(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052612
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】交通安全支援システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168727
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】17/936,853
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】平野 良平
(72)【発明者】
【氏名】プファエル ティム
(72)【発明者】
【氏名】木俣 亮人
(72)【発明者】
【氏名】高木 悠至
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA21
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL15
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】多数の交通参加者の一部の間で生じるリスクを少ない処理負荷で予測すること。
【解決手段】協調支援装置は、複数の交通参加者の将来を予測する予測ユニットと、複数の交通参加者の中から定めた通知対象に対し通知を行う協調支援情報通知ユニットと、を備える。予測ユニットは、複数の交通参加者を移動グループG1~G9に分けるとともに、各移動グループG1~G9の位置、形状、及び移動ベクトルを含む移動グループ情報を取得するグループ分類部と、移動グループ情報に基づいて各移動グループG1~G9間の衝突の有無を予測し、衝突すると予測された移動グループにおける衝突部位を特定する第1予測部と、第1予測部622によって衝突すると予測された場合、衝突部位に基づいて複数の交通参加者の中から2以上の特定交通参加者を決定し、前記特定交通参加者の間の衝突の有無を予測する第2予測部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象交通エリアにおける人又は移動体としての交通参加者を認識し、各交通参加者に関する認識情報を取得する認識ユニットと、
前記認識ユニットによって認識されている複数の交通参加者の将来を前記認識情報に基づいて予測する予測ユニットと、
前記予測ユニットによる予測結果に基づいて、複数の交通参加者の中から通知対象を決定し、前記通知対象に対し通知を行う通知ユニットと、を備える交通安全支援システムであって、
前記認識ユニットは、各交通参加者の位置及び移動ベクトルを含む情報を前記認識情報として取得し、
前記予測ユニットは、
前記認識情報に基づいて前記認識ユニットによって認識されている複数の交通参加者を複数の移動グループに分けるとともに、各移動グループの位置、形状、及び移動ベクトルを含む移動グループ情報を取得する分類部と、
前記移動グループ情報に基づいて各移動グループ間の衝突の有無を予測し、衝突すると予測された移動グループにおける衝突部位を特定する第1予測部と、
前記第1予測部によって衝突すると予測された場合、前記衝突部位に基づいて複数の交通参加者の中から2以上の特定交通参加者を決定し、前記特定交通参加者の間の衝突の有無を予測する第2予測部と、を備えることを特徴とする交通安全支援システム。
【請求項2】
前記認識ユニットによって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の運転能力と相関のある状態情報を取得する運転主体情報取得ユニットをさらに備え、
前記第2予測部は、前記特定交通参加者に対する前記認識情報及び前記状態情報に基づいて、前記予測対象の間の衝突の有無を予測することを特徴とする請求項1に記載の交通安全支援システム。
【請求項3】
前記予測ユニットは、前記第2予測部によって衝突すると予測された2以上の前記特定交通参加者のうち少なくとも何れかにおいて衝突回避行動が行われた場合、前記特定交通参加者の周囲に存在する交通参加者に及ぼすリスクを予測する第3予測部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の交通安全支援システム。
【請求項4】
前記通知ユニットは、
前記特定交通参加者を第1通知対象として第1通知を行い、
前記第1予測部によって衝突すると予測された移動グループに属する交通参加者のうち前記特定交通参加者以外の交通参加者を第2通知対象として前記第1通知よりも通知強度が低い第2通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の交通安全支援システム。
【請求項5】
前記通知ユニットは、前記特定交通参加者と前記第2通知対象との間の距離が長くなるほど前記第2通知の通知強度を低くすることを特徴とする請求項4に記載の交通安全支援システム。
【請求項6】
前記通知ユニットは、
前記特定交通参加者を第1通知対象として第1通知を行い、
前記第1予測部によって衝突すると予測された移動グループに属する交通参加者のうち前記特定交通参加者以外の交通参加者を第2通知対象として前記第1通知よりも通知強度が低い第2通知を行い、
前記第3予測部によってリスクがあると予測された交通参加者を第3通知対象として前記第1通知よりも通知強度が低い第3通知を行うことを特徴とする請求項3に記載の交通安全支援システム。
【請求項7】
対象交通エリアにおける人又は移動体としての交通参加者を認識し、各交通参加者に関する認識情報を取得する認識ユニットと、
前記認識ユニットによって認識されている複数の交通参加者の将来を前記認識情報に基づいて予測する予測ユニットと、を備えるコンピュータに対し、
各交通参加者の位置及び移動ベクトルを含む情報を前記認識情報として取得する認識ステップと、
前記認識情報に基づいて前記認識ステップによって認識されている複数の交通参加者を複数の移動グループに分けるとともに、各移動グループの位置、形状、及び移動ベクトルを含む移動グループ情報を取得する分類ステップと、
前記移動グループ情報に基づいて各移動グループ間の衝突の有無を予測し、衝突すると予測された移動グループにおける衝突部位を特定する第1予測ステップと、
前記第1予測ステップによって衝突すると予測された場合、前記衝突部位に基づいて複数の交通参加者の中から2以上の特定交通参加者を決定し、前記特定交通参加者の間の衝突の有無を予測する第2予測ステップと、
前記第1及び第2予測ステップによる予測結果に基づいて、複数の交通参加者の中から通知対象を決定し、前記通知対象に対し通知を行う通知ステップと、を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通安全支援システム及びコンピュータプログラムに関する。より詳しくは、人又は移動体としての交通参加者の安全な移動を支援する交通安全支援システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
公共交通では、四輪自動車、自動二輪車、及び自転車等の移動体や歩行者等、様々な交通参加者が各々の意思に基づき各々異なった速度で移動する。このような公共交通における交通参加者の安全性や利便性等を向上するための技術として、例えば特許文献1には、車両の運転者による安全な運転を支援する走行安全装置が示されている。
【0003】
特許文献1に示された走行安全装置では、自車に搭載された車載センサによって車両の周囲の物体を検出し、検出された物体のうち、自車の進行経路に接近してくる移動物体を判定し、判定された移動物体について自車と衝突の可能性があると判定された場合、自車の運転者に報知を行う。特にこの発明では、移動物体が複数存在する場合、これら複数の移動物体をグループに分け、グループ毎に1回ずつ運転者に報知を行っている。これにより自車に接近する移動物体が複数存在する場合、グループ毎に報知が行われるので、運転者が感じる煩わしさを軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1に示された発明では、自車に搭載されたカメラやレーダ等の車載センサによって取得される周囲環境の情報に基づいて危険度を予測しているため、車載センサの検出範囲外に存在する潜在的なリスクについては把握することができない。そこでこのような潜在的なリスクに対しても適切な支援をできるようにするため、例えば所定の対象交通エリアに存在する交通参加者に関する情報を、各交通参加者と通信可能に接続されたサーバに集約し、この対象交通エリアにおける交通参加者の流れをサーバで俯瞰的に把握することが考えられる。
【0006】
しかしながらこのように対象交通エリアに存在する膨大な数の交通参加者にサーバに集約すると、それだけサーバにおける処理負荷が高くなってしまうため、対象交通エリアにおける各交通参加者に対し適切な支援をリアルタイムで提供できなくなってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、対象交通エリアに存在する多数の交通参加者の一部の間で生じるリスクを少ない処理負荷で予測することができる交通安全支援システム及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る交通安全支援システムは、対象交通エリアにおける人又は移動体としての交通参加者を認識し、各交通参加者に関する認識情報を取得する認識ユニットと、前記認識ユニットによって認識されている複数の交通参加者の将来を前記認識情報に基づいて予測する予測ユニットと、前記予測ユニットによる予測結果に基づいて、複数の交通参加者の中から通知対象を決定し、前記通知対象に対し通知を行う通知ユニットと、を備え、前記認識ユニットは、各交通参加者の位置及び移動ベクトルを含む情報を前記認識情報として取得し、前記予測ユニットは、前記認識情報に基づいて前記認識ユニットによって認識されている複数の交通参加者を複数の移動グループに分けるとともに、各移動グループの位置、形状、及び移動ベクトルを含む移動グループ情報を取得する分類部と、前記移動グループ情報に基づいて各移動グループ間の衝突の有無を予測し、衝突すると予測された移動グループにおける衝突部位を特定する第1予測部と、前記第1予測部によって衝突すると予測された場合、前記衝突部位に基づいて複数の交通参加者の中から2以上の特定交通参加者を決定し、前記特定交通参加者の間の衝突の有無を予測する第2予測部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)この場合、前記交通安全支援システムは、前記認識ユニットによって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の運転能力と相関のある状態情報を取得する運転主体情報取得ユニットをさらに備え、前記第2予測部は、前記特定交通参加者に対する前記認識情報及び前記状態情報に基づいて、前記予測対象の間の衝突の有無を予測することが好ましい。
