(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052756
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】生体適合性メンブレン複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20240405BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240405BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/32
A61P3/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024017019
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2021571544の分割
【原出願日】2020-05-30
(31)【優先権主張番号】62/855,540
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/897,636
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(71)【出願人】
【識別番号】521523327
【氏名又は名称】ビアサイト,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー エム.ブルーン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ダムール
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フォーク
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ マクグリービー
(72)【発明者】
【氏名】ローラ マーティンソン
(72)【発明者】
【氏名】スコット エー.リトロバト
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ ラッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル スコット
(72)【発明者】
【氏名】ローレン アール.ザンボッティ
(72)【発明者】
【氏名】チアン(ジョン) チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ カクカーサリー
(57)【要約】
【課題】細胞不透過性層と緩和層とを含む生体適合性メンブレン複合体を提供する。
【解決手段】細胞不透過性層は、血管内方成長物を通さず、宿主からの細胞接触を防止する。加えて、緩和層は固形フィーチャを含む。少なくとも1つの実施態様では、緩和層内には結合型固形フィーチャが設けられている。いくつかの実施態様では、細胞不透過性層と緩和層とは互いに密接に結合又は接続されて、緻密/開放構造を有する複合層を形成する。生体適合性メンブレン複合体の外側又は内部に補強構成部分を任意に位置決めすることにより、支持を提供し、そして歪みを防止することができる。生体適合性メンブレン複合体は、一例としては膵臓系列型細胞、例えば膵臓プロジェニターを含む生物学的存在物をカプセル化するためのデバイス内で使用することができ、あるいはこのようなデバイスを形成することができる。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性メンブレン複合体であって、
MPS(最大孔サイズ)が直径約1ミクロン未満の第1層と、
大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である結合型固形フィーチャを有する第2層であって、前記結合型フィーチャの少なくとも一部が前記第1層に密接に結合されている、第2層と、
を含む、生体適合性メンブレン複合体。
【請求項2】
前記第1層の単位面積当たり質量(MpA)が約5g/m2未満である、請求項1に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項3】
前記第1層の厚さが約10ミクロン未満である、請求項1又は2に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項4】
前記生体適合性メンブレン複合体の、最も弱い軸における最大引張荷重が約40N/m超である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項5】
前記第1層の第1ポロシティが約50%超である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項6】
前記第2層の第2ポロシティが約60%超である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項7】
前記第2層の厚さが約200ミクロン未満である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項8】
前記結合型固形フィーチャがそれぞれ、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含み、そして前記代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つの大部分が約5ミクロン超である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項9】
前記第2層の孔サイズが有効直径で約1ミクロン~約9ミクロンである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項10】
前記結合型固形フィーチャがフィブリルによって接続されており、前記フィブリルが変形可能である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項11】
前記結合型固形フィーチャの大部分が約3ミクロン~約20ミクロンの代表短軸を有している、請求項1から10までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項12】
前記第1層と前記第2層とが密接に結合されている、請求項1から11までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項13】
前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマー、フルオロポリマーメンブレン、非フルオロポリマーメンブレン、織布、不織布、繊維又は糸の製織又は不織収集体、繊維性マトリックス、及びこれらの組み合わせを含む、請求項1から12までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項14】
前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマーである、請求項1から13までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項15】
前記ポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)メンブレン、及び改質ePTFEメンブレンから選択されたフルオロポリマーメンブレンである、請求項14に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項16】
前記第1層及び第2層のうちの少なくとも一方が、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである、請求項1から15までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項17】
前記第2層が織布及び非フルオロポリマー材料のうちの少なくとも一方を含む、請求項1から16までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項18】
前記布地が、織布、不織布、スパンボンド布地、メルトブローン繊維材料、及び静電紡糸ナノ繊維から選択される、請求項17に記載の生体適合性複合体。
【請求項19】
前記非フルオロポリマー材料が、ポリフッ化ビニリデン、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項17に記載の生体適合性複合体。
【請求項20】
補強構成部分を含む、請求項1から19までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項21】
前記補強構成部分が織布又は不織布である、請求項20に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項22】
前記結合型固形フィーチャがそれぞれ熱可塑性ポリマー、ポリウレタン、シリコーン、ゴム、エポキシ、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む、請求項1から21までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項23】
前記生体適合性メンブレン複合体が表面被膜を上に含み、
そして前記表面被膜が、抗菌剤、抗体、医薬品、及び生物活性分子から選択された1種又は2種以上の員を含む、
請求項1から22までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項24】
前記生体適合性メンブレン複合体が親水性被膜を上に含む、請求項1から23までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項25】
請求項1から24までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体を含む細胞カプセル化デバイス。
【請求項26】
生体適合性メンブレン複合体であって、
MPS(最大孔サイズ)が約1ミクロン未満の第1層と、
大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である固形フィーチャを有する第2層と
を含み、
前記固形フィーチャがそれぞれ、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含み、そして
前記代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つの大部分が約5ミクロン超である、
生体適合性メンブレン複合体。
【請求項27】
前記代表短軸の大部分が約3ミクロン~約20ミクロンである、請求項26に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項28】
前記第1層の単位面積当たり質量(MpA)が約5g/m2未満である、請求項26又は27に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項29】
前記第1層の第1厚が約10ミクロン未満である、請求項26から28までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項30】
前記第2層の第2厚が約200ミクロン未満である、請求項26から29までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項31】
前記生体適合性メンブレン複合体の、最も弱い軸における最大引張荷重が約40N/m超である、請求項26から30までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項32】
前記第1層の第1ポロシティが約50%超である、請求項26から31までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項33】
前記第2層の第2ポロシティが約60%超である、請求項26から32までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項34】
前記生体適合性メンブレン複合体の幾何平均引張強度が、20MPa超である、請求項26から33までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項35】
前記第1層と接触している前記固形フィーチャの少なくとも一部が、結合型固形フィーチャである、請求項26から34までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項36】
前記固形フィーチャがフィブリルによって接続されており、前記フィブリルが変形可能である、請求項26から35までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項37】
前記第2層の前記固形フィーチャが織布又は不織布を含む、請求項26から36までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項38】
前記第1層と前記第2層とが密接に結合されている、請求項26から37までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項39】
前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマー、フルオロポリマーメンブレン、非フルオロポリマーメンブレン、織布、不織布、繊維又は糸の製織又は不織収集体、繊維性マトリックス、及びこれらの組み合わせを含む、請求項26から38までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項40】
前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマーである、請求項27から39までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項41】
前記ポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレン、フッ素化エチレンプロピレンメンブレン、及び改質延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンから選択されたフルオロポリマーメンブレンである、請求項40に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項42】
前記第1層及び第2層のうちの少なくとも一方が、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである、請求項26から41までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項43】
前記第2層が布地及び非フルオロポリマーメンブレンのうちの少なくとも一方を含む、請求項26から42までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項44】
前記布地が、織布、不織布、スパンボンド布地、メルトブローン繊維材料、及び静電紡糸ナノ繊維から選択される、請求項43に記載の生体適合性複合体。
【請求項45】
前記非フルオロポリマーメンブレンが、ポリフッ化ビニリデン、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項43に記載の生体適合性複合体。
【請求項46】
前記第2層がスパンボンド不織布ポリエステル材料である、請求項26から45までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項47】
補強構成部分を含む、請求項26から46までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項48】
前記補強構成部分が織布又は不織布を含む、請求項47に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項49】
前記第2層の固形フィーチャが、熱可塑性ポリマー、ポリウレタン、シリコーン、ゴム、エポキシ、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む、請求項26から48までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項50】
前記生体適合性メンブレン複合体が表面被膜を上に含み、そして
前記表面被膜が、抗菌剤、抗体、医薬品、及び生物活性分子から選択された1種又は2種以上の員を含む、
請求項26から49までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項51】
前記生体適合性メンブレン複合体が親水性被膜を上に含む、請求項26から50までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項52】
請求項26から51までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体を含む細胞カプセル化デバイス。
【請求項53】
生体適合性メンブレン複合体であって、
MPS(最大孔サイズ)が約1ミクロン未満であり、第1ポロシティが約50%超であり、そして第1厚が約10ミクロン未満である第1層と、
大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である固形フィーチャを含む第2層と
を含む、生体適合性メンブレン複合体。
【請求項54】
前記生体適合性メンブレン複合体の、最も弱い軸における最大引張荷重が約40N/m超である、請求項53に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項55】
前記第1層の単位面積当たり質量(MpA)が約5g/m2未満である、請求項53又は54に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項56】
前記第2層の第2厚が約200ミクロン未満である、請求項53から55までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項57】
前記第2層の孔サイズが有効直径で約1ミクロン~約9ミクロンである、請求項54から56までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項58】
前記固形フィーチャがそれぞれ、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含み、そして
前記代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つの大部分が約5ミクロン超である、
請求項58に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項59】
前記固形フィーチャ深さが前記第2層の第2厚よりも小さい、請求項58に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項60】
前記固形フィーチャがフィブリルによって接続されており、前記フィブリルが変形可能である、請求項54から59までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項61】
前記第2層の第2ポロシティが約60%超である、請求項54から60までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項62】
前記生体適合性メンブレン複合体の幾何平均引張強度が、約20MPa超である、請求項54から61までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項63】
前記第1層と接触している前記第1固形フィーチャの少なくとも一部が、結合型固形フィーチャである、請求項54から62までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項64】
前記第1層と前記第2層とが密接に結合されている、請求項54から63までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項65】
前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマー、フルオロポリマーメンブレン、非フルオロポリマーメンブレン、織布、不織布、繊維又は糸の製織又は不織収集体、繊維性マトリックス、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む、請求項54から64までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項66】
前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマーである、請求項54から65までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項67】
前記ポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレン、フッ素化エチレンプロピレンメンブレン、及び改質延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンから選択されたフルオロポリマーメンブレンである、請求項66に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項68】
前記第1層及び第2層のうちの少なくとも一方が、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである、請求項54から67までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項69】
前記第2層が布地及び非フルオロポリマー材料のうちの少なくとも一方を含む、請求項54から68までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項70】
前記布地が、織布、不織布、スパンボンド布地、メルトブローン繊維材料、及び静電紡糸ナノ繊維から選択される、請求項69に記載の生体適合性複合体。
【請求項71】
前記非フルオロポリマーメンブレンが、ポリフッ化ビニリデン、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項69に記載の生体適合性複合体。
【請求項72】
補強構成部分を含む、請求項54から71までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項73】
前記補強構成部分が織布又は不織布を含む、請求項72に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項74】
前記第2層の固形フィーチャが、熱可塑性ポリマー、ポリウレタン、シリコーン、ゴム、エポキシ、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む、請求項54から73までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項75】
前記生体適合性メンブレン複合体が表面被膜を上に含み、そして
前記表面被膜が、抗菌剤、抗体、医薬品、及び生物活性分子から選択された1種又は2種以上の員を含む、
請求項54から74までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項76】
前記生体適合性メンブレン複合体が親水性被膜を上に含む、請求項54から75までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体。
【請求項77】
請求項54から76までのいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体を含む細胞カプセル化デバイス。
【請求項78】
細胞カプセル化デバイスであって、
当該第1生体適合性メンブレン複合体が、当該第1生体適合性メンブレン複合体と第2生体適合性メンブレン複合体との間に管腔を画定するように、前記第2生体適合性メンブレン複合体の周囲の少なくとも一部に沿ってシールされた第2生体適合性メンブレン複合体に対して、前記第1生体適合性メンブレン複合体の周囲の少なくとも一部に沿ってシールされている、第1生体適合性メンブレン複合体と、
前記管腔と流体連通している少なくとも1つのポートと、
を含み、
前記第1及び第2の生体適合性メンブレンのうちの少なくとも一方が、
MPS(最大孔サイズ)が約1ミクロン未満の第1層と、
固形フィーチャ間隔の大部分が約50ミクロン未満である結合型固形フィーチャを有する第2層と、
を含み、
前記結合型固形フィーチャが前記第1層に密接に結合されている、
細胞カプセル化デバイス。
【請求項79】
前記第1層の単位面積当たり質量(MpA)が約5g/m2未満である、請求項77に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項80】
前記第1層の第1厚が約10ミクロン未満である、請求項78又は79に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項81】
前記第1生体適合性メンブレン複合体及び前記第2生体適合性メンブレン複合体のうちの少なくとも一方の、最も弱い軸における最大引張荷重が40N/m超である、請求項77から80までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項82】
前記第1層の第1ポロシティが約50%超である、請求項77から81までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項83】
前記第2層の第2ポロシティが約60%超である、請求項77から82までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項84】
前記第2層の第2厚が約200ミクロン未満である、請求項77から83までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項85】
前記結合型固形フィーチャがそれぞれ、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含み、そして
前記代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つの大部分が約5ミクロン超である、請求項77から84までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項86】
前記第2層の孔サイズが有効直径で約1ミクロン~約9ミクロンである、請求項77から85までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項87】
前記固形フィーチャがフィブリルによって接続されており、前記フィブリルが変形可能である、請求項77から86でのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項88】
前記結合型固形フィーチャの大部分が約3ミクロン~約20ミクロンの代表短軸を有している、請求項77から87までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項89】
前記第1層と前記第2層とが密接に結合されている、請求項77から88までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項90】
前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマー、フルオロポリマーメンブレン、非フルオロポリマーメンブレン、織布、不織布、繊維又は糸の製織又は不織収集体、繊維性マトリックス、及びこれらの組み合わせを含む、請求項77から89までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項91】
前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマーである、請求項77から90までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項92】
前記ポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレン、フッ素化エチレンプロピレンメンブレン、及び改質延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンから選択されたフルオロポリマーメンブレンである、請求項91に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項93】
前記第1層及び第2層のうちの少なくとも一方が、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである、請求項77から92までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項94】
前記第2層が布地及び非フルオロポリマーメンブレンのうちの少なくとも一方を含む、請求項77から93までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項95】
前記布地が、織布、不織布、スパンボンド布地、メルトブローン繊維材料、及び静電紡糸ナノ繊維から選択される、請求項94に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項96】
