(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052620
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】容器詰加温販売用飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20240404BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20240404BHJP
A23L 2/42 20060101ALI20240404BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240404BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A23L2/38 G
A23L2/02 A
A23L2/42 101
A23L2/52 101
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169043
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2022158047の分割
【原出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】中島 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 深保子
(72)【発明者】
【氏名】四元 祐子
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴一
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC15
4B117LE10
4B117LG02
4B117LG05
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK23
4B117LP14
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、かかる特有な生臭みが抑制された、乳酸菌の死菌体を含有する、pH4.6以下の飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含み、かつ、固形分濃度(Brix値)が0.1~15%である、pH4.6以下の飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含み、かつ、固形分濃度(Brix値)が0.1~15%である、pH4.6以下の飲料。
【請求項2】
固形分が、甘味成分及び多糖類からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
果汁又は果汁加工物を含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
容器詰加温販売飲料である、請求項1に記載の飲料。
【請求項5】
さらに、有機酸を合計で0.01~0.5重量%含む、請求項1~4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
pH4.6以下の飲料の製造において、飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix)を0.1~15%とすることを特徴とする、前記飲料の製造方法。
【請求項7】
pH4.6以下の飲料の製造において、飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix)を0.1~15%とすることを特徴とする、前記飲料の生臭みの抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌の死菌体等を含む、容器詰加温販売用酸性飲料、及びその製造方法等に関する。より詳細には、乳酸菌の死菌体等を含む、容器詰加温販売用酸性飲料において、特有な生臭みが生じるところ、かかる特有な生臭みが抑制された容器詰加温販売用酸性飲料、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
加温された状態で販売される飲料(すなわち、加温販売用飲料)は、流通開始時点から販売時まで冷蔵又は室温の状態で販売される飲料(すなわち、冷蔵又は室温販売用飲料)よりも、品質劣化が生じやすいだけでなく、冷蔵又は室温販売用飲料を冷蔵又は室温で長期保存した場合とも異なる品質劣化が生じる場合がある。
【0003】
加温販売用飲料の品質劣化の抑制に関連して、例えば、特許文献1には、加温販売用の容器詰果汁飲料の品質劣化を抑える方法として、カロテノイドを所定量含有させ、さらに、飲料中のリンゴ酸含有量に対するクエン酸含有量の比が所定の比になるように調整することにより、果汁由来の特有の焦げ臭と蒸れ臭を抑制できる旨が記載されている。また、特許文献2には、加温販売用果汁飲料において、ショ糖と高甘味度甘味料とを、前記ショ糖の甘味度と配合量との積及び前記高甘味度甘味料の甘味度と配合量との積の和が所定の値になるように配合することによって、加熱臭や褐変を抑制できる旨が記載されている。
【0004】
しかし、乳酸菌の死菌体を含有する、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料において、特有な生臭みという新規な課題が発生することや、固形分を所定濃度で含有させることによって、かかる特有な生臭みを抑制できることは、これまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-053936号公報
【特許文献2】特開2011-072293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、乳酸菌の死菌体を含有する、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料において、特有な生臭み(以下、単に「特有な生臭み」とも表示する。)という新規で特有な課題が発生することを見いだした。
本発明の課題は、かかる特有な生臭みが抑制された、乳酸菌の死菌体を含有する、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本発明の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料において、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix値)を0.1~15%とすると、前述の特有な生臭みを顕著に抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明等が提供される。
