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特開2024-52627化合物、金属錯体、オレフィン重合用触媒組成物、オレフィン重合用触媒、及び、オレフィン系重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052627
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】化合物、金属錯体、オレフィン重合用触媒組成物、オレフィン重合用触媒、及び、オレフィン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6561 20060101AFI20240404BHJP
   C08F 4/70 20060101ALI20240404BHJP
   C08F 4/80 20060101ALI20240404BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20240404BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20240404BHJP
   C07F 9/50 20060101ALI20240404BHJP
   C07F 15/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C07F9/6561 Z CSP
C08F4/70
C08F4/80
C08F20/00 510
C08F210/00 510
C07F9/50
C07F15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169795
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022158695
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303061270
【氏名又は名称】日本ポリケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】満重 佑輔
【テーマコード(参考)】
4H050
4J015
4J128
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4H050WB11
4H050WB13
4H050WB14
4H050WB16
4H050WB21
4J015DA09
4J015DA37
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC45
4J128AC48
4J128AF00
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC13B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC24B
4J128BC25B
4J128BC27B
4J128BC28B
4J128EA01
4J128EB01
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB04
4J128EB05
4J128EB07
4J128EB08
4J128EB09
4J128EB10
4J128EB21
4J128EB25
4J128EB26
4J128EB29
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA15
4J128GA16
4J128GB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オレフィンとビニルモノマーを共重合できる、新規な配位子および金属錯体、それを含むオレフィン重合用触媒組成物、並びにオレフィン系重合体の製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物とを含む、オレフィン重合用触媒組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表される化合物。
【化1】
[式(A)中、
は、酸素原子または硫黄原子を表し、
は、窒素原子、リン原子、砒素原子またはアンチモン原子を表し、
Zは、水素原子、脱離基または1以上4以下の価数を有するカチオンを表し、
mは、1以上Zの価数以下の整数であり、
nは、0、1、2、3または4であり、nが0のとき、EはX、RおよびRが結合する炭素原子に直接結合し、
は、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基を表し、
は、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基とは異なる、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表し、
lは1または2であり、lが2のとき、Rは存在しない。
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、下記(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表す。
(i)水素原子
(ii)ハロゲン原子
(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基
(iv)OR、C(O)OR、C(O)OM’、C(O)N(R、C(O)R、OC(O)R、SR、S(O)、S(O)R、OS(O)、SF、P(O)(OR2-y(R、CN、N(H)R、N(R、Si(OR3-x(R、OSi(OR3-x(R、NO、S(O)OM’、P(O)(OM’)、P(O)(ORM’またはエポキシ含有基(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムを表し、xは0、1、2または3、yは0、1または2を表す)。R、R、R、およびRは、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよい。]
【化2】
[式(B)及び式(C)中、
*はEとの結合手を表し、
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、前記式(A)で定義する(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表し、R、R、RおよびR10は、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよく、
、A、AおよびAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-C(R)-、-S(O)-、-S(O)-、-N(R)-、-P(R)-、または-P(O)(R)-(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。)を表す。
ただし、
式(B)中、A、A、AおよびAのうち、少なくとも2つが-C(R)-であり、式(C)中、AおよびAのうち少なくとも1つが-C(R)-であり、且つ、R12およびR13のうち少なくとも1つが前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であるか、或いは、AおよびAはいずれも-C(R)-以外であり、且つ、R12およびR13はいずれも前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基である。
およびWは、それぞれ独立に、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、酸素原子、-P(O)-または-S(O)-を表し、窒素原子、リン原子、ホウ素原子または-P(O)-のとき、RおよびR10は存在せず、酸素原子または-S(O)-のとき,RおよびR並びにRおよびR10は存在しない。
hおよびiは、それぞれ独立に、1~6の整数であり、W、W、R、R、RおよびR10が複数存在する場合、複数のW、W、R、R、RおよびR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
下記一般式(D)で表される金属錯体。
【化3】
[式(D)中、
は、酸素原子または硫黄原子を表し、
は、窒素原子、リン原子、砒素原子またはアンチモン原子を表し、
nは、0、1、2、3または4であり、nが0のとき、EはX、RおよびRが結合する炭素原子に直接結合し、
は、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基を表し、
は、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基とは異なる、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表し、
lは1または2であり、lが2のとき、Rは存在しない。
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、下記(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表す。
(i)水素原子
(ii)ハロゲン原子
(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基
(iv)OR、C(O)OR、C(O)OM’、C(O)N(R、C(O)R、OC(O)R、SR、S(O)、S(O)R、OS(O)、SF、P(O)(OR2-y(R、CN、N(H)R、N(R、Si(OR3-x(R、OSi(OR3-x(R、NO、S(O)OM’、P(O)(OM’)、P(O)(ORM’またはエポキシ含有基(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムを表し、xは0、1、2または3、yは0、1または2を表す)。R、R、R、およびRは、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよい。
は、ニッケル原子またはパラジウム原子を表し、
およびLは、それぞれ独立に、Mに配位したリガンドを表し、
およびLは互いに結合してMを含む環を形成してもよい。]
【化4】
[式(B)及び式(C)中、
*はEとの結合手を表し、
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、前記式(A)で定義する(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表し、R、R、RおよびR10は、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよく、
、A、AおよびAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-C(R)-、-S(O)-、-S(O)-、-N(R)-、-P(R)-、または-P(O)(R)-(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。)を表す。
ただし、
式(B)中、A、A、AおよびAのうち、少なくとも2つが-C(R)-であり、式(C)中、AおよびAのうち少なくとも1つが-C(R)-であり、且つ、R12およびR13のうち少なくとも1つが前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であるか、或いは、AおよびAはいずれも-C(R)-以外であり、且つ、R12およびR13はいずれも前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基である。
およびWは、それぞれ独立に、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、酸素原子、-P(O)-または-S(O)-を表し、窒素原子、リン原子、ホウ素原子または-P(O)-のとき、RおよびR10は存在せず、酸素原子または-S(O)-のとき,RおよびR並びにRおよびR10は存在しない。
hおよびiは、それぞれ独立に、1~6の整数であり、W、W、R、R、RおよびR10が複数存在する場合、複数のW、W、R、R、RおよびR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項3】
請求項1に記載の前記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物とを含む、オレフィン重合用触媒組成物。
【化5】
〔式(E)および式(F)中、
は、ニッケル原子またはパラジウム原子を表し、
およびLは、それぞれ独立に、Mに配位したリガンドを表し、
およびLは互いに結合してMを含む環を形成してもよい。
およびMは、それぞれ独立に、ニッケル原子またはパラジウム原子を表し、
、L、L、L、LおよびL10は、それぞれ独立に、M、MまたはMに配位したリガンドを表し、LおよびLは、それぞれ独立に、MおよびMに配位したリガンドを表し、
qは0、1または2であり、
およびLは互いに結合してMを含む環を形成してもよく、
およびLは、互いに結合してMを含む環を形成してもよく、
およびL10は、互いに結合してMを含む環を形成してもよい。]
【請求項4】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、請求項2に記載の金属錯体。
【請求項6】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、請求項3に記載のオレフィン重合用触媒組成物。
【請求項7】
前記Rが、前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であって、前記Rが、前記(i)、(iii)、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)R、S(O)およびP(O)(OR2-y(Rからなる群より選ばれる原子または基である(ここで、R、R、yは、請求項1で定義したとおりである。)ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記Rが、前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であって、前記Rが、前記(i)、(iii)、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)R、S(O)およびP(O)(OR2-y(Rからなる群より選ばれる原子または基である(ここで、R、R、yは、請求項2で定義したとおりである。)ことを特徴とする、請求項2に記載の金属錯体。
【請求項9】
前記Rが、前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であって、前記Rが、前記(i)、(iii)、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)R、S(O)およびP(O)(OR2-y(Rからなる群より選ばれる原子または基である(ここで、R、R、yは、請求項1で定義したとおりである。)ことを特徴とする、請求項3に記載のオレフィン重合用触媒組成物。
【請求項10】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、請求項1、4および7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、請求項2、5および8のいずれか1項に記載の金属錯体。
【請求項12】
前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、請求項3、6および9のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒組成物。
【請求項13】
請求項3に記載のオレフィン系重合用触媒組成物を含む、オレフィン重合用触媒。
【請求項14】
請求項2に記載の金属錯体を含む、オレフィン重合用触媒。
【請求項15】
請求項13または14に記載のオレフィン系重合用触媒の存在下、オレフィンを重合または共重合することを特徴とする、オレフィン系重合体の製造方法。
【請求項16】
非環状オレフィンと、極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーとを共重合することを特徴とする、請求項15に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体の製造用の重合触媒に関する。特に、本発明は、配位子として用いられ得る新規な化合物、当該新規な化合物を用いた金属錯体、オレフィン重合用触媒組成物、及びオレフィン重合用触媒に関する。また、本発明は、該触媒を用いたオレフィン系重合体の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
非極性モノマーであるエチレンやプロピレンなどのオレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体は、無極性であるポリエチレンやポリプロピレンにはない機能や特性を有する。このような観点からエチレンやプロピレンと極性基含有モノマーの共重合により、ポリエチレンやポリプロピレンに機能性を付与する研究が盛んに行われている。
エチレンやプロピレンと極性基含有モノマーを共重合することができる遷移金属触媒としては、α-ジイミン配位子を用いたパラジウム錯体を含む触媒が報告されている(非特許文献1)。エチレンとアクリル酸エステルとを共重合する遷移金属触媒としては、リン原子と酸素原子を配位原子とする配位子を用いたニッケル錯体を含む、いわゆるSHOP系触媒(特許文献1、特許文献2、非特許文献2、非特許文献3)や、ホスフィノスルホン酸配位子を有するパラジウム錯体を含む触媒(特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)などが報告されている。
【0003】
特許文献4、非特許文献6では、リン原子と酸素原子を配位原子とする配位子と遷移金属化合物としてビス-1,5-シクロオクタジエンニッケル(Ni(cod))とを反応させたニッケル触媒を用いることにより、分岐が少ない直鎖状のエチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体が得られることが報告されている。また、特許文献5では、非芳香族の骨格としてアルキレンを配位子骨格として有し、リン原子と酸素原子を配位原子とする1価アニオン性2座配位子とニッケル塩化アリル二量体とを反応させたニッケル錯体を含む触媒によるエチレンと極性基含有モノマーとの共重合が報告されている。
非特許文献7では、非芳香族の骨格としてアルキレンを配位子骨格として有し、リン原子と酸素原子を配位原子とする1価アニオン性2座配位子とビス-1,5-シクロオクタジエンニッケルとを反応させたニッケル触媒を用いることによる、エチレンのオリゴメリゼーションが報告されている。
非特許文献8では、非芳香族の骨格を有し、リン原子と硫黄原子を配位原子とする1価アニオン性2座配位子とニッケル錯体とを反応させたニッケル触媒を用いることによる、エチレンのオリゴメリゼーションが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許4,698,403号明細書
【特許文献2】特開昭64-14217号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0049712号明細書
【特許文献4】国際公開第2010/050256号
【特許文献5】国際公開第2001/092342号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mecking,S.;Johnson,L.K.;Wang,L.;Brookhart,M.J.Am.Chem.Soc.1998,120,888-899.
【非特許文献2】Ittel,S.D.;Johnson,L.K.;Brookhart,M.,Chem.Rev.2000,100,1169-1203.
【非特許文献3】Gibson,V.C.;Tomov,A.;White,A.J.P.;Williams,D.J.,Chem.Commun.2001,719-720.
【非特許文献4】Drent,E.;van Dijk,R.;van Ginkel,R.;van Oort,B.;Pugh,R.I.,Chem.Commun.2002,744-745.
【非特許文献5】Kochi,T.;Yoshimura,K.;Nozaki,K.,DaltonTrans.2006,25-27.
【非特許文献6】Xin.B.S.;Sato,N.;Tanna,A.;Oishi,Y.;Konishi,Y.;Shimizu,F.J.Am.Chem.Soc.2017,139,3611-3614.
【非特許文献7】Mueller,U.;Keim,W.;Krueger,C.;Betz,P. Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1989,28,1011-1013.
【非特許文献8】H.-F. Klein et al.,Inorganica Chimica Acta 358 (2005) 4394-4402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、オレフィン系の重合触媒が多数知られている。しかし、特許文献4、非特許文献6で用いられている配位子の骨格は芳香族であり、アクリル酸エステルとの共重合において、共重合体の分子量には改良の余地がある。また、特許文献5の触媒は、活性、分子量などの触媒性能に改良の余地がある。また、非特許文献7ではオリゴマーが得られているのみで重合活性は不明である。なお、錯体の単離が行われているが、単離した錯体は重合性能を示さないことが開示されている。非特許文献8の触媒は、低密度のポリエチレンオリゴマーができることがあるとわかる程度である。
かかる状況において、本発明で解決しようとする課題は、活性や分子量などの触媒性能が改善されて、オレフィンを重合又は共重合できる触媒の配位子として用いられ得る新規な化合物、中でも極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーと、非環状オレフィンを共重合できる、触媒の配位子として用いられ得る新規な化合物、当該新規な化合物を用いた金属錯体、オレフィン重合用触媒組成物、及びオレフィン重合用触媒、並びに、当該触媒を用いたオレフィン系重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の構造を有するアルキレンを配位子骨格として有し、15族および16族元素、特に窒素原子またはリン原子と酸素原子を配位原子とし、特定の置換基を有する1価アニオン性2座配位子と、特定のニッケル化合物および/またはパラジウム化合物とを組み合わせることにより、少なくとも活性または分子量のいずれかは高い水準にあるオレフィン系重合用触媒を見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]~[16]に関する。
[1] 下記一般式(A)で表される化合物。
【0009】
【化1】
[式(A)中、
は、酸素原子または硫黄原子を表し、
は、窒素原子、リン原子、砒素原子またはアンチモン原子を表し、
Zは、水素原子、脱離基または1以上4以下の価数を有するカチオンを表し、
mは、1以上Zの価数以下の整数であり、
nは、0、1、2、3または4であり、nが0のとき、EはX、RおよびRが結合する炭素原子に直接結合し、
は、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基を表し、
は、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基とは異なる、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表し、
lは1または2であり、lが2のとき、Rは存在しない。
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、下記(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表す。
(i)水素原子
(ii)ハロゲン原子
(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基
(iv)OR、C(O)OR、C(O)OM’、C(O)N(R、C(O)R、OC(O)R、SR、S(O)、S(O)R、OS(O)、SF、P(O)(OR2-y(R、CN、N(H)R、N(R、Si(OR3-x(R、OSi(OR3-x(R、NO、S(O)OM’、P(O)(OM’)、P(O)(ORM’またはエポキシ含有基(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムを表し、xは0、1、2または3、yは0、1または2を表す)。R、R、R、およびRは、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよい。]
【0010】
【化2】
[式(B)及び式(C)中、
*はEとの結合手を表し、
