(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052614
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】移動体予測装置、学習方法、交通安全支援システム、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023168752
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】17/936,854
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】木俣 亮人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 いずみ
(72)【発明者】
【氏名】プファエル ティム
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直宏
(72)【発明者】
【氏名】奥本 雅規
(72)【発明者】
【氏名】平野 良平
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL15
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】移動体の運転者の状態を考慮して移動体の将来の行動を予測すること。
【解決手段】予測ユニット62は、予測対象の移動状態情報を取得する移動状態情報取得部620と、予測対象の周囲の交通参加者の移動状態に関する周囲状態情報を取得する周囲状態情報取得部621と、予測対象の周囲の交通環境情報を取得する交通環境情報取得部622と、予測対象の運転者の状態に関する運転者状態情報を取得する運転者状態情報取得部623と、移動状態情報、周囲状態情報、及び交通環境情報に基づいて予測対象の交通シーンを特定する交通シーン特定部624と、交通シーン及び運転者状態情報に基づいて、予め定められた複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択する行動パターン選択部625と、予測行動パターンに基づいて予測対象の将来の行動を予測する行動予測部626と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通エリア内を移動する移動体を予測対象とし、当該予測対象の前記交通エリアにおける将来を予測する移動体予測装置であって、
前記予測対象の移動状態に関する移動状態情報を取得する移動状態情報取得部と、
前記交通エリアにおける前記予測対象の周囲の交通参加者の移動状態に関する周囲状態情報を取得する周囲状態情報取得部と、
前記交通エリアにおける前記予測対象の周囲の交通環境情報を取得する交通環境情報取得部と、
前記予測対象の運転者の状態に関する運転者状態情報を取得する運転者状態情報取得部と、
前記移動状態情報、前記周囲状態情報、及び前記交通環境情報に基づいて前記予測対象の交通シーンを特定する交通シーン特定部と、
前記交通シーン及び前記運転者状態情報に基づいて、予め定められた複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択する行動パターン選択部と、
前記予測行動パターンに基づいて前記予測対象の将来の行動を予測する行動予測部と、を備えることを特徴とする移動体予測装置。
【請求項2】
前記運転者状態情報取得部は、前記運転者の運転能力と相関のある情報を前記運転者状態情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の移動体予測装置。
【請求項3】
運転者状態情報取得部は、前記予測対象に設けられた生体情報センサによって検出された前記運転者の生体情報に基づいて前記運転者状態情報を生成することを特徴とする請求項2に記載の移動体予測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の移動体予測装置の学習方法であって、
前記行動パターン選択部は、前記交通シーン及び前記運転者状態情報を入力すると少なくとも1つの前記行動パターンを出力する行動パターン予測モデルを利用することによって前記予測行動パターンを選択し、
所定の第1期間において取得された前記交通シーン及び前記運転者状態情報に基づいて前記行動パターン予測モデルに対する入力データを生成する工程と、
前記第1期間の直後の第2期間において取得された前記移動状態情報に基づいて前記行動パターン予測モデルの出力に対する正解データを生成する工程と、
前記入力データ及び前記正解データを組み合わせた学習データを用いて前記行動パターン予測モデルを学習する工程と、を備えることを特徴とする学習方法。
【請求項5】
前記移動状態情報、前記周囲状態情報、前記交通環境情報、及び前記行動予測部の予測結果に基づいて前記予測対象の将来における衝突の有無を予測する衝突予測部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の移動体予測装置。
【請求項6】
前記予測対象と共に移動する車載装置群と、
前記車載装置群と通信可能な交通管理サーバと、を備える交通安全支援システムであって、
前記交通管理サーバは、請求項5に記載の移動体予測装置と、前記衝突予測部によって前記予測対象が衝突すると予測された場合、前記衝突予測部の予測結果に関する情報を含む支援情報を前記車載装置群へ送信する支援情報通知装置と、を備え、
前記車載装置群は、前記支援情報に基づいて生成した情報を画像及び音の少なくとも何れかによって前記運転者に通知する車載通知装置を備えることを特徴とする交通安全支援システム。
【請求項7】
前記移動体予測装置は、前記衝突予測部によって前記予測対象が衝突すると予測された場合、衝突を回避するための行動又は衝突による被害を軽減するための行動に関する支援行動情報を前記移動状態情報及び前記周囲状態情報に基づいて生成する支援行動情報生成部をさらに備え、
前記支援情報通知装置は、前記予測結果に関する情報及び前記支援行動情報を含む前記支援情報を前記車載装置群へ送信し、
前記車載通知装置は、前記運転者が前記支援行動情報に従って運転操作を行うように生成した情報を画像及び音の少なくとも何れかによって前記運転者に通知することを特徴とする請求項6に記載の交通安全支援システム。
【請求項8】
前記予測対象と共に移動する車載装置群と、
前記車載装置群と通信可能な交通管理サーバと、を備える交通安全支援システムであって、
前記交通管理サーバは、請求項5に記載の移動体予測装置と、前記衝突予測部によって前記予測対象が衝突すると予測された場合、前記衝突予測部の予測結果に関する情報を含む支援情報を前記車載装置群へ送信する支援情報通知装置と、を備え、
前記車載装置群は、前記支援情報に基づいて前記予測対象の挙動を自動で制御する車載運転支援装置を備えることを特徴とする交通安全支援システム。
【請求項9】
前記移動体予測装置は、前記衝突予測部によって前記予測対象が衝突すると予測された場合、衝突を回避するための行動又は衝突による被害を軽減するための行動に関する支援行動情報を前記移動状態情報及び前記周囲状態情報に基づいて生成する支援行動情報生成部をさらに備え、
前記支援情報通知装置は、前記予測結果に関する情報及び前記支援行動情報を含む前記支援情報を前記車載装置群へ送信し、
前記車載運転支援装置は、前記支援行動情報に基づいて前記予測対象の挙動を自動で制御することを特徴とする請求項8に記載の交通安全支援システム。
【請求項10】
交通エリア内を移動する移動体を予測対象とし、当該予測対象の前記交通エリアにおける将来を予測するコンピュータに対し、
前記予測対象の移動状態に関する移動状態情報を取得するステップと、
前記交通エリアにおける前記予測対象の周囲の交通参加者の移動状態に関する周囲状態情報を取得するステップと、
前記交通エリアにおける前記予測対象の周囲の交通環境情報を取得するステップと、
前記予測対象の運転者の状態に関する運転者状態情報を取得するステップと、
前記移動状態情報、前記周囲状態情報、及び前記交通環境情報に基づいて前記予測対象の交通シーンを特定するステップと、
前記交通シーン及び前記運転者状態情報に基づいて、予め定められた複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択するステップと、
前記予測行動パターンに基づいて前記予測対象の将来の行動を予測するステップと、を実行せることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体予測装置、学習方法、交通安全支援システム、及びコンピュータプログラムに関する。より詳しくは交通エリアにおける移動体の将来を予測する移動体予測装置、この移動体予測装置の学習方法、この移動体予測装置を備える交通安全支援システム、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
