(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052549
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】粒子の製造方法、並びに測定試薬及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240404BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G01N33/543 581G
G01N33/545 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136590
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2022157930
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 祐也
(72)【発明者】
【氏名】富樫 奈央
(72)【発明者】
【氏名】太平 博暁
(57)【要約】
【課題】スルホン酸基を有する重合性単量体を材料として用い、特定の平均粒子径のラテックス粒子を容易に製造することが可能なラテックス粒子の製造方法、及びそのラテックス粒子を用いた測定試薬の製造方法を提供する。
【解決手段】アリール基を有し、スルホン酸基及びその塩を有しない重合性単量体(a1)、並びにスルホン酸基若しくはその塩を有する重合性単量体(a2)と、無機塩と、水系溶媒と、水溶性重合開始剤とを含む反応液にて、各重合性単量体を共重合することにより、前記共重合体からなる粒子の製造方法であって、前記粒子の体積平均粒子径が0.050μm~10μmである、ラテックス粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリール基を有し、スルホン酸基及びその塩を有しない重合性単量体(a1)、並びに
スルホン酸基若しくはその塩を有する重合性単量体(a2)と、
無機塩と、水系溶媒と、水溶性重合開始剤とを含む反応液にて、各重合性単量体を共重合することにより、
共重合体の粒子を形成する粒子の製造方法であって、
前記粒子の体積平均粒子径が0.050μm~10μmである、粒子の製造方法。
【請求項2】
アリール基を有し、スルホン酸基及びその塩を有しない重合性単量体(a1)、並びに
スルホン酸基若しくはその塩を有する重合性単量体(a2)と、
無機塩と、水系溶媒と、水溶性重合開始剤とを含む反応液にて、各重合性単量体を共重合することにより、
ラテックス粒子を形成するラテックス粒子の製造方法であって、
前記ラテックス粒子の体積平均粒子径が0.050μm~0.70μmである、請求項1に記載の粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ラテックス粒子の表面についてX線光電子分光法で測定される硫黄原子の存在比率が、炭素原子、酸素原子及び硫黄原子の合計の存在比率を100atomic%としたとき、0.1atomic%以上である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ラテックス粒子についてXAFSの転換電子収量法で測定されるSO3とSO4の成分比率は、SO3とSO4の合計100%に対して、SO3の比率が10%以上である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ラテックス粒子についてリン酸緩衝液濃度勾配-凝集法で測定される臨界凝集濃度が200mM以上である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項6】
前記反応液に配合された前記無機塩の濃度が、1mM~300mMである、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項7】
前記反応液における{前記重合性単量体(a2)のモル数/前記重合性単量体(a1)のモル数}で表されるモル比が、2.0×10-6~3.0×10-2である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項8】
前記反応液における[{前記重合性単量体(a2)のモル数+前記水溶性重合開始剤のモル数}/前記重合性単量体(a1)のモル数]で表されるモル比が、2.0×10-4~3.0×10-1である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項9】
前記反応液における{前記重合性単量体(a2)のモル数/前記無機塩のモル数}で表されるモル比が、3.5×10-4~1.8×10である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項10】
前記反応液における(前記無機塩のモル数/前記水溶性重合開始剤のモル数)で表されるモル比が、1~1000である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項11】
前記水溶性重合開始剤がペルオキソ二硫酸塩である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項12】
前記無機塩が塩化物である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項13】
前記重合性単量体(a1)がスチレン又はビニルナフタレンである、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項14】
前記重合性単量体(a2)がスチレンスルホン酸塩又はビニルナフタレンスルホン酸塩である、請求項2に記載の粒子の製造方法。
【請求項15】
請求項2~14の何れか一項に記載の粒子の製造方法によりラテックス粒子を得る工程と、
前記ラテックス粒子の表面に、測定対象物質と結合する結合物質を担持させることにより、測定試薬を得る工程と、を含む、測定試薬の製造方法。
【請求項16】
前記結合物質が抗TARC抗体又は抗肺サーファクタントプロテインD抗体である、請求項15に記載の測定試薬の製造方法。
【請求項17】
請求項2~14の何れか一項に記載の製造方法により得た前記ラテックス粒子の表面に、測定対象物質と結合する結合物質が担持された、測定試薬。
【請求項18】
