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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052404
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】OCT装置およびOCTシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159097
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】藤生 賢士朗
(72)【発明者】
【氏名】近藤 萌恵
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚平
(72)【発明者】
【氏名】加納 徹哉
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA09
4C316AA26
4C316AB03
4C316AB11
4C316AB12
4C316AB16
4C316FB11
4C316FB13
4C316FB16
(57)【要約】
【課題】 眼軸長データの測定結果をユーザーが適切に利用しやすいOCT装置およびOCTシステムを提供すること。
【解決手段】OCT装置は、被検眼のOCTデータを測定光と参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて取得するためのOCT光学系と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記OCT光学系を介して被検眼のOCTデータを撮影する撮影処理と、前記OCT光学系を介して被検眼の眼軸長データを測定する測定処理と、被検眼のOCTデータの撮影結果を保存するトリガとなる保存操作を受け付け、前記保存操作に基づいて撮影結果の保存を実行する保存処理と、前記測定処理に基づく被検眼の眼軸長データを被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存するか否かを検者に確認または選択するための確認・選択操作を、撮影結果を保存するトリガとなる保存操作とは別に要求する要求処理と、を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼のOCTデータを測定光と参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて取得するためのOCT光学系と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記OCT光学系を介して被検眼のOCTデータを撮影する撮影処理と、
前記OCT光学系を介して被検眼の眼軸長データを測定する測定処理と、
被検眼のOCTデータの撮影結果を保存するトリガとなる保存操作を受け付け、前記保存操作に基づいて撮影結果の保存を実行する保存処理と、
前記測定処理に基づく被検眼の眼軸長データを被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存するか否かを検者に確認または選択するための確認・選択操作を、撮影結果を保存するトリガとなる保存操作とは別に要求する要求処理と、を実行するOCT装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記要求処理において、前記測定処理が行われる前にあらかじめ被検眼の眼軸長データが取得されている場合には、前記確認・選択操作を要求する、
または、
前記測定処理によって測定される眼軸長データの保存を制限する、OCT装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記保存操作を受け付けるための受け付けるためのUI要素である保存操作部が前記撮影結果と共に表示される画面である確認画面上に、前記測定結果を表示させ、
前記要求処理では、前記確認画面上に前記撮影結果と共に前記測定結果が表示可能となった以降のタイミングで、確認・選択操作を要求する、請求項1又は2記載のOCT装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記確認画面上において表示される前記測定結果に対して修正操作を受け付け可能であり、前記修正操作を受け付けた場合は、修正操作に基づいて修正された修正眼軸長データを被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存する、請求項3記載のOCT装置。
【請求項5】
前記制御手段は、被検眼の眼軸長データの測定条件を示す測定条件情報を取得し、
前記確認画面において前記測定条件情報を表示する、請求項3又は4記載のOCT装置。
【請求項6】
前記OCT光学系は、測定光および参照光の光路長差を調整する光路長差調整部を有し、
前記測定処理では、被検眼の眼底を撮影するために調整された前記光路長差に基づいて前記眼軸長データを測定し、
前記要求処理では、前記測定条件を示す測定条件情報として、眼底の測定基準となる深さ位置を示すグラフィックを、OCTデータに対応付けて表示する、請求項5記載のOCT装置。
【請求項7】
前記制御手段は、被検眼の眼軸長データの測定条件を示す測定条件情報を取得し、
前記測定条件情報に応じて、測定結果として取得される眼軸長データの保存を推奨するか否かを表示する請求項1から6のいずれかに記載のOCT装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のOCT装置を含むOCTシステムであって、
被検眼のOCTデータの撮影結果に対する解析処理を、前記撮影結果と共に保存された被検眼の眼軸長データに基づいて実行し、被検眼の眼軸長データに基づく解析結果を出力する解析装置を、更に有するOCTシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、OCT装置およびOCTシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野では、被検眼の組織の断層画像を撮影する装置である、OCT装置(Optical Coherence Tomography:光干渉断層計)が利用されている。
【0003】
OCT装置の付加的な機能として、眼軸長測定機能が提案されている。例えば、特許文献1には、眼軸長を簡易的に測定する手法の1つとして、被検眼と装置とが一定のワーキングディスタンスに保たれた状態でOCT光学系の光路長調整を実施し、調整後の光路長調整用の光学部材の位置と、基準位置(例えば、眼軸長が既知の模型眼に対する光学部材の位置)と、の差に基づいて眼軸長を求める手法が開示されている。
【0004】
また、眼底の層厚をOCT装置によって撮影されたOCTデータに基づいて解析するうえで、複数の眼に関する眼底の層厚情報が記憶されたデータベースが利用されている。特許文献2には、母集団となる複数の眼の眼軸長が互いに異なる複数のデータベースを、被検眼の眼軸長に応じて使い分ける装置が開示されている。特許文献2には、眼軸長が閾値以下の被検眼のためのデータベースと、眼軸長が閾値を超える被検眼のための長眼軸長眼用のデータベースと、が、被検眼の眼軸長に応じて使い分けられて解析処理が行われる。
【0005】
また、眼軸長は、OCT装置によって撮影されたOCTデータにおけるスキャン長を補正するためにも利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-36717号公報
【特許文献2】特開2015-84865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
眼底のOCTデータを撮影可能なOCT装置において眼軸長測定が行われる場合は、被検眼に対する眼軸長の測定は当該被検眼に対するOCTデータの撮影と共に行われるケースが多いと考えられる。眼軸長測定の成否は、OCTデータの撮影の成否とは必ずしも連動していない。このため、例えば、解析処理や補正に利用される1つのパラメータとして眼軸長が利用される程度であれば、眼軸長測定の成否に対して検者の注意が行き届きにくくなってしまい、眼軸長の測定結果が適切に利用されなくなってしまうおそれが考えられる。
【0008】
これに対し、本開示は従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、眼軸長データの測定結果をユーザーが適切に利用しやすいOCT装置およびOCTシステムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1態様に係るOCT装置は、被検眼のOCTデータを測定光と参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて取得するためのOCT光学系と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記OCT光学系を介して被検眼のOCTデータを撮影する撮影処理と、前記OCT光学系を介して被検眼の眼軸長データを測定する測定処理と、被検眼のOCTデータの撮影結果を保存するトリガとなる保存操作を受け付け、前記保存操作に基づいて撮影結果の保存を実行する保存処理と、前記測定処理に基づく被検眼の眼軸長データを被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存するか否かを検者に確認または選択するための確認・選択操作を、撮影結果を保存するトリガとなる保存操作とは別に要求する要求処理と、を実行する。
