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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052405
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240404BHJP
   A61B 3/15 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61B3/10
A61B3/10 100
A61B3/10 300
A61B3/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159098
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真也
(72)【発明者】
【氏名】余語 宏文
(72)【発明者】
【氏名】藤生 賢士朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA03
4C316AA06
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB11
4C316AB12
4C316AB16
4C316FA04
4C316FA06
4C316FA07
4C316FC01
4C316FY02
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 より信頼性の高いアライメント誘導を実現できる、眼底撮影装置を提供すること。
【解決手段】 眼底撮影装置は、被検眼の眼底画像を撮影するための撮影光学系と、前眼部の観察画像を取得する観察光学系と、被検眼の角膜に対して光束を投影する投影光学系と、前記撮影光学系、前記観察光学系、および、前記投影光学系、を含む撮影ユニットを、被検眼に対して移動させる駆動部と、前記観察画像に基づいて検出される被検眼の瞳孔の位置に関する第1位置情報と、前記光束による指標像の位置に関する第2位置情報と、に基づいて前記駆動部を制御して前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整する、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を、前記撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、前記第1位置情報と前記第2位置情報との両方に基づいて調整する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底画像を撮影するための撮影光学系と、
前眼部の観察画像を取得する観察光学系と、
被検眼の角膜に対して光束を投影する投影光学系と、
前記撮影光学系、前記観察光学系、および、前記投影光学系、を含む撮影ユニットを、被検眼に対して移動させる駆動部と、
前記観察画像に基づいて検出される被検眼の瞳孔の位置に関する第1位置情報と、前記光束による指標像の位置に関する第2位置情報と、に基づいて前記駆動部を制御して前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整する、制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を、前記撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、前記第1位置情報と前記第2位置情報との両方に基づいて調整する、眼底撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を、左右方向に関しては前記第1位置情報に基づいて調整すると共に、上下方向に関しては前記第2位置情報に基づいて調整する、請求項1記載の眼底撮影装置。
【請求項3】
被検眼に対して固視標を呈示すると共に、被検眼の固視方向を、前記撮影光学系の光軸に沿った光軸方向と前記光軸方向とは異なる周辺方向とに誘導可能な固視標呈示部を備え、
前記制御手段は、
前記光軸方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、前記撮影光学系の光軸が被検眼の角膜頂点に一致するように、前記第2位置情報に基づいて前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整し、
前記周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、前記撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、前記第1位置情報と前記第2位置情報との両方に基づいて前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整する、請求項1又は2記載の眼底撮影装置。
【請求項4】
前記投影光学系は、有限遠の光束と無限遠の光束とのそれぞれを、被検眼の角膜の異なる位置に投影し、
前記制御手段は、前記有限遠の光束に基づく第1指標像と前記無限遠の光束に基づく第2指標像とのうち両方が前記観察画像から検出される場合は、前記第1指標像および前記第2指標像の像高比に基づいて、Z方向に関して撮影ユニットの位置を調整し、
前記第1指標像と前記第2指標像とのうち前記第1指標像が前記観察画像から検出される場合は、前記第1指標像の像高に基づいてZ方向に関して撮影ユニットの位置を調整する、請求項1から3のいずれかに記載の眼底撮影装置。
【請求項5】
被検眼に対して固視標を呈示すると共に、被検眼の固視方向を、前記撮影光学系の光軸に沿った光軸方向と前記光軸方向とは異なる周辺方向とに誘導可能な固視標呈示部を備え、
前記投影光学系は、有限遠の光束と無限遠の光束とのそれぞれを、被検眼の角膜の異なる位置に投影し、
前記制御手段は、
