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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052435
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】配筋検査システムおよび配筋検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01B11/00 B
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159149
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA16
2F065CC14
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF12
2F065FF61
2F065GG04
2F065HH04
2F065HH18
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM16
2F065MM26
2F065PP04
2F065PP22
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065RR08
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】 配筋検査時の作業員の負担を低減する。
【解決手段】 検査範囲の3次元点群データを取得する少なくとも1つのスキャナ2と、
座標および方向が既知の状態で検査範囲の画像データを取得する少なくとも1つのカメラ50と、カメラおよびスキャナとの情報の送受信が可能であり、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを備えるシステム制御部60と検査範囲の3次元配筋設計データを格納する記憶部66とを備え、システム制御部60は、スキャナで取得した検査範囲の3次元点群データと、カメラが撮影した検査範囲の画像データとを受け付けて、3次元点群データと、画像データとを合成した点群合成画像を生成し、点群合成画像から点群合成画像に含まれる鉄筋の配筋状態と位置とを識別し、点群合成画像と、3次元配筋設計データとを比較して、配筋誤りと配筋誤りの位置情報を含む3次元の配筋状態検査結果データを生成し、配筋状態検査結果データは、配筋誤りが視覚的に識別可能に出力される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標および方向が既知の状態で、スキャン光を送光し、反射光を受光して、検査範囲の3次元点群データを取得する少なくとも1つのスキャナと、
座標および方向が既知の状態で前記検査範囲の画像データを取得する少なくとも1つのカメラと、
前記カメラおよび前記スキャナとの情報の送受信が可能であり、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを備えるシステム制御部と
前記検査範囲の3次元配筋設計データを格納する記憶部と、
を備える配筋検査システムであって、
前記システム制御部は、
前記スキャナで取得した前記検査範囲の前記3次元点群データと、前記カメラが撮影した前記検査範囲の前記画像データとを受け付けて、前記3次元点群データと、前記画像データとを合成した点群合成画像を生成し、
前記点群合成画像から前記点群合成画像に含まれる鉄筋の配筋状態と位置とを識別し、前記点群合成画像と、前記3次元配筋設計データとを比較して、配筋誤りと前記配筋誤りの位置情報を含む3次元の配筋状態検査結果データを生成し、前記配筋状態検査結果データは、前記配筋誤りが視覚的に識別可能に出力されることを特徴とする配筋検査システム。
【請求項2】
前記点群合成画像に含まれる鉄筋の配筋状態および位置の識別は種々の配筋状態について作成した学習用点群合成画像を多数学習した結果得られる配筋状態識別モデルを用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の配筋検査システム。
【請求項3】
前記カメラは、ディスプレイと、相対位置センサおよび相対方向センサとを備え、前記システム制御部と情報の送受信が可能で、かつ位置及び方向に関する情報が、前記スキャナおよび前記3次元配筋設計データと、共通の座標空間で同期されて管理されるように構成されたアイウェア装置に搭載されており、
前記配筋状態検査結果データは、前記ディスプレイ上に、前記検査範囲の現物に重ねて表示されることを特徴とする請求項1に記載の配筋検査システム。
【請求項4】
前記システム制御部は、前記3次元配筋設計データが標準仕様に従ったものであるかを判定し、前記3次元配筋設計データが、前記標準仕様に従ったものでない場合は、前記3次元配筋設計データを、前記標準仕様に従ったものとなるように修正することを特徴とする請求項1に記載の配筋検査システム。
【請求項5】
前記スキャナは、前記検査範囲の前記3次元点群データを取得し、
前記カメラは、前記検査範囲に設定された一部の範囲の画像データを取得し、
前記システム制御部は、前記一部の範囲に対応する前記3次元点群データと前記一部の範囲の画像データを合成して、点群合成画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の配筋検査システム。
【請求項6】
前記スキャナは、前記検査範囲全体の前記3次元点群データを取得し、
前記カメラは、前記検査範囲全体の領域の画像を撮影し、
前記システム制御部は、前記3次元点群データと前記画像とを合成して、前記点群合成画像を生成し、前記点群合成画像から検査対象範囲を抽出し、検査対象範囲を区画して、区画ごとに前記配筋状態識別モデルに入力することを特徴とする請求項2に記載の配筋検査システム。
【請求項7】
スキャン光を送光し、反射光を受光して、3次元点群データを取得する少なくとも1つのスキャナが、座標および方向が既知の状態で検査範囲の3次元点群データを取得するステップと、
少なくとも1つのカメラが、座標および方向が既知の状態で前記検査範囲の画像データを取得するステップと、
少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを備えるシステム制御部が、前記スキャナで取得した前記検査範囲の前記3次元点群データと、前記カメラが撮影した前記検査範囲の前記画像データとを受け付けて、前記3次元点群データと、前記画像データとを合成した点群合成画像を生成するステップと、
前記システム制御部が、前記点群合成画像から前記点群合成画像に含まれる鉄筋の配筋状態と位置とを識別し、前記点群合成画像と、3次元配筋設計データとを比較して、配筋誤りと前記配筋誤りの位置情報を含む3次元の配筋状態検査結果データを生成するステップとを備える配筋検査方法であって、
