(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052601
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/14 20060101AFI20240404BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240404BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240404BHJP
C09K 9/00 20060101ALI20240404BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240404BHJP
【FI】
B32B37/14 Z
C09J4/02
C09J9/02
C09K9/00 A
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023167607
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】111137388
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523371414
【氏名又は名称】昶曜科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SMARTINT, INC.
【住所又は居所原語表記】3F., No.542-16, Zhongzheng Rd., Xinzhuang Dist., New Taipei City, Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】邱達成
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA18C
4F100AK25
4F100AK25C
4F100AK45
4F100AK45C
4F100AR00B
4F100AR00C
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4F100GB48
4F100JB14
4F100JB14C
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4F100YY00C
4J040EL021
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4J040FA261
4J040FA291
4J040HA096
4J040JB08
4J040JB10
4J040LA09
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】エレクトロクロミックフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】第1導電フィルム材上に変色還元層を形成するステップと、第2導電フィルム材上に変色酸化層を形成するステップと、変色還元層を連続的に供給して変色還元層上にイオン伝導コロイドを形成するステップと、変色酸化層が第2導電フィルム材とイオン伝導コロイドとの間に位置するように、変色酸化層が設けられた第2導電フィルム材を連続的に供給されるイオン伝導コロイド上に圧着するステップと、イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成するステップと、を含むエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電フィルム材上に変色還元層を形成するステップと、
第2導電フィルム材上に変色酸化層を形成するステップと、
前記変色還元層を連続的に供給して前記変色還元層上にイオン伝導コロイドを形成するステップと、
前記変色酸化層が前記第2導電フィルム材と前記イオン伝導コロイドとの間に位置するように、前記変色酸化層が設けられた前記第2導電フィルム材を連続的に供給される前記イオン伝導コロイドに圧着するステップと、
前記イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成するステップと、
を含むエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記イオン伝導コロイドの製造方法は、
ポリカーボネート及び過塩素酸リチウムを混合して電解質混合物を形成するステップと、
前記電解質混合物と、アクリル系樹脂を含む紫外光硬化接着剤とを均一に混合して、前記イオン伝導コロイドを形成するステップと、
を含む請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記電解質混合物の含有量は30重量部~40重量部の間であり、前記紫外光硬化接着剤の含有量は60重量部~70重量部の間であり、前記過塩素酸リチウムの含有量は前記電解質混合物の総重量に対して1wt%~15wt%の間である請求項2に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項4】
温度が15℃~70℃の間である場合、前記イオン伝導コロイドの粘度は200cps~10000cpsの間である請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記イオン伝導コロイドの厚さは10μm~100μmの間である請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記変色酸化層が設けられた前記第2導電フィルム材を連続的に供給される前記イオン伝導コロイド上に圧着するステップは、
第1圧着ホイールと第2圧着ホイールの回転によって、前記変色酸化層が設けられた前記第2導電フィルム材を連続的に供給される前記イオン伝導コロイドに圧着するステップを含み、
