(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052460
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】看板用下地材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20240404BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240404BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240404BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B27/00 E
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182349
(22)【出願日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022158441
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 裕一
(72)【発明者】
【氏名】竹原 洋平
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK15
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK41
4F100AK41B
4F100AK51
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00B
4F100DG01
4F100DG01B
4F100DG11
4F100DG11B
4F100EJ19
4F100EJ42
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4F100EJ82B
4F100EJ86
4F100GB90
4F100JB16
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JK04
4F100JL11
4F100JL11B
(57)【要約】
【課題】看板下地用途に適した曲げ剛性を有しつつ、巻き取りやすい看板用下地材を提供する。
【解決手段】基布と、前記基布の一方の面に配置された第一の熱可塑性樹脂フィルムと、前記基布の他方の面に配置された第二の熱可塑性樹脂フィルムとを備え、曲げ剛性値は、10N・mm以上、80N・mm以下である看板用下地材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布と、前記基布の一方の面に配置された第一の熱可塑性樹脂フィルムと、前記基布の他方の面に配置された第二の熱可塑性樹脂フィルムとを備え、
曲げ剛性値は、10N・mm以上、80N・mm以下であることを特徴とする看板用下地材。
【請求項2】
前記基布に接着剤が含浸されていることを特徴とする請求項1に記載の看板用下地材。
【請求項3】
前記接着剤は、ポリウレタン系接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の看板用下地材。
【請求項4】
上記第一の熱可塑性樹脂フィルム及び上記第二の熱可塑性樹脂フィルムは、ポリ塩化ビニルを含むことを特徴とする請求項1に記載の看板用下地材。
【請求項5】
上記第一の熱可塑性樹脂フィルム及び上記第二の熱可塑性樹脂フィルムは、ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項1に記載の看板用下地材。
【請求項6】
前記第一の熱可塑性樹脂フィルム及び前記第二の熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、100μm以上、600μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の看板用下地材。
【請求項7】
前記第一の熱可塑性樹脂フィルム及び前記第二の熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、200μm以上、550μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の看板用下地材。
【請求項8】
前記基布は、経糸及び緯糸を含む織物であることを特徴とする請求項1に記載の看板用下地材。
【請求項9】
前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方は、ポリエステル繊維であることを特徴とする請求項8に記載の看板用下地材。
【請求項10】
前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方の太さは、500デシテックス以上、1800デシテックス以下であることを特徴とする請求項8に記載の看板用下地材。
【請求項11】
前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方の糸密度は、30本/5cm幅以上、130本/5cm幅以下であることを特徴とする請求項8に記載の看板用下地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、看板用下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や模様を印刷したラッピング用フィルム等を看板用下地に貼り付けて、看板や広告として用いられることがある。看板用下地材は、屋外用途では木材やアルミ製のフレームに固定したり、屋内用途では壁に対して固定して用いられる。
【0003】
