノットプッシャが前進しつつ軸まわりに回転してその先端に形成された傾斜面が基端側の糸ループの径方向糸をくぐろうとする状態を示す図である。
図42図38の糸フック配置工程において、ノットプッシャが前進しつつ軸まわりに回転してその先端に形成された傾斜面が基端側の糸ループの周方向糸および先端側の糸ループの周方向糸を超えようとする状態を示す図である。
図43図38の糸フック配置工程において、ノットプッシャが前進しつつ軸まわりに回転してその先端に形成された傾斜面が先端側の糸ループの径方向糸をくぐろうとする状態を示す図である。
図44図38の糸フック配置工程において、ノットプッシャが前進しつつ軸まわりに回転してその先端に形成された傾斜面が先端側の糸ループの周方向糸を超えようとする状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例0012】
(結紮装置10の構成)
図1図2図3図4は、本発明の一実施例の結紮装置10であって、第2顎部18が閉じられた状態を示す斜視図、平面図、側面図、裏面図すなわち後端面を示す図である。図5図2のIV-IV視断面図である。また、図6図3のV-V視断面図である。
【0013】
結紮装置10は、全体として長手状を成し、先端部が離間位置と保持位置との間で開閉することにより、生体の一部たとえば血管等の被結紮体32(図16以下に参照)を保持した保持位置で、被結紮体32に巻きまわした糸Tに結び目M(図28に参照)を形成することが可能に構成されている。結紮装置10は糸Tを用いて被結紮体32を締め着ける締着装置でもある。本実施例においては、図1に示すように、結紮装置10の長手方向をx方向とし、x方向に垂直且つ結紮装置10の先端部の開き面に平行な第1短手方向すなわち上下方向をz方向とし、x方向およびz方向に垂直な第2短手方向すなわち幅方向をy方向としている。
【0014】
結紮装置10は、柱状の本体14と、保持部と、糸引込部材とを備える。保持部は、本体14のx方向の一端に接続され、被結紮体32を保持する。保持部は、第1顎部12及び第2顎部18を含む。第1顎部12は、本体14のx方向の一端に接続される。第2顎部18は、第1顎部12との間に被結紮体32を保持する保持位置と第1顎部12から離間した離間位置との間で移動する。本実施形態においては、z方向、即ち上下方向において、第1顎部12は第2顎部18の下側に配置されている。第1顎部12及び第2顎部18の詳細は後述する。なお、以下では、第1顎部12を下顎部12、第2顎部18を上顎部18と呼称することもある。糸引込部材は、本体14内においてx方向に沿って移動可能に設けられ、被結紮体32を結紮する糸を本体14内に引き込む。糸引込部材は、後述する第1糸引込部材または第2糸引込部材である。結紮装置10はさらに、糸送り棒64を備える。糸送り棒64は、第1顎部12内に収容される。糸送り棒64は、その先端に、被結紮体32を結紮する糸Tに係合する糸係合部74を有する。糸送り棒64は、糸係合部74が第1顎部12内に位置する引込位置と、第2顎部18が保持位置にあるときに糸係合部74が第1顎部12から突出した突出位置との間で移動する。糸送り棒64の詳細は後述する。結紮装置10はさらに、糸ループ形成部90を備える。糸ループ形成部90は、糸引込部材により本体14内に引き込まれた糸Tに2つの糸ループを形成する。糸ループ形成部の詳細は後述する。
【0015】
結紮装置10は、首振り部30を備える。第1顎部12および第2顎部18を本体14に連結する連結部材である。より詳しくは、第1顎部12は、首振り部30の先端部下側に一体的に設けられる。第2顎部18は、y方向に離間した一対の基端部18aを有している。そして、一対の第1ピン16により一対の基端部18aがy方向に平行な第1回転軸線C1まわりに回動可能に首振り部30の先端部に連結される。これにより、第2顎部18は、第1顎部12との間に被結紮体を保持する保持位置と前記第1顎部から離間した離間位置との間で移動可能となる。本体14は、z方向に重ねられた下側本体部20、中側本体部22及び上側本体部24と、それらを嵌め入れて固定する円筒状の固定筒26とを備えている。首振り部30の基端は、中側本体部22の先端部から突設された連結板部22aに第2ピン28を介してz方向に平行な第2回転軸線C2まわりに回動可能に連結されている。これにより、第1顎部12および第2顎部18は開閉可能とされ、それら第1顎部12および第2顎部18は、本体14に対して、首振り可能に連結されているので、第1顎部12および第2顎部18の操作の自由度が高められる。
【0016】
首振り部30は、図4に示す結紮装置10の基端部側端面において中側本体部22と上側本体部24との間に開口する一対の首振り操作ワイヤ挿通穴40を通して引き出された、首振り部30に一端が固定された一対の首振り操作ワイヤ33を介して第2回転軸線C2まわりに首振り操作される。第2顎部18は、図4に示す結紮装置10の基端部側端面において一対の首振り操作ワイヤ挿通穴40の一方と一対のカッタ操作ワイヤ78a、78bの一方78aを通して引き出された、第2顎部18に一端が固定された一対の開閉操作ワイヤ23を介して第1回転軸線C1まわりに開閉操作される。
【0017】
第1顎部12は、首振り部30から結紮装置10の先端に向かって一体的に突設されている。第1顎部12の基端部12aは、第1顎部12の先端と第2顎部18の先端とが接触した状態において第2顎部18の基端部18aに平行に形成されている。また、第1顎部12の先端部12bは、長手方向xにおいて先端に向かうほど第2顎部18の先端部18bに向うように傾斜させられている。第1顎部12は全体として湾曲して形成されている。第1顎部12の基端部12aと第2顎部18の基端部18aとの間には、被結紮体32を収容するための所定の間隔Dが、形成されている。
【0018】
図5および図6に示すように、第2顎部18内には、第1糸引込部材として機能する結紮用糸フック34及び第2糸引込部材として機能する再配置用糸フック54を択一的に結紮装置10の先端部まで案内するために、結紮装置10の長手方向すなわちx方向に沿った直線状の第1糸フック挿通穴38が、設けられている。第2顎部18には、第1顎部12から第2顎部18へ向う方向すなわち結紮装置10の長手方向であるx方向と直交する第1短手方向すなわちz方向に沿って糸送り棒64が挿通される糸送り棒挿通穴42が、第2顎部12を貫通して形成されている。第1糸フック挿通穴38と糸送り棒挿通穴42とは、それらの断面積の一部が交差させられている。
【0019】
そして、第2顎部18において糸送り棒挿通穴42と本体14との間の位置には、糸送り棒64の糸係合部74に掛け止められた糸Tが糸送り棒64によりz方向へ持ち上げられたときに糸Tを切断する第1カッタ36が固定されている。これにより、第2顎部18が保持位置であるときに、糸送り棒64が糸Tを結紮用糸フック34に把持させるために糸送り棒挿通穴42から僅かに突き出した図19に示す第1突出位置からさらにz方向へ突き出されて図22に示す第2突出位置に到達すると、糸送り棒64の糸係合部74に掛け止められた糸Tがz方向へ持ち上げられることにより、第1カッタ36を動かすことなく、糸Tが第1カッタ36により切断される。
【0020】
図7は結紮用糸フック34を示す斜視図であり、図8は結紮用糸フック34の先端部を示す平面図であり、図9は、結紮用糸フック34の先端部を拡大して示す斜視図である。結紮用糸フック34は、糸Tを引っかける糸フック部を構成する切欠44が先端に形成された筒体46と、筒体46内に摺動可能に差し入れられ、切欠44との間で糸Tを把持する円柱状の糸フック把持部材48とを有し、全体として曲げ変形可能な金属やプラスチック等の材質から構成されている。糸フック把持部材48により切欠44に掛けた糸Tが把持される。
【0021】
