(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052563
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】チャック機構及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
C23C14/50 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144733
(22)【出願日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2022158242
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】池戸 満
(72)【発明者】
【氏名】竹内 八弥
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA08
4K029AA24
4K029BA05
4K029BA07
4K029BB02
4K029BB04
4K029CA05
4K029DC34
4K029DC35
4K029JA01
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のワークを一括して保持又は解放可能なチャック機構及び成膜装置を提供する。
【解決手段】チャック機構500は、軸部510から放射状に延びた複数本の第1のアーム522を有し、第1のアームの先端に設けられ、ワークの外縁に接離する第1の保持部523を有する第1の回動部520、第1の回動部と同軸に回動可能に設けられ、軸部510から放射状に延びた複数本の第2のアーム532を有し、第1のアーム522と第2のアーム532が一対の組となり、第2のアームの先端に設けられ、ワークの外縁に接離する第2の保持部533を有する第2の回動部530、第1の回動部520及び第2の回動部530を同期して回動させ、一対の第1の保持部523及び第2の保持部533の各組を、ワークを保持する保持位置と、ワークを解放する解放位置との間で同時に移動させることにより、複数のワークを一括して保持又は解放させる駆動部540を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を中心に回動可能に設けられ、前記軸部から放射状に延びた複数本の第1のアームを有し、前記第1のアームのそれぞれの先端に設けられ、ワークの外縁に接離する第1の保持部を有する第1の回動部と、
前記第1の回動部と同軸に回動可能に設けられ、前記軸部から放射状に延びた複数本の第2のアームを有し、前記第2のアームのそれぞれの先端に設けられ、前記ワークの外縁に接離する第2の保持部を有する第2の回動部と、
前記複数本の第1のアームのそれぞれと前記複数本の第2のアームのそれぞれとが一対の組となり、前記第1の回動部及び前記第2の回動部を同期して回動させ、一対の前記第1の保持部及び前記第2の保持部の組を、前記ワークを保持する保持位置と、前記ワークを解放する解放位置との間で同時に移動させることにより、複数の前記ワークを一括して保持又は解放させる駆動部と、
を有することを特徴とするチャック機構。
【請求項2】
前記駆動部は、前記第1の回動部と前記第2の回動部を同期して互いに逆方向に回動させることを特徴とする請求項1記載のチャック機構。
【請求項3】
前記第1の保持部と前記第2の保持部の保持位置は、前記ワークを前記軸部の軸方向に直交する方向に保持可能となるように設定されていることを特徴とする請求項1記載のチャック機構。
【請求項4】
前記駆動部は、
駆動軸を直線移動させる駆動源と、
前記駆動源による前記駆動軸の直線移動を、前記第1の回動部及び前記第2の回動部の回動に変換する変換機構と、
を有することを特徴とする請求項1記載のチャック機構。
【請求項5】
前記変換機構は、
前記軸部に向かって直線移動する前記駆動軸と、
前記駆動軸の軸部に近い端部に、一端が回動可能に連結された一対の連結部材と、
を有し、
一方の前記連結部材の他端が、前記第1の回動部における前記駆動軸に最も近い一つの前記第1のアームに回動可能に連結され、
他方の前記連結部材の他端が、前記第2の回動部における前記駆動軸に最も近い一つの前記第2のアームに回動可能に連結されていることを特徴とする請求項4記載のチャック機構。
【請求項6】
前記第1のアームは3本以上であり、
前記第2のアームは3本以上であり、
3つ以上の前記ワークを同時に保持又は解放可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のチャック機構。
【請求項7】
真空とすることが可能なチャンバと、
前記チャンバに設けられ、ターゲットを有する成膜室において、複数のワークに対してスパッタリングにより成膜を行う成膜部と、
前記チャンバに設けられ、複数の前記ワークを、前記成膜室に対向する位置に搬送する搬送体と、
前記ワークを前記チャンバ内に搬入搬出する搬入搬出部と、
請求項1記載のチャック機構を有し、前記搬入搬出部に複数の前記ワークを一括して受け渡す供給部と、
を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
前記供給部は、前記チャック機構によって、一括して保持される複数の前記ワークをそれぞれ積層して収容するストッカを有することを特徴とする請求項7記載の成膜装置。
【請求項9】
前記チャック機構は、前記ワークと平行な方向に回動可能に設けられ、
複数の前記ストッカが、前記チャック機構の回動に応じて、前記第1の保持部及び前記第2の保持部が複数の前記ワークを一括して保持可能な位置に、複数設けられていることを特徴とする請求項8記載の成膜装置。
【請求項10】
真空とすることが可能なチャンバと、
前記チャンバに設けられ、ターゲットを有する成膜室において、複数のワークに対してスパッタリングにより成膜を行う成膜部と、
前記成膜部において成膜された複数の前記ワークを、請求項1記載のチャック機構により保持して一括して反転させる反転部と、
を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
真空とすることが可能なチャンバと、
前記チャンバに設けられ、ターゲットを有する成膜室において、複数のワークに対してスパッタリングにより成膜を行う成膜部と、
前記チャンバに設けられ、複数の前記ワークを、前記成膜室に対向する位置に搬送する搬送体と、
前記ワークを前記チャンバ内に搬入搬出する搬入搬出部と、
請求項1記載のチャック機構を有し、前記搬入搬出部に複数の前記ワークを一括して受け渡す供給部と、
前記成膜部において成膜された複数の前記ワークを、請求項1記載のチャック機構により保持して一括して反転させる反転部と、
を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項12】
真空とすることが可能なチャンバと、
前記チャンバに設けられ、ターゲットを有する成膜室において、複数のワークに対してスパッタリングにより成膜を行う成膜部と、
前記チャンバに設けられ、複数の前記ワークを、前記成膜室に対向する位置に搬送する搬送体と、
前記ワークを前記チャンバ内に搬入搬出する搬入搬出部と、
請求項1記載のチャック機構と、
前記チャック機構によって、一括して保持される複数の前記ワークをそれぞれ積層して収容するストッカと、
前記搬入搬出部に複数の前記ワークを一括して受け渡す供給部と、
前記成膜部において成膜された複数の前記ワークを、請求項1記載のチャック機構により保持して一括して反転させる反転部と、