【0010】
本開示の第2態様に係るOCTシステムは、第1態様に係るOCT装置を含むOCTシステムであって、被検眼のOCTデータの撮影結果に対する解析処理を、前記撮影結果と共に保存された被検眼の眼軸長データに基づいて実行し、被検眼の眼軸長データに基づく解析結果を出力する解析装置を、更に有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、眼軸長データの測定結果をユーザーが適切に利用しやすいOCT装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例におけるOCT装置の装置構成を示す図である。
図2】実施例の画面構成を示した図であって、撮影が開始される前の画面を示している。
図3】実施例の画面構成を示した図であって、撮影中の画面を示している。
図4】実施例の画面構成を示した図であって、撮影結果の確認画面を示している。
図5】第2実施例に係るOCTシステムを示す図である
図6】第2実施例の画面構成を示した図であって、眼軸長データの測定が行われる場合における撮影結果の確認画面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「概要」
本開示の実施形態に係るOCT装置およびOCTシステムについて説明する。
【0014】
<OCT装置>
本実施形態のOCT装置は、被検眼のOCTデータの撮影、および、眼軸長データの測定を行い、更に、撮影結果および測定結果を保存できる。眼軸長データは、測定された眼軸長を数値として示すデータであってもよいし、後述する閾値と測定値との単なる大小関係を示すデータであってもよい。
【0015】
本実施形態のOCT装置は、OCT光学系と、制御部(制御手段)と、を主に備える。OCT装置は、追加的に、ユーザーインターフェースを有していても良い。ユーザーインターフェースとして、例えば、モニタ、および、操作デバイス(ポインティングデバイス、キーボード、および、タッチパネル)等が挙げられる。
【0016】
OCT光学系は、被検眼のOCTデータを測定光と参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて取得するために利用される。本実施形態において、OCT光学系を介して、少なくとも眼底のOCTデータが被検眼のOCTデータとして取得可能であってもよい。追加的に前眼部のOCTデータが被検眼のOCTデータとして取得可能であっても良い。OCT光学系は、例えば、SD-OCTであってもよいし、SS-OCTであってもよいし、その他の撮影原理によるOCTであってもよい。
【0017】
制御部は、OCT装置の各部の制御を司り、各種の処理を実行する。本実施形態において、制御部は、撮影処理と、測定処理と、保存処理と、要求処理と、を少なくとも実行する。
【0018】
撮影処理が実行されることによって、OCT光学系を介して被検眼のOCTデータが撮影される。OCTデータは、例えば、Bスキャンデータであってもいし、ボリュームデータであってもよい。また、OCTデータは、モーションコントラストデータであってもよい。
【0019】
測定処理では、OCT光学系を介して被検眼の眼軸長データを測定する測定処理が実行される。眼軸長データの測定手法として、種々の手法を適用可能である。例えば、OCT光学系の光路長調整に基づいて、被検眼の眼軸長データが測定されてもよい。被検眼に対して装置(OCT光学系)が一定のワーキングディスタンスに保たれた状態でOCT光学系の光路長調整を実施し、調整後の光路長調整用の光学部材の位置に基づいて、眼軸長データが測定可能である。この場合、眼底のOCTデータが取得されるように測定光と参照光との光路長差が調整される。OCT光学系は、光路長調整部を有していてもよい。光路長調整部は、測定光および参照光の少なくともいずれかの光路長を変更する。光路長調整部は、測定光および参照光の少なくともいずれかの光路上に、測定光と参照光との光路長差を変更するために駆動される光学部材を有していてもよい。また、例えば、前眼部のOCTデータと、眼底のOCTデータとを、ワーキングディスタンスおよび光路長差の少なくともいずれかを互いに異ならせた状態で取得可能な装置の場合、前眼部のOCTデータと、眼底のOCTデータと、それぞれを取得したときのワーキングディスタンスおよび光路長差の少なくともいずれか、に基づいて被検眼の眼軸長データが測定されてもよい。
【0020】
保存処理では、被検眼のOCTデータの撮影結果を保存するトリガとなる保存操作が受け付けられ、保存操作に基づいて撮影結果の保存が実行される。OCTデータは、OCT装置に内蔵された、又は、OCT装置と接続されたストレージにおいて保存される。要求処理では、確認・選択操作が、撮影結果を保存するトリガとなる保存操作とは別に要求される。確認・選択操作は、測定処理に基づく被検眼の眼軸長データを、被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存するか否かについて、検者に確認または選択するための操作である。制御部は、確認・選択操作の入力に基づいて、測定処理に基づく被検眼の眼軸長データを、被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存するか否かを制御してもよい。眼軸長データは、例えば、撮影結果であるOCTデータの解析処理に利用するために、共に保存される撮影結果(OCTデータ)と対応付けられた状態で保存されても良い。本実施形態では、確認・選択操作が、保存操作とは別に要求されるので、眼軸長データ測定の成否に対して検者の注意が行き届きやすくなる。結果、眼軸長データの測定結果を検者が適切に利用しやすくなる。
【0021】
要求処理では、確認画面上に撮影結果と共に測定結果が表示可能となった以降のタイミングで、確認・選択操作が要求されてもよい。確認画面は、保存操作を受け付けるための受け付けるためのUI要素である保存操作部が、撮影結果(OCTデータ)と共に表示される画面である。確認画面には、撮影結果および保存操作部の他に、眼軸長データの測定結果が表示される。確認・選択操作を受け付けるためのUI要素である確認・選択操作部が、保存操作部とは別に表示されてもよい。保存操作の入力タイミングに対して、確認・選択操作の入力タイミングは、前後いずれにも設定され得る。例えば、確認・選択操作部は、確認画面上に配置されるUI要素の1つであって保存操作部の操作前のタイミングで操作されることを想定したUI要素であってもよいし、保存操作部が操作された段階で出現するUI要素であってもよい。確認・選択操作が要求されるタイミングが、確認画面上に撮影結果と共に測定結果が表示可能となった以降であることで、眼軸長データ測定の成否に対して、より確実に、検者の注意を促すことができる。
【0022】
但し、必ずしもこれに限定されるものではなく、確認・選択操作は、撮影前の段階で要求されてもよい。例えば、あらかじめ、測定処理に基づく被検眼の眼軸長データを、被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存するか否かを、選択可能であってもよい。
【0023】
また、例えば、確認・選択操作は、眼軸長データが測定される度に常に要求される必要は無い。例えば、被検眼に対して過去に測定された眼軸長データがあらかじめ保存されている場合には、OCTデータの撮影に際して測定処理が行われないように自動的に設定されてもよい、または、眼軸長データの測定動作が実行されても、眼軸長データが保存されないように制限してもよい。成人の多くは眼軸長の変化は生じないので、眼軸長データがあらかじめ保存されている場合には、あらかじめ保存されている眼軸長データが経過観察(例えば、フォローアップ解析)に利用されても良い。但し、本開示は、必ずしもこれに限定されるものではなく、被検眼に対して過去に測定された眼軸長データがあらかじめ保存されていても、改めて眼軸長データが測定されてもよい。この場合、今回の測定による眼軸長の変化が許容範囲に対して大きい場合に、確認・選択操作が要求されてもよい。また、眼軸長が所定の閾値以下の場合と閾値を超える場合と、の間で、OCTデータに対する解析処理が眼軸長データに応じて使い分けられている場合であれば、測定された眼軸長が閾値近傍の所定範囲の値である場合に、確認・選択操作が要求されてもよい。
【0024】
また、制御部は、確認画面上において表示される測定結果に対して修正操作を受け付け可能であってもよい。修正操作を受け付けた場合、制御部は、修正操作に基づいて修正された修正眼軸長データを被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存してもよい。これにより、検者の必要に応じて、わざわざ再測定することなく眼軸長データを修正できる。
【0025】
