(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052543
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】抗菌剤担持体
(51)【国際特許分類】
A01N 25/08 20060101AFI20240404BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240404BHJP
A01N 31/08 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A01N25/08
A01P3/00
A01N31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132931
(22)【出願日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2022157756
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000156961
【氏名又は名称】関西熱化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000205432
【氏名又は名称】大阪化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】沖野 智也
(72)【発明者】
【氏名】的場 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山神 安令
(72)【発明者】
【氏名】林 和大
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB03
4H011BC18
4H011DA02
4H011DA15
4H011DF02
(57)【要約】
【課題】徐放性に優れる抗菌剤担持体を提供する。
【解決手段】活性炭と、前記活性炭に担持された抗菌剤とを含む抗菌剤担持体であって、 前記活性炭は、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上である、ことを特徴とする抗菌剤担持体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭と、前記活性炭に担持された抗菌剤とを含む抗菌剤担持体であって、
前記活性炭は、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上である、ことを特徴とする抗菌剤担持体。
【請求項2】
前記活性炭の全細孔容積が、0.58cm3/g以上である、請求項1記載の抗菌剤担持体。
【請求項3】
前記活性炭の平均細孔径が、1.5~18nmである、請求項1又は2記載の抗菌剤担持体。
【請求項4】
前記抗菌剤の分子量が、100~600である、請求項1又は2記載の抗菌剤担持体。
【請求項5】
前記抗菌剤の水溶解度が、10~5000である、請求項1又は2記載の抗菌剤担持体。
【請求項6】
前記抗菌剤として、芳香族系抗菌剤を含む、請求項1又は2記載の抗菌剤担持体。
【請求項7】
前記抗菌剤として、チモールを含む、請求項1又は2記載の抗菌剤担持体。
【請求項8】
前記抗菌剤の分子径を1とした場合における前記活性炭の平均細孔径が、1.1~50の範囲である、請求項1又は2記載の抗菌剤担持体。
【請求項9】
下記式により求められる菌減少率が、90%以上である、請求項1又は2記載の抗菌剤担持体。
(式)菌減少率=100-(試料液の菌数/標準液の菌数×100)[%]
但し、前記(式)における前記試料液の菌数及び前記標準液の菌数は、菌懸濁液を標準液とし、前記抗菌剤担持体を23℃雰囲気下、6日間水中静置し、水中から取り出して23℃雰囲気下にて乾燥した後に殺菌処理をして得た試料を前記菌懸濁液に投入したものを試料液として、前記標準液及び前記試料液を23℃雰囲気下、48時間静置した後の標準液及び試料液に含まれる各々の菌数を意味する。
【請求項10】
水処理用である、請求項1又は2記載の抗菌剤担持体。
【請求項11】
加湿空気清浄器用である、請求項10記載の抗菌剤担持体。
【請求項12】
請求項1又は2記載の抗菌剤担持体を水中に投入し、水中における微生物の増殖を抑制する水処理方法。
【請求項13】
細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上の活性炭と、抗菌剤とを含む混合物を加熱する工程を有する、抗菌剤担持体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤を担持した抗菌剤担持体に関する。更に詳しくは、徐放性に優れる抗菌剤担持体に関する。
【0002】
貯留水等の水を利用する装置や施設においては、微生物の増殖が懸念されている。例えば、室内の湿度を調整するために用いられる加湿器は、タンク内の貯留水を蒸発させて水蒸気を室内に放出するものであるが、タンク内において大腸菌等の微生物の増殖が懸念されている。
