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特開2024-52592感光性樹脂組成物、硬化物、半導体装置、有機EL表示装置及び電子部品
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  • 特開-感光性樹脂組成物、硬化物、半導体装置、有機EL表示装置及び電子部品 図1
  • 特開-感光性樹脂組成物、硬化物、半導体装置、有機EL表示装置及び電子部品 図2
  • 特開-感光性樹脂組成物、硬化物、半導体装置、有機EL表示装置及び電子部品 図3
  • 特開-感光性樹脂組成物、硬化物、半導体装置、有機EL表示装置及び電子部品 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052592
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化物、半導体装置、有機EL表示装置及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20240404BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20240404BHJP
   H10K 50/84 20230101ALI20240404BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240404BHJP
   H10K 59/124 20230101ALI20240404BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20240404BHJP
   C07C 43/178 20060101ALI20240404BHJP
   C07C 317/22 20060101ALI20240404BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20240404BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/037
G03F7/037 501
H10K50/84
H10K59/122
H10K59/124
H10K85/00
C07C43/178 D
C07C317/22
C08G73/06
G03F7/004 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023162439
(22)【出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022157504
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木内 洋平
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 眞理子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大公
(72)【発明者】
【氏名】三好 一登
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
4H006
4J043
【Fターム(参考)】
2H225AC34
2H225AC63
2H225AD06
2H225AE05P
2H225AF04P
2H225AF05P
2H225AM74P
2H225AM75P
2H225AM77P
2H225AM99P
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225BA34P
2H225CA11
2H225CA24
2H225CB06
2H225CC03
2H225CC21
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD90
3K107DD97
3K107FF00
3K107FF14
4H006AA03
4J043PA08
4J043PB13
4J043PC075
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043QB33
4J043RA06
4J043RA35
4J043RA52
4J043SA06
4J043SA54
4J043SA71
4J043SA85
4J043SB01
4J043SB02
4J043TA12
4J043TA14
4J043TA22
4J043TB01
4J043TB02
4J043UA082
4J043UA132
4J043UA151
4J043UB061
4J043UB122
4J043UB221
4J043XA16
4J043XB09
4J043YA06
4J043YB07
4J043ZA22
4J043ZB22
(57)【要約】
【課題】 半導体素子や有機EL表示装置に使用される絶縁層や平坦化膜の現像時の現像残渣を低減した感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも樹脂(A)、架橋剤(B)および感光剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、前記架橋剤(B)が、特定の化合物(B1)を含み、前記フェノール化合物(B1)のGPCチャートの総面積100%に対して、前記フェノール化合物(B1)の単量体成分の面積比をBP(%)、前記フェノール化合物(B1)の2量体成分の面積比をBQ(%)および前記フェノール化合物(B1)の3量体の成分の面積比をBR(%)としたときに、BR/(BP+BQ+BR)が0.005~0.1である感光性樹脂組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂(A)、架橋剤(B)および感光剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記架橋剤(B)が、アルコキシメチル基またはメチロール基を分子内に少なくとも1つ有するフェノール化合物(B1)を含み、
前記フェノール化合物(B1)のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)チャートの総面積100%に対して、前記フェノール化合物(B1)の単量体成分の面積比をBP(%)、前記フェノール化合物(B1)の2量体成分の面積比をBQ(%)および前記フェノール化合物(B1)の3量体成分の面積比をBR(%)としたときに、
BR/(BP+BQ+BR)が0.005~0.1である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノール化合物(B1)が、以下で表されるいずれかの化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
前記樹脂(A)がアルカリ可溶性樹脂(A1)である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール化合物(B1)のBQ(%)/BR(%)が0.5~10である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記感光剤(C)が、フェノール性水酸基を3つ有する化合物のキノンジアジド付加体および/または4つ有する化合物のキノンジアジド付加体(C1)((C1)成分と称する)を含み、
前記(C1)成分のLC(液体クロマトグラフィー)チャートの総面積100%に対して、前記(C1)成分のモノエステル体成分の面積比をCL(%)、ジエステル体成分の面積比をCM(%)、トリエステル体成分の面積比をCN(%)およびテトラエステル体成分の面積比をCO(%)とするとき、
(CN+CO)/(CL+CM+CN+CO)が0.2~0.7である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C1)成分のCM(%)/CN(%)が0.2~2.5である、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂(A)100質量部に対して、前記架橋剤(B)を5~35質量部含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂(A)100質量部に対して、前記感光剤(C)を5~35質量部含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記感光剤(C)が、光重合開始剤(C2)と光重合性化合物(C3)を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂(A)100質量部に対して、前記架橋剤(B)を2~20質量部含有する、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂(A)100質量部に対して、前記光重合開始剤(C2)を10~20質量部含有する、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂(A)100質量部に対して、前記光重合性化合物(C3)を50~90質量部含有する、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記樹脂(A)が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも一つを含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化物を具備する半導体装置。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
【請求項17】
請求項14に記載の硬化物を具備する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。より詳しくは、半導体素子等の表面保護膜、電子部品の層間絶縁膜、有機発光素子などの表示装置の絶縁層や薄膜トランジスタ(以下、TFT)基板の平坦化膜、回路基板の配線保護絶縁膜、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化膜、および回路基板用ソルダーレジストなどに適した、感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜や、電子部品の層間絶縁膜、有機発光素子などの表示装置の絶縁層やTFT基板の平坦化膜には、耐熱性や電気絶縁性、機械特性等に優れたポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂が広く使用されている。
【0003】
また、携帯ディスプレイとして注目を受けているものに、有機ELディスプレイがある。この発光素子は水、有機ガスなどに弱く、発光素子間の絶縁材料およびTFT基板の平坦化膜には、吸湿性がないこと、電極加工工程に付随するレジスト剥離液処理などの影響を受けて絶縁材料および平坦化膜は溶解や分解しない優れた耐薬品性が求められている。
【0004】
