(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052736
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】加齢性黄斑変性症(AMD)におけるスタチン療法の機能的バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240405BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240405BHJP
A61K 31/435 20060101ALI20240405BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20240405BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20240405BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20240405BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20240405BHJP
A61K 31/40 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P27/02
A61K31/435
A61K31/403
A61K31/44
A61K31/505
A61K31/365
A61K31/40
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023193444
(22)【出願日】2023-11-14
(62)【分割の表示】P 2020522711の分割
【原出願日】2018-10-17
(31)【優先権主張番号】62/573,293
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520133927
【氏名又は名称】アペリオタス・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】596114853
【氏名又は名称】マサチューセッツ・アイ・アンド・イア・インファーマリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジー・エドワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン・ダブリュ・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】デミトリオス・ババス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA20
4C084ZA331
4C084ZA332
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加齢性黄斑変性症(AMD)に対するスタチン療法の臨床試験の方法を提供する。
【解決手段】AMDのスタチン療法の機能的バイオマーカーとして、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、および暗所感度などの視覚機能を使用する方法。これらのバイオマーカーは、例えば、反応する可能性がより高い参加者を特定すること、反応の初期兆候を提供すること、もしくはエンドポイントとして機能することによって、AMDのスタチン療法の臨床試験をサポートするために使用でき、または、反応する可能性がより高い患者を特定すること、応答者対非応答者の初期兆候を提供すること、もしくは治療の利点を確認することによって、スタチンを用いるAMD患者の治療をサポートするために使用できる。
【選択図】
図3N
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対象におけるAMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験を実施するための方法であって、
a.任意選択で、AMDを有するとして前記複数の対象を特定するか、または前記複数の対象を特定させる工程と、
b.前記複数の対象に前記スタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、
c.前記複数の対象における1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、
d.工程cの1つ以上の測定値から、前記複数の対象のそれぞれのベースライン値を決定するか、または決定させる工程と、
e.前記複数の対象における前記1つ以上の機能的バイオマーカーを、1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で測定するか、または測定させる工程と、
f.工程eの前記1つ以上の測定値から、前記複数の対象のそれぞれについて対応する後続の値を決定するか、または決定させる工程と、
g.臨床試験のエンドポイントとして、前記後続の値のベースライン値またはより初期の後続の値との比較を使用する工程と、
h.任意選択で、前記臨床試験のエンドポイントに基づいて動作を実行する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
1つ以上の機能的バイオマーカーを測定することは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度のうちの1つ以上を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能的バイオマーカーが暗順応である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベースライン値および後続の値は、桿体切片時間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記桿体切片時間は、
a.70%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
b.76%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
c.70%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、
d.70%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、
e.76%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、または
f.76%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、の条件下で暗順応計を使用して決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記5°または12°の偏心度テスト位置は、下視野子午線を中心とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
桿体切片基準感度レベルが5×10-2暗所cd/m2~5×10-4暗所cd/m2であるか、または5×10-3暗所cd/m2である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記スタチン療法が、1日40mg~120mgの用量のアトルバスタチンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記スタチン療法が、1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な用量~120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量の、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記臨床試験のエンドポイントが、主要または登録エンドポイント、または二次的または探索的エンドポイントである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記臨床試験のエンドポイントが、前記臨床試験中の暫定的な期間における有効性の初期兆候を提供するために使用される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記動作が
a.前記臨床試験中の暫定的な期間に有効性の初期兆候を決定するか、もしくは決定させること、
b.前記臨床試験を継続することを決定するか、もしくは決定させること、
c.前記臨床試験を終了するか、もしくは終了させること、
d.前記臨床試験に追加の対象を追加するか、もしくは追加させること、
e.前記臨床試験のパラメータを変更するか、もしくは変更させること、
f.または前述の組み合わせ、である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
AMDを有し、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験に参加しているか、または参加する可能性がある複数の対象を階層化するための方法であって、
a.任意選択で、AMDを有するとして前記複数の対象のそれぞれを特定するか、または前記複数の対象のそれぞれを特定させる工程と、
b.前記複数の対象のそれぞれにおける1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、
c.前記複数の対象のそれぞれの対象値を提供するために、工程bの前記1つ以上の測定値から前記複数の対象のそれぞれの対象値を決定するか、または決定させる工程と、
d.前記対象値に基づいて前記複数の対象を階層化する工程と、を含む、方法。
【請求項14】
1つ以上の機能的バイオマーカーを測定することは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度のうちの1つ以上を測定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記機能的バイオマーカーが暗順応である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記対象値が桿体切片時間である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記桿体切片時間は、
a.70%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
b.76%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
c.70%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、
d.70%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、
e.76%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、または
f.76%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、の条件下で暗順応計を使用して決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記5°または12°の偏心度テスト位置は、下視野子午線を中心とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
桿体切片基準感度レベルが5×10-2暗所cd/m2~5×10-4暗所cd/m2であるか、または5×10-3暗所cd/m2である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記スタチン療法が、1日40mg~120mgの用量のアトルバスタチンである、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記スタチン療法が、1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な用量~120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量の、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンである、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象がAMD状態に基づいてさらに階層化される、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記AMD状態が、初期AMD、中期AMD、または後期AMDである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験において、対象におけるスタチン療法に対する反応の初期兆候を特定するための方法であって、
a.任意選択で、AMDを有するとして前記対象を特定するか、または前記対象を特定させる工程と、
b.前記対象に前記スタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、
c.前記対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、
d.工程cの前記1つ以上の測定値から前記対象のベースライン値を決定するか、または決定させる工程と、
e.1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で前記対象の前記1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、
f.工程eの前記1つ以上の測定値から対応する後続の値を決定するか、または決定させる工程と、
g.前記後続の値の前記ベースライン値またはより初期の後続の値との比較が初期兆候基準を満たしている場合、前記対象の前記スタチン療法に対する反応の初期兆候を特定する工程と、を含む、方法。
【請求項25】
1つ以上の機能的バイオマーカーを測定することは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度のうちの1つ以上を測定することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記機能的バイオマーカーが暗順応である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ベースライン値および後続の値が、桿体切片時間である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記桿体切片時間は、
a.70%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
b.76%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
c.70%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、
d.70%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、
e.76%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、または
f.76%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、の条件下で暗順応計を使用して決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記5°または12°の偏心度テスト位置は、下視野子午線を中心とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
桿体切片基準感度レベルが5×10-2暗所cd/m2~5×10-4暗所cd/m2であるか、または5×10-3暗所cd/m2である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記方法が使用されて、前記臨床試験の暫定的な期間に有効性の初期兆候を提供し、前記臨床試験の継続または前記臨床試験の終了の決定を行う、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記初期兆候基準が、
a.前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して、前記後続の値に変化がないこと、
b.前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較した前記後続の値の改善、または
c.前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して、前記後続の値での10%未満の悪化、である、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
初期兆候基準が
a.前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して、前記後続の値に変化がないこと、
b.前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較した前記後続の値の改善、または
c.前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して、前記後続の値で180秒未満の悪化、である、請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験への参加または臨床試験からの除外の対象を選択または特定するための方法であって、
a.任意選択で、AMDを有するとして前記対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、
b.前記対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、
c.工程bの前記1つ以上の測定値から前記対象の対象値を決定するか、または決定させる工程と、
d.前記対象値を対応する参照範囲と比較する工程と、
e.前記対象値が前記対応する参照範囲内にある場合は、前記参加対象を選択もしくは特定するか、または前記対象値が前記対応する参照範囲外にある場合は、除外対象を選択もしくは特定する工程と、を含む、方法。
【請求項35】
1つ以上の機能的バイオマーカーを測定することは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度のうちの1つ以上を測定することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記機能的バイオマーカーが暗順応である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記対象値は、桿体切片時間である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記桿体切片時間は、
a.70%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
b.76%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
c.70%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、
d.70%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、
e.76%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、または
