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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000526
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】水平循環式駐車装置とその制御方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
E04H6/18 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098778
(22)【出願日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2022098918
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小野 右季
(57)【要約】
【課題】格納スペースに隣接するにもかかわらず、幅又は長さのどちらかがパレットより短いデッドスペースを有効利用して、駐車台数を増加し、かつ入出庫時の円滑性を向上させる。
【解決手段】水平循環式駐車装置100が、複数の駆動セル4と複数の中継セル20と制御装置30とを備える。複数の駆動セル4は、幅方向の行及び長さ方向の列に整列して位置し、パレットを二方向の一方又は両方に移動させる。複数の中継セル20は、幅又は長さのどちらかがパレットより短いデッドスペースZに設置され、パレットを二方向の一方のみに移動させる。制御装置30は、駆動セル及び中継セルを制御する。複数の中継セルは、少なくとも1つの行又は列において、駆動セルにそれぞれ載る複数のパレットを一端側に詰めて移動して他端側に空セルができるように設定されている。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を格納する格納フロアにおいて、車両を載せた複数のパレットを水平面内で前記パレットの幅方向及び長さ方向の二方向に移動させて前記車両の入出庫を行う水平循環式駐車装置において、
前記幅方向の行及び前記長さ方向の列に整列して位置し、前記パレットを前記二方向の一方又は両方に移動させる複数の駆動セルと、
幅又は長さのどちらかが前記パレットより短いデッドスペースに設置され、前記パレットを前記二方向の一方のみに移動させる複数の中継セルと、
前記駆動セル及び前記中継セルを制御する制御装置と、を備え、
複数の前記中継セルは、少なくとも1つの前記行又は前記列において、複数の前記駆動セルにそれぞれ載る複数の前記パレットをその一端側に詰めて移動することで他端側に前記パレットの載らない前記駆動セルである空セルができるように設定されている、水平循環式駐車装置。
【請求項2】
車両を格納する格納フロアにおいて、車両を載せた複数のパレットを水平面内で前記パレットの幅方向及び長さ方向の二方向に移動させて前記車両の入出庫を行う水平循環式駐車装置において、
前記幅方向の行及び前記長さ方向の列に整列して位置し、前記パレットを前記二方向の一方又は両方に移動させる複数の駆動セルと、
幅又は長さのどちらかが前記パレットより短いデッドスペースに設置され、前記パレットを前記二方向の一方のみに移動させる複数の中継セルと、
前記駆動セル及び前記中継セルを制御する制御装置と、を備え、
少なくとも1つの前記行又は前記列において、両端に位置する前記駆動セルに挟まれた前記中継セルの幅又は長さの合計が単一の前記パレットの幅又は長さより大きく設定されている、水平循環式駐車装置。
【請求項3】
前記制御装置は、複数の前記パレットを前記駆動セルと前記中継セルにより前記幅方向又は前記長さ方向に詰めて移動して、前記パレットの載らない前記駆動セルである空セルを増加させる、請求項1又は2に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項4】
前記中継セルは、幅が前記パレットより短く、前記パレットを前記幅方向のみに移動する横中継セル、又は、長さが前記パレットより短く、前記パレットを前記長さ方向のみに移動する縦中継セルである、請求項1又は2に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項5】
前記横中継セルは、前記駆動セルの間に位置する横間セル、又は、前記幅方向の一端に位置する横端セルであり、
前記縦中継セルは、前記駆動セルの間に位置する縦間セル、又は、前記長さ方向の一端に位置する縦端セルである、請求項4に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記行において、前記横端セルの1つと、すべての前記横間セルの合計幅が単一のパレット幅より大きく設定されている、請求項5に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記列において、前記縦端セルの1つと、すべての前記縦間セルの合計長さが単一のパレット長さより大きく設定されている、請求項5に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項8】
前記中継セルは、前記パレットの下面を支持する中継駆動輪又は中継従動輪と、
前記パレットの位置を検出する位置センサと、を有し、
前記中継駆動輪は、その回転により前記パレットを支持してこれを水平方向に駆動し、
前記中継従動輪は、その回転により前記パレットを支持してこれに従動する、請求項1又は2に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項9】
前記パレットの一部が前記デッドスペースの上面全体を実質的に覆った場合に、隣接する前記駆動セルにより水平に支持して移動できない場合、前記中継セルは、前記中継駆動輪と、前記パレットの水平移動を案内する中継案内ローラとを有する、請求項8に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項10】
前記パレットの一部が前記デッドスペースの上面全体を実質的に覆った場合に、隣接する前記駆動セルにより水平に支持して移動できる場合、前記中継セルは、前記中継駆動輪又は前記中継従動輪の少なくとも一方を有する、請求項8に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項11】
前記パレットの枚数が同一平面内において前記駆動セルの数と等しい、請求項1又は2に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項12】
前記駆動セルに対し平面視で前記幅方向又は前記長さ方向に整列して位置し、前記車両が入出庫する入出庫フロアと前記格納フロアとの間で前記パレットを昇降するリフトを備え、
前記リフトと前記駆動セルの総数が、前記パレットの総数と等しく設定されている、請求項1又は2に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項13】