【0010】
(3)この場合、前記予測ユニットは、前記第2予測部によって衝突すると予測された2以上の前記特定交通参加者のうち少なくとも何れかにおいて衝突回避行動が行われた場合、前記特定交通参加者の周囲に存在する交通参加者に及ぼすリスクを予測する第3予測部をさらに備えることが好ましい。
【0011】
(4)この場合、前記通知ユニットは、前記特定交通参加者を第1通知対象として第1通知を行い、前記第1予測部によって衝突すると予測された移動グループに属する交通参加者のうち前記特定交通参加者以外の交通参加者を第2通知対象として前記第1通知よりも通知強度が低い第2通知を行うことが好ましい。
【0012】
(5)この場合、前記通知ユニットは、前記特定交通参加者と前記第2通知対象との間の距離が長くなるほど前記第2通知の通知強度を低くすることが好ましい。
【0013】
(6)この場合、前記通知ユニットは、前記特定交通参加者を第1通知対象として第1通知を行い、前記第1予測部によって衝突すると予測された移動グループに属する交通参加者のうち前記特定交通参加者以外の交通参加者を第2通知対象として前記第1通知よりも通知強度が低い第2通知を行い、前記第3予測部によってリスクがあると予測された交通参加者を第3通知対象として前記第1通知よりも通知強度が低い第3通知を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
(1)交通安全支援システムにおいて、認識ユニットは、対象交通エリアにおける交通参加者を認識するとともに各交通参加者の認識情報を取得し、予測ユニットは、認識情報に基づいて交通参加者の将来を予測し、通知ユニットは、予測ユニットによる予測結果に基づいて複数の交通参加者の中から通知対象を決定し、通知を行う。特に本発明において、予測ユニットの分類部は、認識されている複数の交通参加者を複数の移動グループに分けるとともに、各移動グループの位置、形状、及び移動ベクトルを含む移動グループ情報を取得し、予測ユニットの第1予測部は、移動グループ情報に基づいて各移動グループ間の衝突の有無を予測し、衝突すると予測された移動グループにおける衝突部位を特定し、予測ユニットの第2予測部は、第1予測部によって衝突すると予測された場合、衝突部位に基づいて複数の交通参加者の中から2以上の特定交通参加者を決定し、特定交通参加者の間の衝突の有無を予測する。従って本発明によれば、第1予測部における処理によって複数の交通参加者の中からより詳しく予測すべき特定交通参加者を絞り込んだ上で、第2予測部における処理によってこれら特定交通参加者の間の衝突の有無を予測することができるので、対象交通エリアに存在する多数の交通参加者の一部の間で生じる衝突のリスクを少ない処理負荷で予測し、ひいては対象交通エリアにおける安全な交通を支援することができる。
【0015】
(2)交通安全支援システムにおいて、運転主体情報取得ユニットは、移動体の運転主体の運転能力と相関のある状態情報を取得し、第2予測部は、特定交通参加者に対する認識情報及び状態情報に基づいて、予測対象の間の衝突の有無を予測する。すなわち本発明では、第1予測部における処理によって複数の交通参加者の中から絞り込まれた特定交通参加者に対しては、各々の状態情報を考慮して衝突の有無を予測することにより、少ない処理負荷かつ高い精度で特定交通参加者の間の衝突の有無を予測することができ、ひいては対象交通エリアにおける安全な交通を支援することができる。
【0016】
(3)交通安全支援システムにおいて、予測ユニットの第3予測部は、第2予測部によって衝突すると予測された2以上の特定交通参加者のうち少なくとも何れかにおいて衝突回避行動が行われた場合、この特定交通参加者の周囲に存在する交通参加者に及ぼすリスクを予測する。よって本発明によれば、特定交通参加者によって行われる可能性がある衝突回避行動を加味して交通参加者の将来を予測できるので、対象交通エリアにおける安全な交通を支援することができる。
【0017】
(4)交通安全支援システムにおいて、通知ユニットは、特定交通参加者に対しては第1通知を行い、第1予測部によって衝突すると予測された移動グループに属する交通参加者のうち特定交通参加者以外の交通参加者に対しては第1通知よりも通知強度が低い第2通知を行う。よって本発明によれば、特定交通参加者に対しては第1通知を介して適切な衝突回避行動をとらせつつ、特定交通参加者以外の交通参加者に対しては特定交通参加者の間の衝突に起因して生じる可能性のある連鎖リスクを回避するための行動をとらせることができる。また本発明によれば、第2通知の通知強度を第1通知よりも低くすることにより、特定交通参加者以外の交通参加者が感じる煩わしさを抑制することができる。
【0018】
(5)交通安全支援システムにおいて、通知ユニットは、特定交通参加者と第2通知対象との間の距離が長くなるほど第2通知の通知強度を低くする。これにより特定交通参加者以外の交通参加者が感じる煩わしさを抑制することができる。
【0019】
(6)交通安全支援システムにおいて、通知ユニットは、特定交通参加者に対しては第1通知を行い、第1予測部によって衝突すると予測された移動グループに属する交通参加者のうち特定交通参加者以外の交通参加者に対しては第1通知よりも通知強度が低い第2通知を行い、第3予測部によってリスクがあると予測された交通参加者に対しては第1通知よりも通知強度が低い第3通知を行う。よって本発明によれば、特定交通参加者に対しては第1通知を介して適切な衝突回避行動をとらせつつ、特定交通参加者以外の交通参加者や第3予測部によってリスクがあると予測された交通参加者に対しては、特定交通参加者の間の衝突に起因して生じる可能性のある連鎖リスクを回避するための行動をとらせることができる。また本発明によれば、第2通知や第3通知の通知強度を第1通知よりも低くすることにより、特定交通参加者以外の交通参加者が感じる煩わしさを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る交通安全支援システム及びこの交通安全支援システムが支援対象とする対象交通エリアの一部の構成を示す図である。
【
図2】協調支援装置及びこの協調支援装置と通信可能に接続されている複数のエリア端末の構成を示すブロック図である。
【
図3A】四輪自動車に搭載される通知装置の構成を示すブロック図である。
【
図3B】自動二輪車に搭載される通知装置の構成を示すブロック図である。
【
図3C】歩行者が所有する携帯情報処理端末に搭載される通知装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】予測ユニットの具体的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】第1予測部の予測結果の一例を示す図である。
【
図7】交通安全支援処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る交通安全支援システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る交通安全支援システム1及びこの交通安全支援システム1が支援対象とする交通参加者が存在する対象交通エリア9の一部の構成を模式的に示す図である。
【0023】
交通安全支援システム1は、対象交通エリア9を移動する人である歩行者4や移動体である四輪自動車2及び自動二輪車3等を個々の交通参加者として認識するとともに、この認識を介して生成した支援情報を各交通参加者へ通知し、各々の意思に基づいて移動する各交通参加者の間のコミュニケーション(具体的には、例えば各交通参加者の間の相互認識)や周囲の交通環境の認識を促すことによって対象交通エリア9における各交通参加者の安全かつ円滑な交通を支援する。
【0024】
図1には、車道51、交差点52、歩道53、及び信号機54を交通インフラ設備として含む、市街地の交差点52付近を対象交通エリア9とした場合について説明する。
図1には、車道51及び交差点52内を計7台の四輪自動車2及び計2台の自動二輪車3が移動し、また歩道53及び交差点52内を計3組の歩行者4が移動している場合を示す。また
図1には、計3台のインフラカメラ56が設置されている場合を示す。
【0025】
交通安全支援システム1は、個々の四輪自動車2とともに移動する車載装置群20(四輪自動車2に搭載された車載装置の他、四輪自動車2を運転する運転者が保有又は装着する携帯情報処理端末を含む)と、個々の自動二輪車3とともに移動する車載装置群30(自動二輪車3に搭載された車載装置の他、自動二輪車3を運転者が保有又は装着する携帯情報処理端末を含む)と、各歩行者4が保有又は装着する携帯情報処理端末40と、対象交通エリア9に設けられた複数のインフラカメラ56と、信号機54を制御する信号制御装置55と、これら車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、インフラカメラ56、及び信号制御装置55等の対象交通エリア9に存在する複数の端末(以下、単に「エリア端末」ともいう)と通信可能に接続された協調支援装置6と、を備える。
【0026】
協調支援装置6は、上述の複数のエリア端末に対し基地局57を介して通信可能に接続された1台又は複数台のコンピュータによって構成される。より具体的には、協調支援装置6は、複数のエリア端末に対し基地局57、ネットワークコア及びインターネットを介して接続されたサーバや、複数のエリア端末に対し基地局57及びMEC(Mulch-access Edge Computing)コアを介して接続されたエッジサーバ等によって構成される。
【0027】
図2は、協調支援装置6及びこの協調支援装置6と通信可能に接続されている複数のエリア端末の構成を示すブロック図である。
【0028】
