(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052743
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】フィラー含有フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20240405BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240405BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240405BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240405BHJP
B29C 41/08 20060101ALI20240405BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240405BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240405BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J9/02
C09J201/00
C09J11/04
B29C41/08
B32B27/00 A
B32B27/00 M
B32B27/18 Z
H01R43/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012146
(22)【出願日】2024-01-30
(62)【分割の表示】P 2019105900の分割
【原出願日】2019-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2018109087
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 真
(57)【要約】
【課題】絶縁性樹脂層に微小固形物が分散され、フィラーが規則的に配列しているフィラー含有フィルムにおいて、フィラー含有フィルムを物品に熱圧着した場合のフィラーの配列の乱れを抑制する。
【解決手段】絶縁性樹脂層10にフィラー2と微小固形物3が保持され、平面視でフィラー2が所定配列を繰り返しているフィラー含有フィルム1Aは、該フィラー含有フィルム1Aを平滑面で挟み、所定の熱圧着条件で熱圧着した場合の、熱圧着前に対する熱圧着後のフィラーの繰り返しピッチの比率が300%以内である。このフィラー含有フィルム1Aの一つの製造方法は、剥離基材20a上に絶縁性樹脂層11を形成する工程、絶縁性樹脂層11の剥離基材20aと反対側の面からフィラー2を押し込む工程、フィラー2を押し込んだ絶縁性樹脂層11と、該絶縁性樹脂層と別個の絶縁性樹脂層12とをそれらの剥離基材20a、20bを外側にして積層する工程を有する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性樹脂層にフィラーと、フィラーと形成素材の異なる微小固形物が保持され、平面視でフィラーが所定配列を繰り返しているフィラー含有フィルムであって、
フィラー含有フィルムを平滑面で挟み、所定の熱圧着条件で熱圧着した場合の、熱圧着前に対する熱圧着後のフィラーの繰り返しピッチの比率が300%以内であるフィラー含有フィルム。
【請求項2】
絶縁性樹脂層が2層の絶縁性樹脂層の積層体から形成されている請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項3】
30~200℃の範囲の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層より低い低粘度樹脂層が絶縁性樹脂層に積層されている請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項4】
請求項1記載のフィラー含有フィルムの製造方法であって、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材上に塗布し、剥離基材上に絶縁性樹脂層を形成する工程、
絶縁性樹脂層の剥離基材と反対側の面からフィラーを押し込む工程、
フィラーを押し込んだ絶縁性樹脂層と、該絶縁性樹脂層と別個の絶縁性樹脂層とをそれらの剥離基材を外側にして積層する工程、
を有するフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のフィラー含有フィルムの製造方法であって、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材上に塗布し、剥離基材上に絶縁性樹脂層を形成する工程、
2つの絶縁性樹脂層を、それらの剥離基材を外側にして積層することにより絶縁性樹脂層の積層体を形成する工程、
該絶縁性樹脂層の積層体にフィラーを押し込む工程、
を有するフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項3記載のフィラー含有フィルムの製造方法であって、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材上に塗布し、剥離基材上に絶縁性樹脂層を形成する工程、
30~200℃の範囲の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層より低い低粘度樹脂層の形成用組成物を剥離基材に塗布し、剥離基材上に低粘度樹脂層を形成する工程、
絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を、それらの剥離基材を外側にして積層することにより絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層の積層体を形成する工程、
絶縁性樹脂層の剥離基材を剥離し、剥離基材を剥離した絶縁性樹脂層の面からフィラーを押し込む工程、
を有するフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項3記載のフィラー含有フィルムの製造方法であって、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材上に塗布し、剥離基材上に絶縁性樹脂層を形成する工程、
30~200℃の範囲の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層より低い低粘度樹脂層の形成用組成物を剥離基材に塗布し、剥離基材上に低粘度樹脂層を形成する工程、
絶縁性樹脂層の剥離基材と反対側の面にフィラーを押し込む工程、
フィラーを押し込んだ絶縁性樹脂層と、剥離基材上に形成した低粘度樹脂層とを、それらの剥離基材を外側にして積層する工程、
を有するフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを物品に貼り合わせたフィルム貼着体。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品とを接続した接続体。
【請求項10】
請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルムにおいてフィラーとして導電粒子を用いた異方性導電フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を接続した接続体。
【請求項11】
請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品を接続する接続体の製造方法。
【請求項12】
請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルムにおいてフィラーとして導電粒子を用いた異方性導電フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を接続する接続体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー含有フィルムは、艶消しフィルム、コンデンサー用フィルム、光学フィルム、ラベル用フィルム、耐電防止用フィルム、導電フィルム、異方性導電フィルムなど多種多様の用途で使用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。フィラー含有フィルムを物品に熱圧着して用いる場合、フィラー含有フィルムを形成している樹脂が熱圧着時に不用に流動することを抑制し、フィラーの偏在を抑制することが、光学的特性、機械的特性、又は電気的特性の点から望ましい。特に、フィラーとして導電粒子を含有させ、フィラー含有フィルムを電子部品の実装に供する異方性導電フィルムとして使用する場合に、電子部品の高密度実装に対応できるように、絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させると、電子部品の実装時の樹脂流動により導電粒子が不用に移動して端子間に偏在し、ショートの発生要因となるので、このような樹脂流動を抑制することが望ましい。
【0003】
これに対し、絶縁性樹脂層に溶融粘度調整剤やチキソトロピック剤といった微小固形物を含有させることが行われている(特許文献5、6)。
【0004】
また、絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させた場合の電子部品の端子における導電粒子の捕捉性の向上とショートの抑制を両立させるため、導電粒子を規則的に配置することが行われている(特許文献5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-15680号公報
【特許文献2】特開2015-138904号公報
