(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005261
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】不快物捕捉用組成物及び不快物捕捉用具
(51)【国際特許分類】
A01M 3/04 20060101AFI20240110BHJP
A01K 23/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01M3/04
A01K23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105347
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠人
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 友也
(72)【発明者】
【氏名】川本 大介
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA17
2B121BB12
2B121BB14
2B121EA01
2B121FA02
(57)【要約】
【課題】表面に薬液が付着しているゴキブリなどの不快物を確実に捕捉することができる不快物捕捉用組成物と、これを用いた不快物捕捉用具を提供する。
【解決手段】本発明の不快物捕捉用組成物は、少なくとも溶剤としての水と、ゲル化剤とからなるものであり、ゲル体の物理的吸着効果を利用して、虫の表面が殺虫剤などの薬液で濡れている場合にも、確実に捕捉して持ち上げることができる。本発明の不快物捕捉用具は、不快物捕捉用組成物からなるゲル体10を基材11に塗布した不快物捕捉部を備えたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも溶剤としての水と、ゲル化剤とからなることを特徴とする不快物捕捉用組成物。
【請求項2】
ゲル化剤が、ポリアクリル酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の不快物捕捉用組成物。
【請求項3】
ゲル化剤が、更にカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とする請求項2に記載の不快物捕捉用組成物。
【請求項4】
更に剥離剤を添加したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の不快物捕捉用組成物。
【請求項5】
剥離剤が、中鎖脂肪酸トリグリセリドとカゼインナトリウムの一方又は双方であることを特徴とする請求項4に記載の不快物捕捉用組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項3の何れかに記載の不快物捕捉用組成物からなる不快物捕捉部を備えたことを特徴とする不快物捕捉用具。
【請求項7】
更に請求項4に記載の不快物捕捉用組成物からなる不快物捕捉部を備えたことを特徴とする不快物捕捉用具。
【請求項8】
更に請求項5に記載の不快物捕捉用組成物からなる不快物捕捉部を備えたことを特徴とする不快物捕捉用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゴキブリなどの害虫や、ペットの糞便などのように、素手で扱うことに不快感を感ずる不快物を捕捉するために好適な、不快物捕捉用組成物及び不快物捕捉用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蠅などの虫を粘着剤を利用して捕捉することは従来から行われており、例えば特許文献1には、粘着剤を用いた虫の捕獲器が記載されている。これは上げ底の扁平な容器の下面に粘着シートを設けるとともに突起を設け、床面に押し付けて虫を捕捉したときにも、粘着シートが床面に付かないようにしたものである。
【0003】
しかし特許文献1の捕獲器は粘着剤の化学的接着を利用するものであるため、蚊や蠅などの小さい虫の捕獲には支障がないとしても、ゴキブリのようにやや大型の虫の捕獲には粘着力が不足するおそれがある。特に虫の表面に殺虫剤などの薬液が付着していると、粘着効果が低下するという問題がある。
【0004】
また特許文献2には、テニスのラケットのような形状のフレームに、粘着性物質を付着させたネットを取り付け、虫を打ちたたきながら捕捉する用具が記載されている。これは這いまわったり飛び回ったりする虫を捕捉するために工夫されたもので、ネットに弾力性を持たせることにより、虫を押し潰すことなく捕捉できると考えられる。しかし粘着性物質の化学的接着を利用したものであることは特許文献1と同様であり、ゴキブリのようにやや大型の虫や、表面に薬液が付着している虫の捕獲には、粘着力が不足するという問題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-191866号公報
【特許文献2】特表平10-504445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、ゴキブリのようなやや大型の虫であっても、その表面に薬液が付着しているような場合にも、確実に捕捉することができる不快物捕捉用組成物と、これを用いた不快物捕捉用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の不快物捕捉用組成物は、少なくとも溶剤としての水と、ゲル化剤とからなることを特徴とするものである。
【0008】
なお、ゲル化剤が、ポリアクリル酸ナトリウムであることが好ましく、ゲル化剤がさらに、カルボキシメチルセルロースを含むものとすることができる。また、更に剥離剤を添加することが好ましく、この剥離剤を中鎖脂肪酸トリグリセリドとカゼインナトリウムの一方又は双方とすることができる。
【0009】
また本発明の不快物捕捉用具は、上記した不快物捕捉用組成物からなる不快物捕捉部を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不快物捕捉用組成物は、溶剤としての水とゲル化剤とを含むものであるから、ゴキブリなどの虫に押し付けると、柔らかいゲル体が粘着剤となって虫の頭部や脚部に回り込み、包むように絡まる。このように本発明の不快物捕捉用組成物は、従来のような化学的接着ではなく、ゲル体の物理的吸着効果を利用したものであるから、虫の表面が殺虫剤などの薬液で濡れている場合にも、確実に捕捉して持ち上げることができる。なお、剥離剤を添加することにより、床面からの剥離性をさらに向上させることができる。
【0011】
また本発明の不快物捕捉用具を用いれば、手を汚すことなくゴキブリのようなやや大型の虫やペットの糞便などの不快物を捕捉し、処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の不快物捕捉用組成物を基材に塗布した状態の断面図である。
