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特開2024-5260三次元造形物の製造方法、三次元造形システム、情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005260
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法、三次元造形システム、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20240110BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240110BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240110BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240110BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240110BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240110BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240110BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20240110BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/106
B29C64/386
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/20
B29C64/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105346
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 郷志
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL24
4F213WL32
4F213WL52
4F213WL55
4F213WL56
4F213WL62
4F213WL74
4F213WL92
4F213WL96
4F213WW02
4F213WW38
(57)【要約】
【課題】造形物の造形精度とサポート構造の剥離性との両立を容易に実現できる技術を提供する。
【解決手段】材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、造形物を支持するサポート構造を造形する、三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、造形条件に従って生成されたサポートデータに基づいて、造形物の下方で造形物と接する第1サポート層、及び、造形物の上方で造形物と接する第2サポート層を含むサポート構造、を造形する第1工程と、第1サポート層及び第2サポート層を、造形物から分離する第2工程と、を備える。造形条件は、複数の造形パターンから選択された造形パターンを含み、サポートデータのうちの、第1サポート層を造形するためのデータ、及び、第2サポート層を造形するためのデータは、互いに異なる造形条件に基づいて生成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する、三次元造形物の製造方法であって、
造形条件に従って生成されたサポートデータに基づいて、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層、及び、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層を含む前記サポート構造、を造形する第1工程と、
前記第1サポート層及び前記第2サポート層を、前記造形物から分離する第2工程と、を備え、
前記造形条件は、複数の造形パターンから選択された前記造形パターンを含み、
前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータは、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成される、
三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記サポート構造に関する前記造形条件は、前記造形物との分離距離に関する条件、充填率に関する条件、積層ピッチに関する条件、線幅に関する条件、層数の条件、材料に関する条件、のうちの少なくとも一つを含む、三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第2サポート層と前記造形物との密着強度が、前記第1サポート層と前記造形物との密着強度よりも低くなるように前記サポートデータを生成する工程を含む、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記積層方向において、前記第2サポート層と前記造形物との距離が、前記第1サポート層と前記造形物との距離よりも大きくなるように前記サポートデータを生成する工程を含む、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1工程において、輪郭領域及び内部領域を有する前記第1サポート層又は前記第2サポート層を造形する、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1工程において、前記第1サポート層又は前記第2サポート層には、輪郭領域と内部領域とが造形され、前記サポート構造のうち、前記造形物と接触していない層の少なくともいずれかの層は、前記内部領域が造形され、前記輪郭領域が造形されない、三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記内部領域の造形速度は、前記輪郭領域の造形速度よりも速い、三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する造形部と、
造形条件に従って生成されたサポートデータに基づいて、前記造形部を制御して、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層と、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層と、前記造形物と、を造形する制御部と、を備え、