パレット幅B、パレット長L、隣接する前記パレットの端部間の隙間αが既知で、複数の前記パレットを幅方向又は長さ方向に詰めることが可能な寸法を確保し、反対側に少なくとも1つの前記パレットの載らない前記駆動セルである空セルが形成可能となるように、移動する前記パレットの枚数Nと、静止格納状態で隣接する前記パレットの間のデッドスペース幅又はデッドスペース長を設定する、請求項1又は2に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項14】
前記デッドスペースが、隣接する前記パレットの幅方向又は長さ方向の間にそれぞれ存在する場合であって、移動する前記パレットの枚数Nが既知の場合に、
デッドスペース幅を、BZ≧(B+(N+1)α)/Nに設定し、
デッドスペース長を、LZ≧(L+(N+1)α)/Nに設定する、請求項13に記載の水平循環式駐車装置。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の水平循環式駐車装置の制御方法であって、
複数の前記パレットを前記駆動セルと前記中継セルにより前記幅方向又は前記長さ方向に詰めて移動して、前記パレットの載らない前記駆動セルである空セルを増加させる、水平循環式駐車装置の制御方法。
【請求項16】
パレット幅をB、パレット長をL、隣接する前記パレットの端部間の隙間をαとし、
複数の前記パレットを幅方向に詰めて移動する際の移動量ΔXを、移動しない前記パレットに近い順で、最初の前記パレットの移動量ΔXをBZ-αとし、2番目以降の前記パレットの移動量を順に移動量ΔXを加算した値とし、
複数の前記パレットを長さ方向に詰めて移動する際の移動量ΔYを、移動しない前記パレットに近い順で、最初の前記パレットの移動量ΔYをLZ-αとし、2番目以降の前記パレットの移動量を順に移動量ΔYを加算した値とする、請求項15に記載の水平循環式駐車装置の制御方法。
【請求項17】
パレット幅、パレット長、隣接する前記パレットの端部間の隙間、及び静止格納状態で隣接する前記パレットの間のデッドスペース幅又はデッドスペース長が既知で、複数の前記パレットを幅方向又は長さ方向に詰める場合に、反対側に少なくとも1つの前記パレットの載らない前記駆動セルである空セルを形成するように、移動する前記パレットの枚数を設定する、請求項15に記載の水平循環式駐車装置の制御方法。
【請求項18】
前記格納フロアを複数の領域に区分して、それぞれの領域において、幅方向の移動と長さ方向の移動を、同時かつ排他的に実行する、請求項15に記載の水平循環式駐車装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅又は長さのどちらかがパレットより短いデッドスペースを有する水平循環式駐車装置とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「水平循環式駐車装置」とは、車両(例えば乗用車)を載せたパレットを、水平面内で移動させて車両の入出庫(入庫と出庫)を行う機械式駐車設備である。かかる装置は、例えば特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6009222号公報
【特許文献2】国際公開第2019/229821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水平循環式駐車装置において、車両を格納するフロア(以下、「格納フロア」)には、車両を載せるパレットが幅方向及び長さ方向に整列して配置される。かかるパレットの配置スペースを、以下「格納スペース」と呼ぶ。
【0005】
水平循環式駐車装置では、車両を載せたパレットを、その幅方向に移動する「横送り」と、その長さ方向に移動する「縦送り」との両方が可能な駆動セルが複数用いられる。
各駆動セルは、格納スペースにそれぞれ位置決めされており、平面視でパレットの大きさに相当するフレームと、このフレーム上に設置されたパレット駆動装置とを備える。
【0006】
しかし、複数の格納スペースが幅方向及び長さ方向に整列して配置されるため、格納スペースを設定できない領域が発生する場合がある。この領域は、例えば、柱により間隔を隔てた格納スペース間の中間スペースや、格納フロアの内壁と格納スペースの間の外側スペースなどである。以下、格納スペースに隣接するにもかかわらず、幅又は長さのどちらかがパレットより短い領域を「デッドスペース」と呼ぶ。
【0007】
本発明は上述したデッドスペースを有効利用するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、格納スペースに隣接するにもかかわらず、幅又は長さのどちらかがパレットより短いデッドスペースを有効利用して、駐車台数を増加し、かつ入出庫時の円滑性を向上させることができる水平循環式駐車装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、車両を格納する格納フロアにおいて、車両を載せた複数のパレットを水平面内で前記パレットの幅方向及び長さ方向の二方向に移動させて前記車両の入出庫を行う水平循環式駐車装置において、
前記幅方向の行及び前記長さ方向の列に整列して位置し、前記パレットを前記二方向の一方又は両方に移動させる複数の駆動セルと、
幅又は長さのどちらかが前記パレットより短いデッドスペースに設置され、前記パレットを前記二方向の一方のみに移動させる複数の中継セルと
前記駆動セル及び前記中継セルを制御する制御装置と、を備え、
複数の前記中継セルは、少なくとも1つの前記行又は前記列において、複数の前記駆動セルにそれぞれ載る複数の前記パレットをその一端側に詰めて移動することで他端側に前記パレットの載らない前記駆動セルである空セルができるように設定されている、水平循環式駐車装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、車両を格納する格納フロアにおいて、車両を載せた複数のパレットを水平面内で前記パレットの幅方向及び長さ方向の二方向に移動させて前記車両の入出庫を行う水平循環式駐車装置において、
前記幅方向の行及び前記長さ方向の列に整列して位置し、前記パレットを前記二方向の一方又は両方に移動させる複数の駆動セルと、
幅又は長さのどちらかが前記パレットより短いデッドスペースに設置され、前記パレットを前記二方向の一方のみに移動させる複数の中継セルと、
前記駆動セル及び前記中継セルを制御する制御装置と、を備え、
少なくとも1つの前記行又は前記列において、両端に位置する前記駆動セルに挟まれた前記中継セルの幅又は長さの合計が単一の前記パレットの幅又は長さより大きく設定されている、水平循環式駐車装置が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、上記の水平循環式駐車装置の制御方法であって、