対象交通エリア9における四輪自動車2に搭載される車載装置群20は、例えば、運転者による運転を支援する車載運転支援装置21、運転者に各種情報を通知する通知装置22、運転中の運転者の状態を検出する運転主体状態センサ23、自車と協調支援装置6や自車近傍の他車との間の無線による通信を行う車載通信装置24、及び運転者が所有又は装着する携帯情報処理端末25等を含む。
【0029】
車載運転支援装置21は、外界センサユニット、自車状態センサ、ナビゲーション装置、及び運転支援ECU等を備える。外界センサユニットは、自車の周囲を撮影する車外カメラユニットと、電磁波を用いることによって車外の対象を検出するレーダユニットやライダー(Light Detection and Ranging(LIDAR))ユニット等の自車に搭載された複数の車載外界センサと、これら車載外界センサによる検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより自車の周囲の状態に関する情報を取得する外部認識装置と、を備える。自車状態センサは、車速センサ、加速度センサ、舵角センサ、ヨーレートセンサ、位置センサ、及び方位センサ等、自車の走行状態に関する情報を取得するセンサによって構成される。ナビゲーション装置は、例えば、GNSS(Global Navigation Satelite System)衛星から受信した信号に基づいて自車の現在位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。
【0030】
運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、車線逸脱抑制制御、車線変更制御、先行車追従制御、誤発進抑制制御、衝突軽減ブレーキ制御、及び衝突回避制御等の運転支援制御を実行する。また運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、運転者による安全な運転を支援するための運転支援情報を生成し、通知装置22へ送信する。
【0031】
ここで運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突軽減ブレーキ作動範囲内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触による被害が軽減されるように自車の制動装置を自動で操作する衝突軽減ブレーキ制御を開始する。また運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突回避操舵作動範囲内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触が回避されるように自車の操舵装置を自動で操作する衝突回避制御を開始する。以下では、衝突軽減ブレーキ作動範囲や衝突回避操舵操作範囲をまとめて「ADAS作動範囲」ともいう。
【0032】
運転主体状態センサ23は、運転中の運転者の運転能力と相関のある情報の経時データを取得する様々な装置によって構成される。運転主体状態センサ23は、例えば、運転中の運転者の視線の向きや開眼の有無等を検出する車内カメラや、運転者が装着するシートベルトに設けられ運転者の脈拍や呼吸の有無等を検出するシートベルトセンサや、運転者が把持するステアリングに設けられ運転者の皮膚電位を検出するステアリングセンサや、運転者と同乗者との間の会話の有無を検出する車内マイク等によって構成される。
【0033】
車載通信装置24は、運転支援ECUによって取得した情報(外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報や、実行中の運転支援制御に関する制御情報等を含む)や、運転主体状態センサ23によって取得した運転主体に関する情報等を協調支援装置6へ送信する機能と、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報を通知装置22へ送信する機能と、を備える。
【0034】
通知装置22は、車載運転支援装置21から送信される運転支援情報や協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でマンマシンインターフェース(以下、「HMI(Human Machine Interface)」との略称で表記する場合もある)を作動させることにより、運転者の聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、運転者に各種情報を通知する様々な装置によって構成される。
【0035】
図3Aは、四輪自動車に搭載される通知装置22の構成を示すブロック図である。なお
図3Aには、通知装置22のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
【0036】
通知装置22は、運転者が認知可能な態様で作動するHMI220と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI220を作動させるHMI制御装置225と、を備える。
【0037】
HMI220は、運転者が聴覚によって認知可能な態様で作動する音響装置221と、運転者が視覚によって認知可能な態様で作動するヘッドアップディスプレイ222と、運転者が触覚によって認知可能な態様で作動するシートベルト制御装置223及び座席振動装置224と、を備える。
【0038】
音響装置221は、運転者が着座する運転席のヘッドレストに設けられ、指向性のあるバイノーラルサウンドを発音させることが可能なヘッドレストスピーカ221aと、運転席や助手席の近傍に設けられたメインスピーカ221bと、を備える。これらヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bは、HMI制御装置225からの指令に応じた音を発音する。ヘッドアップディスプレイ222は、運転中の運転者の視野内(例えば、フロントガラス)に、HMI制御装置225からの指令に応じた映像を表示する。シートベルト制御装置223は、HMI制御装置225からの指令に応じて運転者が装着するシートベルトの張力を変化させる。座席振動装置224は、HMI制御装置225からの指令に応じた振幅及び/又は振動数で運転者が着座する座席を振動させる。
【0039】
HMI制御装置225は、運転者に対し身近に迫るリスクの存在を認知させるために定められた態様でHMI220を作動させるリスク通知を行う。後に説明するように、協調支援装置6から四輪自動車2に送信される協調支援情報には、HMI制御装置225によるリスク通知のオン/オフや後述の通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、運転者に対し身近に迫るリスクに関する情報(以下、「リスク情報」ともいう)等が含まれる。
【0040】
HMI制御装置225では、HMI220の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、HMI制御装置225では、運転者に潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、運転者に顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モード、及び運転者に予測されるリスクを回避するために有益な情報を通知することを目的とした予測支援通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、HMI制御装置225に入力されるリスク通知設定値は、リスク通知をオフに設定する“0”と、気配通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“1”と、アナログ通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“2”と、予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“3”と、気配通知モード及び予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“4”と、アナログ通知モード及び予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“5”と、の何れかの値に設定される。
【0041】
HMI制御装置225は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちHMI制御装置225は、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI220を作動させない。
【0042】
HMI制御装置225は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0043】
HMI制御装置225は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0044】
HMI制御装置225は、リスク通知設定値が“3”である場合、通知モードを予測支援通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0045】
HMI制御装置225は、リスク通知設定値が“4”である場合、通知モードを気配通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0046】
またHMI制御装置225は、リスク通知設定値が“5”である場合、通知モードをアナログ通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0047】
ここでHMI制御装置225は、通知モードが予測支援通知モードに設定されている場合、協調支援装置6から送信されるリスク情報に基づいて、運転者に対し身近に迫るリスクを回避するために有益なリスク回避支援情報を生成するとともに、このリスク回避支援情報を運転者が聴覚や視覚によって認知可能な態様でHMI220の音響装置221やヘッドアップディスプレイ222を作動させる。ここでリスク回避支援情報には、自車と接触する可能性がある交通参加者(以下、「リスク対象」ともいう)の位置に関する情報や、自車とリスク対象とが接触する可能性のある地点(以下、「リスク発生地点」ともいう)に関する情報や、運転者に対しリスク対象に対する注意を喚起する内容の情報が含まれる。
