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特開2024-52638α-アミノボロン酸誘導体及びその中間体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052638
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】α-アミノボロン酸誘導体及びその中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240404BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
C07F5/02 C
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170208
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022157998
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(71)【出願人】
【識別番号】396020464
【氏名又は名称】株式会社エーピーアイ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇人
(72)【発明者】
【氏名】長濱 正樹
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕昭
【テーマコード(参考)】
4H039
4H048
【Fターム(参考)】
4H039CA91
4H039CD60
4H039CD90
4H048AA02
4H048AC90
4H048BA05
4H048BA48
4H048VA22
4H048VA30
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】
【課題】安定でかつ温和な条件で容易に脱保護が可能な中間体を経由し、より安価で高い生産性で、α-アミノボロン酸誘導体を工業的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体と、ビス(ピナコラート)ジボロンとを、銅源、ホスフィン配位子、及び塩基の存在下、溶媒中で反応させることにより、一般式(5)で表されるα-アミノボロン酸誘導体を得るホウ素化工程を含む製造方法で、α-アミノボロン酸誘導体を製造する。
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~18の炭化水素基を表し、Pはアミノ基の保護基を表し、nは0~2の整数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(4)
【化1】
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~18の炭化水素基を表し、Pはアミノ基の保護基を表し、nは0~2の整数を表す。)
で表されるα-アミノスルホン誘導体と、ビス(ピナコラート)ジボロンとを、銅源、ホスフィン配位子、及び塩基の存在下、溶媒中で反応させることにより、一般式(5)
【化2】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表されるα-アミノボロン酸誘導体を得るホウ素化工程;
を含む、α-アミノボロン酸誘導体の製造方法。
【請求項2】
Pがカルバメート系保護基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ホウ素化工程の前に、一般式(1)
【化3】
(式中、各記号は請求項1で定義した通りである。)
で表されるアルデヒドと、一般式(2)
P-NH (2)
(式中、Pはアミノ基の保護基を表す。)
で表されるアミン、及び一般式(3)
Ph-SO-M (3)
(式中、Mは金属原子を表す。)
で表されるスルホニル基導入剤とを、酸存在下、溶媒中で反応させることにより、一般式(4)
【化4】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表されるα-アミノスルホン誘導体を得るα-アミノスルホニル化工程;
をさらに含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の合成中間体として有用なα-アミノボロン酸誘導体及びその中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-アミノボロン酸誘導体及びその中間体は医薬品の合成中間体として有用である。
従来、α-アミノボロン酸誘導体の製造方法としては、例えば、α-アミノボロン酸骨格を有する原薬ボルテゾミブの製造方法が知られている。具体的には、出発原料であるイソブチルボロン酸を(+)-ピナンジオールで保護してボロン酸エステル体を得、次いで、Matteson反応により不斉炭素を導入した化合物を得、さらに、リチウムヘキサメチルジシラジドを用いたSN2反応により窒素源を導入した化合物を得た後、酸によって脱保護したアミン体と、ピラジン体との縮合反応を経て、最後にピナンジオールを除去(脱保護)することによりボルテゾミブを得る製造方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
【化1】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の製造方法は、合成工程が多く製造コストが高いため、より安価で生産性の高い工業的な製造方法が望まれている。
【0005】
一方、アルデヒドから不斉補助基を有するイミンを経由してキラルなα-アミノボロン酸誘導体を製造する方法が知られている。例えば、出発原料であるアルデヒドとキラルtert-ブチルスルフィンアミドとを反応させて得られる不斉補助基を有するイミンと、ビス(ピナコラート)ジボロンとを、硫酸銅(II)、トリシクロヘキシルホスホニウムテトラフルオロボラート(PCy3・HBF4)及びベンジルアミンの存在下で反応させることにより、キラルなα-アミノボロン酸誘導体を製造する方法が知られている(非特許文献2)。