を有することを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック機構及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板などの成膜対象物であるワークの表面に成膜を行う装置として、スパッタリングによる成膜装置が広く用いられている。スパッタリングは、真空引きされたチャンバ内に導入したガスをプラズマ化することによりイオンを発生させ、発生したイオンが、成膜材料であるターゲットの表面に衝突することにより、成膜材料が飛び出して基板に付着することを利用した技術である。
【0003】
このようなスパッタリングにおいては、個々の基板の成膜に所定の時間が必要となるため、多数の基板を一枚ずつ成膜する場合、所要時間が長くなる。これに対処するため、ターゲットに対して複数の基板を対向配置して、一括して成膜することが行われている(引用文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の基板に対して成膜処理を一括して行うとしても、基板を、ストッカから一つずつ取り出して、チャンバ内に搬入搬出を行う場合には、所要時間が長くなり、生産性の向上が妨げられる。また、基板の両面に対して成膜する場合に、成膜後の基板を、一つずつ反転させる場合にも、所要時間が長くなり、生産性が低下する。基板を、チャンバ内に搬入搬出を行う機構や、反転する機構を複数設けるとしても、機構が増大するとともに、必要な部材が多くなり、構造が複雑化する。
【0006】
本発明の実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、複数のワークを一括して保持又は解放可能なチャック機構及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、実施形態のチャック機構は、軸部を中心に回動可能に設けられ、前記軸部から放射状に延びた複数本の第1のアームを有し、前記第1のアームのそれぞれの先端に設けられ、ワークの外縁に接離する第1の保持部を有する第1の回動部と、前記第1の回動部と同軸に回動可能に設けられ、前記軸部から放射状に延びた複数本の第2のアームを有し、前記第2のアームのそれぞれの先端に設けられ、前記ワークの外縁に接離する第2の保持部を有する第2の回動部と、前記複数本の第1のアームのそれぞれと前記複数本の第2のアームのそれぞれとが一対の組となり、前記第1の回動部及び前記第2の回動部を同期して回動させ、一対の前記第1の保持部及び前記第2の保持部の組を、前記ワークを保持する保持位置と、前記ワークを解放する解放位置との間で同時に移動させることにより、複数の前記ワークを一括して保持又は解放させる駆動部と、を有する。
【0008】
実施形態の成膜装置は、真空とすることが可能なチャンバと、前記チャンバに設けられ、ターゲットを有する成膜室において、複数のワークに対してスパッタリングにより成膜を行う成膜部と、前記チャンバに設けられ、前記複数のワークを、前記成膜室に対向する位置に搬送する搬送体と、前記ワークを前記チャンバ内に搬入搬出する搬入搬出部と、前記チャック機構を有し、前記搬入搬出部に複数の前記ワークを一括して受け渡す供給部と、を有する。
【0009】
また、実施形態の成膜装置は、真空とすることが可能なチャンバと、前記チャンバに設けられ、ターゲットを有する成膜室において、複数のワークに対してスパッタリングにより成膜を行う成膜部と、前記成膜部において成膜された複数のワークを、前記チャック機構により保持して一括して反転させる反転部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、複数のワークを一括して保持又は解放可能なチャック機構及び成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の成膜装置を示す簡略化された平面図である。
【
図2】ワーク及び基板を示す分解斜視図(A)、斜視図(B)、(B)のB-B矢視断面図(C)である。
【
図3】ホルダ及びワークを示す平面図(A)、(A)のC-C矢視断面図(B)、回転テーブル及びホルダを示す平面図(C)である。
【
図6】チャック機構の一部水平断面図であり、保持位置を示す図(A)、解放位置を示図(B)である。
【
図7】成膜部の内部構成を示す
図1のA-A矢視断面図である。
【
図8】反転部の内部構成を示す
図1のD-D矢視断面図であり、チャック機構の待機状態を示す図である。
【
図9】
図8のチャック機構によるワークの受け渡し状態を示す図である。
【
図10】
図8のチャック機構によるワークの反転途中状態を示す図である。
【
図11】ストッカの待機状態を示す平面図(A)、側面図(B)である。
【
図12】ストッカのワーク送り出し状態を示す平面図(A)、側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。なお、図面は模式図であって、各部のサイズ、比率等は、理解を容易にするために誇張している部分を含んでいる。
[概要]
本実施形態は、
図1に示すように、個々の成膜対象物であるワークWの成膜対象面に、プラズマを利用して成膜を行う成膜装置1である。本実施形態の成膜装置1は、真空とすることが可能なチャンバ2内に、ワークWが複数搭載されたホルダH(
図3(A)参照)を保持して、90°ずつ間欠回転する回転テーブル3を有する。成膜装置1は、回転テーブル3が停止する4つの停止ポジションのうち、3つの停止ポジションにおいて、ワークWに対して各種の処理を行う。この3つの停止ポジションには、成膜部100、反転部200、搬入搬出部300が割り当てられている。さらに、成膜装置1は、搬入搬出部300にワークWを供給する供給部400を有する。なお、残りの1つの停止ポジションは、さまざまな利用が行える予備のポジションとなっている。この予備のポジションは、例えば、冷却のための待機、冷却機構による冷却、成膜部の増設、膜処理部などのためのポジションとして用いることができる。
【0013】
本実施形態では、複数のワークWが供給部400にストックされており、供給部400において、一つのホルダHに3つのワークWが搭載される。このワークWが搭載されたホルダHが、搬入搬出部300によってチャンバ2内の回転テーブル3に供給される。回転テーブル3が間欠回転することで、ホルダHは成膜部100に搬送されてワークWの一方の面が成膜処理される。成膜処理後、ワークWは反転部200に搬送されて反転される。反転されたワークWが搭載されたホルダHは、さらにもう一度成膜部100に搬送されて、ワークWの他方の面が成膜処理される。一方と他方の両面が成膜されたワークWを搭載したホルダHは、反転部200による反転を行わずに通過して、搬入搬出部300へ搬送されて、チャンバ2の外へ搬出される。このようにして、本実施形態の成膜装置1は、複数のワークWを一括して成膜処理することができる。
【0014】
成膜部100は、ターゲット10を有する成膜室110において、スパッタリングにより、複数のワークWに対して同時に成膜を行う。つまり、スパッタガスGをプラズマ化させることにより発生するイオンを、ターゲット10に衝突させ、ターゲット10を構成する成膜材料の粒子を、複数のワークWの成膜対象面に付着させる。本実施形態の成膜部100は、2つのターゲット10A、10Bを備えている。なお、ターゲット10A、10Bを区別しない場合には、単にターゲット10と呼ぶ(
図7参照)。
【0015】
反転部200は、ワークWを反転する。そのための反転機構は、チャック機構500を有する。具体的には、ワークWの両面に成膜するために、成膜部100において一方の面を成膜した後のワークWを、反転室210内のチャック機構500により保持して反転し、成膜部100において他方の面も成膜できるようにする(
図10参照)。このチャック機構500は、複数のワークWを一括して保持する。
【0016】
搬入搬出部300は、ロードロック室25を介して、チャンバ2の内部の真空を維持した状態で、外部から未処理のワークWをチャンバ2の内部に搬入し、処理済みのワークWをチャンバ2の外部へ搬出する。供給部400は、複数のワークWを一括して搬入搬出部300に受け渡す。供給部400も、チャック機構500を有する。