前記造形条件は、複数の造形パターンから選択された前記造形パターンを含み、
前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータは、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成される、
三次元造形システム。
【請求項9】
材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する三次元造形装置で用いられるサポートデータを生成する情報処理装置であって、
造形条件に従って、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層、及び、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層、を造形するための前記サポートデータを生成するデータ生成部を備え、
前記造形条件は、複数の造形パターンから選択された前記造形パターンを含み、
前記データ生成部は、前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータを、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形物の製造方法、三次元造形システム、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の製造方法に関し、特許文献1には、第1の層構造体と支持構造体との上に第2の層構造体を形成し、その後、支持構造体を除去することで、オーバーハング構造体を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-511990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元造形物の製造方法では、上記文献のように、造形物を支持するサポート構造を造形物の下方に造形することで、造形物の形状崩れを防いで精度よく造形物を造形することができる。しかし、本願発明者らは、造形物の上方と下方とで造形物に接触するサポート構造をそれぞれ造形した場合に、造形物の造形精度と、サポート構造の造形物からの剥離性とを両立させることが困難であるという課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する、三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、造形条件に従って生成されたサポートデータに基づいて、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層、及び、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層を含む前記サポート構造、を造形する第1工程と、前記第1サポート層及び前記第2サポート層を、前記造形物から分離する第2工程と、を備え、前記造形条件は、複数の造形パターンから選択された前記造形パターンを含み、前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータは、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成される。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形システムが提供される。この三次元造形システムは、材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する造形部と、造形条件に従って生成されたサポートデータに基づいて、前記造形部を制御して、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層と、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層と、前記造形物と、を造形する制御部と、を備え、前記造形条件は、複数の造形パターンから選択された前記造形パターンを含み、前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータは、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成される。
【0007】
本開示の第3の形態によれば、材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する三次元造形装置で用いられるサポートデータを生成する情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、造形条件に従って、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層、及び、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層、を造形するための前記サポートデータを生成するデータ生成部を備え、前記造形条件は、複数のパターンから選択された前記造形パターンを含み、前記データ生成部は、前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータを、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】三次元造形システムの概略構成を示す説明図である。
図2】フラットスクリューの概略構成を示す斜視図である。
図3】バレルの概略平面図である。
図4】三次元造形装置が造形物を造形する様子を模式的に示す説明図である。
図5】情報処理装置の概略構成を示す説明図である。
図6】造形処理のフローチャートである。
図7】造形条件を設定するための設定画面の例を示す図である。
図8】造形物とサポート構造の例を示す図である。
図9】造形パターンの例を示す図である。
図10】充填率の説明図である。
図11】造形データを視覚化した例を示す図である。
図12】造形物と接触している部分を有する第1サポート層と、造形物と接触していない第2サポート層との例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形システム10の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向及びY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。
【0010】
