(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052537
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20240404BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240404BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 C
B60H1/00 102V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127533
(22)【出願日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】63/411,741
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】青木 優人
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3L211
【Fターム(参考)】
3B084JG02
3B084JG06
3B087DE09
3L211DA14
3L211DA53
(57)【要約】
【課題】乗物用シートにおいて、温度調節器のダクトへの組付構造を強固にする。
【解決手段】乗物用シート1は、フレーム10と、フレームに支持され、送風通路31が形成されたパッド11と、送風機32と、送風通路と送風機とを接続するダクト33と、ダクト内に設けられる温度調節器34とを有する。ダクトは、互いに直列に接続された第1ダクト51及び第2ダクト52を有する。第2ダクトは、互いに結合された第1部材53及び第2部材54によって筒形に形成されている。第1部材の内側には、温度調節器を保持する保持部55が形成されている。第1部材の第1端53A及び第2部材の第1端54Aは、送風通路に挿入されている。第1部材の第2端53B及び第2部材の第2端54Bは、第1ダクトに挿入されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
フレームと、
前記フレームに支持され、送風通路が形成されたパッドと、
送風機と、
前記送風通路と前記送風機とを接続するダクトと、
前記ダクト内に設けられる温度調節器とを有し、
前記ダクトは、互いに直列に接続された第1ダクト及び第2ダクトを有し、
前記第2ダクトは、互いに結合された第1部材及び第2部材によって筒形に形成され、
前記第1部材の内側には、前記温度調節器を保持する保持部が形成され、
前記第1部材の第1端及び前記第2部材の第1端は、前記送風通路に挿入され、
前記第1部材の第2端及び前記第2部材の第2端は、前記第1ダクトに挿入されている乗物用シート。
【請求項2】
前記第1部材は、筒形に形成され、前記温度調節器が通過可能な挿入孔を有し、
前記第2部材は、前記挿入孔を覆う請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第1部材及び前記第2部材は、互いに係合する係合部を有し、
前記係合部は前記送風通路内に挿入される請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記保持部と前記温度調節器との間に断熱材が介装される請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記パッドは、乗員の背部を支持するべく、上下方向に延び、
前記送風通路は、前記パッドの前面の上部において開口する複数の吹出孔を有する請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項6】
複数の前記吹出孔は、前方に向けて上方に傾斜している請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記フレームは、ヘッドレストを支持する左右のヘッドレスト支持部を有し、
前記送風通路は、前記第1部材の前記第1端及び前記第2部材の前記第1端を受容する接続孔を有し、
前方から見て、前記接続孔は左右の前記ヘッドレスト支持部の間に配置されている請求項1~6のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第1部材及び前記第2部材は、前後方向に延び、
前後方向から見て、前記第2ダクトは前記送風機と重ならない位置に配置され、
