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特開2024-52477シロキサンモノマー、コンタクトレンズ組成物及びコンタクトレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052477
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】シロキサンモノマー、コンタクトレンズ組成物及びコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G02C7/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018138
(22)【出願日】2023-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】111137128
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】512020327
【氏名又は名称】ペガヴィジョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PEGAVISION CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2F-1,No.5,SHING YEH ST.,GUISHAN DIST.,TAOYUAN CITY 333,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】李庭育
(72)【発明者】
【氏名】黄民揚
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB06
2H006BB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、シロキサンモノマー、コンタクトレンズ組成物及びコンタクトレンズを提供する。
【解決手段】シロキサンモノマーは、下式(I-a)で表される構造を有する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズを製造するためのシロキサンモノマーであって、前記シロキサンモノマーは、下式(I)で表される構造を有し、
【化22】
その中、RがH又はCHであり、
がハロゲンで置換されていないNHR、N(R、OR、SR、又は
【化23】
であり、nが6以下であり、

【化24】
であり、nが6以下であり、
がH又はC~Cアルキル基であり、
x≧0、y≧1、z≧0であることを特徴とする、シロキサンモノマー。
【請求項2】
前記シロキサンモノマーの重量平均分子量又は数平均分子量は、500g/mol~50,000g/molである、請求項1に記載のシロキサンモノマー。
【請求項3】
シロキサンモノマー、親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を含む、コンタクトレンズ組成物であって、前記シロキサンモノマーは、下式(I)で表される構造を有する第1のシロキサンモノマーを含み、
【化25】
がH又はCHであり、Rがハロゲンで置換されていないNHR、N(R、OR、SR、又は
【化26】
であり、nが6以下であり、R
【化27】
であり、nが6以下であり、RがH又はC~Cアルキル基であり、x≧0、y≧1、z≧0であることを特徴とする、コンタクトレンズ組成物。
【請求項4】
前記シロキサンモノマーは、第2のシロキサンモノマー、第3のシロキサンモノマー及び第4のシロキサンモノマーの中の少なくとも一つを更に含み、
前記第2のシロキサンモノマーは、下式(II)で表される構造を有し、
【化28】
前記第3のシロキサンモノマーは、下式(III)で表される構造を有し、
【化29】
前記第4のシロキサンモノマーは、(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランである、請求項3に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項5】
前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記第1のシロキサンモノマーの使用量が1重量部~30重量部であり、前記第2のシロキサンモノマーの使用量が40重量部以下であり、前記第3のシロキサンモノマーの使用量が40重量部以下であり、前記第4のシロキサンモノマーの使用量が30重量部以下である、請求項4に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項6】
前記親水性モノマーは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)、メタクリル酸グリシジル、モノメタクリル酸グリセロール、アクリル酸、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、グリシンビニルカーボネート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及びメタクリル酸2-ヒドロキシブチルからなる群の少なくとも1つから選択され、
前記親水性モノマーの使用量は、30重量部~70重量部である、請求項3に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項7】
前記架橋剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、テトラエチレングリコールジメタクリラート、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレンジアクリルアミド、1,4-ジ(アクリルアミド)ブテン及びポリエチレングリコールジアクリレートからなる群の少なくとも1つから選択され、
前記架橋剤の使用量は、0.01重量部~5重量部である、請求項3に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項8】
前記開始剤は、ジーH5-シクロペンタジエニルビス[2,6-ジフルオロー3-(ピロールー1-イル)フェニル]チタン(4)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンからなる群の少なく開始剤とも1つから選択され、
前記開始剤の使用量は、0.01重量部~2重量部である、請求項3に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項9】
請求項3~8のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ組成物で製造されたコンタクトレンズであって、