【0006】
【化2】
【0007】
しかしながら、非特許文献2の製造方法では、高価なキラルtert-ブチルスルフィンアミドが、出発原料であるアルデヒドに対して当量必要となり、製造コストが高いため、より安価で生産性の高い工業的な製造方法が望まれている。
【0008】
また、アルジミンから不斉配位子を用いてキラルなα-アミノボロン酸誘導体を製造する方法が知られている(非特許文献3)。
【0009】
【化3】
【0010】
さらに、アルジミンから不斉ホスフィン配位子を用いてキラルなα-アミノボロン酸誘導体を製造する方法が知られている(非特許文献4)。
【0011】
【化4】
【0012】
また、N-ジアルキルホスホリルケチミンから、不斉N-ヘテロ環状カルベン配位子を用いてキラルなα-アミノボロン酸誘導体を製造する方法が知られている(非特許文献5)。
【0013】
【化5】
【0014】
しかしながら、非特許文献3~5の製造方法は、出発原料として使用するアルジミンやケチミンが不安定で取り扱いが難しいため、より安定な中間体を経由する工業的な製造方法が望まれている。
【0015】
また、α-トシルベンズアミドから銅触媒存在下、不斉N-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子を用いてキラルなα-アミノボロン酸誘導体を製造する方法が知られている(非特許文献6)。
【0016】
【化6】
【0017】
しかしながら、非特許文献6の製造方法は、アミンの保護基が電子吸引性のベンゾイル基であり、脱保護に強い還元条件等が必要であるため、より温和な条件で容易に脱保護が可能な保護基での工業的な製造方法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Angew. Chem., Int. Ed. 2013, 52, 5450-5488
【非特許文献2】J. Org. Chem., 2014, 79, 3671-3677
【非特許文献3】Org. Lett. 2015, 17, 2420-2423
【非特許文献4】Chem. Commun., 2012, 48, 3769-3771
【非特許文献5】ACS Catal., 2021, 11, 6733-6740
【非特許文献6】J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 10644-10648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、安定でかつ温和な条件で容易に脱保護が可能な中間体を経由し、より安価で高い生産性で、α-アミノボロン酸誘導体を工業的に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、鋭意検討した結果、安定でかつ温和な条件で容易に脱保護が可能な化合物である、下記の一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体を経由すれば、より安価で高い生産性で、一般式(5)で表されるα-アミノボロン酸誘導体を工業的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下を特徴とするものである。
【0021】
[1] 一般式(4)
【0022】
【化7】
【0023】
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~18の炭化水素基を表し、Pはアミノ基の保護基を表し、nは0~2の整数を表す。)
で表されるα-アミノスルホン誘導体と、ビス(ピナコラート)ジボロンとを、銅源、ホスフィン配位子、及び塩基の存在下、溶媒中で反応させることにより、一般式(5)
【0024】
【化8】
【0025】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表されるα-アミノボロン酸誘導体を得るホウ素化工程;
を含む、α-アミノボロン酸誘導体の製造方法。
【0026】
[2] Pがカルバメート系保護基である、上記[1]に記載の製造方法。
[3] ホウ素化工程の前に、一般式(1)
【0027】
【化9】
【0028】
(式中、各記号は上記[1]で定義した通りである。)
で表されるアルデヒドと、一般式(2)
P-NH (2)
(式中、Pはアミノ基の保護基を表す。)
で表されるアミン、及び一般式(3)
Ph-SO-M (3)
(式中、Mは金属原子を表す。)
で表されるスルホニル基導入剤とを、酸存在下、溶媒中で反応させることにより、一般式(4)
【0029】
【化10】
【0030】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表されるα-アミノスルホン誘導体を得るα-アミノスルホニル化工程;
をさらに含む、上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の製造方法によれば、安定で温和な条件で容易に脱保護が可能な中間体を経由し、より安価で高い生産性で、一般式(5)で表されるα-アミノボロン酸誘導体を工業的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
[α-アミノボロン酸誘導体の製造方法]
本発明のα-アミノボロン酸誘導体の製造方法は、下記の合成スキームに示すとおりである。
【0033】
【化11】
【0034】
すなわち、本発明のα-アミノボロン酸誘導体の製造方法は、一般式(4)
【0035】
【化12】
【0036】
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~18の炭化水素基を表し、Pはアミノ基の保護基を表し、nは0~2の整数を表す。)
