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特開2024-52574とりわけエアバッグ排気口へ適用するためのOPW圧力応答型エアアウトレット及び縫着されたそのようなエアアウトレットを有するエアバッグ
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  • 特開-とりわけエアバッグ排気口へ適用するためのOPW圧力応答型エアアウトレット及び縫着されたそのようなエアアウトレットを有するエアバッグ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052574
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】とりわけエアバッグ排気口へ適用するためのOPW圧力応答型エアアウトレット及び縫着されたそのようなエアアウトレットを有するエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20240404BHJP
   D03D 1/02 20060101ALI20240404BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B60R21/239
D03D1/02
D03D11/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023151571
(22)【出願日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】10 2022 125 347.3
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】509343138
【氏名又は名称】グローバル セーフティ テキスタイルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アルビーツ
【テーマコード(参考)】
3D054
4L048
【Fターム(参考)】
3D054CC16
3D054CC27
3D054CC30
3D054CC33
3D054CC42
4L048BA01
4L048BA09
4L048CA00
4L048DA25
4L048EA00
4L048EB00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エアバッグ排気口へ適用するための、ベントとして使用するワンピース織製式圧力応答型エアアウトレットを提供する。
【解決手段】エアバッグ排気口へ適用するためのワンピース織製式圧力応答型エアアウトレットは、下側織物層、中間織物層及び上側織物層を含み、下側織物層は経糸及び緯糸と当該経糸及び緯糸がフロートしている流入領域とを含み、中間織物層は経糸及び緯糸と当該経糸及び緯糸がフロートしているフロースルー領域とを含み、下側織物層と中間織物層は実質的に少なくとも1つの第1チャンバを含み、流れ方向において第1チャンバの下流側に第2チャンバが配置されており、複数のチャンバの少なくとも1つは糸切断ゾーンによってシールされており、糸切断ゾーンでは織物層間において一方の織物層の選択された(経)糸は他方の織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められかつチャンバの予め定められた内圧で切断ないし破断可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ排気口へ適用するための、とりわけベントとして使用するための、ワンピース織製式(OPW)圧力応答型エアアウトレットであって、
前記ワンピース織製式(OPW)圧力応答型エアアウトレットは下側織物層(UG)、中間織物層(MG)及び上側織物層(OG)を含み、
a)前記下側織物層(UG)は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしている流入領域(ESB)とを含むこと、
b)前記中間織物層(MG)は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしているフロースルー領域(DSB)とを含むこと、
c)前記下側織物層(UG)と前記中間織物層(MG)は実質的に少なくとも1つの第1チャンバ(K1)を含むこと、
d)流れ方向において前記第1チャンバ(K1)の下流側に第2チャンバ(K2)が配置されていること、
e)複数のチャンバ(K1、K2)の少なくとも1つは、糸切断ゾーン(FBZ)によってシールされており、該糸切断ゾーン(FBZ)では、織物層間において、一方の織物層の選択された(経)糸は、他方の織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められ、かつ、チャンバの予め定められた内圧で切断ないし破断可能であること
