(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005259
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】分離装置及びブラスト工法
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20240110BHJP
B04C 5/08 20060101ALI20240110BHJP
B04C 5/04 20060101ALI20240110BHJP
B04C 5/26 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B24C9/00 E
B24C9/00 G
B04C5/08
B04C5/04
B04C5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105345
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】599080937
【氏名又は名称】株式会社修美工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】相馬 康宏
(72)【発明者】
【氏名】相馬 智之
【テーマコード(参考)】
4D053
【Fターム(参考)】
4D053AA03
4D053AB01
4D053BA06
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CA02
4D053CB11
(57)【要約】
【課題】ブラスト処理によって発生した塗装片と研削材との混合物から、研削材をより確実に分離できる分離装置及びこの分離装置を用いたブラスト工法を提供する。
【解決手段】分離装置1は、第一分離機本体11と、混合物4を第一分離機本体11に取り込む第一取込管12と、第一分離機本体11の外部に塗装片2を排出する第一上方排出管14と、第一下方排出管15とを有する第一分離機10、及び第二分離機本体21と、第一下方排出管15から排出された排出物を第二分離機本体21に取り込む第二取込管22と、第二分離機本体21の外部に塗装片2を排出する第二上方排出管24と、第二下方排出管25を有する第二分離機20と、第一分離機10及び第二分離機20と独立して設けられ、排出された塗装片2を、排出ホース7,8を介して収容する集塵機30と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装膜を研削材によりブラストした際に生じる被研削物と前記研削材との混合物から、前記研削材を分離する分離装置であって、
中空状の第一分離機本体、吸引ホースを介して前記混合物を前記第一分離機本体に取り込む第一取込部、前記第一分離機本体の内部に上昇気流を発生させる第一回転体、前記第一取込部よりも上方に設けられ、前記第一分離機本体の外部に前記被研削物を排出する第一上方排出部、前記第一分離機本体の下方に設けられた第一下方排出部を有する第一分離機と、
中空状の第二分離機本体、取込ホースを介して前記第一下方排出部から排出された排出物を前記第二分離機本体に取り込む第二取込部及び前記第二分離機本体の内部に上昇気流を発生させる第二回転体、前記第二取込部よりも上方に設けられ、前記第二分離機本体の外部に前記被研削物を排出する第二上方排出部、前記第二分離機本体の下方に設けられた第二下方排出部を有する第二分離機と、
前記第一分離機及び前記第二分離機と独立して設けられ、前記第一上方排出部及び前記第二上方排出部から排出される前記被研削物を、排出ホースを介して収容する集塵機と、を備える、
ことを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記第一上方排出部が前記第一取込部と独立して設けられ、
前記第二上方排出部が前記第二取込部と独立して設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記第一取込部が前記第一分離機本体の側面部、かつ、高さ方向において前記第一回転体の下端部よりも前記第一回転体の中心側に設けられ、
前記第二取込部が前記第二分離機本体の側面部、かつ、高さ方向において前記第二回転体の下端部よりも前記第二回転体の中心側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分離装置。
【請求項4】
請求項1に記載の分離装置を利用するブラスト工法において、