前記コンタクトレンズは、レンズの表面に30°のヒステリシス(Hysteresis)を有し、且つレンズのスーダンブラック(Sudan black)染料で染色された後の染色透過率が70%を超えることを特徴とする、コンタクトレンズ。
【請求項10】
前記コンタクトレンズは、
(i)40Barrers~150Barrersの酸素透過率、
(ii)30%~80%の平衡含水率、
(iii)0°~30°の前記ヒステリシス、
(iv)70%~99.9%の前記染色透過率、
(v)0.1MPa~0.8MPaの伸長弾性率、
(vi)100%~500%の伸長率、を満たす、請求項9に記載のコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンモノマーに関し、特に、シロキサンモノマー、コンタクトレンズ組成物及びコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、従来のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、効果的に酸素透過率を効果的に向上させることができる。従来のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、親水性ケイ素含有高分子及び親水性モノマー(例えば、NVP、DMA、MAA)を共重合してなるシリコーンハイドロゲルを含む。しかしながら、シリコーンハイドロゲル材料の表面に疎水性の特性を有するため、細菌の増殖を起こしやすく、目の炎症を起こす。故に、通常、素材の表面の水和性を向上させるように、シリコーンハイドロゲル材料の表面に修飾する必要がある。
【0003】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術の不足に対し、コンタクトレンズのレンズ表面の濡れ性を効果的に向上し、表面の親水性コーティング加工を行う必要がない、シロキサンモノマー、コンタクトレンズ組成物及びコンタクトレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、コンタクトレンズを製造するためのシロキサンモノマーを提供する。前記シロキサンモノマーは、下式(I)で表される構造を有する。
【化1】
【0006】
好ましくは、RがH又はCHであり、Rがハロゲンで置換されていないNHR、N(R、OR、SR、又は
【化2】
であり、nが6以下であり、R
【化3】
であり、nが6以下であり、RがH又はC~Cアルキル基であり、x≧0、y≧1、z≧0である。
【0007】
好ましくは、前記シロキサンモノマーの重量平均分子量又は数平均分子量は、500g/mol~50,000g/molである。
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、シロキサンモノマー、親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を含む、コンタクトレンズ組成物を提供する。前記シロキサンモノマーは、下式(I)で表される構造を有する第1のシロキサンモノマーを含む。
【化4】
【0009】
好ましくは、RがH又はCHであり、Rがハロゲンで置換されていないNHR、N(R、OR、SR、又は
【化5】
であり、nが6以下であり、R
【化6】
であり、nが6以下であり、RがH又はC~Cアルキル基であり、x≧0、y≧1、z≧0である。
【0010】
好ましくは、前記シロキサンモノマーは、第2のシロキサンモノマー、第3のシロキサンモノマー及び第4のシロキサンモノマーの中の少なくとも一つを更に含む。
【0011】
好ましくは、前記第2のシロキサンモノマーは、下式(II)で表される構造を有する。
【化7】
【0012】
好ましくは、前記第3のシロキサンモノマーは、下式(III)で表される構造を有する。
【化8】
【0013】
好ましくは、前記第4のシロキサンモノマーは、(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランである。
【0014】
好ましくは、前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記第1のシロキサンモノマーの使用量が1重量部~30重量部であり、前記第2のシロキサンモノマーの使用量が40重量部以下であり、前記第3のシロキサンモノマーの使用量が40重量部以下であり、前記第4のシロキサンモノマーの使用量が30重量部以下である。
【0015】
好ましくは、前記親水性モノマーは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、メタクリル酸グリシジル、モノメタクリル酸グリセロール、アクリル酸、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、グリシンビニルカーボネート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及びメタクリル酸2-ヒドロキシブチルからなる群の少なくとも1つから選択され、前記親水性モノマーの使用量は、30重量部~70重量部である。
【0016】
好ましくは、前記架橋剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、テトラエチレングリコールジメタクリラート、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレンジアクリルアミド、1,4-ジ(アクリルアミド)ブテン及びポリエチレングリコールジアクリレートからなる群の少なくとも1つから選択され、前記架橋剤の使用量は、0.01重量部~5重量部である。
【0017】
好ましくは、前記開始剤は、ジーH5-シクロペンタジエニルビス[2,6-ジフルオロー3-(ピロールー1-イル)フェニル]チタン(4)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンからなる群の少なく開始剤とも1つから選択され、前記開始剤の使用量は、0.01重量部~2重量部である。
【0018】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、前記コンタクトレンズ組成物で製造されたコンタクトレンズを提供する。前記コンタクトレンズは、レンズの表面に30°のヒステリシス(Hysteresis)を有し、且つレンズのスーダンブラック(Sudan black)染料で染色された後の染色透過率が70%を超える。
【0019】
