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特開2024-52434送光器および測量システム、および自動で追尾を再開する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052434
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】送光器および測量システム、および自動で追尾を再開する方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240404BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G01C15/00 103B
G01C15/06 T
G01C15/00 103E
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159148
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】千葉 稔
(57)【要約】
【課題】 自動で送光口を測量機へ向ける送光器を提供する。
【解決手段】 追尾ガイド光を送光する送光器本体と、前記送光器本体を水平回転駆動する駆動部と、前記送光器本体の3軸方向の加速度を計測する慣性計測装置と、前記送光器本体の回転角度を検知する角度検出器と、情報を送受信する送光器通信部と、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の演算処理、前記送光器通信部の制御、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光の制御、および前記駆動部の回転を制御する送光器制御部とを備え、前記送光器制御部は、前記送光器通信部により、測量機の水平方向角を受信するとともに、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の計測値から、前記追尾ガイド光の送光方向と前記測量機への方位角との差分を角度として演算して、前記測量機へ前記追尾ガイド光の送光方向が向くように前記駆動部を回転駆動させて、前記追尾ガイド光を送光する送光器を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
追尾ガイド光を送光する送光器本体と、前記送光器本体を水平回転駆動する駆動部と、前記送光器本体の3軸方向の加速度を計測する慣性計測装置と、前記送光器本体の回転角度を検知する角度検出器と、情報を送受信する送光器通信部と、前記慣性計測装置および前記角度検出器の計測値の演算処理、前記送光器通信部の制御、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光の制御、および前記駆動部の回転を制御する送光器制御部と、
を備え、
前記送光器制御部は、前記送光器通信部により、測量機から前記送光器本体への水平方向角および前記送光器本体の第1移動方向を受信するとともに、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の計測値から、前記追尾ガイド光の送光方向と前記測量機への方位角との差分を角度として演算して、前記測量機へ前記追尾ガイド光の送光方向が向くように前記駆動部を回転駆動させて、前記追尾ガイド光を送光する、
ことを特徴とする送光器。
【請求項2】
前記送光器制御部は、前記慣性計測装置の計測値から前記送光器の第2移動方向を演算して、
前記第1移動方向および前記第2移動方向を合致させ、前記測量機への水平方位角との差分を角度として演算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の送光器。
【請求項3】
前記追尾ガイド光は、前記送光方向を中心として、水平方向に左方領域と右方領域で異なる周波数で発光し、前記送光方向を含む領域では、前記左方領域の周波数とも前記右方領域の周波数とも異なる周波数で発光する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の送光器。
【請求項4】
追尾ガイド光を送光する送光器本体と、前記送光器本体を水平回転駆動する駆動部と、前記送光器本体の3軸方向の加速度を計測する慣性計測装置と、前記送光器本体の回転角度を検知する角度検出器と、情報を送受信する送光器通信部と、前記慣性計測装置および前記角度検出器の計測値の演算処理、前記送光器通信部の制御、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光の制御、および前記駆動部の回転を制御する送光器制御部とを有する送光器と、
前記送光器に取付けられるプリズムと、
前記追尾ガイド光を受光する受光部と、前記送光器通信部と通信可能な測量機通信部とを有し、前記プリズムを測距・測角する測距・測角機能および追尾機能を有する測量機と、
を備え、
前記送光器制御部は、前記送光器通信部により、前記測量機から前記送光器本体への水平方向角および前記送光器本体の第1移動方向、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の計測値から、前記追尾ガイド光の送光方向と前記測量機への方位角との差分を角度として演算して、前記測量機へ前記追尾ガイド光の送光方向が向くように前記駆動部を回転駆動させて、前記追尾ガイド光を送光する、
ことを特徴とする測量システム。
【請求項5】
追尾ガイド光を送光する送光器本体と、前記送光器本体を水平回転駆動する駆動部と、前記送光器本体の3軸方向の加速度を計測する慣性計測装置と、前記送光器本体の回転角度を検知する角度検出器と、情報を送受信する送光器通信部と、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の演算処理、前記送光器通信部の制御、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光の制御、および前記駆動部の回転を制御する送光器制御部とを有する送光器と、