前記光軸方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、前記第1指標像および前記第2指標像の像高比に基づいて、Z方向に関して撮影ユニットの位置を調整し、
前記周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、前記第1指標像の像高に基づいてZ方向に関して撮影ユニットの位置を調整する、請求項1から4のいずれかに記載の眼底撮影装置。
【請求項6】
被検眼の眼底画像を撮影するための撮影光学系と、
前眼部の観察画像を取得する観察光学系と、
前記撮影光学系、および、前記観察光学系、を含む撮影ユニットを、被検眼に対して移動させる駆動部と、
被検眼の瞳孔の位置に関する瞳孔位置情報を、上瞼と瞳孔との重なりを考慮して前記観察画像に基づいて検出すると共に、前記撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、前記瞳孔位置情報に基づいて前記駆動部を制御して、前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整する、眼底撮影装置。
【請求項7】
被検眼の角膜に対して光束を投影する投影光学系と、
前記制御手段は、被検眼の瞳孔の位置のうち左右方向の位置は前記観察画像上の瞳孔に基づいて検出し、上下方向の位置は前記光束の角膜反射像に基づいて検出する、請求項6記載の眼底撮影装置。
【請求項8】
被検眼の瞳孔の位置に関する瞳孔位置情報を、前記観察画像上の瞳孔の一部の輪郭に基づいて検出する、請求項6記載の眼底撮影装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野では、眼底カメラやOCT装置(Optical Coherence Tomography:光干渉断層計)等の種々の眼底撮影装置が利用されている。
【0003】
眼底撮影装置では、撮影に際してアライメントが行われる。例えば、特許文献1では、被検眼の角膜に投影されたアライメント指標による指標像に基づいて、被検眼と撮影光学系との位置関係を調整する、自動アライメントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-138904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
但し、上述の指標像は角膜頂点の位置を検出できるが、被検眼の個体差、角膜または瞳孔における異常の有無、および、固視誘導の方向等次第では、角膜頂点の位置を基準にアライメントすることが適切でない場合があり考えられる。また、前眼部の観察画像から瞳孔そのものを検出してアライメントに利用することも考えられるが、瞳孔が検出できたとしても所期する位置に撮影光学系が誘導されない場合があった。
【0006】
本開示は、従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、より信頼性の高いアライメント誘導を実現できる、眼底撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るOCT装置は、被検眼の眼底画像を撮影するための撮影光学系と、前眼部の観察画像を取得する観察光学系と、被検眼の角膜に対して光束を投影する投影光学系と、前記撮影光学系、前記観察光学系、および、前記投影光学系、を含む撮影ユニットを、被検眼に対して移動させる駆動部と、前記観察画像に基づいて検出される被検眼の瞳孔の位置に関する第1位置情報と、前記光束による指標像の位置に関する第2位置情報と、に基づいて前記駆動部を制御して前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整する、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記被検眼に対する撮影ユニットの位置を、前記撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、前記第1位置情報と前記第2位置情報との両方に基づいて調整する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より信頼性の高いアライメント誘導を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例におけるOCT装置の装置構成を示す図である。
図2】指標投影光学系を説明するための図である。
図3】実施例における撮影動作の流れを示したフローチャートである。
図4】実施例における撮影画面の画面構成を示した図である。
図5】実施例におけるアライメントの動作内容を示したフローチャートである。
図6】黄斑領域を撮影する場合におけるアライメントを説明するための図である。
図7】乳頭または広域領域を撮影する場合におけるアライメントを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「概要」
<第1実施形態>
第1実施形態の眼底撮影装置は、撮影光学系と、観察光学系と、投影光学系と、駆動部と、制御部(制御手段)と、を備える。
【0011】
<撮影光学系>
撮影光学系は、被検眼の眼底画像を撮影するための光学系である。眼底画像は、眼底の正面画像であってもよいし、断層画像(断面画像)であってもよい。なお、断層画像は、OCTデータであってもよい。
【0012】
観察光学系は、前眼部の観察画像を取得する。前眼部の観察画像は、例えば、撮影光学系と被検眼とのアライメント(位置合わせ)に利用される。前眼部の観察画像は、前眼部の正面画像であってもよい。この場合、観察光学系は、撮影光学系と対物光学系等を共用していてもよい。
【0013】