公共交通では、四輪自動車、自動二輪車、及び自転車等の移動体や歩行者等、様々な交通参加者が各々の意思に基づき各々異なった速度で移動する。近年では、このような公共交通における交通参加者の安全性や利便性等を向上するための様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に示された衝突回避装置では、車両が一時停止したときにおける車両の走行状態に基づいて運転者の急ぎ度合いを推定し、この急ぎ度合いに基づいて車両が発進する際における加速度を推定する。またこの衝突回避装置では、推定された加速度に基づいて車両に接近してくる移動物体との衝突可能性を判定し、この判定結果に基づいて衝突を回避するための動作(例えば、運転者への報知)を発動している。
【0004】
また特許文献1に記載の発明のように、適切なタイミングで衝突を回避するための動作を発動するためには、例えば特許文献2に示すような車両行動予測装置を用いることにより、事前に車両の将来の行動を精度良く予測する必要がある。特許文献2に記載の車両行動予測装置では、過去の画像情報及び過去の車両情報から未来における車両情報を出力するように予め学習が行われたニューラルネットワークを用いることによって、車両の将来の行動を予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-118723号公報
【特許文献2】特開2019-53377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで車両の将来の行動パターンは、車両の状態やその車両の周囲の状態だけでなく、車両の運転者の状態によって変わる場合も多い。しかしながら特許文献2に記載の車両行動予測装置では、過去の画像情報や車両情報等と車両の行動パターンとを関連付けており、運転者の状態については考慮されていない。このため特許文献2に記載の車両行動予測装置では、十分な精度で車両の将来の行動を予測できない場合がある。また特許文献2に記載の車両行動予測装置では、運転者の状態については考慮されていないため、行動パターンを十分に絞り込むことができず、結果として大きな演算負荷がかかってしまうおそれもある。
【0007】
本発明は、移動体の運転者の状態を考慮して移動体の将来の行動を予測できる移動体予測装置、学習方法、交通安全支援システム、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る移動体予測装置は、交通エリア内を移動する移動体を予測対象とし、当該予測対象の前記交通エリアにおける将来を予測するものであって、前記予測対象の移動状態に関する移動状態情報を取得する移動状態情報取得部と、前記交通エリアにおける前記予測対象の周囲の交通参加者の移動状態に関する周囲状態情報を取得する周囲状態情報取得部と、前記交通エリアにおける前記予測対象の周囲の交通環境情報を取得する交通環境情報取得部と、前記予測対象の運転者の状態に関する運転者状態情報を取得する運転者状態情報取得部と、前記移動状態情報、前記周囲状態情報、及び前記交通環境情報に基づいて前記予測対象の交通シーンを特定する交通シーン特定部と、前記交通シーン及び前記運転者状態情報に基づいて、予め定められた複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択する行動パターン選択部と、前記予測行動パターンに基づいて前記予測対象の将来の行動を予測する行動予測部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)この場合、前記運転者状態情報取得部は、前記運転者の運転能力と相関のある情報を前記運転者状態情報として取得することが好ましい。
【0010】
(3)この場合、運転者状態情報取得部は、前記予測対象に設けられた生体情報センサによって検出された前記運転者の生体情報に基づいて前記運転者状態情報を生成することが好ましい。
【0011】
(4)この場合、前記行動パターン選択部は、前記交通シーン及び前記運転者状態情報を入力すると少なくとも1つの前記行動パターンを出力する行動パターン予測モデルを利用することによって前記予測行動パターンを選択することが好ましい。本発明に係る前記移動体予測装置の学習方法は、所定の第1期間において取得された前記交通シーン及び前記運転者状態情報に基づいて前記行動パターン予測モデルに対する入力データを生成する工程と、前記第1期間の直後の第2期間において取得された前記移動状態情報に基づいて前記行動パターン予測モデルの出力に対する正解データを生成する工程と、前記入力データ及び前記正解データを組み合わせた学習データを用いて前記行動パターン予測モデルを学習する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
(5)この場合、前記移動状態情報、前記周囲状態情報、前記交通環境情報、及び前記行動予測部の予測結果に基づいて前記予測対象の将来における衝突の有無を予測する衝突予測部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
(6)本発明に係る交通安全支援システムは、前記予測対象と共に移動する車載装置群と、前記車載装置群と通信可能な交通管理サーバと、を備え、前記交通管理サーバは、前記移動体予測装置と、前記衝突予測部によって前記予測対象が衝突すると予測された場合、前記衝突予測部の予測結果に関する情報を含む支援情報を前記車載装置群へ送信する支援情報通知装置と、を備え、前記車載装置群は、前記支援情報に基づいて生成した情報を画像及び音の少なくとも何れかによって前記運転者に通知する車載通知装置を備えることを特徴とする。
【0014】
(7)この場合、前記移動体予測装置は、前記衝突予測部によって前記予測対象が衝突すると予測された場合、衝突を回避するための行動又は衝突による被害を軽減するための行動に関する支援行動情報を前記移動状態情報及び前記周囲状態情報に基づいて生成する支援行動情報生成部をさらに備え、前記支援情報通知装置は、前記予測結果に関する情報及び前記支援行動情報を含む前記支援情報を前記車載装置群へ送信し、前記車載通知装置は、前記運転者が前記支援行動情報に従って運転操作を行うように生成した情報を画像及び音の少なくとも何れかによって前記運転者に通知することが好ましい。
【0015】
(8)本発明に係る交通安全支援システムは、前記予測対象と共に移動する車載装置群と、前記車載装置群と通信可能な交通管理サーバと、を備え、前記交通管理サーバは、前記移動体予測装置と、前記衝突予測部によって前記予測対象が衝突すると予測された場合、前記衝突予測部の予測結果に関する情報を含む支援情報を前記車載装置群へ送信する支援情報通知装置と、を備え、前記車載装置群は、前記支援情報に基づいて前記予測対象の挙動を自動で制御する車載運転支援装置を備えることを特徴とする。
【0016】
(9)この場合、前記移動体予測装置は、前記衝突予測部によって前記予測対象が衝突すると予測された場合、衝突を回避するための行動又は衝突による被害を軽減するための行動に関する支援行動情報を前記移動状態情報及び前記周囲状態情報に基づいて生成する支援行動情報生成部をさらに備え、前記支援情報通知装置は、前記予測結果に関する情報及び前記支援行動情報を含む前記支援情報を前記車載装置群へ送信し、前記車載運転支援装置は、前記支援行動情報に基づいて前記予測対象の挙動を自動で制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
(1)移動体予測装置は、移動体である予測対象の移動状態に関する移動状態情報を取得する移動状態情報取得部と、予測対象の周囲の交通参加者の移動状態に関する周囲状態情報を取得する周囲状態情報取得部と、予測対象の周囲の交通環境情報を取得する交通環境情報取得部と、予測対象の運転者の状態に関する運転者状態情報を取得する運転者状態情報取得部と、を備える。また移動体予測装置は、移動状態情報、周囲状態情報、及び交通環境情報に基づいて予測対象の交通シーンを特定する交通シーン特定部と、交通シーン及び運転者状態情報に基づいて、予め定められた複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択する行動パターン選択部と、予測行動パターンに基づいて予測対象の将来の行動を予測する行動予測部と、を備える。このように本発明によれば、予測対象が置かれている交通シーンと予測対象の運転者の運転者状態情報とを用いることにより、運転者の状態を考慮して複数の行動パターンの中から効率的に予測行動パターンを絞り込むことができる。よって本発明によれば、予測対象の将来の行動を、運転者の状態を考慮して少ない演算負荷で予測することができる。また本発明によれば、運転者の状態を考慮することにより、精度良く予測対象の将来の行動を予測することができる。
【0018】
(2)運転者状態情報取得部は、運転者の運転能力と相関のある情報を運転者状態情報として取得する。よって本発明によれば、運転者のその時の運転能力を考慮して複数の行動パターンの中から予測行動パターンを絞り込むことができるので、精度良く予測対象の将来の行動を予測することができる。
【0019】