上記加飾フィルムとしては、例えば、特許文献1には、ポリ塩化ビニルフィルム層、粘着剤層、離型フィルム又は離型紙の順に積層されたラッピング用フィルムが開示されており、特許文献1の段落[0037]、[0039]に、ラッピング用フィルムを広告等に用いることや、ラッピング用フィルムの貼付対象物の材質として、アルミニウム等の金属が挙げられている。また、特許文献2には、ポリエステルフィルム層、変性オレフィン樹脂層、アルミニウムシート層、オレフィン樹脂層及びアルミニウムシート層の積層構成を有することを特徴とする積層体が開示されている。
【0004】
従来、上記看板用下地としては、金属シートの表面に樹脂層を備えた金属複合板が用いられている。例えば、特許文献3には、フェニレンエーテル成分が10~60重量%、スチレン成分が40~90重量%であり且つ坪量が210g/m2以下である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの少なくとも一面にホットメルト接着剤を介して金属シートが積層一体化されてなることを特徴とする複合板が開示されており、段落[0053]に看板用途として用いてもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-052146号公報
【特許文献2】特開2001-199020号公報
【特許文献3】特開2012-045910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属複合板は重いことから、落下時の危険性が高い。また、金属複合板は持ち運びが困難であることから、例えば、幅が数mとなるような大型の看板を設置したい場合には、複数の金属複合板を並べて配置することが一般的であり、複数の金属複合板を並べた表面に、所望の看板サイズに印刷された加飾フィルムを貼り付けることで大型の看板を作製することができる。複数の金属複合板の境界はアルミテープ等で補強されることがあるが、アルミテープの部分が観察者から視認されるおそれや、上記境界部分からフィルムの剥離が起こるおそれがあった。
【0007】
本発明者らは、金属複合板に代わる看板用下地材として、基布と上記基布の両面に樹脂フィルムを有する看板用下地材を用いることを検討した。上記基布の両面に樹脂フィルムを有する看板用下地材は、軽量であることから落下時の危険性が大幅に低減される。一方で、搬送時の巻き取り性や、看板用下地材としての剛性を持たせるためには、更なる検討の余地があった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、看板下地用途に適した曲げ剛性を有しつつ、巻き取りやすい看板用下地材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一実施形態は、基布と、前記基布の一方の面に配置された第一の熱可塑性樹脂フィルムと、前記基布の他方の面に配置された第二の熱可塑性樹脂フィルムとを備え、曲げ剛性値は、10N・mm以上、80N・mm以下である看板用下地材。
【0010】
(2)本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、前記基布に接着剤が含浸されている看板用下地材。
【0011】
(3)本発明のある実施形態は、上記(2)の構成に加え、前記接着剤は、ポリウレタン系接着剤である看板用下地材。
【0012】
(4)本発明のある実施形態は、上記(1)~(3)のいずれかの構成に加え、上記第一の熱可塑性樹脂フィルム及び上記第二の熱可塑性樹脂フィルムは、ポリ塩化ビニルを含む看板用下地材。
【0013】
(5)本発明のある実施形態は、上記(1)~(3)のいずれかの構成に加え、上記第一の熱可塑性樹脂フィルム及び上記第二の熱可塑性樹脂フィルムは、ポリウレタンを含む看板用下地材。
【0014】
(6)本発明のある実施形態は、上記(1)~(5)のいずれかの構成に加え、前記第一の熱可塑性樹脂フィルム及び前記第二の熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、100μm以上、600μm以下である看板用下地材。
【0015】
(7)本発明のある実施形態は、上記(1)~(5)のいずれかの構成に加え、前記第一の熱可塑性樹脂フィルム及び前記第二の熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、200μm以上、550μm以下である看板用下地材。
【0016】
(8)本発明のある実施形態は、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加え、前記基布は、経糸及び緯糸を含む織物である看板用下地材。
【0017】
(9)本発明のある実施形態は、上記(8)の構成に加え、前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方は、ポリエステル繊維である看板用下地材。
【0018】
(10)本発明のある実施形態は、上記(8)又は(9)の構成に加え、前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方の太さは、500デシテックス以上、1800デシテックス以下である看板用下地材。
【0019】
(11)本発明のある実施形態は、上記(8)~(10)のいずれかの構成に加え、前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方の糸密度は、30本/5cm幅以上、130本/5cm幅以下である看板用下地材。
【0020】
本発明によれば、看板下地用途に適した曲げ剛性を有しつつ、巻き取りやすい看板用下地材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る看板用下地材の一例を示した断面模式図である。
【
図2】実施形態に係る看板用下地材の他の一例を示した断面模式図である。
【
図3】曲げ剛性値の測定方法を説明した模式図である。
【
図4】実施形態に係る看板用下地材の使用態様の一例であり、表面に加飾フィルムを貼り付けた看板の斜視図である。
【
図5】
図4のX1-X2線における断面模式図である。
【
図6】基布10Aの「平織り」を説明した組織図及び平面図である。
【