さらに、このような用途では硬化後に高い平坦性を有することが、絶縁層や平坦化膜を形成後に金属などの配線を形成する上で重要である。特に平坦化膜は、0.1~1.0μmの厚みの無機膜や配線が段差となって存在する基板上に最終膜厚1~2μmを狙って形成されるが、その平坦性は塗液の流動性が高い時に発現することが知られており、具体的には塗布工程、ソフトベーク工程、キュア工程などの直後に平坦性が向上し、工程を経るにつれ下地の段差は完全に消失することはないが徐々に目立たなくなる。しかしながら現像工程では膜自体に流動性が無い中、膜表面から深さ方向にエッチングされるため、下地の段差が目立ちやすくなり、現像工程後の膜の平坦性は悪化する。そのため平坦化膜には現像時に膜減りしにくい材料、特にポジ型感光性樹脂組成物では、未露光部に高い残膜率が要求され、逆にネガ型感光性樹脂組成物では、露光部に高い残膜率が要求される。一方で、高い残膜率を有するポジ型塗膜は必然的に露光部の溶解性が不足し、開口領域に現像残渣が発生しやすくなる。また、高い残膜率を有するネガ型塗膜では、露光部の光架橋反応の一部が未露光部へ拡散し、露光部と未露光部の境界付近で現像残渣が発生しやすくなる。一旦現像残差が発生すると、キュア工程後にも同残渣は開口部に残存する。平坦化膜では開口部を介して配線を形成したり、絶縁層では開口部に発光素子を形成し、最終的に電流印加されることになる。しかし、残渣が残っているとそれが抵抗となって正常な導通を妨げ、平坦化膜では電極の接続不良を引き起こし、絶縁層では発光不良を引き起こしてしまう。このため、絶縁層や平坦化膜には従来以上に、高い残膜率と現像残渣低減の両立を図る必要がある。
【0005】
上記の有機ELディスプレイの絶縁層や平坦化膜以外でも、最終膜厚が2~10μmとなるような半導体の表面保護膜や電子部品の層間絶縁膜の用途において、同様に高い残膜率と現像残渣低減の両立できる材料が求められている。
【0006】
特許文献1では、アルカリ可溶性樹脂、熱架橋剤、および光酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物であって、熱架橋剤が特定の化合物を熱架橋剤成分の80~97%含み、その化合物の2量体が特定量含む構成が記載されている。これにより、優れた耐薬品性のある絶縁層および平坦化膜が得られる効果が開示されている。
【0007】
特許文献2では、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリベンズオキサゾールから選ばれる樹脂、熱架橋剤を含む樹脂組成物であって、熱架橋剤が少なくともレゾール樹脂を含む樹脂組成物が記載されている。硬化時のしわを抑制し、さらに耐薬品性の高い硬化物を得ることができ、さらに硬化物のクラック発生を抑制できる効果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-114355号公報
【特許文献2】特開2020-66651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら熱架橋剤を使用した感光性樹脂組成物では、現像時の高い残膜率と現像残渣の抑制を同時に満たすことに対して改善の余地があった。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するため、現像時の高い残膜率と現像残渣を低減した感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成が極めて有効であることを見出し、本発明を完成した。
[1]少なくとも樹脂(A)、架橋剤(B)および感光剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、前記架橋剤(B)が、アルコキシメチル基またはメチロール基を分子内に少なくとも1つ有するフェノール化合物(B1)を含み、前記フェノール化合物(B1)のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)チャートの総面積100%に対して、前記フェノール化合物(B1)の単量体成分の面積比をBP(%)、前記フェノール化合物(B1)の2量体成分の面積比をBQ(%)および前記フェノール化合物(B1)の3量体成分の面積比をBR(%)としたときに、BR/(BP+BQ+BR)が0.005~0.1である、感光性樹脂組成物。
[2]前記フェノール化合物(B1)が、以下で表されるいずれかの化合物である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
[3]前記樹脂(A)がアルカリ可溶性樹脂(A1)である、[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記フェノール化合物(B1)のBQ(%)/BR(%)が0.5~10である、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記感光剤(C)が、フェノール性水酸基を3つ有する化合物のキノンジアジド付加体および/または4つ有する化合物のキノンジアジド付加体(C1)((C1)成分と称する)を含み、前記(C1)成分のLC(液体クロマトグラフィー)チャートの総面積100%に対して、前記(C1)成分のモノエステル体成分の面積比をCL(%)、ジエステル体成分の面積比をCM(%)、トリエステル体成分の面積比をCN(%)およびテトラエステル体成分の面積比をCO(%)とするとき、(CN+CO)/(CL+CM+CN+CO)が0.2~0.7である、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(C1)成分のCM(%)/CN(%)が0.2~2.5である、[5]に記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記樹脂(A)100質量部に対して、前記架橋剤(B)を5~35質量部含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記樹脂(A)100質量部に対して、前記感光剤(C)を5~35質量部含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[9]前記感光剤(C)が、光重合開始剤(C2)と光重合性化合物(C3)を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記樹脂(A)100質量部に対して、前記架橋剤(B)を2~20質量部含有する、[9]に記載の感光性樹脂組成物。
[11]前記樹脂(A)100質量部に対して、前記光重合開始剤(C2)を10~20質量部含有する、[9]に記載の感光性樹脂組成物。
[12]前記樹脂(A)100質量部に対して、前記光重合開始剤(C3)を50~90質量部含有する、[9]に記載の感光性樹脂組成物。
[13]前記樹脂(A)が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも一つを含有する、[1]~[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[14][1]~[13]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
[15][14]に記載の硬化物を具備する半導体装置。
[16][14]に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
[17][14]に記載の硬化物を具備する電子部品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物により、高い現像残膜率と現像残渣の低減を図ることが可能となる感光性樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】半導体装置の断面図である。
図2】有機EL表示装置の断面図である。
図3】電子部品の断面図である。
図4】GPCチャートのピーク模式図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明において、架橋剤成分中の3量体の成分量が高い現像残膜率と現像残渣に影響することを新たに見出し、さらに、その含有量および感光剤中のトリ体の成分量を規定することで、より現像残渣の低減を図ることを見い出したものである。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも樹脂(A)、架橋剤(B)および感光剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、前記架橋剤(B)が、アルコキシメチル基またはメチロール基を分子内に少なくとも1つ有するフェノール化合物(B1)を含み、前記フェノール化合物(B1)のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)チャートの総面積100%に対して、前記フェノール化合物(B1)の単量体成分の面積比をBP(%)、前記フェノール化合物(B1)の2量体成分の面積比をBQ(%)および前記フェノール化合物(B1)の3量体成分の面積比をBR(%)としたときに、BR/(BP+BQ+BR)が0.005~0.1である、感光性樹脂組成物である。
【0018】
前記フェノール化合物(B1)が、以下で表されるいずれかの化合物であることが好ましい。
【0019】
【化2】
【0020】
本願において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0021】
架橋剤(B)
本発明の感光性樹脂組成物は、架橋剤(B)(以下、(B)成分と称することがある)を含有する。架橋剤(B)は、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基をはじめとする熱反応性の官能基を分子内に少なくとも1つ有する化合物を指す。本発明における架橋剤(B)は、熱硬化性の熱架橋剤が好ましい。本発明の感光性樹脂組成物は架橋剤(B)を含有することで、感光性樹脂組成物の相溶性を維持しつつ、樹脂またはその他添加成分と架橋し、熱硬化後の膜の強度を高めることができる。
【0022】
架橋剤(B)が有する官能基としては、アルコキシメチル基またはメチロール基であることがアルカリ現像性と架橋密度向上を両立できる点で好ましい。また、アルカリ現像性、すなわち感度を向上できる点で分子内にフェノール性水酸基を含むことが好ましい。架橋剤(B)は、アルコキシメチル基またはメチロール基を分子内に少なくとも1つ有するフェノール化合物(B1)を含む。
【0023】
(B)成分における(B1)成分の3量体成分の量を規定することにより、2量体成分と比較して適度なアルカリ溶解性を有し、感光剤、特に後述するキノンジアジド化合物の相互作用により未露光部においては、適度な溶解抑止効果が得られ、現像時に高い残膜率が得られるようになる。
【0024】
また、3量体成分が(B1)成分中10%以下となることで、露光部においては多量体成分と比較して、キノンジアジドとの強い相互作用による不溶性錯体の形成をすることがなく、現像残差の発生を抑制することができる。
【0025】
ここで、(B1)成分の単量体とは、同構造中に含まれるアルコキシメチル基またはメチロール基が架橋により他の分子と結合していない独立した化合物を指す。また、(B1)成分の2量体成分とは、アルコキシメチル基またはメチロール基が架橋により他の一つの単量体と結合した化合物を指す。さらに、(B1)成分の3量体成分とは、アルコキシメチル基またはメチロール基が架橋により他の二つの単量体と結合した化合物を指す。
【0026】
BR/(BP+BQ+BR)が0.005未満であると、現像時の残膜率が低くなる課題がある。また、BR/(BP+BQ+BR)が0.1を超えると、現像残渣を発生する課題がある。
【0027】
BR/(BP+BQ+BR)は、好ましくは0.01~0.09、より好ましくは0.015~0.08、さらに好ましくは0.02~0.07である。
【0028】
BR/(BP+BQ+BR)が0.005~0.1である(B1)成分を得る方法としては、再結晶、蒸留、濃縮などが挙げられるが、またこれらの方法を組み合わせて、あるいは繰り返して目的の割合としてもよい。一般に、2量体成分、3量体成分は単量体成分の架橋基が架橋反応を起こすことによって形成されるため、合成工程中の加熱温度と加熱時間を適切に管理する必要があり、3量体を得やすくするには、濃縮工程で高沸点の溶媒を用いることで高温処理がしやすくなり、目的の割合を得ることができる。
