IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジーの特許一覧 ▶ アラムコ サービシズ カンパニーの特許一覧

特開2024-52783混合マトリックス膜中の分岐金属-有機構造体ナノ粒子および関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052783
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】混合マトリックス膜中の分岐金属-有機構造体ナノ粒子および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/06 20060101AFI20240405BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20240405BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20240405BHJP
   B01D 71/16 20060101ALI20240405BHJP
   B01D 71/50 20060101ALI20240405BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20240405BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B01D71/06
B01D71/64
B01D71/68
B01D71/16
B01D71/50
B01D71/52
B01D53/22
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024022757
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2020568734の分割
【原出願日】2019-06-11
(31)【優先権主張番号】62/683,516
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】506018097
【氏名又は名称】アラムコ サービシズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー スミス
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス チ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ジェイムズ サンデル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ケ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン シー. ヘイデン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ジェイ. ハリガン
(72)【発明者】
【氏名】リ ヒョンヒ
(57)【要約】
【課題】混合マトリックス膜中の分岐金属-有機構造体ナノ粒子および関連する方法を提供すること。
【解決手段】ガスを分離するための金属-有機構造体を含む混合マトリックス膜の組成物、デバイス、および使用方法を一般的に記載する。いくつかの実施形態では、少なくとも一部が金属-有機構造体で作製された分岐ナノ粒子を記載する。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子の形態およびサイズは、合成中に化学調節物質の存在によって制御される。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、混合マトリックス膜中に均等に分布している。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、ガス混合物から1またはそれを超えるガスを分離するように構成されている。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、少なくとも一部が、混合マトリックス膜の透過性、選択性、および/または可塑化耐性の増大に寄与する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下で、2018年6月11日に出願され、発明の名称が「混合マトリックス膜中の分岐金属-有機構造体ナノ粒子および関連する方法」である米国特許仮出願第62/683,516号(すべての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
技術分野
金属-有機構造体を含むナノ粒子の合成および前述のナノ粒子を含むガス分離用の膜の作製を一般的に記載する。
【背景技術】
【0003】
背景
化学工業および石油化学工業において、全世界のエネルギーのおよそ30%が消費され、CO直接排出量は16%である。エネルギー消費のおよそ半分は分離プロセスに由来し、中でも最も注目すべきは蒸留などの熱分離である。炭素捕捉への適用および天然ガス精製に必要とされるCO分離領域において、アミン吸収が主力技術である。このプロセスは効率的であるが、高エネルギーの熱再生サイクルおよび有毒アミンを使用することが必要である。材料設計の改良により、膜は吸収プロセスおよび蒸留に関連するエネルギー消費量および経費を大幅に削減することができ、それにより、伝統的なユニット操作に代わるエネルギー効果が高いモジュールを提供することができる。
【0004】
現在まで、全ての市販のガス分離膜はポリマー材料を使用して形成され、これらのガス分離膜は、大量分離に必要とされる広い面積(1,000~500,000m)および薄い選択層(約100nm)に形成することができる。これらの魅力的な処理上の利点と対照的に、高分子膜はいくつかの欠点がある。効率および生産性に関して、伝統的なポリマー材料は、しばしば、透過性と選択性のトレードオフによる制限を受ける。さらに、高分子膜は、しばしば、可塑化として公知の有害プロセスに対して脆弱であり、ここで、可塑化とは、鎖充填を破壊する、高吸着性の分子希釈剤の存在下での鎖が絡み合った線状ポリマーの膨潤と説明される。可塑化するとしばしばガス透過性が増加するが、選択性は著しく低下する。二酸化炭素は、この挙動において最も操作が困難で多く見られる物質のうちの1つである。これらの欠点により、実用的な分離プロセスにおいて輸送特性を向上させ、可塑化を減少させるための新規の膜材料が必要である。
【0005】
依然として実用的でプロセスに適したポリマーベースの系を使用しながら、機械的完全性が比較的高くかつ分離性能がより優れた複合膜を形成するための、無機充填剤がポリマー中に分散された混合マトリックス膜が大いに注目されてきた。様々な金属酸化物などの無機材料、ゼオライト、および炭素は、分子ふるい効果が得られるようにポリマーに組み込まれており、それにより、造形物の孔の寸法およびサイズが構造体ごとに特異的に規定される。しかし、これらの無機材料は、有機構造体の機能性を欠き、したがって、分散相とポリマーとがあまり適合していない。この適合性の問題により、新生複合膜の粒子が凝集し、分散経路の選択性がない。金属-有機構造体(MOF)は、有機配位子によって架橋された金属イオンまたは金属クラスターを有する結晶性材料の魅力的なプラットフォームであり、MOF構成単位の選択に基づいて種々の無機トポロジー、例外的に高い多孔度および内部表面積、調整可能な孔径、ならびに化学的性質が得られる。MOFはまた、構造体の一部が有機組成物であるため、細孔系が調整可能であり、ポリマーマトリックスと
の適合性がより向上した比較的柔軟な構造を有する。これらの特徴によってポリマーへのMOFの組み込みが容易であり、ガス分離を効率的にするために必要な他の無機材料に好ましい可能性がある。
【0006】
HKUST-1(Cu(BTC)とも呼ばれる)は、混合マトリックス膜への適用が調査されているMOFの1つである。このMOFは、Cu2+パドルホイール単位およびベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸(トリメシン酸)から構成され、2種類の細孔を有するねじれた立方体の方硼石トポロジーを示す。これらの2種類の細孔は、直径9オングストロームの主要な細孔チャネルを有し、このチャネルは直径5オングストロームの四面体ポケットに取り囲まれている。1つの特に興味深い局面は、HKUST-1が配位的に不飽和な(開放された)金属部位を有し、この金属部位は合成中に配位により溶媒分子と弱く結合するが、溶媒交換および/または加熱(いわゆる活性化)プロセスによって露呈し得ることである。弱く結合した溶媒分子が除去された時点で、銅金属部位の露呈した配位空孔はルイス酸性を有し、ルイス塩基の極性ガス分子と強く相互作用することができ、それにより、ガス吸着が増大する。HKUST-1について、核形成の活性化エネルギー障壁はおよそ71.6kJ mol-1であり、成長の活性化エネルギー障壁はおよそ63.8kJ mol-1である。したがって、核形成は、典型的には、成長よりはるかに遅く、それにより、エネルギー的に成長よりも核形成を好む他のMOFと比較して粒径分布の広いミクロンサイズの粒子が形成され、したがって、均一に構成されたナノ粒子をより容易に形成することができる。典型的なミクロンサイズのHKUST-1粒子がポリマーマトリックスに組み込まれる場合、これらの粒子は相分離が起こる場合があり、それにより、MOFが凝集して「スリーブ・イン・ケージ」形態となり、それにより、バルク充填剤とポリマーとの間に非選択的な界面空隙が生じてガス選択性が低下する。したがって、HKUST-1自体はガス分離に有利な性質を有しているにもかかわらず、欠陥のないHKUST-1混合マトリックス膜を形成することは困難であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
ガスを分離するための金属-有機構造体を含む混合マトリックス膜の組成物、デバイス、および使用方法を一般的に記載する。いくつかの実施形態では、少なくとも一部が金属-有機構造体で作製された分岐ナノ粒子を記載する。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子の形態およびサイズは、合成中の化学調節物質の存在によって制御される。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、混合マトリックス膜中に均等に分布している。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、ガス混合物から1またはそれを超えるガスを分離するように構成されている。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、少なくとも一部が、混合マトリックス膜の透過性、選択性、および/または可塑化耐性の増大に寄与する。本発明の主題は、いくつかの場合、相互関連する生成物、特定の問題に対する代替案、ならびに/または1またはそれを超えるシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる使用を含む。
【0008】
1つの態様では、デバイスを記載する。いくつかの実施形態では、デバイスは混合マトリックス膜を含む。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、ポリマーを含むマトリックスおよび粒子を含み、粒子は、金属イオンおよび多座配位子を含む金属-有機構造体を含む。いくつかの実施形態では、粒子は、マトリックスの至る所で均一に分布し、対流輸送は透過測定によって検出できない。
【0009】
1つの態様では、組成物を記載する。いくつかの実施形態では、組成物は、金属-有機構造体を含む分岐ナノ粒子を含み、前述の金属-有機構造体は金属イオンおよび多座配位子を含む。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、2μmまたはそれ未満の流体力学
的直径、少なくとも5のアスペクト比、および直径が200nmまたはそれ未満の枝を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、ガス分離膜として構築され、配置される。
【0010】
別の態様では、方法を記載する。いくつかの実施形態では、方法は、金属イオンを含む金属塩、多座配位子、および化学調節物質を液体中で組み合わせて分岐ナノ粒子を形成する工程を含み、前述の分岐ナノ粒子は金属-有機構造体を含み、前述の金属-有機構造体は金属イオンおよび多座配位子を含む。いくつかの実施形態では、金属塩、多座配位子、および/または化学調節物質は、前述の多座配位子の濃度に対して前述の化学調節物質が少なくとも0.1当量存在すると、前述の分岐ナノ粒子のアスペクト比が、前述の化学調節物質の非存在下での同一条件下で形成された粒子に対して少なくとも3倍に増加するように選択される。実施形態では、方法は、分岐ナノ粒子をポリマーと組み合わせてポリマーネットワークを含む混合マトリックス膜を形成する、組み合わせる工程をさらに含む。
【0011】
本発明の他の利点および新規の特徴は、添付の図面と併せて考慮した場合に以下の本発明の種々の非限定的な実施形態の詳細な説明から明らかとなるであろう。本明細書および参考として援用された書類が矛盾するおよび/または不一致の開示を含む場合、本明細書を優先するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の非限定的な実施形態を、添付の図面を参照して例として記載しており、この図面は略図であり、縮尺どおりに描写されていることを意図しない。図面において、表示した各々の同一またはほぼ同一の構成要素は、典型的には、単一の数字で示されている。明確にするために、当業者が本発明を理解するために表示が必要でない場合、全ての図中の構成要素の全てに符号をつけているわけではなく、示した本発明の各実施形態の構成要素の全てに符号を付けているわけでもない。図の説明を以下に示す。
【0013】
図1A-1B】図1A~1Bは、ある特定の実施形態に従った(図1A)分岐HKUST-1粒子および(図1B)バルクHKUST-1粒子の透過型電子顕微鏡法(TEM)画像を示す。
【0014】
図2A図2Aは、ある特定の実施形態に従った例示的な分岐ナノ粒子の略図を示す。
【0015】
図2B図2Bは、ある特定の実施形態に従った例示的な分岐ナノ粒子の略図を示す。
【0016】
図3A図3Aは、ある特定の実施形態に従った分岐およびバルクHKUST-1粒子のX線回折(XRD)パターンを示す。
【0017】
図3B図3Bは、ある特定の実施形態に従ったバルクHKUST-1粒子および分岐HKUST-1粒子の数平均の動的光散乱(DLS)プロットを示す。
【0018】
図4A-4B】図4A~4Bは、ある特定の実施形態に従ったバルクおよび分岐ナノ粒子であるHKUST-1粒子を含む混合マトリックス膜の横断面SEMを示す。
【0019】
図5A-5E】図5A~5Eは、ある特定の実施形態に従った(図5A~5C)異なる倍率の30重量%分岐HKUST-1/6FDA-DAM MMMのFIB-SEM画像およびFIB-SEM断層像由来の再構築した3D画像(図5D~5E)を示す。
【0020】
図6A-6D】図6A~6Dは、ある特定の実施形態に従った種々の酢酸ナトリウム濃度を用いて形成された一連のHKUST-1粒子の低倍率のTEM画像を示す。
【0021】
図7A-7C】図7A~7Cは、ある特定の実施形態に従ったバルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFIB-SEM画像を含む。
【0022】
図8A-8C】図8A~8Cは、ある特定の実施形態に従った種々のHKUST-1を用いた分岐HKUST-1/6FDA-DAM MMMのFIB-SEM画像を含む。
【0023】
図9A-9B】図9A~9Bは、ある特定の実施形態に従った純粋な6FDA-DAMポリマーフィルムおよび種々のHKUST-1重量負荷を用いたバルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFT-IRスペクトルを示すチャートである。
【0024】
図10A-10B】図10A~10Bは、ある特定の実施形態に従った純粋な6FDA-DAMポリマーフィルムおよび種々のHKUST-1重量負荷を用いた分岐HKUST-1/6FDA-DAM MMMのFT-IRスペクトルを示すチャートである。
【0025】
図11A-11D】図11A~11Dは、ある特定の実施形態に従った供給圧力の関数としてのある特定のガス透過性を示すチャートである。
【0026】
図12A-12D】図12A~12Dは、ある特定の実施形態に従ったガス供給圧力の関数としてのある特定のガス透過性を示すチャートである。
【0027】
図13A-13B】図13A~13Bは、ある特定の実施形態に従った種々の膜のガス分離性能を示すチャートである。
【0028】
図14A-14B】図14A~14Bは、ある特定の実施形態に従った2組の純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜ならびに種々のHKUST-1重量負荷を用いたバルクおよび分岐のHKUST-1/6FDA-DAM MMMのガス分離性能を示すチャートである。
【0029】
図15A-15D】図15A~15Dは、ある特定の実施形態に従った種々の膜についてのCOガス供給圧力の関数としての正規化CO透過性を示すチャートを含む。
