(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052603
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/15 20190101AFI20240404BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G02F1/15 505
G09F9/00 342
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023167638
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】111137393
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523371414
【氏名又は名称】昶曜科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SMARTINT, INC.
【住所又は居所原語表記】3F., No.542-16, Zhongzheng Rd., Xinzhuang Dist., New Taipei City, Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】邱達成
【テーマコード(参考)】
2K101
5G435
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB05
2K101DB33
2K101DC12
2K101DC53
2K101DC54
2K101DD01
2K101DD10
2K101EG52
2K101EH02
2K101EH12
2K101EH17
2K101EH36
2K101EH41
2K101EH56
2K101EH61
2K101EJ02
2K101EK03
2K101EK05
5G435AA17
5G435BB13
5G435HH12
5G435HH20
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】エレクトロクロミックフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示は、第1の導電膜材に変色還元層を形成するステップと、第1の電極領域と第1の非電極領域を含む第2の導電膜材を受けるステップと、第2の導電膜材の第1の電極領域に遮蔽層を形成するステップと、遮蔽層を形成した後、第2の導電膜材の第1の非電極領域に変色酸化層を形成するステップと、変色酸化層が設けられた第2の導電膜材を連続的に供給し、イオン伝導コロイドを変色酸化層に形成させるステップと、変色還元層が設けられた第1の導電膜材を連続的に供給されたイオン伝導コロイドに圧着し、変色還元層を第1の導電膜材とイオン伝導コロイドとの間に位置させるステップと、イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成するステップと、を備えるエレクトロクロミックフィルムの製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電膜材に変色還元層を形成するステップと、
第1の電極領域と第1の非電極領域を含む第2の導電膜材を受けるステップと、
前記第2の導電膜材の前記第1の電極領域に遮蔽層を形成するステップと、
前記遮蔽層を形成した後、前記第2の導電膜材の前記第1の非電極領域に変色酸化層を形成するステップと、
前記変色酸化層が設けられた前記第2の導電膜材を連続的に供給し、イオン伝導コロイドを前記変色酸化層に形成するステップと、
前記変色還元層が設けられた前記第1の導電膜材を連続的に供給された前記イオン伝導コロイドに圧着し、前記変色還元層を前記第1の導電膜材と前記イオン伝導コロイドとの間に位置させるステップと、
前記イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成するステップと、
を備えるエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記変色酸化層を形成した後、前記遮蔽層を除去する請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記イオン伝導コロイドを前記第2の導電膜材の前記第1の電極領域に形成するステップをさらに含む請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第1の導電膜材は第2の電極領域及び第2の非電極領域を含み、且つ前記変色還元層は前記第1の導電膜材の前記第2の非電極領域に形成される請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記変色還元層を形成する前に、前記第1の導電膜材の前記第2の電極領域に遮蔽層を形成するステップをさらに含む請求項4に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記変色還元層を形成した後に、前記遮蔽層を除去するステップをさらに含む請求項5に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項7】
電極を前記第2の導電膜材の前記第1の電極領域に形成するように、塗布ステップを行うことをさらに含み、前記電極と前記固体電解質層との間に間隙がある請求項1に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項8】
エンドシール構造を前記間隙内に形成するステップをさらに含み、前記エンドシール構造の材料はアクリル樹脂、エポキシ樹脂またはそれらの組み合わせを含む請求項7に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記エンドシール構造は前記電極の頂面を覆う請求項8に記載のエレクトロクロミックフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容はエレクトロクロミックフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販されているエレクトロクロミック素子は、ガラス基板などの硬質材をベース層板として使用しているため、エレクトロクロミック素子が生産過程中で収納されることができず、独立したシート状の構造でしか実装できず、且つ独立したシート状のエレクトロクロミック素子は量産に不利であり、生産能力は比較的に限られる。シート状の構造のエレクトロクロミック素子は、使用上で材料のサイズ、形状及び曲げ具合(曲面)に限られて、広く適用されることができず、且つ使用時に物品のサイズに応じて、裁断後に廃材が発生しやすい。
【発明の概要】
【0003】
本開示の幾つかの実施形態によれば、本開示は、第1の導電膜材に変色還元層を形成するステップと、第1の電極領域と第1の非電極領域を含む第2の導電膜材を受けるステップと、第2の導電膜材の第1の電極領域に遮蔽層を形成するステップと、遮蔽層を形成した後、第2の導電膜材の第1の非電極領域に変色酸化層を形成するステップと、変色酸化層が設けられた第2の導電膜材を連続的に供給し、イオン伝導コロイドを変色酸化層に形成させるステップと、変色還元層が設けられた第1の導電膜材を連続的に供給されたイオン伝導コロイドに圧着し、変色還元層を第1の導電膜材とイオン伝導コロイドとの間に位置させるステップと、イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成するステップと、を備えるエレクトロクロミックフィルムの製造方法を提供する。
【0004】
本開示の幾つかの実施形態において、エレクトロクロミックフィルムの製造方法は、変色酸化層を形成した後、遮蔽層を除去するステップをさらに含む。
【0005】
本開示の幾つかの実施形態において、イオン伝導コロイドは、イオン伝導コロイドを第2の導電膜材の第1の電極領域に形成するステップをさらに含む。
【0006】
本開示の幾つかの実施形態において、第1の導電膜材は第2の電極領域と第2の非電極領域を含み、且つ変色還元層は第1の導電膜材の第2の非電極領域に形成される。