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、前記式(A)で定義する(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表し、R、R、RおよびR10は、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよく、
、A、AおよびAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-C(R)-、-S(O)-、-S(O)-、-N(R)-、-P(R)-、または-P(O)(R)-(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。)を表す。
ただし、
式(B)中、A、A、AおよびAのうち、少なくとも2つが-C(R)-であり、式(C)中、AおよびAのうち少なくとも1つが-C(R)-であり、且つ、R12およびR13のうち少なくとも1つが前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であるか、或いは、AおよびAはいずれも-C(R)-以外であり、且つ、R12およびR13はいずれも前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基である。
およびWは、それぞれ独立に、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、酸素原子、-P(O)-または-S(O)-を表し、窒素原子、リン原子、ホウ素原子または-P(O)-のとき、RおよびR10は存在せず、酸素原子または-S(O)-のとき,RおよびR並びにRおよびR10は存在しない。
hおよびiは、それぞれ独立に、1~6の整数であり、W、W、R、R、RおよびR10が複数存在する場合、複数のW、W、R、R、RおよびR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0011】
[2] 下記一般式(D)で表される金属錯体。
【0012】
【化3】
[式(D)中、
は、酸素原子または硫黄原子を表し、
は、窒素原子、リン原子、砒素原子またはアンチモン原子を表し、
nは、0、1、2、3または4であり、nが0のとき、EはX、RおよびRが結合する炭素原子に直接結合し、
は、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基を表し、
は、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基とは異なる、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表し、
lは1または2であり、lが2のとき、Rは存在しない。
、R、R、およびRは、それぞれ独立に、下記(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表す。
(i)水素原子
(ii)ハロゲン原子
(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基
(iv)OR、C(O)OR、C(O)OM’、C(O)N(R、C(O)R、OC(O)R、SR、S(O)、S(O)R、OS(O)、SF、P(O)(OR2-y(R、CN、N(H)R、N(R、Si(OR3-x(R、OSi(OR3-x(R、NO、S(O)OM’、P(O)(OM’)、P(O)(ORM’またはエポキシ含有基(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムを表し、xは0、1、2または3、yは0、1または2を表す)。R、R、R、およびRは、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよい。
は、ニッケル原子またはパラジウム原子を表し、
およびLは、それぞれ独立に、Mに配位したリガンドを表し、
およびLは互いに結合してMを含む環を形成してもよい。]
【0013】
【化4】
[式(B)及び式(C)中、
*はEとの結合手を表し、
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、前記式(A)で定義する(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表し、R、R、RおよびR10は、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよく、
、A、AおよびAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-C(R)-、-S(O)-、-S(O)-、-N(R)-、-P(R)-、または-P(O)(R)-(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。)を表す。
ただし、
式(B)中、A、A、AおよびAのうち、少なくとも2つが-C(R)-であり、式(C)中、AおよびAのうち少なくとも1つが-C(R)-であり、且つ、R12およびR13のうち少なくとも1つが前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であるか、或いは、AおよびAはいずれも-C(R)-以外であり、且つ、R12およびR13はいずれも前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基である。
およびWは、それぞれ独立に、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、酸素原子、-P(O)-または-S(O)-を表し、窒素原子、リン原子、ホウ素原子または-P(O)-のとき、RおよびR10は存在せず、酸素原子または-S(O)-のとき,RおよびR並びにRおよびR10は存在しない。
hおよびiは、それぞれ独立に、1~6の整数であり、W、W、R、R、RおよびR10が複数存在する場合、複数のW、W、R、R、RおよびR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0014】
[3] 前記[1]に記載の前記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物とを含む、オレフィン重合用触媒組成物。
【0015】
【化5】
〔式(E)および式(F)中、
は、ニッケル原子またはパラジウム原子を表し、
およびLは、それぞれ独立に、Mに配位したリガンドを表し、
およびLは互いに結合してMを含む環を形成してもよい。
およびMは、それぞれ独立に、ニッケル原子またはパラジウム原子を表し、
、L、L、L、LおよびL10は、それぞれ独立に、M、MまたはMに配位したリガンドを表し、LおよびLは、それぞれ独立に、MおよびMに配位したリガンドを表し、
qは0、1または2であり、
およびLは互いに結合してMを含む環を形成してもよく、
およびLは、互いに結合してMを含む環を形成してもよく、
およびL10は、互いに結合してMを含む環を形成してもよい。]
【0016】
[4] 前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、前記[1]に記載の化合物。
[5] 前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、前記[2]に記載の金属錯体。
[6] 前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、前記[3]に記載のオレフィン重合用触媒組成物。
【0017】
[7] 前記Rが、前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であって、前記Rが、前記(i)、(iii)、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)R、S(O)およびP(O)(OR2-y(Rからなる群より選ばれる原子または基である(ここで、R、R、yは、前記[1]で定義したとおりである。)ことを特徴とする、前記[1]に記載の化合物。
[8] 前記Rが、前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であって、前記Rが、前記(i)、(iii)、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)R、S(O)およびP(O)(OR2-y(Rからなる群より選ばれる原子または基である(ここで、R、R、yは、前記[2]で定義したとおりである。)ことを特徴とする、前記[2]に記載の金属錯体。
[9] 前記Rが、前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であって、前記Rが、前記(i)、(iii)、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)R、S(O)およびP(O)(OR2-y(Rからなる群より選ばれる原子または基である(ここで、R、R、yは、前記[1]で定義したとおりである。)ことを特徴とする、前記[3]に記載のオレフィン重合用触媒組成物。
【0018】
[10] 前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、前記[1]、[4]および[7]のいずれか1つに記載の化合物。
[11] 前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、前記[2]、[5]および[8]のいずれか1つに記載の金属錯体。
[12] 前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることを特徴とする、前記[3]、[6]および[9]のいずれか1つに記載のオレフィン重合用触媒組成物。
【0019】
[13] 前記[3]、[6]、[9]及び[12]のいずれか1つに記載のオレフィン系重合用触媒組成物を含む、オレフィン重合用触媒。
[14] 前記[2]、[5]、[8]及び[11]のいずれか1つに記載の金属錯体を含む、オレフィン重合用触媒。
【0020】
[15] 前記[13]または[14]に記載のオレフィン系重合用触媒の存在下、オレフィンを重合または共重合することを特徴とする、オレフィン系重合体の製造方法。
[16] 非環状オレフィンと、極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーとを共重合することを特徴とする、前記[15]に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、活性や分子量などの触媒性能が改善されて、オレフィンを重合又は共重合できる触媒の配位子として用いられ得る新規な化合物、中でも極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーと、非環状オレフィンを共重合できる、触媒の配位子として用いられ得る新規な化合物、当該新規な化合物を用いた金属錯体、オレフィン重合用触媒組成物、及びオレフィン重合用触媒、並びに、当該触媒を用いたオレフィン系重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の配位子として用いられ得る新規な化合物、当該新規な化合物を用いた金属錯体、オレフィン重合用触媒組成物、及びオレフィン重合用触媒、並びに、当該触媒を用いたオレフィン系重合体の製造方法について、項目毎に詳細に説明する。
本明細書において、「重合」とは、1種類のモノマーの単独重合と複数種のモノマーの共重合を総称するものであり、特に両者を区別する必要がない場合には、総称して単に「重合」と記載する。また、明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの両方を含む。
また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において「Ph」はフェニル、「Me」はメチル、「Et」はエチル、「Pr」はプロピル、「Bu」はブチル、「Py」はピリジルまたはピリジン、「acac」はアセチルアセトナート、「DMP」は2,6-ジメトキシフェニル、「TMS」はトリメチルシリルを表す。
さらに、アルキル基の構造異性体の接頭辞において、「i」はイソ、「n]はノルマル、「s」はセカンダリー、「t」はターシャリーを表す。なお、アルキル基に構造異性体の接頭辞が記載されていない場合は、ノルマル構造であることを示す。
【0023】
1.化合物
本発明の化合物は、下記一般式(A)で表される化合物である。
【0024】
【化6】
[式(A)中、各符号は前記のとおりである。]
以下において、式(A)中のR~R、E、X、Z、l、n及びmについて説明する。
【0025】
前記一般式(A)において、Xは、酸素原子または硫黄原子を表す。即ち、前記一般式(A)で表される化合物は、16族元素を1価のアニオン性の配位原子として1つ有している配位子として用いることができる。配位子として用いられる化合物の種類が豊富であることから、Xは、好ましくは、酸素原子である。
【0026】
前記一般式(A)において、Eは、窒素原子、リン原子、砒素原子またはアンチモン原子を表す。即ち、前記一般式(A)で表される化合物は、15族元素を中性の配位原子として1つ有している配位子として用いることができる。配位子として用いられる化合物の種類が豊富であり、ニッケルまたはパラジウムなどの後周期遷移金属元素との配位性が良好であることから、Eは、窒素原子またはリン原子であることが好ましい。
【0027】
前記一般式(A)において、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、下記(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表す。
(i)水素原子
(ii)ハロゲン原子
(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基
(iv)OR、C(O)OR、C(O)OM’、C(O)N(R、C(O)R、OC(O)R、SR、S(O)、S(O)R、OS(O)、SF、P(O)(OR2-y(R、CN、N(H)R、N(R、Si(OR3-x(R、OSi(OR3-x(R、NO、S(O)OM’、P(O)(OM’)、P(O)(ORM’またはエポキシ含有基(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムを表し、xは0、1、2または3、yは0、1または2を表す)。R、R、R、およびRは、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよい。
【0028】
(ii)ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子が好ましい。
【0029】
(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基としては、炭化水素基、および、水素原子の少なくとも1つがヘテロ原子含有置換基で置換された炭化水素基が挙げられる。
(iii)におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基としてのヘテロ原子としては、ハロゲン原子であってよく、ハロゲン原子としては前記(ii)と同様であってよい。
(iii)におけるヘテロ原子含有置換基としては、後述する(iv)に挙げられるヘテロ原子含有置換基と同様の基であってもよい。(iii)に使用されるヘテロ原子含有置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基またはアシルオキシ基であってよい。
【0030】
(iii)における炭素数1~30の炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐、環状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。炭素数1~30の炭化水素基としては、より具体的には、炭素数1~30の直鎖状アルキル基、炭素数3~30の分岐した非環状アルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数3~30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、及び炭素数7~30のアルキルアリール基等が挙げられる。
【0031】
炭素数1~30の直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~10の直鎖状アルキル基であってよく、炭素数1~4の直鎖状アルキル基であってよい。
炭素数3~30の分岐した非環状アルキル基としては、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、s-ブチル基、i-ペンチル基(3-メチルブチル基)、t-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、s-ペンチル基(1-メチルブチル基)、2-メチルブチル基、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、1,2-ジメチルプロピル基、i-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)等の炭素数3~10の分岐した非環状アルキル基であってよく、炭素数3~8の分岐した非環状アルキル基であってよい。
【0032】
炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、スチリル基、シンナミル基が挙げられる。アルケニル基としては、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、スチリル基等の炭素数3~8のアルケニル基であってよく、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、スチリル基等の炭素数4~8のアルケニル基であってよい。
炭素数3~30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、デカヒドロナフチル基(ビシクロ[4,4,0]デシル基)等の炭素数3~10の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基であってよく、炭素数3~6の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基であってよい。
【0033】
炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、ビフェニル基、アントラセニル基、テルフェニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ピレニル基、テトラセニル基等の炭素数6~18のアリール基であってよく、炭素数6~12のアリール基であってよい。
炭素数7~30のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基(2-フェニルエチル基)、9-フルオレニル基、ナフチルメチル基、1-テトラリニル基等の炭素数7~15のアリールアルキル基であってよく、炭素数7~10のアリールアルキル基であってよい。
炭素数7~30のアルキルアリール基としては、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7~20のアルキルアリール基であってよく、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基等の炭素数7~15のアルキルアリール基であってよい。
【0034】
(iii)においては、R~Rに相当する置換基の総炭素数が、好ましくは1~30であり、より好ましくは2~25であり、さらに好ましくは4~20である。
(iii)としては、(iii-A)炭素数1~30の直鎖状アルキル基、炭素数3~30の分岐した非環状アルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数3~30の側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、及び炭素数7~30のアルキルアリール基、(iii-B)上記(iii-A)のそれぞれの基に上記ヘテロ原子が1又は2以上置換している基、(iii-C)上記(iii-A)のそれぞれの基にヘテロ原子含有置換基が1又は2以上置換している基、並びに、(iii-D)上記(iii-A)のそれぞれの基に、上記ヘテロ原子が1又は2以上置換し、かつ、ヘテロ原子含有置換基が1又は2以上置換している基が挙げられる。(iii-C)については、例えば、アルコキシ基が置換しているアルキル基や、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基が置換しているアリール基等が挙げられる。
【0035】
(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリヨードメチル基、2,4,6-トリフェニルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、9-アントラセニル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、フェニル基、ベンジル基等であってよい。
【0036】
(iv)はヘテロ原子含有置換基であり、OR、C(O)OR、C(O)OM’、C(O)N(R、C(O)R、OC(O)R、SR、S(O)、S(O)R、OS(O)、SF、P(O)(OR2-y(R、CN、N(H)R、N(R、Si(OR3-x(R、OSi(OR3-x(R、NO、S(O)OM’、P(O)(OM’)、P(O)(ORM’またはエポキシ含有基(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基を表し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムを表し、xは0、1、2または3、yは0、1または2を表す)からなる群より選ばれる原子または基である。
【0037】
前記(iv)の例示としては、例えば、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ジメチルアミド基、アセチル基、ベンゾイル基、アセトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、フェニルチオ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メチルスルホニルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ペンタフルオロスルファニル基(SF)、ジメチルホスフェート基、シアノ基、アミノ基(NH)、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチル-n-プロピルアミノ基、メチルシクロヘキシルアミノ基、カルバゾリル基、ピペリジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリメチルシリルオキシ基、トリメトキシシロキシ基、カルボン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられる。
【0038】
また、R、R、R、およびRは、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよい。形成された環構造においては縮合環の中に芳香族環が含まれていてもよい。環を形成する例としては、1,2-シクロペンチレン、1,2-シクロヘキシレン、1-オキソ-2,3-シクロペンチレン、1-オキソ-2,3-シクロヘキシレン、1,2-ジヒドロアセナフチレン、9,10-ジヒドロアントラセニレン等が挙げられる。
【0039】
中でも、配位子の安定性の点から、前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であることが好ましく、前記Rが、前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であって、前記Rが、前記(i)、(iii)、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)R、S(O)、およびP(O)(OR2-y(Rからなる群より選ばれる原子または基であることがより好ましい。
【0040】
特に、Xに隣接する前記RおよびRの少なくとも1つが、電子吸引性基であると、オレフィン重合触媒としての性能がより向上するため好ましい。Xに隣接する前記RおよびRの両方が電子吸引性基であってよい。電子吸引性基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、SF、トシル基、メシル基、ニトロ基、メチルカルボニル基、フェニルカルボニル基等が好適に用いられる。
【0041】
また、合成難易度や経済的合理性の点から、前記RおよびRの少なくとも一方が、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であってよく、前記Rおよび前記Rの少なくとも一方が、水素原子であってよい。
【0042】
nは、0、1、2、3または4であり、nが0のとき、EはX、RおよびRが結合する炭素原子に直接結合する。nの値は、EとXとを連結する炭素鎖の炭素数と関連する。錯体の構造の安定性の点から、前記nは、0、1または2であってよい。5員環となり錯体の構造が安定するため、nが1であることが好ましい。