前記塗装膜を前記研削材によってブラスト処理するブラスト処理工程と、
前記ブラスト処理工程で発生する前記混合物に含まれる前記被研削物を、前記第一分離機本体の内部に生じさせた上昇気流によって、前記第一分離機本体の外部に排出させ、かつ前記第一分離機本体の下方に収集された前記排出物を前記第二分離機本体に取り込み、前記第二分離機本体の内部に生じさせた上昇気流によって、前記第二分離機本体の外部に排出させることで、前記混合物から前記研削材を分離する研削材分離工程と、を含む、
ことを特徴とするブラスト工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装片と研削材との混合物から研削材を分離する分離装置及びこの分離装置を用いたブラスト工法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装壁を再塗装する場合、研削材により塗装膜をブラスト処理した後、壁を洗浄し、壁の表面を均し、塗装する。塗装膜には、ポリ塩化ビフェニルや鉛等が含まれているため、研削材によって削られた塗装片は、産業廃棄物として処理される。また、塗装膜を研削すると、研削材と塗装片の混合物が発生し、この混合物は廃棄物として処理される。このように、廃棄処理する必要がない研削物は、塗装片と共に産業廃棄物として処理される。このような背景から、従来から研削材と被研削物との混合物から、研削材を分離するための分離機が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の分離機は、アスベスト含有材層を研削材によってブラストしたときに生じる研削材とアスベスト含有粉塵及び異物の混合物から研削材を分離するために使用される。この分離機は、下部に研削材回収部、側面部に吸引口及び排出口を有する分離機本体と、この分離機本体の内部に横向きに設けられた振動篩と、振動篩の上側かつ排出口よりも下方に設けられたダクトを備えている。排出口は、粉塵ホースを介して、集塵装置と接続され、ダクトは上方に開口する開口部を有しており、ダクトの内部には流量調節ダンパが設けられている。この流量調節ダンパの傾斜角度を水平状態から垂直状態まで調節することにより風量を調節して、混合物を斜め上方向の排出口に噴出することによって、アスベスト含有粉塵を集塵装置側へ排出している。さらに、研削材と異物を、排出口よりも下方に落下させ、振動篩によって、所定の大きさ以上の異物を除去する。そして、研削材は、さらに下方の研削材回収部まで落下する。このように、特許文献1に記載の分離機は、ブラストしたときに生じる混合物からアスベスト含有粉塵や異物を除去し、研削材を研削材回収部に落下させることで、研削材を分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の分離機では、研削材とアスベスト含有粉塵等の混合物が分離機本体の内部に吸引されることによって、ダクトの開口部から斜め上方向の排出口に向けて噴出される。そのため、研削材がアスベスト含有粉塵等と共に排出口に混入するおそれがある。さらに、アスベスト含有粉塵は、研削材と共に分離機本体の下方に落下し、研削材回収部に研削材と共にアスベスト含有粉塵が混入するおそれもある。そのため、塗装片と研削材との混合物を分離するために上記の分離機を利用した場合、集塵機に研削材が混入したり、研削材回収部に多量の塗装片が混入するおそれがある。そうすると、産業廃棄物として処理する必要のない研削物も産業廃棄物として廃棄する必要が生じる。
【0006】
さらに、回収した研削材を再利用するためには、混合物の中から研削材のみを取り除く作業が必要となり、大きな手間が生じる。そのため、現在、分離装置には、混合物の中から、より確実に研削物を取り除く技術が求められている。
【0007】
本発明は、ブラスト処理によって発生した塗装片と研削材との混合物から、研削材をより確実に分離できる分離装置及びこの分離装置を用いたブラスト工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の分離装置は、塗装膜を研削材によりブラストした際に生じる被研削物と研削材との混合物から、研削材を分離する。