前記第1圧着ホイールと前記第2圧着ホイールの間の間隔は100μm~500μmである請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記変色還元層を連続的に供給して前記変色還元層上に前記イオン伝導コロイドを形成するステップは、
前記イオン伝導コロイドを連続的に供給される前記変色還元層上に1メートル/分~20メートル/分の速度で塗布するステップを含む請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記イオン伝導コロイドを硬化させて前記固体電解質層を形成するステップは、
波長が365nm~395nmの間の紫外光を前記イオン伝導コロイドに照射するステップを含む請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項9】
第1導電フィルム材と、
前記第1導電フィルム材上に配置される変色還元層と、
前記変色還元層上に配置される固体電解質層と、
前記固体電解質層上に配置される変色酸化層と、
前記変色酸化層上に配置される第2導電フィルム材と、
を備え、
前記第1導電フィルム材、前記変色還元層、前記固体電解質層、前記変色酸化層、及び前記第2導電フィルム材のそれぞれの少なくとも一方の側に設けられるフレーム素子を有さないエレクトロクロミックフィルム。
【請求項10】
前記エレクトロクロミックフィルムは、少なくとも前記側に接触する前記フレーム素子を有さず、前記フレーム素子の材料は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、又はそれらの組み合わせを含む請求項9に記載のエレクトロクロミックフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレクトロクロミックフィルム及びエレクトロクロミックフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販されているエレクトロクロミック素子のほとんどは、ベース層板としてガラス基板等の硬質材を使用しているため、エレクトロクロミック素子が生産過程において収納されることができず、独立したシート状構造でしか実装することができない。独立したシート状のエレクトロクロミック素子は量産に適しておらず、生産能力は比較的に限られている。シート状構造のエレクトロクロミック素子は、材料のサイズ、形状及び湾曲状況(曲面)によって用途が制限されやすいため、広く使用されることができず、また使用の際に物品のサイズに応じて、裁断後に廃棄物が発生しやすい。また、エレクトロクロミック素子は、プロセスにおいて電解質溶液を充填できる追加のフレーム接着剤を作る必要がある。そうしないと、電解質がエレクトロクロミック素子の外部に染み出しやすくなる。したがって、上記問題をどのように解決するかは、当業者が積極的に研究する課題となる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の幾つかの実施形態によれば、本開示は、第1導電フィルム材上に変色還元層を形成するステップと、第2導電フィルム材上に変色酸化層を形成するステップと、変色還元層を連続的に供給して変色還元層上にイオン伝導コロイドを形成するステップと、変色酸化層が第2導電フィルム材とイオン伝導コロイドとの間に位置するように、変色酸化層が設けられた第2導電フィルム材を連続的に供給されるイオン伝導コロイド上に圧着するステップと、イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成するステップと、を含むエレクトロクロミックフィルムの製造方法を提供する。
【0004】
本開示の幾つかの実施形態において、イオン伝導コロイドの製造方法は、ポリカーボネート及び過塩素酸リチウムを均一に混合して、電解質混合物を形成するステップと、電解質混合物と、アクリル系樹脂を含む紫外光硬化接着剤とを均一に混合して、イオン伝導コロイドを形成するステップと、を含む。
【0005】
本開示の幾つかの実施形態において、電解質混合物の含有量は30重量部~40重量部の間であり、紫外光硬化接着剤の含有量は60重量部~70重量部の間であり、過塩素酸リチウムの含有量は電解質混合物の総重量に対して1wt%~15wt%の間である。
【0006】
本開示の幾つかの実施形態において、温度が15℃~70℃の間である場合、イオン伝導コロイドの粘度は200cps~10000cpsの間である。
【0007】
本開示の幾つかの実施形態において、イオン伝導コロイドの厚さは10μm~100μmの間である。
【0008】
本開示の幾つかの実施形態において、変色酸化層が設けられた第2導電フィルム材を連続的に供給されるイオン伝導コロイドに圧着するステップは、第1圧着ホイールと第2圧着ホイールの回転によって、変色酸化層が設けられた第2導電フィルム材を連続的に供給されるイオン伝導コロイド上に圧着するステップを含み、第1圧着ホイールと第2圧着ホイールとの間の間隔は100μm~500μmの間である。
【0009】
本開示の幾つかの実施形態において、変色還元層を連続的に供給して変色還元層上にイオン伝導コロイドを形成するステップは、イオン伝導コロイドを連続的に供給される変色還元層上に1メートル/分~20メートル/分の速度で塗布するステップを含む。
【0010】
本開示の幾つかの実施形態において、イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成するステップは、波長が365nm~395nmの間の紫外光をイオン伝導コロイドに照射するステップを含む。
【0011】