【0030】
図16A-16B】図16A~16Bは、ある特定の実施形態に従った菱形十二面体状のZIF-8/6FDA-DAM混合マトリックス膜(図16A)および分岐ZIF-8/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFIB-SEM画像を含む。
【0031】
図17A図17A~17Dは、ある特定の実施形態に従った菱形十二面体状のZIF-8ナノ粒子(RDZ)および分岐ZIF-8ナノ粒子(BZ)を含む混合マトリックス膜のガス分離性能を示すチャートである。
図17B図17A~17Dは、ある特定の実施形態に従った菱形十二面体状のZIF-8ナノ粒子(RDZ)および分岐ZIF-8ナノ粒子(BZ)を含む混合マトリックス膜のガス分離性能を示すチャートである。
図17C図17A~17Dは、ある特定の実施形態に従った菱形十二面体状のZIF-8ナノ粒子(RDZ)および分岐ZIF-8ナノ粒子(BZ)を含む混合マトリックス膜のガス分離性能を示すチャートである。
図17D図17A~17Dは、ある特定の実施形態に従った菱形十二面体状のZIF-8ナノ粒子(RDZ)および分岐ZIF-8ナノ粒子(BZ)を含む混合マトリックス膜のガス分離性能を示すチャートである。
【0032】
図18A-18B】図18A~18Bは、ある特定の実施形態に従ったピリジン(図18A)およびトリエチルアミン(図18B)の存在下で形成されたZIF-8粒子のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
粒子合成に関連する組成物、デバイス、および方法、ならびにガス分離への適用時に使用するための混合マトリックス膜への前述の粒子の包摂を一般的に記載する。いくつかの実施形態では、金属-有機構造体(MOF)を含む粒子を形成するための合成スキームを提供する。いくつかの実施形態では、粒子は分岐ナノ粒子である。分岐ナノ粒子は、ある特定の実施形態によれば、比較的高いアスペクト比および比較的小さい流体力学半径を有する。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、相互接続した構造を有する。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、多次元構造を有する。例えば、分岐ナノ粒子は、ある特定の実施形態によれば、末端間様式で接続された比較的狭い枝を有し、これらの枝は同一直線上にない。分岐ナノ粒子の分岐の寸法および形態は、好ましい性質(溶液中の懸濁物の凝集もしくは集塊の制限または多次元構造中の複数の接触点の形成など)の一部に寄与し得る。分岐ナノ粒子は、カルボキシラート系MOFを含み得る。例えば、分岐ナノ粒子は、ある特定の実施形態によれば、MOF HKUST-1を含み得る。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、イミダゾラート系MOFを含む。例えば、いくつかの実施形態では、分岐MOFナノ粒子はMOF ZIF-8を含む。
【0034】
分岐ナノ粒子は、いくつかの実施形態では、液体中で金属塩、多座配位子、および化学調節物質を組み合わせることによって形成され得る。例えば、ある特定の実施形態によれば、金属イオンを含む金属塩(例えば、銅)、少なくとも2つのカルボキシラート基を含む多座配位子(例えば、トリメシン酸)、およびカルボキシラート基を含む化学調節物質(例えば、酢酸ナトリウム)を、液体(例えば、100%メタノール)中にて室温および1atmで合わせて、MOF(例えば、HKUST-1)を含む分岐ナノ粒子が形成される。別の例として、いくつかの実施形態では、金属イオンを含む金属塩(例えば、亜鉛)、イミダゾラートを含む多座配位子(例えば、2-メチル-イミダゾラート)、およびアミンを含む化学調節物質(例えば、トリエチルアミン)を液体(例えば、メタノール)中にて室温および1atmで合わせて、MOF(例えば、ZIF-8)を含む分岐ナノ粒子が形成される。化学調節物質の存在ならびに金属塩および多座配位子が合わされる条件により、一部分において、高いアスペクト比、分岐した形態、および/または比較的小さい流体力学半径の粒子を得ることができる。例えば、いくつかの実施形態では、分岐粒子と同一条件下であるが、化学調節物質の非存在下または異なる液体中で形成された粒子は、分岐ナノ粒子の性質を欠き得る。換言すれば、例えば、ある特定の量(例えば、多座配位子の濃度に対して0.1当量)の化学調節物質が存在すると、得られた粒子のアスペクト比が同一条件下で形成された粒子に対して約3倍増加し得る。いくつかの実施形態では、金属塩、多座配位子、および/または化学調節物質は、高アスペクト比、分岐した形態、および/または比較的小さい流体力学半径の粒子が得られるように選択される。
【0035】
粒子は、別の態様では、混合マトリックス膜に組み込まれ得る。混合マトリックス膜は、いくつかの実施形態では、ポリマーを含むマトリックスを含み得る。本開示を通して、用語「ポリマーマトリックス」は、ポリマーを含むマトリックスを意味し、ここで、マトリックスはポリマーに限定されるか、マトリックスはポリマーおよび他の材料を含むと理解されるべきである。混合マトリックス膜は、いくつかの場合、ガスを分離するために使用され得る。いくつかの実施形態では、MOFを含む粒子は、MOFを含む混合マトリックス膜で一般的に認められる空隙を形成したり、相分離を受けたりすることよりもポリマ
ーマトリックスの全体で均一に分布する。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜のポリマーマトリックス中の粒子の均一な分布は、混合マトリックス膜を通過するガスの対流輸送が認められる範囲に制限される。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、MOF(例えば、HKUST-1)を含む分岐ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、MOFを含む分岐ナノ粒子を含み、ここで、MOFはゼオライト様イミダゾラート構造体(例えば、ZIF-8などのZIF)である。分岐ナノ粒子は、ある特定の実施形態によれば、混合マトリックス膜内に少なくとも部分的に浸出性のネットワーク(percolated network)を形成し得る。かかる浸出ネットワークは、ガス透過を改善し得る。かかる浸出ネットワークはまた、特に競合吸着が選択性に影響を及ぼし得る混合ガス条件下で選択性を向上させ得る。例えば、HKUST-1の分岐ナノ粒子から作製された浸出性のネットワークを含む混合膜ネットワークは、浸出ネットワークを形成しないHKUST-1粒子を含む混合膜ネットワークに対して選択性が向上し得る。別の例として、ZIF-8の分岐ナノ粒子から作製された浸出性のネットワークを含む混合マトリックス膜ネットワークは、浸出ネットワークを形成しないZIF-8粒子を含む混合膜ネットワークに対して選択性が向上し得る。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、ポリマーマトリックス内にポリマーとの複数の接触点を形成し得る。これらの複数の接触点は、混合マトリックス膜の耐久性および構造完全性を改善することができ、ある特定のガスの吸着の際に混合マトリックス膜が可塑化を受ける程度を制限する。例えば、いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子を含む混合マトリックス膜のガス(例えば、CO)に対する可塑化圧力点は、同一のポリマーから作製されているが分岐ナノ粒子を欠く膜の可塑化圧力点と比較して比較的高い。
【0036】
ある特定の実施形態は、組成物に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、分岐ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、金属-有機構造体(MOF)を含む。例えば、図1Aは、ある特定の実施形態に従ったMOFを含む分岐ナノ粒子の透過型電子顕微鏡法画像(TEM)を示す。
【0037】
いくつかの実施形態では、MOFは、金属イオンを含む。金属イオンは、一般に、配位子に結合することができる任意の金属イオンであり得る。例えば、金属イオンは、ある特定の実施形態によれば、亜鉛、アルミニウム、またはマグネシウムであり得る。いくつかの実施形態では、金属イオンは亜鉛である。いくつかの実施形態では、金属イオンは遷移金属イオンである。MOF中に包摂することができる遷移金属イオンの非限定的な例には、ある特定の実施形態によれば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ジルコニウム、またはクロムが含まれる。いくつかの実施形態では、金属イオンは銅である。
【0038】
いくつかの実施形態では、MOFは多座配位子を含む。多座配位子は、一般に、ルイス酸に結合することができる少なくとも2つの部分(例えば、金属イオン)を含む。いくつかの実施形態では、多座配位子は有機分子である。多座配位子は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの金属に結合することができる場合がある。いくつかの実施形態では、多座配位子は、少なくとも2つのカルボキシラート基を含む。いくつかのかかる基の非限定的な例には、ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシラート、ベンゼン-1,4-ジカルボキシラート、ナフタレン-2,6-ジカルボキシラート、1,3,5-トリス(カルボキシフェニル)ベンゼン、2-テレフタラート、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシラート、および5,5’-(9,10-アントラセンジイル)ジ-イソフタラートが含まれる。他の実施形態では、多座配位子は、複数のカルボキシラート基を含まない。例えば、いくつかの実施形態では、多座配位子はイミダゾラートを含む。例えば、多座配位子は、ある特定の実施形態によれば、イミダゾラートであり得る。いくつかの実施形態では、多座配位子は2-メチル-イミダゾラートである。
【0039】
分岐ナノ粒子は、種々のクラスのMOFを含むことができる。いくつかの実施形態では
、分岐ナノ粒子は、カルボキシラート系MOFを含む。カルボキシラート系MOFは、一般に、少なくとも2つのカルボキシラート基を含む多座配位子を含む。分岐ナノ粒子が含むことができるカルボキシラートMOFの非限定的な例には、UiO-66、MIL-53、MIL-96、MIL-100、MIL-101、MIL-125、およびMOF-74が含まれる。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、カルボキシラート系MOFであるHKUST-1を含む。本明細書中に列挙したMOFの名称は、金属-有機構造体に精通した当業者に一般的に知られている。他のクラスのMOFも適切であり、ゼオライト様イミダゾラート構造体(ZIF)が含まれる。ゼオライト様イミダゾラート構造体は、様々な金属イオンのうちのいずれかを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、ゼオライト様イミダゾラート構造体は、鉄、コバルト、銅、もしくは亜鉛イオン、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ゼオライト様イミダゾラート構造体は、亜鉛イオンを含む。例えば、いくつかの実施形態では、分岐MOFナノ粒子は、ZIF-8を含む。様々な官能基(例えば、ヒドロキシ基、アルキル基、アミノ基、ハロ基、チオ基、ニトロ基など)の付加によって誘導体化されている多座配位子を含み得る修飾MOF、ならびに金属の少なくとも一部が異なる金属に置換されている(例えば、亜鉛がマグネシウムに置換されている)MOFも、分岐ナノ粒子で使用され得る。
【0040】
前述のように、いくつかの実施形態では、組成物は、分岐ナノ粒子を含む。ナノ粒子は、一般に、構造物の幾何学的中心を通して測定したときに少なくとも1つの横断面の寸法が500ナノメートルまたはそれ未満の粒子を指す。一般に、ナノ粒子が少なくとも2つの枝を含み、この枝の各々が末端間で接続している比較的高いアスペクト比(例えば、比較的高い長さ対幅比)を有し、枝のうちの少なくとも2つが同一直線上にない場合、ナノ粒子は分岐している。いくつかの実施形態では、アスペクト比が比較的高い枝の長さ対幅の比は、5またはそれを超え、10またはそれを超え、そして/または15まで、20まで、またはそれを超える。例えば、図2Aは、ある特定の実施形態に従った枝1、枝2、および枝3を含む分岐ナノ粒子100を示す。枝1、枝2、および枝3は、末端間で接続されており、全てが同一直線上にない。別の非限定的な例として、図2Bは、ある特定の実施形態に従った枝1、枝2、枝3、および枝4を含む分岐ナノ粒子200を示す。
【0041】
いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、相互に非平面である枝を含む。例えば、図2Aに戻ると、ある特定の実施形態によれば、枝1、枝2、および枝3は、非平面である。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、相互接続していると見なされ得る。いくつかの実施形態では、枝が相互接続していると、比較的直線状で一次元のロッドよりも高密度のMOF骨格構造を得ることができ、デバイスをより容易に作製することができる。その1つの理由は、いくつかの実施形態によれば、相互接続した分岐粒子の枝が比較的無作為に配向し、相互接続した分岐ナノ粒子が任意に回転して他の相互接続した分岐ナノ粒子との粒子間接触を妨げる可能性が低いという事実のために、相互接続した分岐粒子を整列させる必要がほとんどないことである。ある特定の実施形態によれば、相互接続した分岐ナノ粒子が他の相互接続した分岐ナノ粒子と末端間で接続し、それにより、多次元MOF構造を形成する場合に、かかる接続が生じ得る。かかる構造は、ある特定の実施形態によれば、ポリマーマトリックスまたは溶液などの連続相中で形成され得る。さらに、分岐ナノ粒子は、いくつかの実施形態では、緊密な分岐点(すなわち、枝間の角度が比較的小さい)を有する。かかる緊密な分岐点により、枝間の中間部の空間が比較的小さいために、混合マトリックス膜中のMOF-ポリマーが高密度で接触し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、アスペクト比が比較的高い。アスペクト比が高いことは、いくつかの実施形態では、分岐粒子がチャネルが長い接続構造を形成するのに役立ち得る。アスペクト比は、分岐ナノ粒子の流体力学半径(動的光散乱によって測定した場合)を、最大直径(TEMによって測定した場合)を有する分岐粒子中の枝の直径で割ることによって測定することができる。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は
、少なくとも5のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、少なくとも8、少なくとも10、またはそれを超えるアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、20またはそれ未満、15またはそれ未満、またはそれ未満のアスペクト比。上記範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、5~20の範囲のアスペクト比を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、比較的小さい流体力学的直径を有する。流体力学的直径は、測定される粒子と同一の様式で拡散する仮説上の剛体球の直径を指す。下記のように、流体力学半径が比較的小さいと、部分的に、分岐ナノ粒子は、懸濁液中での凝集または集塊が回避され、膜構造物中で十分に分散され、均一に分布することができる。前述のように、粒子の流体力学半径を、動的光散乱(DLS)を使用して測定することができる。より具体的には、流体力学半径を、メタノール(MeOH)溶液中に分岐ナノ粒子を懸濁し、超音波処理して分岐ナノ粒子を均一に分散させ、次いで、Zetasizer Nano S90(Marvern)を用いて35℃でDLS測定を行うことによって測定することができる。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、2μmまたはそれ未満の流体力学的直径を有する。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、1μmまたはそれ未満、500nmまたはそれ未満、400nmまたはそれ未満、300nmまたはそれ未満、200nmまたはそれ未満、150nmまたはそれ未満、100nmまたはそれ未満、またはそれ未満の流体力学的直径を有する。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、少なくとも20nm、少なくとも30nm、またはそれを超える流体力学的直径を有する。上記範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、少なくとも20nmかつ2μm未満の流体力学的直径を有する。
【0044】
