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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052630
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】害虫忌避エアゾール剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/18 20060101AFI20240404BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20240404BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20240404BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20240404BHJP
   A01N 47/16 20060101ALI20240404BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A01N37/18 Z
A01P17/00
A01N25/06
A01N37/46
A01N47/16 A
A01M7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169934
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022157276
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹邉 達志
(72)【発明者】
【氏名】延原 健二
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CB24
4H011AC06
4H011BB06
4H011BB13
4H011DA21
4H011DB05
(57)【要約】
【課題】最大噴射圧が低減された使用感のやさしい、具体的には、噴口から15cmの距離にある直径40mmと直径60mmの円盤に対する噴射圧比が特定の範囲である、害虫忌避エアゾール剤を提供すること。
【解決手段】害虫忌避成分を含有し、その比重が0.80~1.02のエアゾール原液と、噴射剤として圧縮ガスを含有するエアゾール組成物を、下記メカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンを備えたエアゾール容器内に充填した、下記噴射圧比(15cm)が0.5~1.50である害虫忌避エアゾール剤。
メカニカルブレークアップ機構:噴射ノズル内に噴射溝が形成されており、その溝の最小幅が0.1~0.6mmの範囲のもの
噴射圧比(15cm)=φ40(15cm)/φ60(15cm)
φ40(15cm):噴口から15cmの距離にある直径40mmの円盤に対して、3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN/cm
φ60(15cm):噴口から15cmの距離にある直径60mmの円盤に対して、3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN/cm
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫忌避成分を含有し、その比重が0.80~1.02のエアゾール原液と、
噴射剤として圧縮ガスを含有するエアゾール組成物を、
下記メカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンを備えたエアゾール容器内に充填した、
下記噴射圧比(15cm)が0.5~1.50である害虫忌避エアゾール剤。
メカニカルブレークアップ機構:噴射ノズル内に噴射溝が形成されており、その溝の最小幅が0.1~0.6mmの範囲のもの
噴射圧比(15cm)=φ40(15cm)/φ60(15cm)
φ40(15cm):噴口から15cmの距離にある直径40mmの円盤に対して、3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN/cm
φ60(15cm):噴口から15cmの距離にある直径60mmの円盤に対して、3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN/cm
【請求項2】
10秒間あたりの噴射量が4.5~20.0gである、請求項1に記載の害虫忌避エアゾール剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の害虫忌避エアゾール剤を用いた、害虫の忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最大噴射圧が低減された使用感のやさしい害虫忌避エアゾール剤及び害虫の忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの吸血性害虫は、人や動物に病原体を媒介して感染症を引き起こすほか、皮膚の炎症などを引き起こす。特に、蚊は、デング熱、ジカ熱、黄熱病、脳炎、マラリアなど人に深刻な疾病を媒介しているため、衛生学的に非常に有害な害虫である。これらの吸血性害虫からの被害を防ぐために、従来から、N,N-ジエチル-m-トルアミドなどの害虫忌避成分を含有した害虫忌避剤が広く用いられており、その使用感を高めるために、様々な提案がなされている(例えば、特許文献1、2等)。