(1)乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含み、かつ、固形分濃度(Brix値)が0.1~15%である、pH4.6以下の飲料;
(2)固形分が、甘味成分及び多糖類からなる群から選択される1種又は2種以上である、上記(1)に記載の飲料;
(3)果汁又は果汁加工物を含む、上記(1)又は(2)に記載の飲料;
(4)容器詰加温販売飲料である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の飲料;
(5)さらに、有機酸を合計で0.01~0.5重量%含む、上記(1)~(4)のいずれかに記載の飲料;
(6)pH4.6以下の飲料の製造において、飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix)を0.1~15%とすることを特徴とする、前記飲料の製造方法;
(7)pH4.6以下の飲料の製造において、飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix)を0.1~15%とすることを特徴とする、前記飲料の生臭みの抑制方法;
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前述の特有な生臭みが抑制された、乳酸菌の死菌体を含有する、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805株と、該株と同等の株(該株に由来する株および該株が由来する株)との間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
[1]乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含み、かつ、固形分濃度(Brix値)が0.1~15%である、pH4.6以下の飲料(以下、「本発明の飲料」とも表示する。);
[2]pH4.6以下の飲料の製造において、飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix値)を0.1~15%とすることを特徴とする、前記飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]pH4.6以下の飲料の製造において、飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix値)を0.1~15%とすることを特徴とする、前記飲料の生臭みの抑制方法(以下、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
などの実施態様を含んでいる。
【0012】
(乳酸菌の死菌体)
本発明においては乳酸菌の死菌体を用いる。
【0013】
「乳酸菌」とは、分類学的に乳酸菌と認定されたものの全ての総称であり、属、種、株などで限定されるものではない。かかる「乳酸菌」としては、糖を乳酸発酵して多量の乳酸(好ましくは、消費した糖の50%以上の乳酸)を生成する細菌が挙げられ、ラクトバシラス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、ラクトコッカス(Lactococcus)属細菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属細菌、ペディオコッカス(Pediococcus)属細菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属細菌が挙げられる。
【0014】
本発明に用いる死菌体の乳酸菌の属や種は特に制限されないが、ラクトバシラス属細菌、ストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス属細菌、ロイコノストック属細菌、ペディオコッカス属細菌、エンテロコッカス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、好ましくは、ラクトコッカス属細菌からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられ、さらに好ましくはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌が挙げられる。
【0015】
本発明における死菌体の、より具体的な好ましい態様として、ラクトバシラス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)(ラクトバシラス・アシドフィルスL-92等)、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(ラクトバシラス・パラカゼイKW3110株及びラクトバシラス・パラカゼイMCC1849株等)、ラクトバシラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(ラクトバシラス・ガセリSBT2055株)、ラクトバシラス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシラス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)(ラクトバシラス・プランタラムL-137株等)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス(Lactobacillus casei subsp. rhamnosus)(ラクトバシラス・ラムノサスGG株)、ラクトバシラス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバシラス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバシラス・フルクティヴォランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバシラス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)(以下、単に「ストレプトコッカス・サーモフィラス」とも表示する)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・ピシウム(Lactococcus