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特開2024-52633ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステル、その製造及び可塑剤としてのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052633
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステル、その製造及び可塑剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/34 20060101AFI20240404BHJP
   C08L 101/04 20060101ALI20240404BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240404BHJP
   C07C 67/03 20060101ALI20240404BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C07C69/34 CSP
C08L101/04
C08K5/10
C07C67/03
C07C67/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023170114
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】22199108
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス クラフト
(72)【発明者】
【氏名】イムケ シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル グラス
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB50
4H006AC48
4H006BC10
4H006KA03
4H006KA06
4J002AA011
4J002AA01W
4J002AB011
4J002AB01W
4J002AC001
4J002AC00W
4J002BB021
4J002BB02W
4J002BB061
4J002BB06W
4J002BC021
4J002BC02W
4J002BD021
4J002BD02W
4J002BE021
4J002BE02W
4J002BE061
4J002BE06W
4J002BF021
4J002BF02W
4J002BG021
4J002BG02W
4J002CF001
4J002CF00W
4J002CF181
4J002CF18W
4J002CK021
4J002CK02W
4J002CL001
4J002CL00W
4J002CM001
4J002CM00W
4J002CN021
4J002CN02W
4J002CP031
4J002CP03W
4J002EH096
4J002FD026
4J002GB01
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特性が改善されたブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルを提供する。
【解決手段】イソ-ペンチル基の45~60モル%が2-メチルブチル基である、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物を提供する。また、前記混合物を作製するためのプロセスであって、作製は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸をイソペンタノール混合物でエステル化するか、又は1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトラメチルエステルをイソペンタノール混合物でエステル交換することのいずれかによって行われる、プロセスを提供する。さらに、前記混合物の、ポリマー、又はPVC若しくはビニルクロリド含有コポリマーの可塑剤としての使用も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソ-ペンチル基の45~60モル%が2-メチルブチル基である、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物。
【請求項2】
イソ-ペンチル基の50~60モル%が2-メチルブチル基である、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
イソ-ペンチル基の40~55モル%が、n-ペンチル基、3-メチルブチル基、又はn-ペンチル基及び3-メチルブチル基の混合物である、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
イソ-ペンチル基の40~50モル%が、n-ペンチル基、3-メチルブチル基、又はn-ペンチル基及び3-メチルブチル基の混合物である、請求項2に記載の混合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物を作製するためのプロセスであって、作製は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸をイソペンタノール混合物でエステル化するか、又は1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトラメチルエステルをイソペンタノール混合物でエステル交換することのいずれかによって行われる、プロセス。