で表されるα-アミノスルホン誘導体と、ビス(ピナコラート)ジボロンとを、銅源、ホスフィン配位子、及び塩基存在下、溶媒中で反応させることにより、一般式(5)
【0037】
【化13】
【0038】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表されるα-アミノボロン酸誘導体を得るホウ素化工程;を含む。
さらに、本発明のα-アミノボロン酸誘導体の製造方法は、当該ホウ素化工程の前に、一般式(1)
【0039】
【化14】
【0040】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表されるアルデヒドと、一般式(2)
P-NH (2)
(式中、Pはアミノ基の保護基を表す。)
で表されるアミン、及び一般式(3)
Ph-SO-M (3)
(式中、Mは金属原子を表す。)
で表されるスルホニル基導入剤とを、酸存在下、溶媒中で反応させることにより、一般式(4)
【0041】
【化15】
【0042】
(式中、各記号は上記で定義した通りである。)
で表されるα-アミノスルホン誘導体を得るα-アミノスルホニル化工程;をさらに含んでいてもよい。
【0043】
以下、α-アミノスルホニル化工程及びホウ素化工程について、詳細に説明する。
【0044】
<<α-アミノスルホニル化工程>>
α-アミノスルホニル化工程は、一般式(1)で表されるアルデヒドと、一般式(2)で表されるアミン、及び一般式(3)で表されるスルホニル基導入剤とを、溶媒中で反応させて、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体を得る工程である。
【0045】
【化16】
【0046】
<原料>
(アルデヒド)
一般式(1)で表されるアルデヒドは、市販品を用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して得られたものを用いてもよい。
一般式(1)において、基Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~18の炭化水素基を表し、nは0~2の整数を表す。置換基を有していてもよい炭素数1~18の炭化水素基は、一般式(2)で表されるアミン及び一般式(3)で表されるスルホニル基導入剤との反応、並びに後述のホウ素化工程の反応が進行する限り特に限定されない。
【0047】
炭素数1~18の炭化水素基としては、炭素数1~8の低級脂肪族炭化水素基、炭素数9~18の高級脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
炭素数1~8の低級脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、及び炭素数2~8のアルキニル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
炭素数9~18の高級脂肪族炭化水素基としては、炭素数9~18のアルキル基、炭素数9~18のアルケニル基、及び炭素数9~18のアルキニル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、反応性の観点から、炭素数6~12の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0048】
「置換基を有していてもよい」における「置換基」としては、例えば、オキソ基、水酸基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数2~8のアルキニル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数2~8のアルケニルオキシ基、炭素数2~8のアルキニルオキシ基、炭素数1~8のアシル基、炭素数1~8のアシルオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0049】
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基及びそれらの構造異性体が挙げられる。
炭素数2~8のアルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基及びそれらの構造異性体が挙げられる。
炭素数2~8のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基及びそれらの構造異性体が挙げられる。
炭素数1~8のアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基及びそれらの構造異性体が挙げられる。
炭素数2~8のアルケニルオキシ基としては、エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基、ヘプテニルオキシ基、オクテニルオキシ基及びそれらの構造異性体が挙げられる。
炭素数2~8のアルキニルオキシ基としては、エチニルオキシ基、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ペンチニルオキシ基、ヘキシニルオキシ基、ヘプチニルオキシ基、オクチニルオキシ基及びそれらの構造異性体が挙げられる。
炭素数1~8のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基及びそれらの構造異性体が挙げられる。
炭素数1~8のアシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基及びそれらの構造異性体が挙げられる。
これらの置換基は、α-アミノスルホニル化工程及び後述のホウ素化工程の反応を阻害しない限り、置換可能な任意の位置に、置換可能な任意の数だけ置換していてもよい。
【0050】
基Rとしては、置換基を有していてもよい炭素数1~8の低級脂肪族炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はそれらの構造異性体がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はそれらの構造異性体が特に好ましい。