図7】基布10Bの「2/2綾崩し」を説明した組織図及び平面図である。
【
図8】基布10Cの「3/1破れ斜文」を説明した組織図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る看板用下地材について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で適宜設計変更を行うことが可能である。
【0023】
図1は、実施形態に係る看板用下地材の一例を示した断面模式図である。
図1に示したように、実施形態に係る看板用下地材100は、基布10と、基布10の一方の面に配置された第一の熱可塑性樹脂フィルム20と、基布10の他方の面に配置された第二の熱可塑性樹脂フィルム30とを備える。
【0024】
図1に示したように、基布10は、接着剤等を介さずに、基布10の両面に第一の熱可塑性樹脂フィルム20と第二の熱可塑性樹脂フィルム30とが積層されていてもよい。例えば、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルム20、30を成膜後、熱い状態で基布と圧着することで、接着剤等を用いなくても、基布10の表面に第一の熱可塑性樹脂フィルム20と第二の熱可塑性樹脂フィルム30とを一体化することができる。また、基布10の繊維が第一の熱可塑性樹脂フィルム20及び/又は第二の熱可塑性樹脂フィルム30に埋没していてもよい。
【0025】
図2は、実施形態に係る看板用下地材の他の一例を示した断面模式図である。
図2に示したように、基布10には、接着剤40が含浸されていてもよい。基布10に接着剤40が含浸されている場合、第一の熱可塑性樹脂フィルム20と第二の熱可塑性樹脂フィルム30は、接着剤40によって基布10の両面に貼り付けられる。
【0026】
基布10に接着剤40が含浸されている場合、第一の熱可塑性樹脂フィルム20及び第二の熱可塑性樹脂フィルム30は、接着剤40と接しているといえる。第一の熱可塑性樹脂フィルム20と基布10との間、及び、第二の熱可塑性樹脂フィルム30と基布10との間に、接着剤40が介在してもよい。
【0027】
看板用下地材100の曲げ剛性値は、10N・mm以上、80N・mm以下である。曲げ剛性値が低いほど看板用下地材は曲がりやすく、曲げ剛性値が高いほど看板用下地材は曲がり難くなる。上記曲げ剛性値が10N・mm未満であると、看板用下地材が曲げやすいため、搬送時にロール状に巻き取りやすい一方で撓みやすく、看板用下地材には適さない。上記曲げ剛性値が80N・mmを超えると、撓みにくい一方で、曲がり難いことから搬送時にロール状に巻き取ることが困難となる。曲げ剛性値は、20N・mm以上であることがより好ましい。
【0028】
図3は、曲げ剛性値の測定方法を説明した模式図である。看板用下地材から、長さ150mm、幅50mmの測定用サンプルを切り出し、測定用サンプルの重量(W)を測定する。
図3の(i)に示したように、測定用サンプルの長さの半分の長さLが測定台からはみ出すように、測定用サンプルを水平な測定台上に配置する。
【0029】
測定用サンプルが落下しないように、測定用サンプルの測定台に乗っている部分を固定しつつ、測定用サンプルの測定台からはみ出した部分が、測定用サンプルの下面が測定台と水平となるように支持する。測定台と水平な測定用サンプルの下面の位置を初期位置P0とする。
【0030】
測定用サンプルの支持を解除し、
図3の(ii)に示したように、5秒後の測定用サンプルの下面の位置をP
1とし、測定台の水平面と直交する方向における、P
0とP
1との距離(y)を測定する。測定温度は、例えば、23±2℃である。
【0031】
測定用サンプルの重量(W)、測定台からはみ出した測定用サンプルの長さ(L)及び距離(y)を用いて、下記式(1)により曲げ剛性値(EI値)を算出する。なお、EI値は、ヤング率(E)と断面二次モーメント(I)の積を表す。また、下記式は、上記測定方法で説明したように、測定用サンプルの片方を固定し、測定用サンプルに均等に荷重されることを前提とした式である。
曲げ剛性(N・mm)=W×g×L4/8y (1)
W:測定用サンプルの重量(Kg/mm2)
g:重力加速度=9.81m/s2
L:測定台からはみ出した測定用サンプルの長さ(mm)
y:初期位置と、5秒後の測定用サンプルの下面の位置との距離(mm)
【0032】
上記曲げ剛性値は、基布の種類、接着剤の種類、接着剤の含浸量、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムの種類、厚さ、柔軟性、基布の両面に第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムをラミネートする条件等によって変化する。そのため、基布の種類、接着剤の種類、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムの種類等に関わらず、曲げ剛性値を10N・mm以上、80N・mm以下とすることで、看板下地用途に適した曲げ剛性を有しつつ、巻き取りやすい看板用下地材を得ることができる。
【0033】
(基布)
基布10としては、ニット地等の編み物、不織布、織物等が挙げられる。高い曲げ剛性が得られることから、基布10は織物であることが好ましい。
【0034】
上記織物としては、平織、綾織、朱子織が挙げられる。強度や剛性に優れるという観点からは、上記基布は、平織又は綾織が好ましい。
【0035】
上記織物は、経糸11及び緯糸12を含むことが好ましい。経糸11と緯糸12とは互いに交差しており、経糸11又は緯糸12の延伸方向は、看板の縦又は横方向と平行となることが好ましい。
【0036】
経糸11及び緯糸12としては、フィラメント糸、スパン糸等を用いることができる。上記フィラメント糸は、モノフィラメント糸であっても、マルチフィラメント糸あってもよい。看板用下地材の流れ方向の強度を高めることができる観点からは、緯糸がモノフィラメント糸であることが好ましい。長尺の看板用下地材とする場合、緯糸をモノフィラメント糸とすることで。長さ方向に撓み難くすることができる。