f.76%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、の条件下で暗順応計を使用して決定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記5°または12°の偏心度テスト位置は、下視野子午線を中心とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記桿体切片基準感度レベルが5×10-2暗所cd/m2~5×10-4暗所cd/m2であるか、または5×10-3暗所cd/m2である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記スタチン療法が、1日40mg~120mgの用量のアトルバスタチンである、請求項34~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記スタチン療法が、1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な用量~120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量の、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンである、請求項34~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象がAMD状態に基づいてさらに選択される、請求項34~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記AMD状態が早期AMD、中期AMD、または後期AMDである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
スタチンで対象を治療するための方法であって、前記対象がAMDに罹患しており、前記方法は、
a.前記対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、
b.工程aの前記1つ以上の測定値から前記対象のベースライン値を決定するか、または決定させる工程と、
c.最初のスタチン用量で前記対象にスタチン治療を投与するか、または投与を継続させる工程と、
d.1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で前記対象の前記1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、
e.工程dの前記1つ以上の測定値から前記対象の後続の値を決定するか、または決定させる工程と、
f.前記後続の値と前記ベースライン値、または前記後続の値とより初期の後続の値に基づいて治療の決定を行う工程であって、前記治療の決定は、
i.変更なしに前記スタチン治療を継続すること、
ii.投与される前記スタチンの用量を増減して前記スタチン治療を継続すること、
iii.同じ等価用量、より高い等価用量、またはより低い等価用量のいずれかで、最初に投与されたスタチンとは異なるスタチンを用いてスタチン療法を継続すること、または
iv.スタチン治療を中止すること、である、治療の決定を行う工程と、を含む、方法。
【請求項46】
工程fは、
a.前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して後続が改善されている場合、最初のスタチン用量での前記スタチン治療を用いて前記対象を継続して治療すること、
b.初期スタチン用量での前記スタチン治療を用いて前記対象の治療を継続すること、増加もしくは減少したスタチン用量での前記スタチン療法を用いて患者の治療を継続すること、または前記後続の値が、前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して10%未満の変化を示すこと、あるいは
c.前記後続の値が前記ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して10%以上の悪化を示す場合に、前記スタチン治療を用いる前記対象の治療を中止すること、をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
1つ以上の機能的バイオマーカーを測定することは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度のうちの1つ以上を測定することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記機能的バイオマーカーが暗順応である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記ベースライン値および後続の値が、桿体切片時間である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記桿体切片時間は、
a.70%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
b.76%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
c.70%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、
d.70%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、
e.76%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、または
f.76%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、の条件下で暗順応計を使用して決定される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記5°または12°の偏心度テスト位置は、前記下視野子午線を中心とする、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記桿体切片基準感度レベルは、5×10-2暗所cd/m2~5×10-4暗所cd/m2であるか、または5×10-3暗所cd/m2である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の時点もしくはそれ以降の時点が、前記スタチン治療の投与後30日、60日、90日、180日、270日または365日のうちの1つ以上である、請求項45~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記第2の時点もしくはそれ以降の時点が、前記スタチン治療の投与後90日である、請求項45~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記スタチン治療がアトルバスタチンであり、初期用量が1日40mg~120mgである、請求項45~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記スタチン治療が、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、初期用量が1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な用量~120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量である、請求項45~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記増加したスタチン用量が、初期スタチン用量の1.5倍から10倍である、請求項45~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記対象が、臨床的評価の後に早期AMDまたは中期AMDを有すると決定される、請求項45~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
スタチン療法を用いる治療のために対象を選択する方法であって、前記対象はAMDに罹患しており、前記方法は、
a.前記対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、
b.工程aの前記1つ以上の測定値から前記対象の対象値を決定するか、または決定させる工程と、
c.前記対象値を対応する参照範囲と比較する工程と、
d.前記対象値が前記参照範囲内にある場合、前記スタチン療法を用いる治療の前記対象を選択するか、または前記対象値が前記参照範囲外である場合、前記スタチン療法を用いる治療の前記対象を選択しない工程と、を含む、方法。
【請求項60】
1つ以上の機能的バイオマーカーを測定することは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度のうちの1つ以上を測定することを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記機能的バイオマーカーが暗順応である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記対象値は、桿体切片時間である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記桿体切片時間は、
a.70%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
b.76%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
c.70%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、
d.70%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、
e.76%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、または
f.76%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、の条件下で暗順応計を使用して決定される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記5°または12°の偏心度テスト位置は、前記下視野子午線を中心とする、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記桿体切片基準感度レベルは、5×10-2暗所cd/m2~5×10-4暗所cd/m2であるか、または5×10-3暗所cd/m2である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記スタチン療法が、1日40mg~120mgの用量のアトルバスタチンである、請求項59~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記スタチン療法が、1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な用量~120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量の、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンである、請求項59~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記対象がAMD状態に基づいてさらに選択される、請求項59~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記AMD状態が、初期AMD、中期AMD、または後期AMDである、請求項68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、AMDにおけるスタチン療法の機能的バイオマーカーとして、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、および暗所感度などの視覚機能を使用する方法が記載される。これらのバイオマーカーは、例えば、反応する可能性がより高い参加者を特定することにより、反応の初期兆候を提供することにより、もしくはエンドポイントとして機能することにより、AMDのスタチン療法の臨床試験をサポートするために使用でき、または、反応する可能性がより高い患者を特定することにより、応答者対非応答者の初期兆候を提供することにより、もしくは治療の利点を確認することにより、スタチンによるAMD患者の治療をサポートするために使用できる。
【背景技術】
【0002】
加齢性黄斑変性症(AMD)は多因子性の不均一な疾患であり、少なくとも100種類のリスクのある遺伝子が文献で報告されており、ドルーゼンの種類およびサイズなど、いくつかの異なる表現型を有する(Miller、2013 Am J Ophthalmol 155(1):1-35.e13)。AMDは、西洋世界の成人における不可逆的な失明の主な原因である(Wongら、2014 Lancet Glob Health 2(2):e106-16)。
【0003】
AMDは2つのタイプに大きく分類される。萎縮型または「乾燥」型が最も一般的であり、ドルーゼンと呼ばれる、網膜色素上皮(RPE)と脈絡膜との間の細胞外沈着物の蓄積を特徴とする。進行したAMDへの進行は、例えば、RPEおよび/もしくは1つ以上の光受容体の萎縮、ならびに/または異常な脈絡膜血管新生(血管新生または「湿性」AMD)を含み得る。乾燥型ほど一般的ではないが、血管新生性AMDは急速な視力低下を伴う。しかし、血管新生性AMDのための効果的な抗血管新生治療にもかかわらず、より一般的な乾燥型のための効果的な治療法を欠いている。
【0004】
AMDの特徴的な徴候の1つはドルーゼンの蓄積であり、その成分は局所組織(RPE/網膜)と循環に由来する(Curcioら、2011 Br J Ophthalmol 95(12):1638-45;Wuら、2010 J Neurochem 114(6):1734-44)。AMDには、1つ以上のドルーゼンが存在するために網膜色素上皮が下層のブルッフ膜から分離するドルセノイド色素上皮剥離(PED)も付随している。ドルーゼンは硬性ドルーゼンまたは軟性ドルーゼンであり得る。「硬性」ドルーゼンは小さく、はっきりと区別されており、互いに遠く離れており、仮にあったとしても長時間の視覚障害を引き起こすことはありそうにない。「軟性」ドルーゼンはエッジの定義が不十分であり、大きく、互いに密接にクラスターを形成する。脂質はドルーゼンの主要成分であり、エステル化コレステロール(EC)、非エステル化コレステロール(UC)、および硬性ドルーゼンの体積の40%を構成するホスファチジルコリンを含む。軟性ドルーゼンは、硬性ドルーゼンよりも壊れやすく、解剖時に油性であり、高脂質構成と一致している。軟性ドルーゼンの存在は、その後の高度な乾性または湿性AMDの発症の主要な危険因子の1つである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Miller、2013 Am J Ophthalmol 155(1):1-35.e13
【非特許文献2】Wongら、2014 Lancet Glob Health 2(2):e106-16
【非特許文献3】Curcioら、2011 Br J Ophthalmol 95(12):1638-45
【非特許文献4】Wuら、2010 J Neurochem 114(6):1734-44
【発明の概要】
【0006】
AMDのスタチン療法の臨床試験およびその他の研究をより実用的で手頃な価格にするために、およびスタチン療法を使用したAMD患者の治療におけるリスクを軽減するために、AMDの病理に対してより敏感なバイオマーカー、特に、スタチン療法の作用機序に関連している特定の機能的バイオマーカーについての必要性が存在している。本明細書に開示されるように、暗順応、低輝度視力、低輝度赤字、コントラスト感度、および暗所感度などの視覚機能は、AMDにおける機能的バイオマーカーとして使用することができる。これらのバイオマーカーは、例えば、反応する可能性がより高い参加者を特定すること、反応の初期兆候を提供すること、もしくはエンドポイントとして機能することにより、AMDのスタチン療法の臨床試験をサポートするために使用でき、または、反応する可能性がより高い患者を特定することにより、応答者対非応答者の初期兆候を提供することにより、もしくは治療の利点を確認/実証することにより、スタチンによるAMD患者の治療をサポートするために使用できる。
【0007】
加齢性黄斑変性症(AMD)を有する対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定してベースライン値(すなわち、1つ以上の機能的バイオマーカー測定に基づく、またはそれに由来する値)を提供すること、スタチンを含む治療を対象に施すこと、1つ以上の機能的バイオマーカーを測定して、対応する後続の値(すなわち、1つ以上の機能的バイオマーカー測定からのベースライン値と同じ様式で決定された値)を第2の時点もしくはそれ以降の時点で提供すること、任意選択で、ベースライン値を対応する後続の値と比較することを含む、方法が本明細書に記載される。
【0008】
また、本明細書には、対象におけるAMDの治療の有効性を決定または予測するための方法が記載されており、この治療はスタチンの投与を含む。特定の実施形態では、AMDのためのそのような治療は、目的として、対象におけるAMDの進行を予防または遅延させること(例えば、RPEの萎縮を予防または遅延させること、1つ以上の光受容体の萎縮を予防または遅延させること、失明を予防または遅延させること、および/または早期AMDから進行したAMDへの進行を予防または遅延させること)を有し得る。特定の実施形態では、そのようなAMDの治療は、目的として、対象におけるAMDの退行(例えば、ドルーゼンの退行、PEDの退行、および/または視力の改善)を有し得る。この方法には、対象がAMDを有すると特定すること、対象の1つ以上の機能バイオマーカーを測定してベースライン値を提供すること、対象にスタチン治療を施すこと、1つ以上の機能的バイオマーカーを測定して、第2の時点もしくはそれ以降の時点において対応する後続の値を提供すること、および任意選択で、ベースライン値を対応する後続の値と比較することが含まれる。いくつかの実施形態では、ベースライン値からの改善または変化がないことは、治療が対象におけるAMDの治療のために有効であるか、または有効である可能性が高いことを示す。例えば、治療の目標が対象のAMDの進行を停止することまたは遅延させることである場合、ベースライン値からの変化がないことは、治療が有効であるか、または有効である可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、ベースライン値からの悪化または変化がないことは、治療が対象におけるAMDの治療に無効であるか、または無効である可能性が高いことを示す。例えば、治療の目標が対象のAMDの退行である場合、ベースライン値からの変化がないことは、治療が無効であるか、無効である可能性が高いことを示す。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つ以上の機能的バイオマーカーを測定することは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度のうちの1つ以上を測定することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の時点もしくはそれ以降の時点は、治療開始後の約1、2、3、4、5、6、8、9、10、11、12、24、および/または36週間、30、60、90、180、270および/または365日、あるいは1、2、3、および/または4四半期のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、第2の時点もしくはそれ以降の時点は、ベースライン値が決定された後の約1、2、3、4、5、6、8、9、10、11、12、24、および/または36週間、30、60、90、180、270および/または365日、あるいは1、2、3、4四半期のうちの1つ以上である。