三次元造形システム10は、三次元造形装置100と情報処理装置400とを備えている。本実施形態の三次元造形装置100は、材料押出方式によって造形物を造形する装置である。三次元造形装置100は、三次元造形装置100の各部を制御するための制御部300を備えている。制御部300と情報処理装置400とは、相互に通信可能に接続されている。
【0011】
三次元造形装置100は、造形材料を生成して吐出する造形部110と、造形物の基台となる造形用のステージ210と、造形材料の吐出位置を制御する移動機構230とを備える。
【0012】
造形部110は、制御部300の制御下において、固体状態の材料を可塑化させた造形材料をステージ210上に吐出する。造形部110は、造形材料に転化される前の原材料の供給源である材料供給部20と、原材料を造形材料へと転化させる可塑化部30と、造形材料を吐出する吐出部60とを備える。
【0013】
材料供給部20は、可塑化部30に、原材料MRを供給する。材料供給部20は、例えば、原材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、連通路22を介して、可塑化部30に接続されている。原材料MRは、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。本実施形態では、ペレット状のABS樹脂の材料が用いられる。
【0014】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された原材料MRを可塑化させて流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。本実施形態において「可塑化」とは 、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0015】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、を有する。フラットスクリュー40は、ローターあるいはスクロールとも呼ばれる。バレル50は、スクリュー対面部とも呼ばれる。
【0016】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面47は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部300の制御下において駆動する。なお、フラットスクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0017】
図2は、フラットスクリュー40の下面48側の概略構成を示す斜視図である。図2に示したフラットスクリュー40は、技術の理解を容易にするため、図1に示した上面47と下面48との位置関係を、鉛直方向において逆向きとした状態で示されている。フラットスクリュー40は、その中心軸に沿った方向である軸線方向における長さが、軸線方向に垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー40は、その回転中心となる回転軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0018】
フラットスクリュー40の、回転軸RXと交差する面である下面48には、渦状の溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から、当該溝部42に連通する。本実施形態では、溝部42は、凸条部43によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部42の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部42は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0019】
図1に示すように、フラットスクリュー40の下面48は、バレル50の上面52に対面しており、フラットスクリュー40の下面48の溝部42と、バレル50の上面52との間には空間が形成される。フラットスクリュー40とバレル50との間のこの空間には、材料供給部20から図2に示した材料流入口44を通じて原材料MRが供給される。
【0020】
バレル50には、回転しているフラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRを加熱するためのバレルヒーター58が埋め込まれている。バレル50の中心には連通孔56が設けられている。
【0021】
図3は、バレル50の上面52側を示す概略平面図である。バレル50の上面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。なお、案内溝54の一端は、連通孔56に接続されていなくてもよい。また、案内溝54は省略することも可能である。
【0022】
フラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRは、溝部42内において可塑化されながら、フラットスクリュー40の回転によって溝部42に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー40の中央部46へと導かれる。中央部46に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、バレル50の中心に設けられた連通孔56を介して吐出部60に供給される。なお、造形材料では、造形材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0023】
図1の吐出部60は、造形材料を吐出するノズル61と、フラットスクリュー40とノズル開口62との間に設けられた造形材料の流路65と、造形材料の吐出を制御する吐出制御部77を備える。
【0024】
ノズル61は、流路65を通じて、バレル50の連通孔56に接続されている。ノズル61は、可塑化部30において生成された造形材料を、先端のノズル開口62からステージ210に向かって吐出する。
【0025】
吐出制御部77は、流路65を開閉する吐出調整部70と、造形材料を吸引して一時的に貯留する吸引部75とを備える。
【0026】
