(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005255
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】流体供給装置
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61H7/00 322B
A61H7/00 322A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105332
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】守屋 翔平
【テーマコード(参考)】
4C100
【Fターム(参考)】
4C100AD01
4C100BA03
4C100BB05
4C100BC12
4C100BC13
4C100BC14
4C100CA15
4C100CA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】人体に装着されるマッサージバッグに流体を供給する改良された流体供給装置を提供する。
【解決手段】流体供給装置12は、マッサージバッグ14に流体を供給するポンプ40と、ポンプ40からマッサージバッグ14に供給される流体の圧力値を検出する圧力センサ54と、圧力値が変化する時間を計測する計時部と、圧力値が所定の第1圧力閾値から所定の第2圧力閾値まで上昇するのに要する時間に基づいて、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定する装着判定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着されるマッサージバッグに流体を供給する流体供給装置であって、
前記マッサージバッグに前記流体を供給するポンプと、
前記ポンプから前記マッサージバッグに供給される前記流体の圧力値を検出する圧力センサと、
前記圧力値が変化する時間を計測する計時部と、
前記圧力値が所定の第1圧力閾値から所定の第2圧力閾値まで上昇するのに要する前記時間に基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定する装着判定部と、
を備える、流体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体供給装置であって、
前記装着判定部は、前記時間と、前記マッサージバッグが人体から外れているか否かを判定するための所定の時間閾値とを比較し、前記時間が前記時間閾値より長い場合に前記マッサージバッグが人体から外れていると判定する、流体供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流体供給装置であって、
前記装着判定部は、前記圧力値が前記第1圧力閾値から前記第2圧力閾値まで上昇するのに要する前記時間である第1時間と、前記圧力値が前記第1圧力閾値から前記第2圧力閾値より大きい所定の第3圧力閾値まで上昇するのに要する前記時間である第2時間とに基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定する、流体供給装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体供給装置であって、
前記装着判定部は、前記第1時間と前記第2時間との比率としての(前記第2時間/前記第1時間)と、前記マッサージバッグが人体から外れているか否かを判定するための所定の比率閾値とを比較し、前記比率が前記比率閾値より小さい場合に前記マッサージバッグが人体から外れていると判定する、流体供給装置。
【請求項5】
請求項1に記載の流体供給装置であって、
前記装着判定部は、前記第1圧力閾値と前記第2圧力閾値と前記時間とから算出される前記圧力値の上昇率に基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定する、流体供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載の流体供給装置であって、
前記装着判定部は、前記上昇率と、前記マッサージバッグが人体から外れているか否かを判定するための所定の上昇率閾値とを比較し、前記上昇率が前記上昇率閾値より小さい場合に前記マッサージバッグが人体から外れていると判定する、流体供給装置。
【請求項7】
請求項5に記載の流体供給装置であって、
前記装着判定部は、前記上昇率と、前記圧力値が前記第2圧力閾値より大きい所定の第3圧力閾値まで上昇した時点における前記圧力値の時間微分値とに基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定する、流体供給装置。
【請求項8】
請求項7に記載の流体供給装置であって、
前記装着判定部は、前記上昇率と前記時間微分値との比率としての(前記時間微分値/前記上昇率)と、前記マッサージバッグが人体から外れているか否かを判定するための所定の比率閾値とを比較し、前記比率が前記比率閾値より大きい場合に前記マッサージバッグが人体から外れていると判定する、流体供給装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の流体供給装置であって、
前記ポンプから前記マッサージバッグへの前記流体の供給と、前記マッサージバッグからの前記流体の排出とを制御する給排制御部を備え、
前記装着判定部は、前記給排制御部により所定回数の給排処理が行われた後に、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定する、流体供給装置。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の流体供給装置であって、
前記ポンプの動作を制御するポンプ制御部を備え、
前記ポンプ制御部は、前記装着判定部による装着判定が行われる期間の前記ポンプのデューティ比を、前記装着判定部による装着判定が行われない期間の前記デューティ比より低下させる、流体供給装置。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の流体供給装置であって、