前記第1ダクトは可撓性を有し、前記第1部材及び前記第2部材の後端に接続されている請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記フレームには前記送風機を支持するためのブラケットが設けられ、
前後方向から見て、前記第2ダクトは前記ブラケットと重ならない位置に配置されている請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記第1部材の前記第1端には、外方に突出したフランジが設けられ、
前記送風通路は前記接続孔に接続した主通路を有し、
前記フランジは前記主通路に配置され、
前記フランジの幅は前記接続孔の幅よりも大きい請求項8に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート本体に設けられたダクトと、ダクトに接続された送風機と、ダクトに設けられたペルチェ素子とを有する乗物用シートを開示している。ペルチェ素子は、ダクトを流れる空気の温度を調節する。ダクトは、シートバックの上部に吹出口を有し、乗員の首及び肩に温度調節された空気を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係る乗物用シートは、ペルチェ素子等の温度調節器のダクトへの具体的な組付構造を開示していない。ダクトへの温度調節器の組付構造は、壊れ難いことが要求される。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、乗物用シートにおいて、温度調節器のダクトへの組付構造を強固にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、乗物用シート(1)であって、フレーム(10)と、前記フレームに支持され、送風通路(31)が形成されたパッド(11)と、送風機(32)と、前記送風通路と前記送風機とを接続するダクト(33)と、前記ダクト内に設けられる温度調節器(34)とを有し、前記ダクトは、互いに直列に接続された第1ダクト(51)及び第2ダクト(52)を有し、前記第2ダクトは、互いに結合された第1部材(53)及び第2部材(54)によって筒形に形成され、前記第1部材の内側には、前記温度調節器を保持する保持部(55)が形成され、前記第1部材の第1端(53A)及び前記第2部材の第1端(54A)は、前記送風通路に挿入され、前記第1部材の第2端(53B)及び前記第2部材の第2端(54B)は、前記第1ダクトに挿入されている。
【0007】
この態様によれば、作業者は第1部材及び第2部材を分離することによって温度調節器を第1部材の内側の保持部に容易に配置することができる。互いに結合される第1部材及び第2部材は、共に送風通路に挿入され、かつ共に第1ダクトに挿入されるため、互いに分離し難い。これにより、乗物用シートにおいて、温度調節器のダクトへの組付構造を壊れ難くすることができる。
【0008】
上記の態様において、前記第1部材は、筒形に形成され、前記温度調節器が通過可能な挿入孔(56)を有し、前記第2部材は、前記挿入孔を覆ってもよい。
【0009】
この態様によれば、第2ダクトの構造を簡素にすることができる。
【0010】
上記の態様において、前記第1部材及び前記第2部材は、互いに係合する係合部(61)を有し、前記係合部は前記送風通路内に挿入されてもよい。
【0011】
この態様によれば、係合部が互いに分離し難くなるため、温度調節器のダクトへの組付構造が一層壊れ難くなる。
【0012】
上記の態様において、前記保持部と前記温度調節器との間に断熱材(58)が介装されてもよい。
【0013】
この態様によれば、温度調節器から第2ダクトへの熱の移動が抑制されるため、エネルギー効率が向上する。
【0014】
上記の態様において、前記パッドは、乗員の背部を支持するべく、上下方向に延び、前記送風通路は、前記パッドの前面の上部において開口する複数の吹出孔(31C)を有してもよい。
【0015】
この態様によれば、吹出口が乗員の首及び肩に向けて空気を吹き出すため、乗員を効率良く温度調節することができる。
【0016】
上記の態様において、複数の前記吹出孔は、前方に向けて上方に傾斜してもよい。
【0017】
この態様によれば、送風口は乗員の首及び肩に向けて空気を吹き出し、乗員を効率良く温度調節することができる。
【0018】
上記の態様において、前記フレームは、ヘッドレストを支持する左右のヘッドレスト支持部(21)を有し、前記送風通路は、前記第1部材の前記第1端及び前記第2部材の前記第1端を受容する接続孔(31C)を有し、前方から見て、前記接続孔は左右の前記ヘッドレスト支持部の間に配置されてもよい。
【0019】