害虫忌避剤の中でもエアゾール剤は、噴射剤として液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の液化ガスを使用したエアゾール剤が主流である。しかしながら、液化ガスを使用した害虫忌避エアゾール剤は塗布面に対する噴射圧が高く、特に、小児や幼児は塗布面が小さいことから、塗布面の広い成人と比較してエアゾール剤の噴射圧を強く感じてしまうという問題があった。
このような状況から、最大噴射圧が低減された使用感のやさしい害虫忌避エアゾール剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-292704号公報
【特許文献2】特開平07-126104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、最大噴射圧が低減された使用感のやさしい、具体的には、噴口から15cmの距離にある直径40mmと直径60mmの円盤に対する噴射圧比(15cm)が特定の範囲である、害虫忌避エアゾール剤の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の比重であるエアゾール原液、圧縮ガスを含有する噴射剤及び、噴射ノズル内に特定の溝幅の噴射溝が形成されたメカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンを備えたエアゾール容器を採用することにより、噴口から15cmの距離にある直径40mmと直径60mmの円盤に対する噴射圧比(15cm)が特定の範囲にある、最大噴射圧が低減された使用感のやさしい害虫忌避エアゾール剤とし得ることを新たに見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.害虫忌避成分を含有し、その比重が0.80~1.02のエアゾール原液と、
噴射剤として圧縮ガスを含有するエアゾール組成物を、
下記メカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンを備えたエアゾール容器内に充填した、
下記噴射圧比(15cm)が0.5~1.50である害虫忌避エアゾール剤。
メカニカルブレークアップ機構:噴射ノズル内に噴射溝が形成されており、その溝の最小幅が0.1~0.6mmの範囲のもの
噴射圧比(15cm)=φ40(15cm)/φ60(15cm)
φ40(15cm):噴口から15cmの距離にある直径40mmの円盤に対して、3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN/cm
φ60(15cm):噴口から15cmの距離にある直径60mmの円盤に対して、3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN/cm
2.10秒間あたりの噴射量が4.5~20.0gである、1.に記載の害虫忌避エアゾール剤。
3.1.または2.に記載の害虫忌避エアゾール剤を用いた、害虫の忌避方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、塗布面の大きさに関わらず肌で感じる最大噴射圧が低減され、肌面に対してマイルドで、やさしい使用感を発揮するものである。
また、本発明の害虫忌避エアゾール剤は、従来の液化石油ガスを噴射剤とするエアゾール剤に比べて、害虫忌避成分の付着性に優れ、害虫忌避成分の塗布量のばらつきが生じ難く、塗布面全体に害虫忌避成分を均一に付着させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に関するエアゾールの噴射ボタンの断面図である。
図2】本発明に関するエアゾールの、噴射ノズル内に形成された噴射溝が4本の態様を示す噴射ノズル正面図である。
図3】本発明に関するエアゾールの、噴射ノズル内に形成された噴射溝が8本の態様を示す噴射ノズル正面図である。
図4】実施例における「付着量の確認試験2」の試験概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
<噴射圧比(15cm)>
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、最大噴射圧が低減された使用感のやさしいものであり、下記の噴射圧比(15cm)を0.5~1.50の範囲とすることにより実現される。
噴射圧比(15cm)=φ40(15cm)/φ60(15cm)
φ40(15cm):噴口から15cmの距離にある直径40mmの円盤に対して3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN)を、円盤面積(cm)で除した値である(mN/cm
φ60(15cm):噴口から15cmの距離にある直径60mmの円盤に対して3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN)を、円盤面積(cm)で除した値である(mN/cm
なお、上記最大噴射圧の測定時に使用した円盤は、金属製の円盤を使用した。
