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特開2024-52649高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法
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  • 特開-高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052649
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/00 20060101AFI20240404BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240404BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20240404BHJP
   B22F 1/142 20220101ALI20240404BHJP
   C22C 1/05 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
B22F7/00 Z
B22F1/00 N
B22F1/14 500
B22F1/142
C22C1/05 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170994
(22)【出願日】2023-09-30
(31)【優先権主張番号】202211208030.2
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521285805
【氏名又は名称】昆明理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】隋育棟
(72)【発明者】
【氏名】蒋業華
(72)【発明者】
【氏名】李祖来
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA15
4K018AB03
4K018AB10
4K018AC01
4K018BA20
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC02
4K018BC12
4K018CA23
4K018DA31
4K018KA70
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法を提供する。
【解決手段】トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等のアルキルアルミニウムと、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミドとを原料としてアルキルアルミニウム中間体を調製し、固体の中間体を分離してからアルミニウム合金粉末と均一に混合し、最後に一定の温度と真空条件下で加熱して、窒化アルミニウムとアルミニウム合金の混合粉体を得て、粉体を金型に充填し、加圧、焼結することにより、高強度高熱伝導性のアルミニウム合金材料を得ることができる。
【効果】本発明の窒化アルミニウムは低温で生成され、その表面に汚染がなく、アルミニウムマトリックスとの相容性が良好である。窒化アルミニウムの添加により、合金の機械的特性を高めると同時にアルミニウム合金の熱伝導率も著しく高めるため、アルミニウム合金部品に広い応用の将来性がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法であって、
アルキルアルミニウムをアミドに溶解させ、アンモニア水を滴下して混合溶液を得て、混合溶液のpHを8~10の間に調節してから、混合溶液を恒温水槽に入れて加熱し、冷却してアルキルアルミニウムアミド中間体含有溶液を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた溶液内のアルキルアルミニウムアミド中間体を分離し、真空ボールミーリングを用いてアルミニウム合金粉末と均一に混合してから、混合粉体を真空高温炉に入れ、加熱して窒化アルミニウムとアルミニウム合金の混合粉体を得るステップ(2)であって、アルミニウム合金粉末と分離後のアルキルアルミニウムアミド中間体とのモル比が1:(0.1~0.3)であるステップ(2)と、
AlN/アルミニウム合金混合粉体を部品に対応する形状を有する金型に充填し、プレス、焼結することにより、高強度高熱伝導性のアルミニウム合金材料を得るステップ(3)と、を具体的に含み、
ステップ(2)における真空ボールミーリングの条件は、真空度が0.01~0.5Pa、ボールミーリングの回転速度が100~400r/min、ボールミーリングの時間が4~8hであり、
ステップ(2)における真空高温炉による処理は、真空度が0.1~1Pa、高温炉の温度が350~450℃、恒温保持時間が1~3hである、
ことを特徴とする高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載のアルキルアルミニウムは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及び二塩化エチルアルミニウムのうちの何れか1つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法。