piscium)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ガルビエアエ(Lactococcus garvieae)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ(Lactococcus lactis subsp. hordniae)、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)、ロイコノストック・ラクチス(Leuconostoc lactis)、ペディオコッカス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)(ペディオコッカス・アシディラクティシJCM8797株及びペディオコッカス・アシディラクティシK15等)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ペディオコッカス・セリコーラ(Pediococcus cellicola)、ペディオコッカス・クラウッセニー(Pediococcus claussenii)、ペディオコッカス・エタノーリデュランス(Pediococcus ethanolidurans)、ペディオコッカス・イノピナタス(Pediococcus inopinatus)、ペディオコッカス・パルヴルス(Pediococcus parvulus)、ペディオコッカス・スティレッシー(Pediococcus stilesii)及び、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、好ましくは、ラクトバシラス・アシドフィラス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトバシラス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・パラカゼイ、ラクトバシラス・ガセリ、ラクトバシラス・ヘルベティカス、ラクトバシラス・ジョンソニ、ラクトバシラス・プランタラム、ラクトバシラス・ブレビス、ラクトバシラス・カゼイ・サブスピーシーズ・ラムノーサス、ラクトバシラス・ペントーサス、ラクトバシラス・ファーメンタム、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・ピシウム、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ガルビエアエ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエ、ロイコノストック・メセントロイデス・サブスピーシス・クレモリス、及び、ロイコノストック・ラクチスからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・ピシウム、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ガルビエアエ、及び、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ホールドニアエからなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、さらに好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスの死菌体が挙げられ、より好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスNBRC12007、及び、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスNRIC1150からなる群から選択される1種又は2種以上の細菌の死菌体が挙げられ、特に好ましくは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805の死菌体が挙げられる。
【0016】
本明細書において挙げられている死菌体の菌株について、本発明では、その菌株の死菌体を含有する、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料において、特有な生臭みが生じる限り、該菌株と同等の菌株も、該菌株に含まれる。ここで、同等の菌株とは、上記の菌株から由来している菌株または上記の菌株が由来する菌株若しくはその菌株の子孫菌株をいう。同等の菌株は他の菌株保存機関に保存されている場合もある。
図1に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805に由来する菌株、及び、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805が由来する菌株を示す。
図1に記載のラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805の同等の菌株も、その菌株の死菌体を含有する、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料において、特有な生臭みが生じる限り、本発明の死菌体として用いることができる。本明細書において、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティスJCM5805(ラクトコッカス・ラクティスJCM5805)という場合、これらの同等の菌株も含む。
【0017】
本明細書における「乳酸菌の死菌体」は、乳酸菌の死菌体である限り特に制限されず、乾燥物であっても、非乾燥物であってもよいが、乳酸菌の死菌体の保存安定性の観点から乾燥物であることが好ましく、例えば乾燥粉末が好適に挙げられる。
【0018】
乳酸菌の死菌体の調製方法は特に制限されず、例えば、乳酸菌を培養した培地を殺菌してから、ろ過、遠心分離等により菌体を集菌する方法や、乳酸菌を培養した培地から、ろ過、遠心分離等により菌体を集菌してから、殺菌する方法などを挙げることができ、必要に応じてさらに乾燥処理や破砕処理を行うことができる。
なお、殺菌の手段は特に制限されず、加熱のみならず、紫外線やγ線照射など、菌を死滅させる常套手段を用いることができる。また、飲料調製時の殺菌処理にて、飲料中の乳酸菌を死滅させてもよい。
【0019】