【0011】
いくつかの実施形態では、対象は、臨床試験のためにスクリーニングされている候補者、または臨床試験の参加者である。いくつかの実施形態では、対象は臨床試験中ではない。いくつかの実施形態では、対象は、臨床試験から離れている医師によって管理されている患者である。
【0012】
いくつかの実施形態では、ベースライン値と対応する後続の値との比較は、臨床試験の成功または失敗を決定する主要または登録エンドポイントとして、臨床試験の二次的エンドポイントとして、またはAMDの患者へのスタチンの投与を含む臨床試験における探索的エンドポイントとして使用される。
【0013】
本明細書では、AMDを有する対象の療法を選択する(または治療の療法を選択する)方法も提供される。この方法は、AMDを有するとして対象を特定することと、対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定して、対象値(すなわち、1つ以上の機能的バイオマーカー測定に基づく、またはそれに由来する値)を決定することと、対象値を対応する参照範囲(すなわち、対象値の参照範囲)と比較することとを含む。この方法はまた、対象が参照範囲内の対象値を有するとして特定すること、対象のためのスタチン投与を含む療法を選択すること、または対象が参照範囲外の対象値を有するとして特定することと、対照のためにスタチン投与を含まない療法を選択することも任意選択で含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、参照範囲内の対象値の存在は、対象がスタチン療法による治療のために適していることを示す。
【0015】
いくつかの実施形態では、この方法は、参照範囲内の対象値を有する対象にスタチン投与を含む療法を施すことを含む。
【0016】
本明細書では、AMDのスタチン療法の臨床試験への参加または臨床試験からの除外のために対象を選択または特定するための方法もまた提供される。この方法は、任意選択で、対象がAMDを有すると特定すること、対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定して、対象値を提供すること、対象値を対応する参照範囲と比較すること、対応する参照範囲内の対象値を有し、試験に含めるのに適切であると対象を特定すること、または対応する参照範囲外の対象値を有し、試験からの除外に適切であると対象を特定することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法は、含めるのに適切であると特定された対象を臨床試験に含めることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、除外に適切であると特定された対象を臨床試験から除外することを含む。
【0018】
本明細書では、AMDを有し、AMDのスタチン療法の臨床試験に参加している対象を階層化するための方法も提供される。この方法は、各対象の対象値を提供するために、対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定して、対象値に基づいて対象を階層化することを含む。
【0019】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、1つ以上の機能的バイオマーカーを測定することは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度のうちの1つ以上を測定することを含む。
【0020】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書では、本発明で使用するための方法および材料が説明され、当技術分野で知られている他の適切な方法および材料を使用することもできる。特定の方法が特定のタスクまたは結果を達成するために参照される場合、本明細書で特に明記しない限り、特定の方法は、当技術分野で知られている他の方法で置き換えることはできない。材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。本明細書に記載されているすべての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、およびその他の参考文献は、特に指定のない限り、参照によりその全体が組み込まれる。参照により組み込まれる情報と本明細書との間に矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先する。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ドルーゼン形成の過程を例示する(Miller、2016 Invest Ophthalmol Vis Sci.57:6911-6918から改作)。
【
図3A】患者2(OD)についての代表的な眼底写真を示す(テスト日8-11-15)。
【
図3B】患者2(OD)の代表的なOCT網膜画像を示す(テスト日8-11-15)。
【
図3C】
図3BのOCT画像から導出された網膜の平均厚さ(μM)および平均体積(mm
3)を示す。
【
図3D】患者2(OD)の代表的な眼底写真を示す(テスト日12-22-15)。
【
図3E】患者2(OD)の代表的なOCT網膜画像を示す(テスト日12-22-15)。
【
図3F】
図3EのOCT画像から導出された網膜の平均厚さ(μM)および平均体積(mm
3)を示す。
【
図3G】
図3Cおよび3Fのデータから導出された網膜の平均厚さ(μM)および平均体積(mm
3)の平均変化を示す。
【
図3H】患者2(OS)の代表的な眼底写真を示す(テスト日2-12-16)。
【
図3I】患者2(OS)の代表的なOCT網膜画像を示す(テスト日2-12-16)。
【
図3J】
図3IのOCT画像から導出された網膜の平均厚さ(μM)および平均体積(mm
3)を示す。
【
図3K】患者2(OS)の代表的な眼底写真を示す(テスト日8-5-16)。
【
図3L】患者2(OS)の代表的なOCT網膜画像を示す(テスト日8-5-16)。
【
図3M】
図3LのOCT画像から導出された網膜の平均厚さ(μM)および平均体積(mm
3)を示す。
【
図3N】
図3Jおよび3Mのデータから導出された網膜の平均厚さ(μM)および平均体積(mm
3)の平均変化を示す。
【
図4A】患者2(OD)の暗順応結果を示す。テストの日付は1-26-15であり、患者はテスト日で68歳であった。瞳孔サイズは7.00mmであった。+4.0の球面補正および-1.0X111°の円筒補正が使用された。RI時間は18.72分と決定された。
【
図4B】患者2(OS)の暗順応結果を示す。詳細は
図4Aと同じであるが、+1.0X84°の円筒補正が使用された。RI時間は9.88分と決定された。
【
図4C】患者2(OD)の暗順応結果を示す。テストの日付は7-30-18で、患者はテスト日で72歳であった。瞳孔サイズは4.50mmであった。+3.0の球面補正が使用された。RI時間は17.05分と決定された。
【
図4D】患者2(OS)の暗順応結果を示す。詳細は
図4Cと同じである。RI時間は7.28分と決定された。
【
図5A】患者5(OD)の代表的な眼底写真およびOCT画像を示す。テストの日付は1-26-14であった。
【
図5B】患者5(OS)の代表的な眼底写真およびOCT画像を示す。テストの日付は1-26-14であった。
【
図5C】患者5(OD)の代表的な眼底写真およびOCT画像を示す。テストの日付は4-9-18であった。
【
図5D】患者5(OS)の代表的な眼底写真およびOCT画像を示す。テストの日付は4-9-18であった。
【
図6A】患者5(OD)の暗順応結果を示す。テストの日付は10-16-15で、患者はテスト日で72歳であった。瞳孔サイズは8.00mmであった。+6.0の球面補正および-1.0X68°の円筒補正が使用された。RI時間は9.68分と決定された。
【
図6B】患者5(OS)の暗順応結果を示す。詳細は
図6Aと同じであるが、+7.0の球面補正および+1.0X103°の円筒補正が使用された。RI時間は11.04分と決定された。
【
図6C】患者5(OD)の暗順応結果を示す。テストの日付は6-4-18で、患者はテスト日で75歳であった。瞳孔サイズは7.00mmであった。RI時間は17.19分と決定された。
【
図6D】患者5(OS)の暗順応結果を示す。詳細は
図6Cと同じである。RI時間は10.81分と決定された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に開示されるように、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、および暗所感度などの視覚機能がAMDの治療のためのスタチン投与を受ける対象における機能的バイオマーカーとして使用することができる。これらの機能的バイオマーカーは、例えば、反応する可能性がより高い参加者を特定することにより、反応の初期兆候を提供することにより、またはエンドポイントとして機能することにより、AMDのスタチン療法の臨床試験をサポートするために使用できる。これらはまた、反応する可能性がより高い患者を特定することにより、応答者対非応答者の初期兆候を提供することにより、または治療の利点を確認/実証することにより、スタチン療法によるAMD患者の治療をサポートするために使用できる。
【0024】
本明細書において、記載されている機能的バイオマーカーは視覚機能の側面を表し、本明細書に記載されている様々なパラメータによって特徴付けることができる。本明細書では、機能的バイオマーカーを特徴付ける様々なパラメータを使用して、対象の特徴付け、対象の評価、またはAMDのスタチン治療/療法に対する対象の反応(本明細書で説明する、対象値、ベースライン値、および後続の値)を評価することができる。一例として、機能的なバイオマーカーの暗順応は、桿体切片時間として知られるパラメータによって特徴付けることができる。桿体切片時間は、暗順応の測定から決定され、本明細書では、記載された方法における対象値、ベースライン値、および後続値と呼ばれる。
【0025】
開示された機能的バイオマーカーは、炎症、酸化ストレス、網膜細胞代謝障害などのAMDのいくつかの側面の影響を受ける。特に興味深いのは、AMD疾患プロセスの初期段階が、ドルーゼンと呼ばれるコレステロールの細胞外沈着物が網膜に蓄積することによって特徴付けられることである。従来のドルーゼンは、網膜色素上皮の基底膜(RPE)とブルッフ膜(BM)との間に形成される。
図1に示すように、組織病理学的研究は、これらのドルーゼンは黄斑に広がる薄い層(基底線状堆積物またはBlinDとして知られる)として開始し、より厚い蓄積領域(基底層状堆積物またはBlamDとして知られる)に進行することを示している(Curcioら、2011 Br J Ophthalmol 95:1638-1645;Miller、2016 Invest Ophthalmol Vis Sci 57:6911-6918)。この蓄積は最終的にいくつかの位置で山になり、根底にあるコレステロールの氷山の先端として眼底写真で臨床的に検出できる。ドルーゼン蓄積のプロセスの1つの結果は、BMをコーティングするコレステロール層が、BMの片側のRPEと反対側の脈絡膜の間の輸送障壁として機能することである。この輸送障壁は、脈絡膜からRPEに到達する酸素および栄養素の供給と、反対方向に行く廃棄物の除去を妨げる。このことは、次には視覚サイクルに影響を与え、これが次には、開示された機能的バイオマーカーに影響を与える。
【0026】
開示された機能的バイオマーカーは、少なくとも部分的に視覚サイクルによって媒介される。視覚サイクルの生化学は、光受容体視覚色素(オプシン)の連続的な光退色と再生に集中している(Saari、2012 Annu Rev Nutr 32:125-45)。光受容体には、桿体、錐体、網膜神経節細胞の3種類がある。
図2は、桿体視覚色素(ロドプシン)の生化学を示しているが、錐体色素(フォトプシンI型、II型、およびIII型)と網膜神経節色素(メラノプシン)の生化学は非常に似ていると考えられている。ロドプシンは、11-シス-レチナールとタンパク質オプシンとからなり、桿体の外節にしっかりと結合している。11-シス-レチナールはロドプシンの光反応性部分であり、これは、活性吸収帯の光の光子が分子に当たると全トランス-レチナールに変換される。このプロセスは、11-シス-レチナールが全トランス-レチナールに異性化する際の一連の化学反応を経る。この一連の化学的工程の間、桿体視細胞に付着している神経線維は、最終的には視覚信号として脳内で知覚される刺激を受ける。11-シス-レチナールから全トランス-レチナールへの分解に続いて、11-シス-レチナールがオプシンタンパク質との組換えのために利用できるようになる一連の工程により、RPE細胞内で11-シス-レチナールが再生される。11-シス-レチナールの持続的な供給は、脈絡膜からRPE細胞に到達するビタミンAに由来する。上記の輸送障壁(BlinD、BlamD、および/またはドルーゼン)は、ビタミンAの補給を遅らせ、視覚サイクルを妨害し、そして次には、開示された機能的バイオマーカーに影響を与える。例えば、AMDの最も初期の段階においてさえ、暗順応に顕著な遅延があり、遅延の量は疾患の重症度とともに増加する(Jacksonら、2014 Invest Ophthalmol Vis Sci 55:1427-1431)。
【0027】
より最近では、コレステロールがRPEと光受容体の外節との間のRPEのエピカル側にも蓄積し、網膜下ドルーゼノイド沈着(SDD)または網状偽ドルーゼンとして知られるものを形成することが認識されている(Curcioら、2013 Retina 33(2):265-276)。メカニズムはまだ完全には理解されていないが、SDDは、例えば、暗順応など、開示されている機能的バイオマーカーに対して従来のドルーゼンよりもさらに大きな影響を有する(Flamendorfら、2015 Ophthalmology 122(10):2053-2062)。
【0028】
本明細書では、対象におけるAMDの治療のためのスタチン療法の開発または使用を含み得る方法が提供される。本明細書で使用される場合、「対象」は、哺乳動物、特にヒトであり、臨床試験中または臨床試験に申請中の対象、または臨床試験から離れている医師によって看護が管理されている対象が含まれる。「患者」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。例えば、提供される方法は、ドルーゼン(例えば、軟性ドルーゼン)を退行させること、PEDを退行させること、RPEの萎縮を予防または遅延すること、または1つ以上の光受容体の萎縮を予防または遅延すること、失明の予防または遅延すること、視覚(視力など)を改善すること、および/または早期AMDから進行型AMDへの進行(地理的萎縮または脈絡膜血管新生など)を予防または遅延することを意図する、スタチン療法の開発または使用をサポートするために使用できる。いくつかの実施形態において、対象は、軟性ドルーゼン、例えば、軟性ドルーゼンを有すると特定されたAMD対象におけるスタチン療法の開発または使用のための方法を有する。いくつかの実施形態では、対象は、臨床的評価後に、早期AMDを有すると決定され、例えば、早期AMDを有すると特定されたAMD対象におけるスタチン療法の開発または使用のための方法である。いくつかの実施形態では、対象は、臨床的評価後に中期AMDを有すると決定され、例えば、中期AMDを有すると特定されたAMD対象におけるスタチン療法の開発または使用のための方法である。いくつかの実施形態では、対象は、SDD、例えばSDDを有すると特定されたAMD対象におけるスタチン療法の開発または使用のための方法を有する。本明細書で使用する場合、「予防する」という用語は、すべての場合において、リスクを低減することを意味し、100%予防する必要はない。
【0029】
これらの方法は、ベースライン値を決定すること、および、それを第2の時点もしくはそれ以降の時点でベースライン値と同じ様式で決定された対応する後続の値と比較することを含むことができる。ベースラインおよび後続の値は、本明細書で論じられるような対象における1つ以上の機能的バイオマーカーの測定に基づくか、またはそれから導出される。いくつかの実施形態では、ベースラインおよび後続の値は、単に、任意の1つの機能的バイオマーカー測定に関連する出力であり得る(例えば、暗順応桿体切片時間または低輝度欠損の早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)レターの数)。しかし、ベースラインおよび後続の値の決定は、例えば、異常な機能を示す測定数の計数など、複数の機能的なバイオマーカー測定の組み合わせに基づくか、それらから導出することもできる(例えば、暗順応と低輝度の欠損が測定され、両方の測定値がそれぞれの正常範囲内にあるため、割り当てられる値は「0」であるか、1つだけが正常範囲内にあるため、割り当てられる値は「1」であるか、またはどちらも正常範囲内にないため、割り当てられる値は「2」である)。任意の組み合わせの様式を使用できる。
【0030】
これらの方法は、対象値を決定すること、それを対応する参照範囲と比較することを含むことができ、参照範囲内の対象値の存在は、例えば、対象がスタチン療法による治療に適しており、スタチン療法で治療可能であり、スタチン療法に反応する可能性が高く、スタチン療法による治療を継続するべきであり、またはスタチン療法による治療の臨床試験に含めるために選択されるべきであることを示す。対象値は、ベースラインおよび後続の値について上記に論じたのと同じ様式で対象の1つ以上の機能性バイオマーカーの測定に基づいているか、またはそれから導出される(つまり、対象値は、単に任意の1つの機能性バイオマーカー測定に関連する出力であり得るか、または、複数の機能的バイオマーカー測定値の組み合わせの任意の様式に基づくか、もしくはそれから導出することができる)。適切な参照範囲は、当技術分野で既知の方法を使用して、例えば、標準的な臨床試験方法論および統計分析を使用して決定することができる。参照範囲は、関連する任意の形式を有することができる。いくつかの場合において、参照範囲は、対象値の正常範囲を表す所定の範囲、例えば、影響を受けていない(健常な)対象もしくはAMDを発症するリスクがない対象の範囲、または、例えば、AMDを有する対象に関連する、対象の異常範囲を表す所定の範囲を含む。
【0031】
参照範囲は、例えば、通常の参照範囲、のカットオフ値(または階層化)の内側または外側の範囲、信頼区間、受信者動作曲線、または病期もしくはその他の特性による階層化であり得る。参照範囲は、一端の単一のカットオフ値(閾)値によって定義される範囲(例えば、カットオフ値より下の範囲またはカットオフ値より上の範囲)でもあり得る。単一のカットオフ値または「カットポイント」は、例えば、中央値もしくは平均値、または臨床試験集団もしくは他のセグメントと統計的に異なると判断された患者集団の上位または下位の四分位、三分位、またはその他のセグメントの境界を定義するレベルであり得る。参照範囲は、1つの定義されたグループで疾患を発症するリスクまたは疾患の存在との関連が、別の定義されたグループにおける疾患のリスクまたは存在よりも、1倍高いかまたは低い(例えば、約2倍、4倍、8倍、16倍またはそれ以上)など、比較グループに基づいて確立できる。それは、例えば、対象(例えば、対照対象)の集団が、低リスク群、中リスク群および高リスク群などの群に、最も低い四分位数が最もリスクの低い対象であり、最も高い四分位数が最もリスクの高い対象である四分位数に、または、最も低いn個の四分位数が最もリスクが低い対象であり、最も高いn-分位数は、リスクが最も高い対象であるn個の四分位数(すなわち、n個の規則的に間隔があいた間隔)に、均等に(または不均等に)分けられる範囲であり得る。いくつかの実施形態では、所定のレベルは、例えば、異なる時点、例えば、より初期の時点での、同じ対象におけるレベルまたは発生である。