「最大噴射圧」とは、一定時間測定した噴射圧の最大値を意味し、本発明における「最大噴射圧が低減された」とは、噴射対象の塗布面に対する最大噴射圧が概略均一となること、さらに詳しくは、塗布面積による最大噴射圧の変動が抑制されたことを意味する。
前記噴射圧φ40(15cm)、φ60(15cm)は、本発明の害虫忌避エアゾール剤の噴口から水平方向に15cmの距離にデジタルフォースゲージ(例えば、株式会社イマダ製、型番:DST-2N)に装着した直径40mmまたは直径60mmの円盤を設置し、25℃の室温条件下で、前記円盤の中心に向かってエアゾール組成物を3秒間噴射した際の最大値の噴射圧(15cm)(mN)を、円盤の面積(12.56cm、28.26cm)で除して算出することにより得られる値である。
そして、本発明における噴射圧比(15cm)は、上記算出式のとおり、噴射圧φ40(15cm)を噴射圧φ60(15cm)で除した数値を意味する。
本発明における噴射圧比(15cm)は、0.50~1.50の範囲であることが好ましく、0.55~1.45の範囲であることがより好ましく、0.60~1.40の範囲であることがさらに好ましい。
【0010】
<噴射圧比(5cm)>
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、下記噴射圧比(5cm)を特定の範囲とすることが、より最大噴射圧が低減された使用感のやさしいものとする点において好ましい。
噴射圧比(5cm)=φ40(5cm)/φ60(5cm)
φ40(5cm):噴口から5cmの距離にある直径40mmの円盤に対して3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN)を、円盤面積(cm)で除した値である(mN/cm
φ60(5cm):噴口から5cmの距離にある直径60mmの円盤に対して3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN)を、円盤面積(cm)で除した値である(mN/cm
なお、上記最大噴射圧の測定時に使用した円盤は、金属製の円盤を使用した。
噴射圧比(5cm)における「最大噴射圧」は、噴射圧比(15cm)で説明した「最大噴射圧」と同じ定義を意味する。
前記噴射圧φ40(5cm)、φ60(5cm)は、本発明の害虫忌避エアゾール剤の噴口から水平方向に5cmの距離にデジタルフォースゲージ(例えば、株式会社イマダ製、型番:DST-2N)に装着した直径40mmまたは直径60mmの円盤を設置し、25℃の室温条件下で、前記円盤の中心に向かってエアゾール組成物を噴射した際の最大値の噴射圧(5cm)(mN)を、円盤の面積(12.56cm、28.26cm)で除して算出することにより得られる値である。
そして、本発明における噴射圧比(5cm)は、上記算出式のとおり、噴射圧φ40(5cm)を噴射圧φ60(5cm)で除した数値を意味する。
本発明における噴射圧比(5cm)は、1.0~2.0の範囲とすることが好ましく、1.05~1.95の範囲とすることがより好ましく、1.10~1.90の範囲とすることがさらに好ましい。
【0011】
<メカニカルブレークアップ機構>
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、メカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンを備えたエアゾール容器に、エアゾール組成物を充填したものである。
このメカニカルブレークアップ機構は、噴射ノズル内に噴射溝を形成して噴口付近でエアゾール組成物に旋回力を与え、噴口から噴射することにより噴射粒子の微細化を図るものである。
メカニカルブレークアップ機構の噴射溝を説明するために、本発明におけるエアゾールの噴射ボタンの断面図を図1に、噴射ノズル内に形成された噴射溝が4本、8本の態様を示す噴射ノズル正面図を図2、3に示す。
噴射ボタンは、エアゾール容器の開口を閉止するとともに、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を噴射するための部材である。噴射ボタンは、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すためのバルブ機構と、バルブ機構を作動するためのステム機構と、ステム機構と連動し、バルブ機構によって取り出されたエアゾール組成物を噴射するための噴射ノズルとを備える。図1は、噴射ノズルを取り付けて使用するツーピースボタン型の噴射ボタンを示す図面である。
本発明の害虫忌避エアゾール剤における噴射ノズルには、図2、3に噴射ノズル(全体)の正面図を示すとおり、エアゾール組成物を噴射するための噴口が、さらに、噴口に向けて外周から中心部の旋回室に連通する複数の噴射溝が形成されている。この噴射溝により、噴口付近でエアゾール組成物に旋回力を与えて、噴口からエアゾール組成物を噴射させることで噴射粒子を微細化するものである。
図2、3に示すとおり、噴射溝は、旋回室の外周部に対して略接線方向から接するように形成されて、旋回室にエアゾール組成物を接線方向に、図2では4方向から、図3では8方向から供給して旋回室で旋回流が形成されるようになっている。噴射溝は、旋回室との接続部に至るに従って細幅となるように形成されていても良い。