前記結合物質が抗TARC抗体又は抗肺サーファクタントプロテインD抗体である、請求項17に記載の測定試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の製造方法、並びに測定試薬及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物質に結合する結合物質(例えば抗原や抗体)を担持させた担体粒子を含む測定試薬が免疫血清学的検査等に利用されている。特許文献1には、ラテックスを構成する担体粒子表面を覆っている官能基(スルホン酸基)の表面チャージ量を特定の範囲とし、かつ上記担体粒子の平均粒子径を特定の範囲とすることにより、抗原抗体反応の測定感度、測定精度、長期安定性が良好な測定試薬と、その測定試薬を製造する材料として適した測定試薬用担体ラテックス粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたような測定試薬、及び抗体や抗原を担持した測定試薬用担体ラテックス粒子は、製造後、半年~数年程度の保存安定性を要求される。しかし、ラテックス粒子同士が、長期保存中に凝集してしまい(以下、この現象を自己凝集という)、試薬の製造から時間を経ると試薬の性能が変化してしまうという問題があった。本発明者らは、ラテックス粒子の形成に用いる負電荷を有する重合性単量体の配合量を増やし、ラテックス粒子の表面電荷を増やすことによって、ラテックス粒子同士の自己凝集を抑制することを検討したところ、重合時の核粒子同士が反発し合うため、形成されるラテックス粒子の数が増え、ラテックス粒子の平均粒子径が小さくなってしまう問題に直面した。つまり、特許文献1記載の粒子製造方法を用いても、ラテックスの表面電荷と、ラテックス粒子の平均粒子径をコントロールすることは困難であった。
【0005】
本発明は、スルホン酸基を有する重合性単量体を材料として用い、特定の平均粒子のラテックス粒子を容易に製造することが可能なラテックス粒子の製造方法、及びそのラテックス粒子を用いた測定試薬の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0] アリール基を有し、スルホン酸基及びその塩を有しない重合性単量体(a1)、並びにスルホン酸基若しくはその塩を有する重合性単量体(a2)と、無機塩と、水系溶媒と、水溶性重合開始剤とを含む反応液にて、各重合性単量体を共重合することにより、共重合体の粒子を形成する粒子の製造方法であって、前記粒子の体積平均粒子径が0.050μm~10μmである、粒子の製造方法。
[1] アリール基を有し、スルホン酸基及びその塩を有しない重合性単量体(a1)、並びにスルホン酸基若しくはその塩を有する重合性単量体(a2)と、無機塩と、水系溶媒と、水溶性重合開始剤とを含む反応液にて、各重合性単量体を共重合することにより、ラテックス粒子を形成するラテックス粒子の製造方法であって、前記ラテックス粒子の体積平均粒子径が0.050μm~0.70μmまたは0.10μm~0.70μmである、ラテックス粒子の製造方法。
[2] 前記ラテックス粒子の表面についてX線光電子分光法で測定される硫黄原子の存在比率が、炭素原子、酸素原子及び硫黄原子の合計の存在比率を100atomic%としたとき、0.1atomic%以上である、[1]に記載のラテックス粒子の製造方法。
[3] 前記ラテックス粒子についてXAFSの転換電子収量法で測定されるSO3とSO4の成分比率は、SO3とSO4の合計100%に対して、SO3の比率が10%以上である、[1]又は[2]に記載のラテックス粒子の製造方法。
[4] 前記ラテックス粒子についてリン酸緩衝液濃度勾配-凝集法で測定される臨界凝集濃度が200mM以上である、[1]~[3]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[5] 前記反応液に配合された前記無機塩の濃度が、1mM~300mMである、[1]~[4]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[6] 前記反応液における{前記重合性単量体(a2)のモル数/前記重合性単量体(a1)のモル数}で表されるモル比が、2.0×10-6~3.0×10-2である、[1]~[5]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[7] 前記反応液における[{前記重合性単量体(a2)のモル数+前記水溶性重合開始剤のモル数}/前記重合性単量体(a1)のモル数]で表されるモル比が、2.0×10-4~3.0×10-1である、[1]~[6]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[8] 前記反応液における{前記重合性単量体(a2)のモル数/前記無機塩のモル数}で表されるモル比が、3.5×10-4~1.8×10である、[1]~[7]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[9] 前記反応液における(前記無機塩のモル数/前記水溶性重合開始剤のモル数)で表されるモル比が、1~1000である、[1]~[8]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[10] 前記水溶性重合開始剤がペルオキソ二硫酸塩である、[1]~[9]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[11] 前記無機塩が塩化物である、[1]~[10]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[12] 前記重合性単量体(a1)がスチレン又はビニルナフタレンである、[1]~[11]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[13] 前記重合性単量体(a2)がスチレンスルホン酸塩又はビニルナフタレンスルホン酸塩である、[1]~[12]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法。
[14] [1]~[13]の何れか一項に記載のラテックス粒子の製造方法により前記ラテックス粒子を得る工程と、前記ラテックス粒子の表面に、測定対象物質と結合する結合物質を担持させることにより、測定試薬を得る工程と、を含む、測定試薬の製造方法。
[15] 前記結合物質が抗TARC抗体又は抗肺サーファクタントプロテインD抗体である、[14]に記載の測定試薬の製造方法。
[16] [1]~[13]の何れか一項に記載の製造方法により得た前記ラテックス粒子の表面に、測定対象物質と結合する結合物質が担持された、測定試薬。
[17] 前記結合物質が抗TARC抗体又は抗肺サーファクタントプロテインD抗体である、[16]に記載の測定試薬。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、スルホン酸基を有する重合性単量体を材料として用い、平均粒子径が0.050μm~0.70μmまたは0.10μm~0.70μmであるラテックス粒子を容易に製造することが可能なラテックス粒子の製造方法、及びそのラテックス粒子を用いた測定試薬の製造方法が提供される。
【0008】
本発明に係るラテックス粒子の製造に際して、スルホン酸基を有する重合性単量体や、ラテックス粒子に負電荷を与える重合開始剤を多く配合した場合にも、重合反応液中の無機塩が核粒子同士の反発を低減するので、核粒子同士の凝集が起こり、結果として平均粒子径が大きく、表面電荷が高められたラテックス粒子を得ることができる。
表面電荷が高められたラテックス粒子を測定試薬の担体として用いることによって、冷蔵保存中の自己凝集が抑制された測定試薬を製造することができる。
また、本発明に係る測定試薬を用いることにより測定の精度と感度を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】測定試薬の冷蔵安定性を評価した結果を示すグラフである。
【