【0032】
暗順応
暗順応は、好ましくは、例えば米国特許第7,494,222号に記載されているように、当技術分野で既知の装置を使用して測定される。暗順応は、好ましくは、例えば米国特許第7,494,222号に記載されているように、当技術分野で既知の方法の修正を使用して測定される。簡単に言えば、本明細書に記載されている先行技術の方法は、完全またはほぼ完全な暗闇に座っている間、対象を最初に明るい光退色光に曝して、1つ以上の視覚色素を光退色させる。これに続いて、一連の薄暗い刺激光への露出があり、光退色からの視覚感度の回復を追跡する。刺激光の強度は徐々に(通常は階段状に)消え、対象は、各刺激光の提示が検出可能(例えば、応答ボタンを押すことにより)か、または検出不能(例えば、応答ボタンを押さないことにより)かを示す。ちょうど検出可能な刺激光の強度とそれが検出された時間を定期的に記録して、暗順応閾値曲線を生成する。最後に、暗順応の速度は、桿体切片時間または桿体-錐体のブレーク時間などの閾値曲線から抽出されたパラメータによって特徴付けられる。
【0033】
暗順応パラメータ、例えば、桿体切片時間に言及する場合、暗順応パラメータは、「改善する」、「改善」を示す、または「悪化する」、または「悪化」を示すと言われることができる。「改善する」または「改善」を示すという用語(および同様の用語)は、当業者によって理解されるように、暗順応パラメータが有益な様式で変化したことを意味する。「悪化する」という用語は、「悪化すること」(および同様の用語)を示し、暗順応パラメータが、当業者によって理解されるように有害な様式で変化したことを意味する。例えば、桿体切片時間が減少すると(例えば15分~10分)、暗順応パラメータの桿体切片時間は改善されるが、桿体切片時間が増加すると(例えば10分から)、暗順応パラメータの桿体切片時間は悪化する(例えば10分~15分)。
【0034】
暗順応の場合、重要なパラメータは、色あせ強度およびテスト位置である。色あせ強度は、対象を確実に光退色させて回復を正確に測定できるようにするのに十分強くあるべきであるが、回復時間が非実用的に長くないほど強くすべきではない。10%の有効な色あせ~90%の有効な色あせの色あせ強度が好ましい。50%の有効な色あせ~80%の有効な色あせの色あせ強度が特に好ましい。特定の好ましい実施形態は、65%の有効な色あせ、70%の有効な色あせおよび76%の有効な色あせである。テスト位置は、関連するAMD集団の感度を最大にするように選択するべきである。AMDは、網膜の中心20°を占める黄斑のゆっくりとした退行である。AMDに関連する機能障害は、疾患が進行するにつれて、最初は黄斑の中心付近から黄斑の周辺に向かって放射状に進行する。5°の偏心度(傍中心窩の端)~20°の偏心度(黄斑の端)のテスト位置が好ましい。特定の好ましい実施形態は、5°の偏心度、8.5°の偏心度、および12°の偏心度である。任意の方位角方向を使用できる。特定の好ましい実施形態は、下視野子午線上の方位角方向である。暗順応の決定は、桿体切片時間(つまり、基準の視覚感度レベルへの回復時間)、桿体-錐体のブレーク時間、桿体の回復勾配、および暗点閾値までの時間などを含むがこれらに限定されない、任意の数のパラメータに基づくことができる。特定の好ましい実施形態は、桿体切片時間である。桿体切片時間を使用する場合は、基準感度レベルは5×10-2暗所cd/m2~5×10-4暗所cd/m2が好ましい。特定の好ましい実施形態は、5×10-3暗所cd/m2である。
【0035】
一実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかで暗順応桿体切片パラメータを測定するために、次の条件、70%または76%の有効な色あせ、5°または12°の偏心度テスト位置、および5x10-3暗所cd/m2の桿体切片基準感度レベルの使用が使用される。
【0036】
別の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかで暗順応桿体切片パラメータを測定するために、次の条件、76%の有効な色あせ、5°または12°の偏心度テスト位置、および5x10-3暗所cd/m2の桿体切片基準感度レベルの使用が使用される。
【0037】
別の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかで暗順応桿体切片パラメータを測定するために、次の条件、76%の有効な色あせ、下視野子午線を中心とした5°の偏心度テスト位置、および5x10-3暗所cd/m2の桿体切片基準感度レベルの使用が使用される。
【0038】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法のいずれかで暗順応桿体切片パラメータを測定するために、次の条件、76%の有効な色あせ、下視野子午線を中心とした12°の偏心度テスト位置、および5x10-3暗所cd/m2の桿体切片基準感度レベルの使用が使用される。
【0039】
使用されるテストパラメータと対象の健康状態に依存して、暗順応時間は2分未満~60分超変動する可能性がある。例えば、76%の色あせ強度、5°の偏心度テスト位置、および5x10-3暗所cd/m2の桿体切片基準感度レベルを使用すると、通常の健常な対象の桿体切片時間は、通常6.5分未満であり、AMD患者の桿体切片時間は、通常6.5分を超え、早期AMD患者は通常約13分、中期AMD患者は通常約17分、そして進行したAMD患者は、通常20分以上である。上記の桿体切片時間は一般化されており、個々の対象の桿体切片時間は変動する可能性がある(例えば、中期AMDの対象の桿体切片時間は17分よりも顕著に短い可能性がある)。暗順応については、より速い方が良く、暗順応時間の減少(例えば、桿体切片時間、桿体-錐体ブレーク時間、桿体回復勾配、または暗点閾値までの時間の減少)(例えば、少なくとも1~3、3~5または1~5分)は、本明細書に記載される方法のいずれかにおける改善である。本明細書に記載の方法のいずれかにおける特定の実施形態では、1分、1~3分、3~5分、または1~5分の桿体切片時間の減少が改善である。
【0040】
AMD状態は、Beckman AMD分類システム、加齢性眼疾患研究(AREDS)重症度スケール、AREDS簡略化重症度スケール、AMDの国際分類および等級付けシステム、およびWisconsin年齢関連黄斑症等級付けシステムなど、多くの認められた等級付けシステムを使用して、当技術分野で決定される。AMD状態の判定が対象のために必要な場合、AMD状態の判定は、Beckman AMD分類システム(Ferrisら、Ophthalmology 2013;120:844-851)を使用して行われる。
【0041】
本明細書に記載されるAd、暗順応は、コレステロールおよび他の脂質の網膜中への蓄積が観察可能なドルーゼン形成を生じない場合でさえ、そのような蓄積によって影響を受ける可能性がある。スタチンはコレステロールおよび他の脂質のレベルに影響を与えることが知られている。このように、機能的バイオマーカーとしての暗順応の使用は、AMD病理に関与している可能性のあるメカニズムと、スタチンの作用の可能性のあるメカニズムを一緒にもたらす。当業者は、AMDを首尾よく治療するすべての薬物が暗順応のような視覚機能に影響を与えるわけではないことを承知している。例えば、神経保護を提供する化合物の投与は、光受容体を強化することによりAMDを改善し、AMD病理に影響されにくくするが、このような化合物は暗順応に影響を与えない。当業者は、暗順応に影響を与えるすべての薬物がAMDを首尾よく治療するとは限らないことを承知している。例えば、多くの用量のビタミンAの投与が、AMDを改善したり、またはAMDの病理を軽減したりせずに、暗順応を改善する。
【0042】
低輝度視力/低輝度欠損
低輝度視力および/または低輝度欠損は、好ましくは、当技術分野で知られている方法を使用して測定される。1つの選択肢は、例えばSunnessら、2008 Ophthalmology 115(9):1480-1488に記載されているように、標準の視力検査表を使用することである。簡単に言えば、ニュートラル密度フィルターが、通常輝度の視力検査表と対象の目との間に配置される。通常輝度の視力の測定と同様に、対象は、チャートの一番上の行(最大の文字)から始めて、できるだけ多くの行または文字の部分的な行を下に向けて読み取るように求められる。低輝度欠損とは、通常輝度の視力(ニュートラル密度を介在させずに測定)と低輝度の視力(ニュートラル密度を介在させて測定)の差である。SnellenチャートおよびETDRSチャートを含む、様々な視力検査表タイプを使用できる。重要なパラメータは、視力検査表の輝度レベルと、低輝度の比較のために導入されたニュートラル密度の量である。70cd/m2~400cd/m2の視力検査表輝度レベルが推奨される。特定の好ましい実施形態は、85cd/m2、100cd/m2、および130cd/m2である。1.0log単位(10分の1の削減)から3.0log単位(1000分の1の削減)までの中性濃度フィルターが推奨される。特定の好ましい実施形態は、2.0log単位である。
【0043】
あるいは、例えばChandramohanら、2016 Retina 36(5):1021:1031に記載されているように、電子視覚テスターを使用して、低輝度視力および/または低輝度欠損を測定することができる。このアプローチでは、通常輝度と低輝度の視力は、それぞれの測定値について、背景輝度が高い(例えば16cd/m2)または背景輝度が低い(例えば5cd/m2)電子スクリーンに徐々に小さい文字を表示すること、および対象に対してそれぞれの場合にできるだけ多くの文字を読むように要求することによって測定される。低輝度欠損は、通常輝度の視力と低輝度視力との間の差として再び定義される。
【0044】
読める文字が多いほど良い。例えば、通常輝度の視力と同様に、低輝度の視力は50ETDRS文字(これは、従来の米国規模では1.0logMARまたは20/200と等価であり、「合法的に盲目」とみなされる)~100ETDRS文字(これは、従来の米国規模では0.0logMARまたは20/20と等価であり、「通常」とみなされる)を超える範囲であり得る。AMD患者は、疾患の重症度に依存して、この範囲に沿ってどこにでも入ることができる。中期AMD患者は、通常、約10ETDRS文字の低輝度欠損を有し、進行したAMD患者は、通常、20 ETDRS文字以上の低輝度欠損を有する。低輝度欠損の減少(例えば、少なくとも5~10、10~15、または5~15ETDRS文字による)は改善である。
【0045】
コントラスト感度
コントラスト感度は、標的を検出できるようにするために必要な最小量のコントラスト(つまり、黒さから白さまでの度合い)の逆数である。コントラスト感度は、例えば、Owsley、2003 Ophthalmol Clin N Am 16:171-77に記載されているように、標準的な方法を使用して測定することが好ましい。コントラスト感度を測定するためのツールには、例えば、Pelli-Robsonチャート、Bailey-Lovieチャート、Cambridge低コントラスト格子、Reganチャート、FACTチャート、およびSpaeth/Richmondコントラスト感度テストなどのコンピューター化されたテストシステムが含まれる。簡潔に言えば、コントラストが低下した文字または周期的パターン(正弦波または方形波の格子など)がチャートまたは電子画面に表示され、対象はこれらの標的をできるだけ多く読み取るか、さもなくば特定するよう求められる。重要なパラメータは、背景の輝度レベルである。10cd/m2~500cd/m2のチャート輝度レベルが好ましい。特定の好ましい実施形態は、85cd/m2である。標的のコントラストは、様々な方法で特徴付けることができる。いわゆるWeberコントラスト(背景の輝度から標的の輝度を差し引いたものを背景の輝度で割った値)は、文字を含むツールに適している。いわゆるMichelsonコントラスト(最も明るい領域の輝度から最も暗い領域の輝度を差し引いたものを2つの合計で割った値)は、周期的なパターンを含むツールに適している。
【0046】
読み取ることができる文字または特定できる標的が多いほど、より良好である。AMD患者は、通常、正常な対象よりもコントラスト感度が低くなる。例えば、Pelli-Robsonチャートを使用すると、通常の対象のコントラスト感度は、通常、38文字(1.9対数のコントラスト感度と等価)から31文字(1.55対数のコントラスト感度と等価)の範囲であるが、初期、中間、および後期のAMD患者のコントラスト感度は、通常、それぞれ27文字(対数コントラスト感度1.35と等価)、24文字(対数コントラスト感度1.2と等価)、19文字(対数コントラスト感度0.95と等価)である。読まれた文字または特定された標的(例えば、少なくとも3~5、5~10または3~10文字/標的)の増加は改善である。
【0047】
暗所感度
暗所感度は、他の点では完全またはほぼ完全な暗闇で検出可能な最も暗い光である。暗所感度は、好ましくは、例えば、Wuら、2013 Invest Ophthalmol Vis Sci 54:7378-7385に記載されているように、標準的な方法を使用して測定される。簡単に言えば、完全またはほぼ完全な暗闇の中で座っている間、対象は一連の刺激光にさらされる。刺激光の強度は徐々に(通常は階段状の様式で)消え、対象は各刺激光の提示が検出可能か(例えば、応答ボタンを押すことにより)、または検出不能か(例えば、応答ボタンを押さないことにより)を示す。ちょうど検出可能な刺激光強度は、暗所感度閾値として記録される。暗所感度試験は、事前の暗順応の有無にかかわらず実行できる。事前の暗順応を用いてテストを実行する場合、暗所感度は、例えば、単一の閾値測定またはいくつかの閾値測定を平均することによって特徴付けることができる。事前の暗順応なしでテストを実行する場合、暗所感度は、例えば、閾値の変化がほとんどなくなるか、または閾値の変化が全くなくなるまで閾値を測定することによって特徴付けることができる。暗所感度測定は、例えば、マイクロペリメーターまたは暗順応計を使用して行うことができる。
【0048】
暗所感度の場合、重要なパラメータは、背景の輝度レベル、刺激光の波長、およびテストの位置である。テストは、可能な限り低い背景輝度レベルを使用して実行するべきである。特定の好ましい背景輝度レベルは、1.27cm/m2である。刺激光の波長は、好ましくは、暗所視(または夜間視力)の主な原因である桿体光受容体のスペクトル応答曲線と一致する。赤色光(すなわち、550nmを超える波長)が好ましい。特定の好ましい実施形態は、約627nmにクラスター化した波長および約670nmにクラスター化した波長である。黄斑内のテスト位置が好ましい(すなわち、0°の偏心度~20°の偏心度)。特定の好ましいテスト位置は、0°の偏心度、1°の偏心度、2.33°の偏心度、4°の偏心度、5°の偏心度、6°の偏心度、8.5°の偏心度、および12°の偏心度である。任意の方位角方向を使用できる。暗所感度の分析は、例えば、複数のテスト位置の暗所感度測定値の平均を計算することによって、または固定基準を下回る暗所感度測定の割合を計算することによって、単一のテスト位置での測定または複数のテスト位置での測定の組み合わせに基づくことができる。暗闇で見える光が薄ければ暗いほど良い。暗所感度は、通常、AMD患者対正常な対象で損なわれている。暗所感度の定量化は、使用される試験パラメータと対象の健康状態に依存する。例えば、1.27cm/m2の背景輝度レベルを使用して、約627nmにクラスター化した波長の刺激光(例えば、中心波長が627nmのLED)を使用して、0°の偏心度~5°の偏心度の範囲の37の中心テスト位置を分析して、平均暗所感度は通常、中期AMD対通常の対象の患者については、2~3dB減少する(すなわち、中期AMD患者が暗闇で見ることができる最も暗い光は、通常の被写体が暗闇で見ることができる最も暗い光よりも、通常1.5~2倍明るくなる)。同じテストパラメータを使用すると、暗所感度が低下した位置のパーセンテージは、中期AMD患者では40%を超える可能性がある。平均感度の低下を少なくするか、または感度が低下している位置のパーセンテージを下げると改善される。
【0049】
臨床試験サポート-階層化/エンドポイント
スタチンの投与は、AMDの効果的な療法となり得る。例えば、Vavvasらは、高用量のアトルバスタチンの使用が、AMDの構造的特徴であるドルーゼン沈着物の消失、および治療を受けた患者の43%の視力の改善を生じたことを実証した(Vavvasら、2016 EbioMedicine.5:198-203)。しかし、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)などの機関からの規制当局の承認を得るためには、追加の臨床試験が必要である。視力や疾患の進行などの眼の適応症の有効性を確立するために伝統的に使用されている臨床試験のエンドポイントは、AMDの比較的感度の低いバイオマーカーであるため、AMD療法の臨床試験は、通常、多数の研究参加者または長い研究期間を必要でとし、法外な費用がかかることが多い。AMDのスタチン療法の臨床試験およびその他の研究をより実用的かつ手頃な価格にするために、AMDの病理にさらに敏感なバイオマーカー、特にスタチン療法の作用機序に関連する機能的なバイオマーカーについての必要性が存在する。開示された機能的バイオマーカーは、例えば、AMDの療法としてのスタチンの開発における包含/除外基準または臨床試験エンドポイントの基礎として使用することができる。
【0050】
いくつかの方法において、本明細書に開示される機能的バイオマーカーの1つ以上は、臨床試験の開始時に測定され、治療効果の可能性を示す対象値または治療効果を追跡するベースライン値を提供する。いくつかの実施形態では、臨床試験の開始時の対象値の障害は、治療反応の可能性を示しており、例えば、治験担当医師が対象を治験に含めるべきか、または除外するべきかを決定することを可能にする。臨床試験下でのスタチン治療の投与中または投与後(例えば、治療開始後、1、2、3、4、5、6、8、9、10、11、12、24、および/または36週間、または30、60、90、180、270、および/または360日、または1、2、3、および/もしくは4四半期の1つ以上)、本明細書に開示される1つ以上の機能的バイオマーカーを再度測定して、後続の値、およびベースライン値またはより初期の後続の値と比較した後続の値を提供できる。いくつかの実施形態では、ベースライン値からの改善は、治療が対象にとって有効であるか、または有効である可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、ベースライン値からの変化がないか、または悪化していることは、治療が無効であるか、無効である可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、例えば、自然な経過に基づいて急速に悪化する疾患を経験することが予想される患者において、ベースライン値からの変化がないことは、治療が患者にとって有効であるか、または有効である可能性が高いことを示す。
【0051】