【0003】
そのため、貯留水等の水を利用する装置や施設においては、微生物の増殖を抑制するために様々の対策が講じられており、例えば、各種の抗菌剤を用いる場合がある。具体的には、加湿器内における微生物の増殖を抑制するために、加湿器のタンク内に抗菌ないし殺菌作用を有する物質を担持した活性炭を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように抗菌剤を用いる場合、実用性の観点から、所望の抗菌効果を経時的に持続させることが求められる。そのため、抗菌剤の放出速度を制御し、徐放性を高めることが重要になる。
【0006】
このような背景の下、本発明は、徐放性に優れる抗菌剤担持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、意外にも、活性炭の特定細孔容積を特定範囲に制御することにより、徐放性に優れる抗菌剤担持体を提供し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 活性炭と、前記活性炭に担持された抗菌剤とを含む抗菌剤担持体であって、
前記活性炭は、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上である、ことを特徴とする抗菌剤担持体。
[2] 前記活性炭の全細孔容積が、0.58cm3/g以上である、[1]記載の抗菌剤担持体。
[3] 前記活性炭の平均細孔径が、1.5~18nmである、[1]又は[2]記載の抗菌剤担持体。
[4] 前記抗菌剤の分子量が、100~600である、[1]~[3]のいずれかに記載の抗菌剤担持体。
[5] 前記抗菌剤の水溶解度が、10~5000である、[1]~[4]のいずれかに記載の抗菌剤担持体。
[6] 前記抗菌剤として、芳香族系抗菌剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の抗菌剤担持体。
[7] 前記抗菌剤として、チモールを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の抗菌剤担持体。
[8] 前記抗菌剤の分子径を1とした場合における前記活性炭の平均細孔径が、1.1~50の範囲である、[1]~[7]のいずれかに記載の抗菌剤担持体。
[9] 下記式により求められる菌減少率が、90%以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の抗菌剤担持体。
(式)菌減少率=100-(試料液の菌数/標準液の菌数×100)[%]
但し、前記(式)における前記試料液の菌数及び前記標準液の菌数は、菌懸濁液を標準液とし、前記抗菌剤担持体を23℃雰囲気下、6日間水中静置し、水中から取り出して23℃雰囲気下にて乾燥した後に殺菌処理をして得た試料を前記菌懸濁液に投入したものを試料液として、前記標準液及び前記試料液を23℃雰囲気下、48時間静置した後の標準液及び試料液に含まれる各々の菌数を意味する。
[10] 水処理用である、[1]~[9]のいずれかに記載の抗菌剤担持体。
[11] 加湿空気清浄器用である、[10]記載の抗菌剤担持体。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の抗菌剤担持体を水中に投入し、水中における微生物の増殖を抑制する水処理方法。
[13] 細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上の活性炭と、抗菌剤とを含む混合物を加熱する工程を有する、抗菌剤担持体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上である活性炭を含む抗菌剤担持体であるため、徐放性に優れる抗菌剤担持体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」又は「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、本明細書において、「X以上」(Xは任意の数字)又は「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」又は「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0011】
本発明の実施形態の一例に係る抗菌剤担持体(以下、「本担持体」という場合がある)は、活性炭と、活性炭に担持された抗菌剤とを含む抗菌剤担持体であって、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上であることを特徴とする。細孔径1.5~10nmの細孔容積を0.15cm3/g以上に制御することにより、徐放性(持続性)に優れる抗菌剤担持体を提供できる。
【0012】
<<活性炭>>