本開示の他の実施形態によれば、エレクトロクロミックフィルムは、第1導電フィルム材と、第1導電フィルム材上に配置される変色還元層と、変色還元層上に配置される固体電解質層と、固体電解質層上に配置される変色酸化層と、変色酸化層上に配置される第2導電フィルム材と、を含む。エレクトロクロミックフィルムは、第1導電フィルム材、変色還元層、固体電解質層、変色酸化層、及び第2導電フィルム材のそれぞれの少なくとも一方の側に設けられるフレーム素子を有さない。
【0012】
本開示の幾つかの実施形態において、エレクトロクロミックフィルムは、少なくとも前記側に接触するフレーム素子を有さず、フレーム素子の材料は、アクリル樹脂(Acrylic Resin)、エポキシ樹脂(Epoxy)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0013】
本開示の上記実施形態によれば、本開示は、従来のガラス基板等の硬質材をベース層板とする板材状のエレクトロクロミック素子を改良してエレクトロクロミックフィルムを形成するだけでなく、具体的なプロセスの改良により、エレクトロクロミックフィルムの製造ステップをロールツーロール(roll to roll)プロセスに統合する。このようにして、従来のガラス基板等の硬質材をベース層板とする板材(シート)状のエレクトロクロミック素子ではなく、ロール状で且つ膜状のエレクトロクロミックフィルムを得ることができる。したがって、エレクトロクロミックフィルムは、バックエンドの設計に応じて適切な形状やサイズに直接裁断することができ、エレクトロクロミックフィルムの製造方法全体は、エレクトロクロミックフィルムの使用時の最終形状、サイズ及び曲率に制限されない。一方、ロールツーロールプロセスでエレクトロクロミックフィルムを形成することにより、生産効率や歩留まりが向上し、排気ガス又は廃液の排出を回避し、貯蔵及び輸送の利便性が向上するだけでなく、従来のガラスプロセスに比べて、小さい生産拠点で生産することができ、プロセスの利便性が大幅に向上し、生産能力が制限されない。また、本開示の製造方法で製造されたエレクトロクロミックフィルムは、フレーム接着剤(フレーム)の配置を省略してよい。つまり、エレクトロクロミックフィルムにおける電解液の漏れを回避するために追加のフレーム接着剤を導入する必要がないため、エレクトロクロミックフィルムの適用性及び実装利便性が大幅に向上し、エレクトロクロミックフィルムが様々な分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の上記及び他の目的、特徴、利点及び実施例をより明確且つ理解しやすくするために、添付図面を以下に説明する。
【
図1】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムのプロセスを示す概略図である。
【
図3A】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムを示す斜視概略図である。
【
図3B】
図3Aのエレクトロクロミックフィルムの線分A~A’に沿って切った断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の複数の実施形態を開示し、説明を明確にするために、数多くの実務上の細部を下記の叙述で合わせて説明する。しかしながら、これらの実務上の細部が本開示を限定するためのものではないことを理解されたい。即ち、本開示の一部の実施形態において、これらの実務上の細部は、必要ではないため、本開示を限定するために用いられない。
【0016】
「下」又は「底部」、「上」又は「頂部」等の相対的な用語は、図面に示されるように、本明細書において1つの素子と別の素子との間の関係を説明するために用いられてよいことを理解されたい。相対的な用語は、図面に示される方向以外に、装置の異なる方向を含むことを理解されたい。例を挙げると、図面における装置が反転されると、他の素子の「下」側にあると記述される素子が他の素子の「上」側に方向付けられる。したがって、例示的な用語「下」は、図面における特定の方向によって、「下」及び「上」の方向を含んでよい。同様に、図面における装置が反転されると、他の素子の「下」又は「下方」にあると記述される素子は、他の素子「上方」に方向付けられる。したがって、例示的な用語「下」又は「下面」は、上方及び下方の方向を含んでよい。
【0017】
本開示は、特殊なプロセスの改良によって、エレクトロクロミックフィルムの製造ステップをロールツーロール(roll to roll)プロセスに統合するエレクトロクロミックフィルムの製造方法を提供する。このように、生産効率及び歩留まりを向上させ、排気ガスや廃液の排出を回避し、貯蔵及び輸送の利便性を向上させるだけでなく、従来の板材(シート)状のエレクトロクロミック素子に代えて、ロール状のエレクトロクロミックフィルムを形成することができる。これにより、ロール状のエレクトロクロミックフィルムは、バックエンドの設計に応じて適切な形状やサイズに直接裁断することができ、エレクトロクロミックフィルムの製造方法全体は、エレクトロクロミックフィルムの使用時の最終形状、サイズ及び湾曲弧度に制限されない。また、本開示の製造方法で製造されたエレクトロクロミックフィルムは、フレーム接着剤(フレーム)の配置を省略してよい。つまり、エレクトロクロミックフィルムにおける電解液の漏れを回避するために追加のフレーム接着剤を導入する必要がないため、エレクトロクロミックフィルムの適用性及び実装利便性が大幅に向上し、エレクトロクロミックフィルムが様々な分野に適用することができる。本開示のエレクトロクロミックフィルムは、建築用カーテンガラス、採光窓、スマート窓、室内の間仕切り壁、自動車バックミラー又はエクステリアミラー、自動車のサンルーフ、サイドウィンドウ及びフロントガラス(自動車、大型陸上輸送車、地下鉄、路面電車、高速鉄道、航空機、船舶等に適用される)、ヘルメットレンズ、個人用ウェアレンズ(色変更メガネ、スノーゴーグル、又は安全ゴーグル)、3Cバーチャルリアリティレンズ等の様々な分野に適用することができる。
【0018】