【請求項3】
ステップ(1)に記載のアミドは、ジメチルホルムアミド、及びジメチルアセトアミドのうちの何れか1つである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法。
【請求項4】
ステップ(1)に記載の混合溶液内のアルキルアルミニウムと、アミドと、アンモニア水とのモル比が、1:(0.4~0.7):(0.05~0.23)である、
ことを特徴とする請求項3に記載の高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法。
【請求項5】
ステップ(1)の恒温水槽における加熱条件は、65~80℃で4~6h加熱することである、
ことを特徴とする請求項1又は4に記載の高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法。
【請求項6】
ステップ(1)の固体アルキルアルミニウムアミド中間体の分離方法は、市販の高速遠心機又は回転蒸発装置を用いて分離することである
ことを特徴とする請求項5に記載の高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法。
【請求項7】
ステップ(2)におけるアルミニウム合金粉末が、Al-Si系、Al-Cu系、Al-Mg系、又はAl-Zn系の合金粉末であり、粒径が50~200nmである、
ことを特徴とする請求項1又は6に記載の高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法。
【請求項8】
ステップ(3)における焼結温度が580~630℃、時間が0.5~1hである、
ことを特徴とする請求項1に記載の高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法に関し、非鉄金属材料の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム及びその合金は、良好な熱伝導性、塑性、加工性など、優れた総合的な特性を有する。また、アルミニウム合金材料も良好な高温特性、成形性、切削加工性、リベット接合性及び表面処理性を備えている。そのため、アルミニウム合金は宇宙、航空、自動車、交通運輸、橋梁、建築、電子・電気、エネルギー動力、機械製造、電気家具などの各分野で非常に広く応用されている。産業の発展と人々の生活レベルの向上に伴い、電子製品や通信機器などのチップ集積度の向上により、機器電力が増大し、発熱量が増加し、機器の単位体積あたりの放熱量も増加するため、製品の使用寿命と動作の安定性を保証するために、より高い材料の熱伝導性が求められるようになった。純アルミニウムは、室温での熱伝導率が約237W/(m・K)と、金属材料の中では銅(385W/(m・K))に次ぐ良好な熱伝導性を有している。しかしながら、純アルミニウムの強度はわずか69MPaと低すぎて、工業生産に応用される場合の要求を満たすことができない。このため、通常は、合金化により純アルミニウムの強度を向上させるが、合金元素の増加に伴い、アルミニウム合金の熱伝導率は徐々に低くなる。
【0003】
窒化アルミニウム(AlN)の密度は3.26g/cm3、モース硬度は7~8、理論上の熱伝導率は320W/(m・K)と高く、熱膨張係数はシリコンに近い。窒化アルミニウムをアルミニウム合金に組み入れることで、転位に対する窒化アルミニウム強化層の阻害作用を利用して合金の機械的特性を高めることができる一方、窒化アルミニウムの高い熱伝導率を利用して、アルミニウム合金全体の熱伝導性を向上させることもできる。そのため、窒化アルミニウム強化相を含むアルミニウムベースの新材料の研究開発は国内外の科学研究者から重視され、一定の進展が遂げられている。例えば、中国特許201910884968.8には、AlNとAlB2の二相粒子のその場生成により強化されたアルミニウムベースの複合材料を調製する方法が開示されている。この方法では、アルミニウム粉末と窒化ホウ素ナノシートとの質量比(96-99):(1-4)の割合で、アルミニウム粉末と窒化ホウ素ナノシートをボールミーリング缶に投入し、不活性ガス雰囲気下で、ボールミーリングによりアルミニウム粉末と窒化ホウ素ナノシートを均一に混合し、ボールミーリング後の粉末を金型に充填し、冷間プレス成形してから焼結する。中国発明特許201811453938.3には、耐高温AlNとAl23とにより強化されるアルミニウムベース複合材料及びその調製方法が開示されている。この方法では、まず超微細アルミニウム粉末を適当な空隙率まで加圧し、パックに入れて密封し、その周囲に適当な量の空気が入るように穴を開ける。パックを空気炉に入れて低温加熱して酸化皮膜を厚くしてから、高温まで昇温して、空気中の窒素ガスと酸素ガスを用いてAlNとAl23を生成させ、高温処理後の粉末に対して焼結や熱間加工を行って、最終的にはアルミニウム合金材料を得る。しかし、上述の方法のAlNは全てアルミニウム粉末とBN或いは空気との反応で生成されるので、反応過程と生成物の体積分率の調節や制御が容易ではなく、また、アルミニウム粉末が窒化する時に大量の熱が発生し、粉末の固まり、さらには溶融を発生させるため、製品品質の制御が不可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルミニウム合金の強度と熱伝導性を両立させることができず、従来のAlN含有アルミニウム合金の調製過程に存在する、AlNの生成量が制御不能で、アルミニウム粉末が固まって溶融し、大規模な大量調製が困難であるという課題を解決するために、本発明の目的は、具体的には以下のステップを含む高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)アルキルアルミニウムをアミドに溶解させ、アンモニア水を滴下して混合溶液を得て、混合溶液のpHを8~10の間に調節してから、混合溶液を恒温水槽に入れて加熱し、冷却してアルキルアルミニウムアミド中間体含有溶液を得る。