【0043】
前記一般式(A)において、Rは、下記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基を表す。
【0044】
【化7】
[式(B)及び式(C)中、
*はEとの結合手を表し、
、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、前記式(A)で定義する(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表し、R、R、RおよびR10は、隣接置換基同士が互いに連結し、5~8員の、脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよく、
、A、AおよびAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-C(R)-、-S(O)-、-S(O)-、-N(R)-、-P(R)-、または-P(O)(R)-(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。)を表す。
ただし、
式(B)中、A、A、AおよびAのうち、少なくとも2つが-C(R)-であり、
式(C)中、AおよびAのうち少なくとも1つが-C(R)-であり、且つ、R12およびR13のうち少なくとも1つが前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であるか、或いは、AおよびAはいずれも-C(R)-以外であり、且つ、R12およびR13はいずれも前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基である。
およびWは、それぞれ独立に、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、酸素原子、-P(O)-または-S(O)-を表し、窒素原子、リン原子、ホウ素原子または-P(O)-のとき、RおよびR10は存在せず、酸素原子または-S(O)-のとき,RおよびR並びにRおよびR10は存在しない。
hおよびiは、それぞれ独立に、1~6の整数であり、W、W、R、R、RおよびR10が複数存在する場合、複数のW、W、R、R、RおよびR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0045】
式(B)及び式(C)中、A、A、AおよびAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-C(R)-、-S(O)-、-S(O)-、-N(R)-、-P(R)-、または-P(O)(R)-(ここで、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。)を表す。前記Rにおけるヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基は、前記(iii)のうち、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基と同様であってよい。前記Rは、合成難易度や経済的合理性の点から、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基であってよく、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基であってよく、水素原子、または炭素数1~6の炭化水素基であってよく、水素原子、または炭素数1~3の炭化水素基であってよい。
【0046】
式(B)及び式(C)中、WおよびWは、それぞれ独立に、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、酸素原子、-P(O)-または-S(O)-を表し、窒素原子、リン原子、ホウ素原子または-P(O)-のとき、RおよびR10は存在せず、酸素原子または-S(O)-のとき、RおよびR並びにRおよびR10は存在しない。
式(B)及び式(C)中、WおよびWはそれぞれ独立に、配位子の安定性の点から、炭素原子、またはケイ素原子であってよく、炭素原子であってよい。
【0047】
式(B)及び式(C)中、R、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、前記式(A)で定義する(i)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を表す。
、R、R、R10、およびR11は、合成難易度や経済的合理性の点から、それぞれ独立に、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であってよい。R、R、R、R10、およびR11における前記(iii)としては、中でも合成難易度や経済的合理性の点から、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基であってよい。
また、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、隣接置換基同士が互いに連結し、それらの結合するWまたはWと一緒に、5~8員の脂環式環、芳香族環、または酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ含有する複素環を形成していてもよい。例えばhまたはiが2であり、WまたはWが2つ存在する場合、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、隣接置換基同士が互いに連結し、それらの結合する当該2つのWまたは2つのWと一緒に5~8員の脂環式環、芳香族環、または複素環を形成していてもよい。
【0048】
、R、RおよびR10は、それらの結合するWまたはWと一緒に、脂環式環を形成しているものであってよく、隣接置換基同士が互いに連結した炭素数4~7のアルキレン基であってもよい。例えば、隣接するR及びRは、それらの結合するWと6員環を形成するような炭素数5のアルキレン基であってもよい。R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、隣接置換基のアリール基同士が互いに連結してそれらの結合するWまたはWと環を形成しているものであってよい。例えば、隣接するR及びRは、それらの結合するWと5員環を形成するようなビフェニレン基であってもよい。この場合にWが炭素原子であると、WとR及びRによりフルオレニリデンが形成される。
また、R、R、RおよびR10は、それらの結合する2つのWまたは2つのWと一緒に、脂環式環を形成しているものであってよく、隣接置換基同士が互いに連結した炭素数3~6のアルキレン基であってもよく、5または6員環となるような炭素数3または4のアルキレン基であってもよい。また、R、R、RおよびR10は、それらの結合する2つのWまたは2つのWと一緒に、炭素数6~12の芳香族環を形成しているものであってよい。
【0049】
さらに、前記脂環式環または芳香族環の少なくとも1つの炭素原子を、酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子から選ばれるヘテロ原子に置き換えた複素環であってもよい。
また、R、R、RおよびR10において形成される脂環式環、芳香族環、または複素環は、更に前記式(A)で定義する(ii)~(iv)からなる群より選ばれる原子または基を置換基として有していてもよく、当該置換基はハロゲン原子であってよい。
11は、合成難易度や経済的合理性の点から、水素原子であってよい。
【0050】
また、R12およびR13は、それぞれ独立に、合成難易度や経済的合理性の点から、前記(i)、(iii)および(iv)からなる群より選ばれる原子または基であってよい。R12およびR13における前記(iii)としては、合成難易度や経済的合理性の点から、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基等であってよい。R12およびR13における前記(iv)としては、合成難易度や経済的合理性の点から、OR、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)R、OC(O)R、SR、S(O)、S(O)R、OS(O)、SF、P(O)(OR2-y(R、CN、N(H)R、N(R、Si(OR3-x(R、OSi(OR3-x(R、または、NO等であってよい。
【0051】
式(B)及び式(C)中、hおよびiは、それぞれ独立に、1~6の整数であり、W、W、R、R、RおよびR10が複数存在する場合、複数のW、W、R、R、RおよびR10はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
hおよびiは、合成難易度や経済的合理性の点から、それぞれ独立に、1~3の整数であってよく、1または2であってよく、1であってよい。
【0052】
ただし、式(B)中、A、A、AおよびAのうち、少なくとも2つが-C(R)-である。
式(B)中、-C(R)-以外としては、合成難易度や経済的合理性の点から、酸素原子、硫黄原子または-N(R)-であってよく、酸素原子であってよい。
中でも、式(B)中、A、A、AおよびAのうち、2つが-C(R)-であり、2つが-C(R)-以外の基であってよく、AおよびAが-C(R)-であり、A及びAが-C(R)-以外の基であってよい。
【0053】
ただし、式(C)中、AおよびAのうち少なくとも1つが-C(R)-であり、且つ、R12およびR13のうち少なくとも1つが前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基であるか、或いは、AおよびAはいずれも-C(R)-以外であり、且つ、R12およびR13はいずれも前記(i)および(iii)からなる群より選ばれる原子または基である。
式(C)中、-C(R)-以外としては、合成難易度や経済的合理性の点から、酸素原子、硫黄原子、または-N(R)-であってよく、酸素原子であってよい。
【0054】
中でも、式(C)中、AおよびAのうち1つが-C(R)-でもう1つが-C(R)-以外であり、且つ、R12およびR13のうち1つが(i)水素原子または(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基でもう1つが前記(iv)ヘテロ原子含有基であるか、或いは、AおよびAはいずれも-C(R)-以外であり、且つ、R12およびR13はいずれも(i)水素原子または(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基であってよい。また、Aが-C(R)-以外であり、Aが-C(R)-であり、R12が前記(iv)ヘテロ原子含有基であり、且つ、R13が(i)水素原子、または(iii)ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基であってもよい。
【0055】
前記一般式(A)において、Rは、前記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基とは異なる、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表し、lは1または2であり、lが2のとき、Rは存在しない。
におけるヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基としては、前記(iii)のうち、ヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基と同様であってよい。
としては、炭素数3~20の炭化水素基であってよく、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、3-ペンチル基、2,6-ジメチル-4-へプチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-イル基(メンチル基)、フェニル基、2-メトキシフェニル基、2,6-ジエチルフェニル基(DEP)、2,6-ジメトキシフェニル基(DMP)、2’,6’-ジメトキシ[1,1’-ビフェニル]-2-イル基、(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-イル基等が好適に用いられる。
合成難易度や経済的合理性の点から、lは2であってよい。
【0056】
前記一般式(A)において、Zは、水素原子、脱離基、1以上4以下の価数を有するカチオンであり、mは、1以上Zの価数以下の整数である。mが1のとき、Zとしては、水素原子、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが例示される。mが2のとき、Zとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオンなどが例示される。脱離基としては、水素原子、RS(O)基(ここでRは、炭素数1~20の炭化水素基を表す)、C(F)S(O)基、RS(O)基、TiOR基などを挙げることができる。カチオンとしては、具体的には、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウム、周期表1族~14族の金属イオンを挙げることができる。これらのうち好ましくは、水素原子、NH4+、(R(ここでRは、前記したとおりであり、4つのRは、同じでも異なっていてもよい。以下同様である。)、(R、Li、Na、K、Cu、Ag、Au,Mg2+、Ca2+、Al3+であり、さらに好ましくは、水素原子、(R、Li、Na、K、Agである。
【0057】
一般式(A)で表される化合物の具体的な例としては、以下のような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
(式中、Rは、水素原子またはヘテロ原子を少なくとも1つ含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。)
【0061】
前記一般式(A)で表される化合物は、公知の合成法に基づいて合成することができる。例えば、EH(R(R2-l等を用いて、塩基または酸存在下でEH(R(R2-lとエポキシとを反応させることによって前記一般式(A)で表される化合物を合成することができる。また、塩基存在下でECH(R(R2-lとケトンとを反応させることによっても前記一般式(A)を合成することができる。参照可能な代表的な文献としては、特許文献5、非特許文献7、Journal of Fluorine Chemistry 2002, 117, P121-129.などが挙げられる。
H(R(R2-lで表される化合物は、市販品を適宜選択して用いてもよい。市販品を入手できない場合には、ハロゲン化ホスフィンと有機リチウム、有機マグネシウムなどの求核剤とを反応させてEX(R(R2-l(Xはハロゲン原子)を合成したのち、水素化アルミニウムリチウムなどのヒドリド還元剤を作用させることで合成できる。参照可能な代表的な文献としては、特開2021-113174などが挙げられる。
【0062】
に、前記一般式(B)または(C)で表される置換基を導入するための化合物は、市販品を適宜選択して用いてもよい。市販品を入手できない場合には、分子間もしくは分子内の環化反応により、合成できる。このような環化反応の例としては、ジハロゲン分子の求核置換反応、フリーデルクラフツ反応、遷移金属を用いた環化反応などが挙げられる。参照可能な代表的な文献としては、RSC Advances 2014,4,P16312-16319や、Bioorg. Med. Chem. Lett. 2014, 24,P2379-2382.や、Chem. Eur. J. 2013, 19,P17349-17357.や、Org. Biomol. Chem.2018, 16, P8976―8983.等が挙げられる。
【0063】
前記一般式(A)で表される化合物は、後述する一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物と錯体を形成し得る配位子として機能する。特に、Xが酸素原子でありEがリン原子であるような一般式(A)で表される化合物は、アルキレン基を介してリンと酸素が結合した構造を有するので、このような化合物群を、Alkylene Linked Phosphine Alkoxide(ALPHA)配位子ということがある。
【0064】
2.オレフィン重合用触媒組成物
本発明のオレフィン重合用触媒組成物は、前記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物とを含む。
【0065】
【化11】
〔式(E)および式(F)中、
、MおよびMは、それぞれ独立に、ニッケル原子またはパラジウム原子を表し、L、L、L、L、L、L、LおよびL10は、それぞれ独立に、M、MまたはMに配位したリガンドを表し、LおよびLは、MおよびMに配位したリガンドを表し、
qは0、1または2であり、
およびLは互いに結合してMを含む環を形成してもよく、
およびLは互いに結合してMを含む環を形成してもよく、
およびLは、互いに結合してMを含む環を形成してもよく、
およびL10は、互いに結合してMを含む環を形成してもよい。]
【0066】
本発明のオレフィン重合用触媒組成物において、前記一般式(A)で表される化合物は、前述と同様であってよいので、ここでの説明を省略する。
前記一般式(A)で表される化合物は、リン原子等のEにRとして少なくとも1つの前記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基が結合する。前記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基においては、リン原子等のEに結合する炭素原子に対してオルト位の置換基(A及びA)が環状構造を形成していることから、オルト位の置換基の自由回転が抑制される。一方で、前記一般式(B)または(C)で表される炭化水素基は適度な嵩高さを有する。2つのオルト位に自由回転可能な置換基を有するフェニル基がE1に結合する場合、当該化合物を配位子として用いると、活性中心である遷移金属近傍の立体障害が高くなりすぎるため、活性が低下しやすくなると考えられる。また、無置換のフェニル基がEに結合する場合、当該化合物を配位子として用いると、遷移金属近傍の立体障害不足のため、高分子量化しにくいと考えられる。前記一般式(A)で表される化合物は、遷移金属化合物の配位子として用いられたときに、遷移金属近傍に適度な立体障害を保つことができるために、分子量を高い水準に保ちつつ触媒の活性を上昇することができると考えられる。
また、前記一般式(A)で表される化合物において、リン原子等のEに結合するフェニル基の置換基が、酸素原子等のヘテロ原子を環構造に含めた置換基であることにより、触媒の中心金属に対する酸素原子等のヘテロ原子の配位力がより向上され、触媒は高活性化し、さらに得られる重合体は高分子量化すると考えられる。
【0067】
前記一般式(E)または(F)におけるM、MおよびMは、それぞれ独立に、ニッケル原子またはパラジウム原子である。ここで、Mの価数とは、有機金属化学で用いられる形式酸化数(formal oxidation number)を意味する。
すなわち、ある元素が関与する結合中の電子対を電気陰性度の大きい元素に割り当てたとき、その元素の原子上に残る電荷の数を指す。安価に入手が可能であることから、ニッケル原子であることが好ましい。
【0068】
前記一般式(E)または(F)におけるL、L、L、L、L、L、LおよびL10は、それぞれ独立に、M、MまたはMに配位したリガンドを表し、-1価の電子供与性配位子または中性の電子供与性配位子を表す。
-1価の電子供与性配位子は、電気的に陰性であり中心金属であるMにσ結合するか、または3以上の炭素原子に非極在化したπ電子を供与する配位子である。中性の電子供与性配位子は、一つの例としては電気的に中性であり不対電子をMに配位させることで配位結合を形成しうる配位子である。当該配位子は、不対電子を有する原子を有する分子であり、当該不対電子を有する原子としては、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン等が挙げられる。また中性の電子供与性配位子の別の例として、π電子を供与することによってπ供与結合を形成するエチレン、シクロオクタジエン(cod)のような分子、金属に配位するオレフィンとヘテロ原子をともに有するジベンジリデンアセトン(dba)のような分子が挙げられる。L~L、L、L10として用いることができるものとしては、アセトニトリル、イソニトリル、一酸化炭素、エチレン、テトラヒドロフランなど、金属錯体の中性配位子として公知のもの、アリルやシクロペンタジエニルなどπ電子を供与する配位子を用いることができる。また、ER’R’’R’’’またはXR’R’’で示される分子を配位子とすることもできる。ここで、EはN、PまたはAsを表し、XはO、SまたはSeを示し、R’、R’’およびR’’’はそれぞれ独立して、水素原子;置換されていてもよい炭素数1~30のアルキル基、脂環式基、アルコキシ基、アリール基もしくはアリールオキシ基;またはそれぞれ独立して炭素数1~30の炭化水素で少なくとも1つの水素原子が置換されたアミノ基もしくはシリル基を表し、R’とR’’は連結してヘテロ環構造を形成していてもよく、R’、R’’およびR’’’は、Eを含んで結合し芳香族ヘテロ環構造を形成してもよい。さらに、LとL、LとL、LとL、LとL10は、互いに結合してMまたはMを含む環を形成してもよく、これらの基が環を形成するとき、当該環の最小の環員数はMを含めて5員環から10員環である。
~L、L、L10は、-1価の電子供与性配位子を有していてもよいが、金属錯体を生成する反応を容易とするために、金属錯体の価数が1または2となるように選択されることが好ましい。したがって、L~L、L、L10のうち-1価の電子供与性配位子の数は、0~2であることが好ましい。
【0069】
-1価の電子供与性配位子のL~L、L、L10としては、水素原子、ハロゲン原子、又は、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基が挙げられ、炭化水素部分の構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、ヘテロ原子を含む環を形成していてもよい。好ましい炭素数は1~16であり、更に好ましくは1~10である。
-1価の電子供与性配位子のL~L、L、L10の具体的な例としては、それぞれ独立にヒドリド基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、トリメチルシリルメチル基、フェニル基、p-メチルフェニル基、p-フルオロフェニル基、フルオライド基、クロライド基、ブロマイド基、ヨード基等が挙げられる。好ましい例として、ヒドリド基、メチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、トリメチルシリルメチル基、フェニル基、p-フルオロフェニル基、クロライド基、ブロマイド基、ヨード基が挙げられる。
【0070】
その他にL~L、L、L10の好ましいものとして、ホスフィン類、ピリジン類、ピペリジン類、アルキルエーテル類、アリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類、環状エーテル類、アルキルニトリル誘導体、アリールニトリル誘導体、アルコール類、アミド類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、アミン類、環状不飽和炭化水素類等を挙げることができる。更に好ましいものとしては、ホスフィン類、ピリジン類、環状エーテル類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、環状オレフィン類が挙げられ、特に好ましいものとして、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ピリジン、ルチジン(ジメチルピリジン)、ピコリン(メチルピリジン)、RC(O)O(ここでRは、先に定義したとおりである)を挙げることができる。なお、LとL、LとL、LとL、LとL10は、互いに結合してMまたはMを含む環を形成してもよい例として、シクロオクタ-1-エニル基、アセチルアセトナート基、テトラメチルエチレンジアミン基、1,2-ジメトキシエタン基を挙げることができ、これもまた好ましい態様である。
【0071】
およびLは、MおよびMに配位したリガンドを表すが、各々、MおよびMと3中心4電子結合と呼ばれる様式で結合している。LまたはLの配位子の例としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~4の炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のチオアルコキシ基、炭素巣1~6の炭化水素基置換アミノ基、アセチル基が挙げられる。LおよびLの好ましいものとして、フルオライド基、クロライド基、ブロマイド基、ヨーダイド基、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミド基、ヒドリド基、チオメトキシ基、チオフェノキシ基、アセチル基が挙げられ、より好ましいものとしてフルオライド基、クロライド基、ブロマイド基、ヨード基、メチル基、メトキシ基、フェノキシ基、ヒドリド基、チオメトキシ基、チオフェノキシ基、アセチル基が挙げられ、さらに好ましいものとしてクロライド基、ブロマイド基、ヨード基、メトキシ基、フェノキシ基、アセチル基が挙げられる。