前記送光器に取付けられるプリズムと、
前記追尾ガイド光を受光する受光部と、前記送光器通信部と通信可能な測量機通信部とを有し、前記プリズムを測距・測角する測距・測角機能および追尾機能を有する測量機と、
を備え、追尾が外れた場合に、自動で追尾を再開する方法であって、
(a)前記送光器通信部により、前記測量機から、前記測量機から前記送光器本体への水平方向角および前記送光器本体の第1移動方向を受信するステップと、
(b)前記送光器制御部が、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の計測値から、前記追尾ガイド光の送光方向と前記測量機への方位角との差分を角度として演算してするステップと、
(c)前記送光器制御部が、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光方が、前記測量機へ向くように、前記角度だけ、前記駆動部を回転駆動させるステップと、
(d)前記送光器制御部が、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光を実施させるステップと、
(e)前記受光部が、前記追尾ガイド光を受光する受光して、前記送光器の中心の方向を検知して、前記測量機が鉛直方向にプリズムサーチを実施して前記プリズムをロックするステップと、
を備えることを特徴とする自動で追尾を再開する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、送光器、および測量システム、および自動で追尾を再開する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動追尾装置を備えている測量機がある(例えば特許文献1)。追尾が外れた場合、特許文献1では、プリズムが装着されたポールを把持している作業者が光送信器を持ち、光送信器で測量機に向けて光で送信信号(追尾ガイド光)を送る。そして測量機は送信信号を受光して、送信信号の到来方向を検知して、望遠鏡を到来方向へ向ける。これにより迅速に測量機にプリズムをロックさせ、再び追尾させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3075384号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記方法では、追尾が外れてしまったときに、作業者が測量作業の手を止めて、測量機にリモコンの送光口を向けてスイッチを押して送信信号を送らねばならず、作業者には手間がかかり煩わしかった。
【0005】
本件は、このような問題に鑑みてなされたものであり、自動で送光口を測量機へ向ける送光器、測量システム、および自動で追尾を再開する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本開示のある態様においては、追尾ガイド光を送光する送光器本体と、前記送光器本体を水平回転駆動する駆動部と、前記送光器本体の3軸方向の加速度を計測する慣性計測装置と、前記送光器本体の回転角度を検知する角度検出器と、情報を送受信する送光器通信部と、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の演算処理、前記送光器通信部の制御、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光の制御、および前記駆動部の回転を制御する送光器制御部とを備え、前記送光器制御部は、前記送光器通信部により、前記測量機から前記送光器本体への水平方向角および前記送光器本体の第1移動方向を受信するとともに、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の計測値から、前記追尾ガイド光の送光方向と前記測量機への方位角との差分を角度として演算して、前記測量機へ前記追尾ガイド光の送光方向が向くように前記駆動部を回転駆動させて、前記追尾ガイド光を送光するように送光器を構成した。
【0007】
また、ある態様においては、前記送光器制御部は、前記慣性計測装置の計測値から前記送光器の第2移動方向を演算して、前記第1移動方向および前記第2移動方向を合致させ、前記測量機への水平方位角との差分を角度として演算するように構成した。
【0008】
また、ある態様においては、前記追尾ガイド光は、前記送光方向を中心として、水平方向に左方領域と右方領域で異なる周波数で発光し、前記送光方向を含む領域では、前記左方領域の周波数とも前記右方領域の周波数とも異なる周波数で発光するように構成した。
【0009】
また、ある態様においては、追尾ガイド光を送光する送光器本体と、前記送光器本体を水平回転駆動する駆動部と、前記送光器本体の3軸方向の加速度を計測する慣性計測装置と、前記送光器本体の回転角度を検知する角度検出器と、情報を送受信する送光器通信部と、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の演算処理、前記送光器通信部の制御、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光の制御、および前記駆動部の回転を制御する送光器制御部とを有する送光器と、前記送光器に取付けられるプリズムと、前記追尾ガイド光を受光する受光部と、前記送光器通信部と通信可能な測量機通信部とを有し、追尾機能、および前記プリズムを測距・測角する測距・測角機能を有する測量機とを備え、前記送光器制御部は、前記送光器通信部により、前記測量機から前記送光器本体への水平方向角および前記送光器本体の第1移動方向を受信し、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の計測値から、前記追尾ガイド光の送光方向と前記測量機への方位角との差分を角度として演算して、前記測量機へ前記追尾ガイド光の送光方向が向くように前記駆動部を回転駆動させて、前記追尾ガイド光を送光するように測量システムを構成した。