を特徴とする、エアアウトレット。
【請求項2】
請求項1に記載のエアアウトレットにおいて、
f)前記上側織物層(OG)は、経糸及び緯糸を含み、及び、前記中間織物層(MG)と一緒に下流側の前記第2チャンバ(K2)を実質的に含むこと、
g)前記第2チャンバ(K2)は糸切断ゾーン(FBZ)を含み、該糸切断ゾーン(FBZ)では、前記上側織物層(OG)と前記中間織物層(MG)の間において、前記中間織物層(MG)の選択された(経)糸は、前記上側織物層(OG)の選択された(緯)糸にのみ絡められ、かつ、前記第2チャンバ(K2)の予め定められた内圧で切断ないし破断可能であること
を特徴とする、エアアウトレット。
【請求項3】
請求項1に記載のエアアウトレットにおいて、
前記第1チャンバ(K1)の下流側にある前記第2チャンバ(K2)は、前記下側織物層(UG)と前記中間織物層(MG)との間に含まれていること、
前記糸切断ゾーン(FBZ)は、前記第1チャンバ(K1)と下流側の前記第2チャンバ(K2)との間に配置されていること
を特徴とする、エアアウトレット。
【請求項4】
請求項1に記載のエアアウトレットにおいて、
前記エアアウトレットは、縫着によってカット・アンド・ソー エアバッグに適用されること
を特徴とする、エアアウトレット。
【請求項5】
当該エアバッグに縫着された請求項1~4の何れかに記載のエアアウトレットを有するエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2022年9月30日に出願されたドイツ特許出願第10 2022 125 347.3号についてのパリ条約上の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【0002】
本発明は、とりわけエアバッグ排気(通気)口へ適用するための即ち取付けないし装着するための、ワンピース(一体)織製式(袋織式ないし一工程織り上げ式:OPW(one-piece woven))圧力応答型ないし圧力依存型エアアウトレット(空気吹出口)であって、下側織物層(lower fabric layer)、中間織物層(middle fabric layer)及び上側織物層(upper fabric layer)を含むものに関し、更に、当該エアバッグに縫着されたそのようなエアアウトレットを有するエアバッグに関する。
【背景技術】
【0003】
自動車乗員拘束システムのためのエアバッグにおける圧力応答型ないし圧力依存型エアアウトレット、いわゆるベントないし排気バルブは従来技術から既知である。この場合、膨張したエアバッグは、必要な場合に解除される対象とされた「エアアウトレット」を用いて排気されることができる。これは、とりわけ、同乗者席(助手席等)用エアバッグ及び運転席エアバッグに当て嵌る。既知の方策は、しばしば、平織材料から切り出された(「カット(Cut)」)複数の生地(織物)片が縫い合わせられる(「ソー(Saw)」)複雑に縫製されたいわゆるカット・アンド・ソー(Cut&Saw)式エアバッグに基づいている。これらのカット・アンド・ソー式エアバッグは(製造に)極めて時間がかかり、従って製造コストが高い。更に、製造プロセスの複雑性は、コンポーネント(複数)の適切な機能を確保するための製造プロセスの高度の安全措置(対策)を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 2013/0334801 A1
【特許文献2】US 7,784,828 B2
【特許文献3】DE 20 2004 019448 U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、US 2013/0334801 A1は、多数の個別部分から縫い合わせられたエアアウトレットを示すが、これらの部分は精巧(入念)に製造されなければならず、エアバッグの製造中別々に縫い込まれなければならない。
【0006】
US 7,784,828 B2からは、エアバッグは極めて複雑なアクティブ型エアアウトレット(複数)ないしベント(複数)を有し、これらはエアバッグの様々な部位(複数)に配置されていることが分かる。これらのベントは、特殊な圧力状況において、エアバッグの壁部に縫い込まれたいわゆるテザー(つなぎ糸)によって開かれる。そのようなエアアウトレットの製造は複雑かつ高価である。エアバッグの壁部においてテザー(複数)を付けることは、それらの強度に関し大きな課題(困難性)をもたらす。
【0007】
ドイツ実用新案DE 20 2004 019448 U1からは、固定されたないし硬いカバープレートでカバーされる常開(常時開放された)排気口を有するエアバッグモジュールが既知である。この構造は大きな空間を占有しかつガスバッグの圧力応答型排気にとっては不適切である。
【0008】
