(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052776
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
G06T 11/20 20060101AFI20240405BHJP
G06F 16/904 20190101ALI20240405BHJP
G06Q 50/18 20120101ALI20240405BHJP
【FI】
G06T11/20 600
G06F16/904
G06Q50/18 310
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020505
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2020187898の分割
【原出願日】2019-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2018248975
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519023112
【氏名又は名称】工藤 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 浩
(57)【要約】
【課題】特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係や関連性を表現することができる特許戦略チャートの図示方法を提供する。
【解決手段】実施態様を点又は点に近似しうる任意の図形等で、特許請求の範囲を略扇形で表現する。ある特許の特許権者とある実施態様の実施者が同一である場合、特許請求の範囲を表す略扇形の中心角が当該実施態様を表す点等に重なるか、近い位置に配置する。ここで、略扇形が複数になるときは、放射状に配置する。一方、実施者が第三者の場合、実施態様が特許請求の範囲に包含されるときは、実施態様を表す点等を特許請求の範囲を表す略扇形の内部に位置する様に配置し、包含されないときは、実施態様を表す点等を特許請求の範囲を表す略扇形の外部に位置する様に配置する。このとき、相違点が少なければ第1表示を第2表示と近い距離に、相違点が多ければ第1表示を第2表示から遠い距離に配置する。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特許戦略チャートの図示方法であって、
a)実施態様を示す第1表示及び特許請求の範囲を示す第2表示をグループ化したグループ表示を生成するグループ表示生成ステップと、
b)任意の指標を座標とする二次元平面表示を生成する二次元平面表示生成ステップと、
c)前記実施態様に関連する製品情報を反映させて、前記グループ表示を前記二次元平面表示の上に配置して表示するグループ表示配置ステップと、を含み、
前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、
前記第2表示は、略扇形であり、
前記特許戦略チャートは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示すものであることを特徴とする特許戦略チャートの図示方法。
【請求項2】
d)前記二次元平面表示の上に前記実施態様に関する周辺状況を表す第3表示を表示する周辺状況表示ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の特許戦略チャートの図示方法。
【請求項3】
特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示す特許戦略チャートであって、
実施態様を示す第1表示と、
特許請求の範囲を示す第2表示と、
任意の指標を座標とする二次元平面を備え、
前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、
前記第2表示は、略扇形であることを特徴とする特許戦略チャート。
【請求項4】
実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面と、を備える特許戦略チャートの生成方法であって、
a)前記第1表示及び前記第2表示をグループ化したグループ表示を生成するグループ表示生成ステップと、
b)前記二次元平面を生成する二次元平面表示生成ステップと、
c)前記実施態様に関連する製品情報を反映させて、前記グループ表示を前記二次元平面の上に配置して表示するグループ表示配置ステップと、を含み、
前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、
前記第2表示は、略扇形であり、
前記特許戦略チャートは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示すものであることを特徴とする特許戦略チャートの生成方法。
【請求項5】
複数の実施者の製品関連情報と、複数の特許権者及び特許出願人の特許関連情報の管理システムであって、
実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面と、を備える電子的手段により表示した特許戦略チャートにおいて、
前記第1表示を他のアプリケーションに格納された、メーカー、原材料、成分構成及び構造からなる群から選ばれる1又は2以上に関する情報を含む製品関連情報とリンクし、
前記第2表示を他のアプリケーションに格納された、出願情報、経過情報、登録情報又は公報情報を含む特許関連情報とリンクし、
さらに前記製品関連情報及び前記特許関連情報を処理するデータベースを備え、
前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であることを特徴とする管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を図形等により図示する技術に関し、特許請求の範囲と実施態様の関係を俯瞰して視覚的に表現する方法、当該方法を支援するシステム、当該方法によって作成されるチャート、当該チャートの生成方法、当該チャートを利用した製品関連情報及び特許関連情報の管理システム、複数のチャートを連続的にアニメーション映像として表示するためのコンピュータープログラム及び特許戦略チャートの部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研究開発企業や研究機関等にとって、技術開発にあたり、事業に関連する技術の動向や競合企業を把握することは非常に重要な懸案事項である。その解決手段として、特許情報データベースに蓄積された情報を一定の条件を設定して検索し、集合化された特許情報の傾向を分析して数量的に把握することが、従来行われてきた。特に、番号情報、出願日等の日付情報、並びに出願人・特許権者等の各種情報と、技術内容に関する分類コードやテキスト内のキーワードから得られる定型化された技術情報を関連付け、状況を把握する手段としてパテントマップ又は特許マップと呼ばれる多種多様な図表が提案されてきた。