前記非フルオロポリマーメンブレンが、ポリフッ化ビニリデン、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項94に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項97】
細胞カプセル化デバイスが補強構成部分を含む、請求項77から96までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項98】
前記補強構成部分が織布又は不織布を含む、請求項97に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項99】
前記細胞カプセル化デバイスが、前記第1生体適合性メンブレン複合体及び第2生体適合性メンブレン複合体のうちの少なくとも一方の外側に補強構成部分を含む、請求項97に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項100】
内側補強構成部分を含む、請求項97に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項101】
前記第1生体適合性メンブレン複合体及び第2生体適合性メンブレン複合体のうちの少なくとも一方の外側に補強構成部分を含み、そして
前記細胞カプセル化デバイスが内側補強構成部分を含む、
請求項97に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項102】
充填チューブを含む、請求項79から101までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項103】
前記結合型固形フィーチャが、熱可塑性ポリマー、ポリウレタン、シリコーン、ゴム、エポキシ、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む、請求項79から102までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項104】
前記生体適合性メンブレン複合体が表面被膜を上に含み、そして
前記表面被膜が、抗菌剤、抗体、医薬品、及び生物活性分子から選択された1種又は2種以上の員を含む、
請求項79から103までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項105】
前記生体適合性メンブレン複合体が親水性被膜を上に含む、請求項79から104までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項106】
少なくとも前記第1生体適合性メンブレン複合体と第1補強構成部分との間に位置決めされた第1溶着フィルムと、少なくとも前記第2生体適合性メンブレン複合体と第2補強構成部分との間に位置決めされた第2溶着フィルムとを含む、請求項79から105までのいずれか1項に記載の細胞カプセル化デバイス。
【請求項107】
哺乳類の血糖値を低下させる方法であって、前の請求項のいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体を含む細胞カプセル化デバイスを移植することを含み、前記細胞カプセル化デバイス内にカプセル化された細胞がPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞の集団を含み、そして前記膵臓内胚葉細胞が成長してインスリン分泌細胞になり、これにより血糖値を低下させる、哺乳類の血糖値を低下させる方法。
【請求項108】
前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記細胞カプセル化デバイス内にカプセル化された細胞がPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞の集団を含み、そして前記膵臓内胚葉細胞が成長してインスリン分泌細胞になり、これにより血糖値を低下させる、請求項1に記載の哺乳類の血糖値を低下させる方法。
【請求項110】
前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
細胞カプセル化デバイスを移植することを含み、前記細胞カプセル化デバイスが、MPS(最大孔サイズ)が直径約1ミクロン未満の第1層と、大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である結合型固形フィーチャを有する第2層であって、前記結合型フィーチャの少なくとも一部が前記第1層に密接に結合されている、第2層と、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞を含む細胞集団と、を含み、そして前記膵臓内胚葉細胞が成長してインスリン分泌細胞になり、これにより血糖値を低下させる、前の請求項のいずれか1項に記載の哺乳類の血糖値を低下させる方法。
【請求項112】
前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
生体適合性メンブレン複合体を移植することを含み、前記生体適合性メンブレン複合体が、MPS(最大孔サイズ)が直径約1ミクロン未満の第1層と、大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である結合型固形フィーチャを有する第2層であって、前記結合型フィーチャの少なくとも一部が前記第1層に密接に結合されている、第2層と、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞を含む細胞集団と、を含み、そして前記膵臓内胚葉細胞が成長してインスリン分泌細胞になり、これにより血糖値を低下させる、前の請求項のいずれか1項に記載の哺乳類の血糖値を低下させる方法。
【請求項114】
前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
カプセル化されたin vitro PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団を少なくとも含む細胞亜集団の混合物を含む、請求項113又は114に記載の方法。
【請求項116】
カプセル化されたin vitro PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団と、PDX-1/NKX6.1及びCHGAを発現させる膵臓内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団とを少なくとも含む細胞亜集団の混合物を含む、請求項113から115までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記集団の少なくとも30%が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団を含む、請求項113から116までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
前記集団の少なくとも40%が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団を含む、請求項113から117までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
前記集団の少なくとも50%が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団を含む、請求項113から118までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
前記集団の少なくとも20%が、PDX-1/NKX6.1/CHGAを発現させる内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団である、請求項113から119までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記集団の少なくとも30%が、PDX-1/NKX6.1/CHGAを発現させる内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団である、請求項113から120までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項122】
前記集団の少なくとも40%が、PDX-1/NKX6.1/CHGAを発現させる内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団である、請求項113から121までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項123】
前記膵臓プロジェニター細胞及び/又は内分泌又は内分泌プリカーサー細胞が、成長してin vivoのインスリン分泌細胞になることができる、請求項113から122までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前の請求項のいずれか1項に記載のインスリンをin vivoで生成する方法であって、細胞カプセル化デバイスを移植することを含み、前記細胞カプセル化デバイスが、前の請求項のいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体と、成長してインスリン分泌細胞になるPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞集団とを含み、前記インスリン分泌細胞がグルコース刺激に反応してインスリンを分泌する、インスリンをin vivoで生成する方法。
【請求項125】
前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記集団の少なくとも約30%が、PDX-1/NKX6.1/CHGAを発現させる内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団である、請求項124又は125に記載の方法。
【請求項127】
in vitroヒトPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞培養物が、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞と、少なくとも形質転換増殖因子ベータ(TGF-ベータ)受容体キナーゼ阻害物質との混合物を含む、請求項124から126までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
骨形成タンパク質(BMP)阻害物質をさらに含む、請求項124から127までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記TGF-ベータ受容体キナーゼ阻害物質が、TGF-ベータ受容体1型キナーゼ阻害物質である、請求項124から128までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
前記TGF-ベータ受容体キナーゼ阻害物質がALK5iである、請求項124から129までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項131】
前記BMP阻害物質がノギンである、請求項124から130までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植え込み型医療デバイスの分野、及び具体的には生体適合性メンブレン複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的治療は、末梢動脈疾患、動脈瘤、心臓疾患、アルツハイマー病及びパーキンソン病、自閉症、失明、糖尿病、及び他の病理を治療するますます実行可能になりつつある方法である。
【0003】
一般の生物学的治療に関しては、細胞、ウイルス、ウイルスベクター、細菌、タンパク質、抗体、及び他の生物活性存在物を、患者の組織床内に生物活性部分を入れる外科的方法又は介入的方法によって、患者内に導入することができる。多くの場合、生物活性存在物を先ずデバイス内に入れ、次いでこれを患者内へ挿入する。あるいは、デバイスを先ず患者内へ挿入し、後から生物活性存在物を添加することもある。デバイスは、栄養素の通過を許すが、しかしカプセル化済み細胞の通過を阻止する1つ又は2つ以上の生体適合性メンブレン又は他の生体適合性材料から形成されている。
【0004】
生物活性存在物(例えば細胞)の生存可能且つ生産可能な集団を維持するために、生物活性存在物は栄養素、例えば酸素へのアクセスを維持しなければならない。これらの栄養素は宿主の血管を通して送達される。植え込まれたカプセル化済み細胞の生存能力及び生産能力を最大化するために、植え込まれたカプセル化済み細胞への酸素及び栄養素の輸送のために必要となる拡散距離及び時間が最小化されるように血管が細胞のできるだけ近くに形成されることを保証することによって、酸素及び栄養素の源へのアクセスを最大化することが必要である。
【0005】
例えば細胞カプセル化デバイスのような外部デバイスを体内へ植え込むと、免疫反応が引き起こされる。免疫反応では異物巨細胞が形成され、植え込まれたデバイスを少なくとも部分的にカプセル化する。細胞不透過性界面又はその近くに異物巨細胞が存在すると、カプセル化済み細胞に近接して血管が形成されることは、不可能ではないにしても難しくなり、これにより、カプセル化済み細胞の生存能力及び健常状態を維持するために必要となる酸素及び栄養素へのアクセスが制約される。
【0006】
したがって、カプセル化済み細胞が宿主の免疫細胞から十分に免疫隔離されるのを可能にする一方、異物反応を緩和又は調整し得る環境を提供することによって、細胞不透過性界面に十分な血管が形成され得るようにし、これにより、植え込まれた細胞が生き残り、治療的に有用な物質を分泌するのを可能にする材料が技術分野において依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様(「態様1」)によれば、生体適合性メンブレン複合体が、(1)MPS(最大孔サイズ)が直径約1ミクロン未満の第1層と、(2)大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である結合型固形フィーチャを有する第2層であって、前記結合型フィーチャの少なくとも一部が前記第1層に密接に結合されている、第2層と、を含む。
【0008】
態様1に加えられる別の態様(「態様2」)によれば、前記第1層の単位面積当たり質量(MpA)が約5g/m2未満である。
【0009】
態様1及び2のいずれか1つに加えられる別の態様(「態様3」)によれば、前記第1層の厚さが約10ミクロン未満である。
【0010】
態様1から3までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様4」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体の、最も弱い軸における最大引張荷重が約40N/m超である。
【0011】
態様1から4までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様5」)によれば、前記第1層の第1ポロシティが約50%超である。
【0012】
態様1から5までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様6」)によれば、前記第2層の第2ポロシティが約60%超である。
【0013】
態様1から6までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様7」)によれば、前記第2層の厚さが約200ミクロン未満である。
【0014】
態様1から7までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様8」)によれば、前記結合型固形フィーチャがそれぞれ、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含み、そして前記代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つの大部分が約5ミクロン超である。
【0015】
態様1から8までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様9」)によれば、前記第2層の孔サイズが有効直径で約1ミクロン~約9ミクロンである。
【0016】
態様1から9までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様10」)によれば、前記固形フィーチャがフィブリルによって接続されており、前記フィブリルが変形可能である。
【0017】
態様1から10までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様11」)によれば、前記結合型固形フィーチャの大部分が約3ミクロン~約20ミクロンの代表短軸を有している。
【0018】
態様1から11までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様12」)によれば、前記第1層と前記第2層とが密接に結合されている。
【0019】
態様1から12までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様13」)によれば、前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマー、フルオロポリマーメンブレン、非フルオロポリマーメンブレン、織布、不織布、繊維又は糸の製織又は不織収集体、繊維性マトリックス、及びこれらの組み合わせを含む。
【0020】
態様1から13までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様14」)によれば、前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマーである。
【0021】
態様13又は14に加えられる別の態様(「態様15」)によれば、前記ポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)メンブレン、及び改質ePTFEメンブレンを含む。
【0022】
態様1から15までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様16」)によれば、前記第1層及び第2層のうちの少なくとも一方が、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである。
【0023】
態様1から16までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様17」)によれば、前記第2層が布地及び非フルオロポリマー材料のうちの少なくとも一方を含む。
【0024】
態様17に加えられる別の態様(「態様18」)によれば、前記布地が、織布、不織布、スパンボンド布地、メルトブローン繊維材料、及び静電紡糸ナノ繊維であってよい。
【0025】
態様17に加えられる別の態様(「態様19」)によれば、前記非フルオロポリマー材料が、ポリフッ化ビニリデン、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0026】
態様1から19までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様20」)によれば、補強構成部分を含む。
【0027】
態様1から20までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様21」)によれば、前記補強構成部分が織布又は不織布である。
【0028】
態様1から21までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様22」)によれば、前記結合型固形フィーチャがそれぞれ熱可塑性ポリマー、ポリウレタン、シリコーン、ゴム、エポキシ、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む。
【0029】
態様1から22までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様23」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が表面被膜を上に含み、そして前記表面被膜が、抗菌剤、抗体、医薬品、及び生物活性分子から選択された1種又は2種以上の員の1つ又は2つ以上である。
【0030】
態様1から23までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様24」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が親水性被膜を上に含む。
【0031】
態様1から24までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様25」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が細胞カプセル化デバイスの形態を成す。
【0032】
1つの態様(「態様26」)では、生体適合性メンブレン複合体が、(1)MPS(最大孔サイズ)が約1ミクロン未満の第1層と、(2)大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である固形フィーチャを有する第2層とを含み、前記固形フィーチャがそれぞれ、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含み、そして前記代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つの大部分が約5ミクロン超である。
【0033】
態様26に加えられる別の態様(「態様27」)によれば、前記代表短軸の大部分が約3ミクロン~約20ミクロンである。
【0034】
態様26又は態様27に加えられる別の態様(「態様28」)によれば、前記第1層の単位面積当たり質量(MpA)が約5g/m2未満である。
【0035】
態様26から28までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様29」)によれば、前記第1層の第1厚が約10ミクロン未満である。
【0036】
態様26から29までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様30」)によれば、前記第2層の第2厚が約200ミクロン未満である。
【0037】
態様26から30までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様31」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体の、最も弱い軸における最大引張荷重が約40N/m超である。
【0038】
態様26から31までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様32」)によれば、前記第1層の第1ポロシティが約50%超である。
【0039】
態様26から32までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様33」)によれば、前記第2層の第2ポロシティが約60%超である。
【0040】
態様26から33までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様34」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体の幾何平均引張強度が、20MPa超である。
【0041】
態様26から34までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様35」)によれば、前記第1層と接触している前記固形フィーチャの少なくとも一部が、結合型固形フィーチャである。
【0042】
態様26から35までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様36」)によれば、前記固形フィーチャがフィブリルによって接続されており、前記フィブリルが変形可能である。
【0043】
態様26から36までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様37」)によれば、前記第2層が織布又は不織布を含む。
【0044】
態様26から37までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様38」)によれば、前記第1層と前記第2層とが密接に結合されている。
【0045】
態様26から38までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様39」)によれば、前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマー、フルオロポリマーメンブレン、非フルオロポリマーメンブレン、織布、不織布、繊維又は糸の製織又は不織収集体、繊維性マトリックス、及びこれらの組み合わせを含む。
【0046】
態様26から39までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様40」)によれば、前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマーである。
【0047】
態様40に加えられる別の態様(「態様41」)によれば、前記ポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレン、フッ素化エチレンプロピレンメンブレン、及び改質延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンから選択される。
【0048】
態様26から41までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様42」)によれば、前記第1層及び第2層のうちの少なくとも一方が、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである。
【0049】
態様26から42までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様43」)によれば、前記第2層が織布及び非フルオロポリマー材料のうちの少なくとも一方を含む。
【0050】
態様43に加えられる別の態様(「態様44」)によれば、前記布地が、織布、不織布、スパンボンド布地、メルトブローン繊維材料、及び静電紡糸ナノ繊維から選択される。
【0051】
態様43に加えられる別の態様(「態様45」)によれば、前記非フルオロポリマーメンブレンが、ポリフッ化ビニリデン、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0052】
態様26から45までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様46」)によれば、前記第2層がスパンボンド不織布ポリエステル材料である。
【0053】
態様26から46までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様47」)によれば、補強構成部分を含む。
【0054】
態様47に加えられる別の態様(「態様48」)によれば、前記補強構成部分が織布又は不織布を含む。
【0055】
態様26から48までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様49」)によれば、前記第2層の固形フィーチャが、熱可塑性ポリマー、ポリウレタン、シリコーン、ゴム、エポキシ、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む。
【0056】
態様26から49までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様50」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が表面被膜を上に含み、そして
前記表面被膜が、抗菌剤、抗体、医薬品、及び生物活性分子から選択された1種又は2種以上の員を含む。
【0057】
態様26から50までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様51」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が親水性被膜を上に含む。
【0058】
態様26から51までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様52」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が細胞カプセル化デバイスの形態を成す。
【0059】
1つの態様(「態様53」)では、前記生体適合性メンブレン複合体が、(1)MPS(最大孔サイズ)が約1ミクロン未満であり、ポロシティが約50%超であり、そして第1厚が約10ミクロン未満である第1層と、(2)大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である固形フィーチャを含む第2層とを含む。
【0060】
