(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052436
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】配筋結果表示システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240404BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240404BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G06Q50/08
G01C15/00 103A
E04G21/12 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159150
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】 現場の作業員の配筋誤りの修正作業を容易とする配筋検査結果の表示を可能とする。
【解決手段】 配筋検査結果表示システムは、通信部44と、3次元座標計測部262とを備える測定器2と、ディスプレイ41を備えるアイウェア表示装置4、およびアイウェア表示装置の位置及び方向に関する情報の座標空間と、測定器の座標空間とを、共通の基準点を原点とする空間で管理するシステム制御部60、を備え、システム制御部で作成される画像をディスプレイ41に表示することにより、アイウェア表示装置4を装着して観察される現物に重ねて表示する配筋検査結果表示システムSあって、システム制御部は、位置および方向が既知の状態で取得された配筋検査範囲の3次元点群データに基づいて配筋検査範囲の現状の3次元モデルを生成し、配筋検査範囲についての配筋検査結果を、3次元モデルに関連付けて3次元検査結果表示データを生成して、ディスプレイに表示し、検査範囲における配筋誤りを認識可能に表示することを特徴とする
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部と、3次元座標計測部とを備える測定器;
ディスプレイと、自位置を検出する相対位置センサと、自方向を検出する相対方向センサとを備えるアイウェア表示装置;および
前記アイウェア表示装置の位置及び方向に関する情報の座標空間と、前記測定器の座標空間とを、共通の基準点を原点とする空間で管理するシステム制御部;を備え、
前記システム制御部で作成される画像を前記ディスプレイに表示することにより、前記アイウェア表示装置を装着して観察される現物に重ねて表示する配筋検査結果表示システムあって、
前記システム制御部は、位置および方向が既知の状態で取得された配筋検査範囲の3次元点群データに基づいて配筋検査範囲の現状の3次元モデルを生成し、
配筋検査範囲についての配筋検査結果を、前記3次元モデルに関連付けて3次元検査結果表示データを生成して、前記ディスプレイに表示し、
前記配筋検査範囲における配筋誤りを認識可能に表示することを特徴とする配筋検査結果表示システム。
【請求項2】
前記システム制御部は、前記検査範囲における、3次元配筋設計データに基づいて、前記配筋誤りを修正するための修正支援データを生成し、
前記修正支援データに基づいて、前記配筋誤りを修正する作業を支援する修正支援画像を、前記ディスプレイに表示することを特徴とする請求項1に記載の配筋検査結果表示システム。
【請求項3】
前記システム制御部は、前記アイウェア表示装置の視野内の作業者の手を認識可能であり、
前記ディスプレイ内で、前記作業者が触れた鉄筋を認識可能に表示することを特徴とする請求項1に記載の配筋検査結果表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配筋検査結果表示システムに関し、より詳細には、アイウェア表示装置を用いる配筋検査結果表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋工事における配筋検査では、鉄筋の種類、本数、位置、間隔、継手方法などが設計どおりに正しく配置されているか否かを検査する。従来は、検査員が配筋図面と現場の配筋状態を照らし合わせて誤りがないかを点検し、デジタルカメラなどで撮影して記録する。
【0003】
近年では、撮影画像を用いて、鉄筋の本数、直径およびピッチ等の配筋情報を取得する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-27058号公報
【特許文献2】特開2021-21622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、特許文献2の配筋検査システムでの出力は、検査報告用の帳票を作成するためのデータの表示や、検査員が検査結果を確認するためにタブレット等への表示に係るものであった。配筋誤りを修正するための作業には、この帳票やタブレットの表示を確認しなければならず、作業員にとっては使い勝手の悪いものであった。このため、配筋検査結果を、配筋誤りを修正する現場の作業員が利用するために表示をすることができる技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、現場の作業員の配筋誤りを修正する作業を容易にするような配筋検査結果の表示を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る配筋検査結果表示システムは、以下の構成を有する。
1.通信部と、3次元座標計測部とを備える測定器、ディスプレイと、自位置を検出する相対位置センサと、自方向を検出する相対方向センサとを備えるアイウェア表示装置、および、前記アイウェア表示装置の位置及び方向に関する情報の座標空間と、前記測定器の座標空間とを、共通の基準点を原点とする空間で管理するシステム制御部;を備え、前記システム制御部で作成される画像を前記ディスプレイに表示することにより、前記アイウェア表示装置を装着して観察される現物に重ねて表示する配筋検査結果表示システムあって、前記システム制御部は、位置および方向が既知の状態で取得された配筋検査範囲の3次元点群データに基づいて配筋検査範囲の現状の3次元モデルを生成し、配筋検査範囲についての配筋検査結果を、前記3次元モデルに関連付けて3次元検査結果表示データを生成して、前記ディスプレイに表示し、前記検査範囲における配筋誤りを認識可能に表示することを特徴とする。