【請求項6】
エステル化中に形成される反応水を反応中に分離する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
エステル化が120℃~250℃の範囲の温度で行われる、請求項5又は6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物の、ポリマー、又はPVC若しくはビニルクロリド含有コポリマーの可塑剤としての使用。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の混合物における1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステル及び少なくとも1つのさらなる可塑化化合物の混合物を含む可塑剤組成物。
【請求項10】
さらなる可塑化化合物が、アジピン酸塩、安息香酸塩、例えばモノ安息香酸塩又はグリコールジ安息香酸塩、塩素化炭化水素(いわゆる塩素化パラフィン)、クエン酸塩、シクロヘキサンジカルボン酸塩、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化植物油、エポキシ化アシル化グリセリド、フランジカルボン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、スルホンアミド、スルホン酸塩、テレフタル酸塩、トリメリット酸塩、及びアジピン酸、コハク酸又はセバシン酸に基づくオリゴマー又はポリマーエステルからなる群から選択される、請求項9に記載の可塑剤組成物。
【請求項11】
5質量%未満、0.5質量%未満、又は0.1質量%未満のフタル酸エステルを含有する、請求項9又は10に記載の可塑剤組成物。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物又は請求項9~11のいずれか一項に記載の可塑剤組成物と、1つ以上のポリマーと、を含有するプラスチック組成物。
【請求項13】
1つ以上のポリマーが、PVC;炭素原子数1~10の分枝又は非分枝アルコール、アクリロニトリル又は環状オレフィンのアルコキシ基があるエチレン、プロピレン、ブタジエン、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート又はメタクリレートに基づくホモ又はコポリマー;ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリ尿素、シリル化ポリマー、フッ素ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチレンポリマー、ポリスチレン(PS)、発泡性ポリスチレン(EPS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン-無水マレイン酸コポリマー(SMA)、スチレン-メタクリル酸コポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリスルフィド(PSu)、バイオポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリエステル、デンプン、セルロース、セルロース誘導体、ニトロセルロース(NC)、エチルセルロース(EC)、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテート/ブチレート(CAB)、ゴム及びシリコーンからなる群から選択される、請求項12に記載のプラスチック組成物。
【請求項14】
1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物又は可塑剤組成物の量は、ポリマー100質量部当たり5~150質量部、10~120質量部、又は15~110質量部である、請求項12又は13に記載のプラスチック組成物。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか一項に記載のプラスチック組成物の、接着剤、シーリング組成物、コーティング組成物、ワニス、塗料、プラスチゾル、発泡体、合成皮革、床材、トップコート、屋根膜、下地保護材、布被覆、ケーブル、電線絶縁、ホース、押出成形品、フィルム、自動車内装材、壁紙、インク、玩具、コンタクトフィルム、食品包装又は医療品、チューブ又は血液バッグにおける、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステル、その作製、及びポリマー用の可塑剤又は可塑剤組成物の部分としてのその使用に関する。また、ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルを含む可塑剤組成物及びブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルを含むプラスチック組成物も開示される。
【背景技術】
【0002】
プラスチック又はポリマーの加工性を改善するために、及び/又は用途に関連した特性を適合させるために、多くの分野で可塑剤又は可塑剤組成物が添加される。フタル酸エステル類の化合物、特にフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)及びフタル酸ジイソデシル(DIDP)は、その有利な特性から、現在でもプラスチックやポリマー、特にPVCや塩化ビニルを含むコポリマーにとって最も重要な可塑剤の一つである。このクラスの物質の毒性学的影響の可能性が議論されており、フタル酸エステル系可塑剤の代替品が長年にわたり求められてきた。