【0007】
本開示の幾つかの実施形態において、エレクトロクロミックフィルムの製造方法は、変色還元層を形成する前に、第1の導電膜材の第2の電極領域に遮蔽層を形成するステップをさらに含む。
【0008】
本開示の幾つかの実施形態において、エレクトロクロミックフィルムの製造方法は、変色還元層を形成した後に、遮蔽層を除去するステップをさらに含む。
【0009】
本開示の幾つかの実施形態において、エレクトロクロミックフィルムの製造方法は、電極を第2の導電膜材の第1の電極領域に形成するように、塗布ステップを行うことをさらに含み、電極と固体電解質層との間に間隙がある。
【0010】
本開示の幾つかの実施形態において、エレクトロクロミックフィルムの製造方法は、エンドシール構造を間隙内に形成するステップをさらに含み、エンドシール構造の材料はアクリル樹脂(Acrylic Resin)、エポキシ樹脂(Epoxy)またはそれらの組み合わせを含む。
【0011】
本開示の幾つかの実施形態において、エンドシール構造は第1の電極の頂面を覆う。
【0012】
本開示の上記実施形態によれば、本開示は事前に導電膜材に電極領域及び非電極領域を画定しておくため、変色酸化層が非電極領域のみに形成することを確保でき、このように、余分な変色酸化層を別に除去する必要がなくなり、プロセスの利便性を大幅に向上させ、電極をエレクトロクロミックフィルムにしっかりと形成することを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の上記及び他の目的、特徴、利点及び実施例をより明らかにするために、添付図面の説明は以下の通りである。
【
図1】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態によるフィルム状積層のプロセス模式図である。
【
図3A】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法の異なるステップにおける断面模式図である。
【
図3B】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法の異なるステップにおける断面模式図である。
【
図3C】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法の異なるステップにおける断面模式図である。
【
図3D】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法の異なるステップにおける断面模式図である。
【
図3E】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法の異なるステップにおける断面模式図である。
【
図3F】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法の異なるステップにおける断面模式図である。
【
図3G】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法の異なるステップにおける断面模式図である。
【
図3H】本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法の異なるステップにおける断面模式図である。
【
図4A】本開示の幾つかの実施形態によるロール状の第2の導電膜材(第1の導電膜材)の第1の電極領域(第2の電極領域)及び第1の非電極領域(第2の非電極領域)の画定の上面模式図である。
【
図4B】本開示の幾つかの実施形態によるロール状の第2の導電膜材(第1の導電膜材)の第1の電極領域(第2の電極領域)及び第1の非電極領域(第2の非電極領域)の画定の上面模式図である。
【
図4C】本開示の幾つかの実施形態によるロール状の第2の導電膜材(第1の導電膜材)の第1の電極領域(第2の電極領域)及び第1の非電極領域(第2の非電極領域)の画定の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面で本開示の複数の実施形態を開示し、明らかに説明するために、数多くの実務上の細部を下記の記述で合わせて説明する。しかしながら、これらの実務上の細部が本開示を限定するためのものではないことを理解されたい。即ち、本開示の一部の実施形態において、これらの実務上の細部は、必要ではないため、本開示を限定するために用いられない。
【0015】
理解すべきなのは、「下」または「底部」と「上」または「頂部」などの相対的な用語は、図に示すように、本文で1つの素子と別の素子的との関係を説明するために使用されてよい。理解すべきなのは、相対的な用語は、図で示される方位以外の装置の異なる方位を含むことを意味する。例えば、図面内の装置が反転されると、その他の素子の「下」側にあると記述されている素子はその他の素子の「上」側に方向付けられる。従って、例示的な用語「下」は「下」と「上」の向きを含んでよく、図面の特定の向きによって決められる。同様に、1つの図面内の装置が反転されると、その他の素子「下」または「下方」にあると記述されている素子はその他の素子「上方」に方向付けられる。従って、模式的な用語「下」または「下面」は上方と下方の向きを含んでよい。
【0016】
本開示は、特別なプロセス改良により、エレクトロクロミックフィルムの製造過程をロールツーロール(roll to roll)プロセスに統合するエレクトロクロミックフィルムの製造方法を提供する。このようにして、生産効率及び歩留まりを向上させ、排ガスまたは廃液の排出を回避し、貯蔵及び搬送の利便性を向上させることができるだけでなく、ロール状のエレクトロクロミックフィルムを形成し、従来の板材(シート)状のエレクトロクロミック素子を取り替えることができる。これによって、ロール状のエレクトロクロミックフィルムはバックエンドの設計に応じて適切な形状及びサイズに直接裁断することができ、エレクトロクロミックフィルムの製造方法全体は、エレクトロクロミックフィルムを使用する際の最終形状、サイズ及び湾曲弧度に制限されない。なお、事前に導電膜材に電極領域及び非電極領域を画定しておくため、変色酸化層/還元層が非電極領域のみに形成することを確保でき、このように、余分な変色酸化層/還元層を別に除去する必要がなくなり、プロセスの利便性を大幅に向上させ、電極をエレクトロクロミックフィルムにしっかりと形成することを確保することができる。また、本開示の製造方法で製造されたエレクトロクロミックフィルムはフレーム接着剤(フレーム)の配置を省略することができ、すなわち、エレクトロクロミックフィルム中の電解液の漏れを回避するようにフレーム接着剤を別に導入する必要がなく、さらにエレクトロクロミックフィルムの適用性及び取付の利便性を大幅に向上させて、エレクトロクロミックフィルムを様々な分野に適用することができる。本開示のエレクトロクロミックフィルムは、建築材料カーテンガラス、採光窓、スマート窓、室内の間仕切り壁、自動車バックミラー又はエクステリアミラー、自動車サンルーフ、サイドウィンドウ及びフロントガラス(自動車、大型陸上輸送手段、地下鉄、路面電車、高速鉄道、航空機、船舶などに適用される)、個人用ウェアレンズ(色変更メガネ、スキーゴーグル、安全ゴーグル)、3Cバーチャルリアリティミラー、ヘルメットレンズなど様々な分野に適用することができる。
【0017】
図1を参照されたい。
図1は本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルムの製造方法を示すフローチャートである。エレクトロクロミックフィルムの製造方法はステップS10~ステップS60を含み、ステップS10~ステップS60を順に行うことができる。ステップS10では、第1の導電膜材に変色還元層を形成する。ステップS20では、第1の電極領域と第1の非電極領域を含む第2の導電膜材を受ける(第2の導電膜材に第1の電極領域及び第1の非電極領域を画定する)。ステップS30では、第2の導電膜材の第1の非電極領域に変色酸化層を形成する。ステップS40では、変色酸化層が設けられた第2の導電膜材を連続的に供給し、イオン伝導コロイドを変色酸化層に形成させる。ステップS50では、変色還元層が設けられた第1の導電膜材を連続的に供給されたイオン伝導コロイドに圧着し、変色還元層を第1の導電膜材とイオン伝導コロイドとの間に位置させる。ステップS60では、イオン伝導コロイドを硬化させて固体電解質層を形成する。以下の叙述では、