筒体46には、x方向において筒体46の先端に向かうほど切込みが径方向の外側から見てy方向に浅くなり、開口付近で筒体46の先端から離れる側へ直線的に突き出す引掛突起46aを有する切欠44が形成されている。切欠44の先端側部分には、x方向に対して鋭角を形成する傾斜面46cが形成されている。また、糸フック把持部材48の先端は、切欠44が浅い側ほど先端に向かい、x方向に対して鋭角を成す傾斜面48aを有する。傾斜面48aは、筒体46の傾斜面46cと対向し、その傾斜面46cと平行とされている。これにより、糸Tが確実に把持される。
【0022】
筒体46の先端部には、筒体46の内径よりも小さい厚みの偏平部46bが、備えられている。偏平部46bの糸フック把持部材48の傾斜面48aに対向する部分には、傾斜面48aと平行な傾斜面46cが糸フック把持部材48の傾斜面48aと面接触可能に形成されている。これにより、傾斜面48aと平行な傾斜面46cが糸フック把持部材48の傾斜面48aと面接触することで、糸フック把持部材48の筒体46に対する軸まわりの回転が抑制され、糸フック把持部材48の傾斜面48aと偏平部46bの傾斜面46cとの間で糸Tが確実に把持される。また、偏平部46bは筒体46の内径よりも小さい厚みを有するので、糸フック把持部材48の傾斜面48aと偏平部46bの傾斜面46cとの間で把持された糸Tを、筒体46内およびノットプッシャ50内に引き込むことができる。
【0023】
結紮用糸フック34は、筒体46が摺動可能に差し入れられ、筒体46を摺動可能且つ突出可能に嵌め入れる筒状のノットプッシャ50を備えている。ノットプッシャ50は筒体46と同心に装着されており、結紮用糸フック34の外筒部材として機能する。ノットプッシャ50の先端には、筒体46を突き出す開口が形成された傾斜端面50aが設けられている。
【0024】
図10は第2糸引込部材に対応する再配置用糸フック54の先端部を示す平面図であり、図11は再配置用糸フック54の先端部を示す断面図である。再配置用糸フック54は、糸Tを引っかける糸フック部を構成する切欠56が形成された筒体58と、筒体58内に摺動可能に差し入れられ、切欠56との間で糸Tを把持する円柱状の糸フック把持部材60とを有し、全体として曲げ変形可能な金属やプラスチック等の材質から構成されている。結紮用糸フック34の移動軌跡および再配置用糸フック54の移動軌跡は、第1糸フック挿通穴38、第2糸フック挿通穴80、第3糸フック挿通穴84内において同軸である。第3糸フック挿通穴84に直列に介在する後述の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94の回転中心である第5回転軸心C5および第6回転軸心C6と交差する位置において、結紮用糸フック34の移動軌跡および再配置用糸フック54の移動軌跡は同軸である。
【0025】
筒体58に形成された切欠56のうちの先端側部分56aは、x方向において筒体46の先端に向かうほど切込みが径方向の外側から見てy方向に深くなるように形成されている。また、糸フック把持部材60の先端は、切欠56が浅い側ほど先端に向かうように傾斜し、x方向に対して鋭角を成す傾斜面60aを有している。傾斜面60aは、切欠56の先端側部分56aに対して逆に傾斜している。
【0026】
筒体58の切欠56よりも先端側の先端部において、糸フック把持部材60の傾斜面60aに対向する部分には、傾斜面60aと平行な当接面58bが糸フック把持部材60の傾斜面60aと面接触可能に形成されている。
【0027】
第1顎部12の基端部12a内には、糸Tが巻回されたボビン62が第2短手方向であるy方向に平行な第3回転軸線C3まわりに回動可能に支持されている。ボビン62は、糸収納部として機能し、y方向において一対の回動軸16の間に配置され、結紮装置10の長手方向であるx方向において糸送り棒64の糸係合部74と本体14との間に配置されている。また、第1顎部12内には、糸送り棒64を摺動可能に収容する糸送り棒収容穴66が第1顎部12の長手形状に沿って形成されている。また、第1顎部12において、糸送り棒収容穴66の開口の第1顎部12の先端側には、糸Tを掛け止めるための掛止ピン67が設けられている。
【0028】
図12は、糸送り棒64と、図5の糸送り棒操作ワイヤ68に接続される円柱状の接続部材70と、糸送り棒64と接続部材70との間を連結する可撓性の連結部材72と、を示す斜視図である。連結部材72は、たとえば合成樹脂やコイルスプリングなどの可撓性部材から構成される。糸送り棒64と接続部材70とは、糸送り棒収容穴66内において糸送り棒64の中心が第1糸フック挿通穴38の中心からy方向にずれるようにオフセットされている。糸送り棒操作ワイヤ68は、図4に示す結紮装置10の基端部側端面の開口から露出する端部から操作される。糸送り棒操作ワイヤ68の端部が引き込み操作されると、糸送り棒64は糸送り棒収容穴66内に収容される引込位置とされ、糸送り棒操作ワイヤ68の端部が突出し操作されると、糸送り棒64の糸係合部74が糸送り棒収容穴66から突き出される突出位置とされる。
【0029】
糸送り棒64は、その先端に向かうほど第1短手方向であるz方向へ向かう湾曲した形状に形成されている。糸送り棒64の先端には、糸Tを嵌め入れる溝状の糸係合部74が、結紮装置10の長手方向であるx方向に沿って形成されている。また、糸送り棒64の先端が糸送り棒収容穴66から突き出して第2顎部18に形成された糸送り棒挿通穴42内に位置させられたとき、第2顎部18内にx方向に沿って形成された直線状の第1糸フック挿通穴38内に差し入れられた結紮用糸フック34及び再配置用糸フック54との干渉を回避するための凹溝76が、糸送り棒64の先端部側面においてx方向に貫通して形成されている。これにより、糸Tが糸係合部74に掛け止め易くなる。
【0030】
凹溝76は、糸送り棒64において、第1短手方向であるz方向において糸係合部74よりも上流側すなわち第1顎部12側において、糸係合部74と重なる位置に形成されている。また、凹溝76は、糸送り棒64において、糸送り棒64が前記突出位置にあるとき、第1短手方向であるz方向において、第1糸フック挿通穴38と重なる位置に形成されている。これにより、糸送り棒64の糸係合部74が、結紮用糸フック34の切欠(糸フック部)44或いは再配置用糸フック54の切欠(糸フック部)56と第2短手方向であるy方向において交差可能とされている。
【0031】
図13は、結紮用糸フック34が結紮装置10の先端側へ最も前進させられて、結紮用糸フック34の糸フック部として機能する切欠44の先端側部分が第1糸フック挿通穴38と糸送り棒挿通穴42との交差位置よりも第2顎部18の長手方向の先端側に位置し、且つ糸送り棒64が糸送り棒挿通穴42からz方向へ最も突き出された突出位置であるときの、結紮用糸フック34と糸送り棒64との関係を示している。糸送り棒64の突出位置では、糸送り棒64の先端部に形成された糸係合部74は、第1短手方向であるz方向において第1糸フック挿通穴38よりもz方向の上側にすなわち下流側に位置し、且つ第2短手方向であるy方向において、第1糸フック挿通穴38と重なる位置とされる。また、糸送り棒64の凹溝76は、z方向およびy方向において第1糸フック挿通穴38と重なる位置とされる。すなわち、糸送り棒64は、糸係合部74のz方向下方の位置で且つy方向において糸係合部74と重なる位置に凹溝76を有し、糸送り棒64の突出位置であるときに凹溝76はz方向において第1糸フック挿通穴38と重なる。これにより、糸送り棒64の糸係合部74と結紮用糸フック34の糸フック部を構成する切欠44とが交差可能となり、糸送り棒64の先端に形成された糸係合部74に係合する糸Tは、結紮用糸フック34の糸フック部として機能する切欠44に掛け止められる。
【0032】
