(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052523
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】バッテリセルの内部抵抗測定方法及びそのための装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/389 20190101AFI20240404BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240404BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240404BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240404BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240404BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240404BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20240404BHJP
【FI】
G01R31/389
H02J7/02 H
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/392
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117239
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2022-0125289
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520493430
【氏名又は名称】忠北大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】CHUNGBUK NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】キー ソクチョル
(72)【発明者】
【氏名】ユン サンスン
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA23
2G216BA53
2G216BA56
2G216CB17
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA05
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD06
5G503HA01
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】バッテリセルの内部抵抗測定方法及びそのための装置を開示する。
【解決手段】バランス抵抗を介して各バッテリセルを選択的に放電させるためのスイッチング素子を含むパッシブバランス回路部、及び、バッテリセルに対応するスイッチング素子がターンオンされる前後のターゲットバッテリセルの電圧に基づいてターゲットバッテリセルの交流内部抵抗値値を決定し、ターゲットバッテリセルの電圧変化量に基づいてターゲットバッテリセルの直流内部抵抗値を決定する制御部を含み、前記制御部は、バッテリスタックを構成する複数のバッテリセルの中から選択された複数のターゲットバッテリセルのバランシングが同時に行われるように、各ターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子を一緒に制御し、複数のターゲットバッテリセルの内部抵抗を同時に測定することを特徴とする、バッテリ管理装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセルごとに備えられ、バランス抵抗及び、前記バランス抵抗を介して各バッテリセルを選択的に放電させるためのスイッチング素子を含むパッシブバランス回路部、及び、
バランシングを行うバッテリセル(以下、ターゲットバッテリセル)に対応するスイッチング素子(以下、ターゲットスイッチング素子)がターンオン(turn on)される前後の前記ターゲットバッテリセルの電圧に基づいて前記ターゲットバッテリセルの交流内部抵抗(Alternative Current Internal Resistance、ACIR)値を決定し、前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされた時点から一定時間が経過した以降の時間区間の間の前記ターゲットバッテリセルの電圧変化量に基づいて前記ターゲットバッテリセルの直流内部抵抗(Direct Current Internal Resistance、DCIR)値を決定する制御部を含み、
前記制御部は、
バッテリスタックを構成する複数のバッテリセルの中から選択された複数のターゲットバッテリセルのバランシングが同時に行われるように、各ターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子を一緒に制御し、前記複数のターゲットバッテリセルの内部抵抗を同時に測定することを特徴とする、バッテリ管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
予め設定された周期ごとに前記ターゲットバッテリセルの電圧を測定し、