【0029】
架橋剤(B)の単量体、2量体および3量体の含有量はGPCのチャートから求める。具体的には、検出されたピーク形状部の総面積を100%とし、各ピーク形状部の面積比から各構造成分の割合を求めている。GPCの具体的な展開溶媒やカラム等は実施例にて詳述する。
【0030】
また、本発明において、フェノール化合物(B1)のBQ(%)/BR(%)が0.5~10であることが好ましい。2量体成分と3量体成分の量の比率を規定することにより、高い残膜率と現像残渣抑制が可能となる。2量体成分を一定以上の量を含有させ、BQ/BRを0.5以上とすることで高い残膜率が得られ、BQ/BRが10以下とすることで、現像残渣が抑制できる。BQ/BRは、好ましくは1~8、より好ましくは1.5~6、さらに好ましくはが2~5である。
【0031】
感光性樹脂組成物中に含有されるフェノール化合物(B1)は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、クロロホルムなどの溶媒で感光性樹脂組成物の溶媒抽出を行い、可溶物のGPC 分取、各分取物のIR 測定、1H NMR 測定、MS 測定およびGC 測定等の分析により、フェノール化合物(B1)の化学構造を同定し、容易に検出することができる。
【0032】
感光剤(C)
本発明の感光性樹脂組成物は、感光剤(C)(以下、(C)成分と称する場合がある)を含有する。(C)成分を含有することで、樹脂組成物に感光性を付与し、微細な開口パターンを形成することができる。(C)成分は、紫外線に感応して化学構造が変化する化合物であり、例えば、光酸発生剤、光塩基発生剤、光重合開始剤および光重合性化合物などを挙げることができる。
【0033】
(C)成分として光酸発生剤を用いた場合は、感光性樹脂組成物の光照射部に酸が発生し、光照射部のアルカリ現像液に対する溶解性が増大するため、光照射部が溶解するポジ型のパターンを得ることができる。
【0034】
(C)成分として光塩基発生剤を含有する場合は、感光性樹脂組成物の光照射部に塩基が発生し、光照射部のアルカリ現像液に対する溶解性が低下するため、光照射部が不溶化するネガ型のパターンを得ることができる。
【0035】
(C)成分として光重合開始剤および光重合性化合物を含有する場合は、感光性樹脂組成物の光照射部にラジカルが発生してラジカル重合が進行し、アルカリ現像液に対して不溶化することで、ネガ型のパターンを形成することができる。また、露光時のUV硬化が促進されて、感度を向上させることができる。
【0036】
ポジ型感光性樹脂組成物
ポジ型感光性樹脂組成物とする場合、上記した(C)成分の中で、高感度で微細加工性の観点から、光酸発生剤が好ましい。光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。さらに増感剤などを必要に応じて含むことができる。
【0037】
(C)成分として、フェノール性水酸基を3つ有する化合物のキノンジアジド付加体および/または4つ有する化合物のキノンジアジド付加体が、高い残膜率と現像残渣抑制の観点から好ましい。
【0038】
さらには、キノンジアジド化合物としては、フェノール性水酸基を有した化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、公知のものを使用してもよく、それらに4-ナフトキノンジアジドスルホン酸あるいは5-ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合で導入したものが好ましいものとして例示することができるが、これ以外の化合物を使用することもできる。
【0039】
フェノール性水酸基を有した化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。50モル%以上置換されているキノンジアジド化合物を使用することで、キノンジアジド化合物のアルカリ水溶液に対する親和性が低下する。その結果、未露光部の樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する溶解性は大きく低下する。さらに、露光によりキノンジアジドスルホニル基がインデンカルボン酸に変化し、露光部の感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に対する大きな溶解速度を得ることができる。すなわち、結果として組成物の露光部と未露光部の溶解速度比を大きくして、高い解像度でパターンを得ることができる。
【0040】
このようなキノンジアジド化合物を含有することで、一般的な水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)やそれらを含むブロードバンドに感光するポジ型の感光性を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
また、(C)成分は1種のみ含有しても、2種以上組み合わせて含有してもよく、高感度な感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0042】
キノンジアジドとしては、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基、4-ナフトキノンジアジドスルホニル基、同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基および5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を含むものなどが挙げられる。
【0043】
ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物としては5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物および4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物などが挙げられる。
【0044】
キノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、キノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって、公知の方法により合成することができる。キノンジアジド化合物を使用することで解像度、感度、残膜率がより向上する。
【0045】
また、本発明において、感光剤(C)成分が、フェノール性水酸基を3つ有する化合物のキノンジアジド付加体および/または4つ有する化合物のキノンジアジド付加体(C1)(以下、(C1)成分と称することがある)を含み、(C1)成分のLC(液体クロマトグラフィー)チャートの総面積100%に対して、(C1)成分のモノエステル体成分の面積比をCL(%)、ジエステル体成分の面積比をCM(%)、トリエステル体成分の面積比をCN(%)およびテトラエステル体成分の面積比をCO(%)とするとき、(CN+CO)/(CL+CM+CN+CO)が0.2~0.7であることが好ましい。
【0046】
トリエステル体成分およびテトラエステル体成分の量を規定することにより、樹脂(A)(以下、(A)成分と称することがある)や架橋剤(B)成分に含まれる水酸基やカルボキシル基などの酸性基と感光剤分子に存在するキノンジアジド感光基が塩基性部位と静電的に相互作用し、かつ感光剤1分子が3つまたは4つの感光基を有していることから、複数の相互作用点を構築し、アルカリ水溶液に対する親和性を効率よく低下させ、未露光部の溶解抑止性能を高め、残膜率の向上に寄与する。特に化合物(B1)成分の3量体成分との組み合わせにおいては、相互作用点が効率よく形成され、安定化するため、アルカリ水溶液に対する親和性低下能に優れ、高い残膜率を奏する。またトリエステル体成分およびテトラエステル体成分の量を規定することにより現像残渣が抑制できる。
【0047】
(CN+CO)/(CL+CM+CN+CO)が0.2以上であると、現像時の残膜率を向上させることができる。また、(CN+CO)/(CL+CM+CN+CO)が0.7以下であると、現像残渣の発生を抑制することができる。
【0048】
(CN+CO)/(CL+CM+CN+CO)は、好ましくは0.25~0.6、より好ましくは0.28~0.55、さらに好ましくは0.3~0.5である。
【0049】
(CN+CO)/(CL+CM+CN+CO)を0.2~0.7を満たすためには、フェノール性水酸基を有した化合物として分子内に同水酸基を3つまたは4つ有する化合物を用い、フェノール性水酸基全体の50モル%以上85モル%以下をキノンジアジドで置換するとよい。
【0050】
モノエステル体成分とは、フェノール性水酸基を複数有する化合物のフェノール性水酸基の1か所がキノンジアジドで置換されたもの、ジエステル体成分とは、フェノール性水酸基の2か所がキノンジアジドで置換されたもの、トリエステル体成分とは、フェノール性水酸基の3か所がキノンジアジドで置換されたもの、テトラエステル体成分とは、フェノール性水酸基の4か所がキノンジアジドで置換されたものである。
【0051】
各エステル体の成分量は、液体クロマトグラフィーのチャートから求める。実施例中にて測定方法を詳述する。
【0052】
また、本発明において、(C1)成分のCM(%)/CN(%)が0.2~2.5であることが好ましい。ジエステル体成分とトリエステル体成分の量の比率を規定することにより、高い現像残膜率と保存安定性を向上させることができる。
【0053】
CM/CNを0.2以上とすることでトリエステル体比率を高くし、高い現像残膜率が得られ、CM/CNを2.5以下とすることで、ジエステル体比率を高くし、相対的にトリエステル体の比率を低く抑えることができる。トリエステル体は対称性の高い構造であり結晶化して異物となり問題となるため、CM/CNを2.5以下とすることで異物の増加を抑制することができる。
【0054】
本発明において、(A)成分100質量部に対して、(B)成分を5~35質量部含有することが好ましい。(B)成分が5質量部以上とすることにより、高い残膜率が得られ、(B)成分35質量部以下とすることにより、現像残渣を抑制できる。(B)成分の含有量は、好ましくは7~32質量部、より好ましくは10~30質量部、さらに好ましくは12~28質量部である。
【0055】
また、本発明において、(A)成分100質量部に対して、(C)成分を5~35質量部含有することが好ましい。(C)成分を5質量部以上、35質量部以下含有することにより、熱処理後の膜の耐熱性、耐薬品性および機械特性を維持しつつ、感光性を付与することができる。(C)成分は、好ましくは7~32質量部、より好ましくは10~30質量部、さらに好ましくは15~25質量部である。
【0056】
ネガ型感光性樹脂組成物
ネガ型感光性樹脂組成物とする場合、上記の(C)成分の中で、高感度で微細加工性の観点から、光重合開始剤(C2)と光重合性化合物(C3)を含有することが好ましい。さらに増感剤などを必要に応じて含むことができる。
【0057】
光重合開始剤(C2)としては、ベンゾフェノン類、ベンジリデン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾイン類、メルカプト類、グリシン類、オキシム類などが挙げられる。
【0058】
