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特開2024-52438デジタル資産の移動処理システム、及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052438
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】デジタル資産の移動処理システム、及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20240404BHJP
【FI】
G06Q40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159152
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】313004816
【氏名又は名称】西本 一也
(71)【出願人】
【識別番号】500566567
【氏名又は名称】株式会社インタートレード
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB53
5L055BB53
(57)【要約】
【課題】デジタル資産の取引を、処理性能を維持し、かつ、当該国の法律の定めに従って、国内外に及ぶ広い範囲で円滑に行うことが可能なシステムの提供。
【解決手段】法制の異なる国の法枠ごとに設けられた、プライベート型チェーンを構成する、夫々のプラネットは、コード化されたIDが付与される。プラネットのIDは、種別、国(の法制)別、連番、本人確認処理フラグ、個別アドレスの設定桁を有する。所定のプラネットから他のプラネットへのデジタル資産の移動処理を行う複数のデジタル資産移動処理用スマコン11と、顧客の本人確認を行い、OKの場合、IDにおける本人確認処理フラグ設定桁に本人確認処理済を示す値を設定する本人確認用スマコン12とを有する。スマコン11は、送付元と送付先のプラネットに付与されたIDを参照し、本人確認状態、各国の法の定めに基づく送金量のチェックを行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、価値を有するデジタル資産の移動処理システムであって、
法制の異なる国(又は国家共同体)の法枠ごとに設けられた、複数ノードを管理する単位をなす、複数のプラネットからなる、少なくとも一つのプライベート型チェーンと、
夫々の前記プラネットにおいて、ブロックチェーンのタイプやデータ構造を識別するための種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)を識別するための国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、同一の前記プライベート型チェーンにおける前記プラネットの連番を示す連番コード設定桁、当該デジタル資産の取引における顧客についての本人確認の処理状態を示す本人確認処理フラグ設定桁、前記プラネット単位での前記顧客の個別アドレスを示す個別アドレス設定桁を有してなるコード化されたIDを、自己のプラネットに紐づけられたIDとして作成する機能を有する、プラネットID作成用スマートコントラクトと、
夫々の前記プラネットにおいて、前記プラネットID作成用スマートコントラクトにより作成された、複数のIDをインデックス化する機能を有する、IDインデックス化用スマートコントラクトと、
夫々の前記プラネットにおいて、前記IDインデックス化用スマートコントラクトによりインデックス化された、ID群を第1の所定の記録領域に記録する機能を有する、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトと、
夫々の前記プラネットにおいて、前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第1の所定の記録領域に記録されている、インデックス化されたID群を他の各プラネットに配信する機能を有する、インデックス化ID群配信用スマートコントラクトと、
夫々の前記プラネットにおいて、前記インデックス化ID群配信用スマートコントラクトにより配信された、インデックス化されたID群を受信する機能を有する、インデックス化ID群受信用スマートコントラクトと、
夫々の前記プラネットにおいて、前記インデックス化ID群受信用スマートコントラクトにより受信された、インデックス化されたID群を、第2の所定の記録領域に記録する機能を有する、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトと、
夫々の前記プラネットにおいて、前記第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第2の所定の記録領域に記録されている、データ送付先となるプラネットのIDのうち、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値を用いて、当該データ送付先となるプラネットにおける前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第1の所定の記録領域に記録されている、当該データ送付先となるプラネットのID群中における、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値と一致するプラネットのIDの有無をチェックする機能を有する、データ送付先ID照合用スマートコントラクトと、
前記データ送付先ID照合用スマートコントラクトによるチェックの結果、当該データ送付先となるプラネットにおいて、前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより記録された、当該データ送付先となるプラネットのID群中において、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値と一致するプラネットのIDが有るとき、所定の前記プラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他の前記プラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動を依頼する機能を有する、デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトと、
夫々の前記プラネットに接続し、所定の前記プラネットの所定アドレスから他の前記プラネットの所定アドレスへのデジタル資産の移動処理を行う機能を有する、複数のデジタル資産移動処理用スマートコントラクトと、
夫々の前記プラネットに接続し、前記顧客の本人確認を行い、当該本人確認がOKの場合、当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている当該プラネットのIDにおける本人確認処理フラグ設定桁に本人確認処理済を示す値を設定する機能を有する、本人確認用スマートコントラクトと、
を有し、
いずれか一つの前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、前記デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトによる所定の前記プラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他の前記プラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動し、他の前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、当該デジタル資産の移動処理のための作動をロックされ、
当該デジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動した前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、
デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁を参照し、
当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、
当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、
当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁を参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、
当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁を参照し、
当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁に、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、
当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁に、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、
送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、
さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有し、
当該デジタル資産の送金が、当該国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当しない国内送金に該当する場合、又は国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する
ことを特徴とするデジタル資産の移動処理システム。
【請求項2】
各国(又は国家共同体)の法枠内で所定のスマートコントラクトが作動し得る(ドメインの)範囲が固定されるとともに、
各国(又は国家共同体)の法枠内で作動する所定のスマートコントラクトと接続する外国為替調整用スマートコントラクトを備え、
各国(又は国家共同体)の法枠を超えるデジタル資産の移動に伴う処理を、前記外国為替調整用スマートコントラクトを介して調整するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のデジタル資産の移動処理システム。
【請求項3】
前記所定のスマートコントラクトは、本人確認用スマートコントラクトと、前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトのうちの、
デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁を参照し、
当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、
当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、
当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁を参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、
当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁を参照し、
当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁に、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、
さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有するスマートコントラクトからなり、
前記外国為替調整用スマートコントラクトは、前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトのうちの、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁に、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、
送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する機能を少なくとも有するスマートコントラクトからなることを特徴とする請求項2に記載のデジタル資産の移動処理システム。
【請求項4】
前記外国為替調整用スマートコントラクトは、送り元のデジタル資産の価格を送り先の国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換する機能をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のデジタル資産の移動処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムであって、
所定銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、
各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、
前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、
前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、
前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する機能を有する約定用スマートコントラクトと、
前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、
所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトの探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、
所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類などのデジタル資産との即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクトと、を有することを特徴とするデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム。
【請求項6】
前記約定先探索用スマートコントラクトが約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索したとき、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが保管する各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報の中で、対当する銘柄は無いが、類似銘柄で対当し得る場合、類似銘柄と対当させる銘柄の生成を行い、約定を誘導する流動性調整機能を有する流動性調整用スマートコントラクトをさらに有することを特徴とする請求項5に記載のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム。
【請求項7】
前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムは、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられ、
一つの国(又は国家共同体)の前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムに設けられた前記基準レート生成用スマートコントラクトは、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、他国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記外国為替調整用スマートコントラクトにより当該国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換された当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム。
【請求項8】
一つの国(又は国家共同体)の前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムに設けられた前記約定先探索用スマートコントラクトは、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)及び他国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレート及び当該他国(又は国家共同体)に設けられた前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有することを特徴とする請求項7に記載のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム。
【請求項9】
前記プラネットのIDは、さらに、不正送金チェック桁と、不正送金情報管理領域と、を有し、
前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、
特定の送付元及び送付先アドレス間における、所定の短時間内での所定回数以上の少額送金処理の該当・非該当及び該当する場合における頻度を定期的に監視する機能と、
監視した結果に応じて、当該送付元及び送付先アドレスを不正送金の疑いのない送金処理及びアドレス、不正送金の疑いのある送金処理及びアドレス、不正送金の疑いの蓋然性の高い送金処理及びアドレス、のいずれかに認定し、認定内容に応じた所定値を前記不正送金チェック桁に記録するとともに、不正送金の疑いの蓋然性の高いアドレスであると認定した場合はさらに、当該送付先アドレスを含むIDを、前記不正送金情報管理領域に記録する機能と、
前記不正送金チェック桁に不正送金の疑いの蓋然性の高い送金処理及びアドレスに該当する値を記録した場合、当該不正送金情報管理領域に記録された不正送金先IDの個別アドレス設定桁に設定されている個別アドレスへの資産移動をすることができなくなるように制御する機能と、
送付元のIDにおいて、送り元のIDにおける不正送金情報管理領域へ記録した、ブラックアドレスに対応して紐づけられた不正送金先IDの数が所定数以上(例えば、10個以上)である場合、送付元からの一切の送金をすることができなくなるように制御する機能と、
をさらに有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のデジタル資産の移動処理システム。
【請求項10】
前記プラネットのIDは、個人か法人かの区分けをするための個人・法人区分設定桁と、企業の管理情報としての、与信情報(格付け情報)設定桁と、与信情報管理領域と、をさらに有するとともに、
クラウド会計システムにより、各企業の会計情報データを用いて算出、更新された各企業の格付け情報を参照し、参照した格付け情報に対応する所定値を、前記プラネットのIDにおける与信情報(格付け情報)設定桁に記録する機能と、当該格付け情報を算出、更新したクラウド会計サービス(会社、ソフト)等を与信情報管理領域に記録する機能を有する与信情報(格付け情報)取得用スマートコントラクトをさらに有し、
前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、前記デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおける個人・法人区分設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおける個人・法人区分設定桁に、法人であることを示す値が設定されている場合、前記与信情報(格付け情報)取得用スマートコントラクトを介して与信情報(格付け情報)設定桁に記録された、設定値を用いて与信力のチェックを行い、与信力が低いことを示す所定値が設定されている場合は、エラーとして送金処理を中止する機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項1~4、9のいずれかに記載のデジタル資産の移動処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル資産の移動処理システム、及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムに関する。
なお、本願明細書における「システム」とは、コンピュータや他の電子機器、ソフトウェア、通信ネットワーク、データなどの要素を組み合わせて構成された、ソフトウェアによる情報処理を、ハードウェア資源を用いて具体的に実現するコンピュータシステムを意味する。
【背景技術】
【0002】
ST類(電子記録移転権利の概念だけではなくデジタル証券の概念を含むものとして定義する。以下同じ。)、通貨型のテーブルコインやデジタル通貨類、コモディティなどあらゆるデジタル資産間の物々交換を行うための取引サービスは、特定者への、クローズドされた環境でのサービスであり、プライベート型チェーンのコンセンサスノードにソフトウェアで構築された複数の仮想ノードが設けられ、夫々の仮想ノードに、一般的な権限に加えて全物理ノードの運用権限が付与されて、2階層の権限を備えた仮想コンソ-シアム型チェーンとなるブロックチェーン方式が適切と考えられる。
【0003】
本件発明者は、そのようなタイプのブロックチェーン方式において、デジタル資産間の取引を効率的にすることについて考察、検討を行った。
【0004】
例えば、ST類などの証券系のトークンについての取引サービスでは、PTS(私設取引システム)のような、証券会社内での売り買いの注文の集中処理が基本となっている。
ただし、PTSは、運用するための体制や財務力が非常に高く要求されるため、簡単に実装できる機能ではない。
小型銘柄の流動性情報は、プライシング(価格決定の妥当性や根拠)のノウハウなどが重要であり、算出したプライシングを公開しない1対1型の取引のほうが現実的には実装し易いという事情もある。基本的に、ST類は、既存の証券のように公募的には処理できないような小規模のものや、大型であっても公募コストに見合わない私募物などがある。
【0005】
特にST類の取引サービスは、主に小口の顧客に対する証券サービスであり、小口の顧客はコストについては非常にシビアである。このため、ST類の取引サービスについては、コストの負担が無いサービスを考える必要がある。
【0006】
また、ST類の取引サービスについては、既存の上場物などの有価証券をデジタル化したST類を対象とした取引サービスのほかに、上場のコストが支払えない小規模で直接金融的なST類を対象とした取引サービスのニーズが多く存在している。
例えば、個別不動産を証券化したST類を対象とした取引サービスや、小口のリート(REIT:Real Estate Investment Trust、不動産投資信託)など、証券化がコスト的に難しい信託受益権系のST類を対象とした取引サービスなどは、そのような取引サービスに該当し、上場証券であるリートなどの、複数の不動産案件を運用する、中身(投資先)のわかり難いものをデジタル化したST類を対象とした取引サービスとは異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような小規模で直接金融的な個別不動産などをみなし有価証券としてデジタル化したタイプのST類は、流動性が低い。このため、そのようなタイプのST類の転売などにおける価格設定は、PTS(私設取引システム)において行われているような、証券会社内での単純な売り買いの注文を集中させる価格発見の方法では、ミスプライス(適正価格からの乖離)が出やすくなる問題がある。
【0008】
この課題を解決するための方策としては、価格設定に責任を持つマーケットメイクを行う金融機関が、取引価格に責任を持つという方法が考えられる。
この方法においては、複数のマーケットメイクを行う金融機関に当該銘柄のレートを提示させて、最良レートを競わせる方法が望まれる。各マーケットメイクを行う金融機関の提示する当該銘柄のレートの根拠となるのは、各マーケットメイクを行う金融機関の顧客が各マーケットメイクを行う金融機関にオーダー(リーブオーダー)した注文のブック(約定)状態である。これを参考として、各マーケットメイクを行う金融機関が自己リスク分を加味して当該銘柄のレートを生成し、顧客に提示する。
【0009】
従来、各マーケットメイクを行う金融機関は、取引市場に当該銘柄のレートを提示する場合、基本的に本来の各マーケットメイクを行う金融機関の店内レートよりも不利なレートとする一方、各マーケットメイクを行う金融機関の店内にて有利なレートを顧客に提示する方法を主軸として採用し、顧客の注文を約定させ易くなるようにしていた。
【0010】
これは、手数料収益を考慮したとき、取引市場への手数料の支払いが不要になり、顧客としてもメリットがあるためであった。
【0011】
しかし、取引市場は、約定率が上がらない、個別の各マーケットメイクを行う金融機関での約定価格が不透明になるなどの理由により、各マーケットメイクを行う金融機関が管理している自社の顧客のリーブオーダー自体を、取引市場に強制回送させるようにした。
【0012】
これでは、結果的に、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることになり、各マーケットメイクを行う金融機関が撤退し、日本におけるマーケットメイクがなくなることが懸念される。
【0013】
そこで、本件発明者は、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うための方策について、考察、検討を重ねた。そして、その過程において、さらに、デジタル証券(ST類)などの小口物や流動性が少ないデジタル資産(ST類)の取引を、国内外に及ぶ広い範囲で円滑に行うための方策について考察、検討を行った。
しかるに、価値を有するデジタル資産の取引を、国内外に及ぶ広い範囲で円滑に行うに際しては、夫々の国(又は国家共同体)の法制が異なる点や、処理性能の低下等、種々の課題があることが判明した。