前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされる直前の周期で測定された電圧及び、前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされた直後の周期で測定された電圧間の差を用いて前記交流内部抵抗値を決定することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリ管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされることにより、前記ターゲットバッテリセルの電圧が前記ターゲットバッテリセルの等価直列抵抗と前記ターゲットスイッチング素子につながったバランス抵抗に分配される割合に基づき、前記交流内部抵抗値を決定することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリ管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記交流内部抵抗を測定する前に、前記バッテリスタックを他のバッテリスタックと並列につなぐリレーを開放(open)し、
前記バッテリスタック内の奇数番目のバッテリセルのグループと偶数番目のバッテリセルのグループの中から、両端電圧が最も高いバッテリセルを含むグループを選択し、
選択されたグループ内のバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオンさせて各バッテリセルの交流内部抵抗値を決定し、
前記選択されたグループ内のバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオフにした以降に、残りのグループ内のバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオンさせて各バッテリセルの交流内部抵抗値を決定することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリ管理装置。
【請求項5】
バッテリの内部抵抗を測定する方法であって、
バランシングを行うバッテリセル(以下、ターゲットバッテリセル)の電圧を測定するステップと、
前記ターゲットバッテリセルに対応するパッシブバランス回路のスイッチング素子(以下、ターゲットスイッチング素子)をターンオンさせるステップと、
前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされた以降の前記ターゲットバッテリセルの電圧を測定するステップと、
測定された電圧に基づき、前記ターゲットバッテリセルの交流内部抵抗(Alternative Current Internal Resistance、ACIR)値を決定するステップ、及び、
前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされた時点から一定時間が経過した以降の時間区間の間の前記ターゲットバッテリセルの電圧変化量に基づいて前記ターゲットバッテリセルの直流内部抵抗(Direct Current Internal Resistance、DCIR)値を決定するステップと、を含み、
前記ターゲットスイッチング素子をターンオンさせるステップは、
バッテリスタックを構成する複数のバッテリセルの中から選択された複数のターゲットバッテリセルのバランシングが同時に行われるように、各ターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子を一緒に制御し、
前記交流内部抵抗を決定するステップは、前記複数のターゲットバッテリセルの内部抵抗を同時に測定することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリの内部抵抗測定方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に記述される内容は、単に本実施例に関連される背景情報のみを提供するだけで従来技術を構成するものではない。
【0003】
バッテリが電気自動車など様々な領域に適用されるにつれ、バッテリの充電状態(State of Charge、SOC)及び劣化状態(State of Health、SOH)に関するより正確な測定が求められている。このために、バッテリの内部抵抗(Internal Resistance、IR)を測定してバッテリの劣化を計算する方案が登場した。
【0004】
バッテリの内部抵抗測定方法としては直流法と交流法があり、直流法で測定した内部抵抗を直流内部抵抗(Direct Current Internal Resistance、DCIR)といい、交流法で測定した内部抵抗を交流内部抵抗(Alternative Current Internal Resistance、ACIR)という。直流法ではバッテリに特定定電流をパルス状に印加して一定時間が過ぎた時点でバッテリ電圧の降下量または上昇量を測定して直流内部抵抗値を算出し、交流法ではバッテリに特定周波数の交流電流を印加してバッテリ両端の電圧を測定して交流内部抵抗値を算出する。
【0005】
