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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052406
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240404BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240404BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 B
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159101
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠太
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 浩司
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA07
2D003CA02
2D003DA04
2D015GA03
2D015GB02
2D015GB03
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】建設機械の周囲に位置する地面の急激な変化をより正確に判定することができる建設機械を提供すること。
【解決手段】車体の周囲に存在する物体の位置を検知するが検知した物体の位置が所定の物体検知範囲内である場合に、建設機械の周囲に物体が存在する旨を示す物体検知信号を出力する制御装置と、制御装置から出力された物体検知信号に応じて、建設機械の周囲に物体が存在する旨を報知する報知装置とを備えた建設機械において、制御装置は、測距センサが、載置面よりも下方を含むように設定された第2検知範囲内に物体を検知していない場合には、建設機械の周囲に地形の急激な変化がある旨を示す注意信号を報知装置に出力し、報知装置は、制御装置から出力された注意信号に応じて、建設機械の周囲の地形に急激な変化がある旨を報知する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設置され、前記車体の周囲に存在する物体の位置を検知する測距センサと、
前記測距センサが検知した物体の位置が所定の物体検知範囲内である場合に、前記建設機械の周囲に物体が存在する旨を示す物体検知信号を出力する制御装置と、
前記制御装置から出力された前記物体検知信号に応じて、前記建設機械の周囲に物体が存在する旨を報知する報知装置とを備えた建設機械において、
前記制御装置は、
前記測距センサが、前記建設機械の履帯が接する載置面よりも上方に設定された第1検知範囲内に物体を検知している場合には、前記物体検知信号を前記報知装置に出力し、
前記測距センサが、前記載置面よりも下方を含むように設定された第2検知範囲内に物体を検知していない場合には、前記建設機械の周囲に地形の急激な変化がある旨を示す注意信号を前記報知装置に出力し、
前記報知装置は、前記制御装置から出力された前記注意信号に応じて、前記建設機械の周囲の地形に急激な変化がある旨を報知する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記基準面は、前記建設機械が配置される地面に基づいて設定されることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械において、
下部走行体と、
下部走行体の上部に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、
を備え、
前記測距センサは、前記上部旋回体の上面に取り付けられ、検知方向が斜め下方向に延在するように設置されたことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械において、
前記報知装置は、報知内容に応じた音を発するブザー、及び、報知内容に応じて点灯又は点滅する積層信号灯であり、
前記制御装置から前記物体検知信号が出力された場合には、前記第1の報知態様で警報を実行し、
前記制御装置から前記注意信号が出力された場合には、前記第1の報知態様と異なる第2の報知態様で警報を実行する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械において、