本発明において、容器詰加温販売用飲料における乳酸菌の死菌体の菌体濃度としては、特に制限されないが、特有な生臭みという課題が増加して本発明の意義が大きくなることから、例えば200億個/L以上、好ましくは280億個/L以上、より好ましくは500億個/L以上、1000億個/L以上、2000億個/L以上、又は、4000億個/L以上が挙げられる。また、容器詰加温販売用飲料における乳酸菌の死菌体の菌体濃度の上限としては、特に制限されないが、例えば8兆個/L以下、6兆個/L以下、4兆個/L以下、2兆個/L以下などが挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
容器詰加温販売用飲料における乳酸菌の死菌体の菌体濃度は、飲料に配合する乳酸菌の死菌体の量を調整することによって、調整することができる。
なお、容器詰加温販売用飲料中の乳酸菌の死菌体の個数の測定方法としては、公知の乳酸菌の菌数測定法が特に制限なく挙げられ、例えば、直接鏡検法、粒子電気的検知帯法、PCR法またはフローサイトメトリー法等が挙げられ、フローサイトメトリー法が好ましく挙げられる。
【0020】
(固形分)
本明細書において、「固形分」とは、特有な生臭みを抑制する効果を発揮し得る可溶性固形分である限り特に制限されず、例えば、甘味成分、多糖類、ミネラル類、脂質、果汁、果汁加工物、及び、茶またはコーヒーからなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、甘味成分、多糖類、果汁、果汁加工物、及び、茶からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられ、甘味成分、及び、多糖類からなる群から選択される1種又は2種以上がより好ましく挙げられる。
【0021】
上記の「甘味成分」としては、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖類、乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖等の二糖類、粉末水あめ等の多糖といった結晶性糖類;や、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖(例えば三糖~十糖);水あめ、異性化液糖(例えば果糖ぶどう糖液糖)等の非結晶性糖類;マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール;アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース、ステビア、甘草抽出物、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテーム等の高甘味度甘味料;が挙げられ、中でも、糖類(すなわち結晶性糖類や非結晶性糖類)、高甘味度甘味料が好ましく挙げられ、単糖類、二糖類、高甘味度甘味料がより好ましく挙げられ、ショ糖、アセスルファムK、スクラロースがさらに好ましく挙げられる。甘味成分は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本明細書において、「多糖類」とは、3以上の重合度を有する多糖類であって、かつ、本明細書における「甘味成分」(例えば、上に例示されている甘味成分)に含まれないものを意味する。かかる「多糖類」としては、デンプンなどの消化性多糖類、難消化性の食物繊維などが挙げられ、中でも、食物繊維が好ましく挙げられ、中でも、水溶性食物繊維がより好ましく挙げられる。
【0023】
上記の水溶性食物繊維としては、デキストリン、大豆多糖類、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、寒天、カラギナン、ポリデキストロース、タマリンドガム、アルギン酸、グルコマンナン、カルボキシメチルセルロース、フコイダン、ラミナラン、イヌリンなどが挙げられ、中でも、デキストリンが好ましく挙げられる。
なお、上記の「大豆多糖類」とは、大豆に由来する、ヘミセルロースを主成分として含む水溶性の食物繊維を意味する。かかる大豆多糖類は、通常、大豆から豆腐などの大豆加工品を製造する過程で生成するおからなどの不溶性素材から、抽出・精製を経て製造することができる。
【0024】
本明細書において、「デキストリン」とは、粉中のアミロースやアミロペクチン等の多糖類を熱、酸、アルカリ、酵素等で加水分解したものを意味する。かかるデキストリンとして、例えば、難消化性デキストリン、シクロデキストリン(例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン)、マルトデキストリン、イソマルトデキストリンなどが挙げられ、中でも、難消化性デキストリンが好ましく挙げられる。
本発明におけるデキストリンのデキストロース当量(DE)や重合度としては、特有な生臭みを抑制する効果を発揮し得る限り特に制限されないが、DE値として例えば5~20、5~15、5~10などが挙げられ、重合度として例えば6~40、10~40、10~35などが挙げられる。
【0025】
上記の固形分は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる固形分は市販されているものを用いることができる。
【0026】
本発明における固形分の使用量としては、容器詰加温販売用飲料の固形分濃度(Brix値)が0.1~15%となる量が挙げられ、特有な生臭みをより多く抑制する観点から、好ましくは0.2~15%又は0.2~10%、より好ましくは2~15%又は2~10%、さらに好ましくは5~15%又は5~10%となる量が挙げられる。Brix値は飲料中の可溶性固形分濃度を知る場合などに用いられる指標であり、飲料中の可溶性固形分濃度を主に反映する数値であるものの、不溶性固形分濃度の影響もわずかに受ける場合もある。本発明における固形分濃度とは、その影響を受ける場合も含めて、本発明の飲料のBrix値を意味する。
本発明において、Brix値が上記の範囲であると、乳酸菌の死菌体を含有する、少なくともpH4.6以下の容器詰加温販売用飲料における特有な生臭みを抑制することができる。
【0027】
本発明におけるBrix値には、固形分(例えば、甘味成分及び多糖類からなる群から選択される1種又は2種以上の固形分)の使用量を調整することによって、調整することができる。
【0028】
本明細書において、容器詰加温販売用飲料のBrix値とは、20℃で測定された容器詰加温販売用飲料の屈折率(単位は「%」、「°Bx」または「度」)を意味する。かかる屈折率は、市販の糖度計や屈折計(例えば、デジタル屈折計Rx-5000α;アタゴ社製)を用いて測定することができる。