本発明における噴射溝の最小幅は、0.1~0.6mmの範囲のものであり、中でも0.5mm以下のものが好ましく、0.4mm以下のものがより好ましい。また、本発明における噴射溝は3~8本とすることが好ましい。
噴口の大きさは、直径0.05~1.0mmの範囲が好ましく、噴口は1つでも複数でも良い。
【0012】
本発明の害虫忌避エアゾール剤における噴射ボタンの形状は、特に限定されないが、トリガー部を備えたトリガータイプ、プッシュダウン部を備えたプッシュダウンタイプ等が挙げられる。
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、10秒間あたりの噴射量は、4.5~20.0gの範囲であることが好ましく、6.0~15.0gの範囲であることがより好ましく、6.0~10.0gの範囲であることがさらに好ましい。なお、本発明における、上記10秒間あたりの噴射量は、未使用時における噴射量を意味し、「未使用」とは、製造後使用されず、製造時の状態が維持された状態を意味する。
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、噴口から15cm離れた位置における体積平均粒子径(D50)が、50~150μmの範囲であることが好ましく、50~120μmの範囲であることがより好ましく、50~100μmの範囲であることがさらに好ましい。体積平均粒子径(D50)が50μm未満の場合は、周囲へ飛散しやすく、粒子を吸入してしまうリスクが高まる可能性がある。一方、平均粒子径が150μmより大きいと、肌で感じる噴射圧も大きくなってしまい、使用感を損なう恐れがあるほか、過剰量を肌に塗布してしまい、べたつきが生じてしまう恐れもある。
【0013】
<害虫忌避成分>
本発明における害虫忌避成分は、吸血性や刺咬性の害虫に対して忌避作用、吸血や刺咬阻害作用を有する公知の害虫忌避成分であれば、何れのものでも制限無く使用できる。具体的には、例えば、ディート(N,N-ジエチル-m-トルアミド)、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボン酸1-メチルプロピルエステル(以下、「イカリジン」と称する。)、p-メンタン-3,8-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-4-オキソ-2H-ピラン-6-カルボン酸ブチル、n-ヘキシルトリエチレングリコールモノエーテル、6-n-ペンチル-シクロヘキセン-1-カルボン酸メチル、ジメチルフタレート、ユーカリプトール、メントール、酢酸メンチル、α-ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、ターピネオール、カンファー、リナロール、テルペノール、カルボン、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ナフタレンなどが挙げられる。
この他にも、例えば、シトロネラ、ミント、ペパーミント、シダーウッド、ラベンダー、ティートゥリー、カモミール、桂皮、樟脳、レモングラス、クローバ、タチジャコウソウ、ゼラニウム、ベルガモット、月桂樹、松、アカモモ、ペニーロイヤル、ユーカリ、インドセダン、イランイランノキ、ブラッククミンシード、オレンジ、ローズマリーなどから抽出される精油やエキスなどを用いることができる。
さらに、例えば、アクリナトリン、アレスリン、ベータ-シフルトリン、ビフェントリン、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、エンペントリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フタルスリン、フルシトリネート、フルフェンプロックス、フルメトリン、フルバリネート、ハルフェンプロックス、ペルメトリン、プラレトリン、ピレトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、テトラメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ラムダシハロトリン、ガンマシハロトリン、フラメトリン、タウフルバリネート、メトフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン、レスメトリン等のピレスロイド系化合物を用いることができる。これらの化合物には、光学異性体、立体異性体等が存在する場合があるが、本発明は、これら異性体の単独または2以上の異性体を任意の割合で含む混合物をも含むものである。
これらの中でも汎用性及び効果の有効性等の観点から、ディート、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル及びイカリジンからなる群から選択される1種以上の害虫忌避成分を含有することが好ましい。
本発明の害虫忌避エアゾール剤における、害虫忌避成分の含有量は特に制限がなく適宜決定すればよいが、エアゾール原液全量に対して、0.01~70w/v%含有することが好ましく、0.01~50w/v%含有することがより好ましく、0.01~30w/v%含有することがさらに好ましい。0.01w/v%以上とすることにより、優れた害虫忌避効果が得られるために好ましく、70w/v%以下とすることにより、べたつきが少なくなるためにより好ましい。
【0014】
<エアゾール原液>