前記システム制御部が前記配筋状態検査結果データは、前記配筋誤りが視覚的に識別可能に出力されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配筋検査システムに関し、より詳細には、3次元レーザスキャナを用いる配筋検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋工事における配筋検査では、鉄筋の種類、本数、位置、間隔、継手方法などが設計どおりに正しく配置されているか否かを検査する。従来は、検査員が配筋図面と現場の配筋状態を照らし合わせて誤りがないかを点検し、デジタルカメラなどで撮影して記録しなければならず、非常に手間がかかるものであった。
【0003】
このため、近年では、撮影画像を用いて、鉄筋の本数、直径およびピッチ等の配筋情報を取得する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-27058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の配筋検査システムでは、画像を撮影する毎に、鉄筋の長さおよび太さの基準となる基準データを付与するための定規やマーカを設置しなければならず煩雑であった。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、配筋検査時の作業員の負担を低減する配筋検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る配筋検査システムは、以下の構成を有する。
1.座標および方向が既知の状態で、スキャン光を送光し、反射光を受光して、検査範囲の3次元点群データを取得する少なくとも1つのスキャナと、座標および方向が既知の状態で前記検査範囲の画像データを取得する少なくとも1つのカメラと、前記カメラおよび前記スキャナとの情報の送受信が可能であり、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを備えるシステム制御部と前記検査範囲の3次元配筋設計データを格納する記憶部と、を備える配筋検査システムであって、前記システム制御部は、前記スキャナで取得した前記検査範囲の前記3次元点群データと、前記カメラが撮影した前記検査範囲の前記画像データとを受け付けて、前記3次元点群データと、前記画像データとを合成した点群合成画像を生成し、前記点群合成画像から前記点群合成画像に含まれる鉄筋の配筋状態と位置とを識別し、前記点群合成画像と、前記3次元配筋設計データとを比較して、配筋誤りと前記配筋誤りの位置情報を含む3次元の配筋状態検査結果データを生成し前記配筋状態検査結果データは、前記配筋誤りが視覚的に識別可能に出力される。
【0008】
2.上記1の態様において、前記点群合成画像に含まれる鉄筋の配筋状態および位置の識別は種々の配筋状態について作成した学習用点群合成画像を多数学習した結果得られる配筋状態識別モデルを用いて行われることも好ましい。
【0009】
3.上記1または2の態様において、前記カメラは、ディスプレイと、相対位置センサおよび相対方向センサとを備え、前記システム制御部と情報の送受信が可能で、かつ位置及び方向に関する情報が、前記スキャナおよび前記3次元配筋設計データと、共通の座標空間で同期されて管理されるように構成されたアイウェア装置に搭載されており、前記配筋状態検査結果データは、前記ディスプレイ上に、前記検査範囲の現物に重ねて表示されることも好ましい。
【0010】
4.上記1~3のいずれかの態様において、前記システム制御部は、前記3次元配筋設計データが標準仕様に従ったものであるかを判定し、前記3次元配筋設計データが、前記標準仕様に従ったものでない場合は、前記3次元配筋設計データを、前記標準仕様に従ったものとなるように修正することも好ましい。
【0011】
5.上記1~4のいずれかの態様において、前記スキャナは、前記検査範囲の前記3次元点群データを取得し、前記カメラは、前記検査範囲に設定された一部の範囲の画像データを取得し、前記システム制御部は、前記一部の範囲に対応する前記3次元点群データと前記一部の範囲の画像データを合成して、点群合成画像を生成することも好ましい。
【0012】
6.上記2および2に従属する3~5の態様において、前記スキャナは、前記検査範囲全体の前記3次元点群データを取得し、前記カメラは、前記検査範囲全体の領域の画像を撮影し、前記システム制御部は、前記3次元点群データと前記画像とを合成して、前記点群合成画像を生成し、前記点群合成画像から検査対象範囲を抽出し、検査対象範囲を区画して、区画ごとに前記配筋状態識別モデルに入力することも好ましい。
【0013】
また、本発明の別の態様に係る配筋検査方法は、スキャン光を送光し、反射光を受光して、3次元点群データを取得する少なくとも1つのスキャナが、座標および方向が既知の状態で検査範囲の3次元点群データを取得するステップと、少なくとも1つのカメラが、座標および方向が既知の状態で前記検査範囲の画像データを取得するステップと、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを備えるシステム制御部が、前記スキャナで取得した前記検査範囲の前記3次元点群データと、前記カメラが撮影した前記検査範囲の前記画像データとを受け付けて、前記3次元点群データと、前記画像データとを合成した点群合成画像を生成するステップと、前記システム制御部が、前記点群合成画像から前記点群合成画像に含まれる鉄筋の配筋状態と位置とを識別し、前記点群合成画像と、3次元配筋設計データとを比較して、配筋誤りと前記配筋誤りの位置情報を含む3次元の配筋状態検査結果データを生成するステップとを備える配筋検査方法であって、前記システム制御部が前記配筋状態検査結果データは、前記配筋誤りが視覚的に識別可能に出力する。
【発明の効果】
【0014】
上記態様によれば、配筋検査時の作業員の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る配筋検査システムの外観概略図である。
図2】同システムのブロック図である。
図3】同システムを構成するスキャナのブロック図である。
図4A】同システムを構成するアイウェア表示装置の外観斜視図である。
図4B】同アイウェア表示装置のブロック図である。
図5】上記システムを構成するデータ処理装置のブロック図である。
図6】(A)~(C)は、それぞれ画像データ、点群データおよび点群合成画像を説明する図である。
図7】同データ処理装置の配筋状態検査部を説明する図である。
図8】同データ処理装置の配筋状態識別モデルの生成方法を説明する図である。
図9】上記システムを用いた配筋検査方法の概略のフローチャートである。
図10】同方法におけるデータ処理装置の処理のフローチャートである。
図11】同方法における配筋状態検査の処理の詳細のフローチャートである。
図12】(A)(B)は、配筋検査の結果の表示の一例を示す図である。
図13】同システムの1つの変形例に係るデータ処理装置のブロック図である。
図14】同データ処理装置の配筋設計データ読み込み処理のフローチャートである。
図15】第2の実施の形態に係る配筋検査システムの概略外観図である。
図16】上記システムのブロック図である。
図17】同システムを構成する測量機および飛行装置のブロック図である。
図18】同システムを構成するデータ処理装置のブロック図である。
図19】上記システムを用いた配筋検査方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態および変形例に共通する同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0017】