前述のように、分岐ナノ粒子の枝の直径は比較的小さい。かかる直径を、TEMによって測定することができる。枝の直径の小ささは、部分的に、良好な透過特性を有する多次元構造の形成に寄与し得る。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子の枝の直径は、200nmまたはそれ未満である。いくつかの実施形態では、枝の直径は、100nmまたはそれ未満、50nmまたはそれ未満、30nmまたはそれ未満、20nmまたはそれ未満、15nmまたはそれ未満、10nmまたはそれ未満、またはそれ未満である。いくつかの実施形態では、枝の直径は、少なくとも2nm、少なくとも5nm、またはそれを超える。上記範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子の枝の直径は、少なくとも2nmかつ200nm未満である。いくつかの実施形態では、少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%)の分岐ナノ粒子の枝の直径は、200nmまたはそれ未満である。いくつかの実施形態では、少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%)の分岐ナノ粒子の枝の直径は、100nmまたはそれ未満、50nmまたはそれ未満、30nmまたはそれ未満、20nmまたはそれ未満、15nmまたはそれ未満、10nmまたはそれ未満、またはそれ未満である。いくつかの実施形態では、少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%)の分岐ナノ粒子の枝の直径は、少なくとも2nm、少なくとも5nm、またはそれを超える。上記範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%)の分岐ナノ粒子分岐ナノ粒子の枝の直径は、少なくとも2nmかつ200nm未満である。上記範囲の直径を有する枝を有する分岐ナノ粒子の百分率を、TEMを使用して決定することができる。
【0045】
MOFを含む粒子を、いくつかの実施形態では、溶液中で前駆体を組み合わせることによって形成することができる。いくつかの実施形態では、MOFを含む粒子は、液体中で金属塩、多座配位子、および化学調節物質を組み合わせることによって形成される。例え
ば、ある特定の実施形態によれば、硝酸銅をメタノール中でベンゼン-1,3,5-カルボン酸(トリメシン酸)および酢酸ナトリウムと組み合わせて、HKUST-1を含む分岐ナノ粒子が形成される。別の例として、いくつかの実施形態では、ZIF-8を含む分岐ナノ粒子を形成するための、メタノール中の硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO・6H2O)、(またはZn(acac)、Zn(ClO、ZnSO、Zn(OAc))、ZnCl、ZnBr、ZnI、もしくはこれらの組み合わせのいずれか)、2-メチル-イミダゾール、およびトリエチルアミン。
【0046】
いくつかの実施形態では、ある特定の量の化学調節物質が存在すると、得られるMOF粒子のサイズおよび/または形態に影響を及ぼし得る。化学調節物質は、一般に、粒子を形成する化学反応中に存在するとサイズおよび/または形態を異ならせる反応混合物への添加物を指す。いくつかの実施形態では、化学調節物質は、多座配位子と競合して金属塩の金属イオンと結合することができ、それにより、粒子の成長速度を遅延させることができる。いくつかの実施形態では、化学調節物質は、粒子の核形成を促進することができ、それにより、反応中に形成された個別粒子の数を増加させることができる。いくつかの実施形態では、化学調節物質は、金属-有機構造体の結晶構造に欠陥をもとらすことができ、それにより、結晶面の表面エネルギーおよび得られる形態に影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、化学調節物質は、溶液中のプロトン活量に影響を及ぼすことができる(すなわち、反応混合物における酸-塩基化学に影響を及ぼすことができる)。
【0047】
いくつかの実施形態では、化学調節物質は、カチオンおよびアニオンを含む塩である。いくつかの実施形態では、アニオンは、少なくとも1つのカルボキシラート基を有する。例えば、いくつかの実施形態では、アニオンはアセタートである。例えば、いくつかの実施形態では、化学調節物質は酢酸ナトリウムである。全てではないがいくつかの実施形態では、化学調節物質は、ギ酸ナトリウム、またはプロピオン酸ナトリウムである。
【0048】
いくつかの実施形態では、化学調節物質はアミンを含む。いくつかの実施形態では、化学調節物質はアミンである。化学調節物質のアミンは、様々な適切なアミンのうちのいずれかであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、アミンは第一級アミンである。いくつかの実施形態では、アミンは第二級アミンである。いくつかの実施形態では、アミンは第三級アミンである。アミンは、様々な適切な置換基のうちのいずれかを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、化学調節物質は、式NRを有するアミンを含み、ここで、各Rは、水素、必要に応じて置換されたC1~8分岐および非分岐のアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、および必要に応じて置換されたアリールから独立して選択される。一例として、いくつかの実施形態では、化学調節物質は、トリエチルアミンであるか、これを含む。化学調節物質の他の非限定的な例には、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、およびn-ブチルアミンが含まれる。
【0049】
前述のように、いくつかの例では、化学調節物質は、反応混合物の酸-塩基化学に影響を及ぼし得る。いくつかのかかる場合、化学調節物質は、ある特定の範囲のpKを有する。例えば、いくつかの実施形態では、液体中で化学反応が起こる化学調節物質のpKは、金属-有機構造体中の金属イオンに結合する多座配位子部分のpKであるかそれより高い。例えば、多座配位子が少なくとも2つのカルボキシラート基を含み(そして、得られたMOF中でカルボキシラート基が金属イオンに結合する)、合成が起こる溶液がメタノールであるいくつかの実施形態では、化学調節物質のpKは、メタノール中の多座配位子のカルボキシラート基より高い。別の例として、多座配位子がイミダゾラート基を含み、合成が起こる溶液がメタノールであるいくつかの実施形態では、化学調節物質のpKは、メタノール中のイミダゾラート配位子のpKより高い。いくつかの実施形態では、化学調節物質のpKaは比較的高い。例えば、いくつかの実施形態では、化学調節物質(例えば、アセタート、アミンなど)のメタノール中のpKは、3.0またはそれよ
り高いか、4.0より高いか、5.0より高いか、6.0より高いか、7.0より高いか、7.5より高いか、8.0より高いか、8.0より高いか、9.0より高いか、それより高い。いくつかの実施形態では、化学調節物質のメタノール中のpKは、15.0またはそれ未満、12.0またはそれ未満、11.5またはそれ未満、11.0またはそれ未満、10.5またはそれ未満、10.0またはそれ未満、またはそれ未満である。これらの範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、化学調節物質のメタノール中のpKは、3.0またはそれを超えかつ15.0またはそれ未満、5.0またはそれを超えかつ12.0またはそれ未満、または8.0またはそれを超えかつ11.5またはそれ未満である。
【0050】
いくつかの実施形態では、液体中で組み合わされて、MOFを含む分岐ナノ粒子を形成する金属塩、多座配位子、および/または化学調節物質は、得られる分岐ナノ粒子がある特定の性質を得るように選択する。いくつかの実施形態では、多座配位子の濃度に対して少なくとも0.1当量の化学調節物質が存在すると、前述の分岐ナノ粒子のアスペクト比が、前述の化学調節物質の非存在下での同一条件下で形成された粒子に対して少なくとも3倍に増加する。いくつかの実施形態では、金属塩、多座配位子、および/または化学調節物質は、多座配位子の濃度に対して少なくとも0.1、少なくとも0.15、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.5、少なくとも1.0、少なくとも2.0、少なくとも5.0、またはそれを超える当量の化学調節物質が存在すると、前述の分岐ナノ粒子のアスペクト比が、前述の化学調節物質の非存在下での同一条件下で形成された粒子に対して少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、またはそれを超えて増加するように選択される。本開示から利益が得られる当業者は、上記の効果を達成するための金属塩、多座配位子、および/または化学調節物質の選択方法を理解しているであろう。例えば、いくつかの実施形態では、金属塩および多座配位子は、所望のMOFを形成するために選択され、化学調節物質は、多座配位子の結合部分と比較した化学調節物質の相対pKまたは金属塩の金属イオンと配位する能力の一方または両方に基づいて選択される。同一条件下で行われる反応は、一般に、別段の記載がない限り、同一濃度の試薬および同一の混合条件(例えば、同一体積の反応混合物および同一の撹拌速度)を使用して、同一の液体(例えば、同一の溶媒混合物)中にて同一の温度および圧力で同一の時間行った反応であると見なされる。例えば、ある特定の実施形態によれば、トリメシン酸の濃度に対して0.1当量の酢酸ナトリウムの存在下にて、硝酸銅三水和物をメタノール中でトリメシン酸と23℃で混合した場合、得られたHKUST-1の分岐ナノ粒子のアスペクト比は、0.1当量の酢酸ナトリウムの非存在下にて同一濃度の硝酸銅およびトリメシン酸をメタノール中にて23℃で混合することによって形成されたHKUST-1粒子のアスペクト比より少なくとも3倍高い。
【0051】
いくつかの実施形態では、金属塩、多座配位子、および化学調節物質が混合される液体は、比較的高い体積%のメタノールを含む。メタノールの体積%が高いことは、少なくとも一部は、本明細書中に記載のMOF含有分岐ナノ粒子の驚くべきサイズおよび形態に寄与し得る。いくつかの実施形態では、液体は、少なくとも少なくとも99%のメタノール、または100%メタノールである。いくつかの実施形態では、他の溶媒混合物が使用されることも理解すべきである。例えば、いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子が形成される液体は、100%未満(例えば、100体積%未満)、99%未満、またはそれ未満のメタノールを含む溶媒混合物である。いくつかの実施形態では、液体は、メタノールを含まない溶媒混合物である。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、反応混合物のプロトン化した形態および脱プロトン化した形態の構成要素(多座配位子など)の混和性の相違は、少なくとも一部が、分岐MOFナノ粒子の形成に寄与し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、上記の前駆体は、比較的穏やかな条件で組み合わされる。例えば、いくつかの実施形態では、液体は、15℃またはそれを超え、かつ60℃またはそ
れ未満の温度にて少なくとも10分間混合される。かかる穏やかな条件は、MOFを含む分岐ナノ粒子を容易に製造および加工することが可能な場合がある。
【0053】
いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は非凝集である。すなわち、液体懸濁物などの連続相またはポリマーマトリックス中に懸濁される場合、分岐ナノ粒子は、一定の実施形態によれば、凝集しない。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、連続相中の懸濁物中で少なくとも1ヶ月間集塊も凝集もしない。例えば、いくつかの実施形態では、HKUST-1分岐ナノ粒子の懸濁物は、少なくとも1ヶ月間、凝集、集塊、沈降しない。下記のように、分岐ナノ粒子がポリマー懸濁物中で凝集または集塊を回避する能力は、理論に拘束されないが、混合マトリックス膜中の粒子の均一な分布に寄与し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、分岐MOFナノ粒子は、MOFと会合した化合物を含む。いくつかのかかる実施形態では、分岐ナノ粒子の合成中に使用される化学調節物質は、分岐ナノ粒子の形成後にMOFと会合する。化合物(例えば、化学調節物質)は、様々な方法のうちのいずれか(吸着(例えば、物理吸着、化学吸着)、MOFの一部との配位が含まれるが、これらに限定されない)でMOFと会合し得る。例えば、いくつかの実施形態では、化合物(例えば、化学調節物質)は、MOFのルイス酸(MOFの金属イオンなど)と配位するルイス塩基である。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、上記の化学調節物質のいずれか、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、金属-有機構造体と会合したカルボキシラート基(例えば、MOFと会合したアセタート基)を含む。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子はアミンを含む。いくつかの実施形態では、アミンは、分岐ナノ粒子のMOFと会合する(例えば、MOFの金属イオンに配位する)。アミンは、上記の任意のアミンであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、式NRを有するアミンを含み、ここで、各Rは、水素、必要に応じて置換されたC1~8分岐および非分岐のアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、および必要に応じて置換されたアリールから独立して選択される。いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、トリエチルアミンを含む。分岐ナノ粒子と会合した化合物の存在を、例えば、X線光電子分光法(XPS)、または熱重量分析-質量分析(TGA-MS)などの分析技術を使用して判定することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、デバイスを記載する。いくつかの実施形態では、デバイスは混合マトリックス膜を含む。いくつかの実施形態では、混合膜マトリックスは、ポリマーを含むマトリックス(「ポリマーマトリックス」)を含む。様々なポリマーを、混合マトリックス膜のために使用することができる。適切なポリマーの非限定的な例には、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、セルローストリアセタート、ポリフェニレンオキシド、またはこれらの誘導体もしくは組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、固有の多孔度を有するポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、以下の構造:
【化1】
を有する6FDA-DAMポリイミドである。
【0056】
前述のように、ポリマーを含むマトリックス(「ポリマーマトリックス」)は、ポリマーに制限されたマトリックスまたはポリマーおよび他の材料を含むマトリックスを意味する。いくつかの実施形態におけるポリマーマトリックス中に存在し得る他の材料には、金
属イオン、残存化学調節物質分子、添加物(可塑剤、ゼオライト、炭素、およびシリカ粒子、またはこれらの組み合わせなど)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリマーは、マトリックスの重量に対して50重量パーセント(重量%)またはそれを超えるか、75重量%またはそれを超えるか、90重量%またはそれを超えるか、95重量%またはそれを超えるか、99重量%またはそれを超えるか、それを超える量でマトリックス中に存在する。いくつかの実施形態では、本質的に全てのマトリックスがポリマーから構成される。いくつかの実施形態では、全てのマトリックスがポリマーから構成される。
【0057】
いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、金属-有機構造体を含む粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子は、混合マトリックス膜中にある特定の重量百分率で存在する。いくつかの実施形態では、粒子の混合マトリックス膜中の重量百分率は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、またはそれを超える。いくつかの実施形態では、粒子の混合マトリックス膜中の重量百分率は、50%までである。いくつかの実施形態では、粒子の混合マトリックス膜中の重量百分率は、40%まで、またはそれ未満である。上記範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、粒子の混合マトリックス膜中の重量百分率は、少なくとも5%かつ50%までである。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、HKUST-1を含む粒子を含む。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、少なくとも90%のHKUST-1の粒子を含む。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、ZIF-8を含む粒子を含む。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、少なくとも90%のZIF-8の粒子を含む。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜の粒子は、本明細書中に記載の分岐MOFナノ粒子(例えば、分岐HKUST-1ナノ粒子、分岐ZIF-8ナノ粒子)である。