好ましくは、前記コンタクトレンズは、(i)40Barrers~150Barrersの酸素透過率、(ii)30%~80%の平衡含水率、(iii)0°~30°の前記ヒステリシス、(iv)70%~99.9%の前記スーダンブラックの染色透過率、(v)0.1MPa~0.8MPaの伸長弾性率、(vi)100%~500%の伸長率、を満たす。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有利な効果として、本発明に係るシロキサンモノマー、コンタクトレンズ組成物及びコンタクトレンズは、特定の親水性構造を有するシロキサンモノマーをコンタクトレンズ組成物に導入することによって、コンタクトレンズの表面親水性を向上すると共に、表面親水性コーティングを行う必要がない。
【0021】
本発明に係る技術特徴は、シロキサンモノマーの化学構造的多様性を増加することができる。また、ケトンの化学構造は共鳴式を有するため、電荷分離である分極を起こし、Rの置換基を多電子原子X(例えば、N、O、S)にすることによって、電荷分離による分極化を促進して、シロキサンモノマーのイオン性を増加することによって、コンタクトレンズの親水性及び保湿性の増加に有利となる。
【0022】
更に説明すると、本発明に係るコンタクトレンズ組成物で製造されたコンタクトレンズは、優れた表面親水性を有するので、親水性表面コーティングを行う必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明及び化学構造を参照されたい。しかし、提供される詳細な説明は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0024】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の化学式は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。
【0025】
以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの特徴化合物ともう1つの特徴化合物を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0026】
本明細書において、特定の数値範囲が記載される際に、「ある値~ある値」との書き方を採用する。その意味は、当該数値範囲に含まれた任意の数値及び当該数値範囲に含まれた任意の数値範囲で限定された狭い数値範囲を含む。具体的に、明細書に明確に記載された当該任意の数値及びより狭い数値範囲に示す通りである。また、明細書の記載を簡潔にするために、本明細書における各化合物又は基の構造は、構造に含まれた炭素原子、水素原子及び炭素水素結合を略すように、骨格式(skeletal formula)で表されることがある。しかしながら、構造式において特定の原子又は基が描かれた場合、構造式における原子又は基を採用する。
【0027】
[シロキサンモノマー]
本発明の実施形態において、コンタクトレンズを製造するためのシロキサンモノマー(silicone monomer)を提供する。前記シロキサンモノマーは、下式(I)で表される構造を有する。
【0028】
【化9】
【0029】
その中、RがH又はCHである。Rがハロゲンで置換されていない(non-halogen)NHR、N(R、OR、SR、又は
【化10】
であり、nが0~6の整数であり、1~6の整数であることが好ましい。R
【化11】
であり、nが0~6の整数であり、1~6の整数であることが好ましい。また、RがH又はC~Cアルキル基(alkyl)である。
【0030】
その中、xは0以上の正数(x≧0)であり、50~100の正数であることが好ましい。yは1以上の正数(y≧1)であり、1~20の正数であることが好ましい。zは0以上の正数(z≧0)であり、1~30の正数であることが好ましい。
【0031】
なかでも、前記シロキサンモノマーの重量平均分子量(weight average molecular weight,Mw)は、500~50,000であり、1,000~30,000であることが好ましい。前記シロキサンモノマーの数平均分子量(number average molecular weight,Mn)は、500~50,000であり、1,000~30,000であることが好ましい。なお、前記シロキサンモノマーの粘度平均分子量(viscosity average molecular weight,Mv)は、500~50,000であり、1,000~30,000であることが好ましい。前記分子量の単位はいずれも、g/molである。
【0032】
前記式(I)で表される構造に示すように、前記シロキサンモノマーにおけるシロキサンの繰返し単位に以下に示した親水性側鎖がグラフトされている。
【0033】
【化12】
【0034】
前記親水性側鎖は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol,PEG)に基づく繰返し単位
【化13】
を有すると共に、前記ポリエチレングリコールに基づく繰返し単位の末端の箇所に、ケトン構造(ketone structure)であるPEG-C(=O)Rを有する。前記親水性側鎖は、ケトン構造にあるRの置換基構造を調整することによって、構造の多様性を増加することができる。
【0035】
例えば、RのPEG-C(=O)に結合する原子がHである場合、前記Rの置換基構造がアルデヒド官能基の特性を提供することができる。
【0036】
例えば、RのPEG-C(=O)に結合する原子がCである場合、前記Rの置換基構造がケトン官能基の特性を提供することができる。
【0037】
例えば、RのPEG-C(=O)に結合する原子がNである場合、前記Rの置換基構造がアミド官能基の特性を提供することができる。
【0038】
例えば、RのPEG-C(=O)に結合する原子がO又はOHである場合、前記Rの置換基構造がエステル官能基又はカルボキシ官能基の特性を提供することができる。
【0039】
例えば、RのPEG-C(=O)に結合する原子がSである場合、前記Rの置換基構造がチオエステル官能基の特性を提供することができる。
【0040】
本発明の実施形態のシロキサンモノマーの親水性側鎖は、ケトン構造をベースにした上で、他のケトン由来官能基の特性を延伸して、構造の多様性を増加することができる。
【0041】
本発明の一つ具体例において、前記シロキサンモノマーは、下式(I-a)で表される構造を有する。その中、RがCHであると共に、ケトン官能基の特性を提供する。
【化14】
【0042】
その中、x=80~90、y=3~9、z=9~15。
【0043】
特筆すべきことは、従来の技術において、研究機関又は学者は、シロキサンモノマーに対する親水性改質を行う際に、親水性側鎖としてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリドなどの化学構造を採用することが多い。
【0044】
当業者にとって、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリドなどの化学構造は、ポリエーテルポリオール(polyether polyol)に属することは周知のことである。前記化合物の親水性を有することは、その構造にある酸素原子(O)又は水酸基(OH)が水分子と容易に水素結合を形成しやすいため、親水性を達成する。