I 第1の実施の形態
1 配筋検査システム100の構成
図1は、本発明の実施の形態に係る配筋システム(以下、単にシステムという。)100の使用状態の概要を示すブロック図である。システム100は、少なくとも1つのスキャナ2と、カメラ50を備えるアイウェア表示装置(以下、アイウェア装置という。)4と、データ処理装置6とを備える。スキャナ2、アイウェア装置4は、データ処理装置6は、無線で接続され、互いに情報の送受信が可能である。
【0018】
スキャナ2は、地上設置型の3次元レーザスキャナである。スキャナ2は、検査範囲である基礎工事の現場内の任意の点に設置される。器械設置点は、後方交会法等により既知とされる。スキャナ2は、三脚上に取り付けられた整準台を介して設置され、整準台の上に設けられた基盤部2αと、基盤部2α上を軸H周りに水平回転する托架部2βと、托架部2βの中央で鉛直回転する投光部2γとを有する。
【0019】
アイウェア装置4は、作業者の頭部に装着されるいわゆるヘッドマウンドディスプレイである。カメラ50を用いて、検査範囲の配筋状態の画像を取得する。カメラ50は1度の撮影で、カメラ50の視野の範囲内の範囲(検査対象範囲という)の画像を取得する。また、ディスプレイ41は、検査結果を、鉄筋の現物に重ねて表示することができる。
【0020】
データ処理装置6は、図示の例において、ラップトップコンピュータである。データ処理装置6は、スキャナ2で取得した3次元点群データ(以下、単に点群データという。)71およびカメラ50で取得した画像を用いて、配筋検査を実行する。以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0021】
2.スキャナ
図3は、スキャナ2の構成ブロック図である。スキャナ2は、測距部21、鉛直回転駆動部22、鉛直角検出器23、水平回転駆動部24、水平角検出器25、スキャナ制御部26、表示部27、操作部28、記憶部29、外部記憶装置30、および通信部31を備える。
【0022】
測距部21は、送光部、受光部、送光光学系、送光光学系と光学素子を共有する受光光学系および回動ミラー21αを備える。送光部は、半導体レーザ等の発光素子を備え、スキャン光として測距光であるパルス光を出射する。出射された測距光は、送光光学系を介して回動ミラー21αに入射し、回動ミラー21αによって偏向されて測定対象物に照射される。回動ミラー21αは、鉛直回転駆動部22により駆動されて回転軸V周りに回転する。
【0023】
測定対象物により再帰反射された反射光は、回動ミラー21αおよび受光光学系を経て、受光部に入射する。受光部は、フォトダイオードなどの受光素子を備える。また、受光部には、測距光の一部が内部参照光として入射するようになっており、反射光および内部参照光に基づいて、スキャナ制御部により、照射点までの距離を求めるようになっている。
【0024】
鉛直回転駆動部22と水平回転駆動部24は、モータであり、スキャナ制御部に制御される。鉛直回転駆動部22は回動ミラー21αを鉛直方向に軸V周りに回転させる。水平回転駆動部24は、托架部2βを水平方向に軸H周りに回転させる。
【0025】
鉛直角検出器23と水平角検出器25は、ロータリエンコーダである。鉛直角検出器23は、回動ミラー21αの鉛直方向の回転角を測定する。水平角検出器25は、托架部2βの水平方向の回転角を測定する。これにより、測距光軸の鉛直角および水平角が検出される。
【0026】
スキャナ制御部26は、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)である。メモリは、例えば、SRAM(Static Random Access Memory),DRAM(Dynamic Random Access Memory)等である。プロセッサは、記憶部29等に記憶されるデータおよびプログラムをメモリに読み出して、スキャナ2の機能を実現するための処理を実行する。
【0027】
本明細書において、プロセッサは、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC((Application Specific Integrated Circuit))を備えてもよい。すなわち、プロセッサは、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する少なくとも1つのプロセッサ、と各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路の組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成されていてもよい。
【0028】
スキャナ制御部26は、送光部の発光タイミングと、受光部の受光タイミングの時間差(パルス光の往復時間)に基づき、測距光の1パルス光ごとに照射点までの距離を算出する。また、その時の測距光の照射角度を算出して、照射点の角度を算出する。
【0029】
また、スキャナ制御部26は、測距部21、回動ミラー21α、鉛直回転駆動部22、および水平回転駆動部24を制御して測距光を全周(360°)に走査(フルドームスキャン)して、各照射点の座標を取得して、全周の点群データを取得する。また、スキャナ制御部26は、ターゲットの周辺を高密度に走査して、ターゲットを測距測角し、ターゲットの3次元座標を取得するターゲットスキャン機能を実現する。
【0030】
表示部27は、例えば、液晶ディスプレイである。操作部28は、電源キー、数字キー、小数点キー、+/-キー、実行キー、カーソル移動キー等を有する。作業者は、操作部28から、スキャナ2に対する操作指示や情報を入力できる。
【0031】
記憶部29は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。記憶部29は、スキャナ制御部26の機能を実行するためのプログラムを格納する。外部記憶装置30は、例えばメモリカード等であり、スキャナ2が取得する種々のデータを記憶する。
【0032】
通信部31は、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード、LANカード,Bluetooth(登録商標)アダプタ等の通信制御装置であり、スキャナ2を、アイウェア装置4およびデータ処理装置6と有線または無線で接続する。スキャナ制御部26は、通信部31を介して、アイウェア装置4およびデータ処理装置6との間で情報を送受信することができる。
【0033】
3. アイウェア装置4
図4Aは、アイウェア装置4の外観斜視図であり、図4Bは、アイウェア装置4の構成ブロック図である。アイウェア装置4は、ディスプレイ41、カメラ50および制御部42を備える。制御部42は、アイウェア制御部43、通信部44、相対位置検出センサ45、相対方向検出センサ46、アイウェア記憶部47、および操作スイッチ48を備える。
【0034】
ディスプレイ41は、作業者が装着した時に、作業者の両目を覆うゴーグルレンズ型の透過型ディスプレイである。一例として、ディスプレイ41は、ハーフミラーによる光学シースルーのディスプレイであり、現場風景に、アイウェア制御部43の受信した画像を重畳して表示するようになっている。