この分離装置は、中空状の第一分離機本体、吸引ホースを介して混合物を第一分離機本体に取り込む第一取込部、第一分離機本体の内部に上昇気流を発生させる第一回転体、第一取込部よりも上方に設けられ、第一分離機本体の外部に被研削物を排出する第一上方排出部、第一分離機本体の下方に設けられた第一下方排出部、を有する第一分離機と、中空状の第二分離機本体、取込ホースを介して第一下方排出部から排出された排出物を第二分離機本体に取り込む第二取込部及び第二分離機本体の内部に上昇気流を発生させる第二回転体、第二取込部よりも上方に設けられ、第二分離機本体の外部に被研削物を排出する第二上方排出部、第二分離機本体の下方に設けられた第二下方排出部を有する第二分離機と、第一分離機及び第二分離機と独立して設けられ、第一上方排出部及び第二上方排出部から排出される被研削物を、排出ホースを介して収容する集塵機と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の分離装置は、第一上方排出部が第一取込部と独立して設けられ、第二上方排出部が第二取込部と独立して設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の分離装置は、第一取込部が第一分離機本体の側面部、かつ、高さ方向において第一回転体の下端部よりも第一回転体の中心側に設けられ、第二取込部が第二分離機本体の側面部、かつ、高さ方向において第二回転体の下端部よりも第二回転体の中心側に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明のブラスト工法は、上記の分離装置を利用し、塗装膜を研削材によってブラスト処理するブラスト処理工程と、ブラスト処理工程で発生する混合物に含まれる被研削物を、第一分離機本体の内部に生じさせた上昇気流によって、第一分離機本体の外部に排出させ、かつ第一分離機本体の下方に集積された排出物を第二分離機本体に取り込み、第二分離機本体の内部に生じさせた上昇気流によって、第二分離機本体の外部に排出させることで、混合物から研削材を分離する研削材分離工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る分離装置は、第一分離機及び第二分離機によって、少なくとも2回混合物の分離を行うため、ブラスト処理によって発生した塗装片と研削材との混合物から、研削材をより確実に分離できる。そうすると、分離した研削材を再利用することができると共に、廃棄物として処理する廃棄量や廃棄コストを減少することができる。したがって、本発明に係る分離装置を利用することで、環境への負荷を軽減することができる。
【0013】
本発明のブラスト工法は、ブラスト処理工程で発生した混合物を、上記の分離装置を利用し、研削材分離工程で混合物から研削材を分離するため、混合物から研削材をより確実に分離できる。また、本発明のブラスト工法は、ブラストを実施する施工現場からブラスト機までの距離が長い(例えば、200mから300m)場合に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る分離装置の一部を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る分離機の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る分離機の正面断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る分離機の平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る分離機の側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る分離機の断面図(
図2のA-A断面図)である。
【
図7】本発明の実施形態に係る分離機の断面図(
図2のB-B断面図)である。
【
図8】本発明の実施形態に係る分離装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態に係る分離装置は、研削対象物である塗装膜を研削材でブラストして発生する被研削物と研削材との混合物から研削材を分離するために使用する。
本実施形態に係る分離装置1は、
図1及び
図8に示すように、塗装膜を研削材3によってブラストすることで発生する塗装片(被研削物)2と研削材3の混合物4を吸引する吸引ホース(吸引部)5と、この吸引ホース5が取り付けられた第一分離機10と、この第一分離機10に連結された第二分離機20と、第一分離機10及び第二分離機20から排出される塗装片2を収容する集塵機30を備えている。
【0016】
第一分離機10及び第二分離機20は、混合物4から研削材3を分離するものである。
第一分離機10は、
図2及び