この態様によれば、左右のヘッドレスト支持部の間の空間を利用して第2ダクトを効率良く配置することができる。
【0020】
上記の態様において、前記第1部材及び前記第2部材は、前後方向に延び、前後方向から見て、前記第2ダクトは前記送風機と重ならない位置に配置され、前記第1ダクトは可撓性を有し、前記第1部材及び前記第2部材の後端に接続されてもよい。
【0021】
この態様によれば、乗物用シートに着座した乗員から第2ダクトに荷重が加わったときに、第2ダクトは後方に移動することができる。第1ダクトは可撓性を有するため、第2ダクトの移動に応じて変形する。
【0022】
上記の態様において、前記フレームには前記送風機を支持するためのブラケット(41)が設けられ、前後方向から見て、前記第2ダクトは前記ブラケットと重ならない位置に配置されてもよい。
【0023】
この態様によれば、乗物用シートに着座した乗員から第2ダクトに荷重が加わったときに、第2ダクトは後方に移動することができる。
【0024】
上記の態様において、前記第1部材の前記第1端には、外方に突出したフランジ(53C)が設けられ、前記送風通路は前記接続孔に接続した主通路(31A)を有し、前記フランジは前記主通路に配置され、前記フランジの幅は前記接続孔の幅よりも大きくてもよい。
【0025】
この態様によれば、フランジによって、第2ダクトが接続孔から抜け出すことが抑制される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様は、乗物用シート(1)であって、フレーム(10)と、前記フレームに支持され、送風通路(31)が形成されたパッド(11)と、送風機(32)と、前記送風通路と前記送風機とを接続するダクト(33)と、前記ダクト内に設けられる温度調節器(34)とを有し、前記ダクトは、互いに直列に接続された第1ダクト(51)及び第2ダクト(52)を有し、前記第2ダクトは、互いに結合された第1部材(53)及び第2部材(54)によって筒形に形成され、前記第1部材の内側には、前記温度調節器を保持する保持部(55)が形成され、前記第1部材の第1端(53A)及び前記第2部材の第1端(54A)は、前記送風通路に挿入され、前記第1部材の第2端(53B)及び前記第2部材の第2端(54B)は、前記第1ダクトに挿入されている。
【0027】
この態様によれば、作業者は第1部材及び第2部材を分離することによって温度調節器を第1部材の内側の保持部に容易に配置することができる。互いに結合される第1部材及び第2部材は、共に送風通路に挿入され、かつ共に第1ダクトに挿入されるため、互いに分離し難い。これにより、乗物用シートにおいて、温度調節器のダクトへの組付構造を壊れ難くすることができる。
【0028】
上記の態様において、前記第1部材は、筒形に形成され、前記温度調節器が通過可能な挿入孔(56)を有し、前記第2部材は、前記挿入孔を覆ってもよい。
【0029】
この態様によれば、第2ダクトの構造を簡素にすることができる。
【0030】
上記の態様において、前記第1部材及び前記第2部材は、互いに係合する係合部(61)を有し、前記係合部は前記送風通路内に挿入されてもよい。
【0031】
この態様によれば、係合部が互いに分離し難くなるため、温度調節器のダクトへの組付構造が一層壊れ難くなる。
【0032】
上記の態様において、前記保持部と前記温度調節器との間に断熱材(58)が介装されてもよい。
【0033】
この態様によれば、温度調節器から第2ダクトへの熱の移動が抑制されるため、エネルギー効率が向上する。
【0034】
上記の態様において、前記パッドは、乗員の背部を支持するべく、上下方向に延び、前記送風通路は、前記パッドの前面の上部において開口する複数の吹出孔(31C)を有してもよい。
【0035】
この態様によれば、吹出口が乗員の首及び肩に向けて空気を吹き出すため、乗員を効率良く温度調節することができる。
【0036】
上記の態様において、複数の前記吹出孔は、前方に向けて上方に傾斜してもよい。
【0037】
この態様によれば、送風口は乗員の首及び肩に向けて空気を吹き出し、乗員を効率良く温度調節することができる。
【0038】
上記の態様において、前記フレームは、ヘッドレストを支持する左右のヘッドレスト支持部(21)を有し、前記送風通路は、前記第1部材の前記第1端及び前記第2部材の前記第1端を受容する接続孔(31C)を有し、前方から見て、前記接続孔は左右の前記ヘッドレスト支持部の間に配置されてもよい。
【0039】
この態様によれば、左右のヘッドレスト支持部の間の空間を利用して第2ダクトを効率良く配置することができる。
【0040】