前記第1圧力閾値は、前記ポンプと前記マッサージバッグとの間に設けられる流路の配管抵抗である、流体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に装着されるマッサージバッグに流体を供給する流体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージ装置は、エア等の流体を利用して人体をマッサージする。マッサージ装置は、四肢に装着されるマッサージバッグと、マッサージバッグに流体を供給する流体供給装置とを有する。マッサージバッグは、1以上の流体室を有する。流体供給装置は、流体室への流体の供給と、流体室からの流体の排出とを繰り返す。マッサージ装置においては、流体供給装置へのマッサージバッグの取り付けと、流体供給装置からのマッサージバッグの取り外しとが可能である。特許文献1には、流体供給装置に取り付けられたマッサージバッグの種類を判定する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マッサージバッグが人体から外れている場合、マッサージバッグの対象者はマッサージの効果を得られない。マッサージを確実に行うために、マッサージ装置には、マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定する機能が求められている。
【0005】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、人体に装着されるマッサージバッグに流体を供給する流体供給装置であって、前記マッサージバッグに前記流体を供給するポンプと、前記ポンプから前記マッサージバッグに供給される前記流体の圧力値を検出する圧力センサと、前記圧力値が変化する時間を計測する計時部と、前記圧力値が所定の第1圧力閾値から所定の第2圧力閾値まで上昇するのに要する前記時間に基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定する装着判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、マッサージ装置の外観を示す図である。
【
図2】
図2は、マッサージ装置の流体回路を示す図である。
【
図3】
図3は、流体供給装置のシステム構成を示す図である。
【
図4】
図4は、エアの圧力値の時間変化を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の処理の説明に使用する図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態における装着判定に関わる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3実施形態の処理の説明に使用する図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態における装着判定に関わる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第4実施形態の処理の説明に使用する図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態における装着判定に関わる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1 マッサージ装置10の構成]
図1は、マッサージ装置10の外観を示す図である。マッサージ装置10は、流体供給装置12と一対のマッサージバッグ14とを備える。但し、マッサージバッグ14の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0010】
流体供給装置12は、各々のマッサージバッグ14に流体を供給し得る。また、流体供給装置12は、各々のマッサージバッグ14に封入された流体を外部に排出し得る。流体としては、気体(エア等)と液体(水等)のいずれか一方が使用可能である。本実施形態の流体供給装置12は、エアを使用する。
【0011】
流体供給装置12は、ユーザインターフェイスとして、電源スイッチ16と、開始/停止スイッチ18と、操作パネル20とを有する。開始/停止スイッチ18は、ユーザによる操作に応じて、開始信号と停止信号のいずれか一方をコントローラ60(
図3)に出力する。開始信号は、各々のマッサージバッグ14へのエアの供給の開始をコントローラ60に指示するための信号である。停止信号は、各々のマッサージバッグ14へのエアの供給の停止をコントローラ60に指示するための信号である。操作パネル20は、ユーザによる操作に応じて、設定信号をコントローラ60に出力する。設定信号は、設定情報(例えば運転モード、マッサージバッグ14の種類、マッサージバッグ14のサイズ等)をコントローラ60に指示するための信号である。
【0012】
流体供給装置12は、表示装置22と警報装置23(
図3)とを有する。表示装置22は、コントローラ60から出力される表示信号に対応する情報を表示する。なお、表示装置22のディスプレイと操作パネル20とが一体となったタッチパネルが設けられてもよい。警報装置23は、コントローラ60から出力される音声出力信号に対応する情報を音声出力する。
【0013】
流体供給装置12には、一対の第1チューブ群24が接続される。各々の第1チューブ群24は、4つの第1チューブ26を有する。各々の第1チューブ26の先端には、共通の第1コネクタ28が取り付けられる。
【0014】
マッサージバッグ14は、例えば、大腿、下腿、足底等に装着される。一対のマッサージバッグ14の各々は、左右の同じ部位に装着される。各々のマッサージバッグ14は、シート30と、4つの流体室32とを有する。シート30は、面ファスナーによって人体に装着される。4つの流体室32の各々は、シート30の内部に設けられる。エアの給排に応じて流体室32が膨張と収縮とを繰り返すことによって、人体のマッサージが行われる。
【0015】
各々のマッサージバッグ14には、第2チューブ群34が接続される。第2チューブ群34は、4つの第2チューブ36を有する。各々の第2チューブ36の先端には、共通の第2コネクタ38が取り付けられる。1つの第2チューブ36は、1つの流体室32に接続される。
【0016】