【0010】
また、ある態様においては、追尾ガイド光を送光する送光器本体と、前記送光器本体を水平回転駆動する駆動部と、前記送光器本体の3軸方向の加速度を計測する慣性計測装置と、前記送光器本体の回転角度を検知する角度検出器と、情報を送受信する送光器通信部と、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の演算処理、前記送光器通信部の制御、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光の制御、および前記駆動部の回転を制御する送光器制御部とを有する送光器と、前記送光器に取付けられるプリズムと、前記追尾ガイド光を受光する受光部と、前記送光器通信部と通信可能な測量機通信部とを有し、追尾機能、および前記プリズムを測距・測角する測距・測角機能を有する測量機とを備え、追尾が外れた場合に、自動で追尾を再開する方法であって、
(a)前記送光器通信部により、前記測量機から、測量機から前記送光器本体への水平方向角および前記送光器本体の第1移動方向を受信するステップと、
(b)前記送光器制御部が、前記慣性計測装置の計測値および前記角度検出器の計測値から、前記追尾ガイド光の送光方向と前記測量機への方位角との差分を角度として演算してするステップと、
(c)前記送光器制御部が、前記送光器本体の前記追尾ガイド光の送光方が、前記測量機へ向くように、前記角度および前記角度検出器の計測値から、前記駆動部を回転駆動させるステップと、
(d)前記送光器制御部が、前記送光器本体の追尾ガイド光の送光を実施させるステップと、
(e)前記受光部が、追尾ガイド光を受光する受光して、前記送光器の中心の方向を検知して、前記追尾部が鉛直方向にプリズムサーチを実施して前記プリズムをロックするステップと、
を備えるように構成した。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、自動で送光口を測量機へ向ける送光器、測量システム、および自動で追尾を再開する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る送光器を含む測量システムの概略構成を示す図である。
図2】測量機の正面図である。
図3】測量機の内部構造を模式的に示す概略図である。
図4】測量機のブロック図である。
図5】ターゲットユニットの構成を模式的にしめす側面図である。
図6】送光器のブロック図である。
図7】追尾開始時(追尾中)の測量機および送光器の処理を説明する説明図である。
図8】追尾が外れた時の送光器の処理を説明する説明図である。
図9】自動追尾再開のフローである。
図10】第2実施形態に係る送光器を含む測量システムの概略構成を示す図である。
図11】第2実施形態に係る送光器のブロック図である。
図12】ポリゴンミラーおよびポリゴンミラーの周側面の展開図である。
図13】測量機とファンビーム送光ユニットの平面図であり、効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる測量システム1の概要構成を示す図である。
【0015】
測量システム1は、測量機10、ターゲットユニット70を含んで構成される。
【0016】
測量機10は、測距・測角機能及び追尾機能を備えたトータルステーションである。さらに、測量機10は受光部60も備える。
【0017】
ターゲットユニット70は、ポール71の上端に測量機10のターゲットである全周反射のプリズム72を有する。ターゲットユニット70は、おおむね鉛直に立てられて作業者に把持されて運搬され、測定点にポール71の下端を概ね鉛直に設置されて、測量機10に計測される。
【0018】
ターゲットユニット70は、送光器90を有する。測量機10がプリズム72を追尾中、送光器90は随時各種データを測量機10と送受信し、追尾が外れると送光器90は測量機10へ回動して、測量機10へ向けて赤外光の追尾ガイド光Lcを送光する。
【0019】
測量機10の受光部60で追尾ガイド光Lcを受光して、プリズム72の方向を検知し、プリズム72を再びロック(視準)し、迅速に追尾を再開させることができる。
【0020】
(測量機)
測量機10について、図2図4を用いて説明する。図2は、測量機10の正面図である。図3は測量機10の内部構造を模式的に示す概略図である。
【0021】
図2及び図3に示すように、測量機10は、基盤部13と、この基盤部13に対して水平方向に回転される回転台座14とからなる測量機本体15と、カバー部材16とを含んで構成されている。
【0022】
基盤部13は、三脚台2に固定される固定座13aと、整準ネジ(図示せず)を有する整準台13bと、回転台座14を鉛直軸V回りに水平方向に回転駆動する水平回転駆動部M1等の駆動機構を内蔵するケース13cとから概略構成されている。
【0023】
回転台座14には、一対の支持部材17aで構成される托架部17が立設している。支持部材17aの間に測距光学系と追尾光学系の鏡筒部18が配置されている。鏡筒部18は、托架部17に設けられた水平軸Hにより、垂直方向に回転可能に支持されている。鏡筒部18には測距部23および追尾部24が収納されている。
【0024】
水平軸Hの一方の端部には、鏡筒部18を垂直方向に回転駆動する鉛直回転駆動部M2が固定され、他方の端部には、鏡筒部18の回転角度を検出するための鉛直角検出器22が設けられている。
【0025】
托架部17の上端部には、一対の支持部材17aにわたり水平に配置される薄板の水平板19が固定されている。水平板19の上面には、測量機制御部29、および受光部60が取付けられている。
【0026】