【特許文献3】特開2013-103368号公報
【特許文献4】特開2014-183266号公報
【特許文献5】特許6187665号公報
【特許文献6】特開2016-031888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微小固形物を含有する絶縁性樹脂層は、一般に、微小固形物を分散させた絶縁性樹脂層形成用組成物の塗布乾燥により形成される。しかしながら、微小固形物を高濃度に含有する絶縁性樹脂層を、絶縁性樹脂層形成用組成物の塗布乾燥によって形成する場合、絶縁性樹脂層の乾燥面(即ち、絶縁性樹脂層形成用組成物の塗布層において、該組成物に含まれる溶媒が蒸発していく面)に微小固形物に由来する荒れが形成されるためか、絶縁性樹脂層の粘着性が低下し、電子部品の実装時の仮圧着が均一に行われず、貼着状態が安定しなくなる。また、本圧着時の熱圧着も均一に行われず、絶縁性樹脂層に規則的に配列していた導電粒子に配列の乱れが生じ、電子部品の端子における導電粒子の捕捉性の向上やショートの抑制に悪影響がもたらされる虞が生じる。この問題は、特に電子部品が小型で端子サイズが狭小化している場合に顕著となる。また、フィラー含有フィルム表面の粘着性の低下の問題は、フィルム厚を薄くすると厚い場合に比して顕著になる場合もある。
【0007】
これに対し、本発明は、絶縁性樹脂層に微小固形物が適度な配合量で分散され、該絶縁性樹脂層に導電粒子等のフィラーが所定の配列を繰り返すことにより規則的に配列しているフィラー含有フィルムにおいて、フィラー含有フィルムを物品に熱圧着した場合のフィラーの配列の乱れを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、導電粒子等のフィラーと、該フィラーとは形成素材の異なる微小固形物とが絶縁性樹脂層に保持されているフィラー含有フィルムを、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物の塗布により絶縁性樹脂層を形成する工程と、絶縁性樹脂層にフィラーを押し込む工程により製造する場合に、フィラー含有フィルムの表面に、絶縁性樹脂層の乾燥面が現れないようにすると、フィラー含有フィルムを物品に熱圧着したときのフィラーの配列の乱れが低減することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、絶縁性樹脂層にフィラーと、フィラーと形成素材の異なる微小固形物が保持され、平面視でフィラーが所定配列を繰り返しているフィラー含有フィルムであって、
フィラー含有フィルムを平滑面で挟み、所定の熱圧着条件で熱圧着した場合の、熱圧着前に対する熱圧着後のフィラーの繰り返しピッチの比率が300%以内であるフィラー含有フィルムを提供し、特に、絶縁性樹脂層が2層の絶縁性樹脂層の積層体から形成されている態様及び、30~200℃の範囲の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層よりも低い低粘度樹脂層が絶縁性樹脂層に積層されている態様を提供する。
【0010】
また、本発明は、このフィラー含有フィルムの第1の製造方法として、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材上に塗布し、剥離基材上に絶縁性樹脂層を形成する工程、
絶縁性樹脂層の剥離基材と反対側の面からフィラーを押し込む工程、
フィラーを押し込んだ絶縁性樹脂層と、該絶縁性樹脂層と別個の絶縁性樹脂層とをそれらの剥離基材を外側にして積層する工程、
を有するフィラー含有フィルムの製造方法を提供し、
第2の製造方法として、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材上に塗布し、剥離基材上に絶縁性樹脂層を形成する工程、
2つの絶縁性樹脂層を、それらの剥離基材を外側にして積層することにより絶縁性樹脂層の積層体を形成する工程、
該絶縁性樹脂層の積層体にフィラーを押し込む工程、
を有するフィラー含有フィルムの製造方法を提供し、
第3の製造方法として、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材上に塗布し、剥離基材上に絶縁性樹脂層を形成する工程、
30~200℃の範囲の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層より低い低粘度樹脂層の形成用組成物を剥離基材に塗布し、剥離基材上に低粘度樹脂層を形成する工程、
絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を、それらの剥離基材を外側にして積層することにより絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層の積層体を形成する工程、
絶縁性樹脂層の剥離基材を剥離し、剥離基材を剥離した絶縁性樹脂層の面からフィラーを押し込む工程、
を有するフィラー含有フィルムの製造方法を提供し、
第4の製造方法として、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材上に塗布し、剥離基材上に絶縁性樹脂層を形成する工程、
30~200℃の範囲の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層より低い低粘度樹脂層の形成用組成物を剥離基材に塗布し、剥離基材上に低粘度樹脂層を形成する工程、
絶縁性樹脂層の剥離基材と反対側の面にフィラーを押し込む工程、
フィラーを押し込んだ絶縁性樹脂層と、剥離基材上に形成した低粘度樹脂層とを、それらの剥離基材を外側にして積層する工程、
を有するフィラー含有フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィラー含有フィルムの製造方法によれば、絶縁性樹脂層に微小固形物が粘度調整等の点から適度な配合量で含有されているにも関わらず、フィラー含有フィルムの表面に荒れが形成されないためか、フィルム表面が種々の物品に対して良好な粘着性を有する。したがって、物品に熱圧着により貼り付けたフィラー含有フィルムのフィラーは、熱圧着前の所定配列をほぼ維持することができる。
【0012】
例えば、本発明のフィラー含有フィルムのフィラーが導電粒子である場合に、本発明のフィラー含有フィルムを電子部品同士の異方性導電接続に使用すると、仮圧着を良好に行うことができ、本圧着でも導電粒子の配列に乱れが起こりにくいため、熱圧着前の所定配列をほぼ維持することができる。よって、電子部品が小型で端子サイズが狭小化している場合でも電子部品同士を良好に異方性導電接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、実施例のフィラー含有フィルム1Aのフィラー配置を示す平面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施例のフィラー含有フィルム1Aの断面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施例のフィラー含有フィルム1Aの製造方法の説明図である。
【
図2B】
図2Bは、実施例のフィラー含有フィルム1Aの製造方法の説明図である。
【
図2C】
図2Cは、実施例のフィラー含有フィルム1Aの製造方法の説明図である。
【
図2D】
図2Dは、実施例のフィラー含有フィルム1Aの製造方法の説明図である。
【
図2E】
図2Eは、実施例のフィラー含有フィルム1Aの製造方法の説明図である。
【
図2F】
図2Fは、実施例のフィラー含有フィルム1Aの製造方法の説明図である。
【
図3】
図3は、実施例のフィラー含有フィルム1Bの断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施例のフィラー含有フィルム1Bの製造方法の説明図である。
【
図4B】
図4Bは、実施例のフィラー含有フィルム1Bの製造方法の説明図である。
【
図4C】
図4Cは、実施例のフィラー含有フィルム1Bの製造方法の説明図である。
【
図5】
図5は、実施例のフィラー含有フィルム1Cの断面図である。
【
図6】
図6は、実施例のフィラー含有フィルム1Cの製造方法の説明図である。
【
図7】
図7は、実施例のフィラー含有フィルム1Dの断面図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例のフィラー含有フィルム1Dの製造方法の説明図である。
【
図8B】
図8Bは、実施例のフィラー含有フィルム1Dの製造方法の説明図である。
【
図8C】
図8Cは、実施例のフィラー含有フィルム1Dの製造方法の説明図である。
【
図9】
図9は、実施例のフィラー含有フィルム1Eの断面図である。
【
図10A】
図10Aは、実施例のフィラー含有フィルム1Eの製造方法の説明図である。
【
図10B】
図10Bは、実施例のフィラー含有フィルム1Eの製造方法の説明図である。
【
図10C】
図10Cは、実施例のフィラー含有フィルム1Eの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
<フィラー含有フィルム1Aの全体構成>
図1Aは実施例のフィラー含有フィルム1Aのフィラー配置を示す平面図であり、
図1BはそのX-X断面図である。このフィラー含有フィルム1Aは、フィラー2として導電粒子を含有し、異方性導電フィルムとして使用されるもので、絶縁性樹脂層10に導電粒子が所定配列を繰り返す規則的な配置で保持されている。絶縁性樹脂層10は、フィラー2の他に微小固形物3を含有している。従来のフィラー含有フィルムを、後述するように平滑面で挟んで熱圧着した場合、熱圧着前の規則的なフィラーの配置は熱圧着後に広がり、配列の繰り返しピッチは熱圧着前に対して広くなり、繰り返しピッチのバラツキも大きくなり、フィラーの配列に乱れが生じるが、本発明のフィラー含有フィルムでは、フィラーの移動量や配列の乱れが少なく、熱圧着前に対する熱圧着後のフィラーの繰り返しピッチの比率が300%以内、好ましくは250%以内、より好ましくは200%以内である。言い換えると、本発明のフィラー含有フィルムによれば熱圧着前後でフィラー配置の相対的位置関係が維持されることにより熱圧着前の最近接フィラーの中心間距離に対して、熱圧着後の最近接フィラーの中心間距離を3倍以内、2.5倍以内、2倍以内にすることができる。