第1コネクタ28と第2コネクタ38とは、互いに着脱可能である。第1コネクタ28と第2コネクタ38とが接続されることによって、流体供給装置12から各々の流体室32へのエアの供給と、各々の流体室32からのエアの排出とが可能になる。本実施形態では、第1チューブ26の数と第2チューブ36の数とが同じである。このため、第1コネクタ28と第2コネクタ38とが接続された状態で、各々の第1チューブ26は、いずれかの第2チューブ36に接続される。第1チューブ26と第2チューブ36とは一対一で接続される。但し、第2チューブ36の数が第1チューブ26の数より少なくてもよい。この場合、一部の第1チューブ26は、第2チューブ36に接続される。残りの第1チューブ26は、第2コネクタ38によって閉塞される。
【0017】
図2は、マッサージ装置10の流体回路を示す図である。流体供給装置12は、ポンプ40と、8つの電磁弁44と、主流路46と、8つの供給流路48と、8つの第1流路50と、8つの排出流路52と、圧力センサ54とを有する。
【0018】
ポンプ40は、電動モータ42の動作によって吐出ポート40aからエアを吐出する。ポンプ40は、例えばコンプレッサである。8つの電磁弁44の各々は、第1ポート44aと第2ポート44bと第3ポート44cとを有する3ポート電磁弁である。なお、
図2においては、一部の電磁弁44の各ポートにのみ符号が付されている。各々の電磁弁44は、電流の供給と遮断とで弁位置を変える。
図2で示されるように、各々の電磁弁44は、電流が遮断されることによって第3ポート44cと第2ポート44bとを連通させるとともに、第1ポート44aと第2ポート44bとを遮断する。また、各々の電磁弁44は、電流が供給されることによって第1ポート44aと第2ポート44bとを連通させるとともに、第3ポート44cと第2ポート44bとを遮断する。
【0019】
主流路46は、ポンプ40の吐出ポート40aに接続される。主流路46は、8つの供給流路48に分岐する。1つの供給流路48と1つの第1流路50と1つの排出流路52の各々は、1つの電磁弁44に接続される。供給流路48は、電磁弁44の第1ポート44aに接続される。第1流路50は、電磁弁44の第2ポート44bと第1コネクタ28とに接続される。つまり、第1流路50の一部又は全部は、第1チューブ26によって構成される。排出流路52は、電磁弁44の第3ポート44cと排出ポート56とに接続される。
【0020】
圧力センサ54は、主流路46に配置される。圧力センサ54は、主流路46を流れるエアの圧力値Pを検出する。圧力センサ54は、検出した圧力値Pをコントローラ60(
図3)に出力する。
【0021】
図3は、流体供給装置12のシステム構成を示す図である。流体供給装置12は、コントローラ60を有する。コントローラ60は、演算部62と、記憶部64とを有する。
【0022】
演算部62は、処理回路を有する。処理回路は、CPU等のプロセッサであってもよい。処理回路は、ASIC、FPGA等の集積回路であってもよい。プロセッサは、記憶部64に記憶されるプログラムを実行することによって各種の処理を実行可能である。演算部62は、ポンプ制御部66と、給排制御部68と、装着判定部70と、報知部72と、計時部74として機能する。複数の処理のうちの少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実行されてもよい。
【0023】
ポンプ制御部66は、ポンプ40を制御する。例えば、ポンプ制御部66は、ポンプ40の駆動回路に制御信号を出力する。ポンプ40の駆動回路は、制御信号に応じて電動モータ42に供給する電力を制御する。ポンプ40の駆動回路は、コントローラ60に設けられてもよいし、コントローラ60の外部に設けられてもよい。
【0024】
給排制御部68は、各々の電磁弁44を制御する。例えば、給排制御部68は、各々の電磁弁44の駆動回路に制御信号を出力する。電磁弁44の駆動回路は、制御信号に応じて電磁弁44のソレノイドに供給する電流を制御する。電磁弁44の駆動回路は、コントローラ60に設けられてもよいし、コントローラ60の外部に設けられてもよい。
【0025】
装着判定部70は、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定する。この判定を、装着判定と称する。装着判定部70は、少なくとも計時部74によって計測された時間tを用いて装着判定を行う。
【0026】
報知部72は、表示装置22に表示信号を出力する。また、報知部72は、警報装置23に音声出力信号を出力する。
【0027】
計時部74は、エアの圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2に上昇するのに要する時間tを計測する。例えば、計時部74は、エアの圧力値Pが第1圧力閾値P1に達した時点から第2圧力閾値P2に達した時点までの時間tをカウントしてもよい。計時部74は、エアの圧力値Pが第1圧力閾値P1に達した時刻と第2圧力閾値P2に達した時刻とを記録してもよい。なお、計時部74としてハードウェア(タイマ、クロック等)が使用されてもよい。
【0028】
記憶部64は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを有する。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用される。揮発性メモリは、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用される。不揮発性メモリは、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。記憶部64の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられてもよい。
【0029】
[2 装着判定の原理]
図4を用いて装着判定部70が行う装着判定の原理について説明する。
図4は、エアの圧力値Pの時間変化を示す図である。なお、
図4は、マッサージバッグ14にエアが1回供給される間の圧力特性を示す。
図4の横軸は時間Tであり、