図2】測定試薬の冷蔵安定性と、ラテックス粒子の表面電荷の関係を評価した結果を示すグラフである。
【
図3】測定試薬の精度と感度を試験した結果を示すグラフである。
【
図4】実施例1のラテックス粒子と他社試薬との相関性の評価結果を示すグラフである。
【
図5】比較例2のラテックス粒子と他社試薬との相関性の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪ラテックス粒子の製造方法≫
本発明の第一態様は、アリール基を有し、スルホン酸基及びその塩を有しない重合性単量体(a1)、並びに、スルホン酸基若しくはその塩を有する重合性単量体、(a2)と、無機塩と、水系溶媒と、水溶性重合開始剤とを含む反応液にて、各重合性単量体を共重合することにより、共重合体の粒子を形成する粒子の製造方法である。
本態様の実施形態の一例は、前記共重合体からなるラテックス粒子を形成するラテックス粒子の製造方法である。
【0011】
前記ラテックス粒子の体積平均粒子径は、0.050μm~0.70μmとすることができ、0.10μm~0.70μmとすることができ、0.15μm~0.60μmが好ましく、0.20μm~0.45μmがより好ましく、0.25μm~0.35μmがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、測定試薬を調製する際の取り扱いが容易となり、またラテックス粒子の凝集に伴う濁度(吸光度)の変化を鋭敏に観察することができる。
上記範囲の上限値以下であると、溶媒中での分散性が高まり、分散後の自然沈降を遅くすることができる。
前記ラテックス粒子の体積平均粒子径は、前記反応液に配合する、無機塩、重合性単量体(a1,a2)、水溶性重合開始剤の各配合量や種類を調整することによって制御することができる。特に無機塩の配合濃度の影響が大きい。
【0012】
前記ラテックス粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置(例えばベックマンコールター社製「LS 13 320」)で測定して得られる体積平均粒子径である。測定パラメータは、使用する溶媒や測定対象のラテックス粒子の組成に合わせて適宜設定する。測定パラメータの妥当性は、ベックマンコールター社等が市販しているポリスチレンの標準粒子(第3者機関の認証済み)を測定した時の粒径が、メーカー規格内になっていることで確認する。
【0013】
重合性単量体(a1)は、アリール基を有し、スルホン酸基(-SO3H)及びそのプロトンがカチオンで置換された塩を有しない重合性化合物である。重合性単量体(a1)は水中で電離する置換基を有しないことが好ましい。
重合性単量体(a1)が有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。これらの中でも、ラテックス粒子の体積平均粒子径を制御しやすいことから、フェニル基が好ましい。アリール基があることで、測定対象物質と、ラテックス粒子表面に担持された測定対象物質に結合する結合物質(例えば抗原や抗体)とが結合した際の濁度変化を、光学的に好適に検出することができる。
重合性単量体(a1)が有する重合性基としては、ラジカル重合可能な重合性基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
具体的な重合性単量体(a1)としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、エチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
前記反応液に配合する重合性単量体(a1)は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0014】
重合性単量体(a2)は、スルホン酸基若しくはその塩を有する重合性化合物である。
ここで、スルホン酸基の塩とは、スルホン酸基のプロトンが任意のカチオンで置換された塩をいう。
重合性単量体(a2)が有するスルホン酸基若しくはその塩は、アリール基の任意の水素原子を置換していることが好ましい。重合性単量体(a2)が有するスルホン酸基若しくはその塩の数は、ラテックス粒子の表面電荷の制御が容易である観点から、1つ又は2つが好ましく、1つがより好ましい。
前記スルホン酸基の塩を構成するカチオンは特に制限されず、ナトリウム、カリウム等の1価カチオンが好ましい。
【0015】
重合性単量体(a2)が有する重合性基としては、重合性単量体(a1)と重合可能なものであればよく、ラジカル重合可能な重合性基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
重合性単量体(a2)はアリール基を有していてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。これらの中でも、ラテックス粒子の体積平均粒子径を制御しやすいことから、フェニル基が好ましい。
重合性単量体(a2)が有するアリール基は、重合性単量体(a1)と同じでもよく、異なっていてもよいが、同じであることが体積平均粒子径の制御が容易である観点から好ましい。
重合性単量体(a2)がアリール基を有しない場合であっても、重合性単量体(a1)がアリール基を有するため、前述の濁度変化は光学的に好適に検出することができる。一方で、アリール基があることで、測定対象物質と、ラテックス粒子表面に担持された測定対象物質に結合する結合物質(例えば抗原や抗体)とが結合した際の濁度変化を、光学的に好適に検出することができる。重合性単量体(a2)は、アリール基を有することが好ましい。
【0016】
具体的な重合性単量体(a2)としては、例えば、スチレンスルホン酸若しくはその塩、エチルスチレンスルホン酸、o-メチルスチレンスルホン酸若しくはその塩、ビニルナフタレンスルホン酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム、メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
前記反応液に配合する重合性単量体(a2)は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0017】
前記反応液には、本発明の効果を損なわない限り、重合性単量体(a1)及び重合性単量体(a2)以外の重合性単量体(a5)を混合しても構わない。重合性単量体(a5)として、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、(メタ)アクロレイン、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体等が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
前記反応液に混合する重合性単量体(a5)の配合量は、重合性単量体(a1)及び重合性単量体(a2)の合計質量に対して、例えば、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下が挙げられる。
【0018】