【0045】
従来の技術と異なり、本発明の実施形態のシロキサンモノマーは、ポリエチレングリコールをベースにした上で、ケトン構造を有すると共に、Rのような置換基構造を更に有する。
【0046】
本発明に係る技術方案は、シロキサンモノマーの化学的構造の多様性を増加することができる。また、ケトンの化学構造は共鳴式を示す。また、ケトンの化学構造は共鳴式を有するため、電荷分離である分極を起こし、Rの置換基は多電子原子X(例えば、N、O、S)にすることによって、電荷分離による分極化を促進して、シロキサンモノマーのイオン性を増加することによって、コンタクトレンズの親水性及び保湿性の増加に有利となる。
【0047】
以下にて、ケトンの化学構造の共鳴式を示す。
【化15】
【化16】
【0048】
[コンタクトレンズ組成物]
本発明の実施形態において、シロキサンモノマー(silicone monomer)、親水性モノマー(hydrophilic monomer)、架橋剤(crosslinking agent)、開始剤(initiator)、UV吸収剤(UV absorber)、共溶媒(co-solvent)及び染料(dye)を含む、コンタクトレンズ組成物(contact lens composition)を提供する。
【0049】
前記シロキサンモノマーは、第1のシロキサンモノマー、第2のシロキサンモノマー、第3のシロキサンモノマー、及び/又は第4のシロキサンモノマーを更に含む。
【0050】
前記第1のシロキサンモノマーは、前記実施形態に記載された式(I)で表されるシロキサンモノマーである。
【0051】
【化17】
【0052】
その中、RがH又はCHである。Rがハロゲンで置換されていない(non-halogen)NHR、N(R、OR、SR、又は
【化18】
であり、nが0~6の整数であり、1~6の整数であることが好ましい。R
【化19】
であり、nが0~6の整数であり、1~6の整数であることが好ましい。また、RがH又はC~Cアルキル基(alkyl)である。xは0以上の正数(x≧0)であり、50~100の正数であることが好ましい。yは1以上の正数(y≧1)であり、1~20の正数であることが好ましい。なお、zは0以上の正数(z≧0)であり、1~30の正数であることが好ましい。一つの具体例において、前記第1のシロキサンモノマーは、前記実施形態における式(I-a)で表されるシロキサンモノマーである。
【0053】
前記第2のシロキサンモノマーは、下式(II)で表される構造を有する。
【0054】
【化20】
【0055】
前記第3のシロキサンモノマーは、下式(III)で表される構造を有すると共に、x=8~15である。
【0056】
【化21】
【0057】
前記第4のシロキサンモノマーは、(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン((3-methacryloxy-2-hydroxypropyloxy)propylbis(trimethylsiloxy)methylsilane)である。
【0058】
コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記第1のシロキサンモノマー(式(I)で表される構造を有するシロキサンモノマー)の使用量は、1重量部~30重量部であり、5重量部~25重量部であることが好ましく、6重量部~24重量部であることが特に好ましい。なお、前記第2のシロキサンモノマー(式(II)で表される構造を有するシロキサンモノマー)の使用量は、0重量部~40重量部であり、10重量部~30重量部であることが好ましい。前記第3のシロキサンモノマー(式(III)で表される構造を有するシロキサンモノマー)の使用量は、0重量部~40重量部であり、10重量部~35重量部であることが好ましい。また、前記第4のシロキサンモノマーの使用量は、0重量部~30重量部であり、3重量部~30重量部であることが好ましい。
【0059】
前記親水性モノマーは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-hydroxyethyl methacrylate,HEMA)、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate,MMA)、メタクリル酸(methacrylic acid,MAA)、N-ビニルピロリドン(N-vinyl pyrrolidone,NVP)、N,N-ジメチルアクリルアミド(N,N-dimethyl-acrylamide,DMA)、4-アクリロイルモルホリン(4-acryloylmorpholine,AcMO)、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(2-hydroxyethyl acrylamide,HEAA)、メタクリル酸グリシジル(glyceryl methacrylate,GMA)、モノメタクリル酸グリセロール(glycerol mono-meth acrylate,GMMA)、アクリル酸(acrylic acid,AA)、N,N-ジメチルメタクリルアミド(N,N-di(methyl meth acryl-amide),DMA)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(N-vinyl-N-methyl acetamide)、グリシンビニルカーボネート(glycine vinyl carbonate)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)、及びメタクリル酸2-ヒドロキシブチル(2-hydroxy-butyl methacrylate)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0060】
前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記親水性モノマーの使用量は、30重量部~70重量部であることが好ましく、30重量部~65重量部であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0061】
更に説明すると、本発明の一つの具体例において、前記親水性モノマーは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸(MMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)及び4-アクリロイルモルホリン(AcMO)からなる群から選択される少なくとも1つであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0062】