また、要求処理では、確認画面において被検画の眼軸長データの測定条件を示す測定条件情報が表示されてもよい。測定条件情報には、例えば、測定時のアライメント状態を示す情報が含まれていてもよいし、被検眼における測定位置を示す情報が含まれていてもよいし、固視の良否を示す情報が含まれていても良いし、測定の信頼度を示す情報が含まれていてもよい。測定条件情報を参考にして、確認・選択操作の入力要求に対し、適切に応答することができる。また再測定、および、前述の修正操作等が必要か否かを、検者が適切に判断しやすくなる。
【0026】
一例として、OCT光学系の光路長調整に基づいて、被検眼の眼軸長データが測定される場合には、確認画面に表示される測定条件情報として、眼底の測定基準となる深さ位置を示すグラフィックが、OCTデータと対応付けて表示されてもよい。例えば、断層画像が表示されると共に、眼底の測定基準となる深さ位置を示すグラフィックが断層画像上に重畳表示されてもよい。断層画像上に重畳されたグラフィックに基づいて、眼底の測定基準となる深さ位置が所期する位置に設定されているか否かを検者が把握しやすい。つまり、眼軸長データ測定の成否を検者が把握しやすい。また、別の態様では、断層画像ではなく、OCTデータに基づくグラフが利用されてもよい。OCTデータに基づくグラフは、例えば、横軸を深さ距離とし、縦軸を信号強度とするものであってもよい。このようなグラフ上に、測定基準となる深さ位置がグラフィカルに表示されてもよい。
【0027】
測定条件情報は、確認画面だけではなく、測定のトリガが入力される前後においても表示されていてもよい。これにより、手動で測定のトリガが入力される場合に、適切なタイミングで測定を開始できるようになる。また制御部は、測定条件情報に応じて、測定結果として取得される眼軸長データの保存を推奨するか否かを表示してもよい。
【0028】
<OCTシステム>
実施形態に係るOCTシステムは、上述のOCT装置と、解析装置と、を含む。解析装置は、OCT装置とは別体であってOCT装置とネットワーク等を介して接続されていてもよいし、OCT装置と一体化されていてもよい。解析装置は、被検眼のOCTデータの撮影結果に対する解析処理を、撮影結果と共に保存された被検眼の眼軸長データに基づいて実行し、被検眼の眼軸長データに基づく解析結果を出力する。解析処理では、例えば、眼底の層厚解析が行われてもよい。この場合において、複数の眼に関する眼底の層厚情報が記憶されたデータベースであって、データベースの母集団となる複数の眼の眼軸長データが互いに異なる複数のデータベースを利用して、解析処理が行われてもよい。各データベースは、被検眼の眼軸長データに応じて使い分けられてもよい。例えば、第1の眼軸長と対応する被検眼のためのデータベースに基づく解析処理と、第2の眼軸長と対応する被検眼のためのデータベースに基づく解析処理と、が解析装置によって実行されてもよい。また、被検眼の眼底のOCTデータの表示倍率、および、解析範囲のサイズを補正するために眼軸長データが利用されてもよい。また、いわゆる病的近視に例示される眼軸長の伸長が問題となる疾患の進行管理において、眼軸長の経過観察が有用である。
【0029】
ところで、前述したように、OCT装置によって表示される確認画面上には、眼軸長データの測定結果が表示されてもよい。解析装置による解析処理において利用されるデータベースが被検眼の眼軸長データ毎に複数用意されている場合には、測定結果の少なくとも一部として、解析処理において選択的に利用される複数のデータベースのうち測定された眼軸長データに対応するものを示す情報が表示されてもよい。
【0030】
<変容形態>
また、変容形態に係るOCT装置は、測定処理において、被検眼に依存するOCTスキャン長補正パラメータを測定し、要求処理において、測定処理に基づく被検眼に依存するOCTスキャン長補正パラメータを被検眼のOCTデータの撮影結果と共に保存するか否かを検者に確認または選択するための確認・選択操作を、撮影結果を保存するトリガとなる保存操作とは別に要求する点において、上記実施形態と相違し、他の構成は上記実施形態より援用され得る。
【0031】
ここで、OCTスキャン長補正パラメータは、OCT光学系によって撮影されるOCTデータの解析結果の補正に利用されるパラメータであってもよい。前眼部の形状情報、角膜曲率、視度補正値、IOLの有無、等が例示される。
【0032】
「第1実施例」
図面を参照して、本開示の一実施例を示す。第1実施例に係るOCT装置1は、被検眼のOCTデータを取得する。説明の便宜上、本実施例では、特に断りが無い限り、OCT装置1は、眼底のOCTデータを撮影するものとする。
【0033】
最初に、図1を参照しつつ、OCT装置1の構成を説明する。図1は、眼底のOCTデータを撮影可能な状態における装置構成を示している。実施例の説明においては、被検眼Eの軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。
【0034】
図1,2に示すように、実施例に係るOCT装置1は、撮影ユニット2、駆動部5、顔支持ユニット7、および、制御部70を、有している。
【0035】
<撮影ユニット>
撮影ユニット2は、OCT装置1における主要な光学系を有する。本実施例において、撮影ユニット2は、OCT光学系(干渉光学系)10と、導光光学系10aと、眼底観察光学系(SLO光学系)30と、前眼部観察光学系40(前眼部観察光学系)と、を有する。OCT光学系10、眼底観察光学系30、前眼部観察光学系40、の光路は、ビームスプリッタ/コンバイナ16,17によって分岐/結合される。
【0036】
<OCT光学系>
OCT光学系10は、被検眼Eの眼底に照射される測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を検出する。OCT光学系10は、例えば、SD-OCTであってもよいし、SS-OCTであってもよいし、その他の撮影原理によるOCTであってもよい。
【0037】
OCT光学系10は、OCT光源11、光分割器12、参照光学系20、および、検出器25を少なくとも有する。なお、本実施例における参照光学系20は、反射型の光学系であるものとして説明するが、透過型の光学系であってもよい。
【0038】
OCT光源11は、低コヒーレント光を発する。OCT光源11から出射された光は、光分割器12によって、測定光と参照光とに分割される。本実施例において、光分割器12は、カップラ(スプリッタ)が利用される。測定光は、導光光学系10aを介して被検眼Eへ導かれ、参照光は、参照光学系20へ導かれる。図1において、ポラライザ13は、参照光路上に配置されている。参照光は、参照光路上に配置された図示なきミラーによって折り返され、光分割器12によって、測定光の戻り光と合波された状態で、検出器25へ入射する。これにより、戻り光と、参照光とのスペクトル干渉信号が検出される。例えば、SD-OCTにおいては、スペクトロメータが検出器25として利用される。
【0039】
本実施例において、参照光学系20配置される図示なきミラーは、光軸に沿って移動可能であって、ミラーの位置に応じて測定光と参照光との光路長差が調整される。また、ポラライザ13によって、測定光と参照光との偏光が調整される。
【0040】
その他、光分割器12と被検眼Eとの間の光路上には、フォーカシングレンズ14、走査部(光スキャナ)15、および、対物レンズ60、が配置されている。フォーカシングレンズ14、走査部(光スキャナ)15、および、対物レンズ60、を含む、光分割器12と被検眼Eとの間の光学系によって、本実施例における導光光学系10aが形成されている。
【0041】
本実施例では、フォーカシングレンズ14が光軸方向へ変位されることによって、OCT光学系10におけるフォーカス位置が変更される。
【0042】
走査部15は、OCT画像の取得位置を変更するために利用される。走査部15は、測定光を、被検眼Eの眼底において二次元的に走査させるために利用されてもよい。走査部15は、例えば、走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを含んでいてもよい。各々の光スキャナは、ガルバノミラーであってもよいし、その他の光スキャナであってもよい。
【0043】
対物レンズ60は、測定光を被検眼における眼底へ導く。対物レンズ60を介して走査部15と共役な位置を旋回点として、測定光は旋回される。図1に示すように、旋回点に被検眼の前眼部が位置する場合、測定光は虹彩でケラレることなく眼底に到達し、走査部15の駆動に基づいて眼底上で測定光が走査される。この場合、測定光の集光面は眼底上に形成される。
【0044】
<眼底観察光学系>
眼底観察光学系30は、観察画像として、眼底の正面画像を取得するために利用される。眼底観察光学系30を介して、眼底の正面画像が、観察画像として取得される。
【0045】
図1では、眼底観察光学系30の一例として、SLO光学系が示されている。眼底観察光学系30は、照射光学系と、受光光学系と、を少なくとも有していてもよい。照射光学系は、被検眼の撮影部位に対して観察光を照射する。受光光学系は、観察光による眼底反射光を受光素子39によって受光する。受光素子30からの出力信号に基づいて観察画像が逐次取得される。
【0046】
眼底観察光学系30は、更に、フォーカス調整部を有する。フォーカス調整部は、フォーカシングレンズ34を含む。
【0047】