前記制御装置は、前記注意信号を出力する際に、前記建設機械の動作速度を減速する減速制御信号、又は、動作を停止させる停止制御信号を出力ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業現場で稼働する建設機械としては、例えば、特許文献1に記載のように、安全性の向上を目的として機体周囲の物体を検知する機能を備えたものが知られている。特許文献1には、走行可能な建設機械に搭載され、建設機械の周囲に位置する崖等の急激な地形変化をもつ危険領域を監視して建設機械が危険領域に進入することを未然に防止する危険領域監視装置として、多眼カメラを備え、多眼カメラによって撮像された複数の撮像画像から得られた多眼カメラと被写体との間の距離情報をもとに危険領域の位置を認識する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-222882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、多眼カメラで撮像した画像に基づいて危険領域の位置を認識している。このため、作業現場が暗い場合や影が生じている場合、或いは、作業現場が明るすぎる場合や多眼カメラに直射日光が当たっている場合など、作業現場の撮影環境によって画像の質が低下し、危険領域を正確に認識することが困難となってしまう。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、建設機械の周囲に位置する地面の急激な変化をより正確に判定することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、車体に設置され、前記車体の周囲に存在する物体の位置を検知する測距センサと、前記測距センサが検知した物体の位置が所定の物体検知範囲内である場合に、前記建設機械の周囲に物体が存在する旨を示す物体検知信号を出力する制御装置と、前記制御装置から出力された前記物体検知信号に応じて、前記建設機械の周囲に物体が存在する旨を報知する報知装置とを備えた建設機械において、前記制御装置は、前記測距センサが、前記建設機械の履帯が接する載置面よりも上方に設定された第1検知範囲内に物体を検知している場合には、前記物体検知信号を前記報知装置に出力し、前記測距センサが、前記載置面よりも下方を含むように設定された第2検知範囲内に物体を検知していない場合には、前記建設機械の周囲に地形の急激な変化がある旨を示す注意信号を前記報知装置に出力し、前記報知装置は、前記制御装置から出力された前記注意信号に応じて、前記建設機械の周囲の地形に急激な変化がある旨を報知するものとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建設機械の周囲に位置する地面の急激な変化をより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を通常使用モードにおける検知範囲とともに模式的に示す側面図である。
図2】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を通常使用モードにおける検知範囲とともに模式的に示す背面図である。
図3】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を通常使用モードにおける検知範囲とともに模式的に示す上面図である。
図4】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を傾斜地確認モードにおける検知範囲とともに模式的に示す側面図である。
図5】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を傾斜地確認モードにおける検知範囲とともに模式的に示す背面図である。
図6】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を傾斜地確認モードにおける検知範囲とともに模式的に示す上面図である。
図7】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を傾斜地確認モードにおける検知範囲とともに模式的に示す側面図である。
図8】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を傾斜地確認モードにおける検知範囲とともに模式的に示す背面図である。
図9】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を傾斜地確認モードにおける検知範囲とともに模式的に示す上面図である。
図10】コントローラの処理機能を関連構成とともに示す機能ブロック図である。
図11】物体検知処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図1図11を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、建設機械として油圧ショベルを例示して説明するが、周囲の物体を検知するためのセンサを備えるものであれば適用可能である。また、本願発明は、電気駆動の建設機械のように油圧以外の動力で駆動される建設機械や、ホイールローダのような油圧ショベル以外の建設機械など、他の建設機械への適用も可能である。