図2~
図3Hを通じて上記各ステップを詳細的に説明し、
図2は本開示の幾つかの実施形態によるフィルム状積層100を示すプロセス模式図であり、
図3A~
図3Hは本開示の幾つかの実施形態によるエレクトロクロミックフィルム1000の製造方法の異なるステップにおける断面模式図であり、且つ
図4A~
図4Cはを示す。
【0018】
まず、
図3Aを参照されたい。ステップS10では、第1の導電膜材110に変色還元層120を形成する。幾つかの実施形態において、ロールツーロールプロセスによって変色還元層120を連続的に供給された第1の導電膜材110の表面111に形成することができる。幾つかの実施形態において、第1の導電膜材110は基材115及び基材115の表面116に配置される酸化インジウムスズ導電膜117を含んでよく、基材115の材料はポリエチレンテレフタレートを含んでよく、且つ基材115の厚さH1は38μmから188μmの間であってよく、好ましくは75μmから125μmの間であってよく、より好ましくは100μmから125μmの間であってよく、第1の導電膜材110に一定の耐荷力及び良好な可撓性の両方を持たせ、さらにロールツーロールプロセスに統合するのに役に立つ。幾つかの実施形態において、酸化インジウムスズ導電膜117の表面抵抗は5Ω/□から50Ω/□の間であってよく、これによってエレクトロクロミックフィルム1000は適切な電気的仕様を有する。
【0019】
幾つかの実施形態において、蒸着またはスパッタリングによって変色還元層120を形成し、変色還元層120を酸化インジウムスズ導電膜117の基材115と反対側の表面118に配置することができる。蒸着またはスパッタリングによって形成された変色還元層120は良好な材料密度及び材料分布均一性を持ち、脱落や亀裂が起こりにくく、電界が変化してもイオンを安定して供給する。なお、スピンコーティング(spin coating)、電気めっき、湿式コーティングなどのプロセスの使用と比較して、蒸着またはスパッタリングによって変色還元層120を形成する方がその優位性を有し、詳しくは、スピンコーティング、電気めっき、湿式コーティングなどのプロセスを使用すると、スラリーの付着性が悪く、ひいては変色還元層120が脱落しやすく、それにより色を変えなくなったり、耐用年数を短縮するなどの問題が発生する。幾つかの実施形態において、変色還元層120の材料は酸化タングステンを含んでよい。幾つかの実施形態において、変色還元層120の厚さH2は50nm~800nmの間であってよく、好ましくは100nm~600nmの間であってよく、より好ましくは100nm~400nmの間であってよく、これによって変色還元層120は電界が変化してもイオンを安定して供給(安定して色を変える)することができ、可撓性に優れ、厚すぎず、さらにロールツーロールプロセスへの統合に役に立つ。
【0020】
次に、
図3Bを参照されたい。ステップS20では、第1の電極領域ES1及び第1の非電極領域NS1を含む第2の導電膜材130を受ける。詳しくは、第1の電極領域ES1は後続で電極(例えば、正または負電極)を設置するための領域であり、第1の非電極領域NS1は後続で電極以外の層を設置するための領域である。幾つかの実施形態において、第1の電極領域ES1及び第1の非電極領域NS1を画定した後、第1の電極領域ES1を完全に覆うように、第1の電極領域ES1に遮蔽層180を形成することができる。詳しくは、遮蔽層180は例えばスクリーン印刷、スプレーまたは転写によって形成された剥離可能な接着剤であってよく、剥離可能な接着剤の材料は紫外線硬化型低粘度シリコーンゴム、ポリウレタン樹脂またはそれらの組み合わせを含んでよく、後続で簡単に剥離することに寄与する。具体的に、まず
図4A~
図4Cを参照されたく、それらは、本開示の幾つかの実施形態によるロール状の第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1及び第1の非電極領域NS1の画定の上面模式図である。
図4Aの実施形態は第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1が矩形の形状を呈することを示す。
図4Bの実施形態は第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1が「L」型の形状を呈することを示す。
図4Cの実施形態は第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1が「U」型の形状を呈することを示す。なお、
図4A~
図4Cの実施形態において、第1の電極領域ES1はいずれも遮蔽層180で完全に覆われる。簡単に言えば、第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1は各種の可能な配置方式及び形状を有してよく、本開示の実施形態に制限されない。
【0021】
次に、
図3Bを参照し続け、ステップS30では、第2の導電膜材130に変色酸化層140を形成する。幾つかの実施形態において、ロールツーロールプロセスによって変色酸化層140を連続的に供給された第2の導電膜材130の表面131に形成することができる。第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1が遮蔽層180によって覆われたため、変色酸化層140は第2の導電膜材130の第1の非電極領域NS1及び第1の電極領域ES1に対応する遮蔽層180に形成することができ、つまり、変色酸化層140は第2の導電膜材130の第1の非電極領域NS1及び遮蔽層180に直接接触する。幾つかの実施形態において、第2の導電膜材130は基材135及び基材135の表面136に配置される酸化インジウムスズ導電膜137を含んでよく、基材135の材料はポリエチレンテレフタレートを含んでよく、且つ基材135の厚さH3は38μmから188μmの間であってよく、好ましくは75μmから125μmの間であってよく、より好ましくは100μmから125μmの間であってよく、第2の導電膜材130は一定の耐荷力及び良好な可撓性の両方を備え、ロールツーロールプロセスへの統合に役に立つ。幾つかの実施形態において、酸化インジウムスズ導電膜137の表面抵抗は5Ω/□から50Ω/□の間であってよく、エレクトロクロミックフィルム1000は適切な電気的仕様を有する。なお、同様な材料、厚さ及び規格で第1の導電膜材110及び第2の導電膜材130を形成することによって、エレクトロクロミックフィルム1000は、構造安定性及び電気安定性の点で優れた性能を発揮させることができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、蒸着またはスパッタリングによって変色酸化層140を形成することができ、変色酸化層140を酸化インジウムスズ導電膜137の基材135と反対側の表面138に配置する。蒸着またはスパッタリングによって形成された変色酸化層140は良好な材料密度及び材料分布均一性を有することができ、脱落や亀裂が起こりにくく、電界が変化してもイオンを安定して供給し、なお、スピンコーティング(spin coating)、電気めっき、湿式コーティングなどのプロセスの使用と比較して、蒸着またはスパッタリングによって変色酸化層140を形成する方がその優位性を有し、詳しくは、スピンコーティング、電気めっき、湿式コーティングなどのプロセスを使用すると、スラリーの付着性が悪く、ひいては変色還元層120が脱落しやすく、それにより色を変えなくなったり、耐用年数を短縮するなどの問題が発生する。幾つかの実施形態において、変色酸化層140の材料は酸化ニッケルを含んでよい。幾つかの実施形態において、変色酸化層140の厚さH4は100nm~800nmの間であってよく、好ましくは200nm~700nmの間であってよく、より好ましくは400nm~600nmの間であってよく、変色酸化層140は電界が変化してもイオンを安定して受けることができ(安定して色を変える)、可撓性に優れ、厚すぎず、ロールツーロールプロセスへの統合に役に立つ。幾つかの実施形態において、変色還元層120と変色酸化層140との反応速度が異なるため、変色酸化層140の厚さH4を変色還元層120の厚さH2より少なくとも100nm大きくなるように調整することができ、変色酸化層140と変色還元層120とがより優れたエレクトロクロミック性能を組み合わせることができる。