投影光学系は、被検眼の角膜に対して光束を投影する。これにより、光束の角膜反射像が、指標像として観察画像に映り込み、アライメントにおいて利用され得る。角膜に対して投影する光束の状態、投影位置、光束の数は、目的に応じて適宜定められる。一例として、一対の無限遠の視標光束と、有限遠の視標光束と共にリングパターンを形成する有限遠の指標光束とが、角膜の異なる位置に投影されてもよく、この場合、指標像の検出区間をXYZの各方向に関して確保しやすく、指標像に基づいて正確なアライメント誘導が可能である。
【0014】
駆動部は、撮影光学系、観察光学系、および、投影光学系、を含む撮影ユニットを、被検眼に対して移動させる。駆動部は、XYZの各方向に撮影ユニットを移動させるために1つ以上のアクチュエータを有していても良い。
【0015】
制御部は、第1位置情報と、第2位置情報と、に基づいて、駆動部を制御して被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整する。第1位置情報、および、第2位置情報は、前眼部の観察画像に基づいて検出される。第1位置情報は、被検眼の瞳孔の位置に関する情報である。第2位置情報は、光束による指標像の位置に関する情報である。本実施形態において、制御部は、被検眼に対する撮影ユニットの位置を、撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、第1位置情報と第2位置情報との両方に基づいて調整する。第1位置情報と第2位置情報との両方が利用されることで、撮影光学系の光軸を被検眼の瞳孔中心に一致するようにアライメントする場合に、信頼性の高いアライメントが実現される。
【0016】
特に、本実施形態において、制御部は、被検眼に対する撮影ユニットの位置を、左右方向に関しては第1位置情報に基づいて調整すると共に、上下方向に関しては第2位置情報に基づいて調整してもよい。ここで、瞳孔に瞼が重なることで、第1位置情報に基づいてY方向に関して瞳孔中心の位置が適切に特定できない場合が考えられる。これに対し、撮影光学系の光軸に対して固視標の呈示位置が上下方向に方向に偏心していない限りにおいて、Y方向に関して、第2位置情報に基づく角膜頂点の位置は、瞳孔中心と略一致すると考えられる。よって、前記撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように適切にアライメントが行われる。
【0017】
追加的に、眼底撮影装置は、固視標呈示部を備えていても良い。固視標呈示部は、被検眼に対して固視標を呈示すると共に、被検眼の固視方向を、撮影光学系の光軸に沿った光軸方向と、光軸方向とは異なる周辺方向とに誘導可能である。なお、光軸方向は、黄斑部を中心として撮影するときの固視の方向であって固視標の呈示位置は、撮影光学系の光軸と同軸上である。また、周辺方向では、黄斑部とは異なる部位を中心として撮影するときの固視の方向であって固視標の呈示位置は、撮影光学系の光軸から離れた位置
となる。
【0018】
制御部は、光軸方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、撮影光学系の光軸が被検眼の角膜頂点に一致するように、第2位置情報との両方に基づいて被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整してもよい。また、制御部は、周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、第1位置情報と第2位置情報との両方に基づいて被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整してもよい。光軸方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、撮影光学系の光軸が被検眼の角膜頂点に一致するようにアライメントされることによって、撮影光学系の光軸が眼球光学系の中心付近を通過するため、屈折や収差の影響が低減されて、良好な眼底画像が撮影されやすい。また、周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、被検眼の視軸が撮影光学系の光軸に対して傾くため、前眼部観察画像上において、瞳孔の見かけの幅が狭くなると共に、瞳孔中心に対する角膜頂点の分離量が増大されるので、撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するようにアライメントすることで、光束のケラレが生じにくくなり、撮影成功率が向上する。このように、それぞれの固視方向に適したアライメントが行われる。
【0019】
前述の通り、投影光学系は、有限遠の光束と無限遠の光束とのそれぞれを、被検眼の角膜の異なる位置に投影してもよい。有限遠の光束に基づく第1指標像に比べて、無限遠の光束に基づく第2指標像が前眼部の観察画像から検出可能な区間(被検眼に対して撮影ユニットが位置する区間)は限定的である。そこで、制御部は、有限遠の光束に基づく第1指標像と無限遠の光束に基づく第2指標像とのうち両方が前眼部の観察画像から検出される場合は、第1指標像および第2指標像の像高比に基づいて、Z方向に関して撮影ユニットの位置を調整してもよい。なお、この場合において、更に、制御部は、被検眼の角膜曲率に基づいて、Z方向に関する撮影ユニットの位置を補正してもよい。詳細については、本出願人による特開2013-244364号公報を参照されたい。更に、第1指標像と第2指標像とのうち第1指標像が観察画像から検出される場合は、第1指標像の像高に基づいてZ方向に関して撮影ユニットの位置を調整してもよい。例えば、投影光学系からリングパターンで第2指標像が投影されている場合は、リングパターンを楕円近似し、楕円の径(長径,短径、または両者の平均)が目標値となるように撮影ユニットの位置をZ方向に関して調整してもよい。また、その途中で、第2指標像が検出された段階で、第1指標像および第2指標像の像高比に基づく調整制御に切り替えても良い。これにより、無限遠の光束に基づく第2指標像が前眼部の観察画像から検出できない場合であっても、Z方向に関するアライメント誘導が可能となる。
【0020】