吐出調整部70は、流路65内に設けられており、流路65内で回転することにより流路65の開度を変化させる。本実施形態において、吐出調整部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出調整部70は、制御部300による制御下において、第1駆動部74によって駆動される。第1駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部300は、第1駆動部74を用いて、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部30からノズル61に流れる造形材料の流量、つまり、ノズル61から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。吐出調整部70は、造形材料の吐出量を調整可能であると共に、造形材料の流出のオン/オフを制御可能である。
【0027】
吸引部75は、流路65において吐出調整部70とノズル開口62との間に接続されている。吸引部75は、ノズル61からの造形材料の吐出停止時に、流路65中の造形材料を一時的に吸引することによって、造形材料がノズル開口62から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。本実施形態において、吸引部75は、プランジャーにより構成されている。吸引部75は、制御部300による制御下において、第2駆動部76によって駆動される。第2駆動部76は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャーの並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0028】
ステージ210は、ノズル61のノズル開口62に対向する位置に配置されている。第1実施形態では、ノズル61のノズル開口62に対向するステージ210の造形面211は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。ステージ210には、ステージ210上に吐出された造形材料が急激に冷却することを抑制するためのステージヒーター212が備えられている。ステージヒーター212は制御部300によって制御される。
【0029】
移動機構230は、制御部300の制御下において、ステージ210とノズル61との相対位置を変化させる。本実施形態では、ノズル61の位置が固定されており、移動機構230は、ステージ210を移動させる。移動機構230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。本明細書において、特に断らない限り、ノズル61の移動とは、ノズル61や吐出部60をステージ210に対して相対的に移動させることを意味する。
【0030】
なお、他の実施形態では、移動機構230によってステージ210を移動させる構成の代わりに、ステージ210の位置が固定された状態で、移動機構230がステージ210に対してノズル61を移動させる構成が採用されてもよい。また、移動機構230によってステージ210をZ方向に移動させ、ノズル61をX,Y方向に移動させる構成や、移動機構230によってステージ210をX,Y方向に移動させ、ノズル61をZ方向に移動させる構成が採用されてもよい。これらの構成であっても、ノズル61とステージ210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0031】
制御部300は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部300は、1つ、又は、複数のプロセッサー310と、主記憶装置や補助記憶装置からなる記憶装置320と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。プロセッサー310は、記憶装置320に記憶されたプログラムを実行することによって、情報処理装置400から取得された造形データに従い、造形部110及び移動機構230を制御して、ステージ210上に造形物の造形を行う。なお、制御部300は、コンピューターによって構成される代わりに、回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0032】
図4は、三次元造形装置100が造形物を造形する様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、上述したように、固体状態の原材料MRが可塑化されて造形材料MMが生成される。制御部300は、ステージ210の造形面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の造形面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。
【0033】
制御部300は、ノズル61の移動を繰り返して層MLを形成する。制御部300は、1つの層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に相対移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって造形物を造形していく。
【0034】
制御部300は、例えば、一層分の層MLを完了した場合のノズル61のZ方向への移動や、各層で独立する複数の造形領域がある場合には、ノズル61からの造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、吐出調整部70によって流路65を閉塞させて、ノズル開口62からの造形材料MMの吐出を停止させ、吸引部75によって、ノズル61内の造形材料を一時的に吸引する。制御部300は、ノズル61の位置を変更した後、吸引部75内の造形材料を排出しつつ吐出調整部70によって流路65を開くことによって、変更後のノズル61の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。
【0035】
図5は、情報処理装置400の概略構成を示す説明図である。情報処理装置400は、CPU410とメモリー420と記憶装置430と通信インターフェイス440と入出力インターフェイス450とがバス460によって相互に接続されたコンピューターとして構成されている。入出力インターフェイス450には、キーボードやマウスなどの入力装置470と、液晶ディスプレイなどの表示装置480とが接続されている。情報処理装置400は、通信インターフェイス440を介して、三次元造形装置100の制御部300に接続される。
【0036】
CPU410は、記憶装置430に記憶されたプログラムを実行することによって、データ生成部411として機能する。
【0037】
データ生成部411は、造形物の下方で造形物と接する第1サポート層と、造形物の上方で造形物と接する第2サポート層とを含むサポート構造を造形するためのサポートデータを生成する。データ生成部411は、サポートデータのうちの、第1サポート層を造形するためのデータ、及び、第2サポート層を造形するためのデータを、互いに異なる造形条件に基づいて生成する。本実施形態において、データ生成部411は、サポートデータに加えて、造形物本体を造形するための本体データも生成する。