【0023】
幾つかの実施形態において、変色酸化層140を形成した後に、遮蔽層180(
図3Cを参照されたい)を除去することができる。遮蔽層180を除去すると同時に、遮蔽層180に配置される変色酸化層140を併せて除去することができ、それにより本来に遮蔽層180の下方に配置される第2の導電膜材130を露出させる。言い換えると、遮蔽層180を除去した後、第2の導電膜材130及び第2の導電膜材130の第1の非電極領域NS1に配置される変色酸化層140を形成してよい。幾つかの実施形態において、剥離することによって遮蔽層180を除去することができる。遮蔽層180の材料として、酸化インジウムスズ導電膜137との親和性(粘着力、付着力)が小さい材料を用いるため、酸化インジウムスズ導電膜137を破壊したり損傷することなく、遮蔽層180を簡単に剥離することができる。幾つかの実施形態において、遮蔽層180を除去した後、本来に遮蔽層180の下方に位置する第2の導電膜材130の表面131を例えば75%エタノール、アセトンの溶液で洗浄することができる。
【0024】
続いて、
図2及び
図3Dを同時に参照されたい。ステップS40では、変色酸化層140が設けられた第2の導電膜材130を連続的に供給することによって、イオン伝導コロイドGを変色酸化層140に形成する。より詳しくは、変色酸化層140が配置された第2の導電膜材130は第1の搬送ホイールR1(
図2参照)の回転によってロールツーロールプロセスで搬送され、変色酸化層140が配置された第2の導電膜材130を持続的かつ途切れなく供給することができる。これと同時に、イオン伝導コロイドGを第1の搬送ホイールR1に持続的に供給することで、変色酸化層140の第2の導電膜材130と反対側の表面141はスプレーコーターMによって供給されたイオン伝導コロイドGを受けることができる。幾つかの実施形態において、イオン伝導コロイドGは第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1により形成され、即ち、イオン伝導コロイドGは変色酸化層140に接触するだけでなく、第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1にも接触でき、変色酸化層140と第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1との間に登坂領域SLを形成する。しかしながら、他の幾つかの実施形態において、ロールツーロールプロセスの設計によってイオン伝導コロイドGを変色酸化層140の表面141のみに形成してもよい。
【0025】
幾つかの実施形態において、スプレーコーターMの塗布速度は1メートル/分から20メートル/分の間であってよく、つまり、イオン伝導コロイドGを1メートル/分から20メートル/分の速度で連続的に供給された変色酸化層140の表面141に塗布することができ、イオン伝導コロイドGが適切な量及び適切な密度で変色酸化層140の表面141に配置されることができる。詳しくは、スプレーコーターMの塗布速度が20メートル/分より大きいと、変色酸化層140の表面141が単位面積当たりに担持されるイオン伝導コロイドGの含有量が低すぎ、即ち変色酸化層140の表面141におけるイオン伝導コロイドGの分布状況が疎らすぎて、後続で変色還元層120及び変色酸化層140に密着することができなく、スプレーコーターMの塗布速度が1メートル/分より小さいと、変色酸化層140の表面141が単位面積当たりに担持されるイオン伝導コロイドGの含有量が多過ぎ、後続で圧着の間に接着剤溢れが発生しやすいだけでなく、材料の不必要な無駄になりやすい。好ましい実施形態において、スプレーコーターMの塗布速度は2メートル/分から6メートル/分の間であってよく、好ましい接着効果を達成する。
【0026】
他方で、スプレーコーターMの塗布速度を上記範囲に制御することは、変色酸化層140の表面141に形成されるイオン伝導コロイドGの厚さH5を制御するのにも役に立ち、イオン伝導コロイドGの厚さH5が10μmから100μmの間に制御されることができ、このように、膜材(例えば、イオン伝導コロイドG及び変色酸化層140が配置された第2の導電膜材130)の搬送時の安定性を向上できるだけでなく、後続で圧着の間に接着剤溢れが発生することを避けることができ、イオン伝導コロイドGが後続で硬化された後に形成された固体電解質層150は良好なイオン伝導性を有することを確保することができる。詳しくは、イオン伝導コロイドGの厚さH5が10μmより小さいと、後続の圧着時に破断点が形成され、形成された固体電解質層150の分布が不連続になり、ひいては良好なイオン伝導性を提供することができなく、イオン伝導コロイドGの厚さH5が100μmより大きいと、後続の圧着が困難になり、且つイオン伝導コロイドGの厚さH5が厚いほど、電子伝導効率が遅くなり、変色速度が遅くなり、且つ本開示で強調された「薄膜状」のエレクトロクロミックフィルム1000を形成するのに不利である。好ましい実施形態において、イオン伝導コロイドGの厚さH5は20μmから50μmの間にさらに制御されても良く、上記効果を良好に達成する。幾つかの実施形態において、変色酸化層140の表面141に形成されるイオン伝導コロイドGの厚さH5は硬化後の固体電解質層150の厚さH5である。
【0027】
なお、本開示は特に改良されたイオン伝導コロイドGを使用して、イオン伝導コロイドGの塗布をロールツーロールプロセスに統合し、且つイオン伝導コロイドGが最終的に固体電解質層150に硬化することができ、最終的に形成されたエレクトロクロミックフィルム1000は、フレーム接着剤の配置(この部分を以下でより詳細的に説明する)を省略することができ、さらにエレクトロクロミックフィルム1000は異なる形状、弧度の物体に応じて配置することができ、エレクトロクロミックフィルム1000の適用性及び取付利便性を大幅に向上させ、エレクトロクロミックフィルム1000が様々な分野に適用できる。
【0028】
詳しくは、イオン伝導コロイドGの製造方法は、以下のステップを含んでよい。まず、過塩素酸リチウム(LiClO4)をポリカーボネート(Polycarbonate、PC)に入れて8時間から12時間攪拌し、均一に分散して混合させ、さらに電解質混合物を形成する。次に、電解質混合物を紫外光硬化接着剤に入れ、ホモジナイザーで8時間~12時間攪拌して均一に分散して混合させた後、光開始剤を入れて0.5時間~2時間攪拌し、イオン伝導コロイドGを形成する。幾つかの実施形態において、電解質混合物の含有量は30重量部から40重量部の間であってよく、紫外光硬化接着剤の含有量は60重量部から70重量部の間であってよく、且つ電解質混合物の総重量に対して、過塩素酸リチウムの含有量は1wt%から15wt%の間であってよい。詳しくは、電解質混合物の含有量が40重量部より大きく(または紫外光硬化接着剤の含有量が60重量部より小さい)、且つ過塩素酸リチウムの含有量は15wt%より大きいと、イオン伝導コロイドG中のリチウム塩(過塩素酸リチウム)が多すぎて、均一に分散させることが困難になり、塊状(凝集、沈殿)に凝集しやすくなり、且つ紫外光硬化接着剤の含有量が少過ぎてイオン伝導コロイドG中の局所的な塊が完全に硬化できない可能性があり、接着剤溢れ(または漏れ)のリスクがある、電解質混合物の含有量が30重量部より小さく(または紫外光硬化接着剤の含有量が70重量部より大きい)、且つ過塩素酸リチウムの含有量が1wt%より小さいと、イオン伝導コロイドG中のリチウム塩(過塩素酸リチウム)が少過ぎて、十分なイオン伝導性を提供することができず、且つ紫外光硬化接着剤の含有量が多過ぎて動的なロールツーロールプロセスで迅速に完全に硬化することが間に合わない可能性があり、同様に接着剤溢れ(または漏れ)のリスクがある。好ましい実施形態において、電解質混合物の総重量に対して、過塩素酸リチウムの含有量は4wt%から10wt%の間であり、上記の効果を良好に達成する。