【0037】
経糸11及び緯糸12としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等を用いることができる。なかでも、吸湿等による寸法変化が少ないことから、経糸11及び緯糸12の少なくとも一方は、ポリエステル繊維であることが好ましい。
【0038】
経糸11及び緯糸12の少なくとも一方の太さは、500デシテックス以上、1800デシテックス以下であることが好ましい。経糸11及び緯糸12の少なくとも一方の太さを上記範囲とすることで、巻き取り性と下地材としての剛性を両立することができる。ここで、デシテックスとは、総繊度のことを表している。
【0039】
経糸11及び緯糸12の少なくとも一方の糸密度は、30本/5cm幅以上、130本/5cm幅以下であることが好ましい。経糸11及び緯糸12の少なくとも一方の密度を上記範囲とすることで、表面の凹凸を低減することができる。
【0040】
基布10の厚さは、0.5mm以上、1.5mm以下であることが好ましく、0.7mm以上、1.3mm以下であることがより好ましい。
【0041】
(第一の熱可塑性樹脂フィルム及び第二の熱可塑性樹脂フィルム)
第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルム20、30は、熱可塑性樹脂を含有する。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0042】
なかでも、伸びがよく破断し難いことから、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルム20、30は、ポリ塩化ビニル又はポリウレタンを含むことが好ましい。第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルム20、30がポリ塩化ビニルを含む場合、更に可塑剤を含有することが好ましい。
【0043】
上記ポリ塩化ビニルとしては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体と塩化ビニルとの共重合体を挙げることができる。上記共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方」を表す。
【0044】
上記共重合体における上記共重合可能な他の単量体の含有量は、通常、50質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。上記ポリ塩化ビニルのなかでも、寸法安定性に優れる点から、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
【0045】
上記ポリ塩化ビニルの平均重合度は800~1300が好ましい。なお、本発明において、ポリ塩化ビニルの平均重合度は、JIS K 6721「塩化ビニル系樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。上記平均重合度が1300を超えると、ポリ塩化ビニルフィルムの伸びが不十分となるおそれがある。
【0046】
上記可塑剤は、フィルムに柔軟性を付与する添加剤である。上記可塑剤としては、特に限定されず、例えば、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル(DINP)、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)等のフタル酸エステル、アジピン酸エステル、アジピン酸とポリアルコールが結合したポリエステル等が挙げられる。
【0047】
上記可塑剤の含有量は、上記ポリ塩化ビニル100質量部に対して、20質量部以上、60質量部以下であることが好ましい。可塑剤の含有量を上記範囲とすることで、ポリ塩化ビニルフィルムに適度な柔軟性を付与することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい上限は、上記ポリ塩化ビニル100質量部に対して40質量部である。
【0048】
更に、添加剤として、ポリ塩化ビニルに一般的に配合されるものを使用することができ、安定剤、紫外線吸収剤、加工助剤、抗菌剤等を含んでもよい。
【0049】
上記ポリウレタンは熱可塑性ポリウレタンであってもよい。上記熱可塑性ポリウレタンとしては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリオレフィン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。
【0050】
熱可塑性ポリウレタンの製造方法は特に限定されないが、典型的には、およそ等モルのポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物、並びに鎖延長剤を例えば60℃以上220℃以下で反応させる方法が挙げられる。
【0051】
イソシアネート化合物としては、例えばフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-トリジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート;シクロペンタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0052】
ポリオール化合物としては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ジオール系のポリカーボネート系ポリオール等が挙げられる。これらのポリオール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はこれらのジアルキルエステル;アジピン酸、グルタル酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸又はこれらのジアルキルエステル等から選択された少なくとも1種のジカルボン酸又はこれらのジアルキルエステルと、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のC2-10アルカンジオール;ジエチレングリコール等のジ又はトリC2-10アルカンジオールなどから選択された少なくとも1種のアルカンジオール成分との反応生成物などが挙げられる。