【0072】
前記一般式(E)において、qは、0、1、または2の値である。
【0073】
前記一般式(E)または式(F)で表される化合物の具体的な例としては、以下のような化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、Ni(CHC(H)CH、Ni(CHC(Me)CH、Ni(CHSi(Me)(Py)(以下Pyは、ピリジンを表す。)、Ni(CHSi(Me)(Lut)(以下Lutは、2,6-ルチジンを表す。)、NiPh(Py)、NiPh(Lut),Pd(OC(O)CH等が挙げられる。
これらの化合物は、一般式(A)で表される化合物と錯体を形成すると考えられる。
【0074】
【化12】
【0075】
前記一般式(A)で表される化合物は、前記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物との組成物の状態で、または該遷移金属化合物との反応生成物である金属錯体の状態で、オレフィンの重合反応の触媒として用いることができる。オレフィンの重合反応において、触媒として用いられる当該生成物は、前記一般式(A)で表される化合物と、前記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物とを反応させた後で生成物を単離して用いてもよいが、当該生成物を反応系から単離や洗浄を行わずに、重合反応に直接用いてもよい。これら化合物を反応させる方法は、金属錯体の合成において公知の方法を用いることができる。操作はすべて不活性ガス下で行うことが好ましい。反応は均一な溶媒中で行うが、溶媒としては一般的な炭化水素系反応溶媒を用いることができ、好ましくはトルエンである。反応溶媒中の遷移金属化合物の濃度は、飽和濃度を上限として自由に設定することができるが、好ましくは1mM~50mMの範囲である。前記一般式(A)で表される化合物(配位子)と、前記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物の混合順序は制限されない。固体の配位子と固体の遷移金属化合物との混合物に溶媒を加えることもできるし、固体の配位子に溶解させた遷移金属化合物を加えることもできる。配位子と遷移金属化合物の混合比は配位子:金属=1:1~1:10の範囲とすることが好ましい。混合温度は溶媒の沸点を上限として20℃以上で適宜設定することができる。混合温度は好ましくは35℃~45℃の範囲である。混合に要する時間は好ましくは1分~24時間の範囲とすることができるが、より好ましくは10分~30分である。本発明の1つの態様は、前記一般式(A)で表される化合物と、前記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物とを反応させる工程を含む、オレフィン重合用触媒の製造方法である。
【0076】
3.金属錯体
別の一態様において、本発明は、下記一般式(D)で表される金属錯体を提供する。
【0077】
【化13】
[式(D)中、
、E、n、R、R、l、R、R、R、およびRは、前記一般式(A)で表される化合物で定義したとおりであって、
、LおよびLは、前記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物で定義したとおりである。]
【0078】
前記一般式(D)で示される金属錯体の具体的な例としては、以下のような錯体を挙げることができる。ただし、これらは例示であり本発明の方法における錯体がこれら具体例に限定されるものではない。
【0079】
【化14】
【0080】
【化15】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基を表す。)
【0081】
【化16】
【0082】
本発明の前記一般式(D)で表される金属錯体は、前記一般式(A)で表される化合物と、前記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物とを反応させる工程を含む方法で調製できるほか、公知の方法により調製することができる。公知の錯体調製法に基づいて当業者が原料の変更など適宜改変を加えることで、本発明の前記一般式(D)で表される金属錯体を調製することができる。
【0083】
例えば、前記一般式(D)で表される金属錯体を製造する際には、前記一般式(A)で表される化合物と、前記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物との反応を行う際に、さらに、一般式(D)におけるLやLに置換するための配位性化合物や共有結合性化合物を共存させてもよい。
本発明に係るMとして、ニッケルやパラジウムを用いる場合には、ルイス塩基性の配位性化合物を系内に共存させることによって、生成した金属錯体の安定性が増す場合がある。このような場合には、配位性化合物が本発明の重合反応または共重合反応を阻害しない限りにおいて、配位性化合物を共存させてもよい。
本発明で用いられる配位性化合物とは、配位結合可能な原子として、酸素原子、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、硫黄原子、及びセレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する炭素数1~20の炭化水素化合物、または、遷移金属に配位可能な炭素-炭素不飽和結合を有するヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素化合物を使用することができ、前記L等のうちの中性の電子供与性配位子と同義であって良い。
【0084】
また、本発明で用いられる前記共有結合性化合物とは、遷移金属化合物由来の配位子を、一般式(D)で表される金属錯体における前記L等のうちの-1価の電子供与性配位子に置換可能な化合物である。前記共有結合性化合物は、有機金属化合物であってよい。
-1価の電子供与性配位子として、少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基は、重合反応の開始末端としてポリマー中に取り込まれるとともに、重合反応の初速度に大きく寄与することができる。そのため、前記一般式(D)で表される金属錯体を製造する際に、状況に応じて少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の炭化水素基を導入するための共有結合性化合物も併用することが好ましい。
前記共有結合性化合物としては、有機リチウム化合物を挙げることができ、R14Li(ここで、R14はヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基)であってよく、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を有する有機リチウム化合物であってよい。炭素数1~10の炭化水素基を有する有機リチウム化合物としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ベンジルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、p-フルオロフェニルリチウム等が挙げられる。この中でも好ましくは、メチルリチウム、フェニルリチウムであり、さらに好ましくはメチルリチウムである。
【0085】
4.オレフィン重合用触媒
本発明のオレフィン重合用触媒は、前記本発明のオレフィン系重合用触媒組成物を含む。
また、本発明のオレフィン重合用触媒は、前記一般式(D)で示される金属錯体を含む。
本発明のオレフィン重合用触媒は、オレフィンの重合反応時においては、前記一般式(A)で表される化合物と、前記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物との生成物である金属錯体、または前記一般式(D)で示される金属錯体(以下、これらをまとめて単に「金属錯体触媒」ということがある)を含む。
本発明のオレフィン重合用触媒において、前記本発明のオレフィン系重合用触媒組成物と前記一般式(D)で示される金属錯体は前述と同様であってよいので、ここでの説明を省略する。
本発明のオレフィン重合用触媒においては、後述の実施例で示されるように、前記本発明のオレフィン系重合用触媒組成物や、前記一般式(D)で示される金属錯体を、特に精製することなくそのまま使用して、オレフィン重合用触媒として用いてもよい。
【0086】
本発明のオレフィン重合用触媒において、オレフィン系重合用触媒組成物の前記一般式(A)で表される化合物と、下記一般式(E)または(F)で表される遷移金属化合物とはそれぞれ単独の成分を用いてもよいし、それぞれ複数種の成分を併用してもよい。またオレフィン系重合用触媒組成物には、前記一般式(D)で示される金属錯体が含まれていてよい。
本発明のオレフィン重合用触媒において含まれる前記一般式(D)で示される金属錯体は、1種単独であっても、2種以上の混合物であってもよい。
【0087】
本発明のオレフィン重合用触媒においては、金属錯体触媒に加え、さらに助触媒を加えてもよい。助触媒としては、例えば周期表第1、2または13族元素を含有する有機金属化合物が挙げられる。特に、下記一般式(1)で示される化合物、一般式(2)で示される化合物または有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。これらの化合物は、複数種類が触媒組成物に含まれていてもよい。
【0088】
一般式(1):Q(R20)(R21)R22
前記一般式(1)で示される化合物は、Q(R20)(R21)R22で表される、ホウ素またはアルミニウム化合物である。(式中、Qはホウ素(B)またはアルミニウム(Al)を表し、R20、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素原子;置換されていてもよい炭素数1~30のアルキル基、脂環式基、アルコキシ基、アリール基もしくはアリールオキシ基;またはそれぞれ独立して炭素数1~30の炭化水素で1つ以上の水素原子が置換されたアミノ基もしくはシリル基を表す。)
20~R22としては、前記Rなどの説明において記載した例示等があてはまるが、化合物の調製や入手の容易さなどから、アルキル基、アリール基などの炭化水素基、またはトリフルオロメチル基、パーフルオロフェニル基などハロゲン(特にフッ素)で置換されたアルキル基またはアリール基であることが好ましい。
【0089】
前記一般式(1)で示される化合物の例は、トリメチルボラン、トリメトキシボラン、パーフルオロメチルボラン、トリフェニルボラン、トリス(パーフルオロフェニル)ボラン、トリフェノキシボラン、トリス(ジメチルアミノ)ボラン、トリス(ジフェニルアミノ)ボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(n-プロピル)アルミニウム、トリ(n-ブチル)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ(n-ヘキシル)アルミニウム、トリ(n-オクチル)アルミニウム、トリ(n-デシル)アルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドなどであるが、これらに限定されない。
【0090】
前記一般式(2):[C(R23)(R24)R25[Q(R26)(R27)(R28)R29
前記一般式(2)で示される化合物は、[C(R23)(R24)R25[Q(R26)(R27)(R28)R29で表される、ホウ素またはアルミニウムのカルボカチオンとの塩である。(式中、Qは前記一般式(2)に定義されたとおりであり、R23~R29は、それぞれ独立して、R20と同義である。)
23~R29としては、前記Rなどの説明において記載した例示等があてはまるが、化合物の調製や入手の容易さなどから、アルキル基、アリール基などの炭化水素基であることが好ましく、カルボカチオンを得やすいことから、t-ブチル基やアリール基など嵩高い炭化水素基がより好ましい。
【0091】
前記一般式(2)で示される化合物の例は、トリチルテトラメチルボレート、トリチルテトラキス(パーフルオロメチル)ボレート、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートなどであるが、これらに限定されない。
【0092】
前記一般式(1)または(2)で示される化合物は、市販されているものを用いることができるほか、当該化合物が有する置換基に応じて、公知の方法を適宜改変することによっても得ることができる。
【0093】
前記一般式(1)または(2)で示される化合物のほか、本発明のオレフィン重合用触媒には、有機アルミニウムオキシ化合物を加えることもできる。有機アルミニウム化合物を用いる場合の例としては、メチルアルミノキサン(MAO)や修飾メチルアルミノキサン(MMAO)が挙げられ、市販のものを用いることができる。容易に入手でき、取扱い性もよいことからMMAOが好ましい。MAO、MMAOは市販のものを用いることができ、グレード等による制限はない。
【0094】
先に例示した13族元素を有する化合物のほか、メチルリチウムやn-ブチルリチウムなどのアルキルリチウムをはじめとする1族金属含有化合物、グリニャール試薬などの2族金属含有化合物のような、助触媒として従来公知の有機金属化合物もまた、助触媒として用いることもできる。これらの化合物も市販のものを用いることができ、グレード等による制限はない。
【0095】
これらの助触媒は、前記金属錯体触媒と同じ条件で用いることができるが、不活性ガス雰囲気下、酸素や水分を避けて使用することが好ましい。加える場合の使用量についても、当業者であれば適宜設定することができる。
【0096】
更に、前記金属錯体触媒と助触媒の接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
前記金属錯体触媒と助触媒の接触は、窒素などの不活性ガス中において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒中で行うことが好ましい。接触は、-20℃から溶媒の沸点の間の温度で行うことができ、特に室温から溶媒の沸点の間での温度で行うのが好ましい。
【0097】
5.オレフィン系重合体の製造方法
本発明のオレフィン系重合体の製造方法の一実施形態は、前記本発明のオレフィン重合用触媒の存在下で、オレフィンを重合または共重合することを特徴とする。
【0098】
本発明におけるオレフィンは、非環状オレフィンであっても環状オレフィンであってもよく、炭素数2~22の非環状オレフィン及び炭素数4~20の環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
本発明における非環状オレフィンとしては、一般式:CH=CHR30で表されるα-オレフィンが挙げられる。ここで、R30は、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R30の炭素数が20より大きいと、十分な重合活性が発現しない傾向がある。このため、なかでも、好ましいオレフィンとしては、R30が水素原子または炭素数1~10の炭化水素基であるオレフィンが挙げられる。
また、α-オレフィン以外の非環状オレフィンの例としては、2-ブテン、2-ペンテン、2-ヘキセンなどが挙げられる。
また、炭素数4~20の環状オレフィンは、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。
好ましいオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、4-メチルスチレン及びノルボルネンが挙げられる。重合体の製造効率の点から、中でも、エチレン、プロピレン、1-ブテン、及びノルボルネンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、更に、エチレンであることが好ましい。なお、オレフィンとしては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上のオレフィンを同時に用いてもよい。
【0099】
極性基含有モノマーとしては、非環状オレフィン、および環状オレフィンに極性を有する官能基(極性基)を導入したモノマーが挙げられる。非環状オレフィンのうち、α-オレフィンに極性基を導入したモノマーの例としては、一般式:CH=C(R30)(R31)で表される極性基含有モノマーが挙げられる。極性基含有モノマーの好ましい例は、(メタ)アクリル酸エステルである。ここで、R30は、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、R31は、-C(O)OR32(ここでR32は炭素原子数1~20の炭化水素基を表す)、-C(O)N(-R32’(ここでR32’は各々独立して水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基を表す)、シアノ基、または置換されていてもよいアリール基を表す。より十分な重合活性を発現させることができるため、R30は、好ましくは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基である。より好ましくは、R30は水素原子またはメチル基である。R31としては、前記置換基であれば特に制限はないが、共重合体としたときの用途が広く存在することから、-C(O)OR32またはアリール基であることが好ましい。このとき、R32の炭素数が20を超えると、重合活性が低下する傾向がある。よって、R32は、好ましくは炭素数1~12の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~8の炭化水素基である。
また、R32としては炭素原子および水素原子で構成されるものが好ましいが、R32内には、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、リン原子、窒素原子、ケイ素原子、フッ素原子、ホウ素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。これらのヘテロ原子のうち、酸素原子、ケイ素原子、フッ素原子が好ましく、酸素原子がさらに好ましい。水素原子でない場合のR32’の好ましい範囲及び例示についても、R32と同様である。
【0100】
α-オレフィン以外の非環状オレフィン、環状オレフィンに極性を有する官能基を導入したモノマーとしては、α-オレフィン以外の非環状オレフィンまたは環状オレフィンの例示化合物に、前記R31で表される置換基を任意の箇所に導入した化合物が挙げられる。
また、極性基含有モノマーとしては、炭酸ビニレン(1,3-ジオキソール-2-オン)であってもよい。
【0101】
極性基含有モノマーとしてさらに好ましい例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸-3,3,3-トリフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリロニトリル、10-ウンデセン酸メチル、4-アセトキシスチレン、ビニルアニソール、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸t-ブチル、5-ノルボルネン-2-メタノール、5-ノルボルネン-2-メチルアミン、5-ノルボルネン-2-メチルピバルアミド、酢酸5-ノルボルネン-2イル、炭酸ビニレン等が挙げられる。より好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t-ブチル、アクリロニトリル、10-ウンデセン酸メチル、4-アセトキシスチレン、4-ニトロスチレン、ビニルアニソール、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸t-ブチル、5-ノルボルネン-2-メチルピバルアミド、酢酸5-ノルボルネン-2イル、炭酸ビニレンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0102】
エチレン等の非環状オレフィンの共重合に用いられるコモノマーとしては、極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーが好適に用いられる。
さらに好ましい例としては、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、10-ウンデセン酸メチル、4-メチルスチレン、4-アセトキシスチレン、ノルボルネン、5-ノルボルネン-2-カルボン酸t-ブチル、酢酸9-デセニル、1,2-エポキシ-9-デセン、炭酸ビニレンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
これらモノマーは単一の種類を使用してもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0103】
以上のモノマーの種類は、得られる重合体に要求される物性に合わせて適宜選択することができる。また、場合により、2種類以上のモノマーの組成物を共重合させることも可能であり、2種類以上の極性基含有モノマーからなる組成物を共重合させることも可能である。配合されるモノマーの量、各モノマー間の量比は、得られる共重合体に要求される物性に合わせて適宜設定することができる。
【0104】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、前記本発明のオレフィン系重合用触媒の存在下で重合されることから、極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーと、非環状オレフィンとを共重合する製造方法に好適に用いられる。
また、本発明の共重合反応としては、オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合することが、重合活性の点から好適な態様として挙げられる。
【0105】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法では、前記金属錯体触媒を含むオレフィン重合用触媒を、オレフィンの重合又は共重合の触媒として使用する。各金属錯体触媒は、単離したものを用いてもよいし、担体に担持したものを用いてもよい。こうした担持をオレフィンの重合やオレフィンと(メタ)アクリル酸エステル等との共重合に使用する反応器中で、これらのモノマーの存在下または非存在下で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。
【0106】
使用可能な担体としては、本発明の主旨をそこなわない限りにおいて、任意の担体を用いることができる。一般に、無機酸化物やポリマー担体が好適に使用できる。無機酸化物として具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO-Al、SiO-V、SiO-TiO、SiO-MgO、SiO-Cr等の混合酸化物も使用することができる。また担体として、無機ケイ酸塩、ポリエチレン担体、ポリプロピレン担体、ポリスチレン担体、ポリアクリル酸担体、ポリメタクリル酸担体、ポリアクリル酸エステル担体、ポリエステル担体、ポリアミド担体、ポリイミド担体などが使用可能である。これらの担体については、粒径、粒径分布、細孔容積、比表面積などに特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
【0107】
無機ケイ酸塩としては、粘土、粘土鉱物、ゼオライト、珪藻土等が使用可能である。これらは、合成品を用いてもよいし、天然に産出する鉱物を用いてもよい。粘土、粘土鉱物の具体例としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群等が挙げられる。
これらは混合層を形成していてもよい。人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。
【0108】
これら具体例のうち好ましくは、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロサイト、ハロサイト等のハロサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ソーコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられる。
【0109】
これらの担体は、そのまま用いてもよいが、塩酸、硝酸、硫酸等による酸処理および/または、LiCl、NaCl、KCl、CaCl、MgCl、LiSO、MgSO、ZnSO、Ti(SO、Zr(SO、Al(SO等の塩類処理を行ってもよい。該処理において、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよい。また、粉砕や造粒等の形状制御や乾燥処理を行ってもよい。
【0110】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法では、前記助触媒のほか、公知の添加剤の存在下または非存在下で重合反応を行うことができる。添加剤としては、生成重合体を安定化する作用を有する添加剤が好ましい。例えば、キノン誘導体やヒンダードフェノール誘導体などが好ましい添加剤の例として挙げられる。
具体的には、モノメチルエーテルハイドロキノンや、2,6-ジ-t-ブチル4-メチルフェノール(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物などが使用可能である。