態様53に加えられる別の態様(「態様54」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体の、最も弱い軸における最大引張荷重が約40N/m超である。
【0061】
態様53又は態様54のいずれか一方に加えられる別の態様(「態様55」)によれば、前記第1層の単位面積当たり質量(MpA)が約5g/m2未満である。
【0062】
態様53から態様55までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様56」)によれば、前記第2層の第2厚が約200ミクロン未満である。
【0063】
態様54から態様56までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様57」)によれば、前記第2層の孔サイズが有効直径で約1ミクロン~約9ミクロンである。
【0064】
態様54から態様57までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様58」)によれば、前記固形フィーチャがそれぞれ、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含み、そして前記代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つの大部分が約5ミクロン超である。
【0065】
態様58に加えられる別の態様(「態様59」)によれば、前記固形フィーチャ深さが前記第2層の第2厚よりも小さい。
【0066】
態様54から態様59までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様60」)によれば、前記固形フィーチャがフィブリルによって接続されており、前記フィブリルが変形可能である。
【0067】
態様54から態様60までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様61」)によれば、前記第2層の第1ポロシティが約60%超である。
【0068】
態様54から態様61までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様62」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体の幾何平均引張強度が、約20MPa超である。
【0069】
態様54から態様62までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様63」)によれば、前記第1層と接触している前記第1固形フィーチャの少なくとも一部が、結合型固形フィーチャである。
【0070】
態様54から態様63までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様64」)によれば、前記第1層と前記第2層とが密接に結合されている。
【0071】
態様54から態様64までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様65」)によれば、前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマー、フルオロポリマーメンブレン、非フルオロポリマーメンブレン、織布、不織布、繊維又は糸の製織又は不織収集体、繊維性マトリックス、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む。
【0072】
態様54から態様65までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様66」)によれば、前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマーである。
【0073】
態様66に加えられる別の態様(「態様67」)によれば、前記ポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレン、フッ素化エチレンプロピレンメンブレン、及び改質延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンから選択される。
【0074】
態様54から態様67までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様68」)によれば、前記第1層及び第2層のうちの少なくとも一方が、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである。
【0075】
態様54から態様68までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様69」)によれば、前記第2層が布地及び非フルオロポリマーメンブレンのうちの少なくとも一方を含む。
【0076】
態様69に加えられる別の態様(「態様70」)によれば、前記布地が、織布、不織布、スパンボンド布地、メルトブローン繊維材料、及び静電紡糸ナノ繊維から選択される。
【0077】
態様69に加えられる別の態様(「態様71」)によれば、前記非フルオロポリマーメンブレンが、ポリフッ化ビニリデン、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0078】
態様54から態様71までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様72」)によれば、補強構成部分を含む。
【0079】
態様72に加えられる別の態様(「態様73」)によれば、前記補強構成部分が織布又は不織布を含む。
【0080】
態様54から態様73までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様74」)によれば、前記第2層の固形フィーチャが、熱可塑性ポリマー、ポリウレタン、シリコーン、ゴム、エポキシ、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む。
【0081】
態様54から態様74までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様75」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が表面被膜を上に含み、前記表面被膜が、抗菌剤、抗体、医薬品、及び生物活性分子から選択された1種又は2種以上の員を含む。
【0082】
態様54から態様75までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様76」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が親水性被膜を上に含む。
【0083】
態様54から態様76までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様77」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が細胞カプセル化デバイスの形態を成す。
【0084】
1つの態様(「態様78」)では、細胞カプセル化デバイスが、(1)当該第1生体適合性メンブレン複合体が、当該第1生体適合性メンブレン複合体と第2生体適合性メンブレン複合体との間に管腔を画定するように、前記第2生体適合性メンブレン複合体の周囲の少なくとも一部に沿ってシールされた第2生体適合性メンブレン複合体に対して、前記第1生体適合性メンブレン複合体の周囲の少なくとも一部に沿ってシールされている、第1生体適合性メンブレン複合体と、(2)前記管腔と流体連通している少なくとも1つのポートと、を含み、前記第1及び第2の生体適合性メンブレンのうちの少なくとも一方が、MPS(最大孔サイズ)が約1ミクロン未満の第1層と、固形フィーチャ間隔の大部分が約50ミクロン未満である結合型固形フィーチャを有する第2層と、を含み、前記結合型固形フィーチャが前記第1層に密接に結合されている。
【0085】
態様77又は態様78に加えられる別の態様(「態様79」)によれば、前記第1層の単位面積当たり質量(MpA)が約5g/m2未満である。
【0086】
態様78又は態様79に加えられる別の態様(「態様80」)によれば、前記第1層の第1厚が約10ミクロン未満である。
【0087】
態様77から態様80までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様81」)によれば、前記第1生体適合性メンブレン複合体及び前記第2生体適合性メンブレン複合体のうちの少なくとも一方の、最も弱い軸における最大引張荷重が40N/m超である。
【0088】
態様77から態様81までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様82」)によれば、前記第1層の第1ポロシティが約50%超である。
【0089】
態様77から態様82までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様83」)によれば、前記第2層の第2ポロシティが約60%超である。
【0090】
態様77から態様83までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様84」)によれば、前記第2層の第2厚が約200ミクロン未満である。
【0091】
態様77から態様84までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様85」)によれば、前記結合型固形フィーチャがそれぞれ、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含み、そして前記代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つの大部分が約5ミクロン超である。
【0092】
態様77から態様85までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様86」)によれば、前記第2層の孔サイズが有効直径で約1ミクロン~約9ミクロンである。
【0093】
態様77から態様86までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様87」)によれば、前記固形フィーチャがフィブリルによって接続されており、前記フィブリルが変形可能である。
【0094】
態様77から態様87までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様88」)によれば、記結合型固形フィーチャの大部分が約3ミクロン~約20ミクロンの代表短軸を有している。
【0095】
態様77から態様88までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様89」)によれば、前記第1層と前記第2層とが密接に結合されている。
【0096】
態様77から態様89までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様90」)によれば、前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマー、フルオロポリマーメンブレン、非フルオロポリマーメンブレン、織布、不織布、繊維又は糸の製織又は不織収集体、繊維性マトリックス、及びこれらの組み合わせを含む。
【0097】
態様77から態様90までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様91」)によれば、前記第1層及び前記第2層のうちの少なくとも一方が、ポリマーである。
【0098】
態様91に加えられる別の態様(「態様92」)によれば、前記ポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレン、フッ素化エチレンプロピレンメンブレン、及び改質延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンから選択されたフルオロポリマーメンブレンである。
【0099】
態様77から態様92までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様93」)によれば、前記第1層及び第2層のうちの少なくとも一方が、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである。
【0100】
態様77から態様93までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様94」)によれば、前記第2層が布地及び非フルオロポリマーメンブレンのうちの少なくとも一方を含む。
【0101】
態様94に加えられる別の態様(「態様95」)によれば、前記布地が、織布、不織布、スパンボンド布地、メルトブローン繊維材料、及び静電紡糸ナノ繊維から選択される。
【0102】
態様94に加えられる別の態様(「態様96」)によれば、前記非フルオロポリマーメンブレンが、ポリフッ化ビニリデン、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0103】
態様77から態様96までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様97」)によれば、補強構成部分を含む。
【0104】
態様97に加えられる別の態様(「態様98」)によれば、前記補強構成部分が織布又は不織布を含む。
【0105】
態様77から態様98までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様99」)によれば、前記第1生体適合性メンブレン複合体及び第2生体適合性メンブレン複合体のうちの少なくとも一方の外側に補強構成部分を含む。
【0106】
態様77から態様99までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様100」)によれば、内側補強構成部分を含む。
【0107】
態様77から態様100までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様101」)によれば、内側補強構成部分と、前記第1生体適合性メンブレン複合体及び第2生体適合性メンブレン複合体のうちの少なくとも一方の外側の補強構成部分とを含む。
【0108】
態様79から態様101までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様102」)によれば、充填チューブを含む。
【0109】
態様79から態様102までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様103」)によれば、前記結合型固形フィーチャが、熱可塑性ポリマー、ポリウレタン、シリコーン、ゴム、エポキシ、及びこれらの組み合わせから選択された員を含む。
【0110】
態様79から態様103までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様104」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が表面被膜を上に含み、そして前記表面被膜が、抗菌剤、抗体、医薬品、及び生物活性分子から選択された1種又は2種以上の員を含む。
【0111】
態様79から態様104までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様105」)によれば、前記生体適合性メンブレン複合体が親水性被膜を上に含む。
【0112】
態様79から態様105までのいずれか1つに加えられる別の態様(「態様106」)によれば、少なくとも前記第1生体適合性メンブレン複合体と第1補強構成部分との間に位置決めされた第1溶着フィルムと、少なくとも前記第2生体適合性メンブレン複合体と第2補強構成部分との間に位置決めされた第2溶着フィルムとを含む。
【0113】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例107」)によれば、
哺乳類の血糖値を低下させる方法が、前の請求項のいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体を含む細胞カプセル化デバイスを移植することを含み、前記細胞カプセル化デバイス内にカプセル化された細胞がPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞の集団を含み、そして前記膵臓内胚葉細胞が成長してインスリン分泌細胞になり、これにより血糖値を低下させる。
【0114】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例108」)によれば、前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる。
【0115】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例109」)によれば、哺乳類の血糖値を低下させる方法が、請求項1に記載の細胞カプセル化デバイスを移植することを含み、前記細胞カプセル化デバイス内にカプセル化された細胞がPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞の集団を含み、そして前記膵臓内胚葉細胞が成長してインスリン分泌細胞になり、これにより血糖値を低下させる。
【0116】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例110」)によれば、前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる。
【0117】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例111」)によれば、哺乳類の血糖値を低下させる方法が、細胞カプセル化デバイスを移植することを含み、前記細胞カプセル化デバイスが、MPS(最大孔サイズ)が直径約1ミクロン未満の第1層と、大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である結合型固形フィーチャを有する第2層であって、前記結合型フィーチャの少なくとも一部が前記第1層に密接に結合されている、第2層と、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞を含む細胞集団と、を含み、そして前記膵臓内胚葉細胞が成長してインスリン分泌細胞になり、これにより血糖値を低下させる。
【0118】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例112」)によれば、前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる。
【0119】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例113」)によれば、哺乳類の血糖値を低下させる方法が生体適合性メンブレン複合体を移植することを含み、前記生体適合性メンブレン複合体が、MPS(最大孔サイズ)が直径約1ミクロン未満の第1層と、大部分の固形フィーチャ間隔が約50ミクロン未満である結合型固形フィーチャを有する第2層であって、前記結合型フィーチャの少なくとも一部が前記第1層に密接に結合されている、第2層と、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞を含む細胞集団と、を含み、そして前記膵臓内胚葉細胞が成長してインスリン分泌細胞になり、これにより血糖値を低下させる。
【0120】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例114」)によれば、前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる。
【0121】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例115」)によれば、カプセル化されたin vitro PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団を少なくとも含む細胞亜集団の混合物を含む。
【0122】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例116」)によれば、カプセル化されたin vitro PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団と、PDX-1/NKX6.1及びCHGAを発現させる膵臓内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団とを少なくとも含む細胞亜集団の混合物を含む。
【0123】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例117」)によれば、前記集団の少なくとも30%が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団を含む。
【0124】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例118」)によれば、前記集団の少なくとも40%が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団を含む。
【0125】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例119」)によれば、前記集団の少なくとも50%が、PDX-1/NKX6.1を同時発現させる膵臓プロジェニター集団を含む。
【0126】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例120」)によれば、前記集団の少なくとも20%が、PDX-1/NKX6.1/CHGAを発現させる内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団である。
【0127】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例121」)によれば、前記集団の少なくとも30%が、PDX-1/NKX6.1/CHGAを発現させる内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団である。
【0128】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例122」)によれば、前記集団の少なくとも40%が、PDX-1/NKX6.1/CHGAを発現させる内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団である。
【0129】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例123」)によれば、前記膵臓プロジェニター細胞及び/又は内分泌又は内分泌プリカーサー細胞が、成長してin vivoのインスリン分泌細胞になることができる。
【0130】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例124」)によれば、インスリンをin vivoで生成する方法が、細胞カプセル化デバイスを移植することを含み、前記細胞カプセル化デバイスが、前の請求項のいずれか1項に記載の生体適合性メンブレン複合体と、成長してインスリン分泌細胞になるPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞集団とを含み、前記インスリン分泌細胞がグルコース刺激に反応してインスリンを分泌する。
【0131】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例125」)によれば、前記PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が、内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞をさらに含む細胞の混合物を含み、前記内分泌及び/又は内分泌プリカーサー細胞がクロモグラニンA(CHGA)を発現させる。
【0132】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例126」)によれば、前記集団の少なくとも約30%が、PDX-1/NKX6.1/CHGAを発現させる内分泌及び/又は内分泌プリカーサー集団である。
【0133】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例127」)によれば、in vitroヒトPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞培養物が、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞と、少なくとも形質転換増殖因子ベータ(TGF-ベータ)受容体キナーゼ阻害物質との混合物を含む。
【0134】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例128」)によれば、骨形成タンパク質(BMP)阻害物質をさらに含む。
【0135】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例129」)によれば、前記TGF-ベータ受容体キナーゼ阻害物質が、TGF-ベータ受容体1型キナーゼ阻害物質である。
【0136】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例130」)によれば、前記TGF-ベータ受容体キナーゼ阻害物質がALK5iである。
【0137】
先行の実施例のいずれか1つに加えられる別の実施例(「実施例131」)によれば、前記BMP阻害物質がノギンである。
【図面の簡単な説明】
【0138】
添付の図面は、開示内容をさらに理解するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、そして本明細書の一部を構成し、実施態様を例示し、そして記述と一緒に開示内容の原理を説明するのに役立つ。
【0139】
【
図1A】
図1Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく固形フィーチャ間隔の判断を示す概略図であり、3つの隣接固形フィーチャが三角形の角を表し、三角形の外接円が、付加的な固形フィーチャのない内部を有しており、固形フィーチャ間隔が、三角形を形成する固形フィーチャのうちの2つの固形フィーチャの間の直線距離である。
【0140】
【
図1B】
図1Bは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、非隣接固形フィーチャの判断を示す概略図であり、固形フィーチャが三角形の角を表し、三角形の外接円が、少なくとも1つの付加的な固形フィーチャを含有している。
【0141】
【
図2】
図2は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレン内の固形フィーチャ(白い形状)間の間隔(白い線)を示す走査電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【0142】
【
図3A】
図3Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、固形フィーチャの長軸と短軸とを判断する方法を示す概略図である。
【0143】
【
図3B】
図3Bは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、固形フィーチャの深さを示す概略図である。
【0144】
【
図4】
図4は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、孔の有効直径を示す概略図である。
【0145】
【
図5】
図5は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、孔サイズを示す走査電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【0146】
【
図6A】
図6Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層の表面上に位置決めされた固形フィーチャの形態を成す熱可塑性ポリマーを示す概略図である。
【0147】
【
図6B】
図6Bは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に固形フィーチャを形成するためのサンプルジオメトリを示す概略図である。
【
図6C】
図6Cは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に固形フィーチャを形成するためのサンプルジオメトリを示す概略図である。
【
図6D】
図6Dは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に固形フィーチャを形成するためのサンプルジオメトリを示す概略図である。
【
図6E】
図6Eは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に固形フィーチャを形成するためのサンプルジオメトリを示す概略図である。
【
図6F】
図6Fは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に固形フィーチャを形成するためのサンプルジオメトリを示す概略図である。
【
図6G】