前記反応液に配合する無機塩としては、カチオンについてはアンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩であると、自己凝集の少ないラテックス粒子が得られやすい。無機塩のアニオンについては、ハロゲン化物が好ましく、塩化物がより好ましい。塩化物としては、例えば、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化ニッケル、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、等が挙げられる。これらのなかでも、金属イオンを含まないので、塩化アンモニウムが最も好ましい。
前記反応液に配合する無機塩の種類は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、重合性単量体(a1,a2)及び水溶性重合開始剤が有していてもよいスルホン酸等の酸基のカウンターカチオンは、前記反応液に配合する無機塩に該当しない。
【0019】
前記反応液に配合された無機塩の濃度は、1mM~1000mMが好ましく、10mM~500mMがより好ましく、20mM~200mMまたは30mM~200mMがさらに好ましい。
上記範囲であると、重合時の核粒子同士の表面電荷による反発を緩和でき、重合反応も良好に進むので、形成するラテックス粒子の平均粒子径を所望の範囲に制御することが容易になる。
【0020】
前記反応液を構成する水系溶媒は、水であってもよいし、水と水溶性有機溶剤の混合物であってもよい。水溶性有機溶剤は水と混合したときに水相と有機相に分離しないように使用される。水系溶媒に界面活性剤を添加してもよいが、界面活性剤の添加は必須ではない。
【0021】
水溶性重合開始剤は、重合性単量体(a1)と重合性単量体(a2)の重合を開始でき、水溶性であればよい。重合性単量体がラジカル重合性である場合、水溶性重合開始剤は、ペルオキソ一硫酸塩又はペルオキソ二硫酸塩であることが好ましい。これらの開始剤であると、重合体の重合鎖末端にスルホン酸基若しくはその塩を付加でき、形成するラテックス粒子の表面電荷を高めることができる。
【0022】
前記反応液における{前記重合性単量体(a2)のモル数/前記重合性単量体(a1)のモル数}で表されるモル比は、2.0×10-6~3.0×10-2が好ましく、4.0×10-5~9.0×10-3がより好ましく、5.0×10-4~5.0×10-3がさらに好ましい。
上記範囲であると、形成するラテックス粒子の平均粒子径を所望の範囲としつつ、形成したラテックスの表面電荷を高めることができ、後述の測定試薬の冷蔵安定性をより一層高めることができる。上記範囲の下限以上であると、ラテックス粒子の表面荷電が大きくなり、所望の試薬性能が得られ易くなる。上限以下であると、ラテックス粒子の表面荷電密度の飽和を防止し、ラテックス粒子内へスルホン酸基が取り込まれ易くなる。
【0023】
前記反応液における[{前記重合性単量体(a2)のモル数+前記水溶性重合開始剤のモル数}/前記重合性単量体(a1)のモル数]で表されるモル比は、2.0×10-4~3.0×10-1が好ましく、8.0×10-4~2.0×10-2がより好ましく、1.5×10-3~1.0×10-2がさらに好ましい。
上記範囲であると、形成するラテックス粒子の平均粒子径を所望の範囲としつつ、形成したラテックスの表面電荷を高めることができ、後述の測定試薬の冷蔵安定性をより一層高めることができる。上記範囲の下限以上であると、ラテックス粒子の表面荷電が大きくなり、所望の試薬性能が得られ易くなる。上限以下であると、ラテックス粒子の表面荷電密度の飽和を防止し、ラテックス粒子内へスルホン酸基が取り込まれ易くなる。
【0024】
前記反応液における{前記重合性単量体(a2)のモル数/前記無機塩のモル数}で表されるモル比は、3.5×10-4~1.8×10が好ましく、9.0×10-4~9.0×10-1がより好ましく、5.0×10-3~1.2×10-1がさらに好ましい。
上記範囲であると、形成するラテックス粒子の平均粒子径を所望の範囲としつつ、形成したラテックスの表面電荷を高めることができ、後述の測定試薬の冷蔵安定性をより一層高めることができる。上記範囲の下限以上であると、ラテックス粒子の表面荷電密度の飽和を防止し、ラテックス粒子内へスルホン酸基が取り込まれ易くなる。上限以下であると、ラテックス粒子の凝集をより抑制することができる。
【0025】
前記反応液における(前記無機塩のモル数/前記水溶性重合開始剤のモル数)で表されるモル比は、1~1000が好ましく、3~900がより好ましく、5~800がさらに好ましい。
上記範囲であると、形成するラテックス粒子の平均粒子径を所望の範囲としつつ、形成したラテックスの表面電荷を高めることができ、後述の測定試薬の冷蔵安定性をより一層高めることができる。上記範囲の下限以上であると、ラテックス粒子の表面荷電密度の飽和を防止し、ラテックス粒子内へスルホン酸基が取り込まれ易くなる。上限以下であると、ラテックス粒子の凝集をより抑制することができる。
【0026】
前記反応によりラテックス粒子を形成する具体的な方法や器具は、反応液中に無機塩を添加すること以外は、従来のラテックス粒子の製造方法と同様に行うことができる。
【0027】
本態様の製造方法で得たラテックス粒子の表面についてX線光電子分光法(XPS)で測定される硫黄原子の存在比率は、炭素原子、酸素原子及び硫黄原子の合計の存在比率を100atomic%としたとき、0.1atomic%以上が好ましく、0.4~3.0atomic%がより好ましい。
硫黄原子の存在比率は、重合性単量体(a2)が有するスルホン酸基若しくはその塩と、水溶性重合開始剤が有してもよいスルホン酸基等の硫黄含有基が、ラテックス粒子の表面に表出している程度を表す。硫黄原子の存在比率が高いほど、ラテックス粒子の表面電荷が高いと考えてよい。また、ラテックス粒子の表面電荷を高めることによって、後述の測定試薬の冷蔵安定性を高めることができる。
【0028】
本態様の製造方法で得たラテックス粒子についてX線吸収微細構造解析(XAFS)の転換電子収量法で測定されるSO3とSO4の成分比率は、SO3とSO4の合計100%に対して、SO3の比率が10%以上であることが好ましく、20~90%がより好ましく、30~80%がさらに好ましく、蛍光収量法で測定されるSO3とSO4の成分比率は、SO3とSO4の合計100%に対して、SO3の比率が20%以上であることが好ましく、30~90%がより好ましく、40~80%がさらに好ましい。
SO3の比率は、重合性単量体(a2)が有するスルホン酸基若しくはその塩の数を反映していると考えられる。一方、SO4の比率は、例えば水溶性重合開始剤に由来する硫酸基若しくはその塩の数を反映していると考えられる。
上記成分比率であると、メカニズムの詳細は未解明であるが、測定試薬の精度及び感度が向上する。
【0029】
ラテックス粒子の臨界凝集濃度(CCC)とは、リン酸緩衝液(pH7.4、25℃)に分散されたラテックス粒子が凝集しないリン酸塩の最大濃度のことである。具体的には、濃度が10mMずつ増加するリン酸緩衝液(pH7.4、25℃)を、10~1000mMの範囲で準備し、各濃度のリン酸緩衝液に、抗体が感作されていないラテックス粒子を最終濃度1%(W/V)になる量で投入して攪拌する。1分間経過後に目視確認してラテックスが自己凝集しているか否か確認し、ラテックス粒子が自己凝集し目視で沈殿を認められる濃度の1段階薄いリン酸緩衝液の濃度を臨界凝集濃度(最大非凝集濃度)とする。リン酸緩衝液は、リン酸二水素ナトリウム塩の水溶液とリン酸水素二ナトリウム塩の水溶液を混合する常法によって調製したものを用いる。