上記の態様において、前記第1部材及び前記第2部材は、前記前後方向に延び、前後方向から見て、前記第2ダクトは前記送風機と重ならない位置に配置され、前記第1ダクトは可撓性を有し、前記第1部材及び前記第2部材の後端に接続されてもよい。
【0041】
この態様によれば、乗物用シートに着座した乗員から第2ダクトに荷重が加わったときに、第2ダクトは後方に移動することができる。第1ダクトは可撓性を有するため、第2ダクトの移動に応じて変形する。
【0042】
上記の態様において、前記フレームには前記送風機を支持するためのブラケット(41)が設けられ、前後方向から見て、前記第2ダクトは前記ブラケットと重ならない位置に配置されてもよい。
【0043】
この態様によれば、乗物用シートに着座した乗員から第2ダクトに荷重が加わったときに、第2ダクトは後方に移動することができる。
【0044】
上記の態様において、前記第1部材の前記第1端には、外方に突出したフランジ(53C)が設けられ、前記送風通路は前記接続孔に接続した主通路(31A)を有し、前記フランジは前記主通路に配置され、前記フランジの幅は前記接続孔の幅よりも大きくてもよい。
【0045】
この態様によれば、フランジによって、第2ダクトが接続孔から抜け出すことが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図2】表皮材及びパッドを省略して示すシートバックの正面図
【
図6】変形例に係る、表皮材及びパッドを省略して示すシートバックの正面図
【
図7】変形例に係る、表皮材及びパッドを省略して示すシートバックの正面図
【
図8】変形例に係る、表皮材及びパッドを省略して示すシートバックの正面図
【
図9】変形例に係る、表皮材及びパッドを省略して示すシートバックの正面図
【
図10】変形例に係る、表皮材及びパッドを省略して示すシートバックの正面図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗物用シートを自動車のシートに適用した実施形態について説明する。以下の説明では、上下方向は鉛直方向に沿った方向とする。また、前後方向は鉛直方向に直交する方向であり、シートクッションを基準として、シートバックが位置する方向を後方、後方と相反する方向を前方とする。また、左右方向は、上下方向及び前後方向に垂直な方向であり、前方を基準として定められる。
【0048】
図1に示すように、シート1は、自動車のフロア2に設けられたシートクッション3と、シートクッション3の後部から上方に延びるシートバック4とを有する。シートクッション3は乗員の臀部を支持し、シートバック4は乗員の背部を支持する。
図2に示すように、シートクッション3は、スライドレールを介してフロア2に設けられてもよい。シートクッション3とスライドレールの間には、昇降装置が介装されてもよい。
【0049】
シートクッション3は、骨格をなすシートクッションフレームと、シートクッションフレームに支持されるパッドと、パッドの表面を覆う表皮材とを有する。シートバック4は、骨格をなすシートバックフレーム10と、シートバックフレーム10に支持されるパッド11と、パッド11の表面を覆う表皮材12とを有する。シートクッションフレームとシートバックフレーム10とは、リクライニング装置を介して互いに連結され、シート1のフレームを構成する。以下の説明では、シートバック4は上下に延びる初期位置に配置されている。
【0050】
図2に示すように、シートバックフレーム10は、上下に延びる左右のバックサイドメンバ14と、左右に延び、左右のバックサイドメンバ14の上端のそれぞれに結合したアッパメンバ15と、左右に延び、左右のバックサイドメンバ14の下部のそれぞれに結合したロアメンバ16と、アッパメンバ15とロアメンバ16との間を左右に延び、左右のバックサイドメンバ14のそれぞれに結合したミドルメンバ17とを有する。ミドルメンバ17は、左右のバックサイドメンバ14の上下方向における中間部よりも上方に配置されている。
【0051】
左右のバックサイドメンバ14の下部は、面が左右を向く板金部材によって形成されている。左右のバックサイドメンバ14の上部及びアッパメンバ15は、連続したパイプ材によって形成されている。パイプ材は、左右に延びる中央部と、中央部に対して屈曲され、下方に延びる左右の端部とを有する。パイプ材の左右の端部は、左右の板金部材の左右内方を向く面に結合されている。
【0052】