複数の前記パレットを前記駆動セルと前記中継セルにより前記幅方向又は前記長さ方向に詰めて移動して、前記パレットの載らない前記駆動セルである空セルを増加させる、水平循環式駐車装置の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の中継セルは、少なくとも1つの行又は列において、複数の駆動セルにそれぞれ載る複数のパレットをその一端側に詰めて移動することで他端側にパレットの載らない駆動セルである空セルができるように設定されている。
また、少なくとも1つの行又は列において、両端に位置する駆動セルに挟まれた中継セルの幅又は長さの合計が単一の前記パレットの幅又は長さより大きく設定されている。
これにより、複数のパレットを駆動セルと中継セルにより幅方向又は長さ方向に詰めて移動して、格納フロアに空セルを増加させることができ、デッドスペースを有効利用して、駐車台数を増加し、かつ入出庫時の円滑性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】パレットの具体例を示す下面図である。
図2】駆動セルの平面図である。
図3】本発明による水平循環式駐車装置の第1実施形態図である。
図4図3のA部の部分拡大図である。
図5図3の静止格納状態からの最初のステップ(S1)の例を示す図である。
図6】第1実施形態の第2ステップ(S2)と第3ステップ(S3)を示す図である。
図7】第1実施形態の第4ステップ(S4)と第5ステップ(S5)を示す図である。
図8】第1実施形態の第6ステップ(S6)と第7ステップ(S7)を示す図である。
図9】本発明による水平循環式駐車装置の第2実施形態図である。
図10】第2実施形態の第1ステップ(S1)と第2ステップ(S2)を示す図である。
図11】第2実施形態の第3ステップ(S3)と第4ステップ(S4)を示す図である。
図12】第2実施形態の第5ステップ(S5)と第6ステップ(S6)を示す図である。
図13】本発明による水平循環式駐車装置の第3実施形態図である。
図14】第3実施形態の第1ステップ(S1)を示す図である。
図15】第3実施形態の第2ステップ(S2)を示す図である。
図16】第3実施形態の第3ステップ(S3)を示す図である。
図17】第3実施形態の第4ステップ(S4)を示す図である。
図18】本発明による水平循環式駐車装置の第4実施形態図である。
図19】本発明による水平循環式駐車装置の第5実施形態図である。
図20】3枚のパレットを幅方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
図21】5枚のパレットを幅方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
図22】3枚のパレットを長さ方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
図23図20と同様に、3枚のパレットを幅方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
図24図22と同様に、3枚のパレットを長さ方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
図25】本発明による水平循環式駐車装置の第6実施形態の静止格納状態を示す平面図である。
図26図25の静止格納状態からの最初のステップ(S1)の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
本発明の水平循環式駐車装置100は、車両を格納する格納フロア18(図3参照)において、車両を載せた複数のパレット2を水平面内でパレット2の幅方向及び長さ方向の二方向に移動させて車両の入出庫を行う駐車装置である。車両は、例えば乗用車である
【0015】
(パレット2)
図1は、パレット2の具体例を示す下面図である。この図はパレット2の下面を示している。
パレット2は、車両の全体がその上に載り、車両の一部がパレット2の平面視で外側に出ない大きさに設定されている。この例において、パレット2の大きさは同一である。
【0016】
図1において、パレット2はその下面に、1対の幅方向レール6a、1対の長さ方向レール6b、及び複数の切替レール6cを有する。以下、必要な場合を除き、幅方向レール6a、長さ方向レール6b、及び切替レール6cを、単に「レール6」と呼ぶ。
【0017】
1対の幅方向レール6aは、パレット2の長さ方向に一定の間隔を隔てて幅方向に水平に延びる。なお以下、「水平」とは、パレット2の使用状態において水平であることを意味する。
1対の長さ方向レール6bは、パレット2の幅方向に一定の間隔を隔てて長さ方向に水平に延びる。1対の幅方向レール6aの間隔と1対の長さ方向レール6bの間隔は、パレット2を水平に支持できるように設定されている。
【0018】
複数(この例で4つ)の切替レール6cは、幅方向レール6aと長さ方向レール6bの交差部7(この例で4箇所)に設けられ、幅方向と長さ方向との間で旋回可能に構成されている。
なお、切替レール6cの旋回は、鉛直軸まわりの旋回であり、旋回駆動機構は設けられず、外力により自由に旋回できるようになっている。
【0019】
幅方向レール6aと長さ方向レール6bの下面は互いに面一の水平面である。また幅方向レール6aと長さ方向レール6bの幅は同一に設定されている。
幅方向レール6aと長さ方向レール6bは、交差部7において分断されており、それぞれの端面は、切替レール6cの旋回中心から一定の間隔を隔てている。また、幅方向レール6aと長さ方向レール6bの外方端は、パレット2の外縁付近まで延びている。
【0020】
切替レール6cは、幅方向レール6a及び長さ方向レール6bと同一の幅を有する1本のレールである。また切替レール6cの下面は幅方向レール6a及び長さ方向レール6bと同じ高さの水平面である。さらに、切替レール6cの長さは、交差部7において分断された幅方向レール6a及び長さ方向レール6bを切替レール6cを介して連結するように設定されている。
【0021】
上述したパレット2の構成により、切替レール6cを水平に旋回して、切替レール6cを介して、分断された幅方向レール6aを連結することで、幅方向レール6aと切替レール6cによりパレット2の幅方向全体に延びる1対のレールを構成することができる。
【0022】
また同様に、切替レール6cを水平に旋回して、切替レール6cを介して、分断された長さ方向レール6bを連結することで、長さ方向レール6bと切替レール6cによりパレット2の長さ方向全体に延びる1対のレールを構成することができる。
【0023】
(駆動セル4)
図2は、駆動セル4の平面図である。
この図において、駆動セル4は、フレーム9と、フレーム上に設置されたパレット駆動装置10と、を備える。
【0024】
フレーム9は、車両を載せたパレット2をその幅方向と長さ方向に移動する駆動セル4のフレームである。
図2において、複数のフレーム9は互いに一定の間隔を隔てて配置され、それぞれその四隅で水平に支持されている。この場合、フレーム9の四隅の外側に鉛直に延びる支持柱(図示せず)が設けられ、その支持柱の間をパレット2が幅方向と長さ方向に水平移動して通過できるようになっている。