観察光源31には、例えば、レーザダイオード光源が用いられる。観察光路には、フォーカシングレンズ34の他に、走査部35、および、対物レンズ60が配置されている。走査部35は、被検眼の撮影部位において二次元的に光を走査する。走査部35は、例えば、ポリゴンミラーと、ガルバノスキャナとの組み合わせを含んでいてもよい。
【0048】
また、観察光源31とフォーカシングレンズ34との間には、ビームスプリッタ33が配置されている。そして、ビームスプリッタ33の透過方向には、共焦点開口37と、受光素子39と、が配置されている。
【0049】
観察光は、ビームスプリッタ33によって反射された後、フォーカシングレンズ34を介して、走査部35に達する。走査部35を経た光は、ビームスプリッタ17を透過した後、対物レンズ60を介して、被検眼の眼底に照射される。
【0050】
眼底からの反射光は、投光経路を遡って、ビームスプリッタ33まで導かれる。眼底からの反射光は、ビームスプリッタ33を透過し、更に、共焦点開口37を介して、受光素子39によって受光される。受光素子39からの受光信号に基づいて、眼底の正面画像が形成される。形成された正面画像は、メモリ72に記憶されてもよい。
【0051】
<前眼部観察光学系>
前眼部観察光学系40は、被検眼Eの前眼部の正面画像(観察画像という)を観察するために利用される。前眼部観察光学系40は、少なくとも撮像素子45を有する。本実施例では、撮像素子45に前眼部の像が結像する。前眼部観察光学系40を介して取得される前眼部の観察画像は、眼底撮影時における被検眼Eする撮影ユニット2のアライメントおよび追従制御(トラッキング)に利用される。
【0052】
<固視投影光学系>
OCT装置1は、固視標投影光学系を更に有する。固視標投影光学系は、内部固視灯であってもよい。固視標投影光学系は、被検眼Eに対して固視標(固視光束)を投影することによって、被検眼Eの視線方向を誘導する。本実施例において、固視標投影光学系は、固視標の呈示位置を2次元的に変更でき、被検眼Eを複数の方向に誘導できる。結果的に撮像部位が変更される。本実施例において、固視投影光学系は、SLO光学系である眼底観察光学系30によって兼用される。観察光源とは異なる可視光源を設け、可視光の投影タイミングを制御することによって、被検眼Eに対して固視標が投影される。
【0053】
<駆動部>
駆動部5は、撮影ユニット3を、被検眼Eに対してXYZの各方向に移動させる。駆動部5は、各方向に撮影ユニット2を移動させるためのアクチュエータを有しており、制御部70からの制御信号に基づいて駆動される。
【0054】
<顔支持ユニット>
顔支持ユニット7は、撮影ユニット2に対して被検眼Eが向き合うように、被検者の顔を支持する。顔支持ユニット7は、例えば、顎台7aを備えてもよい。顎台7aには、被検者の顔が載置される。本実施例において、顔支持ユニット7は、顎台7aの位置を上下方向に移動させるアクチュエータを有する。また、顎台7aには、被検者の顔が載置されたことを検出するセンサを有していてもよい。
【0055】
<制御系>
次に、OCT装置1の制御系について説明する。
【0056】
OCT装置1の制御部70は、OCT装置1における各種動作を司る。また、本実施例では、制御部70によって、各種の画像処理が行われる。つまり、制御部70によって、画像処理器が兼用される。制御部70は、例えば、CPU、RAM、および、ROM等によって構成されてもよい。
【0057】
また、本実施例において、制御部70は、モニタ80に接続されており、モニタ80の表示制御を行う。更に、制御部70は、メモリ72、操作部85、等と接続されている。
【0058】
操作部85として、本実施例では、マウス等のポインティングデバイスを有していてもよい。また、モニタ80が、タッチパネルディスプレイであってもよく 、この場合は、モニタ80が操作部85を兼用するい。モニタ80および操作部85は、ネットワーク等を介して、OCT装置1とは遠隔地に配置されていてもよい。
【0059】
<ユーザーインターフェース(GUI)>
次に、図2図4を参照して、OCT装置1において撮影に用いるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を説明する。画面100には、被検眼Eの画像の表示領域(第1領域110、第2領域120、および、第3領域130)と共に、撮影条件を設定したり、装置の状態を表示したり、するためのGUIが配置されている。
【0060】
本実施例において、画面100は、撮影の進捗に応じて、図2図4の間で遷移する。図2図4に示すように、本実施例では、画像の表示領域、および、UI要素のレイアウトを、大きく相違させることなく、画面100が遷移される。例えば、図2~4の間で、画面100上における、それぞれの表示領域110,120,130の配置は一定である。第1領域110は、前眼部の正面画像を表示するために利用される。例えば、前眼部観察光学系40を介して取得される観察画像が、第1領域110に表示されてもよい。第2領域120は、眼底観察光学系30を介して取得される眼底の観察画像が表示される。第3領域130は、眼底のOCT画像を表示するために利用される。例えば、Bスキャン画像が、第3領域130に表示されてもよい。
【0061】
<撮影前の態様>
画面100は、図2に示した態様で、撮影条件の設定操作、および、撮影開始操作を受け付けるために利用される。
【0062】
<コンビネーション設定部>
画面100の左側上端に、コンビネーション設定部210が配置される。本実施例において、コンビネーション設定部210を介して、1以上のスキャン設定からなるスキャン設定の組み合わせが選択される。本実施例において、スキャン設定の組み合わせは、疾患および用途に応じて予め複数用意されている。複数のスキャン設定を含むいずれかの組み合わせが選択された場合、当該複数のスキャン設定で被検者が続けて撮影される。本実施例では、用途および疾患種別等に対応するタイトル(標題)が各々の組み合わせに対して用意されており、コンビネーション設定部210を介してタイトルが選択されることによって、被検者に対するスキャン設定の組み合わせが設定される。例えば、図2では、プルダウン方式で、複数のタイトルが展開され、展開された複数のタイトルのいずれかを選択する操作を受け付ける。
【0063】
本実施例において、各々のスキャン設定において、1つのスキャンパターンと、そのスキャンパターンで撮影される撮影位置と、が特定される。スキャンパターンには、ライン、クロス、マルチ、マップ、ラジアル、サークル、等の種々のものが知られており、撮影においてスキャンパターンに応じて走査部15が制御される。また、撮影位置の例として、黄斑、および、乳頭等が挙げられる。撮影位置に応じて、固視灯の呈示位置、および/または、走査部15、が制御される。追加的に、本実施例では、各々のスキャン設定には、撮影対象眼(左右のいずれか)が特定される。コンビネーション設定部210を介して選択された組み合わせと対応するスキャン設定で、被検者が撮影される。更に、追加的に、各々のスキャン設定において、画像の加算枚数(1つのスキャンラインに対してスキャンを繰り返す回数)、検出感度、ゼロディレイ位置の目標位置、等が特定されていてもよい。本実施例のように、SD-OCTの場合は、露光時間を調整することで検出感度が変更されても良い。
【0064】
被検者における過去の撮影で使用されたスキャン設定の組み合わせを示す情報が、予め記憶されている場合は、当該情報に基づいて、自動的に、当該組み合わせが設定されてもよい。また、コンビネーション設定部210において、フォローアップ撮影が選択可能であって、フォローアップ撮影が選択された場合に、過去に撮影されたスキャンパターン(スキャン設定)の組み合わせが設定されてもよい。
【0065】
<第1のUI群>
図2に示すように、本実施例では、画面100の左側端部に、第1のUI群220が配置される。第1のUI群220には、スキャン設定(スキャンパターン)が切り替わる度にユーザーに要求される複数の操作と対応する複数のUI要素が含まれている。
【0066】
図2には、第1のUI群220として、リスト221、検出条件コントローラー222、Captureボタン227が、画面100上に表示される。
【0067】
リスト221には、コンビネーション設定部210を介して選択した組み合わせに含まれるスキャン設定がリストアップされる。本実施例においてリスト221においては、スキャン毎のスキャン設定を示すテキストが表示される。テキストには、スキャン設定として、撮影対象眼(左右のいずれか)と、撮影部位と、スキャンパターンと、が含まれている。
【0068】
リスト221に表示されるスキャン設定に従って順次、撮影が実施される。通常、リスト221の上から下へ順番にスキャン設定が変更されつつ撮影が実施される。次の撮影における(次にCaptureボタン227を操作したときに実行される)スキャン設定が選択されている場合に、選択されたスキャン設定と対応するテキストが、リスト221上で強調される。更に、本実施例では、選択されたスキャン設定における撮影対象眼が撮影されるように、撮影ユニット2が左右方向に移動される。また、所望のスキャン設定と対応するテキストに対して選択操作を行うことで、次の撮影で用いるスキャン設定を、検者が随意に変更可能である。
【0069】
検出条件コントローラー222は、OCT光学系10による被検眼Eの検出条件を調整するために操作される。検出条件は、眼組織の検出能力に関わる種々の条件のいずれかであって、具体的には、光路長差(以下、OPL)、フォーカス、検出感度、偏光状態、等が挙げられる。