カバー部材16は、上面に突出する突出部16aを有し、突出部の前面は、カバー部の前面と面一となっている。受光部60は、水平板19の中央で、突出部16aの内側となるように配置されている。
【0027】
測量機制御部29は、制御回路基板をベースとして水平板19の中央で、受光部60の背後に配置されている。
【0028】
カバー部材16の前面には、突出部16aの前面の設けられた受光部用窓16d、前面の中央に上下方向に伸びる鏡筒用窓16b、の二つの窓が設けられている。
【0029】
鏡筒用窓16bは鏡筒部18の光軸上に形成され、測距部23および追尾部24の光学系の赤外レーザ光を透過する。受光部用窓16dは、受光部60の前方に形成されており、受光部60は、受光部用窓16d越しに、追尾ガイド光Lcを受光する。
【0030】
測量機10には図示しない表示部と入力部を持つ操作端末と接続されている。操作端末は、例えばスマートフォンやタブレットであり、アプリケーションのインストールにより測量機10のコントローラ機能を実装される。作業者は、操作端末を作業者は持ち運び、表示部で測量状況を確認しながら、随時命令の入力を実施する。
【0031】
(ブロック図)
図4は、測量機10の制御ブロック図である。測量機10は、水平角検出器21、鉛直角検出器22、水平回転駆動部M1、鉛直回転駆動部M2、測距部23、追尾部24、測量機通信部25、記憶部26、およびこれら全てが接続される測量機制御部29を有する。
【0032】
水平角検出器21と鉛直角検出器22は、回転円盤、スリット、発光ダイオード、イメージセンサを有するアブソリュートエンコーダまたはインクリメンタルエンコーダである。水平角検出器21は回転台座14の回転軸に設けられ、回転台座14の水平角を検出する。鉛直角検出器22は、鏡筒部18の水平軸Hに設けられ、鏡筒部18の鉛直角を検出する。
【0033】
水平回転駆動部M1と鉛直回転駆動部M2はモータである。測量機制御部29に制御され、水平回転駆動部M1は回転台座14の回転軸を動かし、鉛直回転駆動部M2は、鏡筒部18の水平軸Hを動かす。両駆動部の協働により、鏡筒部18の向きが変更される。水平角検出器21と鉛直角検出器22とで、測角部を構成する。水平回転駆動部M1および鉛直回転駆動部M2とで、駆動部を構成する。
【0034】
測距部23は、送光部と受光部を備え、ターゲットである全周反射のプリズム72を視準して、例えば赤外レーザ光等の測距光をプリズム72に射出してその反射光を受光部で受光し、測距光と内部参照光の位相から測距する。
【0035】
追尾部24は、測距光とは異なる波長の赤外レーザ光などの追尾光として出射する追尾送光系と、CCDセンサまたはCMOSセンサなどのイメージセンサを有する追尾受光系を有する。追尾部24は、追尾光を含む風景画像と追尾光を除いた風景画像を取得し、両画像を測量機制御部29に送る。測量機制御部29は、両画像の差分からターゲット像の中心を求め、ターゲット位置として検出し、ターゲット像の中心と鏡筒部18の視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まるように、常に鏡筒部18がターゲットの方向を向くように、自動追尾する。
【0036】
測量機通信部25は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、例えば、インターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットに接続し、送光器90と情報の送受信を行う。無線通信はこれに制限されず、bluetooth(登録商標)などの既知の無線通信を使用することができる。
【0037】
記憶部26は、例えばハードディスクドライブなどの記憶媒体であり、演算制御のためのプログラムが格納されている。取得した測定データや受領データも記憶される。
【0038】
受光部60は、受光センサであり、追尾ガイド光Lcを受光する。受光部60は測量機10の正面に配置されており、追尾ガイド光Lcを送光する送光器90の水平方向を検知する。
【0039】
測量機制御部29は、例えばCPU,ROM、RAM等を集積回路に実走したマイクロコントローラであり、測量機10の機器がすべて接続され、これらを制御する。例えば、水平回転駆動部M1,鉛直回転駆動部M2の制御、測距部23および追尾部24の発光制御、プリズム72の自動追尾、自動視準、測距および測角、受光部60の制御、測量機通信部25を介した測定データや命令の送受信などである。
【0040】
(ターゲットユニット)
次にターゲットユニット70について図面と共に説明する。図5はターゲットユニット70の側面図である。図1のターゲットユニット70の斜視図も参照のこと。

図1および図5に示すように、ターゲットユニット70は、ポール71の上端にプリズム72が取付けられている。プリズム72の光学中心は、ポール71の中心軸を通過し、プリズム72の光学中心とポール71下端までの距離(取付高)は既知となっている。
【0041】
さらに、プリズム72の上部には、送光器90が設けられている。
【0042】
送光器90はターゲットユニット70の上部に取付けられる送光器ベース部98と、送光器ベース部98上部に、鉛直軸X2に対して水平方向に回動可能に支持される送光器本体96とで構成される。送光器90は、鉛直軸X2をポール71の中心軸と一致させてプリズム72の上部に取付けられている。送光器本体96の周側面には、追尾ガイド光Lcが送光される送光口95が設けられている。
【0043】
図6は送光器90の制御系ブロック図である。送光器90は、IMU91、送光器駆動部92、送光器角度検出器93、送光器通信部94、送光ユニット97に含まれるレーザ光源97a、およびこれらを制御する送光器制御部99を備える。
【0044】
IMU91は、慣性計測装置(Inertial Navigation Unit)であり、3軸ジャイロと3方向の加速度計によって構成され、3軸方向の角速度と加速度を計測する。IMU91は、計測中心点がポール71の中心軸を通過するように配置されている。