光重合開始剤(C2)(以下、(C2)成分と称することがある)として、オキシム類が、高い残膜率と現像残渣抑制の観点から好ましい。さらに好ましいものとしては、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、ビス(A-イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、“IRGACURE”(登録商標)OXE01(商品名、BASFジャパン(株)製)、“IRGACURE”(登録商標)OXE02(商品名、BASFジャパン(株)製)、アデカアークルズNCI-831E(商品名、株式会社ADEKA製)である。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて含有することができる。
【0059】
光重合性化合物(C3)としては、エチレン性不飽和結合を2個以上有するモノマーが現像後残膜率向上の点で好ましい。例としてエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートトリエチレングリコールジメタクリレートテトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、1,3-ジアクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、1,3-ジメタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、N,N-メチレンビスアクリルアミド、“ブレンマー”(登録商標)PDBE-250(商品名、日油株式会社製)、ライトエステルBP-6EM(商品名、共栄社化学(株)製)、AH-600(商品名、共栄社化学(株)製)、AT-600(商品名、共栄社化学(株)製)、UA-306H(商品名、共栄社化学(株)製)、UA-306T(商品名、共栄社化学(株)製)、ライトアクリレートDCP-A(商品名、栄社化学(株)製)、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート、などが挙げられる。 これらのうち“ブレンマー”(登録商標)PDBE-250(商品名、日油株式会社製)、ライトエステルBP-6EM(商品名、共栄社化学(株)製)、AH-600(商品名、共栄社化学(株)製)、AT-600(商品名、共栄社化学(株)製)、UA-306H(商品名、共栄社化学(株)製)、UA-306T(商品名、共栄社化学(株)製)、ライトアクリレートDCP-A(商品名、共栄社化学(株)製)、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレートなどが現像後残膜率向上の点で好ましい。これらは単独または2種類以上を組み合わせて含有させることができる。
【0060】
ネガ型感光性樹脂組成物において、(A)成分100質量部に対して、(C2)成分を10~20質量部含有することが好ましい。(C2)成分を10質量部以上とすることにより、高い残膜率が得られ、20質量部以下含有することにより、現像残渣を抑制できる。ネガ型感光性樹脂組成物において、(A)成分100質量部に対して、光重合性化合物(C3)(以下、(C3)成分と称することがある)を50~90質量部含有することが好ましい。(C3)成分を50質量部以上とすることにより、高い残膜率が得られ、90質量部以下含有することにより、現像残渣を抑制できる。
【0061】
ネガ型感光性樹脂組成物の場合には、上記の通り(C)成分が(C2)成分と(C3)成分を含有し、さらに(B)成分を(A)成分100質量部に対して2~20質量部含有することが好ましい。(B)成分を2質量部以上とすることにより、現像残渣を抑制でき、(B)成分を20質量部以下とすることにより、高い残膜率が得られる。
【0062】
樹脂(A)
本発明において、樹脂(A)はアルカリ可溶性樹脂(A1)であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A1)としては、フェノール樹脂、アクリル樹脂、カルド樹脂、シクロオレフィン樹脂、シロキサン樹脂、アミドイミド樹脂などがある。
【0063】
また、樹脂(A)が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0064】
ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種以上の樹脂について説明する。
【0065】
ポリイミドはイミド環を有するものであれば、特に限定されない。またポリイミド前駆体は、脱水閉環することによりイミド環を有するポリイミドとなる構造を有していれば、特に限定されず、ポリアミド酸やポリアミド酸エステルなどを含有することができる。ポリベンゾオキサゾールはオキサゾール環を有するものであれば、特に限定されない。ポリベンゾオキサゾール前駆体は、脱水閉環することによりベンゾオキサゾール環を有するポリベンゾオキサゾールとなる構造を有していれば、特に限定されず、ポリヒドロキシアミドなどを含有することができる。
【0066】
ポリイミドは一般式(2)で表される構造単位を有し、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は下記一般式(2)で表される構造単位を有し、ポリベンゾオキサゾールは一般式(4)で表される構造単位を有する。これらを2種以上含有してもよいし、一般式(2)で表される構造単位、一般式(3)で表される構造単位、一般式(4)で表される構造単位を共重合した樹脂を含有してもよい。
【0067】
【化3】
【0068】
一般式(2)中、Vは炭素数4~40の4~10価の有機基、Wは炭素数4~40の2~8価の有機基を表す。aおよびbは、それぞれ0~6の整数を表す。RおよびRは水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を表し、複数のRおよびRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
【化4】
【0070】
一般式(3)中、XおよびYは、それぞれ独立に炭素数4~40の2~8価の有機基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1~20の1価の有機基を表す。cおよびdは、それぞれ0~4の整数、eおよびfは、それぞれ0~2の整数を表す。
【0071】
【化5】
【0072】
一般式(4)中、Tは、炭素数4~40の2価の有機基であり、Uは、炭素数4~40の4価の有機基を表す。
【0073】
(A)成分にアルカリ可溶性を持たせるために、一般式(2)はa+b>0であることが好ましい。また、一般式(3)はc+d+e+f>0であることが好ましい。一般式(3)において、ポリイミド前駆体の場合は、一般式(3)中のX、Yは芳香族基を有することが好ましい。さらには、一般式(3)中のXは芳香族基を有し、e>2であって、芳香族アミド基のオルト位にカルボキシ基またはカルボキシエステル基を有し、脱水閉環することによりイミド環を形成する構造となる。
【0074】
一般式(3)において、ポリベンゾオキサゾール前駆体の場合は、一般式(3)中のXは芳香族基を有し、d>0であって、芳香族アミド基のオルト位にヒドロキシル基を有し、脱水閉環することによりベンゾオキサゾール環を形成する構造となる。
【0075】
(A)成分における、一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で表される構造単位の繰り返し数nは、5~100,000であることが好ましく、10~100,000であることがより好ましい。
【0076】
(A)成分は、一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で表される構造単位に加えて、他の構造単位を有してもよい。他の構造単位としては、例えば、カルド構造、シロキサン構造などが挙げられるが、これらに限定されない。この場合、一般式(2)または一般式(3)で表される構造単位を、主たる構成単位とすることが好ましい。ここで主たる構成単位とは全構造単位数のうち一般式(2)、一般式(3)または一般式(4)で表される構造単位を50モル%以上有することをいい、70モル%以上有することがより好ましい。
【0077】
上記一般式(2)中、V-(R、上記一般式(3)中、(OH)-X-(COORおよび上記一般式(4)中のTは酸の残基を表す。Vは炭素数4~40の4価~10価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。XおよびTは炭素数4~40の2価~8価の有機基であり、なかでも芳香族環、または脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。
【0078】
酸の残基としては、ジカルボン酸残基の例としてテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9-ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸などの残基、トリカルボン酸残基の例としてトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸などの残基、テトラカルボン酸残基の例としてピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンおよび下記一般式(5)に示した構造の芳香族テトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などの残基を挙げることができるが、これらに限定されない。(A)成分は、これらを2種以上有してもよい。
【0079】
【化6】
【0080】
式中、R17は酸素原子、C(CF、C(CHまたはSOを表す。R18およびR19は水素原子、または水酸基を表す。
【0081】
これらの酸は、そのまま、あるいは酸無水物、ハロゲン化物、活性エステルとして使用できる。
【0082】
上記一般式(2)中のW-(R、上記一般式(3)中の(OH)-Y-(COORおよび上記一般式(4)中のUはジアミンの残基を表す。W、YおよびUは炭素数4~40の2~8価の有機基であり、なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数4~40の有機基が好ましい。
【0083】
ジアミンの残基としては、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン残基、3-スルホン酸-4,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのスルホン酸含有ジアミン残基、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン残基、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミン残基や、これらの芳香族環の水素原子の一部を、炭素数1~10のアルキル基やフルオロアルキル基、ハロゲン原子などで置換した化合物の残基、2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン(グアナミン)、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン(アセトグアナミン)、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(ベンゾグアナミン)などの含窒素複素芳香族環を有するジアミン残基、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(p-アミノフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(p-アミノフェネチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,7-ビス(p-アミノフェニル)-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサンなどのシリコーンジアミン残基、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンなどの脂環式ジアミン残基および下記一般式(6)に示した構造のジアミン残基などが挙げられる。(A)成分はこれらを2種以上有してもよい。