【0029】
幾つかの実施形態において、紫外光硬化接着剤はアクリル系樹脂(またはアクリル系感圧樹脂)を含んでよい。例えば、アクリル系(感圧)樹脂はポリメチルメタクリレート、ポリウレタンアクリレートまたはエポキシアクリレートであってよい。上記アクリル系樹脂の紫外光硬化接着剤は特定の紫外光波長範囲内で迅速に硬化できるため、硬化プロセスをロールツーロールプロセスに統合するのに役に立ち、硬化によって提供されたエネルギーが高過ぎたり、硬化時間が長過ぎたりすることによるエレクトロクロミックフィルム1000中の他の層(例えば、変色還元層120及び変色酸化層140)への損傷を回避することができ、これを以下で説明する。以上の説明のように、イオン伝導コロイドGは適量な光開始剤を含んでよく、イオン伝導コロイドGに紫外光を照射した後に迅速に反応して硬化させる。具体的に、本開示が選択できる光開始剤はアシルフォスフィンオキサイド系材料(型番:Irgacure(登録商標)TPO、Irgacure(登録商標)819)であってよく、且つ電解質混合物の総重量に対して、光開始剤の含有量は0.5wt%から2.5wt%の間であってよく、最適な硬化効果を達成し、光開始剤が残され、硬化した固体電解質層150の中で他の成分をさらに分解して他の成分が分解されることを回避でき、固体電解質層150のイオン伝導性が経時的に迅速に損失するのを回避できる。詳しくは、光開始剤の含有量が0.5wt%より小さいと、イオン伝導コロイドGが完全に硬化できなく、光開始剤の含有量が2.5wt%より大きいと、光開始剤が完全に消耗されずに固体電解質層150に残される。
【0030】
他方で、イオン伝導コロイドGの粘度は、固体電解質層150がロールツーロールプロセスを通じてエレクトロクロミックフィルム1000にしっかりと配置できるかどうかに対して重要であり、且つ固体電解質層150中の電解質が均一に分散して良好なイオン伝導性を達成するかどうかに対しても重要である。詳しくは、イオン伝導コロイドGの粘度はその流動性、粘性及びその中の脱塩の分散性に影響を与え、イオン伝導コロイドGの粘度が高過ぎて、イオン伝導コロイドGの流動性が低過ぎて且つ粘性が高過ぎて、スプレーコーターMのノズルに溜まりやすく、且つ担持面(例えば、変色酸化層140の表面141)で広がりにくく、動的なロールツーロールプロセスにおける圧着ステップの前に均一に分散することが間に合わず、最終的に形成された固体電解質層150は均一な厚さを有さず、ひいては固体電解質層150のイオン伝導性に影響を与え、また、イオン伝導コロイドG中のリチウム塩が不均一に分散し、塊状に凝集したり、沈殿したりしやすく、イオン伝導コロイドGの粘度が低過ぎると、イオン伝導コロイドGの流動性が高過ぎて且つ粘性が低過ぎて、動的なロールツーロールプロセスでは担持面(例えば、変色酸化層140の表面141)への安定的な配置に不利であり、一定の接着性を有するコロイドとしても適しない。上記に基づいて、本開示はロールツーロールプロセスの加工温度範囲内(15℃から70℃の間)でイオン伝導コロイドGの粘度を200cpsから10000cpsの間の範囲に制御することができ、イオン伝導コロイドGのロールツーロールプロセスにおける全体の塗布性に役に立つ。好ましい実施形態において、さらに25℃から40℃の間の加工範囲内で、イオン伝導コロイドGの粘度を250cpsから500cpsの間の範囲に制御することができ、上記効果を良好に実現し、ロール状のエレクトロクロミックフィルム1000全体の品質をより安定して維持することができる。なお、イオン伝導コロイドGの粘度はBROOKFIELD(型番:DV-E)の粘度計を用いて測定したものである。幾つかの実施形態において、恒温槽(図示せず)で塗布対象のイオン伝導コロイドGを収容することができ、イオン伝導コロイドGが塗布の間に適切な粘度を維持することを確保するようにする。言い換えると、恒温槽の温度を15℃から70℃の間に制御し、好ましくは25℃から40℃の間に制御することができる。
【0031】
幾つかの実施形態において、ステップS40では、イオン伝導コロイドGを連続的に供給された変色還元層120の第1の導電膜材110と反対側の表面121(
図3A参照)に形成してもよい。言い換えると、イオン伝導コロイドGは実際のプロセス条件に応じて連続的に供給された変色還元層120の表面121に選択的に形成したり、連続的に供給された変色酸化層140の表面141に形成したりすることができる。
【0032】
次に、
図2及び
図3Eを同時に参照されたい。ステップS50では、変色還元層120が設けられた第1の導電膜材110を連続的に供給されて既に変色酸化層140の表面141に配置されたイオン伝導コロイドGに圧着し、変色還元層120を第1の導電膜材110とイオン伝導コロイドGとの間に位置させる。詳しくは、変色還元層120が設けられた第1の導電膜材110は第2の搬送ホイールR2の回転によってロールツーロールプロセスでは搬送されることができ、変色還元層120が設けられた第1の導電膜材110を第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2との間に搬送し、且つこれと同時に、イオン伝導コロイドG及び変色酸化層140が設けられた第2の導電膜材130は第1の搬送ホイールR1の回転によって第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2との間に搬送され、第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2は、変色還元層120が設けられた第1の導電膜材110を連続的に供給されたイオン伝導コロイドGに圧着するように配置され、且つ第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2は反対の回転方向(例えば、第1の圧着ホイールP1は時計回りに回転し、第2の圧着ホイールP2は反時計回りに回転する)である。
【0033】
幾つかの実施形態において、第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2との間のピッチdは100μmから500μmの間であってよく、即ちピッチdは本開示において期待されるエレクトロクロミックフィルム1000(またはフィルム状積層100)の全体厚さの85%~105%であってよく、良好な圧着強度を提供する。詳しくは、第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2との間のピッチdは100μmより小さい(即ち、エレクトロクロミックフィルム1000またはフィルム状積層100の全体厚さの85%より小さい)と、接着剤の浸透を引き起こす可能性があり、さらにイオン伝導コロイドGの配置状態に影響を与えるおそれがあり、第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2との間のピッチdは500μmより大きい(即ち、エレクトロクロミックフィルム1000またはフィルム状積層100の全体厚さの105%より大きい)と、各層が密着できず、エレクトロクロミックフィルム1000の構造安定性に影響を与える可能性がる。幾つかの実施形態において、第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2の回転速度比は1.5:1.0から1.0:1.5の間(例えば、1:1)であってよく、各層の張力を制御して最終的に形成されたエレクトロクロミックフィルム1000が良好な平坦性を持たせる。幾つかの実施形態において、第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2のそれぞれのホイール温度は15℃から70℃の間であってよく、且つ好ましくは25℃から40℃の間であってよく、イオン伝導コロイドGが搬送過程で依然として良好なレベリングを有することを確保する。幾つかの実施形態において、第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2はそれぞれ異なる独立して動作するモータによって駆動することができる。