【0010】
図1図9は、本発明が適用される建設機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す図であり、図1図4及び図7は側面図、図2図5及び図8は背面図、図3図6及び図9は上面図である。
【0011】
図1図9において、油圧ショベル100は、下部走行体101と、下部走行体101の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体102と、上部旋回体102の前方に設けられた多関節型のフロント作業機103とから概略構成されている。
【0012】
フロント作業機103は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム31、アーム32、及び、バケット33)を回動可能に連結して構成されている。ブーム31の基端は上部旋回体102の前部においてブームピンを介して回動可能に支持されており、ブーム31の先端にはアームピンを介してアーム32の一端が回動可能に連結されている。また、アーム32の他端(先端)にはバケットピンを介してバケット33が回動可能に連結されている。ブーム31はブームシリンダ34によって駆動され、アーム32はアームシリンダ35によって駆動され、バケット33はバケットシリンダ36により駆動される。以降、ブームシリンダ34、アームシリンダ35、及びバケットシリンダ36を単に油圧アクチュエータと称することがある。
【0013】
下部走行体101の左右には、前後方向に掛け回された履帯11と、履帯11を駆動して走行動作を行う走行油圧モータ12とが設けられている。また、下部走行体101の前後方向の一方には、図示しない油圧アクチュエータで上下方向に回動駆動されるブレード13が設けられている。ブレード13が下げられた状態で押土や整地などを行うことができる。
【0014】
上部旋回体102は、下部走行体101の上部に旋回可能に取り付けられており、図示しない旋回油圧モータによって旋回駆動される。以降、旋回油圧モータを単に油圧アクチュエータと称することがある。なお、図示しないが、上部旋回体102の車体フレーム上には、原動機であるエンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから吐出されて各油圧アクチュエータに供給される圧油の流量および方向を制御するコントロールバルブなどが配置されている。
【0015】
上部旋回体102の上部には、油圧ショベル100の操作を行うオペレータが搭乗する運転席104が設けられている。運転席104には、オペレータが着座する座席21と、エンジンを始動する(言い換えると、油圧ショベル100を起動する)ためのキースイッチ(図示せず)と、各油圧アクチュエータを操作するための操作信号を出力する操作レバー装置22とが設けられている。また、運転席104の前方であって、座席21に着座したオペレータのフロント作業機103による作業時に視界の妨げにならない位置には、オペレータに種々の情報を報知するためのモニタ24が設けられている。また、座席21に着座したオペレータの視野の範囲内であると想定される位置であって、オペレータの視界の妨げにならない位置には、一列に並べられた異なる色の複数のランプの点灯や消灯、点滅などによってオペレータに情報を報知する積層信号灯(警告灯)23が設けられている。
【0016】
また、運転席104又はその周辺には、音によってオペレータに種々の情報を報知するブザー26(後の図10参照)や、音声によってオペレータに種々の情報を報知するスピーカー27(後の図10参照)などが配置されている。
【0017】
上部旋回体102の運転席104の後方(例えば、車体カバーの上部後端であってカウンタウエイトの上方、言い換えると、上部旋回体102の上面)には、予め定めた検知範囲に物体が有るか否かを検知するための物体検知センサ105が設けられている。物体検知センサ105は、例えば、赤外線センサなどの測距センサであり、仕様上の検知可能な範囲に存在する物体までの距離や位置を測定する。物体検知センサ105の検知結果は後述するコントローラ200に送られ、検知された物体の位置または距離を予め定めた検知範囲と比較することで、その検知範囲に物体が有るか否かを判定する。なお、上部旋回体102の後方は、車体カバーと連続的に配置され、上下方向にスライド開閉或いは回動開閉可能に設けられたエンジンカバーに覆われている。エンジンカバーは、閉位置の場合には物体検知センサ105の検知範囲外であり、開位置の場合には物体検知センサ105の検知範囲に重なる。
【0018】
なお、本実施の形態においては、物体検知センサ105として赤外線センサを例示して説明するが、これに限られず、例えば、レーザーを照射したときの対象物からの散乱光を測定することで距離を測定するLiDAR(Light Detection and Ranging)や、ミリ波を照射したときの対象物からの反射波を測定することで距離を測定するミリ波レーダなどのような測距センサであれば本発明を適用することが可能である。