【0029】
(pH)
本発明の飲料におけるpHとしては、4.6以下である限り特に制限されないが、4以下、3.8以下が挙げられ、より具体的には2~4.6、2.5~4.6、2~4、2.5~4、2~3.8、2.5~3.8などが挙げられる。かかるpHの値は20℃での測定値とする。
本発明の飲料のpHは、酸味料やpH調整剤などを添加するなどの常法により調整することができる。かかるpH調整剤としては、水に溶解した時にアルカリ性又は酸性を示す物質などが挙げられ、具体的には、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ガスなどが挙げられる。
本発明の飲料のpHは、pHメーターなどを用いて常法により測定することができる。
【0030】
(容器詰加温販売用飲料)
本発明の飲料は、容器詰加温販売用飲料でなくてもよいが、容器詰加温販売用飲料であることが好ましい。本明細書における「加温販売用飲料」としては、例えば50~80℃、好ましくは50~75℃にて、2日間以上1か月間以内、好ましくは3日間以上1か月間以内、5日間以上3週間以内、より好ましくは1週間以上2週間以内の期間、保存される又は保存された飲料が挙げられる。上記保存期間としては、連続でも断続でもよく、該当する温度範囲で保存される又は保存された期間の合計をいう。本発明における容器詰加温販売用飲料には、加温することなく、常温あるいは冷蔵(4~40℃)にて販売された飲料は含まない。
【0031】
本発明の飲料は、乳酸菌の死菌体と、固形分を必須成分として含有している。必須成分である、本明細書における「固形分」は、乳酸菌の死菌体を包まない概念である。
【0032】
(任意成分)
本発明の飲料は、例えば、有機酸、果汁又は果汁加工物、色素、香料、酸味料(ただし有機酸を除く)、酸化防止剤、保存料、乳化剤、及び、pH調整剤のいずれか1つ又は2つ以上を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいが、有機酸、及び、果汁又は果汁加工物からなる群から選択される1種又は2種以上を含んでいることが好ましい。また、本発明の飲料は、乳成分、乳酸発酵物、及び、大豆成分からなる群から選択される1種又は2種以上を含んでいてもよいが、いずれも含んでいないことが好ましい。
【0033】
(有機酸)
本発明の飲料は、有機酸を含んでいなくてもよいが、特有な生臭みをより多く抑制する観点から、有機酸をさらに含んでいることが好ましい。かかる有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、コハク酸、ピルビン酸、ギ酸、フィチン酸、及び、酢酸からなる群から選択される1種又は2種以上、あるいは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、及び、コハク酸からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及び、乳酸からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられる。なお、有機酸を含む本発明の飲料を製造する場合、有機酸を用いてもよいし、有機酸の塩や、有機酸含有組成物を用いてもよい。塩は特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
【0034】
本発明の飲料が有機酸を含む場合、該飲料における有機酸(例えば、有機酸についての前述のいずれかの群から選択される1種又は2種の有機酸)の合計含有量としては、特に制限されないが、特有な生臭みをより多く抑制する観点から、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上又は0.12重量%以上又は0.3重量%以上が挙げられる。また、かかる有機酸の合計含有量の上限としては、特に制限されないが、例えば、0.5重量%以下が挙げられる。なお、有機酸の塩を用いた場合は、有機酸の塩を有機酸に換算して、有機酸の含有量を算出する。
【0035】
本発明の飲料における有機酸の合計含有量は、有機酸又はその塩や、有機酸含有組成物の使用量を調整することによって、調整することができる。
【0036】
本発明の飲料中の有機酸の含有量は、測定対象とする有機酸をHPLC等により測定することによって算出することができる。
【0037】
(果汁又は果汁加工物)
本明細書において、「果汁」とは、果実からの搾汁を意味する。果汁は、インライン搾汁機等を用いて、全果(皮等も含めた果実全体)を果汁分と果皮を含む残渣とに圧搾分離し、この圧搾分離した果汁を殺菌及び冷却する方法、あるいは全果を果皮部と果肉部とに分離し、または半切した後果肉部だけを搾汁し、殺菌及び冷却を行う方法等、果実飲料の原料用果汁として一般的に製造されている方法によって製造することができる。果汁には果実の搾汁を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁を希釈した還元果汁を含む。果実の搾汁とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、皮、種子等を除去したピューレ等を指す。
【0038】
果汁は、混濁果汁であってもよいし、清澄化処理した透明果汁であってもよい。果汁を清澄化処理する方法としては、酵素処理法、精密濾過法、限外濾過法等が挙げられる。
【0039】
果汁として、市販のジュース、濃縮ジュース、ペーストなどを用いてもよい。具体的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)で指定されたジュースや濃縮ジュースを挙げることができ、例えばこれらのうち1種又は2種以上を本発明の飲料の調製のために用いることができる。
【0040】
本明細書において、「果汁加工物」とは、果汁の加工物を意味する。果汁加工物としては、例えば、果汁エキス、果汁フレーバーなどが含まれる。
【0041】