(3)運転状態情報取得部は、予測対象に設けられた生体情報センサによって検出された運転者の生体情報に基づいて運転者状態情報を生成する。よって本発明によれば、運転者のその時の生体情報を考慮して複数の行動パターンの中から予測行動パターンを絞り込むことができるので、精度良く予測対象の将来の行動を予測することができる。
【0020】
(4)行動パターン選択部は、交通シーン及び運転者状態情報を入力すると少なくとも1つの行動パターンを出力する行動パターン予測モデルを利用することによって予測行動パターンを選択する。また本発明に係る移動体予測装置の学習方法は、第1期間において取得された交通シーン及び運転者状態情報に基づいて行動パターン予測モデルに対する入力データを生成し、第1期間の直後の第2期間において取得された移動状態情報に基づいて行動パターン予測モデルの出力に対する正解データを生成し、これら入力データ及び正解データを組み合わせた学習データを用いて行動パターン予測モデルを学習する。よって本発明によれば、予測対象の運転者の特性を行動パターン予測モデルに反映させることができるので、移動体予測装置による予測精度を向上することができる。
【0021】
(5)移動体予測装置は、移動体状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及び行動予測部の予測結果に基づいて予測対象の将来における衝突の有無を予測する衝突予測部をさらに備える。よって本発明によれば、運転者のその時の状態を考慮して予測対象の将来における衝突の有無を予測することができる。
【0022】
(6)交通安全支援システムは、予測対象と共に交通エリア内を移動する車載装置群と、この車載装置群と通信可能でありかつ上述の移動体予測装置を備える交通管理サーバと、を備える。よって本発明によれば、予測対象の移動状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及び運転者状態情報を交通管理サーバによって収集することができるので、予測対象の将来における衝突の有無を精度良く予測することができる。また交通管理サーバの支援情報通知装置は、予測対象が衝突すると予測された場合、この予測結果に関する情報を含む支援情報を車載装置群へ送信し、車載装置群の車載通知装置は、支援情報に基づいて生成した情報を画像及び音の少なくとも何れかによって運転者に通知する。よって本発明によれば、通知を受けた予測対象の運転者は、予測される衝突を回避したり、衝突による被害を軽減したりするための行動をとることができる。
【0023】
(7)交通管理サーバは、衝突予測部によって予測対象が衝突すると予測された場合、衝突を回避するための行動又は衝突による被害を軽減するための行動に関する支援行動情報を生成し、この支援行動情報を含む支援情報を車載装置群へ送信する。また車載通知装置は、運転者が支援行動情報に従って運転操作を行うように生成した情報を画像及び音の少なくとも何れかによって運転者に通知する。よって本発明によれば、通知を受けた予測対象の運転者は、通知に従って運転操作を行うことにより、予測される衝突を回避したり、衝突による被害を軽減したりすることができる。
【0024】
(8)本発明によれば、(6)に示す発明と同じ理由により、予測対象の移動状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及び運転者状態情報等を交通管理サーバによって収集することができるので、予測対象の将来における衝突の有無を精度良く予測することができる。また交通管理サーバの支援情報通知装置は、予測対象が衝突すると予測された場合、この予測結果に関する情報を含む支援情報を車載装置群へ送信し、車載装置群の車載運転支援装置は、支援情報に基づいて予測対象の挙動を自動で制御する。よって本発明によれば、交通管理サーバは、通知を介して予測対象の挙動を自動で制御できるので、予測される衝突を自動で回避させたり、衝突による被害を軽減したりすることができる。
【0025】
(9)交通管理サーバは、衝突予測部によって予測対象が衝突すると予測された場合、衝突を回避するための行動又は衝突による被害を軽減するための行動に関する支援行動情報を生成し、この支援行動情報を含む支援情報を車載装置群へ送信する。また車載運転支援装置は、支援行動情報に基づいて予測対象の挙動を自動で制御する。よって本発明によれば、交通管理サーバは、予測対象の移動状態やその周囲の状態を考慮して、予測される衝突を自動で回避させたり、衝突による被害を軽減したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る交通安全支援システム及びこの交通安全支援システムが支援対象とする対象交通エリアの一部の構成を示す図である。
【
図2】協調支援装置及びこの協調支援装置と通信可能に接続されている複数のエリア端末の構成を示すブロック図である。
【
図3】予測ユニットの具体的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図5に示す例の下で、第1交通参加者を予測対象として衝突予測部によって生成されるリスクマップの一例を示す図である。
【
図7】車載通知装置による画像の表示例を示す図である。
【
図8】交通管理サーバによる交通安全支援処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る交通安全支援システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る交通安全支援システム1及びこの交通安全支援システム1が支援対象とする交通参加者が存在する対象交通エリア9の一部の構成を模式的に示す図である。
【0029】
交通安全支援システム1は、対象交通エリア9を移動する人である歩行者4や移動体である四輪自動車2及び自動二輪車3等を個々の交通参加者として認識するとともに、この認識を介して生成した支援情報を各交通参加者へ通知し、各々の意思に基づいて移動する各交通参加者の間のコミュニケーション(具体的には、例えば各交通参加者の間の相互認識)や周囲の交通環境の認識を促したり、移動体の挙動を自動で制御したりすることによって対象交通エリア9における各交通参加者の安全かつ円滑な交通を支援する。
【0030】
図1には、車道51、交差点52、歩道53、及び信号機54を交通インフラ設備として含む、市街地の交差点52付近を対象交通エリア9とした場合について説明する。
図1には、車道51及び交差点52内を計7台の四輪自動車2及び計2台の自動二輪車3が移動し、また歩道53及び交差点52内を計3組の歩行者4が移動している場合を示す。また
図1には、計3台のインフラカメラ56が設置されている場合を示す。
【0031】
交通安全支援システム1は、個々の四輪自動車2とともに移動する車載装置群20(四輪自動車2に搭載された車載装置の他、四輪自動車2を運転する運転者が保有又は装着する携帯情報処理端末を含む)と、個々の自動二輪車3とともに移動する車載装置群30(自動二輪車3に搭載された車載装置の他、自動二輪車3を運転者が保有又は装着する携帯情報処理端末を含む)と、各歩行者4が保有又は装着する携帯情報処理端末40と、対象交通エリア9に設けられた複数のインフラカメラ56と、信号機54を制御する信号制御装置55と、これら車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、インフラカメラ56、及び信号制御装置55等の対象交通エリア9に存在する複数の端末(以下、単に「エリア端末」ともいう)と通信可能に接続された交通管理サーバ6と、を備える。
【0032】
交通管理サーバ6は、上述の複数のエリア端末に対し基地局57を介して通信可能に接続された1台又は複数台のコンピュータによって構成される。より具体的には、交通管理サーバ6は、複数のエリア端末に対し基地局57、ネットワークコア及びインターネットを介して接続されたサーバや、複数のエリア端末に対し基地局57及びMEC(Mulch-access Edge Computing)コアを介して接続されたエッジサーバ等によって構成される。
【0033】
図2は、交通管理サーバ6及びこの交通管理サーバ6と通信可能に接続されている複数のエリア端末の構成を示すブロック図である。
【0034】
対象交通エリア9における四輪自動車2に搭載される車載装置群20は、例えば、運転者による運転を支援する車載運転支援装置21、運転者に各種情報を通知する車載通知装置22、運転中の運転者の状態を検出する運転主体状態センサ23、及び自車と交通管理サーバ6や自車近傍の他車との間の無線による通信を行う車載通信装置24等を含む。
【0035】