【0003】
パテントマップ等を作成する方法に関しては、基本的な作成方法の解説書(非特許文献1)が刊行されるとともに、パテントマップを作成するコンピューターソフトウェアも市販され、既に普及している。また、例えば、分類記号ごとの分析を簡単に行うことができるデータ表示装置(特許文献1)、作成の労力を軽減する分析方法(特許文献2)など、新たな装置や方法の発明が開示され、高度化が図られている。さらに、近年は「IPランドスケープ」という用語が浸透し、パテントマップ等の特許情報と市場情報、企業情報などとを組み合わせた解析結果を概観し、M&Aなど経営戦略や事業戦略の立案・策定に積極的に活用する風潮が高まりつつある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-090535号公報
【特許文献2】特開2015-018529号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「経営戦略の三位一体を実現するための特許情報分析とパテントマップ作成入門改訂版」野崎篤志著、発明推進協会刊、2016年11月1日発行
【非特許文献2】「特許情報をめぐる最新のトレンド-人工知能、IPランドスケープおよび特許検索データベースの進化-、野崎篤志、Japio YEAR BOOK 2018、p60-68、2018年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経営戦略や事業戦略を立案し、策定する場面では、情報処理技術を利用して、相当な件数の特許群から特許情報を抽出し、分析して得られた出願動向や技術動向に関するマップが利用されることが大半であった。その一方で、企業等の事業者において新たな企画の事業可能性を検討するにあたり、想定している実施態様が第三者の特許権を侵害するリスクを調査し、特許面での安全を確保することも、事業の安定性を確保する上で欠かせない重要な対応である。この対応を検討する場面では、第三者が製造販売している競合製品や第三者が保有している特許がそれぞれ複数存在し、それらによって複雑な状況がしばしば形成されている。その様な複雑な状況を適切に把握し、事業判断をするための材料となる情報は非常に重要である。
【0007】
しかしながら、通常、そのような複雑な状況は非常に煩雑であり、短時間で直感的に把握することが困難であった。特許請求の範囲と実施態様との関係は、特許公報の書誌及びテキスト情報、並びに特許出願の経過情報及び審査に関する包袋文書のテキスト情報だけからは明らかにはならない。実施態様に関する具体的な情報が不可欠である。また、その複雑な状況が調査によって明らかになっても、調査担当者以外の者にそれを伝えることは難しく、従来のパテントマップでも短時間で直感的に把握できるように表現するには不十分であった。
【0008】
先行技術のパテントマップは、特許の書誌情報及び公報のテキスト情報など、特許側の情報のみを情報源として解析された成果物であって、大まかな傾向の把握や動向の予測を主な目的とした資料である。つまり、従来の先行技術のパテントマップは、文言で表現された特許発明の構成要件を理解し、それに対する実施態様の当否を思考する能力を用いて得られた成果物ではなかった。
【0009】
個々の関係を理解し、認識を共有するには、文言で表現された特許発明の構成要件と実施態様とを一対一で検討し、考察する必要があり、従来、その作業の結果は言語によって表現されてきた。さらに、事業判断の材料とするには、一対一の関係に限らず、一対複数もしくは複数対複数の関係を考慮する必要がある。一対一の関係を言語によって表現するステップに加えて、複数間の関係を総合的に把握できるように表現するステップがなければ、調査担当者以外の者にそれを伝えるまでの成果は達成できない。そのようなステップには確立された手法がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解決するために、本発明の発明者は、以下の特徴を有する発明を創作した。本発明は、実施態様の概念を考慮した上で特許発明と実施態様の関係を図示する手法であって、従来のパテントマップとは根本的に技術思想が異なるものである。
【0011】
本発明は、[1]特許戦略チャートの図示方法であって、a)実施態様を示す第1表示及び特許請求の範囲を示す第2表示をグループ化したグループ表示を生成するグループ表示生成ステップと、b)任意の指標を座標とする二次元平面表示を生成する二次元平面表示生成ステップと、c)前記実施態様に関連する製品情報を反映させて、前記グループ表示を前記二次元平面表示の上に配置して表示するグループ表示配置ステップと、を含み、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であり、前記特許戦略チャートは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示すものであることを特徴とする特許戦略チャートの図示方法である。
【0012】
このとき、[2]d)前記二次元平面表示の上に前記実施態様に関する周辺状況を表す第3表示を表示する周辺状況表示ステップを含んでもよい。
【0013】
次に、本発明は、[3]特許戦略チャートの図示を支援する電子的システムであって、a)実施態様を示す第1表示及び特許請求の範囲を示す第2表示をグループ化したグループ表示を生成するグループ表示生成手段と、b)任意の指標を座標とする二次元平面表示を生成する二次元平面表示生成手段と、c)前記実施態様に関連する製品情報を反映させて、前記グループ表示を前記二次元平面表示の上に配置して表示するグループ表示配置手段と、を含み、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であり、前記特許戦略チャートは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示すものであることを特徴とする電子的システムである。
【0014】