図1を参照されたい。それは本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法を示すフローチャートである。エレクトロクロミックフィルムの製造方法は、ステップS10~ステップS50を含み、ステップS10~ステップS50を順次行ってよい。ステップS10では、第1導電フィルム材上に変色還元層を形成する。ステップS20では、第2導電フィルム材上に変色酸化層を形成する。ステップS30では、変色還元層を連続的に供給して、変色還元層上にイオン伝導コロイドを形成する。ステップS40では、変色酸化層が設けられた第2導電フィルム材を連続的に供給されるイオン伝導コロイド上に圧着する。ステップS50では、イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成する。以下の記述において、
図2、
図3A及び
図3Bで上記各ステップを詳しく説明する。
図2は、本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムのプロセスの概略図を示し、
図3Aは、本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルム100を示す斜視概略図であり、
図3Bは、
図3Aのエレクトロクロミックフィルム100の線分A~A’に沿って切った断面概略図である。
【0019】
まず、ステップS10において、第1導電フィルム材110上に変色還元層120を形成する。幾つかの実施形態において、ロールツーロールプロセスによって変色還元層120を連続的に供給される第1導電フィルム材110の表面111に形成してよい。幾つかの実施形態において、第1導電フィルム材110は、基材115、及び基材115の表面116に配置される酸化インジウムスズ導電フィルム117を含んでよく、基材115の材料は、ポリエチレンテレフタレートを含んでよい。基材115の厚さH1は、38μm~188μmの間、好ましくは75μm~125μmの間、より好ましくは100μm~125μmの間であってよい。それにより第1導電フィルム材110は、一定の支持力及び良好な可撓性を兼ね備え、ロールツーロールプロセスへの統合に有利である。幾つかの実施形態において、酸化インジウムスズ導電フィルム117の表面抵抗値は、5Ω/□~50Ω/□の間であってよく、それによりエレクトロクロミックフィルム100は適切な電気的仕様を有する。
【0020】
幾つかの実施形態において、変色還元層120が酸化インジウムスズ導電フィルム117の基材115と反対側の表面118に配置されるように、変色還元層120を蒸着又はスパッタリングによって形成してよい。蒸着又はスパッタリングによって形成された変色還元層120は、良好な材料密度及び材料分布の均一性を有し、脱落や亀裂しにくく、電場が変化しても安定してイオンを供給することができる。スピンコーティング(spin coating)、メッキ、ウェットコーティング等を用いたプロセスに比べて、蒸着又はスパッタリングによって変色還元層120を形成することに利点があることを補足説明する。詳しくは、スピンコーティング、メッキ、ウェットコーティング等のプロセスを用いる場合には、スラリーの付着性が悪く、変色還元層120が脱落しやすくなり、変色ができなくなったり、耐用年数が短くなったりする状況が発生する。幾つかの実施形態において、変色還元層120の材料は、酸化タングステンを含んでよい。幾つかの実施形態において、変色還元層120の厚さH2は、50nm~800nmの間、好ましくは100nm~600nmの間、より好ましくは100nm~400nmの間であってよい。それにより変色還元層120は、電場が変化しても安定してイオンを供給することができ(安定した色変化が発生する)、良好な可撓性を有し、厚過ぎないため、ロールツーロールプロセスへの統合に有利である。
【0021】
次に、ステップS20では、第2導電フィルム材130上に変色酸化層140を形成する。幾つかの実施形態において、ロールツーロールプロセスによって変色酸化層140を連続的に供給される第2導電フィルム材130の表面131に形成してよい。幾つかの実施形態において、第2導電フィルム材130は、基材135、及び基材135の表面136に配置される酸化インジウムスズ導電フィルム137を含んでよい。基材135の材料は、ポリエチレンテレフタレートを含んでよく、基材135の厚さH3は、38μm~188μmの間、好ましくは75μm~125μmの間、より好ましくは100μm~125μmの間であってよい。それにより、第2導電フィルム材130は、一定の支持力及び良好な可撓性を兼ね備え、ロールツーロールプロセスへの統合に有利である。幾つかの実施形態において、酸化インジウムスズ導電フィルム137の表面抵抗値は、5Ω/□~50Ω/□の間であり、それによりエレクトロクロミックフィルム100は適切な電気的仕様を有する。第1導電フィルム材110及び第2導電フィルム材130を同じ材料、厚さ及び仕様で形成することにより、エレクトロクロミックフィルム100は、構造の安定性及び電気的安定性の両方において優れた性能を有することができることを説明すべきである。
【0022】