【0025】
パレット駆動装置10は、1対の駆動ユニット12、1対の従動ユニット14、及び旋回機構16と、を有する。
1対の駆動ユニット12と1対の従動ユニット14は、上述したパレット2の4つの切替レール6cの旋回中心位置に設けられ、それぞれ切替レール6cの旋回中心を中心に自由に旋回可能に取り付けられている。また、この例では、切替レール6cの4つの旋回中心のうち対角位置に1対の駆動ユニット12と1対の従動ユニット14がそれぞれ配置されている。
【0026】
旋回機構16は、1対の駆動ユニット12と1対の従動ユニット14を順に連結した複数の連動ロッド17aと、連動ロッド17aを水平に移動させる旋回駆動ユニット17bとを有する。
この構成により、旋回駆動ユニット17bにより連動ロッド17aを介して1対の駆動ユニット12と1対の従動ユニット14を同期して水平旋回させ、駆動ユニット12の駆動方向と従動ユニット14の案内方向を幅方向と長さ方向に切替えることができる。
【0027】
駆動ユニット12は、パレット2を支持し駆動する駆動輪12aと、駆動輪12aと共に水平旋回しパレット2の水平移動を案内する複数の案内ローラ12bと、を有する。
駆動輪12aは、水平軸を中心に回転駆動される。駆動輪12aは円板形状であり、その外周上面にパレット2のレール6の下面を支持し、その回転によりパレット2を水平方向に駆動する。
【0028】
従動ユニット14は、パレット2を支持しこれに従動する従動輪14aと、従動輪14aと共に水平旋回しパレット2の水平移動を案内する複数の案内ローラ12bと、を有する。
従動輪14aは、水平軸を中心に空転しパレット2の移動に従動して回転される。従動輪14aは、駆動輪12aと同じ円板形状である。
【0029】
上述した構成により、連動ロッド17aにより、駆動ユニット12の駆動方向と従動ユニット14の案内方向を幅方向と長さ方向に連動して切替えることができる。
また、レール6が、幅方向又は長さ方向に1対のレールを構成している場合に、1対の駆動ユニット12は1対のレールにそれぞれ位置して、1対のレールを介してパレット2を支持し、かつパレット2を幅方向又は長さ方向に水平駆動することができる。
さらにこの場合、1対の従動ユニット14も1対のレールにそれぞれ位置して、1対のレールを介してパレット2を支持し、かつパレット2を幅方向又は長さ方向に案内することができる。
従って、上述したパレット駆動装置10により、車両を載せたパレット2を、その幅方向に移動する横送りと、その長さ方向に移動する縦送りとの両方を切替えて実施することができる。
【0030】
なお、上述したパレット2、駆動セル4、及びパレット駆動装置10の構成は、一例であり、本発明はこれらに限定されず、その他の構成であってもよい。
【0031】
(第1実施形態)
図3は、本発明による水平循環式駐車装置100の第1実施形態図である。
この図は、格納フロア18において、複数の格納スペースSに上述した駆動セル4が配置され、その上に複数のパレット2が載った状態(以下、「静止格納状態」)を示している。
格納スペースS及び駆動セル4は、パレット2の幅方向及び長さ方向に整列して位置する。以下、パレット2の幅方向を単に「幅方向」、パレット2の長さ方向を単に「長さ方向」と呼ぶ。
【0032】
また複数の駆動セル4は、格納スペースSにそれぞれ設置され、幅方向の「行」及び長さ方向の「列」に整列して位置し、パレット2を二方向の一方又は両方に移動させるようになっている。二方向とは、幅方向と長さ方向を意味する。
この図において、パレット2は、車両が載る「実車パレット」、又は車両が載らない「空パレット」のいずれであってもよい。以下、最初に出庫する車両が載るパレット2を「出庫パレット2a」と呼ぶ。
【0033】
この例において、パレット2の枚数は同一平面内において駆動セル4の数と等しく設定されている。「同一平面内」とは、格納フロア18において、複数のパレット2が同一平面に位置し、上下に段積みしないことを意味する。
この構成により、従来は静止格納状態において空セルが必ず必要であったが、本発明では空セルがなくても成立する。
なおこの構成は必須ではなく、必要に応じて静止格納状態において空セルを設けてもよい。
【0034】
図3において、リフト19が格納スペースSの1つに設置され、図示しない入出庫フロア(例えば地上部)と格納フロア18との間で、パレット2を昇降するようになっている。
すなわち、駆動セル4に対し平面視で幅方向又は長さ方向に整列して位置し、車両が入出庫する入出庫フロアと格納フロア18との間でパレット2を昇降するリフト19を備える。
リフト19には、上述した駆動セル4と同じパレット駆動装置10が設置され、隣接する格納スペースSとの間でパレット2を幅方向又は長さ方向に移動可能に構成されている。
【0035】
この例で、格納フロア18には、複数(8本)の柱3があり、柱3により隣接する格納スペースSの中間スペースが、格納スペースSに隣接するにもかかわらず、幅又は長さのどちらかがパレット2より短い領域(以下、「デッドスペースZ」)となっている。
【0036】
この図において、水平循環式駐車装置100は、さらに、複数の中継セル20と制御装置30とを備える。
複数の中継セル20は、デッドスペースZに設置され、パレット2を幅方向及び長さ方向の二方向の一方のみに移動させる機能を有する。
中継セル20は、横中継セル20A又は縦中継セル20Bである。
横中継セル20Aは、幅がパレット2より短く、パレット2を幅方向のみに移動する。横中継セル20Aは、この例では10台が設置されている。
縦中継セル20Bは、長さがパレット2より短く、パレット2を長さ方向のみに移動する。縦中継セル20Bは、この例では24台(=6×4)が設置されている。
【0037】
図4は、図3のA部(破線の円内)の部分拡大図である。
【0038】
この図において、中継セル20は、パレット2の下面を支持する中継駆動輪22又は中継従動輪24を有する。
中継駆動輪22は、その回転によりパレット2を支持してこれを水平方向に駆動する。中継駆動輪22は、駆動輪12aと同一であってもよい。
中継従動輪24は、その回転によりパレット2を支持してこれに従動する。中継従動輪24は、従動輪14aと同一であってもよい。
【0039】
この図において、デッドスペースZ1は、その幅が、パレット2よりわずかに短く、パレット2の一部がデッドスペースZ1の上面全体を実質的に覆った場合に、隣接する駆動セル4のパレット駆動装置10により水平に支持して移動できない領域である。
この場合、中継セル20(横中継セル20A)は、上述した中継駆動輪22と中継案内ローラ23を有することが好ましい。中継案内ローラ23は、案内ローラ12bと同一であってもよい。
またこの場合、横中継セル20Aは、上述した中継従動輪24を併用してもよい。なお、これらは、鉛直軸を中心に旋回せず、幅方向又は長さ方向のいずれか一方のみにパレット2を移動するようになっているのがよい。
デッドスペースZの長さが、パレット2よりわずかに短い場合も同様である。
【0040】