従来のバッテリ管理システム(Battery Management System、BMS)では、直流法が主に使用されている。しかしながら、このような直流法を用いる場合、特定の定電流を印加している間にバッテリの充電又は放電が発生する。すなわち、直流電流でバッテリを充電する場合、充電中であるため、測定時間によって内部抵抗値が変わるようになる。同様に、直流電流でバッテリを放電すると、放電中であるため、測定時間によって内部抵抗値が変わるようになる。このように、直流内部抵抗測定法では、直流電流で充放電しながらバッテリの充電状態が変わるため、測定遅延時間によって内部抵抗値も一緒に変わり、充電量も同様に変わり、内部抵抗値算出のための電圧が安定化に到達できないという問題点がある。一方、電気自動車で車両を駆動するためにモーターを動作させている間、電流は激しく揺れるようになる。また、車両ごとに充電のための定電流値が異なるため、誤差が酷く発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、より短い時間でより正確な内部抵抗測定が可能なバッテリセルの内部抵抗測定方法及びそのための装置を提供することに主な目的がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記で述べた課題に限定されず、言及されていないまた他の課題は、以下の記載から通常の技術者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面によると、バッテリセルごとに備えられ、バランス抵抗及び、前記バランス抵抗を介して各バッテリセルを選択的に放電させるためのスイッチング素子を含むパッシブバランス回路部、及び、バランシングを行うバッテリセル(以下、ターゲットバッテリセル)に対応するスイッチング素子(以下、ターゲットスイッチング素子)がターンオン(turn on)される前後の前記ターゲットバッテリセルの電圧に基づいて前記ターゲットバッテリセルの交流内部抵抗(Alternative Current Internal Resistance、ACIR)値を決定し、前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされた時点から一定時間が経過した以降の時間区間の間の前記ターゲットバッテリセルの電圧変化量に基づいて前記ターゲットバッテリセルの直流内部抵抗(Direct Current Internal Resistance、DCIR)値を決定する制御部を含み、前記制御部は、バッテリスタックを構成する複数のバッテリセルの中から選択された複数のターゲットバッテリセルのバランシングが同時に行われるように、各ターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子を一緒に制御し、前記複数のターゲットバッテリセルの内部抵抗を同時に測定することを特徴とするバッテリ管理装置を提供する。
【0009】
本開示の他側面によると、バッテリの内部抵抗を測定するための方法であって、バランシングを行うバッテリセル(以下、ターゲットバッテリセル)の電圧を測定するステップと、前記ターゲットバッテリセルに対応するパッシブバランス回路のスイッチング素子(以下、ターゲットスイッチング素子)をターンオン(turn on)させるステップと、前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされた以降の前記ターゲットバッテリセルの電圧を測定するステップと、測定された電圧に基づき、前記ターゲットバッテリセルの交流内部抵抗(Alternative Current Internal Resistance、ACIR)値を決定するステップ、及び、前記ターゲットスイッチング素子がターンオンされた時点から一定時間が経過した以降の時間区間の間の前記ターゲットバッテリセルの電圧変化量に基づいて前記ターゲットバッテリセルの直流内部抵抗(Direct Current Internal Resistance、DCIR)値を決定するステップを含み、前記ターゲットスイッチング素子をターンオンさせるステップは、バッテリスタックを構成する複数のバッテリセルの中から選択された複数のターゲットバッテリセルのバランシングが同時に行われるように、各ターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子を一緒に制御し、前記交流内部抵抗を決定するステップは、前記複数のターゲットバッテリセルの内部抵抗を同時に測定することを特徴とする方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施例によると、より短い時間でより正確な内部抵抗測定が可能になるという効果がある。
【0011】
本開示の一実施例によると、既存のバッテリ管理システムに含まれているパッシブバランス回路を用いてセルバランシングを行うと同時にセルの内部抵抗を測定することができる。さらに、本開示の一実施例に係る方法及び装置は、既存のバッテリ管理システムのソフトウェア変更のみで具現され、コストを削減できるという効果がある。
【0012】
本開示の効果は以上で言及された効果に限定されず、言及されていないまた他の効果は以下の記載から通常の当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一実施例に係るバッテリ管理装置を概略的に示すブロック構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施例に係るバッテリセルの等価回路図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施例に係る内部抵抗測定方法を説明するための波形図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施例に係るバッテリセルの内部抵抗を測定する方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本開示の一実施例に係るバッテリスタック内の各バッテリセルの内部抵抗を測定する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一部の実施例を例示的な図面を用いて詳しく説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素に対しては、たとえ異なる図面に表示されても可能な限り同一の符号が付されるようにしていることに留意されたい。なお、本開示を説明するにあたり、関連された公知の構成又は機能についての具体的な説明が本開示の要旨を曖昧にすると判断される場合には、その詳しい説明は省く。