視力および疾患の進行など、眼科の臨床試験で伝統的に使用されているエンドポイントよりも優れている点は、AMD病理に対する感度が高いことである。これは、AMD患者におけるビタミンA補給の有効性を評価するためのエンドポイントとして暗順応を使用する研究によって例解されている。その研究では、Owsleyらは、正常な網膜の健康またはAMDを有する高齢者における高用量のビタミンA(プレフォームドレチノール)の短期コースの影響を調査した(Owsleyら、2006 Invest Ophthalmol Vis Sci 47(4):1310-1318)。無作為化、二重盲検、プラセボ対照実験を行った。研究眼の眼底写真が拡張AREDS等級付けシステムのステップ1~9(通常の網膜の健康~中期AMD)に収まった50歳以上の成人が、50,000国際単位の経口レチノールまたはプラセボの30日間のコースにランダムに割り当てられた。この研究は、介入群とプラセボ群にそれぞれ52人ずついる104人の患者から構成された。暗順応(錐体時間定数、錐体感度、桿体-錐体ブレーク、桿体ロープ、および桿体感度を使用して決定)および視力は、ベースラインおよび30日間のフォローアップで測定された。ベースラインでは、どちらのパラメータについてもグループ間に差はなかった。30日間の追跡調査では、レチノール介入群の方がプラセボ群よりも暗順応が大幅に速かった。さらに、暗順応に最大の改善を有する患者は、標準化された低輝度アンケートを使用して、低輝度移動度に最大の改善を報告した。対照的に、引き続いてグループ間の視力の違いはなかった。さらに30日間のウォッシュアウト期間の後、暗順応の改善はベースラインレベルに戻った。この研究はまた、治療群間で観察された違いは、AMDのある対象とAMDのない対象で類似していたことにも言及した。同様に、低輝度赤字は、地理的萎縮のあるAMD患者の将来の視力低下の強力な予測因子であることが示され(Sunnessら、2008 Ophthalmology 115(9):1480-1488)、中期AMDの患者が経験する、実際の視力と関連する困難と相関している(Wuら、2016)Br J Ophthalmol 100:395-398)。
【0052】
いくつかの実施形態では、開示された機能的バイオマーカーは、試験の成功または失敗を決定するための主要または登録エンドポイントの基礎として使用することができる。他の実施形態では、これらのバイオマーカーを二次的または探索的エンドポイントの基礎として使用して、最終的な成功または失敗の決定ではなく、試験結果をさらに解明することができる。これらのバイオマーカーは、患者の選択および/または階層化にも使用でき、例えば、臨床試験における研究集団は、バイオマーカーから導出された対象値に基づいて選択および/または階層化/分類することができる。あるいは、これらのバイオマーカーを使用して、臨床試験中の暫定的な見方で有効性を早期に示すことができ、これは、最終的には、それほど早く改善を示すとは予想されない異なる主要エンドポイントに基づいており、例えば、試験を終了するか続行するかを試験(trail)スポンサーが決定することを可能にする。
【0053】
いくつかの実施形態では、臨床試験への組み入れについて患者をスクリーニングするとき、機能的バイオマーカーの障害(例えば、暗順応の遅延または通常の低輝度障害よりも大きいこと)を有する患者は、単に彼らが修正できる欠陥を有するため、介入に反応する可能性よりが高い。いくつかの実施形態では、一旦治療が開始されると、機能的バイオマーカーの改善(例えば、暗順応時間の短縮または低輝度欠損の軽減)は治療効果の初期の指標であり、その結果、ドルーゼンの消失または視力の改善など、その後の利点がある可能性が高いことを示す。
【0054】
したがって、本開示では以下の方法が提供される。
【0055】
本開示は、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験への参加またはそこからの除外のために対象を選択または特定するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)対象における1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、3)工程2)の1つ以上の測定から、対象の対象値を決定する、または決定させる工程と、4)対象値を対応する参照範囲と比較する工程と、5)対象値が対応する参照範囲内にある場合は参加対象を選択または特定し、対象値が対応する参照範囲外にある場合は除外対象を選択または特定する工程とを含む。そのような方法はさらに、包含に適切であると特定される対象を臨床試験に登録すること、除外に適切であると特定される対象を臨床試験から除外すること、または前述の組み合わせを含むことができる。
【0056】
本開示は、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験への参加またはそこからの除外のために対象を選択または特定するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)対象における暗順応を測定するか、または測定させる工程と、3)対象値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定する、または決定させる工程と、4)対象値を対応する参照範囲と比較する工程と、5)対象値が対応する参照範囲内にある場合は参加対象を選択または特定し、対象値が対応する参照範囲外にある場合は除外対象を選択または特定する工程とを含む。そのような方法はさらに、包含に適切であると特定された対象を臨床試験に登録すること、除外に適切であると特定された対象を臨床試験から除外すること、または前述の組み合わせを含むことができる。
【0057】
本開示は、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験に参加しているか、または参加することができる複数の対象を階層化するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして複数の対象のそれぞれを特定するか、または複数の対象のそれぞれを特定させる工程と、2)複数の対象のそれぞれにおける1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、3)工程2)の1つ以上の測定から、複数の対象のそれぞれの対象値を決定する、または決定させる工程と、4)対象値に基づいて、複数の対象を階層化する工程とを含む。
【0058】
本開示は、AMDを有し、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験に参加しているか、または参加する可能性がある複数の対象を階層化するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして複数の対象のそれぞれを特定するか、または複数の対象のそれぞれを特定させる工程と、2)複数の対象のそれぞれにおける1つ以上の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、3)複数の対象のそれぞれの対象値を提供するために、暗順応測定から複数の対象のそれぞれの桿体切片時間を決定する、または決定させる工程と、4)対象値に基づいて複数の対象を階層化する工程とを含む。
【0059】
AMDを有し、AMDの治療のためのスタチン治療の臨床試験に参加しているか、または参加することができる複数の対象の階層化のための上記実施形態のいずれかにおいて、対象は、上記の基準に加えて、AMD状態(例えば、早期AMD、中期AMD、または後期AMD)に基づいて階層化することができる。例えば、対象は、対象値(例えば、桿体切片時間)およびAMDのタイプ(例えば、中期AMD)により、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験で階層化することができる。
【0060】
本開示は、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験におけるスタチン療法への反応の初期兆候を特定するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)対象にスタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、3)対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、4)工程3の1つ以上の測定値から対象の対象値を決定するか、または決定させる工程と、5)対象値を対応する参照範囲と比較する工程と、6)対象値が対応する参照範囲内にある場合、対象におけるスタチン療法に対する反応の初期兆候を特定する工程とを含む。
【0061】
本開示は、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験において、スタチン療法に対する反応の初期兆候を特定するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)対象にスタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、3)対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、4)工程3の1つ以上の測定値から対象のベースライン値を決定するか、または決定させる工程と、5)1つ以上の第2の時点またはそれ以降の時点での対象における1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、6)工程5の1つ以上の測定から対応する後続の値を決定するか、または決定させる工程と、7)後続の値のベースライン値またはより初期の後続の値との比較が初期兆候基準を満たす場合に、対象におけるスタチン療法に対する反応の初期兆候を特定する工程とを含む。
【0062】
本開示は、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験において、スタチン療法に対する反応の初期兆候を特定するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)対象にスタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、3)対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、4)暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、5)対象値を対応する参照範囲と比較する工程と、6)対象値が対応する参照範囲内にある場合、対象におけるスタチン療法に対する反応の初期兆候を特定する工程とを含む。
【0063】
本開示は、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験において、スタチン療法に対する反応の初期兆候を特定するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)対象にスタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、3)対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、4)ベースライン値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、5)1つ以上の第2の時点またはそれ以降の時点での対象における暗順応を測定するか、または測定させる工程と、6)後続の値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、7)後続の値のベースライン値またはより初期の後続の値との比較が初期兆候基準を満たす場合に、対象におけるスタチン療法に対する反応の初期兆候を特定する工程とを含む。
【0064】
臨床試験におけるスタチン療法に対する反応の初期兆候を特定する前述の方法のいずれかにおいて、そのような方法は、スタチン療法に対する反応の初期兆候を示した臨床試験において対象を継続することをさらに含むことができる。臨床試験におけるスタチン療法への反応の初期兆候を特定する前述の方法のいずれかにおいて、そのような方法は、臨床試験中の暫定的な期間に有効性の初期兆候を提供するために使用することができ、臨床試験の有効性は、最終的には、臨床試験の継続または臨床試験の終了、またはこれらの組み合わせの決定を行うために、それほど早く改善を示さないと予想される、様々なエンドポイント(主要または登録エンドポイントなど)に基づいている。
【0065】
臨床試験におけるスタチン療法への反応の初期兆候を特定する前述の方法のいずれかにおいて、初期兆候基準は、i)ベースライン値またはより初期の後続の値と比較した場合に後続の値に変化がないこと、ii)ベースライン値またはより初期の後続の値と比較した場合の、後続の値の改善、またはiii)ベースライン値またはより初期の後続の値と比較した場合の、後続の値の10%未満の悪化であり得る。
【0066】
臨床試験におけるスタチン療法に対する反応の初期兆候を特定するための前述の方法のいずれにおいても、初期兆候基準は、i)ベースライン値またはより初期の後続の値と比較した場合に、後続の値(例えば、桿体切片時間)に変化がないこと、ii)ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して、後続の値(例えば、桿体切片時間)の改善、またはiii)ベースライン値またはより初期の後続の値と比較して、後続の値(例えば、桿体切片時間)が180秒未満悪化していることである可能性がある。
【0067】
AMDの治療のためのスタチン治療の臨床試験からの参加または除外するための対象を選択または特定するための前述の実施形態のいずれかにおいて、対象は、上記の基準に加えて、AMD状態(例えば、初期AMD、中期AMD、または後期AMD)に基づいて特定または選択することができる。例えば、対象は、対象値(例えば、桿体切片時間)が対応する参照範囲内にあるため、および中期AMDを有するため、AMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験に含めることが適切であるとして特定できる。
【0068】
本開示は、対象の複数のAMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験を行うための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)複数の対象にスタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、3)複数の対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、4)工程3の1つ以上の測定値から複数の対象のそれぞれについての対象値を決定するか、または決定させる工程と、5)対象値を臨床試験のエンドポイントとして使用する工程と、6)任意選択で、臨床試験のエンドポイントに基づいて動作を実行する工程とを含む。
【0069】
本開示は、複数の対象におけるAMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験を実施するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)複数の対象にスタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、3)複数の対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、4)工程3の1つ以上の測定値から複数の対象のそれぞれについてのベースライン値を決定するか、または決定させる工程と、5)1つ以上の第2の時点またはそれ以降の時点での複数の対象のそれぞれにおける1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、6)工程5の1つ以上の測定値から対応する対象値を決定するか、または決定させる工程と、7)ベースライン値(またはより初期の後続の値)の後続の値との比較を臨床試験のエンドポイントとして使用する工程と、8)任意選択で、臨床試験のエンドポイントに基づいて動作を行う工程とを含む。
【0070】
本開示は、複数の対象におけるAMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験を実施するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして複数の対象を特定するか、または複数の対象を特定させる工程と、2)複数の対象にスタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、3)複数の対象のそれぞれにおいて暗順応を測定するか、または測定させる工程と、4)対象値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、5)対象値を臨床試験のエンドポイントとして使用する工程と、6)任意選択で、臨床試験のエンドポイントに基づいて動作を行う工程とを含む。
【0071】
本開示は、複数の対象におけるAMDの治療のためのスタチン療法の臨床試験を実施するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして複数の対象を特定するか、または複数の対象を特定させる工程と、2)複数の対象にスタチン療法を投与するか、または投与させる工程と、3)複数の対象のそれぞれにおいて暗順応を測定するか、または測定させる工程と、4)ベースライン値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、5)1つ以上の第2の時点またはそれ以降の時点での複数の対象のそれぞれにおいて暗順応を測定するか、または測定させる工程と、6)後続の値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、7)ベースライン値(またはより初期の後続の値)の後続の値との比較を臨床試験のエンドポイントとして使用する工程と、8)任意選択で、臨床試験のエンドポイントに基づいて動作を行う工程とを含む。
【0072】
臨床試験を実施するための前述の実施形態のいずれにおいても、エンドポイントは、臨床試験の成功または失敗を決定するための主要または登録エンドポイントであり得る。臨床試験を実施するための前述の実施形態のいずれかにおいて、エンドポイントは、臨床試験中の暫定的な期間に有効性の初期兆候を提供するための、および/または最終的な成功もしくは失敗の決定ではなく試験結果のさらなる解明を提供するための、二次的または探索的エンドポイントである。
【0073】
臨床試験を実施するための前述の方法のいずれにおいても、臨床試験のエンドポイントに基づいて動作を行うことは、i)前記臨床試験中の暫定的な期間に有効性の初期兆候を決定するか、もしくは決定させること、ii)臨床試験を継続することを決定するか、もしくは決定させること、iii)臨床試験を終了するか、もしくは終了させること、iv)臨床試験に対象を追加するか、もしくは追加させること、v)臨床試験のパラメータを変更するか、もしくは変更させること、vi)または前述の組み合わせであり得る。
【0074】
対象を選択または特定するための前述の方法、複数の対象を階層化する方法、初期兆候を特定する方法、または機能的バイオマーカーが測定される臨床試験を実施する方法において、機能的バイオマーカーは、暗順応、低輝度視力、低輝度欠損、コントラスト感度、または暗所感度の1つ以上であってもよい。
【0075】
対象を選択または特定するための前述の方法、複数の対象を階層化するための方法、初期兆候症を特定するための方法、または測定された機能的バイオマーカーが暗順応である臨床試験を実施するための方法では、対象値は桿体切片時間、桿体-錐体ブレーク時間、桿体回復勾配、暗点閾値までの時間、または前述の組み合わせに基づくことができる。
【0076】
対象を選択または特定するための前述の方法、複数の対象を階層化するための方法、初期兆候を特定するための方法、または臨床試験を実施するための方法において、スタチンは、対象への投与が承認された、または承認のための評価(臨床試験など)を受けている任意のスタチンであり得、これには、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標))、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標))、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))シンバスタチン(ZOCOR(登録商標))、それらの類似体、およびそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0077】