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、エアゾール原液と噴射剤とからなる。本発明におけるエアゾール原液は、害虫忌避成分を含有し、その比重が0.80~1.02の範囲であり、0.81~1.01の範囲であることが好ましい。
本発明におけるエアゾール原液を調製するには、前記害虫忌避成分を溶媒中に分散、乳化、可溶化または溶解させればよい。
溶媒としては、例えば、水道水、精製水、イオン水等の水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコールなど)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(エチルエーテルなど)、脂肪族炭化水素類(例えばn-ヘキサン、ケロシン、灯油、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は1種または2種以上を混合して使用することができる。これらの溶媒のうち、エタノール、1,3-ブチレングリコール、あるいは、エタノールまたは1,3-ブチレングリコールを主溶媒とする混合溶媒を使用することが好ましく、エタノールあるいはエタノールを主溶媒とする混合溶媒を使用することがより好ましい。
【0015】
本発明におけるエアゾール原液を調製するにあたり、必要に応じてノニオン系、アニオン系、カチオン系等の界面活性剤を配合することができる。具体的には、例えばアルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、多価アルコールエステル類及び糖アルコール誘導体等のノニオン系界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウムハライド等のカチオン系界面活性剤が挙げられる。その中でも、本発明の害虫忌避剤を含有するエアゾール原液を水性溶液とする場合は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体類、グリセリン脂肪酸エステル類、アルキルグリセリルエーテル類、ポリオキシエチレングリセリルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤を配合することが好ましい。
本発明におけるエアゾール原液は、さらに必要に応じて、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、メチルポリシロキサン等の潤滑剤、タルク、珪酸等の無機粉体、殺菌成分、防カビ成分、消臭成分、芳香成分、香料、色素、pH調整剤、感触付与剤、UV吸収抑制剤等の成分を適宜添加し得る。これらの成分は、この分野で慣用されているものを使用することができる。
【0016】
<噴射剤>
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、噴射剤として圧縮ガスを含有するものである。圧縮ガスであれば特に限定されず、例えば、炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素、圧縮空気などが挙げられる。圧縮ガスの充填量は、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.3~1.0MPaの範囲が好ましく、0.4~0.9MPaの範囲がより好ましく、0.5~0.8MPaの範囲がさらに好ましい。上記圧力が0.3MPa未満となる充填量であると、害虫忌避エアゾール剤は、液だれ等が発生し、商品性を損なう恐れがある。一方、上記圧力が1.0MPaを超える充填量である場合、害虫忌避組成物は、噴射直後の粒子径が小さくなり過ぎて周囲へ飛散する恐れや、噴射圧の増加による使用感の悪化が生じてしまう可能性がある。
本発明の効果を阻害しない範囲で、この分野における公知の噴射剤、例えば、ブタンガス、フロンガス、代替フロン(HFO、HFC)、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)等を併用しても良い。
【0017】
<害虫>
本発明における害虫は特に限定されず、例えば、アカイエカ、ネッタイイエカ、チカイエカ、コガタアカイエカ等のイエカ類、トラフカクイカ等のカクイカ類、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、トウゴウヤブカ、キンイロヤブカ、セスジヤブカ、オオクロヤブカ等のヤブカ類、アシマダラヌマカ等のヌマカ類、キンパラナガハシカ等のナガハシカ類、シナハマダラカ、コガタハマダラカ等のハマダラカ類、アシマダラブユ、キアシオオブユ等のブユ類、ウシアブ、イヨシロオビアブ等のアブ類、マダニ、イエダニ、ヒョウヒダニ、コナダニ、ツメダニ等のダニ類、サシチョウバエ類、ヌカカ類、ツェツェバエ類、ノミ類、シラミ類、トコジラミ類、サシガメ類、ツツガムシ類、ヤマビル類等の吸血性や刺咬性害虫、セスジユスリカ、オオユスリカ、アカムシユスリカ、シマユスリカ、オオヤマチビユスリカ等のユスリカ類、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、ヤマトゴキブリ、トビイロゴキブリなどのゴキブリ類、ハエ類、オオズアリ、クロヤマアリ、トビイロシワアリ、アミメアリ等のアリ類、シロアリ類、ハチ類、ゲジ類、ムカデ類、コクゾウムシ、コクヌストモドキ、タバコシバンムシ、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシなどの貯穀害虫類等が挙げられる。特に吸血性や刺咬性害虫が好適である。