【0038】
情報処理装置400は、データ生成部411によって生成された本体データとサポートデータとを含む造形データを、三次元造形装置100の制御部300に送信する。制御部300は、受信した造形データに従って、吐出部60及び移動機構230を制御して、材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、造形物を支持するサポート層をステージ210上に造形する。
【0039】
図6は、三次元造形システム10において実行される造形処理のフローチャートである。この造形処理は、三次元造形物の製造方法を実現するための処理である。図6に示すステップS10~S40の処理は、情報処理装置400において実行され、ステップS50~ステップS70の処理は、三次元造形装置100において実行される。
【0040】
ステップS10において、情報処理装置のデータ生成部411は、他のコンピューター、記録媒体、あるいは、記憶装置430から、造形物の三次元形状を表す形状データを取得する。形状データは、三次元CADソフトや三次元CGソフト等を用いて作成された三次元造形物の形状を表すデータである。形状データとしては、例えば、STL形式やAMF形式等のデータを用いることができる。
【0041】
ステップS20において、データ生成部411は、サポート構造に関する造形条件の設定をユーザーから受け付ける。ユーザーは、入力装置470を用いて、表示装置480に表示された設定画面を操作し、造形条件の設定を行う。
【0042】
図7は、造形条件を設定するための設定画面SSの例を示す図である。図8は、造形物MDとサポート構造SCの例を示す図である。図8には、造形物MDの形状として、アルファベットの「F」という文字を表す造形物の形状が示されている。図8に示した例では、サポート構造SCは、第1サポート構造SC1と第2サポート構造SC2とを含んでいる。第1サポート構造SC1は、造形物MDの第1オーバーハング部OB1と第2オーバーハング部OB2との間の領域に配置されている。第2サポート構造SC2は、造形物MDの第2オーバーハング部と、ステージ210の造形面211に対応する最下面LSとの間の領域に配置されている。オーバーハング部とは、造形物のうちの下方に支えのない出っ張りの部分を指す。
【0043】
第1サポート構造SC1は、第1サポート層SL1と、ボディー層BLと、第2サポート層SL2とを含む。第1サポート層SL1は、造形物MDの下方で造形物MDと接する層である。第2サポートSL2層は、造形物MDの上方で造形物MDと接する層である。ボディー層BLは、第1サポート層SL1と第2サポート層SL2とで挟まれた層である。第2サポート構造SC2は、第1サポート層SL1と、ボディー層BLと、ベース層BSとを含む。ベース層BSは、最下面LSに接している。第2サポート構造SC2のボディー層BLは、第1サポート層SL1とベース層BSとで挟まれた層である。なお、第1サポート層SL1は、その上方で造形物MDと接する層とも言える。また、第2サポートSL2層は、その下方で造形物MDと接する層とも言える。
【0044】
図7に示した設定画面SSには、第1サポート層SL1、第2サポート層SL2、ボディー層BL、ベース層BSについて、それぞれ、造形条件として、線幅、積層ピッチ、層数、造形パターン、充填率、輪郭の周数、分離距離、を設定するための項目が配置されている。
【0045】
「線幅」は、ノズル61から吐出する造形材料の幅を指定する項目である。
【0046】
「積層ピッチ」は、1層ごとの高さを指定する項目である。
【0047】
「層数」は、第1サポート層SL1、第2サポート層SL2、ベース層BSのそれぞれについて、それらの層を構成する層数を指定する項目である。
【0048】
「造形パターン」は、それぞれの層の内部領域を埋めるためのノズル61の移動経路を示すパターンを指定する項目である。
【0049】
「充填率」は、指定した造形パターンによって内部領域を埋める面積割合を指定する項目である。
【0050】
「輪郭」の周数は、その層の輪郭を形成するための周数を指定する項目である。
【0051】
「分離距離」は、第1サポート層SL1及び第2サポート層SL2に対して設定可能な項目であり、図8に示す第1サポート層SL1と造形物MDとの垂直方向における隙間GP1の距離、及び、第2サポート層SL2と造形物MDとの垂直方向における隙間GP2の距離を指定する項目である。この分離距離は、造形時においてノズル61を造形済みの最上層から離す距離を表す。そのため、実際の造形物には、隙間は形成されず、造形材料が指定された距離だけ上方から吐出されることになる。なお、分離距離は、実寸法に限らず、層数によって指定可能であってもよい。
【0052】
図9は、造形パターンの例を示す図である。本実施形態では、造形パターンとして、図9に示すパターンAからパターンEまでの異なる造形パターンが指定可能になっている。図9に示した造形パターンは、いずれも、1周分の輪郭の内側に造形パターンが配置された例を示している。本実施形態では、図7に示した設定画面SSにおいて、第1サポート層SL1に対する造形パターンと、第2サポート層SL2に対する造形パターンとは、互いに異なる造形パターンが設定される。例えば、第1サポート層SL1に対して造形パターンAが選択された場合、第2サポート層SL2に対しては、造形パターンB~Eの中から選択可能となる。なお、他の実施形態では、第1サポート層SL1および第2サポート層SL2に対して、同じ造形パターンが設定されてもよい。
【0053】
図10は、充填率の説明図である。図10には、図9に示した造形パターンAの充填率を、90%と50%とに変化させた例を示している。図10に示すように、充填率が高くなるほど、造形パターンを形成する造形材料同士の間隔が狭くなる。
【0054】
図7に示した造形条件のうち、造形パターン以外の項目は省略可能であり、造形パターンのみが、複数のパターンから選択可能であってもよい。
【0055】
図6のステップS30において、データ生成部411は、ステップS10で取得した形状データを解析して、サポート構造を配置可能なサポート領域を決定する。具体的には、データ生成部411は、造形物のオーバーハング部の下方に、サポート領域を設定する。オーバーハング部とは、上述のとおり、造形物のうちの下方に支えのない出っ張りの部分を指す。本実施形態において、オーバーハング部の意味には、ブリッジ部も含む。ブリッジ部とは、造形物において両端が支持された橋状の部分を指す。