図4の縦軸は圧力値Pである。実線は、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されている状態の圧力特性を示す。実線で示される圧力特性を装着特性76という。破線は、マッサージバッグ14が人体から外れている状態の圧力特性を示す。破線で示される圧力特性を非装着特性78という。
【0030】
図4で示されるように、装着特性76と非装着特性78とでは圧力値Pの上昇の仕方が相違する。装着特性76では、圧力値Pの傾き(上昇率)の変化が小さい。一方、非装着特性78では、圧力値Pの傾きの変化が大きい。非装着特性78では、エア供給初期では圧力値Pの傾きが小さく、エア供給初期を過ぎると圧力値Pの傾きが大きくなる。このように装着特性76と非装着特性78とでは傾きの変化が相違する。この相違が発生する理由は、次のように考えられる。
【0031】
マッサージバッグ14が人体に装着されている状態で各々の流体室32にエアが供給されると、各々の流体室32は、人体から反力を受けながら膨張する。この場合、エアの圧力値Pは、流体室32へのエアの供給開始から略一定の割合で上昇する。その結果、圧力値Pの時間変化は、装着特性76のようになる。つまり、圧力値Pの上昇率は、略一定となる。
【0032】
一方、マッサージバッグ14が人体から外れている状態で各々の流体室32にエアが供給されると、各々の流体室32は、反力を受けずに膨張する。この場合、エアの圧力値Pは、流体室32へのエア供給開始から比較的長い時間、低圧範囲内で上昇する。各々の流体室32が一定程度に膨張すると、各々の流体室32は、流体室32を形成する部材又はシート30等によって規制される。この段階で、エアの圧力値Pは、低圧変化状態から徐々に高圧変化状態に遷移する。その結果、圧力値Pの時間変化は、非装着特性78のようになる。つまり、圧力値Pの上昇率は、低圧範囲で相対的に小さく、高圧範囲で相対的に大きくなる。
【0033】
装着判定部70は、圧力センサ54によって検出される圧力値Pの特性が装着特性76に近い場合に、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されていると判定する。また、装着判定部70は、圧力センサ54によって検出される圧力値Pの特性が非装着特性78に近い場合に、マッサージバッグ14が人体から外れていると判定する。例えば、装着判定部70は、以下で説明する第1実施形態~第4実施形態における装着判定を行うことができる。
【0034】
[3 装着判定に関わる処理]
[3-1 第1実施形態]
図5は、第1実施形態の処理の説明に使用する図である。
図5で示される装着特性76及び非装着特性78は、
図4で示される装着特性76及び非装着特性78と同じである。
図5で示されるように、圧力値Pが低圧状態である所定期間で、装着特性76と非装着特性78との相違は顕著である。装着判定部70は、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2まで上昇するのに要する時間tに基づいて、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定する。第1圧力閾値P1としては、主流路46の配管抵抗の値が設定される。第2圧力閾値P2としては、第1圧力閾値P1より大きい任意の値、例えばエアの最高圧の約25%の値が設定される。
【0035】
図6は、第1実施形態における装着判定に関わる処理の流れを示すフローチャートである。
図6で示される一連の処理が開始される前に、各々のマッサージバッグ14は、マッサージ対象者に装着される。なお、マッサージ装置10を操作するユーザは、マッサージ対象者であってもよいし、マッサージ対象者とは別人であってもよい。
【0036】
ユーザは、電源スイッチ16を操作して、流体供給装置12を起動させる。次に、ユーザは、操作パネル20を操作し、流体供給装置12に接続されているマッサージバッグ14の種類及びサイズを選択する。また、ユーザは、操作パネル20を操作して、運転モードを選択する。記憶部64は、選択された各種情報を記憶する。ユーザは、各種の選択終了後に開始/停止スイッチ18を操作し、マッサージを開始させる。演算部62は、開始/停止スイッチ18の操作に応じて、
図6で示される一連の処理を開始する。なお、流体供給装置12に接続されるマッサージバッグ14の種類及びサイズが一つのみである場合、ユーザは、マッサージバッグ14の種類及びサイズを選択する必要がない。また、流体供給装置12の一つの運転モードのみで動作する場合、ユーザは、運転モードを選択する必要がない。
【0037】
図6で示される一連の処理は、ポンプ40から一対のマッサージバッグ14(各々の流体室32)へのエアの供給が開始されてから、所定回数の給排処理が終了するまでの間に行われる。更に、以下で説明する各々の処理は、ポンプ40からマッサージバッグ14にエアが1回供給される間に行われる。
【0038】
ステップS1において、ポンプ制御部66は、ポンプ40を作動させる。ポンプ40は、マッサージバッグ14へのエアの供給、すなわち送気を開始する。ポンプ制御部66は、選択された運転モードに従ってポンプ40の動作を制御する。ポンプ40はエアの吐出と停止とを繰り返し行う。給排制御部68は、ポンプ40がエアを吐出するタイミングで、第1ポート44aと第2ポート44bとを連通する。また、給排制御部68は、ポンプ40がエアの吐出を停止するタイミングで、第3ポート44cと第2ポート44bとを連通する。
【0039】
ポンプ制御部66は、ポンプ40による送気を開始してからステップS6が終了するまでの間、ポンプ40の回転数を、通常マッサージ時のポンプ40の回転数より低下させる。例えば、ポンプ制御部66は、デューティ比を通常マッサージ時のデューティ比より低下させる。ステップS1の実行後、処理はステップS2に移行する。
【0040】
エアの送気が開始されると、エアの圧力は上昇を始める。装着判定部70は、圧力センサ54によって検出される圧力値Pと第1圧力閾値P1とを比較する。圧力値Pが第1圧力閾値P1以上に上昇した場合(ステップS2:YES)、処理はステップS3に移行する。一方、圧力値Pが第1圧力閾値P1未満である場合(ステップS2:NO)、ステップS2の判定は継続して行われる。
【0041】
ステップS2からステップS3に移行すると、計時部74は、時間tの計測を開始する。時間tの起点は、圧力値Pが第1圧力閾値P1に達した時点である。ステップS3の実行後、処理はステップS4に移行する。