【0003】
代替可塑剤としては、ブタンテトラカルボン酸のアルキルエステル等、様々な化合物が議論されており、これらは例えば特許文献1から当業者には公知である。そこに開示されているブタンテトラカルボン酸のアルキルエステルは、ベータ位で分岐したアルキル基の最大比率が40%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0257317号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルに関しては、驚くべきことに、全異性体ペンチル基に基づいて2-メチルブチル基の特定のモル比で改善された特性が生じることが見出された。したがって、本発明により解決された課題は、特性が改善されたブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の課題は、請求項1に記載の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項において特定される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の文脈では、用語「イソ-ペンチル」、「イソ-ペンチル基」等が用いられる。これは、本発明によるエステルが様々なペンチル異性体、特に2-メチルブチル及び/又は3-メチルブチル及び/又はn-ペンチルを含むことを強調する。したがって、用語「イソ-ペンチル」、「イソ-ペンチル基」等は、用語「ペンチル」と同義であると理解されるべきであり、単一の特定のC5-アルキル基を示すものではない。
【0008】
したがって、本発明は、イソ-ペンチル基の45~60モル%が2-メチルブチル基である、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物に関する。いずれの場合も百分率は、混合物中のイソ-ペンチル基の合計である。本発明の好ましい実施形態は、イソ-ペンチル基の50~60モル%が2-メチルブチル基である1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物を提供する。
本発明による1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物中の残りのイソ-ペンチル基は、好ましくはn-ペンチル基又は3-メチルブチル基であり、特に本発明による混合物中のイソ-ペンチル基の40~55モル%は、n-ペンチル基、3-メチルブチル基又はn-ペンチル基及び3-メチルブチル基との混合物である。本発明の好ましい実施形態では、イソ-ペンチル基の40~50モル%が、n-ペンチル基、3-メチルブチル基、又はn-ペンチル基及び3-メチルブチル基との混合物である1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物を提供する。本発明の好ましい実施形態では、イソ-ペンチル基の0~4モル%、好ましくは0~2モル%、特に好ましくは0~1モル%が3-メチルブチル基である、本発明による1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの本発明の混合物を提供する。
【0009】
本発明による1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸を適当なイソペンタノール混合物でエステル化することによって製造することができる。これに関連して、イソペンタノール混合物は、少なくとも2-メチルブタノール及びn-ペンタノール及び/又は3-メチルブタノールを含有することを意味すると理解されるべきである。当然のことながら、エステル化の間、形成されるエステル中に必要量の2-メチルブチル基を得るために、混合物に十分な2-メチルブタノールを含まれることが保証されるべきである。適当なイソペンタノール混合物の選択は、形成されたエステルの反応及び分析によって行うことは周知である。
【0010】
エステル化は、好ましくは触媒の存在下で行われる。原則として、エステル化に適した公知の触媒系をこの目的に用いることができる。本発明による1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルを製造するためのエステル化に適した触媒としては、チタネート触媒、例えばチタン酸テトラ-n-ブチル、ジルコン酸塩テトラ-n-ブチル又はスルホン酸塩テトラ-n-ブチルである。
本発明によるエステルを製造するためのエステル化は、好ましくは120℃~250℃、より好ましくは140℃~230℃、特に好ましくは160℃~215℃の温度で行われる。エステル化中の圧力は、沸点を上昇させ、したがってエステル化温度も上昇させ、副生成物の生成を高めるため、好ましくは高すぎるべきではない。したがって、エステル化中の圧力は、絶対圧で3バール以下、特に好ましくは0.5バール以上である。
エステル化の間、酸基とアルコールとの反応によって水が生成される。この水は、反応水ともいう。本発明の好ましい実施形態では、形成された反応水の少なくとも部分は反応の進行中に分離される。これにより、特に、反応の平衡を正しい方向にシフトさせることができる。
エステル化反応の進行は、パラメータを監視することによってモニターすることができる。例えば、酸価又は水の量を監視することができる。ガスクロマトグラフィーによるモニタリングも可能で、反応物及び/又は生成物の比率を測定することができる。