【0070】
図2では、検出条件コントローラー222として、Optimizeボタン223、フォーカスコントローラ224、OPLコントローラー225、および、感度設定ボタン226、が配置されている。
【0071】
Optimizeボタン223が操作された場合、制御部70は、OCT光学系10の調整処理を実行する。本実施例では、一例として、OPL、フォーカス、および、偏光の各々が、所定の状態へ調整される。
【0072】
フォーカスコントローラ224およびOPLコントローラー225は、それぞれ、検出条件を手動で調整するために操作される。本実施例において、フォーカスコントローラ224およびOPLコントローラー225は、スライダーであって“つまみ”の位置が、ドラッグ操作等に基づいて移動される。つまみの位置に応じて、それぞれの検出条件が設定される。例えば、より高感度に撮影したい層領域の深さ位置に応じて、フォーカスコントローラ224および/またはOPLコントローラー225のスライダーが操作される。
【0073】
Captureボタン227は、撮影を開始するトリガとなる操作を受け付ける。Captureボタン227が操作されることによって、予め選択されたスキャン設定で、撮影用のスキャンが実行される。
【0074】
また、後述するように、第1のUI群220に含まれる複数のUI要素は、操作が要求される順に、一列に(図2では、上から順番に)配置されている。
【0075】
なお、第1のUI群220において、撮影対象眼として、左眼、右眼、および、両眼のいずれかを選択するためのUI要素が、追加的に配置されていてもよい。例えば、両眼が撮影対象眼として予め設定されている場合に、左右のいずれかの被検眼のうち、検者が撮影不要と判断する一方に対する撮影を省略できる。
【0076】
<第2のUI群>
図2に示す第2のUI群240は、被検眼Eと撮影ユニット2との位置関係の調整に利用される。本実施例において、第2のUI群240として、アライメント方式選択ボタン241と、顎台高さ調整ボタン242と、前後調整ボタン243と、が画面100上に配置される。第2のUI群240は、前眼部の観察画像が表示される第1領域110の周辺に配置される。よって、検者は、前眼部の観察画像を介して被検眼Eと撮影ユニット2との位置関係を把握しながら位置関係を手動で調整しやすい。また、本実施例では、第1領域110も、第2のUI群240の一部として利用される。
【0077】
アライメント方式選択ボタン241は、自動アライメントと、手動アライメントと、の間でいずれかを選択するために操作される。操作に応じて、自動アライメント機能のon/offが切換わる。本実施例では、デフォルトで、自動アライメント機能が有効化されている。
【0078】
例えば、白内障患者を撮影する場合は、光軸の位置を混濁の影響を受けない位置にずらしたほうが良好に眼底を撮影できる場合がある。そのような場合に、アライメント方式選択ボタン241を操作して、自動アライメント機能を無効化することができる。
【0079】
顎台高さ調整ボタン242は、顔支持ユニット7における顎台7aの位置を上下に変更するために操作される。顎台高さ調整ボタン242は、上下に対応する一対のボタンを含み、移動させたい方向と対応するボタンに対して選択操作が行われている間、対応する方向へ顎台7aが上下移動される。被検者毎にアイレベル(顎から被検眼までの高さ)は異なるので、被検者毎に顎台7aの高さ調整が必要となり得る。
【0080】
また、本実施例では、顎台7aに顎が載置されていないことが顔支持ユニット7の図示なきセンサによって検出された場合に、顎台高さ調整ボタン242の隣に配置された頭部のアイコンが点滅する。これにより、被検者の姿勢が適切であるか否かが、容易に把握される。
【0081】
前後調整ボタン243は、撮影ユニット2の位置を、前後方向に変更するために操作される。前後調整ボタン243は、前後に対応する一対のボタンを含み、移動させたい方向と対応するボタンに対して選択操作が行われている間、対応する方向へ撮影ユニット2が移動される。また、本実施例では、撮影部2と被検眼とが接近しすぎている場合に、前後調整ボタン243の上方に配置された頭部のアイコンが警告色(例えば黄色)で点滅する。これにより、前後調整ボタン243を介した撮影部2の後退操作を、被検者に対して適切に促すことができる。
【0082】
また、本実施例では、前眼部観察画像が表示される第1領域110を介して、撮影ユニット2の位置を変更するための操作入力を受け付ける。例えば、制御部70は、第2領域における前眼部の正面画像上で位置を指定する操作入力を、ポインティングデバイスを介して受け付ける。制御部70は、指定された位置に表示される前眼部の組織が第1領域110内の所定位置(例えば、中心)に表示されるように、被検眼Eに対して撮影ユニット2をXY方向に関して移動させてもよい。但し、ポインティングデバイスを介した操作入力として、他の操作入力が採用されても良い。例えば、第1領域に表示される前眼部の正面画像がポインティングデバイスによってドラッグされる場合、ドラッグの移動方向および移動量に応じて、ドラッグの移動方向とは反対方向に撮影ユニット2が移動されるように、駆動部が制御されても良い。また、更に、XY方向に関して撮影ユニット2の位置を変更するための操作入力とは異なる操作入力に基づいて、撮影ユニット2の位置がZ方向に移動されても良い。
【0083】
<第3のUI群>
第3のUI群250は、予め選択されたスキャンパターンにおけるスキャン条件を変更するために利用される。図2に示すように、第3のUI群250は、眼底観察画像が表示される第2領域120の周辺に配置される。第2領域120において、眼底観察画像上には、固視標の呈示位置と対応するグラフィック121、および、スキャン位置を示すグラフィック122が表示される。これにより、検者は、眼底観察画像を介してスキャン位置を適切に把握しながらスキャン条件を手動で調整できる。また、本実施例では、第2領域120も、第2のUI群240の一部として利用される。
【0084】
第3のUI群250としては、固視標設定部251と、スキャン条件変更部252と、が配置される。
【0085】
本実施例において、固視標設定部251は、内部固視灯と外部固視灯(図示せず)との切換操作を受け付ける。また、内部固視標のサイズの変更操作を受け付ける。また、内部固視灯の呈示位置の変更操作を、眼底観察画像が表示される第2領域120を介して受け付けても良い。また、グラフィック121の位置は、例えば、ドラッグ操作等によって第2領域120上で変更可能であり、グラフィック121の位置に応じて、内部固視標の呈示位置が、変更されてもよい。
【0086】
スキャン条件変更部252は、スキャン条件として、スキャン長、角度、ピッチの変更操作を受け付ける。スキャン長、角度、ピッチの変更操作は、第2領域120を介して受け付けても良い。例えば、眼底観察画像が表示される第2領域120上で、グラフィック122を動かすと、スキャン長、角度、ピッチが調整されてもよい。
【0087】
第1領域110の眼底観察画像上には、スキャン位置(スキャンライン)を示すグラフィック(以下、スキャンラインSLと記す)が重畳される。選択中のスキャン設定(スキャンパターン)と対応するスキャン位置に、スキャンラインSLは重畳される。本実施例では、第1領域110上で、スキャンラインSLの位置を移動させる操作が入力可能であってもよく、当該操作に基づいて眼底上のスキャン位置が変更可能であってもよい。スキャンラインSLの位置を移動させる操作としては、スキャンラインSLの平行移動、回転移動、端点の移動、(複数のスキャンラインの)交点の移動、のうちもいずれかが利用されてもよい。
【0088】
第1領域110の眼底観察画像を介して、例えば、固視標の呈示位置が変更可能であっても良い。例えば、検者が眼底観察画像上の1点を選択した場合に、当該1点が第1領域110において画像中心に位置するように、固視標の呈示位置が制御されてもよい。
【0089】
また、本実施例では、第3のUI群250として、リセットボタン253が配置されている。リセットボタン253は、固視標設定部251と、スキャン条件変更部252に対する操作に基づいて変更された各種パラメータを規定値にリセットする。
【0090】
<OCT画像の表示領域>
また、第3領域130および第3領域130上方の補助領域131,132,133において、OCT観察画像が表示される。第3領域130および第3領域130上方の補助領域131,132,133は、画面100の右側を占めているので、深さ方向の撮影範囲が向上した結果、従来よりも縦長化した断層画像を、適切に表示しやすい。本実施例では、第3領域130に、基準となるスキャンラインで得られるOCT観察画像が表示される。第1補助領域131には、スキャンパターンが、クロス、マルチ、ラジアル、および、マップのいずれかである場合に、基準となるスキャンラインに対して直交するスキャンラインで得られたOCT観察画像を表示する。また、第2補助領域132および第3補助領域133には、スキャンパターンがマップである場合に、マップスキャンの始端ライン、および、終端ラインにそれぞれ対応するOCT観察画像がそれぞれ表示される。
【0091】
<撮影途中における態様>