また、本発明は、[4]特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示す特許戦略チャートであって、実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面を備え、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であることを特徴とする特許戦略チャート、及び[5]実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面と、を備える特許戦略チャートの生成方法であって、a)前記第1表示及び前記第2表示をグループ化したグループ表示を生成するグループ表示生成ステップと、b)前記二次元平面を生成する二次元平面表示生成ステップと、c)前記実施態様に関連する製品情報を反映させて、前記グループ表示を前記二次元平面の上に配置して表示するグループ表示配置ステップと、を含み、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であり、前記特許戦略チャートは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示すものであることを特徴とする特許戦略チャートの生成方法である。
【0015】
さらに、本発明は、[6]複数の実施者の製品関連情報と、複数の特許権者及び特許出願人の特許関連情報の管理システムであって、実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面と、を備える電子的手段により表示した特許戦略チャートにおいて、前記第1表示を他のアプリケーションに格納された、メーカー、原材料、成分構成及び構造からなる群から選ばれる1又は2以上に関する情報を含む製品関連情報とリンクし、前記第2表示を他のアプリケーションに格納された、出願情報、経過情報、登録情報又は公報情報を含む特許関連情報とリンクし、さらに前記製品関連情報及び前記特許関連情報を処理するデータベースを備え、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であることを特徴とする管理システムである。
【0016】
さらに、本発明は、[7]特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示す特許戦略チャートのアニメーション映像を作製するためのコンピュータープログラムであって、前記特許戦略チャートは、実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面を備え、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であり、所定の技術分野について経時的に複数回にわたって作成した複数の前記特許戦略チャートについて、前記二次元平面上における前記第1表示及び前記第2表示の位置、大きさ及び方向に関する変化を連続的にアニメーション映像として表示することを特徴とするコンピュータープログラムである。
【0017】
さらに、本発明は、[8]コラージュ又は貼り絵の技法に基づく特許戦略チャートの部品であって、船形の第1部材と、1又は2以上の扇形の第2部材とを、前記扇形の第2部材中心角に前記船形の第1部材が接し、前記扇形の第2部材の扇形の円弧が前記船形の第1部材と接しないように配置されて結合していることを特徴とする特許戦略チャートの部品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を図形等により図示する技術に関し、特許請求の範囲と実施態様の関係を俯瞰して視覚的に表現する方法、当該方法を支援するシステム、当該方法によって作成されるチャート、当該チャートの生成方法、当該チャートを利用した製品関連情報及び特許関連情報の管理システム、複数のチャートを連続的にアニメーション映像として表示するためのコンピュータープログラム及び特許戦略チャートの部品に関する。これにより、企業等の事業戦略を立案し、策定するにあたり、第三者の具体的な競合製品や第三者の具体的な特許がそれぞれ複数存在し、それらが形成している複雑な状況の全体像を短時間で直感的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】同一の者が所有する特許権にかかる単一の特許請求の範囲と、それに関連する実施態様を表す二次元図形(記号)の基本図である。
【
図2】同一の者が所有する特許権にかかる単一の特許請求の範囲と、それに関連する実施態様を表す二次元図形(シンボル)の基本図である。
【
図3】同一の者が所有する特許権にかかる単一の特許請求の範囲と、それに関連する実施態様を表す二次元図形(記号)の基本図である。
【
図4】同一の者が所有する特許権にかかる単一の特許請求の範囲と、それに関連する実施態様を表す二次元図形(船をモチーフとした図形)の基本図である。
【
図5】同一の者が所有する特許権にかかる複数の重畳的な特許請求の範囲と、それに関連する実施態様を表す二次元図形(船をモチーフとした図形)の基本図である。
【
図6】同一の者が所有する複数の特許権にかかる特許請求の範囲と、それに関連する実施態様を表す二次元図形(船をモチーフとした図形)の例である。
【
図7】同一の者が所有する複数の特許権にかかる一部が重畳する特許請求の範囲と、それに関連する実施態様を表す二次元図形(船をモチーフとした図形)の例である。
【
図8】2本の座標軸によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図9】2本の座標軸によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図10】2本の座標軸によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図11】2本の座標軸によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図12】2本の座標軸によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図13】複数の相似する長方形の重なりによって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図14】同心半円によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図15】同心半円によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図16】同心円によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図17】同心円によって構成された座標が設けられた、特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形を配置するための平面の例である。