【0048】
より具体的には、HMI制御装置225は、運転者が運転する四輪自動車の前方に不健全な状態のライダーが運転する自動二輪車が存在する場合、この自動二輪車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、「二輪の危険な右折に注意して下さい」といった内容のメッセージを音響装置221によって発音したりヘッドアップディスプレイ222に表示させたりする。またこの際、HMI制御装置225は、この自動二輪車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、この自動二輪車の現在位置や予測位置を指し示す矢印の画像をヘッドアップディスプレイ222によって表示させてもよい。
【0049】
またHMI制御装置225は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、運転者に煩わしさを感じさせない態様でHMI220を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在を運転者に自然に認知させる。このように気配通知モードでは、リスク対象の存在を運転者に煩わしさを感じさせないよう自然に認知させるため、HMI制御装置225は、HMI220に含まれる複数の装置のうち、特に運転者の聴覚に訴えるヘッドレストスピーカ221aを作動させることが好ましい。より具体的には、HMI制御装置225は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ヘッドレストスピーカ221aによって、リスク対象の位置又はリスク発生地点の位置へ向けられた指向性のあるバイノーラルサウンドによる耳慣れた効果音を小音量で発音させることにより、運転者の視線をリスク対象の位置又はリスク発生地点へ自然に向けさせる。
【0050】
またHMI制御装置225は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI220を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いを運転者に強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在を運転者に強く認知させるため、HMI制御装置225は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI220を作動させる。ここで通知強度とは、運転者の関心や注意を引き付ける強さをいう。より具体的には、HMI制御装置225は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、ヘッドレストスピーカ221aやメインスピーカ221bによって、気配通知モードの下で発音される効果音よりも大きな音量のブザー音やパルス音を発音させる。これらブザー音やパルス音は、気配通知モードの下で発音される効果音と比較して運転者にとって耳慣れない音でありかつ大音量であるため、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。
【0051】
なお本実施形態では、HMI制御装置225は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221を作動させる場合について説明するが、本発明はこれに限らない。HMI制御装置225は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221を作動させる代わりに、シートベルト制御装置223を作動させ、シートベルトの張力を変化させたり、座席振動装置224を作動させ、座席を振動させたりしてもよい。このようにシートベルト制御装置223や座席振動装置224は、運転者の触覚に訴える態様で作動することから、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。またHMI制御装置225は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、音響装置221、シートベルト制御装置223、及び座席振動装置224を組み合わせて作動させてもよい。
【0052】
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いを運転者に強く認知させるため、HMI制御装置225は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、HMI制御装置225は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたりし、通知強度を高くしてもよい。上述のようにシートベルト制御装置223を作動させる場合、HMI制御装置225は、リスク度合いが高くなるほどシートベルトの張力を大きくし、通知強度を高くしてもよい。また上述のように座席振動装置224を作動させる場合、HMI制御装置225は、リスク度合いが高くなるほど座席の振動の振幅を大きくし、通知強度を高くしてもよい。
【0053】
またHMI制御装置225は、このようにリスク度合いに応じて通知強度を変化させる場合、上述の運転支援ECUによる衝突軽減ブレーキ制御や衝突回避操舵制御の実行が開始される時点、換言すればリスク対象が自車のADAS作動範囲に侵入する時点において、通知強度が最大になるようにHMI220を作動させることが好ましい。
【0054】
図2に戻り、携帯情報処理端末25は、例えば、四輪自動車2の運転者が装着するウェアラブル端末や、運転者が保有するスマートフォン等によって構成される。ウェアラブル端末は、心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等の運転者の生体情報を測定し、この生体情報の測定データを協調支援装置6へ送信する機能や、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、この協調支援情報に応じたメッセージを、画像、音声、警告音、及び振動等によって運転者に通知する機能を備える。またスマートフォンは、運転者の位置情報、移動加速度、及びスケジュール情報等の運転者に関する情報を協調支援装置6へ送信する機能や、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、この協調支援情報に応じたメッセージを、画像、音声、警告音、メロディ、及び振動等によって運転者に通知する機能を備える。
【0055】
対象交通エリア9における自動二輪車3に搭載される車載装置群30は、例えば、ライダーによる運転を支援する車載運転支援装置31、ライダーに各種情報を通知する通知装置32、運転中のライダーの状態を検出するライダー状態センサ33、自車と協調支援装置6や自車近傍の他車との間の無線による通信を行う車載通信装置34、及びライダーが所有又は装着する携帯情報処理端末35等を含む。
【0056】
車載運転支援装置31は、外界センサユニット、自車状態センサ、ナビゲーション装置、及び運転支援ECU等を備える。外界センサユニットは、自車の周囲を撮影する車外カメラユニットと、電磁波を用いることによって車外の対象を検出するレーダユニットやライダーユニット等の自車に搭載された複数の車載外界センサと、これら車載外界センサによる検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより自車の周囲の状態に関する情報を取得する外部認識装置と、を備える。自車状態センサは、車速センサ、及び5軸又は6軸の慣性計測装置等、自車の走行状態に関する情報を取得するセンサによって構成される。ナビゲーション装置は、例えば、GNSS衛星から受信した信号に基づいて現在位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。
【0057】
運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、車線維持制御、車線逸脱抑制制御、車線変更制御、先行車追従制御、誤発進抑制制御、及び衝突軽減ブレーキ制御等の運転支援制御を実行する。また運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、ライダーによる安全な運転を支援するための運転支援情報を生成し、通知装置32へ送信する。
【0058】
ここで運転支援ECUは、自車を中心とした所定の衝突軽減ブレーキ作動範囲(以下、四輪自動車2に対して定義される用語と合わせて「ADAS作動範囲」ともいう)内に自車と接触可能性のある移動体が存在することを条件として、自車と他の移動体との接触による被害が軽減されるように自車の制動装置を自動で操作する衝突軽減ブレーキ制御を開始する。
【0059】
ライダー状態センサ33は、運転中のライダーの運転能力と相関のある情報を取得する様々な装置によって構成される。ライダー状態センサ33は、例えば、ライダーが着座するシートに設けられライダーの脈拍や呼吸の有無等を検出するシートセンサや、ライダーが装着するヘルメットに設けられ、ライダーの脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等を検出するヘルメットセンサ等によって構成される。
【0060】
車載通信装置34は、運転支援ECUによって取得した情報(外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報や、実行中の運転支援制御に関する制御情報等を含む)や、ライダー状態センサ33によって取得したライダーに関する情報等を協調支援装置6へ送信する機能と、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報を通知装置32へ送信する機能と、を備える。
【0061】
通知装置32は、車載運転支援装置21から送信される運転支援情報や協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させることにより、ライダーの聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、ライダーに各種情報を通知する様々な装置によって構成される。