【0014】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、価値を有するデジタル資産の取引を、処理性能を維持し、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った高度なコンプライアンスに対処して、国内外に及ぶ広い範囲で円滑に行うことができ、加えて、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類などのデジタル資産の公正な取引を行うことが可能なデジタル資産の移動処理システム及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明によるデジタル資産の移動処理システムは、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、価値を有するデジタル資産の移動処理システムであって、法制の異なる国(又は国家共同体)の法枠ごとに設けられた、複数ノードを管理する単位をなす、複数のプラネットからなる、少なくとも一つのプライベート型チェーンと、夫々の前記プラネットにおいて、ブロックチェーンのタイプやデータ構造を識別するための種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)を識別するための国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、同一の前記プライベート型チェーンにおける前記プラネットの連番を示す連番コード設定桁、当該デジタル資産の取引における顧客についての本人確認の処理状態を示す本人確認処理フラグ設定桁、前記プラネット単位での前記顧客の個別アドレスを示す個別アドレス設定桁を有してなるコード化されたIDを、自己のプラネットに紐づけられたIDとして作成する機能を有する、プラネットID作成用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記プラネットID作成用スマートコントラクトにより作成された、複数のIDをインデックス化する機能を有する、IDインデックス化用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記IDインデックス化用スマートコントラクトによりインデックス化された、ID群を第1の所定の記録領域に記録する機能を有する、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第1の所定の記録領域に記録されている、インデックス化されたID群を他の各プラネットに配信する機能を有する、インデックス化ID群配信用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記インデックス化ID群配信用スマートコントラクトにより配信された、インデックス化されたID群を受信する機能を有する、インデックス化ID群受信用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記インデックス化ID群受信用スマートコントラクトにより受信された、インデックス化されたID群を、第2の所定の記録領域に記録する機能を有する、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第2の所定の記録領域に記録されている、データ送付先となるプラネットのIDのうち、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値を用いて、当該データ送付先となるプラネットにおける前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第1の所定の記録領域に記録されている、当該データ送付先となるプラネットのID群中における、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値と一致するプラネットのIDの有無をチェックする機能を有する、データ送付先ID照合用スマートコントラクトと、前記データ送付先ID照合用スマートコントラクトによるチェックの結果、当該データ送付先となるプラネットにおいて、前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより記録された、当該データ送付先となるプラネットのID群中において、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値と一致するプラネットのIDが有るとき、所定の前記プラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他の前記プラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動を依頼する機能を有する、デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットに接続し、所定の前記プラネットの所定アドレスから他の前記プラネットの所定アドレスへのデジタル資産の移動処理を行う機能を有する、複数のデジタル資産移動処理用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットに接続し、前記顧客の本人確認を行い、当該本人確認がOKの場合、当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている当該プラネットのIDにおける本人確認処理フラグ設定桁に本人確認処理済を示す値を設定する機能を有する、本人確認用スマートコントラクトと、を有し、いずれか一つの前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、前記デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトによる所定の前記プラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他の前記プラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動し、他の前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、当該デジタル資産の移動処理のための作動をロックされ、当該デジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動した前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁を参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁に、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁に、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有し、当該デジタル資産の送金が、当該国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当しない国内送金に該当する場合、又は国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録することを特徴としている。
【0016】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいては、各国(又は国家共同体)の法枠内で所定のスマートコントラクトが作動し得る(ドメインの)範囲が固定されるとともに、各国(又は国家共同体)の法枠内で作動する所定のスマートコントラクトと接続する外国為替調整用スマートコントラクトを備え、各国(又は国家共同体)の法枠を超えるデジタル資産の移動に伴う処理を、前記外国為替調整用スマートコントラクトを介して調整するようにするのが好ましい。
【0017】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいては、前記所定のスマートコントラクトは、本人確認用スマートコントラクトと、前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトのうちの、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁を参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁に、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有するスマートコントラクトからなり、前記外国為替調整用スマートコントラクトは、前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトのうちの、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁に、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する機能を少なくとも有するスマートコントラクトからなるのが好ましい。
【0018】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいては、前記外国為替調整用スマートコントラクトは、送り元のデジタル資産の価格を送り先の国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換する機能をさらに有するのが好ましい。
【0019】
また、本発明によるデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムは、上記いずれかの発明のデジタル資産の移動処理システムに備わり、所定銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する機能を有する約定用スマートコントラクトと、前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文のブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトの探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類などのデジタル資産との即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクトと、を有することを特徴としている。
【0020】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおいては、前記約定先探索用スマートコントラクトが約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索したとき、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが保管する各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報の中で、対当する銘柄は無いが、類似銘柄で対当し得る場合、類似銘柄と対当させる銘柄の生成を行い、約定を誘導する流動性調整機能を有する流動性調整用スマートコントラクトをさらに有するのが好ましい。
【0021】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおいては、前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムは、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられ、一つの国(又は国家共同体)の前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムに設けられた前記基準レート生成用スマートコントラクトは、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、他国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記外国為替調整用スマートコントラクトにより当該国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換された当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有するのが好ましい。
【0022】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおいては、一つの国(又は国家共同体)の前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムに設けられた前記約定先探索用スマートコントラクトは、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)及び他国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレート及び当該他国(又は国家共同体)に設けられた前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有するのが好ましい。
【0023】
また、本発明によるデジタル資産の移動処理システムにおいては、前記プラネットのIDは、さらに、不正送金チェック桁と、不正送金情報管理領域と、を有し、前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、特定の送付元及び送付先アドレス間における、所定の短時間内での所定回数以上の少額送金処理の該当・非該当及び該当する場合における頻度を定期的に監視する機能と、監視した結果に応じて、当該送付元及び送付先アドレスを不正送金の疑いのない送金処理及びアドレス、不正送金の疑いのある送金処理及びアドレス、不正送金の疑いの蓋然性の高い送金処理及びアドレス、のいずれかに認定し、認定内容に応じた所定値を前記不正送金チェック桁に記録するとともに、不正送金の疑いの蓋然性の高いアドレスであると認定した場合はさらに、当該送付先アドレスを含むIDを、前記不正送金情報管理領域に記録する機能と、前記不正送金チェック桁に不正送金の疑いの蓋然性の高い送金処理及びアドレスに該当する値を記録した場合、当該不正送金情報管理領域に記録された不正送金先IDの個別アドレス設定桁に設定されている個別アドレスへの資産移動をすることができなくなるように制御する機能と、送付元のIDにおいて、送り元のIDにおける不正送金情報管理領域へ記録した、ブラックアドレスに対応して紐づけられた不正送金先IDの数が所定数以上(例えば、10個以上)である場合、送付元からの一切の送金をすることができなくなるように制御する機能と、をさらに有するのが好ましい。
【0024】
また、本発明によるデジタル資産の移動処理システムにおいては、前記プラネットのIDは、個人か法人かの区分けをするための個人・法人区分設定桁と、企業の管理情報としての、与信情報(格付け情報)設定桁と、与信情報管理領域と、をさらに有するとともに、クラウド会計システムにより、各企業の会計情報データを用いて算出、更新された各企業の格付け情報を参照し、参照した格付け情報に対応する所定値を、前記プラネットのIDにおける与信情報(格付け情報)設定桁に記録する機能と、当該格付け情報を算出、更新したクラウド会計サービス(会社、ソフト)等を与信情報管理領域に記録する機能を有する与信情報(格付け情報)取得用スマートコントラクトをさらに有し、前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、前記デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおける個人・法人区分設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおける個人・法人区分設定桁に、法人であることを示す値が設定されている場合、前記与信情報(格付け情報)取得用スマートコントラクトを介して与信情報(格付け情報)設定桁に記録された、設定値を用いて与信力のチェックを行い、与信力が低いことを示す所定値が設定されている場合は、エラーとして送金処理を中止する機能をさらに有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、価値を有するデジタル資産の取引を、処理性能を維持し、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った高度なコンプライアンスに対処して、国内外に及ぶ広い範囲で円滑に行うことができ、加えて、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類などのデジタル資産の公正な取引を行うことが可能なデジタル資産の移動処理システム及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係るデジタル資産の移動処理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
図2図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わるスマートコントラクトを概略的に示す説明図である。
図3図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わるプラネットID作成用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図4図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに紐づけられるコード化されたIDの構成例を示す説明図である。
図5図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わるIDインデックス化用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図6図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わる第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図7図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わるインデックス化ID群配信用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図8図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わるインデックス化ID群受信用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図9図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わる第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図10図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わるデータ送付先ID照合用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図11図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わるデジタル資産移動依頼用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図12図1のデジタル資産の移動処理システムに備わるデジタル資産移動処理用スマートコントラクトの有する全体の機能を概略的に示す説明図である。
図13図1のデジタル資産の移動処理システムに備わるデジタル資産移動処理用スマートコントラクトの有する詳細な機能の一部を概略的に示す説明図である。
図14図1のデジタル資産の移動処理システムに備わるデジタル資産移動処理用スマートコントラクトの有する詳細な機能の他部を概略的に示す説明図である。
図15図1のデジタル資産の移動処理システムに備わるデジタル資産移動処理用スマートコントラクトの有する詳細な機能のさらに他部を概略的に示す説明図である。
図16図1のデジタル資産の移動処理システムに備わる本人確認用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図17図1のデジタル資産の移動処理システムに備わる所定のスマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図18図1のデジタル資産の移動処理システムに備わる外国為替調整用スマートコントラクトの有する機能の一部を概略的に示す説明図である。
図19図1のデジタル資産の移動処理システムに備わる外国為替調整用スマートコントラクトの有する機能の他部を概略的に示す説明図である。
図20図1のデジタル資産の移動処理システムを用いたデジタル資産の移動の前段階の処理の流れの一部を概略的に示すフローチャートである。
図21図1のデジタル資産の移動処理システムを用いたデジタル資産の移動の前段階の処理の流れの他部を概略的に示すフローチャートである。
図22図1のデジタル資産の移動処理システムを用いたデジタル資産の移動の前段階の処理の流れのさらに他部を概略的に示すフローチャートである。
図23図1のデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を同一国(又は国家共同体)内で移動する場合の処理に関連する構成部分を概略的に示す説明図である。
図24図1のデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を同一国(又は国家共同体)内で移動する場合の処理の流れの一部を概略的に示すフローチャートである。
図25図24に示す処理の流れの続きを概略的に示すフローチャートである。
図26図1のデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を複数国(又は国家共同体)間で移動する場合の処理に関連する構成部分を概略的に示す説明図である。
図27図1のデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を複数国(又は国家共同体)間で移動する場合において特有の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図28】本発明の第2実施形態に係るデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムのデジタル資産の移動処理システムにおける構築範囲を概念的に示す説明図である。
図29】本発明の第2実施形態に係るデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
図30図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける独自レート作成用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図31図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける非公開共有情報保管用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図32図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける基準レート生成用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図33図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける基準レート提示用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図34図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける約定用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図35図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける約定先探索用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図36図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける約定制御用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図37図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける決済用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図38図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおける流動性調整用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
図39図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの一例の一部分を示す説明図である。
図40図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの一例の図39の続きの部分を示す説明図である。
図41図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの一例の他の部分を示す説明図である。
図42図29のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの全体を概略的に示すブロック図である。
図43】オーダードリブンの仕組みを概念的に示す説明図である。
図44】クオートドリブンの仕組みを概念的に示す説明図である。
図45】本件発明者が、本発明を導出する前段階の過程において導出した、発行済ST類の取引システムにおけるIOI(取引意思表示)の非公開共有情報を用いた対当処理機能等を概念的に示す説明図である。
図46】本件発明者が、本発明を導出する前段階の過程において導出した、発行済ST類の取引システムにおけるIOI(取引意思表示)の非公開共有情報を用いた対当処理機能を概念的に示す説明図である。
図47】本件発明者が、本発明を導出する前段階の過程において導出した、発行済ST類の取引システムにおける対当処理機能等に用いるIOI(取引意思表示)の非公開共有情報についての一般的な構成例を概念的に示す説明図である。
図48】本件発明者が、本発明を導出する前段階の過程において導出した、発行済ST類の取引システムにおける対当処理機能等に用いるIOI(取引意思表示)の非公開共有情報についての他の例を概念的に示す説明図である。
図49】本件発明者が、本発明を導出する前段階の過程において導出した、発行済ST類の取引システムについて、法制の異なる複数国(又は国家共同体)間の取引にも対応できるようにするための構成を概念的に示す説明図である。
図50】本件発明者が、本発明を導出する前段階の過程において導出した、コード化したID内の所定情報に基づく、国内のプラネット間でのデータの移動処理を行うための構成例を概念的に示す説明図である。