本担持体に用いられる活性炭は、炭素質物質及び/又は炭素質物質の炭化材(以下、これらを「炭化材」と総称する場合がある)を賦活処理して得られる多孔質物質である。
【0013】
前記炭素質物質としては、活性炭原料として公知の炭素質物質であれば、特に限定されない。例えば、木材、おが屑、木炭、ヤシ殻、セルロース系繊維、合成樹脂(例えばフェノール樹脂)等の難黒鉛化性炭素;メソフェーズピッチ、ピッチコークス、石油コークス、石炭コークス、ニードルコークス、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、PAN等の易黒鉛化性炭素;及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの炭素質物質は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
前記炭化材を賦活処理する方法としては、ガス賦活、薬品賦活等が挙げられる。
前記ガス賦活とは、炭化材を所定の温度まで加熱した後、賦活ガスを供給することにより賦活処理を行う方法である。賦活ガスとしては、水蒸気、空気、炭酸ガス、酸素、燃焼ガス及びこれらの混合ガスを用いることができる。
【0015】
前記薬品賦活とは、炭化材と賦活剤を混合し、加熱することにより賦活処理を行う方法である。賦活剤としては、例えば、リン酸、硫酸、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫化カリウム、及びアルカリ金属化合物等が挙げられる。アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属の硫酸塩等が挙げられる。
【0016】
本担持体に用いられる活性炭は、徐放性を高める観点から、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上であることが重要である。当該細孔容積は、徐放性を更に向上させる観点から、好ましくは0.2cm3/g以上、より好ましくは0.3cm3/g以上、更に好ましくは0.5cm3/g以上、特に好ましくは0.6cm3/g以上である。また、好ましくは2.0cm3/g以下、より好ましくは1.8cm3/g以下、更に好ましくは1.5cm3/g以下、特に好ましくは1.0cm3/g以下である。
細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g未満の場合には、徐放性が不十分なものとなる。
なお、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上の活性炭を用いることにより、徐放性に優れる抗菌剤担持体が得られる原理は必ずしも明らかではないが、本発明者等は、活性炭に担持した抗菌剤はその活性炭が有する細孔中に吸着状態で存在しており、1.5~10nmの径を有する細孔が抗菌性を発揮する濃度で脱着する吸脱着サイトであり、1.5~10nmの径を有する細孔容積が多いと徐放性に優れる抗菌剤担持体が得られるのではないかと推察している。
【0017】
本担持体に用いられる活性炭の全細孔容積は、特に限定されるものではないが、徐放性を向上させる観点から、例えば、0.58cm3/g以上が好ましく、より好ましくは1.0cm3/g以上、更に好ましくは1.2cm3/g以上、特に好ましくは1.3cm3/g以上である。また、好ましくは3.0cm3/g以下、より好ましくは2.5cm3/g以下、更に好ましくは2.0cm3/g以下、特に好ましくは1.5cm3/g以下である。
【0018】
本担持体に用いられる活性炭の平均細孔径は、特に限定されるものではないが、徐放性を向上させる観点から、例えば、1.5~18nmが好ましく、より好ましくは2~15nm、更に好ましくは2~10nm、特に好ましくは2~8nm、殊に好ましくは2.4~4nmである。
【0019】
前記活性炭の比表面積は、特に限定されるものではないが、800~3000m2/gが好ましく、より好ましくは900~2500m2/g、更に好ましくは950~2000m2/g、特に好ましくは1000~1600m2/gである。
【0020】
前記細孔容積、全細孔容積、平均細孔径及び比表面積は、窒素ガス吸着法により得られた窒素吸着等温線から算出した値から求めることができる。具体的には、後記の実施例に記載の方法により算出した値から求めることができる。
【0021】
本担持体に用いられる活性炭において、細孔径1.5~10nmの細孔容積を0.15cm3/g以上に制御する方法は特に限定されず、公知の方法を用いて調整することができる。例えば、特に限定されないが、賦活温度、賦活時間等を適宜調整することにより、所望の活性炭を得ることができる。
【0022】
賦活温度としては、炭化材や賦活法の種別にもよるが、例えば、500~1200℃、600~1100℃、500~1000℃等の範囲で適宜調整できる。
【0023】
賦活時間としては、炭化材や賦活法の種別にもよるが、例えば、10~300分間、20~250分間、30~200分間等の範囲で適宜調整できる。