【
図18】複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形(船をモチーフとした図形)が、2本の座標軸によって構成された座標が設けられた平面に配置されたチャートである。
【
図19】複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形(船をモチーフとした図形)が、2本の座標軸によって構成された座標が設けられた平面に配置されたチャートである。
【
図20】複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形(船をモチーフとした図形)が、同心半円によって構成された座標が設けられた平面に配置されたチャートである。
【
図21】OTC医薬品アレルギー用点眼薬の製品関連情報である。
【
図23】特許請求の範囲を表す略扇形と当該実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等とを結合した図示の例である。
【
図24】解析作業と描画作業を経て作成した特許戦略チャート(将棋盤形式の座標を設定した事例)である。
【
図25】解析作業と描画作業を経て作成した特許戦略チャート(4分割マトリックス形式のポジショニングチャート用座標を設定した事例)である。
【
図26】特許戦略チャートとリンクさせて操作するデータベースの概念図である。
【
図27】PETボトル詰め緑茶飲料の分野における2000年頃の特許戦略チャートのイメージ図である。
【
図28】PETボトル詰め緑茶飲料の分野における2005年頃の特許戦略チャートのイメージ図である。
【
図29】PETボトル詰め緑茶飲料の分野における2010年頃の特許戦略チャートのイメージ図である。
【
図30】PETボトル詰め緑茶飲料の分野における2016年頃の特許戦略チャートのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る特許戦略チャートの図示方法、特許戦略チャートの図示を支援する電子的システム、特許戦略チャート、特許戦略チャートの生成方法、管理システム、コンピュータープログラム及び特許戦略チャートの部品について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する事項については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0021】
<定義>
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された用語の意義を説明する。第1表示としての「点もしくは点に近似しうる文字又は図形等」は、二次元平面又は二次元の座標によって設定されたチャート全体の中で任意に移動させ配置を変えられる程度に十分に小さい文字や図形及びそれらの結合であればよく、形状は特に限定されない。第1表示は、例えば、肉眼的に見て点であってよく、円、三角、四角、菱形等の図形、記号、シンボル、船等の物をモチーフとしたイラスト、企業等のマークやロゴ等であってもよい。
【0022】
第2表示としての「特許請求の範囲を表す略扇形」とは、特許請求の範囲を二次元図形によって表現するために用いる図形であって、扇形、扇形の中心角を共有し面積の異なる2つの扇形のうち大きい扇形から小さい扇形を除いた図形(環状扇形)、その図形を近似した台形又はそれらが複数集合した形状を近似した台形等の図形を含む。
【0023】
「グループ化」とは、第1表示(実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等)と第2表示(特許請求の範囲を表す略扇形)とを関連付けて近い位置に配置し、相互の位置を相対的に固定化することである。第1表示(実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等)と第2表示(特許請求の範囲を表す略扇形)とをグループ化したものを「グループ表示」と定義する。複数の図形をグループ化したもの(グループ表示)は全体を一つの図形として扱うことができ、二次元平面又は二次元の座標中で位置を移動させたり、回転させたり、反転することができる。
【0024】
グループ化においては、製品情報から製品の構成要素を表す情報を抽出し、つづいて特許の特許請求の範囲の構成要素の情報を抽出し、それら二つの群の中で一致及び包含関係が認められる場合には、「実施態様を表す点もしくは点に近似しうる文字又は図形等」(第1表示)と「特許請求の範囲を表す略扇形」(第2表示)を関連付ける。ここで、特許における技術分野、課題、解決手段、発明の効果が製品と関連しない場合は、第1表示と第2表示を組み合わせない(グループ化をしない)。なお、ある実施態様(実施製品等)に関連する特許権が存在しない場合、第1表示には第2表示が関連付けられない場合も想定されるが、この場合も広義のグループ化に含まれるものとする。
【0025】
「任意の指標」とは、座標を設定する上で、座標軸が表す指標となり得るならば、特に限定されない。時間、数量又は比率など数字で表される定量的な指標でもよいし、技術的特徴の観点や法域の観点やビジネスやマーケティングなどのフレームワークで用いられる観点によって表した定性的な指標であってもよい。ビジネスやマーケティングなどのフレームワークで用いられる観点によって表した定性的な指標とは、重要度、緊急度、関心度、優位性、収益性、将来性、希少性、模倣困難性、実現性、実効性、必要性、話題性、経済価値、市場占有率等の指数のおおよその高低などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
また、ポジショニングマップやプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントに使用できる属性(例えば、花形、金のなる木、問題児及び負け犬、並びに稼ぎ手、金の卵、お値打ち品、見切り品)によって座標を領域分けし、それに対応するように適宜新たに案出した指標であってもよい。
【0027】
<特許戦略チャート>
「特許戦略チャート(単に「チャート」ともいう)」とは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は類似性を、図形を用いて示した図である。語源は、広義には図表を意味するchartであるが、chartは海図、空図という意味も併せ持つ。航海や飛行のナビゲーションの目的で作成され変動する要素の詳細な情報を含む点で、地図を意味するマップ(map)あるいは風景、景観あるいは地形を意味するランドスケープ(landscape)とは異なる概念を表す。本明細書においても、特許業界において既存の特許マップ(パテントマップ)やIPランドスケープとは区別される新規な図を意味する。