図6Gは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に固形フィーチャを形成するためのサンプルジオメトリを示す概略図である。
【
図6H】
図6Hは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に固形フィーチャを形成するためのサンプルジオメトリを示す概略図である。
【
図6I】
図6Iは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に固形フィーチャを形成するためのサンプルジオメトリを示す概略図である。
【0148】
【
図7A】
図7Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層の表面に密接に結合された結合型固形フィーチャを有する生体適合性メンブレン複合体を示す概略図である。
【0149】
【
図7B】
図7Bは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、緩和層が種々異なる高さ及び幅を備えた固形フィーチャを有する、生体適合性メンブレン複合体を示す概略図である。
【0150】
【
図8】
図8は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、ノードである固形フィーチャを含む緩和層を有する、生体適合性メンブレン複合体を示す概略図である。
【0151】
【
図9A】
図9Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、補強構成部分の種々の位置を示す生体適合性メンブレン複合体の概略図である。
【
図9B】
図9Bは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、補強構成部分の種々の位置を示す生体適合性メンブレン複合体の概略図である。
【
図9C】
図9Cは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、補強構成部分の種々の位置を示す生体適合性メンブレン複合体の概略図である。
【0152】
【
図10】
図10は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に位置決めされた緩和層を示す概略断面図であり、緩和層は少なくとも固形フィーチャサイズ、固形フィーチャ間隔、固形フィーチャ深さ、及び厚さによって特徴付けられる。
【0153】
【
図11】
図11は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、細胞不透過性層上に位置決めされた緩和層を示す概略断面図であり、緩和層は少なくとも固形フィーチャサイズ、固形フィーチャ間隔、固形フィーチャ深さ、厚さ、及び孔サイズによって特徴付けられる。
【0154】
【
図12A】
図12Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく細胞カプセル化デバイスを示す概略上面図である。
【0155】
【
図12B】
図12Bは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、
図12Aの細胞カプセル化デバイスの生体適合性メンブレン複合体の層の配向、及び細胞の配置状態を示す概略断面図である。
【0156】
【
図13】
図13は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、模範的カプセル化デバイスを示す概略分解図である。
【0157】
【
図14】
図14は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレンから形成された同等の細胞不透過性層の上面を示すSEM画像である。
【0158】
【
図15】
図15は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、不織ポリエステルから形成された血管新生層の上面を示すSEM画像である。
【0159】
【
図16】
図16は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、比較例1の細胞不透過性層の表面上の異物巨細胞の存在を示す組織画像である。
【0160】
【
図17】
図17は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、比較例2の緩和層上に不連続なフッ素化エチレンプロピレン(FEP)層を有する、緩和層の上面を示すSEM画像である。
【0161】
【
図18】
図18は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、比較例3、実施例1、実施例2のePTFE細胞不透過性層の上面を示すSEM画像である。
【0162】
【
図19】
図19は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例3のePTFE緩和層の上面を示すSEM画像である。
【0163】
【
図20】
図20は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、比較例3の二層型ePTFE複合体の断面を示すSEM画像である。
【0164】
【
図21】
図21は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、比較例3の細胞不透過性層に当接する異物巨細胞を示す代表的な組織画像である。
【0165】
【
図22】
図22は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例1の、不連続なフッ素化エチレンプロピレン(FEP)層を有するePTFE緩和層の上面を示すSEMである。
【0166】
【
図23】
図23は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例1のePTFE緩和層の上面を示すSEM画像である。
【0167】
【
図24】
図24は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例1の二層型ePTFE複合体の断面を示すSEM画像である。
【0168】
【
図25】
図25は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例2の、不連続なFEP層を有するePTFE緩和層の上面を示すSEM画像である。
【0169】
【
図26】
図26は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例2のePTFE緩和層の上面を示すSEM画像である。
【0170】
【
図27】
図27は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例2の二層型ePTFE複合体の断面を示すSEM画像である。
【0171】
【
図28】
図28は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例2の細胞不透過性層上に異物巨細胞の形成が存在しないことを示す代表的な組織画像である。
【0172】
【
図29】
図29は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例3のePTFE細胞不透過性層の上面を示すSEM画像である。
【0173】
【
図30】
図30は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例3のePTFE緩和層の上面を示すSEMである。
【0174】
【
図31】
図31は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例3において形成された二層型ePTFE複合体の断面を示すSEM画像である。
【0175】
【
図32】
図32は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例43の細胞不透過性層上に異物巨細胞の形成が存在しないことを示す代表的な組織画像である。
【0176】
【
図33】
図33は、本明細書中に記載された実施態様に基づく偏平補強挿入体を示す概略上面図である。
【0177】
【
図34】
図34は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、
図33の偏平補強挿入体を含む成形偏平デバイスを示す概略分解図である。
【0178】
【
図35】
図35は、明細書中に記載された実施態様に基づく偏平デバイスの表面を示す上面画像である。
【0179】
【
図36A】
図36Aは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、一点結合部と管腔とを示す、
図35の偏平デバイスのA-A線に沿った断面の画像である。
【0180】
【
図36B】
図36Bは、本明細書中に記載された実施態様に基づく、二点結合部と管腔とを示す、
図35の偏平デバイスのB-B線に沿った断面の画像である。
【0181】
【
図37】
図37は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、比較例1の細胞不透過性層上に異物巨細胞が観察されることを示す代表的な組織画像である。
【0182】
【
図38】
図38は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例1の不透過性層上に異物巨細胞の形成が存在しないことを示す代表的な組織画像である。
【0183】
【
図39】
図39は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例5の不透過性層上に異物巨細胞の形成が存在しないことを示す代表的な組織画像である。
【0184】
【
図40】
図40は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、in vivo細胞生存能力を示す、実施例4の偏平デバイスの断面の代表的な組織画像である。
【0185】
【
図41】
図41は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例5のePTFE緩和層のノード・フィブリル構造を示すSEM画像である。
【0186】
【
図42】
図42は、本明細書中に記載された実施態様に基づく、実施例5において形成された二層型ePTFE複合体の断面を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0187】
所期機能を発揮するように構成されたあらゆる数の方法及び装置によって、本開示の種々の態様を実現し得ることは当業者には容易に明らかになる。また念のために述べるならば、本明細書中で言及される添付の図面は必ずしも原寸に比例してはおらず、本開示の種々の態様を例示するために誇張されることがあり、またこれに関して図面は限定的なものとして解釈されるべきではない。方向的な言及、例えばとりわけ「上(up)」、「下(down)」、「上(top)」、「左(left)」、「右(right)」、「前(front)」、及び「後ろ(back)」は、当該構成部分及び方向が言及されている図面において示され記された配向を意味するものとする。言うまでもなく、「生体適合性メンブレン複合体」及び「メンブレン複合体」という用語は本明細書中では互いに置き換え可能に使用される。なお、本明細書中に記載されたすべての範囲は本質的に例示的なものであり、その間のありとあらゆる値を含む。加えて、本明細書中に挙げられたすべての参考文献はこれらの全体を参照することにより援用される。
【0188】
本開示は生体適合性メンブレン複合体に関する。生体適合性メンブレン複合体は第1層と第2層とを含有している。各層は互いに区別可能であり、カプセル化済み細胞の生き残りを支援する機能を発揮する。ある特定の実施態様では、第1層は細胞不透過性層として機能し、そして第2層は緩和層として機能する。本明細書中では便宜上、「第1層」という用語は「細胞不透過性層」と互いに置き換え可能に使用され、そして「第2層」という用語は「緩和層」と互いに置き換え可能に使用される。緩和層は細胞不透過性層の表面上の異物巨細胞の形成を低減する。少なくとも1つの実施態様では、緩和層は、緩和層を形成するメンブレン内に存在する固形フィーチャ(例えばノード)を含む。他の実施態様では、緩和層は、細胞不透過性層の表面上に設けられ且つ/又は形成された固形フィーチャ(例えば印刷固形フィーチャ)を含む。少なくとも1つの実施態様では、緩和層内には結合型固形フィーチャが設けられている。いくつかの実施態様では、細胞不透過性層及び緩和層は、互いに密接に結合又は接続されることにより、緻密/開放構造を有する複合層を形成する。本明細書に使用される「密接な結合」及び「密接に結合された」は、表面上の任意の点で容易には分離又は取り外しできない生体適合性メンブレン複合体の層、又は生体適合性メンブレン複合体内部の固形フィーチャを意味する。生体適合性メンブレン複合体のいずれかの側(すなわち外側)、又は生体適合性メンブレン複合体内部(すなわち内側)に補強構成部分を任意に位置決めすることにより、生体適合性メンブレン複合体に支持を提供し、そして生体適合性メンブレン複合体の歪みを防止することができる。生体適合性メンブレン複合体は、生物学的存在物及び/又は細胞集団をカプセル化するためのデバイス内で使用することができ、あるいはこのようなデバイスを形成することができる。言うまでもなく、「約」という用語は、指定された測定単位の±10%を意味する。
【0189】
生体適合性メンブレン複合体と一緒に使用するのに適した生物学的存在物の一例としては、細胞、ウイルス、ウイルスベクター、遺伝子治療物質、細菌、タンパク質、多糖類、抗体、及び他の生物活性存在物が挙げられる。言うまでもなく、細胞以外の生物学的存在物がここで使用するために選択される場合、生物学的存在物の生物活性の成分又は生成物は、細胞不透過性層を通過し得ることが必要であるが、しかし存在物自体が通過することが必要なのではない。単純にするために、本明細書では生物学的存在物を細胞と呼ぶが、しかし本明細書中のいかなるものも生物学的存在物を細胞又は特定のタイプの細胞に限定することはなく、下記説明は細胞以外の生物学的存在物にも適用される。
【0190】
種々のタイプの原核細胞、真核細胞、哺乳類細胞、非哺乳類細胞、及び/又は幹細胞を、本明細書中に記載された生体適合性メンブレン複合体と一緒に使用することができる。いくつかの実施態様では、細胞は治療上有用な物質を分泌する。このような治療上有用な物質はホルモン、増殖因子、栄養因子、神経伝達物質、リンホカイン、抗体、又は治療有用性をデバイスレシピエントに提供する他の細胞生成物を含む。このような治療的細胞生成物の一例としては、インスリン及び他の膵臓ホルモン、増殖因子、インターロイキン、副甲状腺ホルモン、エリスロポエチン、トランスフェリン、コラーゲン、エラスチン、トロポエラスチン、エキソソーム、ベシクル、遺伝子片、及び第VIII因子が挙げられる。適切な増殖因子の一例としては、血管内皮増殖因子、血小板由来増殖因子、血小板活性化因子、形質転換増殖因子、骨形成タンパク質、アクチビン、インヒビン、線維芽細胞増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、増殖分化因子9、上皮増殖因子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0191】
上述のように、生体適合性メンブレン複合体は第1層(すなわち細胞不透過性層)を含む。細胞不透過性層は微細孔質の免疫隔離バリアとして役立ち、血管内方成長を受け付けず、宿主からの細胞接触を防止する。本明細書では、細胞内方成長を可能にするのに十分に大きい開口を有していない層を「緻密(tight)」層と呼ぶことがある。細胞不透過性層の孔は、細胞栄養素、酸素、老廃物、及び治療物質の通過を許す一方で、いかなる細胞の通過も許さないほどに十分に小さい。いくつかの実施態様では、細胞不透過性層のMPS(最大孔サイズ)はポロメトリー(porometry)によって測定して、約1ミクロン未満、約0.50ミクロン未満、約0.30ミクロン未満、又は約0.10ミクロン未満である。MPSはポロメトリーによって測定して、約0.05ミクロン~約1ミクロン、約0.1ミクロン~約0.80ミクロン、約0.1ミクロン~約0.6ミクロン、約0.1ミクロン~約0.5ミクロン、又は約0.2ミクロン~約0.5ミクロンであってよい。
【0192】
細胞不透過性層のMPSは、血管内方成長を防止するのに十分に小さいので、細胞不透過性層の物質輸送及び拡散特性に不都合な影響を及ぼすおそれもある、細胞不透過性層のパラメータのバランスをとることが必要である。例えば、MPSが細胞侵入又は血管内方成長を防止するのに十分に小さいのに対して、細胞不透過性層は分子(すなわち栄養素及び治療分子)の通過を許すのには十分に開いている。細胞不透過性層を薄く、多孔質に、そして低質量に保つことにより、拡散抵抗がさらに最小化される。言うまでもなく、細胞不透過性層の十分な耐久性及び強度が維持されるので、この緻密層の完全性を保証することによって、所期の使用を通して免疫隔離をin vivoで提供することができる。したがって、強度及び拡散抵抗という競合する特性のトレードオフのバランスを取ることが必要である。
【0193】
いくつかの実施態様では、細胞不透過性層の厚さは約10ミクロン未満、約8ミクロン未満、約6ミクロン未満、又は約4ミクロン未満である。厚さは約1ミクロン~約10ミクロン、約1ミクロン~約8ミクロン、約1ミクロン~約6ミクロン、約5ミクロン~約10ミクロン、又は約1ミクロン~約5ミクロンであってよい。加えて、言うまでもなく、分子の通過を可能にするように、細胞不透過性層の十分なポロシティが維持される。ある特定の実施態様では、細胞不透過性層のポロシティは約50%超、約60%超、約70%超、又は約80%超である。加えて、ポロシティは約50%~約98%、約50%~約90%、約50%~約80%、約60%~約90%であってよい。
【0194】
言うまでもなく、細胞不透過性層の十分な耐久性及び強度が維持されるので、細胞不透過性層の完全性を保証することによって、所期の使用を通して免疫隔離をin vivoで提供することができる。拡散抵抗に影響を及ぼす特性が最小化されるのに伴い、このことは、細胞不透過性層の完全性のために必要な強度特性を維持する上でトレードオフを形作る。ある特定の実施態様では、細胞不透過性層の最も弱い軸の最大引張荷重は、約40N/m超、約130N/m超、約260N/m超、約600N/m、又は約1000N/mである。加えて、最も弱い軸の最大引張荷重は、約40N/m~約2000N/m、約40N/m~約780N/m、約40N/m~約350N/m、約130N/m~約2000N/m、約130N/m~約450N/m、又は約260N/m~約2000N/mであってよい。
【0195】
ある特定の実施態様では、細胞不透過性層は直交方向(D1,D2)における引張強度の組み合わせを有し、その結果もたらされる幾何平均引張強度は、幾何平均引張強度が下記等式によって定義される場合、約20MPa超、約50MPa超、約100MPa超、又は約150MPa超である。
【数1】
【0196】
加えて、細胞不透過性層の幾何平均引張強度は、約20MPa~約180MPa、約30MPa~約150MPa、約50MPa~約150MPa、又は約100MPa~約150MPaであってよい。
【0197】
細胞不透過性層の高い固有強度は、細胞不透過性層が、栄養素輸送に十分なポロシティにおいてその厚さを最小化しつつ、使用時に保持力及び堅牢性を持ち続けるのに必要な体積強度を得るのを可能にする。このことは、厚さとポロシティと体積強度との、以前には得られなかった組み合わせを有する細胞不透過性層を可能にし、これにより、低減された厚さを通るより高い拡散速度を有する堅牢な構造を可能にする。前述のように、生体適合性メンブレン複合体は第2層(すなわち緩和層)を含む。第2層は、緩和層内への血管組織の成長を許すのに十分に多孔質であり、ひいては血管新生層としても作用する。緩和層は、異物巨細胞の形成を最小化、低減、抑制、又は防止するのに好適な環境を細胞不透過性界面に形成する一方、細胞不透過性層における血管へのアクセスを可能にする。緩和層内への血管組織の内方成長は、栄養素が細胞不透過性層を通って移行するのを促進する。細胞内方成長を許すのに十分に大きい開口を有する層を「開放」層と呼ぶことがある。植え込まれた細胞のための酸素及び栄養素の源である血管は緩和層内に形成されることが必要なので、血管は、任意のカプセル化済み細胞に対する栄養素拡散のための距離が最小化されるように、細胞不透過性層に十分に近接している。細胞不透過性層の薄さは、拡散が発生しなければならない距離を短くするのを助ける。
【0198】
血管組織が緩和層を通って細胞不透過性層まで内方成長すると、細胞不透過性層を横切る栄養素移行を促進する。緩和層は、異物巨細胞の形成の代わりに、細胞不透過性層に隣接して位置決めされた緩和層内への血管の十分な形成を可能にする環境を形成する。結果として、そして実施例に示されているように、異物巨細胞が細胞生存のための十分な血管新生を妨げるように、異物巨細胞は細胞不透過性層と緩和層との界面に形成されることはない。なお、異物巨細胞は個別に細胞不透過性層と緩和層との界面に形成されることはあるが、しかしこれらはカプセル化済み細胞の成長のために必要となる血管新生を妨害又は阻止しない。
【0199】
緩和層は少なくとも部分的に、固形フィーチャ間隔を有する複数の固形フィーチャを含むことにより特徴付けられる。これについて下で詳述する。本明細書中に使用される「固形フィーチャ(solid features)」は、緩和層内部の三次元成分であり、環境力、例えば細胞運動(例えば細胞移動及び内方成長、宿主血管新生/内皮血管形成)に晒されたときに概ね運動不能且つ耐変形性である三次元成分であると定義することができる。細胞不透過性層における異物巨細胞のバリアの形成を低減又は緩和するのを容易にするために、緩和層に隣接する細胞不透過性層の表面に当接する固形フィーチャは、多数のマクロファージがこの界面で多核化異物巨細胞内へ融合するのを防止するのを助ける。いくつかの実施態様では、細胞不透過性層と当接する緩和層内の固形フィーチャは、細胞不透過性層に密接に結合されており、本明細書中ではこれを「結合型固形フィーチャ」と呼ぶ。「非結合型固形フィーチャ」は、細胞不透過性層に結合(密接に結合又はその他の形で結合)されていない、緩和層内部の固形フィーチャである。
【0200】
いくつかの実施態様では、緩和層の固形フィーチャは、細胞不透過性層によって画定された平面から外方へ向かって突出する。このような実施態様では、細胞不透過性層から突出した緩和層の固形フィーチャは、細胞不透過性層と密接に結合し、そして間隔を置くことができ、これにより、これらの固形フィーチャはこの緻密な細胞不透過性の界面における異物巨細胞の形成に対する障害物又はバリアを提供する。いくつかの実施態様では、固形フィーチャは緩和層のフィーチャ(例えばノード)であってよく、そして例えばフィブリル又は繊維によって互いに接続されてよい。別の実施態様では、固形フィーチャは細胞不透過性層の表面上に設けられ、且つ/又は他の形式で形成されてよく(例えば印刷された固形フィーチャ)、これにより固形フィーチャは、細胞不透過性層によって画定された平面から外方へ向かって突出する。
【0201】
緩和層がノード・フィブリルマイクロ構造(例えばフィブリル化ポリマーから形成される)を有する実施態様では、ノードは固形フィーチャであり、フィブリルは固形フィーチャではない。実際に、いくつかの実施態様では、フィブリルは、緩和層内にノードだけを残して取り除くことができる。緩和層内部のノードが固形フィーチャである実施態様では、細胞不透過性層に結合されたノードは結合型固形フィーチャである。少なくとも1つの実施態様では、緩和層は、ノード・フィブリルマイクロ構造を有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレンから形成される。
【0202】
緩和層の固形フィーチャは、迅速な拡散時間的経過を必要とする用途のための生体適合性メンブレン複合体の拡散抵抗全体に不都合な影響を及ぼすことはない。固形フィーチャはサイズが十分に小さいので、これらの固形フィーチャは拡散のために必要な孔面積の量に干渉しない。また、緩和層の厚さは、植え込み後の急性期中における間質からカプセル化済み細胞への酸素及び栄養素の物質輸送量を最大化するのに十分に薄い。固形フィーチャ間の間隔は、細胞不透過性層(すなわち緻密層)までの宿主細胞及び血管系の簡単且つ迅速な浸透/一体化を可能にするのに十分に開いていることにより、急性期の継続時間を短くする。
【0203】
細胞隔離メンブレンに隣接する固形フィーチャの固形フィーチャ間隔の大部分は、約50ミクロン未満、約40ミクロン未満、約30ミクロン未満、約20ミクロン未満、又は約10ミクロン未満である。本明細書中に使用される「大部分」という用語は、測定されるパラメータの測定値の半分を上回る量(すなわち50%超)を表すものとする。いくつかの実施態様では、固形フィーチャ間隔は約5ミクロン~約50ミクロン、約5ミクロン~約45ミクロン、約10ミクロン~約40ミクロン、約10ミクロン~約35ミクロン、又は約15ミクロン~約35ミクロンであってよい。「固形フィーチャ間隔」という表現は、本明細書中では、2つの隣接する固形フィーチャ間の直線距離と定義される。本開示において、固形フィーチャは、これらのセントロイドが三角形の角を表し、この三角形の外接円が空の内部を有する場合に隣接すると考えられる。
図1Aに絵によって示されているように、指定の固形フィーチャ(P)を隣接固形フィーチャ(N)に接続することにより、三角形100が形成されている。三角形において外接円110は固形フィーチャを内部に含有しない。固形フィーチャ(X)は、隣接固形フィーチャではない固形フィーチャを指定している。このように、
図1Aに示された事例では、固形フィーチャ間隔130は、指定された固形フィーチャ(P),(N)間の直線距離である。対照的に、三角形160から描かれた
図1Bに示された外接円150は、固形フィーチャ(N)を含有しており、そしてこのようなものとして、緩和層内の固形フィーチャ間隔を判断するために利用することはできない。
図2は、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンから形成された緩和層内の固形フィーチャ210(白い形状)間の測定距離、例えば白い線200を示す走査電子顕微鏡写真である。
【0204】
固形フィーチャはまた代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さを含む。固形フィーチャの代表短軸は本明細書中では、固形フィーチャにフィットされた楕円形の短軸の長さと定義される。この楕円形は固形フィーチャと同じ面積、配向、及びセントロイドを有する。固形フィーチャの代表長軸は本明細書中では、固形フィーチャにフィットされた楕円の長軸の長さと定義される。この楕円は固形フィーチャと同じ面積、配向、及びセントロイドを有する。長軸は、長さが短軸よりも大きいか又はこれと等しい。層の代表短軸及び代表長軸は、前記層内のフィーチャの測定されたすべての代表短軸及び代表長軸のそれぞれの中央値である。固形フィーチャ310をフィットさせるための楕円320の短軸及び長軸は
図3Aに絵によって示されている。固形フィーチャ310の代表短軸は矢印300によって示され、固形フィーチャ310の代表長軸は矢印330によって示されている。固形フィーチャの大部分は、約3ミクロン~約20ミクロン、約3ミクロン~約15ミクロン、又は約3ミクロン~約10ミクロンのサイズの短軸を有している。固形フィーチャ深さは、層(例えば緩和層)の表面に対して垂直な軸における固形フィーチャの投影長さである。層の固形フィーチャ深さは、前記層内の測定されたすべての固形フィーチャ深さの中央値である。固形フィーチャ310の固形フィーチャ深さは
図3Bに絵によって示されている。固形フィーチャ310の深さは線340によって示されている。少なくとも1つの実施態様では、固形フィーチャ深さは緩和層の厚さと等しいか又はこれよりも小さい。少なくとも1つの実施態様では、代表短軸、代表長軸、及び固形フィーチャ深さのうちの少なくとも2つが5ミクロン超である。
【0205】
固形フィーチャがフィブリル又は繊維によって相互接続されている実施態様では、固形フィーチャを相互接続する境界は孔を形成する。これらの孔は、細胞内方成長及び血管新生を許し、且つ酸素及び栄養素の物質輸送に対する抵抗を形成しないほどに十分に大きい。孔有効直径は定量的画像解析(QIA)によって測定され、走査電子顕微鏡(SEM)画像上で実施される。孔の「有効直径」は、表面孔の測定面積と等しい面積を有する円の直径と定義される。この関係は以下の等式によって定義される。
【数2】
【0206】
図4を参照すると、有効直径は円400の直径であり、表面孔は符号420によって示されている。表面の総孔面積は、その表面のすべての孔の面積の和である。層の孔サイズは、総孔面積のおよそ半分が孔サイズよりも小さな直径を有する孔から成り、且つ総孔面積の半分が孔サイズよりも大きいか又はこれに等しい直径を有する孔から成る、そのポイントを定義する孔の有効直径である。
図5は孔サイズ500(白色)、より小さなサイズの孔510(白色)、及びより大きなサイズの孔520(濃灰色)を示している。画像のエッジと交差する孔530は解析から除外され、黒色で示されている。
【0207】