車載運転支援装置21は、外界センサユニット、自車状態センサ、ナビゲーション装置、及び運転支援ECU等を備える。外界センサユニットは、自車の周囲を撮影する車外カメラユニットと、電磁波を用いることによって車外の対象を検出するレーダユニットやライダー(Light Detection and Ranging(LIDAR))ユニット等の自車に搭載された複数の車載外界センサと、これら車載外界センサによる検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより自車の周囲の状態に関する情報を取得する外部認識装置と、を備える。自車状態センサは、車速センサ、加速度センサ、舵角センサ、ヨーレートセンサ、位置センサ、及び方位センサ等、自車の走行状態に関する情報を取得するセンサによって構成される。ナビゲーション装置は、例えば、GNSS(Global Navigation Satelite System)衛星から受信した信号に基づいて自車の現在位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。
【0036】
運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等の車載センシング装置によって取得した情報や、交通管理サーバ6から送信される協調支援情報に基づいて、車線逸脱抑制制御、車線変更制御、先行車追従制御、誤発進抑制制御、衝突軽減ブレーキ制御、及び衝突回避制御等、車体の挙動を自動で制御する運転支援制御を実行する。また運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、運転者による安全な運転を支援するための運転支援情報を生成し、車載通知装置22へ送信する。
【0037】
運転主体状態センサ23は、運転中の運転者の運転能力と相関のある情報の経時データを取得する様々な装置によって構成される。運転主体状態センサ23は、例えば、運転中の運転者の顔画像データを取得する車載カメラや、運転中の運転者の生体情報を取得する生体情報センサ等によって構成される。ここで生体情報センサとは、より具体的には、運転者が装着するシートベルトに設けられ運転者の脈拍や呼吸の有無等を検出するシートベルトセンサ、運転者が把持するステアリングに設けられ運転者の皮膚電位を検出するステアリングセンサ、並びに心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等を検出するウェアラブル端末等である。
【0038】
車載通信装置24は、運転支援ECUによって取得した情報(外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報や、実行中の運転支援制御に関する制御情報等を含む)や、運転主体状態センサ23によって取得した運転主体に関する情報(運転者の顔画像データや、生体情報)等を交通管理サーバ6へ送信する機能と、交通管理サーバ6から送信される協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報を車載運転支援装置21や車載通知装置22へ送信する機能と、を備える。
【0039】
車載通知装置22は、車載運転支援装置21から送信される運転支援情報や交通管理サーバ6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でマンマシンインターフェース(以下、「HMI(Human Machine Interface)」との略称で表記する場合もある)を作動させることにより、運転者の聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、運転者に各種情報を通知する様々な装置によって構成される。
【0040】
対象交通エリア9における自動二輪車3に搭載される車載装置群30は、例えば、ライダーによる運転を支援する車載運転支援装置31、ライダーに各種情報を通知する車載通知装置32、運転中のライダーの状態を検出するライダー状態センサ33、及び自車と交通管理サーバ6や自車近傍の他車との間の無線による通信を行う車載通信装置34等を含む。
【0041】
車載運転支援装置31は、外界センサユニット、自車状態センサ、ナビゲーション装置、及び運転支援ECU等を備える。外界センサユニットは、自車の周囲を撮影する車外カメラユニットと、電磁波を用いることによって車外の対象を検出するレーダユニットやライダーユニット等の自車に搭載された複数の車載外界センサと、これら車載外界センサによる検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより自車の周囲の状態に関する情報を取得する外部認識装置と、を備える。自車状態センサは、車速センサ、及び5軸又は6軸の慣性計測装置等、自車の走行状態に関する情報を取得するセンサによって構成される。ナビゲーション装置は、例えば、GNSS衛星から受信した信号に基づいて現在位置を特定するGNSS受信機や、地図情報を記憶する記憶装置等を備える。
【0042】
運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等の車載センシング装置によって取得した情報や、交通管理サーバ6から送信される協調支援情報に基づいて、車線維持制御、車線逸脱抑制制御、車線変更制御、先行車追従制御、誤発進抑制制御、及び衝突軽減ブレーキ制御等、車体の挙動を自動で制御する運転支援制御を実行する。また運転支援ECUは、外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報に基づいて、ライダーによる安全な運転を支援するための運転支援情報を生成し、車載通知装置32へ送信する。
【0043】
ライダー状態センサ33は、運転中のライダーの運転能力と相関のある情報を取得する様々な装置によって構成される。ライダー状態センサ33は、例えば、運転中のライダーの顔画像データを取得する車載カメラや、運転中のライダーの生体情報を取得する生体情報センサ等によって構成される。ここで生体情報センサとは、より具体的には、ライダーが着座するシートに設けられライダーの脈拍や呼吸の有無等を検出するシートセンサ、ライダーが装着するヘルメットに設けられ、ライダーの脈拍、呼吸の有無、及び皮膚電位等を検出するヘルメットセンサ、並びに心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等を検出するウェアラブル端末等である。
【0044】
車載通信装置34は、運転支援ECUによって取得した情報(外界センサユニット、自車状態センサ、及びナビゲーション装置等によって取得した情報や、実行中の運転支援制御に関する制御情報等を含む)や、ライダー状態センサ33によって取得したライダーに関する情報(ライダーの顔画像データや、生体情報)等を交通管理サーバ6へ送信する機能と、交通管理サーバ6から送信される協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報を車載運転支援装置31や車載通知装置32へ送信する機能と、を備える。
【0045】
車載通知装置32は、車載運転支援装置21から送信される運転支援情報や交通管理サーバ6から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させることにより、ライダーの聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、ライダーに各種情報を通知する様々な装置によって構成される。
【0046】
対象交通エリア9における歩行者4が所有又は装着する携帯情報処理端末40は、例えば、歩行者4が装着するウェアラブル端末や、歩行者4が保有するスマートフォン等によって構成される。ウェアラブル端末は、心拍数、血圧及び血中酸素飽和度等の歩行者4の生体情報を測定し、この生体情報の測定データを交通管理サーバ6へ送信したり、歩行者4の位置情報、移動加速度、及びスケジュール情報等の歩行者4に関する歩行者情報を交通管理サーバ6へ送信したり、交通管理サーバ6から送信される協調支援情報を受信したりする機能を備える。
【0047】
また携帯情報処理端末40は、受信した協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させることにより、歩行者の聴覚、視覚、及び触覚等を通じ、歩行者に各種情報を通知する通知装置42を備える。
【0048】
インフラカメラ56は、対象交通エリアにおける車道、交差点、及び歩道を含む交通インフラ設備や、これら車道、交差点、及び歩道等を移動する移動体や歩行者の画像を撮影し、得られた画像情報を交通管理サーバ6へ送信する。
【0049】
信号制御装置55は、信号機を制御するとともに、対象交通エリアに設けられた信号機の現在の点灯色や点灯色を切り替えるタイミング等に関する信号機状態情報を交通管理サーバ6へ送信する。
【0050】
交通管理サーバ6は、上述のような対象交通エリアに存在する複数のエリア端末から取得した情報に基づいて、各交通参加者の間のコミュニケーションや周囲の交通環境の認識を促すための協調支援情報を支援対象とする交通参加者毎に生成し、各交通参加者に通知することにより、対象交通エリアにおける交通参加者の安全かつ円滑な交通を支援するコンピュータである。なお本実施形態では、対象交通エリアに存在する複数の交通参加者のうち、交通管理サーバ6において生成した協調支援情報を受信し、受信した協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させる手段(例えば、車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、通知装置22,32,42)を備える交通参加者を交通管理サーバ6の支援対象とする。