【0016】
本発明のフィラー含有フィルムは、熱圧着前後での繰り返しピッチの比率が上述の数値以下になる熱圧着条件を有している。これは、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法によれば、フィラー含有フィルム1Aの表面が剥離基材からの剥離面となるため、絶縁性樹脂層10が微小固形物3を多量に含有していてもフィラー含有フィルム1Aの表面が荒れず、平滑面となり、その平滑面を物品に貼着して加熱加圧すると、フィラー含有フィルムが一様に押圧され、フィルム内で規則的に配列しているフィラーに押圧力が均一に加わることを微小固形物が阻害せず、フィラーの配列が不均一に乱れることが抑制され、加熱加圧後のフィラーの配置が当初の配列を一様に伸張したものとなり、熱圧着前後のフィラーの繰り返しピッチの比率が局部的に大きくなる部分が低減するためと考えられる。
【0017】
なお、この熱圧着によるフィラーの移動量や配列の乱れの少なさは、フィラー含有フィルムを構成する樹脂層の層厚を薄くすることにより一層顕著となる。
【0018】
また、熱圧着が平滑面で行われない場合には熱圧着によるフィラーの移動量や配列の乱れに不均一性が生じる。そのため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合に、異方性導電フィルムでファインピッチのバンプ配列を熱圧着すると、フィラー配列の乱れが比較的大きくなることがある。
【0019】
<フィラー>
本発明においてフィラー2としては、フィラー含有フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。導電フィルムや異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0020】
<フィラーの粒子径>
本発明においてフィラー2の粒子径はフィラー含有フィルムの用途に応じて定めることができる。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用する場合、フィラー含有フィルムの製造時のフィラーの押込精度を向上させるため、好ましくは1μm以上、より好ましくは2.5μm以上である。また、フィラー含有フィルムの製造時のフィラーの位置ずれの影響を抑制するため、好ましくは200μm以下、より好ましくは50μm以下である。ここで、粒子径は平均粒子径を意味する。フィラー含有フィルムにおけるフィラーの平均粒子径は、平面画像又は断面画像から求めることができる。また、フィラー含有フィルムに含有させる前の原料粒子としてのフィラーの平均粒子径は湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることができる。なお、フィラーに絶縁性微粒子等の微粒子が付着している場合には、微粒子を含めない径を粒子径とする。
【0021】
フィラー含有フィルムにおけるフィラーの粒子径Dのバラツキについては、CV値(標準偏差/平均)を20%以下とすることが好ましい。これによりフィラー含有フィルムの物品への圧着時にフィラー含有フィルムが均等に押圧され易くなり、押圧力が局所的に集中することを防止できる。したがって、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合には、接続の安定性が向上し、また接続後には圧痕やフィラーの挟持状態の観察による接続状態の評価を精確に行うことができる。具体的には、異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を異方性導電接続した後の検査において、端子サイズが比較的大きいもの(FOBなど)でも、比較的小さいもの(COGなど)でも圧痕や導電粒子の挟持状態の観察による接続状態の確認を精確に行うことができる。従って、異方性接続後の検査が容易になり、接続工程の生産性を向上させることが期待できる。
【0022】
<フィラーの配列>
本発明のフィラー含有フィルムの平面視において、フィラーは所定配列を繰り返す規則的な配置をしており、
図1Aに示した実施例のフィラー含有フィルム1Aでは、フィラー2の配置は6方格子配列となっている。本発明においてフィラーの規則的な配置の例としては、正方格子、長方格子、斜方格子等の格子配列を挙げることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。フィラーが所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。フィラーが密に配置されている領域と疎に配置されている領域が規則的に繰り返されていてもよい。フィラー同士が接触しているユニットが、フィラーの規則的な繰り返し単位を構成していてもよい。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、導電粒子を互いに非接触な規則的な配列とすることが、端子における捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。なお、フィラーが規則的な配列をしているか否かは、例えばフィルムの長手方向(フィラー含有フィルムを巻装体にした場合の巻取り方向)にフィラーの所定の配置が繰り返されているか否かを観察することで判別することができる。
【0023】
フィラーを規則的に配列させる場合に、その配列の格子軸又は配列軸は、フィラー含有フィルムの長手方向及び長手方向と直行する方向の少なくとも一方に対して平行でもよく、交叉していてもよく、フィラー含有フィルムを圧着する物品に応じて定めることができる。
【0024】
フィラー含有フィルムにおいてフィラー間の距離は接続する物品や用途に応じて定めることができ、フィラーの個数密度は、通常10個/mm2以上、100000個/mm2以下、好ましくは30個/mm2以上、70000個/mm2以下の範囲で適宜定めることができる。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、フィラー2とする導電粒子の粒子間距離を、異方性導電フィルムで接続する端子の大きさ、形状、端子ピッチに応じて適宜定めることができる。また、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合に、導電粒子の個数密度は30個/mm2以上であればよく、150~70000個/mm2が好ましい。特にファインピッチ用途の場合には、好ましくは6000~42000個/mm2、より好ましくは10000~40000個/mm2、更により好ましくは15000~35000個/mm2である。また、導電粒子の粒子径が10μm以上の場合、導電粒子の個数密度は30~6000個/mm2が好ましい。
【0025】
また、フィラーの個数密度に関し、次式で算出されるフィラーの面積占有率を、フィラーの含有効果を発現させる点から0.3%以上とすることが好ましい。一方、フィラー含有フィルムを物品に圧着するために押圧治具に必要とされる推力を抑制する点からはフィラーの面積占有率を35%以下とすることが好ましく、30%以下とすることがより好ましい。
フィラーの面積占有率(%)=[平面視におけるフィラーの個数密度]×[フィラー1個の平面視面積の平均]×100
【0026】
フィラーの個数密度は、金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF(三谷商事株式会社)や、A像くん(登録商標)(旭化成エンジニアリング株式会社)等)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0027】
一方、フィラー含有フィルムをフィルム厚方向に切った断面図では(
図1B)、フィルム厚方向の各フィラーの頂点が、絶縁性樹脂層10の表面又は該表面に平行な面に面一に揃っていることが好ましい。これにより、フィラー含有フィルムを物品に均一に圧着させることが容易となる。
【0028】
<微小固形物>
絶縁性樹脂層10には、フィラー2と異なる機能をフィラー含有フィルム1Aに付与するために、フィラー2と形成素材の異なる種々の微小固形物3を含有することができる。例えば、フィラー2が導電粒子である場合に、微小固形物3としては、粘度調整剤、チキソトロピック剤、重合開始剤、カップリング剤、難燃化剤等を含有することができる。より具体的には、例えば粘度調整剤としては、シリカ粉、アルミナ粉などを挙げることができる。
【0029】
また、フィラー2と微小固形物3の区別に関し、フィラー2として導電粒子を使用し、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合において、特許文献5に記載されているように微小固形物を絶縁性樹脂層に混練りし、導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込むことにより該絶縁性樹脂層に導電粒子を保持させるとき、導電粒子と微小固形物とは、絶縁性樹脂層における双方の分布状態によって容易に区別できる。
【0030】
微小固形物3の粒子径は、フィラー2の粒子径よりも小さいことが好ましく、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、粘度調整剤として含有させる微小固形物は、平均粒子径を好ましくは1μm未満、より好ましくは5nm~0.3μmとすることができ、あるいはフィラーとして含有させる導電粒子の平均粒子径の1/3~1/2とすることが好ましい。