従って、本発明の目的は従来技術における既知の欠点を回避するか又は少なくとも大きく減少するエアアウトレットを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点に応じ、エアバッグ排気口へ適用するための、とりわけベントとして使用するための、ワンピース織製式圧力応答型エアアウトレットが提供される。
前記ワンピース織製式圧力応答型エアアウトレットは下側織物層、中間織物層及び上側織物層を含み、
a)前記下側織物層は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしている流入領域とを含むこと、
b)前記中間織物層は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしているフロースルー領域とを含むこと、
c)前記下側織物層と前記中間織物層は実質的に少なくとも1つの第1チャンバを含むこと、
d)流れ方向において前記第1チャンバの下流側に第2チャンバが配置されていること、
e)複数のチャンバの少なくとも1つは、糸切断ゾーンによってシールされており、該糸切断ゾーンでは、織物層間において、一方の織物層の選択された(経)糸は、他方の織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められ、かつ、チャンバの予め定められた内圧で切断ないし破断可能であること
を特徴とする(形態1)。
本発明の第2の視点に応じ、エアバッグに縫着された本発明に応じたエアアウトレットを有するエアバッグが提供される(形態5)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1に記載のエアアウトレットにおいて、
f)前記上側織物層は、経糸及び緯糸を含み、及び、前記中間織物層と一緒に下流側の前記第2チャンバを実質的に含むこと、
g)前記第2チャンバは糸切断ゾーンを含み、該糸切断ゾーンでは、前記上側織物層と前記中間織物層の間において、前記中間織物層の選択された(経)糸は、前記上側織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められ、かつ、前記第2チャンバの予め定められた内圧で切断ないし破断可能であることが好ましい。
(形態3)形態1に記載のエアアウトレットにおいて、
前記第1チャンバの下流側にある前記第2チャンバは、前記下側織物層と前記中間織物層との間に含まれていること、
前記糸切断ゾーンは、前記第1チャンバと下流側の前記第2チャンバとの間に配置されていることが好ましい。
(形態4)形態1に記載のエアアウトレットにおいて、
前記エアアウトレットは、縫着(縫い付け、ソーイング)によってカット・アンド・ソー エアバッグに適用されることが好ましい。
(形態5)上記本発明の第2の視点参照。
【0011】
上記の目的は、請求項1に応じたエアアウトレットによって、即ち、エアバッグ排気口へ適用するないし取り付けるための、とりわけベントとして使用するための、ワンピース織製式(OPW)圧力応答型エアアウトレットであって、
前記ワンピース織製式圧力応答型エアアウトレットは下側織物層、中間織物層及び上側織物層を含み、
a)前記下側織物層は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしている流入領域とを含み、
b)前記中間織物層は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしているフロースルー領域とを含み、
c)前記下側織物層と前記中間織物層は実質的に少なくとも1つの第1チャンバを含みないしは形成し、
d)流れ方向において前記第1チャンバの下流側に第2チャンバが配置されており、
e)複数のチャンバの少なくとも1つは、糸切断ゾーンとも称されるヤーン切断ゾーンによってシールされないしは閉じられており、該ヤーン切断ゾーンでは、織物層間において、一方の織物層の選択された(経)糸は、他方の織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められ、かつ、チャンバの予め定められた内圧で切断ないし破断可能である、エアアウトレットによって解決(達成)される。
【0012】
特記事項:
本書において、「(経:warp)ヤーン(織物用糸:yarns)/糸(縫糸:threads)」及び「(緯:weft)ヤーン/糸」が用いられる場合、括弧内の表現は、夫々、「(緯)ヤーン/糸」及び「(経)ヤーン/糸」として相互に交換可能に適用されるものとする[「(経)ヤーン/糸」という表現は「(緯)ヤーン/糸」を意味することがあり、「(緯)ヤーン/糸」という表現は「(経)ヤーン/糸」を意味することがあるものとする]。
【0013】