図13において、第1糸フック挿通穴38は、x-y平面において平面視で中央程先端に向かう一対の傾斜面からなるV字型の先端底面38aを有している。偏平部46bの先端には、同様に、x-y平面において平面視で中央程先端に向かう一対の傾斜面からなるV字型の先端面46dが形成されている。これにより、結紮用糸フック34が最先端まで前進させられて、偏平部46の先端に形成された先端面46dが第1糸フック挿通穴38の先端底面38aに当接させられることにより、筒体46の軸まわりの回転位相の位置合わせが行なわれるようになっている。
【0033】
図14は、再配置用糸フック54が結紮装置10の先端側へ最も前進させられて、再配置用糸フック54の糸フック部として機能する切欠56の先端側部分が第1糸フック挿通穴38と糸送り棒挿通穴42との交差位置よりも第2顎部18の長手方向の先端側に位置し、且つ糸送り棒64が糸送り棒挿通穴42からz方向へ最も突き出された突出位置であるときの、再配置用糸フック54と糸送り棒64との関係を示している。このような状態では、糸送り棒64の先端部に形成された糸係合部74は、第1短手方向であるz方向において糸送り棒挿通穴42の下流すなわちz方向に第1顎部12から離隔した位置に位置し、且つ、第2短手方向であるy方向において、第1糸フック挿通穴38と重なる位置とされる。また、糸送り棒64の凹溝76は、第1糸フック挿通穴38と重なる位置とされる。これにより、糸送り棒64の先端に形成された糸係合部74に係合する糸Tは、再配置用糸フック54の糸フック部として機能する切欠56に掛け止められる。
【0034】
図14において、筒体58の先端には、筒体46の先端面46dと同様に、x-y平面において平面視で中央程先端に向かう一対の傾斜面からなるV字型の先端面58aが形成されている。これにより、再配置用糸フック54が最先端まで前進させられて、筒体58の先端に形成された先端面58aが第1糸フック挿通穴38の先端底面38aに当接させられることにより、再配置用糸フック54の軸まわりの回転位相の位置合わせが行なわれるようになっている。
【0035】
たとえば、図5および図6に示すように、本体14の首振り部30内には、第2顎部18が閉じられた状態で第1糸フック挿通穴38に直線的に連なる第2糸フック挿通穴80と、第2糸フック挿通穴80内の糸Tを切断する第2カッタ82とが、設けられている。第2カッタ82は、首振り部30内においてz方向に平行な第4回転軸心C4まわりに回転可能に支持される円板状の第2カッタ台82aと、第2カッタ台82a上に立設された第2カッタ刃82bとを備えている。第2カッタ台82aは、図4に示す結紮装置10の基端部側端面において中側本体部22と下側本体部20との間に開口する一対の第2カッタ操作ワイヤ挿通穴78を通して引き出された、第2カッタ台82aに固定された一対のカッタ操作ワイヤ78a、78bを介して回転操作される。
【0036】
本体14の固定筒26内においては、互いに重ねられている中側本体部22と上側本体部24との間に、首振り部30が本体14の中心線上に位置するとき、第2糸フック挿通穴80に直線的に連なる第3糸フック挿通穴84および第4糸フック挿通穴86が、形成されている。第3糸フック挿通穴84および第4糸フック挿通穴86の間からは、第4糸フック挿通穴86と平行な第5糸フック挿通穴88が分岐し、中側本体部22内に形成されている。第4糸フック挿通穴86は、図4に示す結紮装置10の基端部側端面のy方向中央において中側本体部22と上側本体部24との間に開口している。第4糸フック挿通穴86には、専ら結紮用糸フック34が挿通される。また、第5糸フック挿通穴88は、図4に示す結紮装置10の基端部側端面のy方向中央において中側本体部22に開口している。第5糸フック挿通穴88には、専ら再配置用糸フック54が挿通される。
【0037】
第1糸フック挿通穴38、第2糸フック挿通穴80、および第3糸フック挿通穴84には、第4糸フック挿通穴86を通した結紮用糸フック34と第5糸フック挿通穴88を通した再配置用糸フック54とが、択一的に挿通される。
【0038】
結紮用糸フック34は、第1糸フック挿通穴38内の前進位置と第4糸フック挿通穴86内の後退位置との間で、移動操作される。再配置用糸フック54は、第1糸フック挿通穴38内の前進位置と第5糸フック挿通穴88内の後退位置との間で、移動操作される。再配置用糸フック54は、第5糸フック挿通穴88内の後退位置では、第1糸フック挿通穴38から第4糸フック挿通穴86内の結紮用糸フック34と並列する第1位置となり、第1糸フック挿通穴38内の位置すなわち前進位置では、第4糸フック挿通穴86内の結紮用糸フック34と同軸上の第2位置となる。これにより、結紮装置10を大型化することなく、糸Tの再配置が可能となる。
【0039】
本体14の固定筒26内には、第3糸フック挿通穴84内の糸Tに2つの第1糸ループL1および第2糸ループL2を形成する糸ループ形成部90が配設されている。糸ループ形成部90は、第1糸ループL1を形成する第1糸ループ軸92と第2糸ループL2を形成する第2糸ループ軸94とを、備えている。第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94は、第3糸フック挿通穴84内を移動する結紮用糸フック34又は再配置用糸フック54の移動軌跡と交差し、且つ第1短手方向であるz方向に平行な第5回転軸心C5および第6回転軸心C6まわりにそれぞれ回転可能に、本体14の中側本体部22内に収容されている。
【0040】
図15は、第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94を拡大して示す斜視図である。第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94は、第3糸フック挿通穴84から離隔した側の端部に円柱状の本体部96および本体部98を有している。第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94は、本体部96の外周部および本体部98の外周部に、互いに噛み合うギヤ100およびギヤ102をそれぞれ備え、相互に逆まわりに回転させられる。
【0041】
第1糸ループ軸92の円柱状の本体部96には、糸ループ軸操作ワイヤ104が巻き掛けられた溝106が形成されている。糸ループ軸操作ワイヤ104の端部は、図4に示す結紮装置10の基端部側端面においてz方向の中央部であってy方向に離隔した位置に開口する一対の糸ループ軸操作ワイヤ挿通穴108、110から導出される。一対の糸ループ軸操作ワイヤ挿通穴108、110から導出された糸ループ軸操作ワイヤ104の一対の端部が操作されることで、第1糸ループ軸92が回転させられるとともに、第2糸ループ軸94が第1糸ループ軸92と同じ角度だけ逆まわりに回転させられる。図15において、平面視において、第1糸ループ軸92の左まわり回転および第2糸ループ軸94の右まわり回転方向が、第2回転方向R2すなわちループ形成回転方向であり、それらとは反対の回転が第1回転方向R1すなわち非ループ形成回転方向である。
【0042】
第1糸ループ軸92の本体部96には、第3糸フック挿通穴84内を移動する結紮用糸フック34又は再配置用糸フック54を挿通させる棒案内溝112を挟んで対向する一対の縦壁114、116が、第1横手方向すなわちz方向に突設されている。棒案内溝112は、結紮用糸フック34又は再配置用糸フック54を案内するので、第3糸フック挿通穴84の一部として機能する。結紮用糸フック34の移動軌跡と再配置用糸フック54の移動軌跡とは、第5回転軸心C5および第6回転軸心C6と交差する位置において同軸である。一対の縦壁114、116は、第1糸ループ軸92の回転に伴って第3糸フック挿通穴84内を移動する結紮用糸フック34又は再配置用糸フック54の移動軌跡に重なる回転位置状態と、その移動規制から離間した回転位置状態とされる。