【0017】
[成膜対象物]
本実施形態では、成膜対象物の例として、円形のワークWを用いる。ワークWは、後述する基板Sと治具Jが一体となった部材であり、複数のワークWは、ホルダHに搭載されて、回転テーブル3により搬送される。基板Sは、円形の板体である。基板Sは、例えば、水晶振動子、水晶発振器などの水晶デバイスに用いられる水晶基板であり、水晶基板の両面に、電極となるAu層が成膜される。また、このAu層の水晶基板表面への密着性を向上させるための密着層となるCr層が、水晶基板表面とAu層の間に成膜される。したがって、水晶基板の両面に密着層となるCr層、電極となるAu層の2層が成膜される。ただし、これに限られるものではなく、シリコン(Si)ウェーハ、シリコンカーバイド(SiC)ウェーハ、サファイヤ基板、ガラス基板であってもよい。
【0018】
治具Jは、基板Sが装着される部材である。本実施形態の治具Jは、
図2(A)の分解斜視図、
図2(B)の斜視図、
図2(C)の断面図(
図2(B)のB-B矢視断面図)に示すように、上治具Ju、下治具Jd、スペーサJs、ピンJpを有する。上治具Ju、下治具Jdは、リング状の板体で、内径が基板Sの外径よりも小さく、外径が基板Sの外径よりも大きい。スペーサJsは、リング状の板体で、内径が基板Sの外径よりも大きく、外径が上治具Ju、下治具Jdと同等な大きさとなっている。スペーサJsは樹脂製である。上治具Ju、下治具Jd、スペーサJsは金属製とすることができる。
【0019】
上治具Juと下治具Jdとの間にスペーサJsを挟み、このスペーサJsの内縁側に基板Sを挟むことにより、基板Sが治具Jに装着される。したがって、
図2(C)に示すように、基板Sの外側にスペーサJsが配置される。また、
図2(C)に示すように、下治具Jdには、基板Sの外縁よりも外側に、磁石Jmが埋め込まれており、磁力により上治具Juを吸着することにより、スペーサJsと基板Sが上治具Juと下治具Jdとの間に挟み込まれるようになっている。これにより、治具Jからの基板Sの外れが防止されている。また、上治具Ju、下治具Jd、スペーサJsには、それぞれに対応する位置に複数の貫通孔が形成されており、この貫通孔にピンJpが挿入されることにより、位置ずれが防止されている。なお、以下の説明では、基板Sを装着した治具Jを、単にワークWと呼ぶ。
【0020】
[ホルダ]
本実施形態のホルダHは、
図3(A)、(B)に示すように、ワークWが搭載される部材である。ホルダHは、ワークWを複数搭載できる径を有する円形の板体であり、中心の周りに3つのワークWが等間隔で載置されるようになっている。ワークWの載置位置には、円形の孔Haが形成され、この孔Haの内縁に、ワークWの下面の外縁を支える薄肉の支持縁Hbが形成されている。
【0021】
[チャック機構]
反転部200及び供給部400に設けられ、複数のワークWを一括して保持するチャック機構500を、
図4の斜視図、
図5の分解斜視図、
図6(A)、(B)の平面図を参照して説明する。チャック機構500は、軸部510、第1の回動部520、第2の回動部530、駆動部540を有する。
【0022】
(軸部)
軸部510は、第1の回動部520及び第2の回動部530の回動の中心となる部材である。本実施形態の軸部510は、先端にナットが締結されるネジ溝が形成された円柱形状のボルトである。
【0023】
(第1の回動部)
第1の回動部520は、基体521、第1のアーム522、第1の保持部523を有する。基体521は、軸部510が挿入される軸孔521aが設けられた板体である。第1のアーム522は、軸部510から放射状に延びた複数本の部材である。第1のアーム522は、細長の直方体形状の部材であり、基体521の周囲に等間隔で設けられている。本実施形態では、3本の第1のアーム522が基体521に設けられている。各第1のアーム522の先端は、それぞれワークWの外周円の接線に沿う方向に屈曲している。
【0024】
第1の保持部523は、第1のアーム522のそれぞれの先端に設けられ、ワークWの外縁に接離する。この接離は、第1のアーム522の回動に従って行われる。第1の保持部523は、ワークWの外周円の接線方向に延びた直方体形状の部材であり、ワークWに接離する面に、ワークWの縁部が嵌る溝523aが形成されている。
【0025】
(第2の回動部)
第2の回動部530は、基体531、第2のアーム532、第2の保持部533を有する。基体531は、軸部510が挿入される軸孔531aが設けられた板体である。第2のアーム532は、第1のアーム522と同軸に、つまり軸部510を中心に回動可能に設けられ、軸部510から放射状に延びた複数本の部材である。第2のアーム532は、細長の直方体形状の部材であり、基体531の周囲に等間隔で設けられている。本実施形態では、3本の第2のアーム532が基体531に設けられている。各第2のアーム532の先端は、それぞれワークWの外周円の接線に沿う同方向に屈曲している。複数本の第1のアーム522のそれぞれと複数本の第2のアーム532のそれぞれとが一対の組となっている。
【0026】
第2の保持部533は、第2のアーム532のそれぞれの先端に設けられ、複数のワークWの外縁に接離する。この接離は、第2のアーム532の回動に従って行われる。第2の保持部533は、ワークWの外周円の接線方向に延びた直方体形状の部材であり、ワークWに接離する面に、ワークWの縁部が嵌る溝533aが形成されている。
【0027】
(駆動部)
駆動部540は、第1の回動部520及び第2の回動部530を同期して回動させる。この回動の向きは、第1の回動部520と第2の回動部530とで互いに逆方向となっている。例えば、第1の回動部520が左回転する時には、第2の回動部530は右回転する。第1の回動部520及び第2の回動部530は、駆動部540による回動によって、一対の第1の保持部523及び第2の保持部533の組を、ワークWを保持する保持位置(
図6(A)参照)と、ワークWを解放する解放位置(
図6(B)参照)との間で同時に移動させ、複数のワークWを一括して保持又は解放させる。つまり、複数のワークWを一括して保持することと、複数のワークWを一括して解放することができる。より具体的には、駆動部540によって、一対の第1の保持部523及び第2の保持部533の組における第1の保持部523及び第2の保持部533を、同時にワークWを保持する保持位置に位置付けて複数のワークWを一括して保持させ、一対の第1の保持部523及び第2の保持部533の組における第1の保持部523及び第2の保持部533を、同時にワークWを解放する解放位置に位置付けて、保持している複数のワークWを一括して解放させる、あるいは保持のためにワークWを第1の保持部523及び第2の保持部533が対向する間に位置付けることができる。
【0028】
本実施形態では、一対の第1の保持部523及び第2の保持部533の組は3組あるため、3つのワークWを一括して保持又は解放できる。なお、第1の保持部523及び第2の保持部533の保持位置は、ワークWを軸部510の軸方向と直交する方向に保持可能となるように設定されている。つまり、ワークWの面(成膜対象となる基板Sの面)が、第1の回動部520、第2の回動部530の回動の中心となる軸部510の軸方向と直交する方向、すなわち、ワークWの面と同じ方向の水平方向に、ワークWの外形端部が保持される。第1の回動部520、第2の回動部530が上下に重ねて配置されることによる高さ方向の相違が、第1の保持部523及び第2の保持部533によるワークWの保持位置に影響しないように、第1の保持部523及び第2の保持部533のワークWに接する面の位置と、ワークWの縁部が嵌る溝523a、533aの位置が設定されている。これにより、軸部510が鉛直方向となっているときに、ワークWが水平方向となる。
【0029】