【0008】
2.上記1の構成において、前記システム制御部は、前記検査範囲における、3次元配筋設計データに基づいて、前記配筋誤りを修正するための修正支援データを生成し、前記修正支援データに基づいて、前記配筋誤りを修正する作業を支援する修正支援画像を、前記ディスプレイに表示することも好ましい。
【0009】
3.上記1または2の構成において、前記システム制御部は、前記アイウェア表示装置の視野内の作業者の手を認識可能であり、前記ディスプレイ内で、前記作業者が触れた鉄筋を認識可能に表示することも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、現場の作業員の配筋誤りを修正する作業を容易にするような配筋検査結果の表示が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る配筋検査結果表示システムを包含する配筋検査システムの外観概略図である。
【
図3】同システムを構成するスキャナのブロック図である。
【
図4A】同システムを構成するアイウェア表示装置の外観斜視図である。
【
図4B】同アイウェア表示装置のブロック図である。
【
図5】上記システムを構成するデータ処理装置のブロック図である。
【
図6】(A)~(C)は、画像データ、点群データおよび点群合成画像の違いを説明する図である。
【
図7】同データ処理装置の配筋状態検査部を説明する図である。
【
図8】同データ処理装置の配筋状態識別モデルの生成方法を説明する図である。
【
図9】上記システムを用いた配筋検査方法の概略のフロー図である。
【
図10】同方法におけるデータ処理装置の処理のフロー図である。
【
図11】同方法における配筋状態検査の処理の詳細のフロー図である。
【
図12】同システムを用いた配筋検査結果表示データの生成の処理のフロー図である。
【
図13】同システムによる配筋検査結果表示の例を示す図である。
【
図14】同システムによる配筋検査結果表示の例を示す図である。
【
図15】本実施の形態に係る配筋検査結果表示システムのブロック図である。
【
図16】システムの変形例に係る配筋検査結果表示システムのブロック図である。
【
図17】同システムに係るモーションキャプチャ装置を説明する図である。
【
図18】同システムによる配筋検査結果表示の例を示す図である。
【
図19】3次元点群データおよび、3次元配筋検査結果データを取得するための検査システムの別の例の外観概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態および変形例に共通する同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
I 実施の形態
1 配筋検査システム100(配筋検査結果表示システムS)の構成
図1は、本発明の実施の形態に係る配筋検査結果表示システム(以下、単に表示システムという。)Sが組み込まれた配筋検査システム(以下、単に検査システムという。)100の使用状態の概要を示すブロック図である。検査システム100は、少なくとも1つのスキャナ2と、カメラ50を備えるアイウェア表示装置(以下、アイウェア装置という。)4と、データ処理装置6とを備える。スキャナ2、アイウェア装置4、およびデータ処理装置6は、無線で接続され、互いに情報の送受信が可能である。
【0014】
スキャナ2は、地上設置型の3次元レーザスキャナである。スキャナ2は、検査範囲である基礎工事の現場内の任意の点に設置される。器械設置点は、後方交会法等により既知とされる。スキャナ2は、三脚上に取り付けられた整準台を介して設置され、整準台の上に設けられた基盤部2αと、基盤部2α上を軸H周りに水平回転する托架部2βと、托架部2βの中央で鉛直回転する投光部2γとを有する。
【0015】
アイウェア装置4は、作業者の頭部に装着されるいわゆるヘッドマウンドディスプレイである。カメラ50を用いて、検査範囲の配筋状態の画像を取得する。カメラ50は1度の撮影で、カメラ50の視野の範囲内の範囲(検査対象範囲という)の画像を取得する。また、ディスプレイ41は、検査結果を、鉄筋の現物に重ねて表示することができる。
【0016】
データ処理装置6は、図示の例において、ラップトップコンピュータである。データ処理装置は、スキャナ2で取得した3次元点群データ(以下、単に点群データという。)、およびカメラ50で取得した画像を用いて、配筋検査を実行する。以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0017】
2.スキャナ
図3は、スキャナ2の構成ブロック図である。スキャナ2は、測距部21、鉛直回転駆動部22、鉛直角検出器23、水平回転駆動部24、水平角検出器25、スキャナ制御部26、表示部27、操作部28、記憶部29、外部記憶装置30、および通信部31を備える。
【0018】
測距部21は、送光部、受光部、送光光学系、送光光学系と光学素子を共有する受光光学系および回動ミラー21αを備える。送光部は、半導体レーザ等の発光素子を備え、スキャン光として測距光であるパルス光を出射する。出射された測距光は、送光光学系を介して回動ミラー21αに入射し、回動ミラー21αによって偏向されて測定対象物に照射される。回動ミラー21αは、鉛直回転駆動部22により駆動されて軸V周りに回転する。
【0019】
測定対象物により再帰反射された反射光は、回動ミラー21αおよび受光光学系を経て、受光部に入射する。受光部は、フォトダイオードなどの受光素子を備える。また、受光部には、測距光の一部が内部参照光として入射するようになっており、反射光および内部参照光に基づいて、スキャナ制御部により、照射点までの距離を求めるようになっている。
【0020】