幾つかの実施形態において、変色酸化層140が酸化インジウムスズ導電フィルム137の基材135と反対側の表面138に配置されるように、変色酸化層140を蒸着又はスパッタリングによって形成してよい。蒸着又はスパッタリングによって形成された変色酸化層140は、良好な材料密度及び材料分布の均一性を有し、脱落や亀裂が生じにくく、電場が変化しても安定してイオンを供給することができる。スピンコーティング(spin coating)、メッキ、ウェットコーティング等を用いたプロセスに比べて、蒸着又はスパッタリングによって変色酸化層140を形成する方は利点があることを補足説明する。詳しくは、スピンコーティング、メッキ、ウェットコーティング等のプロセスを用いる場合には、スラリーの付着性が悪く、変色還元層120が脱落しやすくなり、変色ができなくなったり、耐用年数が短くなったりする状況が発生する。幾つかの実施形態において、変色酸化層140の材料は、酸化ニッケルを含んでよい。幾つかの実施形態において、変色酸化層140の厚さH4は、100nm~800nmの間、好ましくは200nm~700nmの間、より好ましくは400nm~600nmの間であってよい。それにより変色酸化層140は、電場が変化しても安定してイオンを受けることができ(安定した色変化が発生する)、良好な可撓性を有し、厚過ぎないため、ロールツーロールプロセスへの統合に有利である。幾つかの実施形態において、変色還元層120と変色酸化層140との反応速度が異なるため、変色酸化層140の厚さH4を変色還元層120の厚さH2よりも少なくとも100nm大きくなるように調整してよい。それにより変色酸化層140と変色還元層120との組み合わせは好ましいエレクトロクロミック性能をもたらす。
【0023】
次に、ステップS30において、変色還元層120を連続的に供給して、変色還元層120上にイオン伝導コロイドGを形成する。より詳しくは、変色還元層120が配置された第1導電フィルム材110は、第1搬送ホイールR1の回転によってロールツーロールプロセスにおいて搬送されることができ、それにより変色還元層120が配置された第1導電フィルム材110を継続的に、且つ途切れることなく供給することができる。それと同時にイオン伝導コロイドGを第1搬送ホイールR1に供給し、それにより変色還元層120の第1導電フィルム材110と反対側の表面121はスプレーコーターMから供給されたイオン伝導コロイドGを受けることができる。幾つかの実施形態において、スプレーコーターMの塗布速度は1メートル/分~20メートル/分の間であってよく、つまり、イオン伝導コロイドGを連続的に供給される変色還元層120の表面121に1メートル/分~20メートル/分の速度で塗布することにより、イオン伝導コロイドGを適切な量及び適切な密度で変色還元層120の表面121に配置することができる。詳しくは、スプレーコーターMの塗布速度が20メートル/分を超えると、変色還元層120の表面121が単位面積当たりに担持するイオン伝導コロイドGの含有量が低過ぎる可能性がある。即ち、変色還元層120の表面121におけるイオン伝導コロイドGの分布が疎らすぎて、変色還元層120及び変色酸化層140をその後に緊密に接着することができない。スプレーコーターMの塗布速度が1メートル/分未満であると、変色還元層120の表面121が単位面積当たりに担持するイオン伝導コロイドGの含有量が多過ぎる可能性があり、その後の圧着間に接着剤溢れが発生する状況を引き起こしやすいだけでなく、材料の無駄にもなる。好ましい実施形態において、スプレーコーターMの塗布速度は、好ましい接着効果を達成するように、2メートル/分~6メートル/分の間であってよい。
【0024】
一方、スプレーコーターMの塗布速度を上記範囲に制御することは、変色還元層120の表面121に形成されるイオン伝導性コロイドGの厚さH5を制御することにも寄与し、イオン伝導性コロイドGの厚さH5を10μm~100μmの間に制御することができる。このように、フィルム材(例えば、イオン伝導コロイドG及び変色還元層120が配置された第1導電フィルム材110)を搬送するときの安定性を向上させるだけでなく、後の圧着の間の接着剤溢れの発生を回避することもでき、更に、イオン伝導コロイドGをその後に硬化した後に形成される固体電解質層150が良好なイオン伝導性を有するように確保することもできる。詳しくは、イオン伝導コロイドGの厚さH5が10μm未満であると、後の圧着の際に破断点が形成される可能性があり、形成された固体電解質層150の分布が不連続となり、良好なイオン伝導性を提供することができない。イオン伝導コロイドGの厚さH5が100μmを超えると、その後の圧着が困難となる可能性があり、イオン伝導コロイドGの厚さH5が厚ければ厚いほど、電子伝導効率が低くなり、変色速度が遅くなり、本開示に強調される「フィルム状」のエレクトロクロミックフィルム100の形成に不利である。好ましい実施形態において、イオン伝導コロイドGの厚さH5を、上記の好ましい効果を達成するように、20μm~50μmの間に更に制御してよい。幾つかの実施形態において、変色還元層120の表面121に形成されたイオン伝導コロイドGの厚さH5が、硬化後の固体電解質層150の厚さH5である。
【0025】
本開示では、イオン伝導コロイドGの塗布をロールツーロールプロセスに統合するために、特殊な改良を経たイオン伝導コロイドGを更に使用することを説明すべきである。イオン伝導コロイドGは、最終的に固体電解質層150に硬化することができ、それにより最終的に形成されたエレクトロクロミックフィルム100に、フレーム接着剤の配置を省略してよい(この部分は、以下でより詳細に説明する)。それにより、エレクトロクロミックフィルム100を異なる形状や弧度の物体に応じて配置することができ、エレクトロクロミックフィルム100の適用性及び実装利便性が大幅に向上し、エレクトロクロミックフィルム100は様々な分野に適用することができる。
【0026】