本明細書及び特許請求の範囲において、上記のCCCの測定方法を「リン酸緩衝液濃度勾配-凝集法」という。
【0030】
本態様の製造方法で得たラテックス粒子について上記の方法で測定される臨界凝集濃度CCCは、200mM以上が好ましく、270mM~400mMがより好ましく、280mM~380mMがさらに好ましい。
臨界凝集濃度CCCはラテックス粒子の表面に表出している電荷の程度を表す。臨界凝集濃度CCCが高いほど、ラテックス粒子の表面電荷が高いと考えてよい。また、ラテックス粒子の表面電荷を高めることによって、後述の測定試薬の冷蔵安定性を高めることができる。
臨界凝集濃度は、前記反応液に配合する、無機塩、重合性単量体(a1,a2)、水溶性重合開始剤の各配合量や種類を調整することによって制御することができる。
【0031】
≪測定試薬の製造方法≫
本発明の第二態様は、第一態様のラテックス粒子の製造方法によりラテックス粒子を得る工程と、前記ラテックス粒子の表面に、測定対象物質と結合する結合物質を担持させることにより、測定試薬を得る工程と、を含む、測定試薬の製造方法である。
【0032】
結合物質は、測定対象物質に応じて適宜選択され、例えば、抗体又は抗原が挙げられる。
【0033】
ラテックス粒子に結合物質を担持させる方法は、従来の測定試薬の製造方法と同様に行うことができる。例えば、ラテックス粒子と結合物質を水系溶媒中で接触させ、自然に吸着させる(感作させる)方法;ラテックス粒子をストレプトアビジンで被覆し、結合物質をビオチンで標識し、ストレプトアビジン-ビオチン特異的結合を利用して担持する方法、等が挙げられる。
【0034】
本態様によって製造された測定試薬は、ラテックス粒子に結合物質が担持されたものである。測定試薬は、水系溶媒に分散された状態で冷蔵保存されることが一般的である。
【0035】
以上では、ラテックス粒子の場合を説明したが、本態様の製造方法によって製造される粒子は、ラテックス粒子に限られず、前記共重合体からなる粒子であればいかなる粒子であってもよい。その体積平均粒子径は0.050μm~10μmとすることができる。
【0036】
前記粒子には、染料を吸着させることにより着色粒子とすることもできる。ここで、着色粒子として、例えば、特開平10-048215号公報に記載されたものが挙げられる。この場合、平均粒子径の好ましい範囲は、0.3~1.0μmである。着色粒子の用途としては、ラテックス免疫比濁法の用途に限られず、いかなる用途に用いられても良く、例えばイムノクロマトグラフィーの担体の用途に適用することも可能である。この用途として、例えば特許第6320711号公報に記載されたものが挙げられる。
【0037】
前記粒子の用途としては、ラテックス免疫比濁法などの免疫血清学的検査の用途に限られず、いかなる用途に用いられてもよく、例えば、イオン交換液体クロマトグラフィーのカラムの充填剤の用途に適用することも可能である。この場合、平均粒子径の好ましい範囲は、1.0~10.0μmである。この充填剤の用途として、例えば、特許第3984633号公報に記載されたものが挙げられる。
【実施例0038】
[実施例1]
攪拌機、還流用冷却器、温度計、窒素導入管及び加熱用油浴などを設けたガラス製反応容器(2L)に、60mM塩化アンモニウム水溶液(pH8.8)1100g、スチレンモノマー170g、スチレンスルホン酸ナトリウム0.48gを添加し、210rpmで攪拌しながら反応容器内を十分に窒素置換した。その後、70℃に昇温し、過硫酸カリウム2.4gを添加し、反応を開始させた。18時間重合した後、反応溶液をろ紙(ADVANTEC No.2)にてろ過し、ラテックス粒子を得た。
得られたラテックス粒子の平均粒子径を、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「LS 13 320」)で測定した(体積平均粒子径)。測定の結果、体積平均粒子径は、0.30μmであった。
【0039】
実施例1で調製した反応液の総体積は1.2Lであり、この反応液中に含まれる塩化アンモニウムの濃度は55mMであった。
実施例1で調製した反応液における(スチレンスルホン酸ナトリウムのモル数/スチレンのモル数)のモル比は、2.3×10-3/1.63=1.4×10-3であった。
実施例1で調製した反応液における{(スチレンスルホン酸ナトリウムのモル数+過硫酸カリウムのモル数)/スチレンのモル数}のモル比は、(2.3×10-3+8.9×10-3)/1.63=6.9×10-3であった。
実施例1で調製した反応液における(スチレンスルホン酸ナトリウムのモル数/塩化アンモニウムのモル数)のモル比は、2.3×10-3/0.066=3.5×10-2であった。
実施例1で調製した反応液における(塩化アンモニウムのモル数/過硫酸カリウムのモル数)のモル比は、0.066/8.9×10-3=7.4であった。
【0040】
[実施例2]
スチレンスルホン酸ナトリウムの「0.48g」を「0.51g」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.29μmであった。
【0041】
[実施例3]
スチレンスルホン酸ナトリウムの「0.48g」を「0.43g」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.30μmであった。
【0042】
[実施例4]
スチレンスルホン酸ナトリウムの「0.48g」を「0.40g」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.30μmであった。
【0043】
[実施例5]
スチレンスルホン酸ナトリウムの「0.48g」を「0.35g」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.31μmであった。
【0044】
[実施例6]
塩化アンモニウムの濃度を「60mM」から「10mM」へ、スチレンスルホン酸ナトリウムの「0.48g」を「0.18g」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.31μmであった。
【0045】
[実施例7]
塩化アンモニウムの濃度を「60mM」から「20mM」へ、スチレンスルホン酸ナトリウムの「0.48g」を「0.24g」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.32μmであった。
【0046】
[実施例8]
塩化アンモニウムの濃度を「60mM」から「150mM」へ、スチレンスルホン酸ナトリウムの「0.48g」を「1.2g」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.30μmであった。
【0047】
[実施例9]
「60mM塩化アンモニウム水溶液」を「60mM塩化カルシウム水溶液」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は0.30μmであった。