鉛直回転駆動部22と水平回転駆動部24は、モータであり、スキャナ制御部に制御される。鉛直回転駆動部22は回動ミラー21αを鉛直方向に軸V周りに回転させる。水平回転駆動部24は、托架部2βを水平方向に軸H周りに回転させる。
【0021】
鉛直角検出器23と水平角検出器25は、ロータリエンコーダである。鉛直角検出器23は、回動ミラー21αの鉛直方向の回転角を測定する。水平角検出器25は、托架部2βの水平方向の回転角を測定する。これにより、測距光軸の鉛直角および水平角が検出される。
【0022】
スキャナ制御部26は、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)である。メモリは、例えば、SRAM(Static Random Access Memory),DRAM(Dynamic Random Access Memory)等である。プロセッサは、記憶部29等に記憶されるデータおよびプログラムをメモリに読み出して、スキャナ2の機能を実現するための処理を実行する。
【0023】
本明細書において、プロセッサは、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC((Application Specific Integrated Circuit))を備えてもよい。すなわち、プロセッサは、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する少なくとも1つのプロセッサ、と各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路の組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成されていてもよい。
【0024】
スキャナ制御部26は、送光部の発光タイミングと、受光部の受光タイミングの時間差(パルス光の往復時間)に基づき、測距光の1パルス光ごとに照射点までの距離を算出する。また、その時の測距光の照射角度を算出して、照射点の角度を算出する。
【0025】
また、スキャナ制御部26は、機能部として、点群データ取得部261と3次元座標計測部262を備える。点群データ取得部261は、測距部21、回動ミラー21α、鉛直回転駆動部22、および水平回転駆動部24を制御して測距光を全周(360°)に走査(フルドームスキャン)して、各照射点の座標を取得して、全周の点群データを取得する。点群データ取得部261は、検査範囲の3次元点群データ(以下、3D点群データという。)71を取得して、データ処理装置6に送る。3次元座標計測部262は、ターゲットの周辺を高密度に走査して、ターゲットを測距測角し、ターゲットの3次元座標を取得するターゲットスキャン機能を実現する。
【0026】
表示部27は、例えば、液晶ディスプレイである。操作部28は、電源キー、数字キー、小数点キー、+/-キー、実行キー、カーソル移動キー等を有する。作業者は、操作部28から、スキャナ2に対する操作指示や情報を入力できる。
【0027】
記憶部29は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。記憶部29は、スキャナ制御部26の機能を実行するためのプログラムを格納する。外部記憶装置30は、例えばメモリカード等であり、スキャナ2が取得する種々のデータを記憶する。
【0028】
通信部31は、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェースカード、LANカード,Bluetooth(登録商標)アダプタ等の通信制御装置であり、スキャナ2を、アイウェア装置4およびデータ処理装置6と有線または無線で接続する。スキャナ制御部26は、通信部31を介して、アイウェア装置4およびデータ処理装置6との間で情報を送受信することができる。
【0029】
3. アイウェア装置4
図4Aは、アイウェア装置4の外観斜視図であり、
図4Bは、アイウェア装置4の構成ブロック図である。アイウェア装置4は、ディスプレイ41、カメラ50および制御部42を備える。制御部42は、アイウェア制御部43、アイウェア通信部44、相対位置検出センサ45、相対方向検出センサ46、アイウェア記憶部47、および操作スイッチ48を備える。
【0030】
ディスプレイ41は、作業者が装着した時に、作業者の両目を覆うゴーグルレンズ型の透過型ディスプレイである。一例として、ディスプレイ41は、ハーフミラーによる光学シースルーのディスプレイであり、現場風景に、アイウェア制御部43の受信した画像を重畳して表示するようになっている。
【0031】
あるいは、ディスプレイ41は、ビデオシースルーのディスプレイであり、カメラ50でリアルタイムに取得した正面風景画像にアイウェア制御部43の受信した画像を重畳した画像を表示してもよい。また、投影方式としては、虚像投影方式でもよく、網膜投影方式であってもよい。
【0032】
カメラ50は、レンズ、およびCCD(Charge-Coupled Device),CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを備えるデジタルカメラである。カメラ50は、アイウェア装置4の前面中央に設けられ、アイウェア装置4の正面の画像をリアルタイムで撮影する。カメラ50は、アイウェア装置4の視野の範囲を検査対象範囲として、検査対象範囲の画像データ72を取得する。取得した画像データ72はデータ処理装置6へ送られる。イメージセンサは、カメラ50の撮像中心を原点とした直交座標系を有し、各画素のローカル座標は特定される。カメラ50の撮像中心が、アイウェア装置4の中心であり、撮像光軸がアイウェア装置4の視線方向である。
【0033】
アイウェア通信部44は、通信部31と同じ通信制御装置である。アイウェア通信部44は、は、アイウェア装置4を、有線または無線、好ましくは無線で接続する。アイウェア制御部43は、アイウェア通信部44を介して、スキャナ2およびデータ処理装置6と情報を送受信することができる。
【0034】