【0035】
あるいは、ディスプレイ41は、ビデオシースルーのディスプレイであり、カメラ50でリアルタイムに取得した正面風景画像にアイウェア制御部43の受信した画像を重畳した画像を表示してもよい。また、投影方式としては、虚像投影方式でもよく、網膜投影方式であってもよい。
【0036】
カメラ50は、レンズ、およびCCD(Charge-Coupled Device),CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを備えるデジタルカメラである。カメラ50は、アイウェア装置4の前面中央に設けられ、アイウェア装置4の正面画像をリアルタイムで撮影する。イメージセンサは、カメラ50の撮像中心を原点とした直交座標系を有し、各画素のローカル座標は特定される。カメラ50の撮像中心が、アイウェア装置4の中心であり、撮像光軸がアイウェア装置4の視線方向である。
【0037】
アイウェア通信部44は、通信部31と同じ通信制御装置である。アイウェア通信部44は、は、アイウェア装置4を、有線または無線、好ましくは無線で接続する。アイウェア制御部43は、アイウェア通信部44を介して、スキャナ2およびデータ処理装置6と情報の送受信することができる。
【0038】
相対位置センサ45は、観測現場に設置されたGNSS(Global・Navigation・Satellite・System)用アンテナ、Wi-Fi(登録商標)アクセスポイント、超音波発振器などから無線測位を行い、観測現場内でのアイウェア装置4の位置(自位置)を検出する。
【0039】
相対方向センサ46は、三軸加速度センサまたはジャイロセンサと、傾斜センサとの組み合わせからなる。相対方向センサ46は、上下方向をZ軸方向、左右方向をY軸方向、前後方向をX軸方向として、アイウェア装置4の姿勢(自方向)を検出する。このようにして、カメラ50は位置および方向が既知の状態で、画像を取得可能となっている。
【0040】
アイウェア記憶部47は、例えばメモリカード等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。アイウェア記憶部47は、アイウェア制御部43が機能を実行するためのプログラムを格納している。
【0041】
操作スイッチ48は、例えば、テンプル部分に設けられた押しボタンである。操作スイッチ48は、例えば、アイウェア装置4の電源をON/OFFするための電源ボタン48αと、カメラ50で静止画像を撮影するための撮影ボタン48βを備える。
【0042】
アイウェア制御部43は、スキャナ2のスキャナ制御部26と同様に、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、CPU)と少なくとも1つのメモリ(例えば、SRAM,DRAM等)を備える。プロセッサがアイウェア記憶部47に記憶されたプログラムを読み出してメモリに展開することにより、アイウェア装置4の各種機能を実現する。
【0043】
アイウェア制御部43は、相対位置センサ45および相対方向センサ46の検出したアイウェア装置4の位置および方向の情報をデータ処理装置6に出力する。また、データ処理装置6から受信した、データを、検査現場の風景に重ねてアイウェア装置4のディスプレイ41に表示する。
【0044】
4. データ処理装置6
図5は、データ処理装置6の構成ブロック図である。データ処理装置6は、いわゆるコンピュータであり、典型的にはパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等であるが、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。データ処理装置6の演算処理部60が、特許請求の範囲におけるシステム制御部に対応する。システム制御部は、データ処理装置6の様に、1台のコンピュータであってもよいが、複数台のコンピュータが分散的に処理を行うコンピュータシステムであってもよい。この場合、1以上のコンピュータの処理資源の一部を論理的に利用するものであってもよい。システム制御部は、アイウェア装置4の一部として構成してもよく、スキャナ2の一部として構成してもよい。データ処理装置6の一部の処理をアイウェア装置4で行うように構成してもよく、一部の処理をスキャナ2で行うように構成してもよい。
【0045】
データ処理装置6は、少なくとも演算処理部60、通信部63,表示部64,入力部65、および記憶部66を備える。
【0046】
通信部63は、スキャナ2の通信部31と同等の通信制御装置であり、データ処理装置6を、スキャナ2およびアイウェア装置4と無線で通信可能とする。演算処理部60は、通信部63を介して、スキャナ2およびアイウェア装置4と情報を送受信することができる。
【0047】
表示部64は、例えば液晶ディスプレイである。入力部65は、例えば、キーボード、マウス等であり、作業者からの、種々の指令・選択・決定等を入力可能とする。
【0048】
演算処理部60は、スキャナ2のスキャナ制御部26と同様に、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、CPU,GPU)、および少なくとも1つのメモリ(例えば、SRAM,DRAM等)を備える制御演算ユニットである。プロセッサが記憶部66に記憶されたプログラムを読み出してメモリに展開することにより、データ処理装置6の各種機能、特に、下記の機能部の機能を実現する。
【0049】
演算処理部60は、機能部として、同期計測部601,点群データ受付部602,配筋設計データ読出部603,画像データ受付部604,点群合成画像生成部605,配筋状態検査部606、および出力データ生成部607を備える。
【0050】
同期計測部601は、スキャナ2、アイウェア装置4(カメラ50)、データ処理装置6を同期する。同期とは、スキャナ2、アイウェア装置4(カメラ50)の位置及び姿勢、およびデータ処理装置6で扱う設計データ等、位置座標を含む情報を共通の基準点を原点とする共通の座標空間で管理できるようにする作業である。以下に好適と考えられる一例を示すが、当業者の知識に基づいて適宜の手法で同期がとられればよい。
【0051】
まず、システム100に対して、検査現場に、基準点と基準方向を設定し、スキャナ2とデータ処理装置6を同期する。基準点は、既知点(座標が既知の点)または現場の任意の点を選択する。基準点とは別の特徴点を選択し、基準点から該特徴点に向かう方向を基準方向とする。スキャナ2のターゲットスキャン機能を用いて、基準点および特徴点を含む後方交会法の観測により、スキャナ2の絶対座標を把握し、データ処理装置6に送信する。同期計測部601は、基準点の絶対座標を(x,y,z)=(0,0,0)と認識し、基準方向を水平角0°と認識する。これにより、データ処理装置6は、スキャナ2からの情報に関して、基準点を原点とする空間で、スキャナ2の相対位置および相対方向を管理可能となる。
【0052】