「内圧応答型」又は「内圧依存型」エアアウトレット口部を有する本発明に応じたエアアウトレットは、自動化プロセスにおけるワンピース織製(袋織りないし一工程織り上げ)(OPW)として製造可能であり、コンポーネントの製造(自体)においてもカット・アンド・ソー式エアバッグへの組立においてもコストを節減することができる。良く知られているように、OPWコンポーネントは糸/ヤーンの精度でプログラム可能であるため、コンポーネント(複数)の精度及びこれらの再現性は大きくすることができる。これによって、縫製されたエアバッグ及び当該エアバッグに取り付けられるアプリケーション(応用ないし付加装置)についてあり得る個別のコンポーネント及びシームの配置の不正確性は排除される。本発明に応じ、エアアウトレットは、予めプログラムされて、ワンピースで織製され、次いで、従来法で製造された縫製されたエアバッグの意図された(目的の)排気口(アウトレット)の領域に従来法で縫い付けられる。
【0014】
本発明に応じたエアアウトレットの有利な一形態では、エアアウトレットは、上側織物層が経糸及び緯糸を含み及び中間織物層と一緒に下流側の第2チャンバを実質的に含みないしは形成し、第2チャンバが糸切断ゾーンを含み、該糸切断ゾーンでは上側織物層と中間織物層の間において中間織物層の選択された(経)糸が上側織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められかつ第2チャンバの予め定められた内圧で破断即ち引裂き(引きちぎり)ないし切断可能であることによって特徴付けられている。
【0015】
本発明に応じたエアアウトレットの更に有利な一形態(構成)は、また、第1チャンバの下流側にある第2チャンバが下側織物層と中間織物層との間に含まれて(構成されて)おり、糸切断ゾーンが第1チャンバと下流側の第2チャンバとの間に配置されていることによって特徴付けられている。本発明に応じたエアアウトレットの上記の有利な形態は両方とも、簡素、従って安価であり、その製造に関し格別に正確(精密)であるという格別な利点を有する。
【0016】
本発明に応じたエアアウトレットの更に他の有利な一形態では、エアアウトレットは、縫着(縫い付け、ソーイング:sewing)ないしステッチング(stitching)によってカット・アンド・ソー(Cut & Sew)エアバッグに適用されないし取り付けられる。
【0017】
上記の目的は、更に、請求項5に応じたエアアウトレット(を有するエアバッグ)、即ちエアバッグに縫着された先行する請求項(上記の形態)の何れかに応じたエアアウトレットを有するエアバッグによって解決(達成)される。そして、そのようなエアバッグは、自動車乗員拘束システム用のモジュールの製造のための組立のために直ちに利用可能である。
【0018】
本発明の更なる特徴及び利点はサブクレーム即ち従属請求項2~4から明らかである。
【0019】
本発明を詳細に説明するために、及び、本発明を具現化可能にする仕方を示すために、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に応じたエアアウトレットの一例の第1実施形態を高度に模式化して示した側方から見た断面図。
図2図1に示したエアアウトレットの平面図。該エアアウトレットは従来法で製造された即ち縫製されたエアバッグの平織物(ファブリックないし生地)に縫着されている。
図3】本発明に応じたエアアウトレットの一例の第2実施形態を高度に模式化して示した側方から見た断面図。
図4】糸切断ゾーンとも称されるヤーン切断ゾーンを示すために図3の紙面右側から矢印IVの方向に見た、図3に応じた下側織物層及びその上方に延在する(積層する)上側織物層を有するエアアウトレットの高度に模式化されかつ拡大された部分の斜視図。
【実施例0021】
構造の理解の容易化を目的として、図示の各部はすべて互いに対し分離されて、即ち引き離されて示されている。勿論、実際には、個別の織物層(複数)は互いに密接に重なり合っている。
【0022】
用語「フロート(float)」は、当業者には既知であるが、簡単に説明する。織製された織物において、そこに存在する経糸/ヤーン(複数)と緯糸/ヤーン(複数)は、織り結び付け(weave bindings)を介して互いに結合されている。最も単純な織り方はいわゆる平織である。この場合、経糸と緯糸は(互いに)交差する。用語「フローティング(floating)」は、交差する糸(複数)が互いに結び目(bond)(即ち織り結び付け:weave binding)を形成せず、結び付けられずに単純に隣り合っている。更なる詳細は関連する技術文献に見出すことができる。DIN 62050も参照。
【0023】
図1において、観察者は、ワンピース織製式(OPW)圧力応答型ないし圧力依存型エアアウトレットLAの3つの織物層、即ち下側織物層UG、中間織物層MG及び上側織物層OGを認識する。3つの織物層UG、MG及びOGは、織製シームWNの部位(複数)においてワンピースとして一緒に織製され、織製シームWNは、織製プロセス中に少なくとも2つの織物層が組み合わされて1つの織物層へと織製されるときに、形成される。
【0024】