相対位置センサ45は、観測現場に設置されたGNSS(Global・Navigation・Satellite・System)用アンテナ、Wi-Fi(登録商標)アクセスポイント、超音波発振器などから無線測位を行い、観測現場内でのアイウェア装置4の位置(自位置)を検出する。
【0035】
相対方向センサ46は、三軸加速度センサまたはジャイロセンサと、傾斜センサとの組み合わせからなる。相対方向センサ46は、上下方向をZ軸方向、左右方向をY軸方向、前後方向をX軸方向として、アイウェア装置4の姿勢(自方向)を検出する。この結果、カメラ50は位置および方向が既知の状態で、画像を取得可能となっている。
【0036】
アイウェア記憶部47は、例えばメモリカード等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。アイウェア記憶部47は、アイウェア制御部43が機能を実行するためのプログラムを格納している。
【0037】
操作スイッチ48は、例えば、テンプル部分に設けられた押しボタンである。操作スイッチ48は、例えば、アイウェア装置4の電源をON/OFFするための電源ボタン48αと、カメラ50で静止画像を撮影するための撮影ボタン48β,画像を切り替えるための画像切替ボタン48γを備える。
【0038】
アイウェア制御部43は、スキャナ2のスキャナ制御部26と同様に、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、CPU)と少なくとも1つのメモリ(例えば、SRAM,DRAM等)を備える。プロセッサがアイウェア記憶部47に記憶されたプログラムを読み出してメモリに展開することにより、アイウェア装置4の各種機能を実現する。
【0039】
アイウェア制御部43は、相対位置センサ45および相対方向センサ46の検出したアイウェア装置4の位置および方向の情報をデータ処理装置6に出力する。また、データ処理装置6から受信したデータを、検査現場の風景に重ねてアイウェア装置4のディスプレイ41に表示する。
【0040】
4. データ処理装置6
図5は、データ処理装置6の構成ブロック図である。データ処理装置6は、いわゆるコンピュータであり、典型的にはパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等であるが、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。データ処理装置6の演算処理部60が、特許請求の範囲におけるシステム制御部に対応する。システム制御部は、データ処理装置6の様に、1台のコンピュータであってもよいが、複数台のコンピュータが分散的に処理を行うコンピュータシステムであってもよい。この場合、1以上のコンピュータの処理資源の一部を論理的に利用するものであってもよい。システム制御部は、アイウェア装置4の一部として構成してもよく、スキャナ2の一部として構成してもよい。データ処理装置6の一部の処理をアイウェア装置4で行うように構成してもよく、一部の処理をスキャナ2で行うように構成してもよい。
【0041】
データ処理装置6は、少なくとも演算処理部60、通信部63,表示部64,入力部65、および記憶部66を備える。
【0042】
通信部63は、スキャナ2の通信部31と同等の通信制御装置であり、データ処理装置6を、スキャナ2およびアイウェア装置4と無線で通信可能とする。演算処理部60は、通信部63を介して、スキャナ2およびアイウェア装置4と情報を送受信することができる。
【0043】
表示部64は、例えば液晶ディスプレイである。入力部65は、例えば、キーボード、マウス等であり、作業者からの種々の指令・選択・決定等を入力可能とする。
【0044】
演算処理部60は、スキャナ2のスキャナ制御部26と同様に、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、CPU,GPU)、および少なくとも1つのメモリ(例えば、SRAM,DRAM等)を備える制御演算ユニットである。プロセッサが記憶部66に記憶されたプログラムを読み出してメモリに展開することにより、データ処理装置6の各種機能、特に、下記の機能部の機能を実現する。
【0045】
演算処理部60は、機能部として、同期計測部601,点群データ受付部602,配筋設計データ読出部603,画像データ受付部604,点群合成画像生成部605,配筋状態検査部606、および表示データ生成・出力部607を備える。
【0046】
同期計測部601は、スキャナ2、アイウェア装置4(カメラ50)、データ処理装置6を同期する。同期とは、スキャナ2、アイウェア装置4(カメラ50)の位置及び姿勢、およびデータ処理装置6で扱う設計データ等、位置座標を含む情報を共通の基準点を原点とする共通の座標空間で管理できるようにする作業である。以下に好適と考えられる一例を示すが、当業者の知識に基づいて適宜の手法で同期がとられればよい。
【0047】
まず、検査システム100に対して、検査現場に、基準点と基準方向を設定し、スキャナ2とデータ処理装置6を同期する。基準点は、既知点(座標が既知の点)または現場の任意の点を選択する。基準点とは別の特徴点を選択し、基準点から該特徴点に向かう方向を基準方向とする。スキャナ2のターゲットスキャン機能を用いて、基準点および特徴点を含む後方交会法の観測により、スキャナ2の絶対座標を把握し、データ処理装置6に送信する。同期計測部601は、基準点の絶対座標を(x,y,z)=(0,0,0)と認識し、基準方向を水平角0°と認識する。これにより、データ処理装置6は、スキャナ2からの情報に関して、基準点を原点とする空間で、スキャナ2の相対位置および相対方向を管理可能となる。
【0048】
次に、アイウェア装置4とデータ処理装置6を同期する。アイウェア装置4を基準点に設置し、アイウェア装置4を水平にした状態で、アイウェア装置4の視線方向を基準方向に一致させ、相対位置センサ45の(x,y,z)を(0,0,0)、かつ、相対方向センサの(roll,pitch,yaw)を(0,0,0)とする。これにより、データ処理装置6は、以後、アイウェア装置4(カメラ50)からの情報について、基準点を原点とする空間で、アイウェア装置4(カメラ50)の相対位置・相対方向を管理可能となる。