これにより、再配置用糸フック54の後退により棒案内溝112内に糸Tが配置され、第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94の回転によりそれらのまわりに形成された第1糸ループL1および第2糸ループL2内を、棒案内溝112内を通して結紮用糸フック34が前進することにより、結び目Mを形成するための糸Tの絡み合いが形成される。
【0043】
一対の縦壁114、116の頂部には、糸案内溝として機能する径方向糸溝118a、118bが、第5回転軸心C5まわりに棒案内溝112と交差する方向、好適には直交する方向に形成されている。径方向糸溝118a、118bの溝底は、棒案内溝112の溝底よりもz方向において所定の高さ値hだけ高くされている。高さ値hは、好適には、棒案内溝102の溝底から棒案内溝102内に位置する結紮用糸フック34の外筒部材であるノットプッシャ50の中心までの高さと同等に設定される。
【0044】
一対の縦壁114および116の径方向糸溝118により周方向に分割されたそれぞれ一対の縦壁部114aおよび114b、116aおよび116bのうち、第1糸ループ軸92の第1回転方向R1の先端に位置する一対の第1縦壁部114a、116aには、第1糸ループ軸92の第2回転方向R2に向かうほどz方向において棒案内溝112の溝底から離れる方向に向かう第1糸案内傾斜面120a、120bが、それぞれ形成されている。第1糸案内傾斜面120a、120bは、第1糸ループ軸92の第1回転方向R1の回転に伴って棒案内溝112内の糸Tを棒案内溝112の溝底から離れる方向へ移動させて径方向糸溝118内へ案内する。
【0045】
第1糸ループ軸92の第1回転方向R1の先端に位置する一対の第1縦壁部114a、116aには、径方向糸溝118の内壁面と第1縦壁部114a、116aの外周面との交線である稜線を含み、第5回転軸心C5方向すなわちz方向視において、直角よりもやや小さい鋭角を成している糸係合角部122a、122bが、それぞれ形成されている。上記稜線を通る第1縦壁部114a、116aの外周面の接線は、径方向糸溝118の長手方向に対して直交する線に対して、径方向糸溝118の幅寸法分ずれた位置の接線となって傾斜しているので、径方向糸溝118の内壁面との成す角が直角よりもやや小さい鋭角を成している。糸係合角部122a、122bは、第1糸ループ軸92の第2回転方向R2の回転に伴って径方向糸溝118a、118b内の糸Tを引っ掛けて第5回転軸心C5まわりの第1糸ループL1を形成する。
【0046】
一対の縦壁部114aおよび114b、116aおよび116bのうち、第1縦壁部114a、116aとは異なり、第2回転方向R2の先端に位置する一対の第2縦壁部114b、116bには、第1糸ループ軸92の第2回転方向R2に向かうほどz方向において棒案内溝112の溝底から離れるに向かう第2糸案内傾斜面124a、124bが、それぞれ、形成されている。第2糸案内傾斜面124a、124bは、第1糸ループ軸92の第1回転方向R1の回転にともなって糸Tを径方向糸溝118a、118b内から離れる方向へ移動させる。
【0047】
一対の縦壁114および116の外周面において、径方向糸溝118a、118bの溝底に対応する第5回転軸線C5方向の位置には、糸Tの位置を定めるための周方向に連なる周方向糸溝126a、126bがそれぞれ形成されている。周方向糸溝126a、126bは、第1糸ループL1を一対の縦壁114、116の外周面に安定して巻き付ける。
【0048】
径方向糸溝118の内壁面のうちの第1縦壁部114a、116a側の内壁面には、径方向糸溝118の溝底へ向かうほど非ループ形成回転方向である第1回転方向R1へ向かう糸移動傾斜面128a、128bが形成されている。これにより、第1糸ループ軸92が第2回転方向R2へ回転させられるとき、径方向糸溝118a、118b内の糸Tが径方向糸溝118の溝底側へ移動させられ、周方向糸溝126a、126bに向かって案内され、周方向糸溝126a、126b内に容易に嵌め入れられる。
【0049】
第2糸ループ軸94の本体部98にも、第1糸ループ軸92の本体部96と同様に構成された、棒案内溝130を挟む一対の縦壁132および134、径方向糸溝136a、136b、径方向糸溝136a、136bにより分割された縦壁部132a、132bおよび134a、134b、第1糸案内傾斜面138a、138b、糸係合角部140a、140b、第2糸案内傾斜面142a、142b、周方向糸溝144a、144b、及び糸移動傾斜面146a、146bが、設けられている。
【0050】
(結紮装置の結紮作動)
以上のように構成された結紮装置10の結紮作動の工程を、図16から図44を用いて以下に説明する。
【0051】
図16は、糸Tが再配置されている結紮装置10を用いて、その上顎部18を開き、それら下顎部12と上顎部18との間に被結紮体32を入れて把持させる被結紮体把持工程P1を示している。この状態の結紮装置10では、糸送り棒64は糸送り棒収容穴66内に収容されている。また、結紮用糸フック34が第2糸フック挿通穴80まで前進させられるとともに、再配置用糸フック54が第5糸フック挿通穴88に後退させられている。ボビン62から巻き出された糸Tは、掛止ピン67、糸送り棒64の糸係合部74、第1糸フック挿通穴38、第2糸フック挿通穴80、および第3糸フック挿通穴84を経て、第5糸フック挿通穴88内の再配置用糸フック54に把持されている。そして、前進させられた結紮用糸フック34のうちの糸ループ形成部90に対応する位置には、糸ループ形成部90により糸Tから形成された第1ループL1および第2ループL2が第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94に巻き掛けられている。図16から図23では、理解を容易にするために、第1ループL1および第2ループL2が第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94から外された状態を示している。
【0052】
次の図17に示すノットプッシャ前進工程P2では、図16の被結紮体把持工程P1の状態から、上顎部18を閉じた後、結紮用糸フック34が、ノットプッシャ50と共に、第1糸フック挿通穴38内の糸送り棒収容穴66の開口手前まで前進させられる。図17以後の図において、破線の矢印は、部品の移動方向および移動距離を示し、実線の矢印は、その部品の移動により生じる糸Tの移動方向を示している。
【0053】
次いで、図18に示す結紮用糸フック突出工程P3では、筒体46および糸フック把持部材48が、結紮用糸フック34のノットプッシャ50から第1糸フック挿通穴38の先端まで突き出される。
【0054】
次に、図19に示す糸送り棒突出工程P4では、糸送り棒64が第2顎部18に形成された糸送り棒挿通穴42から露出するまでz方向に上昇させられる。
これにより、糸送り棒64の糸係合部74に掛けられている糸Tが第2顎部18側に持ち上げられる。
【0055】
次の図20に示す糸把持工程P5では、結紮用糸フック34の筒体46に対して糸フック把持部材48を往復動させて引掛突起46aと糸フック把持部材48との間に糸Tを入れて糸Tを半把持した後、結紮用糸フック34が糸送り棒64から離隔するまで少し後退させられる。
【0056】
次いで、図21に示すノットプッシャ後退工程P6では、糸送り棒64が糸送り棒収容穴66内に下降されるとともに、結紮用糸フック34の先端がノットプッシャ50と共に、第3フック挿通穴84の先端側位置まで後退させられる。
【0057】
次に、図22に示す第1糸切断工程P7では、結紮用糸フック34の糸フック把持部材48により糸Tが完全把持された状態で結紮用糸フック34が少し後退させられ、次いで糸送り棒64を第2顎部18に形成された糸送り棒挿通穴42を通してz方向へ最も上方へ突き出される。これにより、結紮用糸フック34の後退により張力が付与された糸Tが第1カッタ36に接触して切断される。この結果、分離した糸Tのうち、被結紮体32に対して遠位側の糸T1が結紮用糸フック34に把持され、近位側の糸T2が再配置用糸フック54に把持されることになる。この状態では、被結紮体32の周囲が遠位側の糸T1と近位側の糸T2とにより巻き掛けられる。
