(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052625
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】カテーテルおよび医療機器
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3207 20060101AFI20240404BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61B17/3207
A61M25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169562
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】17/958,064
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】多田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョン バリット
(72)【発明者】
【氏名】マイク フォスター
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160FF01
4C160FF21
4C160KL03
4C160MM33
4C267AA80
4C267CC08
4C267DD01
(57)【要約】
【課題】より大きな直径の身体管腔に存在する物体を効果的に切断することができるカテーテルおよび医療機器を提供する。
【解決手段】身体管腔内の物体を除去するためのカテーテル10が、外筒30Aと、この外筒30Aによって覆われた駆動シャフト30と、駆動シャフト30に接続され、回転軸に対して回転させられる切断部材40と、外筒30Aに取り付けられ、ガイドワイヤを通すことができる第1の管体と、第1の管体に対して周方向にずれた位置に配置される1つ以上の第2の管体と、ワイヤ状で、外筒30Aの外側に位置し、駆動シャフト30に沿って延在して軸方向と径方向に移動可能である押し具35と、を有し、押し具35は、第2の管体を通過可能な第1のワイヤ領域と、径方向に湾曲可能な第2のワイヤ領域とを有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体管腔内の物体を除去するためのカテーテルであって、
外筒と、
前記外筒によって覆われた回転可能な駆動シャフトと、
前記駆動シャフトの遠位端に接続され、前記駆動シャフトによって回転軸に対して回転させられ、前記物体を切断する切断部材と、
前記外筒の遠位端に取り付けられ、前記回転軸に平行に延びてガイドワイヤを通すことができる第1の管体と、
前記第1の管体に対して周方向にずれた位置に配置される1つ以上の第2の管体と、
ワイヤ状で、前記外筒の外側に位置し、前記駆動シャフトに沿って延在して軸方向に移動可能である押し具と、を有し、
前記押し具は、前記第2の管体を通過可能な第1のワイヤ領域と、径方向に湾曲可能な第2のワイヤ領域とを有する、カテーテル。
【請求項2】
前記外筒に取り付けられ、一部分が前記切断部材によって覆われている金属部材と、
前記第1の管体の遠位端に取り付けられ、前記回転軸に平行に延びて前記第1の管体に連通する第3の管体を有している遠位先端部と、を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記押し具は、前記遠位先端部または前記金属部材のいずれかに接続可能である、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記押し具の遠位端は、前記金属部材に接続される、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記金属部材は、前記押し具の前記遠位端が係合する凹部と、前記ガイドワイヤ管に接触する表面とを有する、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記金属部材は、前記押し具の前記遠位端が通過する孔を有する、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記押し具は、弾性ワイヤで形成される、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記押し具は、ニチノールで作られる、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記弾性ワイヤは、0.2mm~0.5mmの直径を有する、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