【0056】
ステップS40において、データ生成部411は、本体データとサポートデータとを含む造形データを生成する。
【0057】
本体データの生成にあたり、データ生成部411は、ステップS10で取得した形状データを解析して、造形物MDの形状をXY平面に沿って複数の層にスライスする。そして、データ生成部411は、各層の輪郭を形成すると共にその内部領域を予め定められた充填率や造形パターンで埋めるためのノズル61の移動経路を表す移動経路情報を生成する。移動経路情報は、直線状の複数の移動経路を表すデータを含んでいる。移動経路情報に含まれる各移動経路には、その移動経路において吐出される造形材料の吐出量を表す吐出量情報が含まれる。データ生成部411は、造形物MDの全ての層について移動経路情報及び吐出量情報を生成することによって本体データを生成する。本体データは、例えば、Gコードによって表される。
【0058】
サポートデータの生成にあたり、データ生成部411は、ステップS30において決定されたサポート領域に対して、造形条件に含まれる分離距離だけ第1サポート層SL1及び第2サポート層SL2が造形物MDと離間したサポート構造SCを生成する。そして、データ生成部411は、造形条件に含まれる積層ピッチ及び層数に従って、第1サポート層SL1、ボディー層BL、第2サポート層SL2、ベース層BSをそれぞれXY平面に沿って複数の層にスライスする。データ生成部411は、造形条件に含まれる線幅、造形パターン、充填率、輪郭の周数に従って、第1サポート層SL1、ボディー層BL、第2サポート層SL2、ベース層BSを造形するための移動経路情報を生成する。移動経路情報に含まれる各移動経路には、その移動経路において吐出される造形材料の吐出量を表す吐出量情報が含まれる。データ生成部411は、サポート構造SCの全ての層について移動経路情報及び吐出量情報を生成することによってサポートデータを生成する。サポートデータは、本体データと同様に、例えば、Gコードによって表される。
【0059】
図11は、データ生成部411によって生成された造形データを視覚化した例を示す図である。図11に示すように、造形データは、造形物を造形するための本体データBDと、サポート構造SCを造形するためのサポートデータSDを有している。サポートデータSDのうちの、第1サポート層SL1を造形するためのデータD1、及び、第2サポート層SL2を造形するためのデータD2は、互いに異なる造形条件、本実施形態では互いに異なる造形パターンに基づいて生成されている。
【0060】
図6のステップS50において、三次元造形装置100の制御部300は、図6のステップS40で情報処理装置400が生成した造形データを、情報処理装置400から取得する。
【0061】
ステップS60において、制御部300は、情報処理装置400から取得した造形データに従って、吐出部60及び移動機構230を制御することによって、ステージ210の造形面211上に、造形物MD及びサポート構造SCを造形する。サポート構造SCのうち、第1サポート層SL1と第2サポート層SL2とは、図7の設定画面SSで選択された互いに異なる造形パターンで造形される。また、図7の設定画面で、輪郭の周数が1以上に設定されていれば、輪郭領域が造形され、その内部に、設定画面で指定された造形パターンによって、内部領域が造形される。輪郭の周数が0であれば、輪郭領域は造形されず、内部領域のみが造形される。本実施形態では、制御部300は、内部領域の造形速度を輪郭領域の造形速度よりも速くする。本実施形態において、造形速度とは、ノズル61の移動速度のことをいう。設定画面SSには、内部領域及び輪郭領域の造形速度をそれぞれ設定可能な項目が設けられていてもよい。ステップS60のことを、第1工程ともいう。
【0062】
ステップS70において、造形物からサポート構造が分離される。サポート構造は、三次元造形装置100に備えられた切削装置によって切削されてもよい。ステップS70のことを、第2工程ともいう。
【0063】
以上で説明した第1実施形態によれば、サポート構造SCのうち、造形物MDの下方で造形物MDと接する第1サポート層SL1と、造形物MDの上方で造形物MDと接する第2サポート層SL2とが、それぞれ異なる造形パターンによって造形される。そのため、第1サポート層SL1を造形する造形パターンとして、造形物MDを下方から支持しやすい造形パターン(例えば、図9の造形パターンC)を選択し、第2サポート層SL2を造形する造形パターンとして、造形物MDから剥離しやすい造形パターン(例えば、図9の造形パターンA)を選択することで、造形物MDの造形精度と、サポート構造SCの造形物MDからの剥離性とを両立させることが容易になる。
【0064】
また、本実施形態では、サポート構造SCを造形するための造形条件として、造形パターン以外に、(1)第1サポート層SL1又は第2サポート層SL2と造形物MDとの分離距離に関する条件、(2)第1サポート層SL1及び第2サポート層SL2の充填率に関する条件、(3)第1サポート層SL1及び第2サポート層SL2の積層ピッチに関する条件、(4)第1サポート層SL1及び第2サポート層SL2の線幅に関する条件、(5)第1サポート層SL1及び第2サポート層SL2の層数の条件、のうちの少なくとも一つを設定できる。そのため、異なる様々な造形条件によって第1サポート層SL1と第2サポート層SL2とを造形でき、これにより、造形物MDの造形精度と、サポート構造SCの剥離性とを両立させることがより容易になる。例えば、第1サポート層SL1と第2サポート層SL2とで、造形パターンを同一とし、造形パターン以外の造形条件を異ならせることで、造形物MDの造形精度と、サポート構造SCの剥離性とを両立させてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、輪郭領域及び内部領域を有する第1サポート層SL1又は第2サポート層SL2を造形できるので、輪郭領域に沿ってサポート構造SCを造形物MDから容易に分離できる。例えば、サポート層に輪郭領域が形成されない場合、サポート層の内部領域を造形するための造形パターンが造形物に食い込むように接触する場合がある。これに対して、サポート層に輪郭領域が形成されれば、そのような食い込みが発生することを抑制できるので、サポート構造SCを造形物から分離することが容易になる。
【0066】
また、本実施形態では、サポート構造SCの造形時において、内部領域の造形速度を、輪郭領域の造形速度よりも速くする。そのため、輪郭領域の造形精度を確保しつつ、サポート構造SCの造形時間を短縮できる。なお、他の実施形態では、内部領域の造形速度と輪郭領域の造形速度とを同じ速度としてもよいし、内部領域の造形速度を、輪郭領域の造形速度よりも遅くすることも可能である。