【0051】
交通管理サーバ6は、対象交通エリアにおける人及び移動体を個々の交通参加者として認識する対象交通エリア認識ユニット60と、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の運転能力と相関のある運転主体状態情報を取得する運転主体情報取得ユニット61と、対象交通エリアにおける複数の交通参加者の将来を予測する予測ユニット62と、対象交通エリア認識ユニット60により支援対象として認識されている個々の交通参加者毎に生成した協調支援情報を送信する協調支援情報通知ユニット65と、対象交通エリアの交通環境に関する情報が蓄積された交通環境データベース67と、予め登録された運転主体による過去の運転履歴に関する情報が蓄積された運転履歴データベース68と、を備える。
【0052】
交通環境データベース67には、予め登録された対象交通エリアの地図情報(例えば、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、及び横断歩道の位置等)や、対象交通エリアのうち特にリスクの高いハイリスクエリアに関するリスクエリア情報等、対象交通エリアにおける交通参加者の交通環境に関する情報が記憶されている。以下では、交通環境データベース67に記憶されている情報を登録交通環境情報ともいう。
【0053】
運転履歴データベース68には、予め登録された運転主体の過去の運転履歴に関する情報が、この運転主体が所有する移動体の登録ナンバーと関連付けられた状態で記憶されている。このため、後述の対象交通エリア認識ユニット60により、認識している移動体の登録ナンバーを特定することができれば、この登録ナンバーに基づいて運転履歴データベース68を検索することにより、認識している移動体の運転主体の過去の運転履歴を取得することができる。以下では、運転履歴データベース68に記憶されている情報を登録運転履歴情報ともいう。
【0054】
対象交通エリア認識ユニット60は、対象交通エリアにおける上記エリア端末(車載装置群20,30、携帯情報処理端末40、インフラカメラ56、及び信号制御装置55)から送信される情報、及び交通環境データベース67から読み込んだ登録交通環境情報に基づいて、対象交通エリアにおける人又は移動体である各交通参加者及びこの対象交通エリアにおける各交通参加者の交通環境を含む認識対象を認識するとともに、これら認識対象に関する認識情報を取得する。
【0055】
ここで車載装置群20に含まれる車載運転支援装置21及び車載通信装置24から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報や、車載装置群30に含まれる車載運転支援装置31及び車載通信装置34から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報には、外界センサユニットによって取得した自車の周囲の交通参加者や交通環境に関する状態に関する情報や、自車状態センサやナビゲーション装置等によって取得した一交通参加者としての自車の状態に関する情報等が含まれている。また携帯情報処理端末40から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される情報には、位置や移動加速度等の一交通参加者としての歩行者の状態に関する情報が含まれている。またインフラカメラ56から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される画像情報には、対象交通エリアにおける車道、交差点、及び歩道等の交通インフラ設備の外観や、この対象交通エリアを移動する交通参加者の外観等、各交通参加者やその交通環境に関する情報が含まれる。また信号制御装置55から対象交通エリア認識ユニット60へ送信される信号機状態情報には、信号機の現在の点灯色や点灯色を切り替えるタイミング等の各交通参加者の交通環境に関する情報が含まれる。また対象交通エリア認識ユニット60が交通環境データベース67から読み込む登録交通環境情報には、対象交通エリアの地図情報やリスクエリア情報等の各交通参加者の交通環境に関する情報が含まれる。
【0056】
従って対象交通エリア認識ユニット60では、これらエリア端末から送信される情報に基づいて、対象交通エリアにおける各交通参加者の対象交通エリアにおける位置、移動ベクトル(すなわち、移動方向に沿って延びかつ移動速度に比例する長さのベクトル)、移動加速度、移動体の車種、移動体の車格、移動体の登録ナンバー、歩行者の構成人数、及び歩行者の年齢層等を各交通参加者の認識情報(以下、「交通参加者認識情報」ともいう)を取得することができる。また対象交通エリア認識ユニット60では、これらエリア端末から送信される情報に基づいて、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、信号機の点灯色及びその切り替えタイミング、並びにリスクエリア情報等を対象交通エリアにおける各交通参加者の交通環境の認識情報(以下、「交通環境認識情報」ともいう)を取得することができる。
【0057】
対象交通エリア認識ユニット60は、以上のようにして取得した交通参加者認識情報及び交通環境認識情報を、運転主体情報取得ユニット61、予測ユニット62、及び協調支援情報通知ユニット65等へ送信する。
【0058】
運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリアにおける上記エリア端末(特に、車載装置群20,30)から送信される情報及び運転履歴データベース68から読み込んだ登録運転履歴情報に基づいて、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている移動体の運転主体の現在の運転能力と相関のある運転主体状態情報及び運転主体特性情報を取得する。
【0059】
より具体的には、運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている四輪自動車の運転主体が人である場合、この四輪自動車に搭載される車載装置群20から送信される情報を運転者の運転主体状態情報として取得する。また運転主体情報取得ユニット61は、対象交通エリア認識ユニット60によって交通参加者として認識されている自動二輪車の運転主体が人である場合、この自動二輪車に搭載される車載装置群30から送信される情報をライダーの運転主体状態情報として取得する。
【0060】
ここで車載装置群20に含まれる運転主体状態センサ23及び車載通信装置24から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転中の運転者の顔画像データや、運転中の運転者の生体情報等の経時データであって、運転中の運転者の運転能力と相関のある情報が含まれる。また車載装置群30に含まれるライダー状態センサ33及び車載通信装置34から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転中のライダーの顔画像データや、運転中のライダーの生体情報等の経時データであって、運転中のライダーの運転能力と相関のある情報が含まれる。また車載装置群20,30に含まれる携帯情報処理端末25,35から運転主体情報取得ユニット61へ送信される情報には、運転者やライダー個人のスケジュール情報が含まれる。運転者やライダーは、例えば逼迫したスケジュールの下で移動体を運転している場合、焦りが生じてしまい、運転能力が低下する場合がある。このため運転者やライダー個人のスケジュール情報は、自身の運転能力と相関のある情報であるといえる。
【0061】
運転主体情報取得ユニット61は、以上の手順によって取得した運転主体に対する運転主体状態情報及び運転履歴データベース68から読み込んだ登録運転履歴情報の両方又は何れかを用いることにより、運転中の運転主体の現在の運転能力と相関のある運転主体の運転に関する特性(例えば、急な車線変更の過多、及び急な加減速の過多等)に関する運転主体特性情報を取得する。
【0062】
運転主体情報取得ユニット61は、以上のようにして取得した運転主体の運転主体状態情報及び運転主体特性情報を、予測ユニット62、及び協調支援情報通知ユニット65等へ送信する。
【0063】
予測ユニット62は、対象交通エリアの中の一部の交通エリアを監視エリアとして抽出し、この監視エリアにおける複数の交通参加者の中から定めた予測対象の将来におけるリスクを、対象交通エリア認識ユニット60によって取得された交通参加者認識情報及び交通環境認識情報と、運転主体情報取得ユニット61によって取得された運転主体状態情報及び運転主体特性情報と、に基づいて予測する。
【0064】
ここで対象交通エリアは、例えば市町村単位で定められる比較的広範囲の交通エリアである。これに対し、監視エリアは、例えば交差点や特定施設の近傍等、四輪自動車が法定速度で移動した場合に数十秒程度で通過し得る交通エリアである。