これに対し、いわゆるステッチングシーム(stitching seam)ないしソーンシーム(縫い上げシーム:sewn seam)は以下のような特徴を有する:ステッチング/ソーンシームは少なくとも1つの糸/ヤーンによって少なくとも2つの織物層を一緒にステッチング/ソーイングすることによって形成される。
【0025】
図1の紙面左側に見出すことができるように、第1チャンバK1は下側織物層UGと中間織物層MGとの間に配置(形成)されている。この第1チャンバK1は、その下側に破線で示されており、下側織物層UGの経及び緯糸/ヤーンはフロートする、即ち、織り交わらない流入領域ESBを有する。このデザインの効果(作用)は、この流入領域ESBに衝突するエアが、糸/ヤーンの延伸方向に対する横方向においてフロート糸/ヤーンの脇を(を外れて)押圧する、従って、通路を形成するため、下側織物層UGを通って流れることができ、そのため、対応する織物層を通り抜けて流れることができるということである。しかも、通常は影響を受けないことから、このエリアは閉鎖されておりかつ閉鎖されているように見える。紙面右側では、第1チャンバK1の下流側に第2チャンバK2を見出すことができる。糸切断ゾーンとも称されるヤーン切断ゾーンFBZは、第1チャンバK1とその下流側の第2チャンバK2との間に配置されている。これについては、以下においてより詳細に説明する。第2チャンバK2は、中間織物層MGに破線で図示されており、中間織物層MGの経及び緯糸/ヤーンがフロートしているいわゆるフロースルー領域DSBを有する。
【0026】
図1及び図2は、製品に基づく状態にある本発明に応じたOPWエアアウトレットLAの一例の一形態を「断面図及び平面図」で示す。形状は、この場合は矩形(図2参照)であるが、本原理を説明するためにのみ使用されている。原理的には、コンポーネントは、本書に記載された本発明の原理が導入(具現化)可能である限りにおいて、任意の形状で製造可能である。
【0027】
チャンバK1とK2との間に位置付けられたヤーン切断ゾーンFBZでは、下側織物層UGの経糸KFは、中間織物層MGの緯糸SFと緊密(堅固)には織り交わって(織り合わせられて)おらず、単に(緩く)絡められている(tacked)に過ぎない。言及されるべきことは本原理がここに説明されているという事実である。従って、同様にして、中間織物層MGの経糸KFは下側織物層UGの緯糸SFと緊密(堅固)には織り合わせられておらず、単に(緩く)絡められているに過ぎない。この結合は、これらの意図が定義された(所定の)圧力に対してのみ耐えられるように設計されている、即ち、その構造は、圧力下の(加圧された)エアが矢印GF1に従って流入領域ESBを通り抜け、第1チャンバK1からヤーン切断ゾーンFBZを通り抜けて第2チャンバK2内へ流れ、そこから中間織物層MGをそのフロースルー領域DSBにおいて通り抜けて上側織物層OGへ向かって上方へ流れるとき、経糸KFが緯糸SFを引きちぎることによって、ヤーン切断ゾーンFBZにおける中間織物層MGと下側織物層UGとの結合を引き裂く(破断する)ことを可能にする。
【0028】
図1に断面図で示したワンピース織製式エアアウトレットLAの紙面下方には、詳細には示されていない従来法で製造されたエアバッグの平織ファブリックブランク(織物生地:fabric blank)ないし平織ファブリックカット(織物裁断物:fabric cut)FGZがラインFGZによって表されているが、該FGZは、図1の紙面左側においてチャンバK1の下方で流入領域ESBに直に平行に位置付けられている、ここでは例示的に卵形(oval)形状を有する流出カットアウトASAを含む。この流出カットアウトASAは、詳細には示されていない縫製エアバッグの開口部を表す。ここで説明する全エアアウトレットLAは、織製シーム(複数)WNのエリアにおいて、ステッチングシーム(複数)即ちソーイングシーム(複数)を介して平織ファブリックブランクFGZに従来法で縫着される。
【0029】
図2には、図1に示したエアアウトレットLAを上方から見たもの(平面図)が示されている。参照の容易化のために、個々の織物層は透視形態で示されている。(図2から)見出すことができるものは、エアアウトレットLAが縫着された従来法で縫製されたエアバッグの平織ファブリックブランクFGZの、ここでは例示的に丸い、流出カットアウトASAの位置である。第1チャンバK1の流入領域ESBは、流出カットアウトASAの上方に(紙面手前側に)配置されている。図2の紙面右側には、第2チャンバK2のフロースルー領域DSBの位置を見出すことができる。エアアウトレットLAの織製シームWNは太い実線で示されている。
【0030】