前記架橋剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート(poly(ethylene glycol)diacrylate,PEGDA)、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol di(methacrylate),EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(di(ethylene glycol)di(methacrylate),DEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(tri(ethylene glycol)di(methacrylate),TEGDMA)、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール(tetra(ethylene glycol)di(methacrylate),TTEGDMA)、メタクリル酸アリル(allyl methacrylate,AMA)、エチレングリコールジアリルエーテル(ethylene glycol di(allyl ether),EGDAE)、トリエチレングリコールジアリルエーテル(tri(ethylene glycol)di(allyl ether),TEGDAE)、テトラエチレングリコールジメタクリラート(tetra(ethylene glycol)di(allyl ether),TTEGDAE)、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(1,3,5-Triallyl-1,3,5-triazine-2,4,6(1H,3H,5H)-trione)、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリラート(1,1,1-tri(methylolpropane)tri(methacrylate))、トリメチロールプロパントリアクリラート(tri(methylolpropane) tri(acrylate))、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetra(acrylate))、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetra(ethylene glycol) di(acrylate))、エチレンジアクリルアミド(ethylene di(acrylamide))、1,4-ジ(アクリルアミド)ブテン(butylene 1,4-di(acrylamide))及びポリエチレングリコールジアクリレート(poly(ethylene glycol)di(acrylate))からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0063】
前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記架橋剤の使用量は、0.01重量部~5重量部であることが好ましく、0.1重量部~3重量部であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0064】
更に説明すると、本発明の一つの具体例において、前記架橋剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)及びエチレングリコールジアリルエーテル(EGDMA)の中の少なくとも1つである。また、前記ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)の重量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)は、500g/mol~800g/molである。
【0065】
前記開始剤は光開始剤である。
【0066】
前記開始剤は、ジーH5-シクロペンタジエニルビス[2,6-ジフルオロー3-(ピロールー1-イル)フェニル]チタン(4)(bis(2,6-difluoro-3-(1-hydropyrro-1-yl)-phenyl)titanocene)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(phenylbis-(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phosphine oxide)、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(2-hydroxy-2-methyl-1-phenyl-1-porpanone)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0067】
前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記開始剤の使用量は、0.01重量部~2重量部であることが好ましく、0.05重量部~1重量部であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0068】
更に説明すると、本発明の一つの具体例において、前記開始剤はフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである。
【0069】
前記コンタクトレンズ組成物の紫外線遮断能力を向上するために、本発明の一つの実施形態において、前記コンタクトレンズ組成物は、UV吸収剤を更に含む。前記UV吸収剤は、ベンゾフェノン(benzophenone)モノマー及びベンゾトリアゾール(benzotriazole)モノマーからなる群から選択される少なくとも1つを含む。前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記UV吸収剤の使用量は、0.30重量部~1.80重量部である。
【0070】
更に説明すると、本発明の一つの具体例において、前記UV吸収剤は、ベンゾトリアゾールモノマーを含むと共に、メタクリル酸2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチル(2-[3-(2H-Benzotriazol-2-yl)-4-hydroxyphenyl]ethyl methacrylate)である。
【0071】