次に、アイウェア装置4とデータ処理装置6を同期する。アイウェア装置4を基準点に設置し、アイウェア装置4を水平にした状態で、アイウェア装置4の視線方向を基準方向に一致させ、相対位置センサ45の(x,y,z)を(0,0,0)、かつ、相対方向センサの(roll,pitch,yaw)を(0,0,0)とする。これにより、データ処理装置6は、以後、アイウェア装置4(カメラ50)からの情報について、基準点を原点とする空間で、アイウェア装置4(カメラ50)の相対位置・相対方向を管理可能となる。
【0053】
点群データ受付部602は、スキャナ2でフルドームスキャンして取得される現場全体の3次元点群データを通信部63を介して受け付ける。
【0054】
配筋設計データ読出部603は、記憶部66に格納された、後述する3D配筋設計データ(3次元配筋設計データ)を読み出す。
【0055】
画像データ受付部604は、カメラ50で取得される画像データを、通信部63を介して受け付ける。
【0056】
点群合成画像生成部605は、スキャナ2が取得した3次元点群データに、カメラ50で取得した画像データを合成して、点群合成画像を生成する。図6は、画像データ(A),点群データ(B),点群合成画像(C)のイメージを示す図である。画像データは、色情報を含むデータであるが、影等が映りこむ場合もある。一方点群データは、影の影響は受けないが、色情報を含まない。点群データの各点は座標が特定されているため、実寸の寸法がわかる。点群合成画像は、画像データの有する色情報と、点群データの有する各点の座標情報を含むデータとなり実寸の寸法がわかる。つまり、配筋状態を識別するために点群合成画像を用いることで、定規等の基準マーカを設置しなくても、寸法を特定することが可能である。
【0057】
配筋状態検査部606は、点群合成画像を用いて配筋状態を検査し、検査結果データを出力する。配筋状態検査部606の詳細については後述する。
【0058】
出力データ生成部607は、配筋結果データに基づいて、表示部、またはアイウェア装置4のディスプレイ41に表示する出力データを生成する。
【0059】
記憶部66は、例えば、HDD,SSD(Solid State Drive)等である。記憶部66には、上述した3D配筋設計データ(以下、配筋設計データともいう。)71が記憶されている。また、記憶部66には、演算処理部60の各機能部がソフトウェアとして実現されている場合に、各機能を実行するためのプログラムを記憶されている。
【0060】
なお、配筋設計データ71は、配筋詳細図に相当する図面を、3次元データとして作成したものである。配筋詳細図は、鉄筋コンクリ―ト部材の配筋状態を示し、設計図に対応する設計データに、配筋状態に関する情報を含むデータである。配筋状態は、例えば、鉄筋の種類(材質および太さ)、鉄筋の間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類、結束箇所の位置等を含む。配筋設計データ71は、これらのうち少なくとも1つの情報を含む。
【0061】
配筋設計データ71は、予め3D配筋設計データ生成装置70により生成されて、記憶部66に記憶されている。3D配筋設計データ生成装置70は、データ処理装置6と同等の少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを含むコンピュータである。3D配筋設計データ生成装置70は、3DCADデータで作成された、3次元の設計データに、配筋状態に関する情報を手動または自動で付与することにより生成される。
【0062】
次に、配筋状態検査部606の詳細、図7,8を参照して説明する、図7に示すように、配筋状態検査部606は、前処理部611と、配筋状態識別モデル612と、設計データ比較部613とを備える。
【0063】
前処理部611は、検査対象として入力された点群合成画像に対して、鉄筋の認識を容易にするための画像処理を行う。例えば、グレースケール変換、エッジや線分の抽出、輝度値の平均化等の処理等公知の画像処理を行う。また、これに加えて、点群合成画像を、所定の縮尺となるように画像を拡大または縮小してもよい。合成画像データは位置座標、すなわち実寸情報を含むデータであるため、定規などの基準マーカを同時に撮影しなくとも、所定の縮尺への拡大/縮小が可能である。
【0064】
配筋状態識別モデル612は、図8に示すように、例えば、多数の配筋状態を撮像、点群データ取得して、作成した多数の学習用点群合成画像を、それぞれの鉄筋の種類(材料、形状および太さ(径の寸法))、配筋間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類、結束箇所の位置等についてラベルしたものを学習データとして学習して得られる学習済みモデルである。学習用データとしては、一般的な配筋方法における様々な配筋状態を撮像して、点群合成画像と同様に生成した多数の点群合成画像が用いられる。あわせて、画像データを用いてもよい。
【0065】
配筋状態識別モデル612は、検査範囲を撮像した点群合成画像を入力すると、検査範囲における、鉄筋の種類(材質および太さ)、配筋間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類を識別し、これらの事象を位置と関連付けて出力する。学習には、データ処理装置6と同様に少なくとも1つのプロセッサおよびメモリを備えるコンピュータにより行われる。また、学習方法としては例えば、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Networks: CNN),回帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network: RNN),ボルツマンマシン等を用いたディープラーニングを利用することができる。
【0066】
なお、鉄筋の種類は、材料、形状および径の寸法によりJIS規格に従って、D3,D13,D38,SR295…等の様に呼称が定められている。鉄筋の種類のラベルにはこれらの呼称が用いられていてもよい。
【0067】
また、前処理において、点群合成画像の縮尺となるように拡大/縮小する場合には、学習に供する学習用データに、同じ所定の縮尺の画像データを用いれば、配筋状態識別の精度が高くなる。
【0068】
配筋状態識別モデル612に、検査範囲の点群合成画像を入力すると、例えば、図8の右下部に一例を示すように、検出された配筋状態情報、すなわち鉄筋の種類(材料、形状および太さ(径の寸法))、配筋間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類、結束箇所の位置等の情報を有する配筋状態データが出力される。
【0069】
設計データ比較部613は、点群合成画像から識別した配筋状態を配筋設計データ71と比較して、実際の配筋状態に誤りがある位置とその誤りの内容を配筋検査結果として出力する。具体的には、鉄筋の種類、配筋間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類、結束箇所の位置等を、検査範囲における位置情報と関連付けて出力することで誤りがないか確認できる。
【0070】
5.配筋検査方法(配筋検査システム100の処理)
次に、配筋検査方法について説明する。図9は、本形態に係るシステム100を用いた配筋検査方法の概略のフローチャートである。
【0071】