【0042】
ステップS4において、装着判定部70は、圧力センサ54によって検出される圧力値Pと第2圧力閾値P2とを比較する。第2圧力閾値P2は、不揮発性メモリに記憶されている。圧力値Pが第2圧力閾値P2以上に上昇した場合(ステップS4:YES)、処理はステップS5に移行する。一方、圧力値Pが第2圧力閾値P2未満である場合(ステップS4:NO)、ステップS4の判定は継続して行われる。
【0043】
ステップS4からステップS5に移行すると、計時部74は、時間tを記憶部64に記録する。ここで記録される時間tは、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2まで上昇するのに要した時間である。ステップS5の実行後、処理はステップS6に移行する。
【0044】
ステップS6において、計時部74は、時間tの計測を終了する。ステップS6の実行後、処理はステップS7に移行する。
【0045】
ステップS7において、装着判定部70は、記憶部64に記録された時間tに基づいて、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定する。装着判定部70は、時間tと時間閾値txとを比較する。時間閾値txは、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定するための閾値である。時間閾値txは、マッサージバッグ14の種類及びサイズに応じて予め設定される。時間閾値txは、不揮発性メモリに記憶されている。
【0046】
装着判定部70は、
図5で示されるように、時間t(時間ta)が時間閾値tx以下である場合に、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されていると判定する。装着判定部70は、
図5で示されるように、時間t(時間tb)が時間閾値txより大きい(長い)場合に、マッサージバッグ14が人体から外れていると判定する。ステップS7の実行後、
図6で示される一連の処理は終了する。
【0047】
装着判定部70による装着判定が行われると、報知部72は、装着判定の結果を示す表示信号を表示装置22に出力する。また、報知部72は、装着判定の結果を示す音声出力信号を表示装置22に出力する。表示装置22及び警報装置23は、装着判定の結果をユーザに報知する。
【0048】
第1実施形態において、装着判定部70は、装着特性76と非装着特性78との相違を利用して装着判定を行う。具体的には、装着判定部70は、エアの圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2まで上昇するのに要する時間tに基づいて装着判定を行う。第1実施形態によれば、マッサージバッグ14が人体に装着されているか外れているかを判定することができる。
【0049】
なお、第1実施形態とは別の方法として、マッサージバッグ14に装着センサを設けることによって装着判定を行うことが可能である。しかし、マッサージバッグ14は消耗品である。マッサージバッグ14に装着センサを設けると、マッサージバッグ14のコストの増加を招く。第1実施形態によれば、マッサージバッグ14に装着センサを設けることなく装着判定を行うことができる。従って、第1実施形態によれば、コスト増加を抑制することができる。
【0050】
第1実施形態において、装着判定部70は、給排回数Nが回数閾値Nx以下である場合に待機し、給排回数Nが回数閾値Nxを超えた場合に装着判定を行う。これにより、圧力値Pが不安定な状態で装着判定が行われることを回避することができる。従って、第1実施形態によれば、装着判定の精度が高くなる。
【0051】
装着特性76と非装着特性78との相違は、低圧範囲で顕著である。第1実施形態によれば、第1圧力閾値P1に配管抵抗の値が設定されるため、圧力値Pの特性のうち低圧範囲での特性を検出することができる。従って、第1実施形態によれば、装着判定の精度が高くなる。
【0052】
[3-2 第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。第2実施形態に係るマッサージ装置10の各構成は、第1実施形態に係るマッサージ装置10の各構成と同じである。第1実施形態と同様に、第2実施形態においても
図6で示される一連の処理が行われる。但し、ステップS7の処理が、第1実施形態と第2実施形態とで若干相違する。以下で、第2実施形態におけるステップS7の処理を説明する。
【0053】
装着判定部70は、第1圧力閾値P1と、第2圧力閾値P2と、記憶部64に記録された時間tとに基づいて、圧力値Pの上昇率mを算出する。例えば、装着判定部70は、第2圧力閾値P2から第1圧力閾値P1を減算し、算出した値をステップS5で記録した時間tで除算することによって、圧力値Pの上昇率mを算出する。上昇率mは、第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2までの圧力値Pの傾きに相当する。
【0054】
装着判定部70は、算出した上昇率mと上昇率閾値mxとを比較する。上昇率閾値mxは、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定するための閾値である。上昇率閾値mxは、マッサージバッグ14の種類及びサイズに応じて予め設定される。上昇率閾値mxは、不揮発性メモリに記憶されている。
【0055】
装着判定部70は、
図5で示されるように、上昇率m(上昇率ma)が上昇率閾値mx以上である場合に、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されていると判定する。装着判定部70は、
図5で示されるように、上昇率m(上昇率mb)が上昇率閾値mxより小さい場合に、マッサージバッグ14が人体から外れていると判定する。
【0056】
第2実施形態において、装着判定部70は、装着特性76と非装着特性78との相違を利用して装着判定を行う。具体的には、装着判定部70は、第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2までの圧力値Pの上昇率mに基づいて装着判定を行う。第2実施形態によれば、マッサージバッグ14が人体に装着されているか外れているかを判定することができる。更に、第2実施形態によれば、第1実施形態と同等の効果が得られる。