【0049】
点群データ受付部602は、スキャナ2でフルドームスキャンして取得される検査範囲全体の3次元点群データを通信部63を介して受け付ける。
【0050】
配筋設計データ読出部603は、記憶部66に格納された、後述する3D(3次元)配筋設計データ(以下配筋設計データ)73を読み出す。
【0051】
画像データ受付部604は、カメラ50で取得される画像データ72を、通信部63を介して受け付ける。
【0052】
点群合成画像生成部605は、3D点群データ71に、画像データ72を合成して、点群合成画像を生成する。
図6は、画像データ(A),点群データ(B),点群合成画像(C)のイメージを示す。画像データ72は、色情報を含むデータであるが、影等が映りこむ場合もある。一方点群データは、影の影響は受けないが、色情報を含まない。点群データの各点は座標が特定されており、実寸がわかる。点群合成画像は、画像データの有する色情報と、点群データから把握される実寸の情報を含む。つまり、配筋状態を識別するために点群合成画像を用いることで、定規等の基準マーカを設置しなくても、寸法を特定することができる。
【0053】
配筋状態検査部606は、点群合成画像から配筋状態を検査し、3次元配筋検査結果データ(以下、3D配筋検査結果データまたは配筋検査結果データという。)75を出力する。配筋状態検査部606の詳細については後述する。
【0054】
表示データ生成・出力部607は、配筋検査結果データに基づいて、アイウェア装置4のディスプレイ41に表示する表示データを生成する。
【0055】
記憶部66は、例えば、HDD,SSD(Solid State Drive)等である。記憶部66には、上述した3D配筋設計データ(以下、配筋設計データともいう。)73が記憶されている。また、記憶部66には、演算処理部60の各機能部がソフトウェアとして実現されている場合に、各機能を実行するためのプログラムを記憶されている。
【0056】
なお、配筋設計データ73は、3DCADデータを用いて作成した、配筋詳細図である。配筋詳細図は、鉄筋コンクリ―ト部材の詳細な配筋状態を示す図である。配筋状態は、例えば、鉄筋の種類(材質および太さ)、鉄筋の間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類、結束箇所の位置等を含む。配筋設計データ73は、これらのうち少なくとも1つの情報を含む。
【0057】
配筋設計データ73は、予め3D配筋設計データ生成装置70で生成され、記憶部66に格納されている。3D配筋設計データ生成装置70は、データ処理装置6と同等の少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを含むコンピュータである。
【0058】
次に、配筋状態検査部606の詳細を、
図7,8を参照して説明する、
図7に示すように、配筋状態検査部606は、前処理部611と、配筋状態識別モデル612と、設計データ比較部613とを備える。
【0059】
前処理部611は、検査対象として入力された点群合成画像に対して、鉄筋の認識を容易にするための画像処理を行う。例えば、グレースケール変換、エッジや線分の抽出、輝度値の平均化等の処理等公知の画像処理を行う。また、これに加えて、点群合成画像を、所定の縮尺となるように画像を拡大または縮小してもよい。合成画像データは位置座標、すなわち実寸情報を含むデータであるため、定規などの基準マーカを同時に撮影しなくとも、所定の縮尺への拡大/縮小が可能である。
【0060】
配筋状態識別モデル612は、
図8に示すように、例えば、多数の配筋状態を撮像、点群データ取得して作成した多数の学習用点群合成画像を学習して得られる学習済みモデルである。学習用点群合成画像は、それぞれの鉄筋の種類(材料、形状および太さ(径の寸法))、配筋間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類、結束箇所の位置等についてラベルしたもの用いる。学習用データとしては、一般的な配筋方法における様々な配筋状態を撮像して、点群合成画像と同様に生成した多数の点群合成画像が用いられる。あわせて、画像データを用いてもよい。
【0061】
配筋状態識別モデル612は、検査範囲の点群合成画像を入力すると、検査範囲における、鉄筋の種類(材質および太さ)、配筋間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類を識別し、これらの事象を位置と関連付けて出力する。学習は、データ処理装置6と同様に少なくとも1つのプロセッサおよびメモリを備えるコンピュータにより行われる。学習方法としては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Networks: CNN),回帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network: RNN),ボルツマンマシン等を用いたディープラーニングが利用される。
【0062】
なお、鉄筋の種類は、材料、形状および径の寸法によりJIS規格に従って、D3,D13,D38,SR295…等の様に呼称が定められている。鉄筋の種類のラベルにはこれらの呼称が用いられていてもよい。
【0063】
また、前処理において、点群合成画像の縮尺となるように拡大/縮小する場合には、学習に供する学習用データに、同じ所定の縮尺の画像データを用いれば、配筋状態識別の精度が高くなる。
【0064】
配筋状態識別モデル612に、検査範囲の点群合成画像を入力すると、例えば、
図8の右下部に一例を示すように、検出された配筋状態情報、すなわち鉄筋の種類(材料、形状および太さ(径の寸法))、配筋間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類、結束箇所の位置等の情報とその位置情報を含む配筋状態識別データ74が出力される。
【0065】