【0031】
絶縁性樹脂層10における微小固形物3の含有量に関しては、上述の特許文献5に記載されているように絶縁性樹脂層に微小固形物を混練りし、導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込むことにより異方性導電フィルムを製造する場合に、導電粒子の押し込みが阻害されない限り特に制限はないが、導電粒子の配置の精密性を確保する点からは、微小固形物を3質量%以上とすることが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましく、異方性導電接続における押し込みを2段階で行うことが必要とされるほどに微小固形物3を高濃度で絶縁性樹脂層10に含有させることができる。一方、電子部品の接続のためにフィルムに必要な流動性を確保する点からは、微小固形物3の含有量は絶縁性樹脂層10に対して50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
<絶縁性樹脂層>
本発明において、絶縁性樹脂層は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。
図1A、
図1Bに示したフィラー含有フィルム1Aの絶縁性樹脂層10は、後述するフィラー含有フィルムの製造方法により、同様の絶縁性樹脂層形成用組成物を平滑な剥離基材上に塗布し、乾燥することにより形成された絶縁性樹脂層11、12を、それらの乾燥面を内側にし、剥離基材側の面を外側にして積層したものとなっている。フィラー含有フィルム1Aでは、これら2層の絶縁性樹脂層11、12の界面を観察することができる。絶縁性樹脂層形成用組成物を塗布し、乾燥した面には、該組成物に含有される微小固形物に由来する荒れが現れやすいが、
図1Bに示したように絶縁性樹脂層11、12における塗布乾燥面を内側にして重ね合わせるとフィラー含有フィルムの表面は剥離基材の平滑面が転写された面になるので、フィラー含有フィルムを物品に均一に熱圧着することが容易になると考えられる。
【0033】
<絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物>
絶縁性樹脂層10を形成する樹脂組成物は、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜選択され、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物から形成することができる。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、特許文献5に記載の異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を使用することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0034】
<絶縁性樹脂層の最低溶融粘度>
絶縁性樹脂層10の最低溶融粘度は、フィラーを絶縁性樹脂層に押し込めれば特に制限はないが、フィラー含有フィルム1Aを物品に熱圧着するときのフィラー2の不用な流動を抑制するため、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、特に好ましくは3000~10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。なお、最低溶融粘度の調整は、溶融粘度調整剤として含有させる微小固形物の種類や配合量、樹脂組成物の調整条件の変更などにより行うことができる。
【0035】
<絶縁性樹脂層の層厚>
前述のように、フィラー含有フィルムにおいて絶縁性樹脂層を単一の絶縁性樹脂層から構成してもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成してもよいが、いずれの場合においても、フィラー含有フィルムの製造工程で絶縁性樹脂層にフィラーを押し込むにあたり、フィラーの押し込みを安定して行えるようにするため、絶縁性樹脂層の層厚はフィラー2の粒子径に対して、好ましくは0.3倍以上、より好ましくは0.6倍以上、さらに好ましくは0.8倍以上、特に好ましくは1倍以上である。また、絶縁性樹脂層の層厚の上限については特に制限はなく、絶縁性樹脂層の層厚はフィラー含有フィルムを熱圧着する物品に応じて適宜調整すればよいが、絶縁性樹脂層の層厚が厚くなりすぎるとフィラー含有フィルムを物品に熱圧着するときにフィラー2が樹脂流動の影響を不用に受け易くなり、また、絶縁性樹脂層に含まれている微小固形物の絶対量が多くなることにより物品の熱圧着が阻害される虞がある。そのため、絶縁性樹脂層の層厚は、フィラー2の粒子径の好ましくは20倍以下、より好ましくは15倍以下である。
【0036】
一方、後述するように、フィラー含有フィルムを、フィラーが埋め込まれた絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層との積層体とする場合、低粘度樹脂層の層厚は、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜調整すればよいが、薄くなりすぎると層厚のバラツキが相対的に大きくなることから、フィラー2の粒子径の好ましくは0.2倍以上、より好ましくは1倍以上である。また、低粘度樹脂層の層厚の上限については、厚くなりすぎると絶縁性樹脂層との積層の困難性が増すことから、フィラー2の粒子径の好ましくは50倍以下、より好ましくは15倍以下、さらに好ましくは8倍以下である。
【0037】
また、フィラー含有フィルムを、フィラーが埋め込まれた絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層との積層体とする場合に、これら樹脂層の総厚は、フィラー含有フィルムを物品に熱圧着するときのフィラー2の不用な流動の抑制の点、フィラー含有フィルムを巻装体する場合の樹脂のはみ出しやブロッキングの抑制の点、フィラー含有フィルムの単位重量あたりのフィルム長を長くする点等から、フィラー含有フィルムにおける樹脂層の総厚は薄い方が好ましい。しかし、薄くなりすぎるとフィラー含有フィルムの取り扱い性が劣る。また、フィラー含有フィルムを物品に貼着し難くなる場合があり、したがってフィラー含有フィルムを物品に熱圧着する際の仮圧着において必要な粘着力を得られない虞があり、本圧着においても樹脂量の不足により必要な接着力を得られない虞がある。そのため、フィラー含有フィルムにおける樹脂層の総厚は、フィラー2の粒子径に対して好ましくは0.6倍以上、より好ましくは0.8倍以上、さらに好ましくは1倍以上、特に好ましくは1.2倍以上である。
【0038】
一方、絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層とを合わせた樹脂層の総厚の上限については特に制限はなく、フィラー含有フィルムを熱圧着する物品に応じて適宜調整すればよいが、樹脂層の総厚が厚くなりすぎるとフィラー含有フィルムを物品に熱圧着するときにフィラー2が樹脂流動の影響を不用に受け易くなり、また、樹脂層に含まれている微小固形物の絶対量が多くなることにより物品の熱圧着が阻害される虞があることから、樹脂層の総厚は、フィラー2の粒子径の好ましくは50倍以下、より好ましくは15倍以下、さらに好ましくは8倍以下である。4倍以下、好ましくは3倍以下にすることで、樹脂流動のフィラー配置への影響は最小限にできると考えられる。
【0039】
フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合に、導電粒子は絶縁性樹脂層に埋め込まれていてもよく、露出していてもよい。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成し、樹脂層として絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を設ける場合に、樹脂層の総厚は上述の範囲とすることができるが、接続する電子部品においてバンプの低背化に対応させる点からは、樹脂層の総厚を上述よりも薄くすることが好ましい。また、樹脂層を薄くすることで、導電粒子とバンプとの接触が容易になる。このような点から、樹脂層の総厚の下限については、導電粒子径の好ましくは0.6倍以上、より好ましくは0.8倍以上、さらに好ましくは1倍以上である。上限については、高すぎると押し込み時に必要な推力が高くなり過ぎるため、導電粒子径の4倍以下とすることができ、好ましくは3倍以下、より好ましくは2倍以下、さらに好ましくは1.8倍以下、特に好ましくは1.5倍以下である。絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層の厚みの比率については、導電粒子径とバンプ高さや求められる接着力などの関係から適宜調整すればよい。
【0040】
<絶縁性樹脂層の粘着力>
絶縁性樹脂層は、フィラー含有フィルムを熱圧着する物品に対して、熱圧着前の仮圧着を可能とする粘着力を有していることが好ましい。フィラー含有フィルムの粘着力は、JIS Z 0237に準じて測定することができ、また、JIS Z 3284-3又はASTM D 2979―01に準じてプローブ法によりタック力として測定することもできる。フィラー含有フィルムが樹脂層として絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を有する場合も、絶縁性樹脂層のみを有する場合も、フィラー含有フィルムの表裏各面のプローブ法によるタック力は、例えば、プローブの押し付け速度を30mm/min、加圧力を196.25gf、加圧時間を1.0sec、引き剥がし速度を120mm/min、測定温度23℃±5℃で計測したときに、表裏の面の少なくとも一方を1.0kPa(0.1N/cm2)以上とすることができ、1.5kPa(0.15N/cm2)以上とすることが好ましく、3kPa(0.3N/cm2)より高いことがより好ましい。この場合、フィラー含有フィルムの一方の面を素ガラスに貼り付けることで、他方の面のタック力を測定してもよい。素ガラスではなく、柔軟性のある熱可塑性樹脂フィルム(例えば、厚さ20μm以下の離形処理していないPETフィルム、シリコンラバーなど)に貼り付けて測定してもよい。フィラー含有フィルムの貼り付ける面を反転させることで、フィラー含有フィルムの表裏の面のタック力を同一条件で測定することができる。