【0006】
(2)ステップ(1)で得られた溶液内のアルキルアルミニウムアミド中間体を分離し、真空ボールミーリングを用いてアルミニウム合金粉末と均一に混合してから、混合粉体を真空高温炉に入れ、加熱して窒化アルミニウムとアルミニウム合金の混合粉体を得る。
【0007】
(3)AlN/アルミニウム合金混合粉体を部品に対応する形状を有する金型に充填し、プレス、焼結することにより、高強度高熱伝導性のアルミニウム合金材料を得る。
【0008】
好ましくは、本発明のステップ(1)に記載のアルキルアルミニウムは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及び二塩化エチルアルミニウムのうちの何れか1つである。
【0009】
好ましくは、本発明のステップ(1)に記載のアミドは、ジメチルホルムアミド、及びジメチルアセトアミドのうちの何れか1つである。
【0010】
好ましくは、本発明のステップ(1)に記載の混合溶液内のアルキルアルミニウムと、アミドと、アンモニア水とのモル比が、1:(0.4~0.7):(0.05~0.23)である。
【0011】
好ましくは、本発明のステップ(1)の恒温水槽における加熱条件は、65~80℃で4~6h加熱することである。
【0012】
好ましくは、本発明のステップ(1)の固体アルキルアルミニウムアミド中間体の分離方法は、市販の高速遠心機又は回転蒸発装置を用いて分離することであり、他の実施可能な分離方法も本発明に適用されてもよい。
【0013】
好ましくは、本発明のステップ(2)におけるアルミニウム合金粉末が、Al-Si系、Al-Cu系、Al-Mg系、又はAl-Zn系の合金粉末であり、粒径が50~200nmであり、アルミニウム合金粉末と分離後のアルキルアルミニウムアミド中間体とのモル比が1:(0.1~0.3)である。
【0014】
好ましくは、本発明のステップ(2)における真空ボールミーリングの条件は、真空度が0.01~0.5Pa、ボールミーリングの回転速度が100~400r/min、ボールミーリングの時間が4~8hである。
【0015】
好ましくは、本発明のステップ(2)における真空高温炉による処理は、真空度が0.1~1Pa、高温炉の温度が350~450℃、恒温保持時間が1~3hである。
【0016】
好ましくは、本発明のステップ(3)における焼結温度は580~630℃であり、時間は0.5~1hである。
【0017】
本発明に記載のプレス、焼結方法は、冷間等方圧プレス+空気炉による焼結、熱間等方圧焼結、急速焼結、放電プラズマ焼結のうちの何れか1つであってもよい。
【0018】
先行技術に比べて、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0019】
本発明の窒化アルミニウム(AlN)は、アルキルアルミニウム、アミド及びアンモニア水を互いに反応させてアルキルアルミニウム中間体を生成してから、真空で350~450℃の条件で生成されるものであり、従来の方法によるアルミニウム粉末がBN又は空気と反応してAlNを生成するプロセスが制御不能なのを回避し、反応温度が比較的低く、危険性及びコストがともに低下する。また、AlN強化体はアルミニウム基体内で核を形成して成長するため、AlN表面に汚染がなく、マトリックスと強化相との相容性が良好である。従来の方法と比べて、AlN強化体とアルミニウムマトリックスとの格子不整合度が3%未満であるため、有効な非均質核形成の核とすることができる。均一に分布する本発明のAlN強化体により、結晶粒の微細化が容易であり、ホール・ペッチの式によれば、結晶粒サイズは降伏強度等の機械的特性に反比例し、結晶粒サイズが小さいほど、機械的特性に優れる。
【0020】
本発明の技術を利用して調製された高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料は、AlNによる結晶粒の微細化作用により、AlN強化相を含まないものより材料の機械的特性が20%以上向上した。同時に、熱伝導率に対するAlN強化相の寄与により、材料の熱伝導性も12%以上向上され、材料の機械的特性と熱伝導性を両立させた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明により調製されたAlNとアルミニウム合金の混合粉体形態を示す図である。
図2】本発明により調製された高強度高熱伝導性アルミニウム合金の透過電子顕微鏡による顕微鏡形態を示す図である。
図3】本発明を利用せずに調製されたアルミニウム合金のミクロ組織及び結晶粒サイズを示す図である。