【0065】
図3は、予測ユニット62の具体的な構成を示す機能ブロック図である。
予測ユニット62は、移動状態情報取得部620と、周囲状態情報取得部621と、交通環境情報取得部622と、運転者状態情報取得部623と、交通シーン特定部624と、行動パターン選択部625と、行動予測部626と、衝突予測部627と、支援行動情報生成部628と、を備え、これらを用いることによって予測対象の監視エリアにおける将来のリスクを予測する。
【0066】
移動状態情報取得部620は、対象交通エリア認識ユニット60から送信される交通参加者認識情報に基づいて、監視エリアに存在する複数の交通参加者の中の1名を予測対象として決定し、この予測対象の移動状態に関する移動状態情報を取得する。より具体的には、移動状態情報取得部620は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得される交通参加者認識情報から、予測対象の移動状態に関する情報を抽出し、これを移動状態情報として取得する。ここで移動状態情報には、例えば予測対象の位置、移動ベクトル、移動加速度、車種、及び車格等、予測対象の移動状態を特徴付ける複数のパラメータによって構成される。
【0067】
周囲状態情報取得部621は、対象交通エリア認識ユニット60から送信される交通参加者認識情報に基づいて、監視エリアにおいて予測対象の周囲に存在する複数の交通参加者を特定し、これら予測対象の周囲に存在する複数の交通参加者の移動状態に関する周囲状態情報を取得する。より具体的には、周囲状態情報取得部621は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得される交通参加者認識情報から、予測対象の周囲に存在する複数の交通参加者の移動状態に関する情報を抽出し、これを周囲状態情報として取得する。ここで周囲状態情報には、例えば、予測対象の周囲に存在する各交通参加者の位置、移動ベクトル、移動加速度、車種、及び車格等、各交通参加者の移動状態を特徴付ける複数のパラメータによって構成される。
【0068】
交通環境情報取得部622は、対象交通エリア認識ユニット60から送信される交通環境認識情報及び交通環境データベース67に記憶されている登録交通環境情報に基づいて、監視エリアにおける予測対象の周囲の交通環境情報を取得する。より具体的には、交通環境情報取得部622は、対象交通エリア認識ユニット60によって取得される交通環境認識情報及び交通環境データベース67に記憶されている登録交通環境情報から、監視エリア又は予測対象の周囲の交通環境に関する情報を抽出し、これを交通環境情報として取得する。ここで交通環境情報には、例えば、車道の幅、車線数、制限速度、歩道の幅、車道と歩道との間のガードレールの有無、信号機の点灯色及びその切り替えタイミング、リスクエリア情報等、予測対象の周囲の交通環境を特徴付ける複数のパラメータによって構成される。
【0069】
運転者状態情報取得部623は、運転主体情報取得ユニット61から送信される運転主体状態情報に基づいて、予測対象の運転者の状態に関する運転者状態情報を取得する。ここで運転者状態情報とは、運転者のその時の運転能力と相関のある情報であり、より具体的には、運転者のその時の感情状態や体調状態を反映した情報である。本実施形態では、運転者の焦りの強さを数値化した焦りパラメータ値を運転者状態情報とする場合について説明するが、本発明はこれに限るものではない。また本実施形態では、焦りパラメータ値は、平常状態であることを示す値0と、やや焦っている状態であることを示す値1と、強く焦っている状態であることを示す値2と、の3つの値を取り得る場合について説明するが、本発明はこれに限るものではない。
【0070】
上述のように運転主体情報取得ユニット61によって取得される運転主体情報には、予測対象の運転者の顔画像データや生体情報等の経時データや、運転者のスケジュール情報等が含まれている。そこで運転者状態情報取得部623は、これら顔画像データや生体情報等の経時データやスケジュール情報等に基づいて運転者のその時の焦りの強さを示す焦りパラメータ値を算出する。
【0071】
交通シーン特定部624は、移動状態情報、周囲状態情報、及び交通環境情報に基づいて、監視エリアにおける予測対象の交通シーンを特定する。より具体的には、交通シーン特定部624は、移動状態情報、周囲状態情報、及び交通環境情報に基づいて、予測対象の交通シーンを特徴付ける複数の交通シーンパラメータの値を決定することによって予測対象の交通シーンを特定する。
【0072】
ここで交通シーンパラメータには、例えば、走行中の道路の車線の数、車線の種類、車線の幅、予測対象が存在する車線の位置、走行中の道路の法定速度、予測対象の速度域、予測対象の前走車の有無、この前走車の速度域、この前走車と予測対象の車間距離、この前走車の車格、予測対象の後続車の有無、この後続車の速度域、この後続車と予測対象の車間距離、この後続車の車格、予測対象の右側の並走車の有無、この右側の並走車の速度域、この右側の並走車と予測対象の車間距離、この右側の並走車の車格、予測対象の左側の並走車の有無、この左側の並走車の速度域、この左側の並走車と予測対象の車間距離、この左側の並走車の車格、予測対象の前方における信号機の有無、信号機の色、及び信号機までの距離等が含まれる。
【0073】
行動パターン選択部625は、運転者状態情報取得部623によって取得された運転者状態情報及び交通シーン特定部624によって特定された交通シーンに基づいて、予め定められた複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択する。ここで行動パターン選択部625では、複数の行動パターンとして、現在の速度を維持する定速行動、速度を現在よりも減少させる減速行動、予測対象を停止させる停止行動、速度を現在よりも上昇させる加速行動、前走車に追従する前走車追従行動、左側の並走車に追従する左側並走車追従行動、右側の並走車に追従する右側並走車追従行動、走行車線を右側の車線に変更する右側車線変更行動、走行車線を左側の車線に変更する左側車線変更行動、前走車と右側の並走車との間に割り込む右側割り込み行動、前走車と左側の並走車との間に割り込む左側割り込み行動、前走車を右側から追い越す右側追い越し行動、前走車を左側から追い越す左側追い越し行動、及びこれら行動の組み合わせ行動等が予め定められている。
【0074】
行動パターン選択部625は、例えば、予測対象に対する運転者状態情報及び交通シーンに基づいて生成される入力データを入力すると、上記複数の行動パターンの中から少なくとも1つの行動パターンを出力する行動パターン予測モデルを利用することによって、複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択する。行動パターン予測モデルは、予測対象に対する運転者状態情報及び交通シーンと、この予測対象が近い将来にとる可能性が高いと思われる予測行動パターンと、を関連付ける。すなわち行動パターン選択部625は、運転者状態情報及び交通シーンに基づいて生成される入力データを行動パターン予測モデルに入力したときの行動パターン予測モデルの出力を予測行動パターンとする。ここで行動パターン選択部625は、予測対象から得られるデータを利用した機械学習によって、予測対象毎に構築されたDNN(Deep Neural Network)を行動パターン予測モデルとして利用する。
【0075】
このような行動パターン予測モデルは、予測対象毎に以下で説明する学習方法を繰り返し実行することによって構築されたDNNが用いられる。この学習方法は、所定の第1期間において取得された交通シーン及び運転者状態情報に基づいて行動パターン予測モデルに対する入力データを生成する工程と、この第1期間の直後の第2期間において取得された移動状態情報に基づいて行動パターン予測モデルの出力に対する正解データを生成する工程と、入力データ及び正解データを組み合わせた学習データを用いて行動パターン予測モデルを学習する工程と、を備える。
【0076】
以上のように本実施形態では、行動パターン選択部625は、行動パターン予測モデルを用いることによって予測行動パターンを選択する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。行動パターン選択部625は、予測対象に対する運転者状態情報及び交通シーンと、この予測対象が近い将来にとる可能性が高いと思われる予測行動パターンとを関連付けるテーブルを利用することによって複数の行動パターンの中から少なくとも1つの予測行動パターンを選択してもよい。
【0077】
ここで行動パターン選択部625によって、複数の行動パターンの中から予測行動パターンを選択する具体的な手順について、
図4を参照しながら説明する。
【0078】
図4は、監視エリア80の一例を示す図である。