【0062】
図3Bは、自動二輪車に搭載される通知装置32の構成を示すブロック図である。なお
図3Bには、通知装置32のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
【0063】
通知装置32は、ライダーが認知可能な態様で作動するHMI320と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI320を作動させるHMI制御装置325と、を備える。
【0064】
HMI320は、ライダーが聴覚によって認知可能な態様で作動するヘッドマウントスピーカ321と、ライダーが視覚によって認知可能な態様で作動するヘッドアップディスプレイ322と、を備える。
【0065】
ヘッドマウントスピーカ321は、ライダーが装着するヘルメットに設けられ、指向性のあるバイノーラルサウンドを発音させることが可能となっている。ヘッドマウントスピーカ321は、HMI制御装置325からの指令に応じた音を発音する。ヘッドアップディスプレイ322は、運転中のライダーの視野内(例えば、ヘルメットのシールド)に、HMI制御装置325からの指令に応じた映像を表示する。
【0066】
HMI制御装置325は、ライダーに対し身近に迫るリスクの存在を認知させるために定められた態様でHMI320を作動させるリスク通知を行う。後に説明するように、協調支援装置6から自動二輪車3に送信される協調支援情報には、HMI制御装置325によるリスク通知のオン/オフや通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、ライダーに対し身近に迫るリスクに関するリスク情報等が含まれる。
【0067】
HMI制御装置325では、HMI320の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、HMI制御装置325では、ライダーに潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、ライダーに顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モード、及びライダーに予測されるリスクを回避するために有益な情報を通知することを目的とした予測支援通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、HMI制御装置325に入力されるリスク通知設定値は、リスク通知をオフに設定する“0”と、気配通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“1”と、アナログ通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“2”と、予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“3”と、気配通知モード及び予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“4”と、アナログ通知モード及び予測支援通知モードの下でのリスク通知をオンに設定する“5”と、の何れかの値に設定される。
【0068】
HMI制御装置325は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちHMI制御装置325は、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI320を作動させない。
【0069】
HMI制御装置325は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0070】
HMI制御装置325は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0071】
HMI制御装置325は、リスク通知設定値が“3”である場合、通知モードを予測支援通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0072】
HMI制御装置325は、リスク通知設定値が“4”である場合、通知モードを気配通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0073】
またHMI制御装置325は、リスク通知設定値が“5”である場合、通知モードをアナログ通知モード及び予測支援通知モードに設定するとともに、これら設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0074】
ここでHMI制御装置325は、通知モードが予測支援通知モードに設定されている場合、協調支援装置6から送信されるリスク情報に基づいて、ライダーに対し身近に迫るリスクを回避するために有益なリスク回避支援情報を生成するとともに、このリスク回避支援情報をライダーが聴覚や視覚によって認知可能な態様でHMI320のヘッドマウントスピーカ321やヘッドアップディスプレイ322を作動させる。ここでリスク回避支援情報には、自車と接触する可能性があるリスク対象の位置に関する情報や、リスク発生地点に関する情報や、ライダーに対しリスク対象に対する注意を喚起する内容の情報が含まれる。
【0075】
より具体的には、HMI制御装置325は、ライダーが運転する自動二輪車の前方に不健全な状態の運転者が運転する四輪自動車が存在する場合、この四輪自動車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、「四輪の危険な右折に注意して下さい」といった内容のメッセージをヘッドマウントスピーカ321によって発音したりヘッドアップディスプレイ322に表示させたりする。またこの際、HMI制御装置325は、この四輪自動車との接触を回避するためのリスク回避支援情報として、この四輪自動車の現在位置や予測位置を指し示す矢印の画像をヘッドアップディスプレイ322によって表示させてもよい。
【0076】
またHMI制御装置325は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ライダーに煩わしさを感じさせない態様でHMI320を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在をライダーに自然に認知させる。このように気配通知モードでは、リスク対象の存在をライダーに煩わしさを感じさせないよう自然に認知させるため、HMI制御装置325は、HMI320に含まれる複数の装置のうち、特にライダーの聴覚に訴えるヘッドマウントスピーカ321を作動させることが好ましい。より具体的には、HMI制御装置325は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、ヘッドマウントスピーカ321によって、リスク対象の位置又はリスク発生地点の位置へ向けられた指向性のあるバイノーラルサウンドによる耳慣れた効果音を小音量で発音させることにより、ライダーの視線をリスク対象の位置又はリスク発生地点へ自然に向けさせる。
【0077】
またHMI制御装置325は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI320を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いをライダーに強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在をライダーに強く認知させるため、HMI制御装置325は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI320を作動させる。より具体的には、HMI制御装置325は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、ヘッドマウントスピーカ321によって、気配通知モードの下で発音される効果音よりも大きな音量のブザー音やパルス音を発音させる。これらブザー音やパルス音は、気配通知モードの下で発音される効果音と比較してライダーにとって耳慣れない音でありかつ大音量であるため、気配通知モードの下で発音される効果音よりも通知強度が高い。
【0078】
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いをライダーに強く認知させるため、HMI制御装置325は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、HMI制御装置325は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたりし、通知強度を高くしてもよい。
【0079】
またHMI制御装置325は、このようにリスク度合いに応じて通知強度を変化させる場合、上述の運転支援ECUによる衝突軽減ブレーキ制御の実行が開始される時点、換言すればリスク対象が自車のADAS作動範囲に侵入する時点において、通知強度が最大になるようにHMI320を作動させることが好ましい。
【0080】
図2に戻り、対象交通エリア9における歩行者4が所有又は装着する携帯情報処理端末40は、例えば、歩行者4が装着するウェアラブル端末や、歩行者4が保有するスマートフォン等によって構成される。ウェアラブル端末は、心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等の歩行者4の生体情報を測定し、この生体情報の測定データを協調支援装置6へ送信したり、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信したりする機能を備える。またスマートフォンは、歩行者4の位置情報、移動加速度、及びスケジュール情報等の歩行者4に関する歩行者情報を協調支援装置6へ送信したり、協調支援装置6から送信される協調支援情報を受信したりする機能を備える。
【0081】
また携帯情報処理端末40は、受信した協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させることにより、歩行者の聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、歩行者に各種情報を通知する通知装置42を備える。