前記コンタクトレンズ組成物の溶解性を向上するために、本発明の一つの実施形態において、前記コンタクトレンズ組成物は、共溶媒を更に含む。前記共溶媒は、グリセリン(glycerol,GLY)、2-プロパノール(isopropyl alcohol)、n-ブタノール(n-butanol)、tert-ブタノール(t-butanol)、tert-アミルアルコール(t-amyl alcohol,AmOH)及びn-ヘキサノール(n-hexanol)からなる群から選択される少なくとも1つである。前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記共溶媒の使用量は、3重量部~15重量部である。
【0072】
更に説明すると、本発明の一つの具体例において、前記共溶媒為グリセリン(glycerol,GLY)及びtert-アミルアルコール(t-amyl alcohol,AmOH)の中の少なくとも1つである。
【0073】
前記コンタクトレンズ組成物に特定の色を与えるため、本発明の一つの実施形態において、前記コンタクトレンズ組成物は、染料を更に含む。前記染料は、リアクティブブルー19(disodium,1-amino-9,10-dioxo-4-[3-(2-sulfonatooxyethylsulfonyl)anilino]anthracene-2-sulfonate)、スーダンIII(1-[4-(Phenylazo)phenylazo]-2-naphthol,Sudan III)、インディゴ(2,2’-Bis(2,3-dihydro-3-oxoindolylidene),Indigo)、及びキノフタロン(disodium 2-(1,3-dioxo-2,3-dihydro-1H-inden-2-yl)quinolone-6,8-disul fonate,Quinoline yellow)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0074】
前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記染料の使用量は、0.002重量部~0.1重量部である。
【0075】
更に説明すると、本発明の一つの具体例において、前記染料は、HEMAに含まれた1%(w/w)のリアクティブブルー19(reactive blue 19)である。
【0076】
[実験データ及び測定結果]
以下にて、実験例S1~実験例S14に基づいて、本発明の内容を説明する。しかしながら、以下の実験例は単に、本発明を理解するためのものであって、本発明の範囲はそれらの実験例に制限されるものではない。上記の実験例において、S1~S2は比較例であり、即ち、コンタクトレンズ組成物が式(I)で表されるシロキサンモノマーを含まなかった。S3~S14は、本発明の効果を証明するための実施例であり、即ち、コンタクトレンズ組成物が式(I)で表されるシロキサンモノマーを含んだ。本実験データは、式(I)で表されるシロキサンモノマーを例として説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0077】
実験例S1~実験例S14のコンタクトレンズ組成物の成分(例えば、シロキサンモノマー、親水性モノマー、架橋剤、開始剤、UV吸収剤、共溶媒及び染料)及びそれらの使用量については、表1に示すとおりである。また、実験例S1~実験例S14の配合で製造されたコンタクトレンズの物理化学特性についても、表1に示すとおりである。
【0078】
実験例S1~実験例S14の製造方法は、表1の配合に基づいて、コンタクトレンズ組成物を架橋及び硬化反応によって、コンタクトレンズを製造した。
【0079】
より具体的に説明すると、コンタクトレンズの製造方法は、以下の工程(i)~(v)を含む。
【0080】
(i)表1の配合に基づいて、コンタクトレンズ組成物(もしくは、有機シリコンハイドロゲルとも称す)を、コンタクトレンズを製造するための金型に注入した。
【0081】
(ii)光源の照光によって、前記コンタクトレンズ組成物を硬化・架橋して、コンタクトレンズ(有機シリコンハイドロゲルレンズとも称す)を形成した。
【0082】
(iii)水で前記コンタクトレンズを抽出することによって、未硬化のシロキサンモノマー(水溶性シリコーン高分子モノマーとも称す)を除去した。
【0083】
(iv)前記コンタクトレンズを、コンタクトレンズが膨潤するように、pH7.1~7.5のホウ酸塩緩衝液に放置した(水和プロセス)。
【0084】
(v)緩衝液を包装用容器に充填して、コンタクトレンズを前記緩衝液に浸させた。次に、封止工程(封止温度は約125℃)及び滅菌工程(滅菌時間が約30分)を行った後に、コンタクトレンズの製造を完成した。
【0085】
本発明のコンタクトレンズの製造方法によれば、有機溶媒で抽出する必要がなくても、未硬化の水溶性シリコーン大分子モノマーを除去することができる。
【0086】
表1に示す各成分において、第1のシロキサンモノマーは、前記実施例における式(I-a)で表されるシロキサンモノマーであり、第2のシロキサンモノマーは、前記実施例における式(II)で表されるシロキサンモノマーであり、第3のシロキサンモノマーは、前記実施例における式(III)で表されるシロキサンモノマーであり、第4のシロキサンモノマーは、(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランであった。親水性モノマーとして、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸メチル(MMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)及び/又は4-アクリロイルモルホリン(AcMO)を採用した。架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)及び/又はエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を採用した。開始剤として、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを採用した。UV吸収剤として、メタクリル酸2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチルを採用した。共溶媒として、グリセリン(GLY)及び/又はtert-アミルアルコール(AmOH)を採用した。染料として、HEMAに含まれた1%(w/w)のリアクティブブルー19(reactive blue 19)を採用した。説明すべきことは、表1におけるコンタクトレンズ組成物における全ての成分の合計重量は、100重量部(又は100wt%)であった。
【0087】
実験例S1~S14の配合で製造されたコンタクトレンズに対して物理化学特性の測定を行った。物理化学特性の測定として、酸素透過率Dk(Barrer)、平衡含水率EWC(wt%)、ヒステリシスHysteresis(°)、スーダンブラック(Sudan black)の染色透過率(%)、伸長弾性率Tensile Modulus(MPa)及び伸長率Elongation(%)を含む。測定の方法について、以下に説明すると共に、その結果は、表1に示すとおりである。