また、添加剤として、無機および/または有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で、またはイオン液体を添加して重合を行ってもよい。
【0111】
本発明における好ましい添加剤として、ルイス塩基が挙げられる。適切なルイス塩基を選択することにより、活性、分子量、アクリル酸エステルの共重合性を改良することができる。ルイス塩基の量としては、重合系内に存在する触媒成分中の遷移金属Mに対して、0.0001当量~1000当量、好ましくは0.1当量~100当量、さらに好ましくは0.3当量~30当量である。ルイス塩基を重合系に添加する方法については、特に制限はなく、任意の手法を用いることができる。例えば、本発明のオレフィン重合用触媒に添加してもよいし、モノマーと混合して添加してもよいし、触媒成分やモノマーとは独立に重合系に添加してもよい。また、複数のルイス塩基を併用してもよい。
【0112】
ルイス塩基としては、芳香族アミン類、脂肪族アミン類、アルキルエーテル類、アリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類、環状エーテル類、アルキルニトリル類、アリールニトリル類、アルコール類、アミド類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、フォスフェート類、フォスファイト類、チオフェン類、チアンスレン類、チアゾール類、オキサゾール類、モルフォリン類、環状不飽和炭化水素類などを挙げることができる。
これらのうち、特に好ましいルイス塩基は、芳香族アミン類、脂肪族アミン類、環状エーテル類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類であり、なかでも好ましいルイス塩基は、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピペリジン誘導体、イミダゾール誘導体、アニリン誘導体、ピペリジン誘導体、トリアジン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体である。
【0113】
具体的なルイス塩基化合物としては、ピリジン、ペンタフルオロピリジン、2,6-ルチジン、2,4-ルチジン、3,5-ルチジン、ピリミジン、N、N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール、2,2’-ビピリジン、アニリン、ピペリジン、1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ピリジル)-s-トリアジン、キノリン、8-メチルキノリン、フェナジン、1,10-フェナンスロリン、N-メチルピロール、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデカ-7-エン、1,4-ジアザビシクロ-[2,2,2]-オクタン、トリエチルアミン、ベンゾニトリル、ピコリン、トリフェニルアミン、N-メチル-2-ピロリドン、4-メチルモルフォリン、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、フラン、2,5-ジメチルフラン、ジベンゾフラン、キサンテン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、ジベンゾチオフェン、チアンスレン、トリフェニルフォスフォニウムシクロペンタジエニド、トリフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスフェート、トリピロリジノフォスフィンなどを挙げることができる。
【0114】
本発明において、重合形式に特に制限はない。重合形式としては、媒体中に全ての生成重合体が溶解する溶液重合、媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、または、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。また、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。重合反応を行う環境としては、窒素雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下で使用することが好ましい。金属錯体触媒は、一般的な重合条件下であればその使用条件に特段の制限はない。金属錯体触媒の使用量は、触媒として用いるのに適切な範囲であれば特に制限されず、当業者であれば適宜設定することができる。
【0115】
本発明における重合反応は、液相での重合が好ましいモノマーを用いる場合においては、n-ブタン、イソブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒や液化オレフィン等の液体、クロロベンゼンや1,2-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、また、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルムアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のような極性溶媒の存在下あるいは非存在下に行われる。また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。液化オレフィンは、バルク重合に付すモノマーとして使用することもできる。さらに、イオン液体も、溶媒として使用可能である。なお、高い重合活性や高い分子量を得るうえでは、上述の炭化水素溶媒やイオン液体がより好ましい。
【0116】
未反応モノマーや媒体は、生成共重合体から分離し、リサイクルして使用してもよい。
リサイクルの際、これらのモノマーや媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成共重合体と未反応モノマーおよび媒体との分離には、従来公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈などの方法が使用できる。
【0117】
重合温度、重合圧力および重合時間に、特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は、通常-20℃~290℃、好ましくは0℃~250℃、より好ましくは0℃~200℃、さらに好ましくは10℃~150℃、特に好ましくは20℃~100℃である。共重合圧力は、0.1MPa~300MPa、好ましくは0.3MPa~200MPa、より好ましくは0.5MPa~150MPa、さらに好ましくは1.0MPa~100MPa、特に好ましくは1.3MPa~50MPaである。重合時間は、0.1分~100時間、好ましくは0.5分~70時間、さらに好ましくは1分~60時間の範囲から選ぶことができる。
【0118】
本発明において、重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。ただし、例えばエチレンのような常温で気体のモノマーを用いる場合には、反応系をエチレンで充填したうえで重合を行うことができる。
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても、特に制限はなく、目的に応じて、さまざまな供給法をとることができる。たとえばバッチ重合の場合、あらかじめ所定量のモノマーを重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を重合反応器に供給してもよい。
【0119】
共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。本発明において、極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーと、非環状オレフィンとを共重合する場合に、共重合における全モノマー中の非環状オレフィンモノマーの合計含有割合は、所望の物性に応じて適宜選択されれば良く、全モノマー100mol%に対して、通常下限値が60.00mol%以上が挙げられ、70.00mol%以上であってもよく、80.00mol%以上であってもよく、85.00mol%以上であってもよく、90.00mol%以上であってもよい。一方、通常上限値は99.90mol%以下が挙げられ、99.80mol%以下であってもよく、99.70mol%以下であってもよく、99.60mol%以下であってもよく、99.50mol%以下であってもよい。この範囲とすることで、耐熱性などポリオレフィンが元来有する性質を大きく損なうことなく、塗料との親和性や接着性などを付与することができ、かつ物性の制御が可能である。
【0120】
重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができ、例えば以下の方法が挙げられる。
1)重合温度の制御
2)モノマー濃度の制御
3)遷移金属錯体中の配位子構造の制御
4)水素、メタルアルキルなど公知の連鎖移動剤の使用
【0121】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法により得られるオレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されるものではない。当該オレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)の下限は5,000以上であってよく、10,000以上であってもよい。また、当該オレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)の上限は1,000,000以下であってよく、500,000以下であってもよい。
当該オレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。本発明におけるGPCの測定は、後述の実施例に記載した方法によって行うことができる。
【0122】
また、本発明のオレフィン系重合体の製造方法により得られるオレフィン系重合体がエチレン系重合体である場合、当該エチレン系重合体の13C-NMRにより算出されるメチル分岐度は、特に限定されるものではないが、炭素1,000個当たり10以下であってよく、5以下であってもよい。
なお、本発明におけるメチル分岐数の測定は、後述の実施例に記載した方法によって行うことができる。
【0123】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、高い活性でオレフィンの重合体又は共重合体を提供でき、中でも極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーと、非環状オレフィンとの共重合体を提供することができるため、様々な特性を備えた重合体を提供する方法として利用可能である。また、本発明の方法で用いる触媒は、触媒性能のバランスが良く、高活性で、高分子量の(共)重合体が得られるだけでなく、触媒として単離しなくてもよいため、効率のよいオレフィン系重合体の合成に利用可能である。
【実施例0124】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。以下の合成例、実施例における配位子、金属錯体の合成および重合反応は、特に断りのない限り全て窒素またはアルゴン雰囲気下で行った。
実施例で使用される以下の略語について説明する。
tBA:アクリル酸t-ブチル
MA:アクリル酸メチル
VC:炭酸ビニレン
NB:ノルボルネン
TNOA:トリn-オクチルアルミニウム
MU:10-ウンデセン酸メチル
【0125】
[合成例における構造の解析方法]
合成例で開示する化合物の構造は、JEOL日本電子社製JNM-ECS400型NMR装置、ブルカー社製Avance400型NMR装置、またはブルカー社製Avance500型NMR装置を用いH-NMR、13C-NMR、19F-NMRおよび31P{H}-NMRにより解析された。具体的な測定方法は以下の通りである。
[試料調製]
5~20mgの試料を、テトラメチルシランを含んでいない重クロロホルム(CDCl)0.6mL、テトラメチルシランを0.03%(v/v)含んだ重クロロホルム0.6mL、またはテトラメチルシランを0.03%(v/v)含んだ重トルエン(CCD)0.6mLに溶解させて内径5mmφのNMR試料管に入れた。
【0126】
H-NMR測定条件]
プローブ:5mmφのプローブ
試料温度:室温
パルス角:45°
パルス間隔:2.8秒
積算回数:8回
化学シフト:重クロロホルムを溶媒として用いた際は、化学シフトはテトラメチルシランのプロトンシグナルを0ppm、またはクロロホルムのプロトンシグナルを7.26ppmに設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。重トルエンを溶媒として用いた際は、化学シフトはテトラメチルシランのプロトンシグナルを0ppmに設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0127】
19F-NMR]
プローブ:5mmφのプローブ
試料温度:室温
パルス角:45°
パルス間隔:1.8秒
積算回数:8回
化学シフト:化学シフトはCFClを外部標準として0ppmに設定し、他のフッ素によるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0128】
31P{H}-NMR]
プローブ:5mmφのプローブ
試料温度:室温
パルス角:30°
パルス間隔:0.5秒
積算回数:64-256回
化学シフト:化学シフトは85%リン酸水溶液を外部標準として0ppmに設定し、他のリンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0129】
[重合体の構造の解析方法]
実施例で得た重合体の構造は、ブルカー・バイオスピンAV400型NMR装置を用いたH-NMRおよび13C-NMR解析により決定した。具体的な測定方法は以下の通りである。
[試料調製]
100~500mgの試料をo-ジクロロベンゼン(ODCB)と重水素化臭化ベンゼン(CBr)の混合溶液(体積比:ODCB/CBr=3/1)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解した。
【0130】
H-NMR測定条件]
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
パルス角:4.5°
パルス間隔:2秒
積算回数:256-1024回
化学シフト:化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmに設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0131】
13C-NMR測定条件]
<エチレン/tBA>
<エチレン/MA>
<プロピレン/MU>
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
パルス角:90°
パルス間隔:51.5秒
積算回数:256-768回
デカップリング条件:逆ゲートデカップリング法
化学シフト:化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0132】
<エチレン(E)単独重合体>
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
パルス角:45°
パルス間隔:27.5秒
積算回数:768-1024回
デカップリング条件:ブロードバンドデカップリング法
化学シフト:化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0133】
<エチレン(E)/NB共重合体>
<プロピレン(P)単独重合体>
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
パルス角:45°
パルス間隔:38.5秒
積算回数:256-512回
デカップリング条件:ブロードバンドデカップリング法
化学シフト:化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0134】
<エチレン(E)/VC共重合体>
プローブ:10mmφのクライオプローブ
試料温度:120℃
パルス角:90°
パルス間隔:51.5秒
積算回数:512回
デカップリング条件:逆ゲートデカップリング法
化学シフト:化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0135】
[コモノマー算出方法]
以下において、Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI80.0~2.0は80.0ppmと2.0ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
<エチレン(E)/tBA共重合体>
13C-NMRスペクトルのシグナルを用いて以下の式からtBAの含有量を算出した。
tBA含有量(mol%)=I(tBA)×100/(I(E)+I(tBA)
ここで、I(tBA)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(tBA)=I79.5~79.0
(E)=(I180.0~136.0+I120.0~100.0+I80.0~2.0-I(tBA)×7)/2
【0136】
<エチレン(E)/MA共重合体>
MA含有量(mol%)
=I(MA)×100/(I(E)+I(MA)
ここで、I(MA)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(MA)=I51.5~50.5
(E)=(I180.0~136.0+I120.0~100.0+I55.0~2.0-I(MA)×4)/2
<エチレン(E)/NB共重合体>
13C-NMRスペクトルのシグナルを用いて以下の式からNBの含有量を算出した。
NB含有量(mol%)=I(NB)×100/(I(E)+I(NB)
ここで、I(NB)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(NB)=I48.3~41.3/4
(E)=(I180.0~136.0+I120.0~100.0+I50.0~2.0-I(NB)×7)/2
【0137】
<エチレン(E)/VC共重合体>
13C-NMRスペクトルの77.7~80.2ppmのシグナルを用いて以下の式から極性基含有モノマー含量を算出した。
VC(閉環)量(mol%)=I(VC)×100/〔I(VC)+I(E)
ここで、I(VC)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(VC)=(I78.8~80.2+I77.7~78.2)/2
(E)=(I2.0~120.0+I135.0~200.0-I(VC)×3)/2
【0138】
<プロピレン/MU共重合体>
13C-NMRスペクトルのシグナルを用いて以下の式からMUの含有量を算出した。
MU含有量(mol%)=I(MU)×100/(I(P)+I(MU)
ここで、I(MU)、I(P)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(MU)=I50.8~50.6
(P)=(I180.0~136.0+I120.0~100.0+I55.0~2.0-I(MU)×12)/3
【0139】
[MU残存量の算出]
13C-NMRスペクトルのシグナルを用いて以下の式からMUの残存量を算出した。
MU残存量(mol%)=I(MUモノマー)×100/(I(P)+I(MU)
ここで、I(MUモノマー)、I(P)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
(MUモノマー)=I114.3~114.1
(P)=(I180.0~136.0+I120.0~100.0+I55.0~2.0-I(MU)×12)/3
【0140】
分岐構造は、13C-NMRの3級炭素原子のスペクトルにより判断することができる。例えば、メチル分岐は、13C-NMRスペクトルの20.0~19.8ppmのメチル炭素(下記構造式中のvに相当)と37.6~37.3メチレン炭素(下記構造式中のxに相当)による信号の積分強度の総和を3で割った値IB1を用い、炭素原子1,000個あたりのメチル分岐数を以下の式を用いて算出した。
メチル分岐数(個/炭素原子1000個)=IB1×1000/Itotal
ここで、IB1、Itotalはそれぞれ、以下の式で示される量である。
B1=(I20.0~19.8+I37.6~37.3)/3
total=I180.0~136.0+I120.0~100.0+I80.0~2.0
【0141】
【化17】
【0142】
[プロピレン重合における立体規則性]
ポリプロピレンの立体規則性についても同様に、定量13C-NMRで構造を解析することができる。例えば、13C-NMRスペクトルで21.1ppm~22.4ppmの3本のピークがmm、20.3ppm~21.1ppmの3本のピークがmr、19.4ppm~20.3ppmの3本のピークがrrに相当し、これらの積分比を計算することでmm、mr、rrの比率を求めることができる。
【0143】
[数平均分子量および重量平均分子量]
数平均分子量および重量平均分子量は、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィーにより算出した。GPCの具体的な測定手法は以下の通りである。
装置:Agilent Technologies社製GPC(PL-GPC220)
検出器:IR検出器
カラム:昭和電工(株)製AT806MS(3本直列)
移動相溶媒:ODCB
測定温度:140℃
流速:1.0mL/min
注入量:0.3mL
[試料の調製]
0.24mg/mLのTMP(2,3,6-トリメチルフェノール)を含むODCBを用いて、140℃で約1時間を要して試料を溶解し、1mg/mLの試料溶液を調製する。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の次の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。各々が0.5mg/mLとなるように0.24mg/mLのTMPを含むODCBに溶解した標準ポリスチレン溶液を用いて較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10-4、α=0.700
PP:K=1.03×10-4、α=0.780
PE:K=3.92×10-4、α=0.733
【0144】
触媒活性は次の式により計算した。
触媒活性(kg/mol/h)=得られた重合体の収量(kg)/{使用した配位子の物質量(mol)×反応時間(h)}
【0145】
(合成例1:AL-29の合成)
(1)2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフランの合成
Tetrahedron,2005,61,4805-4810.の記述にしたがって、下記化学式の化合物を合成した。
【0146】
【化18】
【0147】
(2)ビス(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)クロロホスフィンの合成
2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン(5g,30.8mmol,1eq)を400mLのジエチルエーテルに溶解させた。生じた溶液を-78℃に冷やし、n-BuLi(37mmol,1.2eq)を加えて混合物を-78℃で30分攪拌した。続いて、得られた反応溶液を0℃に昇温して4時間攪拌し、黄色の懸濁液を得た。
懸濁液を-78℃に冷やし、PCl(2.12g、15.4mmol,0.5eq)を一挙に加えた。当該混合物を20℃に昇温し、12時間攪拌して黄色の溶液を得た。生じた黄色の溶液を蒸発乾固させ、目的物を含む混合物12gを得た。得られた混合物は精製せずに次の合成に用いた。
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:49.4(s、積分比約20%強度)、-4.3(s,積分比約80%)
【0148】
【化19】
【0149】
(3)ビス(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)ホスフィンの合成
ビス(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)クロロホスフィン(6g,15.4mmol,1eq)を100mLのテトラヒドロフランに溶解させた。生じた溶液を0℃に冷やし、水素化アルミニウムリチウム(1.17g,30.9mmol,2eq)を加えて混合物を20℃で2時間攪拌し、無色の懸濁液を得た。当該懸濁液に、酢酸エチルを加えて(50mL×4)反応を停止し、得られた懸濁液を蒸発乾固して無色の固体を得た。当該固体を大気下でシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル/酢酸エチル/ジクロロメタン=4/1/1)により精製し、4.5g(12.7mmol、原料が純度100%だとして収率82%)の目的化合物を得た。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:6.87(s,2H),5.23(d,J=237Hz,1H),4.55(t,J=8.6Hz,8H),3.06(t,J=8.6Hz,8H)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-128.0(s)