図3に示すように、中空状の第一分離機本体11と、吸引ホース5を介して第一分離機本体11の内部に混合物4を取り込む第一取込管(第一取込部)12と、所定の高さに設けられ、第一分離機本体11の内部に上昇気流を発生させる羽根車(第一回転体)13と、第一取込管12よりも上方に設けられ、被研削物2を第一分離機本体11の外部に排出するための第一上方排出管(第一上方排出部)14と、第一分離機本体11の下方に設けられた第一下方排出管(第一下方排出部)15を備えている。
以下、
図2に示した第一分離機10の幅方向を水平方向X、高さ方向を垂直方向Yとする。
【0017】
第一分離機本体11は、円筒状であり、所定の位置から下方向に縮径されている。この所定の位置とは、垂直方向Yにおいて、第一分離機本体11の上側から約1/4の位置よりも下側である。この第一分離機本体11は、金属で構成されており、第一分離機本体11の上面、側面及び下面に、開口部11A、11B及び11Cがそれぞれ形成されている。第一分離機本体11の上面には、上蓋16が固定される。この上蓋16には、第一上方排出管14が形成されている。上蓋16及び第一上方排出管14は、第一分離機本体11と同じ素材で構成されている。一方、第一分離機本体11の下面には、下蓋17が設けられている。この下蓋17は、分離装置1の稼働の際は、第一分離機10から取り外される。
【0018】
第一取込管12は、吸引ホース5から吸引された混合物4を第一分離機本体11の内部に取り込む際に使用され、第一取込管12の外周に吸引ホース5が取り付けられる(
図1)。第一取込管12は、内径D12を有する円筒状であり、開口部11Aに連結し、第一分離機本体11と一体として形成されている。第一取込管12は、第一分離機本体11と同じ素材で構成されている。また、この第一取込管12は、
図4及び
図5に示すように、第一分離機10を水平方向Xにおいて2等分する中心線Cから一定の距離だけずれて、形成されている。なお、吸引ホース5の長さは適宜調整することができる。
【0019】
第一上方排出管14は、分離された被研削物2を第一分離機10の外部に排出する際に使用される。第一上方排出管14は、内径D14を有する円筒状であり、上蓋16と一体として形成されている。この第一上方排出管14は、屈曲部を有し、L字状に形成されている。第一上方排出管14の先端は、水平方向Xにおいて、第一取込管12と同じ向きに延出されている。
【0020】
第一上方排出管14は、上蓋16が開口部11Aに固定されることにより、第一分離機本体11の上方に配置される。第一上方排出管14の内径D14は、
図5に示すように、第一取込管12の内径D12より大きく設計されている。この第一上方排出管14は、その中心と、中心線Cがほぼ一致するように設けられている。そのため、第一上方排出管14と第一取込管12は、水平方向Xにおいて、所定距離だけずらして設けられている。また、第一上方排出管14には、排出ホース7が接続され、排出ホース7の他端側は集塵機30に接続されている(
図8)。
【0021】
第一下方排出管15の下方には、収容部9が設けられ、この収容部9には、取込ホース6が連結されている(
図8)。収容部9には、第一下方排出管15の開口部11Cから排出される排出物が収容される。収容された排出物は取込ホース6を介して、第二分離機20に誘導される。
なお、本実施形態において、排出物とは、研削材3と若干の塗装片2の付着残りがある研削材3との混合物を意味する。
【0022】
羽根車13は、第一取込管12から取り込まれた空気により回転し、第一分離機本体11の内部に上昇気流を生じさせる。羽根車13は金属製であり、この羽根車13にはインペラ型のものを使用する。羽根車13は、
図6に示すように、円柱状の胴部13aと、胴部13aの周壁の上端から下端にかけて斜めに形成された複数の羽根部13bを有している。羽根車13の胴部13aの長さL1は、第一取込管12の内径D12よりも大きく設計されている。また、羽根車13は、
図7に示すように、第一分離機本体11の内部において、開口部11Bと対向する位置に設けられている。羽根車13の上面部は、接続部13cを介して第一分離機本体11の内周壁に接続され、一方、下面部は、接続部13dを介して第一分離機本体11の内周壁に接続されている(
図3)。接続部13cの傾きや接続部13dの長さを調節することで、羽根車13を設ける位置を適宜変更できる。
【0023】