【0088】
酸素透過率Dk(Barrer)の測定方法は、Oパーミオメーター(OPermeometer)を用いて、ISO 9913-1に記載されたポーラログラフィー法に基づいて酸素透過率(Dk)を測定した。コンタクトレンズのサンプルを少なくとも12時間平衡する純水に浸して測定を行った。次に、リン酸塩緩衝液において、Oパーミオメーター(Rheder Development Company製のModel 201T)を用いて酸素透過率を測定した。酸素透過率の単位として、Barrer 10-11(cmcm)/(cmsec mmHg))である。
【0089】
平衡含水率EWC(%)の測定方法は、コンタクトレンズのサンプルの表面を水で濡らした後に、前記レンズの重量を測定することによって、水和レンズの重量を得た。オーブンで前記レンズを乾燥して、乾燥状態において、前記レンズの重量を測定することによって、乾燥レンズの重量を得た。水和レンズの重量から乾燥レンズの重量を引くことによって、重量差を得た。平衡含水率EWC(wt%)=(重量差/水和レンズの重量)×100%。
【0090】
ヒステリシス Hysteresis(°)の測定方法は、動的接触角計を用いてコンタクトレンズのサンプルの接触角ヒステリシス(Hysteresis)を測定し、また、動的接触角の測定方法として、水中気泡法(captive bubble method)を採用する。前進接触角と後退接触角との差に基づいてヒステリシスHysteresis(°)を計算した。
【0091】
スーダンブラック(Sudan black)の染色透過率(%)の測定方法は、撹拌で0.5%(w/w)のスーダンブラックの溶液を調製して、当該溶液を一晩放置した。緩衝液からコンタクトレンズのサンプルを取り出して軽く振ることによって、レンズ表面に残留した水をほとんど除去した。次に、前記レンズを前記調製したスーダンブラックの溶液に5分置いた後に、前記レンズを染料溶液から取り出して、温水で余分な染料溶液を除去すると共に、レンズの可視光線透過率(%)を測定した。
【0092】
伸長弾性率Tensile Modulus(MPa)及び伸長率Elongation(%)の測定方法は、引張試験機(Zwick Z0.5)を用いて伸長弾性率を測定した。レンズのサンプルを幅2mmとなるようにカットし、測定を行う前に、マイクロメータを用いてサンプルの厚みを測定した。測定が開始する時に、サンプルを延伸する移動速度、サンプルの長さ及びチャックの間の距離を一定に保持した。測定の過程において、サンプルをそれぞれに緩衝塩水に放置した。弾性率の単位はMPaであり、伸長率の単位が%であった。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示すように、実験例S3~S14に係るコンタクトレンズ組成物において、式(I-a)で表されるシロキサンモノマーを導入した。式(I-a)で表されるシロキサンモノマーの親水性側鎖がケトンの特徴的な化学構造が修飾された。前記シロキサンモノマーは、強い親水性を有する利点を有した上で、前記コンタクトレンズ組成物で製造されたコンタクトレンズも優れた表面親水性を有するので、実験例S3~S14で製造されたコンタクトレンズは、親水性表面コーティングを行う必要がない。
【0095】
更に説明すると、レンズ表面の親水性を評価するパラメータは、ヒステリシス(°)及びスーダンブラック(Sudan black)の染色透過率(%)を含む。ヒステリシス(°)の測定値が低いほど親水性が優れる。スーダンブラック(Sudan black)の染色透過率(%)の測定値が高いほど親水性が優れる。
【0096】
実験例S1~S2の測定結果によれば、式(I-a)で示されたシロキサンモノマーを導入していないコンタクトレンズ組成物において、コンタクトレンズのヒステリシスは約33°~34°であり、スーダンブラック(Sudan black)の染色透過率(%)は47%~52%である。
【0097】
実験例S3~S14の測定結果によれば、式(I-a)で表されるシロキサンモノマーを導入したコンタクトレンズ組成物において、コンタクトレンズのヒステリシスはいずれも30°未満であり、スーダンブラック(Sudan black)の染色透過率(%)はいずれも70%を超えるので、実験例S1~S2で製造されたコンタクトレンズはより優れた親水性を有する。
【0098】
尚、実験例S3~S14の配合で製造されたコンタクトレンズは、特殊の表面親水性改質処理又は表面親水性コーディングを行っていなかった。実験例S3~S14は、原料の配合のみで、レンズの表面改質処理を行ったレンズに劣らないレンズを得られたので、式(I-a)で表されるシロキサンモノマーは、レンズ表面の親水性を顕著に向上することができる。
【0099】
全体的に、実験例S3~S14に係るコンタクトレンズは、40~150Barrers(好ましくは、45~75Barrers)の酸素透過率、30~80%(好ましくは、37~57%)の平衡含水率、0~30°(好ましくは、11~25°)のヒステリシス、70~99.9%(好ましくは73~93%)のスーダンブラックの染色透過率、0.1~0.8MPa(好ましくは、0.26~0.38MPa)の伸長弾性率及び100~500%(好ましくは、243~328%)の伸長率を有する。
【0100】
更に説明すると、実験例S3~S14において、実験例S9が最も優れた実施例であり、実験例S11が次に優れた実施例であると認められる。これは、実験例S9の酸素透過率が高いと共に、実験例S9に含まれた式(I-a)で表されるシロキサンモノマーは、長鎖及び短鎖シリコンモノマーと良好な混和性を有し、伸長弾性率及び伸長率の機械的性質が優れた。
【0101】
実験例S11は、式(I-a)で表されるシロキサンモノマーの使用量が増加するため、実験例S9に比べて、伸長弾性率及び伸長率がやや劣る。しかしながら、実験例S11では、酸素透過率及びヒステリシスが極めて優れている。このような表現は、シリコーンヒドロゲル系においてレアである。
【0102】
更に説明すると、本発明に係るコンタクトレンズ表面の特性を証明するために、本発明の発明者は、実験例S9で製造されたコンタクトレンズ、及び市販のCooperVision製品My Day(Stenfilcon A)、Super-Air (Fanfilcon A)及びAlcon製品PRECISION1TM(Verofilcon A)を持って、5つのレンズの表面特性であるヒステリシス(°)及びスーダンブラックの染色透過率(%)の平均値の比較を行った。ヒステリシス(°)が低いほどレンズ表面の親水性が優れる。スーダンブラックの染色透過率(%)が高いほど、染料がレンズ表面に付着しにくいため、レンズ表面の親水性が優れる。
【0103】
PRECISION1TM(Verofilcon A)のレンズ表面にコーティングを行ったため、ヒステリシス(°)及びスーダンブラックの染色透過率(%)が優れている。