図51】本件発明者が、本発明を導出する前段階の過程において導出した、国際間や高額のデータの移動処理を行うための構成例を概念的に示す説明図である。
図52】本件発明者が、考察、検討を行った、デジタル資産の国際的な移動処理を行うためにパブリック型チェーンを用いる場合の構成を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯、及び本発明の作用効果について説明する。
【0028】
上述のとおり、ST類(電子記録移転権利の概念だけではなくデジタル証券の概念を含むものとして定義する。以下同じ。)、通貨型のテーブルコインやデジタル通貨類、コモディティなどあらゆるデジタル資産間の物々交換を行うための取引サービスは、特定者への、クローズドされた環境でのサービスであり、プライベート型チェーンのコンセンサスノードにソフトウェアで構築された複数の仮想ノードが設けられ、夫々の仮想ノードに、一般的な権限に加えて全物理ノードの運用権限が付与されて、2階層の権限を備えた仮想コンソ-シアム型チェーンとなるブロックチェーン方式が適切と考えられる。
本件発明者は、そのようなタイプのブロックチェーン方式において、デジタル資産間の取引を効率的にすることについて考察、検討を行った。
【0029】
例えば、ST類などの証券系のトークンについての取引サービスでは、PTS(私設取引システム)のような、証券会社内での売り買いの注文の集中処理が基本となっている。
ただし、PTSは、運用するための体制や財務力が非常に高く要求されるため、簡単に実装できる機能ではない。
小型銘柄の流動性情報は、プライシング(価格決定の妥当性や根拠)のノウハウなどが重要であり、算出したプライシングを公開しない1対1型の取引のほうが現実的には実装し易いという事情もある。基本的に、ST類は、既存の証券のように公募的には処理できないような小規模のものや、大型であっても公募コストに見合わない私募物などがある。
【0030】
特にST類の取引サービスは、主に小口の顧客に対する証券サービスであり、小口の顧客はコストについては非常にシビアである。このため、ST類の取引サービスについては、コストの負担が無いサービスを考える必要がある。
【0031】
また、ST類の取引サービスについては、既存の上場物などの有価証券をデジタル化したST類を対象とした取引サービスのほかに、上場のコストが支払えない小規模で直接金融的なST類を対象とした取引サービスのニーズが多く存在している。
例えば、個別不動産を証券化したST類を対象とした取引サービスや、小口のリート(REIT:Real Estate Investment Trust、不動産投資信託)など、証券化がコスト的に難しい信託受益権系のST類を対象とした取引サービスなどは、そのような取引サービスに該当し、上場証券であるリートなどの、複数の不動産案件を運用する、中身(投資先)のわかり難いものをデジタル化したST類を対象とした取引サービスとは異なる。
【0032】
このような小規模で直接金融的な個別不動産などをみなし有価証券としてデジタル化したタイプのST類は、流動性が低い。このため、そのようなタイプのST類の転売などにおける価格設定は、PTS(私設取引システム)において行われているような、証券会社内での単純な売り買いの注文を集中させる価格発見の方法では、ミスプライス(適正価格からの乖離)が出やすくなる問題がある。
【0033】
この課題を解決するための方策としては、価格設定に責任を持つマーケットメイクを行う金融機関が、取引価格に責任を持つという方法が考えられる。
この方法においては、複数のマーケットメイクを行う金融機関に当該銘柄のレートを提示させて、最良レートを競わせる方法が望まれる。各マーケットメイクを行う金融機関の提示する当該銘柄のレートの根拠となるのは、各マーケットメイクを行う金融機関の顧客が各マーケットメイクを行う金融機関にオーダー(リーブオーダー)した注文のブック(約定)状態である。これを参考として、各マーケットメイクを行う金融機関が自己リスク分を加味して当該銘柄のレートを生成し、顧客に提示する。
【0034】
従来、各マーケットメイクを行う金融機関は、取引市場に当該銘柄のレートを提示する場合、基本的に本来の各マーケットメイクを行う金融機関の店内レートよりも不利なレートとする一方、各マーケットメイクを行う金融機関の店内にて有利なレートを顧客に提示する方法を主軸として採用し、顧客の注文を約定させ易くなるようにしていた。
【0035】
これは、手数料収益を考慮したとき、取引市場への手数料の支払いが不要になり、顧客としてもメリットがあるためであった。
【0036】
しかし、取引市場は、約定率が上がらない、個別の各マーケットメイクを行う金融機関での約定価格が不透明になるなどの理由により、各マーケットメイクを行う金融機関が管理している自社の顧客のリーブオーダー自体を、取引市場に強制回送させるようにした。
【0037】
これでは、結果的に、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることになり、各マーケットメイクを行う金融機関が撤退し、日本におけるマーケットメイクがなくなることが懸念される。
【0038】
そこで、本件発明者は、上述のマーケットメイクを行う金融機関のロジック(各マーケットメイクを行う金融機関の顧客が各マーケットメイクを行う金融機関にオーダー(リーブオーダー)した注文のブック(約定)状態を参考として、各マーケットメイクを行う金融機関が自己のリスク分を加味して当該銘柄のレートを生成し、顧客に提示する)をベースとして、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うための方法について考察、検討を重ねた。
【0039】
まず、ST類を生成した際に、取引リストの作成(銘柄登録)を行い、その取引リストに登録されている銘柄について、取引の参加者(各マーケットメイクを行う金融機関)が共通で取引に用いることのできるベースとなるものを考えた。
【0040】
そのベースとなるものとして、一つのマーケットメイクを行う金融機関の顧客からの注文を、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々自社の顧客のリーブオーダーとして扱う機能を、各マーケットメイクを行う金融機関が共有するシステムを提供することを考えた。
【0041】
この機能を共有するシステムでは、顧客からの当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と各マーケットメイクを行う金融機関の自己のリスク分を加味した処理より、基準となる妥当性のある当該銘柄のレートを生成する一方、生成した基準となる妥当性のある当該銘柄のレートは開示しないものとし、各顧客が取引を所望する銘柄のレートを問い合わせたときにのみ提示するものとすることを考えた。
【0042】
また、流動性が本質的に低い状況で、適正な当該銘柄のレートを提示することが必要になることから、各マーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)を、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有することを考えた。
【0043】
この機能により、各顧客が取引を所望する銘柄のレートを問い合わせたときには、各マーケットメイクを行う金融機関が他社のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)を把握することなく、システムが機械的に他社のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)を把握し、基準となる妥当性のある当該銘柄のレート(つまり、各マーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)、及び各マーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄のレート:自己のリスク分を加味したものの双方から)を算出して各顧客に提示するようにすることを考えた。
【0044】
また、マーケットメイクを行う金融機関が当該銘柄の自社レートで自社の顧客の当該銘柄のリーブオーダーを約定できない場合、システムが、各社のマーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報(各マーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態))を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索するようにすることを考えた。
【0045】
さらに、探索の結果、約定可能な相手先のマーケットメイクを行う金融機関が見つかり、自社の顧客のリーブオーダーが自社のマーケットメイクを行う金融機関内ではなく、他社のマーケットメイクを行う金融機関の間で約定(他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄のレートで約定)となる場合は、2者(自社のマーケットメイクを行う金融機関の顧客と他社のマーケットメイクを行う金融機関)間で即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行い、その際にデジタル通貨と該当ST類を決済用スマートコントラクトに渡して処理するようにすることを考えた。
【0046】
これにより、リアルタイムにST類とデジタル通貨の取引が可能になり、顧客に対してデジタル資産を即時出庫することができ、流動性の低いST類について妥当性のある取引価格を導出し、リアルタイムに決済することが可能になると考えられる。
【0047】
ところで、価値を有するデジタル資産の取引形態や移動可能額等は、夫々の国(又は国家共同体)の法制により異なる。
そこで、本件発明者は、デジタル証券(ST類)などの小口物や流動性が少ないデジタル資産の取引を、法制の異なる多数の国(又は国家共同体)間で円滑に行うための課題について、以下に述べるような、種々の観点から考察、検討を重ねた。
【0048】
1.日本における現状のクロッシング
日本における現状のクロッシングでは、国内で主流となっているオーダードリブンにおいて、売り注文と買い注文の注文情報を1つの注文管理板に集約し、その売り注文と買い注文のクロスする部分を約定させる方法を用いている(例えば、図43参照)。
しかしながら、オーダードリブンは、流動性が相応に多い大規模型の取引に適し、大量の注文・約定における価格の妥当性が得られ易い反面、流動性が少ない銘柄を扱う場合、価格が安定せず非常に不確実な価格形成が行われ易い。
【0049】
ところで、デジタル証券(ST類)は、基本的に、小口物や流動性が少ない銘柄が殆どである。また、24時間、休日も含めた取引が主流になると想定されることから、流動性がさらに分散される傾向になると考えられる。
このため、デジタル証券(ST類)などの小口物や流動性が少ない銘柄のクロッシングには、オーダードリブンにおいて注文情報を注文管理板に集約させる方法は最適ではないと考えられる。
【0050】
小口物や流動性が少ない銘柄に対するクロッシングとして、価格の妥当性を得るための一般的な方策としては、クオートドリブンが考えられる。
クオートドリブンは、マーケットメイクを行う複数の業者が、最適のクオート(売り買いの気配意思)を公開し、レート競争を行う方法であり、価格の妥当性をプロ(業者)に任せる方法である(例えば、図44参照)。
【0051】
しかるに、日本ではマーケットメイカーが殆ど存在しない状況にある。このため、小口物や流動性が少ない銘柄に対するクロッシングとして、クオートドリブンを導入することは容易ではない。
しかし、クオートドリブンは、流動性の少ない取引においては、オーダードリブンよりも価格の妥当性を得るのに優れている。
オーダードリブンは、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)においてはCeFi(Centralized Finance:中央集権型金融)の概念に基づくものであるのに対し、クオートドリブンは、基本的にDeFi(Decentralized Finance:分散型金融)の概念に基づくものである。
【0052】
2.デジタル証券(ST類)の取引等において、価格の妥当性を実現すための具体的な方策
本件発明者は、マーケットメイカーが殆ど存在しない状況の日本において、デジタル証券(ST類)の取引等について、DeFiの概念に基づいたクロッシングを主とした、価格の妥当性を実現するための方策について、次のように、考察、検討を行った。
【0053】
DeFi的な概念として、(顧客の)注文の管理を行うのは、各金融機関とする。
基本的に、各々の金融機関を単位として、注文管理機能と、注文取引機能を有し、複数の注文取引機能が存在するようにする。
そして、各々の金融機関を単位として、取り扱い銘柄が管理(設定)されるようにする。
ここで、重要なのは基準価格である。基準価格は、注文を約定させるときに用いる価格妥当性要因であり、例えば、直近の取引金額などをベースとして生成するようにする。
基準価格に対して、各々の(金融機関の)注文取引機能が、自己内で対当しない場合は、他の(金融機関の)注文取引機能に、対当する注文があるか問い合わせを行うようにする。
問い合わせは、例えば、大口注文、普通注文、小口注文の3種類に分け、大口注文については、大口注文同士の問い合わせによる処理を行うようにする。
【0054】
なお、オーダードリブンの場合であっても、大口注文をそのまま注文管理板に乗せることはないと考えられる。
その理由は、取引量が通常の取引量を大きく超える大口注文の場合、自らの注文の膨大な取引量が価格形成を不利にするからである。
このため、オーダードリブンの場合、大口注文については、ある程度の小口注文に分解し、注文を少しずつ処理することが多いと考えられる。
オーダードリブンには、板情報や複数の気配情報を公開することで、他の注文を呼び込むという利点がある反面、その注文の状況より手口を読まれて悪用されるケースが多いという欠点がある。
【0055】
他方、クオートドリブンには、基本的にマーケットメイカーには人が介在していることで、顧客注文を悪用するようなフロントランニングなど、顧客が不利になるような不正が働き易く、また、マーケットメイカーが存在しない、もしくは気配を公開しない場合は、約定がつかないという欠点がある。
また、クオートドリブンには、極端な相場の過熱や価格の変動時において、マーケットメイカーの救済処置が発動されるケースもあり、基本的に人が価格を制御するという手法であることから不完全な面も多い。
【0056】
しかるに、本件発明者は、上述のようなクオートドリブンの欠点に対処する方策として、デジタル証券(ST類)の取引を行うシステムにおいて、完全に人の意思を介在させないようにすることを考えた。
詳しくは、デジタル証券(ST類)の注文が大口注文(同士)であっても、小口注文(同士)であっても、もしくは大口注文と小口注文とが混在して約定したとしても、気配が外部には知られず、約定価格のみが開示されるようにする。そのようにすれば、注文動向を人が把握し難くなり、手口を読まれて悪用されるようなことがなくなると考えられる。また、クオートドリブンのようにプロである業者が一方的に気配を公開するものではないため、顧客が不利になるような不正が行われ難くなると考えられる。
【0057】
本件発明者は、このような考察、検討を重ねた末、価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことの可能な発行済ST類の取引システムを導出した。
本件発明者が導出した発行済ST類の取引システムは、所定銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する機能を有する約定用スマートコントラクトと、前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトの探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類などのデジタル資産との即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクトと、を有する。
【0058】
各々の金融機関の約定先探索用スマートコントラクトは、例えば、図45に示すように、約定先探索用スマートコントラクトによる約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関の探索(IOI(取引意思表示)の問い合わせ)を、非公開共有情報保管用スマートコントラクトが保管するIOI(取引意思表示)の非公開共有情報に対して行い、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定制御用スマートコントラクトが約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させ、各々の金融機関に注文情報を返すようにする。
【0059】
また、例えば、図46に示すように、各々の金融機関の対当処理機能(約定先探索用スマートコントラクト、約定制御用スマートコントラクト、約定用スマートコントラクト)が、非公開共有情報保管用スマートコントラクトが保管するIOI(取引意思表示)の非公開共有情報を共有し、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関の探索(IOI(取引意思表示)の問い合わせ)に対して注文についての約定可否を返すようにする。
【0060】
なお、一般的な概念としてのIOI(取引意思表示)は、例えば、図47に示すように各金融機関が個別に所有する機能をネットワーク(同じセンター内でも管理は分かれている)接続して情報処理と約定処理を行うものであるが、図48に示すように各マーケットメイクを行う金融機関のノードを仮想ノードとして同一クラウド内に設定し、夫々のノードに対当処理機能等(夫々の金融機関における独自レートの生成、非公開共有情報の保管、基準レートの生成、顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーの約定、約定先の探索等の処理)を実装し、これらの処理をネットワークではなく、共有メモリを用いて処理するようにすると、処理が非常に高速化するので好ましい。
【0061】
2-1.流動性調整機能
また、本件発明者は、発行済ST類の取引システムにおいては、例えば、図45に示したように、流動性調整機能を備えるのが望ましいと考えた。
流動性調整機能は、各金融機関のIOI(取引意思表示)の情報(非公開共有情報)の中で、対当する銘柄は無いが、類似銘柄で対当し得る場合があれば、類似銘柄と対当させる銘柄の生成を行い、約定を誘導する機能である。
例えば、電子債権型STなど、金利とリスク量の関係を調整できるST類があるものとする。このようなST類については、レンディング機能とCDS(Credit default swap:投資対象の破綻リスクに備えた保険機能を有する金融派生商品)を用いることで、類似銘柄における約定行為を実施できるようにする。
【0062】
流動性調整機能は、相関の高い銘柄間での売り買いペアを想定したものであり、24時間365日対応であることから、休日や夜間など流動性が拡散するときに用いる。
即ち、流動性が下がっているときにポジションを取り、昼など取引量が多く流動性が高いときに、ポジションを解消する。
なお、流動性調整機能は、法制の異なる複数国(又は国家共同体)間においても、各国の法に適応できるようにすることが望ましいと考えられる。
【0063】
2-2.法制の異なる複数国(又は国家共同体)間でのデジタル証券(ST類)の取引
また、本件発明者は、上述した発行済ST類の取引システムについて、法制の異なる複数国(又は国家共同体)間の取引にも対応できるようにすることを考えた。
例えば、為替変換機能により価格を当該国の法定通貨を単位とした価格に変換する。また、為替変換機能は、当該国(又は国家共同体)の法規制に対応した所定の検査を行うようにする(例えば、図49参照)。
【0064】
3.トークンの移動についての考察、検討
また、本件発明者は、発行済ST類の取引システムについて、法制の異なる国(又は国家共同体)間の取引にも対応できるようにすべく、法制の異なる国(又は国家共同体)間でのトークンの移動を円滑に行うための方策について、次のように考察、検討を行った。
【0065】
3-1.トークンの移動についての法による規制
(現物資産が担保されているようなものなど)資産性の高い価値を有するデジタル資産は、(国際的に)決済力を有している。
ところで、日本国内でのトークンの移動については、主に犯収法(犯罪収益移転防止法)の規制を受ける。例えば、価値を有するデジタル資産の移動や管理について、10万円相当を超えるものは、KYC(本人確認)の規制対象となる。
また、国内から海外への価値を有するデジタル資産の移動については、外為法(外国為替及び外国貿易法)の規制(海外への出金上限など)を受ける。
このため、国内間、複数国(又は国家共同体)間の夫々において、価値を有するデジタル資産を移動する場合、当該国(又は国家共同体)間の法規制に対処する必要がある。
また、ブロックチェーンにおいて、パブリック型チェーンとプライベート型チェーンは各々に優位性を有する機能が異なるが、決済を鑑み、当該国の法枠内(つまり国(又は国家共同体)単位)でブロックチェーンのプラネット(複数ノードの管理単位)を設定し、当該国(又は国家共同体)の法律に基づいた取引額の上限を公開アドレスに強制的に設定する。
このようにすることで、国内間での価値を有するデジタル資産の移動についての法規制には対応できると考えられる。
【0066】
そもそも、犯収法に対処するには、個別アドレスが特定の人とリンクしていることが明確であることが必要である。
そして、高額のデジタル資産を送金する場合や、国外送金を行う場合に、本人確認を個別アドレスに対して行うようにすることが必要となる。
そこで、個別アドレスに本人確認のための情報を記録しておくようにする。
なお、本人確認の方法の一例として、日本ではマイナンバーカードを用いることがある。個別アドレスを作成する際に、マイナンバーカードの認証を行うと同時に個人情報を読み込み、読み込んだ個人情報を暗号化してブロックチェーン内に記録するようにする。
そして、高額送金や国外送金は、これら本人確認済のアドレス間でのみ可能とし、当該高額送金や国外送金に伴うデジタル資産の保有量に関するデータの変更情報はブロックチェーン内に記録されるようにする。
【0067】
3-2.法制の異なる複数国(又は国家共同体)でのトークンの移動に関する考察、検討(プライベート型チェーンに設定するプラネット番号のネーミング(ID)のコード化)
ここで、本件発明者は、法制の異なる複数国(又は国家共同体)でのトークンの移動に関し、次の点について考察、検討を重ねた。
まず、前提として法単位(国(又は国家共同体)単位)でプライベート型チェーンが管理されるようにする。国際送金の場合、夫々異なる法律で管理されるプライベート型チェーンの間でデータの移動を行うことになる。
プライベート型チェーンにおいては、同一の国(又は国家共同体)内で複数のプラネットを設定するのが好ましいと考えられる。その理由はデータ更新時間の短縮のために、プラネットを構成するコンセンサスノードの数の上限が発生してしまうためである。
より詳しくは、プラネットを構成する夫々のコンセンサスノードでデータを同期管理することから、データ記録部となるコンセンサスノードの数が増えるほど処理能力が下がる傾向にある。そのため、ある一定数を超えるコンセンサスノード数やアドレス数の制限をかけることになる。
そうすると、法単位(国(又は国家共同体)単位)で管理するプライベート型チェーンのプラネットが複数になり、プラネット間でのデータの移動が必要になる。
【0068】
そこで、本件発明者は、まず、夫々のプラネットのネーミング(ID)として、国(又は国家共同体)の識別やプラネット番号などについてのルールを定めてコード化し、コード化したID内の所定情報に基づいて、プラネット間でのデータの移動を行うようにすることを考えた。
【0069】
3-3.プラネットのコード化の一例
ここで、プラネットのコード化の例を概念的に説明する。
【0070】
コードには、例えば、半角英数字の大文字小文字などを用いることができる想定とする。
例えば、プラネットのIDを構成する先頭2桁を、ブロックチェーン種別コード設定桁とする。ここでのブロックチェーン種別は、プライベート型、パブリック型といったブロックチェーンのタイプの他、種類が同じ(例えば、プライベート型)であって、構成するデータ構造の異なるブロックチェーンを区別するための識別データを意味する。
これは、タイプは同じプライベート型であっても、ブロックチェーンを構築するメーカ-により、データ構造が異なることによる。
そこで、本件発明者は、例えば、タイプは同じプライベート型であっても、構成するデータ構造の異なることによりブロックチェーンの種別が異なる場合、送り先の当該プラネットのIDを構成する当該桁(ここでは、先頭2桁)のブロックチェーン種別のデータ構造への変換機能によりデータ構造を変換することで、データ構造の異なるブロックチェーン間であってもデータの移動処理が可能となるようにすることを考えた。
また、例えば、プラネットのIDを構成する次の2桁(先頭から3、4桁目)を国(又は国家共同体)(法制)を識別するための国別コード設定桁とする。
また、例えば、プラネットのIDを構成するさらに次の2桁(先頭から5、6桁目)を、当該国(又は国家共同体)内のプライベート型チェーンに備わるプラネットの連番コード設定桁とする。
また、例えば、プラネットのIDを構成するさらに次の1桁(先頭から7桁目)のコードを、本人確認の処理状態(例えば、“1”:処理済、“0”:未処理)を示す本人確認処理フラグ設定桁とする。
IDを構成する最後(ここでは、先頭から8桁目以降)の数桁の桁位置にプラネット単位でのアドレスの個別番号設定桁が続くようにする。
また、本件発明者は、複数のプラネットを繋いで処理を行うスマートコントラクトが複数存在し、夫々のスマートコントラクトは独立してパラレルにタスクを処理するようにすることを考えた。
【0071】
3-4.国内間のデータの移動についての処理の場合
上述のようにコード化したID内の所定情報に基づく、国内のプラネット間でのデータの移動について図50を用いて説明する。
同一国(又は国家共同体)内における所定プラネット(例えば、プラネットP1、プラネットの連番コード“01”)の送り元の個別アドレス(例えば、“111”)から他のプラネット(例えば、プラネットP4、プラネットの連番コード“04”)の送り先の個別アドレス(例えば、“222”)への送金などのデータの移動についての依頼があったとき、依頼に対し、プラネット(ここでは、プラネットP2、プラネットP4)に接続されているいずれかのスマートコントラクト(例えば、スマートコントラクト-1)が処理を受け持つ。すると、他のスマートコントラクト(例えば、スマートコントラクト-2)は処理ができないように、当該データの移動の依頼(ブロックチェーンに記録されたトランザクション)はロックされる(例えば、トランザクションのデータに、処理を受け持ったスマートコントラクトの番号がつく)ようにすることを考えた。
【0072】