【0034】
幾つかの実施形態において、イオン伝導コロイドGは変色酸化層140と第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1との間に登坂領域SLを有するため、変色還元層120と第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1に位置するイオン伝導コロイドGとの間にスリットQ(理解しやすくするために
図3Eを参照する)を有することができ、且つスリットQは接着剤溢れの緩衝領域とすることができ、つまり、多過ぎるイオン伝導コロイドGは当該スリットQに流動することができ、ロールツーロールプロセスの利便性を向上させるのに役に立つ。
【0035】
続いて、ステップS60では、イオン伝導コロイドGを硬化させて固体電解質層150を形成する。詳しくは、各層(第1の導電膜材110、変色還元層120、イオン伝導コロイドG、変色酸化層140及び第2の導電膜材130)は第1の圧着ホイールP1と第2の圧着ホイールP2によって圧着された後、各層が紫外光源Uを通過して、ロールツーロールプロセスの搬送の間に紫外光によって照射される。言い換えると、紫外光で変色還元層120と変色酸化層140との間に挟まれるイオン伝導コロイドGを照射することができ、それによりイオン伝導コロイドGが硬化して固体電解質層150を形成し、変色還元層120及び変色酸化層140を緊密でしっかりと接着する。以上の説明のように、本開示は特定の紫外光波長範囲内で迅速に硬化したアクリル系樹脂を紫外光硬化接着剤として使用することができ、且つ当該特定の紫外光波長範囲はエレクトロクロミックフィルム1000中の他の層に損傷を与えるのを回避することができる。具体的に、紫外光の波長は365nm~395nmの間であってよい。この波長範囲が狭いため、より集中的なエネルギーを提供することができ、イオン伝導コロイドGがロールツーロールプロセスでは紫外光源U(例えば、1メートル/分~20メートル/分の搬送速度で紫外光源Uを通過する)を迅速に通過する必要があっても、徹底的に硬化されることができる。幾つかの実施形態において、紫外光照射範囲の長さ(搬送方向に平行な長さ)は1メートルから3メートルの間であってよく、幅(搬送方向に垂直な幅、振幅)は300mmから1600mmの間であってよく、すべてのイオン伝導コロイドGはいずれも確実に紫外光によって照射されて硬化することで固体電解質層150を形成する。
【0036】
少なくとも上記ステップS10~S60を行った後に、巻き取ってフィルム状積層100を形成することができる。幾つかの実施形態において、さらにロール状のフィルム状積層100に裁断ステップを行うことができ、実際の適用需要に応じて予期のサイズ及び形状のエレクトロクロミックフィルム1000を形成する。裁断後のフィルム状積層100は第1の導電膜材110、変色還元層120、固体電解質層150、変色酸化層140及び第2の導電膜材130を含む。変色酸化層140は第2の導電膜材130に配置され、固体電解質層150は変色酸化層140に配置され、変色還元層120は固体電解質層150に配置され、且つ第1の導電膜材110は変色還元層120に配置される。幾つかの実施形態において、接着剤溢れの状況が明らかではない場合、変色還元層120と第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1に位置するイオン伝導コロイドGとの間にまたスリットQがある。フィルム状積層100では、変色還元層120は、エレクトロクロミックフィルム1000が電界変化されると、変色酸化層140と酸化還元反応を生じるように設定され、変色還元層120中のイオンが変色酸化層140に移動する際に変色還元層120に色変化が発生し、変色酸化層140は変色還元層120中のイオンを受けて酸化反応が発生し、且つ同様に色変化が発生する。例えば、変色酸化層140に酸化タングステンが含まれ、エレクトロクロミックフィルム1000の電界が変化されていない場合、変色酸化層140が透明であり、エレクトロクロミックフィルム1000の電界が変化された場合、変色酸化層140が青色に変色するため、エレクトロクロミックフィルム1000の透光性が変化する。
【0037】
なお、本開示のフィルム状積層100及び後続で形成されたエレクトロクロミックフィルム1000はいずれもその外側壁にフレーム接着剤(フレーム)を別に設置することによって固体電解質層150中のイオン伝導物質が流出することを防止する必要がなく、且つ上記ロールツーロールプロセスの設計により、変色還元層120及び変色酸化層140は互いに緊密に接着することができるため、フィルム状積層100及び後続で形成されたエレクトロクロミックフィルム1000の外側壁にフレーム接着剤((フレーム)を別に設置することによって変色還元層120及び変色酸化層140の剥離を防止する必要がなく。言い換えると、本開示の最終的に形成されたエレクトロクロミックフィルム1000は第1の導電膜材110、変色還元層120、固体電解質層150、変色酸化層140及び第2の導電膜材130のそれぞれの少なくとも一側に設置されて少なくとも当該側に接触するフレーム接着剤を有さないため、エレクトロクロミックフィルム1000の外側壁は外部環境に露出する。より詳しくは、従来のエレクトロクロミック素子に使用されるフレーム接着剤の材料は一般的にアクリル樹脂(Acrylic Resin)、エポキシ樹脂(Epoxy)またはそれらの組合せ(例えば液晶ワン・ドロップ・フィル(One Drop Filling、ODF)プロセス用フレーム接着剤材料、Seal フレーム接着剤(メーカー:積水化学、三井化学、協立協立及び日本化藥)などを含んでよく、本開示のエレクトロクロミックフィルム1000は上記材料を含むフレーム接着剤を有さない。
【0038】
幾つかの実施形態において、フィルム状積層100は硬化層160をさらに含んでよい。硬化層160は層を引っかき傷または摩耗から保護し、エレクトロクロミックフィルム1000の耐用年数を延長する。幾つかの実施形態において、硬化層160の材料は樹脂混合物を含み、フィルム状積層100が可撓性及び軽量薄化性を有するようにする。幾つかの実施形態において、硬化層160の積層もロールツーロールの製造プロセスに統合することができ、プロセスの利便性及び生産能力を向上させるのに役に立つ。
【0039】
続いて、
図3Fを参照されたい。切断ステップを行う。理解すべきなのは、
図3Fの構造は
図3Eの構造を逆さまにして切断した様子である。切断ステップはフィルム状積層100の第2側S2の硬化層160、第1の導電膜材110、変色還元層120及び固体電解質層150を切り取ることによって、第2側S2の第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1を露出させる。詳しくは、切断ステップは第1の電極領域ES1の範囲に対応して行う。幾つかの実施形態において、切断ステップはCO
2レーザー機、プレス成形機、調光膜電極ナイフなどを用いた切断装置(手段)を使用して行うことができる。幾つかの実施形態において、フィルム状積層100を適切なサイズに裁断する前(裁断ステップを行う前)に、フィルム状積層100に切断ステップを行うことができ、例えば切断ステップをロールツーロールプロセスに統合し、搬送ホイールの回転によってロールツーロールプロセスではフィルム状積層100を搬送し、フィルム状積層100を切断装置に途切れなく供給して切断し、切断ステップを行うレートを向上させる。第1の電極領域ES1に対応する第1の導電膜材110、変色還元層120、固体電解質層150及び第1の導電膜材110に接触する硬化層160を切り取った後、第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1が露出することができる。幾つかの実施形態において、切断ステップは第1の電極領域ES1に対応する固体電解質層150を完全に切り取ることができなく、例えば切断ステップは固体電解質層150の厚さH5のみを薄化したり、または第1の電極領域ES1に対応する一部の固体電解質層150を切り取ったりし、一部の第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1を露出させ、この場合で、固体電解質層150をアセトンまたは75%のエタノールで徹底的に除去することによって、第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1を完全に露出する。言い換えると、本開示において、イオン伝導コロイドGにより形成された固体電解質層150はアセトンまたは75%のエタノールで簡単に除去することができ、除去ステップの簡便性を向上させる。