駆動部540は、本体部541、駆動軸542、駆動源543、変換機構544、軸支持部545を有する。本体部541は、駆動部540の本体を構成する筒状体である。駆動軸542は、本体部541内を摺動可能に設けられた長尺のロッドである。駆動軸542の先端は、本体部541の一端面から突出している。駆動軸542の後端は、本体部541の他端面から突出している。駆動源543は、駆動軸542を直線方向に移動させる。つまり、駆動軸542は、軸部510に向かって直線移動する。駆動源543は、駆動軸542の後端に接続され、駆動軸542を往復動させるシリンダである。これにより、駆動軸542は、第1の回動部520及び第2の回動部530の回動の半径方向に移動する。
【0030】
変換機構544は、駆動源543による駆動軸542の直線移動を、第1の回動部520及び第2の回動部530の回動に変換する。変換機構544は、駆動軸542と、第1の回動部520の1つの第1のアーム522及び第2の回動部530の1つの第2のアーム532とに接続されるリンク機構である。変換機構544は、一対の連結部材であるトグルアーム544a、544bを有する。トグルアーム544a、544bは、それぞれの一端が回動可能に連結されている。より具体的には、トグルアーム544a、544bの一端は、駆動軸542の軸部510に近い側の端部(駆動軸542の先端)に、回動可能に連結されている。この連結は、共通軸部544cを介してなされている。一方のトグルアーム544aの他端は、第1の回動部520における駆動軸542に最も近い一つの第1のアーム522に回動可能に連結されている。この連結は、リンク軸部544dを介してなされている。他方のトグルアーム544bの他端は、第2の回動部530における駆動軸542に最も近い一つの第2のアーム532に回動可能に連結されている。この連結は、リンク軸部544eを介してなされている。本実施形態では、共通軸部544c、リンク軸部544d、544eは、先端にナットが締結されるネジ溝が形成された円柱形状のボルトである。
【0031】
軸支持部545は、第1の回動部520及び第2の回動部530を、軸部510を介して駆動部540に回動可能に支持する部材である。軸支持部545は、細長の一対の板体であり、第1の回動部520及び第2の回動部530を上下から挟むように配置される支持板545a、545bを有する。支持板545aの一端は、第1の回動部520の基体521の上に重ねられ、軸孔521aに対応する孔から、軸部510が挿入される。支持板545bの一端は、第2の回動部530の基体531の下に重ねられ、軸孔531aに対応する孔に軸部510が挿入され、下方に突出した軸部510の先端に、ナットが締結される。これにより、第1の回動部520及び第2の回動部530は、共通の軸部510を中心に回動可能に支持される。さらに、支持板545a及び支持板545bの他端は、本体部541を挟むように固定される。
【0032】
[チャンバ]
チャンバ2は、内部を真空とすることが可能な容器である。本実施形態のチャンバ2は、
図1に示すように、直方体形状の箱形であり、上面が蓋板22、設置面側が図示しない底板となっている。チャンバ2には、チャンバ排気部23が設けられている。本実施形態のチャンバ排気部23は、底板に形成された開口に接続された配管を有する。チャンバ排気部23は、図示しない空気圧回路を含み構成され、排気処理によるチャンバ2内の減圧を可能としている。
【0033】
[回転テーブル]
回転テーブル3は、
図1、
図3(C)に示すように、チャンバ2内においてホルダHに搭載されたワークWを搬送する搬送体である。回転テーブル3は、円形の板体であり、図示しない駆動源によって、その中心を軸に間欠回転する。回転テーブル3には、円周方向に等間隔に、貫通孔である開口32が形成されている。開口32は、間欠回転の停止ポジションに対応して、90°間隔で4つ設けられている。このうちの3つのポジションが、成膜部100、反転部200、搬入搬出部300に対向する。ホルダHは、これらの開口32の縁部に載置されて各ポジションに位置決めされ、開口32を介して、後述するプッシャ160、240により付勢されて昇降する。
【0034】
[成膜部]
成膜部100は、
図1、
図7に示すように、成膜室110、スパッタ源120、電源部130、スパッタガス導入部140、排気部150、プッシャ160を有する。
【0035】
(成膜室)
成膜室110は、スパッタリングにより成膜が行われる空間である。成膜室110は、
図7に示すように、開口111、スペーサ112、蓋体113によって構成されている。開口111は、チャンバ2の蓋板22に設けられた貫通孔である。スペーサ112は、チャンバ2の蓋板22の外部側に、開口111を囲うように設けられた角筒形状の部材である。スペーサ112によって成膜室110の側壁が構成される。蓋体113は、スペーサ112の上部を封止する箱状体である。蓋板22、スペーサ112、蓋体113の間は、Оリング等の封止材によって封止されている。
【0036】
(スパッタ源)
スパッタ源120は、ワークWにスパッタリングにより成膜材料を堆積させて成膜する成膜材料の供給源である。スパッタ源120は、ターゲット10、バッキングプレート121、電極122を有する。
【0037】
本実施形態では、2つのターゲット10を有する。この2つのターゲット10、すなわち、ターゲット10A、10Bは、ワークWに堆積されて膜となる成膜材料によって形成された部材である。ターゲット10A、10Bにおけるスパッタリングにより削られていくスパッタ面は、ワークWに傾斜して対向する位置に配置されている。
【0038】
成膜材料としては、例えば、Cr、Auなどを使用する。但し、スパッタリングにより成膜できる材料であれば、種々の材料を適用可能である。ターゲット10Aとターゲット10Bを、共通の材料としても、異種の材料としてもよい。
【0039】
バッキングプレート121は、各ターゲット10A、10Bを個別に保持する保持部材である。電極122は、チャンバ2の外部から各ターゲット10A、10Bに個別に電力を印加するための導電性の部材である。なお、スパッタ源120には、図示はしないがマグネット、冷却機構などが具備されている。つまり、本実施形態の成膜部100は、マグネトロンスパッタ装置として構成される。
【0040】
(電源部)
電源部130は、各ターゲット10A、10Bに電力を印加する構成部である。この電源部130によってターゲット10に電力を印加することにより、後述するスパッタガスGをプラズマ化させ、成膜材料を、ワークWに堆積させることができる。各ターゲット10A、10Bに印加する電力は、個別に変えることができる。本実施形態においては、電源部130は、例えば、高周波電圧を印加するRF電源である。なお、DC電源とすることもできる。
【0041】
(スパッタガス導入部)
本実施形態のプラズマ処理においては、スパッタガスGが用いられる。スパッタガスGは、電力の印加により生じるプラズマにより、発生するイオンをターゲット10A、10Bに衝突させて、ターゲット10A、10Bの材料を基板Sの表面に堆積させるためのガスである。例えば、アルゴンガス等の不活性ガスを、スパッタガスGとして用いることができる。
【0042】
スパッタガス導入部140は、スパッタガスGを導入する配管を有する。スパッタガス導入部140は、図示しないガス供給回路を含み構成され、供給源からのスパッタガスGを成膜室110内に導入することを可能とする。
【0043】
(排気部)
排気部150は、スペーサ112に形成された開口に接続された配管を有する。排気部150は、図示しない排気回路を含み構成され、排気処理による成膜室110内の減圧を可能としている。
【0044】
(プッシャ)
プッシャ160は、チャンバ2内の成膜部100に対応する位置に設けられ、ホルダHを昇降させる。プッシャ160は、図示しないシリンダにより昇降可能に設けられるとともに、回転可能に設けられている。プッシャ160は、上昇することによりホルダHが搭載されて、回転テーブル3から離脱させる載置部161を有する。載置部161には、ワークWを突き上げてホルダHから離脱させる突上部162が設けられている。