【0041】
特に、フィラー含有フィルムが表裏両面に剥離基材を有するときには、先に電子部品に貼り付けた面と反対側の面が上述のタック力を示すようにフィラー含有フィルムの表裏を使用することが好ましく、巻装体にしたフィラー含有フィルムのように、フィラー含有フィルムがその片面に剥離基材を有するときには、剥離基材側の面が上述のタック力を示すことが好ましい。また、フィラー含有フィルムが絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を有するときには、低粘度樹脂層の表面が上述のタック力を有することが好ましい。一方、フィラー含有フィルムが表裏両面に剥離基材を有するときの先に電子部品に貼り付けた面や、フィラー含有フィルムがその片面に剥離基材を有するときの剥離基材の無い側の面や、フィラー含有フィルムが絶縁性樹脂層と低粘度樹脂層を有するときの絶縁性樹脂層側の面は、必ずしも上述のタック力を有さなくともよいが、有することが望ましい。このようにフィラー含有フィルムの表裏の面で好ましいタック力が異なるのは次の理由による。即ち、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合、一般に、異方性導電フィルムは、その使用時に剥離基材と反対側の面を基板等の第2電子部品に貼り付け、次いで剥離基材を剥離し、剥離基材を剥離した面(即ち、剥離基材側の面)に第1電子部品を搭載することが行われる。このとき搭載部品を精確に固定できる粘着性能を確保する必要があるためである。
【0042】
なお、搭載部品が小さいとき、搭載時には軽微なずれも許容できないが、搭載に必要な粘着力はより大きな搭載部品に対して相対的に低下しても許容できると推察される。そのため、必要な粘着力は搭載部品に応じて定めてもよい。
【0043】
フィラー含有フィルムの粘着力は、特開2017-48358号公報に記載の接着強度試験に準じて求めることもできる。この接着強度試験において、例えば、2枚のガラス板でフィラー含有フィルムを挟み、一方のガラス板を固定し、他方のガラス板を引き剥がし速度10mm/min、試験温度50℃で引き剥がしていく場合に、固定するガラス板とフィラー含有フィルムとの接着状態を強めておくことで、引き剥がしていくガラス板と、そのガラス板と貼り合わさっているフィラー含有フィルムの面との粘着力を測定することが可能となる。こうして測定される粘着力を、好ましくは1N/cm2(10kPa)以上、より好ましくは10N/cm2(100kPa)以上とすることができる。
【0044】
この他、フィラー含有フィルムの粘着力は、試験片の一端を揃えて貼り合わせ、他端を引き上げることにより試験片を剥離させる試験により求めることもできる。この試験方法により計測される粘着力が、上述の接着強度試験と同等(1N/cm2(10kPa)以上)の結果となってもよい。上述の接着強度試験による粘着力が十分に大きいとき(例えば10N/cm2(100kPa)以上)、この試験方法での粘着力を上述の接着強度試験による粘着力の10%以上とすることができる。
【0045】
フィラー含有フィルムが上述の粘着力を有することにより、熱圧着する物品が、例えば、一般的なICチップより小さい最大寸法0.8mm未満の電子部品であっても仮圧着における位置ずれの問題をなくし、大型TVと同程度の最大寸法450cmくらいの電子部品であっても貼着を安定させることができる。
【0046】
このような粘着性は、絶縁性樹脂層を構成する樹脂組成を適宜調整し、また、後述するフィラー含有フィルムの製造方法によって、フィラー含有フィルムの外表面をなす絶縁性樹脂層の平滑性を向上させることにより、絶縁性樹脂層に付与することができる。
【0047】
<フィラー含有フィルム1Aの製造方法>
フィラー含有フィルム1Aは、次のように製造することができる。まず、PETフィルム等の表面が平滑な剥離基材20aに、上述の微小固形分を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を塗布し、乾燥することにより絶縁性樹脂層11を形成する工程を行う(
図2A)。
【0048】
次に、特許文献5に記載の異方性導電フィルムの製造方法のように、凹部がフィラー2の規則的な配置に対応して形成されている型21の凹部にフィラー2を充填し(
図2B)、上述の絶縁性樹脂層11の乾燥面(剥離基材20aと反対側の面)11aに転写させ(
図2C)、そのフィラー2を絶縁性樹脂層11に押し込む工程を行う(
図2D)。
【0049】
一方、絶縁性樹脂層11と同様に剥離基材20b上に絶縁性樹脂層12を形成しておき、その絶縁性樹脂層12と、上述のフィラーを押し込んだ絶縁性樹脂層11とを、それらの剥離基材20a、20bが外側になるように対向させ(
図2E)、これらを積層する工程を行う(
図2F)。こうして、フィラー含有フィルム1Aを得ることができる(
図1A)。
【0050】
<フィラー含有フィルムの表面の平滑性と熱圧着前後のフィラーの繰り返しピッチの比率>
上述のようにして製造されるフィラー含有フィルム1Aの表面は、剥離基材20a、20b側の絶縁性樹脂層の面11b、12bとなることから、その面11b、12bは剥離基材20a、20bの表面の平滑性が転写されて平滑になる。したがって、フィラー含有フィルム1Aを物品に熱圧着するときに、絶縁性樹脂層11、12の物品に対する粘着性が向上し、また、フィラー含有フィルムを一様に押圧することができる。これにより、熱圧着でフィラー2が不均一に流動することが抑制され、熱圧着後のフィラー2の配置は当初の規則的な配置が一様に拡大したものとなる。よって、フィラー含有フィルム1Aを平滑面で挟み、当該絶縁性樹脂層の組成などに応じた所定の加熱加圧条件で面積を熱圧着した場合、熱圧着前に対する熱圧着後のフィラーの繰り返しピッチの比率が300%以内となり、絶縁性樹脂層の乾燥面11a、12aがフィラー含有フィルムの表面を構成するようにした場合に比して顕著に小さくなる。
【0051】
このフィラーの繰り返しピッチの比率が300%以内となる熱圧着条件に関し、温度、圧力、時間については、当該絶縁性樹脂層における通常の加熱加圧条件から適宜選択することができるため容易に見いだすことができる。
【0052】
熱圧着前後のフィラーの繰り返しピッチの比率を調べるときにフィラー含有フィルムを挟む平滑面としては、ガラス板等を使用することができるが、フィラー含有フィルムの熱圧着対象とする物品の平滑面を使用してもよい。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合には、接続対象とする電極、バンプ等の平滑面を使用することができる。これにより接続対象とする当該電子部品における熱圧着前後の導電粒子の繰り返しピッチの比率を評価することができる。
【0053】
熱圧着前後のフィラーの繰り返しピッチの比率を調べるときの平滑面の面積は、フィラーの配列を確認することのできる面積とすればよい。フィラーが格子状に配置されているか、又は特定の形状を有する群を形成している場合には、単位格子や特定の形状の繰り返し単位が少なくとも一つ存在する面積とすることができる。好ましくは、フィラーが格子状に配置されている場合に、フィラー間ピッチが最も小さい配列軸において、単位格子が好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上存在する面積とし、それらの中心に存在する繰り返し単位の距離(例えば、6方格子配列の場合には粒子の中心間距離)を繰り返しピッチとして計測する。特定の形状の繰り返し単位の場合も、同様に求めることができる。一方、熱圧着面積を過度に大きくすると繰り返しピッチの計測に無用に時間を要するので、フィラーが好ましくは1000個以下、より好ましくは500個以下、さらに好ましくは200個以下、特に好ましくは50個以下で含まれる面積とする。
【0054】
平滑面としてこのような面積を確保するため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成し、熱圧着前後の導電粒子の繰り返しピッチの比率を評価する場合には、平滑面として、例えばCOG接続を行う電子部品の比較的面積の大きい入力端子を使用することができる。接続対象とする電子部品にこのような面積を有する端子がない場合は、そのような面積を有する端子が存在する電子部品で評価してもよい。一例として、最小の1辺が30μm以上、好ましくは40μm以上の端子の平滑面を使用する。
【0055】
繰り返しピッチの計測数(N数)は50以上が好ましく、100以上がより好ましい。ただし、このようなN数はフィラーの個数密度によっては困難であるため、これを下回ってもよい。
【0056】
繰り返しピッチの計測方向は、熱圧着前後の繰り返しピッチの比率が大きくなる方向とすることが好ましい。これにより、熱圧着前後の繰り返しピッチの比率が計測方向によってばらつく場合でも、実際の繰り返しピッチの比率を、計測したピッチの比率以下とすることができ、フィラー配置の精密さを確認することができる。一方、繰り返しピッチを複数領域で計測する場合に、各計測領域内では計測箇所を抜き取りで求めてもよい。例えば1つの領域で所定のN数の10%の個数を計測し、他の9つの領域でも同様にN数の10%の個数を計測し、これらを平均する。N数やN数を何カ所の領域で計測するかは、熱圧着する対象物によって適宜調整することができる。