【0048】
[実施例10]
「60mM塩化アンモニウム水溶液」を「60mM塩化アルミニウム水溶液」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は0.30μmであった。
【0049】
[比較例1]
「60mM塩化アンモニウム水溶液(pH8.8)」を「ミリQ水」へ変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.17μmであった。
【0050】
[比較例2]
スチレンスルホン酸ナトリウムの「0.48g」を「0.10g」へ変更した以外は、比較例1と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.30μmであった。
【0051】
[比較例3]
過硫酸カリウムの「2.4g」を「3.6g」へ変更した以外は、比較例2と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.30μmであった。
【0052】
[比較例4]
過硫酸カリウムの「2.4g」を「1.2g」へ変更した以外は、比較例2と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.30μmであった。
【0053】
[比較例5]
過硫酸カリウムの「2.4g」を「0.5g」へ変更した以外は、比較例2と同様な操作を行い、ラテックス粒子を得た。
得られた粒子の体積平均粒子径は、0.30μmであった。
【0054】
<ラテックス粒子の臨界凝集濃度CCC;リン酸緩衝液濃度勾配-凝集法>リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4、25℃)を10~1000mMの範囲で10mMごとに準備し、各濃度のリン酸ナトリウム緩衝液に、ラテックス粒子を最終濃度1%(W/V)になる量を投入して攪拌した。次に、1分間経過後にラテックスが自己凝集しているか否かを目視で確認し、目視で沈殿を認めた濃度の1段階薄いリン酸ナトリウム緩衝液濃度を臨界凝集濃度とした。
ラテックス粒子の表面荷電は、後述の「粒子表面の硫黄原子の存在比率」をXPSで測定することができるが、この方法は煩雑である。より簡便に、ラテックス粒子の表面荷電を大まかに把握する方法として、上記の臨界凝集濃度CCC値を参考にすることができる。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
<粒子表面の硫黄原子の存在比率>
各例で得たラテックス粒子の表面の硫黄原子の割合について、超高真空中で試料表面に軟X線を照射し、表面から放出される光電子をアナライザーで検出した(X線分光分析法(XPS))。光電子が物質中を進むことができる長さ(平均自由行程)が数nmであることから、本分析手法における検出深さは数nmとなる。物質中の束縛電子の結合エネルギー値から表面の元素情報が得られ、各ピークのエネルギーシフトから価数や結合状態に関する情報が得られる。さらにピーク面積比を用いて元素の存在比率を定量することができる。測定範囲の全元素(炭素C、酸素O及び硫黄S)を100atomic%としたときの各元素の存在比率を分析し、その結果を表4に示す。
XPSの測定に供した試料は、製造したラテックス粒子を12000rpm、10分間遠心分離し、上清を除去後にミリQ水で再分散した溶液を乾燥したものを使用した。
【0059】
<XPS測定条件>
装置:Quantera SXM (PHI社製)
励起X線:monochromatic Al K1,2線(1486.6eV)
X線径:200 μm
光電子検出角度:45°(試料表面に対する検出器の傾き)
【0060】
<データ処理>
スムージング:9-point smoothing
横軸補正:C1sメインピーク(CHx, C-C)を284.6eV とした。
【0061】
【0062】
表4の硫黄の理論値は、次の式1によって算出される硫黄Sの存在比率である。各例において、特に実施例1において、ラテックス粒子表面の硫黄原子の存在比率が理論値よりも高いことから、ラテックス粒子の表面に多くのSO3基及びSO4基が表出していることが確認された。なお、表4の数値単位はatomic%である。
【0063】
<式1>
{(SSNaの分子中の硫黄原子数×反応液に配合したSSNaのモル量)+(Kの分子中の硫黄原子数×反応液に配合したKのモル量)}/{(STの分子中の炭素原子数×反応液に配合したSTのモル量)+(SSNaの分子中の炭素原子数と硫黄原子数とナトリウム原子数の合計原子数×反応液に配合したSSNaのモル量)+(Kの分子中の硫黄原子数と酸素原子数とカリウム原子数の合計原子数×反応液に配合したKのモル量)}
上記の式1中、SSNaはスチレンスルホン酸ナトリウムを表し、Kは過硫酸カリウムを表し、STはスチレンを表す。
【0064】
<粒子表面の硫黄組成>
各例で得たラテックス粒子の試料にX線を照射し、その吸収量を計測することにより、X線吸収微細構造(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)スペクトルを測定した。XAFSスペクトル中、吸収端近傍構造がXANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)、吸収端より約100eV以上高エネルギー側に現れる広域X線吸収微細構造がEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)と呼ばれる。XANESから着目原子の価数や構造に関する情報が得られ、EXAFS解析では、実スペクトルのフーリエ変換(FT-EXAFS/動径分布関数に相当)により、試料の局所構造(着目原子周囲の原子種、価数、距離)に関する情報が得られる。その結果を表5に示す。表中、SO3成分は重合性単量体(a2)であるスチレンスルホン酸ナトリウムに由来し、SO4成分は重合開始剤である過硫酸カリウムに由来する。
【0065】
<測定条件>
実験施設:あいちシンクロトロン光センター(Aichi-SR)実験ステーション:BL6N1
分光器:InSb(111)
吸収端:S K 吸収端(2472eV)
検出法,検出器:転換電子収量法(検出深さ:100nm程度)、転換電子収量検出器;蛍光収量法(検出深さ:数十μm程度)、シリコンドリフト検出器
【0066】
【表5】
転換電子収量法…分析深さは表面から100nm程度
蛍光収量法…分析深さは表面から数十μm程度
【0067】
<重合時に無機塩を添加する意義に関する考察>
比較例1は、重合時に無機塩を添加せず、水中で重合をおこなう、従来の方法である。
重合性単量体(a1)としてスチレンモノマーを170g、重合性単量体(a2)としてスチレンスルホン酸ナトリウムを0.48g、重合開始剤として過硫酸カリウムを2.4g使用しており、重合時に無機塩を添加しない以外は、実施例1と同一の条件下、前述の方法で重合したところ、得られたラテックス粒子の体積平均粒子径は0.17μmであった。この平均粒子径は実施例1で製造したラテックス粒子の体積平均粒子径0.30μmと比較して小さかった。この結果から重合時に無機塩を添加することにより、粒子の小径化を抑制することができることが分かった。