【0028】
つまり、本実施形態に係る特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示す特許戦略チャートは、実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面を備え、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であることを特徴とする特許戦略チャートである。
【0029】
ある実施態様(例えば、実施製品)は、「点もしくは点に近似しうる文字又は図形等」(第1表示)で表現される。点に近似しうる図形等とは、外周がつながり一つの図形と認知される図形ならば形状の詳細は問わず、肉眼的に見て点であってよく、円、三角形、四角形、菱形等の図形、記号、シンボル、船等の物をモチーフとしたイラスト、企業等のマークやロゴ等であってもよい。
【0030】
「特許請求の範囲を表す略扇形」(第2表示)は、輪郭線のみで描かれてもよいし、輪郭線がない塗りつぶした形状でもよいし、輪郭線と塗りつぶしを併用して描かれてもよい。ここで、輪郭線は、実線に限定されず、点線、破線、一点鎖線、二点鎖線、多重線など多様な線種であってもよいし、任意の色、幅、透明度でよい。任意の色、幅、透明度でグラデーションをつけてもよい。また、塗りつぶしは、無地であっても、任意の模様や絵柄が施されてもよいし、任意の色、透明度でよい。
【0031】
「特許請求の範囲を表す略扇形」(第2表示)の大きさは、半径の長さ、中心角の大きさを変化させることにより、任意の面積によって表示されうる。半径の長さは、チャート上で任意に設定しうる。また、中心角の大きさは、いくつかの構成要素の数の多さと多様性を表現する手段として意味を持たせることもでき、1°から360°までであり得る。例えば、上位概念的な文言により、多様な実施態様を含みうる構成要素がある場合、その特許請求の範囲を表す略扇形の中心角は180°から270°であってもよい。反対に、いずれの構成要素も下位概念的な文言が用いられ、実施例に記載された具体的な態様に限定される場合、その特許請求の範囲を表す扇形等の二次元図形中心角は30°から90°とし、上位概念的な文言を用いた場合と区別して示すこともできる。
【0032】
煩雑になるのを避け視認性を高めるため、例えば、第2表示の半径の長さを「長」、「中」、「短」の3段階、中心角の大きさを「広角」、「狭角」の2段階の組み合わせにより6段階にレベル分けすることができる。ここで、レベルの違いは見分けがつきやすいことが大事である。具体的な長さ及び角度の大きさは、チャートを作成する度に、チャート全体像からバランスを考慮して任意に定められる。
【0033】
「実施態様を表す点もしくは点に近似しうる文字又は図形等」(第1表示)と「特許請求の範囲を表す略扇形」(第2表示)は二次元の平面上に配置される。
【0034】
ある特許の特許権者または出願人と、ある実施態様の実施者とが同一である場合、第2表示(特許請求の範囲を表す略扇形)の円弧の中心角が当該第1表示(実施態様を表す点もしくは点に近似しうる文字又は図形等)に重なるか、その付近に位置するよう配置する。ここで、第2表示(特許請求の範囲を表す略扇形)が複数になるときは、なるべく重なりを避けて放射状に配置する。
【0035】
一方、実施者が第三者の場合、実施態様が特許請求の範囲に包含されるときは、第1表示(実施態様を表す点もしくは点に近似しうる文字又は図形等)を第2表示(特許請求の範囲を表す略扇形)の内部に位置する様に配置し、包含されないときは、実施態様を表す点等(第1表示)を特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)の外部に位置する様に配置する。このとき、実施態様が具備しない構成要素が一つならば近い距離に、具備しない構成要素が二つ、三つとなるにつれて遠い距離に配置する。
【0036】
図形間の距離を判別しやすくするため、「実施態様を表す点もしくは点に近似しうる文字又は図形等」(第1表示)の上に中心を有する円形の補助線を設けてもよい。また、円の中心に位置する製品のメーカーの視点にたって、競合相手と認識する範囲を概念的に示すため、「実施態様を表す点もしくは点に近似しうる文字又は図形等」(第1表示)の上に中心を有する円形の補助線を設けてもよい。補助線は、実線、点線、破線、一点鎖線、二点鎖線、多重線など多様な線種であってもよいし、任意の色、幅、透明度でよい。任意の色、幅、透明度でグラデーションをつけてもよい。
【0037】
複数の「特許請求の範囲を表す略扇形」(第2表示)に重なりがあったり、互いの距離が近かったりするとき、それらの特許発明の構成要件は類似性が高いことを表す。例えば、同一特許内のカテゴリーが異なる発明や、同一の特許出願に由来する分割出願などである。逆に、複数の「特許請求の範囲を表す略扇形」(第2表示)の距離が離れているとき、特許発明の構成要件に類似性が低いことを表す。
【0038】
上記の二次元図形が配置される平面上には、1又は2以上の座標軸、2以上の同心円又は2以上の同心多角形によって構成された座標が設けられていてもよい。また、一般的には地形図や海図に用いられる、等高線、等深線、海岸線、海流、潮流及び航路等を表す線、矢印、記号などが記載されていてもよい。さらに、点を含む二次元図形の位置及び大きさは、座標値によって表されてもよい。
【0039】
<特許戦略チャートの部品>
特許戦略チャートを図示する際、二次元平面の上に第1表示や第2表示を配置するときに、付箋紙、模型又は駒等ならびに型紙を利用した特許戦略チャートの部品を用いて配置を検討することが可能である。
つまり、本実施形態に係る特許戦略チャートの部品は、コラージュ又は貼り絵の技法に基づく特許戦略チャートの部品であって、船形の第1部材と、1又は2以上の扇形の第2部材とを、前記扇形の第2部材の中心角に前記船形の第1部材が接し、前記扇形の第2部材の扇形の円弧が前記船形の第1部材と接しないように配置されて結合していることを特徴とする特許戦略チャートの部品である。
【0040】
<特許戦略チャートの図示方法>
特許戦略チャートは、本実施形態に係る特許戦略チャートの図示方法に基づいて図示することができる。