記第2のワイヤは、前記回転軸に向かって押されたときに直線状になる、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記押し具の前記第1のワイヤの近位端に接続され、前記外筒に沿ってスライド可能であるスライダをさらに備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記スライダの前記外筒に対する位置をロックすることができるねじをさらに備える、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記押し具は、前記第2のワイヤに接続され、前記遠位先端部に接続可能である頭部をさらに含む、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記頭部は、前記ガイドワイヤを通すことができる第4の管体を有する、請求項13に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記ガイドワイヤ管は、単一の第2の管体を有し、前記押し具は、前記単一の第2の管腔を通過することができる単一の第2のワイヤを有する、請求項13に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記ガイドワイヤ管は、前記第1の管体が間に形成された2つの第2の管体を有し、前記押し具は、前記対応する2つの第2の管体を通過することができる2つの第1のワイヤを有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
身体管腔内の物体を除去するための医療機器であって、
回転トルクを発生させるように構成されたモータを含んでいるハンドルと、
前記ハンドルに接続することが可能なカテーテルと、
を備え、
前記カテーテルは、
外筒と、
前記外筒によって覆われ、前記発生させた回転トルクによって回転させることができる駆動シャフトと、
前記駆動シャフトの遠位端に接続され、前記駆動シャフトによって回転軸に対して回転させられ、前記物体を切断する切断部材と、
前記外筒の遠位端に取り付けられ、前記回転軸に平行に延びてガイドワイヤを通すことができる第1の管体と、
前記第1の管体に対して周方向にずれた位置に配置される1つ以上の第2の管体と、
前記外筒に取り付けられ、一部分が前記切断部材によって覆われている金属部材と、
前記第1の管体の遠位端に取り付けられ、前記回転軸に平行に延びて前記第1の管体に連通する第3の管体を有している遠位先端部と、
ワイヤ状で、前記外筒の外側に位置し、前記駆動シャフトに沿って延在して軸方向と径方向に移動可能であり、前記遠位先端部または前記金属部材のいずれかに接続可能である押し具と、を有する、医療機器。
【請求項18】
前記カテーテルは、ハブを介して前記ハンドルに接続可能であり、
前記ハブは、前記外筒に接続され、前記外筒と一緒に回転可能であるノブを含む、請求項17に記載の医療機器。
【請求項19】
前記押し具の遠位端は、前記金属部材に接続される、請求項17に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、カテーテルおよび医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
回転可能な駆動シャフトと切断部材とを含むカテーテルを有する医療機器は、血管などの身体管腔から物体を除去するために広く使用されている(例えば、特許文献1を参照)。このような医療機器は、トルクを発生させるためのモータと、発生したトルクを駆動シャフトを介して切断部材へと伝達するための機構を収容するためのハブとを有する。
【0003】
カテーテルは、その遠位端に、身体管腔内でカテーテルを案内するためのガイドワイヤが挿入されるガイドワイヤ管腔を有する。手術の開始時に、イントロデューサシースが身体血管へと挿入され、次いで、ガイドワイヤが、シースを通って、除去すべき目的の物体へと向かい、かつ除去すべき目的の物体を過ぎて挿入される。続いて、体外のガイドワイヤが、カテーテルのガイドワイヤ管腔に挿入され、次いで、カテーテルが、ガイドワイヤに沿って身体管腔へと挿入される。ひとたびカテーテルの遠位端が物体に到達すると、切断部材が回転させられ、カテーテルが前方にさらに進められて、切断部材が物体に接触し、物体を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の標準化されたカテーテルは、最大2mmの切断直径を有し、したがって、最大2mmの身体管腔に存在する物体を効果的に切断することができる。