【0019】
図10は、コントローラの処理内容を示す機能ブロック図である。
【0020】
コントローラ200は、物体検知センサ105からの検知結果に応じて油圧ショベル100の周囲の物体を検知してオペレータに報知する物体検知処理の制御を行うものであり、上部旋回体102の所定の位置に配置されている。
【0021】
図10において、コントローラ200は、検知モード制御部201、検知範囲設定部202、物体検知部203、及び、報知制御部204を備えている。
【0022】
検知モード制御部201は、キースイッチ等によりエンジンが始動されて油圧ショベル100が起動された状態(すなわち、動作可能な状態)において、コントローラ200の状態(検知モード)を、物体検知センサ105を用いて油圧ショベル100の周囲の物体を検知する通常使用モードと、物体検知センサ105の検知結果に応じて油圧ショベル100の周囲における傾斜地の有無を判定する傾斜地確認モードとで交互に切り換える。なお、通常使用モードと傾斜地確認モードとは互いの処理に影響が無い早いタイミングで切り換える。具体的には、例えば、通常使用モードから傾斜地確認モードを経て通常使用モードに戻る場合に、周囲の物体の検知精度に支障が出ない程度に速いタイミングで通常使用モードに戻るように設定されている。同様に、傾斜地確認モードから通常使用モードを経て傾斜地確認モードに戻る場合に、周囲の傾斜地の検知精度に支障が出ない程度に速いタイミングで傾斜地確認モードに戻るように設定されている。
【0023】
検知範囲設定部202は、検知モード制御部201で設定された検知モードに応じて、物体の検知範囲を設定する。図1図3においては、通常使用モードにおける検知範囲105aの設定例を示しており、図4図9においては傾斜地確認モードにおける検知範囲105bの設定例を示している。
【0024】
図1図3に示すように、通常使用モードにおける検知範囲105aは、物体検知センサ105から後方を見たときに、斜め下方向に延在するとともに左右方向に面状に拡がりをもち、かつ、作業現場の油圧ショベル100が配置され、履帯11が接する載置面である周囲の地面300を含まないように設定されている。
【0025】
図4図9に示すように、傾斜地確認モードにおける検知範囲105bは、物体検知センサ105から後方を見たときに、斜め下方向に延在するとともに左右方向に面状に拡がりをもち、かつ、作業現場の油圧ショベル100が配置され、履帯11が接する載置面である周囲の地面300を含むように設定されている。検知範囲105bは、例えば、物体検知センサ105の仕様上で計測可能とされる最大距離に基づいて設定される。また、検知範囲105bの斜め下方向の長さは、油圧ショベル100が車体仕様上で許容可能な最大傾斜角度(例えば、35°)に基づいて設定されても良い。
【0026】
なお、図示は省略しているが、通常使用モードおよび傾斜地確認モードにおいて、検知精度の担保や誤検知の抑制などの観点から、物体検知センサ105の近傍は検知範囲から除外して設定する。具体的には、例えば、物体検知センサ105の検知範囲105a,105bに沿う方向において最も近い油圧ショベル100の構造物(例えば、運転席104の上方に配置されるルーフを支持する柱など)までの距離の範囲を検知範囲から除外して設定する。
【0027】
物体検知部203は、物体検知センサ105の検知結果と、検知範囲設定部202で設定された検知範囲105a,105bとに基づいて、検知範囲105a,105b内に物体が有るか否かを判定し、報知制御部204に出力する。
【0028】
検知モード制御部201で通常使用モードに切り換えられて検知範囲設定部202で検知範囲105aが設定されると、物体検知センサ105が検知した物体の位置が検知範囲105aの範囲内であるか否か、すなわち、検知範囲105aの範囲内に物体が有るか否かを判定する。検知範囲105aの範囲内に物体が有ると判定した場合には、物体を検知した旨を示す物体検知信号を検知結果として検知モード制御部201と報知制御部204とに出力する。
【0029】
なお、本実施の形態においては、検知範囲105aの範囲内に物体が存在しない場合には、信号を出力しない場合を例示して説明するが、物体を検知していない旨を示す信号を出力するように構成しても良い。
【0030】
また、検知モード制御部201で傾斜地確認モードに切り換えられて検知範囲設定部202で検知範囲105bが設定されると、物体検知センサ105が検知した物体の位置が検知範囲105bの範囲内であるか否か、すなわち、検知範囲105bの範囲内に物体が有るか否かを判定する。このとき、検知範囲105bは、作業現場の油圧ショベル100が配置された周囲の地面300を含むように設定されているので、図4図6に示すように、油圧ショベル100の周囲に傾斜地が無ければ、検知範囲105bの範囲内に物体としての地面300を検知し、物体を検知した旨を示す物体検知信号を検知結果として報知制御部204に出力する。