果汁の種類や、果汁加工物における果汁の種類は、特に限定されないが、例えば、柑橘類(レモン、ライム、オレンジ、うんしゅうみかん、グレープフルーツ、柚子、いよかん、なつみかん、はっさく、ポンカン、シイクワシャー、かぼす等)、仁果類(りんご、なし等)、核果類(もも、梅、アンズ、スモモ、さくらんぼ等)、しょうか類(ブドウ、カシス、ブルーベリー等)、熱帯又は亜熱帯性果実類(パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、ライチ等)、果実的野菜(いちご、メロン、スイカ等)からなる群から選択される1種又は2種以上の果汁が挙げられ、中でも、柑橘類からなる群から選択される1種又は2種以上の果汁が好ましく挙げられ、中でも、レモン、オレンジ、及び、グレープフルーツからなる群から選択される1種又は2種以上の果汁がより好ましく挙げられ、中でも、レモン果汁が特に好ましく挙げられる。
【0042】
本発明の飲料が果汁又は果汁加工物を含む場合、該飲料における果汁の含有量としては、特に制限されないが、ストレート果汁換算で、例えば下限値は0.1重量%以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、上限値は30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、8重量%以下が挙げられる。
【0043】
本発明の飲料における果汁の合計含有量は、果汁又は果汁加工物の使用量を調整することによって、調整することができる。
【0044】
(本発明の飲料)
本発明の飲料としては、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含み、かつ、固形分濃度(Brix値)が0.1~15%である、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料である限り特に制限されない。
【0045】
本発明の飲料は、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料であって、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含み、かつ、固形分濃度(Brix値)が0.1~15%であること以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の「容器詰加温販売用酸性飲料」と特に相違する点はない。
【0046】
本発明の飲料の種類としては、容器詰加温販売用の酸性飲料である限り特に制限されないが、果汁又は果汁加工物を含有する果汁含有飲料であることが好ましく、柑橘類の果汁又は果汁加工物を含有する果汁含有飲料であることがより好ましく、レモンの果汁又は果汁加工物を含有する果汁含有飲料であることが好ましい。
また、本発明の飲料は、乳性飲料(乳成分を含有する飲料)、乳酸発酵物含有飲料、豆乳飲料(豆乳を含有する飲料)、ビールテイスト飲料、炭酸飲料であってもよいが、乳性飲料、乳酸発酵物含有飲料、豆乳飲料、ビールテイスト飲料、炭酸飲料から選択される1種又は2種以上ではない飲料であることが好ましく、これらのいずれの飲料でもないことがより好ましい。
【0047】
本発明の飲料は、「pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料」の一般的な製造方法において、いずれかの段階で、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上とし、及び、固形分濃度(Brix値)を0.1~15%に調整することによって製造することができる。
【0048】
本発明の飲料は、容器詰飲料でなくてもよいが、容器詰飲料であることが好ましい。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;等の容器が挙げられる。
【0049】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理がなされていなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理の方法や条件としては、容器詰飲料などの飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0050】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、pH4.6以下の飲料(好ましくは容器詰加温販売用飲料)の製造において、飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix)を0.1~15%とすること(好ましくは、固形分濃度(Brix)を0.1~15%に調整すること)を特徴とする、前記飲料(好ましくは前記容器詰加温販売用飲料)の製造方法である限り特に制限されない。
【0051】
飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix)を0.1~15%とすること以外は、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料の従来公知の製造方法にしたがって製造することができる。
【0052】
飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させる方法として、より具体的には、pH4.6以下の飲料(好ましくは容器詰加温販売用飲料)の製造に際して、前記飲料の製造原料(例えば、「水」、あるいは「水に、任意成分の一部又は全部をさらに含有させた水」)(以下、併せて「水等」とも表示する)に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix)を0.1~15%とする(好ましくは0.1~15%に調整する)方法が挙げられる。あるいは、乳酸菌の死菌体及び固形分を、任意成分の一部又は全部と同時に水等に含有させる方法等も挙げられる。
【0053】
本発明の製造方法においては、乳酸菌の死菌体と、固形分を必須成分として飲料に含有させる。本発明の製造方法としては、任意成分として、有機酸、果汁又は果汁加工物、色素、香料、酸味料(ただし有機酸を除く)、酸化防止剤、保存料、乳化剤、及び、pH調整剤等を飲料に含有させてもよい。
【0054】
本発明の製造方法においては、用いる製造原料を含有する、本発明の飲料を製造し得る限り、製造原料を含有させる順序等は特に制限されない。製造原料が混合されている液を調製した後、容器に充填して密封し、本発明の飲料(好ましくは容器詰加温販売用飲料)を得ることができる。
【0055】
本発明の製造方法において、加熱殺菌処理は行わなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理する方法としては、特に制限されず、例えば、高温短時間殺菌法(HTST法)、パストライザー殺菌法、超高温加熱処理法(UHT法)、レトルト殺菌法等を挙げることができる。