【0024】
前記炭素質物質は、必要に応じて、賦活処理前に高温炭化処理されていてもよい。前記高温炭化処理としては、例えば、前記炭素質物質を、不活性ガス中で400~1000℃で1~3時間熱処理することが挙げられる。
【0025】
また、賦活処理後は、必要に応じて、炭素中の無機質を希塩酸、アルカリ水溶液等で洗浄脱灰してもよく、また、水洗、乾燥、篩い分けしてもよい。
【0026】
本担持体に用いられる活性炭の形状としては、特に限定されないが、例えば、粒状、粉末状、繊維状等が挙げられる。これらのなかでも、粒状のものが好ましく用いられる。
【0027】
<<抗菌剤>>
本担持体に用いられる抗菌剤は、微生物の増殖を阻害ないし抑制するために用いられる任意の薬剤であり、公知の有機系抗菌剤を用いることができる。抗菌剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本担持体に用いられる抗菌剤の分子量は、100~600が好ましく、より好ましくは105~500、更に好ましくは110~450である。前記範囲よりも大きすぎると、活性炭の細孔への抗菌剤の導入及び放出が困難になる傾向があり、前記範囲よりも小さすぎると、活性炭の細孔における抗菌剤の保持が困難になる傾向がある。
【0029】
本担持体に用いられる抗菌剤の水溶解度(ppm)は、10~5000が好ましく、より好ましくは20~4000、更に好ましくは25~3000である。前記範囲よりも大きすぎると、活性炭の細孔における抗菌剤の保持が困難になる傾向があり、前記範囲よりも小さすぎると、活性炭の細孔からの放出が困難になる傾向がある。なお、抗菌剤の水溶解度は、温度25℃条件下における水溶解度である。
【0030】
本担持体に用いられる抗菌剤の水溶解度(ppm)は、当該抗菌剤の最小生育阻止濃度[MIC](ppm)以上であることが好ましく、より好ましくは、抗菌剤の水溶解度(ppm)は当該抗菌剤の最小生育阻止濃度[MIC](ppm)超である。抗菌剤の水溶解度が最小生育阻止濃度よりも小さい場合、抗菌効果が不十分になる傾向がある。
【0031】
本担持体は広範囲の真菌・細菌に対して、優れた抗菌・抗カビ性を発揮する。本担持体が効果を奏する細菌およびカビの一例を以下に示す。
[細菌]
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、大腸菌(Esherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、メチロバクテリウム属菌(Methylobacterium属)等。
[カビ(酵母を含む)]
クロコウジカビ(Aspergillus niger)、アオカビ(Penicillium citrinum)、クロカビ(Cladosporium cladosporioides)、白癬菌(Trichopyton mentagrophytes)、カンジダ(Candida albicans)、赤色酵母(Rhodotorula mucilaginosa)等。
【0032】
前記のなかでも、本担持体に用いられる抗菌剤の水溶解度(ppm)は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する最小生育阻止濃度[MIC](ppm)超であることが好ましい。より好ましくは、本担持体に用いられる抗菌剤の水溶解度(ppm)は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する最小生育阻止濃度[MIC](ppm)超であり且つ、大腸菌(Esherichia coli)に対する最小生育阻止濃度[MIC](ppm)超である。さらに好ましくは本担持体に用いられる抗菌剤の水溶解度(ppm)は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する最小生育阻止濃度[MIC](ppm)超であり且つ、大腸菌(Esherichia coli)に対する最小生育阻止濃度[MIC](ppm)超であり且つ、赤色酵母(Rhodotorula mucilaginosa)に対する最小生育阻止濃度[MIC]超である。殊に好ましくは本担持体に用いられる抗菌剤の水溶解度(ppm)は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する最小生育阻止濃度[MIC](ppm)超であり且つ、大腸菌(Esherichia coli)に対する最小生育阻止濃度[MIC](ppm)超であり且つ、赤色酵母(Rhodotorula mucilaginosa)に対する最小生育阻止濃度[MIC]超であり且つ、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する最小生育阻止濃度[MIC]超である。
【0033】