図4において、デッドスペースZ2は、その長さが、パレット2より大幅に短く、パレット2の一部がデッドスペースZ2の上面全体を実質的に覆った場合でも、隣接する駆動セル4のパレット駆動装置10により水平に支持して移動できる領域である。
この場合、中継セル20(縦中継セル20B)は、上述した中継駆動輪22又は中継従動輪24の少なくとも一方を有する。例えばこの図では、中継駆動輪22と中継従動輪24を示しているが、中継従動輪24のみでもよい。
またこの場合、縦中継セル20Bは、上述した中継案内ローラ23を併用することが好ましい。なお、これらは、鉛直軸を中心に旋回せず、幅方向又は長さ方向のいずれか一方のみにパレット2を移動するようになっているのがよい。
デッドスペースZの幅が、パレット2より大幅に短い場合も同様である。
【0041】
上述した構成により、デッドスペースZの幅又は長さのいずれか一方が、パレット2より短い場合でも、隣接する駆動セル4のパレット駆動装置10と中継セル20により、パレット2を二方向の一方のみに移動することができる。
【0042】
図4において、中継セル20は、さらに位置センサ26を有する。
位置センサ26は、中継セル20の上に載るパレット2の位置を検出する。
【0043】
位置センサ26は、例えば、光(例えばレーザ光)を水平に出力する投光部26aと光を受光する受光部26bとを有する馬蹄形センサである。この場合、パレット2の下面には、投光部26aの光を遮る検出板27が取り付けられている。
検出板27の高さは、その下端がレール6より下方に位置する。また、検出板27の位置は、駆動セル4と中継セル20により幅方向又は長さ方向に詰めて複数のパレット2を移動した際に、位置センサ26により中継セル20の上に載るパレット2の停止位置を検出するように設定されている。
検出板27は、この例では、幅方向及び長さ方向にそれぞれ1対を設けている。しかし本発明はこの例に限定されず、検出板27を幅方向及び長さ方向に複数対を設けてもよい。
【0044】
また、位置センサ26は、上述した馬蹄形センサに限定されず、それ以外の周知の機械式、光学式、又は静電気式センサを用いてもよい。
【0045】
図3において、制御装置30は、例えばコンピュータ(PC)であり、駆動セル4及び中継セル20を制御する。制御装置30の設置位置は、格納フロア18でも、図示しない入出庫フロア(例えば地上部)でも、その他でもよい。
【0046】
図3において、複数の中継セル20は、少なくとも1つの行又は列において、複数の駆動セル4にそれぞれ載る複数のパレット2をその一端側に詰めて移動することで他端側にパレット2の載らない駆動セル4である空セルX(図5参照)ができるように設定されている。
この例では、少なくとも1つの行又は列において、両端に位置する駆動セル4に挟まれた中継セル20の幅又は長さの合計が単一のパレット2の幅又は長さより大きく設定されている。
すなわち、少なくとも1つの行において、複数の横中継セル20Aの合計幅が単一のパレット幅より大きく設定されている。この構成により、その行のパレット2を幅方向に詰めて移動することで、空セルXを増加させることができる。
同様に、少なくとも1つの列において、複数の縦中継セル20Bの合計長さが単一のパレット長さより大きく設定されている。この構成により、その列のパレット2を長さ方向に詰めて移動することで、空セルXを増加させることができる。
【0047】
本発明による制御方法は、上述した水平循環式駐車装置100を用いて、複数のパレット2を駆動セル4と中継セル20により幅方向又は長さ方向に詰めて移動して、パレット2の載らない駆動セル4である空セルXを増加させる。
「詰めて移動」とは、幅方向又は長さ方向に隣接する複数のパレット2が互いに接触せずに、その端部間に隙間を有する状態を意味する。隙間の大きさは任意である。
【0048】
図5は、第1実施形態の図3の静止格納状態からの最初のステップ(以下、S1)の例を示す図である。
制御装置30は、この例のS1において、複数のパレット2を駆動セル4と中継セル20により幅方向の左側に詰めて移動し、空セルXを増加させている。
図3の静止格納状態において、空セルXはなく、リフト19のみが空になっている。これに対し、図5では、空セルXは5箇所に増加している。
【0049】
従来の水平循環式駐車装置では、パレット2を移動させるために静止格納状態において格納フロア18に少なくとも1つの空セルXを準備する必要があった。
これに対し、本発明の水平循環式駐車装置100では、制御装置30により最初のステップで空セルXを増加させることができるので、図3に示した静止格納状態において空セルXが不要であり、従来例よりも車両を1台余分に格納することができる。
【0050】
図6図8は、図5のS1から、入庫する車両を載せた入庫パレット2bをこの格納フロア18に格納し、出庫パレット2aをリフト19により出庫させるまでの工程(ステップ)を示している。
このうち図6は第1実施形態の第2ステップ(S2)と第3ステップ(S3)を示し、図7は第4ステップ(S4)と第5ステップ(S5)を示し、図8は第6ステップ(S6)と第7ステップ(S7)を示している。
【0051】
図6のS2において、入庫パレット2bをリフト19によりこの格納フロア18に到着させる。
図6のS3において、出庫パレット2aを図で左側の空セルXに移動し、並行して入庫パレット2bを図で下側の空セルXに移動する。このステップで入庫パレット2bの入庫が完了する。
【0052】
図7のS4において、出庫パレット2aをリフト19の前面まで移動する。
図7のS5において、出庫パレット2aをリフト19の上に移動する。並行して入庫パレット2bの左側のパレット2を駆動セル4の上に位置決めする。
【0053】
図8のS6において、出庫パレット2aをリフト19により出庫させ、並行して入庫パレット2bの左側のパレット2を図の上方へ移動する。このステップで、出庫パレット2aの出庫が完了する。
図8のS7において、すべてのパレット2を駆動セル4の上に位置決めし、図3と同様の静止格納状態とする。
【0054】
上述した図5図8のステップにより、従来と比較して、車両の入出庫時間を短縮することができ、入出庫時の円滑性を向上させることができる。
【0055】
図3において、リフト19と駆動セル4の総数が、パレット2の総数と等しく設定されている。
すなわち、リフト19の上を含むパレット駆動装置10の総数(すなわち、リフト19の数+駆動セル4の総数)が、パレット2の総数と等しく設定されている。この場合、パレット2は、実車パレットと空パレットの両方を含む。
この構成により、空セルが必須であった従来の構成と比較して、駐車台数を多く設定することが可能となる。
すなわち、図3の例では、全体が一層であればリフト19の上を含めて30台が収容可能であり、二層であれば59台が収容可能である。
【0056】
(第2実施形態)
図9は、本発明による水平循環式駐車装置100の第2実施形態図である。この図は、格納フロア18において、複数の格納スペースSに駆動セル4が配置され、その上に複数のパレット2が載った状態(「静止格納状態」)を示している。