【0015】
本開示に係る実施例の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、i)、ii)、a)、b)などの符号を用いる場合がある。このような符号は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものであり、その符号によって当該構成要素の本質又は順番や順序等が限定されない。明細書にてある部分がある構成要素を「含む」又は「備える」とするとき、これは、明示的に逆の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0016】
添付された図面と共に以下に開示される詳しい説明は、本開示の例示的な実施形態を説明しようとするものであり、本開示が実施される唯一の実施形態を示そうとするものではない。
【0017】
図1は、本開示の一実施例に係るバッテリ管理装置を概略的に示すブロック構成図である。
【0018】
図1を参照すると、本開示の一実施例に係るバッテリ管理装置10は、1つ以上のパッシブバランス回路部100及び制御部120の、全部又は一部を含む。
図1に示されたすべてのブロックが必須の構成要素ではなく、他の実施例にて、バッテリ管理装置10に含まれた一部のブロックが追加、変更、又は削除され得る。すなわち、
図1は、パッシブバランス回路を用いてバッテリセルの内部抵抗を測定するための構成要素を例示的に示しており、バッテリ管理装置10は、他の機能の具現のために図示したものより多いあるいは少ない構成要素、又は異なる構成要素の構成を有し得ることを認識すべきである。
【0019】
一方、
図1では、バッテリ管理装置10が1つのバッテリスタック14に含まれたバッテリセルCell‐1ないしCell‐Nの状態を測定するものとして示しているが、これは説明の便宜のためであり、本開示はこれに限定されない。すなわち、バッテリ管理装置10は、複数のバッテリスタックに含まれたバッテリセルの状態を測定できるように構成される。
【0020】
パッシブバランス回路部100は、バッテリセルCell‐1ないしCell‐Nのそれぞれに備えられ、バランス抵抗BR‐1ないしBR‐N及び、バランス抵抗BR‐1ないしBR‐Nを介して各バッテリセルCell‐1ないしCell‐Nを選択的に放電させるためのスイッチング素子SW‐1ないしSW‐Nを含む。ここで、スイッチング素子SW‐1ないしSW‐Nはトランジスタ(transistor)であってもよいが、これに限定されない。
【0021】
制御部120は、スイッチング素子SW‐1ないしSW‐Nをオン又はオフさせるための制御信号を生成する。
【0022】
制御部120は、各バッテリセルCell-1ないしCell‐Nの状態を測定する。バッテリセルの状態は、例えば、内部抵抗、SOC、SOH及び/又は温度を含む。制御部120は、命令語を保存するメモリ及び少なくとも1つのプロセッサを含む。また、制御部120は、バッテリセルの両端電圧をデジタル信号に変換させるアナログ‐デジタル変換器(Analog‐to‐Digital converter、ADC)をさらに含んでもよい。別の例として、アナログ‐デジタル変換器は、バッテリセルCell‐1ないしCell‐Nと制御部120との間に別途備えられてもよい。
【0023】
制御部120は、複数のバッテリセルCell-1ないしCell‐Nのうち、バランシングを行う1つ以上のターゲットバッテリセルCell-n(ここで、nはN以下の自然数)にそれぞれ対応するターゲットスイッチング素子SW‐nをターンオン(turn on)させ、各ターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされる前後の各ターゲットバッテリセルCell-nの電圧に基づいて各ターゲットバッテリセルCell-nの交流内部抵抗値を決定する。
【0024】
以下では、
図2及び
図3を参照し、制御部120がターゲットバッテリセルの内部抵抗を測定する方法を説明する。
【0025】
図2は、本開示の一実施例に係るバッテリセルの等価回路図である。
【0026】
図3は、本開示の一実施例に係る内部抵抗測定方法を説明するための波形図である。
【0027】
図2に示されたように、各バッテリセルCell-1ないしCell‐Nは、等価直列抵抗R1及び、リーク抵抗R2と等価キャパシタCが並列につながったRC並列回路を含むR‐RC等価回路で表現される。ターゲットバッテリセルCell‐nにつながったターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされると、バランス抵抗BR‐nを介した放電経路が形成され、
図3に図示されたように、ターゲットバッテリセルの電圧V
Cell‐nが瞬間的に降下した後、安定化に向かうようになる。
【0028】