また、周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合であって、角膜が斜めを向いていることで前眼部の観察画像上における指標像の歪みが大きい場合は、像高比を利用することが適さない場合がある。例えば、撮影光学系の光軸に対して15°よりも十分大きな角度だけ(好ましくは20°以上)固視方向を偏心させた場合に問題が生じる。この場合、第1指標像および第2指標像によるリングパターンを楕円近似し、楕円の径(長径,短径、または両者の平均)が目標値となるように撮影ユニットの位置をZ方向に関して調整してもよい。指標像の歪みが大きい場合は、角膜曲率も精度よく求めることができないので、この場合は、被検眼の角膜曲率に基づく撮影ユニットの位置補正は不要となる。
【0021】
また、前述の固視標呈示部を有し、投影光学系から、有限遠の光束と無限遠の光束とのそれぞれが、被検眼の角膜の異なる位置に投影される場合において、制御部は、光軸方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合と、周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合と、のそれぞれの場合で、Z方向に関しする撮影ユニットの位置の調整手法を切換えても良い。すなわち、制御部は、光軸方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、第1指標像および第2指標像の像高比に基づいて、Z方向に関して撮影ユニットの位置を調整し、周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、第1指標像の像高に基づいてZ方向に関して撮影ユニットの位置を調整してもよい。周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導した場合、第1指標像および第2指標像によるパターンおよび指標像そのものが歪むため、像高比に基づいて取得されるZ方向に関する被検眼と撮影ユニットとの位置関係の検出誤差が増大される。これに対し、本実施形態において、周辺方向へ被検眼の固視方向を誘導する場合は、第1指標像の像高に基づいてZ方向に関して撮影ユニットの位置を調整ことで、上記のように指標像の歪みが問題となる場合に、より信頼性の高いアライメント誘導が実現される。
【0022】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る眼底撮影装置について、特に断りが無い限り、第1実施形態との相違点となる、制御部の構成を中心に説明する。第2実施形態の眼底撮影装置は、第1実施形態と同様に、撮影光学系と、観察光学系と、投影光学系と、駆動部と、制御部(制御手段)と、を備える。
【0023】
第2実施形態において、制御部は、被検眼の瞳孔の位置に関する瞳孔位置情報を、上瞼と瞳孔との重なりを考慮して観察画像に基づいて検出する。また、制御部は、撮影光学系の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、瞳孔位置情報に基づいて駆動部を制御して、被検眼に対する撮影ユニットの位置を調整する。ここで、瞳孔位置情報は、例えば、第1実施形態に示したように、前眼部の観察画像における瞳孔の画像情報と、観察画像における指標像(角膜反射像)と、に基づいて検出されてもよい。この場合、眼底撮影装置は、被検眼の角膜に対して光束を投影する投影光学系を有する。また、制御部は、被検眼の瞳孔の位置のうち左右方向の位置は観察画像上の瞳孔に基づいて検出し、上下方向の位置は光束の角膜反射像に基づいて検出してもよい。また、上瞼と瞳孔との重なりを考慮して瞳孔位置情報を検出する手法は、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、瞳孔として検出した領域の境界を楕円近似したときの中心に対して、近似楕円の離心率に応じて上方にオフセットした値を、瞳孔中心として求めても良い。また、例えば、被検眼の瞳孔の位置に関する瞳孔位置情報を、前記観察画像上の瞳孔の一部の輪郭に基づいて検出してもよい。詳細には、観察画像において瞳孔の領域を検出した後、瞳孔境界のうち、上側部分を利用せずに下側のみの情報に基づいて楕円近似を行ったときの中心を瞳孔中心として求めても良い。
【0024】
「実施例」
図面を参照して、本開示の一実施例を示す。実施例に係るOCT装置1は、被検眼のOCTデータを取得する。説明の便宜上、本実施例では、特に断りが無い限り、OCT装置1は、眼底のOCTデータを撮影するものとする。
【0025】
最初に、図1を参照しつつ、OCT装置1の構成を説明する。図1は、眼底のOCTデータを撮影可能な状態における装置構成を示している。実施例の説明においては、被検眼Eの軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。
【0026】
図1,2に示すように、実施例に係るOCT装置1は、撮影ユニット2、駆動部5、顔支持ユニット7、および、制御部70を、有している。
【0027】
<撮影ユニット>
撮影ユニット2は、OCT装置1における主要な光学系を有する。本実施例において、撮影ユニット2は、OCT光学系(干渉光学系)10と、導光光学系10aと、眼底観察光学系(SLO光学系)30と、前眼部観察光学系40(前眼部観察光学系)と、指標投影光学系50と、を有する。OCT光学系10、眼底観察光学系30、前眼部観察光学系40、の光路は、ビームスプリッタ/コンバイナ16,17によって分岐/結合される。
【0028】
<OCT光学系>
OCT光学系10は、被検眼Eの眼底に照射される測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を検出する。OCT光学系10は、例えば、SD-OCTであってもよいし、SS-OCTであってもよいし、その他の撮影原理によるOCTであってもよい。