【0057】
この例で、格納フロア18には、複数(4列×6行=24本)の柱3があり、柱3により隣接する格納スペースSの中間スペースが、デッドスペースZとなっている。
また、この例では、幅方向の「行」、及び、長さ方向の「列」の両端にもデッドスペースZがあり、そのデッドスペースZにも中継セル20(横中継セル20Aと縦中継セル20B)が設置されている。
すなわち、この例で、横中継セル20Aは、駆動セルの間に位置する横間セル21A1と、幅方向の一端に位置する横端セル21A2とからなる。横中継セル20Aは、横間セル21A1又は横端セル21A2の一方のみでもよい。
また、縦中継セル20Bは、駆動セルの間に位置する縦間セル21B1と、長さ方向の一端に位置する縦端セル21B2とからなる。縦中継セル20Bも、縦間セル21B1又は縦端セル21B2の一方のみでもよい。
【0058】
さらにこの例では、少なくとも1つの行において、横端セル21A2の1つと、すべての横間セル21A1の合計幅が単一のパレット幅より大きく設定されている。この構成により、その行のパレット2を幅方向に詰めて移動することで、空セルX(図10参照)を増加させることができる。
「横端セル21A2の1つ」とするのは、「幅方向の反対側端部に位置する横端セル21A2」は、空セルの形成に機能しないからである。横端セル21A2が片側のみにある場合も同様である。
【0059】
同様に、少なくとも1つの列において、縦端セル21B2の1つと、すべての縦間セル21B1の合計長さが単一のパレット長さより大きく設定されている。この構成により、その列のパレット2を長さ方向に詰めて移動することで、空セルXを増加させることができる。
「縦端セル21B2の1つ」とするのは、「長さ方向の反対側端部に位置する縦端セル21B2」は、空セルの形成に機能しないからである。縦端セル21B2が片側のみにある場合も同様である。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0060】
図9において、車両は、14台の駆動セル4の上に格納されており、駐車台数は、14台である。
従来の水平循環式駐車装置では、パレット2を移動させるために静止格納状態において格納フロア18に少なくとも1つの空セルXを準備する必要があった。
これに対し、本発明の水平循環式駐車装置100では、制御装置30により最初のステップで空セルXを増加させることができるので、図9に示した静止格納状態において空セルXが不要であり、従来例よりも車両を1台余分に格納することができる。
【0061】
図10図12は、図9の静止格納状態から、入庫パレット2bをこの格納フロア18に格納し、出庫パレット2aをリフト19により出庫させるまでの工程(ステップ)を示している。
このうち図10は第2実施形態の第1ステップ(S1)と第2ステップ(S2)を示し、図11は第3ステップ(S3)と第4ステップ(S4)を示し、図12は第5ステップ(S5)と第6ステップ(S6)を示している。
【0062】
図10のS1において、複数のパレット2を長さ方向の上側と幅方向の右側に詰めて移動し、3つの空セルXを形成している。
図9の静止格納状態において、空セルXはなく、リフト19にも出庫が載っている。これに対し、図10では、空セルXが3箇所に増加している。
図10のS2において、出庫パレット2aをリフト19の行まで長さ方向に移動する。
【0063】
図11のS3において、複数のパレット2を幅方向の左側に詰めて移動し、リフト19の図で下方に空セルXを形成している。
図11のS4において、入庫パレット2bをリフト19の図で下方に移動する。このステップで入庫パレット2bの入庫が完了する。
【0064】
図12のS5において、出庫パレット2aを幅方向に移動してリフト19に載せる。
図12のS6において、出庫パレット2aの出庫が完了する。並行してすべてのパレット2を駆動セル4の上に位置決めし、図9と同様の静止格納状態とする。
【0065】
上述した図10図12のステップにより、S1~S6のステップで、入庫パレット2bの入庫と出庫パレット2aの出庫が完了する。従来例では、同じ入出庫に11ステップを要する。従って、従来と比較して、車両の入出庫時間を短縮することができ、入出庫時の円滑性を向上させることができる。
【0066】
(第3実施形態)
図13は、本発明による水平循環式駐車装置100の第3実施形態図である。
この図において、(A)は地下空間に設けられた1層目の格納フロア18、(B)は2層目の格納フロア18、(C)は入出庫フロア(例えば地上部)を含む縦断面を示している。
この図は、1層目と2層目の格納フロア18において、複数の格納スペースSに駆動セル4が配置され、その上に複数のパレット2が載った状態(「静止格納状態」)を示している。
1層目と2層目の格納フロア18の構成は、第3実施形態と同じである。なおこの例において、1層目に出庫パレット2aが位置し、2層目に空セルXが1つあり、入庫パレット2bが入出庫フロア(例えば地上部)のリフト19の上に位置している。
【0067】
図14図17は、図13の静止格納状態から、入庫する車両を載せた入庫パレット2bを2層目の格納フロア18に格納し、1層目の出庫パレット2aをリフト19により出庫させるまでの工程(ステップ)を示している。
このうち図14は第3実施形態の第1ステップ(S1)を示し、図15は第2ステップ(S2)を示し、図16は第3ステップ(S3)を示し、図17は第4ステップ(S4)を示している。
【0068】
図14のS1において、1層目では複数のパレット2を長さ方向の上側と幅方向の右側に詰めて移動し、出庫パレット2aの列とリフト19の行に3つの空セルXを形成している。また、2層目では1つのパレット2を幅方向の左側に詰めて移動し、リフト19に隣接する空セルXを形成している。さらに、入庫パレット2bが載るリフト19を2層目まで下降させる。これらの動作は、並行して同時に実施する。
【0069】
図15のS2において、1層目では出庫パレット2aをリフト19の行まで移動する。また、2層目では入庫パレット2bをリフト19から隣接する空セルXに移動する。このステップで入庫パレット2bの入庫が完了する。これらの動作は、並行して実施する。
【0070】
図16のS3において、1層目では出庫パレット2aをリフト19に隣接する空セルXまで移動する。また、空のリフト19を1層目まで下降させる。これらの動作は、並行して実施する。
【0071】
図17のS4において、1層目では出庫パレット2aをリフト19に載せる。
さらに、図示しない次のステップS5で、出庫パレット2aの載るリフト19を入出庫フロア(例えば地上部)まで上昇させる。このステップで出庫パレット2aの出庫が完了する。並行してすべてのパレット2を駆動セル4の上に位置決めし、図13と同様の静止格納状態とする。
【0072】
上述した図13図17のステップにより、S1~S5のステップで、入庫パレット2bの入庫と出庫パレット2aの出庫が完了する。従って、従来と比較して、車両の入出庫時間を短縮することができ、入出庫時の円滑性を向上させることができる。