【0057】
[3-3 第3実施形態]
第3実施形態は、第1実施形態の応用例である。第3実施形態に係るマッサージ装置10の各構成は、第1実施形態に係るマッサージ装置10の各構成と同じである。
【0058】
第1実施形態及び第2実施形態は、流体供給装置12に接続されるマッサージバッグ14の種類とサイズとが特定されていることを前提条件とする。言い換えると、第1実施形態及び第2実施形態においては、流体供給装置12に接続されるマッサージバッグ14の種類とサイズとが不明である場合に、装着判定を行うことができない。これに対して、第3実施形態においては、流体供給装置12に接続されるマッサージバッグ14の種類とサイズとが不明であっても、装着判定を行うことができる。
【0059】
図7は、第3実施形態の処理の説明に使用する図である。
図7で示される装着特性76及び非装着特性78は、
図4で示される装着特性76及び非装着特性78と同じである。装着判定部70は、第1時間t1と第2時間t2とに基づいてマッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定する。第1時間t1は、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2まで上昇するのに要する時間である。第2時間t2は、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第3圧力閾値P3まで上昇するのに要する時間である。第1圧力閾値P1及び第2圧力閾値P2は、第1実施形態の第1圧力閾値P1及び第2圧力閾値P2と同じである。第3圧力閾値P3としては、第2圧力閾値P2をより大きい任意の値、例えばエアの最高圧の約65%の値が設定される。
【0060】
図8は、第3実施形態における装着判定に関わる処理の流れを示すフローチャートである。第3実施形態において、
図8で示される一連の処理の前にユーザが流体供給装置12で行う操作は、第1実施形態と概ね同じである。但し、第3実施形態において、ユーザは、マッサージバッグ14の種類及びサイズを選択する必要がない。
【0061】
図8のステップS11~ステップS14の処理は、
図6のステップS1~ステップS4の処理と同じである。以下ではステップS15以降の一連の処理を説明する。
【0062】
ステップS15において、計時部74は、時間tを第1時間t1として記憶部64に記録する。ここで記録される第1時間t1は、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2まで上昇するのに要する時間である。ステップS15の実行後、処理はステップS16に移行する。
【0063】
ステップS16において、装着判定部70は、圧力センサ54によって検出される圧力値Pと第3圧力閾値P3とを比較する。第3圧力閾値P3は、不揮発性メモリに記憶されている。圧力値Pが第3圧力閾値P3以上に上昇した場合(ステップS16:YES)、処理はステップS17に移行する。一方、圧力値Pが第3圧力閾値P3未満である場合(ステップS16:NO)、ステップS16の判定は継続して行われる。
【0064】
ステップS16からステップS17に移行すると、計時部74は、時間tを第2時間t2として記憶部64に記録する。ここで記録される第2時間t2は、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第3圧力閾値P3まで上昇するのに要する時間である。ステップS17の実行後、処理はステップS18に移行する。
【0065】
ステップS18において、計時部74は、時間tの計測を終了する。ステップS18の実行後、処理はステップS19に移行する。
【0066】
ステップS19において、装着判定部70は、記憶部64に記録された第1時間t1と第2時間t2とに基づいて、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定する。装着判定部70は、第1時間t1と第2時間t2との比率R、例えば(第2時間t2/第1時間t1)を算出する。装着判定部70は、算出した比率Rと比率閾値Rxとを比較する。比率閾値Rxは、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定するための閾値である。比率閾値Rxは、マッサージバッグ14の種類及びサイズにかかわらず一定値である。比率閾値Rxは、不揮発性メモリに記憶されている。
【0067】
図7で示される装着特性76において、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2に上昇するのに要する第1時間t1を「第1時間t1a」とし、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第3圧力閾値P3に上昇するのに要する第2時間t2を「第2時間t2a」とする。また、
図7で示される非装着特性78において、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2に上昇するのに要する第1時間t1を「第1時間t1b」とし、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第3圧力閾値P3に上昇するのに要する第2時間t2を「第2時間t2b」とする。装着特性76の第1時間t1aと非装着特性78の第1時間t1bとの差は、装着特性76の第2時間t2aと非装着特性78の第2時間t2bとの差より大きい(長い)。このため、装着特性76の比率R(=t2a/t1a)は、非装着特性78の比率R(=t2b/t1b)より大きくなる。
【0068】
装着判定部70は、比率Rが比率閾値Rx以上である場合に、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されていると判定する。装着判定部70は、比率Rが比率閾値Rxより小さい場合に、マッサージバッグ14が人体から外れていると判定する。ステップS19の実行後、
図8で示される一連の処理は終了する。
図8で示される一連の処理の終了後、第1実施形態と同様に、表示装置22及び警報装置23は、装着判定の結果をユーザに報知する。