しかしながら、従来の標準化されたカテーテルを用いて、より大きな直径の身体管腔に存在する物体を効果的に切断することは、困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、身体管腔内の物体を除去するためのカテーテルが、外筒と、外筒によって覆われた回転可能な駆動シャフトと、駆動シャフトの遠位端に接続され、駆動シャフトによって回転軸に対して回転させられ、物体を切断する切断部材と、外筒の遠位端に取り付けられ、回転軸に平行に延びてガイドワイヤを通すことができる第1の管体と、前記第1の管体に対して周方向にずれた位置に配置される1つ以上の第2の管体と、ワイヤ状で、前記外筒の外側に位置し、駆動シャフトに沿って延在して軸方向と径方向に移動可能である押し具と、を有し、前記押し具は、前記第2の管体を通過可能な第1のワイヤ領域と、径方向に湾曲可能な第2のワイヤ領域とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】カテーテルおよびハンドルを含む医療機器を示している。
【
図2】カテーテルおよびハンドルを含む医療機器を示している。
【
図7】第1の実施形態に係る押し具と共に使用されるカテーテルを示している。
【
図8】第1の実施形態に係る押し具と共に使用されるカテーテルを示している。
【
図9】第1の実施形態に係る押し具に接続された
図7および
図8のカテーテルを示している。
【
図10】第1の実施形態に係る押し具に接続された
図7および
図8のカテーテルを示している。
【
図11】身体管腔のモデル内の第1の実施形態に係る押し具に接続された
図7および
図8のカテーテルを示している。
【
図12】身体管腔のモデル内の第1の実施形態に係る押し具に接続された
図7および
図8のカテーテルを示している。
【
図13】身体管腔のモデル内の第1の実施形態に係る押し具に接続された
図7および
図8のカテーテルを示している。
【
図14】身体管腔内の除去すべき物体に接近する
図7および
図8のカテーテルを示している。
【
図15】身体管腔内の除去すべき物体に接近する
図7および
図8のカテーテルを示している。
【
図16】第2の実施形態に係る押し具を示している。
【
図17】第2の実施形態に係る押し具と共に使用されるカテーテルの遠位部を示している。
【
図18】第2の実施形態に係る押し具と共に使用されるカテーテルの遠位部を示している。
【
図19】カテーテルの遠位部および第3の実施形態に係る押し具を示している。
【
図20】カテーテルの遠位部および第3の実施形態に係る押し具を示している。
【
図21】カテーテルに取り付けられる前の第3の実施形態に係る押し具を示している。
【
図22】第3の実施形態に係る押し具と共に使用されるカテーテルを示している。
【
図23】身体管腔内の除去すべき物体に接近する
図19および
図20のカテーテルを示している。
【
図24】身体管腔内の除去すべき物体に接近する
図19および
図20のカテーテルを示している。
【
図31】カテーテルの近位部およびハブを示している。
【
図32】身体管腔内の物体を除去するための方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明は、カテーテル、医療器具、および身体管腔内の物体を切断するための方法を説明する。本明細書において、医療器具またはカテーテルのうちで身体管腔内へと挿入される側を、遠位側と定義し、医療器具のうちで手術中にオペレータが保持する他方側を、近位側と定義する。
【0009】
図1および
図2が、一実施形態における医療器具1を示している。図に示されているように、医療器具1は、物体を除去するために身体管腔へと挿入されるカテーテル10と、オペレータが保持するハンドル20とを含む。ハンドル20は、モータなどのトルク発生要素と、身体管腔から除去された物体を吸引するための吸引ポンプとを含む。
図1は、カテーテル10がハンドル20から取り外された医療器具1の状態を示しており、
図2は、カテーテル10がハンドル20に取り付けられた状態を示している。
【0010】
カテーテル10は、外筒30Aに囲まれ、外筒30Aの内部で回転することができる細長い駆動シャフト30を含み、遠位端には、駆動シャフト30と一緒に回転して物体を切断する切断部材40をさらに含む。例えば、切断部材40は、特定の方向に位置する物体を除去するための方向性カッターである。カテーテル10の近位端に、回転および吸引機構を収容するためのハブ50が取り付けられる。ハブ50は、カテーテル10に一体化されてよく、あるいはカテーテル10から取り外し可能であってよい。
【0011】