3-5.国際間や高額のデータの移動についての処理の場合
また、コード化したID内の所定情報に基づく、国際間や高額のデータの移動についての処理の場合は、次のようにすることを考えた。
処理を受け持った当該スマートコントラクトは、送り元と送り先双方のアドレスを有するプラネットのIDにおける本人確認の処理状態フラグ設定桁(例えば、先頭から7桁目)を参照し、送り元と送り先双方の本人確認の処理状態フラグ設定桁が、共に本人確認が処理済であるか否か(例えば、“1”か“0”)を確認する。
そして、本人確認が未処理(例えば、“0”)の場合は、エラーとする。
また、本人確認が処理済(例えば、“1”)の場合は、さらに、プラネットのIDにおける国別コード設定桁(例えば、先頭から3、4桁目)を参照し、送り元、送り先の国を特定するとともに、当該国の法において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国の法の定めに違反しているか否かをチェックする。そして、送金量(金額)が当該国の法で定めた量を超える場合もエラーとする。
このように、国際間や高額のデータの移動についての処理の場合は、当該本人確認機能とともに、上述のような検査機能を併せ持つようにし、検査機能は、さらに、例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、送金に関して疑わしいデータを集計し、集計したデータを別途更なる検査に用いることも可能となるようにする。
送り元と送り先双方のアドレスにおける本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合は、移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方のプラネット内のアドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方のプラネット内のアドレスに記録するようにする。
【0073】
なお、このようなデータの移動の処理方法は、デジタル証券(ST類)の決済に限るものではなく、広い範囲の決済に適用可能であると考えられる。
例えば、資産価値を有するデジタル資産として、通貨的なもの、商品的なもの、証券的なものを、本件提案において移動可能な(銘柄)データとして扱うことができると考えられる。
各アドレスにおけるデジタル資産は、上述の注文管理機能を介して銘柄単位に数量を管理するようにする。
また、注文管理機能は、管理対象のデジタル資産がデジタル証券(ST類)である場合、各アドレスに対し、銘柄保有情報を照会し、指定日において配当や金利などを資産量に応じてデジタルトークンとして提供したり、特定数量以上のデジタル資産保有者には、保有量に応じた権利トークンを付与したりすることができるようにする。
また、当該処理は専用スマートコントラクトで行うようにする。
本件発明者が考察、検討する過程において導出したデジタル資産の移動のための処理方法は、特に、本人確認及び当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従ったチェック付きで送金処理を実用化するものであり、プラネットを複数設定することによって、処理性能を維持しつつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った高度なコンプライアンス機能を実装する点に特徴があると考えられる。
【0074】
3-6.国際間や高額のデジタル資産の移動のための処理の具体例
次に、価値を有するデジタル資産の国際的な移動を実現するための具体的な形態を示す。各国(又は国家共同体)の法枠内で(スマートコントラクトが作動し得る)ドメインの範囲を固定し、各国(又は国家共同体)の法枠を超える処理を、外為スマートコントラクトを介して調整する。
図51は日本・米国・EUの3拠点についての価値を有するデジタル資産の移動処理を行うための構成例を概念的に示す図である。
本件発明者が考察、検討する過程において導出した価値を有するデジタル資産の国際的な移動を実現するための構成においては、世界各国の法律に対処し、非常に広い範囲での価値を有するデジタル資産の国際的な移動サービスを実現することができるようにする。
【0075】
例えば、日本法枠でのプラネットP12(プラネットの連番コード“12”)のアドレス(“111”)から米国法枠内でのプラネットP22(プラネットの連番コード“22”)のアドレス(“333”)への送金処理の場合は、処理を受け持った当該スマートコントラクト(例えば、スマートコントラクト-12)は、プラネットP22のIDにおける本人確認の処理状態フラグ設定桁(例えば、先頭から7桁目)を参照し、例えば、本人確認スマートコントラクトによる本人確認が処理済(“1”)であるか否かを確認し、本人確認が処理済である場合は、同時に、外為対応スマートコントラクト-1または外為対応スマートコントラクト-2が作動し、外為法(外国為替及び外国貿易法)による法規制(出金額上限、その他で、国家(又は国家共同体)間の法制上の問題を吸収・対応したもの)をクリアするようにする。
このように、各国(又は国家共同体)の法枠内でドメインを管理(各プラネットはプライベートチェーンにおいて複数設定)し、ドメイン内の処理は当該国(又は国家共同体)の法枠に準拠した対応とする。
この送金は通貨だけではなく、デジタル資産全般に対して実行可能であると考えられる。
各プラネットは、例えば、プライベート型チェーンのコンセンサスノードにソフトウェアで構築された複数の仮想ノードが設けられ、夫々の仮想ノードに、一般的な権限に加えて全物理ノードの運用権限が設けられ、夫々の仮想ノードに、一般的な権限に加えて全物理ノードの運用権限が付与されて、2階層の権限を備えた仮想コンソ-シアム型チェーンなど、物理ノードに対応する、上位階層のアプリケーションノードが複数設けられ、複数のアプリケーションノードでコンソーシアム的な運用を行うように構成する。
【0076】
なお、プラネット間でのデータの移動においては、各国の各プラネットのアドレス情報(個別アドレスを含むコード化されたID)をインデックス情報としてまとめるとともに、まとめたインデックス情報が、各プラネットに配信され、各プラネット内で記録されるようにする。
そして、プラネット間のデータ移動において、相手先を見つける場合、当該インデックスを用い、相手先のプロセス(スマートコントラクト)にアクセスし、相手先のプラネットで管理されているIDであるかを確認し、相手先のプラネットにおいて該当するIDが存在する場合に、双方のブロックチェーンでデータの移動処理(データの修正記録など)を行うようにする。
【0077】
また、上述した、各々の金融機関の対当処理機能(約定先探索用スマートコントラクト、約定制御用スマートコントラクト、約定用スマートコントラクト)が、非公開共有情報保管用スマートコントラクトが保管するIOI(取引意思表示)の非公開共有情報を共有し、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関の探索(IOI(取引意思表示)の問い合わせ)に対して注文についての約定可否を返すような発行済ST類の取引もドメイン内で処理するが、取引相手として外国資本の参加が想定される。
そして、取引相手が外国資本である場合、国際間送金や、取引でのトークンの移動を行うに際し、上述のような当該国(又は国家共同体)の法規制に対処するコンプライアンス機能の実装が求められると考えられる。
【0078】
3-7.価値を有するデジタル資産の国際的な移動にパブリック型チェーンを用いる場合
なお、パブリック型チェーンでは、例えば、図52に示すように、ブロックチェーンのデータを世界で共有化するため、上記のような各国(又は国家共同体)の法枠で(スマートコントラクトが作動し得る)ドメインの範囲を固定し、各国(又は国家共同体)の法枠を超える処理を、外為スマートコントラクトを介して調整するように構成することが難しく、各国(又は国家共同体)における法規制の違いを明確に分けることが難しい。
特に、リアル(実物)資産を担保としたデジタル資産の移動サービスに用いる場合は、当該国(又は国家共同体)の法規制への対処が難しいと考えられる。
【0079】
本件発明者は、このような考察、検討を重ねた末、本発明のデジタル資産の移動処理システム、及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムを導出するに至った。
【0080】
本発明のデジタル資産の移動処理システムは、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、価値を有するデジタル資産の移動処理システムであって、法制の異なる国(又は国家共同体)の法枠ごとに設けられた、複数ノードを管理する単位をなす、複数のプラネットからなる、少なくとも一つのプライベート型チェーンと、夫々の前記プラネットにおいて、ブロックチェーンのタイプやデータ構造を識別するための種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)を識別するための国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、同一の前記プライベート型チェーンにおける前記プラネットの連番を示す連番コード設定桁、当該デジタル資産の取引における顧客についての本人確認の処理状態を示す本人確認処理フラグ設定桁、前記プラネット単位での前記顧客の個別アドレスを示す個別アドレス設定桁を有してなるコード化されたIDを、自己のプラネットに紐づけられたIDとして作成する機能を有する、プラネットID作成用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記プラネットID作成用スマートコントラクトにより作成された、複数のIDをインデックス化する機能を有する、IDインデックス化用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記IDインデックス化用スマートコントラクトによりインデックス化された、ID群を第1の所定の記録領域に記録する機能を有する、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第1の所定の記録領域に記録されている、インデックス化されたID群を他の各プラネットに配信する機能を有する、インデックス化ID群配信用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記インデックス化ID群配信用スマートコントラクトにより配信された、インデックス化されたID群を受信する機能を有する、インデックス化ID群受信用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記インデックス化ID群受信用スマートコントラクトにより受信された、インデックス化されたID群を、第2の所定の記録領域に記録する機能を有する、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第2の所定の記録領域に記録されている、データ送付先となるプラネットのIDのうち、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値を用いて、当該データ送付先となるプラネットにおける前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第1の所定の記録領域に記録されている、当該データ送付先となるプラネットのID群中における、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値と一致するプラネットのIDの有無をチェックする機能を有する、データ送付先ID照合用スマートコントラクトと、前記データ送付先ID照合用スマートコントラクトによるチェックの結果、当該データ送付先となるプラネットにおいて、前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより記録された、当該データ送付先となるプラネットのID群中において、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値と一致するプラネットのIDが有るとき、所定の前記プラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他の前記プラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動を依頼する機能を有する、デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットに接続し、所定の前記プラネットの所定アドレスから他の前記プラネットの所定アドレスへのデジタル資産の移動処理を行う機能を有する、複数のデジタル資産移動処理用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットに接続し、前記顧客の本人確認を行い、当該本人確認がOKの場合、当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている当該プラネットのIDにおける本人確認処理フラグ設定桁に本人確認処理済を示す値を設定する機能を有する、本人確認用スマートコントラクトと、を有し、いずれか一つの前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、前記デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトによる所定の前記プラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他の前記プラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動し、他の前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、当該デジタル資産の移動処理のための作動をロックされ、当該デジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動した前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁を参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁に、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁に、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有し、当該デジタル資産の送金が、当該国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当しない国内送金に該当する場合、又は国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する。
【0081】
本発明のデジタル資産の移動処理システムのように、法制の異なる国(又は国家共同体)の法枠ごとに、複数ノードを管理する単位をなす、複数のプラネットからなる、少なくとも一つのプライベート型チェーンが設けられた構成とすれば、プラネットにおいてデータを同期管理するコンセンサスノード数の増加を抑えて、処理能力の低下を抑え、データ更新時間を短縮することが可能となる。
【0082】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムのように、夫々の前記プラネットにおいて、ブロックチェーンのタイプやデータ構造を識別するための種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)を識別するための国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、同一の前記プライベート型チェーンにおける前記プラネットの連番を示す連番コード設定桁、当該デジタル資産の取引における顧客についての本人確認の処理状態を示す本人確認処理フラグ設定桁、前記プラネット単位での前記顧客の個別アドレスを示す個別アドレス設定桁を有してなるコード化されたIDを、自己のプラネットに紐づけられたIDとして作成する機能を有する、プラネットID作成用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記プラネットID作成用スマートコントラクトにより作成された、複数のIDをインデックス化する機能を有する、IDインデックス化用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記IDインデックス化用スマートコントラクトによりインデックス化された、ID群を第1の所定の記録領域に記録する機能を有する、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第1の所定の記録領域に記録されている、インデックス化されたID群を他の各プラネットに配信する機能を有する、インデックス化ID群配信用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記インデックス化ID群配信用スマートコントラクトにより配信された、インデックス化されたID群を受信する機能を有する、インデックス化ID群受信用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記インデックス化ID群受信用スマートコントラクトにより受信された、インデックス化されたID群を、第2の所定の記録領域に記録する機能を有する、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットにおいて、前記第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第2の所定の記録領域に記録されている、データ送付先となるプラネットのIDのうち、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値を用いて、当該データ送付先となるプラネットにおける前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより第1の所定の記録領域に記録されている、当該データ送付先となるプラネットのID群中における、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値と一致するプラネットのIDの有無をチェックする機能を有する、データ送付先ID照合用スマートコントラクトと、前記データ送付先ID照合用スマートコントラクトによるチェックの結果、当該データ送付先となるプラネットにおいて、前記第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクトにより記録された、当該データ送付先となるプラネットのID群中において、種別コード設定桁、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁、連番コード設定桁及び個別アドレス設定桁への設定値と一致するプラネットのIDが有るとき、所定の前記プラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他の前記プラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動を依頼する機能を有する、デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットに接続し、所定の前記プラネットの所定アドレスから他の前記プラネットの所定アドレスへのデジタル資産の移動処理を行う機能を有する、複数のデジタル資産移動処理用スマートコントラクトと、夫々の前記プラネットに接続し、前記顧客の本人確認を行い、当該本人確認がOKの場合、当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている当該プラネットのIDにおける本人確認処理フラグ設定桁に本人確認処理済を示す値を設定する機能を有する、本人確認用スマートコントラクトと、を有し、いずれか一つの前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、前記デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトによる所定の前記プラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他の前記プラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動し、他の前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、当該デジタル資産の移動処理のための作動をロックされ、当該デジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動した前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁を参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁に、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁に、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有し、当該デジタル資産の送金が、当該国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当しない国内送金に該当する場合、又は国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する構成とすれば、複数のプラネットを繋いで処理を行うスマートコントラクトが複数存在し、夫々のスマートコントラクトは独立してパラレルにタスクを処理するようにしながら、本人確認及び当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従ったチェック付きで高度なコンプライアンスを機能させた送金処理を行うことが可能となり、世界各国の法律に対処し、非常に広い範囲での価値を有するデジタル資産の国際的な移動サービスを実現することができる。
【0083】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムのように、プラネットに付加するネーミングとしてのIDについて、国(又は国家共同体)の識別やプラネット番号などについてのルールを定めてコード化し、コード化したID内の所定情報に基づいて、プラネット間でのデータの移動の制御を行うようにすれば、プラネット間でのデータの移動をし易くすることが可能となる。
【0084】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいては、好ましくは、各国(又は国家共同体)の法枠内で所定のスマートコントラクトが作動し得る(ドメインの)範囲が固定されるとともに、各国(又は国家共同体)の法枠内で作動する所定のスマートコントラクトと接続する外国為替調整用スマートコントラクトを備え、各国(又は国家共同体)の法枠を超えるデジタル資産の移動に伴う処理を、前記外国為替調整用スマートコントラクトを介して調整するようにする。
このようにすれば、国際間でのデータの移動をし易くすることが可能となる。
【0085】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいては、好ましくは、前記所定のスマートコントラクトは、本人確認用スマートコントラクトと、前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトのうちの、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁に当該顧客の個別アドレスが設定されている前記プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁に、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁を参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁の値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁を参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁に、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有するスマートコントラクトからなり、前記外国為替調整用スマートコントラクトは、前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトのうちの、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁に、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する機能を少なくとも有するスマートコントラクトからなる。
このようにすれば、国際間でのデータの移動をし易くするための外国為替調整用スマートコントラクトの処理機能を具現化することが可能となる。
【0086】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいては、好ましくは、前記外国為替調整用スマートコントラクトは、送り元のデジタル資産の価格を送り先の国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換する機能をさらに有する。
このようにすれば、法制の異なる国(又は国家共同体)間におけるデジタル資産の取引に対応することが可能となる。
【0087】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムは、上記いずれかの発明のデジタル資産の移動処理システムに備わり、所定銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する機能を有する約定用スマートコントラクトと、前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文のブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトの探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類などのデジタル資産との即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクトと、を有する。
【0088】