本担持体に用いられる抗菌剤の水溶解度(ppm)に対する最小生育阻止濃度[MIC](ppm)の比〔最小生育阻止濃度/水溶解度〕は、特に限定はされないが、抗菌作用を効果的に発揮する点から、例えば、1以下、好ましく0.8以下、0.5以下等である。
【0034】
本担持体に用いられる抗菌剤の融点は、300℃未満が好ましく、より好ましくは200℃未満、更に好ましくは150℃未満である。前記範囲よりも高すぎると、活性炭への溶解含浸が困難になる傾向がある。なお、下限値は、特に限定されないが、例えば40℃以上である。
【0035】
本担持体に用いられる抗菌剤の沸点は、50℃超が好ましく、より好ましくは80℃超、更に好ましくは100℃超である。前記範囲よりも低すぎると、常温での保管が困難になる傾向がある。なお、上限値は、特に限定されないが、例えば300℃以下である。
【0036】
本担持体に用いられる抗菌剤の分子径は、特に限定されないが、0.4~2.5nmの範囲にすることが好ましく、さらに0.5~2.0nmの範囲にすることが好ましく、特に0.6~1.0nmの範囲にすることが好ましい。
また、抗菌剤の分子径を1とした場合、本担持体に用いられる活性炭の平均細孔径は、1.1~50の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1.5~40の範囲であり、さらに好ましくは2~30の範囲である。
すなわち、抗菌剤と活性炭細孔径の相互作用と徐放性の関係については必ずしも明らかではないが、抗菌剤の吸脱着には抗菌剤と活性炭の間にファンデルワールス力、水素結合等の弱い結合を形成させることが望ましく、また、そのためには、細孔径と導入された抗菌剤との間に適切な間隙があることが望ましいと推察されるため、抗菌剤の分子径や、抗菌剤の分子径と活性炭の平均細孔径との比は上記の範囲にすることが好ましい。
なお、抗菌剤の分子径は、実験的には、X線結晶構造解析により得られる構造データ、あるいは分子力学法、分子軌道法、分子動力学法などの計算化学シミュレーションによって算出することができる。
【0037】
なお、抗菌剤としてチモールを用いる場合、その分子径は0.6~0.7nmであり、当該分子径を1とした場合、活性炭の平均細孔径は2~30の範囲とするのが好ましい。
【0038】
本担持体に用いられる抗菌剤の具体的としては、芳香族系抗菌、フェノール系抗菌剤、カルボン酸系抗菌剤、ヨウ素系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、イミダゾール系抗菌剤、チアゾリン系抗菌剤、天然由来の抗菌剤等が挙げられる。
これらのなかでも芳香族系抗菌剤が特に好ましい。
【0039】
さらに具体的には、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、ブチル-p-ヒドロキシベンゾエート、プロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール;安息香酸;3-ヨード-2-プロピニルブチルーカルバマート;2,3,5,6-テトラクロロ-4-スルホニルメチルピリジン;2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2-ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル;1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン;ヒノキチオールが好ましい。
これらのなかでも、大腸菌や酵母の真菌等の増殖抑制効果をより高める観点からは、芳香族系である2-イソプロピル-5-メチルフェノール〔チモール〕が特に好ましい。
【0040】
本担持体は、下記式により求められる菌減少率が、90%以上であることが好ましい。(式)菌減少率=100-(試料液の菌数/標準液の菌数×100)[%]
但し、前記(式)における前記試料液の菌数及び前記標準液の菌数は、菌懸濁液を標準液とし、本担持体を23℃雰囲気下、6日間水中静置し、水中から取り出して23℃雰囲気下にて乾燥した後に殺菌処理をして得た試料を前記菌懸濁液に投入したものを試料液として、前記標準液及び前記試料液を23℃雰囲気下、48時間静置した後の標準液及び試料液に含まれる各々の菌数を意味する。
前記菌減少率(%)は、92~100%がより好ましく、更により好ましくは95~100%であり、特に好ましくは98~100%であり、殊に好ましくは99~100%である。なお、前記菌減少率は、具体的には、後記の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0041】
<<本担持体の製造方法>>
本担持体は、活性炭に抗菌剤を担持させることにより製造される。活性炭に対して抗菌剤を担持させる方法は、特に限定されないが、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上の活性炭と、抗菌剤とを含む混合物を加熱する工程を有する製造方法が挙げられる。例えば、抗菌剤の含有量が30質量%の担持体を製造する場合、200L容器に上記の活性炭14kgと抗菌剤6kgを投入し、ドラムミキサー等を用いて容器を加温しながら回転させ、添着する方法が挙げられる。