【0058】
次の図23に示す糸差通し工程P8では、糸送り棒64が糸送り棒収容穴66内に収容された後、結紮用糸フック34の糸フック把持部材48により糸T1が半把持された状態で、結紮用糸フック34の糸フック把持部材48およびノットプッシャ50が結紮装置10の基端部すなわち第4糸フック挿通穴86まで後退させられる。これにより、糸T1が2つの第2糸ループL2および第1糸ループL1内に差し通される。
【0059】
次いで、図24の糸ループ外し工程P9では、結紮用糸フック34により糸T1が完全把持された状態で、一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94が第1回転方向R1すなわち非ループ形成回転方向へ回転させられ、第1糸ループ軸92の第2糸案内傾斜面124a、124b、および第2糸ループ軸94の第2糸案内傾斜面142a、142bの作用により、第1糸ループ軸92に巻きついた第1糸ループL1および第2糸ループ軸94に巻きついた第2糸ループL2が第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94から外される。この過程では、糸T1および糸T2が弛まないように、結紮用糸フック34が少し前進させられ、再配置用糸フック54が少し後退させられて、糸T1および糸T2に張力が与えられる。
【0060】
次に、図25に示す糸ループ移動工程P10では、再配置用糸フック54を少し後退させて糸T2に張力を与えつつ、結紮用糸フック34の糸フック把持部材48を第2カッタ82付近まで前進させるとともに、結紮用糸フック34のノットプッシャ50を被結紮体32付近まで前進させることにより、第1糸ループL1および第2糸ループL2が被結紮体32付近まで移動させられる。
【0061】
次の図26に示す結び目形成工程P11では、再配置用糸フック54を前進させ且つ結紮用糸フック34を後退させることで、2つの糸ループL1およびL2のうちのノットプッシャ50に近い側の糸ループL1が近位側の糸T2から遠位側の糸T1へ転換(移動)させられる。これにより、図27に示す糸ループ移動工程P10の結び目形成前の状態から、図28の男結びの結び目Mが形成される。なお、図27および図28では、被結紮体32の周囲に巻き掛けられた遠位側の糸T1と近位側の糸T2と絡み構想の理解を容易とするために、糸T1および糸T2の絡みが緩く示されている。
【0062】
次いで、図29に示す第2糸切断工程P12では、ノットプッシャ50が第2カッタ82よりも結紮装置10の後端側へ移動させられ、第2カッタ82が第4回転軸線C4まわりに当初の退避位置から切断位置まで操作されることで、結び目Mと結紮用糸フック34および再配置用糸フック54との間の2本の糸T1および糸T2が同時に切断される。
【0063】
次に、図30に示す糸回収工程P13では、第2カッタ82が切断位置から退避位置まで操作され、且つ結紮用糸フック34が結紮装置10の後端から引き抜かれることで、残糸が結紮用糸フック34から回収された後、ノットプッシャ50および結紮用糸フック34が第4糸フック挿通穴86へ差し入れられる。
【0064】
次の図31に示す被結紮体取出工程P14では、結紮装置10の第2顎部18が開閉操作されることにより、結び目Mが形成されることで糸Tによる結紮が完了した被結紮体32が取り出される。図31は、被結紮体32が取り出された後に第2顎部18が閉じられた状態を示している。
【0065】
(結紮装置の糸の再配置作動)
図32に示す再配置用糸フック前進工程P15では、図31の状態において、再配置用糸フック54が第5糸フック挿通穴88から差し入れられ、第1糸フック挿通穴38まで前進させられる。この状態では、再配置用糸フック54の筒体58が第1糸フック挿通穴38の先端に到達している。
【0066】
次に、図33に示す糸送り棒突出工程P16では、糸送り棒64が第2顎部18に形成された糸送り棒挿通穴42の開口付近まで上昇させられる。
【0067】
次の図34に示す糸把持工程P17では、再配置用糸フック54の筒体58内の糸フック把持部材60が前進させられ、糸Tが再配置用糸フック54の切欠56と糸フック把持部材60との間で把持された後、再配置用糸フック54が少し後退させられる。
【0068】
次いで、図35に示す棒案内溝糸配置工程P18では、糸送り棒64が下降させられて糸送り棒収容穴66内に収納され、再配置用糸フック54が一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94から構成される糸ループ形成部90よりも結紮装置10の基端側へ後退させられる。これにより、それまで再配置用糸フック54が通っていた糸ループ軸92の棒案内溝112および第2糸ループ軸94の棒案内溝130内に、糸Tが配置される。
【0069】
次に、図36に示す糸溝内糸配置工程P19では、一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94を第1回転方向R1にそれぞれ90度回転させることで、棒案内溝112および130内の糸Tを棒案内溝112および130に直交する方向の径方向糸溝118a、118bおよび136a、136b内へ配置する。糸Tがある程度の張力でx方向に張設されている状態で、第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94を第1回転方向R1にそれぞれ90度回転させると、第1糸案内傾斜面120a、120bおよび138a、138bの作用で、z(上)方向へ持ち上げられた後で径方向糸溝118a、118bおよび136a、136bが到来するとその径方向糸溝118a、118bおよび136a、136b内へ落ち込むので、糸Tは棒案内溝112および130内から径方向糸溝118a、118bおよび136a、136b内へ位置させられる。
【0070】
次の図37に示す糸ループ形成工程P20では、再配置用糸フック54が第5糸フック挿通穴88まで後退させられる。次いで、再配置用糸フック54が前進させられつつ、一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94を第1回転方向R1とは反対の第2回転方向R2にそれぞれ270度回転させられる。これにより、一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94に糸Tがそれぞれ巻き付けられ、2つの第1糸ループL1および第2を糸ループL2が形成される。
【0071】
次いで、図38に示す糸フック配置工程P21では、結紮用糸フック34のノットプッシャ50が、図39から図44に示すように、軸回りに回転させられつつ、一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94に巻き付けられた第1糸ループL1の糸および第2糸ループL2の糸をくぐらせながら前進させられる。
【0072】
図39は、ノットプッシャ50が結紮装置10の基端側に位置する第1糸ループL1のうちの基端側の周方向糸に接近した状態を示している。ノットプッシャ50が第1糸ループL1のうちの基端側の周方向糸に交差する状態では、ノットプッシャ50の傾斜端面50aが下向きとなるように軸まわりに回転させられ、図40に示すように、ノットプッシャ50が第1糸ループL1のうちの基端側に位置する周方向糸の上側を通過させられる。
【0073】
次いで、ノットプッシャ50は、その傾斜端面50aが上向きとなるように軸まわりに回転させられて前進させられ、図41に示すように、ノットプッシャ50が第1糸ループL1のうちの径方向糸の下側を通過させられる。
【0074】