反応が十分な程度まで進行したら、反応を停止させることができる。これは例えば、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を加えて行うことができる。触媒は通常、この過程で破壊される。このことは当業者には周知である。その後、反応溶液を公知の方法、例えば熱分離の手段を用いて精製することができる。
【0011】
本発明による1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトラメチルエステルと適当なイソペンタノール混合物とのエステル交換によっても製造することができる。本文脈におけるイソペンタノール混合物は、この混合物が少なくとも2-メチルブタノール及びn-ペンタノール及び/又は3-メチルブタノールを含むことを意味するものとして理解されるべきである。当然のことながら、エステル化の際、形成されたエステル中に必要な量の2-メチルブチル基が確実に得られるように、混合物が十分な2-メチルブタノールを含むことに留意すべきである。周知にように、適当なイソペンタノール混合物の選択は、形成されたエステルの反応及び分析によって行うことができる。エステル化反応の進行は、パラメータを監視することによってモニターすることができる。ここで唯一可能な方法は、ガスクロマトグラフィーによるモニタリングであり、反応物及び/又は生成物の比率を決定することができる。
【0012】
本発明による1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物は、ポリマーの可塑剤として用いる場合に有利な特性を呈する。したがって、本発明のさらなる目的は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物、特に1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトラ-3-メチルブチルエステルを、ポリマー用可塑剤として用いることである。適当なポリマーを以下に記載するが、好ましくは、PVC又は塩化ビニル含有コポリマーである。
本発明の目的はまた、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物に加えてさらなる可塑剤を含有する可塑剤組成物である。意図された用途に応じて、可塑剤組成物は、得られる可塑剤組成物の特性を特異的に調整するために、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの本発明の混合物とは特に異なる1つ以上のさらなる可塑剤を含有してよい。しかしながら、特に好ましい実施形態では、可塑剤組成物は、5質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満のフタル酸エステルを含む。
【0013】
本発明の可塑剤組成物中のさらなる可塑剤は、アジピン酸塩、安息香酸塩、例えばモノ安息香酸塩又はグリコールジ安息香酸塩、塩素化炭化水素(いわゆる塩素化パラフィン)、クエン酸塩、シクロヘキサンジカルボン酸塩、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化植物油、エポキシ化アシル化グリセリド、フランジカルボン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、スルホンアミド、スルホン酸塩、テレフタル酸塩、トリメリット酸塩、及びアジピン酸、コハク酸又はセバシン酸に基づくオリゴマー又はポリマーエステルからなる群から選択することができる。本発明の好ましい実施形態では、可塑剤組成物は、アルキル安息香酸エステル、フェノールのアルキルスルホン酸エステル、アジピン酸ジアルキル、グリセロールエステル、ポリオールのC4~C6酸、クエン酸トリアルキルエステル、アセチル化クエン酸トリアルキルエステル、グリコールジベンゾエート、トリメリット酸のトリアルキルエステル、テレフタル酸ジアルキル、フタル酸ジアルキル、イソフタル酸ジアルキル、フランジカルボン酸のエステル、ジアンヒドロヘキシトールのジアルカノイルエステル(例えばイソソルビド)、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、ポリマー可塑剤、例えばポリアジピン酸塩、及び1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のジアルキルエステルからなる群から選択されるさらなる可塑剤を含む。
さらに好ましい実施形態では、可塑剤組成物中に含まれるさらなる可塑剤は、C8~C13アルキル安息香酸エステル、C4~C10アジピン酸ジアルキル、ペンタエリスリトールテトラバレレート、C4~C9アルキル基があるアセチル化クエン酸トリアルキルエステル、C4~C10トリメリト酸トリアルキル、C4~C9テレフタル酸ジアルキル、C4~C13フタル酸ジアルキル、特にC9~C13フタル酸ジアルキル及び1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のC4~C10ジアルキルエステルからなる群から選択される。
【0014】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物又は可塑剤組成物及び1つ以上のポリマーを含むプラスチック組成物の提供である。