【0031】
一方、図7図9に示すように、油圧ショベル100の周囲(ここでは、物体検知センサ105による検知方向である油圧ショベル100の後方)に傾斜地300Aがあり、物体としての地面300が検知されない場合には、検知範囲105bの範囲内に物体が存在しないと判定し、物体を検知していない旨を示す物体非検知信号を検知結果として報知制御部204に出力する。なお、本実施の形態においては、検知範囲105bの範囲内に物体が存在しない場合には、物体非検知信号を出力する場合を例示して説明するが、信号を出力しないように構成しても良い。
【0032】
報知制御部204は、検知モード制御部201で設定された検知モードと、物体検知部203からの検知結果とに応じて、油圧ショベル100の後方になんらかの障害物(物体)が有る旨を示す物体検知信号や、油圧ショベル100の周囲(後方)に傾斜地300Aが存在している旨を示す傾斜地注意信号を報知装置であるモニタ24、積層信号灯23、ブザー26、スピーカー27などに出力する。
【0033】
例えば、報知制御部204は、検知モード制御部201で設定された検知モードが通常使用モードである場合に、物体検知部203で検知範囲105aに障害物(物体)が有ると判定された場合(すなわち、物体検知部203から物体検知信号を受信した場合)には、油圧ショベル100の後方になんらかの障害物(物体)が有る旨を示す物体検知信号を報知装置に出力する。また、報知制御部204は、検知モード制御部201で設定された検知モードが傾斜地確認モードである場合に、物体検知部203で検知範囲105bに物体が存在しないと判定された場合(すなわち、物体検知部203から物体非検知信号を受信した場合)には、油圧ショベル100の周囲(後方)に傾斜地300Aが存在する旨を示す傾斜地注意信号を報知装置に出力する。
【0034】
報知制御部204からの信号の出力が無い場合、報知装置である積層信号灯23は、稼働中であることを示すランプ(例えば、緑色のランプ)が点灯状態であり、ブザー26は、消音状態である。また、報知制御部204から傾斜地検知が出力された場合、積層信号灯23は、油圧ショベル100の周囲(後方)に傾斜地が有ることを示すランプ(例えば、赤ランプ)を点滅させ、ブザー26は、連続的な警告音を発することで、傾斜地の存在をオペレータに報知して傾斜地への注意を促す。また、報知制御部204から物体検知信号が出力された場合、積層信号灯23は、障害物(物体)が存在することを示すランプ(例えば、赤ランプ)を点灯させ、ブザー26は、断続的な警告音を発することで、運転席104で操作を行うオペレータの死角となりやすい油圧ショベル100の後方に土砂や構造物、作業員などの障害物があることをオペレータに報知する。
【0035】
モニタ24は、報知制御部204から傾斜地注意信号が出力された場合には、油圧ショベル100の周囲(後方)に傾斜地が存在している旨の情報を表示してオペレータに報知する。また、モニタ24は、報知制御部204から物体検知信号が出力された場合には、油圧ショベル100の周囲(後方)に作業員などの障害物があることを示す情報を表示してオペレータに報知する。
【0036】
同様に、スピーカー27は、報知制御部204から傾斜地注意信号が出力された場合には、油圧ショベル100の周囲(後方)に傾斜地が存在している旨の情報を音声によりオペレータに報知する。また、スピーカー27は、報知制御部204から物体検知信号が出力された場合には、油圧ショベル100の周囲(後方)に作業員などの障害物がある旨を音声によりオペレータに報知する。
【0037】
なお、本実施の形態においては、物体検知信号や傾斜地注意信号を報知装置に出力してオペレータに情報を報知する場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、コントローラ200が物体検知信号や傾斜地注意信号を出力する際に、油圧ショベル100の全体の動作を制御する車体制御装置に油圧ショベル100(建設機械)の動作速度を減速する減速制御信号や、動作を停止させる停止制御信号を出力することにより、油圧ショベル100の動作を停止したり、動作速度を減速したりするように構成してもよい。また、コントローラ200が車体制御装置に物体検知信号や傾斜地注意信号を出力することにより、油圧ショベル100の動作を停止したり、動作速度を減速したりするように構成してもよい。
【0038】
図11は、物体検知処理の内容を示すフローチャートである。
【0039】
図11において、コントローラ200は、傾斜地確認モードに切り換えられると(ステップS100)、検知範囲105bで何らかの物体を検知しているか否かを判定する(ステップS110)。
【0040】