対象を選択または特定するための前述の方法、複数の対象を階層化するための方法、初期兆候を特定するための方法、または臨床試験を実施するための方法において、スタチンはアトルバスタチン(LIPITOR(登録商標))であり得る。
【0078】
対象を選択または特定するための前述の方法、複数の対象を階層化するための方法、初期兆候を特定するための方法、または暗順応が測定される臨床試験を実施するための方法において、以下の条件のいずれかを使用することができる。
70%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
76%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
70%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、
70%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、
76%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、および
76%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置。
【0079】
前述の条件のいずれかで、5°または12°の偏心度テストの位置は、下視野子午線の中心に位置することがあり得る。
【0080】
対象を選択または特定するための前述の方法において、複数の方法を階層化するための方法、初期兆候を特定するための方法、または桿体切片時間が決定される臨床試験を実施するための方法において、桿体切片基準感度レベルは5×10-2暗所cd/m2~5×10-4暗所CD/m2であってもよい。桿体切片時間が決定される前述の実施形態のいずれかにおいて、桿体切片基準感度レベルは、5×10-3暗所cd/m2であり得る。
【0081】
AMD療法の管理
開示された機能的バイオマーカーは、スタチン療法の候補者であるか、またはスタチン療法を使用しているAMD患者の管理のためにも使用できる。スタチンは最も頻繁に処方される薬物の1つであるが、それらの使用は通常、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患のリスクを軽減する手段としてコレステロール値を下げようと試みている心臓専門医や内科医の担当範囲である。AMDは、大部分は、スタチンの投与、詳細な生理学的反応、または関連する副作用に精通していない眼科医や検眼医などの眼の健康を扱う医師によって診断および管理されている。AMDのスタチン療法の簡単で効果的な管理を可能にするこれらの眼科医のためのツールを提供する必要がある。医師が直面する課題には、例えば、特定の患者が反応するかどうかの不確実性、反応の明確な構造的兆候が明らかになるまでの長い治療期間(場合によっては12か月以上)、および有害な副作用のリスクなどがあり、それらのいくつかは深刻であり得る。その結果、一部の患者は、相応の利点があるかどうかを知る前に、長期的なリスクにさらされる可能性がある。したがって、開示される機能的バイオマーカーは、例えば、スタチン療法を使用するAMD患者の治療を支援するために、例えば、反応する可能性がより高い患者を特定すること、応答者対非応答者の初期兆候を提供すること、または、例えば、治療開始から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12か月以内の治療の利点を実証することによって使用できる。
【0082】
いくつかの方法では、本明細書に開示される1つ以上の機能的バイオマーカーが治療の開始時に測定され、治療効果の可能性を示す対象値または治療効果を追跡するベースライン値を提供する。いくつかの実施形態では、対象値の障害は、治療反応の可能性を示し、例えば、スタチン療法を使用して患者を治療すべきかどうかを医師が決定できるようにする。スタチン治療の投与中または投与後(例えば、治療開始後1、2、3、4、5、6、8、9、10、11、12、24、および/または36週間、または30、60、90、180、270、および/または360日、あるいは1、2、3、および/または4四半期の1つ以上)、本明細書に開示される1つ以上の機能的バイオマーカーを再度測定して、後続の値を提供することができ、後続の値はベースライン値またはより初期の後続の値と比較される。いくつかの実施形態では、ベースライン値からの改善は、療法が患者にとって有効であるか、または患者にとって有効である可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態では、ベースライン値からの変化がないか、または悪化していることは、治療が無効であるか、または患者にとって無効である可能性が高いことを示し、この場合、例えば、治療を中止したり、用量を増やしたりすることができる。いくつかの実施形態では、例えば、病歴に基づいて急速に悪化する疾患を経験すると予想される患者において、ベースライン値からの変化がないことは、療法が患者にとって有効であるかまたは有効である可能性が高いことを示すことができる。いくつかの実施形態では、開示された機能的バイオマーカーを使用して、治療の利点を確認することができる。あるいは、これらのバイオマーカーを使用して、スタチン療法に反応する可能性が高い患者を特定したり、応答者対非応答者の初期兆候を提供したりできる。
【0083】
いくつかの実施形態では、スタチン療法で患者を治療するかどうかを決定するときに、機能的バイオマーカーの障害(例えば、暗順応の遅延または通常の低輝度障害よりも大きい)を有する人は、単に修正できる欠陥を有しているという理由で、介入に反応する可能性が高い。他の実施形態では、一旦治療が開始されると、機能的バイオマーカーの改善(例えば、暗順応時間の短縮または低輝度欠損の軽減)は、治療効力の初期の指標であり、その結果、ドルーゼンの消失や視力の改善など、後続の利点を有する可能性が高いことを示す。
【0084】
前述のように、反応する可能性が最も高い患者を事前に特定し、治療が開始後に効果があるかどうかを迅速に示すことにより、スタチン療法に関連するリスクへの曝露を制限することは有利である。スタチン療法に関連するリスクは一般に4つのカテゴリーに分類される(Golombら、2008 Am J Cardiovasc Drugs 8(6):373-418)。
筋肉痛と損傷-スタチン療法の最も一般的なリスクは、軽度から重度の筋肉痛である。ごくまれに(数百万あたり数例)、スタチン療法が横紋筋融解症と関連し、これは、重度の筋肉痛、肝障害、腎不全、さらには死に至ることもある生命にかかわる筋損傷である。
【0085】
肝臓の損傷-スタチン療法は時折、肝臓の炎症を知らせる酵素のレベルの増加を引き起こす。
【0086】
血糖値の上昇-2型糖尿病の発症につながる可能性がある、血糖値の上昇の小さなリスクがある。
【0087】
神経学的副作用-一部の人々は、スタチンを服用している間に可逆的な記憶喪失または精神錯乱を発症した。
【0088】
スタチン療法のリスクは、65歳以上の女性、体格が小さい女性、腎臓または肝臓の疾患を持つ女性、およびコレステロールを下げるために複数の薬を服用している女性について最も大きくなる。さらに、アミオダロン、ゲムフィブロジル、サキナビルおよびリトナビルなどのプロテアーゼ阻害剤、クラリスロマイシンおよびイトラコナゾールなどのいくつかの抗生物質および抗真菌薬、ならびにシクロスポリンなどの免疫抑制剤を含む、他の多くの薬物がスタチンと有害に相互作用する可能性がある。
【0089】
したがって、本開示では以下の方法が提供される。
【0090】
本開示は、治療は、スタチンの投与を含む、対象におけるAMDの治療の効力を決定するか、または予測するための方法を提供する。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)対象における1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、3)工程2の1つ以上の測定から対象のベースライン値を決定するか、または決定させる工程と、4)対象にスタチン治療薬を投与または投与を継続する工程と、5)1つ以上の第2の時点またはそれ以降の時点での対象における1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、6)工程5の1つ以上の測定から対応する後続の値を決定するか、または決定させる工程と、7)任意選択で、ベースライン値を1つ以上の対応する後続の値と比較するか、または後続の値をより初期の後続の値と比較する工程とを含む。AMDの治療が対象におけるAMDの進行を予防または遅延させる目的を有するいくつかの実施形態では(例えば、RPEの萎縮を予防または遅延させるため、1つ以上の光受容体の萎縮を予防または遅延させるため、失明を予防または遅延させるため、および/または早期AMDから進行したAMDへの進行を予防または遅延させるために)、ベースライン値と比較した後続の値の改善または変化がないこと(またはより初期の後続の値と比較した後続の値)は、治療が対象において効果的または効果的である可能性があることを示す。AMDの治療が対象におけるAMDの退行(例えば、ドルーゼンの退行、PEDの退行、および/または視力の改善)の目的を有するいくつかの実施形態では、ベースライン値と比較した後続の値(または、より初期の後続の値と比較した後続の値)の悪化または変化がないことは、治療が対象において無効であるか、無効である可能性が高いことを示す。
【0091】
そのような方法は、対象値およびベースライン値(または後続の値およびより初期の後続の値)に基づいて治療決定を行うことをさらに含み得る。そのような治療法の決定には、i)変化なしにスタチン治療を継続すること、ii)投与されるスタチンの用量を(初期用量と比較して)増減してスタチン治療を継続すること、iii)(同じ等価用量、より高い等価用量、またはより低い等価用量のいずれかで)最初に投与されたスタチンとは異なるスタチンを用いてスタチン療法を継続すること、およびiv)スタチン治療を中止することが含まれる。特定の実施形態では、治療決定は、以下の動作、i)ベースライン値(またはより初期の後続の値)と比較して後続が改善される場合、最初のスタチン用量でのスタチン治療を用いて対象を継続して治療すること、ii)初期スタチン用量でのスタチン治療を用いて対象の治療を継続すること、増加もしくは減少したスタチン用量でのスタチン療法を用いて患者の治療を継続すること、または後続の値が、ベースライン値(またはより初期の後続の値)と比較して10%未満の変化を示すこと、あるいはiii)後続の値がベースライン値(またはより初期の後続の値)と比較して10%以上の悪化を示す場合、スタチン治療による対象の治療を中止することをさらに含む。
【0092】
本開示は、対象におけるAMDの治療の有効性を決定するか、または予測するための方法を提供し、ここで、治療はスタチンの投与を含む。この方法は、1)任意選択で、AMDを有するとして対象を特定するか、または対象を特定させる工程と、2)対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、3)ベースライン値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、4)対象にスタチン治療剤を投与するか、または投与し続ける工程と、5)1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、6)後続の値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、7)任意選択で、ベースライン値を1つ以上の後続の値と比較するか、または後続の値をより初期の後続の値と比較する工程とを含む。AMDの治療が対象におけるAMDの進行を予防または遅延させる目的を有するいくつかの実施形態では(例えば、RPEの萎縮を予防または遅延させるため、1つ以上の光受容体の萎縮を予防または遅延させるため、失明を予防または遅延させるため、および/または早期AMDから進行したAMDへの進行を予防または遅延させるために)、ベースライン値と比較した後続の値(またはより初期の後続の値と比較した後続の値)の改善または変化がないことは、治療が対象において効果的または効果的である可能性があることを示す。AMDの治療が対象におけるAMDの退行(例えば、ドルーゼンの退行、PEDの退行、および/または視力の改善)の目的を有するいくつかの実施形態では、ベースライン値と比較した後続の値(または、より初期の後続の値と比較した後続の値)の悪化または変化がないことは、治療が対象において無効であるか、無効である可能性が高いことを示す。
【0093】
そのような方法は、対象値およびベースライン値(または後続の値およびより初期の後続の値)に基づいて治療決定を行うことをさらに含み得る。そのような治療法の決定には、i)変更なしにスタチン治療を継続すること、ii)投与されるスタチンの用量を(初期用量と比較して)増減してスタチン治療を継続すること、iii)(同じ等価用量、より高い等価用量、またはより低い等価用量のいずれかで)最初に投与されたスタチンとは異なるスタチンを用いてスタチン療法を継続すること、およびiv)スタチン治療を中止することが含まれる。特定の実施形態では、後続の値での桿体切片時間がベースライン値(またはより初期の後続の値)から180秒以上改善された場合、治療の決定は、変更なしにスタチン療法を継続することか、またはスタチンの用量を減少させることである。特定の実施形態において、後続の値での桿体切片時間の変化がベースライン値(またはより初期の後続の値)から180秒未満で改善または悪化する場合、治療決定は変更なしでスタチン療法を継続することであり、別のスタチンを使用してスタチン療法を継続すること、投与されるスタチンの用量を増加させてスタチン治療を継続すること、投与されるスタチンの用量を1日80mgのアトルバスタチン、もしくは80mgのアトルバスタチンと等価な用量まで増加させてスタチン治療を継続すること、または投与されるスタチンの用量を1日80mg~120mgのアトルバスタチン、もしくは1日80mg~120mgのアトルバスタチンに等価な用量まで増加させてスタチン治療を継続することである。特定の実施形態では、後続の値での桿体切片時間の変化がベースライン値(またはより初期の後続の値)から180秒以上悪化した場合、治療決定は、スタチン療法による対象の治療を中止することである。
【0094】
本開示は、対象がAMDに罹患している、スタチンで対象を治療するための方法を提供し、この方法は、1)対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、2)工程1の1つ以上の測定から対象のベースライン値を決定するか、または決定させる工程と、3)最初のスタチン用量で対象にスタチン治療を投与するか、またはスタチン治療の投与を継続する工程、4)1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程、5)工程4の1つ以上の測定値から対象の後続の値を決定するか、または決定させる工程、および6)後続の値とベースライン値(または後続の値とより初期の後続の値)に基づいて治療の決定を行う工程を含む。このような治療法の決定には、i)変更なしにスタチン治療を継続すること、ii)投与されるスタチンの用量を(初期用量と比較して)増減してスタチン治療を継続すること、iii)(同じ等価用量、より高い等価用量、またはより低い等価用量のいずれかで)最初に投与されたスタチンとは異なるスタチンを用いてスタチン療法を継続すること、およびiv)スタチン治療を中止することが含まれる。
【0095】
特定の実施形態では、治療決定は、以下の動作の1つを行うことを含むか、またはさらに含む:i)後続の値がベースライン値と比較して(またはより初期の後続の値)改善される場合、最初のスタチン用量でスタチン治療による対象の治療を継続すること、ii)最初のスタチン用量でのスタチン治療による対象の治療を継続すること、(最初のスタチン用量と比較して)増加または減少したスタチン用量でのスタチン療法による対象の治療を継続すること、または後続の値がベースライン値(またはより初期の後続の値)と比較して10%未満の変化を示す場合は、異なるスタチンを用いてスタチン療法を継続すること、またはiii)後続の値がベースライン値(またはより初期の後続の値)と比較して10%以上の悪化を示す場合は、スタチン療法を用いる対象の治療を中止すること。
【0096】
特定の実施形態では、スタチン治療はアトルバスタチンであり、初期用量は、1日40mg~120mgである。特定の実施形態では、スタチン療法は、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、初期用量は、1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な用量から120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、最初のスタチン用量の1.5倍~10倍である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、最初のスタチン用量の2倍である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mgのアトルバスタチンまたは80mgのアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mg~120mgのアトルバスタチンまたは80mg~120mgのアトルバスタチンに等価な用量である。
【0097】
本開示は、AMDに罹患している対象を、スタチンを用いて治療するための方法を提供し、この方法は、1)対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、2)ベースライン値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、3)スタチンの最初のスタチン用量で対象にスタチン治療を投与するか、または投与を継続する工程と、4)1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、5)後続の値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、6)後続の値とベースライン値(または後続の値およびより初期の後続の値)に基づいて治療の決定を行う工程とを含む。このような治療法の決定には、i)変更なしにスタチン治療を継続すること、ii)投与されるスタチンの用量を(初期用量と比較して)増減してスタチン治療を継続すること、iii)(同じ等価用量、より高い等価用量、またはより低い等価用量のいずれかで)最初に投与されたスタチンとは異なるスタチンを用いてスタチン療法を継続すること、およびiv)スタチン治療を中止することが含まれる。
【0098】
特定の実施形態において、i)後続の値での桿体切片時間がベースライン値(またはより初期の後続の値)から180秒以上改善された場合、治療の決定は、変更なしにスタチン療法を継続することか、または(初期用量と比較して)用量を減少させたスタチン療法を用いて継続することであり、ii) 後続の値での桿体切片時間の変化がベースライン値(またはより初期の後続の値)から180秒未満で改善または悪化する場合、治療決定は変更なしでスタチン療法を継続すること、別のスタチンを使用してスタチン療法を継続すること、投与されるスタチンの用量を(初期用量と比較して)増加させてスタチン治療を継続すること、投与されるスタチンの用量を1日80mgのアトルバスタチン、もしくは80mgのアトルバスタチンと等価な用量まで増加させてスタチン治療を継続すること、または投与されるスタチンの用量を1日80mg~120mgのアトルバスタチン、もしくは1日80mg~120mgのアトルバスタチンに等価な用量まで増加させてスタチン治療を継続することであり、またはiii)後続の値での桿体切片時間がベースライン値(またはより前の後続の値)から180秒を超えて悪化した場合、治療の決定は、スタチン療法による対象の治療を中止することである。