【0082】
図3Cは、携帯情報処理端末40に搭載される通知装置42の構成を示すブロック図である。なお
図3Cには、通知装置42のうち、特に協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づく制御に関わるブロックのみを図示する。
【0083】
通知装置42は、歩行者が認知可能な態様で作動するHMI420と、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいてHMI420を作動させるHMI制御装置425と、を備える。
【0084】
HMI420は、歩行者が聴覚によって認知可能な態様で作動するスピーカ421と、歩行者が触覚によって認知可能な態様で作動する加振装置424と、を備える。
【0085】
スピーカ421は、HMI制御装置425からの指令に応じた音を発音する。加振装置424は、HMI制御装置425からの指令に応じた態様で振幅及び/又は振動数で携帯情報処理端末40の本体を振動させる。
【0086】
後に説明するように、協調支援装置6から歩行者が所有する携帯情報処理端末40に送信される協調支援情報には、HMI制御装置425によるリスク通知のオン/オフや通知モードの種類を設定するためのリスク通知設定値に関する情報や、歩行者に対し身近に迫るリスクに関するリスク情報等が含まれる。
【0087】
HMI制御装置425では、HMI420の作動対象装置及び作動態様の少なくとも何れかが異なる複数の通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。より具体的には、HMI制御装置425では、歩行者に潜在的なリスクの存在を認知させることを目的とした気配通知モード、及び歩行者に顕在化したリスクの存在及び/又はこのリスクの度合いを認知させることを目的としたアナログ通知モードのうち少なくとも何れかの通知モードの下でリスク通知を行うことが可能となっている。このため、HMI制御装置425に入力されるリスク通知設定値は、HMI制御装置425によるリスク通知をオフに設定する“0”と、HMI制御装置425によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードを気配通知モードに設定する“1”と、HMI制御装置425によるリスク通知をオンに設定するとともに通知モードをアナログ通知モードに設定する“2”と、の何れかの値に設定される。
【0088】
HMI制御装置425は、リスク通知設定値が“0”である場合、リスク通知をオフに設定する。すなわちHMI制御装置425、リスク通知設定値が“0”である場合、HMI420を作動させない。
【0089】
HMI制御装置425は、リスク通知設定値が“1”である場合、通知モードを気配通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でリスク通知をオンにする。
【0090】
またHMI制御装置425は、リスク通知設定値が“2”である場合、通知モードをアナログ通知モードに設定するとともに、設定された通知モードの下でのリスク通知をオンにする。
【0091】
ここでHMI制御装置425は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、歩行者に煩わしさを感じさせない態様でHMI420を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象の存在を歩行者に自然に認知させる。より具体的には、HMI制御装置425は、通知モードが気配通知モードに設定されている場合、加振装置424を作動させることにより、携帯情報処理端末40の本体を所定の振幅及び周波数の下で振動させる。
【0092】
またHMI制御装置425は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、上述の気配通知モードとは異なる態様でHMI420を作動させることにより、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク態様の存在及びこのリスク対象に対するリスク度合いを歩行者に強く認知させる。このようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在を歩行者に強く認知させるため、HMI制御装置425は、気配通知モードで定められる態様よりも通知強度が高い態様でHMI420を作動させる。より具体的には、HMI制御装置425は、通知モードがアナログ通知モードに設定されている場合、スピーカ421によってブザー音、パルス音、及びリスクが存在する旨のメッセージ等を発音させる。
【0093】
また上述のようにアナログ通知モードでは、リスク対象の存在に加えて、このリスク対象に対するリスク度合いを歩行者に強く認知させるため、HMI制御装置425は、協調支援装置6から送信されるリスク情報から抽出されるリスク対象に対するリスク度合い(例えば、リスク対象に対する衝突予測時間)に応じて通知強度を変化させることが好ましい。具体的には、HMI制御装置425は、リスク度合いが高くなるほど(すなわち、衝突予測時間が短くなるほど)、ブザー音の音量を大きくしたり、パルス音の音量を大きくしたり、パルス音の間隔を短くしたり、メッセージの音量を大きくしたり、メッセージの内容を変化させたりし、通知強度を高くしてもよい。
【0094】
図2に戻り、インフラカメラ56は、対象交通エリアにおける車道、交差点、及び歩道を含む交通インフラ設備や、これら車道、交差点、及び歩道等を移動する移動体や歩行者の画像を撮影し、得られた画像情報を協調支援装置6へ送信する。
【0095】
信号制御装置55は、信号機を制御するとともに、対象交通エリアに設けられた信号機の現在の点灯色や点灯色を切り替えるタイミング等に関する信号機状態情報を協調支援装置6へ送信する。
【0096】
協調支援装置6は、上述のような対象交通エリアに存在する複数のエリア端末から取得した情報に基づいて、各交通参加者の間のコミュニケーションや周囲の交通環境の認識を促すための協調支援情報を支援対象とする交通参加者毎に生成し、各交通参加者に通知することにより、対象交通エリアにおける交通参加者の安全かつ円滑な交通を支援するコンピュータである。なお本実施形態では、対象交通エリアに存在する複数の交通参加者のうち、協調支援装置6において生成した協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させる手段(例えば、車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、通知装置22,32,42)を備える交通参加者を協調支援装置6の支援対象とする。
【0097】
協調支援装置6は、対象交通エリアにおける人及び移動体を個々の交通参加者として認識する対象交通エリア認識ユニット60と、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の運転能力と相関のある運転主体状態情報を取得する運転主体情報取得ユニット61と、対象交通エリアにおける複数の交通参加者の将来を予測する予測ユニット62と、対象交通エリア認識ユニット60により支援対象として認識されている個々の交通参加者毎に生成した協調支援情報を送信する協調支援情報通知ユニット65と、対象交通エリアの交通環境に関する情報が蓄積された交通環境データベース67と、予め登録された運転主体による過去の運転履歴に関する情報が蓄積された運転履歴データベース68と、を備える。
【0098】
交通環境データベース67には、予め登録された対象交通エリアの地図情報(例えば、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、及び横断歩道の位置等)や、対象交通エリアのうち特にリスクの高いハイリスクエリアに関するリスクエリア情報等、対象交通エリアにおける交通参加者の交通環境に関する情報が記憶されている。以下では、交通環境データベース67に記憶されている情報を登録交通環境情報ともいう。
【0099】
運転履歴データベース68には、予め登録された運転主体の過去の運転履歴に関する情報が、この運転主体が所有する移動体の登録ナンバーと関連付けられた状態で記憶されている。このため、後述の対象交通エリア認識ユニット60により、認識している移動体の登録ナンバーを特定することができれば、この登録ナンバーに基づいて運転履歴データベース68を検索することにより、認識している移動体の運転主体の過去の運転履歴を取得することができる。以下では、運転履歴データベース68に記憶されている情報を登録運転履歴情報ともいう。
【0100】
対象交通エリア認識ユニット60は、対象交通エリアにおける上記エリア端末(車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、インフラカメラ56、及び信号制御装置55)から送信される情報、及び交通環境データベース67から読み込んだ登録交通環境情報に基づいて、対象交通エリアにおける人又は移動体である各交通参加者及びこの対象交通エリアにおける各交通参加者の交通環境を含む認識対象を認識するとともに、これら認識対象に関する認識情報を取得する。
【0101】
ここで車載装置群20に含まれる車載運転支援装置21及び車載通信装置24から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報や、車載装置群30に含まれる車載運転支援装置31及び車載通信装置34から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報には、外界センサユニットによって取得した自車の周囲の交通参加者や交通環境に関する状態に関する情報や、自車状態センサやナビゲーション装置等によって取得した一交通参加者としての自車の状態に関する情報等が含まれている。また携帯情報処理端末40から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報には、位置や移動加速度等の一交通参加者としての歩行者の状態に関する情報が含まれている。またインフラカメラ56から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される画像情報には、対象交通エリアにおける車道、交差点、及び歩道等の交通インフラ設備の外観や、この対象交通エリアを移動する交通参加者の外観等、各交通参加者やその交通環境に関する情報が含まれる。また信号制御装置55から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される信号機状態情報には、信号機の現在の点灯色や点灯色を切り替えるタイミング等の各交通参加者の交通環境に関する情報が含まれる。また対象交通エリア認識ユニット60が交通環境データベース67から読み込む登録交通環境情報には、対象交通エリアの地図情報やリスクエリア情報等の各交通参加者の交通環境に関する情報が含まれる。