設計データ比較部613は、点群合成画像を、配筋設計データ661と比較して、その差異(配筋誤り)とその位置を配筋検査結果データ75として出力する。具体的には、鉄筋の種類、配筋間隔および本数、鉄筋被り量の不足を防止するためのスペーサの配置、主筋方向、鉄筋継手の種類、結束箇所の相違等を、検査範囲における位置情報と関連付けて出力する。
【0066】
5.配筋検査方法(配筋検査システム100の処理)
次に、配筋検査方法について説明する。
図9は、本形態に係る検査システム100を用いた配筋検査方法の概略のフロー図である。
【0067】
ステップS01では、スキャナ2を、既知点に設置して、フルドームスキャンを実行して、検査範囲(好ましくは全体)の点群データ71を取得する。この検査範囲全体は、厳密に検査範囲全体を意味するのではなく、検査範囲の中で作業者が必要とする範囲でよい。取得した点群データ71はデータ処理装置6に送られる。なお、可能であれば一度のフルドームスキャンで現場全体の点群データ71を用いて取得してもよい。複数台のスキャナ2を用いて点群データ71を取得してもよい。あるいは、設置点を変えて複数回のフルドームスキャンを行って点群データ71を取得してもよい。
【0068】
次に、ステップS02では、作業者が、カメラ50により、検査範囲に設定された一部の範囲の画像(検査対象範囲)を撮影する。検査範囲に設定された一部の範囲とは、具体的には、カメラ50の画角の範囲であり、作業者が検査のために撮影しようとする範囲である。取得された画像データ72は、データ処理装置6に送られる。
【0069】
次に、ステップS03で、データ処理装置6が、受け付けた3D点群データ71および画像データ72を、合成し、点群合成画像を生成する。
【0070】
次に、ステップS04で、データ処理装置6が、点群合成画像を用いて配筋状態の検査を実行し、配筋検査結果データ75を出力する。
【0071】
次に、ステップS05で、データ処理装置6が、配筋検査結果データ75に基づいて表示データを生成して、出力する。検査結果の出力は、アイウェア装置4のディスプレイ41への表示でも、データ処理装置6の表示部64への表示でも、あるいはデータ処理装置6からプリンタ等外部機器へ帳票として出力してもよい。
【0072】
6. 配筋検査方法(データ処理装置6の処理)
図10は、上記配筋検査方法でのデータ処理装置6の処理のフロー図である。
図11はステップS15の詳細なフロー図である。
【0073】
処理が開始すると、まず、ステップS11で点群データ受付部602が、スキャナ2でから全周の点群データ71を受け付けて、記憶部66に記憶する。
【0074】
次に、ステップS12で、配筋設計データ読出部603が、記憶部66から配筋設計データ73を読み出す。ステップS11,S12の順序はこれに限らず、配筋状態検査部606が検査を実施する際に読み出してもよい。
【0075】
次に、ステップS13で、画像データ受付部604が、カメラ50から、検査対象範囲の画像データ72を受け付ける。
【0076】
次に、ステップS14で、点群合成画像生成部605が、検査対象範囲の画像データ72と、検査対象範囲に対応する点群データ71とを合成し、点群合成画像を生成する。
【0077】
次に、ステップS15で、配筋状態検査部606が、検査対象範囲の点群合成画像と対応する3D配筋設計データ73とを比較して、検査対象範囲の配筋状態を検査する。
【0078】
具体的には、ステップS21で、前処理部611が、検査対象として入力された点群合成画像に対して、鉄筋の認識を容易にするための画像処理を行う。
【0079】
次に、ステップS22で、配筋状態識別モデル612に検査対象範囲の点群合成画像を入力し、検査対象範囲の配筋状態を識別して、配筋状態識別データ74として出力する。
【0080】
次に、ステップS23で、ステップS12で読み出した3D配筋設計データ73と、ステップS22で出力した配筋状態識別データ74を比較して、差異(配筋誤り)のある部分を特定し、その部分の位置と関連付けて、配筋検査結果データ75として記憶部66に記憶して、ステップS15を終了する。この結果得られる配筋検査結果は、検査対象範囲毎に蓄積して、検査対象範囲を移動しながら検査現場全体を検査することで、検査現場全体についての3次元の配筋検査結果データ75を取得することが可能である。
【0081】
次に、ステップS16で、表示データ生成・出力部607がアイウェア装置4のディスプレイに表示する表示データを生成する。詳細は後述する。
【0082】
7. 表示データ生成の詳細
図12は、表示データ生成・出力部607による詳細な処理のフロー図である。
【0083】
ステップS21では、表示データ生成・出力部607は、スキャナ2から取得し、記憶部66に記憶された現状の3D点群データ71に基づいて、現状の3次元モデルを生成して、3D現状データとする。
【0084】
次に、ステップS22で、表示データ生成・出力部607は、配筋状態検査部606で出力され、記憶部66に記憶された配筋検査結果データ75を、上記現状の3次元モデルと関連づけて、3D検査結果表示データを生成する。
【0085】
次に、ステップS23で、表示データ生成・出力部607は、予め記憶部に記憶された3D配筋設計データ73に基づいて、3D修正支援データを生成する。
【0086】
そして、ステップS24で、表示データ生成・出力部607は、3D現状データ、3D検査結果表示データ、3D修正支援データを用いて、ディスプレイ41の視野に対応する、表示画像を生成し、現物の上に重ねて、ディスプレイ41に表示する。
【0087】
図13,
図14は、このようにして生成される表示画像のイメージを表す図である。図中、破線は、ディスプレイ41の視野内に見える、現物(鉄筋)を示し、実線は、表示データ生成・出力部607が生成した表示画像である。なお、実際には、表示画像は、現物に重ねて表示されるが、説明の都合上、若干ずらして描画している。
【0088】
図13は、アイウェア装置4を装着する作業者が、壁面に対応する鉄筋に正対して、配筋状態を観察した場合の画像を示す。
図13(A)は、現状の様子を表示する。3D現状データに基づいて生成された現状画像41aしたもので、現物に重なって表示されている。3D現状データは、必須ではないが、配筋状態識別モデル612による配筋状態の識別結果を含んでいてもよい。