【0054】
アジピン酸をジカルボン酸成分のベースとしたポリエステル系ポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリジエチレンアジぺート(PDA)、ポリプロピレンアジペート(PPA)、ポリテトラメチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)、これらの成分を組み合わせた共重合体等が挙げられる。なお、ポリエステル系ポリオールには、ラクトン類(ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトンなどのC3-14ラクトン)の単独重合体又は共重合体も含まれる。
【0055】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの単独又は共重合体;テトラメチレンエーテルグリコールを含んでなる単独又は共重合体;ヒドロキシ基に対してC2-4アルキレンオキサイド1~5モルが付加した付加体等のビスフェノールA又は水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体などが挙げられる。
【0056】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えばポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ひまし油変性ポリオール、ブタジエンとスチレン又はアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したもの等が挙げられる。
【0057】
上記鎖延長剤としては、例えば、低分子量ポリオールを用いることができ、具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール、1,4-ジメチロールベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール等が挙げられる。
【0058】
また、ポリウレタン以外に、他の樹脂や、添加剤を含有してもよい。上記他の樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリジエン、ポリスチレン、スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、熱硬化性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。上記添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、抗菌剤、防カビ等が挙げられる。
【0059】
第一の熱可塑性樹脂フィルム20の組成と第二の熱可塑性樹脂フィルム30の組成及び厚さは同じであっても異なってもよいが、看板用下地材100の反りを抑制する観点からは、第一の熱可塑性樹脂フィルム20と第二の熱可塑性樹脂フィルム30とは曲げ剛性が同等であることが好ましい。第一の熱可塑性樹脂フィルム20と第二の熱可塑性樹脂フィルム30とは曲げ剛性を近づけるという観点からは、第一の熱可塑性樹脂フィルム20と第二の熱可塑性樹脂フィルム30とは、組成が同じであることが好ましい。また、第一の熱可塑性樹脂フィルム20と第二の熱可塑性樹脂フィルム30の厚さは同じであることが好ましい。
【0060】
第一の熱可塑性樹脂フィルム20の厚さは、100μm以上、600μm以下であることが好ましく、第二の熱可塑性樹脂フィルム30の厚さは、100μm以上、600μm以下であることが好ましい。第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルム20、30のいずれか一方の厚さが100μm以上、600μm以下であればよいが、両方の厚さが100μm以上、600μm以下であることが好ましい。第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルム20、30の厚さを、それぞれ100μm以上とすることで、基布10の凹凸が看板用下地材100の表面に浮き出ることを抑制し、加飾フィルム等を貼り付けた場合にも、看板の表面を平滑にすることができる。
【0061】
第一の熱可塑性樹脂フィルム20及び第二の熱可塑性樹脂フィルム30の厚さは、それぞれ、200μm以上、550μm以下であることがより好ましい。第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルム20、30のいずれか一方の厚さが200μm以上、550μm以下であればよいが、両方の厚さが200μm以上、550μm以下であることがより好ましい。第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルム20、30の厚さを、それぞれ200μm以上とすることで、より看板用下地材100の表面を平滑にすることができる。
【0062】
基布10の一方の面に第一の熱可塑性樹脂フィルム20を配置し、他方の面に第二の熱可塑性樹脂フィルム30を配置する方法は特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂フィルムをカレンダー成形にてフィルム状に成膜し、カレンダーロールから送り出された直後の加熱された状態の熱可塑性樹脂フィルムに基布を重ね、ニップロール間で圧着することで、基布の片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された積層体を作製する。その後、上記積層体の反対側に別の加熱された状態の熱可塑性樹脂フィルムを重ね、圧着することで、第一の熱可塑性樹脂フィルム20、基布10、第二の熱可塑性樹脂フィルム30の順で積層された看板用下地材を作製することができる。接着剤を介さずに積層する際の第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムの温度は、例えば、100~200℃である。