【0018】
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、虫除けとしてヒトの皮膚や衣類に直接噴霧または、手のひらに直接噴霧したものを塗布して使用することが好適である。
さらに、本発明の害虫忌避エアゾール剤は、衣類に直接噴霧して使用するか、吸血性や刺咬性の害虫を防除したい空間にあるカーテンやソファー等の布帛製品に噴霧して使用してもよい。使用できる布帛製品としては、衣類、靴等の履物のほかに、主に屋内空間にあるカーテン、ソファー、クッション、カーペット、壁紙等、また車内にあるシート等を挙げることができる。屋外空間においても、テントやベビーカー等に使用できる。
【実施例0019】
以下、処方例及び試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
まず、本発明の害虫忌避エアゾール剤の試験検体例を示す。
【0020】
<噴射圧比の確認試験1>
(1)試験検体
・実施例1
ディート15gに無水エタノールを添加して全体量を150mLとしてエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液の比重は、0.83であった。
得られたエアゾール原液150mLを容器容量が330mLのエアゾール容器に封入後、25℃条件で内圧0.7MPaとなるように窒素を加圧充填し、噴射溝の最小幅が0.1mm、溝数が8本、噴口径が0.3mmの噴射ノズルを有する、メカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンをエアゾール容器に取り付けた。この害虫忌避エアゾール剤を実施例1の試験検体とした。
・実施例2~7、比較例1~3
下記表1の記載の処方に従い、害虫忌避エアゾール剤の実施例2~7、比較例1~3の試験検体を、上記実施例1と同様に調製した。
表1中の「化合物A」は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルを表す。
【0021】
(2)試験方法
実施例1~7、比較例1~3の各試験検体を、25℃の室温条件下で3秒間噴射して、噴口から水平方向に15cm、5cmの距離にデジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製、型番:DST-2N)に装着した直径60mm、直径40mmの円盤それぞれの噴射圧の最大値を測定した。
測定は3回行い、その平均値を各試験検体の噴射圧とした。
下記計算式に従い、各試験検体の噴射圧比(15cm)、噴射圧比(5cm)をそれぞれ算出した。
噴射圧比(15cm)=φ40(15cm)/φ60(15cm)
φ40(15cm):噴口から15cmの距離にある直径40mmの円盤に対して3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN)を、円盤面積(12.56cm)で除した値である(mN/cm
φ60(15cm):噴口から15cmの距離にある直径60mmの円盤に対して3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN)を、円盤面積(28.26cm)で除した値である(mN/cm
噴射圧比(5cm)=φ40(5cm)/φ60(5cm)
φ40(5cm):噴口から5cmの距離にある直径40mmの円盤に対して3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN)を、円盤面積(12.56cm)で除した値である(mN/cm
φ60(5cm):噴口から5cmの距離にある直径60mmの円盤に対して3秒間噴射した際の最大噴射圧(mN)を、円盤面積(28.26cm)で除した値である(mN/cm
また、実施例1~7、比較例1~3の各試験検体の10秒間あたりの噴射量を測定した。
各試験検体の処方と得られた試験データを、下記表1にまとめて示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示すとおり、本発明の具体例である実施例1~7の害虫忌避エアゾール剤は、比重が0.80~1.02の範囲であるエアゾール原液と、圧縮ガスを含有するエアゾール組成物を、特定のメカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンを備えたエアゾール容器内に充填することにより、噴射圧比(15cm)(φ40(15cm)/φ60(15cm))を0.5~1.50の範囲とすることができること、すなわち、塗布面の大きさに関わらず肌で感じる最大噴射圧が低減され、肌面に対してマイルドで、やさしい使用感を発揮することが確認された。
また、本発明の具体例である実施例1~7の害虫忌避エアゾール剤は、噴射圧比(5cm)(φ40(5cm)/φ60(5cm))が1.0~2.0の範囲となっており、噴射圧比(5cm)を特定の範囲とすることにより、塗布面の大きさに関わらず肌で感じる最大噴射圧が低減され、肌面に対してマイルドで、やさしい使用感を発揮する点において好適であることが確認された。