図4】本発明を利用して調製されたアルミニウム合金のミクロ組織及び結晶粒サイズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施例に関連して、本発明における技術案を明確且つ完全に説明する。説明される実施例は本発明の全ての実施例ではなく、一部の実施例に過ぎないことは明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わないことを前提に得られる全ての他の実施例は、本発明の保護の範囲に属す。
【実施例0023】
実施例1
本発明は、Al-Si系高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法に関するものであり、その具体的なステップは以下の通りである。
【0024】
(1)トリメチルアルミニウムをジメチルホルムアミドに溶解させ、アンモニア水を滴下して混合溶液を得て、トリメチルアルミニウムと、ジメチルホルムアミドと、アンモニア水とのモル比が1:0.6:0.1であり、混合溶液を恒温水槽に入れ、75℃で5h恒温保持し、冷却してトリメチルアルミニウムアミド中間体含有溶液を得る。
【0025】
(2)回転蒸発装置を用いて溶液からトリメチルアルミニウムアミド中間体を分離し、ボールミーリング缶に入れるとともに、粒径100nmのZL101合金(中国記号、Al-Si系合金)粉末を秤量してボールミーリング缶に入れ、アルミニウム合金粉末とトリメチルアルミニウムアミド中間体とのモル比を1:0.2として、真空度0.1Pa、回転速度300r/minでボールミーリングを6h行う。
【0026】
(3)ボールミーリング後の混合粉体を真空度0.5Pa、温度400℃の真空高温炉に入れ、2h恒温保持し、図1に示すように、窒化アルミニウムとAl-Si系合金の混合粉体を得る。図1から分かるように、上記方法により、ナノメートルオーダーのAlNとAl-Si系合金混合粉体を得ることができ、粉体粒径の均一性が良く、表面汚染がない。
【0027】
(4)ナノメートルオーダーのAlNとAl-Si系合金混合粉体を金型に充填し、冷間等方圧プレス+空気炉による焼結により(焼結温度600℃、時間0.5h)、高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料を得ることができ、得られたアルミニウム合金材料を透過電子顕微鏡でサンプリング観察したところ、そのTEM形態は図2に示すようである。図2から分かるように、材料中のAlN強化相がアルミニウムマトリックス中で均一に分散分布し、AlNとアルミニウムマトリックス間のミクロ界面間に不純物がなく、界面結合が良好である。
【0028】
対照として、AlN強化相が添加されていないアルミニウム合金材料の調製方法は、対応する合金粉末(本実施例ではAl-Si系合金粉末)を直接金型に充填し、冷間等方圧プレス+空気炉による焼結により(焼結温度600℃、時間0.5h)、アルミニウム合金材料を得ることである。
【0029】
本発明を利用して調製された高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料は、AlN強化相を添加していない500μm程度から約60μmまで結晶粒サイズが低下し、両者の結晶粒サイズの写真を図3及び図4に示す。顕著な結晶粒微細化強化効果により、材料の引張強度は210MPaから260Mpaに向上した。熱伝導率の高いAlNを添加することにより、材料の熱伝導率も150.8W/(m・K)から172.3W/(m・K)に向上し、機械的特性と熱伝導性を両立したアルミニウム合金材料を得た。
【実施例0030】
実施例2
本発明は、Al-Cu系高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法に関するものであり、その具体的なステップは以下の通りである。
【0031】
(1)トリエチルアルミニウムをジメチルアセトアミドに溶解させ、アンモニア水を滴下して混合溶液を得て、トリエチルアルミニウムと、ジメチルアセトアミドと、アンモニア水とのモル比が1:0.4:0.23である。混合溶液を恒温水槽に入れ、80℃で4h恒温保持し、冷却してトリエチルアルミニウムアミド中間体含有溶液を得る。
【0032】
(2)高速遠心機を用いて溶液からトリエチルアルミニウムアミド中間体を分離し、ボールミーリング缶に入れるとともに、粒径200nmのZL203合金(中国記号、Al-Cu系合金)粉末を秤量してボールミーリング缶に入れ、アルミニウム合金粉末とトリエチルアルミニウムアミド中間体とのモル比を1:0.3として、真空度0.5Pa、回転速度100r/minでボールミーリングを4h行う。
【0033】
(3)ボールミーリング後の混合粉体を真空度1Pa、温度450℃の真空高温炉に入れ、1h恒温保持し、窒化アルミニウムとAl-Cu系合金の混合粉体を得る。
【0034】
(4)ナノメートルオーダーのAlNとAl-Cu系合金混合粉体を金型に充填し、熱間等方圧プレス及び空気焼結により(焼結温度630℃、時間0.5h)、高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料を得ることができる。
【0035】
対照として、AlN強化相が添加されていないアルミニウム合金材料の調製方法は、対応する合金粉末(本実施例ではAl-Cu系合金粉末)を直接金型に充填し、熱間等方圧プレス+空気炉による焼結により(焼結温度630℃、時間0.5h)、アルミニウム合金材料を得ることである。
【0036】