駆動シャフト30は、可撓性を有し、近位側から加えられた回転力を遠位側に伝達することができるという特徴を有する。具体的には、駆動シャフト30は、トルク発生要素が発生させる回転トルクを切断部材40に伝達する。駆動シャフト30は、切断部材40によって切断された物体を近位側へと移動させる吸引管腔を有する。吸引された物体は、収集バッグ90に保管される。駆動シャフト30は、外筒30Aを貫通し、切断部材40が、駆動シャフト30の遠位端に取り付けられる。駆動シャフト30の近位部は、ハブ50の内部に位置する。
【0012】
駆動シャフト30は、吸引管腔がその遠位端において開口する遠位開口部を有する。遠位開口部は、切断された物体が進入する入口である。駆動シャフト30の近位端は、駆動シャフト30に進入した物体が排出される吸引ポートに接続される。
【0013】
一実施形態において、カテーテル10は、押し具35と係合するように身体管腔に挿入される。押し具35は、
図1および
図2に示されるように曲げられた遠位部と、遠位部の近位側から遠ざかるように延びる1つ以上の細長いワイヤとを含む。身体管腔内でカテーテル10をナビゲートするために使用されるガイドワイヤと同様に、押し具35のワイヤ(
図1および
図2には示されていない)は、カテーテル10を身体管腔内の切断位置まで案内する。加えて、カテーテル10を押し具35に係合させるとき、押し具35がカテーテル10の遠位部に曲がりを導入することで、カテーテル10は、押し具35が存在しない場合にカテーテル10が達成することができる切断直径よりも大きい切断直径を達成することができる。押し具35の構造の詳細は、後述される。
【0014】
ハンドル20は、複数の医療処置において再使用できるように、カテーテル10から取り外し可能である。医療処置を行うとき、ハンドル20に収容されたトルク発生要素が発生させるトルクに応じて駆動シャフト30および切断部材40を回転させることができるように、ハンドル20がハブ50を介してカテーテル10に取り付けられる。その後に、駆動シャフト30および切断部材40が、例えば静脈などの身体管腔に、ガイドワイヤを用いて挿入される。一実施形態において、ハブ50およびハンドル20は、取り外し可能ではないように単一の構成要素に一体化されてもよい。
【0015】
吸引およびトルク発生機構のさらなる詳細は、米国特許出願第16/998,824号に記載されており、その全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0016】
図3および
図4の各々が、カテーテル10の遠位部を示している。押し具35は、これらの図には示されていない。上述したように、カテーテル10は、その遠位端に切断部材40を含む。カテーテル10は、ガイドワイヤ管腔61L(第1の管腔)を有する第1の管体を有するガイドワイヤ管61と、ガイドワイヤ管腔63L(第3の管腔)を有する遠位先端部63(第3の管体)とをさらに含む。カテーテル10の遠位端は、ガイドワイヤ70をガイドワイヤ管腔61Lおよび63Lに通した状態で、ガイドワイヤ70に沿って身体管腔へと挿入される。
図4は、ガイドワイヤ70が通過する単一の経路を形成するガイドワイヤ管腔61Lおよび63Lを示している。例えば、ガイドワイヤ管腔61Lの近位端61P(
図7を参照されたい)は、その遠位端61Dから4mm~310mmの距離にある。カテーテル10およびガイドワイヤ70は、ガイドワイヤ管腔61Lおよび63Lを介してのみ、身体管腔内で互いに接続されている。
【0017】
例えば、ガイドワイヤ管61は、ポリイミド、PEEK、などで形成される。ガイドワイヤ管61を、例えば、ガイドワイヤ管61よりも低い温度で収縮する熱収縮チューブ(図示せず)によって外筒30Aに固定することができ、したがって、加熱時にガイドワイヤ管61が外筒30Aに強力に固定される。あるいは、ガイドワイヤ管61を外筒30Aに直接接合することができる。遠位先端部63は、カテーテル10を身体管腔内で滑らかに進めることができるように、ガイドワイヤ管61よりも柔らかい樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂である。
【0018】
カテーテル10は、カテーテル10が身体管腔に向かって意図せずに案内された場合に切断部材40のさらなる進行を阻止する金属部材64を、切断部材40の遠位側にさらに含む。金属部材64は、ステンレス鋼などの金属材料から形成され、外筒30Aの先端部の外周面に固定されるとともに、ガイドワイヤ管61に固定される。金属部材64の遠位部は、遠位先端部63に取り付けられ、遠位先端部63によって覆われる。金属部材64の一部分は、略筒状の切断部材40の内側に先端側から入り込み、切断部材40によって覆われている。遠位先端部63(第3の管体)は、ガイドワイヤ管腔61Lを有する第1の管体の遠位端に取り付けられ、回転軸に平行に延びて第1の管体に連通する。
【0019】
図5および