【0057】
電子部品の平滑面を用いて熱圧着前後の導電粒子の繰り返しピッチの比率を調べるにあたり、樹脂流動が端子配列方向とこれに直行する方向とで導電粒子の移動量が異なる場合がある。この場合は、導電粒子の移動量が大きい方向でピッチを計測することが好ましい。
【0058】
また、電子部品の平滑面に異なる大きさの端子が混在する場合には、端子サイズや端子間距離が大きく、端子配列方向における導電粒子の移動量とこれに直行する方向における導電粒子の移動量との差が小さい部位を選択してピッチを計測することが好ましい。例えば、COG接続の場合には入力端子と出力端子で端子サイズや端子間距離が異なる。その場合は、端子サイズや端子間距離が大きな入力端子でピッチを計測する。これにより、導電粒子の移動量や配列の乱れについて、評価を行い易くなる。
【0059】
熱圧着前後のフィラーの繰り返しピッチの比率を調べるときの上述したピッチの計測方向、計測部位などは、フィラー含有フィルムが異方性導電フィルム以外であっても同様とすることができる。また、熱圧着前後のフィラーの繰り返しピッチの比率を、接続対象とする当該物品で調べようとしても該物品に平滑面が存在しない場合は、平滑なガラス板同士で代替することもできる。この場合、熱圧着条件は、接続する物品の熱圧着条件(フィラー含有フィルムにかかる到達温度、圧力、圧着時間等)と同等となるように調整することが好ましい。
【0060】
ピッチの計測手段としては、光学顕微鏡や金属顕微鏡、電子顕微鏡といった公知の画像観察装置や、WinROOFやA像くん(登録商標)などの計測システムを挙げることができ、これらは適宜組み合わせることができる。
【0061】
本発明のフィラー含有フィルムによれば表面の平滑性が向上し、物品に対する粘着性が向上していることにより、上述したように熱圧着前に対する熱圧着後のフィラーの繰り返しピッチの比率を300%以下に低減できる。そのためフィラー含有フィルム1Aを異方性導電フィルムとして構成した場合には、電子部品に対する異方性導電フィルムの仮圧着性が向上し、本圧着においても電子部品の端子における導電粒子の捕捉性が向上し、ショートが抑制される。したがって、電子部品の端子サイズが狭小化している場合でも、確実に導通させ、かつショートを抑制することができる。また、粘着性が向上していることにより、大型の電子部品においても小型の電子部品においても接続する電子部品の搭載が安定し、接続体の製造が容易となり、生産性の向上を図ることができる。特に、端子が狭小化している電子部品では、アライメントを精密に行う必要性が高まることから、本発明のフィラー含有フィルムは大きな効果をもたらすこととなる。
【0062】
<フィラー含有フィルム1B>
本発明のフィラー含有フィルムは種々の態様をとることができる。例えば、
図3に示したフィラー含有フィルム1Bは、上述のフィラー含有フィルム1Aに対して、フィラー2のフィルム表面側の位置とフィラー含有フィルム1Bの表面(絶縁性樹脂層12の剥離基材側の面12b)とがフィルム厚方向に面一に揃っている点が異なっている。
【0063】
このフィラー含有フィルム1Bは、フィラー含有フィルム1Aの製造方法と同様に剥離基材20a、20bにそれぞれ形成した絶縁性樹脂層11、12を形成する工程(
図4A)、それらの絶縁性樹脂層11、12を、剥離基材20a、20bを外側にして積層することにより絶縁性樹脂層の積層体を形成する工程(
図4B)、一方の剥離基材20bを剥離し、剥離後の絶縁性樹脂層12の面12bからフィラー2を押し込む工程、を行うことにより製造することができる(
図4C)。
【0064】
このフィラー含有フィルム1Bも、その表面をなす絶縁性樹脂層の表面11b、12bが、剥離基材20a、20bの表面の平滑性が転写されていることにより平滑であり、フィラー含有フィルム1Aと同様の効果を発揮する。
【0065】
<フィラー含有フィルム1C>
図5に示したフィラー含有フィルム1Cは、上述のフィラー含有フォルム1Bのフィラーの押込面(剥離基材側の絶縁性樹脂層の面12b)(
図4C)に、低粘度樹脂層15を積層したものである。
【0066】
低粘度樹脂層15は、30~200℃の範囲の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層10よりも低い樹脂層である。低粘度樹脂層15を絶縁性樹脂層10に積層することにより、フィラー含有フィルム1Cを介して対峙する2つの物品を熱圧着する場合に、それらの接着性を向上させることができ、特に、フィラー2を導電粒子とし、フィラー含有フィルム1Cを異方性導電フィルムとして使用し、電子部品を異方性導電接続するときには、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を低粘度樹脂層15で充填し、電子部品同士の接着性を向上させることができる。
【0067】
また、絶縁性樹脂層10の最低溶融粘度と低粘度樹脂層15の最低溶融粘度との差があるほどフィラー含有フィルム1Cを介して接続する2つの物品間の空間が低粘度樹脂層15で充填され易くなる。このため、フィラー2を導電粒子とし、フィラー含有フィルム1Cを異方性導電フィルムとして使用する場合には、電子部品の電極やバンプによって形成される空間が低粘度樹脂層15で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性が向上しやすくなる。また、この差があるほどフィラー2を保持している絶縁性樹脂層10の熱圧着時の移動量が低粘度樹脂層15に対して相対的に小さくなるため、端子における導電粒子の捕捉性が向上しやすくなる。
【0068】
絶縁性樹脂層10の最低溶融粘度A1と低粘度樹脂層15の最低溶融粘度A2の比(A1/A2)は、実用上は、絶縁性樹脂層10と低粘度樹脂層15の層厚の比率にもよるが、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると長尺のフィラー含有フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングが生じる虞があるので、実用上は30以下が好ましく、15以下がより好ましい。低粘度樹脂層15の好ましい最低溶融粘度は、より具体的には、上述の比を満たし、かつ3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に好ましくは100~2000Pa・sである。
【0069】
なお、低粘度樹脂層15は、絶縁性樹脂層10と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。低粘度樹脂層15にも必要に応じて微小固形物を含有させることができる。
【0070】
フィラー2を押し込んだ絶縁性樹脂層10への低粘度樹脂層15の積層方法としては、
図6に示したように、剥離フィルム等の剥離基材20c上に低粘度樹脂層形成用組成物を塗布し、乾燥して低粘度樹脂層15を形成し、その乾燥面15aを、絶縁性樹脂層10のフィラー2の押込面と対向させ、絶縁性樹脂層10に低粘度樹脂層15を積層することができる。また、低粘度樹脂層15における微小固形物の含有量が低く、低粘度樹脂層15の乾燥面15aの粘着性と、それと反対側の面15bの粘着性とに実質的な差異が無い場合には、絶縁性樹脂層10のフィラー2の押込面に直接的に低粘度樹脂層形成用組成物を塗布し、低粘度樹脂層15を形成してもよい。
【0071】
<フィラー含有フィルム1D>
図7に示したフィラー含有フィルム1Dは、絶縁性樹脂層10と低粘度樹脂層15の乾燥面同士が対向した積層体の該絶縁性樹脂層10の外表面にフィラー2の頂部が面一に揃って配置されているものであり、次の工程から製造することができる。
【0072】
即ち、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材20a上に塗布し、乾燥することにより絶縁性樹脂層10を形成する工程を行うと共に、低粘度樹脂層形成用組成物を剥離基材20c上に塗布し、乾燥することにより低粘度樹脂層15を形成する工程を行い(
図8A)、次に、絶縁性樹脂層10と低粘度樹脂層15とを、それらの剥離基材20a、20cを外側にして(即ち、乾燥面同士を対向させて)積層することにより、絶縁性樹脂層10と低粘度樹脂層15の積層体を形成する工程を行い(
図8B)、該積層体から、絶縁性樹脂層10の剥離基材20aを剥離し、剥離基材を剥離した絶縁性樹脂層の面からフィラー2を押し込む工程を行う(
図8C)。
【0073】
こうして、得られるフィラー含有フィルム1Dでは、その表面をなす絶縁性樹脂層の表面10bと低粘度樹脂層15の表面15bは、剥離基材20a、20cの表面の平滑性が転写されていることにより平滑であり、フィラー含有フィルム1Aと同様の効果を発揮する。
【0074】
<フィラー含有フィルム1E>
図9に示したフィラー含有フィルム1Eは、絶縁性樹脂層10の乾燥面と低粘度樹脂層15の乾燥面とが対向した積層体の該絶縁性樹脂層10の乾燥面にフィラー2の頂部が面一に揃って配置されているものであり、次の工程から製造することができる。
【0075】
即ち、前述したフィラー含有フィルム1Dを製造する場合と同様に、まず、微小固形物を含有する絶縁性樹脂層形成用組成物を剥離基材20a上に塗布し、乾燥することにより絶縁性樹脂層10を形成する工程を行うと共に、低粘度樹脂層形成用組成物を剥離基材20c上に塗布し、乾燥することにより低粘度樹脂層15を形成する工程を行う(
図8A)。次に、絶縁性樹脂層10の剥離基材20aと反対側の面(乾燥面10a)からフィラー2を押し込む工程を行うことにより(
図10A)、絶縁性樹脂層10の乾燥面10aに、フィラー2のフィルム厚方向の頂部を面一に揃わせる(