緩和層の孔サイズは、SEM画像上で実施される定量的画像解析(QIA)によって測定して、有効直径約1ミクロン~約9ミクロン、有効直径約3ミクロン~有効直径約9ミクロン、又は有効直径約4ミクロン~約9ミクロンであってよい。また、緩和層の厚さは200ミクロン未満、約290ミクロン未満、約280ミクロン未満、約270ミクロン未満、約260ミクロン未満、約200ミクロン未満、約190ミクロン未満、約180ミクロン未満、約170ミクロン未満、約160ミクロン未満、約150ミクロン未満、約140ミクロン未満、約130ミクロン未満、約120ミクロン未満、約110ミクロン未満、約100ミクロン未満、約90ミクロン未満、約80ミクロン未満、約70ミクロン未満、又は約60ミクロン未満、約50ミクロン未満、約40ミクロン未満、約30ミクロン未満、約20ミクロン未満、又は約10ミクロン未満である。緩和層の厚さは、約60ミクロン~約200ミクロン、約60ミクロン~約170ミクロン、約60~約150ミクロン、約60ミクロン~約125ミクロン、約60ミクロン~約100ミクロン、約3ミクロン~約60ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロン、約10ミクロン~約40ミクロン、又は約15ミクロン~約35ミクロンであってよい。いくつかの実施態様では、緩和層のポロシティは約60%超である。他の実施態様では、緩和層のポロシティは約70%超、約75%超、約80%超、又は約85%超である。加えて、緩和層のポロシティは、約60%~約90%、約70%~約90%、約75%~約90%、約80%~約90%、又は約80%~約90%であってよい。少なくとも1つの実施態様では、ポロシティは約80%であってよい。
【0208】
いくつかの実施態様では、細胞不透過性層を含む生体適合性メンブレン複合体は不連続に配置された穴で穿孔されている。穿孔のサイズ、数、及び位置は、細胞の機能を最適化するように選択することができる。わずか1つの穿孔穴が存在していてよい。穿孔は、宿主血管組織(例えば毛細血管)が生体適合性メンブレン複合体を通過するのに十分なサイズを有することにより、例えばカプセル化された膵臓細胞型を支持する。細胞不透過性層は、不連続な穿孔の場所で細胞不透過性層の部分が除去されていることに基づき、穿孔が存在しない場所では、微細孔質の免疫隔離バリアとしてのその機能を維持する一方、細胞不透過性層はその全体としてはもはや細胞不透過性ではない。なぜならば、不連続な穿孔は生体適合性メンブレン複合体を通過するための血管内方成長及び宿主からの細胞接触を許すからである。穿孔された細胞不透過性層を含有する細胞カプセル化デバイスの実施態様が、宿主の免疫細胞の、細胞との接触を可能にするので、宿主が免疫不全であるか又は免疫抑制剤で治療されているのでない限り、細胞はもはや免疫拒絶からもはや保護されることはない。
【0209】
少なくとも1つの実施態様では、補強構成部分を緩和層の外面上に設けることにより、生体適合性メンブレン複合体を環境力に対して強化することができる。このような配向において、補強構成部分は、血管内方成長を許すのに十分な孔サイズを有しており、したがってやはり「開放」層と考えられる。補強構成部分として有用な材料は、生体適合性メンブレン複合体よりも著しく高い剛性を有する材料を含む。このような材料の一例としては、開放メッシュ生体材料布地、織布、不織布(例えば繊維又は糸の収集体)、及び繊維性マトリックスが単独又は組み合わせで挙げられる。別の実施態様では、パターン化格子、スクリーン、ストランド、及び/又はロッドを補強構成部分として使用することができる。補強構成部分は、細胞不透過性層の外面上に位置決めされてよい(例えば
図9B参照)。このような配向において、栄養素不透過性緻密層(すなわち補強構成部分)と細胞不透過性層との間に細胞が位置するのに十分な間隔がある限り、補強構成部分は、細胞・栄養素不透過性の緻密層であってよい。加えて、補強構成部分は複合層内部の不連続領域で配向されていてよく(例えば
図9A参照)、あるいは補強構成部分は細胞不透過性層と緩和層との間に位置決めされてもよい(例えば
図9C参照)。言うまでもなく、補強構成部分は生体適合性メンブレン複合体の外側、内側、又は内部に配置されていてよく、あるいはこれらの組み合わせで配置されていてもよい。本明細書では詳述しないが、言うまでもなく、生体適合性メンブレン複合体上又は生体適合性メンブレン複合体内部の他の層(例えば血管新生層、メッシュ層、布地層、補強層など)又は他の補強構成部分が、本明細書への包含から排除されることはなく、本発明の範囲に含まれるものと考えられる。
【0210】
少なくとも1つの実施態様では、細胞不透過性層と緩和層とを、1種又は2種以上の生体適合性接着剤によって互いに結合することにより、生体適合性メンブレン複合体を形成する。接着剤は、細胞不透過性層、及び緩和層のうちの一方又は両方の層の表面に、不連続又は密接な結合を形成するように被着することができる。好適な生体適合性接着剤の一例としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリカーボネートウレタン、TFE及びPAVEから成る熱可塑性フルオロポリマー、EFEP(エチレンフッ素化エチレンプロピレン)、PEBAX(ポリエーテルアミド)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、CarbOSil (登録商標)(abシリコーンポリカーボネートウレタン)、Elasthane(登録商標)(ポリエーテルウレタン)、PurSil(登録商標)(シリコーンポリエーテルウレタン)、ポリウレタン、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンクロロテトラフルオロエチレン(ECTFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。1つ又は2つ以上の実施態様では、緩和層は細胞不透過性層に密接に結合されている。他の実施態様では、細胞不透過性層と緩和層とは互いに不連続に結合されてよい。いくつかの実施態様では、細胞不透過性層と緩和層とは複合体として同時延伸される。さらに別の実施態様では、細胞不透過性層は、結合型固形フィーチャによって緩和層に少なくとも部分的に結合されてよく、これにより細胞不透過性層と緩和層との不連続な結合を形成する。緩和層が細胞不透過性層に密接に結合されている実施態様では、測定された複合体Z強度は100kPaよりも大きくてよい。加えて、測定された複合体z強度は、約100kPa~約1300kPa、約100kPa~約1100kPa、約100kPa~約900kPa、約100kPa~約700kPa、約100kPa~約500kPa、約100kPa~約300kPa、又は約100kPa~約200kPaであってよい。
【0211】
細胞不透過性層、及び緩和層のうちの少なくとも一方は、ポリマーメンブレン、又は繊維又は糸の製織又は不織収集体、又は繊維性マトリックスから単独又は組み合わせで形成されてよい。細胞不透過性層、及び緩和層のうちの一方又は両方のために使用し得るポリマーの非限定的な一例としては、アルギネート、セルロースアセテート、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、パンビニル(panvinyl)ポリマー、例えばポリビニルアルコール、キトサン、ポリアクリレート、例えばポリヒドロキシエチルメタクリレート、アガロース、加水分解ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルコポリマー、ポリビニルアクリレート、例えばポリエチレン-コ-アクリル酸、ポリアルキレン、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリウレタン、ポリエステル、及びこれらのコポリマー及び組み合わせが挙げられる。緩和層を形成するために使用し得る材料の一例としては、織布及び不織布(例えばスパンボンド不織布、メルトブローン繊維材料、電気スパンナノ繊維など)、非フルオロポリマーメンブレン、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ナノ繊維、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリイミドを含む生体適合性布地を含んでよい。いくつかの実施態様では、血管新生層を含んでよく、血管新生層はスパンボンド不織布ポリエステル、又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレンであってよい。
【0212】
いくつかの実施態様では、緩和層、又は補強構成部分のうちの少なくとも一方が、不織布から形成されている。多くのタイプの不織布があり、そのそれぞれはシートの織りの緻密さ及び厚さを変化させることができる。フィラメント断面は三葉状であってよい。不織布は、製織又は編成以外のプロセスによって製造される接着布地、成形布地、又はエンジニアード布地であってよい。いくつかの実施態様では、不織布は、主として又は全体的に繊維、例えばウェブ、シート、又はバットに集成されたステープルファイバーから成る、通常は平らなシート形態を成す多孔質のテキスタイル様材料である。不織布の構造は、典型的にはランダムに配列された、例えばステープルファイバーの配列に基づいている。加えて、テキスタイル業界において知られている種々の技術によって、不織布を形成することができる。種々の方法は、カーデッド、ウェットレイド、メルトブローン、スパンボンデッド、又はエアレイド不織布材料を形成することができる。非限定的な方法及び基材が例えばColter他の米国特許出願公開第2010/0151575号明細書に記載されている。1つの実施態様では、不織布はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。別の実施態様では、不織布はスパンボンドポリエステルである。不織布の密度は処理条件に応じて変化してよい。1つの実施態様では、不織布は、坪量が約0.40~約1.00(oz/yd2)、公称厚が約127ミクロン~約228ミクロン、そして繊維直径が約0.5ミクロン~約26ミクロンのスパンボンドポリエステルである。繊維断面は三葉状であってよい。いくつかの実施態様では、不織布は生体適合性である。
【0213】
いくつかの実施態様では、細胞不透過性層及び/又は緩和層を形成するポリマーはフィブリル化可能ポリマーである。本明細書中に使用されるフィブリル化可能とは、ポリマーメンブレンにフィブリルを導入する能力、一例としては固形フィーチャ部分をフィブリルへ変換させる能力を意味する。例えば、フィルビルは固形フィーチャ間のギャップを跨ぐ固形エレメントである。フィブリルは概ね、環境力への暴露時の耐変形性を有しておらず、したがって変形可能である。変形可能なフィルビルの大部分の直径は、約2ミクロン未満、約1ミクロン未満、約0.75ミクロン未満、約0.50ミクロン未満、又は約0.25ミクロン未満であってよい。いくつかの実施態様では、フィブリルの直径は、約0.25ミクロン~約2ミクロン、約0.5ミクロン~約2ミクロン、又は約0.75ミクロン~約2ミクロンであってよい。
【0214】
細胞不透過性層、及び緩和層のうちの1つ又は2つ以上の層を形成するために使用することができるフィブリル化可能ポリマーの一例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)、改質PTFE、TFEコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、Sbrigliaの米国特許出願公開第2016/0032069号明細書に教示されたポリ(p-キシリレン)(ePPX)、Sbrigliaの米国特許第9,926,416号明細書に教示された多孔質超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、Sbrigliaの米国特許第9,932,429号明細書に教示された多孔質エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、及びSbrigliaの米国特許第9,441,088号明細書に教示された多孔質フッ化ビニリデン-コ-テトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレン[VDF-コ-(TFE又はTrFE)]ポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0215】
いくつかの実施態様では、フィブリル化可能ポリマーは、フルオロポリマーメンブレン、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレンである。延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレンはノード・フィブリルマイクロ構造を有している。ノード・フィブリルマイクロ構造では、ノードはフィブリルによって相互接続され、孔はメンブレン全体にわたってノード及びフィブリルの間に位置する空間である。本明細書中に使用される「ノード」という用語は、ほとんどがポリマー材料から成る固形フィーチャを意味するものとする。変形可能なフィブリルが存在する場合には、これらの構造は複数のフィブリルの接合部に位置する。いくつかの実施態様では、フィルビルはメンブレンから、例えばプラズマエッチングによって除去することができる。
【0216】
少なくとも1つの実施態様では、延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンが細胞不透過性層、及び緩和層のうちの一方又は両方に使用される。延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレン、例えばGoreの米国特許第3,953,566号明細書、Bacino他の米国特許第7,306,729号明細書、Bacinoの米国特許第5,476,589号明細書、Bacino の国際公開第94/13469号パンフレット、Branca他の米国特許第5,814,405号明細書、又はBranca他の米国特許第5,183,545号明細書に記載された方法に基づき調製された延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンがここでは使用されてよい。模範的実施態様では、細胞不透過性層、及び緩和層のうちの一方又は両方が、フルオロポリマーメンブレン、一例としては延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)メンブレン、改質ePTFEメンブレン、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーメンブレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレン、又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)メンブレンから形成される。
【0217】
いくつかの実施態様では、補強構成部分及び/又は付加的な層(例えば血管新生層、補強層、メッシュ層、布地層など)が不浸透性(例えば生分解性)であることが望ましい場合がある。このような事例では、補強構成部分を形成するために、生分解材料が使用されてよい。生分解性材料の好適な一例としては、ポリグリコリド:トリメチレンカーボネート(PGA:TMC)、ポリアルファヒドロキシ酸、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(グリコリド)、及びポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-バレレート)、Sbrigliaの米国特許出願公開第2016/0032069号明細書で教示されている延伸ポリパラキシリレン(ePLLA)、及びこれらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。あるいは、緩和層を生体吸収性材料で被覆してもよく、又は生体吸収性材料を緩和層中又は緩和層上に粉末の形態で取り込むこともできる。被膜付き材料は感染部位低減、血管新生化、及び好ましい1型コラーゲン堆積を促進することができる。
【0218】
生体適合性メンブレン複合体は少なくとも部分的に表面被膜、例えば両性イオン非ファウリング被膜、親水性被膜、又はCBAS(登録商標)/ヘパリン被膜(W.L. Gore & Associates, Inc.から商業的に入手可能)を有してよい。表面被膜はこれに加えて又はこの代わりに、抗菌薬、(例えば抗CD47抗体(抗線維化))、医薬品、及び他の生物活性分子(例えば血管新生の刺激因子、例えばFGF、VEGF、エンドグリン、PDGF、アンジオポエチン、及びインテグリン、抗線維化物質、例えばTGFb阻害物質、シロリムス、CSF1R阻害物質、及び抗CD47抗体、抗炎症/免疫調節薬、例えばCXCL12、及びコルチコステロイド)、及びこれらの組み合わせを含有してもよい。
【0219】
(例えばカプセル化デバイスにおいて)細胞床厚が維持されるようにin vivoの歪みを最小化するために、生体適合性メンブレン複合体に任意の補強構成部分を設けることができる。このような付加的な任意の補強構成部分は生体適合性メンブレン複合体に、生体適合性メンブレン複合体自体よりも大きな剛性を提供することによって、機械的な支持をもたらす。このような任意の補強構成部分は事実上連続していてもよく、あるいは生体適合性メンブレン複合体上の不連続領域内に存在してもよく、例えば生体適合性メンブレン複合体の表面全体にわたってパターン化されてよく、あるいは特定の位置、例えば生体適合性メンブレン複合体の周辺を巡って配置されてもよい。メンブレン複合体の表面上の補強構成部分に適した非限定的なパターンはドット、直線、角度付き線、曲線、点線、格子などを含む。補強構成部分を形成するパターンは単独又は組み合わせで使用することができる。加えて、補強構成部分は事実上一時的なもの(例えば生体吸収性材料から形成される)であってよく、又は事実上永久的なもの(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)メッシュ又はニチノール)であってもよい。当業者には明らかなように、構成部分の剛性の影響は、単一の構成部分の剛性にだけ依存するのではなく、最終デバイス形態における補強構成部分の位置及び拘束状態にも依存する。構成部分(例えば補強構成部分)が生体適合性メンブレンに剛性を付加するのに実際に有用であるように、補強構成部分は約0.01N/cmよりも大きい剛性を有するべきではあるものの、必要とされる剛性の最終的な判断は、完成済みの細胞カプセル化デバイスにおける位置及び拘束状態に依存する。
【0220】
いくつかの実施態様では、緩和層の固形フィーチャは、マイクロリソグラフィ、マイクロモールディング、機械加工、選択的堆積、又はポリマー(例えば熱可塑性)を細胞不透過性層上に印刷(又はレイダウン)することによって、固形フィーチャの少なくとも一部を形成することができる。任意のコンベンショナルな印刷技術、例えば転写被覆、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、パターン化吸収(patterned imbibing)、及びナイフ塗布を利用して、熱可塑性ポリマーを細胞不透過性層上に置くことができる。
図6Aは、細胞不透過性層610上に位置決めされた固形フィーチャ620の形態を成す熱可塑性ポリマーを示している(印刷が完了した後)。固形フィーチャ620はフィーチャ間隔630を有している。固形フィーチャを形成するためのジオメトリの一例としては、破線(
図6B参照)、ドット及び点線(
図6C、6G参照)、幾何学的形状(
図6H参照)、直線(
図6D参照)、角度付き線(
図6F参照)、曲線、格子(
図6E参照)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0221】
緩和層の固形フィーチャを形成するために使用される材料の一例としては、熱可塑性物質、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン、ゴム、エポキシ、ポリエチレン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、シリコーンポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、ポリエステル、ポリエステルテレフタレート、溶融処理可能なフルオロポリマー、例えばフッ素化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン-(ペルフルオロアルキル)ビニルエーテル(PFA)、エチレンとテトラフルオロエチレン(ETFE)との交互コポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(THV)とのターポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施態様では、パターンフィーチャを形成するためにポリテトラフルオロエチレンを使用することができる。さらなる実施態様では、固形フィーチャを別々に形成し、細胞不透過性層(図示せず)の表面に付着させることができる。
【0222】
図7Aには生体適合性メンブレン複合体700が示されている。生体適合性メンブレン複合体700は細胞不透過性層710と、緩和層720と、任意の補強層730とを含む。図示の実施態様では、固形フィーチャ750を細胞不透過性層710の表面に結合することにより、緩和層720を形成している。固形フィーチャ750は、本質的に同じ高さ及び幅であり且つ細胞不透過性層710と任意の補強層730との間に延びるものとして
図7Aに示されてはいるものの、言うまでもなく、これは本質的に一例にすぎず、固形フィーチャ750は高さ及び/又は幅が様々であってよい。固形フィーチャ750間の距離は固形フィーチャ間隔760であり、いくつかの事例では、種々の固形フィーチャ750の間で変化してよい。
【0223】
図7Bは別の生体適合性複合体700を示している。生体適合性複合体700は細胞不透過性層710と、緩和層720と、任意の補強層730とを含む。図示の生体適合性メンブレン複合体の場合、固形フィーチャ750,780は、高さ及び幅が異なるノードであり、そして細胞不透過性層710と任意の補強層730との間の距離を延びても延びなくてもよい。固形フィーチャ750,780はフィブリル770によって接続されている。
図7Bにおいて、固形フィーチャ深さの大部分は、緩和層720の厚さよりも小さい。固形フィーチャ780は結合型固形フィーチャである。
【0224】
図8を参照すると、細胞不透過性層810と、緩和層820と、任意の補強層830とを含む生体適合性メンブレン複合体が示されている。この実施態様では、緩和層820内部の固形フィーチャは、ePTFEメンブレン内に形成された、緩和層820のノードである。ノード850,880はフィブリル870によって相互接続されている。ノード850は緩和層820内部に位置決めされている。しかしながら、ノード880は緩和層820内部にあるだけではなく、細胞不透過性層810とも接触しており、細胞不透過性層810に密接に結合されている。
【0225】
上述のように、補強構成部分は複合層内部又は複合層間の不連続領域で配向されてよい。
図9Aに示された1つの非限定的な実施態様では、補強構成部分920は細胞不透過性層900の内面上の不連続領域として形成されており、そして生体適合性メンブレン複合体950内の緩和層910内部に位置決めされている。
図9Bに示された実施態様では、補強構成部分920は細胞不透過性層900の、緩和層910とは反対側に位置決めされており、そして生体適合性メンブレン複合体950の外側にある。
図9Cに示されたさらに別の非限定的な実施態様では、補強構成部分920は細胞不透過性層900と緩和層910との間で、生体適合性メンブレン複合体950内へ位置決めされている。
【0226】
本明細書中に記載された実施態様において、緩和層1000は、ポリマーを(上記のような)所定のパターンで置く又は堆積することによって形成することができる。パターンは、
図10に全体的に示されているように、以下のもの、すなわち固形フィーチャサイズ(すなわち短軸)1010、固形フィーチャ間隔1020、固形フィーチャ深さ1060、厚さ1030、フィブリルの不在、及び/又は孔サイズ(SEM画像上で実施される定量的画像解析(QIA)によって測定する)のうちの1つ又は2つ以上によって特徴付けられる。細胞不透過性層1050が参考のためだけに示されている。
【0227】
図11は、ノード・フィブリルマイクロ構造を有するポリマーから形成された緩和層1100を示している。ノード・フィブリルマイクロ構造は、
図11に全体的に示されているように、以下のもの、すなわち固形フィーチャサイズ(すなわち短軸)1110、固形フィーチャ間隔1120、固形フィーチャ深さ1170、厚さ1130、フィブリル1160の存在、及び/又は孔サイズ(SEM画像上で実施される定量的画像解析(QIA)によって測定する)1140のうちの1つ又は2つ以上によって特徴付けられる。細胞不透過性層1150が参考のためだけに示されている。
【0228】
生体適合性メンブレン複合体は、一例としてはハウジング、チャンバ、パウチ、チューブ、又はカバーを含む種々の形態に製造することができる。1実施態様では、生体適合性メンブレン複合体は、
図12Aに示された細胞カプセル化デバイスを形成している。
図12Aは、生体適合性メンブレン複合体の2つの層から形成された細胞カプセル化デバイス1200を示す上面図である。これらの層は、周囲1210の一部に沿ってシールされている。生体適合性メンブレン複合体1220の外層だけが
図12Aに示されている。細胞カプセル化デバイス1200は、細胞を含有するための管腔としても知られている内側チャンバ(図示せず)と、内側チャンバ内へ延びて内側チャンバと流体連通しているポート1230とを含む。
【0229】
図12Bは、
図12Aの細胞カプセル化デバイスを示す断面図である。図示のように、第1生体適合性メンブレン複合体1250は第2生体適合性メンブレン複合体1260に隣接して位置決めされている。生体適合性メンブレン複合体1250,1260はそれぞれ細胞不透過性層(第1層)1270と、緩和層(第2層)1280とを含む。任意の補強構成部分(第3層)1290が示されている。2つのメンブレン複合体1250,1260の間には、細胞(及び/又は他の生物活性分子)の配置のために管腔1235が配置されている。
【0230】
本開示を全体的に説明してきたが、下に示すある特定の実施例を参照することによってさらなる理解を得ることができる。これらの実施例は例示を目的にして提供されるにすぎず、特に断りのない限りすべて包括的又は限定的なものであるようには意図されない。
【0231】
試験法
ポロシティ
層のポロシティはここでは層の総体積と比較した、孔空間から成る層体積比率と定義される。ポロシティは下記等式を用いて、固体画分の密度に対する、固体画分とボイド画分とから成る多孔質構造の嵩密度を比較することにより計算される。
【数3】
【0232】
厚さ
生体適合性メンブレン複合体内の層の厚さを、断面SEM画像の定量的画像解析(QIA)によって測定した。メンブレンを接着剤に固定し、液体窒素冷却されたカミソリ刃を使用して手でフィルムをカットし、次いで接着剤を背面に有するフィルムを直立させて、断面が鉛直方向になるようにすることによって、断面SEM画像を生成した。次いで試料をEmitech K550Xスパッタコータ(Quorum Technologies Ltd, UKから商業的に入手可能)及び白金ターゲットを使用してスパッタ塗布した。次いでThermo ScientificのFEI Quanta 400走査電子顕微鏡写真を用いて、試料を画像形成した。
【0233】
次いで、国立衛生研究所(NIH)のImageJ 1.51hを使用して、断面SEM画像内部の層の厚さを測定した。SEMによって提供されたスケールに関して画像スケールを設定した。フリーハンドツールを使用して、当該層を単離してクリッピングした。次いで少なくとも10本の等しい間隔を置いた線を、層厚の方向に描いた。すべての線の長さを測定して平均することにより層厚を定義した。
【0234】
剛性
未補強及び補強済みのプラスチック及び電気絶縁材料の曲げ特性のためのASTM D790-17規格試験に基づいて剛性試験を実施した。この方法を用いて、生体適合性メンブレン複合層及び/又は最終デバイスの剛性を割り出した。
【0235】
ASTM法の手順Bに従い、これは5%超の歪みと、撓みのための1型クロスヘッド位置とを含む。16mmのスパンと1.6mmの支持体及びノーズビースの半径とを有するように、フィクスチャの寸法を調節した。用いられる試験パラメータは撓みが3.14mmであり、試験速度が96.8mm/minであった。試験幅が標準の1cmとは異なる場合には、線形比によって1cmの試料幅に対して力を正規化した。
【0236】
荷重を最大撓み時にN/cmで報告した。
【0237】
引張強度
5500シリーズInstron(登録商標)電気機械的試験システムを使用して、材料の引張強度を試験した。特に断りのない限り、被膜の被着前に材料の引張強度を試験した。D412F又はD638-Vドッグボーン・ダイを使用して試料をカットした。次いでInstron(登録商標)テスターグリップ内に試料を装填し、(D412F試料に対しては)一定速度20in/min又は(D683-V試料に対しては)3in/minで失敗するまで試験した。最大荷重を、(ゲージ幅×材料厚として定義された)試験面積によって正規化することにより、引張応力を定義した。材料を垂直方向(D1及びD2)において試験し、そして各方向の最大応力を用いて、下記等式により材料の幾何平均引張強度を計算した。
【数4】
【0238】
最大引張荷重
5500シリーズInstron(登録商標)電気機械的試験システムを使用して、材料の最大引張荷重を試験した。特に断りのない限り、被膜の被着前に材料を試験した。D412F又はD638-Vドッグボーン・ダイを使用して当該軸に配向した状態で試料をカットした。次いでInstron(登録商標)テスターグリップ内に試料を装填し、(D412F試料に対しては)一定速度20in/min又は(D683-V試料に対しては)3in/minで失敗するまで試験した。試験中に維持された最大荷重を、試験片ゲージ幅(D412F試料は6.35mm、D638-V試料は3.175mm)によって正規化することにより、最大引張荷重を定義した。
【0239】
複合体結合強度(Z強度)