【0069】
第3実施形態において、装着判定部70は、装着特性76と非装着特性78との相違を利用して装着判定を行う。具体的には、装着判定部70は、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2まで上昇するのに要する第1時間t1と、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第3圧力閾値P3まで上昇するのに要する第2時間t2とに基づいて装着判定を行う。第3実施形態によれば、マッサージバッグ14が人体に装着されているか外れているかを判定することができる。更に、第3実施形態によれば、マッサージバッグ14の種類及びサイズに関わらず装着判定を行うことができる。更に、第3実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態と同等の効果が得られる。
【0070】
[3-4 第4実施形態]
第4実施形態は、第1実施形態~第3実施形態の応用例である。第4実施形態に係るマッサージ装置10の各構成は、第1実施形態に係るマッサージ装置10の各構成と同じである。第3実施形態と同様に、第4実施形態においては、流体供給装置12に接続されるマッサージバッグ14の種類とサイズとが不明であっても、装着判定を行うことができる。
【0071】
図9は、第4実施形態の処理の説明に使用する図である。
図9で示される装着特性76及び非装着特性78は、
図4で示される装着特性76及び非装着特性78と同じである。装着判定部70は、第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2までの圧力値Pの上昇率m1と、第3圧力閾値P3における時間微分値m2とに基づいてマッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定する。
上昇率m1は、第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2までの圧力値Pの上昇率である。時間微分値m2は、圧力値Pが第3圧力閾値P3まで上昇した時点T2における圧力値Pの時間微分値dP/dTである。第1圧力閾値P1及び第2圧力閾値P2は、第1実施形態の各値と同じである。第3圧力閾値P3は、第2圧力閾値P2をより大きい任意の値、例えばエアの最高圧の約65%の値が設定される。
【0072】
図10は、第4実施形態における装着判定に関わる処理の流れを示すフローチャートである。第4実施形態において、
図10で示される一連の処理の前にユーザが流体供給装置12で行う操作は、第1実施形態と概ね同じである。但し、第4実施形態において、ユーザは、マッサージバッグ14の種類及びサイズを選択する必要がない。
【0073】
図10のステップS21~ステップS24の処理は、
図6のステップS1~ステップS4の処理と同じである。以下ではステップS25以降の一連の処理を説明する。
【0074】
ステップS25において、計時部74は、時間tを第1時間t1として記憶部64に記録する。ここで記録される第1時間t1は、圧力値Pが第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2まで上昇するのに要する時間である。ステップS25の実行後、処理はステップS26に移行する。
【0075】
ステップS26において、計時部74は、時間tを記憶部64に記録する。また、装着判定部70は、圧力センサ54によって検出された圧力値Pを記憶部64に記録する。ステップS26の処理は、ステップS27の判定がYESになるまで、一定時間毎に行われる。ここで記録される複数の時間t及び複数の圧力値Pは、ステップS29において関数f(T)を算出するために使用される。ステップS26の実行後、処理はステップS27に移行する。
【0076】
ステップS27において、装着判定部70は、圧力センサ54によって検出される圧力値Pと第3圧力閾値P3とを比較する。圧力値Pが第3圧力閾値P3以上に上昇した場合(ステップS27:YES)、処理はステップS28に移行する。一方、圧力値Pが第3圧力閾値P3未満である場合(ステップS27:NO)、処理はステップS26に戻る。
【0077】
ステップS27からステップS28に移行すると、計時部74は、時間tの計測を終了する。ステップS28の実行後、処理はステップS29に移行する。
【0078】
ステップS29において、上昇率m1と時間微分値m2とに基づいて、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定する。例えば、装着判定部70は、次の手順で装着判定を行う。
【0079】
装着判定部70は、第1圧力閾値P1と、第2圧力閾値P2と、記憶部64に記録された第1時間t1とに基づいて、圧力値Pの上昇率m1を算出する。例えば、装着判定部70は、第2圧力閾値P2から第1圧力閾値P1を減算し、算出した値を第1時間t1で除算することによって、圧力値Pの上昇率m1を算出する。上昇率m1は、第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2までの圧力値Pの時間変化の傾きに相当する。
【0080】
また、装着判定部70は、ステップS26で記録された複数の時間t及び複数の圧力値Pを使用して回帰分析等を行い、圧力値Pの時間変化を示す関数f(T)を算出する。装着判定部70は、算出した関数f(T)を用いて、圧力値Pが第3圧力閾値P3に到達した時点T2における圧力値Pの時間微分値m2を算出する。時間微分値m2は、時点T2における関数f(T)の傾きに相当する。
【0081】
更に、装着判定部70は、上昇率m1と時間微分値m2との比率R、例えば(時間微分値m2/上昇率m1)を算出する。装着判定部70は、算出した比率Rと比率閾値Rxとを比較する。比率閾値Rxは、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されているか否かを判定するための閾値である。比率閾値Rxは、マッサージバッグ14の種類及びサイズにかかわらず一定値である。比率閾値Rxは、不揮発性メモリに記憶されている。
【0082】
図9で示される装着特性76において、上昇率m1を「上昇率m1a」とし、時間微分値m2を「時間微分値m2a」とする。また、