【0056】
(本発明の抑制方法)
本発明の抑制方法としては、pH4.6以下の飲料(好ましくは容器詰加温販売用飲料)の製造において、飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させて、固形分濃度(Brix)を0.1~15%とすることを特徴とする、前記飲料(好ましくは前記容器詰加温販売用飲料)の生臭みの抑制方法である限り特に制限されない。
【0057】
飲料中に、乳酸菌の死菌体を200億個/L以上、及び、固形分を含有させる方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0058】
(特有な生臭みの抑制)
本発明の飲料は、乳酸菌の死菌体を含有する、pH4.6以下の飲料(好ましくは容器詰加温販売用飲料)における特有な生臭み(「特有な生臭み」)が抑制された飲料(好ましくは容器詰加温販売用飲料)である。
本明細書における上記の「特有な生臭み」とは、重い脂肪酸臭に、湿った穀物様のすえた酸臭が合わさった不快な香味を意味する。
【0059】
本発明において、本発明における「特有な生臭みが抑制された」飲料とは、本発明における固形分(即ち、特有な生臭みを抑制する効果を発揮し得る可溶性固形分であり、例えば、甘味成分及び多糖類からなる群から選択される1種又は2種以上の固形分など)を含まないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、特有な生臭みが抑制された飲料を意味する。
【0060】
ある飲料における特有の生臭みが、どの程度であるかや、コントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、抑制されているかどうか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。本発明における官能を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば2名以上、好ましくは4名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば20名以下、10名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の各飲料の特有の生臭みの評価は、例えば、その飲料の特有の生臭みについてのパネル全員の評価の平均を採用してもよいし、パネルのうち最も低い評価を採用してもよい。各評価基準に整数の評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその飲料の特有の生臭みの評価として採用してもよいし、パネルのうち最も低い評価点を採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第1位又は第2位(好ましくは小数第2位)を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、本発明における特有の生臭みの程度が既知の複数種の標準飲料の官能を各パネルで評価した後、その評価点を比較し、各パネルの評価基準に大きな解離が生じないように確認することが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、各パネルによる特有の生臭みの評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0061】
ある飲料における、本発明における特有の生臭みが、どの程度であるかの評価は、例えば、後述の実施例の試験1に記載の評価基準(1点から8点の8段階評価)等を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の試験1に記載の評価基準(1点から8点の8段階評価)等を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、後述の実施例の試験1に記載の評価基準(1点から8点の8段階評価)で特有の生臭みの評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)が4点以下、好ましくは3点以下、より好ましくは2点以下、さらに好ましくは1.5点以下である飲料は、特有な生臭みが抑制された飲料として挙げられる。また、後述の実施例の試験1に記載の評価基準(1点から8点の8段階評価)で特有の生臭みの評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)が、コントロール飲料の特有の生臭みの評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)よりも低い飲料、好適には、コントロール飲料の特有の生臭みの評価平均点(小数第2位を四捨五入した値)と比較して、好ましくは1点以上、より好ましくは2点以上、さらに好ましくは3点以上、より好ましくは4点以上低い飲料も、特有な生臭みが抑制された飲料として挙げられる。
【0062】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0063】
[試験1]pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料に、乳酸菌の死菌体を含有させることによる、生臭みの発生の確認
pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料(「加温販売用酸性飲料」)に、乳酸菌の死菌体を含有させることにより、加温販売用酸性飲料の香味にどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0064】
(1.加温販売用酸性飲料のサンプル飲料の調製)
表1記載の濃度等になるように、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、及び、リン酸をイオン交換水に含有させて、瓶容器に充填し80℃10分のパストライザー殺菌を行って、試験例1~4の各サンプル飲料を調製した。
試験例1~4の各サンプル飲料を60℃で4週間保存した。また、生臭みの評価の基準とするために、試験例1のサンプル飲料を5℃で4週間保存した。
【0065】
(2.官能評価試験)
前述したように、本明細書における上記の「特有な生臭み」(生臭み)とは、重い脂肪酸臭に、湿った穀物様のすえた酸臭が合わさった不快な香味を意味する。