5500シリーズInstron(登録商標)電気機械的試験システムを使用して、材料の複合体結合強度を試験した。特に断りのない限り、被膜の被着前に材料の引張強度を試験した。3M 9500PC両面テープを使用して1”x1” (2.54 cm X 2.54 cm)鋼プラテンに試料を固定し、対向する1”x1”(2.54 cm X 2.54 cm)鋼プラテンと一緒に、3M 9500PC両面テープがその表面上に位置する状態でInstron(登録商標)内へ装填した。特徴的な圧縮荷重1001Nを60秒間にわたって加えることにより、接着剤を構造に部分的に浸透させておいた。この結合後、プラテンを失敗するまで一定速度20 in/秒で分離した。最大引張荷重を試験面積(1”x1”の試験面積と定義される)によって正規化することにより複合体結合を定義した。
【0240】
質量/面積
試料を(手、レーザー、又はダイによって)既知のジオメトリにカットした。特に断りのない限り、被膜の被着前に材料を試験した。試料の寸法を測定又は検証し、面積をm2で計算した。次いで較正されたスケール上で試料をグラムで秤量した。質量(グラム)を面積(m2)で割り算することにより、単位面積当たり質量をg/m2で計算した。
【0241】
SEM試料の調製
先ず、メンブレン複合体又はメンブレン複合体層を接着剤にハンドリングのために、画像形成しようとする側とは反対の側が接着剤に面する状態で固定することにより、SEM試料を調製した。次いでフィルムをカットすることにより、画像形成のためのほぼ3mm x 3mmの面積を提供した。次いでEmitech K550Xスパッタコータ及び白金ターゲットを使用して試料をスパッタ塗布した。次いでThermo ScientificのFEI Quanta 400走査電子顕微鏡を使用して、ロバスト解析のための十分な数のフィーチャの可視化を可能にする一方で、解析されたそれぞれのフィーチャの最小寸法が少なくとも5画素の長さであることを保証する倍率及び解像度で画像を撮影した。
【0242】
固形フィーチャ間隔
国立衛生研究所(NIH)のImageJ 1.51hにおいてSEM画像を解析することにより、固形フィーチャ間隔を割り出した。SEM画像によって提供されたスケールに基づいて画像スケールを設定した。サイズに基づく閾値化/シェーディング及び/又は手動識別の組み合わせによって、フィーチャを識別し単離した。構造が、不連続な固形フィーチャを有する構造とは異なり、連続構造、例えば不織布又はエッチングされた表面から成る事例では、固形フィーチャは、ボイドを取り囲む構造の部分として定義され、固形フィーチャの対応する間隔は、ボイドの一方の側から反対の側へ延びる。フィーチャを単離した後、ドローネ三角形分割法を実施して隣接フィーチャを識別した。画像のエッジを超えて延びる外接円を有する三角形分割は解析から度外視した。隣接フィーチャの最も近いエッジ間に線を引き、その長さを測定することにより、隣接フィーチャ間の間隔を定義した(例えば
図1A参照)。層の固形フィーチャ間隔は前記層内の測定されたすべての固形フィーチャ間隔の中央値である。このようなものとして、前記層内の固形フィーチャ間隔の大部分はその層の固形フィーチャ間隔と等しいか又はこれよりも大きくなる。測定されたすべての固形フィーチャ間隔の中央値は、測定された固形フィーチャ間隔の半分以下であり、且つ測定された固形フィーチャ間隔の半分以上である値をマークする。したがって、測定された中央値が何らかの値を上回るか又は下回る場合、測定値の大部分も同様に前記値を上回るか又は下回る。このようなものとして、中央値は、固形フィーチャ間隔の大部分を表すための要約統計量として用いられる。
【0243】
代表短軸及び代表長軸の測定
NIHのImageJ 1.51hにおいてメンブレン表面SEM画像を解析することにより、代表短軸を測定した。SEM画像によって提供されたスケールに基づいて画像スケールを設定した。サイズに基づく閾値化/シェーディング及び/又は手動識別の組み合わせによって、フィーチャを識別し単離した。フィーチャを単離した後、組み込まれた粒子分析能力を利用して、代表楕円の長軸及び短軸を割り出した。この楕円の短軸は測定されたフィーチャの代表短軸である。測定されたすべての短軸の中央値は、測定された短軸の半分以下であり、且つ測定された短軸の半分以上である値をマークする。同様に、測定されたすべての長軸の中央値は、測定された長軸の半分以下であり、且つ測定された長軸の半分以上である値をマークする。両方の事例において、測定された中央値が何らかの値を上回るか又は下回る場合、測定値の大部分も同様に前記値を上回るか又は下回る。このようなものとして、中央値は、代表短軸及び代表長軸の大部分を表すための要約統計量として用いられる。
【0244】
固形フィーチャ深さ
メンブレン断面のSEM画像の定量的画像解析(QIA)を用いることによって、固形フィーチャ深さを割り出した。フィルムを接着剤に固定し、液体窒素冷却されたカミソリ刃を使用して手でフィルムをカットし、次いで接着剤を背面に有するフィルムを直立させて、断面が鉛直方向になるようにすることによって、断面SEM画像を生成した。次いで試料をEmitech K550Xスパッタコータ(Quorum Technologies Ltd, UKから商業的に入手可能)及び白金ターゲットを使用してスパッタ塗布した。次いでThermo ScientificのFEI Quanta 400走査電子顕微鏡写真を用いて、試料を画像形成した。
【0245】
次いで、国立衛生研究所(NIH)のImageJ 1.51hを使用して、断面SEM画像内部のフィーチャの深さを測定した。SEMによって提供されたスケールに関して画像スケールを設定した。サイズに基づく閾値化/シェーディング及び/又は手動識別の組み合わせによって、フィーチャを識別し単離した。フィーチャを単離した後、組み込まれた粒子分析能力を利用して、フェレット直径と、それぞれの固形フィーチャのフェレット直径軸及び水平平面によって定義された軸によって形成された角度とを計算する。フェレット直径は、SEM画像の平面内のフィーチャの境界上の任意の2点間の最長距離である。フェレット直径軸は、これら2点によって定義された線である。層厚の方向における各固形フィーチャのフェレット直径の投影を、下記等式によって計算した。
【数5】
【0246】
層厚の方向における最長軸の投影は、測定されたフィーチャの固形フィーチャ深さである。測定されたすべての固形フィーチャ深さの中央値は、測定された固形フィーチャ深さの半分以下であり、且つ測定された固形フィーチャ深さの半分以上である値をマークする。したがって、測定された中央値が何らかの値を上回るか又は下回る場合、測定値の大部分も同様に前記値を上回るか又は下回る。このようなものとして、中央値は、固形フィーチャ間隔の大部分を表すための要約統計量として用いられる。
【0247】
孔サイズ
NIHのImageJ 1.51hにおいてSEM画像を解析することにより、孔サイズを割り出した。SEM画像によって提供されたスケールに基づいて画像スケールを設定した。サイズに基づく閾値化/シェーディング及び/又は手動識別の組み合わせによって、孔を識別し単離した。孔を単離した後、組み込まれた粒子分析能力を利用して、各孔の面積を割り出した。測定された孔面積を下記等式によって、「有効直径」に変換した。
【数6】
【0248】
孔面積を合計することにより、孔によって定義された表面の総面積を定義する。これは表面の総孔面積である。層の孔サイズは、総孔面積のおよそ半分が孔サイズよりも小さな直径を有する孔から成り、且つ総孔面積の半分が孔サイズよりも大きいか又はこれに等しい直径を有する孔から成る、そのポイントを定義する孔の有効直径である。
【0249】
MPS(最大孔サイズ)
Anton PaarのQuantachrome 3Gzhポロメーター及び湿潤溶液としてシリコーン油(20.1 dyne/cm)を使用して、ASTM F316によりMPS(最大孔サイズ)を測定した。
【0250】
生体適合性メンブレン複合体のデバイス形態への一体化
in vivoの有用性を評価するために、細胞治療物質を送達するための植え込み型カプセル化デバイスに適したデバイス形態になるように、種々の生体適合性メンブレン複合体を製造した。この試験形態において、2つの同一のメンブレン複合体を周辺領域を巡ってシールすることにより、細胞のローディングを可能にするための充填チューブ又はポートによってアクセスされる開いた内部管腔空間を形成した。
【0251】
溶接作業中にデバイスを巡る周辺シールを形成する結合構成部分として、熱可塑性フィルムが作用した。使用された特定フィルムはポリカーボネートウレタンフィルムであった。押出チューブの外径は1.60mmであり、内径は0.889mmであった。
【0252】
加えて、好適な剛性を有する補強用の機械的な支持体をカプセル化デバイスの外側に加えた。具体的には相互間隔がほぼ300ミクロンの、120ミクロン繊維を有するポリエステルモノフィラメント製織メッシュを、両複合メンブレンの外側に(すなわちデバイスの外側に)位置決めした。この層の剛性は0.097N/cmであった。
【0253】
レーザー切断台を使用して、すべての層をほぼ22mm x 11mmの長円外寸に切断した。フィルムを2mm幅の長円リングプロフィールに切断し、これを生体適合性メンブレン複合体の両側、並びにポリエステルメッシュ(補強層)の周りに層間積み重ねパターンを成して配置した。これらの構成部分の層間積み重ねパターンは、複合層のそれぞれの層並びにメッシュの周辺位置を巡る溶融フィルム結合を可能にした。生体適合性メンブレン複合体の層を充填チューブ1330に対向して対称的に積み重ねて、生体適合性メンブレン複合体の細胞不透過性緻密層が内部管腔へ向かって内側に面するようにした。カプセル化デバイスの分解図が
図13に示されている。
図13に示されているように、細胞カプセル化デバイスは、第1生体適合性メンブレン複合体1300が、第2生体適合性メンブレン複合体1310の周囲の一部に沿ってシールされた第2生体適合性メンブレン複合体1310に対して、前記第1生体適合性メンブレン複合体の周囲の少なくとも一部に沿ってシールされるように形成されている。2つの生体適合性メンブレン1300,1310の間には内部チャンバが、充填チューブ1330を通ってアクセスされる状態で形成されている。細胞カプセル化デバイスはさらに、少なくとも第1生体適合性メンブレン複合体1300と補強構成部分1350との間、そして第2生体適合性メンブレン複合体1310と別の補強構成部分1350との間に位置決めされた少なくとも1つの溶着フィルム1340を含んでよい。第1生体適合性メンブレン複合体を第2生体適合性メンブレン複合体に、これらの周囲で接着するために、溶着フィルム1340が使用されてもよい。
【0254】
超音波溶接機(Herrmann Ultrasonics)又は熱ステーキング溶接機(Thermal Press International, Inc.)を使用することにより、デバイスの周りの一体的なシールを形成した。両方のプロセスによって、熱エネルギー又は振動エネルギー及び力を層状のスタックに加えることにより、熱可塑性フィルムを、その軟化温度を上回る温度で溶融して流動させ、これによりすべての層を一緒に溶着した。デバイスは2工程溶着プロセスで組み立てる。このプロセスでは、一方の側からエネルギー又は熱を加えることにより、第1複合メンブレンをデバイスの一方の側に一体化し、続いて第2複合メンブレンをデバイスの他方の側へ一体化した。試験圧力5PSIのUSON Sprint iQ漏れテスターによる圧力減衰試験を用いてデバイス完全性を試験することによって、溶着の最終適合性を評価した。
【0255】
宿主組織反応を評価するためのin vivoブタ研究
滅菌された空のカプセル化デバイス(すなわち細胞なし)を、ラジオ周波数(RF)溶接機を使用して充填チューブのところでシールし、そしてトロカール送達技術を用いてブタの背に皮下植え込みした。30日後、動物を安楽死させ、周囲組織を有するデバイスを組織画像形成のために回収した。
【0256】
植え込まれたカプセル化デバイスを露出させるべく皮膚及び皮下組織が反映されるように、組織試料を処理した。カプセル化デバイス及び周囲組織を一括して除去する前に必要とされる場合には、デジタルラジオグラフィ(Faxitron UltraFocus System)を用いてデバイスを識別した。デバイスの配向をステープルでマーキングした。外植されたすべてのデバイス及び周囲組織を10%中性緩衝ホルマリン中に漬けた。各デバイス試験片に固有の受入番号を割り当てた。
【0257】
各試験片から3つの断面を取った。各デバイスの3つの区分をパラフィン内に一緒に包埋し、5~10ミクロン厚の区分にカットし、スライド上に置き、そしてヘマトキシリン及びエオシン(H&E)及びマッソントリクロームで染色した。Nikon DS-Fiシリーズ・カメラ及びNikon NISエレメント顕微鏡画像形成ソフトウェアを使用して、スライドの画像を捕捉した。各スライドの少なくとも3つの拡大画像を捕捉した。Nikon NISエレメント顕微鏡画像形成ソフトウェアを使用して、測定を行った。ソフトウェアは、認定顕微鏡マイクロメーターを使用して較正され、スケールバーは各画像に含まれる。
【0258】
ヒトPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞及び内分泌細胞のin vitro生成
多能性幹細胞、例えばhES及びiPS細胞に向けられた本明細書中の分化方法は、所望の最終ステージ細胞培養物又は細胞集団(例えばPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞集団(又はPEC)、又は内分泌プリカーサー細胞集団、内分泌細胞集団、又は未熟ベータ細胞集団、又は成熟内分泌細胞集団)に応じて、少なくとも4又は5又は6又は7ステージに分けて表すことができる。
【0259】
ステージ1は、多能性幹細胞からの胚体内胚葉の生成であり、これには約2~5日、好ましくは2又は3日かかる。RPMI、TGFβスーパーファミリーメンバー増殖因子、例えばアクチビンA、アクチビンB、GDF-8又はGDF-11(100ng/mL)、Wntファミリーメンバー又はWnt経路アクチベータ、例えばWnt3a(25ng/mL)、あるいはrho-キナーゼ、又はROCK阻害物質、例えばY-27632(10μM)を含む培地中に多能性幹細胞を懸濁させることにより、成長、及び/又は生存、及び/又は増殖、及び/又は細胞間接着を促進する。約24時間後、この培地を、血清、例えば0.2%のFBSを含むRPMI、及びTGFβスーパーファミリーメンバー増殖因子、例えばアクチビンA、アクチビンB、GDF-8又はGDF-11(100ng/mL)、あるいはrho-キナーゼ、又はROCK阻害物質を含む培地と、さらに24時間(第1日)~48時間(第2日)にわたって交換する。あるいは、アクチビン/Wnt3aを含む培地中に約24時間にわたって培養した後、これらの細胞を次の24時間中アクチビンだけを含む培地(すなわち培地はWnt3aを含まない)中に培養する。重要なのは、胚体内胚葉の生成が、血清含量が低く、ひいてはインスリン又はインスリン様増殖因子の含量も低い細胞培養条件を必要とすることである。McLean et al. (2007) Stem Cells 25: 29-38を参照されたい。McLean他はまた、ステージ1において0.2μg/mLという低い濃度でhES細胞とインスリンとを接触させると、胚体内胚葉の生成にとって有害であり得ることを示している。さらに他の当業者が、実質的に本明細書及びD’Amour他(2005)において、そして例えば少なくとも、Agarwal et al., Efficient Differentiation of Functional Hepatocytes from Human Embryonic Stem Cells(ヒト胚幹細胞からの機能的肝細胞の効率的な分化), Stem Cells (2008) 26:1117-1127; Borowiak et al., Small Molecules Efficiently Direct Endodermal Differentiation of Mouse and Human Embryonic Stem Cells(小分子がマウス及びヒトの胚幹細胞の内胚葉分化を効率的に指向する), (2009) Cell Stem Cell 4:348-358; Brunner et al., Distinct DNA methylation patterns characterize differentiated human embryonic stem cells and developing human fetal liver(明確なDNAメチル化パターンが、分化されたヒト胚幹細胞及び発生中のヒト胎児肝臓を特徴付ける。), (2009) Genome Res. 19:1044-1056, Rezania et al. Reversal of Diabetes with Insulin-producing Cells Derived In Vitro from Human Pluripotent Stem Cells(ヒト多能性幹細胞からin vitroで誘導されたインスリン生成細胞による糖尿病の逆転) (2014) Nat Biotech 32(11): 1121-1133 (GDF8 & GSK3beta inhibitor, e.g. CHIR99021);そしてPagliuca et al. (2014) Generation of Function Human Pancreatic B-cell In Vitro(機能ヒト膵臓B細胞のin vitroの発生), Cell 159: 428-439 (Activin A & CHIR)に記載されているように、ステージ1という多能性幹細胞から胚体内胚葉への分化を改変している。他の内胚葉系列細胞を誘導するためには、胚体内胚葉の適切な分化、仕様、特徴付け、及び識別が必要である。このステージにおける胚体内胚葉細胞は、SOX17及びHNF3β(FOXA2)を同時発現させ、そして少なくともHNF4アルファ、HNF6、PDX1、SOX6、PROX1、PTF1A、CPA、cMYC、NKX6.1、NGN3、PAX3、ARX、NKX2.2、INS、GSC、GHRL、SST、又はPPを感知可能なほどには発現させない。胚体内胚葉におけるHNF4アルファ発現の不在は、詳細には少なくともDuncan et al. (1994), Expression of transcription factor HNF-4 in the extraembryonic endoderm, gut, and nephrogenic tissue of the developing mouse embryo: HNF-4 is a marker for primary endoderm in the implanting blastocyst(発生中のマウス胚の胚体外内胚葉、消化管、及び腎性組織における転写因子HNF-4の発現:HNF-4は、着床した胚盤胞における初期内胚葉のためのマーカーである), Proc. Natl. Acad. Sci, 91:7598-7602、及びSi-Tayeb et al. (2010), Highly Efficient Generation of Human Hepatocyte-Like cells from Induced Pluripotent Stem Cells(誘発胚体内胚葉細胞からのヒト肝細胞様細胞の高効率の発生), Hepatology 51:297-305において支持され詳述されている。
【0260】
ステージ2はステージ1から胚体内胚葉細胞培養物を取り、そして1:1000希釈のITS中の低血清レベルのRPMI、例えば0.2%のFBS、25ngのKGF(又はFGF7)、あるいはROCK阻害物質を含む懸濁液培養物を24時間にわたって(第2日~第3日)インキュベートすることによって、前腸内胚葉又はPDX1-陰性前腸内胚葉を生成した。24時間後(第3日~第4日)、培地を、同じ培地からTGFβ阻害物質を、あるいはさらにROCK阻害物質を差し引いたものと交換することにより、さらに24日間(第4日~第5日)~48時間(第6日)にわたって、細胞の成長、生存、及び増殖を促進する。前腸内胚葉の適切な仕様のための重要なステップが、TGFβファミリー増殖因子の除去である。したがってTGFβ阻害物質、例えば2.5μMのTGFβ阻害物質NO.4、又は5μMのSB431542、TGFβI型受容体であるアクチビン受容体様キナーゼ(ALK)の特定の阻害物質をステージ2の細胞培養物に添加することができる。ステージ2から生成された前腸内胚葉又はPDX1-陰性前腸内胚葉細胞は、SOX17、HNF1β及びHNF4alphaを発現させ、そして少なくともHNF3β(FOXA2)を感知可能なほどには同時発現させることはなく、またHNF6、PDX1、SOX6、PROX1、PTF1A、CPA、cMYC、NKX6.1、NGN3、PAX3、ARX、NKX2.2、INS、GSC、GHRL、SST、又はPPを感知可能なほどには同時発現させることもなかった。これらは、胚体内胚葉、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞、又は膵臓プロジェニター細胞、又は内分泌プロジェニター/プリカーサー、並びに典型的にはポリホルモン型細胞の特質である。
【0261】
PEC生成のためのステージ3(第5日~第8日)は前腸胚体内胚葉細胞培養物を取り、そして1%のB27中のDMEM又はRPMI、0.25μMのKAADシクロパミン、レチノイド、例えば0.2μMのレチノイン酸(RA)又はレチノイン酸類似体、例えば3nMのTTNPB(又はCTT3、これはKAADシクロパミンとTTNPBとの組み合わせである)、及び50ng/mLのノギン(Noggin)によって、PDX1-陽性前腸内胚葉細胞を約24時間(第7日)~48時間(第8日)にわたって生成する。具体的には、出願人はおよそ2003年以来、DMEM高グルコースを使用しており、その時点でのすべての特許及び非特許の開示は、たとえ「DMEM高グルコース」などと述べなくても、DMEM高グルコースを採用した。これは一部は、Gibcoのような製造業者がこれらのDMEM、例えばDMEM(Cat.No 11960)及びノックアウトDMEM(Cat. No 10829)をそのようなものとして命名しなかったからである。注目に値するのは、本出願の出願日時点で、Gibcoはより多くのDMEM製品を提供してはいるものの、高グルコースを含有するこれらのDMEM製品のうちのある程度の数の製品、例えばノックアウトDMEM(Cat. No 10829-018)には未だに「高グルコース」を付けていないことである。したがって、DMEMが記載されているそれぞれの事例では、これは高グルコースを有するDMEMを意味するものとする。このことは、この分野の研究開発を行う他者には明らかであった。ここでもやはりROCK阻害剤又はrho-キナーゼ阻害剤、例えばY-27632を使用して、成長、生存、増殖を促進し、及び/又は細胞間接着を促進することができる。付加的な物質及び因子の一例としては、アスコルビン酸(例えばビタミンC)、BMP阻害物質(例えばノギン、LDN、コーディン)、SHH阻害物質(例えばSANT、シクロパミン、HIP1)、及び/又はPKCアクチベータ(例えばPdBu、TBP、ILV)、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。あるいはステージ3は、SHH阻害物質、例えばステージ3のシクロパミンなしで実施される。ステージ3から生成されたPDX1-陽性前腸内胚葉細胞は、PDX1及びHNF6並びにSOX及びPROXを同時発現させ、そしてステージ1及び2において上述した胚体内胚葉又は前腸内胚葉(PDX1-陰性前腸内胚葉)細胞、又はPDX1-陽性前腸内胚葉細胞を示すマーカーを感知可能なほどには同時発現させない。
【0262】
上記ステージ3方法は、PEC集団の生成のための4つのステージのうちの1つである。下で詳述する内分泌プロジェニター/プリカーサー及び内分泌細胞を生成するために、ノギンに加えて、KAAD-シクロパミン及びレチノイド、アクチビン、Wnt及びヘレグリン、甲状腺ホルモン、TGFb受容体阻害物質、タンパク質キナーゼCアクチベータ、ビタミンC、及びROCK阻害物質を単独且つ/又は組み合わせて使用することにより、NGN3の早期発現及びCHGA陰性型細胞の増大を抑制する。
【0263】
ステージ4(およそ第8日~第14日)のPEC培地生産はステージ3の培地を取り、そしてこれを、1%vol/volのB27補充物中のDMEMに加えて50ng/mLのKGF及び50ng/mLのEGFを含有し、そしてあるときには50ng/mLのNoggin及びROCK阻害物質をも含有する培地と交換し、この培地はさらにアクチビンを単独で、又はヘレグリントと組み合わせて含む。あるいは、KGF、RA、SANT、PKCアクチベータ及び/又はビタミンC又はこれらの任意の組み合わせを使用して、ステージ3の細胞をさらに分化することもできる。これらの方法は少なくともPDX1及びNKX6.1、並びにPTF1Aを同時発現させる膵臓プロジェニター細胞を生じさせる。これらの細胞は、ステージ1、2及び3において上述した胚体内胚葉又は前腸内胚葉(PDX1-陰性前腸内胚葉)細胞を示すマーカーを感知可能なほどには発現させない。
【0264】
ステージ5の生産は、上記ステージ4のPEC細胞集団を取り、そしてこれらをさらに分化することによって、内分泌プロジェニター/プリカーサー又はプロジェニター型細胞及び/又は単一ホルモン型又はポリホルモン型の膵臓内分泌型細胞を、1% vol/volのB27補充物を含むDMEM、ノギンKGF、EGF、RO(ガンマセクレターゼ阻害物質)、ニコチンアミド及び/又はALK5阻害物質、又はこれらの任意の組み合わせ、例えばノギンとALK5阻害物質との組み合わせを含有する培地中で約1~6日間にわたって(好ましくは約2日間、すなわち第13~15日)生成する。あるいは、レチノイン酸(例えばRA又はその類似体)、甲状腺ホルモン(例えばT3,T4又はその類似体)、TGFb受容体阻害物質(ALK5阻害物質)、BMP阻害物質(例えばノギン、コーディン、LDN)、又はガンマセクレターゼ阻害物質(例えばXXI、XX、DAPT、XVI、L685458)、及び/又はベータセルリン、又はこれらの任意の組み合わせを使用して、ステージ4細胞をさらに分化することもできる。ステージ5から生成された内分泌プロジェニター/プリカーサーは、少なくともPDX1/NKX6.1を同時発現させ、またCHGA、NGN3及びNkx2.2をも発現させ、そしてPEC生産のためのステージ1、2、3及び4において上述した胚体内胚葉又は前腸内胚葉(PDX1-陰性前腸内胚葉)を示すマーカーを感知可能なほどには発現させない。
【0265】
内分泌細胞、内分泌プリカーサー、又は未熟ベータ細胞の細胞培養集団又は適切な比を達成するために、一例としてはPDGF+SSH阻害物質(例えばSANT、シクロパミン、HIP1)、BMP阻害物質(例えばNoggin、Chordin、LDN)、ニコチンアミド、インスリン様増殖因子(例えばIGF1、IGF2)、TTNBP、ROCK阻害物質(例えばY27632)、TGFb受容体阻害物質(例えばALK5i)、甲状腺ホルモン(例えばT3、T4及びその類似体)、及び/又はガンマセクレターゼ阻害物質(XXI、XX、DAPT、XVI、L685458)又はこれらの組み合わせを含む物質又は因子の組み合わせのうちのいずれかを添加することによって、ステージ6及び7をステージ5細胞集団からさらに分化することができる。
【0266】
ステージ7又は未熟ベータ細胞は内分泌細胞と考えられるが、しかし生理学的にグルコースに反応するのに十分に成熟していてもいなくてもよい。ステージ7未熟ベータ細胞はMAFBを発現させ得るのに対して、MAFA及びMAFBを発現させる細胞は、グルコースに生理学的に反応し得る完全に成熟した細胞である。
【0267】
ステージ1~7の細胞集団はヒト多能性幹細胞(例えばヒト胚幹細胞、誘発多能性幹細胞、例えば現在利用可能な、又は後で開発される遺伝子編集ツール及びアプリケーションのうちのいずれかを使用した、遺伝子操作された幹細胞)に由来し、これらの正確な自然発生の対応細胞型を有していないことがある。それというのも、これらはin vitroで(すなわち人工組織培養で)発生した不死ヒト多能性幹細胞に由来し、in vivoの内細胞塊ではない(すなわちin vivoヒト発生はヒトES細胞等価物を有しない)からである。
【0268】
本明細書中に意図された膵臓細胞治療代替物は、ステージ4,5,6又は7の細胞集団のいずれかを使用して、本明細書中に記載されたメンブレンから成る本明細書中に記載されたデバイス内にカプセル化することができ、マクロカプセル化デバイス内にローディングされ、完全に包含され、そして患者内に移植され、そして膵臓内胚葉系列細胞は成熟して膵臓ホルモン分泌細胞、又は膵島、例えばin vivo(「in vivo機能」とも呼ばれる)インスリン分泌ベータ細胞になり、血糖に正常に反応することができる。
【0269】
膵臓内胚葉系列細胞のカプセル化、及びin vivoのインスリンの生成は、2009年11月13日付けで出願された、ENCAPSULATION OF PANCREATIC LINEAGE CELLS DERIVED FROM HUMAN PLURIPOTENT STEM CELLSと題する米国出願第12/618,659号明細書(‘659出願)に詳述されている。‘659出願は、2008年11月14日に出願されたENCAPSULATION OF PANCREATIC PROGENITORS DERIVED FROM HES CELLSと題する仮特許出願第61/114,857号明細書、及び2008年12月9日付けで出願されたENCAPSULATION OF PANCREATIC ENDODERM CELLSと題する米国仮特許出願第61/121,084号明細書、そして今や米国特許第8,278,106号明細書及び米国特許第8,424,928号明細書の優先権を主張する。本明細書に記載された方法、組成物、及びデバイスは現在のところ、好ましい実施態様の代表であり、模範的なものであり、また本発明の範囲を制限するものとしては意図されていない。当業者には本発明の範囲に含まれ、開示の範囲によって定義される変更形及び他の使用が容易に想到される。したがって、本発明の範囲及び思想を逸脱することなしに、本明細書中に開示された本発明に様々な置換及び変更を加え得ることは、当業者には明らかである。