図3に示すように、撮影用のスキャンの実行途中で、画面100の左側端部に配置された第1のUI群220には、Cancelボタン228とSkipボタン229とが配置される。
【0092】
Cancelボタン228は、実行中のスキャンを中止して、もう一度同じスキャン設定で撮影を行うために操作される。例えば、検者は、実行中のスキャンが不要であると判断した場合に、Cancelボタン228を操作する。Cancelボタン228の操作に基づいて、実行中のスキャンを中止され、当該スキャンによって取得されたOCTデータは破棄される。また、画面の態様が図2に示すものに遷移されると共に、中止されたスキャン設定が選択された状態となる。
【0093】
Skipボタン229は、眼底トラッキング撮影が実行されている場合において、眼底トラッキングが不要と判断されたり、撮影の完了を早めたい場合に操作される。眼底トラッキング撮影では、随時取得されるOCT画像および/またはOCT画像と並行して取得される眼底観察画像に基づいて、撮影の良否が判定され、判定結果に応じて再スキャンが行われる。このため、例えば、被検者の固視が不安定であることで、撮影の時間が長引く場合があり得る。このような場合に、検者は、Skipボタン229を操作する。Skipボタン229が操作された場合、眼底トラッキングをOFFして、既定のスキャンラインにおけるOCTデータを取得する。取得したOCTデータは保持されたうえで、図4の画面100に遷移する。
【0094】
撮影用のスキャンの実行途中において、画面100の第3領域130の上方には進捗バー260が表示される。進捗バー260には撮影の進捗状況が表示される。また、随時得られる前眼部観察画像、眼底観察画像、OCT観察画像、のそれぞれが、第1領域110、第2領域120、第3領域130のそれぞれにおいて、随時表示される。ユーザーは、これらの画像および進捗バー260に基づいて、撮影が順調に進んでいるか否かを確認できる。
【0095】
<撮影結果の確認時の態様>
第3領域130には、撮影されたOCTデータが表示される。
【0096】
図4では、第1のUI群220として、Retryボタン230と、Saveボタン231と、が配置される。
【0097】
Retryボタンは、再撮影を行うために操作される。本実施例では、Retryボタン230が操作された場合、撮影されたOCTデータを破棄し、図2の画面に遷移する。この場合において、リスト221には、直近の撮影と同一のスキャン設定が選択されている。
【0098】
Saveボタンは、撮影結果を保存するために操作される。Saveボタン231が操作された場合、図2の画面に遷移する。この場合において、リスト221には、スキャン設定が、次の順序のものに変更される。
【0099】
図4では、第1領域110の周辺に、撮影されたOCT画像の画質に関する情報が配置される。具体的には、SSI,SQI,加算枚数,検出感度等の各種情報が配置される。
【0100】
図4では、第2領域120の周辺に、Autoplayボタン271、OCT fundus overlayボタン272が配置される。追加的に、フォローアップ撮影に使う為のベースラインにする/しないの設定ボタンを配置しても良い。
【0101】
Autoplayボタン271は、複数枚のOCT画像によるAutoplayを、第3領域130において実行するために操作される。Autoplayでは、複数枚撮影を行うスキャンパターンでOCT画像が撮影された場合に、自動的にOCT画像の切換表示が実行される。
【0102】
OCT fundus overlayボタン272は、第2領域120に表示される眼底の観察画像(本実施例では、SLOによる正面画像)に、OCT正面画像を重畳表示させるか否かを切換えるために操作される。
【0103】
<動作説明>
次に、以上のような装置構成およびGUIを有するOCT装置1における、撮影動作の流れを説明する。まず、検者は、被検者の顎を顔支持ユニット7の顎台7aに載置させる。次に、顎台高さ調整ボタン242を操作して、第1領域110上に被検眼の前眼部が表示されるように、顎台7aの高さを変更する。あわせて、検者は、コンビネーション設定部210を操作して、疾患および目的に応じたスキャン設定の組み合わせを選択する。
【0104】
その後は、オートアライメントや、固視等に問題が無ければ、第2のUI群240および第3のUI群250に対する操作入力は必要とすることなく、第1のUI群220に配置されたUI要素を、呈示される順序に沿って操作することで、予め選択されたスキャン設定の組み合わせで、撮影を進めていくことができる。
【0105】
詳細には、まず、検者は、撮影が必要と考えられるスキャン設定が選択されているかをリスト221上で確認し、必要に応じて、他のスキャン設定を選択する。
【0106】
次に、検出条件コントローラー222が操作され、OCT光学系10における被検眼の検出条件が調整される。検者がOptimizeボタン223を操作することによって、OPL、フォーカス、および、偏光の各々が、所定の状態へ調整される。検出条件の調整結果は、第3領域130におけるOCT観察画像に反映される。例えば、OPLの調整結果は、第3領域130におけるZ方向に関する眼底の像位置に反映される。また、眼底においてゼロディレイに近い側の層領域の輝度が相対的に高くなる。また、合焦位置における組織の解像度が相対的に高くなる。検者は、第3領域130におけるOCT観察画像を確認し、自動調整に失敗していた場合、または、所望の層領域を詳細に撮影したい場合、等に、フォーカスコントローラ224および/またはOPLコントローラー225を操作する。例えば、網膜表層側よりも脈絡膜側が高感度に撮影したい場合に、ゼロディレイ位置およびフォーカス位置が手動で変更されてもよい。
【0107】
OCT光学系10における検出条件が適切に調整された後、検者は、Captureボタン227を操作する。これにより、リスト221上において選択されているスキャン設定で、撮影用のスキャンが開始される。
【0108】
撮影用のスキャンが開始されると、画面100が図3に示す態様に遷移する。第1のUI群220には、図2の態様において、Optimizeボタン223およびCaptureボタン227が配置されていた位置に、Cancelボタン228とSkipボタン229とが配置される。但し、Cancelボタン228とSkipボタン229とは、撮影を途中で止めるためのボタンであるため、検者は必ずしも操作する必要はない。
【0109】
撮影が完了すると、画面100が図4に示す態様に遷移する。第1のUI群220として、図2の態様において、Optimizeボタン223およびCaptureボタン227が配置されていた位置(図3の態様において、Cancelボタン228およびSkipボタン229が配置されていた位置)に、Retryボタン230とSaveボタン231と、が配置される。検者は、第3領域130に表示される撮影結果に応じて、いずれかを選択する。いずれを選択しても、画面100が図2に示す態様に遷移する。よって、検者は、再度、リスト221上でスキャン設定を確認すると共に、第1のUI群220として画面100の左端に操作の順番に並べて、更には、時系列に切り替えられて表示されるUI要素を操作することで、リスト221に示されたすべてのスキャン設定に対して撮影を進めることができる。従って、本実施例では、多くのケースでは、スキャン設定が切り替わる度にユーザーに要求される複数の操作を、第1のUI群220に配置されたUI要素を、呈示される順序に沿って操作することで、撮影を進めていくことができる。特に、マウスを用いて操作する場合には、ポインタの移動範囲は、第1のUI群220の範囲での上下方向への移動で足り、左右方向への移動は必ずしも必要ではないので、操作がスムーズになる。また、ヒトは、画面上で視線を左上から右下にかけて動かす傾向にあると言われている。これに対し、本実施例において、第1のUI群220は、画面左端に配置されているので、検者に、良好に認識させやすい。
【0110】
更に、第1のUI群220に比べて操作の頻度が少ない第2のUI群240および第3のUI群250については、それぞれのUI群に対する操作の結果が反映される観察画像の周辺に配置されているため、タッチパネルデバイスを利用して、操作入力を受け付ける場合も、操作性が良好である。
【0111】
本実施例において、画面100は、第1のUI群220のエリア、第2のUI群240、第2のUI群240、第1領域110(前眼部観察画像)、第2領域120(眼底観察画像)のエリア、第3領域130(OCT画像)および第1~第3補助領域131,132,133のエリア、の3つのエリアに横方向に分割されているため、上記のように、操作性が良好であるうえ、深さ方向に関する解像度が向上したことによって従来よりも縦長化した断層画像を、第3領域130において適切に表示しやすい。
【0112】
<第2実施例>
次に、第2実施例を説明する。図5に示すように、第2実施例に係るOCTシステム500は、OCT装置1と、解析装置600と、記憶装置700と、を含む。特に断りが無い限り、OCT装置1の構成は、第1実施例と同様である。
【0113】
解析装置600は、OCT装置1によって撮影された眼底のOCTデータに対して解析処理を行う。実施例における解析装置600は、PCである。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、解析装置600は、OCT装置1とネットワークを介して接続されるサーバコンピュータであってもよい。解析装置600は、プロセッサ650と、メモリ660を備える。