本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムのように、所定銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、を有した構成にすれば、流動性が低い小規模で直接金融的な個別不動産などをみなし有価証券としてデジタル化したタイプのST類であっても、取引価格の設定において、ミスプライス(適正価格からの乖離)が出難くなり、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことが可能となる。また、各顧客が取引を所望する銘柄のレートを問い合わせたときにのみ提示することで、顧客は妥当な取引価格を得ることが可能となる。また、取引市場に回送しないので、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率を下げずに済み、また、取引市場に上場するためのコストが不要で、顧客の取引に要するコストも低減することが可能となる。加えて、上記本発明のデジタル資産の移動処理システムと同様の構成を備えるようにすれば、取引相手が外国資本である場合、国際間送金や、取引でのトークンの移動を行うに際し、当該国(又は国家共同体)の法規制に対処することが可能となる。
【0089】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムのように、前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトの探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、を有した構成にすれば、約定率を上げることが可能となる。
【0090】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムのように、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類などのデジタル資産との即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクトを有した構成にすれば、リアルタイムにST類とデジタル通貨の取引が可能になり、顧客に対してデジタル資産を即時出庫することができ、流動性の低いST類について妥当性のある取引価格を導出し、リアルタイムに決済することが可能となる。
【0091】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおいては、好ましくは、前記約定先探索用スマートコントラクトが約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索したとき、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが保管する各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報の中で、対当する銘柄は無いが、類似銘柄で対当し得る場合、類似銘柄と対当させる銘柄の生成を行い、約定を誘導する流動性調整機能を有する流動性調整用スマートコントラクトをさらに有する。
このようにすれば、流動性が低いST類などのデジタル資産の約定を成立させ易くすることが可能となる。
【0092】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおいては、好ましくは、前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムは、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられ、一つの国(又は国家共同体)の前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムに設けられた前記基準レート生成用スマートコントラクトは、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、他国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記外国為替調整用スマートコントラクトにより当該国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換された当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する。
このようにすれば、法制の異なる複数国(又は国家共同体)間において、流動性の低いデジタル資産の公正な取引を行うことが可能となる。
【0093】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおいては、好ましくは、一つの国(又は国家共同体)の前記発行済ST類などのデジタル資産の取引システムに設けられた前記約定先探索用スマートコントラクトは、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)及び他国(又は国家共同体)に設けられた前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)に設けられた前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレート及び当該他国(又は国家共同体)に設けられた前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する。
このようにすれば、法制の異なる複数国(又は国家共同体)間において、流動性が低いST類などのデジタル資産を約定し易くすることが可能となる。
【0094】
このため、本発明によれば、価値を有するデジタル資産の取引を、処理性能を維持し、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った高度なコンプライアンスに対処して、国内外に及ぶ広い範囲で円滑に行うことができ、加えて、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類などのデジタル資産の公正な取引を行うことの可能なデジタル資産の移動処理システム、及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムが得られる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行うこととする。
【0095】
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係るデジタル資産の移動処理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。図2図1のデジタル資産の移動処理システムに設けられた各々のプライベート型チェーンを構成する夫々のプラネットに備わるスマートコントラクトを概略的に示す説明図である。
第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1は、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築され、例えば、図1に示すように、法制の異なる国(又は国家共同体)の法枠ごとに設けられた、複数ノードを管理する単位をなす、複数のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)で構成された、少なくとも一つのプライベート型チェーンと、複数のデジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)と、複数の本人確認用スマートコントラクト121~m(但し、mは2以上の整数)を有している。各プラネット101~n(但し、nは2以上の整数)は、例えば、図2に示すように、プラネットID作成用スマートコントラクト13と、IDインデックス化用スマートコントラクト14と、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15と、インデックス化ID群配信用スマートコントラクト16と、インデックス化ID群受信用スマートコントラクト17と、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト18と、データ送付先ID照合用スマートコントラクト19と、デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト20を有している。
【0096】
プラネットID作成用スマートコントラクト13
プラネットID作成用スマートコントラクト13は、例えば、図3に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、コード化されたIDを、自己のプラネットに紐づけられたIDとして作成する機能を有して構成されている。
【0097】
プラネットのID
夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)には、コード化されたIDが紐づけられている。
プラネット101~n(但し、nは2以上の整数)のIDは、例えば、図4に示すように、ブロックチェーン種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C、本人確認処理フラグ設定桁D、個別アドレス設定桁Eを有している。
【0098】
ブロックチェーン種別コード設定桁Aは、プラネットのIDを構成する先頭2桁に設けられている。ブロックチェーン種別コード設定桁Aには、ブロックチェーンのタイプやデータ構造を識別するためのコードが設定される。ブロックチェーンは、タイプが同じ(例えば、プライベートチェーン)であっても、ブロックチェーンを構築するメーカ-ごとにデータ構造が異なる。データ構造が異なる場合、データを移動する際に、送り先のデータ構造に変換する必要が生じる。そこで、ブロックチェーンのタイプだけでなくデータ構造によって種別コードを異ならせている。
【0099】
国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bは、プラネットのIDを構成する次の2桁(先頭から3、4桁目)に設けられている。国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bには、国(又は国家共同体)(の法制)を識別するためのコードが設定される。
【0100】
連番コード設定桁Cは、プラネットのIDを構成するさらに次の2桁(先頭から5、6桁目)に設けられている。連番コード設定桁Cには、同一のプライベート型チェーンにおけるプラネットの連番を示すコードが設定される。
【0101】
本人確認処理フラグ設定桁Dは、プラネットのIDを構成するさらに次の1桁(先頭から7桁目)に設けられている。本人確認処理フラグ設定桁Dには、当該デジタル資産の取引における顧客についての本人確認の処理状態を示すフラグ(例えば、“1”:処理済、“0”:未処理)が設定される。
【0102】
個別アドレス設定桁Eは、IDを構成する最後(先頭から8桁目以降)の桁位置に設けられている。個別アドレス設定桁Eには、プラネット単位での顧客の個別アドレスが設定される。
そして、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)には、顧客の個別アドレスに対応して、複数のコード化されたIDが紐づけられている。
【0103】
IDインデックス化用スマートコントラクト14
IDインデックス化用スマートコントラクト14は、例えば、図5に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、プラネットID作成用スマートコントラクト13により作成された、複数のIDをインデックス化する機能を有して構成されている。
【0104】
第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15
第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15は、例えば、図6に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、IDインデックス化用スマートコントラクト14によりインデックス化された、ID群を第1の所定の記録領域に記録する機能を有して構成されている。
【0105】
インデックス化ID群配信用スマートコントラクト16
インデックス化ID群配信用スマートコントラクト16は、例えば、図7に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により第1の所定の記録領域に記録されている、インデックス化されたID群を他の各プラネットに配信する機能を有して構成されている。
【0106】
インデックス化ID群受信用スマートコントラクト17
インデックス化ID群受信用スマートコントラクト17は、例えば、図8に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、インデックス化ID群配信用スマートコントラクト16により配信された、インデックス化されたID群を受信する機能を有して構成されている。
【0107】
第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト18
第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト18は、例えば、図9に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、インデックス化ID群受信用スマートコントラクト17により受信された、インデックス化されたID群を、第2の所定の記録領域に記録する機能を有して構成されている。
【0108】
データ送付先ID照合用スマートコントラクト19
データ送付先ID照合用スマートコントラクト19は、例えば、図10に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト18により第2の所定の記録領域に記録されている、データ送付先となるプラネットのIDのうち、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値を用いて、当該データ送付先となるプラネットにおける第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により第1の所定の記録領域に記録されている、当該データ送付先となるプラネットのID群中における、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値と一致するプラネットのIDの有無をチェックする機能を有して構成されている。
【0109】
デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト20
デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト20は、例えば、図11に示すように、データ送付先ID照合用スマートコントラクト19によるチェックの結果、当該データ送付先となるプラネットにおいて、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により記録された、当該データ送付先となるプラネットのID群中において、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値と一致するプラネットのIDが有るとき、所定のプラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他のプラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動を依頼する機能を有して構成されている。
【0110】
デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11 1~m
デジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)は、例えば、図12に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)に接続し、所定のプラネットの所定アドレスから他のプラネットの所定アドレスへのデジタル資産の移動処理を行う機能を有して構成されている。
【0111】
詳しくは、夫々のデジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)は、いずれか一つのデジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、前記デジタル資産移動依頼用スマートコントラクトによる所定のプラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他のプラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動し、他のデジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、当該デジタル資産の移動処理のための作動をロックされるように構成されている。例えば、トランザクションのデータに、処理を受け持ったデジタル資産移動処理用スマートコントラクトの番号がつく。他のデジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、トランザクションのデータに処理を受け持ったデジタル資産移動処理用スマートコントラクトの番号がついている場合、作動しないように構成されている。
【0112】
そして、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)は、より詳細には、例えば、図13図15に示すように、次の機能を有して構成されている。
(11-1)当該デジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動した場合、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁Eに当該顧客の個別アドレスが設定されているプラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aを参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止する機能。
(11-2)当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bを参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックする機能。
(11-2-1)当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁Dを参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁Dに、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止する機能。
(11-2-2)当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁Dに、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックする機能。
(11-2-2-1)送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止する機能。
(11-2-2-2)さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能。
(11-3)当該デジタル資産の送金が、当該国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当しない国内送金に該当する場合、又は国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する機能。
【0113】
本人確認用スマートコントラクト12 1~m
本人確認用スマートコントラクト121~m(但し、mは2以上の整数)は、例えば、図16に示すように、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)に接続し、顧客の本人確認を行い、当該本人確認がOKの場合、当該顧客の個別アドレス設定桁Eに当該顧客の個別アドレスが設定されている当該プラネットのIDにおける本人確認処理フラグ設定桁Dに本人確認処理済を示す値を設定する機能を有している。
なお、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)においては、本人確認は、顧客が必要に応じて随時行われるものとする。
【0114】
外国為替調整用スマートコントラクト21 1~p
また、第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1は、各国(又は国家共同体)の法枠内で所定のスマートコントラクトが作動し得る(ドメインの)範囲が固定されるとともに、図1に示すように、各国(又は国家共同体)の法枠内で作動する所定のスマートコントラクトと接続する外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)を備え、各国(又は国家共同体)の法枠を超えるデジタル資産の移動に伴う処理を、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)を介して調整するように構成されている。
【0115】
より詳しくは、所定のスマートコントラクトは、例えば、図17に示すように、本人確認用スマートコントラクト121~m(但し、mは2以上の整数)と、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)のうちの、次の機能を有するスマートコントラクトで構成される。
・デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁Eに当該顧客の個別アドレスが設定されているプラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aを参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止する機能。
・当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bを参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックする機能。
・当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁Dを参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁Dに、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止する機能。
・さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能。
【0116】
また、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)は、例えば、図18に示すように、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)のうちの、次の機能を有するスマートコントラクトで構成されている。
・当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁Dに、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックする機能。
・送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止する機能。
・国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する機能。
【0117】
また、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)は、例えば、図19に示すように、送り元のデジタル資産の価格を送り先の国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換する機能をさらに有している。
【0118】
このように構成された第1実施形態のデジタル資産の移動処理システムを用いた処理の流れを説明する。
【0119】
デジタル資産の移動の前段階の処理
図20図21図22図1のデジタル資産の移動処理システムを用いたデジタル資産の移動の前段階の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図1のデジタル資産の移動処理システム1では、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、プラネットID作成用スマートコントラクト13が、ブロックチェーンのタイプやデータ構造を識別するための種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)を識別するための国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、同一のプライベート型チェーンにおけるプラネットの連番を示す連番コード設定桁C、当該デジタル資産の取引における顧客についての本人確認の処理状態を示す本人確認処理フラグ設定桁D、プラネット単位での顧客の個別アドレスを示す個別アドレス設定桁Eを有してなるコード化されたIDを、自己のプラネットに紐づけられたIDとして作成する。
次いで、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、IDインデックス化用スマートコントラクト14が、プラネットID作成用スマートコントラクト13により作成された、複数のIDをインデックス化する。
次いで、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15が、IDインデックス化用スマートコントラクト14によりインデックス化された、ID群を第1の所定の記録領域に記録する。
次いで、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、インデックス化ID群配信用スマートコントラクト16が、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により第1の所定の記録領域に記録されている、インデックス化されたID群を他の各プラネットに配信する。
【0120】