研削材3は、真比重が4.1~7.45のものを使用する。この研削材3の真比重は、4.1から7.45の範囲であることが最も好ましい。研削材3の真比重が4.1よりも小さい場合、第一分離機本体11の内部で発生する上昇気流から外力を受け、第一上方排出管14から排出されてしまうおそれがある。一方、研削材3の真比重が7.45よりも大きい場合、ブラストするときの消費電力が大きくなり経済性の観点から好ましくないことに加え、衝突により羽根車13や第一分離機本体11を破損させるおそれが高くなる。研削材3には、例えば、スチールグリッドや高硬度ガーネットを使用できる。
【0024】
次に、第二分離機20について説明する。
第二分離機20は、上述した第一分離機10と同じ構成のものである。第二分離機20は、中空状の第二分離機本体21と、取込ホース6を介して第一下方排出管15から排出された排出物を第二分離機本体21の内部に取り込む第二取込管(第二取込部)22と、所定の高さに設けられ、第二分離機本体21の内部に上昇気流を発生させる羽根車(第二回転体)23と、第二取込管22よりも上方に設けられ、塗装片2を第二分離機本体21の外部に排出するための第二上方排出管(第一上方排出部)24と、第二分離機本体21の下方に設けられた第二下方排出管(第二下方排出部)25を備えている(
図1及び
図8)。
【0025】
第二下方排出管25の下方には、収集袋40が設けられ、この収集袋40には、第二分離機20で分離された研削材3が集積される。また、第二上方排出管24には、排出ホース8が接続され、排出ホース8の他端側は集塵機30に接続されている。
【0026】
集塵機30は、第一分離機10及び第二分離機20とは独立して設けられ、第一上方排出管14や第二上方排出管24から排出される塗装片2を、各排出ホース7,8を介して収容する。この集塵機30には、例えば、AMANO製の集塵機を使用することができる。
【0027】
次に、本実施形態に係るブラスト工法について、説明する。
【0028】
本実施形態のブラスト工法では、上述した分離装置1を使用し、塗装膜(塗装壁)をブラストする。このブラスト工法は、塗装膜を研削材3によってブラスト処理するブラスト処理工程と、このブラスト処理工程で発生する混合物4に含まれる塗装片2を、第一分離機本体11の内部に生じさせた上昇気流によって、第一分離機本体11の外部に排出させ、かつ第一分離機本体11の下方に収集された排出物を第二分離機本体21に取り込み、第二分離機本体21の内部に生じさせた上昇気流によって、第二分離機本体21の外部に排出させることで、混合物4から研削材3を分離する研削材分離工程とを含む。このブラスト工法では、研削材3には、スチールグリッド(真比重:約7.45)を用いる。
以下、各工程を具体的に説明する。
【0029】
[ブラスト工程]
ブラスト工程では、研削材3(スチールグリッド)を塗装壁に噴射し、塗装膜をブラストする。塗装膜をブラストすることにより、研削された塗装片2と研削材3が混合された混合物4が発生する。次に、コンプレッサーを稼働させ、ジェクターを吸引モードにすることで、第一分離機本体11及び第二分離機本体21の内部に空気が取り込まれ、羽根車13,23が回転し始め、第一分離機本体11及び第二分離機本体21の内部に上昇気流がそれぞれ発生する。発生した気流は、第一上方排出管14(第二上方排出管24)から第一分離機本体11(第二分離機本体21)の外部に移動し、排出ホース7(排出ホース8)を介して、集塵機30まで移動する。
【0030】
[混合物取込工程]
次に、吸引ホース5の先端の吸引部から混合物4を吸引する。吸引された混合物4は、吸引ホース5を通過し、第一取込管12を介して第一分離機本体11の内部に取り込まれる。
【0031】
[研削材分離工程]
研削材分離工程は、第一分離機10及び第二分離機20内でそれぞれ実施する。
第一分離機本体11の内部に取り込まれた混合物4は、上昇気流により外力を受ける。混合物4に含まれる塗装片2は、比重が小さいため、上昇気流から外力を受けて、上昇する。上昇した塗装片2は、第一上方排出管14から第一分離機本体11の外部に排出され、排出ホース7を介して、集塵機30に収容される。一方、混合物4に含まれる研削材3は、比重が大きいため、上昇気流の力を受けても上昇しない。そのため、研削材3は、羽根車13の胴部13aや羽根部13b、あるいは、第一分離機本体11の内壁に衝突する。そして、研削材3や塗装片2の付着残りがある研削材3(排出物)は、自重により第一分離機本体11の下方に落下し、第一下方排出管15から収容部9に収容される。
【0032】