具体的には、イオン伝導コロイドGの製造方法は、以下のステップを含んでよい。まず、過塩素酸リチウム(LiClO4)をポリカーボネート(Polycarbonate、PC)に加えて、均一に分散し混合するように8時間~12時間撹拌して、電解質混合物を形成する。次に、電解質混合物を紫外光硬化接着剤に加え、均一に分散し混合するようにホモジナイザーで8時間~12時間撹拌した後、光開始剤を加えて0.5時間~2時間撹拌して、イオン伝導コロイドGを形成する。幾つかの実施形態において、電解質混合物の含有量は30重量部~40重量部の間であってよく、紫外光硬化接着剤の含有量は60重量部~70重量部の間であってよく、過塩素酸リチウムの含有量は電解質混合物の総重量に対して1wt%~15wt%の間であってよい。詳しくは、電解質混合物の含有量が40重量部を超え(又は紫外光硬化接着剤の含有量が60重量部未満)、且つ過塩素酸リチウムの含有量が15wt%を超えると、イオン伝導コロイドG中のリチウム塩(過塩素酸リチウム)が多すぎて、均一に分散しにくく、塊(ダマ、沈殿)に凝集しやすくなる。また紫外光硬化接着剤の含有量が少なすぎるため、イオン伝導コロイドG中の局所的なブロックが完全に硬化できず、接着剤溢れ(又は接着剤漏れ)のリスクがある。電解質混合物の含有量が30重量部未満(又は紫外光硬化接着剤の含有量が70重量部を超える)、且つ過塩素酸リチウムの含有量が1wt%未満であると、イオン伝導コロイドG中のリチウム塩(過塩素酸リチウム)が少なすぎて、十分なイオン伝導性を提供できない可能性がある。また紫外光硬化接着剤の含有量が多すぎるため、動的なロールツーロールプロセスにおいて迅速に且つ完全に硬化することに間に合わない可能性があり、同様に接着剤溢れ(又は接着剤漏れ)のリスクがある。好ましい実施形態において、電解質混合物の総重量に対して、過塩素酸リチウムの含有量は、上記の好ましい効果を達成するように、1wt%~15wt%の間であってよく、より好ましくは4wt%~10wt%の間であってよい。
【0027】
幾つかの実施形態において、紫外光硬化接着剤は、アクリル系樹脂(又はアクリル系感圧樹脂)を含んでよい。例えば、アクリル系(感圧)樹脂は、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、又はエポキシアクリレートであってよい。上記アクリル系樹脂の紫外光硬化接着剤は、特定の紫外光波長範囲内で迅速に硬化することができるため、硬化プロセスをロールツーロールプロセスに統合することに寄与し、硬化によって提供されるエネルギーが高すぎたり、硬化時間が長すぎたりすることによるエレクトロクロミックフィルム100における他の層(例えば、変色還元層120及び変色酸化層140)の損傷を回避することができ、これについては以下に説明する。前述のように、イオン伝導コロイドGは、紫外光に照射された後に迅速に反応して硬化するように、適量の光開始剤を含んでよい。具体的には、本開示で選択可能な光開始剤は、アシルホスフィンオキシド系材料(型番:Irgacure(登録商標)TPO、Irgacure(登録商標)819)を含み、電解質混合物の総重量に対して、光開始剤の含有量は、0.5wt%~2.5wt%の間であってよく、それにより最適な硬化効果を達成し、硬化した固体電解質層150において残存した光開始剤が他の成分を更に分解して他の成分の分解を引き起こすことを回避し、固体電解質層150のイオン伝導性が時間の経過とともに急速に低下することを回避することができる。詳しくは、光開始剤の含有量が0.5wt%未満であると、イオン伝導コロイドGが完全に硬化できない可能性がある。光開始剤の含有量が2.5wt%を超えると、光開始剤の不完全な消耗で固体電解質層150に残存する可能性がある。
【0028】
一方、イオン伝導コロイドGの粘度は、固体電解質層150がロールツーロールプロセスによってエレクトロクロミックフィルム100に確実に配置されるか否かにとって重要であり、固体電解質層150において良好なイオン伝導性を達成するように電解質が均一に分散できるか否かにとっても重要である。詳しくは、イオン伝導コロイドGの粘度は、その流動性、粘性、及びその中のリチウム塩の分散性に影響を与える可能性がある。イオン伝導コロイドGの粘度が高すぎると、イオン伝導コロイドGの流動性が低過ぎて粘性が高過ぎるため、スプレーコーターMのノズルに塊として堆積しやすくなり、また担持面(例えば、変色還元層120の表面121)において広がりにくくなり、動的なロールツーロールプロセスにおける圧着ステップの前に均一に分散することに間に合わない。それにより、最終的に形成された固体電解質層150が均一な厚さを有さず、固体電解質層150のイオン伝導性に影響を与え、また、イオン伝導コロイドG中のリチウム塩の不均一な分散によって塊に凝集したり、堆積したりしやすくなることを引き起こす。イオン伝導コロイドGの粘度が低すぎると、イオン伝導コロイドGの流動性が高過ぎて粘性が低過ぎるため、動的なロールツーロールプロセスにおいて担持面(例えば、変色還元層120の表面121)に安定して配置することに不利であり、一定の粘性を有するコロイドとしても適さない。以上より、本開示は、ロールツーロールプロセスの加工温度範囲内(15℃~70℃の間)において、ロールツーロールプロセスにおけるイオン伝導コロイドG全体の塗布性に有利であるように、イオン伝導コロイドGの粘度を200cps~10000cpsの範囲内に制御してよい。好ましい実施形態において、25℃~40℃の加工範囲において、イオン伝導コロイドGの粘度を更に250cps~500cpsの範囲に制御してよく、それにより上記の好ましい効果を達成し、ロール状のエレクトロクロミックフィルム100全体の安定した品質を維持することができる。イオン伝導コロイドGの粘度は、BROOKFIELD(型番:DV-E)の粘度計を用いて測定したものであることを補足説明する。幾つかの実施形態において、イオン伝導コロイドGが塗布の間で適切な粘度を維持するのを確保するために、恒温槽(図示せず)を用いて塗布対象のイオン伝導コロイドGを収容してよい。言い換えれば、恒温槽の温度を15℃~70℃の間、好ましくは25℃~40℃の間に制御してよい。
【0029】
幾つかの実施形態において、ステップS30において、イオン伝導コロイドGを連続的に供給される変色酸化層140の第2導電フィルム材130と反対側の表面141に形成してもよい。言い換えれば、イオン伝導コロイドGを、実際のプロセス条件によって、連続的に供給される変色還元層120の表面121又は連続的に供給される変色酸化層140の表面141に選択的に形成してよい。
【0030】