また、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、インデックス化ID群受信用スマートコントラクト17が、インデックス化ID群配信用スマートコントラクト16により配信された、インデックス化されたID群を受信する。
次いで、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト18が、インデックス化ID群受信用スマートコントラクト17により受信された、インデックス化されたID群を、第2の所定の記録領域に記録する。
【0121】
ここで、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、他のプラネットへデジタル資産の移動をする必要が生じた場合、データ送付先ID照合用スマートコントラクト19が、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト18により第2の所定の記録領域に記録されている、データ送付先となるプラネットのIDのうち、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値を用いて、当該データ送付先となるプラネットにおける第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により第1の所定の記録領域に記録されている、当該データ送付先となるプラネットのID群中における、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値と一致するプラネットのIDの有無をチェックする。
データ送付先ID照合用スマートコントラクト19によるチェックの結果、当該データ送付先となるプラネットにおいて、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により記録された、当該データ送付先となるプラネットのID群中において、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値と一致するプラネットのIDが有るとき、デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト20が、所定のプラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他のプラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動を依頼する。
【0122】
国内間のデジタル資産の移動についての処理の場合
図23図1のデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を同一国(又は国家共同体)内で移動する場合の処理に関連する構成部分を概略的に示す説明図、図24図1のデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を同一国(又は国家共同体)内で移動する場合の処理の流れの一部を概略的に示すフローチャート、図25図24に示す処理の流れの続きを概略的に示すフローチャートである。
図23の例では、プラネット10における送り元となる顧客の個別アドレス“001”から、プラネット10における送り先となる顧客の個別アドレス“150”へ法律で定められた高額送金に該当しないデジタル資産の移動の依頼があり、また、プラネット10における送り元となる顧客の個別アドレス“111”から、プラネット10における送り先となる顧客の個別アドレス“222”へ法律で定められた高額送金に該当するデジタル資産の移動の依頼があったものとする。また、プラネット10~10は、データ構造の同じプライベート型チェーンであるものとする。
【0123】
デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト20による所定のプラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他のプラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動の依頼があったときは、いずれか一つのデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)が作動し、他のデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、当該デジタル資産の移動処理のための作動をロックされる。
当該デジタル資産の移動処理のために作動したデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁Eに当該顧客の個別アドレスが設定されているプラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aを参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換する。なお、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとしてデジタル資産の移動処理を中止する。
【0124】
次に、当該デジタル資産の移動処理のために作動したデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bを参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックする。
そして、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁Dを参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁Dに、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止する。
一方、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁Dに、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックする。
そして、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止する。
さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する。
【0125】
図23の例において、送り元となる顧客の個別アドレス“001”に対応するプラネット10のIDは“1101010001”、送り先となる顧客の個別アドレス“150”に対応するプラネット10のIDは“1101030150”である。
IDの1、2桁目のブロックチェーン種別コード設定桁Aの値は、送り元と送り先のいずれもが“11”である。このため、作動したデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、互いにデータ構造の同じプライベート型チェーンであると認識し、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換する処理は行わない。また、IDの3、4桁目の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値は、送り元と送り先のいずれもが“01”であることから、同一国(又は国家共同体)内におけるデジタル資産の移動であると認識する。また、送り元と送り先のいずれもがA国であると認識する。また、IDの5、6桁目の連番コード設定桁Cの値は、送り元が“01”、送り先が“03”であることから、送り元がプラネット10、送り先がプラネット10であると認識する。
ここで、IDコード7桁目の本人確認フラグ設定桁Dの値は、送り元と送り先のいずれもが“0”(未処理)となっている。しかし、当該デジタル資産の移動は、法律で定められた高額送金に該当しないため、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、本人確認処理フラグ設定桁Dの参照は行わず、送金処理を中止しない。
【0126】
また、送り元となる顧客の個別アドレス“111”に対応するプラネット10のIDは“1101021111”、送り先となる顧客の個別アドレス“222”に対応するプラネット10のIDは“1101040222”である。
IDの1、2桁目のブロックチェーン種別コード設定桁Aの値は、送り元と送り先のいずれもが“11”である。このため、作動したデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、互いにデータ構造の同じプライベート型チェーンであると認識し、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換する処理は行わない。IDの3、4桁目の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値は、送り元と送り先のいずれもが“01”であることから、同一国(又は国家共同体)内におけるデジタル資産の移動であると認識する。また、送り元と送り先のいずれもがA国であると認識する。また、IDの5、6桁目の連番コード設定桁Cの値は、送り元が“02”、送り先が“04”であることから、送り元がプラネット10、送り先がプラネット10であると認識する。
ここで、ID7桁目の本人確認フラグ設定桁Dの値は、送り元が“1”(処理済)となっているが、送り先は“0”(未処理)となっている。しかるに、当該デジタル資産の移動は、法律で定められた高額送金に該当するため、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、本人確認処理フラグ設定桁の参照を行ない、送り先のプラネット10における本人確認エラーとして、送金処理を中止する。
【0127】
当該デジタル資産の送金が、当該国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当しない国内送金に該当する場合、又は国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、次に、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する。
【0128】
国際間のデジタル資産の移動についての処理の場合
図26図1のデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を複数国(又は国家共同体)間で移動する場合の処理に関連する構成部分を概略的に示す説明図、図27図1のデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を複数国(又は国家共同体)間で移動する場合において特有の処理の流れを概略的に示すフローチャートである。なお、図24図25に示したデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を同一国(又は国家共同体)内で移動する場合の処理の流れと同じ部分については、図示を省略する。
図26の例では、A国のプラネット10における送り元となる顧客の個別アドレス“111”から、B国のプラネット10における送り先となる顧客の個別アドレス“300”へデジタル資産の移動の依頼があったものとする。また、A国のプラネット10~10で構成されるブロックチェーンと、B国のプラネット10~10で構成されるブロックチェーンとは、データ構造の異なるプライベート型チェーンであるものとする。
【0129】
デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト20による所定のプラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他のプラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動の依頼があったときは、いずれか一つのデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)が作動し、他のデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、当該デジタル資産の移動処理のための作動をロックされる。
当該デジタル資産の移動処理のために作動したデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁Eに当該顧客の個別アドレスが設定されているプラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aを参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換する。なお、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとしてデジタル資産の移動処理を中止する。
【0130】
次に、当該デジタル資産の移動処理のために作動したデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bを参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックする。
そして、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁Dを参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁Dに、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止する。
ここまでの処理は、図24図25に示したデジタル資産の移動処理システムを用いてデジタル資産を同一国(又は国家共同体)内で移動する場合の処理と略同じである。
【0131】
図26の例において、送り元となるA国の顧客の個別アドレス“111”に対応するプラネット10のIDは“1101021111”、送り先となるB国の顧客の個別アドレス“300”に対応するプラネット10のIDは“2202011300”である。
IDの1、2桁目のブロックチェーン種別コード設定桁Aの値は、送り元が“11”、送り先が“22”である。このため、作動したデジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、互いにデータ構造の異なるプライベート型チェーンであると認識し、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換する処理を行う。また、IDの3、4桁目の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値は、送り元が“01”、送り先が“02”であることから、複数国(又は国家共同体)間でのデジタル資産の移動であると認識する。また、送り元がA国、送り先がB国であると認識する。また、IDの5、6桁目の連番コード設定桁Cの値は、送り元が“02”、送り先が“01”であることから、送り元がA国のプラネット10、送り先がB国のプラネット10であると認識する。
ここで、IDコード7桁目の本人確認フラグ設定桁Dは、送り元と送り先のいずれもが“1”(処理済)となっている。このため、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)は、本人確認処理フラグ設定桁Dの参照を行なうが、送金処理を中止しない。
【0132】
また、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁Dに、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する。
【0133】
また、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁Dに、処理済を示す値が設定されている場合は、いずれか一つの外国為替調整用スマートコントラクト(例えば、外国為替調整用スマートコントラクト21)が作動し、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト(例えば、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト11)により行われてきた処理を引き継ぐ。
作動した外国為替調整用スマートコントラクト(例えば、外国為替調整用スマートコントラクト21)は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反していないか否かをチェックする。
そして、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律が定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止する。
【0134】
また、作動した外国為替調整用スマートコントラクト(例えば、外国為替調整用スマートコントラクト21)は、国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する。
【0135】
第2実施形態
図28は本発明の第2実施形態に係るデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムのデジタル資産の移動処理システムにおける構築範囲を概念的に示す説明図、図29は本発明の第2実施形態に係るデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2は、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられ、図1に示した第1実施形態に係るデジタル資産の移動処理システム1の構成に加えて、独自レート作成用スマートコントラクト31と、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32と、基準レート生成用スマートコントラクト33と、基準レート提示用スマートコントラクト34と、約定用スマートコントラクト35と、約定先探索用スマートコントラクト36と、約定制御用スマートコントラクト37と、決済用スマートコントラクト38と流動性調整用スマートコントラクト39と、を有して構築されている。
【0136】
独自レート作成用スマートコントラクト31
独自レート作成用スマートコントラクト31は、例えば、図30に示すように、所定銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関60(1)に対し顧客70(1,x)(但し、xは正の整数)からの注文があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における共通の顧客のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有して構成されている。
【0137】
非公開共有情報保管用スマートコントラクト32
非公開共有情報保管用スマートコントラクト32は、例えば、図31に示すように、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有して構成されている。
【0138】
基準レート生成用スマートコントラクト33
基準レート生成用スマートコントラクト33は、例えば、図32に示すように、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有して構成されている。
【0139】
そして、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられた発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2においては、一つの国(又は国家共同体)の発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2に設けられた基準レート生成用スマートコントラクト33は、当該国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、他国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)により当該国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換された当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有して構成されている。
【0140】
基準レート提示用スマートコントラクト34
基準レート提示用スマートコントラクト34は、例えば、図33に示すように、基準レート生成用スマートコントラクト33が生成した所定銘柄についてのレートを非公開情報として保管するとともに、顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、基準レート生成用スマートコントラクト33が生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)に提示する機能を有して構成されている。
【0141】
約定用スマートコントラクト35
約定用スマートコントラクト35は、例えば、図34に示すように、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する機能を有して構成されている。
【0142】
約定先探索用スマートコントラクト36
約定先探索用スマートコントラクト36は、例えば、図35に示すように、約定用スマートコントラクト35が、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)における所定銘柄についての自社レートで顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)を探索する機能を有して構成されている。
【0143】
そして、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられた発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2においては、一つの国(又は国家共同体)の発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2に設けられた約定先探索用スマートコントラクト36は、当該国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)及び他国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)に設けられた独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレート及び当該他国(又は国家共同体)に設けられた独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)を探索する機能を有して構成されている。
【0144】
約定制御用スマートコントラクト37
約定制御用スマートコントラクト37は、例えば、図36に示すように、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)の顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、約定先探索用スマートコントラクト36の探索した他のマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定用スマートコントラクト35に当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有して構成されている。
【0145】
決済用スマートコントラクト38
決済用スマートコントラクト38は、例えば、図37に示すように、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)の顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上n以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行う機能を有して構成されている。
【0146】
流動性調整用スマートコントラクト39
流動性調整用スマートコントラクト39は、例えば、図38に示すように、約定先探索用スマートコントラクト36が約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索したとき、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が保管する各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報の中で、対当する銘柄は無いが、類似銘柄で対当し得る場合、類似銘柄と対当させる銘柄の生成を行い、約定を誘導する流動性調整機能を有して構成されている。
【0147】
このように構成された本実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2を用いた、基本的な処理の流れを図39図42を用いて説明する。なお、図42図29の発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2を用いた、基本的な処理の流れの全体を概略的に示すブロック図である。
【0148】
(S1)独自レートの作成(図39
独自レート作成用スマートコントラクト31は、所定銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関60(1)に対し顧客70(1,x)(但し、xは正の整数)からの注文があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における共通の顧客のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する。
【0149】
(S2)非公開情報の共有(図39
非公開共有情報保管用スマートコントラクト32は、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)が把握しない非公開方式の共有情報として保管する。
【0150】
(S3)基準レートの生成(図40
基準レート生成用スマートコントラクト33は、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する。