【0051】
(アミン)
一般式(2)で表されるアミンは市販品を用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して得られたものを用いてもよい。
一般式(2)において、Pはアミノ基の保護基を表す。アミノ基の保護基としては、アミノ基を保護する限り特に限定されない。例えば、カルバメート系保護基、アミド系保護基、イミド系保護基、スルホンアミド系保護基等が挙げられる。
【0052】
カルバメート系保護基としては、例えば、tert-ブトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基、又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられる。中でも、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基が好ましく、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基がより好ましく、tert-ブトキシカルボニル基が特に好ましい。
アミド系保護基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基又はトリフルオロアセチル基等が挙げられる。
イミド系保護基としては、例えば、フタロイル基等が挙げられる。
スルホンアミド系保護基としては、例えば、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、トリイソプロピルベンゼンスルホニル基等の炭化水素スルホンアミド系保護基;o-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、o,p-ジニトロベンゼンスルホニル基等のニトロベンゼンスルホンアミド系保護基が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、生成する中間体の安定性及び脱保護の容易性の観点から、カルバメート系保護基が好ましく、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基が好ましく、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基がより好ましく、tert-ブトキシカルボニル基が特に好ましい。カルバメート系保護基を選択することにより、穏和な反応条件で脱保護ができ、目的物の分解及び不純物の生成を抑えることができる。
【0054】
一般式(2)で表されるアミンの使用量としては、反応が進行する限り特に限定されないが、一般式(1)で表されるアルデヒド1molに対して、通常1mol~3mol、コスト及び反応性の観点から、好ましくは1mol~2molである。
【0055】
(スルホニル基導入剤)
一般式(3)で表されるスルホニル基導入剤は市販品を用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して得られたものを用いてもよい。
一般式(3)において、Mは金属原子を表す。金属原子としては、公知の金属原子、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属が挙げられ、中でも、反応性の観点から、リチウム、ナトリウム又はカリウムが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
一般式(3)で表されるスルホニル基導入剤としては、コスト、汎用性及び反応性の観点から、特にベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
【0056】
一般式(3)で表されるスルホニル基導入剤の使用量としては、反応が進行する限り特に限定されないが、一般式(1)で表されるアルデヒド1molに対して、通常1mol~10mol、コスト及び反応性の観点から、好ましくは1mol~5mol、特に好ましくは1mol~3molである。
【0057】
(酸)
酸は、反応を阻害せず、かつ反応系を酸性に調整できる限り特に限定されない。
酸としては、有機酸及び無機酸が挙げられ、好ましくは有機酸である。
有機酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、グルクロン酸、グルコン酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、イセチオン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸等が挙げられる。中でも、コスト及び汎用性の観点から、カルボン酸が好ましく、ギ酸が特に好ましい。
無機酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、又は硝酸等が挙げられる。
酸の使用量としては、使用する溶媒の種類や量により異なり得るが、一般式(1)で表されるアルデヒド1molに対して、通常1mol~20mol、コスト及び反応性の観点から、好ましくは2mol~10molである。
【0058】
(溶媒)
溶媒としては、反応を阻害しない限り特に限定されない。
溶媒としては、有機溶媒、水、又は有機溶媒と水の混合溶媒を用いることができ、反応性の観点から、水、又は有機溶媒と水の混合溶媒を用いるのが好ましい。
有機溶媒としては、アルコール溶媒、エーテル溶媒等の水溶性有機溶媒;炭化水素溶媒、エステル溶媒等の疎水性有機溶媒が挙げられる。
【0059】
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4のアルコールが挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジオキサン等が挙げられる。
炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステルが挙げられる。
これらの中でも、コスト及び反応性の観点から、水溶性有機溶媒が好ましく、アルコール溶媒がより好ましく、メタノールが特に好ましい。
溶媒の使用量としては、一般式(1)で表されるアルデヒド1kgに対して、通常1L~20L、好ましくは2L~10Lである。
【0060】
反応は、一般式(1)で表されるアルデヒドと、一般式(2)で表されるアミン及び一般式(3)で表されるスルホニル基導入剤とを混合することにより行われるが、これらの化合物の供給順序は適宜選択することができる。また、これらの化合物は、反応系に一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、反応器内に、一般式(2)で表されるアミン及び一般式(3)で表されるスルホニル基導入剤のいずれか一種以上を溶媒と共に仕込んでこれを敷液として、反応条件下、残りの成分を供給液として供給することで反応を行うことができる。酸は、最初から反応系中に存在させてもよいし、途中で供給してもよく、また、一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。
【0061】
<反応条件>
(反応温度)
反応温度としては、使用する原料によって異なり得るが、通常0℃~80℃、好ましくは5℃~60℃、特に好ましくは10℃~40℃である。上述の範囲で反応を行うことにより、生成する中間体が分解せず、効率良く目的物を得ることができる。
(反応圧力)
反応圧力としては、通常、常圧であるが、加圧してもよい。
(反応時間)
反応時間としては、通常1時間~120時間である。
(pH)
反応液のpHは、通常pH0~pH6、好ましくはpH1~5である。上述の範囲で反応を行うことにより、生成する中間体が分解せず、効率良く目的物を得ることができる。
【0062】
<後処理>
反応終了後、反応液からの目的物である一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体の単離は、この反応液の中和、分液、濃縮、濾過等の処理によって行ってもよく、晶析、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段によって行ってもよい。
【0063】
(α-アミノスルホン誘導体)
本発明のα-アミノスルホニル化工程で得られる一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体は、水和物又は有機溶媒和物等の溶媒和物を形成していてもよく、後述のホウ素化工程において反応を阻害しない限り特にその形態は限定されない。
【0064】
本発明のα-アミノスルホニル化工程によれば、安価な原料や試薬を用いて、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体を製造することができる。また、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体は安定で温和な条件で容易に脱保護が可能な化合物であるため、後述のホウ素化工程に供した場合には、高い生産性で、一般式(5)で表されるα-アミノボロン酸誘導体を工業的に製造することが可能となる。
【0065】
<<ホウ素化工程>>
本発明のホウ素化工程は、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体と、ビス(ピナコラート)ジボロンとを、銅源、ホスフィン配位子、及び塩基存在下、溶媒中で反応させることにより、一般式(5)で表されるα-アミノボロン酸誘導体を得る工程である。
【0066】
【化17】
【0067】
<原料>
(α-アミノスルホン誘導体)
一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体は、市販品を用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して得られたものを用いてもよいが、上述の本発明のα-アミノスルホニル化工程で得られたα-アミノスルホン誘導体を用いるのが好ましい。
【0068】
(ビス(ピナコラート)ジボロン)
ビス(ピナコラート)ジボロンは、市販品を用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して得られたものを用いてもよい。
ビス(ピナコラート)ジボロンの使用量としては、反応が進行する限り特に限定されないが、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体1molに対して、通常1mol~5mol、コスト及び反応性の観点から、好ましくは1mol~2molである。
【0069】
(銅源)
銅源は、市販品を用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して得られたものを用いてもよい。
銅源としては、銅単体又は銅化合物があるが、反応性の観点から、銅化合物が好ましい。
銅化合物としては、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)等のハロゲン化銅;tert-ブトキシ銅(I)、ビス(tert-ブトキシ)銅(II)等のアルコキシ銅;等が挙げられ、コスト、汎用性及び反応性の観点から、ハロゲン化銅が好ましく、塩化銅(I)が特に好ましい。
【0070】
銅源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと任意の比率で用いてもよいが、反応性の観点から、単独で用いることが好ましい。
銅源の使用量としては触媒として機能する量であればよく、反応が進行する限り特に限定されないが、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体1molに対して、通常0.001mol~1mol、コスト及び反応性の観点から、好ましくは0.01~0.5molである。