【0084】
【化7】
【0085】
式中、R20は酸素原子、C(CF、C(CHまたはSOを表す。R21~R24はそれぞれ独立に水素原子、または水酸基を表す。
【0086】
その中で、アルカリ現像性や、(A)成分およびその硬化物の透過率を向上させる観点から、(A)成分は、下記一般式(7)に示した構造のジアミン残基を少なくとも1つ以上含有することが好ましい。
【0087】
【化8】
【0088】
式中、R20は酸素原子、C(CF、C(CHまたはSOを表す。R21~R22はそれぞれ独立に水素原子、または水酸基を表す。
(A)成分の末端を、酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸により封止することで、主鎖末端に酸性基を有する樹脂を得ることができる。酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸としては公知のものを使用してもよく、複数使用してもよい。
【0089】
上記モノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸などの末端封止剤の含有量は、(A)成分を構成する酸成分およびアミン成分の総和100モル%に対して、2~30モル%が好ましい。
【0090】
(A)成分は、質量平均分子量が10,000以上100,000以下であることが好ましい。質量平均分子量が10,000以上であれば、硬化後の硬化物の機械特性を向上させることができる。より好ましくは質量平均分子量が20,000以上である。一方、質量平均分子量が100,000以下であれば、各種現像液による現像性を向上させることができ、さらに質量平均分子量が50,000以下であれば、アルカリ溶液による現像性を向上させることができるため好ましい。
【0091】
質量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(Waters2690-996;日本ウォーターズ(株)製)を用いて確認できる。例えば展開溶剤をN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと省略する場合がある)、として測定し、ポリスチレン換算で求めることができる。
【0092】
界面活性剤、溶剤
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、基板との濡れ性を向上させたり、塗布膜の膜厚均一性を向上させたりする目的で、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、市販の化合物を用いることができる。具体的にはシリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニングシリコーン社のSHシリーズ、SDシリーズ、STシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越シリコーン社のKPシリーズ、日本油脂社のディスフォームシリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、大日本インキ工業社の“メガファック”(登録商標)シリーズ、住友スリーエム社のフロラードシリーズ、旭硝子社の“サーフロン”(登録商標)シリーズ、“アサヒガード”(登録商標)シリーズ、新秋田化成社のEFシリーズ、オムノヴァ・ソルーション社のポリフォックスシリーズなどが挙げられる。アクリル系および/またはメタクリル系の重合物から得られる界面活性剤としては、共栄社化学社のポリフローシリーズ、楠本化成社の“ディスパロン”(登録商標)シリーズなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
界面活性剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.001質量部以上1質量部以下が好ましい。上述の範囲とすることで、気泡やピンホールなどの不具合を生じることなく、樹脂組成物と基板との濡れ性や塗布膜の膜厚均一性を高めることができる。
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有してもよい。溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、N,N‐ジメチルイソ酪酸アミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、1,1,3,3-テトラメチルウレアなどの極性の非プロトン性溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートなどのエステル類、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0095】
溶剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、組成物を溶解させるため、100質量部以上含有することが好ましく、膜厚1μm以上の塗膜を形成させるため、1,500質量部以下含有することが好ましい。
【0096】
感光性樹脂組成物の粘度は、2~5,000mPa・sが好ましい。粘度が2mPa・s以上となるように固形分濃度を調整することにより、所望の膜厚を得ることが容易になる。一方粘度が5,000mPa・s以下であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。このような粘度を有する樹脂組成物は、例えば固形分濃度を5~60質量%にすることで容易に得ることができる。ここで、固形分濃度とは溶剤以外の成分を言う。粘度測定は市販のE型粘度計により測定するとよい。
【0097】
硬化物
本発明の硬化物は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物である。
【0098】
加熱処理をして熱架橋反応を進行させることにより感光性樹脂組成物を硬化させればよい。架橋により、耐熱性および耐薬品性を向上することができる。この加熱処理の方法は、段階的に昇温する方法や、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する方法を選択できる。前者の一例として、130℃、200℃で各30分ずつ熱処理する方法が挙げられる。後者の一例として室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0099】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化物のパターンを形成する方法について説明する。
【0100】
まず、本発明の感光性樹脂組成物を基板に塗布する。基板としては、シリコンウエハ、セラミックス類、ガリウムヒ素、有機系回路基板、無機系回路基板、シリコンウエハとエポキシ樹脂などの封止樹脂の複合基板、封止樹脂基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものなどが挙げられるが、これらに限定されない。塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1~150μmになるように塗布される。
【0101】
次に樹脂組成物を基板上に塗布した基板を乾燥して、樹脂膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃~150℃の範囲で1分間~数時間行うことが好ましい。
【0102】
次に、この樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0103】
パターンを形成するには、露光後、現像液を用いて、ポジ型の場合は露光部を、ネガ型の場合は未露光部を現像する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の溶液が好ましい。
【0104】
現像後、加熱処理をして熱架橋反応を進行させることにより樹脂膜を硬化させて硬化物である硬化膜を得る。架橋により、耐熱性および耐薬品性を向上することができる。この加熱処理の方法は、段階的に昇温する方法や、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間~5時間実施する方法を選択できる。前者の一例として、130℃、200℃で各30分ずつ熱処理する方法が挙げられる。後者の一例として室温より400℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0105】
本発明の半導体装置は本発明の硬化物を具備する。半導体装置の構成部材は、一般的に、半導体素子と封止部材(封止層)とを含む。半導体素子は、代表的に、半導体チップ(Si、SiC、GaN)、Cu、Niめっき、Agめっき、Auめっき、Au/Pd/Niメッキ、半田、焼結銀、焼結銅、Alワイヤ、Auワイヤ、及びセラミック基板(アルミナ、アルミナジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素)などの無機材料から構成される。
【0106】
上記半導体装置において、各構成部材の間にプライマー層として本願発明に係る感光性樹脂組成物を用いた硬化物を形成することによって、構成部材間の密着性を容易に高めることができる。
【0107】
図1は、半導体装置の一実施形態を示す模式的断面図である。図1に示す半導体デバイスは、ダイパット1aと、半導体素子2と、プライマー層3と、リード1bと、ワイヤ4と、樹脂封止層5とを有し、プライマー層3は本願発明に係る感光性樹脂組成物から形成される。図1に示すように、樹脂封止層5と接する基板1の半導体素子搭載面(リード1b、半導体素子2を搭載したダイパット1aの表面)に、プライマー層3が設けられていることにより、各部材間の密着性を容易に高めることができる。
【0108】
一実施形態において、半導体装置の製造方法は、少なくとも、半導体素子を搭載した基板の表面に、本願発明に係る感光性樹脂組成物を塗布し乾燥させてプライマー層を形成する工程と、上記プライマー層の上に樹脂封止層を形成する工程とを有する。
【0109】
上記実施形態において、上記プライマー層は、作業性の観点から、本願発明に係る感光性樹脂組成物を使用することが好ましい。上記プライマー層は、上記感光性樹脂組成物を所定の箇所に塗布し、塗膜を乾燥することによって得ることができる。ここに記載したような感光性を付与することで、プライマー層のパターン形成が可能となる。パターン形成の方法は前述したとおりである。
【0110】
樹脂封止層は、当技術分野で周知の封止材を用いて形成されたものであってよい。例えば、樹脂封止材は液状又は固体のエポキシ系樹脂組成物であってよい。樹脂封止層は、例えば、樹脂封止材を用いてトランスファー成形によって形成することができる。
【0111】
他の実施形態において、半導体装置の製造方法は、例えば、同一構造の配線が複数形成された半導体基板に、本願発明に係る感光性樹脂組成物を塗布及び硬化して硬化物を形成する工程と、必要に応じて上記硬化物上に上記半導体基板上の電極と電気的に導通する再配線を形成する工程とを有する。また、上記工程に加えて、必要に応じて再配線上又は硬化物上に上記実施形態の感光性樹脂組成物を用いて保護層を形成する工程を有してよい。さらに、上記工程に加えて、必要に応じて上記硬化物に外部電極端子を形成する工程、次いで、必要に応じてダイシングする工程を有してもよい。