【0045】
送光器駆動部92はモータであり、鉛直軸X2を中心として送光器本体96を水平回転駆動する。
【0046】
送光器角度検出器93はエンコーダであり、鉛直軸X2の回転角度を検出する。本実施形態においては、追尾ガイド光Lcの送光方向を基準方向AXとしており、基準方向AXの回転角度を検出する。
【0047】
送光器通信部94は、測量機通信部25と同等の構成を備え、測量機10と情報の送受信が可能となっている。
【0048】
送光ユニット97は、レーザ発光ダイオードをレーザ光源97aと、レンズ97bを有し、レーザ光源97aから出射した光を、レンズ97bにより、送光口95から追尾ガイド光Lcとして水平方向(鉛直軸X2の直行方向)に送光する。送光器90においては、鉛直軸X2から追尾ガイド光Lcが送光される方向を基準方向AXとしている。
【0049】
送光器制御部99は、例えばCPU,ROM、RAM等を集積回路に実走したマイクロコントローラであり、送光器90の機器に接続され、これらを制御する。例えば、送光ユニット97の点灯制御や送光器角度検出器93およびIMU91の検出データの演算処理、送光器駆動部92の制御や、測量機10との送光器通信部94を介したデータの送受信である。また、メモリも有し、プログラムが収納され、受信データや計測データも格納される。
【0050】
送光器制御部99は、測量機10がプリズム72を追尾中、随時、IMU91の計測値を取得し、測量機10から計測データから算出されたプリズム72の移動方向、および測量機10の水平方向角を受信する。そしてこれら計測値から現在の送光器90の基準方向AXと測量機10との方位角の差分値を演算して、送光器90の基準方向AXを、測量機10へ向けることができるようにする(詳しくは後述)。
【0051】
追尾部24によるプリズム72の追尾が外れた場合、送光器制御部99は、直ちに追尾が外れる直前の測量機10の方向へ基準方向AXを向けるように、送光器駆動部92を制御して、送光器90の基準方向AX、すなわち送光方向を測量機10へ向け、レーザ光源97aを点灯して、追尾ガイド光Lcを送光させる。
【0052】
本実施形態においては、送光器本体96は水平方向にのみ駆動されるが、送光方向を鉛直方向にも駆動できるように鉛直回転駆動されるように鉛直回転駆動部を設けてもよい。追尾ガイド光Lcは赤外光であるため、作業者が光を視認することはない。
【0053】
(追尾再開方法)
送光器90は、追尾が外れた場合、自動で測量機10へ向けて回動し、追尾ガイド光Lcを送光し、測量機10が追尾再開するのを容易とする機能を有する。これを、図を用いて詳しく説明する。
【0054】
図7は、追尾が開始時(追尾中)の測量機10および送光器90の処理を示す。図8は、追尾が外れた際の、送光器90の処理を示す。
【0055】
プリズム72を追尾部24がロックし、追尾を開始すると、測量機10はその旨を送光器90へ送信する。これにより、送光器90も追尾時の処理を開始する。
【0056】
ついで測量機10は、プリズム72の測距・測角の実施を行う。追尾中は随時プリズム72の測距・測角が実施される。測量機制御部29は、測距・測角データから、測量機10のプリズム72への水平方向角Hm、および計測値の差分値からプリズム72の移動方向Htを算出して送光器90へ送信する。
【0057】
測距・測角データの演算処理は、測量機制御部29で行われ、演算結果が送光器90へ送信されるが、測距・測角データが送光器90に送信され、データの演算処理を送光器制御部99で行ってもよい。
【0058】
送光器90は、追尾時の処理として、まずIMU91による計測を開始する。IMU91は、随時加速度および角速度の計測を行う。計測値は、計測時がわかるように、計測時の時間情報とともに収納される。
【0059】
加速度により、送光器90(すなわちプリズム72)の移動方向が算出される。図7に示すように、追尾時は、測量機10から取得したプリズム72の移動方向Ht(図7白色太矢印)と、IMU91から算出されたプリズム72の移動方向T1(図7黒色太矢印)は一致することとなる。これにより、取得データの同期や補正を図ることもできる。
【0060】
追尾時は、測量機10は常に光軸をプリズム72に向けていることから、測量機10からみたプリズム72の方向(矢印DR1)と、プリズム72にみた測量機10の方向(矢印DR2)が、真逆方向となる。
【0061】
次に、追尾が外れた場合の測量機10および送光器90の処理を、図8を用いて説明する。
【0062】
追尾が外れた場合、まず測量機10は、追尾が外れた旨を送光器90に送付する。これにより、送光器90も追尾が外れた場合の処理を開始する。
【0063】
測量機10がプリズム72をロックしていないため、測量機10からみたプリズム72の方向(矢印DR1)と、プリズム72にみた測量機10の方向(矢印DR2)は、真逆としても一致はしない。そこで、追尾が外れる直前に取得した、測量機10の取得データと送光器90から取得データを突き合わせる処理を行う。
【0064】
送光器制御部99は、IMU91の計測値により、追尾が外れる直前の送光器90(すなわちプリズム72)の移動方向T1を取り出す。送光器制御部99は、送光器角度検出器93で計測を行い、この移動方向T1に対する基準方向AXの方位角AN2を演算する。
【0065】
また、送光器制御部99は、測量機10から受領した測距・測角データから、追尾が外れる直前の、プリズム72の移動方向Htおよび測量機10のプリズム72への水平方向角Hmのデータを取り出す。送光器制御部99は、測量機10のプリズム72への水平方向角Hmの対向方向として、水平方向角Hm+180度を演算して、送光器90における測量機10への方向角とする。これは、測量機10は、追尾中は常に光軸をプリズム72に向けていることから、測量機10からみたプリズム72の方向(矢印DR1)は、真逆方向が、プリズム72にみた測量機10の方向(矢印DR2)ことに基づく。プリズム72の移動方向Htに対する水平方向角Hm+180度の方位角AN1を演算する。