【0029】
OCT光学系10は、OCT光源11、光分割器12、参照光学系20、および、検出器25を少なくとも有する。なお、本実施例における参照光学系20は、反射型の光学系であるものとして説明するが、透過型の光学系であってもよい。
【0030】
OCT光源11は、低コヒーレント光を発する。OCT光源11から出射された光は、光分割器12によって、測定光と参照光とに分割される。本実施例において、光分割器12は、カップラ(スプリッタ)が利用される。測定光は、導光光学系10aを介して被検眼Eへ導かれ、参照光は、参照光学系20へ導かれる。図1において、ポラライザ13は、参照光路上に配置されている。参照光は、参照光路上に配置された図示なきミラーによって折り返され、光分割器12によって、測定光の戻り光と合波された状態で、検出器25へ入射する。これにより、戻り光と、参照光とのスペクトル干渉信号が検出される。例えば、SD-OCTにおいては、スペクトロメータが検出器25として利用される。
【0031】
本実施例において、参照光学系20配置される図示なきミラーは、光軸に沿って移動可能であって、ミラーの位置に応じて測定光と参照光との光路長差が調整される。また、ポラライザ13によって、測定光と参照光との偏光が調整される。
【0032】
その他、光分割器12と被検眼Eとの間の光路上には、フォーカシングレンズ14、走査部(光スキャナ)15、および、対物レンズ60、が配置されている。フォーカシングレンズ14、走査部(光スキャナ)15、および、対物レンズ60、を含む、光分割器12と被検眼Eとの間の光学系によって、本実施例における導光光学系10aが形成されている。
【0033】
本実施例では、フォーカシングレンズ14が光軸方向へ変位されることによって、OCT光学系10におけるフォーカス位置が変更される。
【0034】
走査部15は、OCT画像の取得位置を変更するために利用される。走査部15は、測定光を、被検眼Eの眼底において二次元的に走査させるために利用されてもよい。走査部15は、例えば、走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを含んでいてもよい。各々の光スキャナは、ガルバノミラーであってもよいし、その他の光スキャナであってもよい。
【0035】
対物レンズ60は、測定光を被検眼における眼底へ導く。対物レンズ60を介して走査部15と共役な位置を旋回点として、測定光は旋回される。図1に示すように、旋回点に被検眼の前眼部が位置する場合、測定光は虹彩でケラレることなく眼底に到達し、走査部15の駆動に基づいて眼底上で測定光が走査される。この場合、測定光の集光面は眼底上に形成される。
【0036】
<眼底観察光学系>
眼底観察光学系30は、観察画像として、眼底の正面画像を取得するために利用される。眼底観察光学系30を介して、眼底の正面画像が、観察画像として取得される。
【0037】
図1では、眼底観察光学系30の一例として、SLO光学系が示されている。眼底観察光学系30は、照射光学系と、受光光学系と、を少なくとも有していてもよい。照射光学系は、被検眼の撮影部位に対して観察光を照射する。受光光学系は、観察光による眼底反射光を受光素子39によって受光する。受光素子30からの出力信号に基づいて観察画像が逐次取得される。
【0038】
眼底観察光学系30は、更に、フォーカス調整部を有する。フォーカス調整部は、フォーカシングレンズ34を含む。
【0039】
観察光源31には、例えば、レーザダイオード光源が用いられる。観察光路には、フォーカシングレンズ34の他に、走査部35、および、対物レンズ60が配置されている。走査部35は、被検眼の撮影部位において二次元的に光を走査する。走査部35は、例えば、ポリゴンミラーと、ガルバノスキャナとの組み合わせを含んでいてもよい。
【0040】
また、観察光源31とフォーカシングレンズ34との間には、ビームスプリッタ33が配置されている。そして、ビームスプリッタ33の透過方向には、共焦点開口37と、受光素子39と、が配置されている。
【0041】
観察光は、ビームスプリッタ33によって反射された後、フォーカシングレンズ34を介して、走査部35に達する。走査部35を経た光は、ビームスプリッタ17を透過した後、対物レンズ60を介して、被検眼の眼底に照射される。
【0042】
眼底からの反射光は、投光経路を遡って、ビームスプリッタ33まで導かれる。眼底からの反射光は、ビームスプリッタ33を透過し、更に、共焦点開口37を介して、受光素子39によって受光される。受光素子39からの受光信号に基づいて、眼底の正面画像が形成される。形成された正面画像は、メモリ72に記憶されてもよい。
【0043】
<前眼部観察光学系>
前眼部観察光学系40は、被検眼Eの前眼部の正面画像(観察画像という)を観察するために利用される。前眼部観察光学系40は、少なくとも撮像素子45を有する。本実施例では、撮像素子45に前眼部の像が結像する。前眼部観察光学系40を介して取得される前眼部の観察画像は、眼底撮影時における被検眼Eする撮影ユニット2のアライメントおよび追従制御(トラッキング)に利用される。
【0044】
<指標投影光学系>
指標投影光学系50は、被検眼Eの角膜に対してアライメント指標を投影する。指標投影光学系50は、第1指標投影光学系53と、第2指標投影光学系51と、を備える。第1指標投影光学系53は、平行光(無限遠光)を投影する。また、第2指標投影光学系51は、発散光(有限遠光)を投影する。図2(アライメント指標投影光学系50の配置を被検眼側から見た図)に示すように、第1指標投影光学系53は対物レンズ60の光軸L1を基準に0度、180度の方向に対称に配置され、第2指標投影光学系51は、光軸Lを中心に45度、90度、135度、225度、270度及び315度の方向で同心円上に配置されている。本実施例では、指標投影光学系50から、リングパターンでアライメント指標が投影される。
【0045】