適当なポリマーは、好ましくは、PVC;炭素原子数1~10の分枝又は非分枝アルコール、アクリロニトリル又は環状オレフィンのアルコキシ基があるエチレン、プロピレン、ブタジエン、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート又はメタクリレートに基づくホモ又はコポリマー;ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリ尿素、シリル化ポリマー、フッ素ポリマー、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチレンポリマー、特にポリスチレン(PS)、発泡性ポリスチレン(EPS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)スチレン-無水マレイン酸コポリマー(SMA)、スチレン-メタクリル酸コポリマー、ポリオレフィン、特にポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリスルフィド(PSu)、バイオポリマー、特にポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリエステル、デンプン、セルロース及びセルロース誘導体、特にニトロセルロース(NC)、エチルセルロース(EC)、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテート/ブチレート(CAB)、ゴム及びシリコーンからなる群から選択される。
好ましい実施形態では、可塑剤組成物中の少なくとも1種のポリマー又は好ましくは2種以上のポリマーの少なくとも90質量%は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、ニトロセルロース、及び塩化ビニルと酢酸ビニル又はブチルアクリレートとのコポリマーからなる群から選択される。PVCが特に好ましい。
【0015】
プラスチック組成物中の本発明の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物又は可塑剤組成物の量は、ポリマー100質量部当たり、好ましくは5~150質量部、好ましくは10~120質量部、特に好ましくは15~110質量部、著しく特に好ましくは20~100質量部である。しかしながら、ポリマー100質量部当たり20質量部未満の本発明の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルを含む1種以上のポリマーを含有する組成物であってもよい。
【0016】
本発明の文脈において好ましい本発明の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物を含む可塑剤の特定の組成物/混合物は以下のとおりである。
本発明の目的は、好ましくは、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸及びテレフタル酸ジエチルヘキシル(DEHT又はDOTP)のテトライソペンチルエステルと、少なくとも1種のポリマー、好ましくはPVCとの混合物を含むプラスチック組成物の提供である。
本発明のさらに好ましい目的は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物及び1,2-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸エステル、特に対応するジイソノニル又はジ-2-エチルヘキシルエステルと、少なくとも1種のポリマー、好ましくはPVCとの混合物を含むプラスチック組成物の提供である。
さらに、好ましくは、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルと、アルキル基が、炭素原子が4個以上、好ましくは5、8、9又は10個である、トリメリット酸のトリアルキルエステルと、少なくとも1種のポリマー、好ましくはPVCとの混合物を含むプラスチック組成物の提供である。好ましくは、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルと、アルキル基が、炭素原子が4個以上、好ましくは5、8、9又は10個である、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸のトリアルキルエステルと、少なくとも1種のポリマー、好ましくはPVCとの混合物を含むプラスチック組成物の提供である。
本発明のさらに好ましい目的は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルと、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジ(イソ)ペンチル、安息香酸イソデシル、安息香酸イソノニル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート及びそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される急速ゲル化可塑剤との混合物と、少なくとも1種のポリマー、好ましくはPVCと、を含有するプラスチック組成物の提供である。
【0017】
本発明のプラスチック組成物は、好ましくは、接着剤、シーリング組成物、コーティング組成物、ワニス、塗料、プラスチゾル、ドライブレンド、発泡体、合成皮革、床材、特にそのトップコート又はフォーム層、屋根膜、下地保護材、布被覆、ケーブル、電線絶縁、ホース、押出成形品、フィルム、自動車内装物、壁紙、インク、玩具、コンタクトフィルム、食品包装又は医療品、チューブ又は血液バッグにおける成分である。
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明のプラスチック組成物を、接着剤、シーリング組成物、コーティング組成物、ワニス、塗料、プラスチゾル、発泡体、合成皮革、床材、特にそのトップコート又はフォーム層、屋根膜、下地保護材、布被覆、ケーブル、電線絶縁、ホース、押出成形品、フィルム、自動車内装材、壁紙、インク、玩具、コンタクトフィルム、食品包装又は医療品、チューブ又は血液バッグにおいて用いることである。