そして、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられた発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2においては、一つの国(又は国家共同体)の発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2に設けられた基準レート生成用スマートコントラクト33は、当該国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、他国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)により当該国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換された当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する。
【0151】
(S4)基準レートの提示(図40)
基準レート提示用スマートコントラクト34は、基準レート生成用スマートコントラクト33が生成した所定銘柄についてのレートを非公開情報として保管するとともに、顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、基準レート生成用スマートコントラクト33が生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)に提示する。
【0152】
(S5)約定(図40
約定用スマートコントラクト35は、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する。
【0153】
(S6)約定先の探索(図41
約定先探索用スマートコントラクト36は、約定用スマートコントラクト35が、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)における所定銘柄についての自社レートで顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)を探索する。
そして、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられた発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2においては、一つの国(又は国家共同体)の発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2に設けられた約定先探索用スマートコントラクト36は、当該国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)及び他国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)に設けられた独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレート及び当該他国(又は国家共同体)に設けられた独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)を探索する。
【0154】
(S7)探索先レートでの約定(図41
約定制御用スマートコントラクト37は、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)の顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、約定先探索用スマートコントラクト36の探索した他のマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定用スマートコントラクト35に当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる。
【0155】
(S8)決済(図41
決済用スマートコントラクト38は、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)の顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行う。
なお、決済によるデジタル資産の移動は、図1図27を用いて説明した第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1と略同様に行う。
【0156】
(S9)その他の処理:流動性の調整(図示省略)
なお、約定先探索用スマートコントラクト36が約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索したとき、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が保管する各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報の中で、対当する銘柄は無いが、類似銘柄で対当し得る場合、流動性調整用スマートコントラクト39は、類似銘柄と対当させる銘柄の生成を行い、約定を誘導する。
例えば、電子債権型STなど、金利とリスク量の関係を調整できるST類があるものとする。このようなST類については、レンディング機能とCDS(Credit default swap:投資対象の破綻リスクに備えた保険機能を有する金融派生商品)を用いることで、類似銘柄における約定行為を実施できるようにする。
【0157】
例として、第1の金融機関の注文取引機能にA銘柄(リスク量3)の買い注文として、注文数量2、注文価格104(通常は買いレート101.5、売りレート105程度であり、注文価格104の買い注文に対当する売り注文が無いものとする)のリーブオーダーがあるものとする。また、第3の金融機関の注文取引機能にB銘柄(リスク量2)の売り注文として、注文数量2、注文価格98(通常は買いレート97、売りレート100程度であり、注文価格98の売り注文に対当する買い注文が無いものとする)のリーブオーダーがあるものとする。
この場合、第1の金融機関の注文取引機能はA銘柄についての注文数量2、注文価格104の売り注文が無いか非公開共有情報を探索する。
また、第3の金融機関の注文取引機能はB銘柄についての注文数量2、注文価格98の買い注文が無いか非公開共有情報を探索する。
この状態では対当できないが、例えば、第4の金融機関の注文取引機能では、CDS(B銘柄のデフォルトヘッジ)の手数料を数量1当たり1.5で設定できるのであれば、A銘柄とB銘柄の価格差は6であるため、数量1当たり保険料(ヘッジ分)1.5を差し引いた4.5の利益が見込まれる。また、A銘柄をレンディングにより数量1当たり30日間2.0のコスト(30日以内でポジションを解消する想定)で調達できるのであれば、CDSとレンディングを用い、A銘柄をレンディングにより調達して注文価格104で売り、B銘柄を注文価格98で買う、というポジションを持つようにする。
【0158】
独自レート作成、非公開方式で共有する取引情報、基準レート生成、約定可能な相手先の探索等の処理の具体例
ここで、独自レート作成用スマートコントラクト31による各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートの作成、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32により各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)が把握しない非公開方式で共有する取引情報、基準レート生成用スマートコントラクト33が算出する基準となる妥当性のある当該銘柄についてのレート、約定先探索用スマートコントラクト36による約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)の探索についての具体例を、表を用いて説明する。
なお、説明の便宜上、マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)は4つ、取引対象となる銘柄は1つとする。また、レートの算出に際しては、顧客の信用度等は考慮しないこととし、リスク分の手数料は整数で示すこととする。さらに、注文価格やレートの単位は省略する。
【0159】
前提として、マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)の夫々に対する、顧客からの、売り及び買いの注文(リーブオーダー)が、表1に示すものであったとする。
【表1】
マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)は、これらのマーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)に夫々固有の取引情報についてのみ認識している。
表1の例では、顧客からのST類の売り及び買いの注文(リーブオーダー)が、マーケットメイクを行う金融機関60(1)、60(3)、60(4)に対してあり、マーケットメイクを行う金融機関60(2)にはない。
マーケットメイクを行う金融機関60(1)に対しては、注文価格98、注文数量1の売り注文があり、マーケットメイクを行う金融機関60(1)内において、約定価格98で約定が成立している。また、注文価格104、注文数量1の買い注文があるが、未約定となっている。
マーケットメイクを行う金融機関60(3)に対しては、注文価格95、注文数量1の売り注文があり、未約定となっている。また、注文価格103、注文数量1の買い注文があり、マーケットメイクを行う金融機関60(3)内において、約定価格103で約定が成立している。
マーケットメイクを行う金融機関60(4)に対しては、注文価格99、注文数量1の売り注文があり、マーケットメイクを行う金融機関60(4)内において、約定価格99で約定が成立している。また、注文価格105、注文数量1の買い注文があるが、未約定となっている。
【0160】
ここで、独自レート作成用スマートコントラクト31は、一つのマーケットメイクを行う金融機関60(1)、60(3)または60(4)に対し顧客70(1,1)、70(3,1)または70(4,1)からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)における共通の顧客のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、例えば、最良注文(最も安い売り注文、最も高い買い注文)となる当該銘柄についてのリーブオーダーの価格に各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)における夫々自己のリスク分を手数料として上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)して、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する。非公開共有情報保管用スマートコントラクト32は、表2に示すように、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する。
【0161】
【表2】
本例では、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーにおいて、約定となっているのは、注文価格98の売り注文、注文価格99の売り注文、注文価格103の買い注文であることから、最良注文は、注文価格98の売り注文と、注文価格103の買い注文となる。
なお、本例では、マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)の夫々における、上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)すべき自己のリスク分としての手数料を、夫々4、1、2、3とする。
マーケットメイクを行う金融機関60(1)の独自レートは、
・売りレート:103+4=107
・買いレート:98-4=94
マーケットメイクを行う金融機関60(2)の独自レートは、
・売りレート:103+1=104
・買いレート:98-1=97
マーケットメイクを行う金融機関60(3)の独自レートは、
・売りレート:103+2=105
・買いレート:98-2=96
マーケットメイクを行う金融機関60(4)の独自レートは、
・売りレート:103+3=106
・買いレート:98-3=95
となる。
ここで、顧客にとって最も有利となるレートが妥当性のある基準レートとなる。本例では、基準レートは、表3に示すように、売りレート104、買いレート97となる。
基準レート提示用スマートコントラクト34は、基準レート生成用スマートコントラクト33が生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、基準レートを当該顧客に提示する。提示を受けた顧客は、基準レートを参考にして、リーブオーダーを行うようになる。
【0162】
【表3】
【0163】
約定先探索用スマートコントラクト36は、約定用スマートコントラクト35が、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(4)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関60を探索する。
本例では、表1、表2に示すように、マーケットメイクを行う金融機関60(1)に対する顧客からの注文価格104の買い注文、マーケットメイクを行う金融機関60(3)に対する顧客からの注文価格95の売り注文、マーケットメイクを行う金融機関60(4)に対する顧客からの注文価格105の買い注文、が未約定となっている。
また、表2に示すように、独自レート作成用スマートコントラクト31が算出した独自レートは、
マーケットメイクを行う金融機関60(1)の独自レートは、
・売りレート:103+4=107
・買いレート:98-4=94
マーケットメイクを行う金融機関60(2)の独自レートは、
・売りレート:103+1=104
・買いレート:98-1=97
マーケットメイクを行う金融機関60(3)の独自レートは、
・売りレート:103+2=105
・買いレート:98-2=96
マーケットメイクを行う金融機関60(4)の独自レートは、
・売りレート:103+3=106
・買いレート:98-3=95
である。
そこで、約定先探索用スマートコントラクト36が探索した約定可能な相手先は、表4に示すように、
・金融機関60(1)に対する顧客からの注文価格104の買い注文の相手先:金融機関60(2)
・金融機関60(3)に対する顧客からの注文価格95の売り注文の相手先:金融機関60(2)、金融機関60(3)、金融機関60(4)
・金融機関60(4)に対する顧客からの注文価格105の買い注文の相手先:金融機関60(2)、金融機関60(3)
となる。
【0164】
【表4】
【0165】
約定制御用スマートコントラクト37は、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、約定先探索用スマートコントラクト36の探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定用スマートコントラクト35に当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる。
なお、表3の例では、金融機関60(1)に対する顧客からの注文価格104の買い注文の相手先が1つ(金融機関60(2))、金融機関60(3)に対する顧客からの注文価格95の売り注文の相手先が3つ(金融機関60(2)と、金融機関60(3)と、金融機関60(4))、金融機関60(4)に対する顧客からの注文価格105の買い注文の相手先が2つ(金融機関60(2)と、金融機関60(3))存在するが、対当する相手先が複数存在する場合は、約定用スマートコントラクト35による処理を受け付ける時間の早いいずれか一方を相手先として約定する。
【0166】
本実施形態の効果
第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1によれば、法制の異なる国(又は国家共同体)の法枠ごとに、複数ノードを管理する単位をなす、複数のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)からなる、少なくとも一つのプライベート型チェーンが設けられた構成としたので、プラネットにおいてデータを同期管理するコンセンサスノード数の増加を抑えて、処理能力の低下を抑え、データ更新時間を短縮することができる。
【0167】
また、第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1によれば、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、ブロックチェーンのタイプやデータ構造を識別するための種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)を識別するための国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、同一のプライベート型チェーンにおけるプラネットの連番を示す連番コード設定桁C、当該デジタル資産の取引における顧客についての本人確認の処理状態を示す本人確認処理フラグ設定桁D、プラネット単位での顧客の個別アドレスを示す個別アドレス設定桁Eを有してなるコード化されたIDを、自己のプラネットに紐づけられたIDとして作成する機能を有する、プラネットID作成用スマートコントラクト13と、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、プラネットID作成用スマートコントラクト13により作成された、複数のIDをインデックス化する機能を有する、IDインデックス化用スマートコントラクト14と、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、IDインデックス化用スマートコントラクト14によりインデックス化された、ID群を第1の所定の記録領域に記録する機能を有する、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15と、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により第1の所定の記録領域に記録されている、インデックス化されたID群を他の各プラネットに配信する機能を有する、インデックス化ID群配信用スマートコントラクト16と、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、インデックス化ID群配信用スマートコントラクト16により配信された、インデックス化されたID群を受信する機能を有する、インデックス化ID群受信用スマートコントラクト17と、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、インデックス化ID群受信用スマートコントラクト17により受信された、インデックス化されたID群を、第2の所定の記録領域に記録する機能を有する、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト18と、夫々のプラネット101~n(但し、nは2以上の整数)において、第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト18により第2の所定の記録領域に記録されている、データ送付先となるプラネットのIDのうち、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値を用いて、当該データ送付先となるプラネットにおける第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により第1の所定の記録領域に記録されている、当該データ送付先となるプラネットのID群中における、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値と一致するプラネットのIDの有無をチェックする機能を有する、データ送付先ID照合用スマートコントラクト19と、データ送付先ID照合用スマートコントラクト19によるチェックの結果、当該データ送付先となるプラネットにおいて、第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト15により記録された、当該データ送付先となるプラネットのID群中において、種別コード設定桁A、国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁B、連番コード設定桁C及び個別アドレス設定桁Eへの設定値と一致するプラネットのIDが有るとき、所定のプラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他のプラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動を依頼する機能を有する、デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト20と、夫々のプラネットに接続し、所定のプラネットの所定アドレスから他のプラネットの所定アドレスへのデジタル資産の移動処理を行う機能を有する、複数のデジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)と、夫々のプラネットに接続し、顧客の本人確認を行い、当該本人確認がOKの場合、当該顧客の個別アドレス設定桁Eに当該顧客の個別アドレスが設定されている当該プラネットのIDにおける本人確認処理フラグ設定桁Dに本人確認処理済を示す値を設定する機能を有する、本人確認用スマートコントラクト121~m(但し、mは2以上の整数)と、を有し、いずれか一つのデジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト20による所定のプラネットの送り元となる顧客の個別アドレスから他のプラネットの送り先となる顧客の個別アドレスへのデジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動し、他のデジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、当該デジタル資産の移動処理のための作動をロックされ、当該デジタル資産の移動の依頼に対し、当該デジタル資産の移動処理のために作動した前記デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁Eに当該顧客の個別アドレスが設定されているプラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aを参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bを参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁Dを参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁Dに、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁Dに、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有し、当該デジタル資産の送金が、当該国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当しない国内送金に該当する場合、又は国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する構成としたので、複数のプラネットを繋いで処理を行うスマートコントラクトが複数存在し、夫々のスマートコントラクトは独立してパラレルにタスクを処理するようにしながら、本人確認及び当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従ったチェック付きで高度なコンプライアンスを機能させた送金処理を行うことが可能となり、世界各国の法律に対処し、非常に広い範囲での価値を有するデジタル資産の国際的な移動サービスを実現することができる。
【0168】
また、第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1によれば、プラネットに付加するネーミングとしてのIDについて、国(又は国家共同体)の識別やプラネット番号などについてのルールを定めてコード化し、コード化したID内の所定情報に基づいて、プラネット間でのデータの移動の制御を行うようにすれば、プラネット間でのデータの移動をし易くすることができる。
【0169】
また、第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1によれば、各国(又は国家共同体)の法枠内で所定のスマートコントラクトが作動し得る(ドメインの)範囲が固定されるとともに、各国(又は国家共同体)の法枠内で作動する所定のスマートコントラクトと接続する外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)を備え、各国(又は国家共同体)の法枠を超えるデジタル資産の移動に伴う処理を、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)を介して調整する構成としたので、国際間でのデータの移動をし易くすることができる。
【0170】