ステップS01では、スキャナ2を、既知点に設置して、フルドームスキャンを実行して、検査範囲全体の点群データを取得する。この検査範囲全体は、厳密に検査範囲全体を意味するのではなく、検査範囲の中で作業者が必要とする範囲でよい。取得した点群データはデータ処理装置6に送られる。なお、一度のフルドームスキャンで現場全体の点群データを用いて取得してもよい。複数台のスキャナ2を用いて点群データを取得してもよい。あるいは、設置点を変えて複数回のフルドームスキャンを行って点群データを取得してもよい。
【0072】
次に、ステップS02では、作業者が、カメラ50により、検査範囲に設定された一部の範囲(検査対象範囲)の画像を撮影する。検査範囲に設定された一部の範囲とは、具体的には、カメラの画角の範囲であり、作業者が検査のために撮影しようとする範囲である。撮影された画像は、データ処理装置6に送られる。
【0073】
次に、ステップS03で、データ処理装置6が、受け付けた点群データおよび画像を、合成し、点群合成画像を生成する。
【0074】
次に、ステップS04で、データ処理装置6が、点群合成画像を用いて配筋状態の検査を実行する。
【0075】
次に、ステップS05で、検査結果を出力する。検査結果の出力は、アイウェア装置4のディスプレイ41への表示でも、データ処理装置6の表示部64への表示でも、あるいはデータ処理装置6からプリンタ等外部機器への帳票の出力として出力してもよい。
【0076】
6. 配筋検査方法(データ処理装置6の処理)
図10は、上記配筋検査方法でのデータ処理装置6の処理のフローチャートである。図11はステップS15の詳細なフローチャートである。
【0077】
処理が開始すると、まず、ステップS11で点群データ受付部602が、スキャナ2で取得した全周の点群データを受け付ける。
【0078】
次に、ステップS12で、配筋設計データ読出部603が、記憶部66から配筋設計データ71を読み出す。ステップS11,S12の順序はこれに限らず、配筋状態検査部606が検査を実施する際に読み出してもよい。
【0079】
次に、ステップS13で、画像データ受付部604が、カメラ50から、検査対象範囲の画像データを受け付ける。
【0080】
次に、ステップS14で、点群合成画像生成部605が、検査対象範囲の画像データと、検査対象範囲に対応する点群データとを合成し、点群合成画像を生成する。これにより、正確な位置座標情報を有し、写真と同じ色を有する点群合成画像が得られる。
【0081】
次に、ステップS15で、配筋状態検査部606が、検査対象範囲の点群合成画像と対応する箇所の3D配筋設計データ71とを比較して、検査対象範囲の配筋状態を検査する。
【0082】
具体的には、ステップS21で、前処理部611が、検査対象として入力された点群合成画像に対して、鉄筋の認識を容易にするための画像処理を行う。
【0083】
次に、ステップS22で、配筋状態識別モデルに検査対象範囲の合成画像を入力し、検査対象範囲の配筋状態を識別して、配筋状態データとして出力する。
【0084】
次に、ステップS23で、ステップS12で読み出した3D配筋設計データ71と、ステップS22で出力した配筋状態データを比較して、差異(配筋誤り)のある部分を特定し、その部分の位置と関連付けて、3次元の配筋状態検査結果データとして記憶部66に記憶して、ステップS15を終了する。この結果得られる配筋状態検査結果は、検査対象範囲毎(カメラ50による1回の撮影毎)に蓄積して、検査対象範囲を移動しながら検査現場全体を検査することで、検査現場全体についての3次元の配筋状態検査結果データを取得することが可能である。
【0085】
次に、ステップS16で、出力データ生成部607が、配筋状態検査結果から出力データを生成し、アイウェア装置4のディスプレイ41または、データ処理装置6の表示部に表示して出力して処理を終了する。あるいは、帳票として、データ処理装置6からプリンタ等を介して出力されるようになっていてもよい。
【0086】
7. 出力データの例
図12(A),12(B)は、アイウェア装置4のディスプレイ41に表示される出力データの例である。図中、鉄筋の現物Aを破線で、出力データBを実線で示す。実際の画像は3次元画像であるが、2次元画像として表している。
【0087】
出力データは、例えば図12(A)に示すように、現物Aの上に重ねて、配筋誤り箇所が識別できるように、例えば、誤り箇所が強調された色の表示B1となるように、表示されるようになっていてもよい。図示の例では、重ね継手の部分における鉄筋のずれが誤り箇所として表示されている。
【0088】
また、図12(B)に示すように、現場の現物Aの上に重ねて、配筋誤り箇所に正しい配筋状態を強調するように表示してもよい。このように、アイウェア装置4を用いて、現物に重ねて表示すれば、現場にいる人間が、誤りを解消するために必要な作業、物品を把握することができる。また、出力データとして、図12(A),図12(B)のような画像を、データ処理装置6の表示部64に表示するようにしてもよい。また、このような検査結果画像と、カメラ50により撮影した画像を並列して、プリンタを介して、帳票として出力するようにしてもよい。
【0089】
8.効果
このように、本実施の形態に係る配筋検査システムによれば、画像の色情報と、点群データの寸法情報を有する合成点群画像を用いて配筋状態を検査するため、検査対象範囲に、基準マーカや、定規等を設置する必要がなく、作業者の負担が軽減する。このために、スキャナ2によるフルドームスキャンをする必要があるが、フルドームスキャンはスキャナ2を設置してしまえば自動で実行できるので問題がない。例えば、他の作業員が現場にいない、早朝等に、スキャナによるフルドームスキャンを実施し、日中にカメラ50での撮像を行えば、効率的な作業が可能である。
【0090】
また、アイウェア装置4に設けたカメラ50で撮像することにしたので、作業者は、姿勢を変更することなく、検査対象範囲と正対して、画像を撮影するだけで、必要な画像を
取得できるのでさらに作業負担が低減される。
【0091】
9. 変形例1
図13は、変形例1に係るシステム100Aの、データ処理装置6Aの構成ブロック図、図14はデータ処理装置6Aの配筋設計データ受付部61Aの処理のフローチャートである。
【0092】
配筋検査は、実際の配筋が、配筋詳細図に記載された通りに施工されているかどうかを検査する。一方、特に、公共工事においては、配筋は公共建築工事標準仕様書に従ったものでなければならない。その他の工事においても、別途定められた仕様書(以下、公表建築工事標準仕様書とまとめて標準仕様という。)がある場合もある。通常、配筋詳細図は、標準仕様に従って作成される。しかし、配筋詳細図が仕様書に違反する場合もある。このような誤りは、配筋設計データを作成する際にも起こりうる。また、もともとの配筋詳細図に誤りのある場合もある。システム100Aでは、読み出した配筋設計データが標準仕様に従っているかを判定し、必要に応じて修正するようになっている。このために、記憶部66Aには、標準仕様が格納されている。
【0093】
具体的には、ステップS12を開始すると、ステップS31で、配筋設計データ読出部603Aが、配筋設計データ71を読み出す。次にステップS32で、配筋設計データ読出部603Aが、配筋設計データ71が、標準仕様を満たすかどうかを判定する。
【0094】