収容部9の排出物は、取込ホース6を通過し、第二取込管22を介して第二分離機本体21の内部に取り込まれる。塗装片2の付着残りがある研削材3が、羽根車23や第二分離機本体21の内壁に衝突すると、研削材3から塗装片2が剥がれる。この剥がれた塗装片2は、上昇気流により、第二上方排出管24から第二分離機本体21の外部に排出され、排出された塗装片2は、排出ホース8を介して、集塵機30に収容される。一方、研削材3は、自重により第二分離機本体21の下方に落下し、第二下方排出管25から収集袋40に収容される。
【0033】
混合物4を全て吸引した後、コンプレッサーを停止し、第一分離機10及び第二分離機20の内部への空気の吸引を停止する。空気の吸引を停止すると、羽根車13,23の回転は停止する。その後、収集袋40で研削材3を回収し、回収した研削材3は、再利用される。
【0034】
次に、本実施形態に係る分離装置1の作用効果について説明する。
【0035】
本実施形態の分離装置1では、第一分離機10及び第二分離機20の内部に取り込まれた混合物4や排出物(以下、混合物4等)は、羽根車13,23の回転によって生じた上昇気流により外力を受ける。そうすると、比重の小さい塗装片2は、上方に移動し、第一取込管12及び第二取込管22よりも上側に配置された第一上方排出管14及び第二上方排出管24から外部に排出され、一方、比重の大きい研削材3は、第一分離機本体11及び第二分離機本体21の下方に落下する。そのため、ブラスト処理後の混合物4等から、研削材3を分離できる。特に、分離装置1では、少なくとも2回分離を実施するため、混合物4等から、研削材3を確実に分離できる。
【0036】
研削材3を確実に分離することにより、研削材3が集塵機30に混入することはなくなるため、塗装片2と共に産業廃棄物として廃棄する必要がなくなる。したがって、産業廃棄物の廃棄量を大幅に削減でき、コストを削減できる。そして、廃棄物の廃棄量が削減されると、削減廃棄物を回収する作業の回数も減らすことができる。また、研削材3は、塗装片2と分離して回収されるため、この研削材3は再利用することができ、コストを削減することができる。
【0037】
本実施形態における分離装置1は、第一分離機10、第二分離機20、集塵機30等、各構成が独立しているため、分離装置1を使用する現場で組み立てることができる。また、各構成が独立しているため、別々に運搬することができる。さらに、分離装置1は、2つの分離機を使用し、かつ各ホースは所定の長さを有するため、ブラストを実施する施工現場からブラスト機までの距離が長い(例えば、200mから300m)場合にも使用することができる。また、スペースが確保しづらい場所の塗装壁から離れた位置に分離装置1を設置し、塗装壁を施工することもできる。
【0038】
本実施形態に係るブラスト工法は、上記の分離装置1を利用するため、研削材分離工程で混合物4等から研削材3をより確実に分離できる。本実施形態に係るブラスト工法は、ブラストを実施する施工現場からブラスト機までの距離が長い場合に使用することができる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。本実施形態では、2つの分離機を接続した例を示したが、3つ以上の分離機を接続した分離装置とすることもできる。金属製の研削材としてスチールグリッドを使用したが、真比重が4.1~7.45の範囲であれば、スチールグリッドに限定されず、例えば、鋳鋼ショットを使用することができ、さらに非金属製の研削材も使用することができる。
また、第一回転体(第二回転体)は、インペラ型の羽根車に限定されず、この第一回転体(第二回転体)には、プロペラ型のものを使用することもできる。また、第一上方排出管(第二上方排出管)と第一取込管(第二取込管)は互いに逆方向に延出していてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 分離装置
2 塗装片(被研削物)
3 研削材
4 混合物
5 吸引ホース(吸引部)
6 取込ホース
7、8 排出ホース
9 収容部
10 第一分離機
11 第一分離機本体
11A~11C 開口部
12 第一取込管(第一取込部)
13,23 羽根車
13a 胴部
13b 羽根部
13c,13d 接続部
14 第一上方排出管(第一上方排出部)
15 第一下方排出管(第一下方排出部)
16 上蓋
17 下蓋
20 第二分離機
21 第二分離機本体
22 第二取込管(第二取込部)
24 第二上方排出管(第二上方排出部)
25 第二下方排出管(第二下方排出部)
30 集塵機
40 収集袋
C 中心線
D12,D14 内径
L1 長さ
X 水平方向
Y 垂直方向