一方、エアゾール原液の比重が0.80~1.02の範囲から外れる比較例1~3の害虫忌避エアゾール剤は、噴射圧比(15cm)(φ40(15cm)/φ60(15cm))が1.50より大きくなることが、すなわち、塗布面が小さくとも肌で感じる噴射圧が大きく、使用感が悪いことが明らかとなった。
従来の害虫忌避エアゾールは、概略10~15cmの距離から塗布面へ噴射することが適切とされており、噴射距離の近い、例えば5cmの距離から塗布面への噴射は、10~15cmの距離から塗布面への噴射に比べて噴射圧は高くなる。一方、本発明の害虫忌避エアゾール剤は、噴射圧比(15cm)が0.5~1.50に設定されることにより、塗布面までの噴射距離の長短に関わらず、肌で感じる最大噴射圧が低減され、肌面に対してマイルドで、やさしい使用感となることが明らかとなった。加えて、噴射圧比(5cm)が1.0~2.0に設定されることにより、肌で感じる最大噴射圧がより低減され、肌面に対してよりマイルドで、よりやさしい使用感となることも明らかとなった。
【0024】
<噴射圧比の確認試験2>
(1)試験検体
上記「噴射圧比の確認試験1」の実施例2のエアゾール原液を使用し、エアゾール原液150mLと、圧縮ガスとして窒素(0.7MPa)とをエアゾール容器に収納し、表2に記載のメカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンをエアゾール容器に取り付け、実施例8~12、比較例4の試験検体を得た。
(2)試験方法
上記「噴射圧比の確認試験1」の試験方法と同様に、各試験検体の噴射圧比(15cm)(φ40(15cm)/φ60(15cm))と噴射圧比(5cm)(φ40(5cm)/φ60(5cm))を算出し、各試験検体の10秒間あたりの噴射量を測定した。
測定は3回行い、その平均値を各試験検体の噴射圧とした。
各試験検体のメカニカルブレークアップ機構と得られた試験データを、下記表2にまとめて示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示すとおり、本発明の具体例である実施例8~12の害虫忌避エアゾール剤は、噴射ノズル内の噴射溝の最小幅が0.1~0.6mmの範囲であるメカニカルブレークアップ機構を備えた噴射ボタンを有するエアゾール容器を用いることにより、噴射圧比(15cm)(φ40(15cm)/φ60(15cm))を0.5~1.50の範囲とすることができること、すなわち、塗布面の大きさに関わらず肌で感じる最大噴射圧が低減され、肌面に対してマイルドで、やさしい使用感を発揮することが確認された。
また、本発明の具体例である実施例8~12の害虫忌避エアゾール剤は、噴射圧比(5cm)(φ40(5cm)/φ60(5cm))が1.0~2.0の範囲となっており、噴射圧比(5cm)を特定の範囲とすることにより、塗布面の大きさに関わらず肌で感じる最大噴射圧が低減され、肌面に対してマイルドで、やさしい使用感を発揮する点において好適であることが確認された。一方、噴射ノズル内の噴射溝の最小幅が0.7mmであるメカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンを有するエアゾール容器を用いる比較例4の害虫忌避エアゾール剤は、噴射圧比(15cm)(φ40(15cm)/φ60(15cm))が1.50より大きくなることが、すなわち、塗布面が小さくとも肌で感じる噴射圧が大きく、使用感が悪いことが明らかとなった。
【0027】
<付着量の確認試験1>
(1)試験検体
上記「噴射圧比の確認試験1」の実施例2の害虫忌避エアゾール剤を、実施例13の試験検体とした。
ディート10gと、ジプロピレングリコール2gに、無水エタノールを添加して、全体量を100mLとしてエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液の比重は、0.85であった。
エアゾール缶に上記で得られたエアゾール原液40mLを充填し、エアゾールバルブ(噴口径:0.6mm×3個、メカニカルブレークアップ機構なし)を取り付けてクリンチし、エアゾールバルブを通して噴射剤である液化石油ガス(比重0.825、0.49MPa:25℃)160mLを圧入して比較例5の試験検体を得た。エアゾール原液と噴射剤の液ガス比(容量比)は原液/噴射剤=20/80であった。
(2)試験検体の物性
(ア)最大噴射圧(mN)
デジタルフォースゲージに装着したφ60mmの円盤に対して、各試験検体を15cmの距離から3秒間噴射して、その最大噴射圧(15cm)(mN)を測定した結果、実施例13の試験検体は12.7mNであり、比較例5の試験検体は69.0mNであった。
実施例13の試験検体の最大噴射圧(15cm)は、比較例5の試験検体の5分の1以下であった。
(イ)体積平均粒子径(D50)
粒度分布測定装置(レーザー光散乱方式粒度分布測定装置LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ製)を使用し、レーザー光発光部より受光部に照射されるレーザービームに対して約15cmの距離から各試験検体を噴射して、体積平均粒子径(D50)を測定した結果、実施例13の試験検体は69.2μmであり、比較例5の試験検体は18.2μmであった。
実施例13の試験検体の体積平均粒子径(D50)は、比較例5の試験検体の概略4倍程度であり、噴射粒子を吸い込みにくく噴射時むせづらい害虫忌避エアゾール剤といえる。