本実施形態に係る特許戦略チャートの図示方法は、a)実施態様を示す第1表示及び特許請求の範囲を示す第2表示をグループ化したグループ表示を生成するグループ表示生成ステップと、b)任意の指標を座標とする二次元平面表示を生成する二次元平面表示生成ステップと、c)前記実施態様に関連する製品情報を反映させて、前記グループ表示を前記二次元平面表示の上に配置して表示するグループ表示配置ステップと、を含み、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であり、前記特許戦略チャートは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示すものであることを特徴とする特許戦略チャートの図示方法である。
【0041】
このとき、d)前記二次元平面表示の上に前記実施態様に関する周辺状況を表す第3表示を表示する周辺状況表示ステップを含むと好適である。
【0042】
<電子的システム>
特許戦略チャートは、本実施形態に係る電子的システムを利用して図示することが好適である。
本実施形態に係る特許戦略チャートの図示を支援する電子的システムは、a)実施態様を示す第1表示及び特許請求の範囲を示す第2表示をグループ化したグループ表示を生成するグループ表示生成手段と、b)任意の指標を座標とする二次元平面表示を生成する二次元平面表示生成手段と、c)前記実施態様に関連する製品情報を反映させて、前記グループ表示を前記二次元平面表示の上に配置して表示するグループ表示配置手段と、を含み、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であり、前記特許戦略チャートは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示すものであることを特徴とする電子的システムである。
【0043】
<特許戦略チャートの生成方法>
特許戦略チャートは、本実施形態に係る特許戦略チャートの生成方法に基づいて生成することができる。
本実施形態に係る特許戦略チャートの生成方法は、実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面と、を備える特許戦略チャートの生成方法であって、a)前記第1表示及び前記第2表示をグループ化したグループ表示を生成するグループ表示生成ステップと、b)前記二次元平面を生成する二次元平面表示生成ステップと、c)前記実施態様に関連する製品情報を反映させて、前記グループ表示を前記二次元平面の上に配置して表示するグループ表示配置ステップと、を含み、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であり、前記特許戦略チャートは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示すものであることを特徴とする特許戦略チャートの生成方法である。
【0044】
なお、異なる時期の情報に基づいて作成した二次元のチャートを時系列の順に並べて表示したり、アニメーションの要領で連続的に表示したりすることにより、特許の存続状況や実施態様等の変化を短時間で直感的に把握しやすくなる。本発明のチャートの複数枚を連続的に表示するアニメーション映像も本発明のチャートに含むと定義する。
【0045】
アニメーション映像の作製及び表示には、既存の情報処理技術を用いたコンピュータープログラムを利用することができ、本発明はそのコンピュータープログラムを包含する。例えば、Microsoft(登録商標)Officeのソフトウェアに搭載された、画像切り替え、アニメーション又はスライドショー等の機能を利用したプログラムでもよいし、映像制作が目的の専門性の高いソフトウェアであって、既存又は将来のソフトウェアを利用したプログラムであってもよい。
【0046】
<コンピュータープログラム>
つまり、本実施形態に係るコンピュータープログラムは、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を示す特許戦略チャートのアニメーション映像を作製するためのコンピュータープログラムであって、前記特許戦略チャートは、実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面を備え、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であり、所定の技術分野について経時的に複数回にわたって作成した複数の前記特許戦略チャートについて、前記二次元平面上における前記第1表示及び前記第2表示の位置、大きさ及び方向に関する変化を連続的にアニメーション映像として表示することを特徴とするコンピュータープログラムである。
【0047】
<管理システム>
また、後述する
図26に示されるように、本実施形態に係る管理システムは、複数の実施者の製品関連情報と、複数の特許権者及び特許出願人の特許関連情報の管理システムであって、実施態様を示す第1表示と、特許請求の範囲を示す第2表示と、任意の指標を座標とする二次元平面と、を備える電子的手段により表示した特許戦略チャートにおいて、前記第1表示を他のアプリケーションに格納された、メーカー、原材料、成分構成及び構造からなる群から選ばれる1又は2以上に関する情報を含む製品関連情報とリンクし、前記第2表示を他のアプリケーションに格納された、出願情報、経過情報、登録情報又は公報情報を含む特許関連情報とリンクし、さらに前記製品関連情報及び前記特許関連情報を処理するデータベースを備え、前記第1表示は、文字又は図形の少なくとも一方を含み、前記第2表示は、略扇形であることを特徴とする管理システムである。
【0048】
以下、本発明を実施するための形態として
図1乃至
図30に基づいて実施例1乃至実施例5を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例0049】
<実施例1:2本の座標軸によって構成された座標が設けられた平面に複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形が配置された例>
複数の特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を図示したチャート(特許戦略チャート)を
図18に示す。
図1乃至
図5に示した単一の特許請求の範囲とそれに関連する実施態様を表す二次元図形の基本図の組み合わせによって、複数の特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を表現することができる。特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)は、一つの発明に対応して一つ描く。一つの発明とは、特許請求の範囲における一つの独立項とそれに従属する1又は2以上の従属項からなる群をいう。同一特許においてカテゴリーが異なる発明や、同一の特許出願に由来する分割出願の発明や、利用関係にある発明は特許発明が重なる場合があるので、その場合は特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)は重畳的に描く。座標の設定の仕方により、高いポジションと低いポジションが観念されるので、ポジションの高低を反映することを考慮して、特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)とそれに関連した実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等(第1表示)を配置する。