満たさない場合(No)、ステップS33で、配筋設計データ読出部603Aが、配筋設計データ71を標準仕様を満たすように修正するかどうかをユーザに確認する。確認は、アイウェア装置4のディスプレイ41に表示する、データ処理装置6の表示部64に表示する、等して行う。ユーザの指示がデータを修正する(Yes)である場合、ステップS34で、配筋設計データ読出部603Aが、データ修正してステップS13に移行する。
【0095】
ステップS32で標準仕様を満たす場合(Yes)、ステップS33で修正を要しない場合(No)は、そのままステップS13に移行する。
【0096】
このように、変形例1によれば、配筋設計データ71を標準仕様に適合しているかどうかを確認できるようになり、標準仕様に適合しない部分がある場合には配筋設計データ71を修正するようになっている。したがって、配筋検査において、配筋図面自体の誤りもチェックすることが可能になる。このような変形は本明細書における別の実施の形態について適用することが可能である。
【0097】
II.第2の実施の形態
全体構成
図15は、第2の実施の形態に係る配筋検査システム200の使用状態を示す外観図であり、図16は、ブロック図である。
【0098】
システム200は、スキャナ2、データ処理装置206,カメラ250を備える飛行装置8および測量機9を備える。スキャナ2、データ処理装置206、プリズムを備える飛行装置8および測量機9は、無線で接続され、互いに情報の送受信が可能である。スキャナ2は、実施の形態1に係るスキャナ2と同じものである。
【0099】
飛行装置8は、自律飛行可能なUAV(Unmanned Air Vehicle)である。飛行装置8は、本体8aから放射状に延出する複数のプロペラ8bと、ターゲットとしてのプリズム8cと検査対象の画像データを撮影するカメラ250を備える。飛行装置8は、予め定められた飛行経路を飛行したり、遠隔操作により自由に飛行することが可能である。
【0100】
測量機9は、いわゆるモータドライブトータルステーションである。現場内の任意の設置点に、三脚上に取り付けられた整準台を介して設置される。測量機9は、整準台の上に設けられた基盤部9αと、基盤部9α上を軸H周りに水平回転する托架部9βと、托架部9βの中央で鉛直回転する望遠鏡9γとを有する。
【0101】
データ処理装置206の機械構成はシステム100と同等であるため詳細な説明は省略する。
【0102】
2.飛行装置8
図17は、飛行装置8および測量機9のブロック図である。
【0103】
飛行装置8は、IMU(Inertial Measuring Unit,慣性計測装置)81、タイマ82、飛行装置制御部83,飛行駆動部84,飛行装置記憶部85、飛行装置通信部86、およびカメラ250および測量機9のターゲットであるプリズム8cを備える。
【0104】
プリズム8cは、カメラ250の近傍に固定されている。プリズム8cの固定位置はこれ以外の箇所であってもよいが、カメラの撮像中心とプリズム8cの光学中心(光学的な反射点)とのロール・ピッチ・ヨー軸方向の各ずれ量は、プリズム8cを取り付ける際に既知としておく。
【0105】
IMU81は、3軸ジャイロセンサおよび3軸加速度センサを有し、飛行装置8、すなわち、カメラ250の3軸方向(ロール・ピッチ・ヨー)の角速度と加速度を取得して、カメラ250の姿勢を検出する。
【0106】
タイマ82は、システムタイムを取得する時計である。
【0107】
飛行駆動部84は、プロペラモータであり、飛行装置制御部83の制御に従って、プロペラ8bを駆動する。
【0108】
飛行装置記憶部85は、HDD、フラッシュメモリ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。飛行装置記憶部85は、カメラ250で取得した画像データを記憶する。
【0109】
カメラ250は、CCDセンサ又はCMOSセンサ等のイメージセンサを備え、イメージセンサの各画素は画像素子上での位置が特定できるようになっている。
【0110】
飛行装置制御部83は、スキャナ制御部26等と同様の少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリを備える制御演算ユニットである。飛行装置制御部83は、予め定められた、または、飛行装置通信部86を介する遠隔操作により指定された、飛行経路で検査範囲全体を飛行するように飛行駆動部84を駆動する。また、飛行装置制御部83は、測量機9の送光信号の出力と同期したタイミングでタイマ12からシステムタイムを取得し、測量機9の測距・測角と同じタイミングでカメラ250で画像を撮影し、画像データと、撮影時のカメラ250の姿勢情報に時刻を付与する。1回の撮影において、取得されるのは、カメラの画角に合わせた範囲であるが、飛行装置8は、測量機9の測距・測角のタイミングと合わせてカメラ250での撮影を繰り返しながら、検査範囲全体を飛行することで、検査範囲全体の画像を撮影する。取得した画像データはそれぞれ時刻情報および撮影時のカメラの姿勢情報と関連付けられてデータ処理装置206に送信される。
【0111】
3.測量機9
測量機9は、測距部91、鉛直回転駆動部92a,鉛直角検出器93a、水平回転駆動部92b、水平角検出器92c、測量機制御部94、タイマ95、表示・操作部96と、測量機記憶部97、測量機通信部98、および自動追尾部99を備える。
【0112】
測距部91は、赤外レーザ等の測距光をターゲットに射出する測距送光系と、フォトダイオード等で反射測距光を受光する測距受光系を有する。測距部91は、ターゲットからの反射測距光を測距受光系で受光するとともに、測距光の一部を分割して内部参照光として受光し、反射測距光と内部参照光との位相差に基づきターゲットまでの距離を測定する。また、鉛直角検出器93aと水平角検出器93bの検出値から、ターゲットを測角する。
【0113】
鉛直回転駆動部92aと水平回転駆動部92bは、モータであり、測量機制御部94に制御されて、それぞれ水平回転軸と鉛直回転軸を駆動する。鉛直角検出器93aと水平角検出器93bは、アブソリュートエンコーダまたはインクリメンタルエンコーダである。水平角検出器93bは水平回転軸に対して設けられ托架部9bに支持される望遠鏡9γの水平方向の回転角を検出する。鉛直角検出器93aは鉛直回転軸に対して設けられ望遠鏡9γの鉛直方向の回転角を検出する。
【0114】
表示・操作部96は、測量機9のユーザインターフェースであり、タッチパネルディスプレイで構成され、測量作業の指令・設定や作業状況および測定結果の確認などが行える。
【0115】
測量機記憶部97は、例えばHDDであり、測量機制御部94が機能を実現するための各種プログラムが格納されている。
【0116】
測量機通信部98は、スキャナ2の通信部31と同等の通信制御装置である。測量機通信部98は、測量機9と少なくとも飛行装置8およびデータ処理装置206との情報の送受信を可能とする。
【0117】
自動追尾部99は、測距光とは異なる波長の赤外レーザ等を追尾光として出射する追尾送光系と、CCDセンサ又はCMOSセンサ等のイメージセンサを有する追尾受光系を有する。自動追尾部99は、追尾光を含む風景画像と追尾光を除いた風景画像を取得し、両画像を測量機制御部94に送る。測量機制御部94は、両画像の差分からターゲット像の中心を求め、ターゲット像の中心と望遠鏡9γの視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まる位置をターゲットの位置として検出し、常に望遠鏡9γがターゲットの方向を向くように、自動追尾する。