図9で示される非装着特性78において、上昇率m1を「上昇率m1b」とし、時間微分値m2を「時間微分値m2b」とする。装着特性76の上昇率m1aは、非装着特性78の上昇率m1bより大きい。つまり、装着特性76の傾きは、非装着特性78の傾きより大きい。一方、装着特性76の時間微分値m2aは、非装着特性78の時間微分値m2bより小さい。つまり、装着特性76の傾きは、非装着特性78の傾きより小さい。このため、装着特性76の比率R(=m2a/m1a)は、非装着特性78の比率R(=m2b/m1b)より小さくなる。
【0083】
装着判定部70は、比率Rが比率閾値Rx以下である場合に、マッサージバッグ14が人体に正しく装着されていると判定する。装着判定部70は、比率Rが比率閾値Rxより大きい場合に、マッサージバッグ14が人体から外れていると判定する。ステップS29の実行後、
図10で示される一連の処理は終了する。
図10で示される一連の処理の終了後、第1実施形態と同様に、報知が行われる。
【0084】
第4実施形態において、装着判定部70は、装着特性76と非装着特性78との相違を利用して装着判定を行う。具体的には、装着判定部70は、第1圧力閾値P1から第2圧力閾値P2までの圧力値Pの上昇率m1と、第3圧力閾値P3における時間微分値m2とに基づいて装着判定を行う。第4実施形態によれば、マッサージバッグ14が人体に装着されているか外れているかを判定することができる。更に、第4実施形態によれば、マッサージバッグ14の種類及びサイズに関わらず装着判定を行うことができる。更に、第4実施形態によれば、第1実施形態~第3実施形態と同等の効果が得られる。
【0085】
各実施形態において、計時部74は、上記の方法に限らず、間接的に時間を求めてもよい。この場合、例えば、記憶部64が、圧力センサ54の時間分解能を予め記憶してもよい。計時部74は、圧力センサ54の時間分解能に基づいて圧力値Pが変化する時間tを算出することができる。
【0086】
[4 実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0087】
本発明の態様は、人体に装着されるマッサージバッグ(14)に流体を供給する流体供給装置(12)であって、前記マッサージバッグに前記流体を供給するポンプ(40)と、前記ポンプから前記マッサージバッグに供給される前記流体の圧力値(P)を検出する圧力センサ(54)と、前記圧力値が変化する時間(t)を計測する計時部(74)と、前記圧力値が所定の第1圧力閾値(P1)から所定の第2圧力閾値(P2)まで上昇するのに要する前記時間に基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定する装着判定部(70)と、を備える。
【0088】
上記態様において、前記装着判定部は、前記時間と、前記マッサージバッグが人体から外れているか否かを判定するための所定の時間閾値(tx)とを比較し、前記時間が前記時間閾値より長い場合に前記マッサージバッグが人体から外れていると判定してもよい。
【0089】
上記態様において、前記装着判定部は、前記圧力値が前記第1圧力閾値から前記第2圧力閾値まで上昇するのに要する前記時間である第1時間(t1)と、前記圧力値が前記第1圧力閾値から前記第2圧力閾値より大きい所定の第3圧力閾値(P3)まで上昇するのに要する前記時間である第2時間(t2)とに基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定してもよい。
【0090】
上記態様において、前記装着判定部は、前記第1時間と前記第2時間との比率(R)としての(前記第2時間/前記第1時間)と、前記マッサージバッグが人体から外れているか否かを判定するための所定の比率閾値(Rx)とを比較し、前記比率が前記比率閾値より小さい場合に前記マッサージバッグが人体から外れていると判定してもよい。
【0091】
上記態様において、前記装着判定部は、前記第1圧力閾値と前記第2圧力閾値と前記時間とから算出される前記圧力値の上昇率(m)に基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定してもよい。
【0092】
上記態様において、前記装着判定部は、前記上昇率と、前記マッサージバッグが人体から外れているか否かを判定するための所定の上昇率閾値(mx)とを比較し、前記上昇率が前記上昇率閾値より小さい場合に前記マッサージバッグが人体から外れていると判定してもよい。
【0093】
上記態様において、前記装着判定部は、前記上昇率(m1)と、前記圧力値が前記第2圧力閾値より大きい所定の第3圧力閾値まで上昇した時点における前記圧力値の時間微分値(m2)とに基づいて、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定してもよい。
【0094】
上記態様において、前記装着判定部は、前記上昇率と前記時間微分値との比率としての(前記時間微分値/前記上昇率)と、前記マッサージバッグが人体から外れているか否かを判定するための所定の比率閾値とを比較し、前記比率が前記比率閾値より大きい場合に前記マッサージバッグが人体から外れていると判定してもよい。
【0095】
上記態様において、前記ポンプから前記マッサージバッグへの前記流体の供給と、前記マッサージバッグからの前記流体の排出とを制御する給排制御部(68)を備え、前記装着判定部は、前記給排制御部により所定回数の給排処理が行われた後に、前記マッサージバッグが人体に正しく装着されているか否かを判定してもよい。
【0096】
上記態様において、前記ポンプの動作を制御するポンプ制御部(66)を備え、前記ポンプ制御部は、前記装着判定部による装着判定が行われる期間の前記ポンプのデューティ比を、前記装着判定部による装着判定が行われない期間の前記デューティ比より低下させてもよい。
【0097】
上記態様において、前記第1圧力閾値は、前記ポンプと前記マッサージバッグとの間に設けられる流路の配管抵抗であってもよい。
【0098】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0099】
12…流体供給装置 14…マッサージバッグ
40…ポンプ 54…圧力センサ
66…ポンプ制御部 68…給排制御部
70…装着判定部 74…計時部