【0063】
上記基布に接着剤を含浸させた後に、熱可塑性樹脂フィルムと積層してもよい。基布に接着剤を含浸さる場合、積層する際の第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムの温度は特に限定されない。
【0064】
(接着剤)
接着剤40としては、基布10と、第一の熱可塑性樹脂フィルム20及び第二の熱可塑性樹脂フィルム30とを接着できる限り特に限定されないが、ポリウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリ塩化ビニル系接着剤等が挙げられる。なかでも、接着強度と柔軟性を有することから、上記接着剤は、ポリウレタン系接着剤であることが好ましい。
【0065】
上記ポリウレタン系接着剤としては、ポリオール成分とイソシアネート成分を混合したものが挙げられる。上記ポリオール成分としては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。上記ポリエステル系ポリオールの具体例としては、大同化成工業社製の「ダイカラック7100」等が挙げられる。
【0066】
上記ポリイソシアネート成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の 芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、住化コベストロウレタン社製の「スミジュールN3300」(ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体)等が挙げられる。
【0067】
上記ポリオール成分100質量部に対する、上記ポリイソシアネート成分の含有量は、例えば10質量部以上、50質量部以下が好ましく、20質量部以上、40質量部以下がより好ましい。
【0068】
基布10に接着剤を含浸させる方法としては、基布10の表面に一定速度で接着剤を塗布した後、加圧及び乾燥する方法が挙げられる。接着剤の塗布速度は、例えば2m/分以上8m/分以下とすることができる。上記圧力は、例えば0.5kg/cm2以上5.0kg/cm2以下とすることができる。上記乾燥は、例えば80℃以上、180℃以下の温度で、乾燥時間を0.5分以上、10分以下とすることができる。
【0069】
上記接着剤の含浸量は、例えば、10g/m2以上、150g/m2以下とすることができ、より好ましい下限は20g/m2、より好ましい上限は100g/m2である。
【0070】
看板用下地材100の全体の厚さ(総厚)は、0.5mm以上、1.5mm以下であることが好ましく、0.7mm以上、1.3mm以下であることがより好ましい。
【0071】
実施形態に係る看板用下地材100は、看板の下地材として用いられる。看板の下地材は、屋外では、木材、アルミ等のフレーム300に固定して、室内では壁に固定して用いることができる。
【0072】
看板のサイズは特に限定されないが、例えば、縦及び横の一方が1~3m、他方が5~10m程度の大型の看板にも用いることができる。看板用下地材として従来の金属複合板を用いる場合、大型の看板であると、複数の金属複合板を繋ぎ合わせて用いることが一般的であり、継ぎ目が視認されて看板の意匠性が低くなるおそれや、看板が重くなるおそれがあった。一方で、本実施形態に係る看板用下地材は、柔軟性、巻き取り性が良好であり、巻き取った状態で運搬できることから、大型の看板でも一つの看板用下地材で作製することができる。看板用下地に継ぎ目がないため、本実施形態に係る看板用下地材の表面に加飾フィルムを貼り付けた場合も、見栄えをよくすることができる。また、軽量であることから、落下時の危険性を大幅に低減することができる。
【0073】
図4は、実施形態に係る看板用下地材の使用態様の一例であり、表面に加飾フィルムを貼り付けた看板の斜視図である。
図5は、
図4のX1-X2線における断面模式図である。
図4及び
図5に示したように、看板用下地材100の表面に、文字や模様を有する加飾フィルム200を貼り付けて、看板として用いることができる。
図5及び
図4では、フレーム300が、固定用のフレーム用脚301と、前面側に配置された支持板302と、縦方向及び横方向に組まれ、支持板302が固定されたフレーム用支柱303、304とを有する場合を例示した。フレーム300は、支持板302を有さなくてもよく、支柱のみであってもよい。看板用下地材の固定方法は、特に限定されず、ネジ、両面テープ等、一般的な方法で固定できる。第一の熱可塑性樹脂フィルム20と第二の熱可塑性樹脂フィルム30のどちらを表として用いてもよい。
【0074】
加飾フィルム200の構成は特に限定されず、文字や模様を含む印刷層と、樹脂フィルムと、粘着剤層とを有するものが挙げられる。上記粘着剤層により、看板用下地材100に貼り付けてもよい。他の方法としては、看板用下地材100の表面に直接文字や模様が印刷されてもよい。
【0075】
上記加飾フィルム200の貼り付けや文字等の印刷は、看板用下地材100をフレーム300に固定した後に行ってもよいが、本実施形態に係る看板用下地材100は巻き取り性、運搬性に優れることから、予め看板用下地材100の表面に加飾フィルム200の貼り付けや、文字等の印刷を行った後に、フレーム300に固定することもできる。
【実施例0076】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
(基布)
下記表1に、実施例及び比較例で用いた基布の構成を示した。表1中、糸の太さ「T」は総繊度のデシテックスを表す。基布10Cの経糸は、2本の糸を右撚りしたスパン糸である。
図6は、基布10Aの「平織り」を説明した組織図及び平面図である。
図7は、基布10Bの「2/2綾崩し」を説明した組織図及び平面図である。