図6が、第1の実施形態に係る押し具35を示している。
図5は、押し具35の遠位部の斜視上面図であり、
図6は、押し具35の遠位部の斜視側面図である。
【0020】
押し具35の遠位部は、頭部36と、曲がり部37(第2のワイヤ)とを含む。さらに、遠位部の近位側から延びる2つの細長いワイヤで形成された押し具35の直線部38(第1のワイヤ)も、
図5および
図6に示されている。押し具35は、ガイドワイヤ管61の後述する管腔66Lおよび67Lを有する第2の管体を通過可能な第1のワイヤ領域(例えば直線部38)と、径方向に湾曲可能な第2のワイヤ領域(例えば曲がり部37)とを有する。頭部36は、ガイドワイヤ70を通すことができるガイドワイヤ管腔36L(第4の管腔)を有する第4の管体を有しており、押し具35を身体管腔内でガイドワイヤ70によってナビゲートすることを可能にする。さらに、頭部36は、カテーテル10を押し具35に係合させるために遠位先端部63の遠位端が位置C1において接続される樹脂部材を含む(
図9を参照)。曲がり部37は、直線部38の2つの細長いワイヤにそれぞれ連続しているが、それらよりも太くて高剛性である2つのワイヤを含む。複数の曲がり部37(第2のワイヤ)の各々は、切断部材40から離れる方向(回転軸と垂直であって回転軸から離れる方向)に突出するように少なくとも部分的に曲げられている。
【0021】
図7および
図8が、第1の実施形態に係る押し具35と共に使用されるカテーテル10を示している。ガイドワイヤ管61が、外筒30Aの遠位部に沿って延び、ガイドワイヤ70を通すことができるガイドワイヤ管腔61Lと、2つの細長いワイヤから形成される押し具35の直線部38を通すことができる2つのさらなる管腔66L(第2の管腔)および67L(第2の管腔)とを含む。すなわち、ガイドワイヤ管61は、ガイドワイヤ管腔61Lを有する第1の管体と、管腔66Lおよび67Lを有する2つの第2の管体とを有する。管腔66Lおよび67Lを有する第2の管体は、ガイドワイヤ管腔61Lを有する第1の管体に対して周方向にずれた位置に配置される。例えば、管腔66Lおよび67Lの遠位端66Dおよび67Dは、外筒30Aの遠位端から5mm~40mmの距離に位置し、管腔66Lおよび67Lの各々の長さ(すなわち、66Dと66Pとの間および67Dと67Pとの間の距離)は、3mm~300mmである。
【0022】
図8は、
図7に示した線A-Aに沿って得たカテーテル10の断面図である。一実施形態において、ガイドワイヤ管腔61Lは、管腔66Lおよび67Lの間に位置する。管腔66Lおよび67Lの位置は、
図8に示される位置に限定されない。例えば、管腔66Lおよび67Lは、ガイドワイヤ管腔61Lから離れていてもよく、駆動シャフト30に対してガイドワイヤ管腔61Lの反対側に形成されてもよい。より一般的には、管腔66Lおよび67Lを、外筒30Aに沿った任意の位置に形成することができる。
【0023】
手術時に、ガイドワイヤ70が最初に身体管腔へと挿入される。次いで、ガイドワイヤ70がガイドワイヤ管腔36Lへと挿入された状態の押し具35が、切断すべき物体に近い位置までナビゲートされる。押し具35を切断すべき物体の近くに位置させた状態で、ガイドワイヤ70および押し具35の直線部38のワイヤが、それぞれガイドワイヤ管腔61Lならびに管腔66Lおよび67Lに挿入される。次いで、
図9に示されるように、カテーテル10を押し具35に係合させるべく、カテーテル10の遠位先端部63の遠位端が頭部36の樹脂部材に位置C1において接続されるまで、カテーテル10が身体管腔に挿入される。このようにしてカテーテル10を押し具35に係合させると、ガイドワイヤ70および押し具35の直線部38のワイヤによって異なる方向にカテーテル10へと力が加えられる結果として、カテーテル10の遠位部に曲がりが導入される。曲がりの角度は、
図9にθとして示されており、この角度は、押し具35の頭部36と直線部38との間の角度に依存する。曲がり部37は、頭部36が直線部38に対して角度をなしていれば、どのような形状であってもよい。好ましくは、角度θは120~180度の間である。
図10は、異なる形状の曲がり部37Aを有する押し具35を示している。
【0024】
図11~
図13が、身体管腔BLのモデル(管体)の内側でガイドワイヤ70に沿って案内されるカテーテル10を示している。
図11に示されるように、手術時に、ガイドワイヤ70が身体管腔BLに挿入され、次いで、押し具35が、ガイドワイヤ70をガイドワイヤ管腔36Lに通した状態で、ガイドワイヤ70に沿って挿入される。上述したように、押し具35の近位端(すなわち、直線部38)は、身体管腔BLの外側に保たれる。オペレータは、押し具35の近位端を操作可能である。押し具35の曲がり部37が除去されるべき物体が位置する切断対象位置P1に到達すると、