ステップS110での判定結果がNOの場合、すなわち、検知範囲105bで物体が検知されない場合には、油圧ショベル100の周囲(後方)に傾斜地が存在している旨を報知装置によりオペレータに報知し(ステップS111)、処理を終了する。
【0041】
また、ステップS110での判定結果がYESの場合、すなわち、検知範囲105bで物体が検知された場合には、通常使用モードに切り換える(ステップS120)。通常使用モードでは、物体検知センサ105で検知された物体の位置が検知範囲105aの範囲内に有るか否かを判定し(ステップS130)、判定結果がNOの場合、すなわち、検知範囲105aの範囲内に物体が無いと判定した場合には、ステップS100~S120の処理を繰り返す。
【0042】
また、ステップS130での判定結果がYESの場合、すなわち、検知範囲105aの範囲内に物体が有ると判定した場合には、報知装置を作動させて、油圧ショベル100の周囲(後方)に作業員などの障害物があることをオペレータに報知し(ステップS140)、処理を終了する。
【0043】
コントローラ200は、油圧ショベル100の稼働中には、ステップS100~S140の処理を繰り返すことで、油圧ショベル100の周囲(後方)の障害物や傾斜地の検知およびオペレータへの報知を行う。
【0044】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0045】
従来技術のように、多眼カメラで撮像した画像に基づいて危険領域の位置を認識する場合には、作業現場が暗い場合や影が生じている場合、或いは、作業現場が明るすぎる場合や多眼カメラに直射日光が当たっている場合など、作業現場の撮影環境によって画像の質が低下し、危険領域を正確に認識することが困難となってしまう。
【0046】
そこで、本実施の形態においては、物体検知センサ105が、油圧ショベル100が配置される面として油圧ショベル100の下面に沿って予め定められた基準面よりも下方の範囲で物体を検知しているか否かを判定し、物体を検知していないと判定した場合には、油圧ショベル100の周囲(後方)に傾斜地がある旨を示す傾斜地注意信号を報知装置(例えば、モニタ24、積層信号灯23、ブザー26、スピーカー27)に出力し、報知装置は、傾斜地注意信号に応じて、油圧ショベル100の周囲(後方)に傾斜地がある旨をオペレータに報知するように構成したので、建設機械の周囲に位置する地面の急激な変化をより正確に判定することができる。
【0047】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。
【0048】
例えば、本実施の形態においては、油圧ショベル100の後方が検知範囲となるように1つの物体検知センサ105を設置した場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、油圧ショベル100の左右側方をそれぞれ検知範囲とする複数の物体検知センサを設け、同様の処理を行うように構成しても良い。
【0049】
また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を変更や削除したものも含まれる。
【0050】
例えば、上記の実施の形態においては、油圧ショベル100が地面に載置されて下部走行体101の履帯11が地面300に接地している場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、例えば、油圧ショベル100が作業架台のような地面以外の場所に載置される場合においても本願発明を適用することができる。
【0051】
また、上記の実施の形態においては、1つの物体検知センサで2つの検知範囲の両方について物体を検知する場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、例えば、2つの検知範囲のそれぞれに対応する物体検知センサ(この場合は2つの物体検知センサ)を設け、検知範囲ごとに対応する物体検知センサで物体を検知するようにしても良い。
【0052】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0053】
11…履帯、12…走行油圧モータ、13…ブレード、21…座席、22…操作レバー装置、23…積層信号灯、24…モニタ、26…ブザー、27…スピーカー、31…ブーム、32…アーム、33…バケット、34…ブームシリンダ、35…アームシリンダ、36…バケットシリンダ、100…油圧ショベル、101…下部走行体、102…上部旋回体、103…フロント作業機、104…運転席、105…物体検知センサ、105a,105b…検知範囲、200…コントローラ、201…検知モード制御部、202…検知範囲設定部、203…物体検知部、204…報知制御部、300…地面、300A…傾斜地
図1
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