【0058】
前述のように、混合マトリックス膜は、ある特定の実施形態によれば、第1のガスおよび第2のガスを含むガス混合物から第1のガスの一部分を分離することができる。いくつかのかかる分離は、ガス混合物が混合マトリックス膜を通過したときに起こり得る。例えば、ある特定の実施形態によれば、混合マトリックス膜を、CHからCOまたはNからCOを分離するように構成することができる。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、炭化水素に関与する分離を行うことができる。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、パラフィンからオレフィンを分離することができる。例えば、いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、エタンからエチレン、またはプロパンからプロピレンを分離することができる。
【0059】
一般に、混合マトリックス膜は、ガス分離プロセス中に比較的高い選択性および比較的高い透過性または透過を有することが有益である。膜を通過するガスの透過性は、一般に、膜の厚さで割った膜を通過するガスの流動に関する。ガス混合物中の第2のガスを超える第1のガスの選択性は、一般に、第1のガスの透過性の第2のガスの透過性に対する比を指す。MOF粒子を含む混合マトリックス膜の共通する問題は、透過の低さまたは選択性の低さのいずれかである。かかる問題は、しばしば、MOF粒子とポリマーネットワークまたはポリマーマトリックスとの間の相分離に原因する。ポリマーと本明細書中に記載の分岐ナノ粒子ではないMOF粒子との間の相分離の例を、図4BのTEM中に示し(以下の実施例1に記載)、この相分離は、ポリマー相が上層を形成し、MOF粒子相が下層を形成している。かかる相分離はまた、MOFとポリマーマトリックスとの間に空隙を生じ得る。かかる空隙の例を、図7A~7C(以下の実施例1に記載)に示す。混合マトリックス膜中の相分離および空隙の存在により、選択性が低下する。
【0060】
いくつかの実施形態では、金属-有機構造体を含む粒子は、混合マトリックス膜中に均一に分布する。いくつかのかかる実施形態では、混合マトリックス膜の上層および混合マ
トリックス膜の下層は、粒子およびポリマーが同一で均一に分布している。図4Bは、ある特定の実施形態に従ったかかる均一な分布の例を示す。これを、混合マトリックス膜の上層および下層(逆もあり)で取得されたスペクトルを比較するためのATR-FTIR技術(その使用は、以下の実施例に記載している)を使用することによって判定することができる。ATR-FTIRスペクトルが分解可能な相違を示さない場合、粒子が均一に分布していると見なすことができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、空隙の量が比較的少ない。混合マトリックス膜中の空隙は、ガスを対流により透過させる傾向がある。対流輸送は、非可塑化ガスの圧力の増加につれてガス透過性が増加するときに認められる。この傾向は、金属-有機構造体の細孔の有効寸法よりも大きな有効寸法を有するポリマー-金属-有機構造体の界面欠陥に起因する圧力依存性の細孔の流れの特徴である。いくつかの実施形態では、対流輸送は、透過測定によって検出できない。
【0062】
いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、金属-有機構造体を含む分岐ナノ粒子を含む。例えば、いくつかの実施形態では、上記の混合マトリックス膜の粒子は、本明細書中に記載の金属-有機構造体を含む任意の分岐ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、膜中の粒子の重量を基準として、混合マトリックス膜中の少なくとも50重量パーセント(重量%)、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、または全ての金属-有機構造体粒子が本明細書中に記載の分岐ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、カルボキシラート系分岐ナノ粒子を含む分岐ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、HKUST-1を含む分岐ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、ZIF-8を含む分岐ナノ粒子を含む。
【0063】
ある特定の重量百分率で本明細書中に記載の分岐構造を有する金属-有機構造体粒子が存在すると、ある特定の実施形態によれば、混合金属膜のガス分離性能を改善することができる(以下および以下の実施例1を参照のこと)。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜中の分岐ナノ粒子の重量百分率は、少なくとも5%である。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜中の分岐ナノ粒子の重量百分率は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、またはそれを超える。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜中の分岐ナノ粒子の重量百分率は、50%までである。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜中の分岐ナノ粒子の重量百分率は、40%まで、またはそれ未満である。上記範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜中の分岐ナノ粒子の重量百分率は、少なくとも5%かつ50%までである。
【0064】
いくつかの実施形態では、分岐ナノ粒子は、少なくとも部分的に浸出性のネットワークを形成する。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、少なくとも部分的に浸出性のネットワークを含む。少なくとも部分的に浸出性のネットワークは、ガス分離中の混合マトリックス膜の性能の改善を補助し得る。図5A~5Eは、ある特定の実施形態に従ったかかる浸出性のネットワークの例を示す。
【0065】
いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜は、膨潤または可塑化に耐性を示す。可塑化は、ある特定のガスの吸着の際のポリマーネットワークまたはポリマーマトリックスの膨潤を指す。膜の可塑化を、ガスの圧力の関数としての膜を通過するガスの透過性をモニタリングすることによってモニタリングすることができる。低圧では、ガス透過性は、圧力の増加につれて減少する。可塑化が生じる場合、膜の膨潤のために圧力増加につれてガスの透過性が増加し始める、本明細書中で可塑化圧力点と呼ばれるある特定の圧力点に到達する。かかる膨潤は、一般に、選択性を低下させる。いくつかの実施形態では、混合
マトリックス膜のガスに対する可塑化圧力点は、前述の粒子を欠く実質的に同一の膜の可塑化圧力点の少なくとも1.5倍である。いくつかの実施形態では、混合マトリックス膜のガス(例えば、CO)に対する可塑化圧力点は、粒子を欠く実質的に同一の膜の可塑化圧力点の少なくとも1.5倍、少なくとも2.0倍、少なくとも5.0倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、および/または50倍までである。いくつかの実施形態では、750psiを超える圧力のガスでさえ可塑化圧力点は認められない。いくつかの実施形態では、ガスはCOである。いくつかの実施形態では、ガスは炭化水素である。可塑化圧力試験は、最初に認められた可塑化圧力未満、その後に可塑化圧力を超える複数の圧力点を試験し、各圧力で少なくとも6×タイムラグθ(ここで、θ=l/(6D))の期間保持する必要がある。この式において、lは混合マトリックス膜の膜厚に等しく、Dは、実験によって決定された膜中のCOの有効拡散係数である。
【0066】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を示すことを意図するが、本発明の全ての範囲を例示しない。
【実施例0067】
実施例1
HKUST-1粒子の合成
種々の構造およびサイズを有するHKUST-1粒子を、メタノール(MeOH)溶媒およびカルボキシラート化学調節物質(酢酸ナトリウム)を室温で1時間使用して合成した。図1Bは、化学調節物質を用いずに合成した典型的なHKUST-1粒子のTEM画像を示し、この粒子は、ミクロンサイズで(横断面1~2μm)八面体の形態で巨大な集塊を形成している。他方では、HKUST-1合成時に調節物質(トリメシン酸に対して0.3モル当量)を導入すると、図1Aに示すように分岐構造を生じた。図1Aは、これらのHKUST-1粒子が長さおよそ100~300nmの末端間距離および幅およびおよそ10~30nmの枝を示し、アスペクト比はおよそ5~20に相当することを示す。分岐HKUST-1粒子を、乾燥した粒子溶液からTEM銅製グリッド上に分散させた。TEMグリッド上の数個のメッシュは、いかなる有意な集塊もない十分に分散された分岐HKUST-1ナノ粒子を示した。さらに、図6A~6Dに示したTEM画像は、HKUST-1粒子のサイズおよび構造に及ぼす化学調節物質濃度の系統的変動(トリメシン酸に対して0、0.1、0.3、および0.5モル当量、これらはそれぞれ図6A、6B、6C、および6Dに対応する)の効果を実証していた。化学調節物質の濃度が増加するにつれて、HKUST-1粒子のサイズは、トリメシン酸に対して0.3~0.5モル当量の調節物質で最小サイズに到達するまで減少した。このサイズはまた、分岐構造については比較的高いアスペクト比に対応する。HKUST-1粒子のサイズおよび構造の効果を評価するために、酢酸ナトリウムを用いずに合成したミクロンサイズのHKUST-1粒子を、バルクHKUST-1標準試料として選択した。図1Bは、バルクHKUST-1粒子のTEM画像を示す。図1Aは、分岐HKUST-1試料としての、トリメシン酸に対して0.3当量の酢酸ナトリウムを用いて合成したHKUST-1ナノ粒子のTEMを示す。図3Aは、バルクおよび分岐のHKUST-1粒子についてのXRDパターンを示す。バルクおよび分岐のHKUST-1粒子は共に同一のHKUST-1の結晶相を示したが、分岐HKUST-1ナノ粒子についてはピーク幅が広く、これは微結晶サイズがより小さいことを示している。(222)プレートの主要ブラッグピークにシェラーの式を適用すると、分岐HKUST-1ナノ粒子の微結晶サイズが、およそ16nmであると評価された。このフィーチャサイズは、分岐構造の幅に対応する。XRDの結果は、HKUST-1合成中に酢酸ナトリウム濃度を0→0.1→0.3→0.5モル当量に増加させると、ピーク幅が広いことによって示唆されるように、微結晶の枝サイズが減少する一方で、HKUST-1結晶構造は依然として維持されることを示していた。図3Bは、溶媒としてMeOHを使用した希釈懸濁物を用いたDLSによって測定したバルクおよび分岐のHKUST-1粒子の粒子分布を示す。バルクHKUST-1粒子はTEMによって認
められた1~2μmのサイズの粒子にほぼ適合したが、HKUST-1ナノ粒子は遥かに小さく、その直径はおよそ100~300nmであった。DLS測定によって計算された粒径分布がストークス・アインシュタインの式を使用した球体の流体力学半径に基づいており、これはDLS装置が粒子のアスペクト比を考慮できないことを意味することに留意すべきである。したがって、DLS装置は、粒子の長い方の長さを骨格となる流体力学的球体の半径であると仮定していた。このため、DLSによって推定された長さ100~300nmの粒子直径は、相互接続した分岐構造の流体力学半径に厳密に適用していた。DLS測定値は、HKUST-1合成中に酢酸ナトリウム濃度を変動させるとHKUST-1粒子の粒径分布が変動することを示していた。さらに酢酸ナトリウムを添加すると、枝構造の粒径が最も小さくなるまで(100~200nm)粒径分布が減少した。全体的に見て、TEM分析、XRD分析、およびDLS分析によって確認した場合、酢酸ナトリウム調節物質を用いて形成された分岐HKUST-1ナノ粒子の枝幅は10~30nmであり、流体力学的直径は100~300nmであった。これらの結果は、これらの多次元MOFのアスペクト比がおよそ5~20であることを示唆していた。
【0068】
合成および化学構造に及ぼす化学調節物質の濃度の影響を調査するために、一連のHKUST-1粒子に対してさらなる特徴づけ試験を行った。独立した試薬(すなわち、硝酸銅三水和物およびトリメシン酸)、化学調節物質(酢酸ナトリウム)、および生成物(分岐HKUST-1ナノ粒子)のフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを取得した。分岐HKUST-1ナノ粒子の吸収バンドは1649、1448、および1373cm-1であり、これはカルボキシラート基と銅金属部位との間の配位(COO-Cu)を示しており、HKUST-1構造体が首尾よく形成されたことが示唆された。未反応のトリメシン酸を、新鮮なMeOH溶媒の少なくとも3回およびその後のTHF溶媒の少なくとも3回の複数の洗浄工程によって完全に洗い流した。さらに、およそ490cm-1の吸収バンドは、カルボキシラート基の架橋を介した銅金属イオンと有機配位子との間の強固な結合を示していた。HKUST-1合成に及ぼす化学調節物質の影響を実証するために、種々の酢酸ナトリウム濃度を使用して合成した一連のHKUST-1粒子のFT-IRスペクトルを取得した。0、0.1、0.3、および0.5モル当量の酢酸ナトリウムを用いて合成したHKUST-1のFT-IRスペクトルは全て外観が類似しており、全て上記の特徴的なHKUST-1ピークを示していた。しかし、およそ1550cm-1のピーク強度が漸増し、酢酸ナトリウムの当量が増加するにつれて1550cm-1でのピーク強度が増加した。この変化は、構造体中の酢酸ナトリウム調節物質に由来するアセタート濃度が増加し、HKUST-1の結晶格子に欠陥を生じることを示唆した。これらの欠陥は、HKUST-1構造体に特徴的な三座配位子(トリメシン酸)の単座配位子(酢酸イオン)への置換に起因する可能性がある。HKUST-1合成中に酢酸ナトリウム濃度が増加すると、HKUST-1における酢酸ナトリウム置換に起因する欠陥がより多くなった。それにもかかわらず、HKUST-1の構造体構造は保持された。種々の酢酸ナトリウム濃度を用いて形成された一連のHKUST-1粒子のラマンスペクトルも取得し、HKUST-1粒子の全ての化学結合(Cu-Cu(177cm-1)、C-H(745および829cm-1)、C=C(1005および1614cm-1)、およびC-O(1462および1542cm-1)振動形式など)が酢酸ナトリウム濃度と無関係に同一の位置に配置された。しかし、ラマンスペクトルを拡大したとき、分岐HKUST-1ナノ粒子中のC-O官能基ピークに1462cm-1から1456cm-1への小さなピークシフトを検出できた。このシフトは、HKUST-1合成中の酢酸ナトリウム濃度が増加するにつれてHKUST-1粒子のC-O官能基ピークの位置が純粋な酢酸ナトリウムの前述の位置に近づくことを示唆し、それにより、分岐HKUST-1構造体中のトリメシン酸のみが酢酸ナトリウムに置換されたことを示唆した。特に興味深いことに、種々の酢酸ナトリウム濃度を用いて形成された一連のHKUST-1粒子の目視検査により、わずかに異なる色を呈することが示された。色差は、Cu2+金属中心周囲の粒径の相違および/または周囲の配位環境の相違を示していた。両方の理由のために色彩が変
化する。分岐HKUST-1ナノ粒子はバルクHKUST-1粒子より屈折率が低く、それにより、光の反射率が低い。粒径が増加すると屈折率が減少するので、これらのバルク粒子は暗青色を呈した。さらに、分岐HKUST-1ナノ粒子は欠陥を含み、Cu2+金属中心周囲の配位環境も試料の色彩に影響を及ぼし得る。粉末ペレットアクセサリーを用いて調製した場合の、種々の酢酸ナトリウム濃度(0、0.1、0.3、および0.5モル当量のHKUST-1)を用いて形成された一連のHKUST-1粒子についての拡散反射紫外可視スペクトルを取得した。全体的に見て、HKUST-1粒子の拡散反射紫外可視吸収は、以下の2つに分けられた特徴的な範囲を有する:トリカルボキシラート基中の酸素からCu2+金属イオンへの配位子から金属への電荷移動(LMCT)(波長500nm未満)およびCu2+金属中心周囲のd-d遷移(波長500nm超)。典型的なバルクHKUST-1粒子と比較して、分岐HKUST-1ナノ粒子は、500nm未満の波長範囲のピークシフトの増加および500nmを超える波長範囲のピークシフトの減少を示した。両方のピークシフトは、HKUST-1構造体中の置換されたアセタートおよびリンカーの喪失などの欠陥を示す。