本発明を利用して調製された高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料は、AlN強化相を添加していない560μm程度から約80μmまで結晶粒サイズが低下する。顕著な結晶粒微細化強化効果により、材料の引張強度は205MPaから278MPaに向上した。熱伝導率の高いAlNを添加することにより、材料の熱伝導率も154.9W/(m・K)から179.6W/(m・K)に向上し、機械的特性と熱伝導性を両立したアルミニウム合金材料を得た。
【実施例0037】
実施例3
本発明は、Al-Mg系高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法に関するものであり、その具体的なステップは以下の通りである。
【0038】
(1)トリイソブチルアルミニウムをジメチルアセトアミドに溶解させ、アンモニア水を滴下して混合溶液を得て、トリイソブチルアルミニウムと、ジメチルホアセトアミドと、アンモニア水とのモル比が1:0.7:0.05であり、混合溶液を恒温水槽に入れ、65℃で6h恒温保持し、冷却してトリイソブチルアルミニウムアミド中間体含有溶液を得る。
【0039】
(2)高速遠心機を用いて溶液からトリイソブチルアルミニウムアミド中間体を分離し、ボールミーリング缶に入れるとともに、粒径50nmのZL303合金(中国記号、Al-Mg系合金)粉末を秤量してボールミーリング缶に入れ、アルミニウム合金粉末とトリイソブチルアルミニウムアミド中間体とのモル比を1:0.1として、真空度0.01Pa、回転速度400r/minでボールミーリングを8h行う。
【0040】
(3)ボールミーリング後の混合粉体を真空度0.1Pa、温度350℃の真空高温炉に入れ、3h恒温保持し、窒化アルミニウムとAl-Mg系合金の混合粉体を得る。
【0041】
(4)ナノメートルオーダーのAlNとAl-Mg系合金混合粉体を金型に充填し、急速焼結により(焼結温度580℃、時間1h)、高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料を得ることができる。
【0042】
対照として、AlN強化相が添加されていないアルミニウム合金材料の調製方法は、対応する合金粉末(本実施例ではAl-Mg系合金粉末)を直接金型に充填し、急速焼結により(焼結温度580℃、時間1h)、アルミニウム合金材料を得ることである。
【0043】
本発明を利用して調製された高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料は、AlN強化相を添加していない450μm程度から約36μmまで結晶粒サイズが低下する。顕著な結晶粒微細化強化効果により、材料の引張強度は148MPaから189MPaに向上した。熱伝導率の高いAlNを添加することにより、材料の熱伝導率も125.6W/(m・K)から160.7W/(m・K)に向上し、機械的特性と熱伝導性を両立したアルミニウム合金材料を得た。
【実施例0044】
実施例4
本発明は、Al-Zn系高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料の調製方法に関するものであり、その具体的なステップは以下の通りである。
【0045】
(1)二塩化エチルアルミニウムをジメチルアセトアミドに溶解させ、アンモニア水を滴下して混合溶液を得て、二塩化エチルアルミニウムと、ジメチルアセトアミドと、アンモニア水とのモル比が1:0.5:0.17である。混合溶液を恒温水槽に入れ、70℃で4.5h恒温保持し、冷却して二塩化エチルアルミニウムアミド中間体含有溶液を得る。
【0046】
(2)高速遠心機を用いて溶液から二塩化エチルアルミニウムアミド中間体を分離し、ボールミーリング缶に入れるとともに、粒径150nmのZL402合金(中国記号、Al-Zn系合金)粉末を秤量してボールミーリング缶に入れ、アルミニウム合金粉末と二塩化エチルアルミニウムアミド中間体とのモル比を1:0.15として、真空度0.4Pa、回転速度200r/minでボールミーリングを6.5h行う。
【0047】
(3)ボールミーリング後の混合粉体を真空度0.8Pa、温度370℃の真空高温炉に入れ、2.5h恒温保持し、窒化アルミニウムとAl-Zn系合金の混合粉体を得る。
【0048】
(4)ナノメートルオーダーのAlNとAl-Zn系合金混合粉体を金型に充填し、放電プラズマ焼結により(焼結温度590℃、時間0.8h)、高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料を得ることができる。
【0049】
対照として、AlN強化相が添加されていないアルミニウム合金材料の調製方法は、対応する合金粉末(本実施例ではAl-Zn系合金粉末)を直接金型に充填し、放電プラズマ焼結により(焼結温度590℃、時間0.8h)、アルミニウム合金材料を得ることである。
【0050】
本発明を利用して調製された高強度高熱伝導性アルミニウム合金材料は、AlN強化相を添加していない480μm程度から約73μmまで結晶粒サイズが低下する。顕著な結晶粒微細化強化効果により、材料の引張強度は235MPaから287Mpaに向上した。熱伝導率の高いAlNを添加することにより、材料の熱伝導率も138W/(m・K)から157W/(m・K)に向上し、機械的特性と熱伝導性を両立したアルミニウム合金材料を得た。
図1
図2
図3
図4