【0071】
(塩基)
塩基としては、反応が進行する限り特に限定されないが、炭酸金属塩、金属水酸化物、金属アルコキシド等を用いることができる。これらの中でも、汎用性及び反応性の観点から、炭酸金属塩が好ましい。
炭酸金属塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等の炭酸水素塩が挙げられ、コスト及び反応性の観点から、炭酸塩が好ましく、炭酸カリウム又は炭酸セシウムが特に好ましい。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムtert-ブトキシド等が挙げられる。
【0072】
塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと任意の比率で用いてもよいが、コストの観点から、2種以上を任意の組み合わせと任意の比率で用いることが好ましく、2種を任意の組み合わせと比率で用いることが特に好ましい。具体的には、炭酸カリウムと炭酸セシウムを任意の比率で用いることが特に好ましい。
塩基の使用量としては、反応が進行する限り特に限定されないが、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体1molに対して、通常1mol~10mol、コスト及び反応性の観点から、好ましくは2mol~8molである。
【0073】
(溶媒)
溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されず、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。反応性の観点から有機溶媒を用いることが好ましい。
有機溶媒としては、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられ、好ましくは炭化水素溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、特に好ましくは、汎用性及び反応性の観点から、炭化水素溶媒である。
炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。炭化水素溶媒の中でも、汎用性及び反応性の観点から、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンが特に好ましい。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテルが挙げられる。エーテル溶媒の中でも、汎用性及び反応性の観点から、環状エーテルが好ましく、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン又はジオキサンがより好ましく、4-メチルテトラヒドロピランが特に好ましい。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。ケトン溶媒の中でも、反応性の観点から、アセトンが好ましい。
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4のアルコールが挙げられる。アルコール溶媒の中でも、反応性の観点から、メタノール、エタノールが好ましい。
ニトリル溶媒としては、例えば、アセトニトリルが挙げられる。
【0074】
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよいが、コストの観点から、1種を単独で用いるのが好ましい。
溶媒の使用量としては、反応が進行する限り特に限定されないが、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体1kgに対して、通常1L~100L、反応性の観点から、10L~80Lが好ましい。
【0075】
(ホスフィン配位子)
ホスフィン配位子は、市販品を用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して得られたものを用いてもよい。
ホスフィン配位子は、不斉ホスフィン配位子であってもよい。不斉ホスフィン配位子としては、例えば、(S)-(-)-BINAP、(R)-(+)-BINAP、(R)-(+)-MOP、(S)-(-)-TolBINAP、(R)-(+)-TolBINAP、(S)-(-)-SEGPHOS(登録商標)、(R)-(+)-SEGPHOS(登録商標)、(S)-(-)-DM-SEGPHOS(登録商標)、(R)-(+)-DM-SEGPHOS(登録商標)、(S)-(+)-DTBM-SEGPHOS(登録商標)、(R)-(-)-DTBM-SEGPHOS(登録商標)等のBINAP系ホスフィン配位子;(2S,3S)-(+)-Norphos、(2R,3R)-(-)-Norphos等のNorphos系ホスフィン配位子等が挙げられる。これらの構造を以下に示す。ホスフィン配位子としては、コスト及び反応性の観点から、BINAP系ホスフィン配位子又はNorphos系ホスフィン配位子が好ましい。
【0076】
【化18】
【0077】
BINAP系ホスフィン配位子としては、(S)-(-)-BINAP、(R)-(+)-BINAP、(S)-(-)-TolBINAP、又は(R)-(+)-TolBINAPが好ましく、(S)-(-)-BINAP、又は(S)-(-)-TolBINAPが特に好ましい。
Norphos系ホスフィン配位子としては、(2R,3R)-(-)-Norphosが好ましい。
ホスフィン配位子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよいが、反応性の観点から、1種を単独で用いるのが好ましい。
ホスフィン配位子の使用量としては、反応が進行する限り特に限定されないが、通常、銅源の使用量と同mol量が好ましい。
【0078】
(添加剤)
本発明のホウ素化工程では、ホスフィン配位子を活性化し、反応性を向上させるために、添加剤を加えてもよい。