図3は、本発明に応じたエアアウトレットLAの一例の他の第2実施形態を示す。単なる一例としての同図に見出すことができるものは、本発明に応じたエアアウトレットLAが破線(一点鎖線)の垂直線で示されたステッチング/ソーイングシーム(複数)NNによって従来法で縫着された平織ファブリックブランクFGZである。平織ファブリックブランクFGZは流出カットアウトASAを有し、その上方には、第1チャンバK1の破線で示した流入領域ESBを有するエアアウトレットLAが配置されている。織製シームWNによって互いに結合された下側織物層UGとその上方に延在する(積層する)中間織物層MGとの間にある第1チャンバK1は、流入領域ESBの反対側に位置しかつ上方の第2チャンバK2へと開口するフロースルー領域DSBを含む。流入領域ESBとフロースルー領域DSBの経糸及び緯糸はこの場合も既述の実施形態の場合と同様にフロートし、夫々、エアを通過させる領域を形成する。第2チャンバK2は、この場合、中間織物層MGと上側織物層OGとの間に位置付けられており、ヤーン切断ゾーンFBZによってシールされて(縫い閉じられて)いる。予め決定された(所定の)圧力下のエアが、矢印GF2に従って、従来法で縫製されたエアバッグの平織ファブリックブランクFGZの流出カットアウトASAを通り、そして、流入領域ESB、チャンバK1及びフロースルー領域DSBを通り、第2チャンバK2内へと外方へ流れると、ヤーン切断ゾーンFBZの糸は、緩く縫い合わせられた経糸及び/又は緯糸KFR、SFRが引きちぎられ、かくして、エアバッグが排気されることが可能になるよう、負荷を受ける。これについては、以下においてより詳細に説明する。
【0031】
図4は、矢印IVの方向に見た図3の例を模式的に示す。中間織物層MGと上側織物層OGとの間には、個別経糸(複数)KFRを見出すことができるが、これらの経糸KFRと個別緯糸(複数)SFRはOPWタック糸AHとして互いに絡み付けられ、ヤーン切断ゾーンFBZを形成する。これらのOPWタック糸AH又はそれらの経糸KFR及び緯糸SFRは、既述のように、エアバッグからのエアが予め決定された圧力に到達し、エアバッグから放出されると、引きちぎられて、第2チャンバK2の織物層(複数)を互いに対し更に遠ざかる(引き離される)ように移動させる。今や自由に逃れるエアの経路は矢印GF2によって示されている(図3)。
【0032】
図4には、矢印IV(図3)に従って図3の紙面右側から見た、本発明に応じたワンピース織製式(OPW)圧力応答型エアアウトレットLAの一部分が詳細に示されている。見出すことができるものは、チャンバK2、ヤーン切断ゾーンFBZ、及び、(夫々)経糸(複数)KFと緯糸(複数)SFを有するその中間織物層MG及びその上方に延在する(積層する)上側織物層OGである。これらの2つの織物層の経糸(複数)KFは実質的に図4の紙面の内へと及び紙面から外へと延伸する。緯糸(複数)SFは実質的に経糸に対し直角をなして図4の紙面の横方向に延伸する。第2チャンバK2に示されている状況は、ガス発生器(不図示)の点火後の運動を示しているが、本発明に応じたワンピース織製式(OPW)圧力応答型エアアウトレットLAの内圧によって、中間織物層MGとその上方に延在する上側織物層OGとは既にある程度互いに対し引き離されている。多数のOPWタック糸がエアアウトレットLAの幅にわたって配されているが、より見易くするために、ただ2つのOPWタック糸がここでは一例として示されている。図4では、中間織物層MGから出ている経糸(複数)KFRは上側織物層OGから出ている緯糸(複数)SFRによってループを形成し、それらの緯糸SFRをそれらの織物層から少々引き出されている。そして、圧力応答型OPWエアアウトレットLAの内圧が予め決定されたレベルに到達すると、これにより、これらの向い合う織物層間の距離は大きくなり、OPWタック糸(複数)AHは引きちぎられ、経糸(複数)KFR及び/又は緯糸(複数)SFRは切断されないし破断される。互いに向い合う2つの織物層は互いに対し遠ざかるよう運動することができる。エアフローはヤーン切断ゾーンFBZを、今やOPWタック糸(複数)によって妨げられることなく、通過し、そして、外部へと逸らされる(逃される)ことができる。これにて排気(vent)ないしエアアウトレット機能が実現される。
【0033】
上記の実施形態及び実施例の全部又は一部は以下の付記のように記述されることができるが、これらに限定されない。
[付記1]エアバッグ排気口へ適用するための、とりわけベントとして使用するための、ワンピース織製式(OPW)圧力応答型エアアウトレット。
前記ワンピース織製式圧力応答型エアアウトレットは下側織物層、中間織物層及び上側織物層を含む;
a)前記下側織物層は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしている流入領域とを含む;
b)前記中間織物層は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしているフロースルー領域とを含む;
c)前記下側織物層と前記中間織物層は実質的に少なくとも1つの第1チャンバを含む;
d)流れ(フロー)方向において前記第1チャンバの下流側に第2チャンバが配置されている;