次に、ノットプッシャ50は、その傾斜端面50aが下向きとなるように軸まわりに回転させられて前進させられ、ノットプッシャ50が、図42に示すように、第1糸ループL1のうちの結紮装置10の先端側の周方向糸および第2糸ループL2のうちの結紮装置10の基端側に位置する周方向糸の上側を通過させられる。
【0075】
次いで、ノットプッシャ50は、その傾斜端面50aが上向きとなるように軸まわりに回転させられて前進させられ、図43に示すように、ノットプッシャ50が第2糸ループL2のうちの径方向糸の下側を通過させられる。
【0076】
そして、ノットプッシャ50は、その傾斜端面50aが下向きとなるように軸まわりに回転させられて前進させられ、図44に示すように、ノットプッシャ50が第2糸ループL2のうちの結紮装置10の先端側に位置する周方向糸の上側を通過させられる。
【0077】
このように、図39から図44に示すように、軸回りに回転させられつつ、一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94に巻き付けられた第1糸ループL1の糸および第2糸ループL2の糸をくぐらせながら前進させられた結果、図16以下に示すように、糸Tが再配置される。
【0078】
上述のように、本実施例の結紮装置10は、柱状の本体14と、第1顎部12と、第2顎部18と、糸送り棒64と、糸引込部材の一例である結紮用糸フック34及び再配置用糸フック54とを備える。第1顎部12は、本体14の長手方向の一端に接続される。第2顎部18は、本体14の長手方向の一端に、第1顎部12との間に被結紮体32を保持する保持位置と第1顎部12から離間した離間位置との間で移動可能に接続される。糸送り棒64は、被結紮体32を結紮する糸Tに係合する糸係合部74を先端に有して第1顎部12内に収容される。糸送り棒64は、糸係合部74が第1顎部12内に位置する引込位置と、第2顎部18が保持位置にあるときに糸係合部74が第1顎部12から突出した突出位置との間で移動する。糸引込部材の一例である結紮用糸フック34及び再配置用糸フック54はそれぞれ、本体14に内装される。結紮用糸フック34は、糸係合部74に係合する糸Tを引っかける糸フック部の一例である切欠44を先端に有する。再配置用糸フック54は、糸係合部74に係合する糸Tを引っかける糸フック部の一例である切欠56を先端に有する。第2顎部は、第1糸フック挿通穴38と糸送り棒挿通穴42とを有する。第1糸フック挿通穴38は、長手方向に沿って設けられ、糸フック部が挿通される。糸送り棒挿通穴42は、第1顎部12から第2顎部18へ向う方向であって長手方向と交差する第1短手方向であるz方向に沿って設けられ、糸送り棒64が挿通される。第1糸フック挿通穴38と糸送り棒挿通穴42とは、少なくとも一部が交差している。糸フック部の一例である切欠44又は56が第1糸フック挿通穴38と糸送り棒挿通穴42との交差位置よりも第2顎部18の長手方向の先端側に位置し、且つ糸送り棒64が突出位置であるとき、糸送り棒64の糸係合部74は、第1短手方向であるz方向において第1糸フック挿通穴38よりも下流側すなわち第1顎部12から離れる側に位置し、且つ第2短手方向であるy方向において、第1糸フック挿通穴38と重なる位置に配置されている。
【0079】
本実施例の結紮装置10によれば、結紮用糸フック34の切欠44、又は再配置用糸フック54の切欠56が第1糸フック挿通穴38と糸送り棒挿通穴42との交差位置よりも第2顎部18の長手方向の先端側に位置し、且つ、糸送り棒64が突出位置であるとき、糸送り棒64の糸係合部74は、第1短手方向であるz方向において第1糸フック挿通穴38よりも第1顎部12から離間する側に位置し、且つ、第2短手方向すなわちy方向において、第1糸フック挿通穴38と重なる位置に配置される。これにより、糸フックによって糸を把持し、被結紮体32の外周に糸Tを直接巻き掛けることができる。
【0080】
本実施例の結紮装置10によれば、糸送り棒64は、第1短手方向であるz方向において糸係合部74よりも上流で、且つ第2短手方向であるy方向において糸係合部74と重なる位置に凹溝76を有する。糸送り棒64が突出位置であるとき、凹溝76は第1短手方向であるz方向において第1フック挿通穴38と重なる位置に配置される。これにより、糸送り棒64の糸係合部74が、結紮用糸フック(糸引込み部材)34の切欠(糸フック部)44と第2短手方向であるy方向において交差可能となる。
【0081】
本実施例の結紮装置10によれば、第1糸引込部材である結紮用糸フック34は、糸フック部を構成する切欠44が形成された筒体46と、筒体46内に摺動可能に差し入れられ、切欠44との間で糸Tを把持する糸フック把持部材48とを有する。同様に、第2糸引込部材である再配置用糸フック54(糸引込部材)は、糸フック部を構成する切欠56が形成された筒体58と、筒体58内に摺動可能に差し入れられ、切欠56との間で糸Tを把持する糸フック把持部材60とを有する。これにより、切欠44、56で引っかけた糸Tを把持することができる。
【0082】
本実施例の結紮装置10によれば、 筒体46に形成された切欠44は、筒体46の先端に向かうほどy方向の切込みが浅くされる。また、筒体46の先端から離れる側へ切欠44の開口からx方向に直線的に突き出す引掛突起46aが形成される。さらに、糸フック把持部材48の先端は、切欠44が浅い側ほど先端に向かう傾斜面48aを有している。これにより、切欠44で糸Tをより確実に把持するとができる。
【0083】
本実施例の結紮装置10によれば、糸フック把持部材48の先端の傾斜面48aに対向する筒体46の対向面である傾斜面46cは、傾斜面48aと平行な面である。これにより、筒体46の対向面である傾斜面46cと糸フック把持部材48の先端の傾斜面48aとが当接することで、糸フック把持部材48の筒体46に対する軸まわりの回転が抑制され、切欠44で糸Tを正確に把持することができる。
【0084】
本実施例の結紮装置10によれば、筒体46は、筒体46の切欠44から先端部分には、筒体46の内径よりも小さい厚みの偏平部46bを、備えている。これにより、糸フック把持部材と偏平部との間に把持された糸Tを、ノットプッシャ50内に引き込むことができる。
【0085】
本実施例の結紮装置10によれば、糸送り棒64の糸係合部74は、結紮装置10の長手方向であるx方向に沿って形成された溝である。これにより、糸Tが糸係合部74に掛かり易くなる。
【0086】
本実施例の結紮装置10によれば、第2顎部18には、糸Tを切断する第1カッタ36が固定されている。カッタ36は、長手方向において、糸送り棒挿通穴42と本体14との間に位置している。これにより、糸送り棒64を第1顎部材18から突き出すことにより、糸Tを切断することができる。
【0087】
本実施例の結紮装置10によれば、カッタ36は第2顎部18に固定されている。また、糸送り棒64は、第1突出位置から、糸送り棒64の糸係合部74が第1短手方向であるz方向において第1突出位置からさらに突き出した第2突出位置に移動可能である。第1突出位置は、第2顎部18が保持位置のときに、結紮用糸フック34に糸Tを把持させるために、糸送り棒挿通穴42から突き出した位置である。これにより、糸送り棒64を動かすだけで、カッタ36を動かすことなく、糸Tを切断することができる。
【0088】
本実施例の結紮装置10によれば、第1顎部12内には、糸Tが収納されたボビン(糸収納部)62が設けられている。これにより、ボビン62が第1顎部12内とは異なる位置にある場合と比較して、糸送り棒64との距離を短くすることができ、糸Tの無駄を少なくすることができる。
【0089】
本実施例の結紮装置10によれば、糸Tが収納されたボビン(糸収納部)62は、結紮装置10の長手方向において、糸送り棒64の糸係合部74と本体14との間に位置している。これにより、結紮装置10の長手方向の寸法を小さくし、小型化することができる。
【0090】