次に、ステップS40において、変色酸化層140が第2導電フィルム材130とイオン伝導コロイドGとの間に位置するように、変色酸化層140が設けられた第2導電フィルム材130を、連続的に供給され、且つ変色還元層120の表面121に配置されたイオン伝導コロイドGに圧着する。詳しくは、変色酸化層140が設けられた第2導電フィルム材130が第2搬送ホイールR2の回転によってロールツーロールプロセスにおいて搬送されることができ、それにより変色酸化層140が設けられた第2導電フィルム材130は、第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2との間に搬送される。それと同時に、イオン伝導コロイドG及び変色還元層120が設けられた第1導電フィルム材110は、第1搬送ホイールR1の回転によって第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2との間に搬送されることができる。ここで、第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2は、変色酸化層140が設けられた第2導電フィルム材130を連続的に供給されるイオン伝導コロイドGに圧着するように配置され、そして第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2との回転方向が反対である(例えば、第1圧着ホイールP1は時計回り方向に回転し、第2圧着ホイールP2は反時計回り方向に回転する)。
【0031】
幾つかの実施形態において、第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2との間の間隔dは、100μm~500μmの間であってよく、即ち、間隔dは、良好な圧着強度を提供するように、本開示で予想されるエレクトロクロミックフィルム100全体の厚さの85%~105%であってよい。詳しくは、第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2との間の間隔dが100μmより小さい(即ち、エレクトロクロミックフィルム100全体の厚さの85%より小さい)と、接着剤の滲みが発生し、イオン伝導コロイドGの配置状態に影響を与える可能性がある。第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2との間の間隔dが500μmより大きい(即ち、エレクトロクロミックフィルム100全体の厚さの105%より大きい)と、各層の間が緊密に接着できず、エレクトロクロミックフィルム100の構造安定性に影響を与える可能性がある。幾つかの実施形態において、各層の張力を制御することで最終的に形成されるエレクトロクロミックフィルム100が良好な平坦性を有するように、第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2との回転速度比は、1.5:1.0~1.0:1.5(例えば、1:1)であってよい。幾つかの実施形態において、イオン伝導コロイドGが搬送過程においても良好なレベリング性を有するのを確保するために、第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2のそれぞれのホイール温度は、15℃~70℃の間であってよく、好ましくは25℃~40℃の間であってよい。幾つかの実施形態において、第1圧着ホイールP1及び第2圧着ホイールP2はそれぞれ、独立して動作する異なるモータによって駆動されてよい。
【0032】
次に、ステップS50において、イオン伝導コロイドGを硬化させて固体電解質層150を形成する。詳しくは、各層(第1導電フィルム材110、変色還元層120、イオン伝導コロイドG、変色酸化層140、及び第2導電フィルム材130)が第1圧着ホイールP1と第2圧着ホイールP2に圧着された後、各層は紫外光源Uによって、ロールツーロールプロセスの搬送の間で紫外光に照射される。言い換えれば、変色還元層120及び変色酸化層140の間に挟まれたイオン伝導コロイドGに紫外光を照射してよく、それによりイオン伝導コロイドGを硬化させて固体電解質層150を形成し、変色還元層120と変色酸化層140を緊密で且つ確実に接着する。前述のように、本開示は、特定の紫外光波長範囲内で迅速に硬化できるアクリル系樹脂を紫外光硬化接着剤として選択し、当該特定の紫外光波長範囲は、エレクトロクロミックフィルム100中の他の層への損傷を回避することができる。具体的には、紫外光の波長は、365nm~395nmであってよい。この波長範囲が小さいため、比較的集中的なエネルギーを提供することができ、それによりイオン伝導コロイドGは、ロールツーロールプロセスにおいて紫外光源Uを速く通過する必要があっても(例えば、1メートル/分~20メートル/分の搬送速度で紫外光源Uを通過する)、徹底的に硬化することができる。幾つかの実施形態において、紫外光照射範囲の長さ(搬送方向に平行な長さ)は、1メートル~3メートルの間であってよく、紫外光照射範囲の幅(搬送方向に垂直な長さ、幅)は、300mm~1600mmの間であってよく、それにより全てのイオン伝導コロイドGが紫外光の照射を確実に受けて硬化して固体電解質層150を形成するのを確保する。
【0033】
少なくとも上記ステップS10~S50を行った後、エレクトロクロミックフィルム100を形成するために巻き取ってよい。幾つかの実施形態において、実際の応用ニーズに応じて所望のサイズや形状のエレクトロクロミックフィルム100を形成するように、ロール状のエレクトロクロミックフィルム100に切断プロセスを更に行ってよい。
図3A及び