【0069】
表1では、種々の酢酸ナトリウム濃度を用いて形成された一連のHKUST-1粒子についてのN吸脱着等温線の結果を示す。バルクHKUST-1試料のBET表面積はおよそ1140m/gであった。合成において酢酸ナトリウムが導入されたとき、HKUST-1粒子のBET表面積は、1140m/gから572m/gまで大きく減少した。このHKUST-1粒子のBET表面積の減少は微細孔容積の減少に起因し、形成された特定の欠陥がバルク対応物と比較して分岐HKUST-1ナノ粒子の露出表面積を減少させる可能性があることを示す。これらのN吸着等温線は、XRDによって判定された結晶強度の減少とも相関し、バルクHKUST-1粒子が分岐HKUST-1ナノ粒子より結晶強度が高いことを示す。
【0070】
【表1】
【0071】
バルクおよび分岐のHKUST-1粒子の熱重量分析(TGA)曲線を、調製時試料および活性化した試料についての熱挙動を観察するための2つの異なる方法によって決定した。第1に、調製時のバルクおよび分岐のHKUST-1粉末試料を、TGAパンにロードし、大気下にて20℃/分の加熱速度で室温から800℃まで試験した。分岐HKUST-1ナノ粒子は、分解前に、バルク試料が30重量%重量減少したのと比較して、20重量%重量減少した。溶媒の重量減少の相違は、分岐HKUST-1ナノ粒子の欠陥に起因する溶媒容量の低下に起因していた。活性化および分解手技のために、バルクおよび分岐のHKUST-1試料を、窒素雰囲気下にて150℃で2時間活性化させ、室温に冷却後、前述と同一の速度で800℃まで徐々に加熱する第2のTGAを行った。活性化後、300℃まで有意な重量変化は認められず、これは活性化プロセス中に完全に溶媒が除去
されたことを示す。300℃で、バルクおよび分岐のHKUST-1粒子の両方が分解し、酸化銅に変換された。アニーリング後のバルクおよび分岐のHKUST-1粒子の最終質量を、混合マトリックス膜中のHKUST-1粒子の実際の重量負荷を逆算するために使用したことに注目すべきである。
【0072】
混合マトリックス膜の作製
溶液中のMOF粒子の分散安定性は、MOF粒子が均一に分布された状態でポリマーマトリックス中に組み込むことができるかどうかを決定する重要な要因である。したがって、混合マトリックス膜を作製する前に、MeOH中の一連のHKUST-1懸濁物(0、0.1、0.3、および0.5モル当量の酢酸ナトリウムを含む)について分散試験を行った。これらの結果は、強い撹拌および超音波処理の直後に全てのHKUST-1懸濁物が良好な分布を示すことを実証した。しかし、懸濁物をベンチトップ上に数時間放置すると、バルクHKUST-1はガラスバイアルの底に沈降し始めた。1日後に全てのバルクHKUST-1粒子がガラスバイアルの底に沈降し、一方、全ての分岐HKUST-1懸濁物は均一な分布を保持していた。特に興味深いことに、混合マトリックス膜中に均一に分散されたMOFを組み込むためにHKUST-1懸濁物を最大で12時間十分に分散させる必要があるが、分岐HKUST-1懸濁物は、2週間を超えて均一な分散状態を保持していた。種々のHKUST-1重量が負荷された(10、20、および30重量%)バルクおよび分岐のHKUST-1混合マトリックス膜を、薄膜の厚さを一様にし、かつ複合材料中のフィラー分布を均一にするためにおよそ6時間蒸発させる溶媒蒸発法を使用して作製した。混合マトリックス膜の作製のために、6FDA-DAMポリイミドをマトリックスとして使用した。ポリマーの詳細な特徴付けの結果(すなわち、純度および分子量)を、表2に示す。核磁気共鳴(NMR)スペクトルにより、6FDA-DAMポリイミドマトリックスの帰属および純度が確認された。TGA曲線由来の混合マトリックス膜中の実際のHKUST-1重量負荷は全て目標とする重量負荷に近いが、異なるバッチから独立して調製した試料についての不確定度は±1%であることに留意すべきである。6FDA-DAMポリマー中のバルクおよび分岐のHKUST-1の分散およびネットワーク形成を実証するために、図4は、種々のHKUST-1重量負荷を用いたバルク(図4A)および分岐(図4B)HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜の横断面像を示す。混合マトリックス膜を、液体窒素を用いて2片に割断し、FE-SEMを用いて横断面を観察した。図4Aは、20重量%のバルクHKUST-1負荷を用いたバルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックスの横断面FE-SEM画像を示す。10から30重量%までバルクHKUST-1粒子を漸増的に負荷した膜を作製し、FE-SEMを使用して観察した。バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、溶媒蒸発中に生じたバルクHKUST-1の急速な粒子沈降に起因した、MOFが豊富な相とポリマーが豊富な相とに望ましくなく相分離した構造を示した。混合マトリックス膜中のMOFが豊富な層の厚さは、バルクHKUST-1の重量負荷が増加するにつれて増加した。30重量%バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のMOFが豊富な層の厚さは20~25μmであり、これは、膜の全厚(40~50μm)のほぼ半分であった。図4Bは、20重量%の分岐HKUST-1粒子負荷を用いた分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFE-SEM画像を示す。10~30重量%の分岐HKUST-1負荷を用いた膜を作製し、FE-SEMを用いて観察した。バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜と比較して、分岐HKUST-1ナノ粒子は6FDA-DAMポリマーマトリックス中に均一に分布し、薄膜全体にわたって均一な形態が得られた。30重量%の分岐HKUST-1試料内であっても分岐HKUST-1粒子のいかなる顕著な集塊も認められないようであった。さらに、バルクHKUST-1と分岐HKUST-1との間で粒径および分散性が異なるので、キャストHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は異なる外観を示した。バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、巨大なHKUST-1粒子集塊に起因する反射率の高さに起因して不透明であったのに対して、分岐HKUS
T-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、小さな分岐HKUST-1ナノ粒子が有効に分散していたために透明であった。HKUST-1の結晶構造の画像は、透明な分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜の後ろから明確に観察することができるが、前述の画像は、不透明バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜を通して観察することができる。
【0073】
【表2】
【0074】
割断された混合マトリックス膜を使用して透明な横断面画像を得ることは困難であった。これらの横断面SEM画像は、高解像度であっても局在化したHKUST-1粒子の分散やHKUST-1粒子と6FDA-DAMポリマーとの間の界面空隙を明確に示さなかった。これらの問題に取り組むために、正確な横断面分析のためにバルクおよび分岐のHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜をFIB-SEM画像化した。FIB-SEM技術にはGa-イオンミリングを使用し、液体窒素割断よりも有意に滑らかな横断面を形成した。混合マトリックス膜の上部のミリングによって分岐HKUST-1試料の画像を得た。しかし、バルクHKUST-1粒子が混合マトリックス膜の底に沈降したので、膜をFIB-SEMミリングのために反転させて、MOFが豊富な相のみを分析した。図7は、バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFIB-SEM画像を示す。種々のHKUST-1重量負荷を使用し、その全てが図7A~7Cに示した結果と一致した結果を示した。FIB-SEM画像において、明るい部分はHKUST-1粒子であるのに対して、暗い部分は6FDA-DAMポリマーである。前のFE-SEM画像と一致して、MOFが豊富な層の厚さは、HKUST-1重量負荷の増加に伴って増加した。特に興味深いことに、バルクHKUST-1粒子と6FDA-DAMポリマーとの間の明確かつ視覚可能な界面空隙が存在し、これは、以下に示した透過の結果と一致していた。さらに、図19中の線によって強調したカーテン効果は、非効率な材料の充填に関連する密度勾配に起因しており、それにより、巨大な空隙のさらなる証拠を提供している。図8は、30重量%の分岐HKUST-1負荷を用いた分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFIB-SEM画像を種々の倍率で示す(図8A~8C)。著しいことに、図7と対照的に、図20中の分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、ポリマーマトリックス中に分岐HKUST-1ナノ粒子が均一に分散しており、また、粒子とポリマーとの間に界面空隙は認められなかった。特に興味深いことに、図5A~5Cは、30重量%分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜が、キャスト粒子形態に特徴的な浸出ネットワークを保持していることを示す。分岐HKUST-1ナノ粒子は、薄膜全体に十分に分布しており、分岐構造の高アスペクト比から恩恵を受ける自由表面間の粒子の接続性を示した。混合マトリックス膜中の分岐HKUST-1ナノ粒子の接続性をより明確に査定するために、長さ11μm、幅29μm、および深さ4μmの薄膜切片のFIB-SEM断面断層像を得た。図5D~5Eは、FIB-SEM断層撮影法を使用して30重量%分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜の再構築した3D画像を示す。分岐HKUST-1ナノ粒子から、高度に相互接続したナノ構造複合薄膜が形成された。
【0075】
図9A~9Bは、純粋な6FDA-DAM薄膜および種々のHKUST-1重量負荷を用いたバルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜についてのATRア
クセサリーを使用したFT-IRスペクトルを示す。ATRアクセサリーの透過深度はおよそ1~2μmであるので、厚さがおよそ50μmの薄膜が両方の界面で均一なMOF分布を有するかどうかを判定することが可能であったことに注目すべきである。混合マトリックス膜は種々のバルクHKUST-1重量負荷を有していたが、混合マトリックス膜の上側のFT-IRスペクトル(図9A)は、特徴的が同一の6FDA-DAMの官能基吸収バンドを示し、いかなる注目すべき特徴を示すバルクHKUST-1のピークも存在しなかった。他方では、図9Bに示すように、混合マトリックス膜の下側のFT-IRスペクトルは、バルクHKUST-1重量負荷と無関係に1645cm-1および490cm-1に特徴がほとんど同一のHKUST-1ピーク強度を示し、これはバルクHKUST-1粒子のほとんどが混合マトリックス膜の下側に沈降していることを示していた。図10A~10Bは、同一のATRアクセサリーを使用した、純粋な6FDA-DAM薄膜および種々のHKUST-1重量負荷を用いた分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFT-IRスペクトルを示す。バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFT-IRスペクトルと異なり、分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のFT-IRスペクトルは、分岐HKUST-1重量負荷が増加するにつれて、混合マトリックス膜の上側および下側の両方について1645cm-1および490cm-1に特徴的な分岐HKUST-1ピーク強度の漸増を示し、6FDA-DAMポリマーマトリックス中の分岐HKUST-1ナノ粒子の均一な分布が示唆された。これらの結果により、バルクHKUST-1粒子が混合マトリックス膜の下側で沈降したのに対して、分岐HKUST-1ナノ粒子は混合マトリックス膜中に十分に分散されたことを示すという横断面FE-SEM画像およびFIB-SEM画像からの結論がさらに定量化された。純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜ならびに種々のHKUST-1重量負荷を用いたバルクおよび分岐のHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のX線回折(XRD)パターンを取得した。一般に、HKUST-1の形態と無関係にHKUST-1重量負荷が高いほど結晶ピークが強くなり、類似の重量負荷でバルクHKUST-1ピークは分岐HKUST-1より強度が高かった。これらの結果は、薄膜調製物において結晶性が維持されること、および、バルクMOFの構造が分岐構造よりも本質的に高い結晶性を有することを示した。
【0076】
透過試験
試料のガス透過特性を決定する前に、本発明者らは、混合マトリックス膜を真空下で保持して、HKUST-1粒子を活性化するように加熱しながら透過セルを覆う加熱ジャケットを使用して、活性化温度の効果を調査した。HガスおよびNガスを、15、30、および45psiでの20重量%分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のプローブガスとして使用した。これらの結果は、ポリマー-MOFの界面相互作用の増加または6FDA-DAMポリイミド相におけるわずかな物理的老化効果におそらく起因してわずかな温度上昇でHおよびNの透過性が低下することを示していたが、試料がこれらの条件下で熱的に安定であることも示していた。さらに、加熱ジャケットを使用した活性化前および活性化後に得た30重量%分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜に対するほぼ同一のXRD測定値は、活性化中に高いHKUST-1結晶性が保持されたことを示した。したがって、加熱ジャケットを使用した高温活性化プロセスがHKUST-1粒子のガス輸送特性および結晶の性質に有意な影響を及ぼさなかったと結論づけた。さらに、TGA分析により、高温活性化プロセスが混合マトリックス膜中の溶媒の完全な除去を補助したことが確認された。
【0077】
純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜ならびに種々のHKUST-1重量負荷を用いたバルクおよび分岐のHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜に対するガス透過試験を行った。試験前に、全ての膜試料を、加熱ジャケットを用いて150℃で2時間アニーリングして、混合マトリックス膜中のHKUST-1粒子を活性化させた。図11A~11Dは、純粋な6FDA-DAMポリマー膜および種々の重量負荷(10、20