本実施例において、Z方向のアライメント状態は、無限遠の指標像と有限遠の指標像との像高比に基づいて検出される。また、XY方向のアライメント状態は、第2指標投影光学系51による指標像の中心位置に基づいて検出される。
【0046】
<固視投影光学系>
OCT装置1は、固視標投影光学系を更に有する。固視標投影光学系は、内部固視灯であってもよい。固視標投影光学系は、被検眼Eに対して固視標(固視光束)を投影することによって、被検眼Eの視線方向を誘導する。本実施例において、固視標投影光学系は、固視標の呈示位置を2次元的に変更でき、被検眼Eを複数の方向に誘導できる。結果的に撮像部位が変更される。本実施例において、固視投影光学系は、SLO光学系である眼底観察光学系30によって兼用される。観察光源とは異なる可視光源を設け、可視光の投影タイミングを制御することによって、被検眼Eに対して固視標が投影される。
【0047】
<駆動部>
駆動部5は、撮影ユニット3を、被検眼Eに対してXYZの各方向に移動させる。駆動部5は、各方向に撮影ユニット2を移動させるためのアクチュエータを有しており、制御部70からの制御信号に基づいて駆動される。
【0048】
<顔支持ユニット>
顔支持ユニット7は、撮影ユニット2に対して被検眼Eが向き合うように、被検者の顔を支持する。顔支持ユニット7は、例えば、顎台7aを備えてもよい。顎台7aには、被検者の顔が載置される。本実施例において、顔支持ユニット7は、顎台7aの位置を上下方向に移動させるアクチュエータを有する。また、顎台7aには、被検者の顔が載置されたことを検出するセンサを有していてもよい。
【0049】
<制御系>
次に、OCT装置1の制御系について説明する。
【0050】
OCT装置1の制御部70は、OCT装置1における各種動作を司る。また、本実施例では、制御部70によって、各種の画像処理が行われる。つまり、制御部70によって、画像処理器が兼用される。制御部70は、例えば、CPU、RAM、および、ROM等によって構成されてもよい。
【0051】
また、本実施例において、制御部70は、モニタ80に接続されており、モニタ80の表示制御を行う。更に、制御部70は、メモリ72、操作部85、等と接続されている。
【0052】
操作部85として、本実施例では、マウス等のポインティングデバイスを有していてもよい。また、モニタ80が、タッチパネルディスプレイであってもよく 、この場合は、モニタ80が操作部85を兼用する。モニタ80および操作部85は、ネットワーク等を介して、OCT装置1とは遠隔地に配置されていてもよい。
【0053】
<動作説明>
次に、図3図6を参照してOCT装置1の撮影動作の流れを説明する。なお、あらかじめ、被検者の顔は、顔支持ユニット7の顎台7aに載置されている。
【0054】
<S1:初期動作>
まず、制御部70は、各種画像の取得動作を開始すると共に、固視標およびアライメント指標の投影を開始する。また、制御部70は、撮影画面100を表示させる。画面100には、被検眼Eの画像の表示領域(第1領域110、第2領域120、および、第3領域130)と共に、撮影条件を設定したり、装置の状態を表示したり、するためのGUIが配置されている。図4に示すように、前眼部観察画像が第1領域110に、眼底観察画像が第2領域120に、Bスキャン画像が第3領域130に、それぞれ随時表示される。
【0055】
<S2:撮影部位およびスキャンパターンの選択>
撮影対象眼(左右のいずれか)、および、撮影対象眼における撮影部位、および、スキャンパターンが、撮影画面100を介した操作入力に基づいて選択される。便宜上、本実施例では、撮影対象眼(左右のいずれか)、撮影部位、および、スキャンパターンをまとめて、スキャン設定と称する。制御部70は、撮影ユニット2を、撮影対象眼に応じた初期位置に移動させる。本実施例において、初期位置では、前眼部観察光学系40の画角内に撮影対象眼が存在し、撮影ユニット2が被検者の顔に接触しない程度の十分な間隔が確保されるように設定されている。
【0056】
また、制御部70は、固視標の呈示位置を、撮影対象眼および撮影部位に応じて変更する。撮影部位は、眼底の任意の部位であってもよい。本実施例では、少なくとも、黄斑を中心とする黄斑領域、乳頭を中心とする乳頭領域、および、黄斑および乳頭を含む広域領域、の少なくとも3つの領域の中から、撮影部位が選択される。黄斑領域が撮影部位として選択された場合は、固視標の呈示位置は、撮影光学系2の光軸上となる。このときの呈示位置に対して、乳頭領域および広域領域が撮影部位として選択された場合における呈示位置は変位される。すなわち、乳頭領域が撮影部位として選択された場合は、乳頭が撮影光学系2の光軸上に配置されるように、光軸から15°程度偏心させた位置が固視標の呈示位置として設定される。また、広域領域が撮影部位として選択された場合は、黄斑と乳頭の中間が撮影光学系2の光軸上に配置されるように、光軸から7°程度偏心させた位置が固視標の呈示位置として設定される。
【0057】
<S3:アライメント>
一例として、スキャン設定が選択された後に、アライメントが行われる。図5から図7を参照して説明する。まず、検者は、顎台高さ調整ボタン242、ジョイスティック86等を操作して、第1領域110上に被検眼の前眼部が表示されるように、撮影ユニット2と被検眼Eとの位置関係をラフに調整する(S31)。アライメントと並行して、制御部70は、前眼部観察画像を解析して被検眼の検出処理を行う(S32)。検出処理では、前眼部観察画像を解析して、被検眼の瞳孔を検出する。このとき、種々の瞳孔検出処理のいずれかが利用され得る。更に、本実施例では、アライメント指標の指標像(角膜反射像)が前眼部観察画像から検出される。
【0058】
検出処理の結果として、前眼部観察画像から被検眼Eが検出された段階で、自動アライメントが開始される。検出処理(S32)において、瞳孔および指標像のいずれかが検出されていれば、被検眼が検出されていると判定される。
【0059】