なお、前記工程においては抗菌剤の溶媒を投入し、溶解させた抗菌剤を添着させる湿式法と、溶媒を用いず、融点または昇華点まで加熱した抗菌剤を直接添着させる乾式法が考えられる。特に、比較的低温で融解・昇華する抗菌剤を選定し、乾式法にて添着させた場合においては低コストで簡易な製造方法が可能となることから実用性が高い。
また、製品の粉化防止、粒度調節、抗菌剤の徐放量調節、親水性の向上等、さまざまな目的に応じて、適宜バインダーや界面活性剤を混合してもよい。
【0042】
活性炭と抗菌剤との混合割合〔抗菌剤/活性炭(質量比)〕としては、特に限定されないが、例えば、0.01以上が好ましく、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.4以上である。また、例えば、2以下が好ましく、特に好ましくは1以下である。前記範囲より大きすぎると、活性炭に添着されない余剰の抗菌剤が発生し、製造品の薬剤濃度が不均一となる傾向がある。前記範囲よりも小さすぎると、抗菌剤が導入されない活性炭が発生し、製造品の薬剤濃度が不均一となる傾向がある。
また、前記範囲より大きすぎると、余剰の抗菌剤は速やかに放出されることから徐放性に乏しい傾向がある。前記範囲よりも小さすぎると、活性炭から抗菌剤が放出されず、抗菌性に乏しい傾向がある。
【0043】
混合物の加熱条件としては、特に限定されないが、例えば使用する抗菌剤の融点以上が好ましく、また、例えば、使用する抗菌剤の沸点から+100℃以下が好ましく、より好ましくは沸点から+50℃以下、更に好ましくは沸点以下である。前記範囲より低すぎると、抗菌剤を活性炭細孔径へ導入する際に必要な時間が長くなる傾向があり、前記範囲より高すぎると、抗菌剤が分解または蒸散し、残留率が減少する傾向にある。
【0044】
前記のようにして得られた本担持体に担持(添着)される抗菌剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、本担持体全量に対して、1質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、例えば、70質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以下である。前記範囲より多すぎると、活性炭表面に露出する抗菌剤が直ちに放出され、徐放性が得られない傾向がある。前記範囲より少なすぎると、活性炭内部に残留し、徐放されない抗菌剤の比率が多くなり、抗菌剤の利用効率が低下する傾向がある。
【0045】
本担持体における細孔容積充填率は、特に限定されないが、例えば、20体積%以上が好ましく、より好ましくは25体積%以上である。また、例えば、90体積%以下が好ましく、より好ましくは85体積%以下である。前記範囲よりも大きすぎると、活性炭表面に抗菌剤が露出し、徐放性が得られない傾向がある。前記範囲よりも小さすぎると、活性炭内部に残留し、徐放されない抗菌剤の比率が多くなり、抗菌剤の利用効率が低下する傾向がある。
【0046】
本担持体に担持(添着)される抗菌剤の含有量、細孔容積充填率は、後記の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0047】
<<用途及び方法>>
本担持体は、特に限定されないが、水処理用の抗菌剤担持体であることが好ましい。当該抗菌剤担持体は、水中に投入され、水中の微生物の増殖を抑制する水処理方法において好適に使用される。
【0048】
具体的には、各種の水槽用の抗菌剤担持体が好ましく、より具体的には、加湿空気清浄器用、プール用、お風呂用、噴水用、クーリングタワー用、アロマディフューザー用、飼育水槽用、トイレタンク用、側溝用等において好適に用いられる。
【0049】
とりわけ、加湿空気清浄器用においては、加湿空気清浄器の経時的使用により、加湿空気清浄器の水槽(タンク)に各種の菌が増殖する懸念があるばかりか、水蒸気と共に空気中に飛散した菌によって感染症が発生する恐れもあるため、加湿空気清浄器用に本担持体を用いることが特に有用である。
加湿空気清浄器の水槽(タンク)に本担持体を投入することによって、水槽(タンク)内における大腸菌等の増殖を抑制することができ、しかも、本担持体は徐放性に優れることから、増殖を長期的に抑制することが可能となる。
【0050】
なお、本担持体は、所定量の本担持体を不職布等の袋体に収納して用いてもよく、バインダー等を用いて固形化させてもよい。
前記バインダーとしては、公知のバインダーを適宜用いることができ、以下に限定されないが、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、尿素系樹脂等が挙げられる。