、および30重量%)を用いたバルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜についての35℃でのガス供給圧力の関数としてのH、CH、N、O、およびCOガスの輸送特性を示す。ガス供給圧力が増加するにつれて、軽いガスH、CH、N、およびOは透過性のわずかな減少を示した一方で、より高い特徴的な気相活性を有するCOは、最初はデュアルモードおよびラングミュア吸着効果に関連する透過性の減少が示され、その後はより高い圧力では可塑化に起因する透過性の増加が示された。6FDA-DAMポリマーマトリックス中へのバルクHKUST-1粒子の添加により、有意にガス透過性が増加し、目的のガスのペア(すなわち、CO/CHおよびCO/N)のガス選択性が低下した。例えば、30重量%バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、15psiでおよそ2500BarrerのCOガス透過性を示し、これは、純粋な6FDA-DAMのCOガス透過性(すなわち、1000Barrer)の2.5倍であったが、CO/CH選択性は19から15にわずかに低下した。図12A~12Dは、純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜および種々の重量負荷(10、20、30重量%)を用いた分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜についての35℃でのガス供給圧力の関数としてのH、CH、N、O、およびCOの透過性を示す。HKUST-1重量負荷の増加の関数として、分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のガス透過性に類似するガス透過性の有意な付随する増加を示した。比較として、30重量%分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、15psiでおよそ2500BarrerのCO透過性を示し、これは30重量%バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜のCO透過性と類似していた。しかし、分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、CO/CHおよびCO/Nの分離の選択性の喪失が、純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜の選択性の喪失と比較して小さかった。HKUST-1粒子のタイプおよび重量負荷の関数としてのガス輸送傾向を調査するために、図13A~13Bは、上界でのCO/CHおよびCO/N分離についての純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜、種々のHKUST-1重量負荷(10、20、および30重量%)を用いたバルクおよび分岐のHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜の35℃、15psiでの輸送特性を示す。混合マトリックス膜中のバルクおよび分岐のHKUST-1重量負荷が増加するにつれて、COガス透過性が同様に進行して増加した。しかし、分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は選択性の喪失がより制限され、それにより、分岐混合マトリックス膜のガス輸送特性がバルク混合マトリックス膜のガス輸送特性よりも上界に近づいてシフトした。バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、ガス輸送特性が上界に平行して選択性を喪失した。最低のHKUST-1重量を負荷した混合マトリックス膜(すなわち、10重量%)および純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜の理論上のガス輸送特性は、マクスウェル模型から予想することができなかった。マクスウェル模型の2つの前提は、以下である:1)分散された(すなわち、フィラー)粒子が、連続(すなわち、ポリマー)マトリックス中に均一に分散されていなければならないこと、および2)分散された(すなわち、フィラー)粒子が、1/3の形状係数(n)を適用するために球状であること。しかし、分岐HKUST-1ナノ粒子は球状ではなく、バルクHKUST-1粒子は6FDA-DAMポリマーマトリックス中に均一に分布していなかった。結果として、10重量%分岐HKUST-1ナノ粒子(または、10重量%バルクHKUST-1粒子でさえ)を添加すると、理論的に予測されたガス輸送特性を遥かに超えてガス輸送性能が有意に増大した。特に、分岐HKUST-1ナノ粒子のアスペクト比が高いと(5~20)、形状係数が0.1未満、10体積%未満の低い浸透限界となるが、低い形状係数をマクスウェル模型に当てはめても、文献で報告されている純粋なHKUST-1輸送特性と比較したときに、依然として合理的に当てはまらなかった。これらの新規の分岐粒子の極めて異例の構造および欠陥が、HKUST-1では調節されなかったより有益な固有の輸送特性を有し得る可能性があるが、純粋な分岐MOF(すなわち、ポリマーの支持なし)の透過性を実験的に判定することは、依然とし
て有意かつ達成困難な課題である。図14A~Bは、純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜データおよび内挿法に基づいた文献中のデータ由来の多孔質支持体上のHKUST-1多結晶膜を使用した、形状係数1/3を用いてマクスウェル模型によって予測される0~100重量%のHKUST-1重量負荷のガス輸送特性の傾向を示す。図14A~Bには、純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜ならびに種々のHKUST-1重量負荷(10、20、および30重量%)を用いたバルクおよび分岐のHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜の2組のガス輸送データ点が、マクスウェル模型の予測と共に含まれている。とりわけ、分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、HKUST-1多結晶膜を用いた理論的に予測されるガス輸送傾向より有意に向上したガス輸送特性を示した。これらの結果は、これらの複合体系における非標準の輸送機構が示唆され得、これはおそらく相互接続した多次元分岐構造に関連する。分岐多次元MOFのさらなる特徴は、そのポリマー支持体に付与される可塑化に対する並外れた安定性である。この効果を定量化するために、図15A~Bは、純粋な6FDA-DAMポリマー薄膜、ならびに種々のHKUST-1重量負荷を用いたバルクおよび分岐のHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜の正規化したCO透過性を示す。バルクHKUST-1を6FDA-DAMポリマーに添加すると、CO可塑化圧力点がわずかにシフトし、可塑化耐性がわずかに改善されたことが示唆された。他方では、分岐HKUST-1を6FDA-DAMに添加すると、CO可塑化圧力点が有意にシフトし、可塑化耐性が実質的に改善されたことを示した。特に興味深いことに、30重量%分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、750psiまででさえも観察可能な可塑化圧力点を示さず、この膜はCO耐性が高いことを示していた。CO可塑化挙動をさらに調査するために、同一のCO圧力点でのヒステリシス曲線と初期透過等温線との間の正規化されたCO透過性の相違を計算した。これらの計算値で解明できる範囲内で、バルクHKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、MOF負荷の増加の関数として正規化CO透過性が有意に変化しなかったのに対して、分岐HKUST-1/6FDA-DAM混合マトリックス膜は、MOF負荷の増加の関数として正規化CO透過性が有意に低下した。これらの結果は、可塑化耐性の増大に至るポリマー鎖と分岐HKUST-1ナノ粒子との間の表面接触の増加に由来するポリマー鎖の移動性の減少の分子レベルの解釈と一致していた。
【0078】
材料と方法および特徴付け
以下の実施例のために使用した材料は、以下の通りである:
硝酸銅(II)三水和物(Cu(NO・3HO)、トリメシン酸(C、95%)、酢酸ナトリウム(NaAc、CNaO、99.0%以上)、メタノール(MeOH、CHO 99.9%以上)、テトラヒドロフラン(THF、CO、99.0%以上)、N-メチルピロリドン(NMP、CNO無水物、99.5%)をSigma-Aldrichから購入し、受け取った状態で使用した。単量体4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA、C19 99%超)および2,4-ジアミノメシチレン(DAM、(CHH(NH 99%超)を、Akron Polymer Systemsから購入した。6FDAを、使用前に真空中にて160℃で一晩乾燥させて二価酸夾雑物を環化し、DAMを使用前に真空中にて70℃で一晩乾燥させた。トリエチルアミン(EtN、C15N 99%)およびo-ジクロロベンゼン(o-DCB 98%超)を、Fisherから受け取った状態で使用した。エタノール(EtOH、CO 99.5%)を、VWRから受け取った状態で使用した。H(HY UHP300、100%)、CH(ME UHP300、100%)、N(NI UHP300、100%)、O(OX UHP300、100%)、CO(CD UP300、99.999%)のガスボンベを、Airgasから購入した。
【0079】
HKUST-1粒子の合成
分岐HKUST-1ナノ粒子のために、銅前駆体溶液および有機配位子溶液を、個別に調製した。硝酸銅三水和物(0.9g、3.7mmol)およびトリメシン酸(0.43g、2mmol)を、対応する酢酸ナトリウム濃度(0.2、0.6、および1mmol)(トリメシン酸に対して0.1、0.3、および0.5モル当量)と共に、個別のMeOH溶液(100mL)に溶解した。2つの個別の溶液を直ちに混合し、混合液を室温で1時間強く撹拌した(およそ800rpm)。最終溶液を遠心分離後、新鮮なMeOH(100mL)を用いた洗浄工程を少なくとも3回行い、この洗浄工程において、MeOHが試料に室温で数時間暴露されて未反応の単量体および化学調節物質が除去された。MeOH中のHKUST-1懸濁物を、特徴付けおよび混合マトリックス膜の形成のために使用するまで保存した。バルクHKUST-1粒子合成のために、酢酸ナトリウムを添加しなかったことを除いて、上記と同一の手技を使用した。
【0080】
6FDA-DAMポリマーの合成
6FDA-DAMポリイミドを、完全にイミド化させるためのエステル酸経路を介して合成した。三ツ口250mL丸底フラスコおよび全てのさらなるガラス製器具を、使用前に200℃で一晩乾燥させた。ガラス製器具をオーブンから取り出し、窒素流下で冷却し、単量体をデシケーター中にて真空中で冷却した。6FDA(17.7695g、40mmol)を、125mLのEtOHを含む三ツ口フラスコに移した。反応フラスコは、メカニカルスターラー、窒素入口、および冷却器を取り付けたディーン・スターク・トラップを備えていた。ディーン・スターク・トラップにEtOHを仕込み、EtN(10mL)を反応フラスコに添加した。反応物を窒素流下で加熱還流し、1時間撹拌した。ディーン・スターク・トラップを水抜きし、過剰なEtNおよびEtOHを、粘稠性のエステル酸溶液が残存するまで蒸留した。DAM(6.0088g、40mmol)を、NMP(128mL)およびo-DCB(32mL)と共に添加した。EtOHおよびEtNの蒸留の終了後、ディーン・スターク・トラップにo-DCBを仕込み、反応物を175~180℃に加熱した。反応物を加熱し、窒素下で48時間撹拌して、完全に環化したポリイミドを得た。粘稠性ポリマー溶液を、撹拌MeOH中に滴下によって沈殿させて、白色ポリマービーズを得た。ポリマービーズをブレンドし、MeOHを用いてソックスレー抽出を一晩行って、さらなるNMPを除去した。ポリマーを、21.4gの恒量まで乾燥させた(Mw=149kDa、D=4.1、収率96%)。
【0081】
混合マトリックス膜の作製
HKUST-1粒子は、集塊を防止するためにポリマーとの混合前に乾燥させなかった。HKUST-1懸濁物を含む溶媒を、遠心分離および洗浄過程の繰り返しによってMeOHからTHFに交換した。この工程のために、試料を遠心管中で遠心分離し、上清を除去し、新鮮なTHF(100mL)を使用して試料の上部に入れて、室温にて数時間でMeOHと交換した。少なくとも3回の遠心分離および洗浄工程を使用して、溶媒交換を完了した。混合マトリックス膜中に目的のHKUST-1重量を負荷させるために、保存液中のHKUST-1の濃度を、THF中の少量(0.5ml)の超音波処理したHKUST-1懸濁物を取り出すことによって最初に決定した。取り出した直後に体積を測定し、その後に真空オーブン中で溶液を完全に蒸発させた。大気ガスおよび蒸気の吸着のためにHKUST-1粒子が紫色に変色した時点で、乾燥HKUST-1粒子を含むバイアルを再度秤量し、それにより、HKUST-1溶液の濃度の近似値を決定することができた。既知のHKUST-1溶液の濃度の近似値を用いて、混合マトリックス膜を以下のように調製した。6FDA-DAMポリマーをTHF溶媒に溶解し、スターラーバーを用いて3~4時間撹拌して均一な溶液を得た。膜作製のためのキャスティング溶液の総質量を、0.15gに一定に保持した。したがって、純粋なポリマー薄膜のために、0.15gの6FDA-DAMポリマーを使用した。混合マトリックス膜のために、0.015、0.03、および0.045gのHKUST-1粒子を0.135、0.12、および0.105gの6FDA-DAM中に添加して、混合マトリックス膜中にそれぞれ10、20、お
よび30重量%のHKUST-1を重量負荷させた。HKUST-1溶液を、ホーンを用いた超音波処理(Qsonica,Q500)を1分間行ってHKUST-1粒子をさらに分散させた後、HKUST-1溶液を6FDA-DAMポリマー溶液と混合した。混合溶液を3~4時間撹拌して、6FDA-DAMポリマー中にHKUST-1粒子を均一に分散させた。混合溶液を、ホーンを用いた超音波処理を1分間行い、ガラスペトリ皿に注ぎ、THF溶媒をゆっくり蒸発させるための小さな穴を有するアルミニウム箔のキャップで覆った。薄膜をオーブン中で50℃で一晩キャスティングし、それにより、厚さ40~50μmの薄膜を得た。自立している薄膜をガラスペトリ皿から剥離し、真空オーブン中で24時間乾燥させて残存THF溶液を除去した。
【0082】
純ガスの透過測定
純ガスの透過測定を、自動化された特注の定容積可変圧力純ガス透過システム(Maxwell Robotics)を使用して行った。外径が47mmで内部に同心円状の穴を有する真鍮シムのストックディスクを、薄膜支持体のために機械加工によって特別に作製した。薄膜を、真鍮製ディスク中の穴より大きな領域に切断し、薄膜の厚さを、クーポンの作製前にマイクロメーターを使用して測定した。薄膜を支持ディスクの穴の上に配置し、不浸透性エポキシ接着剤(Devcon,5 Minute Epoxy,14250)によって露呈した薄膜の小領域に貼り付けてシールした。薄膜の作用領域を、スキャナおよびImage Jソフトウェア(NIH)を使用して5回決定し、平均作用領域を、透過性計算において使用した。薄膜を、透過実験のためにステンレス鋼フィルターホルダー中に装着した。ガス透過試験前に、全ての薄膜を、透過セル中にて特注の加熱ジャケット(HTS/Amptek)を使用して、そのままで動的真空下にて150℃で2時間活性化した。活性化後、透過セルを一晩自然に冷却させて、透過セル内の温度を室温に戻した。試験温度を正確に制御するために、浸漬サーキュレーター(ThermoFisher Scientific,SC150)を用いて35℃に加熱した恒温水浴中に透過装備を浸漬させた。透過システム内の全ての弁を閉じることによって静的真空下で漏れ試験を行い、この試験を、ガス透過試験前に行った。測定されたガス輸送速度から漏れ速度を差し引いて、ガス透過性を計算した。全てのガス透過試験について、漏れ速度は、ガス輸送速度の1%未満であったことに留意のこと。純粋なH、CH、N、O、およびCOガスを、35℃での多圧力試験のために連続的に供給した。考慮された最初の2つの供給圧力は、15psiおよび75psiであった。次に、COを除く全てのガスについて、圧力を75psi単位で900psiまで系統的に増加させ、COのみは、飽和蒸気圧のために750psiまで試験した。加圧後のヒステリシス効果を調査するために、COガス供給圧力を、本発明者らの最初の加圧工程に適合する単位で漸減させた。減圧工程の終了後、試料を動的真空条件下で2時間保持した。次いで、最初に考慮された加圧プロトコールと同一の加圧プロトコールを繰り返した。各ガスを、各圧力での異なる保持時間での透過について試験した:Hは18分間、CHは30分間、Nは30分間、Oは24分間、COは3.6分間保持した。定常状態での透過を確実に評価するために、各圧力点で少なくとも6×タイムラグを使用して、ガス輸送速度を計算した。タイムラグは、定常状態の透過圧力増加の直線部分に対して時間プロットを外挿して得られた直線と時間軸(x軸)との交点の、圧力(y軸)からの距離として求められる時間と規定される。純ガス透過性(P)は、以下の式(1)を使用したBarrerの単位(1Barrer=10-10(cm(STP)・cm)/(cm・s・cmHg))で計算される:
【数1】
(式中、Vは較正下流体積であり、lは薄膜の厚さであり、Aは薄膜の作用領域であり、Rは理想気体定数であり、Tは試験絶対温度であり、(dP/dt)ssは定常状態
でのガス輸送速度であり、(dP/dt)漏れは漏れ速度である)。理想気体の選択性(α)を、2つの純ガスの透過性の比(P/P)として計算する。薄膜のガス輸送特性が溶液拡散モデルによって決定づけられると仮定すると、透過性を、以下の式(2)として表すことができる:
【数2】
(式中、
【数3】
は有効拡散係数(cm/s)であり、
【数4】
は有効溶解度(cm(STP)/cm・atm)である)。拡散係数を、以下の式(3)としてタイムラグ法を使用して決定することができる:
【数5】
(式中、lは薄膜の厚さであり、θはタイムラグである)。表4中の拡散係数(D)および表3中の透過性(P)の計算値を使用して、表5中の溶液拡散モデルに基づいて溶解度(S)を決定した。拡散係数-選択性および溶解度-選択性を、2つの純ガスの拡散係数の比(D/D)および選択性の比(S/S)としてそれぞれ計算した。透過性、拡散係数、および選択性の不確実性を、1)薄膜の厚さ、作用領域、および下流側の体積の標準偏差、ならびに2)圧力、温度、およびガス輸送速度の測定不確実性を使用した誤差アプローチの伝播を使用して計算した。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
マクスウェル模型(4)を使用して、混合マトリックス膜の理論上のガス輸送特性を予測した。
【数6】