添加剤としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシドが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン配位子の活性化や反応性の観点から、ナトリウムtert-ブトキシドが好ましい。
添加剤の使用量としては、ホスフィン配位子が活性化し反応性が向上する限り特に限定されないが、通常、ホスフィン配位子と同mol量が好ましい。
【0079】
<反応条件>
(反応温度)
反応温度としては、下限としては通常-60℃以上、好ましくは-40℃以上、より好ましくは-30℃以上、特に好ましくは-20℃以上であり、上限としては通常60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下である。反応温度は、低すぎると反応の進行が遅くなり生産性が低下するおそれがあり、高すぎると副生成物が増加し、得られる化合物の品質が低下するおそれがある。
(反応圧力)
反応圧力としては、通常、常圧であるが、加圧してもよい。
(反応時間)
反応時間としては、通常1分間~120時間である。
【0080】
<後処理>
反応終了後、反応液からの目的物である一般式(5)で表されるα-アミノボロン酸誘導体の単離は、この反応液の中和、分液、濃縮、濾過等の処理によって行ってもよく、晶析、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段によって行ってもよい。
【0081】
本発明のホウ素化工程によれば、安定で温和な条件で容易に脱保護が可能な一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体を用いるので、高い生産性で、一般式(5)で表されるα-アミノボロン酸誘導体を工業的に製造することができる。
【実施例0082】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
本実施例における室温とは、外部系から加熱、冷却をしていない状態を意味し、その温度範囲は通常20℃以上30℃以下である。
【0083】
以下の実施例における反応液の分析に用いた装置及び条件は以下の通りである。
【0084】
[分析条件1(H-NMR)]
核磁気共鳴装置 :フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT-NMR)
JEOL ECZ 400(日本電子社) 400 MHz
溶媒 :CDCl3
内部基準物質 :テトラメチルシラン(TMS)
内部標準物質 :1,3,5-トリメトキシベンゼン

収率については、目的物のピーク(3.08 (q,1H))の面積値及び内部標準物質のピーク(6.01 (s,3H))の面積値をもとに算出した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
[精製条件1(SEC)]
以下の実施例におけるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)精製に用いた装置及び条件は表4の通りである。
【0089】
【表4】
【0090】
[実施例1]
(1)α-アミノスルホン誘導体Aの製造(α-アミノスルホニル化工程)
【0091】
【化19】
【0092】
密閉型30 mLガラス製反応器に、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム二水和物600.6 mg (3.0 mmol)、カルバミン酸tert-ブチル234.3 mg (2.0 mmol)、ギ酸 8.0 mLを混合し、3-フェニルプロピオンアルデヒド268.4 mg(2.0 mmol)、水7.0 mLを加え、撹拌下、室温(以下、rtと称する場合がある。)で12時間反応させた。
反応後、生じた懸濁液から固体をろ取し、α-アミノスルホン誘導体A 569.4 mg(収率76%)を得た。
【0093】
(2)α-アミノボロン酸誘導体Bの製造(ホウ素化工程)
【0094】
【化20】
【0095】
密閉型10 mLガラス製反応器に、(S)-(-)-BINAP 6.23 mg (0.01 mmol)、塩化銅(I) 0.99 mg (0.01 mmol)を混合し、アルゴン置換を行った後、トルエン1 mLを加え、30分間撹拌させた。その後、α-アミノスルホニル化工程で得られたα-アミノスルホン誘導体A 37.5 mg (0.1 mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン50.8 mg (0.20 mmol)、炭酸カリウム69.1 mg (0.5 mmol)及び炭酸セシウム32.6 mg (0.1 mmol)を混合し、再びアルゴン置換を行い、室温で48時間反応させた。
反応後、反応混合物をセライト及び不活性シリカで濾過することにより無機塩を濾別した。内部標準物質として1,3,5-トリメトキシベンゼン 16.8 mg (0.1 mmol)を加え、反応液を分析条件1により分析した結果、α-アミノボロン酸誘導体Bの収率は63%であった。
反応液をエバポレーターにて減圧濃縮した後、濃縮残渣にクロロホルム3.0 mLを加えてクロロホルム溶液を得た。得られたクロロホルム溶液を精製条件1にて精製し、α-アミノボロン酸誘導体Bを得た。得られたα-アミノボロン酸誘導体Bを分析条件2により分析を行った結果、31%eeであった。
【0096】
α-アミノボロン酸誘導体B(major):
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 7.14-7.29 (m,5H), 4.78 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 3.08 (q, J = 12.8 Hz, 1H), 2.57-2.71 (m,2H), 1.90-2.01 (m,1H), 1.77-1.88 (m,1H), 1.44 (s,9H), 1.27 (s.12H).