【0112】
また、本願発明の有機EL表示装置は本発明の硬化物を具備する。
【0113】
有機EL発光装置1は、図2の側面断面図に示すように、ガラスまたはプラスチックフィルムからなる基板11と、少なくとも第一電極13、第二電極18、有機EL発光体16及び画素分割層19から構成される有機EL発光体部位20を具備する構成である。
【0114】
本願発明にかかる有機EL表示装置1について詳述する。図2では、ガラスまたはプラスチックフィルムからなる基板11の表面22上に有機EL発光体部位20を配する。この場合、薄膜トランジスタ(以下、TFTと称することがある。)等の有機EL発光体16の発光を制御する駆動素子30が設けられる場合がある。また、金属配線を設けることもある。必要に応じて、平坦化層12を設けることで、金属配線や駆動素子30全面を覆い駆動素子30等が形成された後の凹凸を覆い保護や平坦化することができる。
【0115】
また、平坦化層12の基板側11と反対側の表面上に、第一電極13を一定の配線パターン形状で配する。この第一電極13は平坦化層12の一部に形成されたコンタクトホール25内を通じて駆動素子30と電気的接続を保持する。この配された第一電極13は有機EL発光体の陽極に相当する。
【0116】
さらに、第一電極13の一部を覆う形状で、平坦化層12の基板11側と反対側の表面上に画素分割層19を配する。これにより、後述する有機EL発光体16を画素毎に区画することができるとともに、第一電極13と後述する第二電極18との間の電気的短絡を防止することが出来できる。
【0117】
さらに、第一電極13上に、正孔注入層14/正孔輸送層15/有機EL発光体16/電子輸送層17から層が形成され、さらにその上に第二電極18を一定の配線パターン形状で配する。第二電極18は有機EL発光体の陰極に相当する。有機EL発光体16と駆動用の配線とは、平坦化層12に形成されたコンタクトホール25を介して接続することが好ましい。
【0118】
このように、第一電極13に反射電極、第二電極18に透明電極を用いることにより、ガラス基板11とは反対側の方向へ有機EL発光体16から発光光24を放出するトップエミッション型の有機EL発光装置1が構成される。
画素分割層19や平坦化層12は、本願発明に係る感光性樹脂組成物の硬化物を好適に使用することができる。これにより現像残渣を低減に効果がある。
【0119】
画素分割層19や平坦化層12は、大判基板に薄い膜を均一に形成することができるスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などのウェットコーティング法で塗布することが出来できる。画素分割層19の膜厚は、第一電極13の膜厚の10倍以上とすることが好ましい。また、後工程において第二電極上を覆う構造物も支え、発光装置の強度にも影響するため、適宜階段状に作製するなどの設計も有効である。
【0120】
有機EL発光体部位20で形成される発光画素の範囲は、対向配置された第一電極13と第二電極18とが交差し重なる範囲である。発光画素の平面形状は、例えば矩形でも円形でもよく、画素分割層の形状によっても容易に変化させることができる。
【0121】
また、赤、緑、青色領域にそれぞれ発光ピーク波長を有する有機EL発光体16が配列したもの、もしくは全面に白色の有機EL発光体16を作製して別途カラーフィルタと組み合わせて使用するようなものをカラーディスプレイと呼ぶ。通常、表示される赤色領域の光のピーク波長は560~700nm、緑色領域は300~560nm、青色領域は420~500nmの範囲である。
【0122】
本実施形態における第一電極13または第二電極18はトップエミッションまたはボトムエミッションの形態から光透過性または光反射性の電極を選択することが好ましい。本実施形態における第一電極13は、トップエミッション型の場合には光反射性の導電膜、ボトムエミッション型の場合には光透過性の導電膜であることが好ましい。本実施形態における第二電極18は、ボトムエミッション型の場合には光反射性の導電膜、トップエミッション型の場合には光透過性の導電膜であることが好ましい。
【0123】
電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、有機EL発光体16の消費電力の観点からは低抵抗であることが望好ましい。例えば、300Ω/□以下のITOであれば素子電極として機能するが、10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、低抵抗品を使用することが特に望好ましい。電極の厚みは透過率や抵抗値などの特性に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100~300nmの間で用いることができる。
【0124】
例えば、透明な酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、あるいは金、銀、マグネシウム、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性ポリマーなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0125】
光学的に第一電極13と第二電極18は対照的な特性が求められる。第二電極18に電子を効率よく注入できる陰極としての機能が求められる場合、電極の安定性を考慮して金属材料が多く用いられる。なお、第一電極13を陰極に、第二電極18を陽極にすることも可能である。
【0126】
陰極として用いる場合の材料としては、Al、Mg、またはAgなどが知られており、有機EL発光体16と同様に真空成膜法により形成されるが、特に限定されない。
【0127】
本実施形態における有機EL発光体部位20は図2に示すように、基板11側から正孔注入層14/正孔輸送層15/有機EL発光体16/電子輸送層17の形態を例示したがこれに限定されるものではない。正孔輸送層/発光層/電子輸送層、発光層/電子輸送層のいずれであってもよい。
【0128】
各層は、公知の方法で形成することができる。例えば、マスク蒸着法やインクジェット法によって形成することができる。各層の厚みは、各層材料の抵抗値やEL発光の取り出し効率への影響を考慮して一般的に1~200nmの間から選ばれる。
【0129】
有機EL発光体16では、注入された電子と正孔とが再結合し発光する。有機EL発光体は、単一層、複数層のどちらでもよく、ホスト材料とドーパント材料との混合物で構成されていても、ホスト材料単独で構成されていても、いずれでもよい。すなわち、有機EL発光体16において、単一の材料で構成され発光してもよいし、ホスト材料もしくはドーパント材料のみが発光してもよいし、ホスト材料とドーパント材料がともに発光してもよい。電気エネルギーを効率よく利用し、高色純度の発光を得るという観点から、有機EL発光体16は、ホスト材料とドーパント材料の混合物からなることが好ましい。ホスト材料とドーパント材料はそれぞれ2種以上の材料を含有してもよい。
【0130】
正孔輸送層15は、正孔輸送材料の一種または二種以上を積層または混合する方法、もしくは、正孔輸送材料と高分子結着剤の混合物を用いる方法により形成される。また、正孔輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して正孔輸送層を形成してもよい。正孔輸送材料は、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、第一電極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
【0131】
また、本発明の電子部品は、本発明の硬化膜を具備する。本発明の感光性樹脂組成物を用いた、電子部品の1種である薄膜インダクタへの応用例について図面を用いて説明する。図3は絶縁膜を有する薄膜インダクタのコイル部分の断面図である。図3に示すように、基板31には絶縁膜32、その上にパターンとして絶縁膜33が形成される。基板31としてはフェライト等が用いられる。本発明の樹脂組成物は絶縁膜32と絶縁膜33の両方またはいずれかに使用してもよい。このパターンの開口部に金属(Cr、Ti等)膜4が形成され、この上に金属配線(Ag、Cu等)35がめっき形成される。金属配線35(Ag、Cu等)はスパイラル上に形成されている。上記の絶縁膜32~金属配線35を形成する工程を複数回繰り返し、積層させることでコイルとしての機能を持たせることができる。最後に金属配線35(Ag、Cu等)は金属配線36(Ag、Cu等)によって電極37に接続され、封止樹脂38により封止される。絶縁層の層数には上限はないが、2~10層のものが好ましい。
【0132】
当業者には容易に理解されるように、本発明はこれらの実施態様に限られるものではない。例えば、各実施態様において説明した部材や構成等を、適宜その組合せを変更して適用することや、公知技術から当業者が容易に想定しうる部材や構成等に適宜置換して適用することは、本発明の一態様と理解されるべきである。
【実施例0133】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0134】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
<感光性樹脂組成物被膜の作製>
8インチシリコンウエハ上に、感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)をプリベーク後の膜厚が2μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(東京エレクトロン(株)製塗布現像装置ACT-8)を用いて、120℃で2分プリベークすることにより、感光性樹脂組成物被膜を得た。
【0135】
<膜厚の測定方法>
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率1.629で測定を行った。
【0136】
<露光>
露光機i線ステッパー(ニコン(株)製、NSR-2005i9C)を用い、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20,25,30,50,100μmのライン&スペースおよび正方形パターンの切られたレチクルをセットし、感光性樹脂組成物被膜に対して、露光量5mJ/cm(i線換算)刻みで露光を行った。
【0137】
<現像>
露光後の感光性樹脂組成物被膜に対して、東京エレクトロン(株)製塗布現像装置ACT-8の現像装置を用い、2.38%テトラメチルアンモニウム水溶液にて80秒間現像後、純水リンス処理し、現像後被膜を得た。
【0138】
<残膜率の測定>
残膜率は以下の式に従って算出した。
残膜率(%)=現像後の膜厚÷プリベーク後の膜厚×100。
【0139】
<現像残渣の評価方法>
プリベーク後の膜厚が2μmとなるように形成された感光性樹脂組成物被膜をi線ステッパーを用いて30mJ/cm露光し、2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液で80秒間現像後、純粋リンスし、パターン形成被膜を得た。一辺が10μmの正方形パターン開口部を光学顕微鏡FDP顕微鏡MX61(オリンパス製)を用いて倍率50倍で観察し、残渣が無い場合○、パターンエッジに残渣がある場合を△、パターンエッジおよび中央に残渣が有る場合を×とした。
【0140】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
<感光性樹脂組成物被膜の作製>