【0270】
加えて、本明細書中に記載された実施態様は、多能性幹細胞、又はヒト多能性幹細胞のうちのいずれか1つのタイプに限定されることはなく、一例としてはヒト胚幹(hES)細胞及びヒト誘導多能性幹(iPS)細胞、又は後で開発される他の多能性幹細胞を含む。本出願の出願時点では、ヒト多能性幹を形成する方法をヒト胚の破壊なしに実施することができ、そしてこのような方法が任意のヒト多能性幹細胞の生成のために予測されることも、当業者によく知られている。
【0271】
ヒト多能性幹細胞から膵臓細胞系列を生成する方法は実質的に、一例として少なくとも下記に挙げられたもの、つまり、PCT/US2007/62755(WO2007101130),PCT/US2008/80516(WO2009052505),PCT/US2008/82356(WO2010053472),PCT/US2005/28829(WO2006020919),PCT/US2014/34425(WO2015160348),PCT/US2014/60306(WO2016080943),PCT/US2016/61442(WO2018089011),PCT/US2014/15156(WO2014124172),PCT/US2014/22109(WO2014138691),PCT/US2014/22065(WO2014138671),PCT/US2005/14239(WO2005116073),PCT/US2004/43696(WO2005063971),PCT/US2005/24161(WO2006017134),PCT/US2006/42413(WO2007051038),PCT/US2007/15536(WO2008013664),PCT/US2007/05541(WO2007103282),PCT/US2008/61053(WO2009131568),PCT/US2008/65686(WO2009154606),PCT/US2014/15156(WO2014124172),PCT/US2018/41648(WO2019014351),PCT/US2014/26529(WO2014160413),PCT/US2009/64459(WO2010057039)を含む、ViaCyte, Inc.に権利譲渡された刊行物、及びd’Amour et al. 2005 Nature Biotechnology 23:1534-41; D'Amour et al. 2006 Nature Biotechnology 24(11):1392-401; McLean et al., 2007 Stem Cells 25:29-38, Kroon et al. 2008 Nature Biotechnology 26(4): 443-452, Kelly et al. 2011 Nature Biotechnology 29(8): 750-756, Schulz et al., 2012 PLos One 7(5):e37004;, and/or Agulnick et al. 2015 Stem Cells Transl. Med. 4(10):1214-22に記載されているように実施された。
【0272】
ヒト多能性幹細胞から膵臓細胞系列を生成する方法は実質的に、一例として少なくとも下記に挙げられたもの、つまり、PCT/US2008/68782(WO200906399),PCT/US2008/71775(WO200948675),PCT/US2008/71782(WO200918453),PCT/US2008/84705(WO200970592),PCT/US2009/41348(WO2009132063),PCT/US2009/41356(WO2009132068),PCT/US2009/49183(WO2010002846),PCT/US2009/61635(WO2010051213),PCT/US2009/61774(WO2010051223),PCT/US2010/42390(WO2011011300),PCT/US2010/42504(WO2011011349),PCT/US2010/42393(WO2011011302),PCT/US2010/60756(WO2011079017),PCT/US2011/26443(WO2011109279),PCT/US2011/36043(WO2011143299),PCT/US2011/48127(WO2012030538),PCT/US2011/48129(WO2012030539),PCT/US2011/48131(WO2012030540),PCT/US2011/47410(WO2012021698),PCT/US2012/68439(WO2013095953),PCT/US2013/29360(WO2013134378),PCT/US2013/39940(WO2013169769),PCT/US2013/44472(WO2013184888),PCT/US2013/78191(WO2014106141),PCTU/S2014/38993(WO2015065524),PCT/US2013/75939(WO2014105543),PCT/US2013/75959(WO2014105546),PCT/US2015/29636(WO2015175307),PCT/US2015/64713(WO2016100035),PCT/US2014/41988(WO2015002724),PCT/US2017/25847(WO2017180361),PCT/US2017/37373(WO2017222879),PCT/US2017/37373(WO2017222879);PCT/US2009/049049(WO2010/002785),PCT/US2010/060770(WO2011/079018),PCT/US2014/042796,(WO2015/065537),PCT/US2008/070418(WO2009/012428)を含む、Janssenに権利譲渡された刊行物、及びBruin et al. 2013 Diabetologia. 56(9): 1987-98, Fryer et al. 2013 Curr. Opin. Endocrinol. Diabetes Obes. 20(2): 112-7, Chetty et al. 2013 Nature Methods. 10(6):553-6, Rezania et al. 2014 Nature Biotechnologyy 32(11):1121-33, Bruin et al. 2014 Stem Cell Res.12(1): 194-208, Hrvatin 2014 Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 111(8): 3038-43, Bruin et al. 2015 Stem Cell Reports. 5, 1081-1096, Bruin et al.2015 Science Transl. Med., 2015, 7, 316ps23, and/or Bruin et al. 2015 Stem Cell Reports. 14;4(4):605-20に記載されているように実施された。
【0273】
1実施態様では、好ましい下記条件A及び/又はBのうちの一方にしたがって、ヒト多能性幹細胞を、膵臓プロジェニター及び内分泌プリカーサーを含むPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞に分化した。
【表1】
【0274】
表1凡例:r0.2FBS:RPMI 1640 (Mediatech);0.2%のFBS (HyClone)、1x GlutaMAX-1 (Life Technologies)、1%v/vのペニシリン/ストレプトマイシン;db:0.5x B-27補充物(Life Technologies)で補充されたDMEM Hi グルコース (HyClone);A100,A50,A5:100ng/mLの組み換えヒトアクチビンA(R&D Systems);A5i:1μM、5μM、10μMのALK5阻害物質;TT3:3nMのTTNPB (Sigma-Aldrich);E50:50ng/mLの組み換えヒトEGF (R&D Systems);ITS:1:5000又は1:1000で希釈されたインスリン-トランスフェリン-セレニウム(Life Technologies);IV:2.5mMのTGF-b RIキナーゼ阻害物質IV(EMD Bioscience);K50,K25:50ng/mL,25ng/mLの組み換えヒトKGF(R&D Systems、又はPeprotech);N50,N100:50ng/mL又は100ng/mLの組み換えヒトノギン(R&D Systems);W50:50ng/mLの組み換えマウスWnt3A (R&D Systems)。
【0275】
当業者に明らかなように、膵臓プロジェニター又は内分泌細胞及び内分泌プリカーサー細胞を含むPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞又はPDX1-陽性膵臓内胚葉系列細胞を生成するための他の方法、及び少なくともKroon et al. 2008, Rezania et al. 2014(上記参照)及び Pagliuca et al. 2014 Cell159(2):428-439(上記参照)に記載されたPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞も存在し得る。
【0276】
当業者には明らかなように、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞の生成のために本明細書中に記載された実施態様は、混合集団又は亜集団の混合から成っている。そして前後軸に沿って発生し、細胞及び組織がそれに従って命名される哺乳類のin vivo発生とは異なり、任意の培養容器内の細胞培養物は、このような指向性パターン化を欠いており、したがって具体的には、これらのマーカー発現に基づき特徴付けられている。ゆえに、任意の分化ステージにおける混合型の細胞亜集団はin vivoでは発生しない。したがってPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞培養物の一例としては、i) 内分泌プリカーサー(例えば早期内分泌マーカー、クロモグラニンA又はCHGAによって示される)、ii) 典型的な膵臓ホルモン、例えばインスリン(INS)、ソマトスタチン(SST)、膵臓ポリペプチド(PP)、グルカゴン(GCG)、又はガストリン、インクレチン、又はコレシストキニン、のいずれかを発現させる単一ホルモン型、ポリホルモン型の細胞、iii) 前膵臓細胞、例えばPDX-1を発現させるが、しかしNKX6.1又はCHGAを発現させない細胞、iv) PDX-1/NKX6.1及びCHGA(PDX-1/NKX6.1/CHGA)、又は非内分泌細胞、例えばPDX-1/NKX6.1を同時発現させるが、しかしCHGA(PDX-1+/NKX6.1+/CHA-)を発現させない内分泌細胞、及びv) さらに、PDX-1、NKX6.1又はCHGAを発現させない細胞(例えばトリプルネガティブ細胞)が挙げられる。
【0277】
混合型の細胞亜集団を有するこのPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞集団は大抵の場合、少なくともPDX-1を発現させ、具体的にはPDX-1/NKX6.1を発現させる亜集団を有する。PDX-1/NKX6.1亜集団は「膵臓プロジェニター」、「膵臓上皮」、又は「PEC」又はPECのバージョン、例えばPEC-01とも呼ばれている。表1にはステージ4細胞集団が記載されているが、これらの種々の亜集団はステージ4に限定されるものではない。これらの亜集団のうちのあるものは、例えばステージ3という早期に、そしてステージ5,6及び7を含む後期に見出すことができる(未熟ベータ細胞)。それぞれの亜集団の比は、採用される細胞培養の培地条件に応じて変化する。例えば、Agulnick et al. 2015(上記参照)において、73~80%のPDX-1/NKX6.1細胞を使用して、概ね74~89%の内分泌細胞を含有する膵島様細胞(IC)にさらに分化し、そしてこれらの40~50%は、インスリン(INS)を発現させた。したがって、異なる細胞培養条件が、異なる比の細胞亜集団を発生させることができ、in vivo機能、ひいては血清c-ペプチドレベルに影響を与えることができる。そしてPDX1-陽性膵臓内胚葉系列細胞培養集団を形成するための修正方法がin vivo機能に影響を与えるか否かは、下で詳述するin vivo研究を用いてのみ判断することができる。さらに、ある特定の細胞型が形成されておりそして十分に特徴付けられているという理由だけで、このような方法が同じ細胞中間体を生成することを、これも良好に特徴付けられない限り想定することはできず、また想定するべきでもない。
【0278】
1つの態様では、成熟ベータ細胞をin vivoで生成する方法が提供される。少なくともTGFβスーパーファミリーメンバー及び/又は少なくともTGFβスーパーファミリーメンバー及びWntファミリーメンバー、好ましくはTGFβスーパーファミリーメンバー及びWntファミリーメンバー、好ましくはアクチビンA,B又はGDF-8、GDF-11又はGDF-15及びWnt3a、好ましくはアクチビンA及びWnt3a、好ましくはGDF-8及びWnt3aを用いて、in vitroでヒト多能性幹細胞から誘導されたヒト胚体内胚葉系列細胞を形成することから成る方法。少なくともKGF、BMP阻害物質及びレチノイン酸(RA)又はRA類似体を用いて、そして好ましくはKGF、ノギン及びRAを用いてPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞を形成する方法。この方法はさらに、甲状腺ホルモン及び/又はTGFb-RI阻害物質、BMP阻害物質、KGF、EGF、甲状腺ホルモン及び/又はタンパク質キナーゼCアクチベータを用いて、好ましくはノギン、KGF及びEGFを用いて、好ましくはこれに加えてT3又はT4及びALK5阻害物質又はT3を用いて、又はT4単独で、又はALK5阻害物質単独で、又はT3又はT4、ALK5阻害物質及びPKCアクチベータ、例えばILV、TPB及びPdBuを用いて、PDX1-陽性膵臓内胚葉細胞を未熟ベータ細胞又はMAFA発現細胞に分化することができる。あるいは好ましくはノギン及びALK5iを用いて、そしてPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞又はMAFA未熟ベータ細胞集団をin vivoで哺乳類宿主内へ植え込み成熟させることにより、血糖に反応し得るインスリン分泌細胞を含む細胞集団を生成する。
【0279】
1つの態様では、INS及びNKX6.1を発現させ、そしてNGN3をほとんど発現させない単能性ヒト未熟ベータ細胞又はPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞が提供される。1実施態様では、単能性ヒト未熟ベータ細胞は成熟ベータ細胞に成熟することができる。1実施態様では、単能性ヒト未熟ベータ細胞はさらに、in vitro及びin vivoでMAFBを発現させる。1実施態様では、未熟ベータ細胞はINS、NKX6.1及びMAFAを発現させ、そしてNGN3をほとんど発現させない。
【0280】
1つの態様では、少なくともCHGA(又はCHGA+)を発現させる膵臓内胚葉系列細胞は内分泌細胞を意味し、そしてCHGA(又はCHGA-)を発現させない膵臓内胚葉細胞は非内分泌細胞を意味する。別の態様では、これらの内分泌亜集団及び非内分泌亜集団は多能性プロジェニター/プリカーサー亜集団、例えば非内分泌多能性膵臓プロジェニター亜集団又は内分泌多能性膵臓プロジェニター亜集団であってよく、あるいはこれらは単能性亜集団、例えば未熟内分泌細胞、好ましくは未熟ベータ細胞、未熟グルカゴン細胞、及びこれに類するものであってよい。
【0281】
1つの態様では、膵臓内胚葉細胞集団又はPDX1-陽性膵臓内胚葉細胞集団(ステージ4)の10%超、好ましくは20%、30%、40%超、そしてより好ましくは50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%超、又は100%が非内分泌(CHGA-)多能性プロジェニター亜集団であり、この亜集団は成熟インスリン分泌細胞を生じさせ、哺乳類宿主内へ植え込まれるとin vivoでグルコースに反応する。
【0282】
1実施態様は、in vitroの多能性幹細胞を実質的に膵臓内胚葉培養物に分化し、そしてさらに膵臓内胚葉培養物をin vitroの内分泌細胞又は内分泌プリカーサー細胞に分化するための組成物及び方法を提供する。1つの態様では、内分泌細胞又は内分泌プリカーサー細胞はCHGAを発現させる。1つの態様では、内分泌細胞はin vitroでインスリンを生成することができる。1つの態様では、in vitro内分泌インスリン分泌細胞は、グルコース刺激に反応してインスリンを生成することができる。1つの態様では、細胞集団中の細胞の10%超、好ましくは20%、30%、40%超、そしてより好ましくは50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%超、又は100%が内分泌細胞である。
【0283】
本明細書中に記載された実施態様は、in vitroの多能性ヒト幹細胞を内分泌細胞に分化する組成物及び方法を提供する。1つの態様では、内分泌細胞はCHGAを発現させる。1つの態様では、内分泌細胞はin vitroでインスリンを生成することができる。1つの態様では、内分泌細胞は未熟内分泌細胞、例えば未熟ベータ細胞である。1つの態様では、in vitroインスリン生成細胞は、グルコース刺激に反応してインスリンを生成することができる。
【0284】
1実施態様は哺乳類においてin vivoでインスリンを生成する方法であって、前記方法が(a) 膵臓内胚葉細胞又は内分泌細胞又は内分泌プリカーサー細胞集団を植込み型半透過性デバイス内へローディングし、(b) 細胞集団を有するデバイスを哺乳類宿主内へ植え込み、そして(c)in vivoの前記デバイス内で細胞集団を成熟させ、内分泌細胞のうちの少なくともいくつかは、in vivoでグルコース刺激に反応してインスリンを生成するインスリン分泌細胞であり、これにより哺乳類のin vivoでインスリンを生成することを含む、方法を提供する。1つの態様では、内分泌細胞は、より高レベルの非内分泌多能性膵臓プロジェニター亜集団(CHGA-)を用いて、PECを含む細胞組成物から誘導される。別の態様では、内分泌細胞は、低減された内分泌亜集団(CHGA+)を用いて、PECを含む細胞組成物から誘導される。別の態様では、内分泌細胞は未熟内分泌細胞、好ましくは未熟ベータ細胞である。
【0285】
1つの態様では、多能性幹細胞からin vitroで形成された内分泌細胞は、PDX1-陽性膵臓内胚葉集団、又はPDX1/NKX6.1陽性である非内分泌(CHGA-)亜集団と比較してより多くのPDX1及びNKX6.1を発現させる。1つの態様では、多能性幹細胞からin vitroで形成された内分泌細胞は、PEC非内分泌多能膵臓プロジェニター亜集団(CHGA-)よりも比較的多くPDX1及びNKX6.1を発現させる。1つの態様では、骨形態形成タンパク質(BMP)及びレチノイン酸(RA)類似体を単独又は組み合わせで細胞培養物に添加することによって、内分泌細胞を得た。内分泌細胞は、PEC非内分泌多能性膵臓プロジェニター亜集団(CHGA-)と比較してPDX1及びNKX6.1の発現を増大させる。1つの態様では、BMPは、BMP2、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8及びBMP4を含む群から選択され、より好ましくはBMP4から選択される。1つの態様では、レチノイン酸は、オールトランスレチノイン酸、及びTTNPB(4-[(E)-2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-l-プロペニル]安息香酸アロチノイド酸)、又は0.1~10μMのAM-580(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルボキサミド]安息香酸)を含む群から選択され、より好ましくはTTNPBである。
【0286】
1実施態様は、in vitroの多能性幹細胞を内分泌細胞及び未熟内分泌細胞、好ましくは未熟ベータ細胞に分化するための方法であって、凝集体を解離及び再結合することを含む方法を提供する。1つの態様では、解離及び再結合はステージ1、ステージ2、ステージ3、ステージ4、ステージ5、ステージ6、又はステージ7、又はこれらの組み合わせで発生する。1つの態様では、胚体内胚葉、PDX1-陰性前腸内胚葉、PDX1-陽性前腸内胚葉、PEC、及び/又は内分泌及び内分泌プロジェニター/プリカーサー細胞は解離されそして再結合される。1つの態様では、ステージ7の解離・再結合された細胞凝集体は、内分泌(CHGA+)亜集団と比較して少ない非内分泌(CHGA-)亜集団から成る。1つの態様では、細胞集団中の細胞の10%超、好ましくは20%、30%、40%超、そしてより好ましくは50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%超、又は100%が内分泌(CHGA+)細胞である。
【0287】
1実施態様は、ステージ4のPEC生成中に形成された内分泌細胞を除去し、これによりPDX1+及びNKX6.1+である非内分泌多能性膵臓プロジェニター(CHGA-)亜集団を富化することによって、in vitroの多能性幹細胞を内分泌細胞に分化するための方法を提供する。
【0288】
1実施態様では、ステージ3及び/又はステージ4でノギンファミリーメンバーを添加しないことによって、非内分泌多能性プロジェニター亜集団(CHGA-)を富化されたPEC培養物を形成する。1実施態様では、ステージ3及び/又はステージ4でノギンファミリーメンバーを添加しないことによって、内分泌系列(CHGA+)に関わる細胞が比較的豊富なPEC培養物を形成する。1つの態様では、ノギンファミリーメンバーは、ノギン、コーディン、ホリスタチン、ホリスタチン様タンパク質、サーベラス、ココ(Coco)、ダン(Dan)、グレムリン、スクレロスチン、PRDC(ダン及びサーベラスに関連するタンパク質)を含む群から選択された化合物である。
【0289】
1実施態様は、外因性高レベルグルコースを含む培地内で内分泌細胞を培養することにより、培養物中に内分泌細胞を維持するための方法であって、添加される外因性グルコースが約1mM~25mM、約1mM~20mM、約5mM~15mM、約5mM~10mM、約5mM~8mMである、方法を提供する。1つの態様では、培地はDMEM、CMRL又はRPMIを基剤とする培地である。
【0290】
1実施態様は、細胞凝集体の解離及び再結合を伴って、そして伴わずにin vitroの多能性幹細胞を分化するための方法を提供する。1つの態様では、非解離の、又は解離・再結合済みの細胞凝集体をステージ6及び/又はステージ7において、内分泌細胞のin vivo機能に影響を及ぼすことなしに冷凍保存又は凍結する。1つの態様では冷凍保存された内分泌細胞培養物を解凍し、培養し、そして移植時にin vivoで機能する。
【0291】
別の実施態様は、多能性幹細胞を分化するための培養システムであって、培養システムが、早期の分化ステージ中に内分泌遺伝子発現を抑制又は阻害することができる物質と、後期分化ステージ中に内分泌遺伝子発現を誘発することができる物質とを少なくとも含む、培養システムを提供する。1つの態様では、内分泌遺伝子発現を抑制又は阻害することができる物質を、膵臓PDX1陰性前腸細胞から成る培養システムに添加する。1つの態様では、PDX1-陽性膵臓内胚葉プロジェニター又はPECから成る培養システムに、内分泌遺伝子発現を誘発することができる物質を添加する。1つの態様では、内分泌遺伝子発現を抑制又は阻害することができる物質が、TGFベータ受容体ファミリーを活性化する物質であり、好ましくはこれはアクチビンであり、好ましくはこれは高レベルのアクチビン、及びこれに続く低レベルのアクチビンである。1つの態様では、内分泌遺伝子発現を誘発することができる物質は、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル-L-アラニル)]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)、RO44929097、DAPT(N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル-L-アラニル)]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル)、1-(S)-エンド-N-(1,3,3)-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)-4-フルオロフェニルスルホンアミド、WPE-III31C、S-3-[N′-(3,5-ジフルオロフェニル-アルファ-ヒドロキシアセチル)-L-アラニリル]アミノ-2,3-ジヒドロ-1-メチル-5-フェニル-1H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン、(N)-[(S)-2-ヒドロキシ-3-メチル-ブチリル]-1-(L-アラニニル)-(S)-1-アミノ-3-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-3-ベンズアゼピン-2-オン、BMS-708163(アバガセスタット)、BMS-708163、セマガセスタット(LY450139)、セマガセスタット(LY450139)、MK-0752、MK-0752、YO-01027、YO-01027(ジベンズアゼピン、DBZ)、LY-411575、LY-411575、又はLY2811376から成る群から選択されたガンマセクレターゼ阻害物質である。1つの態様では、高レベルのアクチビンとは、40ng/mL、50ng/mL、及び75ng/mLを上回るレベルを意味する。1つの態様では、ステージ3中、又は膵臓前腸内胚葉細胞の生成前に高レベルのアクチビンを使用する。1つの態様では、低レベルのアクチビンとは、30ng/mL、20ng/mL、10ng/mL、及び5ng/mLを下回ることを意味する。1つの態様では、ステージ4中、又はPEC生成のために、低レベルのアクチビンが使用される。1つの態様では、阻害又は誘発される内分泌遺伝子はNGN3である。別の態様では、アクチビンA及びWnt3Aを単独又は組み合わせで使用して内分泌発現を阻害し、好ましくは、膵臓前腸内胚葉細胞の生成前に、又は好ましくはステージ3中にNGN3発現を阻害する。1つの態様では、ガンマセクレターゼ阻害剤、好ましくはRO44929097又はDAPTを培養システム中に使用して、PEC生成後に、又は好ましくはステージ5,6,及び/又は7中に内分泌遺伝子発現を誘発する。
【0292】
内分泌細胞を含むin vitro細胞培養物であって、前記ヒト細胞の少なくとも5%が、インスリン(INS)、NK6ホメオボックス1(NKX6.1)、膵臓及び十二指腸ホメオボックス1(PDX1)、転写因子関連遺伝子座2(NKX2.2)、ペアードボックス4(PAX4)、神経原性分化1(NEUROD)、フォークヘッドボックスA1(FOXA1)、フォークヘッドボックスA2(FOXA2)、スネイルファミリー亜鉛フィンガー2(SNAIL2)、及び筋腱膜繊維肉腫癌遺伝子ファミリーA及びB(MAFA及びMAFB)から成る群から選択された内分泌マーカーを発現させ、そしてニューロジェニン(neurogenin)3(NGN3)、アイレット(islet)1(ISL1)、肝細胞核因子6(HNF6)、GATA結合タンパク質4(GATA4)、GATA結合タンパク質6(GATA6)、膵臓特異的転写因子1a(PTF1A)及びSRY(性決定領域Y)-9(SOX9)から成る群から選択されたマーカーを実質的に発現させることがなく、前記内分泌細胞が単能性であり、膵臓ベータ細胞に成熟することができる、in vitro細胞培養物。
【0293】
機能的反応を評価するためのin vivoヌードラット研究
Martinson他の米国特許第8,278,106号明細書の教示内容に記載されているように、約6~7x106(又は約20μL)の膵臓プロジェニター細胞を、カプセル化デバイスにex vivoでローディングした。24~96時間未満にわたって培地内に保持した後、2つのデバイスをそれぞれの雄性免疫不全無胸腺ヌードラット内に皮下植え込みした。膵臓プロジェニター細胞をin vivoで発育させ成長させておき、植え込みから12,16,20及び23~24週後に、グルコース刺激型インスリン分泌(GSIS)アッセイを実施することにより、グラフトの機能的性能を測定した。
【0294】
C-ペプチド分泌のGSISアッセイ及び測定
カプセル化された膵臓プロジェニター細胞を植え込まれた動物に、デバイス植え込みから12、16、20及び23-24週後に、グルコース刺激インスリン分泌アッセイを施すことにより、グラフト機能をモニタリングした。動物を4~16時間にわたって絶食させ、そして滅菌30%グルコース溶液の腹腔内注射を介して体重1kg当たり3gの投与量でグルコースを投与する前に、頸静脈穿刺を介して血液試料を採取した。グルコース投与から90、又は60及び90、又は30及び60分後に血液を再び採取した。全血から血清を分離し、次いで商業的に入手可能なELISAキット(Mercodia, カタログ#10-1141-01, スウェーデン国Uppsal)を使用して、ヒトc-ペプチドに関してアッセイした。ベータ細胞はプロインスリンから等モル比でc-ペプチドをインスリンと一緒に同時放出し、c-ペプチドは、そのより長い血中半減期に基づきインスリン分泌の代理として測定される。
【0295】
ヌードラット外植組織構造