図10B)。そしてその乾燥面10aと、上述の低粘度樹脂層の乾燥面15aとを対向させて積層する(
図10C)。
【0076】
こうして得られるフィラー含有フィルム1Eも、その表面をなす絶縁性樹脂層の表面10bと低粘度樹脂層15の表面15bは、剥離基材20a、20cの表面の平滑性が転写されていることにより平滑であり、フィラー含有フィルム1Aと同様の効果を発揮する。
【0077】
<フィラー含有フィルムの巻装体>
フィラー含有フィルムは、その製品形態において巻装体とすることができる。巻装体の長さについて特に制限はないが、出荷物の取り扱い性の点から好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、さらに好ましくは500m以下である。一方、巻装体の量産性の点からは5m以上が好ましい。
【0078】
巻装体は、その全長よりも短いフィラー含有フィルムを連結したものであってもよい。連結箇所は、規則的に又はランダムに、複数箇所に存在させることができる。
【0079】
巻装体におけるフィルム幅について特に制限はないが、幅広のフィラー含有フィルムをスリットして巻装体を製造する場合のスリット幅の下限の点からフィルム幅を0.3mm以上とすることが好ましく、スリット幅を安定させる点から0.5mm以上とすることがより好ましい。フィルム幅の上限には特に制限はないが、持ち運びや取り扱いの観点から、700mm以下が好ましく、600mm以下がより好ましい。
【0080】
また、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、実用的な取り扱い性の点から接続対象によってフィルム幅を0.3~400mmの間で選択することが好ましい。即ち、異方性導電フィルムが、接続する電子物品の端に用いられる場合には、フィルム幅は数mm程度以下とされることが多く、比較的大きな電子部品(電極配線と実装部が一面に設けられた基板や切削前のウェーハーなど)にそのまま貼り付けて使用される場合には、400mm程度のフィルム幅が必要とされることがある。一般には、異方性導電フィルムのフィルム幅は0.5~5mmで使用されることが多い。
【0081】
<フィラー含有フィルムの使用方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に物品に貼り合わせて使用することができ、貼り合わせる物品に特に制限はない。したがって、フィラー含有フィルムを介して種々の第1部品と第2部品とを接続し、第1物品と第2物品の接続体を得ることができる。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合、熱圧着ツールを用いて異方性導電フィルムを、PN接合を利用した半導体素子(太陽電池等の発電素子、CCD等の撮像素子、発光素子、ペルチェ素子)、その他各種半導体素子、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品との異方性導電接続に使用することができ、またこのフィラー含有フィルムを異方性導電接続以外用途で電子部品に用いることもできる。なお、フィラー含有フィルムを貼り合せる物品の面は、平滑でもよく、段部や凸形状を有していてもよい。
【0082】
異方性導電フィルムで接続する第1電子部品及び第2電子部品の形状、大きさ、用途等に特に制限はない。これら電子部品が小型で端子サイズが狭小化していてもよく、電子部品の搭載に高精度のアライメントが必要とされてもよい。例えば、バンプ面積が数十μm2~数千μm2の極小化された電子部品も接続対象とすることができる。一方、外形サイズの大きな電子部品の実装を、異方性導電フィルムを用いて行うことができる。また、実装した電子部品を分割することにより小片化して使用してもよい。また、大型TVなどに用いる場合は、フィラー含有フィルムを1辺に1m以上、例えば4.5m以上貼着することもある。この場合、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用する以外に、フィラーをスペーサーとしたスペーサーフィルム等として使用してもよい。
【0083】
本発明の異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品の例示に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。本発明は種々の物品に特に本発明のフィラー含有フィルムを貼り合わせたフィルム貼着体を包含し、特に、第1電子部品と第2電子部品を、異方性導電フィルムを介して接続した接続体を包含する。
【0084】
フィラー含有フィルムを物品に貼り合わせる方法は、フィラー含有フィルムの用途に応じて圧着、好ましくは熱圧着とすることができ、貼り合わせ時に光照射を利用してもよい。
【0085】
フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合のより具体的な使用方法としては、例えば、第1電子部品がICチップ、第2電子部品が基板の場合に、一般的には第1電子部品を加圧ツール側、第2電子部品を第1の電子部品と対向するステージに載置し、第2電子部品に予め異方性導電フィルムを貼着させ、加圧ツールを用いて第1電子部品と第2電子部品の熱圧着を行う。この場合、第1電子部品に予め異方性導電フィルムを貼着してもよく、また第1電子部品はICチップに限定されない。
【0086】
第1電子部品と第2電子部品を熱圧着により接続するにあたり、必要に応じて、熱圧着前に予め導電粒子周辺の樹脂を排除して仮圧着を行ってもよい。これにより、異方性導電フィルムを電子物品に熱圧着する際に生じる樹脂流動の影響を低減させ、導電粒子の不用な流動を抑制することができる。具体的には、接続する一方の電子部品を異方性導電フィルムの一方の面に貼着し、もう一方の電子部品を異方性導電フィルムの他方の面に貼着する仮圧着を行う際に電子部品を加圧ツールで押圧し、電子部品間の樹脂を部分的に排除し、次いで本圧着として熱圧着することにより電子部品同士を接続する(以下、本圧着時の熱圧着だけでなく仮圧着でも押圧する接続方法を2段階押し込みによる接続という)。WO2016/143789には、導電粒子がランダムに分散している異方性導電フィルムを用いて2段階押し込みによる接続を行うことが記載されているが、本発明のように導電粒子が規則的に配列している異方性導電フィルムで電子部品同士を接続する場合にこのような2段階押し込みによる接続を行うと、熱圧着時の導電粒子の不用な流動を大きく低減させることが可能となる。
【0087】
第1電子部品と第2電子部品を接続するにあたり、これらの個数は1対1に限定されるものではなく、例えば、1個の第2電子部品に複数個の第1電子部品を接続してもよい。本発明は第1電子部品と第2電子部品を、異方性導電フィルムを介して接続する接続体の製造方法も包含する。
【実施例0088】
以下、本発明を試験例により具体的に説明する。
フィラー含有フィルムとして、比較例1及び実施例1~4の異方性導電フィルムを作製した。
比較例1
(1)絶縁性樹脂層の形成
表1に示す配合で絶縁性樹脂層形成用組成物を調製し、PETフィルムに塗布、乾燥し、表2に示す厚みの絶縁性樹脂層(以下、高粘度樹脂層という)を得た。この高粘度樹脂層の最低溶融粘度(回転式レオメータ(TA instruments社製)、測定圧力5g、温度範囲30~200℃、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、測定プレート直径8mm、測定プレートに対する荷重変動5g)は9000Pa・sであった。
【0089】
(2)導電粒子の押し込み
導電粒子として、特許文献5の実施例に記載の金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm)を使用し、この導電粒子を特許文献5の実施例に記載の方法で、(1)の高粘度樹脂層の乾燥面に貼着させ、押圧(60℃、0.5MPa)することにより導電粒子を高粘度樹脂層の乾燥面に押し込んだ(粒子密度28000個/mm2)。この場合、導電粒子は6方格子配列とし、フィルム厚方向の頂部が高粘度樹脂層の乾燥面に面一となるようにした。
【0090】
実施例1
比較例1と同様にPETフィルム上に高粘度樹脂層を形成した(層厚3μm)。
一方、表1に示す配合で低粘度樹脂層形成用組成物を調製し、PETフィルムに塗布、乾燥して層厚3μmの低粘度樹脂層を形成した。この低粘度樹脂層の最低溶融粘度(回転式レオメータ(TA instruments社製)、測定圧力5g、温度範囲30~200℃、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、測定プレート直径8mm、測定プレートに対する荷重変動5g)は300Pa・sであった。
【0091】
PETフィルム上の高粘度樹脂層とPETフィルム上の低粘度樹脂層を、これらの乾燥面同士を貼り合わせて高粘度樹脂層と低粘度樹脂層の積層体を形成し、その高粘度樹脂層側のPETフィルムを剥離し、PETフィルムを剥離した高粘度樹脂層の表面に比較例11と同様にして導電粒子を貼着し、押し込んだ。
【0092】
実施例2
比較例1と同様にPETフィルム上に高粘度樹脂層を形成し、その乾燥面に導電粒子を押し込んだ。
一方、実施例1と同様にPETフィルム上に低粘度樹脂層を形成し、この乾燥面を高粘度樹脂層の乾燥面に貼り合わせた。
【0093】
実施例3
比較例1と同様にPETフィルム上に高粘度樹脂層を形成し(層厚3μm)、その乾燥面から導電粒子を押し込んだ。
これとは別に、PETフィルム上に高粘度樹脂層を別途形成し(層厚3μm)、双方の高粘度樹脂層の乾燥面同士を貼り合わせた。
【0094】
実施例4
比較例1と同様にPETフィルム上に高粘度樹脂層を形成した(層厚3μm)。同様の高粘度樹脂層を別途形成し(層厚3μm)、これらの乾燥面同士を貼り合わせ、高粘度樹脂層が2層の積層体を形成した。この積層体の一方のPETフィルムを剥離し、PETフィルムを剥離した高粘度樹脂層の表面に、比較例1と同様にして導電粒子を貼着し、押し込んだ。