(式中、Peffは有効ガス透過性であり、Pは連続相(ポリマーマトリックス)のガス透過性であり、Pは分散相(HKUST-1粒子)のガス透過性であり、nは形状係数であり、Φは混合マトリックス膜中の分散相の容積分率である)。容積分率を、純粋なHKUST-1結晶の密度を使用して重量負荷から計算した。
【0087】
高供給圧力では、特にCOなどのガスについての非理想気体の相挙動を考慮する必要があった。このため、逸散能(f)を計算して、透過性をより正確に査定した。逸散能ベースの透過性を、以下の式(5)として計算した:
【数7】
(式中、fは供給したガスの逸散能である)。
【0088】
逸散能を、第2および第3のビリアル係数を含むビリアル方程式を使用して35℃で推定した。気相活性(f/fsat)を、推定逸散能を、NIST由来のデータ表を用いた35℃でのCOについての理論飽和圧力点での推定逸散能で割ることによって計算した。COはこの温度で超臨界気体であるので、T-1の関数として逸散能のlnをプロットしたときの臨界点を介した飽和逸散能の外挿によって外挿を行ったことに留意のこと。
【0089】
特徴付け
核磁気共鳴(NMR)分光法を、TopSpin(商標)3.2を備えたAscend(商標)500分光計(Bruker)を使用して行った。H-NMRスペクトルを、500MHzで取得した。全てのスペクトルを、1~5%(w/v)の0.7mLのDMSO-d溶液から得た。ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定を、Waters2695クロマトグラフシステム、THF移動相、および屈折率検出を用いてIntertek(Allentown,PA)が実施した。Agilent Technologies製のポリスチレン/ジビニルベンゼンカラムセットを用いて溶液を分析した。試料溶液を2mg/mLのTHF溶液として調製し、0.45μmナイロンフィルターを使用して濾過した。試料を、完全に溶解するまで手作業で振盪した。分子量を、オンライン光散乱および固有粘度シグナルを使用して測定した。6M~162ダルトンの範囲の狭い範囲のポリスチレン標準を較正のために使用した。フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルを、減衰全反射(ATR)アクセサリーを備えたAlpha II FT-IR分光計(Bruker)によって32スキャンでの分解能4cm-1を使用して取得した。MOF粉末およびMOF混合マトリックス膜について加熱速度20℃/分でTA装置(TGA500)を使用してTGA測定を行った。MOFの完全なバーンオフ後の残存金属酸化物の質量を決定するために、MOF粉末を、最初に、TGA炉内で窒素雰囲気下にて150℃で2時間(ガス透過測定における活性化のために使用した条件と同一である)活性化した。次に、炉を室温に冷却し、温度が安定した時点で、大気下にて加熱速度20℃/分で700℃までランプを運転した。最終生成物は、酸化のために純粋な金属酸化物であった。混合マトリックス膜中の実際のMOF重量負荷を決定するために、MOF混合マトリックス膜に対して同一のプロトコールを行った。700℃の大気下でポリマーマトリックスが完全に分解し、金属酸化物のみが残存すると、最終重量(混合マトリックス膜)/最終重量(MOF粉末)の比を決定し、重量負荷の百分率として本明細書中に報告する。ガラス転移温度を、TA Instrumentsの示差走査熱量計(DSC250)を使用して、加熱速度20℃/分にて室温と420℃との間で実施した反復加熱プロトコールの第3の軌跡から決定した。数平均粒径分布を、動的光散乱(DLS)分析から得た。MeOH中の希釈MOF懸濁物を超音波処理してMOF粒子を均一に分散させた後、Zetasizer Nano S90(Marvern)を用いて35℃でDLS測定を行った。MOF粉末の拡散反射率を、紫外可視分光光度計(Perkin Elmer Lambda 1050)によって測定した。紫外可視試料の調製のために、MOF粉末を、固体試料の測定用に設計された円形の粉末ペレットセル中に十分に充填した。532nmレーザーを備えた電荷結合素子(CCD)カメラおよび基板上のMOF粉末のための1200l/mmグレイティングを使用したRenishaw Invia Reflex Microラマン分光法を用いてラマンスペクトルを得た。銅製管(l=0.15418nm)およびVANTEC-500二次元検出器を備えたBruker D8 Discover回折計を使用して、粉末X線回折(XRD)の測定値を得た。5~40°の範囲のデータを記録した。窒素物理吸着の測定を、-196℃でMicromeritics ASAP 2460にて行った。測定前に、全ての試料を、Micromeritics
Smart VacPrepで真空下にて150℃で一晩脱気した。見かけ上の表面積を、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)法を用いてP/P0範囲0.02~0.10で決定した。t-プロット法を使用して、微細孔容積(Vmic)を推定した。透過型電子顕微鏡(TEM)画像を、120kVでのFEI Tecnai(G2 Spirit TWIN)操作によって得た。MeOH中の0.5%未満の濃度の希釈MOF溶液の液滴を、銅製TEMグリッド上にキャスティングし、TEMグリッドを数時間自然乾燥させて、MeOH溶媒を完全に蒸発させた。薄膜の横断面電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)画像を、FE-SEM装置(Zeiss Merlin)を使用して回収した。薄膜を、液体窒素中で2片に低温割断して横断面を観察した。薄膜の横断面を、金(Au)でスパッタして、非導電薄膜上に電荷を放散するための薄い導電層(3~5nm)を作製した。より滑らかな横断面を観察するために、収束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)画像化を、ガリウム(Ga)-イオンミリングを用いたFEI He
lios Nanolab 600 Dual Beam Systemを使用して行った。薄膜表面を、スパッタリング装置を使用して金(Au)で同様にコーティングして、同一の厚さの薄い導電層を作製した。電子線位置を使用して、矩形の白金(Pt)薄層をコーティングし、試料を52°に傾けた後、このPt層の下の位置を、規則的な横断面を使用して、6.5nAなどの適切なビーム電流でGa-イオンミリングを行った。cleaning cross-sectionモードを使用してより低い電流でさらなるGa-イオンミリングを行って、画像化前に滑らかな横断面を作製した。一貫したFIB-SEM画像化のために、HKUST-1の形態と無関係に、全ての薄膜を同一のプロトコールおよび条件で調査したことに留意のこと。FIB-SEM断層画像の再構築のために、電子ビームを使用して、保護Pt/C混合物(約250nm)を、切片にすべき領域上および配置基準にするための隣接する正方形の領域上に堆積させた。次いで、Gaイオンビームを使用して、白金層(約1μm)をこれらの同一の領域上に堆積させ、配置用正方形内にX形を彫り込んだ。加速電圧30kVおよび電流2.5nAを使用して最初のトレンチをミリングした。より低い電流(30kV、80pA)での最終ミリング工程を使用して、横断面を滑らかにし、最初のトレンチング中にダメージを受けた材料を除去した。次いで、FEI提供のソフトウェアルーチンを使用して、側面間隔が5nmの顕微鏡写真の切片を取得した。SEMを、レンズ通過検出システムを使用した後方散乱モード(3kV、0.4nA)で操作して、最後の顕微鏡写真を撮るために異なる原子量を有する材料の間のコントラストを増大させた。Avizoソフトウェアパッケージ(FEI)をデータ処理のために使用し、データ処理の間に画像を整列させ、切り取り、スタックにした。適応ヒストグラム均等化ルーチンを使用して、深度シャドウイングからアーチファクトを除去し、周波数領域FFTフィルターを使用してカーテンアーチファクトを除去した。適応3Dヒストグラムおよびエッジ検出ルーチンをスマート閾値化技術と組み合わせて強度変化の大きいエッジを見出し、次いで、ノイズ低減ルーチンを使用して単一ピクセル領域を排除した。異なる強度レジームをポリマー材料、銅材料、または空隙領域(バブル)に割り付け、次いで、3D再構築ファイルを、銅材料網のために作成した。オープンソースソフトウェア(Blender)を使用して、銅製網のための3D断層撮影再構築の最終画像を作成した。
【0090】
実施例2
この実施例は、金属-有機構造体ZIF-8の分岐ナノ粒子の合成および特徴付けについて記載する。この実施例では、トリエチルアミンを、ZIF-8分岐ナノ粒子合成中の化学調節物質として使用した。トリエチルアミンは、酢酸ナトリウムよりもpKa値が高く、メタノールへの溶解性が高い。金属前駆体を0.5gの硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO6HO、1.68mmol)を20mLのメタノール(0.99mmol)に溶解することによって調製し、配位子前駆体を0.5gの2-メチルイミダゾール(C、6.10mmol)の溶解によって調製した。室温および大気圧下で、配位子溶液を撹拌金属溶液中に注いだ。混合直後に、0.2mLの純粋なトリエチルアミン(1.43mmol)を滴下した。反応溶液を600rpmで1時間撹拌して、多次元ZIF-8ナノ粒子を得た。粒子を、メタノールでの洗浄および11,000rpmで90分間の懸濁物の遠心分離によって精製した。各々の洗浄工程と遠心分離工程との間に、粒子を40mLの新鮮なメタノールに再懸濁し、30分間の間接的超音波処理、90秒間の直接的超音波処理によって超音波処理し、ボルテックス装置を用いて2000rpmで2時間を超えて処理した。各試料について洗浄工程を3回使用した。多次元分岐ZIF-8ナノ粒子は、以前に認められなかった表面終端を有し、それにより、溶媒中の分散挙動が異なっていた。分岐ZIF-8ナノ粒子を、各々の異なるガラスバイアル中の種々の溶媒に懸濁させた。使用溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム(溶解パラメータ9.2(cal/cm1/2)、テトラヒドロフラン(溶解パラメータ9.3(cal/cm1/2)、ジメチルホルムアミド(溶解パラメータ12.1(cal/cm1/2)、およびメタノール(溶解パラメータ14.5(cal/cm1/2)であった。考慮
されたほとんどの溶媒について、安定なZIF-8懸濁物を形成させることは困難であったが、ジメチルホルムアミド(DMF)中で均一な分散を形成することができ、DMFは、ある特定のポリマー(ある特定のポリイミドポリマーなど)のためのキャスティング溶液の作製で使用するのに良好な溶媒でもある。
【0091】
実施例3
この実施例は、金属-有機構造体ZIF-8の分岐ナノ粒子を含む混合マトリックス膜の作製および特徴付けについて記載する。
【0092】
6FDA-DAMポリマーマトリックスを使用して、分岐ZIF-8ナノ粒子を含む混合マトリックス膜を作製した。実施例2に記載の分岐多次元ZIF-8ナノ粒子(以後分岐ZIF-8またはBZと呼ぶ)は、小さな階層的粒径(およそ60nm)および6FDA-DAMポリマーマトリックス中での均一な分布を示した。結果として、BZ/6FDA-DAM MMMは透明であった。他方では、対照試料として使用した菱形十二面体状のZIF-8粒子(RDZと呼ばれる)の粒径は100~500nmであり、RDZ/6FDA-DAM MMMを形成するために6FDA-DAMポリマーマトリックスと混合したときに集塊が認められた。RDZ粒子のこの集塊は薄膜の透明度を低下させ、RDZ-6FDA-DAM試料は屈折率(reflective index)がより高いために不透明であった。さらに、市販のZIF-8粒子(CZと呼ばれる)を含む膜(CZ/6FDA-DAM MMMと呼ばれる)を作製した。CZ/6FDA-DAM MMMはMOF粒子が有意に凝集され、それにより、薄膜上に目立つパターンを生じた。したがって、BZおよびRDZの混合マトリックス膜試料を、輸送特性に対するMOF粒子の構造効果を正確に比較するための混合マトリックス膜の作製のために使用した。
【0093】
種々のBZ負荷(10、20、30、および40重量%)を用いたBZ/6FDA-DAM MMMの横断面SEM画像を取得した。薄膜を、液体窒素中で2片に割断した。10重量%BZ/6FDA-DAM MMMの横断面SEM画像は、液体窒素中で薄膜の割断中にマトリックス伸長の亢進に起因する非常に粗い凹凸のある引き裂かれた横断面を示した。しかし、BZ MOF負荷が増加するにつれて、横断面は、顕著にマトリックスが伸長することなく直ちに割断されたことによって滑らかであった。より高倍率の横断面SEMを取得し、BZ/6FDA-DAM MMMのFE-SEM画像がMOF負荷と無関係に均一なMOF分布を示すことが実証された。
【0094】
膜内の分岐ZIF-8粒子の分散およびこれらの粒子が浸出ネットワークを形成するかどうかをさらに調査するために、30重量%RDZ /6FDA-DAM MMMおよび30重量%BZ/6FDA-DAM MMMをFIB-SEM画像化した。図16Aは、30重量%RDZ/6FDA-DAM MMMが6FDA-DAMポリマーマトリックス中にほぼ球状のZIF-8ナノ粒子(100~500nm)を含んでいたことを示すFIB-SEM画像を示す。この重量負荷で、ZIF-8(0.97g cm-3)および6FDA-DAM(1.3g cm-3)の密度を考慮すると、RDZナノ粒子の負荷の容積分率が36%であると判断された。それにもかかわらず、30重量%RDZ/6FDA-DAM MMMは、FIB-SEM画像中に浸出ネットワークの明確な証拠を示さなかった。ポリマーがRDZ ZIF-8粒子と都合よく相互作用してキャスティング中にMOF上にコーティング層を提供し、それにより、粒子間接触を防止する可能性がある。かかる特徴は、欠陥を防止するのに有用であるが、マクスウェル模型によるMMMの輸送特性の予測能力を凌ぐこともできない。他方では、図16Bは、30重量%BZ/6FDA-DAM MMMが浸出ネットワークを示し、薄膜全体にわたる均一な分布を維持したことを示すFIB-SEM画像を示す。かかる浸出ネットワークは、分岐ZIF-8ナノ粒子の特徴的な相互接続構造に起因し、ガス輸送特性を増加させる可能性がある。
【0095】
輸送性能を調査するために、純粋な6FDA-DAMポリマーフィルム、RDZ/6FDA-DAM MMM、およびBZ/6FDA-DAM MMMの透過試験を、軽い気体の分離(CH、N、およびCOからのH分離、ならびにO/N分離)のために35℃および15psiで行った。MMMは、種々のMOF負荷(10、20、30、および40重量%)を使用した。透過試験の結果を、図17A~Dに示す。MOF負荷が増加するにつれて、BZ/6FDA-DAM MMMについては選択性の増加が認められた一方で、RDZ/6FDA-DAM MMMはほぼ一定の選択性を示した。この驚くべき結果は、分岐ZIF-8試料が、伝統的にこの材料を用いて分離されると見なされていたガス(プロピレン/プロパン分離など)よりも小さなガスに対して分子ふるい挙動を示すことが示された。ガスの動力学的直径は、以下の順序で増加すると見なされた:H(2.89Å)<CO(3.30Å)<O(3.46Å)<N(3.64Å)<CH(3.80Å)。図17Dに示した所見に基づいて、O/N分離のための分子ふるいウィンドウをBZ/6FDA-DAM膜に利用可能であり、BZ試料がOとNとのサイズの間に有効な細孔開口部を有することが示唆された。とりわけ、分岐ZIF-8ナノ粒子を含む混合マトリックス膜は、15超(H/Nなど)の、さらには20超の軽いガスに選択性を示した。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、化学調節物質(トリエチルアミン)がBZ粒子のZIF-8 MOFの結晶構造に組み込まれ、それにより、有機多座配位子(2-メチルイミダゾール)に係留するか、ゲート開閉効果(可動性)を阻害することによって細孔の有効な開口部がより小さくなると考えられる。
【0096】
実施例4
この実施例は、様々な異なる有力な化学調節物質を使用したメタノール中での分岐ZIF-8ナノ粒子の合成の試みについて記載する。試験した異なる化学調節物質は、ピリジン(pK=5.44(メタノール中)、pK=5.22(HO中))、アニリン(pK=6.05(メタノール中)、pK=4.6(HO中))、p-フェニレンジアミン(pPDA、pK=6.2(HO中))、4-エトキシアニリン(p-フェネチジン、pK=6.92(メタノール中)、pK=5.32(HO中))、N,N-ジメチルプロパルギルアミン(pK=7.97(メタノール中)、pK=8.04(HO中))、ギ酸ナトリウム(pK=8.87(メタノール中))、酢酸ナトリウム(pK=9.63(メタノール中))、プロピオン酸ナトリウム(pK=9.71(メタノール中))、トリメチルアミン(TMA、pK=9.8(メタノール中)、pK=9.74(HO中))、トリエチルアミン(pK=10.78(メタノール中)、pK=10.67(HO中))、ジエチルアミン(pK=11.2(メタノール中)、pK=10.72(HO中))、トリ-n-ブチルアミン(TBA、pK=10.89(HO中))、およびn-ブチルアミン(pK=11.48(メタノール中)、pK=10.6(HO中))であった。ZIF-8ナノ粒子を、異なる構造の調節物質を同一のモル量で使用して実施例2に記載の手技によって合成した;配位子供給源(20mLのメタノールに溶解した0.5gのC)を、金属供給源(20mLのメタノールに溶解した0.5gのZn(NO)6HO))に注いだ。1.43mmolの各調節物質を滴下し(あるいは、調節物質が固体の場合、混合前にリガンド溶液に溶解した)、周囲条件下で1時間撹拌し、次いで、実施例2に記載のように、新鮮なメタノールで3回洗浄した。