本実施例の結紮装置10によれば、糸収納部は、糸Tが巻回されたボビン62を含み、ボビン62の回転中心である第3回転軸線C3は、第2短手方向であるy方向に平行である。これにより、糸Tを結紮装置10の長手方向に沿ってネジレを押えて糸送り棒64まで供給できる。
【0091】
本実施例の結紮装置10によれば、本体14は、糸Tの糸ループを形成する一対の第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94を備える。一対の第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94は、結紮用糸フック34及び再配置用糸フック54(糸引込部材)の結紮装置10の長手方向すなわちx方向の移動を案内する棒案内溝112、130を有する。これにより、結紮用糸フック34及び再配置用糸フック54(糸引込部材)の後退により、棒案内溝112、130内に糸Tが配置され、第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94の回転により形成された第1糸ループL1及び第2糸ループL2に、棒案内溝112、130内を、結紮用糸フック34及び再配置用糸フック54(糸引込部材)の前進により糸Tの結び目Mを形成するための糸Tの絡み合いが得られる。
【0092】
本実施例の結紮装置10によれば、一対の第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94は、第1短手方向すなわちz方向に平行な第5回転軸線C5及び第6回転軸線C6まわりに回転可能に設けられ、相互に噛み合うギヤ100、102をそれぞれ備えて相互に逆まわりに回転させられる。これにより、第5回転軸線C5及び第6回転軸線C6まわりにそれぞれ形成された第1糸ループL1及び第2糸ループL2を利用して、糸Tの結び目Mが形成される。
【0093】
本実施例の結紮装置10によれば、一対の第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94は、径方向糸溝118a、118b及び135a、136bと、第1糸案内傾斜面120a、120b及び138a、138bと、糸係合角部122a、122b及び140a、140bとをそれぞれ有する。径方向糸溝118a、118b及び135a、136bは、棒案内溝112、130に対して直交する方向に沿った溝である。第1糸案内傾斜面120a、120b及び138a、138bは、棒案内溝112、130内において結紮用糸フック(糸引込部材)34により本体内14に引き込まれた糸Tを、第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94の非ループ形成回転R1方向の回転に伴って径方向糸溝118a、118b及び135a、136内へ移動させる傾斜面である。糸係合角部122a、122b及び140a、140bは、第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94の非ループ形成回転方向R1とは反対方向のループ形成回転方向R2の回転に伴って径方向糸溝118a、118b及び135a、136内の糸Tを引っかけて第5回転軸線C5及び第6回転軸線C6まわりの第1糸ループL1及び第2糸ループL2をそれぞれ形成する。これにより、第5回転軸線C5及び第6回転軸線C6まわりに形成された第1糸ループL1及び第2糸ループL2を利用して糸Tの結び目Mが形成される。
【0094】
本実施例の結紮装置10によれば、結紮用糸フック(糸引込部材)34は、筒体46が摺動可能に差し入れられ、筒体46を突出し可能に嵌め入れる筒状のノットプッシャ(外筒部材)50 を有し、ノットプッシャ50の先端には、傾斜端面50aが設けられている。これにより、結び目Mを固くすることができる。
【0095】
本実施例の結紮装置10によれば、結紮用糸フック(糸引込部材)34と並列な第1位置と、結紮用糸フック(糸引込部材)34と同軸上の第2位置との間で移動する再配置用傑作フック(第2糸引込部材)を、備える。これにより、結紮装置10を大型化することなく、糸Tの再配置を行なうことができる。
【0096】
本実施例の結紮装置10によれば、第1顎部12と第2顎部18とを本体14に連結する首振り部(連結部材)30をさらに備える。第2顎部18の基端部は、第1顎部12に対し、第2短手方向であるy方向に平行な第1ピン16を介して開閉可能に連結されている。首振り部(連結部材)30は、筒状の本体14の端部に対して第1短手方向であるz方向に平行な第2ピン28を介して回動可能に連結されている。これにより、第2顎部材18は第1顎部材12に対して開閉可能とされ、それら第2顎部18および第1顎部12は、筒状の本体14の端部に対して、首ふり可能に連結されているので、第2顎部材18および第1顎部材12の操作の自由度が高められる。
【0097】
また、本実施例の結紮装置10は、柱状の本体14と、本体14の長手方向の一端に接続され、被結紮体32を保持する保持部の一例である第1顎部12及び第2顎部18(保持部)と、糸引込部材の一例である再配置用糸フック54と、糸ループ形成部90と、を備える。再配置用糸フック54は、本体内14において、長手方向に沿って移動可能に設けられ、被結紮体32を結紮する糸Tを本体14内に引き込む。糸ループ形成部90は、再配置用糸フック54により本体14内に引き込まれた糸Tに2つの糸ループL1およびL2を形成する。また、糸ループ形成部90は、再配置用糸フック54の移動軌跡と交差する互いに平行な第5回転軸線C5および第6回転軸線C6まわりに相互に逆回転する一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94を有する。一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94は、それぞれ、本体部96および98と、一対の縦壁114、116及び132、134と、糸溝の一例である径方向糸溝118a、118bおよび136a、136bとを有する。本体部96および98は、前記移動軌跡から離間した位置に設けられ、第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94まわりに回転する。一対の縦壁114、116及び132、134は、本体部96および98から第5回転軸線C5および第6回転軸線C6と平行な方向に沿ってそれぞれ突設される。一対の縦壁114、116及び132、134は、それぞれ、本体部96および98の回転に伴って前記移動軌跡に重なる位置と再配置用糸フック54を挟んでその移動軌跡から離間した位置とに移動する。径方向糸溝118a、118bおよび136a、136bは、各一対の縦壁114、116及び132、134のそれぞれの頂部に形成され、再配置用糸フック54により引き込まれた糸Tと係合する。
【0098】
本実施例の結紮装置10によれば、第5回転軸線C5および第6回転軸線C6まわりに相互に逆回転する一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94は、それぞれ、一対の縦壁114、116及び132、134と、各一対の縦壁114、116及び132、134のそれぞれの頂部に形成され、再配置用糸フック54により引き込まれた糸Tと係合する径方向糸溝118a、118bおよび136a、136bとを、有する。このため、径方向糸溝118a、118bおよび136a、136b内に再配置用糸フック54により引き込まれた糸Tは、一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94が平行な第5回転軸線C5および第6回転軸線C6まわりに相互に逆回転すると、一対の縦壁114、116及び132、134の外周面にそれぞれ巻き掛けられて2つの糸ループL1およびL2が近位側の糸T2により形成される。この2つの糸ループL1およびL2内には、結紮用糸フック34が被結紮体32の遠位側に位置する糸T1を把持するために2つの糸ループL1およびL2内を通して遠位側へ前進移動し、結紮用糸フック34が被結紮体32の近位側へ後退移動することで、近位側の糸T2で形成された糸ループL1およびL2内に遠位側に位置する糸T1が通されて結び目Mが形成される。