【0066】
そして、方位角AN1と方位角AN2の差分値を角度AN3として算出する。角度AN3は、基準方向AXと測量機10との方向の差分を角度で示したものである。送光器制御部99は、送光器駆動部92を制御して、角度AN3だけ送光器本体96を水平回転させて、基準方向AXを測量機10へ向ける。そして、送光器制御部99は、レーザ光源97aを点灯させて、追尾ガイド光Lcを測量機10へ向けて送光させる。
【0067】
測量機10が受光部60で追尾ガイド光Lcを受光することで、追尾ガイド光Lcの中心の水平方向が検知され、ついで鏡筒部18が上下方向に駆動されることで、プリズム72をロックする。
【0068】
追尾が再開されると、送光器90は追尾ガイド光Lcの送光を停止し、追尾時の処理モードに移行する。
【0069】
従来は、全く手掛かりのない状態でも、全方向を追尾光で走査することで、プリズムをロックすることができるが、時間がかかるという問題があった。送光器90は、上記方法により、追尾ガイド光Lcを測量機10に向けていつでも送ることができる。作業者が追尾ガイド光Lc方向を測量機10へ向ける必要がなく、ロックが外れた場合には自動で測量機10に向けて回転し、追尾ガイド光Lcが送光される。
【0070】
測量機10も送光器90からIMU91の計測データを随時受信するように構成すると好ましい。プリズム72の移動方向や速度が分かり、移動速度が速い場合にはプリズム72の測距・測角の間隔を短くするなどして、追尾を外れにくくすることができる。また追尾が外れてしまった場合でも、より直近のデータを使用できるため、追尾再開するまでの時間の短縮を図ることができる。測量機10が追尾が外れた場合に、振り向くべき方向も推測できる。
【0071】
従来の測量機では、追尾部の送光部が追尾光を照射して、反射光を受光部で受光して、走査を行っていた。この場合、受光部が受光するのは反射光であるため、受光量は少ない。これに対し、測量機10は、ターゲット側から送光される追尾ガイド光Lcを、受光部60で受光するため、受光量も多く検出しやすい。このため、より迅速にプリズム72をロックすることができる。
【0072】
本実施形態においては、送光器90は、追尾が外れてから、送光器本体96を回転させたが、随時算出された角度AN3を基に、送光器制御部99が送光器駆動部92を駆動させて、基準方向AXが、常に測量機10の方向へ向けられるように構成してもよい。
【0073】
(追尾継続フロー)
上記構成を用いて、追尾開始をすると、追尾が外れても自動で追尾を再開する自動追尾継続フローについて説明する。
【0074】
図9は、自動追尾継続のフローである。測量機10と送光器90が同時に処理を行う場合もあるため、測量機10の処理をステップS101~ステップS111、送光器90の処理をステップS201~ステップS211として説明する。
【0075】
まず、ステップS101で、測量機10の追尾部24がプリズム72をロックし、追尾が開始される。
【0076】
次に、ステップS102で、測量機10は、送光器90へ、追尾処理を開始するように、命令を受信する。命令を受信した送光器90の処理は後述する。
【0077】
次に、ステップS103で、測量機10は、ロックしたプリズム72の測距・測角を実施する。測距・測角は、所定時間の間隔で、随時実行される。
【0078】
次に、ステップS104で、測量機制御部29は、測距・測角によって取得された計測値から、プリズム72(すなわち送光器90)の移動方向Htおよび測量機10の水平方向角Hmを演算し、演算結果を送光器90に送信する。
【0079】
次に、ステップS105に移行して、追尾が継続中であれば、ステップS103に戻る。追尾が外れてしまった場合は、ステップS106に移行する。
【0080】
ステップS106で、追尾再開の処理を実行するように、送光器90に命令を送信する。
【0081】
次に、ステップS107で、送光器90が送光する追尾ガイド光Lcを受光部60で受光する。これにより送光器90の中心の水平方向が検知される。
【0082】
次に、ステップS108に移行し、測量機10は、追尾部24が追尾光を照射しながら、鏡筒部18を上下方向に駆動させて、プリズム72を上下方向にサーチする。
【0083】
次に、ステップS109に移行し、追尾部24がプリズム72をロックする。
【0084】
次に、ステップS110に移行して、プリズムロックされ、追尾が再開されたため、測量機10は、追尾再開処理を終了するように送光器90へ命令を送信する。
【0085】
次に、ステップS111に移行して、追尾が再開される。ステップS101に戻る。
【0086】
ついで送光器90の処理フローについて説明する。
【0087】
まず、ステップS201で、測量機10から、追尾処理開始の命令を受信する(ステップS102参照)。命令を受信した送光器90は、追尾処理を開始する。
【0088】
次に、ステップS202に移行して、IMU91が計測を開始する、IMU91による3軸加速度および3軸角速度の計測は、所定時間の間隔で、随時実行される。
【0089】
次に、ステップS203に移行して、測量機10から、プリズム72(すなわち送光器90)の移動方向Htおよび測量機10の水平方向角Hmを受信する(ステップS104参照)。ステップS202およびステップS203はステップS204まで継続的に行われる。
【0090】
次に、ステップS204で、送光器90は、測量機10から追尾再開の処理の命令を受信する(ステップS106参照)。これにより、送光器90は追尾再開のためのフロー(ステップS205~ステップS209)を実施する。
【0091】
ステップS205に移行し、追尾再開の処理を実行するように、送光器90に命令を送信する。IMU91の計測データ、および送光器角度検出器93の計測データから、方位角AN2と、移動方向T1を算出する。