【0073】
図18は、本発明による水平循環式駐車装置100の第4実施形態図である。
この例において、格納フロア18の片方の端部のみにデッドスペースZがあり、その位置に横端セル21A2を設けている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
この例に示すように、横端セル21A2は、行の片側端部のみでもよい。同様に、縦端セル21B2も列の片側端部のみでもよい。
【0074】
図19は、本発明による水平循環式駐車装置100の第5実施形態図である。
この例において、入出庫フロア(例えば地上部)には車両が入出庫するバース32が設けられている。
この場合、バース32において出庫パレット2aから出庫車両の出庫中に、入庫車両を載せた入庫パレット2bを2層目から1層目に移動させることで円滑性が向上する。
その他の構成は、第3実施形態と同様である。
【0075】
(幅方向の移動量)
図20は、3枚のパレット2を幅方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
この図において、(A)は幅方向に詰めた状態における隣接する2枚のパレット2の位置関係を示している。また、(B)は3枚のパレット2の間に2つの中継セル20がある場合の静止格納状態、(C)は静止格納状態からパレット2を幅方向に左側に詰めて右端に空セルXができた状態を示している。
【0076】
図20(A)において、パレット幅をB、パレット長をL、隣接するパレット2の端部間の隙間をα、隣接するパレット2の幅中心距離をPBとする。
隙間αの大きさは任意であり、好ましくは50~400mmであり、さらに好ましくは200mmである。以下、α=200mmとして説明する。
以下、一例としてパレット幅Bを2100mm、パレット長Lを5500mmとする。この場合、幅中心距離PB=B+α・・・(1)であり、幅中心距離PBは、2300mmである。
【0077】
図20(B)において、デッドスペースZの幅(デッドスペース幅)をBZとする。この例でデッドスペース幅BZは1350mmである。
図20(C)において、図20(B)の静止格納状態から2つのパレット2を幅方向に左側に詰めて右端に空セルXを形成する。この場合、左端の移動しないパレット2に近い順で、最初のパレット2の移動量はBZ-α(=1350-200=1150mm)であり、2番目のパレット2の移動量は2(BZ-α)=2300mmである。
【0078】
図21は、5枚のパレット2を幅方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
この図において、(A)は5枚のパレット2の間に4つの中継セル20がある場合の静止格納状態、(B)は静止格納状態からパレット2を幅方向に図で左側に詰めて右端に空セルXができた状態を示している。
【0079】
図21(A)(B)において、隙間α、パレット幅B、パレット長Lは、図20と同様である。
この場合、図21(B)において、図21(A)の静止格納状態から4つのパレット2を幅方向に左側に詰めて右端に空セルXを形成する。この場合、左端の移動しないパレット2に近い順で、最初と2番目のパレット2の移動量は図20(C)と同じであり、3番目のパレット2の移動量は3(BZ-α)=3×1150=3450mmである。
【0080】
上述したように、複数のパレット2を幅方向に詰めて移動する際の移動量は、移動しないパレット2に近い順で、最初のパレット2の移動量ΔXはBZ-α(=1350-200=1150mm)である。また、2番目以降のパレット2の移動量は順に移動量ΔXを加算した2ΔX、3ΔX、・・・とするのがよい。この場合、パレット2の移動を数値制御することが好ましい。
この構成により、パレット2の移動制御を簡易化できる。
【0081】
(長さ方向の移動量)
図22は、3枚のパレット2を長さ方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
この図において、(A)は長さ方向に詰めた状態における隣接する2枚のパレット2の位置関係を示している。また、(B)は3枚のパレット2の間に2つの中継セル20がある場合の静止格納状態、(C)は静止格納状態からパレット2を長さ方向に下側に詰めて上端に空セルXができた状態を示している。
【0082】
図22(A)において、隣接するパレット2の長さ中心距離をPLとする。隙間α、パレット幅B、パレット長Lは、図20と同様である。
この場合、長さ中心距離PL=L+α・・・(2)であり、長さ中心距離PLは、5700mmである。
【0083】
図22(B)において、デッドスペースZの長さ(デッドスペース長)をLZとする。この例でデッドスペース長LZは3050mmである。
図22(C)において、図22(B)の静止格納状態から2つのパレット2を長さ方向に下側に詰めて上端に空セルXを形成する。この場合、下端の移動しないパレット2に近い順で、最初のパレット2の移動量はLZ-α(=3050-200=2850mm)であり、2番目のパレット2の移動量は2(LZ-α)=5700mmである。
【0084】
従って、複数のパレット2を長さ方向に詰めて移動する際の移動量は、移動しないパレット2に近い順で、最初のパレット2の移動量ΔYはLZ-α(=2850mm)である。また、2番目以降のパレット2の移動量は順に移動量ΔYを加算した2ΔY、3ΔY、・・・とするのがよい。この場合、パレット2の移動を数値制御することが好ましい。
この構成により、パレット2の移動制御を簡易化できる。
【0085】
(デッドスペース幅)
デッドスペース幅BZが未定の場合、図20(C)において図20(B)の静止格納状態から2つのパレット2を幅方向に左側に詰めて右端に1つの空セルXができるためには、以下の条件を満たす必要がある。
2B+2BZ≧3PB=3(B+α)
これから、BZ≧(B+3α)/2=1350mmとなる。
【0086】
同様に、図21(B)において図21(A)の静止格納状態から4つのパレット2を幅方向に図で左側に詰めて右端に1つの空セルXができるためには、以下の条件を満たす必要がある。
4B+4BZ≧5PB=5(B+α)
これから、BZ≧(B+5α)/4=775mmとなる。
【0087】
上述したように、N枚のパレット2を幅方向に移動して1つの空セルXができるためには、以下の条件を満たす必要がある。
BZ≧(B+(N+1)α)/N・・・(3)
【0088】
また、デッドスペース長LZが未定の場合、図22(C)において図22(B)の静止格納状態から2つのパレット2を長さ方向に下側に詰めて上端に1つの空セルXができるためには、以下の条件を満たす必要がある。
2L+2LZ≧3PL=3(L+α)
これから、LZ≧(L+3α)/2
同様に、4つのパレット2を長さ方向に下側に詰めて上端に1つの空セルXができるためには、以下の条件を満たす必要がある。
LZ≧(L+5α)/4
【0089】
従って、N枚のパレット2を長さ方向に移動して1つの空セルXができるためには、以下の条件を満たす必要がある。