【0114】
メモリ660には、解析プログラム、正常眼データベース、長眼軸長正常眼データベースが格納されている。解析プログラムは、眼底のOCTデータにおける層厚解析を行うためのプログラムである。層厚解析において、正常眼データベースおよび長眼軸長正常眼データベースのいずれかが利用され、OCTデータに基づく計測値(実測値)と正常眼データとの比較結果を示す情報が、解析結果として出力される。ここで、正常眼データベースには、閾値以下の眼軸長を持つ複数の正常眼における層厚の分布を表す情報が格納されている。長眼軸長正常眼データベースには、閾値を超える眼軸長を持つ複数の正常眼における層厚の分布を表す情報が格納されている。解析処理において、正常眼データベースおよび長眼軸長正常眼データベースは、被検眼の眼軸長データに応じて使い分けられる。このときの被検眼の眼軸長データの値は、第2実施例では、OCT装置1による測定値が取得され得る。
【0115】
記憶装置700は、OCT装置1による撮影および測定結果、解析装置600による解析結果等を格納するストレージである。
【0116】
<動作説明>
ここで、第2実施例のOCT装置1における眼軸長データの測定を伴う撮影動作の流れを説明する。
【0117】
第2実施例では、画面100におけるコンビネーション設定部210(図2参照)を介して、特定のスキャン設定が選択された場合に、眼軸長データが測定される。説明の便宜上、本実施例では、黄斑を撮影位置としてラインパターンで撮影される場合に、撮影と共に眼軸長データの測定が行われる。但し、眼軸長データ測定と共に実施される撮影におけるスキャンパターンは、ラインパターン以外の任意のスキャンパターンであってもよい。例えば、正常眼データベースおよび長眼軸長正常眼データベースを利用して3次元OCTデータを解析処理することによって生成される層厚マップおよびチャートの活用頻度は高い。そこで、マップスキャン(ラスタースキャン)と共に眼軸長データが測定されれば、有用である。但し、マップスキャンの場合は、黄斑を通過するスキャンラインは一部であるので、例えば、マップスキャンで取得される各Bスキャンと、各Bスキャンと同じタイミングの前眼部観察画像と、を取得しておき、黄斑が検出されるBスキャンOCTデータと、同タイミングで取得される前眼部観察画像と、に基づいて眼軸長データが取得されても良い。
【0118】
第1実施例と同様に、被検眼に対して撮影ユニット2のアライメントが行われ、その結果として、被検眼Eに対して所定のワーキングディスタンスの位置に、撮影ユニット2が配置される。アライメントが完了した後に、検出条件コントローラー222の操作に基づいて、OCT光学系10における被検眼の検出条件(OPL、フォーカス、および、偏光等)が調整される。OPLの調整結果は、第3領域130におけるOCT観察画像の像位置に反映される。第2実施例において、OCT観察画像上には、眼軸長データ測定において、眼底の測定基準となる深さ位置を示すグラフィックが重畳表示されてもよい。例えば、測定基準は、OCTデータを処理して検出される眼底表面の位置に設定される。重畳表示されたグラフィックと、眼底の像の位置と、を参考にして、OCTデータに対する測定基準の位置を手動で調整可能であってもよい。また、眼軸長データ測定における測定軸(例えば、OCT光学系10における光軸)を示すグラフィックがOCT観察画像上に重畳表示されてもよい。
【0119】
黄斑の表面が測定基準に略一致している状態で、検者はCaptureボタン227を操作する。第2実施例において、Captureボタン227の操作が、撮影および眼軸長データ測定の共通のトリガとなる。第2実施例では、撮影用のスキャンの直前に、被検眼の眼軸長データを求めるための各種情報が取得される。詳細には、眼軸長データ測定のためのスキャンに基づく干渉信号、OPL、および、被検眼Eに対する撮影ユニット2のZ方向の位置情報、が取得される。第2実施例において、眼軸長データ測定のためのスキャンにおけるスキャンパターンは、例えば、黄斑を通過するラインパターンであってもよい。
【0120】
第2実施例において、被検眼Eの眼軸長データは、少なくとも調整後のOPLに基づいて求められるところ、より正確な眼軸長データを測定するために、OPLだけでなく、当該OPLでの干渉信号、及び、被検眼Eに対する撮影ユニット2のZ方向の位置も利用される。すなわち、OPLと当該OPLでの干渉信号とから、眼底の位置と対応する光路長差を正確に求めることができる。また、眼軸長データを求めるうえで、所定のワーキングディスタンスの位置に対するZ方向のアライメントズレの影響が補正される。なお、被検眼Eにおける眼軸長ALは、既知の模型眼の眼軸長をAL0とした場合に、次の式(1)で表される。
【0121】
AL=AL0+Δp+Δd+Δz・・・(1)
但し、Δp,Δd,Δzは、それぞれ、被検眼の眼軸長を求めるために取得した上記の各種情報と既知の模型眼に基づく基準値との差である。基準値は、例えば、模型眼に対する眼軸長の測定時にあらかじめ取得された上記の各種情報であってもよい。すなわち、Δpは、調整後のOPLについての測定値と基準値との差であり、Δdは、干渉信号に基づく眼底の像の出現位置についての測定値と基準値との差であり、Δzは、被検眼Eに対する撮影ユニット2のZ方向の位置についての測定値と基準値との差であってもよい。
【0122】
眼軸長データの測定動作の完了後、撮影のためのスキャンが実行される。例えば、本実施例では、加算撮影が行われる。すなわち、同一のスキャンラインで複数回のスキャンが実施され、複数枚のBスキャン画像が撮影される。本実施例では、撮影のためのスキャンで得られた干渉信号を、眼軸長データ測定に利用しないで、眼軸長データ測定のために別途スキャンが行われる。このため、撮影のためのスキャンのスキャンパターンに依存することなく、眼軸長データの測定動作を実行できる。つまり、任意の撮影用のスキャンパターンで眼軸長データ測定機能の実装が容易である。
【0123】
また、眼軸長データは複数回測定され、平均値、中央値、等が測定結果として採用されてもよい。本実施例では、それぞれの取得タイミングがほぼ同時となる、前眼部観察画像とOCTデータのセットを数フレーム分使用して、それぞれで眼軸長データを測定しても良い。また、前眼部観察画像、眼底観察画像、OCTデータの少なくともいずれかを用いて眼の動きを検出し、安定しているデータセットのみから求められた眼軸長データを採用してもよい。また、例えば、撮影のためのスキャンで得られた干渉信号を利用して、眼軸長データを求めることもできる。例えば、加算撮影中に取得された前眼部観察画像とOCTデータのセットであって、互いのタイミングがほぼ同時となるセットから、眼軸長は複数回測定され、平均値、中央値、等が測定結果として採用されてもよい。
【0124】
撮影および測定が完了すると、画面100が図6に示す態様(実施例における確認画面)に遷移する。第1実施例における図4の態様と同様に、Retryボタン230とSaveボタン231と、が配置される。また、第3領域130には、撮影結果として、複数枚のBスキャン画像による加算平均画像が表示される。
【0125】
第2実施例では、更に、図6に示す画面100上には、眼軸長表示部275が配置されている。眼軸長表示部275には、被検眼Eにおける眼軸長データの測定結果が表示される。第2実施例では、眼軸長データの測定結果として眼軸長ALが数値(例えば、空気長換算値)で示されている。
【0126】
ところで、前述の通り、解析装置600が被検眼のOCTデータに対して層厚解析を行う場合に、正常眼データベースと、長眼軸長正常眼データベースと、のうち、被検眼の眼軸長データの測定結果と対応するいずれかが選択的に利用される。詳細には、被検眼の眼軸長が閾値以下であれば正常眼データベースが利用され、被検眼の眼軸長が閾値を超えていれば長眼軸長正常眼データベースが利用され、いずれが利用されるかによってOCTデータの解析結果が異なってしまう。これに対し、第2実施形態では、被検眼の眼軸長が閾値以下である場合と閾値より大きい場合との間で、眼軸長表示部275における表示態様が変更される。
【0127】
詳細には、被検眼の眼軸長が閾値より大きい場合には、層厚処理において長眼軸長正常眼データベースが利用されることを示す、「L-NDB」との文字が測定結果の隣に表示される。また、画面100の右下には、情報通知欄280が配置されており、長眼軸長正常眼データベースが利用される旨の案内テキストが表示される。一方、被検眼の眼軸長が閾値以下の場合には、これらの表示は行われないが、必ずしもこれに限定されるものではなく、正常眼データベースが利用されることを示す表示が出力されてもよい。
【0128】
また、制御部70によって、眼軸長データの測定に失敗していたり、測定の信頼性が低いと考えられる場合には、その旨が検者に対して通知される。例えば、眼軸長表示部275には、眼軸長の値に代えて「N/A」等の文字が表示されてもよく、また、情報通知欄280には、測定に失敗の理由を示すテキストが表示されてもよい。眼軸長データの測定に失敗している場合として、以下の場合を例示することができる。但し、必ずしもこれに限定されない。
1.被検眼Eに対する装置のアライメント状態が、測定のタイミングで不適切な場合。