8インチシリコンウエハ上に、感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)をプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(東京エレクトロン(株)製塗布現像装置ACT-8)を用いて、100℃で3分プリベークすることにより、感光性樹脂組成物被膜を得た。
【0141】
<膜厚の測定方法>
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率1.629で測定を行った。
【0142】
<露光>
露光機のマスクアライナ(キヤノン(株)製、PLA-501F)を用い、5,10,15,20,25,30,50,100μmのライン&スペースおよび正方形パターンの切られたレチクルをセットし、感光性樹脂組成物被膜に対して、露光量200mJ/cm(i線換算)で露光を行った。
【0143】
<現像>
露光後の感光性樹脂組成物被膜に対して、東京エレクトロン(株)製塗布現像装置ACT-8の現像装置を用い、2.38%テトラメチルアンモニウム水溶液にて90秒間現像後、純水リンス処理し、現像後被膜を得た。
【0144】
<残膜率の測定>
残膜率は以下の式に従って算出した。
残膜率(%)=現像後の膜厚÷プリベーク後の膜厚×100。
【0145】
<現像残渣の評価方法>
プリベーク後の膜厚が10μmとなるように形成された感光性樹脂組成物被膜をマスクアライナを用いて200mJ/cm露光し、2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液で90秒間現像後、純粋リンスし、パターン形成被膜を得た。一辺が30μmの正方形パターン開口部を光学顕微鏡FDP顕微鏡MX61(オリンパス製)を用いて倍率50倍で観察し、残渣が無い場合○、パターンエッジに残渣がある場合を△、パターンエッジおよび中央に残渣が有る場合を×とした。
【0146】
<合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成>
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、以下、BAHFとする)18.3g(0.05モル)をアセトン100mLおよびプロピレンオキシド(東京化成(株)製)17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成(株)製)20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間撹拌し、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0147】
得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素(和光純薬(株)製)を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記一般式(8)で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
【0148】
【化9】
【0149】
<合成例2 ポリイミド前駆体(A-1)の合成>
乾燥窒素気流下、1Lフラスコ中に、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以降ODPAと呼ぶ)31.0g(0.10モル)をN-メチルピロリドン(以降NMPと呼ぶ)500gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(α)45.35g(0.075モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(以降SiDAと呼ぶ)1.24g(0.005モル)をNMP50gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。次に末端封止剤として3-アミノフェノール(以降MAPと呼ぶ)4.36g(0.04モル)をNMP5gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール32.39g(0.22モル)をNMP50gで希釈した溶液を投入した。投入後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、アルカリ可溶性樹脂であるポリイミド前駆体(A-1)を得た。
【0150】
<合成例3 ポリベンゾオキサゾール前駆体(A―2)合成>
乾燥窒素気流下、500mLフラスコ中に、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸12.90g(50mmol)、N-メチルピロリドン75gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル19.9g(100mmol)を滴下し、30分間反応させて、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた500mLのフラスコ中に、N-メチルピロリドン105gを仕込み、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン22.0g(60mmol)と5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物3.28 g(20 mmol)を添加し、攪拌溶解した後、ピリジン7.9g(100mmol)を添加し、温度を0~5℃に保ちながら、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。得られた溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリベンゾオキサゾール前駆体(A-2)を得た。
【0151】
<合成例4 ポリイミド(A-3)の合成>
乾燥窒素気流下、BAHF29.30g(0.08モル)、SiDA1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、3-アミノフェノール(東京化成工業(株)製)3.27g(0.03モル)をNMP80gに溶解させた。ここにODPA31.2g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、60℃で1時間反応させ、次いで180℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、ポリイミド(A-3)を得た。
【0152】
<合成例5 架橋剤(B1―1)の合成>
乾燥窒素気流下、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)、37%ホルムアルデヒド水溶液68.9g(0.85モル)及び10%水酸化ナトリウム水溶液80g(0.2モル)をフラスコに仕込み、40℃で2時間反応させた。次に80℃に昇温し、80℃でさらに0.5時間反応させ、反応終了後、冷却し15%硫酸水溶液をゆっくりと添加し、pHを3.0に調整した。
【0153】
ここで、この反応物は、下層の架橋剤中間体と上層の中和塩および未反応原料などを含む水層部とに分離した。この上層液を除去し、下層液に300gの水を添加・混合し、再度、静置・分離させ、上層液を除去した。系内の脱水処理を行った後の内容液に、メタノールを320g(10モル)、75%燐酸を13g(0.2モル)入れ、常圧で環流が開始されまで内温を上げて行き、アルコキシ化反応を10時間行った。この間、本反応を完結させるため、反応中に生成する水をたえず除去しながら反応を継続させた。10時間の反応終了後、トルエン552g(6モル)を加え、イオン交換水300gを添加し、混合・静置した。
【0154】
この反応物は、架橋剤を含む上層樹脂液と、アルコキシ化反応時に触媒として用いた燐酸を含む下層水溶液とに分離した。この下層液を除去し、上層液に300gの水を添加・混合し、再度、静置・分離させ、前述と同じ下層液を除去した。その後、減圧下でトルエンを留去し、ガンマブチロラクトン(以下、GBLと呼ぶ場合がある)を4L加え、不揮発分が20%になるよう余分なGBLを加熱減圧留去し、架橋剤(B1-1)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-1)の分子量分布をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(Waters2690-996;日本ウォーターズ(株)製)を用い、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、カラム温度40℃として測定を行った。さらに、Empower3ソフトウェア(Feature Release3;日本ウォーターズ(株)製)を用いて、縦軸に質量分率(%)、横軸にポリスチレン換算の分子量をプロットした分子量分布曲線を作成し、GPCチャートにおける各成分ピークの分子量を照らし合わせ、単量体、2量体、3量体を同定した。チャートの全ピーク部分の総面積を積分により算出し、単量体、2量体、3量体それぞれのピークに相当する領域を積分し、ピーク面積の総和100%に対する比を算出すると、単量体89%、2量体7.3%、3量体3.6%であった。なおチャートにおける各ピークの面積に定義される領域は図4に示すように、略三角形状のピークの両端が質量分率0%の横軸と接している場合は接点を用い(ピークA)、略三角形状のピークが連なっている場合は(ピークB、ピークC)、連なったピーク間の谷から横軸に垂線を下ろして得られる接点を用い、これら接点と分量分布曲線と更に垂線を有する場合は垂線で囲まれた領域を指す。
【0155】
<合成例6 架橋剤(B1―2)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル-1)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(本州化学工業(株)製、TrisP-PA)848g(2.0モル)を用いた以外は、合成例5と同様に合成し、架橋剤(B1-2)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-2)をGPCにより調べると、単量体90.3%、2量体5.5%、3量体4.1%であった。
【0156】
<合成例7 架橋剤(B1―3)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(メルク(株)製)672.5g(2.0モル)を用いた以外は、合成例5と同様に合成し、架橋剤(B1-3)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-3)をGPCにより調べると、単量体90%、2量体7.6%、3量体2.3%であった。
【0157】
<合成例8 架橋剤(B1―4)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、ビス4-ヒドロキシフェニルスルホン(小西化学(株)製)500.5g(2.0モル)を用いた以外は、合成例5と同様に合成し、架橋剤(B1-4)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-4)をGPCにより調べると、単量体89.5%、2量体8.4%、3量体2.1%であった。
【0158】
<合成例9 架橋剤(B1―5)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、ビス4-ヒドロキシフェニルプロパン(東京化成(株)製)456.6g(2.0モル)を用いた以外は、合成例5と同様に合成し、最後に不揮発分が30%になるよう余分なGBLを加熱減圧留去し、架橋剤(B1-5)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-5)をGPCにより調べると、単量体87.6%、2量体5.4%、3量体6.9%であった。