図13(A)ではそのような例として、鉄筋の種類(D13,D38),鉄筋の間隔が表示されている。
【0089】
図13(B)は、3D検査結果表示データに基づいて作成される検査結果画像41bを表示したものである。検査結果として、右端の鉄筋は、配筋誤りであり、3D現状データに加えて、
図13(B)では、右端の縦の鉄筋がD13であることは誤りであることが分かるように、強調表示されている。具体的には、適正な配筋状態である鉄筋は、緑色等で配置され、誤りのある鉄筋は、赤色や黄色等の目立つ配色で表示されたり、点滅するようになっていてもよい。
【0090】
図13(C)は、3D修正支援データに基づいて作成される修正支援画像41cを表示したものである。修正支援画像41cは、配筋誤りを修正する作業を支援するために、設計配筋データに基づく、適正な配筋状態を示す。
図13(C)では、右端の鉄筋は正しくはD38であることを示し、その鉄筋を目立つように強調表示している。
【0091】
アイウェア装置4では、演算処理部60またはアイウェア制御部43の制御により、現状画像41a、検査結果画像41b、修正支援画像41cが切替可能となっていてもよい。この場合、例えば、作業者が画像切替ボタン48γを押すことにより切り替えられるようになっていてもよい。
【0092】
図14は、アイウェア装置4を装着する作業者が、床面に配置された鉄筋の配筋状態を斜め上から観察した場合の表示画像を示す。
図14(A)は、現状の様子を表示する、3D現状データに基づいて生成された現状画像41aを表示したもので、現物に重なって表示されている。
【0093】
図14(B)は、3D検査結果表示データに基づいて作成される検査結果画像41baを表示したものである。検査結果画像41bは、検査結果として、中央の鉄筋の交差部分が垂れ下がり、被り不足となっていることを示すように、被り不足となっている部分を色を変えることなどにより、強調表示する。この時、必須ではないが、
図14(B)に示すように、配筋誤りの内容、すなわち「被り不足」であることがわかるように表示されるようになっていてもよい。
【0094】
図14(C)は、3D修正支援データに基づいて作成される修正支援画像を表示したものである。
図14(C)では、修正支援画像41cは、配筋誤りを修正する作業を支援するために、被り量が適正となるように、当該箇所にスペーサを設置することで、誤りが解消することを示している。
【0095】
このほか、検査結果画像41bおよび修正支援画像41cは、配筋間隔および本数の間違い、主筋方向の間違い、鉄筋継手の種類の間違い、結束箇所の位置の間違いおよびこれらの訂正方法および訂正後の配筋状態に関するものでよい。これらを全て表示するのではなく、一部を表示するようになっていてもよい。或いは、これらの配筋誤りの種類毎に、表示を切り替えられるようになっていてもよい。
【0096】
ここで、改めて、実施の形態に係る表示システムSのブロック図を
図15に示す。表示システムSは、スキャナ(測定器)2と、アイウェア装置4と、データ処理装置6を備える。スキャナ2は、アイウェア装置4とデータ処理装置6が取り扱う絶対座標系のデータを同期するための測定器として機能する。この観点から、配筋検査結果表示システムSに係る測定器としてのスキャナ2は、スキャナ制御部26に、3次元座標計測部262を備えていればよい。また、データ処理装置6は、アイウェア装置4およびスキャナ2と同期させるための同期計測部601と、表示データ生成・出力部607を備える。また、データ処理装置6は、検査範囲についての取得された3D点群データ、3D配筋設計データ73と、配筋検査結果データ75を備えていればよい。
【0097】
なお、測定器は、スキャナ2に限らず、測定対象物の3次元位置座標を取得可能な3次元座標計測部を備える測量機器であればよい。例えば、測距測角機能を有するトータルステーションでもよい。また、特開2021-77127号公報に例示されるような、2つのカメラを備え、写真測量により測定対象物の3次元位置座標を取得可能なカメラであってもよい。
【0098】
また、3D点群データ71、3D配筋設計データ73と、3D配筋検査結果データ75は、本実施の形態の様に、必ずしも表示システムSを包含する検査システム100により取得される様になっている必要はなく、別途取得されて予め記憶部に記憶されていてもよい。しかし、表示システムSを包含する検査システム100により取得されるようになっていれば、リアルタイムで検査結果を表示することができるので有利である。
【0099】
8.効果
このように、本実施の形態に係る表示システムSによれば、作業者が頭部に装着するアイウェア表示装置4のディスプレイ41上で、現物に重ねて配筋誤りの内容および位置を識別可能に表示する。この結果、作業者は、帳票やタブレットの表示と照らし合わせなくても、確認したい部分を見るだけで配筋誤り部分が確認できるため作業者の負担が低減する。
【0100】
また、配筋誤りの内容を把握できるように表示するため、修正のために必要な作業が容易に把握できる。
【0101】
特に、表示システムSは、さらに、配筋誤りの修正のための支援として、正しい配筋状態を表示するため、作業者は、困難なく、正しい配筋状態となるように修正作業を行うことが可能である。
【0102】
また、本実施の形態に係る表示システムSによれば、表示システムSを検査システム100に包含させ、配筋結果を表示するためのアイウェア表示装置4に、検査範囲の画像を取得するためのカメラ50を設けたので、作業者はカメラ50で確認したい検査範囲を撮像すれば、一連の処理で、ディスプレイ41上で、現物に重ねて配筋誤りを確認できるので、便利である。
【0103】
9.変形例
図16は、変形例に係る、表示システムSAのブロック図である。
【0104】
表示システムSAは、表示システムSの構成に加えて、モーションキャプチャ装置5を備える。また、データ処理装置6Aは、同期計測部601に代えて、同期計測部601Aを備える。
【0105】