また、前記バインダーを用いて担持体を固形化する方法としては、公知の方法を適宜用いることができ、以下に限定されないが、例えば、担持体とバインダーとを質量比(担持体:バインダー)99:1~1:99の範囲で混合し、所定の金型等を用いて、0.01~100kgf/cm2、0~300℃の条件下において加圧成形した後、0~50℃の条件下において冷却し、0~200℃の条件下において乾燥する方法等が挙げられる。
上記の固形化により、用途に合わせた任意の形状に加工し使用しやすくなる他、袋詰めや梱包容器が不要となり、活性炭粒子の飛散による汚れが防止されるなど様々な利点が享受できる。
また、加湿空気清浄器は、スチーム式、気化式、超音波式等のいずれであってもよい。
【実施例0051】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
まず、実施例に用いられる活性炭等を準備した。各活性炭等の特定細孔容積、全細孔容積、平均細孔径、及び比表面積を後記表1に示す。なお、これらは下記方法により測定した値である。
【0053】
[1.5~10nmの細孔容積]
活性炭50mgをセルに入れ250℃、3時間の真空加熱により前処理を行った後、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(日本ベル社製、「BELSORP-mini」)を用いて液体窒素雰囲気下(77K)で窒素吸着等温線を作成し、BJH法による累積細孔径分布から1.5~10nmの細孔容積(cm3/g)を算出した。
【0054】
[全細孔容積、比表面積]
活性炭50mgを250℃にて3時間の真空加熱をした後、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(日本ベル社製、「BELSORP-mini」)を用いて液体窒素雰囲気下(77K)で窒素吸着等温線を作成し、BET法により比表面積(m2/g)を求めた。また窒素吸着等温線から相対圧P/P0(P:吸着平衡にある吸着質の気体圧力、P0:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧)が0.95における窒素吸着量から全細孔容積(cm3/g)を算出した。
【0055】
[平均細孔径]
活性炭の細孔をシリンダー状と仮定し、以下の式に基づいて平均細孔径を算出した。
平均細孔径(nm)=(4×全細孔容積(cm3/g))/比表面積(m2/g)×1,000
【0056】
〔実施例1〕
活性炭1(大阪ガスケミカル社製の木質系薬品賦活活性炭白鷺KL)を10g、抗菌剤としてチモール4.8gをガラス製ビーカー内に投入し、60℃条件下において60分間撹拌することにより、チモールを活性炭1に担持(添着)させ実施例1の抗菌剤担持体を得た。
なお、下記方法により求められた抗菌剤担持体における抗菌剤の含有量は抗菌剤担持体全量に対して32.2質量%、細孔容積充填率は30体積%であった。
【0057】
[抗菌剤の含有量]
抗菌剤を活性炭に担持(添着)させた際の減量分を抗菌剤の揮発と仮定し、担持(添着)時の歩留まりから求められる計算値。
(式)抗菌剤含有率(質量%)
=[抗菌剤担持体質量(g)-活性炭質量(g)]/[抗菌剤担持体質量(g)]×100(質量%)
【0058】
[細孔容積充填率(体積%)]
(式)細孔容積充填率(体積%)
=[抗菌剤の含有量(質量%)/抗菌剤密度(g/cm3)]/N2吸着法における全細孔容積(g/cm3)
【0059】
〔実施例2〕
活性炭1を10gに対して、抗菌剤としてチモール量を12.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の抗菌剤担持体を得た。
なお、上記方法により求められた抗菌剤担持体における抗菌剤の含有量は抗菌剤担持体全量に対して56.3質量%、細孔容積充填率は80体積%であった。
【0060】
〔実施例3〕
活性炭1を活性炭2(MCエバテック社製のヤシ殻系水蒸気賦活活性炭Z10-30HS)に変更し、チモール量を6.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の抗菌剤担持体を得た。
前記方法により求められた抗菌剤担持体における抗菌剤の含有量は抗菌剤担持体全量に対して40.5質量%、細孔容積充填率は80体積%であった。
【0061】
〔実施例4〕
活性炭1を活性炭3(MCエバテック社製の石炭系水蒸気賦活活性炭M010)に変更し、チモール量を5.1gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の抗菌剤担持体を得た。
前記方法により求められた抗菌剤担持体における抗菌剤の含有量は抗菌剤担持体全量に対して33.3質量%、細孔容積充填率は80体積%であった。
【0062】
〔比較例1〕
活性炭1を活性炭4(MCエバテック社製のヤシ殻系水蒸気賦活活性炭W10-30)に変更し、チモール量を4.3gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の抗菌剤担持体を得た。