【0045】
[反転部]
反転部200は、
図8~
図10に示すように、成膜部100において成膜された複数のワークWを、チャック機構500により保持して一括して反転させる。本実施形態の反転部200は、ホルダHに載置された3つのワークWを、一括して持ち上げてホルダHから離脱させ、180°回転させてから、下降してホルダHに載置する。チャック機構500による反転のための回転の中心は、3つのワークWに共通であり、回転の軸は、ワークWに平行な方向、つまり水平方向である。反転部200は、チャック機構500に加えて、反転室210、反転駆動部220、封止室230、プッシャ240を有する。
【0046】
(反転室)
反転室210は、ワークWの反転が行われる空間である。一括して反転される複数のワークWが収容可能で、チャック機構500を含め、チャック機構500により保持された複数のワークWが、反転のための回転をするときに描く最外縁の径(ワークWの回転の径)よりも大きなサイズを有する。つまり、反転室210は、幅、奥行、高さのいずれもワークWの回転の径よりも大きい。
図10は、複数のワークWの回転の様子を示しているが、図中、反転を示す点線矢印がなす円の径が、複数のワークWの回転の径となる。反転室210は、開口211、容器212によって構成されている。開口211は、チャンバ2の蓋板22に設けられた貫通孔である。容器212は、有底円筒形状の部材であり、下端の開口が蓋板22の開口211を塞ぐように取り付けられ、Oリング等の封止材によって封止されている。
【0047】
(チャック機構)
反転部200におけるチャック機構500は、駆動軸542が反転室210の側壁を貫通して、反転室210内に、第1の回動部520及び第2の回動部530が配置されている。より具体的には、容器212の側面を本体部541が気密に貫通して、第1の回動部520及び第2の回動部530が待機状態で水平になるように容器212内に設けられ、駆動部540が容器212外に設けられている(
図4参照)。
【0048】
(反転駆動部)
反転駆動部220は、第1の回動部520及び第2の回動部530を、駆動軸542を中心に回転させることにより、第1の保持部523、第2の保持部533に保持された複数のワークWを一括して反転させる。駆動軸542は、複数のワークWに共通の反転のための回転軸であり、水平方向に配置されている。本実施形態の反転駆動部220は、
図1に示すように、駆動源543を収容するように、容器212の外側面に固定され、駆動源543とともに本体部541を回転させる中空ロータリーアクチュエータである。
【0049】
(封止室)
封止室230は、反転室210を封止する容器である。封止室230は、円筒形状であり、上端の開口が蓋板22の開口211を塞ぐように取り付けられ、Oリング等の封止材によって封止されている。封止室230の下端の開口は、後述する封止体243によって封止される(
図9参照)。
【0050】
(プッシャ)
プッシャ240は、チャンバ2内の反転部200に対応する位置に設けられ、ホルダHを昇降させる。プッシャ240は、図示しないシリンダにより昇降可能に設けられている。プッシャ240は、上昇することによりホルダHが搭載されて、回転テーブル3から離脱させる載置部241を有する。載置部241には、ワークWを突き上げてホルダHから離脱させる突上部242が設けられている。また、プッシャ240には、上昇することにより封止室230の下端の開口を封止する封止体243が設けられている。
【0051】
なお、反転室210には、図示はしないが、冷却水の循環経路が設けられ、成膜されたワークWに近接して冷却する冷却プレートが構成されている。なお、冷却ガスを吹き付けることにより、冷却するガス吹出部を設けてもよい。
【0052】
[搬入搬出部]
搬入搬出部300は、ホルダHをチャンバ2に搬入、搬出する装置である。搬入搬出部300は、
図1に示すように、搬送部310を有する。搬送部310は、後述する供給部400の載置台Tに載置されている、ワークWが搭載されたホルダHをピックアップして、チャンバ2に構成されたロードロック室25に搬入する。また、搬送部310は、処理済のワークWが搭載されたホルダHをロードロック室25から搬出し、供給部400に移送する。なお、ホルダHは、後述の供給部400のチャック移動機構420が、チャック機構500における第1の保持部523及び第2の保持部533を載置台T上に位置付けた時に、第1の保持部523及び第2の保持部533の複数の組に、ホルダHの複数の孔Haの位置がそれぞれ合うように、載置台T上で位置決めされる。
【0053】
搬送部310は、アーム311、閉塞部312を有する。アーム311は、載置台Tとチャンバ2との間に、回転テーブル3の平面と平行に設けられた長尺の部材である。アーム311は、図示しない駆動機構によって、回転テーブル3の回転軸と平行な軸を中心に180°ずつ間欠的に回動可能に、且つこの軸に沿って移動可能に設けられている。閉塞部312は、アーム311の両端に設けられ、チャンバ2に設けられた開口2aを封止する部材である。開口2aは、チャンバ2上面の蓋板22に設けられたチャンバ2内と外部とをつなぐための開口で、ロードロック室25の外部側の端部である。そして、この開口2aを閉塞部312で閉塞することで、ロードロック室25が形成される。
【0054】
また、閉塞部312には、図示はしないが、ホルダHを保持するメカチャック等の保持部が設けられている。ロードロック室25において、チャンバ2の内部側にある端部は、図示しないプッシャに設けられたホルダHを支持する支持部によって封止される。ロードロック室25は、開口2aを閉塞部312によって封止され、内部側の端部を支持部によって封止されて密閉空間が形成された状態で、空気圧回路により真空引きするための排気ライン、弁等により真空破壊を行うための給気ラインが連通している。
【0055】
また、上記ホルダHを支持する支持部は、閉塞部312によって開口2aを封止して、真空引きされたロードロック室25内で、閉塞部312の保持部からホルダHを受取って、プッシャによって移動してロードロック室25からホルダHを排出し、回転テーブル3の開口32に載置する。また、この支持部は、処理済みのホルダHを、プッシャによって押し上げてロードロック室25を封止し、閉塞部312の保持部にホルダHを受け渡す。処理済のホルダHを受け取った閉塞部312は、ロードロック室25が大気開放した後に、上昇して処理済のホルダHを搬出させる。
【0056】
[供給部]
供給部400は、チャック機構500を有し、このチャック機構500に加えて、供給テーブル410、チャック機構500を移動させるチャック移動機構420、ワークWをストック(収容)するストッカ430を有する。
【0057】
(供給テーブル)
供給テーブル410は、
図1に示すように、チャンバ2の搬入搬出部300に隣接する水平な台である。供給テーブル410には、搬送部310の閉塞部312の直下に、水平な載置台Tが設けられている。載置台Tには、チャンバ2に搬入搬出されるホルダHが一時的に載置される。また、供給テーブル410には、後述するチャック移動機構420と、ストッカ430が配置される。
【0058】
(チャック移動機構)
供給部400におけるチャック移動機構420は、載置台Tとストッカ430との間で、チャック機構500を移動させる機構である。チャック移動機構420は、ガイド機構421、回動機構422を有する。ガイド機構421は、シリンダを駆動源とし、平面視で回転テーブル3の回転半径の延長線上であって、載置台Tの中心を通る直線上を往復動させるリニアガイドである。回動機構422は、モータを駆動源として、チャック機構500を水平方向に回動させる機構である。
【0059】
(ストッカ)
ストッカ430は、