【0099】
特定の実施形態では、スタチン治療は、アトルバスタチンであり、初期用量は、1日40mg~120mgである。特定の実施形態では、スタチン療法は、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、初期用量は、1日の40mg用量のアトルバスタチンに等価な用量から120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の1.5倍~10倍である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の2倍である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、80mgのアトルバスタチンまたは1日80mgのアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、80mg~120mgのアトルバスタチンまたは1日80mg~120mgのアトルバスタチンに等価な用量である。
【0100】
本開示は、対象がAMDに罹患している対象を、スタチンを用いて治療するための方法を提供し、この方法は、1)対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、2)ベースライン値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、3)最初のスタチン用量で対象にスタチン治療を投与するか、または投与を継続する工程と、4)1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、5)後続の値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、6)桿体切片時間がベースライン値(またはより初期の後続の値)から180秒以上改善された場合、初期スタチン用量または減少したスタチン用量でスタチン治療による対象の治療を継続する工程とを含む。特定の実施形態では、スタチン治療はアトルバスタチンであり、初期スタチン用量は1日あたり40mg~120mgである。特定の実施形態では、スタチン療法は、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、初期スタチン用量は、1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な量から120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量である。
【0101】
特定の実施形態では、スタチン治療はアトルバスタチンであり、初期用量は1日40mg~120mgである。特定の実施形態では、スタチン療法は、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、初期用量は、1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な量から120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の1.5倍~10倍である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の2倍である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mgのアトルバスタチンまたは80mgのアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、80mg~120mgのアトルバスタチンまたは1日80mg~120mgのアトルバスタチンと等価な用量である。
【0102】
本開示は、AMDに罹患している対象を、スタチンを用いて治療するための方法を提供し、この方法は、1)対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、2)ベースライン値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、3)最初のスタチン用量で対象にスタチン治療を投与するか、または投与を継続する工程と、4)1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、5)後続の値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、6)桿体切片時間がベースライン値(またはより初期の後続の値)から180秒未満改善または悪化した場合は、(初期スタチン用量と比較して)増加したスタチン用量のスタチン療法を用いて対象の治療を継続するか、または異なるスタチンを用いるスタチン療法を継続する工程とを含む。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の1.5倍~10倍である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の2倍である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mgのアトルバスタチンまたは80mgのアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mg~120mgのアトルバスタチンまたは80mg~120mgのアトルバスタチンに等価な用量である。
【0103】
特定の実施形態では、スタチン治療はアトルバスタチンであり、初期用量は、1日40mg~120mgである。特定の実施形態では、スタチン療法は、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、初期用量は、1日40mgのアトルバスタチンに等価な用量から120mgのアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の1.5倍~10倍である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の2倍である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mgのアトルバスタチンまたは80mgのアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mg~120mgのアトルバスタチンまたは80mg~120mgのアトルバスタチンに等価な用量である。
【0104】
本開示は、AMDに罹患している対象を、スタチンを用いて治療するための方法を提供し、この方法は、1)対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、2)ベースライン値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、3)最初のスタチン用量で対象にスタチン治療を投与するか、または投与を継続する工程と、4)1つ以上の第2の時点もしくはそれ以降の時点で対象の暗順応を測定するか、または測定させる工程と、5)後続の値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、6)桿体切片時間がベースライン値(またはより初期の後続の値)から180秒以上悪化した場合は、スタチン治療を用いる対象の治療を中止する工程とを含む。
【0105】
特定の実施形態では、スタチン治療はアトルバスタチンであり、初期用量は、1日40mg~120mgである。特定の実施形態では、スタチン療法は、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、初期用量は、1日40mg用量のアトルバスタチンに等価な用量から120mg用量のアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の1.5倍~10倍である。特定の実施形態では、増加したスタチン用量は、初期スタチン用量の2倍である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mgのアトルバスタチンまたは80mgのアトルバスタチンに等価な用量である。特定の実施態様において、増加したスタチン用量は、1日80mg~120mgのアトルバスタチンまたは80mg~120mgのアトルバスタチンに等価な用量である。
【0106】
本開示はまた、スタチン療法を用いる治療のためにAMDに罹患している対象を選択する方法であって、この方法は、1)対象の1つ以上の機能的バイオマーカーを測定するか、または測定させる工程と、2)工程1の1つ以上の測定値から上記対象の対象値を決定するか、または決定させる工程と、3)上記対象値を対応する参照範囲と比較する工程と、4)上記対象値が上記参照範囲内にある場合、スタチン療法を用いる治療の対象を選択するか、または上記対象値が上記参照範囲外である場合、スタチン療法を用いる治療の対象を選択しない工程とを含む。特定の実施形態では、スタチン療法はアトルバスタチンであり、用量は1日40mg~120mgである。特定の実施形態では、スタチン療法は、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、用量は、1日40mg~120mgのアトルバスタチンに等価な用量である。
【0107】
本開示はまた、スタチン療法を用いる治療のためにAMDに罹患している対象を選択する方法であって、この方法は、1)対象において暗順応を測定するか、または測定させる工程と、2)上記対象値を提供するために、暗順応測定から桿体切片時間を決定するか、または決定させる工程と、3)上記対象値を対応する参照範囲と比較する工程と、4)上記対象値が上記参照範囲内にある場合、スタチン療法を用いる治療の対象を選択するか、または上記対象値が上記参照範囲外である場合、スタチン療法を用いる治療の対象を選択しない工程とを含む。特定の実施形態では、スタチン療法はアトルバスタチンであり、用量は1日40mg~120mgである。特定の実施形態では、スタチン療法は、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンであり、用量は、1日40mg~120mgのアトルバスタチンに相当する用量である。
【0108】
有効性を決定または予測する前述の方法、治療方法、または選択方法のいずれにおいても、スタチンは、対象への投与が認可された、または(臨床試験などで)認可のための評価を受けている任意のスタチンであり、これらには、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標))、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標))、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))、シンバスタチンZOCOR(登録商標))、その類似体、およびそれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0109】
有効性を決定または予測する前述の方法のいずれか、治療方法、または暗順応が測定される選択方法では、以下の条件のいずれかを使用することができる。
70%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
76%の有効な色あせおよび5°または12°の偏心度テスト位置、
70%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、
70%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置、
76%の有効な色あせおよび5°の偏心度テスト位置、および
76%の有効な色あせおよび12°の偏心度テスト位置。
【0110】
前述の条件のいずれかで、5°または12°の偏心度テストの位置は、下視野子午線の中心に位置することがあり得る。
【0111】
有効性を決定または予測する前述の方法、治療方法、または桿体切片時間が決定される選択方法では、桿体切片基準感度レベルは5x10-2暗所cd/m2から5×10-4暗所cd/m2であり得る。桿体切片時間が決定される前述の実施形態のいずれかにおいて、桿体切片基準感度レベルは、5×10-3暗所cd/m2であり得る。
【0112】
有効性を決定または予測する前述の方法、治療方法、または選択方法のいずれにおいても、治療方法は、ドルーゼン(例えば、軟性ドルーゼン)の退行、PEDの退行、RPEの萎縮の予防または遅延、1つ以上の視細胞の萎縮の予防または遅延、失明の予防または遅延、視覚の改善(視力など)、および/または早期AMDから進行型AMDへの進行(地理的萎縮または脈絡膜血管新生など)の予防または遅延という目的を有することができる。
【0113】
有効性を決定または予測する前述の方法、治療方法、または選択方法のいずれかにおいて、対象は軟性ドルーゼンを有し得る。前述の治療方法のいずれにおいても、対象は、臨床的評価の後に早期AMDを有すると決定できる。前述の治療方法のいずれにおいても、対象は、臨床的評価の後に中期AMDを有すると決定できる。前述の治療方法のいずれにおいても、対象はSDDを有し得る。
【0114】
有効性を決定または予測する前述の方法、治療方法、または選択方法のいずれにおいても、ベースライン値は、スタチン治療の開始前に、またはスタチン治療の開始と同時に決定することができる。前述の治療方法または選択方法のいずれかにおいて、後続の値は、ベースライン値またはより初期の後続の値から1カ月以上取ることができる。前述の治療方法または選択方法のいずれにおいても、後続の値は、ベースライン値またはより初期の後続の値から3か月以上取ることができる。前述の治療方法または選択方法のいずれにおいても、後続の値は、ベースライン値またはより初期の後続の値から6か月以上取ることができる。前述の治療方法または選択方法のいずれにおいても、後続の値は、ベースライン値またはより初期の後続の値から12か月以上取ることができる。
【0115】
スタチン
本明細書に記載の方法は、例えば、国際特許出願第WO2017/066529号に記載されているような高用量スタチンの投与を含む。スタチン(またはHMG-CoAレダクターゼ阻害剤)は、以下に示されるように、HMG-CoAと構造が類似しているコレステロール低下薬のクラスである。
【化1】
スタチンは、HMG-CoA活性部位においてHMG-CoAレダクターゼに競合的に結合することにより、酵素HMG-CoAレダクターゼを阻害する。本明細書に記載の方法に関連して、任意のスタチンを使用することができる。スタチンの非限定的な例には、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標))、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標))、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))シンバスタチン(ZOCOR(登録商標))、その類似体、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるスタチンはアトルバスタチンである。
【0116】
スタチンは親油性でも親水性のいずれでもよい。親油性スタチンには、例えば、アトルバスタチン、ロバスタチン、およびシンバスタチンが含まれる。親水性スタチンには、例えば、フルバスタチン、ロスバスタチン、およびプラバスタチンが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるスタチンは、親油性(例えば、アトルバスタチン)である。
【0117】
本明細書で使用される場合、「高用量」という用語は、世界保健機関(WHO)による定義された1日用量(DDD)を超える任意の用量を指す。2015 ATC/DDDインデックスは、アトルバスタチンについて20mg、セリバスタチンについて0.2mg、フルバスタチンについて60mg、ロバスタチンについて45mg、ピタバスタチンについて2mg、プラバスタチンについて30mg、ロスバスタチンについて10mg、およびシンバスタチンについて30mgとしてのDDDを示す(例えば、whocc.no/atc_ddd_index/を参照)。例えば、本明細書に記載の方法で使用されるスタチンがアトルバスタチン(20mgのDDDを有する)である実施形態では、アトルバスタチンの高用量は、少なくとも40mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも70mg、少なくとも80mg、少なくとも90mg、少なくとも100mg、少なくとも120mg、少なくとも140mg、または少なくとも160mgであり得る。いくつかの実施形態では、使用される用量は、アトルバスタチンについて少なくとも80mg(例えば、80~100、80~120、80~140、または80~160mg)である。
【0118】
本明細書に記載の方法で使用されるスタチンがアトルバスタチン以外のスタチンである他の実施形態では、高用量アトルバスタチンと等価な用量を使用することができる。他のスタチンの等価用量は、当業者により容易に決定され得る。例えば、スタチンのDDDに基づいて、80mgのアトルバスタチンの等価用量は、セリバスタチンで0.8mg、フルバスタチンで240mg、ロバスタチンで180mg、ピタバスタチンで8mg、プラバスタチンで120mg、ロスバスタチンで40mg、およびシンバスタチン120mgであり得る。いくつかの実施形態では、使用される用量は、セリバスタチンについて少なくとも0.8mg(例えば、0.8~1.0、0.8~1.2、0.8~1.4、または0.8~1.6mg)、フルバスタチンについて少なくとも80mg(例:80~100、80~120、80~140、または80~160mg)、ロバスタチンについて少なくとも80mg(例えば、80~100、80~120、80~140、または80~160mg)、ピタバスタチンについて少なくとも4mg(例えば、4~6、4~8、または4~10mg)。プラバスタチンについて少なくとも40mg(例えば、40~50、40~60、40~70、または40~80mg)。ロスバスタチンについては少なくとも40mg(例えば、40~50、40~60、40~70、または40~80mg)、およびシンバスタチンについては少なくとも80mg(例:80~100、80~120、80~140、または80~160mg)である。
【0119】
本明細書では、維持用量のスタチンの投与を含む方法も提供される。例えば、AMDの効果的な治療後、投与されるスタチンの量は、高用量のスタチンから維持用量のスタチンまで減らすことができる。本明細書で使用される場合、「維持用量」は、高用量よりも低く、スタチンのWHOによるDDDとほぼ等価なスタチンの用量を示す。例えば、アトルバスタチン(20mgのDDDを有する)の維持用量は、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、または約60mgであり得る。いくつかの実施形態では、維持用量スタチンは約60mgのアトルバスタチンである。いくつかの実施形態では、維持用量スタチンは、約40mgのアトルバスタチンである。
【0120】