【0050】
<実施例2:2本の座標軸によって構成された座標が設けられた平面に複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形が配置された例>
複数の特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を図示したチャート(特許戦略チャート)を
図19に示す。基本的には
図18に示したチャートの作成と同様の規則に基づいて特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)とそれに関連した実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等(第1表示)を配置する。座標の設定の仕方は
図8乃至
図17に例を示したが、これらに限らず種々の態様があり得る。時間、数量又は比率など数字で表される定量的な指標に限定されず、技術的特徴の観点や法域の観点やビジネスやマーケティングなどのフレームワークで用いられる観点によって表した定性的な指標であってもよい。また、チャートの目的によって、ポジションを観念しない分析ならば座標のない領域を全部又は一部に設け、特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)とそれに関連した実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等(第1表示)を配置してもよい。
【0051】
<実施例3:同心半円によって構成された座標が設けられた平面に複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形が配置された例>
複数の特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性の図示したチャート(特許戦略チャート)を
図20に示す。同心半円又は同心円によって構成された座標は、地形図における等高線と同じように、中心が高いポジションで周辺が低いポジションである場合、あるいはその逆である場合に利用することが好ましい。
【0052】
<実施例4:OTC医薬品(いわゆる一般用医薬品)であるアレルギー用点眼薬の分野において、本発明の特許戦略チャートを作成した事例>
以下に示す工程からなる手順によって、本発明の特許戦略チャートを作成した。
【0053】
工程1)解析対象とする製品分野と、その製品に関連する技術分野を設定する。
解析対象とする製品分野をOTC医薬品(いわゆる一般用医薬品)であるアレルギー用点眼薬の分野と定めた。
【0054】
工程2)その製品分野に属する実施態様の情報を収集する。
販売されているOTC医薬品(いわゆる一般用医薬品)であるアレルギー用点眼薬のメーカー及び成分に関する情報を『「2018-19 OTC医薬品事典第16版」編集 一般社団法人日本OTC医薬品情報研究会、編集協力 日本OTC医薬品協会、発行所 株式会社じほう、2018年4月15日発行』から製品関連情報を収集した。
図21に示す。
【0055】
工程3)その技術分野に属する特許及び特許出願を抽出する。
特許データベースを用い、「FI=A61K9/08」and「特許権者=上記製品関連情報から抽出したメーカー」and「請求項にアレルギー又は花粉をキーワードとして含む」、という条件で検索を行い、特許権が存続中の特許11件を抽出した。
【0056】
工程4)抽出した個々の特許又は特許出願の特許請求の範囲を、独立項及びその従属項からなる発明ごとに群分けする。
各特許について特許請求の範囲を独立項及びその従属項からなる発明ごとに群分けした。
【0057】
工程5)各請求項において文言を構成要素ごとに分節する。
各請求項において、文言を構成要素ごとに分節した。以下、工程9までの処理について、
図21に示したB社の特許に関して行った事例を
図22に示す。
【0058】
工程6)各構成要素を、記載ぶりの抽象性の程度によって上位概念、明細書に列挙された下位概念又は実施例における具体的な記載の3段階のレベルに仕分けする。
各構成要素を、記載ぶりの抽象性の程度によって上位概念、明細書に列挙された下位概念又は実施例における具体的な記載の3段階のレベルに仕分けした。
【0059】
工程7)群分けした各発明の中で最も範囲が広い請求項の構成要素において、最も抽象性の程度の低いものが上記のレベルのどれにあたるか、また同レベルのものの個数について、情報を抽出する。
群分けした各発明の中で最も範囲が広い請求項1の構成要素において、最も抽象性の程度の低いものは、実施例における具体的な記載のレベルだった。具体的には、構成要素Aの「プラノプロフェンまたはその薬理学的に許容される塩」と構成要素Bの「クロモグリク酸およびその塩」が実施例における具体的な記載にあたり、それらは2個だった。
【0060】
工程8)特許請求の範囲を略扇形(第2表示)で表現するにあたり、上位概念、下位概念及び実施例における具体的な記載の3段階のレベルに対応して、順に、略扇形の半径の長さを「長」、「中」、「短」のいずれかに決定する。
上記のとおり、最も抽象性の程度の低いものは実施例における具体的な記載レベルであったので、それに対応して、略扇形(第2表示)の半径の長さを「短」と決定した。
【0061】
工程9)さらに、記載ぶり抽象性の程度が最も低い構成要素の個数が1のとき略扇形の中心角は「広」、同程度のものの個数が2以上のとき略扇形(第2表示)の中心角は「狭」と決定する。
上記のとおり、特許B1は、最も抽象性の程度の低いものは実施例における具体的な記載レベルであり、その個数は2だったので、それに対応して、略扇形(第2表示)の中心角を「狭」と決定した。特許B2は、最も抽象性の程度の低いものは実施例における具体的な記載レベルであり、その個数は1だったので、それに対応して、略扇形(第2表示)の中心角を「広」と決定した。
【0062】
工程10)ある特許の特許権者または出願人と、ある実施態様の実施者とが同一である場合、特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)の中心角が当該実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等(第1表示)に重なるか、その付近に位置するよう配置する。ここで、略扇形(第2表示)が複数になるときは、放射状に配置する。