【0092】
次に、ステップS206に移行し、ステップS203で受信したプリズム72の移動方向Htおよび測量機10の水平方向角Hmに、ステップS205の演算した結果を合致させ、角度AN3を算出する。
【0093】
次に、ステップS207に移行し、ステップS206で算出した角度AN3だけ送光器本体96を回転させて、基準方向AXを測量機10へ向ける。
【0094】
次に、ステップS208に移行し、送光器90から追尾ガイド光Lcが送光される。測量機10の受光部60は、追尾ガイド光Lcを受光する(ステップS107参照)。
【0095】
次に、ステップS209に移行し、測量機10から、追尾再開処理を終了の命令を受信する(ステップS110参照)。
【0096】
次に、ステップS210に移行し、送光器90は、追尾ガイド光Lcを消灯して送光を停止する。
【0097】
上記処理のフローにより、追尾が外れても、自動で追尾再開のための処理が行われ、作業者は何もしなくても、追尾が再開される。
【0098】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同等の構成を持つものは、同じ符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0099】
図10は、第2実施形態にかかるターゲットユニット170を含む測量システム101の概要構成を示す図である。
【0100】
測量システム101は、測量機10、ターゲットユニット170を含んで構成される。
【0101】
ターゲットユニット170は、ポール71の上端に備えられるプリズム72、および送光器190を備える。送光器190は、送光ユニット97の代わりにファンビーム送光ユニット200を有する以外は、第1実施形態の送光器90と同等の構成を有する。ファンビーム送光ユニット200は、追尾ガイド光Lc2として、鉛直方向に狭く、水平方向に広がりを有するファンビームを送光する。ファンビームは、水平方向に一対に送光される。一対のファンビームは、水平方向に異なる方向でなおかつ一部が重複するように、送光されて上下方向に走査させる。
【0102】
測量機10は受光部60でファンビームである追尾ガイド光Lc2を受光する以外は、測量機10と同等の構成である。本実施形態においては、測量機制御部29は、受光部60が、所定時間以内にファンビームを受光する回数をカウントする。追尾ガイド光Lc2は一対のファンビームが上下方向に走査されており、受光部60がファンビームを受光する回数により、送光器190は測量機10の方向を検知して、基準方向AXを測量機10へ向けることを補助する構成となっている(後述)。
【0103】
(ファンビーム送光ユニット)
図11はファンビーム送光ユニット200を含む送光器190のブロック図である。
【0104】
ファンビーム送光ユニット200は、レーザ光を発するレーザ光源201と、レーザ光源201の出射光を水平方向に広げるシリンドリカルレンズ202と、周面が反射面で構成されるポリゴンミラー207と、ポリゴンミラー207を回転駆動させるモータM3を有する。
【0105】
シリンドリカルレンズ202に入射した光は水平方向に広げられた扇形のビームに形成され、中心軸X3を中心にモータM3で回転駆動されたポリゴンミラー207の周面で反射され、水平方向に長く、鉛直方向に短いファンビームが上下方向に走査される。
【0106】
送光器190の送光器制御部199は、送光ユニット97の代わりにファンビーム送光ユニット200を制御する以外は、送光器制御部99と同等の構成を備える。送光器制御部199は、モータMの回転駆動、およびレーザ光源201の点灯制御も行う。
【0107】
(ポリゴンミラーの形態)
ポリゴンミラー207およびポリゴンミラー207で走査されるファンビームについて図を用いて詳しく説明する。
【0108】
図12は、ポリゴンミラー207の説明図である。図12(A)はポリゴンミラー207の斜視図である。図12(B)は、ポリゴンミラー207の周側面の展開図である。
【0109】
ポリゴンミラー207は略正六角柱の外形を有し、周側面として、六つの反射面として、第1反射面208a、第2反射面208b、第3反射面208c、第4反射面208d、第5反射面208e、第6反射面208f、の六面が等間隔に形成されている。さらに、全ての反射面の一方の辺が接続される左端面210a、全ての反射面の他方の辺が接続される右端面210bを有する。
【0110】
ポリゴンミラー207はモータM3により、中心軸X3を中心に回転駆動されて、反射面208a~208fに入射した光を回転方向に走査する。本実施形態においては、ポリゴンミラー207は中心軸X3を略水平に配置され、ファンビームはおおむね水平方向に広がって入射し、上下方向に走査される。
【0111】
第1反射面208a、第4反射面208dは、僅かに左端面210aへ傾いて形成されており、入射したファンビームを僅かに左端面210a寄りに反射させる。ポリゴンミラー207の6つ反射面の内、これら二面に反射されて相対的に左寄りに出射されるファンビームを第1ファンビームB1と称する。
【0112】
これに対し、第2反射面208b、第3反射面208c、第5反射面208e、および第6反射面208fは、僅かに右端面210b側に傾いており、入射したファンビームを僅かに右端面210b寄りに反射される。ポリゴンミラー207の6面の反射面の内、これら四面に反射されて相対的に右寄りに出射されるファンビームを第2ファンビームB2と称する。
【0113】
ポリゴンミラー207は、入射光を、相対的に左右に分けて反射する。相対的に左右方向に分けてファンビームを反射する方法はこれに限られず、反射面208a~208fに表面加工を施して、反射方向を調整するなど、他の公知の方法を用いてもよい。
【0114】
(ファンビームの形態)
上記構成による送光器190の効果を図13と共に説明する。図12は平面視した送光器190とファンビームであり、主として送光器190によるファンビームの形態を説明する説明図である。