前記方法により求められた抗菌剤担持体における抗菌剤の含有量は抗菌剤担持体全量に対して29.6質量%、細孔容積充填率は80体積%であった。
【0063】
〔比較例2〕
特開2020-152902号公報に記載の実施例8を同一の手法で調製した試料をN2流中で800℃の雰囲気下にて2時間熱処理することでメソポーラスカーボンを得た。 活性炭1をメソポーラスカーボンに変更し、チモール量を4.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の抗菌剤担持体を得た。
前記方法により求められた抗菌剤担持体における抗菌剤の含有量は抗菌剤担持体全量に対して32.8質量%、細孔容積充填率は80体積%であった。
【0064】
前記実施例及び比較例について、下記の方法に基づいて濃度維持率(%)を測定し、徐放性を評価した。その結果を後記表1に示す。また、下記の方法に基づいて、所定期間経過後の菌減少率(%)を測定し、徐放抗菌性を評価した。その結果を後記表1に示す。
【0065】
[徐放性の評価]
イオン交換水330mLが収容された容器に、抗菌剤担持体1.65gを収容した不織布製の袋を投入し、1日間(24時間)静置した。前記静置後、抗菌剤(チモール)の水中濃度(mg/L)をガスクロマトグラフィー定量分析(GC-FID)にて測定し、当該濃度を初日後濃度とした。なお、イオン交換水330mLは、所定の加湿器における1日の使用量を想定したものである。
他方、イオン交換水1980mLが収容された容器に、抗菌剤担持体1.65gを収容した不織布製の袋を投入し、6日間(144時間)静置した。前記静置後、容器内のイオン交換水を全て排水し、新たなイオン交換水330mLを収容し、1日間(24時間)静置した。前記静置後、抗菌剤(チモール)の水中濃度(mg/L)をガスクロマトグラフィー定量分析(GC-FID)にて測定し、当該濃度を7日後濃度とした。
【0066】
前記により得られた初日後濃度及び7日後濃度に基づいて濃度維持率(%)を算出し、下記評価基準に基づいて徐放性を評価した。その結果を下記表1に示す。
(式)濃度維持率(%)=(7日後濃度/初日後濃度)×100
[徐放性の評価基準]
◎・・・濃度維持率20%以上
〇・・・濃度維持率10%以上、20%未満
×・・・濃度維持率10%未満
【0067】
[徐放抗菌性の評価]
抗菌剤担持体0.5gをイオン交換水200ccが収容された容器に浸漬し、室温(23℃)にて6日間(144時間)静置した。その後、容器から抗菌剤担持体を取り出し、室温(23℃)にて48時間乾燥させた。乾燥後の抗菌剤担持体に紫外線照射器(NKシステム社製、VH-850BH-2A2)を用いて紫外線を2時間照射して殺菌した(積算照射量10000J/m2)。
得られた殺菌後の抗菌剤担持体0.05gと、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)をおおよそ107CFU/mlとなるよう懸濁した生理食塩水20ccとをバイアル瓶に投入したものを試料液とした。また、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)をおおよそ107CFU/mlとなるよう懸濁した生理食塩水20ccをバイアル瓶に投入したものを標準液とした。
試料液および標準液を室温(23℃)雰囲気下にて48時間静置した後、試料液および標準液の菌数を測定し、下記式の計算に基づき菌減少率を算出し、下記評価基準に基づいて徐放抗菌性を評価した。その結果を下記表1に示す。
(式)菌減少率(%)=100-(試料液の菌数/標準液の菌数×100)
[徐放抗菌性の評価基準]
◎・・・菌減少率99.9%以上
〇・・・菌減少率90%以上、99.9%未満
×・・・菌減少率90%未満
【0068】
【0069】
表1の結果に示すとおり、実施例1~4は、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上の活性炭を含む抗菌剤担持体であるため、濃度維持率が高く、徐放性(持続性)に優れることが分かる。さらに、徐放抗菌性評価試験は6日間水に浸漬した後の評価であるため、実施例1~4は、濃度維持率、抗菌性、徐放性の全てに優れることが分かる。
【0070】
他方、比較例1~2では、細孔径1.5~10nmの細孔容積が0.15cm3/g以上の活性炭を含む抗菌剤担持体ではないため、濃度維持率が低く、徐放性(持続性)に劣ることが分かる。さらに、前述のとおり、徐放抗菌性評価試験は6日間水に浸漬した後の評価であるため、比較例1~2は、濃度維持率、抗菌性、徐放性に劣ることが分かる。
【0071】
<実施例5>
実施例1の抗菌剤担持体8gと、ポリアミドバインダー11gとを混合した。得られた混合物を内径49mmの金型に充填し、200℃の条件下においてプレスした後、浸水冷却した。その後、100℃以下で乾燥させることにより、固形化抗菌剤担持体を得た。
なお、前記固形化抗菌剤担持体に含まれる抗菌剤の含有量は6.8質量%であった。