アッパメンバ15には、左右一対のヘッドレスト支持部21が設けられている。ヘッドレスト支持部21のそれぞれは、筒形に形成され、上下に延びている。ヘッドレスト支持部21のそれぞれは、アッパメンバ15の前面に溶接等によって結合されている。ヘッドレスト支持部21のそれぞれは、アッパメンバ15の左右方向における中央部において左右に間隔をおいて配置されている。ヘッドレスト支持部21のそれぞれには、樹脂製のカラー22がそれぞれ装着される。ヘッドレスト18から延びる左右一対のピラー23(
図1参照)は、カラー22を介してヘッドレスト支持部21に挿入され、支持される。
【0053】
シートバック4の下部には、乗員の腰部を支持するためのランバーサポート25が設けられている。ランバーサポート25は、板状の支持板26と、支持板26とシートバックフレーム10とを接続する弾性部材27とを有する。弾性部材27は、例えば複数の線ばねであり、ミドルメンバ17、ロアメンバ16、及び左右のバックサイドメンバ14の少なくとも2つの間に掛け渡されているとよい。本実施形態では、弾性部材27は左右一対の線ばねであり、それぞれ上下に延び、ミドルメンバ17とロアメンバ16とに結合されている。支持板26は、左右の弾性部材27の下部に結合されているとよい。支持板26は、樹脂から形成され、可撓性を有する。
【0054】
図2~
図5に示すように、シートバック4には送風装置30が設けられている。送風装置30は、パッド11に形成された送風通路31と、送風機32と、送風通路31と送風機32とを接続するダクト33と、ダクト33内に設けられる温度調節器34とを有する。
【0055】
図4及び
図5に示すように、送風通路31は、パッド11の内部に形成された主通路31Aと、主通路31Aに接続した接続孔31Bと、主通路31Aに接続した複数の吹出孔31Cとを有する。パッド11は、乗員の背部を支持するべく、上下方向に延びている。パッド11は、パッド本体11Aと、パッド本体11Aの前面に結合される板状のカバーパッド11Bとを有するとよい。パッド本体11Aの前面には、後方に向けて凹んだ溝部11Cが形成されている。溝部11Cとカバーパッド11Bの後面とによって、主通路31Aが形成されるとよい。溝部11Cは、パッド本体11Aの前面に沿って延びている。
【0056】
接続孔31Bは、パッド本体11Aに形成された貫通孔である。接続孔31Bは、主通路31Aから後方に延び、パッド11の後面に開口している。前方から見て、接続孔31Bは左右のヘッドレスト支持部21の間に配置されているとよい。接続孔31Bの一部は、左右のヘッドレスト支持部21の下端よりも上方に配置されているとよい。また、接続孔31Bの上端は、アッパメンバ15の下端よりも下方に配置されているとよい。
【0057】
接続孔31Bの幅は、主通路31Aの幅よりも小さい。接続孔31Bの前端は、主通路31Aの後部を画定する溝部11Cの底壁11Dに開口している。底壁11Dは、前方を向いている。接続孔31Bの上下幅は、主通路31Aの上下幅よりも小さい。接続孔31Bの左右幅は、主通路31Aの左右幅よりも小さい。接続孔31Bの前端の縁部は、底壁11Dによって形成されている。
【0058】
複数の吹出孔31Cは、主通路31Aから前方に延び、パッド11の前面に開口している。複数の吹出孔31Cは、カバーパッド11Bに形成された貫通孔である。複数の吹出孔31Cは、前方に向けて上方に傾斜しているとよい。表皮材12は、複数の吹出孔31Cに対応する部分に、メッシュや複数の透孔によって形成された通気部12Aを有するとよい。
【0059】
送風機32は、例えば遠心ファンであってよい。
図2及び
図3に示すように、送風機32は、扁平な円板形に形成されている。シートバックフレーム10には送風機32を支持するためのブラケット41が設けられている。ブラケット41は、板状に形成され、ミドルメンバ17に結合されている。ブラケット41の下部41Aは、ミドルメンバ17の前面に沿って左右に延びているとよい。ブラケット41は、下部41Aから上方に延びてアッパメンバ15に結合する上部41Bを有してもよい。ブラケット41の上部41Bは、ブラケット41の下部41Aの左半部に設けられている。ブラケット41の上部41Bの左右幅は、ブラケット41の下部41Aの左右幅よりも小さい。前後方向から見て、ブラケット41の下部41Aの右半部の上方には、アッパメンバ15、右側のヘッドレスト支持部21、ブラケット41の上部41Bの右縁、ブラケット41の下部41Aの上縁によって囲まれた空間43が形成されている。
【0060】