(ウ)噴口から5cmの距離における噴射圧比(5cm)
実施例13、比較例5の試験検体について、「噴射圧比の確認試験1の(2)試験方法」と同様に、噴口から5cmの距離における噴射圧比(5cm)を算出した。
その結果、実施例13の試験検体のφ40(5cm):0.93mN/cm、φ60(5cm):0.53mN/cm、噴射圧比(5cm):1.75であり、比較例5の試験検体のφ40(5cm):5.71mN/cm、φ60(5cm):2.43mN/cm、噴射圧比(5cm)は2.35であった。
【0028】
(3)試験方法
害虫忌避エアゾール剤の噴口から15cm先方に、9cm×9cmの正方形のろ紙中心に向けて、各試験検体を1秒間噴射した。そのろ紙を回収して、ろ紙をエタノールに浸し、15分間超音波抽出で有効成分であるディートを抽出し、ガスクロマトグラフィー(GC:GC-2014、島津製作所製、カラム:OV-17、GLサイエンス社製)によりディート付着量を算出した。
結果を下記表3にまとめて示す。
【0029】
【表3】
【0030】
表3に示すとおり、実施例13の試験検体のディート付着量は、比較例5の試験検体と比較し、概略2倍のディートが付着することが確認された。
この結果より、本発明の害虫忌避エアゾール剤は、従来の液化石油ガスを噴射剤とする比較例5の試験検体より、害虫忌避成分の付着性に優れることが明らかとなった。
【0031】
<付着量の確認試験2>
(1)試験検体
上記「付着量の確認試験1」の実施例13、比較例5の各試験検体を使用した。
(2)試験方法
害虫忌避エアゾール剤の噴口から15cm先方に、9区画(1区画:3cm×3cm)に分割できる9cm×9cmの正方形のろ紙中心に向けて、害虫忌避エアゾール剤を1秒間噴射した。試験概略図を図4に示す。
回収したろ紙の1区画毎に有効成分であるディートを、エタノールを使用して抽出し、上記「付着量の確認試験1」と同じガスクロマトグラフィーによりディート付着量を検出した。
9区画毎のディート検出量を、下記表4にまとめて示す。
【0032】
【表4】
【0033】
表4に示すとおり、実施例13の試験検体のディート付着量は、比較例5の試験検体と比較し、ムラなく塗布することが出来ることが確認された。
この結果より、本発明の害虫忌避エアゾール剤は、従来の液化石油ガスを噴射剤とする比較例5の試験検体より、害虫忌避成分をムラなく塗布することに優れることが明らかとなった。
【0034】
<最大噴射圧の官能評価試験>
(1)試験検体
上記「噴射圧比の確認試験1」の実施例2、比較例1の害虫忌避エアゾール剤と、上記「噴射圧比の確認試験2」の比較例4の害虫忌避エアゾール剤を、官能評価用の試験検体として使用した
(2)官能評価方法
上記3つの試験検体を用いて、実際に肌で感じる最大噴射圧について官能評価を行った。
実施例2、比較例1、4の試験検体を、それぞれ、15cmの距離から塗布面である肌に3秒間噴射して、肌で感じる最大噴射圧を下記[評価基準]に従い5段階で点数評価した。
5名の被験者が、それぞれ1回評価試験を行い、点数評価の平均点を算出した。
実施例2、比較例1、4の試験検体について、算出した点数評価の平均点を下記表5に示す。
なお、点数評価の平均点が「3」以上であれば、最大噴射圧が低減されているものと判断した。
[評価基準]
5点:肌への噴射時に、物理的な刺激を感じず、非常にやさしい噴霧使用感である。
4点:肌への噴射時に、物理的な刺激をほとんど感じず、やさしい噴霧使用感である。
3点:肌への噴射時に、物理的な刺激を少し感じる。
2点:肌への噴射時に、物理的な刺激をやや強く感じる。
1点:肌への噴射時に、物理的な刺激を強く感じる。
【0035】
【表5】
【0036】
表5に示すとおり、本発明の具体例である実施例2の害虫忌避エアゾール剤は、官能評価が「4.0」であり、肌への噴射時に、物理的な刺激をほとんど感じず、やさしい噴霧使用感であることが明らかとなった。すなわち、本発明の害虫忌避エアゾール剤は、最大噴射圧が低減され、肌面に対してマイルドで、やさしい使用感を発揮することが確認された。
これに対して、エアゾール原液の比重が0.80~1.02の範囲から外れる比較例1の害虫忌避エアゾール剤は、官能評価が「2.4」であり、肌への噴射時に、物理的な刺激を少しからやや強く感じるものであることが明らかとなった。
さらに、実施例2と同じエアゾール原液を使用し、噴射ノズル内の噴射溝の最小幅が0.1~0.6mmの範囲から外れる比較例4の害虫忌避エアゾール剤は、官能評価が「1.4」であり、肌への噴射時に、物理的な刺激をやや強くから強く感じるものであることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の害虫忌避エアゾール剤は、塗布面の大きさに関わらず肌で感じる最大噴射圧が低減され、肌面に対してマイルドで、やさしい使用感を発揮するものである。
しかも、本発明の害虫忌避エアゾール剤は、従来の液化石油ガスを噴射剤とするエアゾール剤に比べて、害虫忌避成分の付着性に優れ、害虫忌避成分塗布量のばらつきが生じ難く、塗布面全体に害虫忌避成分を均一に付着させることができるものであるから、極めて有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 噴射ボタン
2 噴射ノズル
3 噴射ノズル
4 噴射溝
5 噴口
6 旋回室
図1
図2
図3
図4