植え込み後の指示された時点で、ヌードラットを安楽死させ、そしてデバイスを外植した。余剰の組織をトリミングして除去し、そしてデバイスを中性緩衝10%ホルマリン中に約6~30時間にわたって入れた。固定されたデバイスをLeica Biosystems ASP300Sティッシュプロセッサー内でパラフィン包埋のために処理した。処理されたデバイスをカットしてそれぞれほぼ5mmの4~6片にし、パラフィンブロック内に一緒に包埋した。各ブロックから複数の3~10ミクロンの断面を切断し、スライド上に置き、そしてヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。Hamamatsu Nanozoomer 2.0-HT デジタルスライドスキャナーを使用して、スライドの画像を捕捉した。
【実施例0296】
比較例1
生体適合性メンブレン複合体の製造
ただ1つのメンブレン層(すなわち複合体でない)を使用して、デバイスを組み立てることにより、開放-緻密生体適合性メンブレン複合体の不在におけるベースライン性能を提供した。単一メンブレンは細胞不透過性層としてだけ役立ち、Millipore (アイルランド国Cork)の商品名Biopore(登録商標)で販売されているMPS0.4ミクロンの、商業的に入手可能な微細孔質の親水性ePTFEメンブレンであった。この単一層は、緻密な細胞不透過性界面を提供する一方、酸素及び栄養素のこの層を通した物質輸送を未だに可能にする。細胞不透過性層を形成するePTFEメンブレンの表面の代表的な走査電子顕微鏡写真(SEM)が
図14に示されている。
【0297】
この単一メンブレン層を関連パラメータに関して評価し特徴付けた。層のパラメータは、これらが層の特異的な機能に関連しない場合には、「N/A」と記す。層のパラメータは、複合体の層を処理した方法の結果としてパラメータを実際には得ることができない場合には「-」と記す。関連パラメータの特徴付けのために用いられる方法は、上記「方法」と題する項に記載された方法にしたがって実施した。比較例1の結果は表2に要約されている。
【表2】
【0298】
単一ePTFEメンブレン性能の評価
上記「試験法」の項に記載されたデバイス形態への生体適合性メンブレン複合体の一体化にしたがって、単一メンブレン層を超音波溶着することによりデバイス形態にし、in vivoで評価した。
【0299】
上記「試験法」の項に記載されたin vivoブタ研究に従って、宿主組織反応を評価した。デバイス界面における宿主組織反応は、宿主組織が細胞不透過性ePTFE緻密層まで貫通することを実証した。この界面では、ePTFE層に異物巨細胞の近接線が観察され、これは新血管形成のためのバリアを形成する。
図37に示された組織画像は、細胞不透過性層3720上の矢印3710によって示される異物巨細胞である。
【0300】
上記「試験法」の項に記載されたin vivoヌードラット研究に従って、機能的反応をin vivoで評価した。結果は表3に示されている。低いC-ペプチドレベルは、デバイス内に存在するインスリン生成細胞のレベルが低いことを示している。
【表3】
【0301】
比較例2
生体適合性メンブレン複合体の製造
区別可能な2つの層を有する複合体を組み立てた。第1層(細胞不透過性層)は、Millipore (アイルランド国Cork)の商品名Biopore(登録商標)で販売されているMPS0.4μmの、商業的に入手可能な微細孔質の親水性ePTFEメンブレンであった。この第1層は、緻密な細胞不透過性界面を提供する一方、酸素及び栄養素の第1層を通した質量輸送を未だに可能にする。細胞不透過性層を形成するePTFEメンブレンの表面の代表的な走査電子顕微鏡写真(SEM)が
図14に示されている。
【0302】
第2層(緩和層)は商業的に入手可能なスパンボンドポリエステル不織布材料であった。血管新生層を形成する不織布材料の表面の代表的な画像は
図15に示されている。
【0303】
加熱積層プロセスを用いて、2つの層(細胞不透過性層及び緩和層)を集成して複合体にした。不織布材料の繊維を、これらの溶融温度よりも高い温度まで加熱するので、繊維はePTFEメンブレンの表面全体にわたってePTFEメンブレンに付着した。この場所ではスパンボンド不織布の繊維がePTFEメンブレンの表面と接触した。1.60m Galaxy平床ラミネータを使用し、ePTFE及び不織布材料を、温度167.2℃~169.4℃、加えられるニップ圧344.7kPa、及び速度1.22メートル/分で処理した。加えて、1.88m HPL 74HC平床ラミネータを用いて同様の結果が得られることが実証された。ePTFE及び不織布材料は、温度156.1℃~158.3℃、加えられるニップ圧34.5kPa、及び速度2.44メートル/分で処理した。
【0304】
生体適合性メンブレン複合体の特徴付け
二層型複合体の各層を、各層の機能に必要な関連パラメータに関して評価し特徴付けた。層のパラメータは、これらが層の特異的な機能に関連しない場合には、「N/A」と記す。層のパラメータは、複合体の層を処理した方法の結果としてパラメータを実際には得ることができない場合には「-」と記す。関連パラメータの特徴付けのために用いられる方法は、上記「試験法」の項に記載された方法にしたがって実施した。比較例2の結果は表4に要約されている。
【表4】
【0305】
複合メンブレン性能の評価
上記「試験法」の項に記載されたデバイス形態への生体適合性メンブレン複合体の一体化にしたがって、生体適合性メンブレン複合体を超音波溶着することによりデバイス形態にし、in vivoで評価した。
【0306】
上記「試験法」の項に記載されたin vivoブタ研究に従って、宿主組織反応を評価した。デバイス界面における宿主組織反応は、宿主組織がすべてのデバイス層を通って細胞不透過性ePTFE緻密層まで貫通することを実証した。この界面では、ePTFE層に異物巨細胞の近接線が観察され、これは新血管形成のためのバリアを形成する。
図16に示された組織画像は、細胞不透過性層1620上の矢印1610によって示される異物巨細胞である。
【0307】
上記「試験法」の項に記載されたin vivoヌードラット研究に従って、機能的反応をin vivoで評価した。結果は表3に示されている。低いC-ペプチドレベルは、デバイス内に存在するインスリン生成細胞のレベルが低いことを示している。
【0308】
比較例3
生体適合性メンブレン複合体の製造
互いに区別可能な2つの層を用いて複合体を組み立てた。Gore の米国特許第3,953,566号明細書の教示内容にしたがって、ePTFEメンブレンから成る第1層(細胞不透過性層)を形成した。
【0309】
Branca他の米国特許第5,814,405号明細書の教示内容にしたがって、第2ePTFEメンブレン(緩和層)を調製した。初期機械方向(MD)延伸工程中、第2ePTFEメンブレンにフッ素化エチレンプロピレンフィルム(FEP)を被着した。続いて、第2ePTFEメンブレン及びFEPを機械方向(MD)延伸及び横方向(TD)延伸を通して同時処理することによって、FEPは、Bacinoの国際公開第94/13469号パンフレットに教示されているように、第2ePTFEメンブレンの表面上で不連続となった。
図17は、FEP1710の不連続層を有する第2ePTFE層1700の代表的な画像である。
【0310】
FEPの融点を上回る温度で材料を(FEPが2つの層の間に位置決めされた状態で)接触させることにより、不連続FEPを含む第2ePTFE層を、第1層に貼り合わせた。両ePTFE層を緊張下で保持することにより、この積層プロセス中の意図せぬ変形を防止した。続いて複合体を、米国特許第5,902,745号明細書の教示内容により親水性にした。
図18に示されたSEM画像は、第1ePTFE層(細胞不透過性層)のノード・フィブリル構造を示す代表的な画像である。
図19に示されたSEM画像は、第2ePTFE層(緩和層)のノード・フィブリル構造を示す代表的な画像である。
図20は、第1ePTFE層2010(細胞不透過性層)と第2ePTFE層2020(緩和層)とを含む二層型生体適合性メンブレン複合体2000の断面構造の代表的な画像を示すSEM画像である。
【0311】
生体適合性メンブレン複合体の特徴付け
二層型複合体のそれぞれの層を、各層の機能に必要な関連パラメータに関して評価し特徴付けた。層のパラメータは、これらが層の特異的な機能に関連しない場合には、「N/A」と記す。層のパラメータは、複合体の層を処理した方法の結果としてパラメータを実際には得ることができない場合には「-」と記す。関連パラメータの特徴付けのために用いられる方法は、上記「試験法」の項に記載された方法にしたがって実施した。比較例3の結果は表5に要約されている。
【表5】
【0312】
複合メンブレン性能の評価
上記「試験法」の項に記載されたデバイス形態への生体適合性メンブレン複合体の一体化にしたがって、生体適合性メンブレン複合体を熱溶着することによりデバイス形態にし、in vivoで評価した。
【0313】
上記「試験法」の項に記載されたin vivoブタ研究に従って、宿主組織反応を評価した。デバイス界面における宿主組織反応は、宿主組織がすべてのデバイス層を通って細胞不透過性ePTFE緻密層まで貫通することを実証した。この界面では、細胞不透過性層に異物巨細胞の近接線をまだ見ることができ、これは比較例1及び2に見られるような新血管形成のためのバリアを形成する。
図21は、異物巨細胞(矢印2100によって示されている)が細胞不透過性層2220に当接していることを観察する代表的な組織画像である。管腔2120、緩和層2130、及び外側補強構成部分2140も
図21に示されている。
【0314】
上記「試験法」の項に記載されたin vivoヌードラット研究に従って、機能的反応をin vivoで評価した。結果は表3に示されている。細胞をローディングされたデバイスの機能的反応は表3に示されている。低いC-ペプチドレベルは、デバイス内に存在するインスリン生成細胞のレベルが低いことを示している。
【0315】
実施例1
生体適合性メンブレン複合体の製造
互いに区別可能な2つの層を有する生体適合性メンブレン複合体を組み立てた。Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示内容にしたがって、第1ePTFE層(細胞不透過性層)を形成した。
【0316】
Branca 他の米国特許第5,814,405号明細書の教示内容に従って、第2ePTFEメンブレン(緩和層)を調製した。初期機械方向(MD)延伸工程中、第2ePTFEメンブレンにフッ素化エチレンプロピレンフィルム(FEP)を被着した。続いて、第2ePTFEメンブレン及びFEPを機械方向(MD)延伸及び横方向(TD)延伸を通して同時処理することによって、FEPは、Bacinoの国際公開第94/13469号パンフレットに教示されているように、第2ePTFEメンブレンの表面上で不連続となった。
図22に示されたSEM画像は、FEP2210の不連続層を有する第2ePTFEメンブレン表面2200の代表的な画像である。
【0317】
FEPの融点を上回る温度で材料を(FEPが2つのePTFEメンブレンの間に位置決めされた状態で)接触させることにより、不連続FEP層を含む第2ePTFE層を、第1ePTFE層に貼り合わせた。2つのePTFE層を積層中、横方向において拘束されないままにした。次いで積層物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点を上回る温度で横方向に延伸することにより、積層によってネッキングが維持される前に各ePTFE層がその幅に戻されるようにした。続いて複合体を、Butler他の米国特許第5,902,745号明細書の教示内容により親水性にした。
図18に示されたSEM画像は、第1ePTFEメンブレン(細胞不透過性層)のノード・フィルビル構造の代表的な画像である。
図23に示されたSEM画像は、第2ePTFEメンブレン(緩和層)のノード・フィルビル構造の代表的な画像である。
図24に示されたSEM画像は、二層型複合体2400(すなわち第1ePTFEメンブレン2410(細胞不透過性層)及び第2ePTFEメンブレン2420(緩和層))の断面構造の代表的な画像である。
【0318】
生体適合性メンブレン複合体の特徴付け
二層型複合体の各層を、各層の機能に必要な関連パラメータに関して評価し特徴付けた。層のパラメータは、これらが層の特異的な機能に関連しない場合には、「N/A」と記す。層のパラメータは、複合体の層を処理した方法の結果としてパラメータを実際には得ることができない場合には「-」と記す。関連パラメータの特徴付けのために用いられる方法は、上記「試験法」の項に記載された方法にしたがって実施した。実施例1の結果は表6に要約されている。
【表6】
【0319】
複合メンブレン性能の評価
上記「試験法」の項に記載された、生体適合性メンブレン複合体のデバイス形態への一体化に従って、生体適合性メンブレン複合体を熱溶着してデバイス形態にし、in vivoで評価した。
【0320】
上記「試験法」の項に記載されたin vivoブタ研究に従って、宿主組織反応を評価した。デバイス界面における宿主組織反応は、宿主組織がポリエステル製織メッシュ補強構成部分、及び開放ePTFE緩和層を通って緻密ePTFE細胞不透過性層まで貫通することを実証した。異物巨細胞がポリエステル製織メッシュ(補強構成部分)内部に存在する一方、比較例1~3において観察されたものと比較して、緻密ePTFE層(細胞不透過性層)を覆う異物巨細胞が観察された証拠はなかった。
図38に示された組織画像は、この観察の代表的な画像である。矢印3810が、生体適合性メンブレン複合体3800内部の各層に対する異物巨細胞の位置を示している。加えて、
図38に示されているように、異物巨細胞は、細胞不透過性層3820の表面上に層を形成しなかった。この実施例に記載された細胞不透過性層3820及び緩和層3830から形成された生体適合性メンブレン複合体3830は、異物巨細胞が細胞不透過性層3820の表面に形成されるのを低減すると結論付けられた。管腔3840及び外側補強構成部分3840も
図38に示されている。
【0321】
上記「試験法」の項に記載されたin vivoヌードラット研究にしたがって、機能的反応をin vivoで評価した。結果は表3に示されている。結果は比較例と比較して機能的反応の段階的変化を実証した。これはインスリン生成細胞の生存能力の顕著な増大を示した。植え込みから12週間後に、グルコース刺激型インスリン分泌に反応して測定されたC-ペプチド血清濃度は、平均して394pMであった。これは、緩和層が存在しない比較例1の4.9倍、そして比較例2の8.2倍である。機能的反応度のこのような増大を達成するために、緩和層は、細胞不透過性界面における異物巨細胞の形成をうまく緩和し得ると、結論付けられた。
【0322】
実施例2
生体適合性メンブレン複合体の製造
互いに区別可能な2つの層を有する生体適合性メンブレン複合体を組み立てた。Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示内容にしたがって、PTFEメンブレンから成る第1層(細胞不透過性層)が形成された。
【0323】
Branca他の米国特許第5,814,405号明細書の教示内容にしたがって、第2ePTFEメンブレン(FBGC緩和層)を調製した。初期機械方向(MD)延伸工程中、第2ePTFEメンブレンにフッ素化エチレンプロピレン(FEP)フィルムを被着した。続いて、第2ePTFEメンブレン及びFEPを機械方向(MD)延伸及び横方向(TD)延伸を通して同時処理することによって、FEPは、Bacinoの国際公開第94/13469号パンフレットに教示されているように、第2ePTFEメンブレンの表面上で不連続となった。
図25に示されたSEM画像は、不連続層FEP2510を有する表面又は第2ePTFE層2500の代表的な画像である。
【0324】
FEPの融点を上回る温度で2つのePTFEメンブレン材料を(FEPが2つのePTFEメンブレンの間に位置決めされた状態で)接触させることにより、不連続FEPを含む第2ePTFE層を、第1ePTFE層に貼り合わせた。両ePTFE層を緊張下で保持することにより、この積層プロセス中の意図せぬ変形を防止した。続いて積層体を、Butler他の米国特許第5,902,745号明細書の教示内容により親水性にした。
図18に示されたSEM画像は、第1ePTFE層(細胞不透過性層)のノード・フィブリル構造を示す代表的な画像である。
図26に示されたSEM画像は、第2ePTFE層(緩和層)のノード・フィブリル構造を示す代表的な画像である。
図27に示されたSEM画像は、第1ePTFEメンブレン2710(細胞不透過性メンブレン)と第2ePTFEメンブレン2720(緩和層)とを有する二層型ePTFE積層体2700の断面構造の代表的な画像である。
【0325】
生体適合性メンブレン複合体の特徴付け
二層型複合体の各層を、各層の機能に必要な関連パラメータに関して評価し特徴付けた。層のパラメータは、これらが層の特異的な機能に関連しない場合には、「N/A」と記す。層のパラメータは、複合体の層を処理した方法の結果としてパラメータを実際には得ることができない場合には「-」と記す。関連パラメータのこの特徴付けのために用いられる方法は、上記「試験法」の項に記載された方法にしたがって実施した。実施例2の結果は表7に要約されている。
【表7】
【0326】
複合メンブレン性能の評価
上記「試験法」の項に記載された、生体適合性メンブレン複合体のデバイス形態への一体化に従って、生体適合性メンブレン複合体を熱溶着してデバイス形態にし、in vivoで評価した。
【0327】
上記「方法」の項に記載されたin vivoブタ研究において、デバイスを宿主組織反応に関してin vivoで評価した。デバイス界面における宿主組織反応は、宿主組織がポリエステル製織メッシュ補強構成部分、及び開放ePTFE緩和層を通って緻密ePTFE細胞不透過性層まで貫通することを実証した。異物巨細胞がポリエステル製織メッシュ(補強構成部分)内部に存在する一方、比較例1~3において観察されたものと比較して、緻密ePTFE層(細胞不透過性層)を覆う異物巨細胞が観察された証拠はなかった。
図28に示された組織画像は、この観察の代表的な画像である。矢印2810が、生体適合性メンブレン複合体2800内部の各層に対する異物巨細胞の位置を示している。加えて、
図28に示されているように、異物巨細胞は、細胞不透過性層2820の表面上に層を形成しなかった。この実施例に記載された細胞不透過性層2820、及び緩和層2830から形成された生体適合性メンブレン複合体2800は、異物巨細胞が細胞不透過性層2820の表面に形成されるのを低減すると結論付けられた。管腔2840及び外側補強構成部分2850も
図28に示されている。加えて、細胞不透過性メンブレンの厚さ及び質量が小さくても、管腔を破壊する宿主細胞が観察されなかったため、引張強度は管腔の完全性を維持するのに十分であることが観察された。
【0328】
実施例3
生体適合性メンブレン複合体の製造
互いに区別可能な2つの層を有する生体適合性メンブレン複合体を組み立てた。先ず、Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示内容にしたがって調製された、乾燥した2軸延伸型メンブレンから成る第1ePTFE層(細胞不透過性層)と、Goreの米国特許第3,953,566号明細書の教示内容にしたがって調製されたペースト押出型のカレンダー処理されたテープから成る第2ePTFE層(緩和層)とを層形成し、次いで同時延伸することにより、二層型ePTFE複合体を調製した。二層型ePTFE複合体を、Butler他の米国特許第5,902,745号明細書の教示内容により二軸延伸し、次いで親水性にした。第1層の表面マイクロ構造が
図29のSEM画像に示されている。第2ePTFEメンブレンの代表的な表面マイクロ構造が
図30に示されている。第1ePTFEメンブレン3110(細胞不透過性層)と第2ePTFEメンブレン3120(緩和層)とを含む複合体3100のマイクロ構造を示す代表的な断面が、
図31のSEM画像に示されている。
【0329】
生体適合性メンブレン複合体の特徴付け
二層型複合体の各層を、各層の機能に必要な関連パラメータに関して評価し特徴付けた。層のパラメータは、これらが層の特異的な機能に関連しない場合には、「N/A」と記す。層のパラメータは、複合体の層を処理した方法の結果としてパラメータを実際には得ることができない場合には「-」と記す。関連パラメータのこの特徴付けのために用いられる方法は、上記「試験法」の項に記載された方法にしたがって実施した。実施例3の結果は表8に要約されている。
【表8】
【0330】
複合メンブレン性能の評価
上記「試験法」の項に記載された、生体適合性メンブレン複合体のデバイス形態への一体化に従って、生体適合性メンブレン複合体を熱溶着してデバイス形態にし、in vivoで評価した。
【0331】
上記「方法」の項に記載されたin vivoブタ研究において、デバイスを宿主組織反応に関してin vivoで評価した。デバイス界面における宿主組織反応は、宿主組織がポリエステル製織メッシュ補強構成部分、及び開放ePTFE緩和層を通って緻密ePTFE細胞不透過性層まで貫通することを実証した。異物巨細胞がポリエステル製織メッシュ(補強構成部分)内部に存在する一方、比較例1~3において観察されたものと比較して、緻密ePTFE層(細胞不透過性層)を覆う異物巨細胞が観察された証拠は限られていた。
図32に示された組織画像は、この観察の代表的な画像である。矢印3210が、生体適合性メンブレン複合体3200の各層に対する異物巨細胞の位置を示している。加えて、
図32に示されているように、異物巨細胞は、細胞不透過性層3220の表面を覆わなかった。この実施例に記載された細胞不透過性層3220、及び緩和層3230から形成された生体適合性メンブレン複合体3200は、異物巨細胞が細胞不透過性層3220の表面に形成されるのを低減すると結論付けられた。管腔3240及び外側補強構成部分3250も
図32に示されている。加えて、細胞不透過性メンブレンの厚さ及び質量が小さくても、管腔を破壊する宿主細胞が観察されなかったため、引張強度は管腔の完全性を維持するのに十分であることが観察された。
【0332】
実施例4
実施例1に記載された生体適合性メンブレン複合体を使用し、そしてこれを別のデバイス形態に一体化した。この別のデバイス形態は、偏平デバイスが(
図33に示された)内側補強構成部分に基づいている点で、前述のデバイス(すなわち実施例1~3のデバイス)とは異なる。この補強構成部分は、最終デバイス形態(例えば偏平デバイス)において、生体適合性メンブレン複合体の細胞不透過性層に隣接して配置されている。内側補強構成部分は、偏平デバイスの管腔内部(例えば内骨格)に配置されている。内側補強構成部分3000は、偏平挿入体3310と、内側補強構成部分3300の両側にアクセスするための貫流孔3340を備えた一体化充填チューブ3320とを含む。
【0333】
偏平デバイス3400は全体的に
図34に(分解図で)示されている。
図34に示されているように、偏平デバイス3400は、第1生体適合性メンブレン複合体3410と、第2生体適合性メンブレン複合体3440と、内側補強構成部分3435とを含む。内側補強構成部分3435は、偏平挿入体3420と、生体適合性メンブレン3410,3440が一体化されて最終デバイス形状になったときに内側補強構成部分3435の両側に形成された二重内部管腔(図示せず)にアクセスするための貫流孔3460を備えた一体化充填チューブ3430とを含む。
【0334】
TFE、HFP及びVDFのフルオロ熱可塑性ターポリマーシートを型キャビティ内に入れ、そしてポリマーの軟化温度を上回る温度に設定された、加熱されたプレス(Wabash C30H-15-CPX)内で圧縮してこれが最終寸法及び形状に一致するようにすることにより、内側補強構成部分を組み立てた。結果として生じた内側補強構成部分は厚さがほぼ270ミクロンであり、三点曲げ剛性が0.7Nであった。
【0335】
生体適合性メンブレン複合体の2つの層をカットすることによりほぼ1”x2”(2.54cm X 5.08cm)にし、そして細胞不透過性層が内向きに管腔及び内側補強構成部分へ向いた状態で、内側補強構成部分(偏平挿入体)の両側に配列した。生体適合性メンブレン複合体3410と内側補強構成部分3435と別の生体適合性メンブレン複合体3440とを積み重ねた後、内側補強構成部分を巡って周辺シールを形成した。
【0336】
図35に示された偏平デバイス3500を作成するために、周縁部3510に沿ってスタックを15PSIで圧縮し、そして充填チューブ内に鋼マンドレルを入れてこの領域内の溶着を防止しながら、両側からインパルス熱バンドを使用して同時に加熱することにより、溶着部を形成した。内側補強構成部分の熱可塑性物質がそれぞれの複合メンブレン内へ結合部を形成するのに十分なほどに軟化するように温度及び圧力を加えた。各側の12個所で少なくとも1.45mmの間隔を置いた、直径がほぼ1mmの内部点結合部3520を形成するように設定されたサーマルヘッドで軽い手動の圧力を加えることにより各メンブレン複合体表面に内側補強構成部分の内部点を結合した。内圧5psiでイソプロピルアルコール中に沈めたときに気泡流として視覚的に検出される漏れの存在を試験することによって、溶着部の完全性を適合性に関して評価した。偏平デバイス3600の内側補強成分3610及び内部管腔3630の内部ジオメトリが
図36A及び36Bに断面図によって示されている。
図36Aは、A-A線に沿った偏平デバイス3500の断面を示しており、単一の点結合部3620と管腔3630とを示している。
図36Bは、B-B線に沿った偏平デバイス3500の断面画像であり、2つの点結合部3620と管腔3630とを示している。
図34に示された完成済みの偏平デバイスに低粘度のシラスティックを充填することにより、
図36A及び36Bに示された内部補強構成部分3610のより良好な可視化及び画像形成を可能にする。
【0337】
上記「試験法」の項に記載されたヌードラット外植組織構造に従って、細胞をローディングされた偏平デバイス3500の機能的性能を評価した。偏平デバイス3500の断面の代表的な組織画像が
図40に示されている。組織画像の評価から、開放緩和層及び内側補強構成部分の存在において、生存細胞4010が細胞カプセル化デバイス管腔の管腔内に存在することが突き止められた。
【0338】
実施例5
生体適合性メンブレン複合体の製造
互いに区別可能な2つの層を用いて複合体を組み立てた。Gore の米国特許第3,953,566号明細書の教示内容にしたがって、第1ePTFEメンブレン(細胞不透過性層)を形成した。
【0339】
Branca他の米国特許第5,814,405号明細書の教示内容にしたがって、第2ePTFEメンブレン(緩和層)を調製した。初期機械方向(MD)延伸工程中、第2ePTFEメンブレンにフッ素化エチレンプロピレンフィルム(FEP)を被着した。続いて、第2ePTFEメンブレン及びFEPを機械方向(MD)延伸及び横方向(TD)延伸を通して同時処理することによって、FEPは、Bacinoの国際公開第94/13469号パンフレットに教示されているように、第2ePTFEメンブレン上で不連続となった。
【0340】
層を横方向に拘束しながら、FEPの融点を上回る温度で材料を(FEPが2つのePTFEメンブレンの間に位置決めされた状態で)接触させることにより、不連続FEP層を含む第2ePTFE層を、第1ePTFE層に貼り合わせた。続いて複合体を、Butler他の米国特許第5,902,745号明細書の教示内容により親水性にした。
図40に示されたSEM画像は、不連続FEP層を上に有する第2ePTFEメンブレン表面の代表的な画像である。
図18に示されたSEM画像は、第1ePTFEメンブレン(細胞不透過性層)のノード・フィブリル構造の代表的な画像である。
図41に示されたSEM画像は、第2ePTFEメンブレン(緩和層)のノード・フィブリル構造の代表的な画像である。
図42に示されたSEM画像は、第1ePTFEメンブレン4020(細胞不透過性層)と第2ePTFEメンブレン4040(緩和層)とを含む二層型複合体の断面構造の代表的な画像である。
【0341】
生体適合性メンブレン複合体の特徴付け
二層型複合体の各層を、各層の機能に必要な関連パラメータに関して評価し特徴付けた。層のパラメータは、これらが層の特異的な機能に関連しない場合には、「N/A」と記す。層のパラメータは、複合体の層を処理した方法の結果としてパラメータを実際には得ることができない場合には「-」と記す。関連パラメータの特徴付けのために用いられる方法は、上記「試験法」の項に記載された方法にしたがって実施した。実施例5の結果は表9に要約されている。
【表9】
【0342】
複合メンブレン性能の評価
上記「試験法」の項に記載された、生体適合性メンブレン複合体のデバイス形態への一体化に従って、生体適合性メンブレン複合体を熱溶着してデバイス形態にした。
【0343】
上記「方法」の項に記載されたin vivoブタ研究にしたがって、デバイスを宿主組織反応に関して評価した。デバイス界面における宿主組織反応は、宿主組織がポリエステル製織メッシュ補強構成部分、及び開放ePTFE緩和層を通って緻密ePTFE細胞不透過性層まで貫通することを実証した。異物巨細胞がポリエステル製織メッシュ(外側補強構成部分)内部に存在する一方、比較例1~3において観察されたものと比較して、緻密ePTFE層(細胞不透過性層)を覆う異物巨細胞が観察された証拠は限られていた。
図39に示された組織画像は、この観察の代表的な画像である。矢印3910が、生体適合性メンブレン複合体3900の各層に対する異物巨細胞の位置を示している。加えて、
図39に示されているように、異物巨細胞は、細胞不透過性層3920の表面を覆わなかった。この実施例に記載された細胞不透過性層3920、及び緩和層3930から形成された生体適合性メンブレン複合体3900は、異物巨細胞が細胞不透過性層3920の表面に形成されるのを低減すると結論付けられた。管腔3940及び外側補強構成部分3950も
図39に示されている。
【0344】
本出願の発明を全般的に、そして特定の実施態様に関して説明してきた。当業者に明らかなように、開示の範囲を逸脱することなしに、種々の改変及び変更を実施態様において加えることができる。したがって、実施態様は本発明の改変形及び変更形を、これらが添付の請求項及びこれと同等のものの範囲に含まれる限りカバーするものとする。