【0102】
従って対象交通エリア認識ユニット60では、これらエリア端末から送信される情報に基づいて、対象交通エリアにおける各交通参加者の対象交通エリアにおける位置、移動ベクトル(すなわち、移動方向に沿って延びかつ移動速度に比例する長さのベクトル)、移動加速度、移動体の車種、移動体の車格、移動体の登録ナンバー、歩行者の構成人数、及び歩行者の年齢層等を各交通参加者の認識情報(以下、「交通参加者認識情報」ともいう)を取得することができる。また対象交通エリア認識ユニット60では、これらエリア端末から送信される情報に基づいて、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、信号機の点灯色及びその切り替えタイミング、並びにリスクエリア情報等を対象交通エリアにおける各交通参加者の交通環境の認識情報(以下、「交通環境認識情報」ともいう)を取得することができる。
【0103】
対象交通エリア認識ユニット60は、以上のようにして取得した交通参加者認識情報及び交通環境認識情報を、運転主体情報取得ユニット61、予測ユニット62、及び協調支援情報通知ユニット65等へ送信する。
【0104】
運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリアにおける上記エリア端末(特に、車載装置群20,30)から送信される情報及び運転履歴データベース68から読み込んだ登録運転履歴情報に基づいて、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の現在の運転能力と相関のある運転主体状態情報及び運転主体特性情報を取得する。
【0105】
より具体的には、運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている四輪自動車の運転主体が人である場合、この四輪自動車に搭載される車載装置群20から送信される情報を運転者の運転主体状態情報として取得する。また運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている自動二輪車の運転主体が人である場合、この自動二輪車に搭載される車載装置群30から送信される情報をライダーの運転主体状態情報として取得する。
【0106】
ここで車載装置群20に含まれる運転主体状態センサ23及び車載通信装置24から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転中の運転者の視線の向き及び開眼の有無等の外観情報や、脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等の生体情報や、会話の有無等の音声情報等に関する経時データであって、運転中の運転者の運転能力と相関のある情報が含まれる。また車載装置群30に含まれるライダー状態センサ33及び車載通信装置34から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、ライダーの脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等の生体情報に関する経時データであって、運転中のライダーの運転能力と相関のある情報が含まれる。また車載装置群20,30に含まれる携帯情報処理端末25,35から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転者やライダー個人のスケジュール情報が含まれる。運転者やライダーは、例えば逼迫したスケジュールの下で移動体を運転している場合、焦りが生じてしまい、運転能力が低下する場合がある。このため運転者やライダー個人のスケジュール情報は、自身の運転能力と相関のある情報であるといえる。
【0107】
運転主体情報取得ユニット61は、以上の手順によって取得した運転主体に対する運転主体状態情報及び運転履歴データベース68から読み込んだ登録運転履歴情報の両方又は何れかを用いることにより、運転中の運転主体の現在の運転能力と相関のある運転主体の運転に関する特性(例えば、急な車線変更の過多、及び急な加減速の過多等)に関する運転主体特性情報を取得する。
【0108】
運転主体情報取得ユニット61は、以上のようにして取得した運転主体の運転主体状態情報及び運転主体特性情報を、予測ユニット62、及び協調支援情報通知ユニット65等へ送信する。
【0109】
予測ユニット62は、対象交通エリアの中の一部の交通エリアを監視エリアとして抽出し、この監視エリアにおける複数の交通参加者の将来におけるリスクを、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された交通参加者認識情報及び交通環境認識情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体状態情報及び運転主体特性情報と、に基づいて予測する。
【0110】
ここで対象交通エリアは、例えば市町村単位で定められる比較的広範囲の交通エリアである。これに対し、監視エリアは、例えば交差点や特定施設の近傍等、四輪自動車が法定速度で移動した場合に数十秒程度で通過し得る交通エリアである。すなわち、監視エリアは、対象交通エリアより狭いが、各移動体に搭載される運転支援ECUによるADAS作動範囲よりも広い。
【0111】
図4は、予測ユニット62の具体的な構成を示す機能ブロック図である。
予測ユニット62は、グループ分類部621と、第1予測部622と、第2予測部623と、第3予測部624と、を備え、これらを用いることによって監視エリアにおける複数の予測対象の将来を予測する。
【0112】
グループ分類部621は、交通参加者認識情報及び交通環境認識情報に基づいて、監視エリア内に存在する複数の交通参加者を複数の移動グループに分けるとともに、移動グループ毎に移動グループ情報を取得する。ここでグループ分類部621において、複数の交通参加者を複数の移動グループに分類する具体的な手順について、
図5を参照しながら説明する。
【0113】
図5は、監視エリア90の一例を示す図である。
図5に例示する監視エリア90は、二車線の道路91と、この道路91の反対車線である三車線の道路92と、道路91,92の間に設けられた中央分離帯93と、道路92と接続する片側二車線の側道94と、を備える。なお
図5には、道路91を計4台の四輪自動車95a~95dが走行し、道路92を計14台の四輪自動車96a~96n及び計2台の自動二輪車97a~97bが走行し、側道94を計2台の四輪自動車98a~98bが走行している場合を示す。なお以下の説明では、所謂左側通行が定められている交通エリア(すなわち、車両は道路の中央から左側を通行しなければならない交通エリア)を例に説明するが、本発明はこれに限らない。すなわち本発明は、所謂右側通行が定められている交通エリア(すなわち、車両は道路の中央から右側を通行しなければならない交通エリア)に対しても適用可能である。
【0114】
グループ分類部621は、対象交通エリア認識ユニット60により監視エリア90内に存在する交通参加者として認識されている四輪自動車95a~95d,96a~96n,98a~98b及び自動二輪車97a~97bの交通参加者認識情報と、監視エリア90の交通環境認識情報と、を取得し、これら認識情報に基づいてこれら複数の交通参加者を、その総数(
図5の例では、22)よりも少ない数の移動グループG1,G2,G3,G4,G5,G6,G7,G8,G9に分ける。ここで各移動グループは、1つの塊を形成して移動する1つ又は複数の交通参加者によって構成される。従ってグループ分類部621は、所定範囲内に存在しかつほぼ同じ移動ベクトルを有する1以上の交通参加者を1つの移動グループに分類する。
【0115】
このため
図5に示す例では、監視エリア90内に存在する22の交通参加者は、2台の四輪自動車95a~95bによって構成される移動グループG1と、2台の四輪自動車95c~95dによって構成される移動グループG2と、1台の四輪自動車96a及び2台の自動二輪車97a~97bによって構成される移動グループG3と、3台の四輪自動車96b~96dによって構成される移動グループG4と、3台の四輪自動車96e~96gによって構成される移動グループG5と、3台の四輪自動車96h~96jによって構成される移動グループG6と、3台の四輪自動車96l~96nによって構成される移動グループG7と、1台の四輪自動車96kによって構成される移動グループG8と、2台の四輪自動車98a~98bによって構成される移動グループG9と、の9の移動グループG1~G9に分けられる。
【0116】
またグループ分類部621は、以上の手順によって複数の交通参加者を複数の移動グループに分けた後、移動グループ毎に移動グループ情報を取得する。ここで移動グループ情報とは、移動グループの位置、移動グループの形状(すなわち、移動グループを構成する複数の交通参加者の分布形状)、及び移動グループの移動ベクトル等を含む。
【0117】
図4に戻り、第1予測部622は、監視エリア90の交通環境認識情報及びグループ分類部621によって取得された移動グループ情報に基づいて、所定時間後の将来における各移動グループの位置を推定することによって各移動グループの間の衝突の有無を予測し、衝突すると予測された移動グループにおける衝突部位を特定する。ここで第1予測部622において移動グループ間の衝突の有無を判定し、衝突部位を特定する手順について、
図6を参照しながら説明する。
【0118】
図6は、第1予測部622の予測結果の一例を示す図である。より具体的には、
図6は、第1予測部622が交通環境認識情報及び移動グループ情報に基づいて推定した、所定時間後の将来における各移動グループの位置を示す図である。
【0119】