モーションキャプチャ装置5は、いわゆる磁気式のモーションキャプチャ装置である。モーションキャプチャ装置5は、データ処理装置6Aとの通信を可能とする通信部51と、作業者の手指に装着されるデバイスである複数の磁気式3次元位置姿勢センサ52と、3次元位置姿勢センサ52で検出された信号を作業者の動作情報として、時系列でデータ処理装置に出力する信号処理部53とを備える。3次元位置姿勢センサ52としては、例えば、特開2007-236602号公報に開示された磁気式位置姿勢センサが好適である。
【0106】
モーションキャプチャ装置5は、複数の3次元位置姿勢センサ52を柔軟性のあるグローブに配置したものであり、手指の繊細な動きを検出することが出来るようになっている。
【0107】
モーションキャプチャ装置5は、
図17(A)に示すように、例えば人差し指の先端に位置するセンサ52aの中心を原点と仮定して、信号処理部53の固定基準点から見たそれらの位置座標(x,y,z)およびX軸、Y軸、Z軸周りの回転角から求められる姿勢を示すオイラー角の情報が得る。なお、Z軸は、
図17(A)における、XY平面の原点を通り、XY平面に直交する軸である。
【0108】
また、同期計測部601Aは、同期計測部601の機能に加えて、モーションキャプチャ装置Aから受信する位置・方向に関する情報を同期させたスキャナ2およびアイウェア装置4の座標空間と一致するように変換して管理する。モーションキャプチャ装置5の同期は、基準点にモーションキャプチャ装置5を装着した作業者の人差し指の先端を配置し、人差し指の先端をスキャナ2の基準方向に一致するように向けて、位置座標およびオイラー角を0とする。
【0109】
このようにすることで、モーションキャプチャ装置5を装着した作業者が手で触れた位置を、アイウェア装置4が、把握できるようになる。
【0110】
図18は、表示システムSAによる、ディスプレイ41への表示の例である。
図18(A)~(D)は、
図18(A)は、現状画像41aを示す。
図18(B)は、現状画像41aにおいて、モーションキャプチャ装置5を装着した手で右端の鉄筋をつかんだ状態の現状画像41aを示す。また、モーションキャプチャ装置5で触った鉄筋が強調表示されるようになっている。また、モーションキャプチャ装置5で触った鉄筋の配筋状態(図においては鉄筋の種類と間隔)が表示されるようになっている。
【0111】
図18(C),(D)は、修正支援画像41cを示す。
図18(C),(D)モーションキャプチャ装置5で触った鉄筋に対して、配筋誤りを修正する作業が表示されるようになっている。
【0112】
このようにすると、画像に表示される多数の鉄筋の中から、作業者が触った鉄筋を容易に認識し、また、その鉄筋についての配筋誤りの修正作業を容易に把握することができる。
【0113】
なお、本変形例では、手の認識にモーションキャプチャ装置を用いたが、これに限らず、画像処理により、肌色と形状から手を認識して、手で触った鉄筋を特定できるようにしてもよい。
【0114】
10.検査システムの別の例
本実施の形態に係る表示システムに用いる3D点群データ71、配筋検査結果データ75は、必ずしも上記形態の検査システム100により取得されたものでなくてもよい。3次元点群データは、検査範囲に位置および方向が既知の状態でレーザスキャナで取得されたものであればよく、配筋検査結果データ75は、配筋検査結果が、3次元データとして得られたものが入手できればそれを用いることができる。例えば、検査システムとして下記の検査システム200を用いて取得したものでよい。
【0115】
図19は、第2の実施の形態に係る配筋検査システム200の使用状態を示す外観図であり、
図20は、ブロック図である。
【0116】
システム200は、スキャナ2、データ処理装置206,カメラ250を備える飛行装置8および測量機9を備える。スキャナ2、データ処理装置206、プリズムを備える飛行装置8および測量機9は、無線で接続され、互いに情報の送受信が可能である。スキャナ2は、実施の形態1に係るスキャナ2と同じものである。
【0117】
飛行装置8は、自律飛行可能なUAV(Unmanned Air Vehicle)である。飛行装置8は、本体8aから放射状に延出する複数のプロペラ8bと、ターゲットとしてのプリズム8cと検査対象の画像データを撮影するカメラ250を備える。飛行装置8は、予め定められた飛行経路を飛行したり、遠隔操作により自由に飛行したりすることが可能である。飛行装置8は本体8a内に図示しないIMU装置とタイマを備える。IMU(Inertial Measuring Unit)とカメラ250の位置関係は既知となっており、カメラ250の方向と姿勢がわかるようになっている。
【0118】
測量機9は、自動追尾機能を備えるモータドライブトータルステーションである。飛行装置8を検査範囲で飛行させつつ、カメラ250の撮影タイミングと、測量機の撮影タイミングを合わせて検査範囲の画像データを取得できるようになっている。
【0119】
データ処理装置206は、データ処理装置6と同等の構成を備え、スキャナ2で取得した3D点群データ71と、カメラ250で取得した画像データを用いて、検査システム100と同等の配筋検査結果データ75を取得可能である、
【0120】
検査範囲全体の3次元点群データおよび画像データは、それぞれ、位置および方向が既知とされたスキャナおよび位置および方向が既知とされたカメラで取得されればよく、上記の例に限定されない。例えば、カメラは位置および方向(姿勢が)既知となるように設置された全方位カメラに代えてもよい。また、スキャナを地上設置型スキャナではなく、飛行装置に取り付けたものでもよい。
【0121】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
4 :アイウェア表示装置
31 :通信部
41 :ディスプレイ
41a :現状画像
41b :検査結果画像
41c :修正支援画像
44 :通信部
45 :相対位置センサ
46 :相対方向センサ
51 :通信部
52a :センサ
60 :制御演算部
63 :通信部
70 :3次元配筋設計データ生成装置
71 :3次元点群データ
73 :配筋設計データ
200 :システム
262 :3次元座標計測部
S :配筋検査結果表示システム