図3Bに示すように、本開示のエレクトロクロミックフィルム100は、第1導電フィルム材110、変色還元層120、固体電解質層150、変色酸化層140、及び第2導電フィルム材130を含む。変色還元層120は第1導電フィルム材110上に配置され、固体電解質層150は変色還元層120上に配置され、変色酸化層140は固体電解質層150上に配置され、第2導電フィルム材130は変色酸化層140上に配置される。エレクトロクロミックフィルム100において、変色還元層120は、エレクトロクロミックフィルム100が電界変化されると、変色酸化層140と酸化還元反応を起こし、変色還元層120中のイオンが変色酸化層140に移動すると変色還元層120が色変化を起こし、変色酸化層140が変色還元層120中のイオンを受けて酸化反応を起こし、同様に色変化を起こすように設定される。例えば、変色酸化層140に酸化タングステンが含まれ、エレクトロクロミックフィルム100の電界が変化しない場合、変色酸化層140は透明となり、エレクトロクロミックフィルム100の電界が変化した場合、変色酸化層140は青色となり、それによりエレクトロクロミックフィルム100の透光性が変化する。
【0034】
説明すべきこととして、切断プロセスを経て形成されたエレクトロクロミックフィルム100中の各層には、実質的に面一する側壁Sがあり、また固体電解質層150の設置により、本開示のエレクトロクロミックフィルム100は、固体電解質層150におけるイオン伝導物質の流出を防止するために、エレクトロクロミックフィルム100の側壁Sに追加のフレーム接着剤(フレーム)を設ける必要がなく、そして上記ロールツーロールプロセスの設計により、変色還元層120及び変色酸化層140が互いに密着することができるため、変色還元層120と変色酸化層140の剥離(剥がれ)を防止するために、エレクトロクロミックフィルム100の側壁Sに追加のフレーム接着剤(フレーム)を設ける必要もない。言い換えれば、エレクトロクロミックフィルム100は、第1導電フィルム材110、変色還元層120、固体電解質層150、変色酸化層140、及び第2導電フィルム材130のそれぞれの少なくとも一方の側に設けられ、且つ少なくとも該当側に接触するフレーム接着剤を有さないため、エレクトロクロミックフィルム100の側壁Sが外部環境に露出する。具体的には、従来のエレクトロクロミック素子に使用されるフレーム接着剤の材料は通常、アクリル樹脂(Acrylic Resin)、エポキシ樹脂(Epoxy)又はそれらの組み合わせ(例えば、液晶ワン・ドロップ・フィル(One Drop Filling;ODF)プロセス用フレーム接着剤材料、Sealフレーム接着剤(メーカー:積水化学、三井化学、協立協立及び日本化薬))等を含んでよいが、本開示のエレクトロクロミックフィルム100は、上記材料を含むフレーム接着剤を有さない。
【0035】
幾つかの実施形態において、エレクトロクロミックフィルム100は、硬化層160を更に含んでよい。硬化層160は、各層を傷や摩耗から保護し、エレクトロクロミックフィルム100の耐用年数を延ばすことができる。幾つかの実施形態において、エレクトロクロミックフィルム100の可撓性及び軽量薄化性を確保するために、硬化層160の材料は樹脂混合物等を含んでよい。幾つかの実施形態において、プロセスの利便性と生産能力の向上に有利であるように、硬化層160の積層をロールツーロールプロセスに統合してもよい。
【0036】
本開示の上記実施形態によれば、本開示は、従来ではガラス基板等の硬質材をベース層板とする板材状のエレクトロクロミック素子を改良してエレクトロクロミックフィルムを形成するだけでなく、具体的なプロセスの改良により、エレクトロクロミックフィルムのプロセスをロールツーロール(roll to roll)プロセスに統合する。このようにして、従来のガラス基板等の硬質材をベース層板とする板材(シート)状のエレクトロクロミック素子ではなく、ロール状で且つ膜状のエレクトロクロミックフィルムを得ることができる。したがって、エレクトロクロミックフィルムは、バックエンドの設計に応じて適切な形状やサイズに直接裁断することができ、エレクトロクロミックフィルムの製造方法全体は、エレクトロクロミックフィルムの使用時の最終形状、サイズ及び湾曲弧度に制限されない。一方、ロールツーロールプロセスでエレクトロクロミックフィルムを形成することにより、生産効率や歩留まりが向上し、排気ガス又は廃液の排出を回避し、貯蔵及び輸送の利便性が向上するだけでなく、従来のガラスプロセスに比べて、小さい生産拠点で生産することができ、プロセスの利便性が大幅に向上し、生産能力が制限されない。また、本開示の製造方法で製造されたエレクトロクロミックフィルムは、フレーム接着剤(フレーム)の配置を省略してよい。つまり、エレクトロクロミックフィルムにおける電解液の漏れを回避するために追加のフレーム接着剤を導入する必要がないため、エレクトロクロミックフィルムの適用性及び実装利便性が大幅に向上し、エレクトロクロミックフィルムが様々な分野に適用することができる。
【0037】
本開示は、実施形態で以上のように開示されたが、それは本開示を限定するものではなく、当業者であれば、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更や修正を行うことができ、よって、本開示の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定義される範囲を基準とする。
【符号の説明】
【0038】
100 エレクトロクロミックフィルム
110 第1導電フィルム材
111 表面
115 基材
116 表面
117 酸化インジウムスズ導電フィルム
118 表面
120 変色還元層
121 表面
130 第2導電フィルム材
131 表面
135 基材
136 表面
137 酸化インジウムスズ導電フィルム
138 表面
140 変色酸化層
141 表面
150 固体電解質層
160 硬化層
G イオン伝導コロイド
M スプレーコーター
P1 第1圧着ホイール
P2 第2圧着ホイール
R1 第1搬送ホイール
R2 第2搬送ホイール
H1、H2、H3、H4、H5 厚さ
d 間隔
S 側壁
U 紫外光源
S10~S50 ステップ
A-A’ 線分
【外国語明細書】