平均粒子径と臨界凝集濃度CCCが類似である実施例1と比較例2を比較すると、重合時に無機塩を添加する方法のほうが、XPS測定を参照すると、粒子表面の硫黄原子の存在比率が高いとわかった。さらに、粒子表面のSO3成分とSO4成分の比率については、比較例2より実施例1のほうがSO3成分が多かった。この結果から、重合時に無機塩を添加する方法では、スチレンスルホン酸ナトリウムに由来するスルホ基が粒子表面に多く存在することがわかった。
【0068】
<測定試薬の冷蔵安定性の評価;実施例1>
実施例1で得たラテックス粒子を用いて、ラテックス免疫比濁法によるThymus
and activation-regulated chemokine(以下、TARCと称することがある)測定試薬を調製した。
<試薬の調製>
・第一試薬
100mM MOPS-NaOH(pH7.5)
500mM NaCl
0.5% BSA
・第二試薬
抗ヒトTARCモノクローナル抗体感作ラテックス(2種類)
5mM MOPS-NaOH(pH7.0)
なお、抗ヒトTARCモノクローナル抗体は、市販のTARC抗原を使用し、当業者周知の方法にて取得した。市販のTARC抗原には、CCL17,thymus and
activation regulated chemokine(Shenandoah Biotechnology,Inc.)、CCL17/TARC,Human(LifeSpan Biosscience,Inc.)、Human TARC(CCL17)(Abeomics,Inc.)があった。さらに、TARC抗原に対してサンドイッチ測定が可能であるモノクローナル抗体の組み合わせを、当業者周知の方法にて選定した。抗ヒトTARCモノクローナル抗体感作ラテックスは、特開2017-181377記載の方法を参考に調製した。
<測定方法>
測定装置:日立7180形自動分析装置
生理食塩水2.4μLに、第一試薬を120μL加えて、37℃で5分間加温した。その後、第二試薬を40μL加えて攪拌した。その後5分間の吸光度変化を、主波長570nm、副波長800nmにて測定した。ブランク感度として、第二試薬添加直後の吸光度Aと、第二試薬を添加して5分間経過した時点の吸光度Bの差を算出した。
ブランク感度(mAbs.)=吸光度B-吸光度A
なお、吸光度A、吸光度Bは、主波長の吸光度値から副波長の吸光度値を引いた値として算出した。
<経時変化の測定方法>
製造したTARC試薬を4℃で冷蔵保存し、1日後、2日後、5日後、7日後、12日後、13日後に生理食塩水を測定した際のブランク感度を測定した。その結果を
図1に示す。
図1の散布図において、横軸が冷蔵保存日数、縦軸が自己凝集の度合いを表すブランク感度(単位:mAbs)である。13日後においても、ブランク感度が上昇せず、自己凝集が起こっていないことが確認された。
【0069】
<測定試薬の冷蔵安定性の評価;比較例2>
比較例2で得たラテックス粒子を用いたこと以外は、実施例1のラテックス粒子を用いた場合と同様にしてTARC試薬を得て、冷蔵保存安定性を評価した。
その結果を
図1に示す。
図1の散布図において、保存日数が経過するにつれて、ブランク感度が上昇し、自己凝集が進んでいることが確認された。保存日数1日目に対する、保存日数13日目のブランク感度の上昇幅は、27.8mAbsだった。
【0070】
<測定試薬の冷蔵安定性の評価;実施例6>
実施例6で得たラテックス粒子を用いたこと以外は、実施例1のラテックス粒子を用いた場合と同様にしてTARC試薬を得て、冷蔵保存安定性を評価した。
その結果を
図1に示す。
図1の散布図において、保存日数が7日目より僅かにブランク感度が上昇し、自己凝集が進み始めていることが確認された。保存日数1日目に対する、保存日数13日目のブランク感度の上昇幅は、4.9mAbsだった。この数値は、比較例2よりも大幅に改善されていたが、実施例1よりは大きかった。
【0071】
<測定試薬の冷蔵安定性の評価;実施例7>
実施例7で得たラテックス粒子を用いたこと以外は、実施例1のラテックス粒子を用いた場合と同様にしてTARC試薬を得て、冷蔵保存安定性を評価した。
その結果を
図1に示す。
図1の散布図において、13日後においても、ブランク感度が上昇せず、自己凝集が起こっていないことが確認された。
【0072】
<測定試薬の冷蔵安定性の評価;実施例8>
実施例8で得たラテックス粒子を用いたこと以外は、実施例1のラテックス粒子を用いた場合と同様にしてTARC試薬を得て、冷蔵保存安定性を評価した。
その結果を
図1に示す。
図1の散布図において、13日後においても、ブランク感度が上昇せず、自己凝集が起こっていないことが確認された。
【0073】
<測定試薬の冷蔵安定性の評価;実施例9>
実施例9で得たラテックス粒子を用いたこと以外は、実施例1のラテックス粒子を用いた場合と同様にしてTARC試薬を得て、冷蔵保存安定性を評価した。
その結果を
図1に示す。
図1の散布図において、13日後においても、ブランク感度が上昇せず、自己凝集が起こっていないことが確認された。
【0074】
実施例10で得たラテックス粒子を用いたこと以外は、実施例1のラテックス粒子を用いた場合と同様にしてTARC試薬を得て、冷蔵保存安定性を評価した。
その結果を
図1に示す。
図1の散布図において、13日後においても、ブランク感度が上昇せず、自己凝集が起こっていないことが確認された。
【0075】
<測定試薬の冷蔵安定性と、粒子を製造する際に添加する無機塩の種類、濃度>
上記の評価結果を表6にまとめる。表6及び
図1の結果から、各実施例のラテックス粒子を製造する際に添加する無機塩の種類に関わらず、保存開始から13日後においてもブランク感度がほとんど若しくはまったく上昇せず、自己凝集が起こっていないことが判明した。特に無機塩として塩化アンモニウムを用いた場合には、同濃度の塩化アンモニウム以外の無機塩を用いた場合と比較して、ブランク感度の絶対値が低いことが判明した。
なお、ブランク感度は、試料として生理食塩水を測定した場合の凝集量を示す。ブランク感度の絶対値が低いということは、測定対象物質に由来しない凝集量が少ないことを意味し、より精度の高い測定が可能な状態である。このため、ブランク感度の絶対値が低くなるラテックス粒子の製造に際し、塩化アンモニウムは、無機塩の中でも特に有用である。
ラテックス粒子の製造時の塩化アンモニウムの濃度は、10mM以上で保存期間中にブランク感度が上昇することを抑制する効果があった。特に塩化アンモニウムの濃度を20mM以上とした場合は、保存を検討した13日間での感度上昇をほぼゼロに抑制することができた。さらに塩化アンモニウムの濃度を60mMとした場合にはブランク感度の絶対値は最も小さく、より自己凝集を引き起こしにくいラテックス粒子を得ることができた。
【0076】
【0077】
<測定試薬の冷蔵安定性と、表面電荷の関係1>
スチレンスルホン酸ナトリウムの使用量を変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法(塩添加あり処方)で得た臨界凝集濃度230mMから320mMであるラテックス粒子を用い、実施例1と同様の製造方法でTARC試薬を得た。
【0078】
その測定試薬を4℃で12日間保存した後、実施例1と同様の方法でブランク感度を測定して評価した。
その結果を
図2に示す。