【0095】
評価
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムについて、次の(1)~(4)の評価試験を行った。(1)~(4)の結果を表2に示す。但し、比較例1では(2)フィルム表面の粘着性(仮圧着試験)の評価結果がNGであったため、(3)導通抵抗試験と(4)導通信頼性試験では、評価用接続物を正常に製造できたものを選択して評価対象とした。
【0096】
(1)熱圧着前後の粒子配列の繰り返しピッチの比率(%)
熱圧着前後の粒子配列の繰り返しピッチの比率の評価用電子部品として以下の電子部品(a)、(b)を使用し、これら電子部品(a)、(b)で実施例及び比較例で作製した異方性導電フィルムを挟み、導電粒子が少なくとも50個以上が含まれるバンプ面積(0.0024mm2)を、温度180℃、圧力60MPa、5秒で熱圧着した。この場合、表2に図示したフィルム構成において、図中下側に電子部品(b)のガラス基板を配置し、上側に電子部品(a)の評価用ICを配置した。
【0097】
この熱圧着前の導電粒子の繰り返しピッチP0と熱圧着後の導電粒子の繰り返しピッチP1(導電粒子の中心間距離)(
図1)をバンプ面積の中心部で、1つのバンプにつき2つの軸で計測した。即ち、バンプ配列方向に対して最も角度が浅く(平行に近い)、樹脂の移動量が小さい軸(A軸)とバンプ配列方向に対して最も角度が深く樹脂の移動量が大きい軸(B軸)のそれぞれにおいて熱圧着前のピッチP0を計測した。この計測を並列している20個以上のバンプで行い、A軸、B軸の各軸について計測数を50とし、各軸についてピッチP0の平均を求めた。また、熱圧着後のピッチP1についても同様にA軸、B軸の各軸について計測数を50とし、各軸についてピッチP1の平均を求めた。そして、A軸、B軸の各軸について、熱圧着前後の比率((P1/P0)×100%)を求めた。
【0098】
(a)評価用電子部品:
評価用IC
外形:0.7×20.0mm
厚み:0.2mm
Au-plated bump:サイズ40μm×60μm、バンプ間距離20μm、バンプ高さ5μm、
【0099】
(b)評価用電子部品:
ガラス基板(ITO配線ガラス基板)
厚み:0.3mm
【0100】
(2)フィルム表面の粘着性
(2-1)仮圧着試験
実施例及び比較例で作製した各異方性導電フィルムの導電粒子の押込側表面又はその反対側の表面を評価用ノンアルカリガラスに貼り付け、50μm厚の緩衝材(ポリテトラフルオロエチレン)を用い、異方性導電フィルム幅1.5mm、長さ50mm、圧着温度70℃、圧着圧力1MPa、圧着時間1秒で仮圧着した。そして、貼着面と反対側のPETフィルムをピンセットで剥がす際に、PETフィルムと共に異方性導電フィルムがガラス基板から剥がれるか否かを観察した。これを100回行い、次の基準で評価した。
【0101】
評価基準
OK:100回の全てにおいて異方性導電フィルムがガラス基板から剥がれない
NG:100回のうち1回以上異方性導電フィルムがガラス基板から剥がれた
【0102】
なお、実施例1及び実施例2では、平面に載置して指で感触を確認したところ、低粘度樹脂層側の粘着力が高粘度樹脂層側の粘着力に比して大きかった。
【0103】
(2-2)粘着力試験1
特開2017-48358号公報に記載の接着強度試験に準じ、
図11に示すように、2枚のスライドグラス(26mm×76mm×1mm)(松波硝子工業株式会社)30、31を互い違いに重ね、その間に実施例で作製した各異方性導電フィルム1を挟んだ。この場合、各異方性導電フィルムは円形(直径10mm)に打ち抜いたものを使用し、まず、表2に示す「フィルム構成」の下側の面を下側のスライドグラス30と重ね合わせた。そして下側のスライドグラス30を実装時の仮貼りの一般的なステージ温度である40~50℃に加温したホットプレートに載置し、指で押さえて30秒間加熱し貼り合わせ、下側のスライドグラス30と異方性導電フィルムの下側の面とを所謂、仮貼り状態とした。その後、表2に示す「フィルム構成」の上側の面に上側のスライドグラス31を載置して貼り合わせ、上側のスライドグラス31が異方性導電フィルムの上側の面の粘着力で貼着している状態とした。
【0104】
上述のように2枚のスライドグラス30、31で異方性導電フィルム1を挟んだ状態で、島津製作所製AGS-Xシリーズを用いて、下側のスライドグラス30を治具で固定し、温度50℃で、
図12に示すように上側のスライドグラス31の両端部を治具で鉛直方向に10mm/minで引き上げ、下側のスライドグラス30と上側のスライドグラス31とが分離したときの力を測定し、その値を異方性導電フィルム1の面積で除し、表2の「フィルム構成」の上側の面の粘着力とした。この場合、各実施例において、接着強度試験を2回ずつ行い、最低値を表2に示した。ただし、実施例3、4は測定が難しいため実施例1、2に比して測定値のばらつきが大きかった。比較例1は指で触った感触により粘着力が実施例3、4よりも小さく、接着強度試験を行わなかった。
【0105】
(2-3)粘着力試験2
タック試験機(TACII、株式会社レスカ)を用いて次のように粘着力(タック力)を22℃の雰囲気下で測定した。まず、実施例で作製した各異方性導電フィルム(1cm×1cm)を素ガラス(厚さ0.3mm)と貼り合わせた。この場合、表2に図示したフィルム構成において、下側の面を素ガラスと貼り合わせ、上側の面をタック力の測定面とし、素ガラスを試料台のシリコンラバーの受け台上においた。次にタック試験機の円柱状の直径5mmのプローブ(ステンレス製鏡面仕上げ)を測定面の上方にセットし、押し付け速度30mm/minでプローブを測定面に接触させ、加圧力196.25gf、加圧時間1.0secで加圧し、引き剥がし速度120mm/minで測定面から2mm引き剥がしたときにプローブが測定面の粘着力によって受ける抵抗を荷重値として測定し、プローブを測定面から引き剥がすときの最大荷重を粘着力(タック力)とした。各実施例において粘着力を2回ずつ測定し、その最低値を表2に示した。ただし、実施例3、4は測定が難しいため実施例1、2に比して測定値のばらつきが大きかった。比較例1は指で触った感触により粘着力が実施例3、4よりも小さく、測定を行わなかった。
【0106】
(3)導通抵抗(初期導通抵抗)
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、接続に十分な面積で裁断し、導通特性の評価用ICとガラス基板との間に挟み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して各評価用接続物を得、得られた評価用接続物の導通抵抗を4端子法で測定し、以下の基準で評価した。(1)と同様に、この場合も表2に図示したフィルム構成の下側をガラス基板に貼り付けた。
【0107】
導通特性の評価用IC
外形:1.8×20.0mm
厚み:0.3mm
Au-plated bump:サイズ30μm×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ5μm
【0108】
ガラス基板(ITO配線ガラス基板)
厚み:0.3mm
【0109】
初期導通抵抗評価基準
OK:2.0Ω未満
NG:2.0Ω以上
【0110】
(4)導通信頼性(85℃、85%RH、500h)
(3)で作製した評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定し、以下の基準で評価した。
た。
【0111】
導通信頼性評価基準
OK:5.0Ω未満
NG:5.0Ω以上
【0112】
【0113】
【0114】
表2から、実施例1~4は比較例1に対して(2)フィルム表面の粘着性(仮圧着試験)が優れていることがわかる。
一方、実施例1~4も比較例1も、(3)初期導通抵抗や(4)導通信頼性は実施例1~4は問題がないことがわかる。
また、実施例1~4も比較例1も、A軸とB軸の双方で熱圧着前後のピッチの比率((P1/P0)×100%)が300%以下であり、熱圧着前後の配列の乱れが少ないことが確認できた。
【0115】
(5)2段階押し込みの接続試験
本発明のフィラー含有フィルムにおいて2段階押し込みによる接続がフィラーの挟持に及ぼす影響を調べるため、実施例1~4の異方性導電フィルムを用い、次の評価用ICチップとガラス基板を接続対象として2段階押し込みによる接続体を製造し、接続体のバンプで挟持されている導電粒子数を計測した。
【0116】
[評価用ICチップ]
ペリフェラル型ICチップ
外形:6×6mm、
バンプ仕様:φ36μm(円形のバンプ)、バンプピッチ;300μm
バンプ高さはフィルム厚みより3μm以上高かった。
【0117】
[ガラス基板]
素ガラス
外形15×15mm、厚み150μm
【0118】
評価用ICチップとガラス基板は、それらのバンプ及び端子パターンが対応している。また、評価用ICチップとガラス基板を接続する際には、異方性導電フィルムの長手方向とバンプの配列方向を合わせた。2段階押し込みにおける仮圧着の押圧は80℃、3秒で行い、本圧着の押圧は仮圧着の2倍の圧力で、180℃、10秒で行った。この仮圧着から本圧着へ工程を進めるにあたり、評価用ICチップにかかる圧力を解除せず昇圧させた。ボンダーとしては、フリップチップボンダー(パナソニック社製FCB3、パルヒーター付)を使用し、仮圧着及び本圧着のいずれにおいても昇温0.5秒及び昇圧0.5秒とした。
また、比較のため、仮圧着で押圧せずに上記の本圧着のみを行った接続体を製造した。
【0119】
本圧着後にバンプに挟持されている導電粒子を計測したところ、仮圧着で押圧しなかった接続体に対し、2段階押し込みをした(仮圧着後に圧力を解除せずに昇圧した)接続体ではバンプ1個当たりに挟持されている導電粒子が多いことを確認できた。