【0150】
【化20】
【0151】
(4)AL-29の合成
シュレンク管に上記で合成したビス(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)ホスフィンを500mg(1.4mmol)量り取り、テトラヒドロフランを18mL加えた。生じた溶液を-78℃に冷やした後、n-BuLiを0.98mL(1.6mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、当該混合物を-78℃で1時間10分撹拌させた。その後当該混合物を0℃に昇温し、テトラヒドロフラン4.7mLに溶解させたα-(トリフルオロメチル)スチレンオキシド265mg(1.4mmol)をゆっくり加えた。当該混合物を室温で2時間30分撹拌した後、60℃で2時間10分撹拌させた。その後当該混合物から溶媒を完全に留去し、残留物にテトラヒドロフランを23mL加えた。生じた溶液を0℃に冷やした後、塩化水素のジエチルエーテル溶液(以下、「塩酸エーテル溶液」ともいう)を0.85mL(1.7mmol)ゆっくりと滴下した。得られた溶液を0℃で30分撹拌させた後、当該溶液に脱気した水を14mL加えて洗浄し、有機層を分離した。水層にジエチルエーテルを8mL加え有機層を抽出する操作を3回繰り返した。集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ガラスフィルターを用いて硫酸ナトリウムを除去した。ろ液を蒸発乾固した後、得られた固体を大気下でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=5/1から3/1さらに1/1へ変更した)により精製し、189mgの固体を得た。31P-NMRから求めたAL-29の純度は97%であった。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:7.50-7.48(m、2H)、7.23-7.19(m、3H)、6.86(s、2H)、5.02(brs、1H)、4.52-4.46(m、6H)、4.38-4.31(m、2H)、3.86(dd、J=15.3、3.6Hz、1H)、3.04-2.95(m、9H)
19F NMR(376MHz、CDCl)δ:-80.4(s)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-64.9(s)
【0152】
【化21】
【0153】
(合成例2:AL-36の合成)
シュレンク管にビス(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)ホスフィンを500mg(1.4mmol)量り取り、テトラヒドロフランを18mL加えた。生じた溶液を-78℃に冷やした後、n-BuLiを0.98mL(1.6mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、当該混合物を-78℃で2時間撹拌させた。その後当該混合物を0℃に昇温してから、テトラヒドロフラン4.7mLに溶解させた2,2-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン0.15mL(1.4mmol)をゆっくり加えた。当該混合物を室温で1時間30分撹拌した後、0℃に冷やし、塩酸エーテル溶液を0.85mL(1.7mmol)ゆっくりと滴下した。当該混合物を0℃で30分撹拌させた後、脱気した水を14mL加えて洗浄し、有機層を分離した。水層にジエチルエーテルを8mL加え有機層を抽出する操作を3回繰り返した。集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ガラスフィルターを用いて硫酸ナトリウムを除去した。ろ液を蒸発乾固した後、得られた固体を大気下でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=5/1から3/1へ変更した)により精製し、426mgの固体を得た。31P-NMRから求めたAL-36の純度は99%以上であった。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:6.92(s、2H)、5.48(d、J=3.7Hz、1H)、4.56-4.46(m、8H)、3.15(s、2H)、3.05(t、J=8.8Hz、8H)
19F NMR(376MHz、CDCl)δ:-77.1(d、J=22.0Hz)31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-65.3(septet、J=22.5Hz)
【0154】
【化22】
【0155】
(合成例3:AL-36/NiMePyの合成)
シュレンク管にジクロロテトラピリジンニッケル(II)を85mg(0.19mmol)量り取り、トルエンを1.8mLとテトラヒドロフランを0.2mL加えた。生じた溶液を0℃に冷やした後、ピリジン80μL(0.99mmol)、及びメチルリチウム0.35mL(0.38mmol)をゆっくりと滴下し、遷移金属化合物溶液を得た。一方で、100mgのAL-36(0.19mmol)が入ったシュレンク管にトルエン0.6mLを加えてAL-36の溶液を得た。前記遷移金属化合物溶液に、前記AL-36の溶液を加えた。さらにトルエン0.2mLで2回AL-36の入ったシュレンク管を洗浄し、洗浄液も前記遷移金属化合物溶液に加えた。当該混合物を40℃で2時間20分撹拌させた後、溶媒を完全に留去した。得られた残留物にトルエン10mLを加えて当該混合物のセライトろ過を行った。ろ液の溶媒を完全に留去し、残留物をヘキサン1mLで2回、2mLで1回洗浄を行った。残留物を蒸発乾固することで52mgの固体を得た。
31P-NMRから求めたAL-36/NiMePyの純度は99%以上であった。
AL-36/NiMePyは以下の構造を有する金属錯体であった。
H NMR(400MHz、CCD)δ:8.90(br、2H)、6.77(br、1H)、6.64(s、2H)、6.47(br、2H)、4.11(t、J=8.7Hz、8H)、4.00(d、J=12.5Hz、2H)、2.54(t、J=8.6Hz、8H)、-0.47(d、J=6.3Hz、3H)
19F NMR(376MHz、CCD)δ:-77.1(s)
31P{H} NMR(162MHz、CCD)δ:5.2(s)
【0156】
【化23】
【0157】
(合成例4:AL-52の合成)
(1)4-ブロモ-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセンの合成
1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-アミン(10g,57.7mmol)を48%臭化水素水溶液(40mL)に溶解した。溶液を0℃に冷却した後、亜硝酸ナトリウム(4.38g、63.5mmol)を非常にゆっくりと加えた。反応温度を0℃~5℃の範囲内に維持して混合物を2時間攪拌し、ジアゾニウム塩の溶液を得た。続いて、得られた溶液を臭化銅(11.6g、80.8mmol)と48%臭化水素水溶液(35mL)の混合物に加えた。当該混合物を100℃で18時間撹拌して、黒色の溶液を得た。当該混合物から有機物をジクロロメタンで3回抽出して、集めた有機層を水酸化カリウム水溶液(1M)で洗浄し、さらに水で洗浄して、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して褐色の固体を得た。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル100%)により精製し、目的物を白色固体(4.0g、17mmol)として得た。
H NMR(CDCl、500MHz)δ:7.53(d、J=2.0Hz、1H)、3.28-3.15(m、8H)、2.36(quintet、J=7.0Hz、4H)
【0158】
【化24】
【0159】
(2)エトキシビス(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)ホスフィンの合成
4-ブロモ-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン(4g、17mmol)のテトラヒドロフラン溶液(17mL)を20℃でマグネシウム(615mg、25.3mmol)にゆっくりと滴下した。混合物を20℃で2時間撹拌し、オフホワイト色の懸濁液を得た。続いて、ジクロロ亜リン酸エチル(1.18g、8.00mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を-78℃まで冷却し、ここへ上記で得たオフホワイト色の懸濁液(16.0mL)を-78℃で滴下した。混合物を20℃までゆっくりと昇温し、18時間撹拌して黄色の溶液を得た。
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:112.2(s、積分比19%)
【0160】
【化25】
【0161】
(3)エトキシビス(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)ホスフィンボランの合成
エトキシビス(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)ホスフィン(3.12g)をトルエン(10mL)に溶解して、ジメチルスルフィドボラン(10M、3.99mL、39.9mmol)を3分かけて20℃で滴下した。生じた溶液を20℃で6時間撹拌し、薄黄色の溶液を得た。当該混合物を0℃まで冷却し、反応温度を0℃~10℃の範囲に保ちながら水(10mL)を滴下した。生じた混合物を0.5時間攪拌した。当該混合物から有機層を酢酸エチル(100mL)で3回抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄した。その後、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル/酢酸エチル=10/1)により精製し、白色固体(1.5g、3.7mmol)を得た。
H NMR(CDCl、400MHz)δ:7.21(s、2H)、3.94(dq,J=7.2、7.2Hz、2H)、2.85-2.75(m、16H)、1.99-1.92(m、8H)、1.27(t、J=6.8Hz、3H)、1.50-0.50(br)
31P{H} NMR(CDCl、162MHz)δ:108.4-108.0(m、積分比85%)
【0162】
【化26】
【0163】
(4)ビス(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)ホスフィンボランの合成
エトキシビス(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)ホスフィンボラン(1.25g)とナフタレン(39.6mg,309μmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、ナトリウム(156mg、6.80mmol)を20℃で加えた。混合物を20℃で18時間撹拌して赤褐色の溶液を得た。赤褐色の溶液を0℃まで冷却し、ここに水(236mg、13.1mmol)を滴下した。得られた白色懸濁液を0.5時間撹拌した。当該混合物から有機層をジクロロメタン(20mL)で3回抽出した。集めた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)で洗浄し、さらに飽和食塩水(20mL)で洗浄した。その後、硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去することで黄色固体を得た。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル/ジクロロメタン=1/1)により精製し、白色固体(0.7g、2.0mmol)を得た。
H NMR(CDCl、500MHz)δ:7.19(s、2H)、6.47(dq、J=379、7.5Hz,1H)、2.93-2.80(m、16H)、2.10―1.95(m、8H)、1.45-0.50(br)
31P{H} NMR(CDCl,202MHz)δ:-20.3-(-21.0)(br)
【0164】
【化27】
【0165】
(5)ビス(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)ホスフィンの合成
ビス(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)ホスフィンボラン(2.5g、6.94mmol)を、塩化水素のジオキサン溶液(10mL)に20℃で溶解し、12時間撹拌して白色懸濁液を得た。溶媒を留去したあと、得られた残渣をジクロロメタン(約100mL)に溶解して、当該混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で1回、続いて飽和食塩水(50mL)で2回洗浄した。その後、硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を除去して黄色の固体として粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/石油エーテル=1/2)により精製し、白色固体(0.9g、2.6mmol)を得た。
H NMR(CDCl、400MHz)δ:7.06(s、2H)、2.85(t、J=7.4Hz, 8H)、2.73(t、J=7.4Hz、8H)、2.15-1.95(m、8H)
31P{H} NMR(CDCl,162MHz)δ:-85.0(s)
【0166】
【化28】
【0167】
(6)AL-52の合成
シュレンク管に上記で合成したビス(1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-s-インダセン-4-イル)ホスフィンを300mg(0.87mmol)量り取り、テトラヒドロフランを11mL加えた。生じた溶液を-78℃に冷やした後、n-BuLiを0.60mL(0.96mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、当該混合物を-78℃で1時間40分撹拌させた。その後当該混合物を0℃に昇温してから、テトラヒドロフラン2.8mLに溶解させたα-(トリフルオロメチル)スチレンオキシド164mg(0.87mmol)をゆっくり加えた。更にα-(トリフルオロメチル)スチレンオキシドが入っていた容器内を0.6mLのテトラヒドロフランで2回洗浄し、洗浄液もシュレンク管に加えた。当該混合物を室温で1時間撹拌した後、溶媒を完全に留去した残留物にテトラヒドロフランを15mL加えた。生じた溶液を0℃に冷やした後、塩酸エーテル溶液を1.0mL(1.0mmol)ゆっくりと滴下した。当該混合物を0℃で30分撹拌させた後、水を9mL加え洗浄し、有機層を分離した。以降の操作は全て大気下で行った。水層にジエチルエーテルを5mL加え、有機層を抽出する操作を3回繰り返した。集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ガラスフィルターを用いて硫酸ナトリウムを除去した。ろ液を蒸発乾固した後、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより3回(展開溶媒:1回目はヘキサン/アセトン=40/1、2回目および3回目はヘキサン/アセトン=20/1)精製し、83mgの固体を得た。31P NMRから求めたAL-52の純度は94%であった。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:7.35(d、J=7.2Hz、2H)、7.24-7.14(m、3H)、7.06(s、1H)、6.95(s、1H)、3.48(dd、J=14.2、2.6Hz、1H)、3.35(d、J=14.4Hz、1H)、3.31(d、J=9.6Hz、1H)、2.77(t、J=7.6Hz、4H)、2.73-2.58(m、10H)、2.39-2.32(m、2H)、1.98-1.76(m、8H)
19F NMR(376MHz、CDCl)δ:-81.0(s)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-40.1(s)
【0168】
【化29】
【0169】
(合成例5:AL-61の合成)
(1)tert-ブチル(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)ホスフィンボランの合成)
2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン(4g、25mmol)のジエチルエーテル溶液(100m)を0℃に冷却し、n-ブチルリチウム(2.5M、10.9mL、27.3mmol)を加えた。当該混合物を20℃で3時間撹拌した後、生じた混合物を-78℃に冷やしたtert-ブチルジクロロホスフィン(4.31g、27.1mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)に加えた。当該混合溶液を20℃で16時間撹拌して、tert-ブチル(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)ホスフィンクロリドの白色懸濁液を得た。
31P{H} NMR(202MHz、CDCl)δ:33.6(s、積分比91%)
上記の白濁懸濁液に、ジメチルスルフィドボラン(10M、7.40mL、74.0mmol)を0℃で加えた。当該混合物を20℃で16時間撹拌することで、無色溶液を得た。
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:114.4-114.1(m)
上記の無色溶液を0℃に冷却し、水素化リチウムアルミニウム(1M、36.9mL、36.9mmol)を加えた。当該混合物を20℃で16時間撹拌することで、白色懸濁液を得た。当該混合物に脱気した水(1.5mL)をゆっくり加え、続いて脱気した15%水酸化ナトリウム水溶液(1.5mL)をゆっくり加え、さらに脱気した水(4.5mL)をゆっくりと加えた。室温で30分撹拌した後、当該混合物を濾過して、濾液を濃縮することで白色の油状物質を得た。油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル/酢酸エチル=10/1)により精製し、目的物を白色の固体(4.42g、16.7mmol)として得た。
H NMR(400MHz、CDCl)δ: 7.06(s、1H)、5.43(dq、J=377、7.0Hz、1H)、4.67-4.54(m、4H)、3.12(t、J=8.6Hz、4H)、1.22(d、J=15.2Hz,9H)、1.02-0.20(br、3H)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:1.3-0.9(br)
【0170】
【化30】
【0171】
(2)AL-61の合成
シュレンク管に上記で合成したtert-ブチル(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)ホスフィンボラン300mg(1.14mmol)を量り取り、テトラヒドロフランを10mL加えた。生じた溶液を-78℃に冷やした後、0.6Mのカリウムヘキサメチルジシラジドのトルエン溶液を2.45mL(1.47mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、当該混合物を0℃に昇温してから、テトラヒドロフランを10mL加えた。0℃で当該混合物を1時間撹拌した後、2,2-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン0.140mL(1.28mmol)をゆっくり加えた。当該混合物を室温で2時間撹拌した後、0℃に冷やし、0.87M塩酸(3.4mmol)をゆっくりと滴下した。当該混合物からジエチルエーテル5mLで生成物を3回抽出し、集めた有機層を5mLの水で洗浄した。次にこの有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、脱脂綿を用いた濾過により硫酸ナトリウムを除去した。ろ液を蒸発乾固したあと、得られた固体を大気下でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=2/1)により精製し、384mgの固体を得た。
上記の得られた固体299mg(0.675mmol)に、トルエン5mLに溶解させた1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン91mg(0.81mmol)を加え、混合物を60℃に昇温してから1時間半撹拌した。得られた溶液を窒素下でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=5/1)により精製し、234mgの固体を得た。この固体を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=5/1)により精製し、118mgの固体を得た。31P{1H} NMRから求めたAL-61の純度は97%であった。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:7.02(s、1H)、4.61-4.51(m、5H)、3.76(dd、J=16.0Hz、3.2Hz、1H)、3.10(t、J=8.6Hz、4H)、2.06(d、J=16.0Hz、1H)、1.09(d、J=13.7Hz、9H)
19F NMR(376MHz、CDCl)δ:-77.1(q、J=11.7Hz)、-77.5(dq、J=11.7、11.7Hz)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-30.2(septet、J=13.8Hz)
【0172】
【化31】
【0173】
(合成例6:AL-62の合成)
シュレンク管にビス(2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジフラン-8-イル)ホスフィンを407mg(1.2mmol)量り取り、テトラヒドロフランを15mL加えた。生じた溶液を-78℃に冷やした後、n-BuLiを0.84mL(1.3mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、当該混合物を-78℃で1時間撹拌させた。その後当該混合物を0℃に昇温してから、テトラヒドロフラン2.8mLに溶解させたメチル-2-(トリフルオロメチル)-2-オキシランカルボキシレート145mg(0.85mmol)をゆっくり加えた。更にメチル-2-(トリフルオロメチル)-2-オキシランカルボキシレートが入っていた容器内を0.3mLのテトラヒドロフランで2回洗浄し、洗浄液もシュレンク管に加えた。当該混合物を室温で1時間40分撹拌した後、0℃に冷やし、塩酸エーテル溶液を1.4mL(1.4mmol)ゆっくりと滴下した。当該混合物を0℃で2時間撹拌させた後、水を8.4mL加えて洗浄し、有機層を分離した。以降の操作は全て大気下で行った。水層にジエチルエーテルを5mL加え有機層を抽出する操作を2回、水層にジエチルエーテルを6mL加え有機層を抽出する操作を1回行った。集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ガラスフィルターを用いて硫酸ナトリウムを除去した。ろ液を蒸発乾固し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=10/1から5/1、さらに2/1へ変更した)により精製し、202mgの固体を得た。31P-NMRから求めたAL-62の純度は99%以上であった。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:6.89(d、J=13.2Hz、2H)、4.68(d、J=0.8Hz、1H)、4.58-4.45(m、8H)、3.71(s、3H)、3.68(dd、J=15.2、2.8Hz、1H)、3.06-3.00(m、8H)、2,92(d、J=14.8Hz、1H)
19F NMR(376MHz、CDCl)δ:-79.0(br)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-61.6-(-61.8)(m)
【0174】
【化32】
【0175】
(合成例7:AL-68の合成)
(1)5-ブロモ-2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキサンの合成
3-ブロモ-1,2-ベンゼンジオール(10g、52.9mmol)と1,2-ジブロモエタン(19.9g、106mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(100mL)に溶解した。当該溶液に炭酸カリウム(21.9g、159mmol)とフッ化カリウム(1.54g、26.5mmol)を加えて、混合物を135℃で2時間撹拌することで黄色懸濁液を得た。当該混合物を水(200mL)に加えて、酢酸エチル(200mL)で有機層を3回抽出した。集めた有機層を水(300mL)で3回洗浄し、続いて飽和食塩水(100mL)で2回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル/酢酸エチル=100/0から20/1へ変更した)により精製し、11.2g(52.2mmol)の黄色の油状物質として目的物を得た。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:7.10(dd、J=8.0,1.6Hz、1H)、6.84(dd、J=8.0,1.2Hz、1H)、6.73(dd、J=8.0,8.0Hz、1H)、4.38-4.36(m、2H)、4.28-4.26(m、2H)