図4には、片側二車線の直線道路である監視エリア80内を、3台の四輪自動車である交通参加者81,82,83が走行している場合を示す。以下では、行動パターン選択部625は、これら交通参加者81~83のうち第1交通参加者81を予測対象とし、この予測対象の予測行動パターンを複数の行動パターンの中から選択する場合について説明する。
【0079】
図4に示すように、行動パターン選択部625において予測対象の予測行動パターンを選択する時点では、右側の車線を先頭から順に第3交通参加者83及び第1交通参加者81が所定の車間距離を空けて走行し、左側の車線のうち第1交通参加者81のやや前方かつ第3交通参加者83のやや後方を第2交通参加者82走行している。従って第3交通参加者83は、予測対象から視て前走車であり、第2交通参加者82は、予測対象から視て左側の並走車である。上述の交通シーン特定部624は、予測対象が走行している道路の車線の数や前走車の有無等、予測対象が置かれている交通シーンを複数の交通シーンパラメータの値を決定することによって特定する。
【0080】
行動パターン選択部625には、予測対象である第1交通参加者81が、
図4に示す状態から所定時間先までの間に取り得る複数の行動パターンが定められている。例えば、破線矢印4aは「前走車追従行動」と関連付けられた予測対象の移動経路であり、破線矢印4bは「左側並走車追従行動」と関連付けられた予測対象の移動経路であり、破線矢印4cは「減速行動」と関連付けられた予測対象の移動経路であり、破線矢印4dは「左側割り込み行動」と関連付けられた予測対象の移動経路であり、破線矢印4eは「左側追い越し行動」と関連付けられた予測対象の移動経路である。
【0081】
行動パターン選択部625は、交通シーン特定部624によって特定された交通シーン(すなわち、交通シーンパラメータの値)及び運転者状態情報取得部623によって取得された運転者状態情報(すなわち、焦りパラメータ値)に基づいて、
図4に示すように予め定められた複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択する。より具体的には、
図4に示すような交通シーンの下で、予測対象の運転者に対する焦りパラメータ値が0である場合、行動パターン選択部625は、破線矢印4cと関連付けられる「減速行動」を予測行動パターンとして選択する。これに対し
図4に示すような交通シーンの下で、予測対象の運転者に対する焦りパラメータ値が2である場合、行動パターン選択部625は、破線矢印4dと関連付けられる「左側割り込み行動」を予測行動パターンとして選択する。行動パターン選択部625は、予測対象から過去に取得されたデータに基づいて構築された行動パターン予測モデルを利用することにより、予測対象の運転者のその時の状態に応じた予測行動パターンを選択する。
【0082】
図3に戻り、行動予測部626は、移動状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及び行動パターン選択部625によって選択された予測行動パターン等に基づいて、監視エリアにおける予測対象の将来の具体的な行動(より具体的には、予測対象の現時点から所定時間先までの予測移動経路及び予測移動速度プロファイル等)を予測する。
【0083】
衝突予測部627は、移動状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及び行動予測部626の予測結果に基づいて、予測対象の将来における衝突の有無を予測する。より具体的には、衝突予測部627は、移動状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及び行動予測部626によって予測される予測対象の予測移動経路に基づいて、予測対象の移動速度と予測対象の将来における衝突リスク値とを関連付けるリスクマップを生成する。また衝突予測部627は、行動予測部626によって予測される予測対象の予測移動速度プロファイルに基づいてリスクマップを検索することにより、予測対象の将来における衝突の有無を予測する。ここで衝突予測部627においてリスクマップを生成する具体的な手順について、
図5~
図6を参照しながら説明する。
【0084】
図5は、監視エリア90の一例を示す図である。
図5には、片側二車線の直線道路である監視エリア90内を、3台の四輪自動車である交通参加者91,92,93が走行している場合を示す。
図5に示すように、衝突予測部627における予測処理を開始する時点では、右側の車線を先頭から順に第3交通参加者93及び第1交通参加者91が走行し、左側の車線のうち第1交通参加者91のやや後方を第2交通参加者92が走行している。また衝突予測部627における予測処理を開始する時点では、第3交通参加者93は第1交通参加者91よりも遅い速度で走行中であり、第2交通参加者92は第1交通参加者91よりも速い速度で走行中であるものとする。
【0085】
初めに衝突予測部627は、移動状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及び行動予測部626の予測結果に基づいて、
図5において破線矢印で示すように各交通参加者91,92,93の予測移動経路91a,92a,93aを算出する。すなわち衝突予測部627は、第3交通参加者93に対しては、右側の車線を直進する予測移動経路93aを算出し、第2交通参加者92に対しては、左側の車線を直進する予測移動経路92aを算出する。また衝突予測部627は、第1交通参加者91に対しては、右側の車線を直進した後、第3交通参加者93の所定距離後方に到達した時点で左側の車線へ車線変更することによって第3交通参加者93を追い越す予測移動経路91aを算出する。
【0086】
次に衝突予測部627は、移動状態情報、周囲状態情報、及び交通環境情報に基づいて、各交通参加者91~93が予測移動経路91a~93aに沿って予測時間先まで移動したと仮定した場合における予測対象に対するリスクマップを生成する。
【0087】
図6は、
図5に示す例の下で、第1交通参加者91を予測対象として衝突予測部627によって生成されるリスクマップの一例を示す図である。
図6に示すように、リスクマップは、横軸を時間とし縦軸を速度とする2次元平面上に、予測対象に対する衝突リスク値をプロットして得られる3次元マップである。なお
図6には、予測対象の現在速度、すなわち予測処理の開始時点における第1交通参加者91の移動速度を白丸印で示す。
【0088】
図6に示すように、
図5に示す例の下で予測対象である第1交通参加者91に対して生成されるリスクマップには、衝突リスク値が特に大きい2つのハイリスク領域97,98が存在する。
図6において高速度領域に現れるハイリスク領域97は、第1交通参加者91が第3交通参加者93に対し後方から追突する可能性があることを示し、低速度領域に現れるハイリスク領域98は、車線変更した第1交通参加者91が第2交通参加者92と接触する可能性があることを示す。
【0089】
従って
図6に示すリスクマップによれば、例えば予測対象が破線99aに示すようなパターンに従って加速した場合、予測対象は第3交通参加者93に追突する可能性が高いと予測することができる。また
図6に示すリスクマップによれば、例えば予測対象が破線99bに示すようなパターンに従って減速した場合、予測対象は第2交通参加者92と接触する可能性が高いと予測することができる。また
図6に示すリスクマップによれば、例えば予測対象が破線99cに示すように、破線99bよりも大きな減速度で減速した場合、予測対象は第3交通参加者93及び第2交通参加者92との衝突を回避できる可能性が高いと予測することができる。これは、
図5に示す例では、予測対象である第1交通参加者91は、第2交通参加者92が第1交通参加者91を追い抜くまで減速した後、車線変更し、第3交通参加者93を追い越せば、他の交通参加者92,93との衝突を回避できることを示している。
【0090】
図3に戻り、衝突予測部627は、以上のようなリスクマップを、移動状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及び行動予測部626による予測結果に基づいて生成する。また衝突予測部627は、行動予測部626によって得られた予測対象の予測移動速度プロファイルに基づいてリスクマップを検索することによって衝突リスク値を算出する。また衝突予測部627は、予測移動速度プロファイルに基づ
いて算出した衝突リスク値が所定の衝突判定閾値以上である場合、予測対象は衝突する可能性が高いと予測し、衝突リスク値が衝突判定閾値未満である場合、予測対象は衝突する可能性が低いと予測する。
【0091】
より具体的には、例えば
図6において破線99a,99bで示す移動速度プロファイルは、それぞれハイリスク領域97,98と交差する。従って衝突予測部627は、行動予測部626によって破線99a,99bで示すような予測移動速度プロファイルが予測された場合、予測対象である第1交通参加者91は、周囲の交通参加者92,93と衝突する可能性が高いと予測する。これに対し、例えば
図6において破線99c,99dで示す移動速度プロファイルは、ハイリスク領域97,98と交差しない。従って衝突予測部627は、行動予測部626によって破線99c,99dで示すような予測移動速度プロファイルが予測された場合、予測対象である第1交通参加者91は、周囲の交通参加者92,93と衝突する可能性が低いと予測する。