図8は、基布10Cの「3/1破れ斜文」を説明した組織図及び平面図である。
図6~
図8では、左側に組織図を示し、右側に平面図を示した。また、説明の便宜のため、経糸11を黒色、緯糸12を白色で示した。
【0078】
【0079】
<実施例1>
ポリ塩化ビニル(カネカ社製の「カネビニールS1001N」、平均重合度:1050)を100質量部と可塑剤(フタル酸ジイソノニル)を6質量部配合し、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得た。上記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダー成形により、厚さ520μmの第一の熱可塑性樹脂フィルムと、厚さ520μmの第二の熱可塑性樹脂フィルムとを作製した。
【0080】
(接着剤の含浸)
接着剤としては、ポリウレタン系接着剤を用いた。ポリウレタン系接着剤は、ポリエステル系ポリオール(大同化成工業社製の「ダイカラック7100」、固形分量:15質量%)100質量部に対して、脂肪族ポリイソシアネート(住化コベストロウレタン社製の「スミジュールN3300」、固形分量:100質量%)を4質量部添加した。スミジュールN3300は、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体を含むポリイソシアネート系硬化剤である。接着剤全体に対するポリイソシアネートの固形分量は、13.2質量%であった。
【0081】
温度約25℃で、基布の送り速度5m/分で、基布を3秒間、ポリウレタン系接着溶液中に含漬させた後、金属ロールゴムとロール間に圧力約2.0kg/cm2で挟みこんで余分な溶液を絞った。その後、基布を取り出し、約150℃で約3分乾燥させ、ポリウレタン系接着剤が含浸された基布を作製した。なお、上記圧力は、以下の条件から算出した。
・ニップロールのシリンダー圧力;0.2MPa
・帆布にかかる面積:幅1.85m×0.01m=0.0185m2
・ニップロールのシリンダー径:0.2m
・ニップロールのシリンダー面積:0.0314m2
・ニップロールのシリンダー推力:12.560N(シリンダー両端のため×2)
・帆布にかかる圧力:6.8kgf/cm2
・基布のサイズ:幅1850mm×所望の長さ
【0082】
(ラミネート:条件1)
熱プレス機の上側から金属板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、第一の熱可塑性樹脂フィルム、基布、第二の熱可塑性樹脂フィルム、PETフィルム、ゴム板、PETフィルムの順に積層して、熱プレス機のプレス板上に配置した。なお、PETフィルムは、熱可塑性樹脂フィルム又はゴム板の付着防止のために配置した。
・第一及び第二の熱可塑性樹脂:A4サイズ、厚さは表2参照
・基布:A4サイズ、厚さは表2参照
・PETフィルム:A4サイズ、厚さ38μm
・ゴム板:350mm×300mm、厚さ1mm、黒色のゴム板
・金属板:350mm×300mm、厚さ1mm
・プレス板:350mm×300mm
【0083】
以下の条件で熱プレスした後、所望のサイズにカットし、第一の熱可塑性樹脂フィルム、基布、第二の熱可塑性樹脂フィルムの順で積層された看板用下地材を作製した。
圧力:6.0MPa
温度:185℃
時間:2分間
製造した看板用下地材のサイズ:流れ方向280mm、幅方向190mm
【0084】
<実施例2~4、7、比較例1~3>
第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムの厚さ、可塑剤量の量を表2に示したようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムを作製した。表2中、「可塑剤量」は、ポリ塩化ビニル100質量部に対する可塑剤の含有量(質量部)である。また、表2に示した基布を用い、実施例1と同様の方法で接着剤を含浸させ、実施例1と同様の方法でラミネートして実施例2~4、7、比較例1~3に係る看板用下地材を作製した。
【0085】
<実施例5、6、比較例4>
第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムの厚さ、可塑剤量の量を表2に示したようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムを作製した。また、表2に示した基布を用い、実施例1と同様の方法で接着剤を含浸させた。
【0086】
(ラミネート:条件2)
実施例5、6、比較例4については、以下の条件で、基布と、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした。まず、カレンダーロールから送り出された直後の加熱された状態の第一の熱可塑性樹脂フィルムに基布を重ね、ニップロール間で圧着することで、基布の片面に第一の熱可塑性樹脂フィルムが積層された積層体を作製した。その後、上記積層体の反対側に別の加熱された状態の熱可塑性樹脂フィルムを重ね、下記条件で圧着することで、第一の熱可塑性樹脂フィルム20、基布10、第二の熱可塑性樹脂フィルム30の順で積層された看板用下地材を作製した。
圧力:45kg/cm2
温度:185℃
製造した看板用下地材のサイズ:流れ方向50m、幅方向130cm
【0087】
なお、上記圧力は下記式から算出した。
圧力P=F/A
F=カレンダーロールのシリンダー圧×カレンダーロールのシリンダー径
A=ラミネート面積
シリンダー圧:45MPa
シリンダー径:0.011m2
ラミネート面積:0.013m2(幅1.3m×送り0.01m/分)
【0088】
<実施例8>
実施例8では、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムとして、ポリウレタンフィルムを用いた。ポリウレタンとしては、熱可塑性ポリウレタンを用いた。
【0089】