また、第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1によれば、所定のスマートコントラクトは、本人確認用スマートコントラクト121~m(但し、mは2以上の整数)と、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)のうちの、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の当該顧客の個別アドレス設定桁Eに当該顧客の個別アドレスが設定されているプラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aを参照し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先とで異なる値が設定されている場合、デジタル資産送付元のブロックチェーンのデータ構造を、送付先のブロックチェーンのデータ構造に適合するように変換し、当該プラネットのIDにおけるブロックチェーン種別コード設定桁Aに、パブリック型チェーンを示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、当該プラネットのIDにおける国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bを参照し、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値に基づき、デジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)を特定し、当該デジタル資産の移動が国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当するか否かをチェックするとともに、デジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方のプラネットのIDにおけるデジタル資産送付元の国(又は国家共同体)(の法制)別コード設定桁Bの値の異同から、当該デジタル資産の移動が国外送金に該当するか否かをチェックし、当該デジタル資産の移動が高額送金又は国外送金に該当する場合には、本人確認処理フラグ設定桁Dを参照し、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先のいずれかの本人確認処理フラグ設定桁Dに、未処理を示す値が設定されている場合、エラーとして送金処理を中止し、さらに、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有するスマートコントラクトからなり、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)は、デジタル資産移動処理用スマートコントラクト111~m(但し、mは2以上の整数)のうちの、当該プラネットのIDにおけるデジタル資産送付元とデジタル資産送付先双方の本人確認処理フラグ設定桁Dに、処理済を示す値が設定されている場合は、さらに、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止し、国(又は国家共同体)の法律で定められた高額送金に該当する場合もしくは国外送金に該当する場合において、送り元と送り先双方の当該顧客の個別アドレスにおける当該顧客の本人確認が処理済、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った所定の検査がOKの場合には、当該デジタル資産の移動に伴う当該データの修正を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに対して行い、当該データの修正内容を送り元と送り先双方の当該プラネット内の当該顧客の個別アドレスに記録する機能を少なくとも有するスマートコントラクトからなる構成としたので、国際間でのデータの移動をし易くするための外国為替調整用スマートコントラクトの処理機能を具現化することができる。
【0171】
また、第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1によれば、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)は、送り元のデジタル資産の価格を送り先の国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換する機能をさらに有する構成としたので、法制の異なる国(又は国家共同体)間におけるデジタル資産の取引に対応することができる。
【0172】
また、第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2によれば、一つのマーケットメイクを行う金融機関60(1)に対し顧客70(1,x)(但し、xは正の整数)からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクト31と、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクト32と、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクト33と、基準レート生成用スマートコントラクト33が生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、基準レート生成用スマートコントラクト33が生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクト34と、を有した構成としたので、流動性が低い小規模で直接金融的な個別不動産などをみなし有価証券としてデジタル化したタイプのST類であっても、取引価格の設定において、ミスプライス(適正価格からの乖離)が出難くなり、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことができる。また、各顧客が取引を所望する銘柄のレートを問い合わせたときにのみ提示することで、顧客は妥当な取引価格を得ることができる。また、取引市場に回送しないので、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率を下げずに済み、また、取引市場に上場するためのコストが不要で、顧客の取引に要するコストも低減できる。加えて、第1実施形態のデジタル資産の移動処理システム1と同様の構成を備えたので、取引相手が外国資本である場合、国際間送金や、取引でのトークンの移動を行うに際し、当該国(又は国家共同体)の法規制に対処することが可能となる。
【0173】
また、第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2によれば、約定用スマートコントラクト35が、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)における所定銘柄についての自社レートで顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関60(1)~60(q)(但し、qは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクト36と、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)の顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、約定先探索用スマートコントラクト36の探索した他のマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定用スマートコントラクト35に当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクト37と、を有した構成としたので、約定率を上げることができる。
【0174】
また、第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2によれば、所定のマーケットメイクを行う金融機関60(L)(但し、Lは1以上q以下の整数)の顧客70(L,x)(但し、Lは1以上q以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関60(r)(但し、rは1以上q以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロス又は短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクト38を有した構成としたので、リアルタイムにST類とデジタル通貨の取引が可能になり、顧客に対してデジタル資産を即時出庫することができ、流動性の低いST類について妥当性のある取引価格を導出し、リアルタイムに決済することができる。
【0175】
また、第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2によれば、約定先探索用スマートコントラクト36が約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索したとき、非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が保管する各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報の中で、対当する銘柄は無いが、類似銘柄で対当し得る場合、類似銘柄と対当させる銘柄の生成を行い、約定を誘導する流動性調整機能を有する流動性調整用スマートコントラクト39をさらに有する構成としたので、流動性が低いST類などのデジタル資産を約定させ易くすることができる。
【0176】
また、第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2によれば、発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2は、法制の異なる複数国(又は国家共同体)に設けられ、一つの国(又は国家共同体)の発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2に設けられた基準レート生成用スマートコントラクト33は、当該国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、他国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32を介して共有された、当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、外国為替調整用スマートコントラクト211~p(但し、pは2以上の整数)により当該国(又は国家共同体)の法定通貨を単位とする額に変換された当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する構成としたので、法制の異なる複数国(又は国家共同体)間において、流動性の低いデジタル資産の公正な取引を行うことができる。
【0177】
また、第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2によれば、一つの国(又は国家共同体)の発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2に設けられた約定先探索用スマートコントラクト36は、当該国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が当該国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)及び他国(又は国家共同体)に設けられた非公開共有情報保管用スマートコントラクト32が当該他国(又は国家共同体)の各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、当該国(又は国家共同体)に設けられた独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレート及び当該他国(又は国家共同体)に設けられた独自レート作成用スマートコントラクト31が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する構成としたので、法制の異なる複数国(又は国家共同体)間において、流動性が低いST類などのデジタル資産を約定させ易くすることができる。
【0178】
このため、第1及び第2実施形態によれば、価値を有するデジタル資産の取引を、処理性能を維持し、かつ、当該国(又は国家共同体)の法律の定めに従った高度なコンプライアンスに対処して、国内外に及ぶ広い範囲で円滑に行うことができ、加えて、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類などのデジタル資産の公正な取引を行うことの可能なデジタル資産の移動処理システム、及びデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムが得られる。
【0179】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0180】
第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2においては、各マーケットメイクを行う金融機関のノードを仮想ノードとして同一クラウド内に設定し、夫々の金融機関における独自レートの生成、非公開共有情報の保管、基準レートの生成、顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーの約定、約定先の探索等の処理を、分散されたネットワーク上のブロックではなく、共有メモリを用いて行うようにすると、処理が非常に高速化するので好ましい。
【0181】
また、第2実施形態のデジタル資産の移動処理システム1に備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システム2においては、価格情報について、各マーケットメイクを行う金融機関は、独自に作成したレートを非開示とし、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示しているが、それとは別に、各マーケットメイクを行う金融機関が独自に作成したレートを不特定多数者に常時配信する機能を備え、問い合わせを受けたときにのみ、問い合わせをした顧客に対し基準レートを提示する機能と、独自に作成したレートを不特定多数者に常時配信する機能のいずれか一方の選択手段を用いることができるように構成してもよい。このようにすれば、小規模で直接金融的なST類を対象とした取引サービスの他に、既存の上場物などの有価証券をデジタル化したST類を対象とした取引サービスなど、多様なST類に応じて最適な取引サービスを簡単な選択操作で切り替えて提供することができる。
【0182】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムに用いる、DX(デジタルトランスフォーメーション)で考え得る新概念のST類については、上場証券から生成されるST類とは異なり、マイナーな特性を有するものが多いため、1対1型の取引をベースとして、流動性情報を管理しながら価格発見を行うことができるようにすることが理想的であり、極論的には、1対1型の取引において、証券会社などの金融機関が仲介することなく、個人が機械(システムなどの取引機能)を介して直接的に取引することが想定される。
そこで、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおいては、流動性が弱いST類についての価格発見を行うための手段として、PTS(私設取引システム)のような流動性を集中させるのではなく、上述したようなマーケットメイク方式をベースとした非公開共有情報の基準価格を、問い合わせにより提示する機能を有するスマートコントラクトを備えた構成に加えて、例えば、マーケットメイクが出来ない銘柄にも自動対処できるように、類似銘柄の取引動向や、過去取引などの情報をベースとして、個人売買用の基準価格を算出し、算出した基準価格を個人の求めに応じて提示する価格発見機能を有するスマートコントラクトを備えるのが望ましい。
【0183】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおいて、各々のマーケットメイクを行う金融機関は、マーケットメイクを行う金融機関としての機能を有するスマートコントラクトで構成されたものであってもよい。
【0184】
さらに、本発明のデジタル資産の移動処理システムに備わるデジタル資産移動処理用スマートコントラクトにおける(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能について補足説明する。
高額の資産移動(送金先が日本の場合10万円、米国(やEU)の場合1000ドル(ユーロ)を超える移動)の場合、送金元及び送金先のKYC(本人確認)や、外国為替及び外国貿易法に関した規制などを組み込む必要がある。
このため、本発明のデジタル資産の移動処理システムでは、上述のとおり、デジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、特定した当該国(又は国家共同体)の法律において一定期間内における送金総量などの規制についての定めがある場合、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律の定めに違反しているか否かをチェックし、送金量(金額)が当該国(又は国家共同体)の法律で定めた量を超える場合、エラーとして送金処理を中止する機能を有した構成とした。
【0185】
しかし、当該規制を逃れるために、法律による規制の及ばない少額(送金先が日本の場合10万円未満)に資産を分割して移動を繰り返すことが懸念される。このような少額に分割した資産の移動は、疑わしい取引であり、基本的には高額資産の移動とみなして規制対象にすることが必要と考えられる。
このため、本発明のデジタル資産の移動処理システムでは、上述のとおり、デジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、(例えば、一定期間における送金量(金額)が定期的に多いものや、特定地域への送金量(金額)が通常とは異なる場合など、)送金に関して疑わしいデータを、別途更なる検査用に集計する機能を有した構成とした。
【0186】
しかるに、更なる検査のための人的なコストや作業負担を減らし、より効率的に、脱法的な不正送金を阻止することが望まれる。
そこで、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいては、さらに、高額資産を法律による規制の及ばない少額資産に分割し、複数回に分けた資産の移動等の不正な送金処理に対する、コンプライアンス機能として、デジタル資産移動処理用スマートコントラクトが、特定のアドレス間における、短時間(例えば、24時間以内)での所定回数(例えば、2回)以上の少額送金処理の該当・非該当を定期的にチェックし、当該送金に該当する場合、グレーアドレスと認定して送金の監視を強化し、当該送金に該当する頻度が多いアドレスをブラックアドレスとして、利用凍結などを行うことができる機能を備えた構成とするのが好ましい。
【0187】
例えば、顧客の個別アドレスに対応して紐づけられた、プラネットのコード化されたIDを、不正送金チェック桁と、不正送金情報管理領域と、をさらに備えた構成とする。
【0188】
また、デジタル資産移動処理用スマートコントラクトを、さらに、次の機能を備えた構成とする。
特定の送付元及び送付先アドレス間における、所定の短時間内(例えば、24時間以内)での所定回数(例えば、2回)以上の少額送金処理の該当・非該当を定期的に監視し、監視した結果に応じて、当該送付元及び送付先アドレスを次のように認定し、認定結果に応じた所定値を当該不正送金チェック桁や、不正送金情報管理領域に記録するようにする。
【0189】
・監視した結果、当該送金処理が特定の送付元及び送付先アドレス間における、所定の短時間内(例えば、24時間以内)での所定回数(例えば、2回)以上の少額送金処理に非該当の場合、当該送金処理及び当該送付元及び送付先アドレスを、不正送金の疑いのない送金処理及びホワイトアドレス(不正送金の疑いのないアドレス)と認定し、当該不正送金チェック桁に、例えば、“0”を記録。
・監視した結果、当該送金処理が特定の送付元及び送付先アドレス間における、所定の短時間内(例えば、24時間以内)での所定回数(例えば、2回)以上の少額送金処理に該当するが、当該送金処理及び当該送付元及び送付先アドレスを、不正送金の疑いのある送金処理及びグレーアドレス(不正送金の疑いのあるアドレス)と認定し、当該不正送金チェック桁に、例えば、“1”を記録。
・監視した結果、当該送金処理が特定の送付元及び送付先アドレス間における、所定の短時間内(例えば、24時間以内)での所定回数(例えば、2回)以上の少額送金処理に該当し、かつ、当該送金処理の頻度が所定回数を満たす(高頻度の)場合、当該送金処理及び当該送付元及び送付先アドレスを、不正送金の疑いの蓋然性の高い送金処理及びブラックアドレス(不正送金の疑いの蓋然性の高いアドレス)と認定し、当該不正送金チェック桁に、例えば、“2”を記録するとともに、当該送付先アドレスに対応して紐づけられたIDを、不正送金の疑いの蓋然性の高い送金先IDとして不正送金情報管理領域に記録。
【0190】
そして、デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、当該送付元及び送付先アドレスをブラックアドレスと認定し、不正送金チェック桁に不正送金の疑いの蓋然性の高い送金処理及びアドレスに該当する値を記録した場合、送付元のデジタル資産を決済に用いることができるようにする一方で、不正送金情報管理領域に記録された不正送金の疑いの蓋然性の高い送金先IDの個別アドレス設定桁に設定されている個別アドレスへの資産移動をすることができなくなるように制御する。
また、デジタル資産移動処理用スマートコントラクトは、送り元のIDにおける不正送金情報管理領域へ記録した、ブラックアドレスに対応して紐づけられた不正送金の疑いの蓋然性の高い送金先IDの数が所定数以上(例えば、10個以上)である場合、送付元のIDにおける個別アドレスからの一切の送金をすることができなくなるように制御する。
このようにすれば、更なる検査のための人的なコストや作業負担を減らし、より効率的に、脱法的な不正送金を阻止することが可能となる。
【0191】
また、本発明のデジタル資産の移動処理システム、及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムにおけるデジタル資産の移動処理は、主には個人間での移動処理(小口)を対象としているが、企業間での移動処理も対象とすることは可能である。
ただし、企業間での移動処理は、決済などでの送金金額が大きいため、企業の与信情報に関し、プラネットのIDを用いた、デジタル資産移動処理用スマートコントラクトによるさらなるチェックを行う必要があると考えられる。
【0192】
欧米の場合は、直接金融であることから、企業の与信情報サービスが使い易いが、日本の場合は、間接金融であり与信管理が非常に悪く、企業の与信情報サービスが使い難い。
このため、日本における企業の与信情報サービスを、欧米の与信情報サービスのように使い易いものにすることが課題となる。
【0193】
そこで、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいては、さらに次のようにするのが好ましい。
プラネットのID中に、個人か法人かの区分けをするための個人・法人区分設定桁(図示省略)を設け、個人と法人とで管理情報を異ならせるようにするとともに、法人の管理情報としての与信情報(格付け情報)設定桁(図示省略)と、与信情報管理領域(図示省略)を設けるようにする。
そして、デジタル資産移動処理用スマートコントラクトが(送信先)相手のプラネットのIDの設定値の内容を確認したときに、個人・法人区分設定桁(図示省略)に個人であることを示す値が設定されている場合は、上述したものと同様の本人確認処理を行い、個人・法人区分設定桁(図示省略)に法人であることを示す値が設定されている場合は、上述したものと同様の本人確認処理に加えて、与信情報(格付け情報)設定桁(図示省略)への設定値を用いた与信力のチェックを行うようにする。そして、与信情報(格付け情報)設定桁(図示省略)に、与信力が低いことを示す所定値が設定されている場合は、エラーとして送金処理を中止するようにする、
【0194】
なお、与信情報は、例えば、所定のクラウド会計システム(図示省略)が、各企業の会計情報データの更新のタイミングで、格付け情報として算出したものを用いるようにする。
詳しくは、与信情報(格付け情報)取得用スマートコントラクト(図示省略)が、クラウド会計システム(図示省略)により算出された格付け情報に対応する所定値を、プラネットのIDにおける与信情報(格付け情報)設定桁に記録するようにする。
また、与信情報(格付け情報)取得用スマートコントラクト(図示省略)が、格付け情報を算出したクラウド会計サービス(会社、ソフト)等を与信情報管理領域に記録するようにする。
【0195】
なお、与信情報(格付け情報)取得用スマートコントラクト(図示省略)が与信情報(格付け情報)を取得する際に用いるクラウド会計システム(図示省略)においては、与信情報としての格付け情報は、基本的には、各企業の会計情報(データ)より財務状況などを確認することで算出されるが、PDCAによる格付け情報の修正が行われるようにする。
例えば、クラウド会計システム(図示省略)においては、各企業の会計情報(データ)をもとに、企業格付けを算出した後に、送金(決済)や融資等の金融処理が発生した場合における、その結果に基づく格付けの更新情報を取り込めるようにする。
このようにすることで、決済や融資等の金融処理が問題なく処理されているかどうかが確認できると考えられる。
格付けは、最初は低めに算出し、金融処理の数が増えるに従って、決済や融資等の金融処理が問題なく処理されていることなどを加算ポイントとして、格付け値を修正していくようにする。
【0196】
このようにすれば、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいて企業用として格付け情報を参照することが可能になり、企業の与信情報が使い易いものになる。
【0197】
さらに、本発明のデジタル資産の移動処理システムにおいてプラネットのIDにおける与信情報(格付け情報)などの自社情報については、公開するように設定してもよいが、基本的には秘密管理情報とし、必要な場合に必要な相手にのみ開示する、あるいは有効期限型の暗号鍵を相手(送付先)に渡して参照できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明のデジタル資産の移動処理システム、及びそれに備わる発行済ST類などのデジタル資産の取引システムは、例えば、小規模で直接金融的な発行済ST類などのデジタル資産を用いた取引サービスを国内外に及ぶ広い範囲に提供することが求められる分野に有用である。
【符号の説明】
【0199】
1 デジタル資産の移動処理システム
2 発行済ST類などのデジタル資産の取引システム
101~n プラネット
111~m デジタル資産移動処理用スマートコントラクト
121~m 本人確認用スマートコントラクト
13 プラネットID作成用スマートコントラクト
14 IDインデックス化用スマートコントラクト
15 第1のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト
16 インデックス化ID群配信用スマートコントラクト
17 インデックス化ID群受信用スマートコントラクト
18 第2のインデックス化ID群記録用スマートコントラクト
19 データ送付先ID照合用スマートコントラクト
20 デジタル資産移動依頼用スマートコントラクト
211~p 外国為替調整用スマートコントラクト
31 独自レート作成用スマートコントラクト
32 非公開共有情報保管用スマートコントラクト
33 基準レート生成用スマートコントラクト
34 基準レート提示用スマートコントラクト
35 約定用スマートコントラクト
36 約定先探索用スマートコントラクト
37 約定制御用スマートコントラクト
38 決済用スマートコントラクト
39 流動性調整用スマートコントラクト
60(1)~60(q) マーケットメイクを行う金融機関
70(1,1)~70(q,x) 顧客
図1
図2
図3
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