制御部70は、瞳孔を検出した場合、更に、瞳孔の位置に関する第1位置情報を取得する。例えば、前眼部観察画像上の瞳孔中心の座標が、XY方向に関する第1位置情報として取得されても良い。この場合、被検眼の瞳孔領域Epは、他の部分より暗く撮像されるため、例えば、周囲(虹彩)と輝度を比較することにより抽出が可能である。瞳孔領域Epの中心は、例えば、抽出された瞳孔領域の近似楕円の中心として検出されてもよい。また、前眼部画像の先鋭度に基づいてZ方向に関する第1位置情報を取得しても良い。被検眼Eに対して撮影ユニット2を前後方向に移動させたときに先鋭度のピークが形成される位置において、前眼部観察光学系のピントが瞳孔と略一致する位置である。適正作動距離は当該位置の近傍に設定されている。
【0060】
また、制御部70は、指標像を検出した場合、指標像の位置に関する第2位置情報を取得する。指標像は、他の部分より明るく撮像されるため、例えば、周囲と輝度を比較することにより抽出が可能である。例えば、前眼部観察画像上の各指標像の座標が第2位置情報として取得されても良い。
【0061】
本実施例では、S2においてあらかじめ設定された撮影部位に応じて(固視標の呈示位置に応じて)、自動アライメントにおける誘導制御の内容が異なる。すなわち、自動アライメントでは、撮影ユニット2と被検眼との偏移が、許容範囲内となるように撮影ユニット2が移動されるところ、被検眼において偏移の基準となる位置が、撮影部位に応じて変更される。
【0062】
但し、自動アライメントが開始される段階では、被検眼Eに対して撮影ユニット2の位置が遠いために、指標像が検出されておらず、瞳孔の検出が有効である場合が考えられる。この場合、本実施例において制御部70は、第1位置情報に基づいて、撮影ユニット2を被検眼Eに対して接近させる。通常は、接近の途中で指標像が検出されるようになる。
【0063】
<S33:撮影部位が黄斑領域>
撮影部位が黄斑領域である場合、制御部70は、XY方向に関しては、第2位置情報に基づいて誘導制御が行われる。詳細には、被検眼Eの角膜頂点とOCT光学系2の光軸とが一致するように、XY方向に関して撮影ユニット2を移動させる。図6に示すように、被検眼Eの角膜頂点は、前眼部観察画像上における指標像によるリングパターンRの中心P1として検出される。前眼部観察画像上におけるOCT光学系2の光軸の位置は、既知の座標(基準座標と称する)である。リングパターンの中心座標と基準座標との偏移が閾値以下となるように、XY方向に関して撮影ユニット2を移動させる。偏移が閾値以下となる適正アライメント状態では、OCT光学系2の光軸が角膜頂点を通過して黄斑に到達する。OCT光学系2の光軸が、眼球光学系の中心付近を通過するため、屈折や収差の影響が低減されて、良好な画質でOCT画像を撮影できるようになる。Z方向に関しては、第2位置情報に基づいて誘導制御が行われる(詳細は後述する)。
【0064】
<S34:撮影部位が乳頭または広域領域>
撮影部位が乳頭または広域領域である場合、制御部70は、OCT光学系2の光軸が被検眼の瞳孔中心に一致するように、第1位置情報と第2位置情報との両方に基づいて撮影ユニット2の誘導制御が実行される。本実施例において、撮影部位が乳頭または広域領域である場合、固視標の呈示位置は、OCT光学系2の光軸に対して左右方向に変位される。固視誘導の結果、被検眼の視軸が光軸に対して傾くため、前眼部観察画像上において、瞳孔の見かけの幅が狭くなって撮影光束がケラレやすくなると共に、瞳孔中心P3に対する角膜頂点P1の分離量が増大される。これに対し、OCT光学系2の光軸が被検眼の瞳孔中心P3に一致するようにアライメントが行われることで、光束のケラレが生じにくくなり、撮影が良好に行われやすくなる。
【0065】
本実施例では、撮影ユニット2が、X方向に関しては第1位置情報に基づいて誘導され、Y方向に関しては第2位置情報に基づいて誘導される。詳細には、図7に示すように、前眼部観察画像に基づいて検出される瞳孔領域Epの中心P2と、基準座標との偏移が、閾値以下となるように、撮影ユニット2がX方向に移動され、且つ、前眼部観察画像上における指標像によるリングパターンRの中心P1(角膜頂点)と基準座標とのY方向に関する偏移が、閾値以下となるように、撮影ユニット2がY方向に移動される。ところで、瞳孔領域の中心P2を前眼部観察画像に対する画像処理に基づいて検出する場合に、上瞼によって瞳孔領域Epの一部が隠れてしまうことで、検出位置P2が実際よりも下方向にズレてしまう可能性が考えられる。加えて、瞳孔の大きさも上瞼の位置も刻々と変動してしまうため、Y方向に関して検出位置が不安定になりやすい可能性が考えられる。これに対し、固視標の呈示位置が、上下方向に方向に偏心していない限りにおいて、本実施例では、上瞼と瞳孔との重なりを考慮して観察画像に基づいて瞳孔中心が検出される。一例として、本実施例では、リングパターンRの中心P1の座標として特定される角膜頂点のY方向の位置は、実際の瞳孔中心と略一致する。また、瞳孔の大きさおよび瞼の位置の時間的な変動に影響されない。よって、撮影ユニット2をX方向に関しては検出された瞳孔領域Epの中心P2に誘導すると共に、Y方向に関してはリングパターンRの中心P1誘導することによって、OCT光学系2の光軸が被検眼の瞳孔中心P3に一致するように、適切にアライメントできる。
【0066】
撮影部位が乳頭または広域領域である場合は、Z方向に関しては、撮影部位が黄斑領域である場合と同様に、第2位置情報に基づいて誘導制御が実行される。
【0067】