【0067】
B.他の実施形態:
(B1)第1実施形態では、図7に示した設定画面SSによって様々な造形条件を設定できる。これに対して、造形条件は、情報処理装置400のデータ生成部411において予め定められていてもよい。この場合、造形物MDの造形精度とサポート構造SCの剥離性とを両立させることができる造形条件を、シミュレーションや実験によって予め定めておく。こうすることで、造形物の造形精度と、サポート構造の剥離性との両立を適確に担保することができる。
【0068】
例えば、第2サポート層SL2の充填率を、第1サポート層SL1の充填率よりも予め小さく定めておくことで、図6のステップS40では、第2サポート層SL2と造形物MDとの密着強度が、第1サポート層SL1と前記造形物MDとの密着強度よりも低くなるようにサポートデータSDを生成できる。第2サポート層SL2と造形物MDとの密着強度が、第1サポート層SL1と造形物MDとの密着強度よりも低ければ、サポート構造SCを、造形物MDと下方で接する第2サポート層SL2から剥離しやすくなり、また、造形物MDと上方で接する第1サポート層SL1によって造形物MDを支持しやすくなる。そのため、造形物MDの造形精度と、サポート構造SCの造形物MDからの剥離性とを両立させることができる。
【0069】
また、例えば、図6のステップS40において、第2サポート層SL2と造形物MDとの分離距離を、第1サポート層SL1と造形物MDとの分離距離よりも大きくなるようにサポートデータSDを生成することによっても、第2サポート層SL2と造形物MDとの密着強度を、第1サポート層SL1と前記造形物MDとの密着強度よりも低くできる。そのため、サポート構造SCを、造形物MDと下方で接する第2サポート層SL2から剥離しやすくなり、また、造形物MDと上方で接する第1サポート層SL1によって造形物MDを支持しやすくなる。この結果、造形物MDの造形精度と、サポート構造SCの造形物MDからの剥離性とを両立させることができる。
【0070】
その他、例えば、第2サポート層SL2の線幅を、第1サポート層SL1の線幅よりも大きくしておくことや、第2サポート層SL2の積層ピッチを、第1サポート層SL1の積層ピッチよりも大きくすることによっても、第2サポート層SL2と造形物MDとの密着強度を、第1サポート層SL1と造形物MDとの密着強度よりも低くすることができる。
【0071】
(B2)第1実施形態では、図6のステップS60において、三次元造形装置100は、輪郭領域及び内部領域を有する第1サポート層SL1及び第2サポート層SL2を造形する。これに対して、三次元造形装置100は、造形物MDと接触している部分を有する第1サポート層SL1又は第2サポート層SL2については、輪郭領域と内部領域とを造形し、サポート構造のうち、造形物MDと接触していない第1サポート層SL1、第2サポート層SL2、ボディー層BL、又は、ベース層BSの少なくともいずれかの層については、内部領域のみを造形し、輪郭領域を造形しないものとしてもよい。
【0072】
図12は、造形物MDと接触している部分を有する第1サポート層SL1と、造形物MDと接触していない第2サポート層SL2との例を示す図である。図12に示した例では、第1サポート層SL1は、造形物MDと接触している部分を有しているため、輪郭領域と内部領域とが造形される。これに対して、第2サポート層SL2は、造形物MDと接触していないため、内部領域のみが造形され、輪郭領域は造形されない。このように、造形物MDと接触している部分を有するサポート層について輪郭領域を造形すれば、サポート層を造形物MDから容易に分離することが可能になり、また、造形物MDと接触していないサポート層について輪郭領域を造形しないことにより、サポート構造SCの造形時間を短縮できると共に、材料の消費量も削減できる。なお、図12に示した例では、サポート構造SCのボディー層BLも、造形物MDと接触していない。そのため、ボディー層BLについても第2サポート層SL2と同様に、輪郭領域を造形しないことで、造形時間をより短縮できる。
【0073】
(B3)上記実施形態の三次元造形装置100は、造形部110を1つ備えているが、三次元造形装置100は、3つの造形部110を備えてもよい。この場合、第1の造形部110からは、造形物MDを造形するための造形材料を吐出させ、第2の造形部110からは、第1のサポート材料を吐出させ、第3の造形部110からは、第2のサポート材料を吐出させる。三次元造形装置100が複数の造形部110を備える場合、造形条件には、サポート層の材料に関する条件が含まれてもよい。このようにすることで、第1サポート層SL1と第2サポート層SL2とを異なる材料で造形することができる。例えば、第1サポート層SL1を硬度の高い材料で造形し、第2サポート層SL2を硬度の低い材料で造形することで、造形精度と、サポート構造SCの剥離性とを両立させることができる。図7に示した設定画面SSには、第1サポート層SL1及び第2サポート層SL2に対してそれぞれ異なる材料を指定するための項目を配置してもよい。なお、第1サポート層SL1と第2サポート層SL2とのうち、いずれか一方は、造形物MDを造形するための造形材料とを同一の材料で造形してもよい。この場合、造形部110は、三次元造形装置100に少なくとも2つ備えられていればよい。
【0074】
(B4)上記実施形態において、造形部110は、フラットスクリュー40によって材料を可塑化している。これに対して造形部110は、例えば、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化するものであってもよい。また、造形部110は、フィラメント状の材料をヒーターで可塑化するものであってもよい。
【0075】
(B5)上記実施形態では、可塑化した材料を積層する材料押出方式を例として説明したが、本開示は、インクジェット方式や、DMD方式(Direct Metal Deposition)、バインダージェット方式等、種々の方式に適用できる。
【0076】
C.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0077】