本明細書に記載の方法で使用されるスタチンがアトルバスタチン以外のスタチンである他の実施形態では、維持用量のアトルバスタチンと等価な用量を使用することができる。他のスタチンの等価用量は、当業者により容易に決定され得る。例えば、スタチンのDDDに基づいて、40mgのアトルバスタチンと等価な維持用量は、セリバスタチンでは0.4mg、フルバスタチンでは120mg、ロバスタチンでは90mg、ピタバスタチンでは4mg、プラバスタチンでは60mg、ロスバスタチンでは20mg、およびシンバスタチンでは60mgであり得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、スタチンは全身的に、例えば経口的または非経口的に投与される。本明細書で別段の指定がない限り、スタチンの列挙された用量は、1日用量であると理解される。
【実施例0122】
本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに説明される。
【0123】
実施例1-スタチン治療開始後のコントラスト感度の改善
中期AMDを有する成人女性患者は、6ヶ月間にわたって1日あたり80mgまで増加する用量の経口アトルバスタチンで治療された。患者は、治療の経過中に視覚機能の知覚された変化を報告するように求められた。患者、アーティスト、治療開始後のコントラスト感度の自己申告による改善。この自己申告によるコントラスト感度の改善は、彼女のAMDに関連するドルーゼンの最終的な消散に先立って良好に起こった。コントラスト感度の改善を記録する客観的テストは行われていない。しかし、アーティストとして、この患者は彼女の視覚機能に鋭敏に気づいていたため、コントラスト感度の彼女の自己申告による改善はかなりの信憑性を有していた。
【0124】
実施例2-暗順応の改善は、スタチン処理後のドルーゼン解像度に先行する
中期AMDを有する成人男性患者を、以下のスケジュールに従って23ヶ月間経口アトルバスタチンで治療した。
【表1】
【0125】
患者は、治療の経過中にいかなる視覚機能の知覚された変化についても報告するように求められた。プロの写真家である患者は、治療の7か月目に暗順応の改善を自己申告した。自己申告による改善は、治療の15ヶ月と22ヶ月で確認された。さらに、治療の15か月目に、患者の眼科検査により、彼のAMDに関連するドルーゼンの実質的に完全な消散が示された。ドルーゼンの解像度は、眼底写真と光干渉断層計(OCT)画像によって確認された。自己申告による暗順応の改善(最初に7か月目に報告された)は、臨床的に明らかなドルーゼン負荷の減少(15か月目に最初に測定された)のかなり前に起こった。暗順応の改善を記録する客観的テストは行われなかった。しかし、プロの写真家として、この患者は視覚機能、特に写真用の暗室に入ってフィルムを現像するときに光から暗闇に移行する彼の視覚機能に鋭敏に気づいていたため、暗順応に関する自己申告の改善にはかなりの信憑性があった。
【0126】
実施例3-暗順応パラメータの変化は、スタチン治療を受けているAMD患者の臨床転帰を示している
スタチン療法で治療されている7人のAMD患者の一連の症例について、暗順応データ、および任意選択で他の視覚機能データが収集された。表1は、7人の患者の人口統計情報と、スタチン療法に関する詳細を示す。
【表2】
【0127】
ドルーゼンは、PEDや色素変化などの他の構造的特徴とともに、AMDおよびその進行または退行の1つの指標として臨床医によって使用されている。ドルーゼン自体の存在は、暗順応や他の視覚機能に大きな影響を直接与えない。しかし、前述のように、ドルーゼンの発達の前駆体としてBMに形成するBlinDおよびBlamDは、RPEと脈絡膜の間の輸送障壁として機能することができ、脈絡膜からRPEに到達する酸素および栄養素の供給、ならびに反対方向に行く廃棄物の除去を妨げる。この輸送障壁は視覚サイクルを混乱させる可能性があり、それにより、桿体切片時間(RI時間またはRI値とも呼ばれる)を含む、暗順応パラメータに劇的な悪影響を及ぼす。脂質はBlinDおよびBlamDの主要な構成要素であるため、脂質の蓄積および/または分布に影響を与える能力を有するスタチン系薬剤の投与などの療法は、ドルーゼンおよび根底にあるBlinDおよびBlamDの蓄積を減少および/または後退させる可能性がある。BlinDおよびBlamDはRI時間を含む暗い順応パラメータに影響を与える可能性があるため、RI時間を含むがそれに限定されない暗順応パラメータは、AMDおよびその進行または退行の機能的バイオマーカーとして働く能力を有する。さらに、RI時間を含むがこれに限定されない暗順応パラメータの使用は、スタチン療法の作用機序にも関連している。その結果、スタチン療法を受けている患者のAMDの機能的バイオマーカーとして、RI時間などであるがこれらに限定されない暗順応パラメータの使用は、少なくとも部分的に、ドルーゼン、PED、および色素変化などのAMDの他のバイオマーカーとは異なる生理学的プロセスと症状に依存する。
【0128】
表2は、ベースライン診断(スタチン療法を開始するときに行われる診断)、終了診断(最後の参照評価の日に行われる診断)、各患者に対して行われる評価の結果、および患者がスタチン療法に反応したかどうかを含む、患者1から7に関する詳細な情報を提供する。この実施例の暗順応データは、分単位で報告される桿体切片時間(またはRI時間)である。この実施例では、標準の拡張テストプロトコルを実行しているAdaptDx(登録商標)Dark Adaptometer(MacuLogix,Middletown,PA)を使用して、暗順応データを収集した。拡張テストプロトコルは、76%の有効な色あせおよび、下視野子午線上で5°の偏心度のテスト位置を利用する。データはAdaptDx Dark Adaptometerによって自動的に分析され、基準感度レベル5×10
-3暗所cd/m
2への回復に基づいてRI時間を提供する。20分を超える値は、20分のテストの終了時にその患者のRI時間を決定できなかったことを示す。視力データは、標準のSnellenまたはETDRSの視力検査表を使用して収集され、結果は標準の20/20視覚スケールを使用して提示された。ドルーゼンの解像度は、AMD評価で経験を積んだ資格のある臨床医による眼底およびOCT画像の評価によって決定された。機器により実施された自動データ分析を用いて、両方のケースにおいて、眼底およびOCT画像データは、Heidelberg Engineering Spectralis(登録商標)SD-OCT(ハイデルベルク、ドイツ)またはKarl Zeiss Meditec Cirrus(登録商標)HD-OCT(イエナ、ドイツ)を使用して収集された。
【表3】
【0129】
ベースライン診断および終了診断は、AMD患者の評価に経験を積んだ資格のある臨床医による臨床評価の結果である。臨床評価は、スリットランプ生体顕微鏡検査(ドルーゼンおよび色素変化の証拠の探索を含む)、眼底およびOCT画像(ドルーゼンおよび色素変化の証拠の検索、ならびに網膜の体積と網膜の厚さの計算を含む)、ならびにスネレンまたはETDRS視力検査表でのテスト(病状の変化を示す可能性のある視力の変化の探索を含む)などであるがこれらに限定されない、標準的な眼科検査を利用して実行される。暗順応の結果は、ベースラインの臨床評価または終了時診断に使用されなかった。
【0130】
表2のデータから見ることができるように、RI時間は、AMD患者、特に中期AMDの患者におけるスタチン治療の有効性の強力な予測因子であった。患者1、3~5および7は、初期診断が治療および臨床評価後に変化しなかったため、スタチン治療に対する非応答者であると判断された。これらの患者の場合、RI時間は改善なし/本質的に改善なし(患者1 OD、患者3 OU、患者4 OU、患者5 OS、および患者7 OU)を示すか、または悪化し(患者1 OS、および患者5 OD)、反応しない(すなわち、臨床的に改善しない)という臨床評価に合致した。患者2は、治療後に初期診断が改善されたため(初期診断は中期AMD OU、終了時診断は早期AMD OU)、スタチン療法に対する応答者であると特定された。患者2については、RI時間は1.67分 OD、2.60分 OS改善し、スタチン療法に対する反応の臨床評価に合致した(すなわち、臨床的に改善)。患者6は、スタチン治療に対する応答者または非応答者として明確に分類できなかった。初期診断は、治療および臨床評価後にまだ変化していなかったが、患者6は、わずか9か月の治療後に、ドルーゼンの消散の兆候および網膜体積のわずかな減少を示し、治療効果の開始の可能性を示す。患者6については、RI時間は2.2分 OD減少し、スタチン療法に対する反応の初期の臨床兆候と合致した。
【0131】
患者2、5、6、および7の結果については、以下で詳しく説明する。
【0132】
患者2
臨床評価後、患者2は中期AMD(両眼、OU)と診断された。患者2は、2013年1月にアトルバスタチン(80mg/日)によるスタチン療法を開始した。2015年1月、患者2は上記の暗順応テストを受けた。結果を
図4A(右眼、OD)および4B(左眼、OS)に示す。RI時間は、18.72分 OD、9.88分 OSと決定された。
【0133】
患者2は、2015年の8月および12月に上記のように右眼のOCT網膜画像検査を受けた。2015年8月のテストのOCT画像を
図3Aおよび3Bに示す。
図3Cは、2015年8月のOCT画像(OCT画像システムの標準ソフトウェアを使用)の分析から決定されたETDRSセグメントの平均網膜厚(μM)および平均網膜体積(mm
3)を示す。平均網膜厚は179μM(最小値は176μM、最大値は461μM)と決定され、平均総体積は8.49mm
3と決定された。2015年12月のテストのOCT画像を
図3Dおよび3Eに示す。
図3Fは、2015年12月のOCT画像(OCT画像システムの標準ソフトウェアを使用)の分析から決定された、ETDRSセグメントの平均網膜厚(μM)および平均網膜体積(mm
3)を示す。平均網膜厚は199μM(最小値は170μM、最大値は332μM)と決定され、平均総体積は8.23mm
3と決定された。
図3Gは、ETDRSセグメント上の網膜の厚さと体積の2015年8月から2015年12月までの平均変化を示す。データは、急速で実質的に完全なドルーゼン消散および0.26mm
3の網膜体積の全体的な減少を示す。
【0134】
患者2は、上記のように、2016年2月と8月に左眼のOCT網膜画像検査を受けた。2016年2月のテストからのOCT画像を
図3Hおよび3Iに示す。
図3Jは、2016年2月のOCT画像(OCT画像システムの標準ソフトウェアを使用)の分析から決定されたETDRSセグメントの平均網膜厚(μM)および平均網膜体積(mm
3)を示す。平均網膜厚は364μM(最小値は217μM、最大値は457μM)であると決定され、平均総体積は8.45mm
3と決定された。2016年8月のテストのOCT画像を
図3Kおよび3Lに示す。
図3Mは、2016年8月のOCT画像(OCT画像システムの標準ソフトウェアを使用)の分析から決定された、ETDRSセグメントの平均網膜厚(μM)および平均網膜体積(mm
3)を示す。平均網膜厚さは193μM(最小値は191μMおよび最大値は291μM)であると決定され、平均総体積は8.2mm
3と決定された。
図3Nは、ETDRSセグメント上の網膜の厚さおよび体積の2016年2月から2016年8月までの平均変化を示す。データは、急速で実質的に完全なドルーゼンの消散および網膜体積の0.25mm
3の全体的な減少を示す。
【0135】
2018年5月、患者2は右眼と左眼にそれぞれ20/30と20/20の視力があると判断された(上記のように決定された)。2018年7月、患者2は上記の追加の暗順応テストを受けた。結果を
図4C(右眼、OD)および4D(左眼、OS)に示す。RI時間は、17.05分 OD、7.28分 OSと決定され、2015年1月の前回の暗順応テストからそれぞれ1.67分および2.60分改善された。
【0136】
患者2では、暗順応のRI時間パラメータは、スタチン療法の時間経過にわたって右眼(OD)と左眼(OS)の両方で改善を示した。同様に、臨床評価は、網膜体積の減少とともに実質的に完全なドルーゼンの消散を示し、2018年7月の終了時診断は、中期AMDのベースライン診断から両眼の早期AMDに後退したと決定された。2015年1月から2018年7月までの両眼のRI時間の改善は、この期間にわたる、観察された網膜構造と両眼の臨床診断の改善を反映しており、スタチン療法に対する陽性反応の判定と一致した。したがって、RI時間パラメータによって特徴付けられる暗順応は、患者2におけるスタチン療法の有効性の正確なバイオマーカーであった。
【0137】
患者5
臨床評価後、患者5は中期AMD(両眼、OU)と診断された。患者5は、2014年1月にアトルバスタチン(1日あたり80mg)を用いるスタチン療法を開始し、2015年1月までこの用量でスタチン療法を継続した。13ヶ月の治療休暇の後、2016年2月にアトルバスタチン(20mg/日)を用いるスタチン療法が再開された。2018年4月、スタチン療法はプラバスタチン(20mg/日)に変更された。
【0138】
2014年1月(スタチン療法の開始と同時に)、患者5は上記のOCT網膜画像検査を受け、その結果が
図5A(右眼、OD)および5B(左眼、OS)に示される。
図5Aおよび5Bに示すように、OCT網膜画像検査では、中期AMDの診断と一致して、両眼にドルーゼンの蓄積が見られた。2014年1月の患者の視力は、20/25(両眼、OU)と決定された。2015年10月、患者5は上記のように暗順応テストを受け、両眼のRI時間を測定された。結果を
図6A(右眼、OD)および6B(左眼、OS)に示す。RI時間は9.68分(右眼、OD)および11.04分(左眼、OS)と測定された。その後、患者5は2018年4月にOCT網膜画像検査を使用して検査され、2018年6月に暗順応テストが行われた。2018年4月のOCT網膜画像検査の結果を
図5C(右眼、OD)および5D(左眼、OS)に示し、ドルーゼンの継続的な存在を示す。より具体的には、
図5Aと5C(それぞれ、より初期およびより後期の時点の右眼)を比較すると、ドルーゼンの蓄積が増加し、ドルーゼンのサイズ増加の可能性を伴っており、
図5Bと5D(それぞれ、より初期およびより後期の時点の左眼)を比較すると、より後期の時点でのPEDの発生を示す。2018年6月の暗順応テストの結果を
図6C(右眼、OD)および6D(左眼、OS)に示し、これは、RI時間が17.19分(右眼、OD)および10.81分(左眼、OS)であったことを示す。右眼についてのRI時間は7.51分増加したが、左眼用のRI時間はより初期の測定値から本質的に変化していなかった。
【0139】
患者5では、暗順応RI時間パラメータは、右眼(OD)で悪化し、スタチン療法の時間経過にわたって、左眼(OS)で本質的に変化を示さなかった。同様に、臨床評価では、スタチン療法の過程で少なくともわずかな疾患の進行が示されたが、患者5はまだ中期AMDであると判断された。2015年10月から2018年6月にかけての右眼でのRI時間の悪化および左眼でのRI時間の改善の欠如は、この同じ期間中に観察された網膜構造の悪化および両眼の臨床診断の改善の欠如を反映し、そしてスタチン療法への無反応の決定と一致した。したがって、RI時間パラメータによって特徴付けられる暗順応は、患者5のスタチン療法の有効性に関する正確なバイオマーカーであった。
【0140】
患者6
臨床評価後、患者6は中期AMD(両眼、OU)と診断された。臨床評価の一部として、患者6は上記のOCT網膜画像検査を受けた。結果を
図7A(右眼、OD)および7B(左眼、OS)に示す。
図7Aおよび7Bに示すように、OCT網膜画像検査は、中期AMDの診断と一致して、両眼における軽度のドルーゼンの蓄積を明らかにした。患者6は、2017年11月にアトルバスタチン(80mg/日)を用いるスタチン治療を開始した。2017年8月(スタチン治療の開始直前)に、患者6は上記のような暗順応テストを受け、右眼のRI時間を決定し、その結果は
図8A(右眼、OD)に示す。RI時間は5.75分と決定された。患者6の左眼をテストしているときに色あせエラーが発生し、左眼についてのRI時間の決定を妨げた。
【0141】
患者6はスタチン療法を継続し、その後2018年8月にOCT網膜画像検査および暗順応検査を使用して検査された。2018年8月のOCT網膜画像検査の結果を
図7C(右眼、OD)および7D(左眼、OS)に示す。
図7A/7Bと7C/7Dとを比較すると(それぞれ右眼と左眼でより初期/後期の時点)、ドルーゼン消散のヒントを両方の目で見ることができる。
図7Eは、ドルーゼン消散の開始と一致するドルーゼンサイズのわずかな減少を示す、
図7Aおよび7CのOCT網膜画像からの拡大領域である(それぞれ、右眼についてのより初期および後期の時点)。さらに、これらの2018年8月のOCT画像の分析(OCT画像システムの標準ソフトウェアを使用)は、右眼(OD)で0.09mm
3、左眼(OS)で0.10mm
3の網膜体積の減少を示す。
【0142】
2018年8月の暗順応テストの結果を
図8Bに示す(右眼、OD)。右眼のRI時間は2.55分と決定され、2017年8月の前回の決定から3.20分の減少であった。再度、色あせエラーが、左眼のRI時間の決定を妨げた。
【0143】
患者6では、暗順応RI時間パラメータが、スタチン療法の時間経過に伴い、右眼(OD)が3.2分改善されたことが示された。同様に、患者6はまだ中期AMDに分類されていたが、臨床評価は陽性の臨床反応の兆候をもたらした。比較的短い(9か月)の治療コースの後の暗順応機能の改善によって強化された肯定的な臨床反応のヒントは、スタチン療法が患者6に対して継続されるべきであることを示している。したがって、RI時間パラメータによって特徴付けられる暗順応は、患者6のスタチン療法の潜在的な成功のための有用なバイオマーカーであった。
【0144】
患者7
臨床評価後、患者7は中期AMD(両眼、OU)と診断された。患者7は、2016年4月にアトルバスタチン(1日あたり10~20mg)を用いるスタチン治療を開始した。2016年3月(スタチン療法の開始前)に、患者7は上記のOCT網膜画像検査を受け、その結果が
図9A(右眼、OD)および9B(左眼、OS)に示される。
図9Aおよび9Bに示されるように、OCT網膜画像検査は、中期AMDの診断と一致して、両眼のドルーゼン蓄積を明らかにした。2016年4月のスタチン治療の開始時に、患者7は上記のように暗順応テストを受け、両眼のRI時間を測定し、その結果を
図10A(右眼、OD)および10B(左眼、OS)に示す。RI時間は両眼とも20分を超えると判断された。患者7はスタチン療法を継続し、その後2018年7月にOCT網膜画像検査と暗順応検査を使用して検査された。2018年7月のOCT網膜画像検査の結果を
図9C(右眼、OD)および9D(左眼、OS)に示し、再度ドルーゼンの存在を示し、両眼で明らかな減少はない。2018年7月の暗順応テストの結果は、
図10C(右眼、OD)および10D(左眼、OS)に示され、再度両眼で20分にわたるRI時間を示す(スタチン療法の開始時の最初の暗順応テストから変更されていない)。
【0145】
患者7では、暗順応RI時間パラメータは、スタチン療法の時間経過にわたって改善を示さなかった。同様に、臨床評価は、疾患がスタチン療法の経過にわたって改善の兆候なしに安定したままでいたことを示す。患者7に投与されたスタチン用量は非常に低かった(10~20mg/日)。現在の研究は、より高いスタチン用量(例えば、40~80mg/日)がAMD、特に早期および中期AMDの治療においてより効果的である可能性があることを示す。比較的長い(27か月)治療経過後に暗順応機能の改善が見られないことによって強化された肯定的な臨床反応がないことは、スタチン療法を患者7については中止するか、または高用量を投与するように変更する必要があることを示す。したがって、RI時間パラメータによって特徴付けられる暗順応は、患者7でのスタチン療法の失敗の可能性が高い場合の有用なバイオマーカーであった。
【0146】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と併せて説明されてきたが、前述の説明は例示を意図したものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。他の態様、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲内にある。