【0099】
本実施例の結紮装置10によれば、糸引込部材は、第1糸引込棒の一例である結紮用糸フック34と、第2糸引込棒の一例である再配置用糸フック54とを有する。結紮用糸フック34は、被結紮体32に巻き掛けられた糸Tを本体14内に引き込む。再配置用糸フック54は、結紮体32に巻き掛けられる前の糸Tを本体14内に引き込む。結紮用糸フック34の移動軌跡と再配置用糸フック54の移動軌跡とは、一対の第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94のそれぞれの第5回転軸線C5及び第6回転軸線C6と交差する位置において同軸である。これにより、2つの結紮用糸フック(第1糸引込棒)34及び再配置用糸フック(第2糸引込棒)54の移動軌跡の一部を共通化することで、結紮装置10を小型化しつつ、糸ループ形成部90において糸Tの結び目Mの基礎を形成することができる。
【0100】
本実施例の結紮装置10によれば、一対の縦壁114、116及び132、134は、それぞれ、径方向糸溝118a、118b及び136a、136bにより周方向に分割された一対の縦壁部114aと114b、116aと116b、132aと132b、134aと134bをそれぞれ有する。一対の縦壁部114aと114b、116aと116b、132aと132b、134aと134bの一方の第1縦壁部114a、116a、132a、134aには、一対の第i糸ループ軸92及び第2糸ループ軸92の非ループ形成回転R1方向の第1回転に伴って糸Tを径方向糸溝118a、118b及び136a、136bへ案内する第1糸案内傾斜面120a、120b及び138a、138bが、それぞれ形成されている。これにより、第1回転R1時において、男結びの前提となる2つの第1糸ループL1及び第2糸ループL2を形成することができる。
【0101】
本実施例の結紮装置10によれば、一対の縦壁部114aと114b、116aと116b、132aと132b、134aと134bの他方の第2縦壁部114b、116b、132b、134bには、一対の第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94の非ループ形成回転R1方向の第1回転に伴って糸Tを径方向糸溝内から離れる方向へ移動させる第2糸案内傾斜面124a、124bが、それぞれ、形成されている。これにより、結紮用糸フック34により2つの第1糸ループL1及び第2糸ループL2内を糸Tが通された後の第1回転において、第1糸ループL1及び第2糸ループL2が第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94から容易に外される。
【0102】
本実施例の結紮装置10によれば、一対の縦壁114、116及び132、134の外周面において、径方向糸溝118a、118b及び136a、136bの溝底と第5回転軸線C5及び第6回転軸線C6の方向で同じ位置には、周方向に連なる周方向糸溝126a、126b及び144a、144bがそれぞれ形成されている。これにより、一対の縦壁114、116及び132、134の外周面に巻き付けられる糸Tが周方向糸溝1216a、126b及び144a、144bにより第5回転軸線C5及び第6回転軸線C6の方向で位置決めされる。
【0103】
本実施例の結紮装置10によれば、径方向糸溝118a、118b及び136a及び136bの内壁面のうち第1縦壁部114a、116a、132a、134a側の内壁面には、径方向糸溝118a、118b及び136a、136bの溝底へ向かうほど第1回転方向へ向かう糸移動傾斜面128a、128b及び146a、146bが、それぞれ形成されている。これにより、一対の第1糸ループ軸92及び第2糸ループ軸94がのループ形成回転R2方向の第2回転させられるとき、径方向糸溝118a、118b及び136a、136b内の糸Tが自動的に周方向糸溝126a:126b及び144a、144bに位置決められる。
【0104】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0105】

前述の実施例の糸Tには、結紮可能な可塑性の線材が用いられる。糸Tは、好適には、植物性或いは動物性の天然繊維から撚られた天然糸、合成繊維の単線或いは撚り線から成る合成樹脂糸、金属製の単線或いは撚り線から成る金属糸、天然繊維および合成繊維から成る複合糸などから構成される。
【0106】
また、前述の実施例の結紮装置10は、断面が円形の円柱状であったが、断面が四角形や六角形等の多角形である角柱状を成していてもよい。
【0107】
また、前述の実施例の結紮装置10では、2本の結紮用糸フックおよび再配置用糸フックが用いられていたが、それらの機能を備える1本の糸引込部材(糸フック)が用いられていてもよい。
【0108】
また、前述の実施例の結紮装置10では、糸状部材Tにおいて、結紮のための2つのループL1及びL2が形成されていたが、3つ以上のループが形成されて結紮されるようにしてもよい。すなわち、前述の実施例の結紮装置10の糸ループ形成部90は、2本の第1糸ループ軸92および第2糸ループ軸94を備えたものであったが、3本以上の複数の糸ループ軸を備えるものであってもよい。
【0109】
また、前述の実施例の結紮装置10では、ループL1及びL2の形成のために図15に示すように、第1糸ループ軸92は左回りの第2回転方向R2に回転し、第2糸ループ形成軸94は右回りの第2回転方向R2に回転していたが、それとは反対まわりであってもよい。要するに、一対の第1糸ループ軸92および第2糸ループ形成軸94は、相互に反対まわりであればよい。
【0110】
また、前述の実施例の結紮装置10においては、回転軸線C2まわりに回動する首振り部30が本体14に設けられていたが、首振り部30は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0111】
また、前述の実施例の結紮装置10において、第2顎部18を開閉操作する開閉操作ワイヤ23、首振り部30を回動操作する首振り操作ワイヤ33、第2カッタ82を回動操作する第2カッタ操作ワイヤ78a、78b、糸送り棒64を引込位置と突出位置との間で移動させる糸送り棒操作ワイヤ68、第1糸ループ軸62を回転操作させる糸ループ軸操作ワイヤ104は、オペレータによる直接的な手動操作であってもよいし、電気的に駆動制御するアクチュエータを用いた遠隔操作であってもよい。
【0112】
また、前述の実施例では、第1顎部12は本体14から長手方向に突き出す状態で首振り部30を介して設けられ、第2顎部18が第1顎部12に対して開閉可能となるように首振り部30に回動可能に設けられていたが、反対に、第2顎部18が本体14から長手方向に突き出す状態で設けられ、第1顎部12が、首振り部30に回動可能に設けられていてもよい。また、第1顎部12および第2顎部18が、首振り部30にそれぞれ回動可能に設けられてもよい。
【0113】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0114】
10:結紮装置
12:第1顎部
14:本体
18:第2顎部
34:結紮用糸フック(糸引込部材)
38:第1糸フック挿通穴(フック挿通穴)
42:糸送り棒挿通穴
44:切欠(糸フック部)
56:切欠(糸フック部)
54:再配置用糸フック(引込部材、第2糸引込部材)
64:糸送り棒
74:糸係合部
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