【0159】
<合成例10 架橋剤(B1―6)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、4,4’,4’’,4’’’-[(1-エチルメチリデン)ジ-4-シクロヘキサニル-1-イリデン]テトラキスフェノール(本州化学工業(株)製、TekP-4HBPA)1149.5g(2.0モル)を用い、GBL4Lの代わりに8L用いた以外は、合成例5と同様に合成し、架橋剤(B1-6)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-6)をGPCにより調べると、単量体88.2%、2量体6.3%、3量体5.4%であった。
【0160】
<合成例11 架橋剤(B1―7)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、4,4’-(9H―フルオレン―9,9―ジイル)ビスフェノール(東京化成(株)製)700.8g(2.0モル)を用いた以外は、合成例5と同様に合成し、架橋剤(B1-7)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-7)をGPCにより調べると、単量体91%、2量体8%、3量体0.9%であった。
【0161】
<合成例12 架橋剤(B1―8)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、4,4’シクロヘキシリデンビスフェノール(東京化成(株)製)536.7g(2.0モル)を用いた以外は、合成例5と同様に合成し、最後に不揮発分が25%になるよう余分なGBLを加熱減圧留去し、架橋剤(B1-8)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-8)をGPCにより調べると、単量体88.9%、2量体6.5%、3量体4.5%であった。
【0162】
<合成例13 架橋剤(B1―9)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、p-クレゾール(東京化成(株)製)216.3g(2.0モル)を用い、GBL4Lの代わりに2Lを用いた以外は、合成例5と同様に合成し、架橋剤(B1-9)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-9)をGPCにより調べると、単量体91.5%、2量体3.2%、3量体4.8%であった。
【0163】
<合成例14 架橋剤(B1―10)の合成>
合成例5の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP-HAP)612.7g(2.0モル)の代わりに、4-tert―ブチルフェノール(東京化成(株)製)300.4g(2.0モル)を用い、GBL4Lの代わりに3Lを用いた以外は、合成例5と同様に合成し、架橋剤(B1-10)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-10)をGPCにより調べると、単量体90.2%、2量体6.1%、3量体3.7%であった。
【0164】
<合成例15 架橋剤(B1―11)の合成>
合成例5と同様に合成し、最後に不揮発分が50%になるよう余分なGBLを加熱減圧留去し、架橋剤(B1-11)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-11)をGPCにより調べると、単量体80%、2量体7.3%、3量体11.5%であった。
【0165】
<合成例16 架橋剤(B1―12)の合成>
合成例5と同様に合成し、最後に不揮発分が40%になるよう余分なGBLを加熱減圧留去し、架橋剤(B1-12)のGBL溶液を得た。得られた架橋剤(B1-12)をGPCにより調べると、単量体85.1%、2量体3.9%、3量体10.6%であった。
【0166】
<合成例17 架橋剤(B1―13)の合成>
架橋剤HMOM-TPHAP(本州化学工業(株)製)を島津製作所(株)製の高速液体クロマトグラフィーで、カラムにODSを、展開溶媒にアセトニトリル/水=70:30を用い、検出器波長254nmで測定した。検出されたピークの総面積を100%とし、各ピークの面積比から各構造成分の割合を求めたところ、主成分純度78%、2量体16%であることが判った。次にこの架橋剤HMOM-TPHAP(本州化学工業(株)製)の20%乳酸エチル溶液をエバポレーターで濃縮し、50%乳酸エチル溶液にした。この溶液を2日間放置し、白色の結晶である架橋剤(B1-13)を得た。得られた架橋剤(B1-13)をGPCにより調べると、単量体91%、2量体6%、3量体0.3%であった。
【0167】
<合成例18 キノンジアジド化合物(C1-1)の合成>
乾燥窒素気流下、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル-1)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(本州化学工業(株)製、以下TrisP-PAとする)、21.22g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリド(東洋合成(株)製、NAC-5)33.5g(0.125モル)を1,4-ジオキサン450gに室温において溶解させた。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン12.65gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後40℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿を濾過で集め、さらに1%塩酸水1Lで洗浄した。その後、さらに水2Lで2回洗浄した。この沈殿を真空乾燥機で乾燥し、下記一般式(9)で表されるキノンジアジド化合物(C1-1)を得た。得られたキノンジアジド化合物(C1-1)5mgを液体クロマトグラフ用アセトニトリル(和光純薬(株)製)に溶解させて5gの溶離液アセトニトリル溶液を調製し、(株)島津製作所製高速液体クロマトグラフ(HPLC)用カラム(Shim-pack VP-ODS150mmL×4.6mmφ)を用いて、アセトニトリル:0.01wt%燐酸水溶液= 9:1、UV検出器の測定波長254nm、流速1.0 mL/min、カラム温度40.0℃の条件で測定を行った。得られた各エステル体ピークの面積比から算出すると、モノエステル体5%、ジエステル体29%、トリエステル体66%であった。
【0168】
【化10】
【0169】
<合成例19 キノンジアジド化合物(C1-2)の合成>
乾燥窒素気流下、TekP-4HBPA(商品名、本州化学工業(株)製)28.83g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド33.5g(0.125モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記一般式(10)で表されるキノンジアジド化合物(C1-2)を得た。得られたキノンジアジド化合物(C1-2)を液体クロマトグラフィーにより調べると、モノエステル体6%、ジエステル体28%、トリエステル体40%、テトラエステル体25%であった。
【0170】
【化11】
【0171】
<合成例20 キノンジアジド化合物(C1-3)の合成>
乾燥窒素気流下、TrisP―HAP (商品名、本州化学工業(株)製)15.31g(0.05モル)と5―ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド23.1g(0.085モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン8.6gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記一般式(11)で表されるキノンジアジド化合物(C1-3)を得た。得られたキノンジアジド化合物(C1-3)を液体クロマトグラフィーにより調べると、モノエステル体21%、ジエステル体47%、トリエステル体32%、テトラエステル体0%であった。
【0172】
【化12】
【0173】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
[実施例1~23、比較例1~3]
合成例2~4で得られた樹脂(A-1)~(A-3)100質量部に(B)架橋剤(B1-1)~(B1-13)、(C)感光剤(C1-1)~(C1-3)を表1に示す質量部で混合し、その他成分としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン界面活性剤400質量ppm、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とGBLを60:40の比率となるように加えて攪拌、溶解した。得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、総固形分濃度が15%の感光性樹脂組成物A~W、a、b、cを作製した。これらの感光性樹脂組成物の特性を上記評価方法により測定した。測定結果を表1、表2に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
【表2】
【0176】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
[実施例24~47、比較例4~6]
合成例2~4で得られた樹脂(A-1)~(A-3)100質量部に(B)架橋剤(B1-1)~(B1-13)、(C2)光開始剤(C2-1)、(C3)光重合性化合物(C3-1)を表3に示す質量部で混合し、溶剤としてGBL加えて攪拌、溶解した。得られた溶液を0.45μmφのフィルターでろ過し、総固形分濃度が50%の感光性樹脂組成物N-A~N-X、N-a、N-b、N-cを作製した。これらの感光性樹脂組成物の特性を上記評価方法により測定した。測定結果を表3、表4に示す。
【0177】
【表3】
【0178】
【表4】
【0179】
表3、表4に示した名称C2-1とC3-1は、それぞれ以下の意味である。
C2-1:アデカアークルズNCI-831E(商品名、株式会社ADEKA製)
C3-1:ライトエステルBP-6EM(商品名、共栄社化学(株)製)
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、半導体素子等の表面保護膜、電子部品の層間絶縁膜、有機発光素子などの表示装置の絶縁層や薄膜トランジスタ基板の平坦化膜、回路基板の配線保護絶縁膜、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化膜、および回路基板用ソルダーレジストなどに好適に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0181】
1a:ダイパット
1b:リード
2:半導体素子
3:プライマー層
4:ワイヤ
5:樹脂封止層
10:有機EL発光装置
11:基板
12:平坦化膜
13:第一電極
14:正孔注入層
15:正孔輸送層
16:有機EL発光体
17:電子輸送層
18:第二電極
19:画素分割層
20:発光体構造部位
21:ガラス基板の表面部
22:ガラス基板の反対側の表面部
23:樹脂被覆膜(SS)
24:光取り出し方向
25:コンタクトホール
30:駆動素子
31:基板
32:絶縁膜
33:絶縁膜
34:金属(Cr、Ti等)膜
35:金属配線(Ag、Cu等)
36:金属配線(Ag、Cu等)
37:電極
38:封止樹脂
図1
図2
図3
図4