e)複数のチャンバの少なくとも1つは、糸切断ゾーンによってシールされており、該糸切断ゾーンでは、織物層間において、一方の織物層の選択された(経)糸は、他方の織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められ、かつ、チャンバの予め定められた内圧で切断ないし破断可能である。
[付記2]上記のエアアウトレット、とりわけ付記1に記載のエアアウトレットにおいて、
f)前記上側織物層は、経糸及び緯糸を含み、及び、前記中間織物層と一緒に下流側の前記第2チャンバを実質的に含む;
g)前記第2チャンバは糸切断ゾーンを含み、該糸切断ゾーンでは、前記上側織物層と前記中間織物層の間において、前記中間織物層の選択された(経)糸は、前記上側織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められ、かつ、前記第2チャンバの予め定められた内圧で切断ないし破断可能である。
[付記3]上記のエアアウトレット、とりわけ付記1に記載のエアアウトレットにおいて、
前記第1チャンバの下流側にある前記第2チャンバは、また、前記下側織物層と前記中間織物層との間に含まれて(構成されて)いる;
前記糸切断ゾーンは、前記第1チャンバと下流側の前記第2チャンバとの間に配置されている。
[付記4]上記のエアアウトレット、とりわけ付記1~3の何れかに記載のエアアウトレットにおいて、
前記エアアウトレットは、縫着(縫い付け、ソーイング)によってカット・アンド・ソー(Cut & Sew)エアバッグに適用される。
[付記5]当該エアバッグに縫着された付記1~4の何れかに記載のエアアウトレットを有するエアバッグ。
【0034】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(「非選択」を含む。)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【0035】
更に、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を実施形態及び図示の実施例に限定することは意図していない。
【0036】
更に、上記の各文献の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【符号の説明】
【0037】
AH OPW(ワンピース織製式)タック糸
ASA 流出カットアウト
DSB フロースルー領域
ESB 流入領域
FBZ ヤーン/糸切断ゾーン
FGZ 平織ファブリックブランク/カット
GDO ガス流開口(gas flow opening)
GF1 ガス流を示す矢印
GF2 ガス流を示す矢印
K1 第1チャンバ
K2 第2チャンバ
KF 経糸/ヤーン
KFR 経糸/ヤーン
KFR 経糸/ヤーン
LA エアアウトレット
MG 中間織物層
NN ステッチングシーム/ソーイングシーム
OG 上側織物層
SF 緯糸/ヤーン
SFR 緯糸/ヤーン
SFR 緯糸/ヤーン
UG 下側織物層
WN 織製シーム
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
エアバッグ排気口へ適用するためのワンピース織製式(OPW)圧力応答型エアアウトレットであって、
前記ワンピース織製式(OPW)圧力応答型エアアウトレットは下側織物層(UG)、中間織物層(MG)及び上側織物層(OG)を含み、
a)前記下側織物層(UG)は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしている流入領域(ESB)とを含むこと、
b)前記中間織物層(MG)は、経糸及び緯糸と、当該経糸及び緯糸がフロートしているフロースルー領域(DSB)とを含むこと、
c)前記下側織物層(UG)と前記中間織物層(MG)は実質的に少なくとも1つの第1チャンバ(K1)を含むこと、
d)流れ方向において前記第1チャンバ(K1)の下流側に第2チャンバ(K2)が配置されていること、
e)複数のチャンバ(K1、K2)の少なくとも1つは、糸切断ゾーン(FBZ)によってシールされており、該糸切断ゾーン(FBZ)では、織物層間において、一方の織物層の選択された(経)糸は、他方の織物層の選択された(緯)糸にのみ絡められ、かつ、チャンバの予め定められた内圧で切断ないし破断可能であること
を特徴とする、エアアウトレット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
AH OPW(ワンピース織製式)タック糸
ASA 流出カットアウト
DSB フロースルー領域
ESB 流入領域
FBZ ヤーン/糸切断ゾーン
FGZ 平織ファブリックブランク/カッ
F1 ガス流を示す矢印
GF2 ガス流を示す矢印
K1 第1チャンバ
K2 第2チャンバ
KF 経糸/ヤーン
KFR 経糸/ヤーン
KFR 経糸/ヤーン
LA エアアウトレット
MG 中間織物層
NN ステッチングシーム/ソーイングシーム
OG 上側織物層
SF 緯糸/ヤーン
SFR 緯糸/ヤーン
SFR 緯糸/ヤーン
UG 下側織物層
WN 織製シーム
【外国語明細書】