B社の製品b1、b2、b3及びb4ならびに特許B1及び特許B2を図形で表したものを
図23に示す。
【0063】
工程11)一方、実施者が第三者の場合、実施態様が特許請求の範囲に包含されるときは、実施態様を表す点等(第1表示)を特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)の内部に位置する様に配置し、包含されないときは、実施態様を表す点等(第1表示)を特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)の外部に位置する様に配置する。このとき、具備しない構成要素が一つならば近い距離に、具備しない構成要素が二つ、三つとなるにつれて遠い距離に配置する。また、発明の構成要素を上位概念化して拡張していくことを仮定したとき、その範囲に実施態様が該当する場合は、その発明に対応する略扇形(第2表示)の中心角の頂点を始点とし円弧上の一点を通過して延長した直線上に実施態様を表す点等を配置する。
【0064】
工程12)当該製品分野、技術分野における任意の指標によって設定された二次元の座標を設定し、その製品分野に属する実施態様の情報と技術分野に関連する特許及び/又は特許出願の情報に基づいて、実施態様を表す点等(第1表示)ならびに特許及び/又は特許出願を表す略扇形(第2表示)を配置する。
ここで、工程11及び工程12においては、付箋紙、模型又は駒等ならびに型紙を利用して配置を検討することが可能である。
【0065】
具体的には、付箋紙、模型又は駒等ならびに型紙を利用して、コラージュ又は貼り絵の技法によって特許戦略チャートの部品を作製しても良い。より詳細には、実施態様を表す図形(第1表示)を船形の第1部材として形成し、特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)を第2部材として形成する。そして、第2部材の扇形の中心角に船形の第1部材が接し、第2部材の扇形の(内側の)円弧が船形の第1部材と接しないように配置されて結合する。
【0066】
ただし、工程11及び工程12においては、Microsoft(登録商標)Office PowerPointなどのコンピューターソフトウェアによる操作性を利用することがさらに望ましい。長さ、角度及び位置を数値入力で微調整したり、複数の図形をグループ化して複製や移動をしたり、操作を戻して前後を比較したり、途中の状態又は結果を保存したり、という操作はコンピューターソフトウェアならではである。これらの操作性が綿密な検討を反映させた結果物の仕上がりに大きく影響する。
【0067】
工程13)さらに、周辺状況を表す補助線、記号及び図形(第3表示)を任意に配置する。
B社以外の製品関連情報、特許関連情報も解析し、工程11、12及び13も加えてチャート全体を作成したのが
図24及び
図25である。
【0068】
上記の手順で作成した、実施態様を点又は点に近似しうる任意の文字及び又は図形(第1表示)、特許請求の範囲を略扇形(第2表示)及び任意の座標軸からなる座標、ならびに周辺状況を表す補助線、記号、図形(第3表示)を任意に含む、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を図示する電子的手段により表示したチャートにおいて、点又は点に近似しうる任意の文字及び又は図形(第1表示)を他のアプリケーションに格納された製品関連情報(メーカー、原材料、成分、構成など)とリンクし、略扇形(第2表示)を他のアプリケーションに格納された特許関連情報(出願情報、経過情報、登録情報、公報情報など)とリンクし、さらに当該製品関連情報と特許関連情報をデータベースとして構成すれば、製品及び特許情報の管理を行うための管理システムとして有用である。その概念図を
図26に示す。
【0069】
<実施例5:PETボトル詰め緑茶飲料の分野において、本発明の特許戦略チャートを時系列に複数回作成し、アニメーション映像化した事例>
実施例4に示したのと同様の手順で経時的に複数回にわたり特許戦略チャートを作成すると、
図27、
図28、
図29及び
図30のような変化を有するチャートの集合が想定される。
図27乃至
図30は、具体的な個々の特許の解析には基づかないイメージ図である。チャート内の各要素(すなわち、点又は点に近似しうる任意の文字及び又は図形等(第1表示)、略扇形(第2表示)、補助線、記号及び図形(第3表示)の存否、位置、大きさ及び方向等)の変化を、コンピュータープログラムを用いて連続的なアニメーション映像として表示することができる。
【0070】
上記4枚の特許戦略チャート(イメージ図)につき、Microsoft(登録商標)Office PowerPointを用い、4枚のスライドに編集し、スライドショー機能を用いて1秒間隔で連続表示した。画面切り替えのフェードや時系列を表す時間軸の表示も用い、連続的なイメージの切り替えを補助する効果を加えて1本のアニメーション映像を作製した。これにより、俯瞰的かつ経時的に当該分野の製品及びそれに関連する特許の状況変化の経緯を短時間で認識することが可能となった。
【0071】
なお、日本国特許庁から特許情報標準データが週1回の頻度でリリースされており、日本国内の商用データベースでも同程度の頻度でデータ更新されている。それらの情報源に基づき、週1回の頻度で変更点を反映した特許戦略チャートを作製し蓄積することは可能である。更新作業を継続することで、作業者は状況変化をモニターすることができ、また、関係者と情報共有することが可能となる。
本発明によれば、第三者が製造販売している競合製品や第三者が保有している特許がそれぞれ複数存在し、それらによって形成されている複雑な状況の全体像を短時間で把握することができ、研究開発企業や研究機関等において、経営戦略や事業戦略を立案し、策定するプロセスに利用することができる。また、成果物として得られたチャートと当該製品関連情報及び特許関連情報を処理するデータベースを連動させて、製品管理情報及び特許関連情報の管理システムとして利用することもできる。
さらに、経時的に複数回にわたり作成した複数枚の特許戦略チャートにつき、チャート内の各要素(すなわち、点又は点に近似しうる任意の文字及び又は図形等、略扇形、補助線、記号及び図形の存否、位置、大きさ及び方向等)の変化を、コンピュータープログラムを用いて連続的なアニメーション映像として表示することで、俯瞰的かつ経時的に当該分野の製品及びそれに関連する特許の状況変化の経緯を短時間で認識することが可能となる。