図6に示す例では、第1予測部622は、
図5に示す状態から所定時間後には、移動グループG6と移動グループG8との間、及び移動グループG7と移動グループG9との間において、衝突が発生すると予測する。より具体的には、第1予測部622は、
図5に示す時点において移動グループG6よりも速い速度で移動する移動グループG8がその前方の移動グループG6に衝突し、交差点の近傍で速度を落とさずに移動する移動グループG9が交差点に進入する移動グループG7に衝突すると予測する。また第1予測部622は、以上のような予測結果を用いることにより、衝突すると予測された移動グループG6,G7,G8,G9における衝突部位を特定する。
図6に示す例では、第1予測部622は、移動グループG6の後端部(すなわち、四輪自動車96jが存在する部分)、移動グループG8の前端部(すなわち、四輪自動車96kが存在する部分)、移動グループG7の前端部(すなわち、四輪自動車96lが存在する部分)、及び移動グループG9の前端部(すなわち、四輪自動車98aが存在する部分)をそれぞれ衝突部位として特定する。
【0120】
図4に戻り、第2予測部623は、第1予測部622によって少なくとも1組の移動グループが衝突すると予測された場合、第1予測部622によって特定された衝突部位に基づいて、監視エリアに存在する複数の交通参加者の中から2以上の特定交通参加者を決定し、これら特定交通参加者の間の衝突の有無を予測する。
【0121】
より具体的には、第2予測部623は、第1予測部622によって衝突すると予測された移動グループを構成する交通参加者の中から、最も衝突部位に近い位置に存在する交通参加者を特定交通参加者として決定する。従って
図5及び
図6に示す例では、第2予測部623は、移動グループG6の中の四輪自動車96j、移動グループG8の中の四輪自動車96k、移動グループG7の中の四輪自動車96l、及び移動グループG9の中の四輪自動車98aを特定交通参加者として決定する。
【0122】
次に第2予測部623は、監視エリアの交通環境認識情報と、決定した特定交通参加者に対する交通参加者認識情報、運転主体状態情報、及び運転主体特性情報と、を取得し、これら情報に基づいて、各特定交通参加者の間の将来における衝突の有無を予測する。すなわち第2予測部623では、第1予測部622では用いられていない運転主体情報や運転主体特性情報を用いることにより、各特定交通参加者の運転者による周囲の認知状態を考慮することができるので、第1予測部622より高い精度で特定交通参加者の間の将来における衝突の有無を予測することができる。従って
図5及び
図6に示す例では、第2予測部623は、交通環境認識情報、交通参加者認識情報、運転主体状態情報、及び運転主体特性情報に基づいて、四輪自動車96jと四輪自動車96kとの間の将来における衝突の有無、及び四輪自動車96lと四輪自動車98aとの間の将来における衝突の有無を予測する。
【0123】
第3予測部624は、第2予測部623によって少なくとも1組の特定交通参加者の間で衝突が発生すると予測された場合、これら2以上の特定交通参加者のうち少なくとも何れかにおいて、予測される衝突を回避するための衝突回避行動が行われることに起因して、この特定交通参加者の周囲に存在する交通参加者に及ぼすリスクの有無を予測する。ここで衝突回避行動には、運転者が主体として行われる回避行動(例えば、急ブレーキや急操舵)の他、運転支援ECUが主体として行われる衝突軽減ブレーキや衝突回避操舵等が含まれる。従って
図5及び
図6に示す例では、第3予測部624は、例えば四輪自動車96kにおいて、四輪自動車96jとの衝突を回避するために右方へ急操舵する可能性があると予測した場合、四輪自動車96gに追突リスクが発生すると予測する。また第3予測部624は、例えば四輪自動車98aにおいて、四輪自動車96lとの衝突を回避するために衝突軽減ブレーキが作動する可能性があると予測した場合、四輪自動車98aの後方を走行する四輪自動車98bに追突リスクが発生すると予測する。
【0124】
協調支援情報通知ユニット65は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された認識情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体情報と、予測ユニット62による監視エリア内に関する予測結果と、に基づいて、対象交通エリア認識ユニット60によって支援対象として認識されている複数の交通参加者の中から通知対象を決定し、これら通知対象に対し通知を行う。
【0125】
上述のように支援対象は、協調支援装置6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させる手段(例えば、車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、通知装置22,32,42)を備える。従って協調支援情報通知ユニット65は、通知対象毎に生成した協調支援情報を各通知対象へ送信し、各々のHMIを作動させることによって通知を行う。
【0126】
初めに協調支援情報通知ユニット65は、予測ユニット62による監視エリアに関する予測結果に基づいて、監視エリアに存在する複数の交通参加者の中から複数の通知対象を決定する。より具体的には、協調支援情報通知ユニット65は、第2予測部623によって衝突すると予測された特定交通参加者を第1通知対象として決定し、第1予測部622によって衝突すると予測された移動グループに属する交通参加者のうち第1通知対象以外の交通参加者を第2通知対象として決定し、第3予測部624によって何等かのリスクがあると予測された交通参加者のうち第1及び第2通知対象以外の交通参加者を第3通知対象として決定する。すなわち、
図5及び
図6に示す例では、協調支援情報通知ユニット65は、四輪自動車96j,96k,96l,98aを第1通知対象として決定し、四輪自動車96h,96i,96m,96n,98bを第2通知対象として決定し、四輪自動車96gを第3通知対象として決定する。
【0127】
次に、協調支援情報通知ユニット65は、第1通知対象に対しては、アナログ通知モードの下でのリスク通知を開始させるべく、リスク通知設定値を“2”又は“5”に設定する。また協調支援情報通知ユニット65は、第2通知対象及び第3通知対象に対しては、アナログ通知モードよりも通知強度が低い気配通知モードの下でのリスク通知を開始させるべく、リスク通知設定値を“1”又は“4”に設定する。
【0128】
また協調支援情報通知ユニット65は、以上の手順によって各通知対象に対するリスク通知設定値を設定した後、リスク通知設定値に関する情報や各通知対象に対し身近に迫るリスクに関するリスク情報等を含む協調支援情報を各通知対象へ送信する。
【0129】
なお本実施形態では、協調支援情報通知ユニット65は、第2及び第3通知対象に対しては、気配通知モードの下でリスク通知が行われるようにリスク通知設定値を設定したが、本発明はこれに限らない。より具体的には、第2及び第3通知対象に対して行う通知の通知強度は、これら第2及び第3通知対象と第1通知対象との間の距離に応じて変化させてもよい。すなわち、第2及び第3通知対象と第1通知対象との間の距離が長くなるほど通知強度を低くしてもよい。
【0130】
図7は、協調支援装置6によって複数の交通参加者の対象交通エリアにおける安全な交通を支援する交通安全支援処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図7のフローチャートに示す各ステップは、図示しない記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムを協調支援装置6によって実行することによって実現される。
【0131】
始めにステップST1では、協調支援装置6は、対象交通エリアの中から監視エリアを決定し、ステップST2に移る。ステップST2では、協調支援装置6は、監視エリアに存在する交通参加者を認識し、さらに各交通参加者の位置及び移動ベクトル等を含む交通参加者認識情報を取得し、ステップST3に移る。次にステップST3では、協調支援装置6は、ステップST2において認識した複数の交通参加者の運転主体状態情報及び運転主体特性情報を取得し、ステップST4に移る。
【0132】
次にステップST4では、協調支援装置6は、ステップST2で取得した交通参加者認識情報に基づいて、監視エリアに存在する複数の交通参加者を複数の移動グループに分けるとともに、各移動グループの移動グループ情報を取得し、ステップST5に移る。ステップST5では、協調支援装置6は、移動グループ情報に基づいて各移動グループ間の将来における衝突の有無を予測し、各移動グループにおける衝突部位を特定し、ステップST6に移る。
【0133】
ステップST6では、協調支援装置6は、ステップST5において移動グループの間で衝突すると予測された場合、衝突部位に基づいて2以上の特定交通参加者を決定する。またステップST6では、協調支援装置6は、交通参加者認識情報、運転主体状態情報、及び運転主体特性情報に基づいて、特定交通参加者の間の衝突の有無を予測し、ステップST7に移る。
【0134】
ステップST7では、協調支援装置6は、ステップST7において特定交通参加者の間で衝突すると予測された場合、これら2以上の特定交通参加者のうち少なくとも何れかにおいて、予測される衝突を回避するための衝突回避行動が行われることに起因して、この特定交通参加者の周囲に存在する交通参加者に及ぼすリスクの有無を予測し、ステップST8に移る。
【0135】
ステップST8では、協調支援装置6は、ステップST5~ST7における予測結果に基づいて、監視エリアにおける複数の交通参加者の中から通知対象を決定し、各通知対象に対し通知を行い、ステップST1に戻る。
【0136】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1…交通安全支援システム
9…対象交通エリア
2…四輪自動車(交通参加者)
20…車載装置群
3…自動二輪車(交通参加者)
30…車載装置群
4…歩行者(交通参加者)
40…携帯情報処理端末
6…協調支援装置
60…対象交通エリア認識ユニット(認識ユニット)
61…運転主体情報取得ユニット
62…予測ユニット
621…グループ分類部(分類部)
622…第1予測部
623…第2予測部
624…第3予測部
65…協調支援情報通知ユニット(通知ユニット)