図12に示されるように、ガイドワイヤ70がガイドワイヤ管腔61Lを通過し、直線部38のワイヤが管腔66Lおよび67Lを通過するように、駆動シャフト30が身体管腔BLに挿入される。換言すると、カテーテル10が、身体管腔BLに挿入され、ガイドワイヤ70および押し具35の両方に沿って前方に進められる。遠位先端部63が押し具35の頭部36の樹脂部に到達および接続した後に、
図13に示されるように、カテーテル10に対する押し具35の位置を維持しつつ、カテーテル10が前方へとさらに押され、駆動シャフト30の曲がりがもたらされる。
【0025】
図13に示されるカテーテル10の状態で、切断部材40を身体管腔BLの内面の切断対象位置P1へと操作して、そこに位置する物体を除去することができる。切断対象位置P1において物体を除去した後に、切断部材40を、身体管腔BLの他方側の別の切断対象位置へと操作することができる。結果として、有効切断半径は、押し具35によらずにカテーテル10が達成できると考えられる切断半径に対応するd1から、押し具35を用いてカテーテル10が達成できると考えられる切断半径に対応するd2に増加する。
【0026】
図14および
図15が、身体管腔に形成された対象の物体に接近する
図7および
図8のカテーテル10を示している。
図11~
図13を参照して説明したように、手術時に、ガイドワイヤ70および押し具35が、最初に身体管腔に挿入される。
図14に示されるように、オペレータは、対象の物体が形成された位置P3およびP4に到達するように、ガイドワイヤ70に沿って押し具35を移動させる。次いで、オペレータは、遠位先端部63が押し具35の頭部36に到達して接続されるまで、カテーテル10を挿入する。この状態で、
図15に示されるように、オペレータは、押し具35およびカテーテル10をガイドワイヤ70に沿ってさらに前進させる。この動作により、押し具35の曲がり部37が、位置P4およびその付近の身体管腔(管体)の第2の内面および/または物体に接触することによってカテーテル10を上方に押し上げるため、身体管腔(管体)の第2の内面に対する反対側の第1の内面に向かって移動し、切断部材40が位置P3の物体へと向けられる。すなわち、押し具35は、押し具35が身体管腔(管体)の第1の内面に対する反対側の第2の内面に接触するとき、切断部材40を身体管腔(管体)の第1の内面に向かって移動させる。同様に、位置P4に位置する反対側の物体を、カテーテル10の向きを変えることによって除去することができる。結果として、身体管腔に形成された病変などの物体のより深い除去を達成することができる。
【0027】
図16が、第2の実施形態に係る押し具135を示している。上述した押し具35とは異なり、押し具135の曲がり部137においては、曲がり部137の2つのワイヤが合流して単一のワイヤとなり、この単一のワイヤが直線部138として近位側に向かって延びている。その他の要素は、押し具35と同様であり、同様の効果を達成することができる。
【0028】
図17および
図18が、第2の実施形態による押し具135と共に使用されるカテーテル10の遠位部を示している。
図17は、押し具135と係合するカテーテル10の遠位部を示している。押し具135の直線部138が単一のワイヤで形成されているため、ただ1つの管腔66Lが外筒30Aに沿って形成されている。
図18は、
図17に示した線B-Bに沿って得たカテーテル10の断面図である。
図18に示されるように、ガイドワイヤ管腔61Lおよび管腔66Lが、外筒30A上に形成されている。管腔66Lを、
図18に示されるようにガイドワイヤ管腔61Lに隣接させて形成することができ、あるいは外筒30Aに沿った任意の位置に形成することができる。
【0029】
図19および
図20が、カテーテル110の遠位部および第3の実施形態に係る押し具235を示している。この実施形態において、カテーテル110は、その遠位端に取り付けられた押し具235を含む。手術時に、オペレータが押し具235とカテーテル110とを別々に挿入する必要がない。上述した押し具35または135と同様に、押し具235は、曲がり部237と、直線部238とを含む。例えば、押し具235は、直径0.2mm~0.5mmのニチノールワイヤなどの弾性を有するワイヤ(弾性ワイヤ)から形成される。
図20は、押し具235の曲がり部237および直線部238の拡大図である。
【0030】
図21が、カテーテル110に取り付けられる前の第3の実施形態に係る押し具235を示している。曲がり部237の遠位端は、金属部材164に形成された凹部または開口部にはまり込み、この凹部または開口部にガイドワイヤ管61によって回転可能に保持される。直線部238は、対応する管腔66Lおよび67Lを通って近位側へと外筒30Aに沿って延びる2つのワイヤで形成される。