ここで、Z方向に関して行われる、第2位置情報に基づく誘導制御について説明する。まず、有限遠光による指標像に対して、無限遠光による指標像が検出できる区間は狭いので、無限遠光による指標像は検出されずに、有限遠光による指標像が検出される場合があり得る。この場合、無限遠光の指標像が検出されるまでは、有限遠光による指標像によるリングパターンのリング径R1を検出し、リング径R1が所定の径まで小さくなるように撮影ユニット2を被検眼Eに対して接近させる。通常は、その途中で、無限遠光による指標像が検出されるようになる。有限遠の指標像と無限遠の指標像との両方が検出された場合、前眼部観察画像上における有限遠の指標像と無限遠の指標像との像高比H1/H2が、あらかじめ定められた範囲に収まるように、被検眼Eに対して撮影ユニット2を移動させ、撮影ユニット2の移動を停止させる。一方、無限遠光による指標像が検出されることなく、リング径R1が所定の径まで小さくなるまで撮影ユニット2が接近してしまったら、その段階で、撮影ユニット2の移動を停止させる。よって、Z方向の偏移は、有限遠の指標像と無限遠の指標像との像高比H1/H2、または、リング径R1、におけるそれぞれの目標値(目標範囲)からの誤差として取得される。
【0068】
なお、本実施例では、偏移が許容範囲に到った後に、撮影ユニット2の移動は停止されるが、偏移の検出は継続される。その後の眼の動きに伴って、偏移が許容範囲を超えると、偏移が許容範囲に収まるように、撮影ユニット2を移動させる。このような追従制御が、以下の、撮影条件の調整、および、撮影用のスキャン、の少なくともいずれかの間、実行されていてもよい。
【0069】
<S4:OCT光学系の調整>
図2に戻って説明を続ける。本実施例では、適正アライメント状態に至ったことが検出された後に、アライメント以外の撮影条件が調整される(S4)。例えば、OCT光学系2における検出条件が調整される。本実施例では、検者がOptimizeボタン223を操作することによって、検出条件の調整が開始されるが、アライメント状態の検出結果に基づいて、自動的に検出条件の調整が開始されてもよい。このとき、少なくとも、OPL、および、フォーカスに関する条件が調整される。追加的に、偏光が調整されてもよい。検出条件の調整結果は、第3領域130におけるOCT観察画像に反映される。例えば、OPLの調整結果は、第3領域130におけるZ方向に関する眼底の像位置に反映される。また、眼底においてゼロディレイに近い側の層領域の輝度が相対的に高くなる。また、合焦位置における組織の解像度が相対的に高くなる。検者は、第3領域130におけるOCT観察画像を確認し、自動調整に失敗していた場合、または、所望の層領域を詳細に撮影したい場合、等に、フォーカスコントローラ224および/またはOPLコントローラー225を操作する。例えば、網膜表層側よりも脈絡膜側が高感度に撮影したい場合に、ゼロディレイ位置およびフォーカス位置が手動で変更されてもよい。
【0070】
また、撮影条件として、スキャンパターンを構成する各スキャンラインのスキャン長、角度、および、ピッチ等のいずれかが調整されてもよい。
【0071】
<S5:眼底OCTを撮影>
OCT光学系10における撮影条件が適切に調整された後、検者は、Captureボタン227を操作する。これにより、あらかじめ選択されているスキャン設定で、撮影用のスキャンが実行される。スキャンが完了した後、スキャンパターン等のスキャン設定を変更して、被検眼を繰り返し撮影してもよい(S6⇒S2)。その場合においても、スキャン設定に応じて(より詳細には、スキャン設定と対応する撮影部位および固視標の呈示位置に応じて)、上述の通り、アライメント誘導が行われる。
【0072】
<変形例>
以上、実施形態に基づいて本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0073】
例えば、上記実施例では、XY方向に関するアライメントの誘導制御において、第1位置情報と第2位置情報との両方に基づく誘導制御と、第2位置情報に基づく誘導制御と、が固視標の呈示位置に応じて自動的に切り替えられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0074】
例えば、固視灯の呈示位置にかかわらず検者からの操作入力に基づいて、第1位置情報に基づく誘導制御、第2位置情報に基づく誘導制御、第1位置情報および第2位置情報に基づく誘導制御、のうちいずれかを選択し、設定可能であっても良い。誘導制御の方式を選択するための操作入力は、例えば、画面100上のGUIを介して入力されても良い。この場合、例えば、前眼部観察画像上において、瞳孔中心に対してカーソルを合わせて選択操作を入力した場合に、OCT光学系2の光軸が瞳孔中心に一致するように、第1位置情報に基づいて、または、第1位置情報および第2位置情報に基づいて誘導されてもよい。また、誘導制御の方式を選択するための操作入力は、図示なきジョイスティックを介して入力されても良い。
【0075】
また、上記実施例では、自動アライメントが行われる場合について説明したが、手動アライメントの際に、レチクル(電子的な指標)を前眼部観察画像上に表示させてもよい。この場合、第1位置情報と第2位置情報とに基づいて特定される瞳孔中心P3の位置に対して、レチクルを重畳させてもよい。
【0076】
また、例えば、検出処理において、固視灯の呈示位置にかかわらず、前眼部観察画像上における角膜頂点の位置と、瞳孔中心と、のズレ量を検出し、ズレ量が閾値未満の場合は、光軸が角膜頂点に一致するようにアライメントし、ズレ量が閾値以上の場合は、光軸が瞳孔中心に一致するようにアライメントしてもよい。
【0077】
また、上記実施例では、上瞼と瞳孔との重なりを考慮して観察画像に基づいて瞳孔中心を検出する手法の一例として、第1位置情報と第2位置情報との両方を利用する場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、検出した瞳孔領域のうち、上瞼と重なりにくい下半分の情報のみに基づいて瞳孔中心を求めてもよい。また、例えば、瞳孔検出と共に、瞳孔周辺の眼組織の情報(例えば、虹彩や、虹彩―強膜の境界)を利用して、瞳孔中心を求めても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 OCT装置
2 撮影ユニット
10 OCT光学系
40 前眼部観察光学系
51,52 指標投影光学系
70 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7