得られた試験例1~4のサンプル飲料を60℃で4週間保存したものの「生臭み」ついて、訓練した専門パネル4名によって、8段階の評価基準で官能評価試験を行った。かかる評価基準としては、試験例1のサンプル飲料を5℃で4週間保存したものの生臭みの程度を1点(「生臭みがない」)とし、また、試験例4のサンプル飲料を60℃で4週間保存したものの生臭みの程度を8点(「生臭みがきわめて強い」)として、生臭みの程度を1~8点の8段階に分けた評価基準を採用した。かかる評価基準は、点数が高くなるほど、生臭みの程度が強いことを表す。
なお、各試験例サンプルにおける生臭みの評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。また、各パネルによる官能評価結果の標準偏差は、本実施例のいずれの試験においても0.04以下であった。
【0066】
かかる官能評価試験の結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
表1の結果から分かるように、乳酸菌の死菌体が150億個/Lのときは、60℃で4週間、加温保存した場合であっても、5℃で4週間、冷蔵保存した場合と同様に、生臭みが感じられなかった(試験例1)。一方、乳酸菌の死菌体が200億個/L以上のときは、加温保存した場合に生臭みが生じ(試験例2~4)、乳酸菌の死菌体が7500億個/Lのときは加温保存した場合にきわめて強い生臭みが生じることが示された(試験例4)。
【0069】
[試験2]固形分を含有させることによる、生臭みへの影響
固形分を含有させることにより、加温販売用酸性飲料の生臭みにどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0070】
(1.加温販売用酸性飲料のサンプル飲料の調製)
表2記載の濃度等になるように、「JCM5805株の乾燥死菌体粉末」、及び、「固形分(ショ糖、アセスルファムカリウム、及び、デキストリンから選択される1種又は2種)」等をイオン交換水に含有させて、試験例5~10の各サンプル飲料を調製した。なお、試験例5~10においては、クエン酸を0.09重量%及びクエン酸三ナトリウムを0.04重量%用いた。調製した試験例5~10の各サンプル飲料について、80℃10分のパストライザー殺菌を行った後、60℃で4週間保存した。
【0071】
(2.官能評価試験)
試験例5~10の各サンプル飲料を60℃で4週間保存したものの「生臭み」ついて、試験1の官能評価試験と同じ方法で官能評価を行った。
【0072】
かかる官能評価試験の結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
表2の結果を、表1の試験例4(本発明における固形分を含まないコントロール飲料)の結果(生臭みの評価8.0)と比較すると、本発明における固形分を含む試験例5~10ではいずれも生臭みの評価がそれよりも低下していたことから、本発明における固形分を用いることにより、生臭みが抑制されることが示された。また、本発明における固形分が甘味成分、多糖類のいずれの場合であっても、固形分濃度(Brix値)が高いほど、生臭みがより多く抑制される傾向が認められた。生臭みをより多く抑制する観点から、固形分濃度(Brix値)は好ましくは0.2%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは5%以上であることが示された。
【0075】
[試験3]有機酸を含有させること等による、生臭みへの影響
有機酸を含有させることや、有機酸の濃度により、加温販売用酸性飲料の生臭みにどのような影響を与えるかを調べるために以下の試験を行った。
【0076】
(1.加温販売用酸性飲料のサンプル飲料の調製)
表3記載の濃度等になるように、「JCM5805株の乾燥死菌体粉末」、「リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、及び、乳酸から選択される1種」、及び、「固形分(ショ糖)」等をイオン交換水に含有させ、次いで、重曹を適宜添加して、pHが3.4となるように調整した後、瓶容器に充填し80℃10分のパストライザー殺菌を行って、試験例11~17の各サンプル飲料を調製した。試験例11~17の各サンプル飲料を60℃で4週間保存した。
【0077】
(2.官能評価試験)
試験例11~17の各サンプル飲料を60℃で4週間保存したものの「生臭み」ついて、試験1の官能評価試験と同じ方法で官能評価を行った。
【0078】
かかる官能評価試験の結果を表3に示す。
【0079】
【0080】
表3の結果から、無機酸であるリン酸を用いた場合と比較して、有機酸を用いた場合は、生臭みがより多く抑制されることが示された。また、有機酸の濃度としては、生臭みをより多く抑制する観点から、0.12重量%以上が好ましいことが示された。
【0081】
[試験4]様々な容器詰加温販売用飲料における本発明の効果の確認
様々な容器詰加温販売用飲料において、本発明の効果を確認するために、以下の試験を行った。
【0082】
(1.加温販売用酸性飲料のサンプル飲料の調製)
表4記載の濃度等になるように、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ショ糖、レモン果汁、レモン香料をイオン交換水に含有させて、瓶容器に充填し80℃10分のパストライザー殺菌を行って、試験例18のサンプル飲料(レモン果汁ベース飲料)を調製した。また、JCM5805株の乾燥死菌体粉末、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ショ糖、インスタント紅茶パウダー、レモン果汁、レモン香料等をイオン交換水に含有させて、瓶容器に充填し80℃10分のパストライザー殺菌を行って、試験例19のサンプル飲料(レモンティーベース飲料)を調製した。試験例18~19の各サンプル飲料を60℃で4週間保存した。
【0083】
(2.官能評価試験)
試験例18~19の各サンプル飲料を60℃で4週間保存したものの「生臭み」ついて、試験1の官能評価試験と同じ方法で官能評価を行った。
【0084】
かかる官能評価試験の結果を表4に示す。
【0085】
【0086】
表4の結果から、レモン果汁を含む容器詰加温販売用飲料(試験例18や試験例19)においても、乳酸菌の死菌体を含有する加温販売用酸性飲料において発生する生臭みが、固形分により抑制されることが示された。
本発明によれば、前述の特有な生臭みが抑制された、乳酸菌の死菌体を含有する、pH4.6以下の容器詰加温販売用飲料、及びその製造方法等を提供することができる。