【0118】
タイマ95は、システムタイムを取得する。
【0119】
測量機制御部94は、スキャナ制御部等と同様の少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリを備える制御演算ユニットである。測量機制御部は、鉛直回転駆動部92a,水平回転駆動部92bの制御、測距部91および自動追尾部99の制御を行う。測量機制御部94は、プリズム83cを自動追尾した状態で、所定の間隔で、測距・測角を繰り返す。測量機制御部94は、測距部91の送光信号の出力のタイミングでタイマ95からシステムタイムを取得し、測距・測角値に時刻を付与する。測距部91が取得したターゲット位置(距離および角度)は、時刻情報とともに測量機記憶部97に記憶される。測量機制御部94は、測量機記憶部97に記憶されターゲット座標情報を時刻情報に関連づけてデータ処理装置206へ送信する。
【0120】
4.データ処理装置206
図18は、データ処理装置206の構成ブロック図である。データ処理装置206は、データ処理装置6と概略同等の構成を有する。データ処理装置206Bは、画像データ受付部604B,点群合成画像生成部605Bおよび配筋状態検査部606Bの機能が異なる。
【0121】
画像データ受付部604Bは、カメラ250で取得された、検査範囲全体の複数の画像を受け付ける。そして、各画像に時刻を介して関連付けられた位置およびカメラ250の姿勢情報に基づいて、統合して、検査範囲全体の画像データ(統合画像データ)にする。
【0122】
点群合成画像生成部605Bは、画像データ受付部604Bで検査範囲全体の統合画像データを合成して、検査範囲全体の点群合成画像を生成する。
【0123】
配筋状態検査部606Bは、前処理において、検査範囲全体の点群統合画像から、検査対象範囲を抽出し、検査対象範囲を区画して、区画ごとに配筋状態識別モデル612に入力する。区画の方法について箱術する。
【0124】
5.配筋検査方法
次に、配筋検査方法について説明する。図19は、本形態に係るシステム200を用いた配筋検査方法のフローチャートである。
【0125】
まず、ステップS41で、スキャナ2を、既知点に設置して、フルドームスキャンを行い、検査範囲全体の点群データを取得する。
【0126】
次に、ステップS42で、測量機9でプリズム8cを自動追尾させた状態で、飛行装置8を検査範囲全体に飛行させ、所定の間隔で、測距測角しながら、測量機9での測距測角のタイミングで、カメラ250による画像の撮影を行う。測量機9で取得される、プリズム8cの位置情報(3次元座標)から把握されるカメラ250の位置情報と、その位置における画像データおよびカメラ250の姿勢情報(方向)が関連付けられる。飛行装置8を検査範囲全体に飛行させ、所定のタイミングで時刻を介して位置及び方向が寛レづけられて撮影された画像は、カメラの250の姿勢情報および時刻と関連付けられてデータ処理装置6に送られる。また、測量機9の測距測角結果も時刻と関連付けられてデータ処理装置6に送られる。
【0127】
次に、ステップS43で、画像データ受付部604Bは、カメラ250から入力された画像および姿勢情報と、測量機から入力された位置情報に基づいて、全ての画像データを1つの検査範囲全体を含む画像データに統合する。
【0128】
次に、ステップS44で、点群合成画像生成部605Bが、受け付けた全体の点群データおよび全体の画像データを、合成し、検査範囲全体の点群合成画像を生成する。
【0129】
次に、ステップS45で、配筋状態検査部606Bが前処理として、前処理部611と同様の画像処理を行うと共に、点群合成画像から検査対象範囲を抽出する。検査対象範囲の抽出は、特徴点抽出を用いたパターンマッチング等の手法により行うことができる。配筋状態検査部606B(の前処理部612B(図示せず))は抽出された検査対象範囲を鉄筋と正対する画像として抽出する。
【0130】
次に、ステップS46で、配筋状態検査部606B(の前処理部612B)は、抽出された検査対象範囲を区画する。検査対象範囲の区画は、例えば、床面、壁、柱、梁等の構造種類に応じて行われる。例えば、壁である場合は、1m四方ごとに、柱である場合は、柱1本ごとにというように区画する。
【0131】
次にステップS47で、配筋状態検査部606Bは区画ごとに、配筋状態識別モデル612に入力し、各区画に対応する領域の配筋設計データと比較する。比較の結果は、検査範囲全体の配筋状態(配筋誤りおよびその位置情報)を含む3次元データとなる。
【0132】
次に、ステップS48で、検査結果を、検査範囲全体の3次元の配筋状態検査結果データとして出力して処理を終了する。
【0133】
この結果得られるのは、検査範囲全体の、差異(配筋誤り)と差異のある部分の位置が関連付けられた、検査範囲全体の3次元の配筋状態検査結果データとなる。このように、検査範囲全体について、画像および点群データを取得して、それを区画して、区画ごとに配筋状態検査を行えば、検査範囲全体の配筋検査結果を一度に取得することができ、検査時間を短縮し、作業者の負担が低減する。
【0134】
このように、検査範囲全体の点群データを取得し、検査範囲全体の画像を取得することは、時間を要する。しかし、上記構成によれば、いずれも自動で行うことが可能である。また、例えば、他の作業者のいない早朝などに、点群データの取得および画像データの取得を行えば、時間のかかる従来の配筋検査のために他の作業者の作業が妨げられることもなく、配筋検査の担当者も、現場を動き回ることなく配筋検査を行うことができるので、現場全体の作業効率が向上する。
【0135】
また、上記の方法によれば、配筋状態検査結果データが3次元情報として得られる。特に、検査範囲を現場全体に設定すれば、現場全体の3次元の配筋状態検査結果がデータとして得られる。このようなデータは、別の作業や、建築物自体に対する付加価値情報としても利用可能となる。
【0136】
本実施の形態において、検査範囲全体の3次元点群データおよび画像データは、それぞれ、位置および方向が既知とされたスキャナおよび位置および方向が既知とされたカメラで取得されればよく、上記の例に限定されない。例えば、カメラは位置および方向(姿勢が)既知となるように設置された全方位カメラに代えてもよい。また、スキャナを地上設置型スキャナではなく、飛行装置に取り付けたものでもよい。
【0137】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
2 :スキャナ
4 :アイウェア装置
29 :記憶部
41 :ディスプレイ
42 :制御部
45 :相対位置検出センサ
46 :相対方向検出センサ
50 :カメラ
60 :演算処理部(システム制御部)
66 :記憶部
66A :記憶部
71 :配筋設計データ
100 :配筋検査システム
100A :配筋検査システム
200 :配筋検査システム
250 :カメラ
612 :配筋状態識別モデル
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