図22が、
図19に示した線C-Cに沿って得たカテーテル110の断面図である。この例においては、直線部238のワイヤが通過する管腔66Lおよび67Lが、ガイドワイヤ管腔61Lに隣接して配置されているが、これらの管腔66Lおよび67Lは、外筒30Aに沿った任意の位置に配置されてよい。
【0031】
図23および
図24が、身体管腔に形成された対象の物体に接近する
図19および
図20のカテーテル110を示している。上述のように、手術時に、ガイドワイヤ70が最初に身体管腔へと挿入される。ここで、押し具235はカテーテル110に取り付けられているため、押し具235を別途挿入する必要がない。
図23に示されるように、オペレータは、対象の物体が形成された位置P5およびP6に到達するように、ガイドワイヤ70に沿ってカテーテル110を移動させる。位置P5および位置P6は、身体管腔の内面の反対側に位置している。この状態で、身体管腔の外部で、オペレータは、
図24に示されるように、駆動シャフト30または外筒30Aの位置を維持しつつ、押し具235の直線部238を前方に移動させることで、身体管腔の内部の曲がり部237の湾曲を増加させる。この動作により、曲がり部237が位置P6の付近の身体管腔および/または物体に接触し、位置P6の付近の身体管腔および/または物体を押すため、切断部材40がd3だけ位置P5の物体に向かって(すなわち、下方に)移動する。同様に、位置P6に位置する反対側の物体を、カテーテル110の向きを変えることによって除去することができる。このようにして、カテーテル110は、押し具235を備えない従来からのカテーテルと比較して、d3×2だけ増加したより大きな切断直径を実現することができる。
【0032】
図25および
図26の各々が、押し具235に接続される金属部材を示している。
図25は、
図20に示した金属部材164を示し、
図26は、異なる構成を有する金属部材264を示している。金属部材164および金属部材264の各々は、金属部材64の変形例である。
【0033】
図25を参照すると、金属部材164は、凹部171と、プロテクタ172と、接合面173とを含む。凹部171に、押し具235の曲がり部237の遠位端が回転可能にはまり込む。プロテクタ172は、
図4に示されるように、切断部材40へと部分的に挿入され、カテーテル110が身体管腔に向かって意図せずに導かれるときに切断部材40のそれ以上の進行を阻止する。接合面173は、ガイドワイヤ管61に接合される。
【0034】
図26に示されるように、金属部材264は、曲がり部237の遠位端を通すことができる孔271を有してもよい。この構成によれば、
図25に示されるように凹部171を覆う必要なく、押し具235をより強固に金属部材264に固定することができる。押し具235は金属部材164または264に固定されているため、曲がり部237を外筒30Aに向かって押す力が加わると、曲がり部237によるオフセットがつぶれ、押し具235は外筒30Aに沿って真っ直ぐに延びる。
【0035】
図27および
図28が、外筒30Aよりもわずかに大きい特定の直径を有するイントロデューサシース80に進入する押し具235を有するカテーテル110を示している。カテーテル110がシース80を通過するとき、押し具235の曲がり部237が外筒30Aに向かって押され、弾性的特徴ゆえに直線状になる。したがって、曲がり部237が生じさせるオフセットにかかわらず、シース80へのカテーテル110の進入が妨げられることがない。
【0036】
一実施形態において、カテーテル110は、カテーテル110の近位部に、曲がり部237の湾曲を調整するためのスライドロック機構を有する。
図29および
図30に示されるように、カテーテル110は、押し具235の近位端(すなわち、直線部238)に接続され、手術中に身体管腔の外部で外筒30Aに沿ってスライドすることができるスライダ241を含む。カテーテル110は、スライダ241の外筒30Aに対する位置をロックするためのつまみねじ242(ねじ)をさらに含む。つまみねじ242は、スライダ241に対して捩じ込まれることで、外筒30Aに強く突き当たり、直線部238の近位端に接続されたスライダ241を、外筒30Aに固定できる。この構成により、オペレータは、スライダ241の位置を変更することによって曲がり部237の湾曲を調整することができる。
【0037】
図31が、カテーテル10または110の近位部と、駆動シャフト30が挿入されるハブ50とを示している。ハブ50は、回転可能なノブ81と、ハンドル20に接続可能なコネクタ82とを含む。ノブ81は、外筒30Aに接続され、オペレータが手術中に身体管腔の内部における駆動シャフト30および切断部材40の向きおよび/または位置を調整するために回転させることが可能である。ノブ81は、外筒30Aを駆動シャフト30およびコネクタ82から独立して回転させることを可能にする。