【0018】
用語「イソ-ペンチル」、「イソ-ペンチル基」等は、用語「ペンチル」と同義であると理解されるべきであり、単一の特定のC5-アルキル基をいうものではないことは、上記の通りである。したがって、本発明の個々の発明の主題は、以下のように記載することもできる。
【0019】
1. イソ-ペンチル基の45~60モル%が2-メチルブチル基である、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトラペンチルエステルの混合物。
2. ペンチル基の50~60モル%が2-メチルブチル基である、主題1に記載の混合物。
3. ペンチル基の40~55モル%が、n-ペンチル基、3-メチルブチル基又はn-ペンチル基及び3-メチルブチル基との混合物である、主題1に記載の混合物。
4. ペンチル基の40~50モル%が、n-ペンチル基、3-メチルブチル基又はn-ペンチル基及び3-メチルブチル基との混合物である、主題2に記載の混合物。
5. 主題1~4のいずれかに記載の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトラペンチルエステルの混合物を作製するためのプロセスであって、作製は、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸とペンタノール混合物でエステル化するか、又は1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトラメチルエステルとペンタノール混合物でエステル交換することのいずれかによって行われる、プロセス。
6. エステル化中に形成される反応水を反応中に分離する、主題5に記載のプロセス。
7. エステル化が120℃~250℃の範囲の温度で行われる、主題5又は6に記載のプロセス。
8. 主題1~4のいずれか一項に記載の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物の、ポリマー、又はPVC若しくはビニルクロリド含有コポリマーの可塑剤としての使用。
9. 主題1~4のいずれか一項に記載の混合物における1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステル及び少なくとも1つのさらなる可塑化化合物の混合物を含む可塑剤組成物。
10. さらなる可塑化化合物が、アジピン酸塩、安息香酸塩、例えばモノ安息香酸塩又はグリコールジ安息香酸塩、塩素化炭化水素(いわゆる塩素化パラフィン)、クエン酸塩、シクロヘキサンジカルボン酸塩、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化植物油、エポキシ化アシル化グリセリド、フランジカルボン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、スルホンアミド、スルホン酸塩、テレフタル酸塩、トリメリット酸塩、及びアジピン酸、コハク酸又はセバシン酸に基づくオリゴマー又はポリマーエステルからなる群から選択される、主題9に記載の可塑剤組成物。
11. 5重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満のフタル酸エステルを含有する、主題9又は10に記載の可塑剤組成物。
12. 主題1~4のいずれか一項に記載の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物又は又は主題9~11のいずれか一項に記載の可塑剤組成物と、1つ以上のポリマーとを含有するプラスチック組成物。
13. 1つ以上のポリマーが、PVC;炭素原子数1~10の分枝又は非分枝アルコール、アクリロニトリル又は環状オレフィンのアルコキシ基があるエチレン、プロピレン、ブタジエン、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート又はメタクリレートに基づくホモ又はコポリマー;ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアルキルメタクリレート(PAMA)、ポリ尿素、シリル化ポリマー、フッ素ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチレンポリマー、ポリスチレン(PS)、発泡性ポリスチレン(EPS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン-無水マレイン酸コポリマー(SMA)、スチレン-メタクリル酸コポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリスルフィド(PSu)、バイオポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラール(PHB)、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリエステル、デンプン、セルロース、セルロース誘導体、ニトロセルロース(NC)、エチルセルロース(EC)、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテート/ブチレート(CAB)、ゴム及びシリコーンからなる群から選択される、主題12に記載のプラスチック組成物。