ここで、データゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされる時点に、バッテリセルCell‐nには周波数の大きさが無限大に近い電流が流れるようになる。したがって、ターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされる時点でターゲットバッテリセルの等価キャパシタCのインピーダンスがゼロに近づくため、電流分配によってリーク抵抗R2が無視され、等価直列抵抗R1の大きさのみを測定できるようになる。
【0029】
この点に起因し、本開示の一実施例に係る制御部120は、ターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされる時点での、ターゲットバッテリセルの電圧VCell-nの瞬間的な降下量を測定し、ターゲットバッテリセルCell‐nの交流内部抵抗値を算出することができる。
【0030】
一例として、制御部120は、予め設定された周期ごとにターゲットバッテリセルの電圧VCell-nを測定するように構成される。制御部120は、ターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされる直前の周期で測定された電圧VCell‐n及び、ターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされた直後の周期で測定された電圧VCell‐n間の差を用いてターゲットバッテリセルCell‐nの交流内部抵抗値を決定する。
【0031】
制御部120は、ターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされることにより、ターゲットバッテリセルCell‐nの電圧がターゲットバッテリセルCell‐nの等価直列抵抗R1とターゲットスイッチング素子SW ‐n)につながったバランス抵抗BR-nに分配される割合に基づき、交流内部抵抗値を決定する。例えば、制御部120は、式1に基づき、ターゲットバッテリセルCell-nの交流内部抵抗値、すなわち等価直列抵抗R1の大きさを決定する。
【0032】
【0033】
ここで、v1はターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされる前に測定されたバッテリセルの両端電圧VCell-nであり、v2はターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされた後に測定されたバッテリセルの両端 電圧VCell-nであり、BRはバランス抵抗の抵抗値である。このために、制御部120は、パッシブバランス回路部100に含まれたバランス抵抗BR-1ないしBR‐Nの抵抗値を予め保存しておくことができる。
【0034】
制御部120は、ターゲットバッテリセルCell‐nの直流内部抵抗値を測定してもよい。例えば、
図3に示されたように、制御部120は、ターゲットスイッチング素子SW‐nがターンオンされた時点から一定時間が経過した以降の時間区間の間のターゲットバッテリセルの電圧V
Cell‐nの変化量に基づき、直流内部抵抗値を決定する。
【0035】
制御部120は、バッテリスタック14を構成する複数のバッテリセルCell‐1ないしCell‐Nの中から選択された1つ以上のターゲットバッテリセルの交流内部抵抗を同時に測定することができる。例えば、制御部120は、交流内部抵抗を測定する前に、バッテリスタック14を他のバッテリスタック(図示せず)と並列につなぐリレー(図示せず)を開放(open)させ、バッテリスタック14内の奇数番目のバッテリセルCell-(2i+1)(ここで、iは(N-1)/2以下の自然数)のグループと、偶数番目のバッテリセルCell‐(2j)(ここで、jはN/2以下の自然数)のグループの中から、両端電圧が最も高いバッテリセルを含むグループを選択し、選択されたグループ内のバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオンさせて選択されたグループ内の各バッテリセルの交流内部抵抗値を決定し、選択されたグループ内のバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオフした以降に、残りのグループ内のバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオンさせて該当バッテリセルの交流内部抵抗値を決定することができる。
【0036】
図4は、本開示の一実施例に係るバッテリセルの内部抵抗を測定する方法を示すフローチャートである。
【0037】
図4に示された方法は、上述した制御部120及び/又はバッテリ管理装置10等によって遂行されるので、繰り返される説明については詳しい内容を省く。
【0038】
バッテリ管理装置10は、バランシングを行うバッテリセル(以下、ターゲットバッテリセル)の電圧を測定する(S400)。このとき、ターゲットバッテリセルに対応するパッシブバランス回路のスイッチング素子はオフ(off)になっている状態である。
【0039】
バッテリ管理装置10は、ターゲットバッテリセルに対応するパッシブバランス回路のスイッチング素子をターンオン(turn on)させる(S420)。
【0040】
バッテリ管理装置10は、スイッチング素子がターンオンされた以降のターゲットバッテリセルの電圧を測定する(S440)。
【0041】