【0097】
[実施例2~3]
実施例1において、ホスフィン配位子を表5のように変更した以外は同様な方法で反応を行った。得られたα-アミノボロン酸誘導体Bを分析条件3により分析を行ったところ、結果は表5の通りであった。
【0098】
【表5】
【0099】
[実施例4]
(1)α-アミノスルホン誘導体Cの製造(α-アミノスルホニル化工程)
【0100】
【化21】
【0101】
密閉型30 mLガラス製反応器に、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム二水和物600.6 mg (3.0 mmol)、カルバミン酸tert-ブチル234.3 mg (2.0 mmol)、ギ酸 8.0 mLを混合し、ベンズアルデヒド212.2 mg (2.0 mmol)、水7.0 mLを加え、撹拌下、室温で12 時間反応させた。
反応後、生じた懸濁液から固体をろ取して、α-アミノスルホン誘導体C 246.4 mg(収率35%)を得た。
【0102】
(2)α-アミノボロン酸誘導体Dの製造(ホウ素化工程)
【0103】
【化22】
【0104】
密閉型10 mLガラス製反応器に、(S)-(-)-BINAP 6.23 mg (0.01 mmol)、塩化銅(I) 0.99 mg (0.01 mmol)を混合し、アルゴン置換を行った後、トルエン1 mLを加え、30分間撹拌させた。その後、α-アミノスルホニル化工程で得られたα-アミノスルホン誘導体C 34.7 mg (0.1 mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン50.8 mg (0.20 mmol)、炭酸カリウム69.1 mg (0.5 mmol)及び炭酸セシウム32.6 mg (0.1 mmol)を混合し、再びアルゴン置換を行い、室温で48時間反応させた。
反応後、反応混合物をセライト及び不活性シリカで濾過することにより無機塩を濾別した。基準物質として1,3,5-トリメトキシベンゼン 16.8 mg (0.1 mmol)を加え、反応液を分析条件1により分析した結果、α-アミノボロン酸誘導体Dの収率は59%であった。
反応液をエバポレーターにて減圧濃縮した後、濃縮残渣にクロロホルム3.0 mLを加えてクロロホルム溶液を得た。得られたクロロホルム溶液を精製条件1にて精製し、α-アミノボロン酸誘導体Dを得た。得られたα-アミノボロン酸誘導体Dを分析条件4により分析を行った結果、46%eeであった。
【0105】
α-アミノボロン酸誘導体D(major):
1H-NMR (400MHz, CDCl3) 7.25-7.29 (m,4H), 7.14-7.21 (m,1H), 5.18 (s,1H), 4.21 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 1.45 (s,9H), 1.19 (s,6H), 1.17 (s,6H).
【0106】
[実施例5]
実施例4のα-アミノボロン酸誘導体Dの製造において、反応温度を室温から0℃、反応時間を48時間から96時間に変更した以外は同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例4と同様な分析を行ったところ結果は表6の通りであった。
【0107】
【表6】
【0108】
[実施例6~15]
実施例1のα-アミノボロン酸誘導体Bにおいて、反応時間を48時間から24時間に変更し、溶媒を表7のように変更した以外は同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例1と同様な分析を行ったところ結果は表7の通りであった。
【0109】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、安価な原料や試薬を用いて、中間体である一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体を製造することができる。また、一般式(4)で表されるα-アミノスルホン誘導体は安定でかつ温和な条件で容易に脱保護が可能な化合物であるため、当該化合物から、高い生産性で、一般式(5)で表されるα-アミノボロン酸誘導体を工業的に製造することができる。従って、本発明の製造方法は、医薬品の合成中間体として有用なα-アミノボロン酸誘導体を工業的に製造するのに産業上有用である。