14. 1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物又は可塑剤組成物の量は、ポリマー100質量部当たり5~150質量部、好ましくは10~120質量部、特に好ましくは15~110質量部である、主題12又は13に記載のプラスチック組成物。

15. 主題12~14のいずれかに記載のプラスチック組成物の、接着剤、シーリング組成物、コーティング組成物、ワニス、塗料、プラスチゾル、発泡体、合成皮革、床材(例えばトップコート)、屋根膜、下地保護材、布被覆、ケーブル、電線絶縁、ホース、押出成形品、フィルム、自動車内装材、壁紙、インク、玩具、コンタクトフィルム、食品包装又は医療品、例えばチューブもしくは血液バッグにおける、使用。
【0020】
本発明実施例を参照して本発明を説明する。実施例は説明のためのものであり、限定するものとして理解されるべきではない。
【実施例0021】
1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸のテトライソペンチルエステルの混合物の合成
装置に、5モルの1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸(Alfa Aesar、純度:>98%)及び対応する量のアルコール2-メチルブタノール、n-ペンタノール及び3-メチルブタノール(2-メチルブタノール:シグマアルドリッチ社、純度≧99%;3-メチルブタノール:ハネウェル社、純度≧98.5%;n-ペンタノール:ハネウェル社、純度≧99%)を充填した。3.4gのテトラ-n-ブチルチタネート(0.01mol、シグマアルドリッチ社、純度:>97%)を触媒としてそれに加え、反応を開始した。窒素スパージしながら反応を行った。反応物を200℃の反応温度までゆっくりと加熱した。反応温度に達した後、アルコールをさらに計量供給した。添加の際には、反応温度が200℃を下回らないように注意した。
エステル化の過程で、360mlの水が生成した(20モルの反応水)。反応中に形成された水を、水トラップを介して連続的に除去した。反応水が360mlに達した後、反応試料を用いて酸価(AN)を測定した。反応の進行を、試料1g当たりKOH<0.5mgのANに達するまで、ANを介して一定間隔で監視した。その後、混合物を冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を加えて触媒を破壊した。
エステル化からの反応生成物を、攪拌機付きフラスコに移した。装置を窒素で洗浄した(6l/h)。真空下(約1~5mbar)で反応生成物をゆっくり加熱し、温度を160℃まで上昇させた。過剰のアルコールを完全に蒸留した後、生成物を80℃まで冷却し、濾過した。濾液をNMR分析に供して、生成物中のエステル基の組成を決定した。
【0022】
NMR分析
テトライソ-ペンチル1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸エステルの組成、すなわち、全てのブチル基の全体に対する異なる異性体ブチル基の比率は各々、例えば、H NMR及び13C NMR分光分析によって決定することができる。より高い精度のため、組成の決定は、重水素クロロホルム(CDCl3)中のテトライソ-ペンチル1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸エステル混合物の溶液に対するH-NMR分光分析を用いて行った。H-NMRスペクトルを記録するために、約20mgの物質を約0.6mlのCDCl3(各々約1質量%のTMSを含有する)に溶解し、直径5mmのNMR管に充填した。用いたCDCl3は、水の存在による測定値の劣化を防ぐため、まず分子ふるい上で乾燥させた。
NMR分光分析は、原則として、いかなる市販の装置で行ってよい。今回のNMR分析では、Bruker社のAvance 500装置を用いた。1H-NMRスペクトルは、Bruker Cooling Unit(BCU 05)を備えた5mm Prodigy Cryoサンプルヘッド(CPPBO)を用いて、温度300K、d1=5秒の遅延、32スキャン、約12μsのパルス長(30°励磁パルス)及び10000Hzの掃引幅で記録した。共鳴シグナルを、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS=0ppm)の化学シフトに対して記録した。同じ操作パラメータを用いた他の市販のNMR装置でも、同等の結果が得られた。
【0023】
以下の図1は、説明した測定法を理解しやすくするためのものである。ここで関連するのは、n-ペンチル基(C14及びC10)、2-メチルブチル基(C23、C24及びC20)及び3-メチルブチル基(C33及びC30)の各場合、メチル基及び酸素原子に隣接するメチレン基の炭素原子の割り当て番号である。
【0024】
異なるペンチル基中の炭素原子の番号付け
【0025】
【化1】
(式中、Rは各々、n-ペンタノール、2-メチルブタノール又は3-メチルブタノールである)。
【0026】
テトライソ-ペンチル1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸エステルの混合物の得られたH-NMRスペクトルには、異性体ペンチル置換基(C14、C23、C24、C33)のメチル基の水素原子のシグナルによって形成される0.8~1.0ppmの範囲の共鳴シグナルがある。3.60~4.40ppmの化学シフトの範囲のシグナルは、本質的に、アルコール基(C10、C20、C30)中の酸素に隣接するメチレン基の水素原子に帰属され得る。ここで、C20上のプロトンは、隣接する第3級炭素原子に起因して高磁場シフトを受けて、4.03ppm~3.84ppmとの間に現れるが、C10及びC30におけるプロトンは、4.20ppm~4.03ppmのより低いシフトでシグナルを与え、互いに重複している。