【0092】
支援行動情報生成部628は、衝突予測部627によって予測対象は衝突する可能性が高いと予測された場合、予測対象が衝突を回避するための行動又は衝突による被害を軽減するための行動に関する支援行動情報を移動状態情報、周囲状態情報、及び交通環境情報に基づいて生成する。支援行動情報生成部628は、例えば、衝突予測部627によって生成されたリスクマップに基づいて支援行動情報を生成する。
【0093】
より具体的には、支援行動情報生成部628は、下記式(1)に示す評価値が最大となるような、現時点から所定時間先までの移動速度プロファイルを支援行動情報として生成する。下記式(1)において、「最大リスク値」とは、移動速度プロファイルに基づいてリスクマップを検索することによって算出される衝突リスク値の最大値である。下記式(1)において、「移動時間」とは、移動速度プロファイルにおいて現時点から一定速度に移行するまでの時間である。また下記式(1)において、「加減速度」とは、移動速度プロファイルにおいて現時点から一定速度に移行するまでの予測対象の加速度の絶対値である。また下記式(1)において、“a”及び“b”はそれぞれ正の係数である。
評価値=1/(最大リスク値+a×移動時間+b×加減速度) (1)
【0094】
上記式(1)に示すように評価値は、衝突リスク値が小さくなるほど大きくなり、加減速度が小さくなるほど大きくなり、また移動時間が短くなるほど大きくなる。従って支援行動情報生成部628は、上記式(1)に示す評価値を最大にする移動速度プロファイルを支援行動情報として生成することにより、衝突リスク値及び予測対象の加減速度が共に小さくなりかつ一定速度に移行するまでの移動時間が短くなるように支援行動情報を生成することができる。より具体的には、例えば
図6に例示するリスクマップの下では、支援行動情報生成部628は、破線99cで示す移動速度プロファイルを支援行動情報として生成する。
【0095】
協調支援情報通知ユニット65は、予測ユニット62の衝突予測部627によって予測対象が衝突する可能性が高いと予測された場合、この衝突予測部627の予測結果に関する情報(すなわち、衝突リスク値、及びリスクマップ等)や、支援行動情報生成部628によって生成された支援行動情報等を含む協調支援情報を生成し、予測対象として定められた交通参加者と共に移動する車載装置群20,30へ送信する。
【0096】
上述のように車載装置群20,30は、協調支援情報通知ユニット65から送信される協調支援情報に基づいて定められた態様でHMIを作動させる車載通知装置22,32を備える。従って協調支援情報を受信した車載通知装置22,32は、衝突予測部627の予測結果に関する情報を画像及び音の少なくとも何れかによって運転者に通知し、運転者に対し予測されるリスクの存在を認識させることができる。また協調支援情報を受信した車載通知装置22,32は、支援行動情報に従って運転操作を行うように生成した情報を画像及び音の少なくとも何れかによって運転者に通知し、予測される衝突を回避したり被害を軽減したりするための運転操作を運転者に対し促すこともできる。
【0097】
図7は、車載通知装置22,32による画像の表示例を示す図である。より具体的には、
図7には、
図6に示すリスクマップにおいて破線99cで示す移動速度プロファイルを支援行動情報として生成した場合の画像表示例を示す。
【0098】
図7に示すように、車載通知装置22,32は、現在速度を示す丸印100と、支援行動情報として送信される移動速度プロファイル101と、をリスクマップにプロットすることによって生成される画像を表示してもよい。またこの際、車載通知装置22,32は、画像を視た運転者がリスクの高い領域を速やかに認識できるよう、
図7において領域102,103で示すように、リスクマップ上における衝突リスク値が衝突判定閾値より大きい領域(すなわち、
図6におけるハイリスク領域97,98)を、例えば赤色で強調して表示してもよい。また図示を省略するが、車載通知装置22,32は、ナビゲーション装置によって表示される地図画像上においてハイリスク領域に該当する部分に、注意を促すアイコンを表示してもよい。予測対象の運転者は、このような画像を視ることにより、周囲交通参加者との間の衝突リスクの存在や、この衝突リスクを回避又は軽減するための運転操作の手順を認識することができる。
【0099】
図3に戻り、上述のように車載装置群20,30は、協調支援情報通知ユニット65から送信される協調支援情報に基づいて車体の挙動を自動で制御する車載運転支援装置21,31を備える。従って協調支援情報を受信した車載運転支援装置21,31は、支援行動情報に基づいて車体の挙動を自動で制御することにより、予測される衝突を回避したり予測される衝突による被害を軽減したりすることもできる。
【0100】
図8は、交通管理サーバ6によって交通対象エリアにおける交通参加者の安全な交通を支援する交通安全支援処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図8のフローチャートに示す各ステップは、図示しない記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムを交通管理サーバ6によって実行することによって実現される。
【0101】
始めにステップST1では、交通管理サーバ6は、対象交通エリアの中から監視エリアを決定し、ステップST2に移る。ステップST2では、交通管理サーバ6は、監視エリアに存在する複数の交通参加者を認識し、さらにこれら複数の交通参加者の中から予測対象を決定し、ステップST3に移る。
【0102】
ステップST3では、交通管理サーバ6は、予測対象の移動状態情報と、監視エリアにおける予測対象の周囲の交通参加者の周囲状態情報と、監視エリアにおける予測対象の周囲の交通環境情報と、を取得し、ステップST4に移る。ステップST4では、交通管理サーバ6は、予測対象の運転者の運転者状態情報を取得し、ステップST5に移る。
【0103】
ステップST5では、交通管理サーバ6は、移動状態情報、周囲状態情報、及び交通環境情報に基づいて、予測対象が置かれている交通シーンを特定し、ステップST6に移る。ステップST6では、交通管理サーバ6は、ステップST5において特定された交通シーン及び予測対象の運転者状態情報に基づいて、予め定められた複数の行動パターンの中から少なくとも1つを予測行動パターンとして選択し、ステップST7に移る。
【0104】
ステップST7では、交通管理サーバ6は、ステップST6において選択した予測行動パターンに基づいて、予測対象の将来の行動を予測し、ステップST8に移る。ステップST8では、交通管理サーバ6は、移動状態情報、周囲状態情報、交通環境情報、及びステップST7の予測結果に基づいて、予測対象の将来における衝突の有無を予測し、ステップST9に移る。
【0105】
ステップST9では、交通管理サーバ6は、ステップST8において予測対象が衝突する可能性が高いと予測された場合、予測対象が衝突を回避したり被害を軽減したりするための行動に関する支援行動情報を生成し、ステップST10に移る。
【0106】
ステップST10では、交通管理サーバ6は、ステップST7~ST8における予測結果に関する情報や支援行動情報を含む協調支援情報を予測対象へ送信し、ステップST1に戻る。
【0107】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。例えば上記実施形態では、移動体である予測対象の監視エリアにおける将来を予測する予測ユニット62を、この予測対象と通信可能に接続された交通管理サーバ6に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。予測ユニットは、支援対象と共に移動する車載装置群20,30によって構成してもよい。この場合、予測ユニットによって取得できる移動状態情報、周囲状態情報、及び交通環境情報等の情報量は交通管理サーバによって取得できる情報量よりも少なくなるものの、通信による遅れが小さいというメリットがある。
【符号の説明】
【0108】
1…交通安全支援システム
2…四輪自動車(移動体、交通参加者)
20…車載装置群
21…車載運転支援装置
22…車載通知装置
3…自動二輪車(移動体、交通参加者)
30…車載装置群
31…車載運転支援装置
32…車載通知装置
6…交通管理サーバ
60…対象交通エリア認識ユニット
61…運転主体情報取得ユニット
62…予測ユニット(移動体予測装置)
620…移動状態情報取得部
621…周囲状態情報取得部
622…交通環境情報取得部
623…運転者状態情報取得部
624…交通シーン特定部
625…行動パターン選択部
626…行動予測部
627…衝突予測部
628…支援行動情報生成部
65…協調支援情報通知ユニット(支援情報通知装置)
9…対象交通エリア
80,90…監視エリア
81,91…第1交通参加者
82,92…第2交通参加者
83,93…第3交通参加者