送風機32は、ブラケット41の前面に複数のスペーサを介して締結されているとよい。送風機32は、ブラケット41の下部41Aの左部及びブラケット41の上部41Bに結合されている。送風機32の軸線は前後方向に延びている。送風機32の吐出口32Aは、送風機32の接線方向にのびている。本実施形態では、送風機32の吐出口32Aは、送風機32の下部41Aから右方に延びている。前後方向から見て、送風機32の吐出口32Aは空間43の下方に配置されている。送風機32の吸込口は後方に向けて開口している。ブラケット41は吸込口と対向する部分に開口を有するとよい。
【0061】
ダクト33は、互いに直列に接続された第1ダクト51及び第2ダクト52を有する。第1ダクト51の一端は、送風機32の吐出口32Aに接続されている。第2ダクト52の一端は、第1ダクト51の他端に接続されている。第2ダクト52の他端は、パッド11の接続孔31Bに接続されている。
【0062】
図4及び
図5に示すように、第2ダクト52は、互いに結合された第1部材53及び第2部材54によって筒形に形成されている。第1部材53の内側には、温度調節器34を保持する保持部55が形成されている。第1部材53は、筒形に形成されている。第1部材53は、四角筒形や円筒形に形成されているとよい。保持部55は、第1部材53の他の部分に対して、外方に膨出している。保持部55は、第1部材53の内面に設けられ、周方向に延びる溝部であるとよい。
【0063】
第1部材53は、温度調節器34が通過可能な挿入孔56を有する。挿入孔56は、第1部材53の側部に形成された貫通孔であるとよい。挿入孔56は、保持部55と対向する部分に設けられているとよい。
【0064】
温度調節器34は、例えば、電熱器やペルチェ素子等の電気の供給を受けて温度が変化する温度調節部と、温度調節部に結合されたフィンとを有するとよい。温度調節器34は、板状又はブロック形に形成され、保持部55に係止されるとよい。温度調節器34は、第1部材53の内部通路を横切るように設けられるとよい。空気は、温度調節器34のフィンの間の通路を通過して第1部材53を流れる。保持部55と温度調節器34との間には断熱材58が介装されている。断熱材58は、温度調節器34の周囲に結合されているとよい。断熱材58は、温度調節器34から第2ダクト52への熱の移動を抑制し、エネルギー効率を向上させる。温度調節器34は、挿入孔56を通して第1部材53の内側に挿入され、保持部55に係止される。温度調節器34に電力を供給するハーネスは挿入孔56を通して第2ダクト52の外部に延びるとよい。
【0065】
第2部材54は、第1部材53の外面に沿って第1部材53の長手方向に延びている。第2部材54は、挿入孔56を覆う。第2部材54は、第1部材53の外面に沿うように、板状に形成されるとよい。第2部材54の第1端54Aから第2端54Bまでの長さは、第1部材53の第1端53Aから第2端53Bまでの長さと同じに形成されているとよい。第2部材54の第1端54Aは第1部材53の第1端53Aに到達し、第2部材54の第2端54Bは第1部材53の第2端53Bに到達している。
【0066】
第1部材53及び第2部材54は、互いに係合する係合部61を有する。係合部61は、第1部材53及び第2部材54の一方に設けられた係止爪61Aと、第1部材53及び第2部材54の他方に設けられた係止孔61Bとを有するとよい。係止爪61Aが係止孔61Bに係止されることによって、第2部材54が第1部材53に係止される。係合部61は、複数設けられているとよい。
【0067】
第1部材53の外面には、複数の係止爪63が設けられてもよい。複数の係止爪63は、パッド本体11Aの後面に当接し、パッド本体11Aに対する第1部材53の前方への移動を規制する。
【0068】
第1部材53の第1端53Aには、外方に突出した第1フランジ53Cが設けられている。第1フランジ53Cの幅は接続孔31Bの幅よりも大きい。第1部材53の第2端53Bには、外方に突出した第2フランジ53Dが設けられている。
【0069】
第1部材53の第1端53A及び第2部材54の第1端54Aは、送風通路31に挿入されている。詳細には、第1部材53の第1端53A及び第2部材54の第1端54Aは、送風通路31の接続孔31Bに挿入されている。第1フランジ53Cは主通路31Aに配置されている。第1フランジ53Cは、溝部11Cの底壁11Dに当接しているとよい。複数の係合部61の少なくとも1つは、送風通路31の接続孔31B内に挿入されているとよい。第1部材53の第1端53A及び第2部材54の第1端54Aは、接続孔31Bに挟持されることによって、互いに係合した状態に維持される。
【0070】