図11、
図12に示すように、チャック機構500によって、一括して保持される複数のワークWを積層して収容する。ストッカ430は、キャリア431、送り出し機構432を有する。キャリア431は、支持板431a、サイドガイド431bを有する。支持板431aは、ワークWが搭載されて積層される板体である。支持板431aには、外方に突出した複数の突出部431cが設けられている。サイドガイド431bは、支持板431aの突出部431cに、ワークWの周囲を囲むように立設された棒状の部材である。このサイドガイド431bによって、ワークWの水平方向の位置が規制される。なお、支持板431aは、後述する押上ロッド432aがワークWを押し上げる領域を確保するために、ワークWの外径よりも小さい。
【0060】
また、
図11(A)、
図12(A)に示すように、突出部431cは、突出長さの短いものと長いものとが設けられている。突出長さの短い突出部431cは、ワークWの外形より所定量長く突出する長さで突出しており、ワークWの位置を規制する。そのため円形のワークWの外形円周に沿って60°の間隔で3つ設けられている。突出長さの長い突出部431cは、チャック機構500の第1の保持部523や第2の保持部533が進入可能な位置にサイドガイド431bが位置するような長さで設けられている。
【0061】
複数のキャリア431は、複数のワークWを、チャック機構500が一括保持可能な配置としたものを1組として、複数組が配置されている。本実施形態のキャリア431は、チャック機構500の第1の保持部523及び第2の保持部533の3つの組に合わせて3点配置されたものを1組としている。各組の3つのキャリア431には、第1の保持部523、第2の保持部533によって保持可能な位置に、水平方向にワークWが3点配置され、それぞれのワークWが同数積み重ねられて収容される。つまり、一括して保持される複数のワークWが、チャック機構500が保持する位置に、積み上げてストックされている。
【0062】
ストッカ430は、
図1に示すように、チャック機構500の水平回動に応じて、第1の保持部523及び第2の保持部533が複数のワークWを一括して保持可能な位置に、複数設けられている。つまり、各キャリア431の組は、チャック機構500の回動による第1の保持部523及び第2の保持部533の軌跡に沿って、複数配置されている。各ストッカ430において積層された複数のワークWは、第1の保持部523及び第2の保持部533の回動の軌跡に沿う方向に配置されている。チャック機構500が回動すると、第1の保持部523及び第2の保持部533が円弧状の軌跡で移動するため、この軌跡に沿って、各キャリア431の組が、第1の保持部523及び第2の保持部533によりワークWを一括保持可能な角度で配置されている。本実施形態においては、5つのストッカ430、つまり5組のキャリア431が配置されている。
【0063】
送り出し機構432は、
図11、
図12に示すように、キャリア431を付勢することにより、ワークWを第1の保持部523及び第2の保持部533により保持可能な位置に、送り出す機構である。本実施形態の送り出し機構432は、供給テーブル410の下部に配置された押上ロッド432a、駆動部432bを有する。押上ロッド432aは、鉛直方向の棒状の部材である。押上ロッド432aは、上端が供給テーブル410を貫通して、ワークWを押し上げ可能な位置に、複数本設けられている。本実施形態の押上ロッド432aは、各支持板431aの周囲であって、ワークWの底面に接離可能な位置に、3つずつ設けられている。
【0064】
駆動部432bは、押上ロッド432aを昇降させる機構である。駆動部432bは、押上ロッド432aの下端が支持固定された昇降板432c、昇降板432cが支持されたスライダ432d、スライダ432dをスライド移動させるとともに昇降板432cを昇降させる駆動源432eを有する。駆動源432eは、1組のキャリア431毎に設けられている。つまり、駆動部432bによって、3つのキャリア431に支持されたワークWが同じ高さで昇降する。
【0065】
[制御装置]
制御装置50は、
図1に示すように、成膜装置1の各部を制御する装置である。この制御装置50は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成できる。つまり、チャンバ2の排気の制御、成膜室110へのスパッタガスGの導入及び排気の制御、電源部130の電力の制御、回転テーブル3の回転の制御、反転部200の反転制御、供給部400の供給制御、搬入搬出部300の搬入、搬出の制御、プッシャ160、240の駆動制御、チャック機構500の駆動制御、反転制御などに関しては、その制御内容がプログラムされており、PLCやCPUなどの処理装置により実行されるものであり、多種多様な成膜処理の仕様に対応可能である。
【0066】
具体的に制御される対象としては、回転テーブル3の駆動源の間欠動作タイミング、成膜装置1の初期排気圧力、ターゲット10への印加電力、スパッタガスG及びの流量、種類、導入時間及び排気時間、表面処理及び成膜処理の時間などが挙げられる。
【0067】
特に、本実施形態では、制御装置50は、ターゲット10A、10Bへ印加する電力、スパッタガス導入部140によるスパッタガスGの供給量を制御することにより、成膜レート(成膜速度)を制御する。また、制御装置50は、供給部400における送り出し機構432の駆動源432e、チャック機構500の駆動源543、チャック移動機構420のガイド機構421、回動機構422の駆動源を制御することにより、搬入搬出部300に複数のワークWを一括して受け渡す。さらに、制御装置50は、反転部200におけるチャック機構500の駆動源543、反転駆動部220を制御することにより、複数のワークWを一括して反転させる。
【0068】
なお、制御装置50には、図示しない入力装置、出力装置が接続されている。入力装置は、オペレータが、制御装置50を介して成膜装置1を操作するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力手段である。出力装置は、装置の状態を確認するための情報を、オペレータが視認可能な状態とするディスプレイ、ランプ、メータ等の出力手段である。
【0069】
[成膜処理]
以上のような本実施形態による成膜装置1によって、ワークWに成膜する処理を説明する。
【0070】
まず、予め載置台TにはホルダHが載置され、各ストッカ430には、
図11に示すように、ワークWが積層収容されている。
図12に示すように、チャック移動機構420によって、いずれか1組のキャリア431の3つのワークWの上部に、解放位置にある3組の第1の保持部523及び第2の保持部533を位置決めする。送り出し機構432によって、キャリア431の支持板431aを上昇させて、最上層の3つのワークWを、3組の第1の保持部523及び第2の保持部533の高さに位置決めする。
【0071】
第1の保持部523及び第2の保持部533が保持位置となることにより、3つのワークWの外縁が溝523a、533aに嵌まり、一括して保持される。そして、チャック移動機構420によって、チャック機構500を回動させるとともに水平移動させて、載置台TのホルダHの3つの孔Haの上部に、3つのワークWを位置決めする。第1の保持部523及び第2の保持部533を解放位置とすることにより、3つのワークWを一括してホルダHの孔Haに搭載する。
【0072】
搬入搬出部300によって、3つのワークWを載置したホルダHを、チャンバ2内に搬入して、回転テーブル3の開口32に載置する。そして、回転テーブル3が間欠回転して、成膜室110の開口111の直下に、ホルダHを位置づける。
【0073】
次に、