【0038】
駆動シャフト30は、ハンドル20の内部のトルク発生要素に係合することができる凹部84を備えるカプラ83を有することによって、トルク発生要素に直接的に接続され、あるいは1つ以上の他の軸を介して間接的に接続される。さらに、駆動シャフト30の吸引管腔は、コネクタ82の内部の開口部86を介して吸引ポート85に連通する。カテーテル10または110がコネクタ82を介してハンドル20に接続されると、生成されたトルクがカプラ83を介して駆動シャフト30に伝達される一方で、駆動シャフト30の吸引管腔に進入した物体は、開口部86を介して吸引ポート85から排出される。
【0039】
図32が、上述した医療器具1あるいはカテーテル10または110を使用して身体管腔内の物体を除去するための方法のフローチャートを示している。医療手術の開始時に、オペレータは、カテーテル10または110をハブ50を介してハンドル20に接続し、ガイドワイヤ70を、物体が形成された目標位置の付近を通過するように、イントロデューサシース80を使用して遠位端から身体管腔へと挿入する。これらの工程の後に、オペレータは、シース80を介し、ガイドワイヤ70に沿って、押し具35または135ならびにカテーテル10を別々に挿入し、あるいはカテーテル110を押し具235と一緒に挿入する(ステップ101)。
【0040】
ひとたびカテーテル10または110の遠位端が目標位置に到達すると、オペレータは、駆動シャフト30の湾曲によって切断部材40が物体へと向けられるように、ノブ81を回転させて身体管腔の内部のカテーテル10または110の向きおよび/または位置を調整する(ステップ102)。次に、オペレータは、ハンドル20の吸引およびトルク発生機構をオンにして物体の切断および吸引を開始し(ステップ103)、目標の物体が除去されて吸引されるまでカテーテル10をガイドワイヤ70に沿って前方に移動させる(ステップ104)。
【0041】
ひとたび目標の物体が除去されると、オペレータは、吸引およびトルク発生機構をオフにし(ステップ105)、カテーテル10または110ならびに押し具35、135、または235を身体管腔から取り除く(ステップ106)。その後に、ガイドワイヤ70およびイントロデューサシース80が取り除かれる。
【0042】
図32に示したステップのうちの1つ以上の順序は、変更することが可能である。例えば、吸引およびトルク発生機構を、カテーテル10または110が身体管腔に挿入された後の任意の時点においてオンにすることができる。さらに、必要に応じて、ステップのうちの1つ以上を繰り返すことができる。例えば、カテーテル10または110の向きを、物体を除去するために手術の最中の任意の時点において調整することができる。
【0043】
本特許出願は、「CATHETER ENGAGED WITH A PUSHER」という名称の2022年9月16日に出願された米国仮特許出願第63/407,550号の優先権を主張する。米国仮特許出願第63/407,550号の出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 医療器具
10 カテーテル
20 ハンドル
30 駆動シャフト
30A 外筒
35 押し具
36 (押し具の)頭部
36L ガイドワイヤ管腔(第4の管腔)
37 (押し具の)曲がり部(第2のワイヤ)
37A (押し具の)曲がり部(第2のワイヤ)
38 (押し具の)直線部(第1のワイヤ)
40 切断部材
50 ハブ
61 ガイドワイヤ管
61D (ガイドワイヤ管腔の)遠位端
61L ガイドワイヤ管腔(第1の管腔)
61P (ガイドワイヤ管腔の)近位端
63 遠位先端部
63L ガイドワイヤ管腔(第3の管腔)
64 金属部材
66D (管腔の)遠位端
66L 管腔(第2の管腔)
66P (管腔の)近位端
67D (管腔の)遠位端
67L 管腔(第2の管腔)
67P (管腔の)近位端
70 ガイドワイヤ
80 イントロデューサシース
81 ノブ
82 コネクタ
83 カプラ
84 凹部、開口部
85 吸引ポート
90 収集バッグ
110 カテーテル
135 押し具
137 (押し具の)曲がり部(第2のワイヤ)
138 (押し具の)直線部(第1のワイヤ)
164 金属部材
171 (金属部材の)凹部
172 プロテクタ
173 接合面
235 押し具
237 (押し具の)曲がり部(第2のワイヤ)
238 (押し具の)直線部(第1のワイヤ)
241 スライダ
242 つまみねじ(ねじ)
264 金属部材
271 (金属部材の)孔
BL 身体管腔(管体)