【0176】
【化33】
【0177】
(2)tert-ブチル(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキサン-5-イル)ホスフィンボランの合成
-78℃の5-ブロモ-2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキサン(6.5g、30mmol)のテトラヒドロフラン溶液(50mL)に、n-ブチルリチウム(2.5M、14.5mL、36.2mmol)をゆっくりと加えた。当該混合物を-78℃で1時間撹拌して、ここにtert-ブチルジクロロホスフィン(7.21g、45.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を-78℃で素早く加えた。この混合物を室温で2時間撹拌することで、黄色の溶液を得た。溶媒留去することにより、粗生成物としてtert-ブチル(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキサン-5-イル)クロロホスフィンを淡黄色の油状物質(15.6g)として得た。
上記の油状物質(7.5g)のテトラヒドロフラン溶液(40mL)に、水素化リチウムアルミニウム(2.5M、17.4mL、43.5mmol)をゆっくりと加えた。その後、混合物を室温で2時間撹拌して黄色の溶液を得た。当該混合物にジメチルスルフィドボラン(10M、4.35mL、43.5mmol)を0℃で加えて、その後混合物を室温で4時間撹拌して黄色溶液を得た。当該混合物に塩酸(1N、10mL)をゆっくりと加えて、酢酸エチル(150mL)で3回有機層を抽出して、集めた有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル/酢酸エチル=40/1から10/1へ変更した)により精製し、白色固体(1.1g、4.6mmol)を得た。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:7.28-7.26(m、1H)、7.02(dd、J=8.0,1.5Hz、1H)、6.95(ddd、7.5,7.5,2.5Hz、1H)、5.56(dq、J=380、7.0Hz,1H)、4.35-4.23(m、4H)、1.19(d、J=15.0Hz、9H)、1.03-0.33(br、3H)
31P{H} NMR(202MHz、CDCl)δ:2.4-2.1(m)
【0178】
【化34】
【0179】
(3)AL-68の合成
シュレンク管に上記で合成したtert-ブチル(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキサン-5-イル)ホスフィンボランを250mg(1.1mmol)量り取り、テトラヒドロフランを11mL加えた。生じた溶液を-78℃に冷やし、ヘキサメチルジシラザンカリウムのトルエン溶液を1.9mL(1.2mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、当該混合物を-78℃で1時間撹拌させた。当該混合物を0℃に昇温し、テトラヒドロフラン3.5mLに溶解させた2,2-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン0.11mL(1.1mmol)をゆっくり加えた。更に2,2-ビス(トリフルオロメチル)オキシランが入っていた容器内を0.5mLのテトラヒドロフランで2回洗浄し、洗浄液もシュレンク管に加えた。当該混合物を室温で1時間撹拌した後、溶媒を完全に留去した。得られた固体を大気下でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=5/1)により精製し、323mgの固体を得た。
上記の固体323mgにメタノールを5mL加え、混合物を60℃で8時間撹拌した。撹拌後、溶媒を留去して229mgの固体を得た。31P-NMRから求めたAL-68の純度は98%であった。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:6.99(ddd、J=7.7、7.7,1.9Hz、1H)、6.93(dd、J=8.2,1.8Hz、1H)、6.87(dd、J=7.8、7.8Hz、1H)、4.33-4.24(m、5H)、3.06(dd、J=16.0,1.8Hz、1H)、2.15(d、J=16.0Hz、1H)、1.06(d、J=13.6Hz、9H)
19F NMR(376MHz、CDCl)δ:-76.8(q、J=14.5Hz)、-77.8(q、J=11.3Hz)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-25.3(s)
【0180】
【化35】
【0181】
(合成例8:AL-69の合成)
(1)7-ブロモ-2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフランの合成
Organic Letters,2011,13,4974-4976.の記述にしたがって、下記化学式の化合物を合成した。
【0182】
【化36】
【0183】
(2)tert-ブチル(2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン-7-イル)ホスフィンボランの合成
7-ブロモ-2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン(6.5g、28.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液(30mL)を-78℃に冷却して、n-ブチルリチウム(2.5M、12.6mL、31.5mmol)を加えた。当該混合物を-78℃で3時間撹拌して、ここにtert-ブチルジクロロホスフィン(5.01g、31.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6mL)を加えた。当該混合物を20℃で1時間撹拌して、無色の溶液を得た。当該溶液を濃縮することで、白色固体の粗生成物としてtert-ブチル(2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン-7-イル)クロロホスフィンを得た。
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:99.0(s、積分比98%)
上記の白色固体(7.75g、28.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液(30mL)を0℃に冷却して、ジメチルスルフィドボラン(10M、5.73mL、57.3mmol)を加えた。当該混合物を室温で16時間撹拌することで、tert-ブチル(2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン-7-イル)クロロホスフィンボランを白色懸濁液として得た。
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:119.2-118.9(m、積分比78%)
上記の白色懸濁液を0℃に冷却して、水素化リチウムアルミニウム(2.5M、17.2mL、43mmol)を加えた。当該混合物を20℃で16時間撹拌することで、無色の溶液を得た。ここに、水(0.5mL)をゆっくりと加え、続いて15%水酸化ナトリウム水溶液(0.5mL)をゆっくりと加え、さらに水(1.5mL)をゆっくりと加えた。室温で30分撹拌した後、当該混合物を濾過し、濾液を濃縮することで無色の油状物質を得た。得られた油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:石油エーテル/酢酸エチル=50/1)により精製し、3.2gの白色固体として目的物を得た。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:7.46(dd、J=10.4,8.0Hz、1H)、7.26(d、J=7.4Hz、1H)、6.91(ddd、J=7.4Hz、7.4Hz、1.8Hz、1H)、5.44(dq、J=377、6.8Hz,1H)、3.06(s、2H)、1.50(s、3H)、1.46(s、3H)、1.19(d、J=15.2Hz,9H)、0.97-0.20(br、3H)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:4.6-4.2(m)
【0184】
【化37】
【0185】
(3)AL-69の合成
シュレンク管に上記で合成したtert-ブチル(2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン-7-イル)ホスフィンボランを250mg(1.0mmol)量り取り、テトラヒドロフランを13mL加えた。生じた溶液を-78℃に冷やした後、ヘキサメチルジシラザンカリウムのトルエン溶液を1.8mL(1.1mmol)ゆっくりと滴下した。滴下終了後、当該混合物を-78℃で1時間撹拌させた。その後当該混合物を0℃に昇温し、テトラヒドロフラン3.3mLに溶解させた2,2-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン0.11mL(1.0mmol)をゆっくり加えた。2,2-ビス(トリフルオロメチル)オキシランが入っていた容器内を0.5mLのテトラヒドロフランで2回洗浄し、洗浄液もシュレンク管に加えた。当該混合物を室温で1時間撹拌した後、溶媒を留去した。得られた固体を大気下でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=5/1)により精製し、192mgの固体を得た。
上記の固体192mgにメタノールを3mL加え、混合物を60℃で7時間撹拌した。撹拌後、溶媒を留去して146mgの固体を得た。31P-NMRから求めたAL-69の純度は98%であった。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:7.27-7.20(m、1H)、7.20-7.14(m、1H)、6.83(ddd、J=7.6,7.6,0.8Hz、1H)、4.56(d、J=8.0Hz、1H)、3.50(dd、J=15.8,3.4Hz、1H)、3.01(s、2H)、2.09(d、J=16.0Hz、1H)、1.47(s、3H)、1.46(s、3H)、1.06(d、J=13.6Hz、9H)
19F NMR(376MHz、CDCl)δ:-77.1-(-77.3)(m)
31P{H} NMR(162MHz、CDCl)δ:-15.3(septet、J=14.2Hz)
【0186】
【化38】
【0187】
[比較合成例1](AL-2alの合成)
国際公開第2001/092342号の51~52ページを参照して下記化学式で表されるAL-2alを合成した。比較例1には31P{H}-NMRの純度が90%の錯体を、比較例2には31P{H}-NMRの純度が76%の錯体を用いた。
【0188】
【化39】
【0189】
以下の重合実験において使用したオートクレーブは、充分に乾燥し、窒素置換を行ってから使用した。
[実施例1]
フラスコにNi(cod)を68.8mg(0.25mmol)量り取り、25mLのトルエンに溶解させた。また、別のフラスコに合成例1で得られたAL-29を10.5mg(0.019mmol)量り取った。Ni(cod)のトルエン溶液を20mL量り取り、この溶液をAL-29の入ったフラスコに加えた。生じた触媒組成物の溶液を40℃の水浴で温め、15分攪拌して触媒組成物溶液(以下触媒溶液という。AL-29濃度:約1mM)を得た。
2.4Lのオートクレーブにトルエンを1000mL加え、オートクレーブ内を90℃に昇温した。このオートクレーブの内圧が0.5MPaになるように窒素を加えた。
続いて、オートクレーブの内圧が3.0MPaになるようにエチレンを加えた。触媒シリンダーに5.0mLの上記触媒溶液を注入し、高圧窒素でオートクレーブに加え、この時点を反応開始時刻とした。反応開始1分後にエチレンを脱圧し、10mLの1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)を加えて反応を停止した。当該オートクレーブを室温に戻し、アセトン1000mLを加えた。析出した固体を、濾過により回収し、固体をアセトン100mLで2回洗浄し、減圧乾燥した。得られたポリマーは31.6gであった。
【0190】
[実施例2]
Ni(cod)を302.4mg(1.1mmol)、トルエンを27.5mL、AL-29を54.3mg(0.10mmol)、AL-29に加えたNi(cod)のトルエン溶液を25mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って25mLの触媒溶液(AL-29濃度:約4mM)を調製した。
2.4Lのオートクレーブにトルエンを940mL(以下、トルエン-1)加えた。触媒シリンダーにtBAを2.9mL(20mmol)(以下、コモノマーとその添加量-1)注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。触媒シリンダーを10mLのトルエンで洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。触媒シリンダーにTNOAのトルエン溶液(0.1M)を1.0mL加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。触媒シリンダーを10mLのトルエンで洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。オートクレーブ内を90℃に昇温し、このオートクレーブの内圧が0.5MPaになるように窒素を加えた(以下、窒素圧-1)。続いて、オートクレーブの内圧が3.0MPaになるようにエチレンを加えた(以下、エチレン圧-1)。触媒シリンダーに5mLの上記触媒溶液(以下、初期触媒-1)を加え、高圧窒素でオートクレーブに加え、この時点を反応開始時刻とした。
反応開始3分後に触媒シリンダーを10mLのトルエンで洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた(以下、初期洗浄とその時間-1)。反応開始9分後に9mLの触媒溶液を触媒シリンダーに加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。さらに、反応開始13分後に9mLの触媒溶液を触媒シリンダーに加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始16分後に10mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた(以下、触媒の追加-1)。反応開始52分後(以下、反応時間-1)に10mLの1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)を高圧窒素で加えて反応を停止し、エチレンを脱圧した。
精製方法:当該オートクレーブを室温に戻し、アセトン1000mLを加えた。析出した固体を濾過により回収し、固体をアセトン1000mLで2回洗浄し、減圧乾燥した。得られたポリマーは28.7gであった。
【0191】
[実施例3]
Ni(cod)を88.2mg(0.32mmol)、トルエンを8mL、AL-29を13.2mg(0.024mmol)、AL-29に加えたNi(cod)のトルエン溶液を6mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って6mLの触媒溶液(AL-29濃度:約4mM)を調製した。
0.2Lのオートクレーブにトルエンを90mL(以下、トルエン-2)加えた。試薬投入口からtBAを0.75mL(5.2mmol)(以下、コモノマーとその添加量-2)、TNOAのトルエン溶液(0.1M)を0.6mL加えた(以下、TNOAの添加量-2)。オートクレーブ内を90℃に昇温し、このオートクレーブの内圧が0.5MPaになるように窒素を加えた(以下、窒素圧-2)。続いて、オートクレーブの内圧が3.0MPaになるようにエチレンを加えた(以下、エチレン圧-2)。触媒シリンダーに3mLの上記触媒溶液(以下、初期触媒-2)を注入し、高圧窒素でオートクレーブに加え、この時点を反応開始時刻とした。反応開始4分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた(以下、初期洗浄とその時間-2)。反応開始30分後に0.1mLのtBA(0.7mmol)を触媒シリンダーに投入し、さらに1mLのトルエンを非常にゆっくり加えた後、高圧窒素で当該溶液をオートクレーブに加えた。反応開始31分後に、触媒シリンダーを3mLのトルエンで洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。反応開始60分後(以下、反応時間-2)に3mLの1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)(以下、反応停止剤)を高圧窒素で加えて反応を停止し、エチレンを脱圧した。
精製方法:当該オートクレーブを室温に戻し、アセトン100mLを加えた。析出した固体を濾過により回収し、固体をアセトン100mLで2回洗浄し、減圧乾燥した。得られたポリマーは0.70gであった。
【0192】
[実施例4]
Ni(cod)を69.2mg(0.25mmol)、AL-29を11.8mg(0.022mmol)、AL-29に加えたNi(cod)のトルエン溶液を22mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って22mLの触媒溶液(AL-29濃度:約1mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行い、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、0.46gのポリマーを得た。
トルエン-2:88mL
コモノマーとその添加量-2:ノルボルネンのトルエン溶液(0.318g/g、3.89g、13mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:添加せず
窒素圧-2:0.2MPa
エチレン圧-2:0.8MPa(内圧1.0MPa)
初期触媒-2:触媒溶液1mLを注入し、続いてトルエン2mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。
初期洗浄とその時間-2:なし
触媒の追加:反応開始10分後に触媒溶液1mLを触媒シリンダーに加え、高圧窒素でオートクレーブに追加した。さらに、反応開始15分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄した洗浄液を高圧窒素でオートクレーブに追加した。
反応時間-2:30分
【0193】
[実施例5]
Ni(cod)を68.7mg(0.25mmol)、AL-29を12.0mg(0.022mmol)、AL-29に加えたNi(cod)のトルエン溶液を22mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って22mLの触媒溶液(AL-29濃度:約1mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行い、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、0.80gのポリマーを得た。
トルエン-2:88mL
コモノマーとその添加量-2:炭酸ビニレン(1.3mL、21mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:0.1mL(0.010mmol)
窒素圧-2:加圧せず
エチレン圧-2:2.5MPa
初期洗浄とその時間-2:反応開始2分後にトルエン3mL
触媒の追加:反応開始7分後、18分後にそれぞれ触媒溶液2mL、3mLを触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始11分後、20分後にそれぞれトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
反応時間-2:35分
精製方法:アセトン100mLでポリマーを析出後、ポリマーに100mLのアセトンと1mLの10wt%塩酸水溶液を加え、1晩冷蔵庫で保管した。その後、ポリマーをアセトン100mLで2回洗浄した。
【0194】
[実施例6]
Ni(cod)を68.9mg(0.25mmol)、AL-29の代わりに合成例2で得られたAL-36を11.6mg(0.022mmol)、AL-36に加えたNi(cod)のトルエン溶液を22mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って22mLの触媒溶液(AL-36濃度:約1mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行い、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、1.52gのポリマーを得た。
トルエン-2:93mL
コモノマーとその添加量-2:tBA(0.3mL、2.1mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:0.1mL(0.010mmol)
初期触媒-2:触媒溶液0.5mLを注入し、続いてトルエン3mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。
初期洗浄とその時間-2:なし
触媒の追加:反応開始5分後に触媒溶液0.5mLを触媒シリンダーに注入し、さらにトルエン3mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素でオートクレーブに追加した。
【0195】
[実施例7]
Ni(cod)を11.2mg(0.04mmol)、トルエンを4mL、AL-36を10.6mg(0.02mmol)、AL-36に加えたNi(cod)のトルエン溶液を2mLに変更した以外は、実施例6と同様に行って2mLの溶液(AL-36濃度:約10mM)を調製した。その後、この溶液に18mLのトルエンを加えて20mLの触媒溶液を調製した(AL-36濃度:約1mM)。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行い、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、1.80gのポリマーを得た。
トルエン-2:93mL
コモノマーとその添加量-2:tBA(0.3mL、2.1mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:0.1mL(0.010mmol)
初期触媒-2:触媒溶液1mLを注入し、続いてトルエン2mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。
初期洗浄とその時間-2:なし
触媒の追加:反応開始6分後、17分後にそれぞれ触媒溶液2mLを触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始32分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
【0196】
[実施例8]
Ni(cod)の代わりにNi(acac)を10.2mg(0.04mmol)、トルエンを8mL、AL-36を10.6mg(0.02mmol)、AL-36に加えた金属化合物のトルエン溶液を4mLに変更した以外は、実施例6と同様に行って4mLの溶液(AL-36濃度:約5mM)を調製した。その後、この溶液に16mLのトルエンを加えて20mLの触媒溶液を調製した(AL-36濃度:約1mM)。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行い、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、2.10gのポリマーを得た。
トルエン-2:93mL
コモノマーとその添加量-2:tBA(0.3mL、2.1mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:0.2mL(0.020mmol)
初期触媒-2:触媒溶液1mLを注入し、続いてトルエン2mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。
初期洗浄とその時間-2:なし
触媒の追加:反応開始6分後、19分後にそれぞれ触媒溶液3mL、2mLを触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始22分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
【0197】
[実施例9]