【0040】
なお、前述ステップS20では、遮蔽層180を使用することで変色酸化層140が第2の導電膜材130の第1の電極領域ES1上に形成されるのを防止したため、切断ステップでは、変色酸化層140を別に除去する必要せず、プロセスの利便性を大幅に向上させ、第1の電極領域ES1における変色酸化層140の残留を減少し、電気的失効の可能性を低減することができる。
【0041】
図3Fを参照し続け、切断ステップはフィルム状積層100の第1側S1の第2の導電膜材130、変色酸化層140、固体電解質層150及び第2の導電膜材130に接触する硬化層160を切り取ることで、第1側S1の変色還元層120を露出させる。詳しくは、切断ステップを行う前、電極を設置するための領域(電極領域A)を置いており、切断ステップによって電極領域A内に位置する硬化層160、第2の導電膜材130、変色酸化層140及び固体電解質層150を切り取る。具体的な切り取り方式は前段で説明されたため、ここで繰り返して説明しない。第1側S1の電極領域Aに位置する硬化層160、第2の導電膜材130、変色酸化層140及び固体電解質層150を切り取った後、電極領域Aに位置する変色還元層120が露出することができる。同様に、切断ステップでは電極領域Aに位置する固体電解質層150を完全に切り取ることができないと、固体電解質層150をアセトンまたは75%のエタノールで徹底的に除去することができ、電極領域Aに位置する変色還元層120を完全に露出させる。
【0042】
次に、
図3Gを参照されたく、除去ステップを行い、溶液で露出した変色還元層120を除去することを含む。詳しくは、変色還元層120の材料は酸化タングステンを含むと、使用される溶液は、水酸化ナトリウム、過酸化水素及び水を含んでよい。より詳しくは、水酸化ナトリウムは酸化タングステンと反応して、酸化タングステンを第1の導電膜材110の酸化インジウムスズ導電膜117の表面118から脱落させることができ、過酸化水素は安定したエッチング(除去)レートを維持することができ、且つ水が酸化ナトリウム及び過酸化水素の濃度を適切に調整することができ、反応済みの残留物を連れて去るのに役に立つ。幾つかの実施形態において、当該溶液の中で、水酸化ナトリウムの含有量は15重量部から40重量部の間(好ましくは25重量部から35重量部の間であってよい)であり、且つ過酸化水素の含有量は2重量部から10重量部の間(好ましくは4重量部から8重量部の間であってよい)であってよく、優れた除去効果を達成する。詳しくは、水酸化ナトリウムの含有量(割合)が高過ぎると、過酸化水素の含有量(割合)が低過ぎると、水酸化ナトリウムが酸化インジウムスズ導電膜117の表面118に残留されて、除去の時間が長くなり、反応の間に過酸化水素の消耗が完了するのでエッチングレートが低下する可能性があり、水酸化ナトリウムの含有量が低過ぎて、過酸化水素の含有量が高過ぎると、酸化タングステンが完全に反応せずに徹底的に除去されることができなく、水酸化ナトリウムが反応間に絶えずに消耗されるため、過酸化水素が過剰になり、溶液の酸塩基値(pH値)が影響を受け(低下)、除去効果に影響を与える。言い換えると、水酸化ナトリウム、過酸化水素及び水の協同作用により、変色還元層120の材料を短時間内で徹底的に除去し、除去された変色還元層120の下方にある第1の導電膜材110を露出させることができる。
【0043】
幾つかの実施形態において、当該溶液を使用して除去する前または間に、当該溶液のpH値を8.0から10.0の間に調整(維持)することができ、エッチング間に水酸化ナトリウム、過酸化水素及び水を互いに安定的に協同して当該溶液の反応性及び反応レートを維持する。幾つかの実施形態において、当該溶液を使用して除去ステップを行った後に、75%のエタノールを使用して第1の導電膜材110の表面111を洗浄することができ、全ての残留物をいずれも徹底的に第1の導電膜材110の表面111から脱離させるようにする。幾つかの実施形態において、拭き取りにより除去ステップを行うことができ、例えば電極領域A内に位置する変色還元層120の表面121を当該溶液で複数回(例えば、5~20回)往復拭き取ることによって、優れた除去効果を達成する。これから分かるように、本開示で使用された溶液は変色還元層120を迅速で簡単に除去することができる。本開示は4点プローブを用いて第1の導電膜材110の抵抗値が500Ωより低いことを確認することができ、電極領域A内に位置する変色還元層120が徹底的に除去されるのを確認するようにする。
【0044】
なお、本開示において、変色還元層120を第1の導電膜材110に形成すする前、第1の導電膜材110に第2の電極領域及び第2の非電極領域を画定してもよい。同様に、第2の電極領域は後続で電極(例えば、正電極または負電極)を設置するための領域であり、第1の非電極領域は後続で電極以外の層を設置するための領域である。幾つかの実施形態において、第2の電極領域及び第2の非電極領域を画定した後、第2の電極領域を完全に覆うように、第2の電極領域に遮蔽層を形成することができる。詳しくは、遮蔽層は例えばスクリーン印刷、スプレーまたは転写により形成された剥離可能な接着剤であってよく、剥離可能な接着剤の材料は紫外線硬化型低粘度シリコーンゴム、ポリウレタン樹脂またはそれらの組み合わせを含んでよく、後続で簡単に剥離するようにする。具体的に、第2の電極領域ES2及び第2の非電極領域NS2の配置は
図4A~
図4Cに示す第1の電極領域ES1及び第1の非電極領域NS1の配置方式を参照でき、ここで繰り返して説明しなく、これに制限されない。この実施形態において、第1の導電膜材110の第2の電極領域ES2が遮蔽層によって覆われるため、変色還元層120は第1の導電膜材110の第2の非電極領域NS2上及び遮蔽層上に形成されることができる。他方、変色還元層120を形成した後、遮蔽層を除去することができ、また、幾つかの実施形態において、遮蔽層に配置される変色還元層120を併せて除去することができるため、本来に遮蔽層の下方に位置する第1の導電膜材110を露出させることができる。その他の細部はいずれも前述ステップS20及びS30と同様であり、ここで繰り返して説明しない。
【0045】
予め第1の導電膜材110に第2の電極領域ES2及び第2の非電極領域NS2を画定しており、変色還元層120を第1の導電膜材110の第2の電極領域ES2に形成することを免除すると、切断ステップでは、フィルム状積層100の第1側S1に対して、変色還元層120の切り取りを省くことができ、つまり、第1側S1の硬化層160、第2の導電膜材130及び固体電解質層150を切り取った後、第1の導電膜材110の第2の電極領域ES2が露出することができる。これによって、変色還元層120を別に除去する必要がなく、プロセスの利便性大幅に向上させるだけでなく、第2の電極領域ES2における変色還元層120の残留を低下させ、さらに電気的失効の可能性を低減する。なお、イオン伝導コロイドGは変色還元層120と第1の導電膜材110の第2の電極領域ES2との間に登坂領域(
図3Dに示す登坂領域SL)を形成してもよいため、変色酸化層140と第1の導電膜材110の第2の電極領域ES2上に位置するイオン伝導コロイドGとの間にスリット(
図3Eに示すスリットQ)を接着剤溢れの緩衝領域として有してもよい。より多くの細部について以上の第1の電極領域ES1及び第1の非電極領域NS1に関連する説明を参照でき、ここで繰り返して説明しない。
【0046】