(1)本開示の第1の形態によれば、材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する、三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、造形条件に従って生成されたサポートデータに基づいて、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層、及び、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層を含む前記サポート構造、を造形する第1工程と、前記第1サポート層及び前記第2サポート層を、前記造形物から分離する第2工程と、を備え、前記造形条件は、複数の造形パターンから選択された前記造形パターンを含み、前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータは、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成される。
このような形態によれば、サポート構造のうちの、造形物と上方で接する第1サポート層と、造形物と下方で接する第2サポート層とをそれぞれ異なる造形パターンによって造形することができるので、造形物の造形精度と、サポート構造の造形物からの剥離性とを両立させることが容易になる。
【0078】
(2)上記形態において、前記サポート構造に関する前記造形条件は、前記造形物との分離距離に関する条件、充填率に関する条件、積層ピッチに関する条件、線幅に関する条件、層数の条件、材料に関する条件、のうちの少なくとも一つを含んでもよい。このような形態であれば、異なる様々な造形条件によって第1サポート層と第2サポート層とを造形できるので、造形物の造形精度と、サポート構造の剥離性とを両立させることがより容易になる。
【0079】
(3)上記形態において、前記第2サポート層と前記造形物との密着強度が、前記第1サポート層と前記造形物との密着強度よりも低くなるように前記サポートデータを生成する工程を含んでもよい。このような形態によれば、サポート構造を、造形物と下方で接する第2サポート層から剥離しやすくなり、また、造形物と上方で接する第1サポート層によって造形物を支持しやすくなる。そのため、造形物の造形精度と、サポート構造の造形物からの剥離性とを両立させることができる。
【0080】
(4)上記形態において、前記積層方向において、前記第2サポート層と前記造形物との距離が、前記第1サポート層と前記造形物との距離よりも大きくなるように前記サポートデータを生成する工程を含んでもよい。このような形態によれば、サポート構造を、造形物と下方で接する第2サポート層から剥離しやすくなり、また、造形物と上方で接する第1サポート層によって造形物を支持しやすくなる。そのため、造形物の造形精度と、サポート構造の造形物からの剥離性とを両立させることができる。
【0081】
(5)上記形態において、前記第1工程において、輪郭領域及び内部領域を有する前記第1サポート層又は前記第2サポート層を造形してもよい。このような形態であれば、輪郭領域を造形することで、サポート構造を造形物から剥離しやすくなる。
【0082】
(6)上記形態において、前記第1工程において、前記第1サポート層又は前記第2サポート層には、輪郭領域と内部領域とが造形され、前記サポート構造のうち、前記造形物と接触していない層の少なくともいずれかの層は、前記内部領域が造形され、前記輪郭領域が造形されなくてもよい。このような形態によれば、造形物と接触するサポート層に輪郭領域が造形されるので、サポート層を造形物から剥離しやすくなり、造形物と接触していない層には輪郭領域が造形されないので、造形時間を短縮できる。
【0083】
(7)上記形態において、前記内部領域の造形速度は、前記輪郭領域の造形速度よりも速くてもよい。このような形態によれば、サポート構造の造形時間を短縮できる。
【0084】
(8)本開示の第2の形態によれば、三次元造形システムが提供される。この三次元造形システムは、材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する造形部と、造形条件に従って生成されたサポートデータに基づいて、前記造形部を制御して、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層と、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層と、前記造形物と、を造形する制御部と、を備え、前記造形条件は、複数の造形パターンから選択された前記造形パターンを含み、前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータは、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成される。
【0085】
(9)本開示の第3の形態によれば、材料を吐出して層を積層方向に積層することで、造形物、及び、前記造形物を支持するサポート構造を造形する三次元造形装置で用いられるサポートデータを生成する情報処理装置が提供される。この情報処理装置は、造形条件に従って、前記造形物の下方で前記造形物と接する第1サポート層、及び、前記造形物の上方で前記造形物と接する第2サポート層、を造形するための前記サポートデータを生成するデータ生成部を備え、前記造形条件は、複数の造形パターンから選択された前記造形パターンを含み、前記データ生成部は、前記サポートデータのうちの、前記第1サポート層を造形するためのデータ、及び、前記第2サポート層を造形するためのデータを、互いに異なる前記造形条件に基づいて生成する。
【0086】
本開示は、上述した三次元造形物の製造方法や三次元造形システム、情報処理装置に限らず、コンピュータープログラムやコンピュータープログラムをコンピューターが読み取り可能に記録した一時的でない有形な記録媒体など、種々の態様によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
10…三次元造形システム、20…材料供給部、22…連通路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、46…中央部、47…上面、48…下面、50…バレル、52…上面、54…案内溝、56…連通孔、58…バレルヒーター、60…吐出部、61…ノズル、62…ノズル開口、65…流路、70…吐出調整部、74…第1駆動部、75…吸引部、76…第2駆動部、77…吐出制御部、100…三次元造形装置、110…造形部、210…ステージ、211…造形面、212…ステージヒーター、230…移動機構、300…制御部、310…プロセッサー、320…記憶装置、400…情報処理装置、410…CPU、411…データ生成部、420…メモリー、430…記憶装置、440…通信インターフェイス、450…入出力インターフェイス、460…バス、470…入力装置、480…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12