バッテリ管理装置10は、測定された電圧に基づき、ターゲットバッテリセルの交流内部抵抗値を決定する(S460)。例えば、バッテリ管理装置10は、スイッチング素子がターンオンされることにより、ターゲットバッテリセルの電圧がターゲットバッテリセルの等価直列抵抗成分とスイッチング素子とつながったバランス抵抗に分配される割合に基づき、交流内部抵抗値を決定する。
【0042】
バッテリ管理装置10は、ターゲットスイッチング素子がターンオンされた時点から一定時間が経過した以降の時間区間の間のターゲットバッテリセルの電圧変化量に基づいてターゲットバッテリセルの直流内部抵抗値を追加で決定してもよい。
【0043】
一方、バッテリ管理装置10は、バッテリスタック14を構成する複数のバッテリセルの中から選択された複数のターゲットバッテリセルのバランシングが同時に行われるように、各ターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子を一緒に制御し、複数のターゲットバッテリセルの内部抵抗を同時に測定する。
【0044】
図5は、本開示の一実施例に係るバッテリスタック内の各バッテリセルの内部抵抗を測定する方法を示すフローチャートである。
【0045】
図5に示された方法は、上述した制御部120及び/又はバッテリ管理装置10等によって遂行されるので、繰り返される説明については詳しい内容を省く。
【0046】
バッテリ管理装置10は、バッテリスタック14を他のバッテリスタックと並列につなぐPRA(Power Relay Assembly)リレーを開放(open)する(S500)。バッテリスタックが並列につながった状態でセルバランシングを行う場合、相対的に全体電圧が低くなったバッテリスタックに補償電流が流入され、この電流値はセルバランスの数の差に比例して増えるため、内部抵抗測定に誤差を引き起こす可能性がある。本開示では、パッシブバランス回路を用いた内部抵抗測定の前に、バッテリスタック間のリレーを開放させることで、セルバランシングの進行による電圧均等が崩れて発生する補償電流の流入(又は流出)を防止することができる。
【0047】
バッテリ管理装置10は、バッテリスタック14内の奇数番目のバッテリセルと偶数番目のバッテリセルをそれぞれグルーピングする(S510)。
【0048】
バッテリ管理装置10は、奇数セルグループと偶数セルグループのうち、両端電圧が最も高いバッテリセル(以下、最高電圧セル)を含むグループを確認する(S520)。
【0049】
最高電圧セルが含まれたグループが偶数セルグループである場合、バッテリ管理装置10は、偶数セルグループに対するセルバランシングを進行する(S530)。バッテリ管理装置10は、偶数セルグループ内のバッテリセルのうち、少なくとも1つ以上のバッテリセル(以下、第1のターゲットバッテリセル)に対応するスイッチング素子をターンオンさせる。
【0050】
バッテリ管理装置10は、スイッチング素子がターンオンされることにより、第1のターゲットバッテリセルの瞬間変動電圧を測定することができる(S532)。例えば、バッテリ管理装置10は、予め設定された周期ごとに第1のターゲットバッテリセルの電圧を測定し、スイッチング素子がターンオンされる直前の周期で測定された電圧及び、スイッチング素子がターンオンされた直後の周期で測定された電圧間の差を瞬間変動電圧で測定することができる。具現例により、バッテリ管理装置10は、第1のターゲットバッテリセルのSOC及び/又は温度を一緒に測定することができる。
【0051】
次に、バッテリ管理装置10は、奇数セルグループに対するセルバランシングを進行する(S534)。バッテリ管理装置10は、第1のターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオフした以降に、奇数セルグループ内のバッテリセルのうち、少なくとも1つ以上のバッテリセル(以下、第2のターゲットバッテリセル)に対応するスイッチング素子をターンオンさせる。
【0052】
バッテリ管理装置10は、スイッチング素子がターンオンされることにより、第2のターゲットバッテリセルの瞬間変動電圧を測定することができる(S536)。例えば、バッテリ管理装置10は、予め設定された周期ごとに第2のターゲットバッテリセルの電圧を測定し、スイッチング素子がターンオンされる直前の周期で測定された電圧及び、スイッチング素子がターンオンされた直後の周期で測定された電圧間の差を瞬間変動電圧で測定することができる。具現例により、バッテリ管理装置10は、第2のターゲットバッテリセルのSOC及び/又は温度を一緒に測定することができる。
【0053】
一方、最高電圧セルが含まれたグループが奇数セルグループである場合、バッテリ管理装置10は、奇数セルグループに対するセルバランシングを進行する(S540)。バッテリ管理装置10は、奇数セルグループ内のバッテリセルのうち、少なくとも1つ以上のバッテリセルである第2のターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオンさせる。
【0054】
バッテリ管理装置10は、スイッチング素子がターンオンされることにより、第2のターゲットバッテリセルの瞬間変動電圧を測定することができる(S542)。
【0055】
次に、バッテリ管理装置10は、偶数セルグループに対するセルバランシングを進行する(S544)。バッテリ管理装置10は、第2のターゲットバッテリセルに対応するスイッチング素子をターンオフした以降に、偶数セルグループ内のバッテリセルのうち、少なくとも1つ以上のバッテリセル(以下、第1のターゲットバッテリセル)に対応するスイッチング素子をターンオンさせる。
【0056】