なお、好ましい実施形態において、予め第2の導電膜材130に第1の電極領域ES1を画定しておるが、予め第1の導電膜材110に第2の電極領域ES2を画定しないように選択したり、または予め第1の導電膜材110に第2の電極領域ES2を画定しておるが、予め第2の導電膜材130に第1の電極領域ES1を画定しないように選択したりすることができる。これによって、第1の電極領域ES1と第2の電極領域ES2との間の予め位置合わせを省略することができるため、プロセスの利便性をさらに向上させる。より好ましい実施形態において、予め第2の導電膜材130に第1の電極領域ES1を画定しているが、予め第1の導電膜材110に第2の電極領域ES2を画定しないように選択することができ、このようにして、プロセスの利便性を向上させるだけでなく、変色還元層120に対して除去しくい変色酸化層140の除去ステップを省略することができ、さらにきれいに除去しないことによる電気的問題を回避する。
【0047】
続いて、
図3Hを参照されたく、露出した第1の導電膜材110の表面111(第2の電極領域ES2)に第1の電極E1を形成し、且つ露出した第2の導電膜材130の表面131(第1の電極領域ES1)に第2の電極E2を形成することを含んでよい塗布ステップを行う。具体的に、第1の電極E1及び第2の電極E2はそれぞれエレクトロクロミックフィルム1000の正電極及び負電極であってよく、且つ第1の電極E1及び第2の電極E2は例えば導電性銀接着剤、フレキシブル基板(Flexible Printed Circuit、FPC)または導電性銅箔であってよい。塗布により形成された第1の電極E1は変色還元層120に隣接でき、且つ変色還元層120との間に間隙SPがあり、塗布により形成された第2の電極E2は変色酸化層140に隣接でき、且つ変色酸化層140との間に間隙SPがある。幾つかの実施形態において、複数回の塗布により第1の電極E1の厚さH6を増加させ、第1の電極E1を固体電解質層150及び変色酸化層140のそれぞれの側壁にさらに隣接させ、複数回の塗布により第2の電極E2の厚さH7を増加させることができ、第2の電極E2を固体電解質層150及び変色還元層120のそれぞれの側壁にさらに隣接させることができる。このように、第1の電極E1及び第2の電極E2が高い材料緻密性を有するのを確保でき、さらに電気的失効の確率を低下させる。幾つかの実施形態において、第1の電極E1の頂面E1Tを第2の導電膜材130の表面131より低くし、第2の電極E2の頂面E2Tを第1の導電膜材110の表面111より低くすることができ、第1の電極E1と第2の電極E2との間は電気的に接続しないようにする。
【0048】
次に、
図3Hを参照し続け、エレクトロクロミックフィルム1000の製造方法は、間隙SPにエンドシール構造170を形成するステップをさらに含む。より詳しくは、第1の電極領域ES1に対応するエンドシール構造170は間隙SPを満たし、且つ変色還元層120、固体電解質層150、変色酸化層140、第2の導電膜材130及び硬化層160のそれぞれの側壁に延在することができ、水分、埃などの環境因子がエレクトロクロミックフィルム1000に侵入する確率を低減させるようにし、同様に、第2の電極領域ES2に対応するエンドシール構造170は間隙SPを満たし、変色酸化層140、固体電解質層150、変色還元層120、第1の導電膜材110及び硬化層160のそれぞれの側壁に延在することができ、水分、埃などの環境因子がエレクトロクロミックフィルム1000に侵入する確率を低減させるようにする。幾つかの実施形態において、エンドシール構造170の構造安定性を高めるように、エンドシール構造170は第1の電極E1の頂面E1T及び第2の電極E2の頂面E2Tにさらに被覆、接触して延在することができ、且つ第1の電極E1及び第2の電極E2のそれぞれの外側壁から突出しない。幾つかの実施形態において、エンドシール構造170は曲げ応力に耐えるために円弧状の側壁Cを有することができる。幾つかの実施形態において、エンドシール構造170の材料は、良好なバリア性を備えるように、アクリル樹脂(Acrylic Resin)、エポキシ樹脂(Epoxy)またはそれらの組み合わせを含んでよい。幾つかの実施形態において、塗布によりエンドシール構造170を形成することができ、使用されたスラリーに波長が365nm~395nmの紫外光で照射することができ、硬化に必要な時間が30秒~60秒であり、このように、エレクトロクロミックフィルム1000中の他の層に損傷を与えなく、且つさらにプロセスの利便性を有する。望ましくは、本開示のエンドシール構造170はその中の電解質の流出を防止するためのものではなく、より詳しくは、本開示で使用された電解質は固体電解質であるため、エンドシール構造170を設置しなくても、電解質の漏れまたは流出が発生しない。
【0049】
本開示の上記実施形態によれば、本開示は、従来のガラス基板などの硬質材をベース層板とする板材状のエレクトロクロミック素子を改良することによってエレクトロクロミックフィルムを形成するとともに、具体的なプロセス改良により、エレクトロクロミックフィルムの製造過程をロールツーロール(roll to roll)プロセスに統合する。このようにして、従来のガラス基板などの硬質材をベース層板とする板材(シート)状のエレクトロクロミック素子ではなく、ロール状で且つフィルム状のエレクトロクロミックフィルムを取得することができる。このため、エレクトロクロミックフィルムはバックエンドの設計に応じて適切な形状及びサイズに直接裁断することができ、エレクトロクロミックフィルムの製造方法全体はエレクトロクロミックフィルムを使用する際の最終形状、サイズ及び湾曲弧度に制限されない。他方で、ロールツーロールプロセスによりエレクトロクロミックフィルムを形成することは、生産効率及び歩留まりを向上させ、排ガスまたは廃液の排出を回避させ、貯蔵及び搬送の利便性を向上させるだけでなく、従来のガラスプロセスと比較して、小さい生産拠点で生産できるため、プロセスの利便性を大幅に向上させ且つ生産能力が制限されることはない。なお、事前に導電膜材に電極領域及び非電極領域を画定しておくため、変色酸化/還元層を非電極領域内のみに形成するのを確保でき、このように、余分な変色酸化層/還元層を別に除去する必要がなくなり、プロセスの利便性を大幅に向上させ、電極をエレクトロクロミックフィルムにしっかりと形成することを確保することができる。また、本開示の製造方法で製造されたエレクトロクロミックフィルムはフレーム接着剤(フレーム)の配置を省略することができ、すなわち、エレクトロクロミックフィルム中の電解液の漏れを回避するようにフレーム接着剤を別に導入する必要がなく、さらにエレクトロクロミックフィルムの適用性及び取付の利便性を大幅に向上させ、エレクトロクロミックフィルムを様々な分野に適用することができる。
【0050】
本開示は、実施形態を前述の通りに開示したが、これは本開示を限定するものではなく、当業者なら誰でも、本開示の精神と領域から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができる。従って、本開示の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0051】
1000 エレクトロクロミックフィルム
100 フィルム状積層
110 第1の導電膜材
111 表面
115 基材
116 表面
117 酸化インジウムスズ導電膜
118 表面
120 変色還元層
121 表面
130 第2の導電膜材
131 表面
135 基材
136 表面
137 酸化インジウムスズ導電膜
138 表面
140 変色酸化層
141 表面
150 固体電解質層
160 硬化層
170 エンドシール構造
180 遮蔽層
G イオン伝導コロイド
M スプレーコーター
P1 第1の圧着ホイール
P2 第2の圧着ホイール
R1 第1の搬送ホイール
R2 第2の搬送ホイール
H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7 厚さ
d ピッチ
SL 登坂領域
Q スリット
S1 第1側
S2 第2側
ES1 第1の電極領域
ES2 第2の電極領域
NS1 第1の非電極領域
NS2 第2の非電極領域
A 電極領域
E1 第1の電極
E2 第2の電極
E1T、E2T 頂面
SP 間隙
U 紫外光源
C 円弧状の側壁
S10~S60 ステップ
【外国語明細書】