【0104】
実験例S9のレンズは、コーティングを行っていない前提で、My Day(Stenfilcon A)及びSuper-Air(Fanfilcon A)などの製品と同等のヒステリシス(°)を有すると共に、より優れたスーダンブラックの染色透過率(%)を達成した。また、実験例S9のレンズのスーダンブラックの染色透過率(%)がPRECISION1TM(Verofilcon A)に近い値を達成した。測定結果について、下表2に示すとおりである。
【0105】
【表2】
【0106】
[実施形態による有利な効果]
【0107】
本発明の有利な効果として、本発明に係るシロキサンモノマー、コンタクトレンズ組成物及びコンタクトレンズは、特定の親水性構造を有するシロキサンモノマーをコンタクトレンズ組成物に導入することによって、コンタクトレンズの表面親水性を向上すると共に、表面親水性コーティングを行う必要がない。
【0108】
本発明に係る技術特徴は、シロキサンモノマーの化学構造的多様性を増加することができる。また、ケトンの化学構造は共鳴式を有するため、電荷分離である分極を起こし、Rの置換基は多電子原子X(例えば、N、O、S)にすることによって、電荷分離による分極化を促進して、シロキサンモノマーのイオン性を増加することによって、コンタクトレンズの親水性及び保湿性の増加に有利となる。
【0109】
更に説明すると、本発明に係るコンタクトレンズ組成物で製造されたコンタクトレンズは、優れた表面親水性を有するので、親水性表面コーティングを行う必要がない。
【0110】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズを製造するためのシロキサンモノマーであって、前記シロキサンモノマーは、下式(I)で表される構造を有し、
【化22】
その中、R がH又はCHであり、
がハロゲンで置換されていないNHR、N(R、OR、SR、又は
【化23】
であり、nが6以下であり、

【化24】
であり、nが6以下であり、
がH又はC~Cアルキル基であり、
x≧0、y≧1、z≧0であることを特徴とする、シロキサンモノマー。
【請求項2】
前記シロキサンモノマーの重量平均分子量又は数平均分子量は、1,000g/mol~50,000g/molである、請求項1に記載のシロキサンモノマー。
【請求項3】
シロキサンモノマー、親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を含む、コンタクトレンズ組成物であって、前記シロキサンモノマーは、下式(I)で表される構造を有する第1のシロキサンモノマーを含み、
【化25】
がH又はCHであり、Rがハロゲンで置換されていないNHR、N(R、OR、SR、又は
【化26】
であり、nが6以下であり、R
【化27】
であり、nが6以下であり、RがH又はC~Cアルキル基であり、x≧0、y≧1、z≧0であることを特徴とする、コンタクトレンズ組成物。
【請求項4】
前記シロキサンモノマーは、第2のシロキサンモノマー、第3のシロキサンモノマー及び第4のシロキサンモノマーの中の少なくとも一つを更に含み、
前記第2のシロキサンモノマーは、下式(II)で表される構造を有し、
【化28】
前記第3のシロキサンモノマーは、下式(III)で表される構造を有し、
【化29】
前記第4のシロキサンモノマーは、(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランである、請求項3に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項5】
前記コンタクトレンズ組成物の総重量を100重量部として、前記第1のシロキサンモノマーの使用量が1重量部~30重量部であり、前記第2のシロキサンモノマーの使用量が40重量部以下であり、前記第3のシロキサンモノマーの使用量が40重量部以下であり、前記第4のシロキサンモノマーの使用量が30重量部以下である、請求項4に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項6】
前記親水性モノマーは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)、メタクリル酸グリシジル、モノメタクリル酸グリセロール、アクリル酸、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、グリシンビニルカーボネート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、及びメタクリル酸2-ヒドロキシブチルからなる群の少なくとも1つから選択され、
前記親水性モノマーの使用量は、30重量部~70重量部である、請求項3に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項7】
前記架橋剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、テトラエチレングリコールジメタクリラート、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレンジアクリルアミド、及び1,4-ジ(アクリルアミド)ブテンからなる群の少なくとも1つから選択され、
前記架橋剤の使用量は、0.01重量部~5重量部である、請求項3に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項8】
前記開始剤は、ジH5-シクロペンタジエニルビス[2,6-ジフルオロ3-(ピロール1-イル)フェニル]チタン(4)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンからなる群の少なく開始剤とも1つから選択され、
前記開始剤の使用量は、0.01重量部~2重量部である、請求項3に記載のコンタクトレンズ組成物。
【請求項9】
請求項3~8のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ組成物で製造されたコンタクトレンズであって、
前記コンタクトレンズは、レンズの表面に30°未満のヒステリシス(Hysteresis)を有し、且つレンズのスーダンブラック(Sudan black)染料で染色された後の染色透過率が70%を超えることを特徴とする、コンタクトレンズ。
【請求項10】
前記コンタクトレンズは、
(i)40Barrers~150Barrersの酸素透過率、
(ii)30%~80%の平衡含水率、
(iii)0°以上30°未満の前記ヒステリシス、
(iv)70%を超え99.9%以下の前記染色透過率、
(v)0.1MPa~0.8MPaの伸長弾性率、及び
(vi)100%~500%の伸長率、を満たす、請求項9に記載のコンタクトレンズ。