定量化は、各共鳴シグナル下の面積、すなわちベースラインからシグナルで囲まれた面積を比較決定することで行った。市販のNMRソフトウェアには、シグナル面積を積分するプログラム機能がある。本NMR分光法研究では、ソフトウェアTopSpin(登録商標)、バージョン3.6を用いて積分を行った。
本発明による混合物中の異性体ペンチル基の平均分岐度を決定するには、まず、0.68~1.11ppmの範囲のシグナルの積分値(I(CH))を3.60~4.40ppmの範囲のシグナルの積分値(I(OCH))で割る。このようにして、メチレン基に存在する水素原子の数と、酸素に隣接するメチレン基に存在する水素原子の数との比である強度比が得られる。メチル基当たり3個の水素原子及び酸素に隣接する各メチレン基中に2個の水素原子が存在するので、ペンチル基中の酸素に隣接するメチレン基の数に対するメチル基の数の比を得るためには、強度をそれぞれ3及び2で除しなければならない。酸素に隣接するメチル基とメチレン基が各々1つずつしかない直鎖n-ペンチル基には分岐がなく、したがって分岐度は0でなければならないので、比から1を差し引かなければならない。
したがって、平均分岐度DBは、次式によって計算することができる。
【0027】
DB=2/3*I(CH)/I(OCH)-1

(式中、DBは平均分岐度であり、I(CH)はメチル水素原子に割り当てられた面積積分であり、I(OCH)は酸素に隣接するメチレン水素原子の面積積分である。)
生成物は、各々分岐度が1である2-メチルブチル基及び3-メチルブチル基、ならびに分岐度が0であるn-ペンチル基を含んでよく、いかなるテトライソペンチルエステルの最大平均分岐度も常に1である。したがって、平均分岐度と値1との偏差から、一分子中のn-ペンチル基(xpentyl)のモル比を決定することができる。
【0028】
Pentyl=1-DB
2-メチルブチル基の量は、3.60~4.40ppmの範囲でベースライン分離したシグナルを積分しても計算できない。
C20上のプロトンのシグナル(C20;3.95~4.28ppmの間の多重線)は、シグナル群の間の谷カットの最小値において、C10及びC30上のプロトンのシグナル(C10及びC30;4.29~4.55ppmの間の多重線)から分離される。
【0029】
2-メチルブチル基のモル比(x2-メチルブチル)は、式(I)によって計算することができる。
【0030】
2-メチルブチル=I(OC19)/I(OCH
-OC20プロトンのシグナルの強度(I(OC20))を全てのOCHプロトンの強度(I(OCH))に関連付けることによって計算される。
したがって、3-メチルブチル基(x3-メチルブチル)のモル比は、2つの前のモル質量分率と1との間の差から計算される。
【0031】
3-メチルブチル=1-x2-メチルブチル-xpentyl
前述の方法により、試料中のそれぞれの残基の比率を決定することができた(表1参照)。
表1:NMR分析によるエステル混合物の組成
【0032】
【表1】
表2のエステル混合物を、適用関連特性に関して調査した。
【0033】
増粘挙動の測定
例えばトップコートフィルムの製造に用いられるPVCプラスチゾルを製造した。プラスチゾル配合物中の量は、それぞれ質量部(phr)で記載される。配合を表2に記載する。
表2:プラスチゾル配合物
【0034】
【表2】
最初に液体成分、次いで粉末状成分をPEビーカー中に秤量した。濡れていない粉末が残らないようにスパチュラを用いて手動で混合物を撹拌した。次いで、混合ビーカーを溶解撹拌機の固定手段に固定した。撹拌機のスイッチを入れた後、速度をゆっくりと約2000rpm(1分当たりの回転数)に上げた。その間、プラスチゾルを注意深く脱気した。このために、圧力を20mbar未満の圧力に調節した。プラスチゾルが約30℃の温度に達したらすぐに、速度を約350rpmに下げた。その後、プラスチゾルをその速度及び20mbar未満の圧力で9分間脱気した。これにより、プラスチゾルの均質化中に早期の部分ゲル化が確実に起こらなかった。

増粘挙動の測定は、原則として、製造されたプラスチゾルの粘度を、配合直後の粘度で割った様々な時間で測定する。実施例1)で製造されたプラスチゾルの粘度を、Physica MCR 101レオメーター(Anton Paar Germany GmbH製)を用いて、付属のソフトウェアを用いて、回転モード及びCC27測定システムを用いて測定した。測定は、プラスチゾルを製造後、25℃で24時間熱平衡化した後に行った。
測定は以下の:
-100s-1で60秒間の予備剪断、その間測定は行わなかった;
-200s-1から0.1s-1への下向き剪断速度勾配。30個の測定点を記録し、各測定点の持続時間は10秒であった;
で行った。
測定は室温で(各プラスチゾルの製造時間に対して)2時間後、24時間後及び7日後に実施した。0.1s-1、1s-1及び10s-1のせん断速度で得られた粘度を各々の時点で測定した。結果を表3に示す。
個々のせん断速度に対する経時的な粘度の増加率を以下のように決定した。
1d=(24時間後の粘度-2時間後の粘度)/2時間後の粘度
7d=(7日後の粘度-2時間後の粘度)/2時間後の粘度
表3:試料の増粘挙動
【0035】
【表3】
簡潔には、特許請求された範囲における増粘挙動は、特許請求された範囲外よりも良好であることが明らかである。経時的な粘度の増加は、特許請求された範囲では、比較例よりも少ない。
【外国語明細書】