図7に示すように、プッシャ160によって載置部161が上昇することにより、ホルダHが成膜室110に収容されるとともに、突上部162がワークWを突き上げてホルダHから分離させる。この状態で、スパッタガス導入部140によって、スパッタガスGを成膜室110内に導入する。そして、プッシャ160によって、載置部161を回転させることにより、3つのワークWを同時に回転させる。
【0074】
電源部130により各ターゲット10A、10Bに電力を印加する。すると、スパッタガスGがプラズマ化して発生するイオンが、ターゲット10A、10Bに衝突する。ターゲット10A、10Bを構成する成膜材料は、イオンにより叩き出されて、載置部161によって回転するワークWの成膜対象面に堆積する。
【0075】
所定時間の成膜処理後、排気部150からの排気によりスパッタガスGを成膜室110から排出して、成膜室110の圧力をチャンバ2と同等とする。そして、プッシャ160を下降させると、ホルダHが回転テーブル3の開口32に戻り、載置部161がホルダHから離脱することにより、突上部162が下降してワークWから離れて、ワークWがホルダHに戻る。
【0076】
次に、回転テーブル3を間欠回転させることにより、
図8に示すように、ホルダHを反転部200の反転室210に対向する位置に移動させる。そして、
図9に示すように、プッシャ240によって載置部241が上昇することにより、ホルダHが反転室210に収容されるとともに、突上部242がワークWを突き上げてホルダHから分離させる。これにより、解放位置にある第1の保持部523及び第2の保持部533の高さ位置に、各ワークWが位置決めされる。また、封止体243が封止室230の下端を封止する。このとき、冷却プレートに近接させ、冷却ガスを吹き付けることにより、成膜されたワークWが冷却される。
【0077】
さらに、第1の保持部523及び第2の保持部533が保持位置となることにより、3つのワークWの外縁が溝523a、533aに嵌り、一括して保持される。そして、
図10に示すように、プッシャ240が下降して、載置部241を反転室210から退避させ、第1の回動部520及び第2の回動部530を、駆動軸542を軸に回転させることにより、3つのワークWを一括して反転させる。
【0078】
再度、プッシャ240によって載置部241が上昇することにより、ホルダHが反転室210に収容されるとともに、突上部162が反転したワークWを支持する。第1の保持部523及び第2の保持部533を解放位置となり、プッシャ240が下降すると、ホルダHが回転テーブル3の開口32に戻り、載置部161がホルダHから離脱することにより、突上部162が下降してワークWから離れて、ワークWがホルダHに戻る。
【0079】
さらに、回転テーブル3を間欠回転させることにより、ホルダHを再度成膜部100に移動させて、ワークWの他方の成膜対象面に成膜を行う。その後、回転テーブル3の間欠回転により、開口2aの直下に、処理済みのホルダHを移動させて、搬入搬出部300によって、チャンバ2外に搬出する。
【0080】
[効果]
(1)以上のような本実施形態のチャック機構500は、軸部510を中心に回動可能に設けられ、軸部510から放射状に延びた複数本の第1のアーム522を有し、第1のアーム522のそれぞれの先端に設けられ、ワークWの外縁に接離する第1の保持部523を有する第1の回動部520と、第1の回動部520と同軸に回動可能に設けられ、軸部510から放射状に延びた複数本の第2のアーム532を有し、第2のアーム532のそれぞれの先端に設けられ、前記ワークWの外縁に接離する第2の保持部533を有する第2の回動部530と、複数本の第1のアーム522のそれぞれと複数本の第2のアーム532のそれぞれとが一対の組となり、第1の回動部520及び第2の回動部530を同期して回動させ、一対の第1の保持部523及び第2の保持部533の各組を、ワークWを保持する保持位置と、ワークWを解放する解放位置との間で同時に移動させることにより、複数のワークWを一括して保持又は解放させる駆動部540と、を有する。
【0081】
また、本実施形態の成膜装置1は、真空とすることが可能なチャンバ2と、チャンバ2に設けられ、ターゲット10を有する成膜室110において、複数のワークWに対してスパッタリングにより成膜を行う成膜部100と、チャンバ2に設けられ、複数のワークWを、成膜室110に対向する位置に搬送する搬送体(回転テーブル3)と、ワークWをチャンバ2内に搬入搬出する搬入搬出部300と、チャック機構500を有し、搬入搬出部300に複数のワークWを一括して受け渡す供給部400と、を有する。
【0082】
さらに、本実施形態の成膜装置1は、成膜部100において成膜された複数のワークWを、チャック機構500により保持して一括して反転させる反転部200と、を有する。
【0083】
このため、チャンバ2内に搬入される複数のワークWを、一括して供給することができるので、ストッカから一つずつ取り出して、搬入搬出を行う場合に比べて、所要時間を短縮でき、生産性が向上する。ワークWをチャンバ2内に搬入搬出を行う機構を複数設けると、構造の複雑化、装置コストの増大を招くことになる。また、ワークWの両面に対して成膜する場合に、成膜後のワークWを、チャンバ(容器212)内で一括して反転させることができるので、所要時間が短縮でき、生産性が向上する。さらに、ワークWを反転する機構を複数設ける場合に比べて、機構が簡素化され、シール箇所を低減できる。これは、反転動作を行う駆動源はチャンバの外に配置するのが好ましく、そのため、チャンバを貫通する駆動軸を設ける必要がある。この場合、貫通部分ではシールが必要となる。シール箇所が増えてしまうと、チャンバ内の必要な真空状態を維持することが困難となってしまう。よって、シール箇所は少ないほど良い。
【0084】
(2)第1の保持部523と第2の保持部533の保持位置は、ワークWを軸部510に直交する方向に保持可能となるように設定されている。このため、複数のワークWを水平方向に保持して受け渡し、反転等を行うことができる。
【0085】
(3)駆動部540は、駆動軸542を直線移動させる駆動源543と、駆動源543による駆動軸542の直線移動を、第1の回動部520及び第2の回動部530の回動に変換する変換機構544と、を有する。このため、駆動部540の駆動源543の数を抑えることができる。1つの駆動部540によって複数のワークWを一括して保持又は解放するチャック機構を駆動できるので、構成が非常に簡素となる。
【0086】
(4)変換機構544は、軸部510に向かって直線移動する駆動軸542と、駆動軸542の軸部510に近い端部に、一端が回動可能に連結された一対の連結部材であるトグルアーム544a、544bと、を有し、一方のトグルアーム544aの他端が、第1の回動部520における駆動軸542に最も近い一つの第1のアーム522に回動可能に連結され、他方のトグルアーム544bの他端が、第2の回動部530における駆動軸542に最も近い一つの第2のアーム532に回動可能に連結されている。
【0087】
このため、1つの駆動軸542によって、第1の回動部520、第2の回動部530を駆動できるので、歯車やベルトを用いて連結、伝達するよりも格段に高い同期性を得ることができる。これにより、複数のワークWを同時に確実に保持、解放することができる。また、非常に簡素な構成とできるので、故障率の低減、コストの低減となる。さらに、チャック機構の全体を回転させることによってワークWを反転させる場合、駆動軸542をそのまま回転軸とすることができるので、より簡素な構成にできる。
【0088】
(5)駆動部540は、第1の回動部520と第2の回動部530を同期して互いに逆方向に回動させる。このため、1つの駆動部540によって、保持又は解放の動作を行うことができる。
【0089】