実施例1と同様の方法で、基布にポリウレタン系接着剤を含浸させた。実施例8で用いたポリウレタン系接着剤としては、ポリエステル系ポリオール(DIC株式会社製の「パンデックス T-5205-TE」、固形分量:12.5質量%)100質量部に対して、トルエンジイソシアネート(住化コベストロウレタン社製の「デスモジュール L-75」、固形分量:75質量%)を5質量部添加した。接着剤全体に対するポリイソシアネートの固形分量は、14.8質量%であった。
【0090】
(ラミネート;方法3)
上記基布の一方の面に、熱可塑性ポリウレタン(大日精化工業製の「レザミンP-1078F」)を押出成形により第一の熱可塑性樹脂フィルムを成膜しつつ、積層した。その後、基布の第一の熱可塑性樹脂フィルムとは反対側の面に、第二の熱可塑性樹脂フィルムを上記第一の熱可塑性樹脂フィルムと同様の方法で積層し、実施例8の看板用下地材を作製した。上記押出成形は、Tダイを用い、160℃~220℃で加熱しながら行った。
【0091】
<実施例9>
基布に接着剤を含浸させず、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムの厚さを表2に示したように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の看板用下地材を作製した。
【0092】
<実施例10>
基布に接着剤を含浸させなかったこと以外は、実施例2と同様にして、実施例10の看板用下地材を作製した
【0093】
<実施例11>
実施例11では、基布に接着剤を含浸させず、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムとして、ポリオレフィン系フィルムを用いた。プライムポリマー社製の「F-794NV」を30質量部と、プライムポリマー社製の「T-310E」を10質量部と、サンアロマー社製の「PS-522M」を30質量部配合したポリプロピレンと、高密度ポリエチレン(京葉ポリエチレン社製の「T4005」)を30質量部配合して樹脂組成物を得た。上記樹脂組成物をカレンダー成形により、厚さ420μmの第一の熱可塑性樹脂フィルムと、厚さ420μmの第二の熱可塑性樹脂フィルムを作製した。その後、表2に示した基布を用い、接着剤は含浸させず、実施例1と同様の方法でラミネートして実施例11に係る看板用下地材を作製した。
【0094】
(評価試験)
以下の方法で、実施例及び比較例の(1)曲げ剛性値の測定を行い、(2)巻き取り性及び(3)平滑性を評価し、結果を下記表2に示した。
【0095】
(1)曲げ剛性値の測定
実施例、比較例のそれぞれについて、長さ150mm、幅50mmの測定用サンプルを2つずつ切り出した。測定用サンプルの長さ方向は看板用下地材の流れ方向とした。上記流れ方向は、第一及び第二の熱可塑性樹脂フィルムを基布にラミネートする際の、フィルムの搬送方向をいう。各測定用サンプルの重量を、精密電子天秤で測定した。
【0096】
曲げ剛性値は、以下の方法で測定した。
図3の(i)に示したように、23±2℃の環境下で、測定用サンプルの長さの半分の長さが測定台からはみ出すように、測定用サンプルを水平な測定台上に配置した。測定用サンプルの測定台に乗っている部分は、測定用サンプルが落下しないように150gの重しを乗せて固定した。測定用サンプルの測定台からはみ出した部分は、測定用サンプルの下面が測定台と水平となるように指で支持した。
【0097】
その後、
図3の(ii)に示したように、測定用サンプルの支持していた指を外し、5秒後の測定用サンプルの下面の位置をP
1とし、P
0とP
1との距離(y)を、直角定規で測定した。
【0098】
下記式(1)により、測定用サンプルの曲げ剛性値(EI値)を算出した。1つの測定用サンプルにつき3回測定を行い、合計6回の測定値の平均値を、各実施例及び比較例のEI値とした。EI値が10N・mm以上であれば、看板用下地材用途に適した剛性を有しているといえ、更にEI値が20N・mm以上がより好ましい。
【0099】
曲げ剛性値(N・mm)=W×g×L4/8y (1)
W:測定用サンプルの重量(Kg/mm2)
g:重力加速度=9.81m/s2
L:測定台からはみ出した測定用サンプルの長さ(mm)
y:初期位置と、5秒後の測定用サンプルの下面の位置との距離(mm)
【0100】
(2)巻き取り性
実施例及び比較例の看板用下地材を、幅方向1.1m、流れ方向5mに切り出し、直径が3インチの紙管又は直径が6インチの紙管を用いて、流れ方向に巻き取り、紙管に沿って巻き取れるかを確認した。なお、紙管に沿って巻きとれた場合、巻き取り後の断面はほぼ円形になるが、紙管に沿わずに看板用下地材が屈折した場合、巻き取り後の断面は多角形となる。
◎:直径が3インチの紙管を用いて、看板用下地材が紙管に沿って巻き取ることができた。
○:直径が6インチの紙管を用いて、看板用下地材が紙管に沿って巻き取ることができた。
×:直径が6インチの紙管を用いても、看板用下地材が紙管に沿わず、屈折して巻き取られた。
【0101】
(3)平滑性
表面粗さ(JIS B 0601:1994)に準拠した方法で、実施例及び比較例の看板用下地材について、それぞれ一方の面の算術平均粗さ(Ra)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:Raが1μm未満
○:Raが1μm以上、4μm未満
△:Raが4μm以上
【0102】
【0103】
表2に示したように、EI値が10N・mm以上、80N・mm以下であった実施例1~11は、撓み難く、かつ巻き取り性が良好であった。更に、実施例1、2、5、6、8、9及び11は、EI値が20N・mm以上であり、より撓み難い看板用下地材が得られた。実施例8~10の結果から、基布に接着剤を含浸させなくても、EI値を10N・mm以上とすることができることが確認された。また、実施例4と、実施例1~3及び5~7の比較から、第一及び第二の樹脂フィルムの厚さを厚くすることで、平滑性が向上することが確認できた。
【0104】
比較例2及び比較例4は、EI値が低過ぎて撓みやすいため、看板下地用途としては不適であった。一方で、比較例1及び比較例3はEI値が高すぎるために、曲がり難く、良好な巻き取り性は得られなかった。