第1部材53及び第2部材54は、前後方向に延びている。すなわち、第1部材53及び第2部材54は、接続孔31Bから後方に延びている。第1部材53の第1端53A及び第2部材54の第1端54Aは第2ダクト52の前端を構成し、第1部材53の第2端53B及び第2部材54の第2端54Bは第2ダクト52の後端を構成する。第2ダクト52の後端は、後方かつ下方に向けて開口している。また、第2フランジ53Dは、後方かつ下方に向いている。
【0071】
第1部材53の第2端53B及び第2部材54の第2端54Bは、第1ダクト51に挿入されている。第1ダクト51は可撓性を有する。第1ダクト51は、送風機32の吐出口32Aに接続する上流端51Aと、第2ダクト52の後端に接続する下流端51Bとを有する。第1ダクト51の上流端51Aは左方に向けて開口し、送風機32の吐出口32A内に挿入されている。第1ダクト51の上流端51Aは、ねじやリベット等の締結部材によって吐出口32Aに締結されているとよい。第1ダクト51は、上流端51Aから屈曲して上方に延びる縦部51Cと、縦部51Cの上端から屈曲して前方に延びる横部51Dとを有する。第1ダクト51の下流端51Bは、横部51Dの前端に設けられている。下流端51Bは、第1部材53の第2端53B及び第2部材54の第2端54Bを受容する。横部51Dの前端の内面には、第2フランジ53Dを係止する係止溝51Eが設けられている。第2フランジ53Dが係止溝51Eに係止されることによって、第2ダクト52の後端が第1ダクト51の下流端51Bからの抜け出すことが防止される。第1部材53の第2端53B及び第2部材54の第2端54Bは、第1ダクト51の下流端51Bに挟持されることによって、互いに係合した状態に維持される。
【0072】
図3に示すように、前後方向から見て、第2ダクト52は送風機32と重ならない位置に配置されている。前後方向から見て、第2ダクト52はブラケット41と重ならない位置に配置されている。前後方向から見て、第2ダクト52は空間43内に配置されている。
【0073】
シート1のシートバック4の製造方法は以下のとおりである。最初に、シートバックフレーム10、パッド本体11A、カバーパッド11B、ブラケット41、送風機32、第1ダクト51、第2ダクト52を構成する第1部材53及び第2部材54、温度調節器34が、用意される。温度調節器34は、周囲に断熱材58が装着され、挿入孔56を通して第1部材53内の保持部55に取り付けられる。温度調節器34が保持部55に取り付けられた後に、第2部材54が第1部材53に取り付けられ、第2ダクト52が形成される。第2ダクト52は、前方から接続孔31Bに挿入されるとよい。このとき、接続孔31Bは複数の係止爪63に押されて変形し、複数の係止爪63の通過を許容するとよい。第1フランジ53Cが接続孔31Bの周囲の底壁11Dに当接することによって、パッド本体11Aに対する第2ダクト52の位置が定まる。第1フランジ53Cの後面は、底壁11Dに接着されてもよい。カバーパッド11Bは、第2ダクト52がパッド本体11Aに取り付けられた後にパッド本体11Aに取り付けられるとよい。
【0074】
ブラケット41はシートバックフレーム10に溶接される。送風機32はブラケット41に締結される。第1ダクト51の上流端51Aは送風機32の吐出口32Aに接続される。
【0075】
次に、第2ダクト52が取り付けられたパッド11がシートバックフレーム10に取り付けられる。その後に、第1ダクト51の下流端51Bが第2ダクト52の後端に接続される。
【0076】
実施形態に係るシート1の作用及び効果は、以下のとおりである。送風機32が駆動することによって、空気は送風機32から第1ダクト51、第2ダクト52、接続孔31B、主通路31A、複数の吹出孔31C、表皮材12の通気部12Aを通過して、シート1に着座した乗員の首及び肩に流れる。吹出孔31Cが乗員の首及び肩に向けて空気を吹き出すため、乗員を効率良く温度調節することができる。空気は、第2ダクト52内の温度調節器34を通過することによって温度調節される。
【0077】
図4及び
図5に示すように、第2ダクト52が第1部材53及び第1部材53によって構成されているため、作業者は第1部材53及び第2部材54を分離することによって温度調節器34を第1部材53の内側の保持部55に容易に配置することができる。互いに結合される第1部材53及び第2部材54は、共に送風通路31に挿入され、かつ共に第1ダクト51に挿入されるため、互いに分離し難い。これにより、シート1において、温度調節器34のダクト33への組付構造を強固にすることができる。また、第1部材53と第2部材54と係合する係合部61が接続孔31B内に配置されるため、係合部61が互いに分離し難くなり、温度調節器34のダクト33への組付構造を一層強固にすることができる。