バッテリ管理装置10は、スイッチング素子がターンオンされることにより、第1のターゲットバッテリセルの瞬間変動電圧を測定することができる(S546)。
【0057】
バッテリ管理装置10は、各バッテリセルの瞬間変動電圧及びSOCを用い、SOC別の交流内部抵抗を算出する(S550)。バッテリ管理装置10は、温度及びSOC別データを比較し(S560)、各バッテリのSOHを推定する(S570)。一例として、バッテリ管理装置10は、特定のバッテリセルが、同じSOCの他のバッテリセルと比較して交流内部抵抗が大きい場合、当該バッテリセルの劣化が大幅に進行されたものと推定することができる。別の例として、バッテリ管理装置10は、バッテリセルの温度、SOC、及び内部抵抗によるSOHが保存されたテーブルを参照し、各バッテリのSOHを推定することができる。
【0058】
上述したように、バッテリ管理装置10は、直列につながったバッテリセルを含むバッテリスタック14で連続されたバッテリセル、すなわち直接的に直列につながったバッテリセルの内部抵抗を同時に測定しないことで、意図しない電流ループ(loop)の発生と、これによる測定誤差及び事故発生を防止することができる。
【0059】
本発明に係る装置又は方法の各構成要素は、ハードウェア又はソフトウェアで具現される、あるいはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで具現される。また、各構成要素の機能がソフトウェアで具現され、マイクロプロセッサが各構成要素に対応するソフトウェアの機能を実行するように具現されてもよい。
【0060】
本明細書に説明されるシステム及び技法の様々な具現例は、デジタル電子回路、集積回路、FPGA(field programmable gate array)、ASIC(application specific integrated circuit)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はこれらの組み合わせで実現される。このような様々な具現例は、プログラマブルシステム上で実行可能な1つ以上のコンピュータプログラムで具現されることを含む。プログラマブルシステムは、ストレージシステム、少なくとも1つの入力デバイス、そして少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、それらにデータ及び命令を伝送するように結合される少なくとも1つのプログラマブループロセッサ(これは特殊目的プロセッサ、あるいは汎用プロセッサである)を含む。コンピュータプログラム(これはまた、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、あるいはコードとして知られている)は、プログラマブループロセッサに対する命令語を含み、「コンピュータが読み取り可能な記録媒体」に保存される。
【0061】
コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、コンピュータシステムによって読み取ることができるデータが保存されるすべての種類の記録装置を含む。このようなコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、ROM、CD‐ROM、磁気テ‐プ、フロッピ‐ディスク、メモリカ‐ド、ハードディスク、光磁気ディスク、ストレージデバイスなどの不揮発性(non-volatile)又は非一時的(non-transitory)媒体であってもよく、またデータ伝送媒体(data transmission medium)のような一時的な(transitory)媒体をさらに含んでもよい。また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、ネットワ‐クにつながったコンピュータシステムに分散され、分散方式でコンピュータが読み取り可能なコードが保存されて実行されてもよい。
【0062】
本明細書のフローチャート/タイミング図では、各ステップを順次実行することが記載されているが、これは本開示の一実施例の技術思想を例示的に説明したものにすぎない。言い換えれば、本開示の一実施例が属する技術分野にて通常の知識を有する者であれば、本開示の一実施例の本質的な特性から逸脱しない範囲でフローチャート/タイミング図に記載された順序を変更して実行する、又は各ステップのうちの1つ以上のステップを並列に実行することにより様々に修正及び変形して適用可能であるので、フローチャート/タイミング図は時系列的な順序に限定されるものではない。
【0063】
以上の説明は、本実施例の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本実施例が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本実施例の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。したがって、本実施例は、本実施例の技術思想を限定するものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本実施例の技術思想の範囲が限定されるものではない。本実施例の保護範囲は、特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本実施例の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0064】
10 バッテリ管理装置 14 バッテリスタック
100 パッシブバランス回路部 120 制御部