図2の散布図において、臨界凝集濃度CCC(単位mM)が多いほど、ブランク感度が上昇せず、自己凝集が防止されていることが確認された。
【0079】
<測定試薬の冷蔵安定性と、表面電荷の関係2>
過硫酸カリウムの使用量を変更したこと以外は、比較例2と同様の製造方法(塩添加なし処方)で得た表面電荷が異なるラテックス粒子を用い、比較例2と同様の製造方法でTARC試薬を得た。
【0080】
その測定試薬を4℃で12日間保存した後、実施例1と同様の方法でブランク感度を測定して評価した。
その結果を
図2に示す。
図2の散布図において、臨界凝集濃度CCC(単位mM)が多いほど、ブランク感度が上昇せず、自己凝集が防止されていることが確認された。
【0081】
図2の結果から、重合時に無機塩を添加して製造したラテックス粒子においても、重合時に無機塩を添加せずに製造したラテックス粒子においても、臨界凝集濃度CCC(単位mM)が高い方が、自己凝集をしにくいと判明した。さらに、同程度の臨界凝集濃度CCCの粒子同士を比較した場合、本発明に係る重合時に無機塩を添加して製造した粒子を使用した測定試薬の方が、比較例の重合時に無機塩を添加せずに製造した粒子を使用した時と比較して、自己凝集が抑制されていることが判明した。理由は定かではないが、本発明に係る重合時に無機塩を添加する製造方法において、スチレンスルホン酸ナトリウムを重合時に多く添加することが、臨界凝集濃度CCCの数値では評価できない、何らかの性能変化をもたらし、抗TARC抗体を感作したラテックス粒子の自己凝集を抑制したと考えられた。
TARC測定試薬では、平均粒子径0.30μm付近、臨界凝集濃度CCCが300mM付近の粒子をターゲットとしたが、測定対象項目や測定に用いる抗体等の各種材料の性質により、ターゲットとなりうる平均粒子径や臨界凝集濃度CCCは異なる。その場合、粒子を製造する際に基準となる重合性単量体(a1)、重合性単量体(a2)、重合開始剤の量も変動する。当業者は、所望の平均粒子径や臨界凝集濃度(表面電荷)の粒子を製造する際、本発明にかかる「重合時に無機塩を添加する重合方法」を採用することで、粒子表面に抗原や抗体等を担持したラテックス粒子であって、より自己凝集を引き起こしにくいラテックス粒子を得ることができる。所望の、ターゲットとなる平均粒子径と臨界凝集濃度CCCの粒子を製造した場合であっても、重合時に無機塩を添加する方法のほうが、無機塩を添加しない方法に対して、XPS測定において粒子表面の硫黄原子の存在比率が高く、かつ粒子表面のSO
3成分とSO
4成分の合計量に対するSO
3成分の比率が多い粒子を得られるであろう。
【0082】
<測定試薬の精度及び感度の評価>
[感度評価試験1]
実施例2の方法で得たラテックス粒子を用いて、ラテックス免疫比濁法による肺サーファクタントプロテインD(以下、単にSP-Dと称することがある)測定試薬を調製した。
<試薬の調製>
・第一試薬
100mM MES-NaOH (pH6.0)
500mM NaCl
0.5% BSA
増感剤
・第二試薬
下記の抗ヒトSP-Dモノクローナル抗体感作ラテックス粒子溶液を5mM MOPS-NaOH(pH7.0)で波長600nmの吸光度が6.0Abs.となるように希釈して第二試薬とした。
抗ヒトSP-Dモノクローナル抗体感作ラテックス粒子溶液
実施例2で得たラテックス粒子の溶液(10mM MOPS緩衝液)に、等量の10mM MOPS緩衝液で0.35mg/mLに希釈した抗ヒトSP-Dモノクローナル抗体溶液を添加して4℃、2時間攪拌した。その後、等量の0.5%BSA液(10mM MOPS緩衝液)を添加して4℃、1時間攪拌し、抗ヒトSP-Dモノクローナル抗体感作ラテックス溶液を作成した。なお、抗ヒトSP-Dモノクローナル抗体は、ヒトSP-D(GenScript社製)を抗原として使用し、当業者周知の方法にて取得した。
<測定試料>
SP-D濃度が既知である、任意のヒト血清試料を用意した。各検体のSP-D濃度は以下の通りであった。
検体(1):55.0ng/mL
検体(2):200.2ng/mL
検体(3):609.4ng/mL
検体(4):1000ng/mL
なお、SP-D濃度が0ng/mLである試料として、生理食塩水を測定した。
<測定方法>
第一試薬と各実施例の第二試薬とをそれぞれ組み合わせ、日立自動分析装置を用いて、試料を測定した。具体的には、各試料5μLに第一試薬を120μLずつ加えて、37℃、5分間加熱した。その後、第二試薬を40μLずつ添加して攪拌した。続いて、5分間の吸光度変化を、主波長570nm、副波長800nmにて測定した。測定感度として、第二試薬添加直後の吸光度Aと、第二試薬を添加して5分間経過した時点の吸光度Bの差を算出した。
測定感度(mAbs.)=吸光度B-吸光度A
なお、吸光度A、吸光度Bは、主波長の吸光度値から副波長の吸光度値を引いた値として算出した。感度評価試験1の結果を
図3に示す。
【0083】
[感度評価試験2]
比較例2、比較例4、比較例5で製造したラテックス粒子を用いて、感度評価試験1と同様にSP-D測定試薬を調製し、試料の感度を測定した。その結果を
図3に示す。
【0084】
図3の結果から、本発明に係る「塩添加あり処方」の製造方法で得た測定試薬の方が、比較例の「塩添加なし処方」の製造方法で得た測定試薬よりも、感度が向上していることが確認された。実施例2の粒子と、比較例2の粒子は、平均粒子径ならびに臨界凝集濃度CCCの数値が酷似している。しかし、SP-Dが609.4ng/mlの試料(検体3)を測定した際の感度は、比較例2では約100mAbs.であったのに対し、実施例2では約170mAbs.と大幅に向上した。理由は定かではないが、本発明にかかる「重合時に無機塩を添加する方法」で製造したラテックスが有する、有用な効果である。
【0085】
<相関性評価>
実施例1または比較例2で製造したラテックス粒子を使用したSP-D測定試薬について、測定値を、SP-Dキット「ヤマサ」EIA II(ヤマサ醤油株式会社、既認証体外用診断薬(以下、既認証試薬とする))による測定値と対比した。
実施例1または比較例2のSP-D測定試薬において、濃度既知試料5点(生理食塩水および[感度評価試験1]で調製した検体(1)~(4))にて検量線を作成した。続いて、任意のヒト血清39検体(但しそれぞれのドナーは異なる)を測定した。
同ヒト血清を既認証試薬で測定した値を横軸、LTIA試薬の測定値を縦軸として散布図を作成した。さらに、各プロットの最小2乗法によって算出された相関係数と回帰直線の傾きを比較して、実施例1のラテックス粒子または比較例2のラテックス粒子を使用したLTIA試薬によるSP-D測定値と既認証試薬によるSP-D測定値の相関性を評価した。結果を
図4および
図5に示した。
<結果>
比較例のラテックス粒子を使用した試薬と既認証試薬の相関係数Rは0.943であったのに対し、実施例のラテックス粒子を使用した場合の相関係数は0.989と、大幅に向上した。既認証試薬はB/F分離を伴う測定方法であり、測定精度が高いと期待される。LTIA試薬はB/F分離を伴わず、非特異的な反応を引き起こす成分から影響を受けやすい測定方法である。比較例のラテックス粒子を使用した試薬に対し、実施例のラテックス粒子を使用した試薬では、測定精度が高いと期待される測定方法に対する相関係数が向上し、測定精度が向上したと考えられた。