【0078】
前方から見て、第2ダクト52が空間43内に配置され、送風機32、ブラケット41、ヘッドレスト支持部21、シートバックフレーム10のいずれとも重なっていない。そのため、シート1に着座した乗員から第2ダクト52に荷重が加わったときに、第2ダクト52は後方に移動することができる。第1ダクト51は可撓性を有するため、第2ダクト52の移動に応じて変形する。これにより、第2ダクト52が乗員の背部に異物感を与えることが抑制される。
【0079】
上記の実施形態に係るシート1は、以下のように一部を変形してもよい。例えば、ブラケット41、送風機32、第1ダクト51の位置は、任意に変更してもよい。
図6に示すように、ブラケット41は、ミドルメンバ17の左右方向における中央部から下方に延びている。送風機32はブラケット41の前面に結合され、ミドルメンバ17より下方に位置する。吐出口32Aは送風機32の上部41Bに設けられている。第1ダクト51は、ブラケット41及びミドルメンバ17の前方を通過して、吐出口32Aから上方に延びている。第1ダクト51の下流端51Bは、ミドルメンバ17より上方に配置され、前方に向けて開口している。第2ダクト52は、第1ダクト51の下流端51Bから前方に延びている。第2ダクト52は、ミドルメンバ17より上方に配置されている。また、第2ダクト52は、左右のヘッドレスト支持部21の間に配置されている。
【0080】
図7に示すように、ブラケット41の上部41Bに前後に貫通する挿通孔71が形成されてもよい。第1ダクト51は、ブラケット41の前面に設けられた送風機32の吐出口32Aから挿通孔71を通過し、ブラケット41及びミドルメンバ17の後方を通って上方に延びている。第1ダクト51の下流端51Bは、ミドルメンバ17よりも上方に配置されている。第1ダクト51の下流端51Bは、ミドルメンバ17より前方に配置されてもよく、ミドルメンバ17より後方に配置されてもよい。ランバーサポート25の支持板26の上部は上方に延び、ブラケット41の左右の側方に配置されてもよい。
【0081】
図8に示すように、第1ダクト51は、下流部分が第1分枝通路73及び第2分枝通路74に分枝していてもよい。第2ダクト52は、第1分枝通路73及び第2分枝通路74に対応して2つ設けられているとよい。また、送風通路31は、2つの第2ダクト52に対応して2つの接続孔31Bを有するとよい。第1分枝通路73は、上流端51Aから左方に延びた後、屈曲して上方に延びている。第2分枝通路74は、上流端51Aから右方に延びた後、屈曲して上方に延びている。第1分枝通路73の下流端51B及び第2分枝通路74の下流端51Bは、ミドルメンバ17より上方に配置されている。2つの第2ダクト52は、対応する第1分枝通路73及び第2分枝通路74に接続され、前方に延びている。
【0082】
図9に示すように、ブラケット41がミドルメンバ17の前方に配置され、送風機32がブラケット41の前方に配置されてもよい。前方から見て、送風機32がミドルメンバ17と重なりを有してもよい。
【0083】
図10に示すように、送風機32は左右一対設けられてもよい。ブラケット41は、ミドルメンバ17から下方に延びている。左右の送風機32は、ミドルメンバ17より下方において、ブラケット41に結合されているとよい。各送風機32に対応して、第1ダクト51、第2ダクト52、温度調節器34、接続孔31Bが設けられているとよい。
【0084】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。第1部材53及び第2部材54の形状は、任意に設定することができる。例えば、第1部材53及び第2部材54は、それぞれ半筒形に形成され、協働して筒体を形成するとよい。
【符号の説明】
【0085】
1 :シート
3 :シートクッション
4 :シートバック
10 :シートバックフレーム
11 :パッド
11A :パッド本体
11B :カバーパッド
11D :底壁
12 :表皮材
21 :ヘッドレスト支持部
30 :送風装置
31 :送風通路
31A :主通路
31B :接続孔
31C :吹出孔
32 :送風機
32A :吐出口
33 :ダクト
34 :温度調節器
41 :ブラケット
43 :空間
51 :第1ダクト
51A :上流端
51B :下流端
52 :第2ダクト
53 :第1部材
53A :第1端
53B :第2端
53C :第1フランジ
53D :第2フランジ
54 :第2部材
54A :第1端
54B :第2端
55 :保持部
56 :挿入孔
58 :断熱材
61 :係合部
61A :係止爪
61B :係止孔