LZ≧(L+(N+1)α)/N・・・(4)
【0090】
以上より、デッドスペースZが、隣接するパレット2の幅方向又は長さ方向の間にそれぞれ存在する場合であって、移動するパレット2の枚数Nが既知の場合には、デッドスペースZの寸法を以下のように設定する、ことが好ましい。
デッドスペース幅BZ≧(B+(N+1)α)/N
デッドスペース長LZ≧(L+(N+1)α)/N
【0091】
また、パレット2とデッドスペースZの配置が上述の例と異なる場合でも、パレット幅B、パレット長L、パレット2の隙間αが既知で、複数のパレット2を幅方向又は長さ方向に詰める場合には、以下のように設定する。
すなわち、反対側に少なくとも1つ空セルXを形成するように、移動するパレット2の枚数Nと、静止格納状態で隣接するパレット2の間のデッドスペース幅BZ又はデッドスペース長LZを設定する。
【0092】
また、さらにデッドスペース幅BZ又はデッドスペース長LZが既知の場合には、反対側に少なくとも1つの空セルXを形成するように、移動するパレット2の枚数Nを設定するのがよい。
【0093】
図23は、図20と同様に、3枚のパレットを幅方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
図23(B)において、デッドスペースZの幅(デッドスペース幅)をBZ1,BZ2とする。この例でデッドスペース幅BZ1は1150mm、デッドスペース幅BZ2は1550mmである。
図23(C)において、図23(B)の静止格納状態から2つのパレット2を幅方向に左側に詰めて右端に空セルXを形成する。この場合、左端の移動しないパレット2に近い順で、最初のパレット2の移動量はΔX1=BZ1-α(=1150-200=950mm)であり、2番目のパレット2の移動量はΔX2=BZ1+BZ2-2α=2(BZ-α)=2300mmとしてもよい。
なお、この例で、2BZ=BZ1+BZ2である。
【0094】
(デッドスペース幅)
なお、この場合においても、デッドスペース幅BZ1,BZ2が未定の場合、図23(C)において図23(B)の静止格納状態から2つのパレット2を幅方向に左側に詰めて右端に1つの空セルXができるためには、以下の条件を満たす必要がある。
2BZ=BZ1+BZ2
2B+2BZ≧3PB=3(B+α)
これから、同様にBZ≧(B+3α)/2=1350mmとなる。
2BZ=BZ1+BZ2の関係については、柱3との関係に応じ、デッドスペース幅BZ1,BZ2を適時設定してよい。
【0095】
図24は、図22と同様に、3枚のパレットを長さ方向に詰めて移動する際の移動量の説明図である。
図24(B)において、デッドスペースZの長さ(デッドスペース長)をLZ1,LZ2とする。この例でデッドスペース長LZ1は2850mm、LZ2は3250mmである。
図24(C)において、図24(B)の静止格納状態から2つのパレット2を長さ方向に下側に詰めて上端に空セルXを形成する。この場合、下端の移動しないパレット2に近い順で、最初のパレット2の移動量はΔY1=LZ1-α(=2850-200=2650mm)であり、2番目のパレット2の移動量はΔY2=LZ1+LZ2-2α=2(LZ-α)=5700mmとしてもよい。
なお、この例で2LZ=LZ1+LZ2である。
【0096】
以上より、デッドスペースZが、隣接するパレット2の幅方向又は長さ方向の間にそれぞれ存在する場合であって、移動するパレット2の枚数Nが既知の場合であって,デッドスペースZの寸法が異なる場合であって、デッドスペースがm箇所ある場合であっても、デッドスペースZの寸法を以下のように設定する、こともできる。
平均デッドスペース幅BZ≧(B+(N+1)α)/N
平均デッドスペース長LZ≧(L+(N+1)α)/N
ここで、以下の式(5)(6)が成り立つ。
【0097】
【数1】
【0098】
(第6実施形態)
図25は、本発明による水平循環式駐車装置の第6実施形態の静止格納状態を示す平面図である。
この図は、第1実施形態の図3と実質的に同一であるが、左側の2列にそれぞれ空セルXがある点のみが相違する。
図26は、図25の静止格納状態からの最初のステップ(S1)の例を示す図である。
【0099】
図26において、左側の2列をB領域、左側から3列以降をC領域とする。
C領域では、第1実施形態(図3)の最初のステップ(S1)と同様に、複数のパレット2を駆動セル4と中継セル20により幅方向の左側に詰めて移動し、空セルXを増加させる。この場合、制御装置30は、C領域における長さ方向の移動を禁止する。
また、制御装置30は、B領域では、長さ方向の移動を許容し、幅方向の移動を禁止する。
すなわち、制御装置30は、格納フロア18を複数の領域に区分して、それぞれの領域において、幅方向の移動と長さ方向の移動を、同時かつ排他的に実行するようになっている。
この構成により、詰めて配置している方向とは異なる方向に動作することによる装置の破損を回避し、意図せぬ動作を防止し、かつ入出庫時の円滑性を高めることができる。
【0100】
上述した本発明の実施形態によれば、複数の中継セル20は、少なくとも1つの行又は列において、複数の駆動セル4にそれぞれ載る複数のパレット2をその一端側に詰めて移動することで他端側に空セルXができるように設定されている。
また、少なくとも1つの行又は列において、両端に位置する駆動セル4に挟まれた中継セル20の幅又は長さの合計が単一のパレット2の幅又は長さより大きく設定されている。
これにより、複数のパレット2を駆動セル4と中継セル20により幅方向又は長さ方向に詰めて移動して、格納フロア18に空セルXを増加させることができ、デッドスペースZを有効利用して、駐車台数を増加し、かつ入出庫時の円滑性を向上させることができる。
【0101】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0102】
B パレット幅、BZ,BZ1,BZ2 デッドスペース幅、L パレット長、LZ,LZ1,LZ2 デッドスペース長、PB 幅中心距離、PL 長さ中心距離、S 格納スペース、X 空セル、ΔX,ΔY 移動量、Z,Z1,Z2 デッドスペース、隙間α、2 パレット、2a 出庫パレット、2b 入庫パレット、3 柱、4 駆動セル、5 リフト位置、6 支持レール、6a 幅方向レール、6b 長さ方向レール、6c 切替レール、7 交差部、9 フレーム、10 パレット駆動装置、12 駆動ユニット、12a 駆動輪、12b 案内ローラ、14 従動ユニット、14a 従動輪、16 旋回機構、17a 連動ロッド、17b 旋回駆動ユニット、18 格納フロア、19 リフト、20 中継セル、20A 横中継セル、20B 縦中継セル、21A1 横間セル、21A2 横端セル、21B1 縦間セル、21B2 縦端セル、22 中継駆動輪、23 中継案内ローラ、24 中継従動輪、26 位置センサ、26a 投光部、26b 受光部、27 検出板、30 制御装置、32 バース、100 水平循環式駐車装置


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