Ni(cod)の代わりにNi(acac)を10.2mg(0.04mmol)、トルエンを8mL、AL-36を16.1mg(0.03mmol)、AL-36に加えた金属化合物のトルエン溶液を6mLに変更した以外は、実施例6と同様に行って6mLの触媒溶液(AL-36濃度:約5mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、重合条件を下記のように変更した以外は実施例2と同様に重合操作を行い、6.62gのポリマーを得た。
トルエン-1:950mL
初期触媒-1:触媒溶液4mLを注入し、続いてトルエン8mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。
初期洗浄とその時間-1:反応開始5分後にトルエン10mLで触媒シリンダーを洗浄した。
触媒の追加-1:触媒の追加は行わなかった。
反応時間-1:60分
【0198】
[実施例10]
合成例3で得られたAL-36/NiMePyを16.5mg(0.024mmol)量り取り、12mLのトルエンを加えて金属錯体溶液(以下触媒溶液という)を作成した(AL-36濃度:約2mM)。
上記で調製した触媒溶液を用いて、重合条件を下記のように変更した以外は実施例2と同様に重合操作を行い、12.3gのポリマーを得た。
トルエン-1:950mL
コモノマーとその添加量-1:tBA(2.9mL、20mmol)を触媒シリンダーに注入し、次にトルエン9mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素で当該溶液をオートクレーブに加えた。触媒シリンダーの洗浄は行わなかった
TNOAの添加量-1:1.0mL(0.10mmol)のTNOAを触媒シリンダーに注入し、次にトルエン10mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素で当該溶液をオートクレーブに加えた。
初期触媒-1:触媒溶液2mLを注入し、続いてトルエン10mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。
初期洗浄とその時間-1:反応開始2分後にトルエン10mLで触媒シリンダーを洗浄した。
触媒の追加-1:反応開始17分後に触媒溶液3mLを触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始19分後にトルエン10mLで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
反応時間-1:60分
【0199】
[実施例11]
Ni(cod)を69.3mg(0.25mmol)、トルエンを10mL、AL-36を10.5mg(0.02mmol)、AL-36に加えたNi(cod)のトルエン溶液を8mLに変更した以外は、実施例6と同様に行って8mLの触媒溶液(AL-36濃度:約2.5mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、1.16gのポリマーを得た。
トルエン-2:93mL
コモノマーとその添加量-2:tBA(1.2mL、8.3mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:0.25mL(0.025mmol)
初期触媒-2:触媒溶液2mL
初期洗浄とその時間-2:反応開始3分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄した。
精製方法:アセトン100mLでポリマーを析出後、ポリマーに100mLのアセトンと1mLの塩酸水溶液(10wt%)を加え、1晩冷蔵庫で保管した。その後、ポリマーをアセトン100mLで2回洗浄した。
【0200】
[実施例12]
Ni(cod)を99.5mg(0.36mmol)、トルエンを9mL、AL-36を14.9mg(0.028mmol)、AL-36に加えたNi(cod)のトルエン溶液を7mLに変更した以外は、実施例6と同様に行って7mLの触媒溶液(AL-36濃度:約4mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、0.54gのポリマーを得た。
トルエン-2:93mL
コモノマーとその添加量-2:MA(0.3mL、3.3mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:1.0mL(0.10mmol)
初期触媒-2:触媒溶液2.5mL
初期洗浄とその時間-2:反応開始2分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄した。
反応停止剤:1,2-ブタンジオールのトルエン溶液に代えて、1.0mLの重酢酸のトルエン溶液(2M)を加えた。
【0201】
[実施例13]
Ni(cod)を69.0mg(0.25mmol)、AL-36を12.0mg(0.022mmol)、AL-36に加えたNi(cod)のトルエン溶液を22mLに変更した以外は、実施例6と同様に行って22mLの触媒溶液(AL-36濃度:約1mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行い、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、1.57gのポリマーを得た。
トルエン-2:88mL
コモノマーとその添加量-2:ノルボルネンのトルエン溶液(約4.6mL、0.318g/g、4.23g、14mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:添加せず
窒素圧-2:0.2MPa
エチレン圧-2:0.8MPa(内圧1.0MPa)
初期触媒-2:触媒溶液1mLを注入し、続いてトルエン2mLを非常にゆっくり加え、高圧窒素でオートクレーブに加えた。
初期洗浄とその時間-2:なし
触媒の追加:反応開始6分後、8分後、14分後にそれぞれ触媒溶液2mLを触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。さらに、反応開始20分後に触媒溶液3mLを触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始15分後、22分後にそれぞれトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
反応時間-2:37分
【0202】
[実施例14]
AL-36を11.7mg(0.022mmol)、AL-36に加えたNi(cod)のトルエン溶液を22mLに変更した以外は、実施例6と同様に行って22mLの触媒溶液(AL-36濃度:約1mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、1.16gのポリマーを得た。
トルエン-2:94mL
コモノマーとその添加量-2:炭酸ビニレン(1.3mL、21mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:0.1mL(0.010mmol)
窒素圧-2:0MPa
エチレン圧-2:2.5MPa
初期触媒-2:触媒溶液1mL
触媒の追加:反応開始11分後に触媒溶液1mLを触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始14分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
反応時間-2:30分
【0203】
[実施例15]
Ni(cod)を66.2mg(0.24mmol)、トルエンを24mL、AL-29の代わりに合成例4で得られたAL-52を10.8mg(0.020mmol)、AL-52に加えたNi(cod)のトルエン溶液を20mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って20mLの触媒溶液(AL-52濃度:約1mM)を調製した。
2.4Lのオートクレーブにトルエンを1000mL加え、オートクレーブ内を90℃に昇温した。このオートクレーブの内圧が0.5MPaになるように窒素を加えた。続いて、オートクレーブの内圧が3.0MPaになるようにエチレンを加えた。触媒シリンダーに1.0mLの上記触媒溶液を注入し、次に10mLのトルエンを非常にゆっくり加えて静置した。高圧窒素で当該溶液をオートクレーブに加え、この時点を反応開始時刻とした。反応開始4分後に触媒シリンダーを10mLのトルエンで洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。反応開始5分後に10mLの1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)を加えて反応を停止し、エチレンを脱圧した。当該オートクレーブを室温に戻し、アセトン1000mLを加えた。析出した固体を、濾過により回収し、固体をアセトン1000mLで2回洗浄し、減圧乾燥した。得られたポリマーは14.6gであった。
【0204】
[実施例16]
Ni(cod)の代わりにNi(acac)を15.4mg(0.060mmol)、トルエンを6mL、AL-29の代わりに合成例5で得られたAL-61を17.0mg(0.040mmol)、AL-61に加えたNi(acac)のトルエン溶液を4mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って4mLの触媒溶液(AL-61濃度:約10mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行い、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、2.78gのポリマーを得た。
トルエン-2:94mL
コモノマーとその添加量-2:MA(0.3mL、3.3mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:1.0mL(0.10mmol)
窒素圧-2:0.5MPa
エチレン圧-2:2.5MPa
初期触媒-2:触媒溶液1mL
触媒の追加:反応開始9分後に触媒溶液1mLを触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。
初期洗浄とその時間-2:反応開始15分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄した
反応時間:36分
反応停止剤:1,2-ブタンジオールのトルエン溶液に代えて、0.5mLの重酢酸のトルエン溶液(2M)を加えた。
【0205】
[実施例17]
Ni(cod)の代わりにNi(acac)を15.8mg(0.060mmol)、トルエンを6mL、AL-29の代わりに合成例6で得られたAL-62を20.9mg(0.040mmol)、AL-62に加えたNi(acac)のトルエン溶液を4mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って4mLの触媒溶液(AL-62濃度:約10mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、0.38gのポリマーを得た。
トルエン-2:92mL
コモノマーとその添加量-2:MA(0.9mL、10mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:1.5mL(0.15mmol)
窒素圧-2:0.5MPa
エチレン圧-2:2.5MPa
初期洗浄とその時間-2:反応開始2分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄した。
反応停止剤:1,2-ブタンジオールのトルエン溶液に代えて、1.5mLの重酢酸のトルエン溶液(2M)を加えた。
【0206】
[実施例18]
Ni(cod)の代わりにNi(acac)を15.4mg(0.060mmol)、トルエンを6mL、AL-29の代わりに合成例7で得られたAL-68を16.7mg(0.040mmol)、AL-68に加えたNi(acac)のトルエン溶液を4mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って4mLの触媒溶液(AL-68濃度:約10mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、0.98gのポリマーを得た。
トルエン-2:93mL
コモノマーとその添加量-2:MA(0.3mL、3.3mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:1.0mL(0.10mmol)
窒素圧-2:0.5MPa
エチレン圧-2:2.5MPa
初期触媒-2:触媒溶液1mL
初期洗浄とその時間-2:反応開始2分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄した。
反応停止剤:1,2-ブタンジオールのトルエン溶液に代えて、1.0mLの重酢酸のトルエン溶液(2M)を加えた。
【0207】
[実施例19]
Ni(cod)の代わりにNi(acac)を22.8mg(0.090mmol)、トルエンを9mL、AL-29の代わりに合成例8で得られたAL-69を29.1mg(0.070mmol)、AL-69に加えたNi(acac)のトルエン溶液を7mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って7mLの触媒溶液(AL-69濃度:約10mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、重合条件を下記のように変更した以外は実施例3と同様に重合操作を行い、2.36gのポリマーを得た。
トルエン-2:93mL
コモノマーとその添加量-2:MA(0.3mL、3.3mmol)、その後、コモノマーの追加は行わなかった。
TNOAの添加量-2:1.5mL(0.15mmol)
窒素圧-2:0.5MPa
エチレン圧-2:2.5MPa
初期洗浄とその時間-2:反応開始2分後にトルエン3mLで触媒シリンダーを洗浄した
反応時間:32分
【0208】
[実施例20]
Ni(cod)を16.7mg(0.060mmol)、トルエンを6mL、AL-29の代わりに合成例5で得られたAL-61を17.2mg(0.040mmol)、AL-61に加えたNi(cod)のトルエン溶液を4mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って4mLの触媒溶液(AL-61濃度:約10mM)を調製した。
0.2Lのオートクレーブにトルエンを50mL(以下、トルエン-3)加え、オートクレーブ内を50℃に昇温した。続いて、プロピレンを25g加えた。触媒シリンダーに2mLの上記触媒溶液(以下、初期触媒-3)を注入し、高圧窒素でオートクレーブに加え、この時点を反応開始時刻とした。反応開始2分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた(初期洗浄とその時間-3)。反応開始60分後に3mLの1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)を加えて反応を停止し、プロピレンを脱圧した。回収したトルエン溶液を濃縮し、黄色の油状ポリマーを得た。得られた油状ポリマーを10mLのヘプタンに溶解させ、ISOLUTE(登録商標)SCX-2(Biotage社製)を100mg加えた。得られた混合物を80℃で一時間撹拌し、SCX-2をろ過で取り除き、エバポレーターで濃縮して無色透明のポリマーを得た。このポリマーを80℃で3時間以上真空乾燥し、4.97gのポリマーを得た。
【0209】
[実施例21]
Ni(cod)を16.7mg(0.060mmol)、トルエンを6mL、AL-29の代わりに合成例7で得られたAL-68を16.3mg(0.040mmol)、AL-68に加えたNi(cod)のトルエン溶液を4mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って4mLの触媒溶液(AL-68濃度:約10mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行った以外は、実施例20と同様に重合操作を行い、3.23gのポリマーを得た。
触媒の追加:反応開始12分後に1.2mLの触媒溶液を触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始14分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
【0210】
[実施例22]
Ni(cod)を25.0mg(0.090mmol)、トルエンを9mL、AL-29の代わりに合成例7で得られたAL-68を28.7mg(0.070mmol)、AL-68に加えたNi(cod)のトルエン溶液を7mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って7mLの触媒溶液(AL-68濃度:約10mM)を調製した。
0.2Lのオートクレーブにトルエンを43mL加えた。試薬投入口からMUを1.1mL(4.9mmol)、Al(OiPr)のトルエン溶液(0.1M)を0.6mL加えた。プロピレンを25g加え、オートクレーブ内を50℃に昇温した。触媒シリンダーに3mLの上記触媒溶液を注入し、高圧窒素でオートクレーブに加え、この時点を反応開始時刻とした。反応開始2分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。反応開始20分後に触媒シリンダーに3mLの触媒溶液を注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始22分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。反応開始60分後に3mLの1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)を加えて反応を停止し、プロピレンを脱圧した。回収したトルエン溶液を濃縮し、黄色の油状液体を得た。この油状液体に10mLのヘプタンを加え、ISOLUTE(登録商標)SCX-2(Biotage社製)を100mg加えた。得られた混合物を80℃で1時間撹拌し、SCX-2をろ過で取り除き、エバポレーターで濃縮して無色透明の液体を得た。得られた液体を120℃に加熱し、15分真空乾燥し、ポリマーを得た。続いて、得られたポリマーを150℃に熱し、50分真空乾燥して3.45gのポリマー(ただし、MU残存量2.4mol%)を得た。
【0211】
[実施例23]
Ni(cod)を16.7mg(0.060mmol)、トルエンを6mL、AL-29の代わりに合成例8で得られたAL-69を16.8mg(0.040mmol)、AL-69に加えたNi(cod)のトルエン溶液を4mLに変更した以外は、実施例1と同様に行って4mLの触媒溶液(AL-69濃度:約10mM)を調製した。
上記で調製した触媒溶液を用いて、触媒の追加を下記のように行い、重合条件を下記のように変更した以外は実施例20と同様に重合操作を行い、3.74gのポリマーを得た。
初期触媒-3:1mL
初期洗浄とその時間-3:反応開始3分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
触媒の追加:反応開始7分後に1.5mLの触媒溶液を触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始8分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。
【0212】
[比較例1]
フラスコにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン92.6mg(0.18mmol)を量り取り、6mLのトルエンを加えて溶解させた。別のフラスコにAL-2alを13.0mg(0.03mmol)量り取り、これにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのトルエン溶液を5mL加えた。この溶液を室温で30分間攪拌させ、触媒溶液(6mM)を調製した。
0.2Lのオートクレーブにトルエンを92mL加え、オートクレーブ内を90℃に昇温した。このオートクレーブの内圧が0.5MPaになるように窒素を加えた。続いて、オートクレーブの内圧が3.0MPaになるようにエチレンを加えた。上記触媒溶液0.5mLと2.5mLのトルエンを触媒シリンダーに加えて、3.3MPaの窒素でオートクレーブに加え、この時点を反応開始時刻とした。反応開始5分後、12分後にそれぞれ1.0mL、2.5mLの触媒溶液を追加した。反応開始16分後に触媒シリンダーを3mLのトルエンで洗浄し、洗浄液をオートクレーブに加えた。反応開始60分後に1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)を加えて反応を停止し、エチレンを脱圧した。当該オートクレーブを室温に戻し、アセトン(100mL)を加えた。析出した固体を、濾過により回収し、固体をアセトンで洗浄し(100mL×2)、減圧乾燥した。得られたポリマーは0.57gであった。
【0213】
[比較例2]
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを383.5mg(0.75mmol)、トルエンを15mL、AL-2alを25.9mg(0.06mmol)、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのトルエン溶液を6mLに変更した以外は、比較例1と同様にして触媒溶液(10mM)を調製した。
0.2Lのオートクレーブにトルエンを91mL、tBAを0.3mL(2.1mmol)加え、TNOAのトルエン溶液(0.1M)を100μL加え、オートクレーブ内を90℃に昇温した。
このオートクレーブの内圧が0.5MPaになるように窒素を加えた。続いて、オートクレーブの内圧が3.0MPaになるようにエチレンを加えた。上記触媒溶液2.5mLを触媒シリンダーに加えて、3.3MPaの窒素でオートクレーブに加えた時点を反応開始時刻とした。反応開始3分後に2.5mLの触媒溶液を追加した。反応開始6分後に触媒シリンダーを3mLのトルエンで洗浄し、洗浄液をオートクレーブに加えた。反応開始60分後に1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)を加えて反応を停止し、エチレンを脱圧した。当該オートクレーブを室温に戻し、アセトン(100mL)を加えた。析出した固体を、濾過により回収し、固体をアセトンで洗浄し(100mL×2)、減圧乾燥した。得られたポリマーは0.016gであった。
【0214】
[比較例3]
フラスコにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン384.0mg(0.75mmol)を量り取り、15mLのトルエンを加えて溶解させた。別のフラスコにAL-2alを26.0mg(0.06mmol)量り取り、これにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのトルエン溶液を6mL加えた。この溶液を室温で30分間攪拌させ、触媒溶液(10mM)を調製した。
0.2Lのオートクレーブにトルエンを50mL、プロピレンを25g加え、オートクレーブ内を50℃に昇温した。触媒シリンダーに2.5mLの上記触媒溶液を注入し、高圧窒素でオートクレーブに加え、この時点を反応開始時刻とした。反応開始4分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。反応開始8分後に2.5mLの上記触媒溶液を触媒シリンダーに注入し、高圧窒素でオートクレーブに加えた。反応開始10分後に3mLのトルエンで触媒シリンダーを洗浄し、高圧窒素で洗浄液をオートクレーブに加えた。反応開始60分後に3mLの1,2-ブタンジオールのトルエン溶液(0.2M)を加えて反応を停止し、プロピレンを脱圧した。当該オートクレーブを室温に戻し、トルエンを留去して油状のポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンは、大気下でシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン100%)により精製した。得られた油状の物質を減圧乾燥し、0.021gのポリプロピレンを得た。
【0215】
以上の実施例1~19の重合条件を表1に、得られた結果を表2に、実施例20~23の重合条件を表3に、得られた結果を表4に、比較例1~3の重合条件を表5に、及び得られた結果を表6または7にまとめた。なお、表中「n.m.」は、未測定(測定に充分なサンプル量が得られなかった)を意味する。
【0216】
【表1】
【0217】
【表2】
【0218】
【表3】
【0219】
【表4】
【0220】
【表5】
【0221】
【表6】
【0222】
【表7】
【0223】
前記本発明の実施例と比較例との比較により、本発明の配位子として用いられ得る新規な化合物、当該新規な化合物を用いた金属錯体、オレフィン重合用触媒組成物、及びオレフィン重合用触媒、並びに、当該触媒を用いたオレフィン系重合体の製造方法によれば、活性や分子量などの触媒性能が改善されて、オレフィンの重合又は共重合に使用できる、中でも極性基含有モノマーおよび環状オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のモノマーと、非環状オレフィンを共重合できることが明らかにされた。