【
図2】本発明の不快物捕捉用具の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。
本発明の不快物捕捉用組成物の基本成分は、溶剤としての水とゲル化剤である。ゲル化剤としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、またはポリアクリル酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースの組み合わせを用いることができる。これらは水を加えると水溶性高分子の高粘度水溶液である含水ゲルとなる。水とゲル化剤との混合比を変化させることにより、粘性その他のゲルの性状を調整することができ、前記したように不快物捕捉用組成物を虫の頭部や脚部に回り込ませ、包むように絡め取ることが可能となる。
【0014】
これらのゲル化剤は単独であっても双方を併用してもよい。ゴキブリの捕捉を目的とする場合には、ゲル化剤の含有率は5~20%程度(質量%、以下同じ)とすることが好ましい。ゲル化剤の含有率が低下すると粘度が低下して捕捉力が不足し、含有率が高すぎるとゲル化が進みすぎて流動性や粘着性が低下する。
【0015】
ゲル化剤の種類は、上記したカルボキシメチルセルロースやポリアクリル酸ナトリウムに限定されるものではなく、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、アガロース、マンノース、アルギン酸ナトリウム、デキストラン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、ジュランガム、プルラン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の各種のゲル化剤を用いることもできる。
【0016】
ゴキブリの捕捉は床面で行われることが多く、不快物捕捉用組成物が床面に付着して床面を汚すことがある。この問題を避けるため、床面に対する剥離性を高めることが望ましい。このため、不快物捕捉用組成物に剥離剤を添加することが好ましい。剥離剤としては、例えば中鎖脂肪酸トリグリセリド(日油株式会社製パナセート810)とカゼインナトリウムの一方又は双方を用いることができる。これらの剥離剤の添加により、不快物捕捉用組成物が床面に接触しても床面に付着せず、不快物のみを確実に持ち上げることができるようになる。
【0017】
なお、カゼインナトリウムは剥離剤としての作用のほか、ベタツキ防止効果をも発揮する。カゼインナトリウムは水溶性であり、不快物捕捉用組成物からなる不快物捕捉部の表面に薄い水の膜を形成し、ベタツキを防止することができる。これらの剥離剤の添加量は3~10%程度とすることが好ましい。
【0018】
本発明の不快物捕捉用組成物は水分が必須であるため、保湿剤を添加することが好ましい。保湿剤としては例えば、グリセリン、ソルビトール、トレハロース等を用いることができる。後記するように、本発明の不快物捕捉用組成物は不織布などの表面に塗布し、さらにその表面を薄い乾燥防止用フィルムで覆っておき、使用の直前にこのフィルムを剥離して用いることを想定している。このため使用時の乾燥固化は問題にならないが、使用前の保管中の乾燥を防止するため、保湿剤の添加が好ましい。保湿剤の添加により伸び性も向上するため、物理的な捕捉効果をさらに高めることができる。保湿剤の添加量は20~30%程度とすることが好ましい。
【0019】
このほか、柔軟剤、防カビ剤、消泡剤なども添加することが好ましい。柔軟剤としては花王株式会社が「エマゾール」の商品名で市販しているポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートを用いることができる。柔軟剤の添加により、本発明の不快物捕捉用組成物の物理的吸着効果を高めることができる。
【0020】
防カビ剤としては例えば「ダントガードプラスリキッド」の商品名で市販されているジメチルヒダントインを用いることができる。しかしこれに限定されるものではなく、各種の防腐・防カビ剤を適宜使用することができる。例えば、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、ピリジン、安息香酸ナトリウム等の公知の防腐・防カビ剤を適量添加することができる。
【0021】
消泡剤は製造工程において上記した各成分を混合する際における泡の発生を抑制するためのもので、例えばビックケミー・ジャパン株式会社からBYK-028の品番で市販されているポリシロキサンを少量用いることができる。
【0022】
以上に説明した本発明の不快物捕捉用組成物はゲル状の物質であり、
図1に示すように
ゲル体10を不織布などの基材11の表面に1~3mm程度の厚みで塗布して用いることができる。ゲル体10の表面にはポリエチレンフィルムなどの薄い乾燥防止用フィルム12を貼り付けておき、ゲル体10の乾燥固化を防止するとともに、使用前に異物が付着することを防止しておくことが好ましい。
【0023】
これを
図2、
図3に示したカートリッジ13の下面に取付けて不快物捕捉部14を構成する。基材11をカートリッジ13に取付ける方法は任意であり、例えば基材11にスリットを形成してカートリッジ13の突起に差し込んだり、基材11の上面をカートリッジ13に接着したりすることができる。
【0024】
図示の実施形態ではカートリッジ13の上面に差し込み部15が形成されており、本体16の先端に形成された突起17を差し込むことによって、本体16にカートリッジ13を取付ける。本体には斜め上方に延びる取手取付部18が形成されており、ここに取手を装着する。この実施形態では取手として伸縮パイプ19を利用している。使用者は伸縮パイプ19を握ってゴキブリその他の不快物を捕捉する。捕捉後は不快物を捕捉したカートリッジ13を本体16から分離して処分してもよく、不快物を捕捉したカートリッジ13からゲル体10を含む基材11を分離し、カートリッジ13を使い捨てることなく再利用するようにしてもよい。
【実施例0025】
表1に示す通り各原料を調合し、不快物捕捉用組成物を作成した。得られた5種類の不快物捕捉用組成物は何れもゲル体である。これらを不織布の表面に厚さが約2mmとなるように塗布し、殺虫剤が噴霧されたゴキブリを捕捉するテストを行い、ゴキブリ捕捉性と床面からの剥離性を評価した。ゴキブリ捕捉性は、20℃65%環境下で、ゴキブリを絡めとることができた場合は〇とした。床面からの剥離性は、20℃65%環境下で、不快物捕捉用組成物を床面から非常に簡単に剥がすことができた場合は◎、簡単に剥がすことができた場合は〇とした。何れの実施例も床面に付着することなくゴキブリを絡めとることができたが、剥離剤を配合した実施例1~3は、不快物捕捉用組成物を床面から非常に簡単に剥がすことができた。
【0026】