【0115】
図11に示すように、ポリゴンミラー207で反射された第1ファンビームB1と第2ファンビームB2は、水平方向に主照射方向を異ならしめながら、一部では重複するように送光される。
【0116】
前述のように、送光器90は、追尾が外れると、基準方向AXを測量機10へ向くように回動した。同様に、同等の構成を有する送光器190も、基準方向AX5を測量機10へ向くように回動する。送光器190は、送光器190の基準方向AX5を、第1ファンビームB1と第2ファンビームB2の重複する領域の中央となるように設定されている。重複する領域は、第1ファンビームB1と第2ファンビームB2の水平方向の広がりに対して、狭く設定されていると好ましい。
【0117】
第1ファンビームB1は、ポリゴンミラー207の六面ある反射面の内、二面から反射されている。第2ファンビームB2は、ポリゴンミラー207の六面ある反射面の内、四面から反射されている。このため、第1ファンビームB1と第2ファンビームB2は、ポリゴンミラー207が一回転する時間(周期)ごとに、受光部60で受光される回数が異なることから、どちらのファンビームであるか判別することができる。これを用いて、送光器190の基準方向AX5を中心とした測量機10の方向を検知することができる。
【0118】
第1ファンビームB1のみが走査される領域を第1領域AR1、第2ファンビームB2のみが走査される領域を第2領域AR2、第1ファンビームB1および第2ファンビームB2が送光される領域を第3領域AR3とする。
【0119】
送光器90と同様に、送光器190は追尾されると、IMU91での計測を開始し、測量機10から計測データを随時受信する。追尾が外れると、送光器制御部99は、基準方向AX5を測量機10へ向けるように回転駆動され、測量機10へ向けて追尾ガイド光Lc2として、水平方向に広がる第1ファンビームB1および第2ファンビームB2が上下方向に走査される。
【0120】
従来は、追尾が切れると、測量機はどの方向にプリズムがあるかわからず、送光器からファンビームが送光されても、最初からファンビームを受光することは難しかった。しかし、送光器190は、送光器90と同様に、基準方向AX5を測量機10へ向けて回動し、追尾ガイド光Lc2を送光する。このため、水平方向に大きく広がる一対のファンビームからなる追尾ガイド光Lcを、測量機10の受光部60で受光することができる。また、第1ファンビームB1と第2ファンビームB2は、水平方向には異なる方向へ向けて反射されることから、左右方向へ反射を振り分けていない場合のファンビームの水平方向の広がりよりも、全体として水平方向により大きく広がる構成となっており、測量機10はより追尾ガイド光Lcを受光しやすいものとなっている。
【0121】
測量機10が第1領域AR1に配置されていた場合、受光部60が第1ファンビームB1のみ受光する。この検出結果を受けて、送光器190は、測量機10へ基準方向AX5を向くように、送光器190が水平方向で左方に回転する。これにより、受光部60が第1ファンビームB1および第2ファンビームB2を受光すると、測量機10は第3領域AR3に入ったと判断される。
【0122】
同様に、測量機10が第2領域AR2に配置されていた場合、受光部60が第2ファンビームB2のみ受光する。この検出結果を受けて、送光器190が水平方向で右方に回転する。これにより、受光部60が第1ファンビームB1および第2ファンビームB2を受光すると、測量機10は第3領域AR3に入ったと判断される。
【0123】
測量機10が受光部60で受光することにより、第3領域AR3の中央、すなわち基準方向AX5を、測量機10に向けることができる。
【0124】
測量機10の受光回数により、送光器190は、測量機10の方向を補正することができる。
【0125】
追尾が切れる直前まで、測量機10はプリズム72を追尾していたことから、視準方向を送光器190方向へ向けていた。このため、追尾が外れる直前の方向へ基準方向AX5を向けると、両者が正対していた状態となる。そこから追尾が外れた状態となったため、追尾ガイド光Lcを受光して測量機10の配置が、中心よりも左側の第1領域AR1であった場合、測量機10からも相対的に送光器190に水平方向に左側にあることとなる。測量機10は鏡筒部18を鉛直方向に走査しながら、水平方向に左僅かに回動させて、プリズム72をロックする。
【0126】
同様に、測量機10が中心より右側の第2領域AR2であった場合、測量機10からも相対的に送光器190に水平方向に右側にあることとなる。測量機10は鏡筒部18を鉛直方向に走査しながら、水平方向に右僅かに回動させて、プリズム72をロックする。
【0127】
測量機10は追尾が外れる直前まで追尾を行っていたため、追尾が外れて、現在の視準方向の近傍に、プリズム72は存在する。サーチを行う場合、追尾が外れた位置から、サーチを行うべき方向が、左方であるか右方であるかだけでも知ることができれば、プリズム72を見つけ出すことは容易である。本構成により、測量機10はサーチ方向を検知でき、測量機10の追尾再開までの時間を短縮することができる。
【0128】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1 :測量システム
10 :測量機
21 :水平角検出器
22 :鉛直角検出器
23 :測距部
24 :追尾部
60 :受光部
72 :プリズム
90 :送光器
91 :IMU(慣性計測装置)
92 :送光器駆動部(駆動部)
93 :送光器角度検出器(角度検出器)
94 :送光器通信部
96 :送光器本体
99 :送光器制御部
AN1 :方位角
AN2 :方位角
AN3 :角度
Ht :移動方向(第1移動方向)
Lc :追尾ガイド光
T1 :移動方向(第2移動方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13