(6)供給部400は、チャック機構500によって、一括して保持される複数のワークWをそれぞれ積層して収容するストッカ430を有する。このため、ストッカ430に積層して収容された複数のワークWを、チャック機構500によって一括して保持できる。すなわち、チャック機構500は、ワークWを保持する第1の保持部523と第2の保持部533の組を複数有している。ワークWを積層して収容するストッカ430には、それぞれの第1の保持部523と第2の保持部533の組に対応するように、ワークWが複数に積層される。これにより、各第1の保持部523と第2の保持部533の組が同時に一括してワークWを保持できるようになっているので、生産性が向上する。
【0090】
(7)チャック機構500は、水平に回動可能に設けられ、複数のストッカ430が、チャック機構500の水平回動に応じて、第1の保持部523及び第2の保持部533が複数のワークWを一括して保持可能な位置に、複数設けられている。このため、多数のワークWを予め用意しておくことができ、連続的に処理ができるので、生産性が向上する。本実施形態においては、一括して保持される複数のワークWが、チャック機構500が保持する位置に対応して、積み上げてストックされている。各ストッカ430において積層された複数のワークWは、第1の保持部523及び第2の保持部533の回動の軌跡に沿う方向に配置されている。このため、一つのチャック機構500で、複数のストッカ430にアクセスすることができる。さらに一つのチャック機構500で複数のワークWを一括して保持することができるので、非常に効率を高めることができる。
【0091】
[変形例]
本実施形態は、上記の態様には限定されず、以下のような変形例も含む。
(1)上記の態様では、第1のアーム522は3本であり、第2のアーム532は3本であり、3つのワークWを同時に保持又は解放可能に設けられていた。但し、第1のアーム522、第2のアーム532は、それぞれ2本であっても、4本以上であっても良い。これにより、2つ又は4つ以上のワークWを同時に保持又は解放可能として、多数のワークWを一括して保持でき、生産性を向上させることができる。
【0092】
(2)成膜対象物は治具Jに装着、搭載されていなくてもよい。つまり、治具Jを用いなくてもよい。この場合、ワークWは成膜対象物である基板Sのみとなる。
【0093】
(3)成膜部100におけるターゲット10の数は、上記の実施形態で例示した数には限定されない。ターゲット10を単数又は3つ以上としてもよい。ターゲット10の数を多くすることにより、成膜レートを高める(成膜速度を速くする)ことができ、生産性を向上させることができる。
【0094】
複数のターゲット10は、共通の成膜材料であっても、異種の成膜材料であってもよい。共通の成膜材料を用いることによって成膜レートを向上させることができる。異なる種類の成膜材料を用いて、同時或いは順々に成膜することにより、複数の成膜材料の層から成る膜を形成することもできる。
【0095】
(4)成膜部100の数は、複数であってもよい。つまり、搬送体の複数の停止ポジションに成膜部100を設けてもよい。共通の成膜材料を用いる成膜部100の数を増やすことによって、成膜レートを向上させることができる。複数の成膜部100に互いに異なる種類の成膜材料を用いて、同時或いは順々に成膜することにより、複数の成膜材料の層から成る膜を形成することもできる。成膜部100においてプラズマを発生させる構成は特定の種類には限定されない。例えば、上記の予備のポジションに、成膜部100を増設する場合は、反転部200で反転したワークWの他方の面を成膜するのに、もう1周する必要がなくなるため、生産性が高まる。
【0096】
(5)成膜部100に加えて、いずれかの停止ポジションに、プラズマによるエッチング、アッシング、その他の表面改質、クリーニング、化合物膜の生成等を行う処理部を設けてもよい。処理部においてプラズマを発生させる構成は特定の種類には限定されない。このような処理部も、上記の予備のポジションに設けることができる。
【0097】
(6)搬送装置は回転テーブル3には限定されない。回転中心から放射状に延びたアームに支持部やホルダHを保持して回転する回転体であってもよい。搬送装置によって搬送されて同時に処理されるホルダHの数、これを支持する支持部の数は、上記の態様では単数であるが、複数であってもよい。
【0098】
(7)成膜部100、処理部は、チャンバ2の設置面側にあっても、これと反対側にあっても、側面側にあってもよい。ホルダHを成膜室110、処理室に出し入れする方向も、成膜室110、処理室の設置面側からでも、これと反対側からでもよく、側面からでもよい。
【0099】
(8)上記の実施形態では、重力に従う方向を下方、これとは逆に重力に抗する方向を上方としている。この場合の昇降は、上下方向の動作となる。但し、成膜装置1の配置方向は、これには限定されず、例えば、回転テーブル3と、成膜室110との上下関係が逆となっていてもよい。また、回転テーブル3は、水平に限らず垂直の配置でも傾斜した配置でもよい。成膜装置1の設置面は、床面であっても、天井であっても、側壁面であってもよい。
【0100】
(9)予備のポジションに、冷却機構を設けてワークWを冷却する場合は、成膜で温度が上昇したワークWを冷却できるので、変形や熱ダメージの発生を抑制することができる。また、成膜時間の間で必要な温度に冷却できる場合には、予備のポジションを、冷却待機ポジションとして、冷却機構を設けることなく変形や熱ダメージの発生を抑制することができる。上記の態様では、反転部200に冷却プレートによる冷却機構が設けられているが、予備のポジションの冷却機構と併用しても、いずれか一方にのみ冷却機構を設けてもよい。
【0101】
(10)予備のポジションを設けず、3つの停止ポジションの成膜装置1としてもよい。この場合、間欠回転搬送は120°ずつとなる。さらに、複数の予備のポジションを設けてもよい。例えば、複数の停止ポジションに、成膜部100を複数常備することで、異種の材料による成膜を行うことができる。この場合にも、予備のポジションに、成膜された膜の膜処理(アニール、酸化、窒化、平坦化、浄化などの表面処理)を行う装置を割り当てることもできる。
【0102】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 成膜装置
2 チャンバ
2a 開口
3 回転テーブル
10、10A、10B ターゲット
21 底板
22 蓋板
23 チャンバ排気部
25 ロードロック室
31 シャフト
32 開口
50 制御装置
100 成膜部
110 成膜室
111 開口
112 スペーサ
113 蓋体
120 スパッタ源
121 バッキングプレート
122 電極
130 電源部
140 スパッタガス導入部
150 排気部
160 プッシャ
161 載置部
162 突上部
200 反転部
210 反転室
211 開口
212 容器
220 反転駆動部
230 封止室
232d スライダ
240 プッシャ
241 載置部
242 突上部
243 封止体
300 搬入搬出部
310 搬送部
311 アーム
312 閉塞部
400 供給部
410 供給テーブル
420 チャック移動機構
421 ガイド機構
422 回動機構
430 ストッカ
431 キャリア
431a 支持板
431b サイドガイド
431c 突出部
432 送り出し機構
432a 押上ロッド
432b 駆動部
432c 昇降板
432d スライダ
432e 駆動源
500 チャック機構
510 軸部
520 第1の回動部
521 基体
521a 軸孔
522 第1のアーム
523 第1の保持部
523a 溝
530 第2の回動部
531 基体
531a 軸孔
532 第2のアーム
533 第2の保持部
533a 溝
540 駆動部
541 本体部
542 駆動軸
543 駆動源
544 変換機構
544a、544b トグルアーム
544c 共通軸部
544d、544e リンク軸部
545 軸支持部
545a、545b 支持板
G スパッタガス
H ホルダ
Ha 孔
Hb 支持縁
J 治具
Ju 上治具
Jd 下治具
Js スペーサ
Jp ピン
Jm 磁石
S 基板
T 載置台
W ワーク