2.OCTデータから眼底表面が検出できない場合。
3.被検眼の実際の眼軸長が測定範囲外の場合。
測定に失敗している場合は、Retryボタン230を操作して、再度、測定および撮影を行うことができる。また、例えば、固視不良によって黄斑の位置がOCT光学系10の光軸からずれている場合には、測定の信頼性が低いと考えられる。黄斑の位置がOCT光学系10の光軸からずれているか否かは、例えば、測定によって取得される断層画像、または、測定と略同時に取得される断層画像または眼底の観察画像に基づいて検出されてもよい。
【0129】
第3領域130には、眼軸長データの測定条件を示す情報として、眼底の測定基準となる深さ位置を示すグラフィック276、および、測定軸を示すグラフィック277が、Bスキャン画像と共に表示される。例えば、Bスキャン画像における黄斑の位置と、グラフィック276,277が示す基準となる深さ位置、および、測定軸の位置、とのズレに基づいて、検者は測定の成否を判断することができる。測定に失敗している場合は、Retryボタン230を操作して、再度、測定および撮影を行うことができる。
【0130】
第2実施例において、図6に示す画面100上には、眼軸長保存確認部278が配置されている。図6において、眼軸長保存確認部278はチェックボックスとして構成されており、眼軸長保存確認部278に対する操作入力に応じて、チェックマークの有無を切換えることができる。チェックが入力されている場合は、眼軸長データの測定結果の保存が有効化される。チェックが外れている場合は、眼軸長データの測定結果の保存が無効化される。本実施例では、初期状態では、眼軸長データの測定結果の保存が無効化されている。これによって、眼軸長データの測定結果を保存する都度、眼軸長保存確認部278に対する操作入力が要求される。また、第2実施例において、眼軸長データの測定結果の保存が無効化されている場合は、眼軸長保存確認部278におけるチェックボックスのコントロールが点滅表示される。これにより、眼軸長データの測定結果の保存が無効化されていることを検者に気づかせることができ、眼軸長データの測定結果が、検者の必要に応じて適切に保存されやすくなる。但し、眼軸長データの測定結果の保存設定は、デフォルトで有効化されていてもよい。
【0131】
眼軸長データの測定結果の保存が有効化されている場合、Saveボタン231の操作に基づいて、OCTデータの撮影結果である眼底のBスキャン画像と共に、被検眼Eに対する眼軸長データの測定結果が、記憶装置700に保存される。
【0132】
このように、第2実施例では、眼軸長保存確認部278が、図6に示す態様の画面100(実施例における確認画面)に表示されており、眼軸長保存確認部278に対する操作がSaveボタン231の操作とは別に要求されることで、眼軸長データの測定結果を、検者に確実に確認されやすくなる。その結果、適切な眼軸長データの測定結果が、OCTデータの撮影結果と共に保存されやすくなる。
【0133】
第2実施例では、解析装置600による解析処理において、正常眼データベースと長眼軸長データベースと、を被検眼Eの眼軸長データに応じて使い分けたい場合に、眼軸長データの測定結果を、検者に確実に確認させることができるので、結果として、被検眼Eの眼軸長データに応じた適切な解析結果が得られやすくなる。
【0134】
なお、例えば、第1実施例において説明したように、図6に示す態様の画面100(確認画面)においてSaveボタン231が操作されると、画面100は図2に示す態様に遷移し、新たなスキャン設定で被検眼Eを撮影できる。このようにして別途撮影されたOCTデータを、解析装置600が解析する際にも、眼軸長データの測定結果が利用されてもよい。
【0135】
<変形例>
以上、実施形態に基づいて本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0136】
例えば、上記実施例の図2に示す態様において、検出条件の変更操作が、第2領域120および第3領域130を介して入力されてもよい。例えば、ポインティングデバイスとしてマウスが利用される場合において、第2領域120上でのマウスのホイール操作に応じて、フォーカスが変更されても良い。また、第3領域130上でのマウスのホイール操作に応じて、OPLが変更されても良い。
【0137】
例えば、第2実施例では、撮影結果と共に眼軸長データの測定結果を保存するか否かを選択するための操作が、眼軸長データの測定が行われた後に操作可能となる、確認画面上の眼軸長保存確認部278を介して入力される場合について説明したが、当該操作は、眼軸長データの測定が行われる前に未然に入力可能であってもよい。例えば、撮影画面上に、撮影と共に眼軸長データの測定を行うか否かを選択するためのUI要素が配置されていてもよい。また、コンビネーション設定部210を介して選択されるスキャン設定を、あらかじめカスタマイズ可能であれば、スキャン設定毎に、眼軸長データ測定を行うか否かを事前に設定してもよい。ここで、第2実施例において、眼軸長データを測定する際には、固視標の呈示位置は、OCT光学系10の光軸と同軸に設定されることが望ましい。このため、例えば、直前の撮影時の固視標の呈示位置に関わらず、眼軸長データを測定する際には、固視標の呈示位置をOCT光学系10の光軸と同軸に制御してもよい。また、例えば、固視標を偏心して撮影が行われるスキャン設定には、眼軸長データ測定を組み合わせられないように、あらかじめ制限されていてもよい。また、例えば、眼軸長データを測定する際には、外部固視灯、手動アライメント等の使用をする際には、警告表示を行ったり、眼軸長測定時には、自動的に内部固視灯を使用し、更に、自動アライメントで眼軸長測定におけるアライメント適正位置に調整したり、してもよい。
【0138】
但し、眼軸長データを測定する際に、固視標の呈示位置がOCT光学系10の光軸に対して偏心している、あるいは、固視不良により、被検眼の黄斑の位置がOCT光学系10の光軸からズレている、ことが許容されていてもよい。この場合、例えば、固視標の呈示位置および被検眼の黄斑の光軸からのズレのうち少なくともいずれかを取得し、取得した情報に応じて測定値が補正されても良い。
【0139】

なお、固視標を偏心して撮影が行われるスキャン設定に対し、眼軸長データの測定動作を組み合わせる場合には、撮影動作と測定動作との間で、固視標の呈示位置が切換えられても良い。すなわち、眼軸長データを測定する際には、固視標の呈示位置は、OCT光学系10の光軸と同軸に設定されるように、固視標の呈示位置が制御されてもよい。
【0140】
例えば、複数のスキャン設定のそれぞれにおいて、撮影と共に眼軸長データ測定が有効化されている場合には、同一の被検眼に対して複数のスキャン設定で撮影を行う場合に、複数回眼軸長データ測定が行われてしまう場合が考えられる。これに対し、同日中に、被検眼の眼軸長データがあらかじめ測定されている場合には、眼軸長データ測定が有効化されているスキャン設定で撮影が行われる際に、眼軸長データの測定動作、又は、測定結果を無効化してもよいし、眼軸長データを測定しても測定結果の上書き確認を検者に対して要求してもよい。
【0141】
また、例えば、両眼の間で、眼軸長は、通常、それほど異ならないことが知られている。そこで、例えば。片眼の眼軸長データがあらかじめ取得されている場合には、反対眼に対しては、片眼の眼軸長データの測定結果を援用し、参考値として、反対眼の撮影結果と対応付けられてもよい。また、片眼の眼軸長データがあらかじめ測定されている場合には、反対眼に対して眼軸長データ測定が有効化されているスキャン設定で撮影が行われる際に、眼軸長データの測定動作、又は、測定結果を無効化してもよいし、眼軸長データを測定しても参考値である反対眼の測定結果の上書き確認を検者に対して要求してもよい。
【0142】
また、例えば、第2実施例において、確認画面には、測定条件を示す測定条件情報として、第1領域110に、眼軸長データの測定と同時に取得した前眼部の観察画像が表示されてもよい。眼軸長データの測定と同時に取得した前眼部の観察画像に基づいて、測定時のアライメント状態を把握でき、検者は測定の成否を判断できる。例えば、アライメント指標像に基づいて特定される角膜頂点の位置に対して、測定軸のズレが大きい場合には、測定に失敗している可能性が高いと考えられる。測定に失敗している場合は、Retryボタン230を操作して、再度、測定および撮影を行うことができる。
【0143】
また、例えば、第2実施例において、確認画面を介して、眼軸長データの測定値を修正する操作が入力可能であっても良い。例えば、断層画像が表示される第3領域130上において、例えば、基準となる深さ位置を示すグラフィック276の位置を、深さ方向に関して移動させる操作を受け付けてもよい。移動後のグラフィック276の位置に応じて、眼軸長データの測定値は修正されてもよい。眼軸長表示部275には、グラフィック276の位置に応じて修正された眼軸長データの測定値が表示される。なお、この場合、第3領域130には、眼軸長データの測定時に取得された断層画像が表示されることが望ましい。従って、撮影結果として表示される断層画像と切換えて、又は、同時に、確認画面上に表示されてもよい。
【符号の説明】
【0144】
1 OCT装置
2 撮影ユニット
10 OCT光学系
70 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6