【0097】
ピリジン、アニリン、pPDA、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、およびプロピオン酸ナトリウムを用いて合成したZIF-8ナノ粒子は分岐せず、その代わりに、上の実施例2に記載のRDZ形態を有していたことが認められた。以下のうちのいずれか1つを化学調節物質として使用したときに、分岐ZIF-8ナノ粒子が形成されることが認められた:トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリ-ブチルアミン、およびn-ブチルアミン。図18は、アニリン(図18A、分岐せず)およびトリエチルアミン(図18B、分岐)の存在下で形成されたZIF-8ナノ粒子の画像を示す。ZIF-
8 MOFの2-メチルイミダゾラート多座配位子の塩基性窒素のpK(pKおよそ7.97)またはそれを超えるpKを有する各々の化学調節物質によって分岐ZIF-8ナノ粒子が形成されることが認められた。この結果は、いくつかの例では、いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、金属-有機構造体中の金属イオンに結合する多座配位子部分のpKaまたはそれを超えるpKを有する化学調節物質の使用が分岐MOFナノ粒子の分岐形態の形成に寄与し得ることを示す。
【0098】
RDZおよびBZのZIF-8ナノ粒子(BZ粒子は、化学調節物質としてトリエチルアミンを使用して合成されている)に対してX線光電子分光法も行った。XPSデータを使用して、表6にまとめたように、2つのタイプのナノ粒子中の元素のモル百分率を決定した。
【0099】
【表6】
【0100】
表6に認められるように、RDZ ZIF-8ナノ粒子とBZ ZIF-8ナノ粒子との間の組成の有意差。BZナノ粒子中の亜鉛イオンへのトリエチルアミン化学調節物質の配位により、組成の相違を説明することができる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書中に記載および例示しているが、当業者は、本明細書中に記載の機能を果たし、そして/または結果および/または1またはそれを超える利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に予想し、かかる変形形態および/または修正形態の各々は、本発明の範囲内と見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書中に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および配置が例示であることを意図すること、そして、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または配置が本発明の教示が使用される特定の適用(複数可)に依存することを容易に認識するであろう。当業者は、日常的な実験しか使用せずに、本明細書中に記載の本発明の特定の実施形態に対する多数の均等物を認識するか、確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、ほんの一例として示され、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明を、具体的に記載され、かつ特許請求の範囲に記載されたものとは別なふうに実施することができると理解すべきである。本発明は、本明細書中に記載の個別の特徴、系、物品、材料、および/または方法に関する。さらに、かかる特徴、系、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない場合、2つまたはそれを超えるかかる特徴、系、物品、材料、および/または方法の任意の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【0102】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、明らかにそうでないと示さない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0103】
句「および/または」は、本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、この句で繋げられた要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解すべきである(すなわち、要素は、共存する場合と、個別に存在する場合がある)。明らかにそうでないと示さない限り、具体的に特定した要素との関連の有無と無関係に、「および/または」節によって具体的に特定した要素以外の他の要素が必要に応じて存在し得る。したがって、非限定
的な例として、「Aおよび/またはB」は、「~を含む」などの非限定の言語と併せて使用される場合、1つの実施形態では、Bを含まないA(必要に応じてB以外の要素が含まれる);別の実施形態では、Aを含まないB(必要に応じてA以外の要素が含まれる);さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(必要に応じて他の要素が含まれる)などをいうことができる。
【0104】
本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、「または」は、上記定義の「および/または」と同一の意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包含することと解釈するものとする(すなわち、要素の数またはリスト、および、必要に応じて、さらなる列挙していない項目の少なくとも1つを含むだけでなく、1超も含む)。「たった1つの」もしくは「正確に1つの」、または特許請求の範囲で使用される場合の「~からなる」などの前述と明らかに異なる唯一を示す用語は、複数の要素の数またはリストのうちの正確に1つの要素を包含するこというであろう。一般に、本明細書中で使用される用語「または」は、「いずれか」、「1つの~」、「たった1つの~」、または「正確に1つの~」などの排他を意味する用語が先行する場合、排他的代替物のみを示すと解釈するものとする(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)。「~から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用する場合、特許法分野で使用されている通常の意味を有するものとする。
【0105】
本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、句「少なくとも1つの」は、1またはそれを超える要素のリストについて言及する場合、複数の要素のリスト中の任意の1またはそれを超える要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、複数の要素のリスト内に具体的に列挙されたありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、複数の要素のリスト中の複数の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解すべきである。この定義はまた、具体的に特定した要素との関連の有無と無関係に、句「少なくとも1つの」が言及する複数の要素のリスト内に具体的に特定した複数の要素以外の複数の要素が必要に応じて存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、等価には、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または、等価には、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、Bが存在しない少なくとも1つのA(必要に応じて1つを超えるAが含まれる)(かつ必要に応じてB以外の要素が含まれる);別の実施形態では、Aが存在しない少なくとも1つのB(必要に応じて1つを超えるBが含まれる)(かつ必要に応じてA以外の要素が含まれる);さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA(必要に応じて1つを超えるAが含まれる)および少なくとも1つのB(必要に応じて1つを超えるBが含まれる)(かつ必要に応じて他の要素が含まれる)などを指し得る。
【0106】
特許請求の範囲および上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、および「保持する(holding)」などの全ての移行句は、非制限である(すなわち、「~が含まれるが、これらに限定されない」を意味する)と理解すべきである。移行句「~からなる」および「~から本質的になる」のみは、米国特許庁特許審査手続便覧(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)の2111.03項に記載のように、それぞれ、制限または半制限の移行句であるものとする。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
デバイスであって、
ポリマーを含むマトリックス;および
金属-有機構造体を含む粒子であって、前記金属-有機構造体が金属イオンおよび多座配位子を含む、粒子
を含む混合マトリックス膜を含み、
ここで、前記粒子が、前記マトリックスの全体に均一に分布し、透過測定によって対流輸送が検出可能でない、デバイス。
(項目2)
前記粒子が分岐ナノ粒子であり、前記分岐ナノ粒子が、2μmまたはそれ未満の流体力学的直径、少なくとも5のアスペクト比、および直径が200nmまたはそれ未満の枝を有する、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記ポリマーが、前記マトリックスの50重量%またはそれを超える量で前記マトリックス中に存在する、項目1~2のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目4)
本質的に全ての前記マトリックスが、前記ポリマーから構成される、項目1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目5)
前記多座配位子が、少なくとも2つのカルボキシラート基を含む、項目1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目6)
前記金属イオンが遷移金属イオンである、項目1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目7)
前記金属イオンが銅である、項目1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目8)
前記金属-有機構造体がHKUST-1である、項目1~7のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目9)
前記多座配位子がイミダゾラートを含む、項目1~4および6~7のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目10)
前記金属イオンが亜鉛である、項目1~6および9のいずれか1項に記載のデバイス。(項目11)
前記金属-有機構造体がゼオライト様イミダゾラート構造体である、項目1~7および9~10のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目12)
前記金属-有機構造体がZIF-8である、項目1~7および9~11のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目13)
前記粒子が、前記混合マトリックス膜中に浸出ネットワークを形成する、項目1~12のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目14)
前記デバイスが、第1のガスおよび第2のガスを含むガス混合物から前記第1のガスの一部分を分離することができる、項目1~13のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目15)
前記混合マトリックス膜のガスに対する可塑化圧力点が、前記粒子を欠く実質的に同一
の膜の可塑化圧力点の少なくとも1.5倍である、項目1~14のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目16)
前記ガスが、CO、エチレン、エタン、プロパン、および/またはプロピレンを含む、項目15に記載のデバイス。
(項目17)
前記ポリマーがポリイミドを含む、項目1~16のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目18)
前記ポリイミドが、以下の構造:
【化2】
を有する、項目17に記載のデバイス。
(項目19)
前記分岐ナノ粒子が、前記金属-有機構造体と会合したアミンを含む、項目1~18のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目20)
前記分岐ナノ粒子が前記金属-有機構造体と会合したアミンを含み、前記アミンが式NRを有し、ここで、各Rが、水素、必要に応じて置換されたC1~8分岐および非分岐のアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、および必要に応じて置換されたアリールから独立して選択される、項目1~19のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目21)
前記分岐ナノ粒子が、前記金属有機構造体と会合したトリエチルアミンを含む、項目1~20のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目22)
項目1~21のいずれか1項に記載のデバイスを、第1のガスおよび第2のガスを含むガス混合物と、第1のガスの一部分が前記ガス混合物から分離されるように接触する工程を含む、方法。
(項目23)
組成物であって、
金属-有機構造体を含む分岐ナノ粒子であって、前記金属-有機構造体が金属イオンおよび多座配位子を含む、分岐ナノ粒子
を含み、
ここで、前記分岐ナノ粒子が、2μmまたはそれ未満の流体力学的直径、少なくとも5のアスペクト比、および直径が200nmまたはそれ未満の枝を有し、
ここで、前記組成物が、ガス分離膜として構築され、配置される、組成物。
(項目24)
前記多座配位子が、少なくとも2つのカルボキシラート基を含む、項目23に記載の組成物。
(項目25)
前記金属イオンが遷移金属イオンである、項目23~24のいずれか1項に記載の組成物。
(項目26)
前記金属イオンが銅である、項目23~25のいずれか1項に記載の組成物。
(項目27)
前記金属-有機構造体がHKUST-1である、項目23~26のいずれか1項に記載の組成物。
(項目28)
前記多座配位子がイミダゾラートを含む、項目23および25~26のいずれか1項に記載の組成物。
(項目29)
前記金属イオンが亜鉛である、項目23~25および28のいずれか1項に記載の組成物。
(項目30)
前記金属-有機構造体がゼオライト様イミダゾラート構造体である、項目23~26および28~29のいずれか1項に記載の組成物。
(項目31)
前記金属-有機構造体がZIF-8である、項目23~26および28~30のいずれか1項に記載の組成物。
(項目32)
前記分岐ナノ粒子が非凝集である、項目23~31のいずれか1項に記載の組成物。
(項目33)
前記分岐ナノ粒子が少なくとも部分的に浸出性のネットワークを形成している、項目23~32のいずれか1項に記載の組成物。
(項目34)
前記分岐ナノ粒子が、前記金属-有機構造体と会合したアミンを含む、項目23~33のいずれか1項に記載の組成物。
(項目35)
前記分岐ナノ粒子が前記金属-有機構造体と会合したアミンを含み、前記アミンが式NRを有し、ここで、各Rが、水素、必要に応じて置換されたC1~8分岐および非分岐のアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、および必要に応じて置換されたアリールから独立して選択される、項目23~34のいずれか1項に記載の組成物。
(項目36)
前記分岐ナノ粒子が、前記金属有機構造体と会合したトリメチルアミンを含む、項目23~35のいずれか1項に記載の組成物。
(項目37)
前記ガス分離膜が、第1のガスおよび第2のガスを含むガス混合物から前記第1のガスの一部分を分離することができる、項目23~36のいずれか1項に記載の組成物。
(項目38)
前記ガス分離膜のガスに対する可塑化圧力点が、前記粒子を欠く実質的に同一の膜の可塑化圧力点の少なくとも1.5倍である、項目23~37のいずれか1項に記載の組成物。
(項目39)
前記ガスが、CO、エチレン、エタン、プロパン、および/またはプロピレンを含む、項目23~38のいずれか1項に記載の組成物。
(項目40)
項目23~39のいずれか1項に記載のガス分離膜を、第1のガスおよび第2のガスを含むガス混合物と、第1のガスの一部分が前記ガス混合物から分離されるように接触する工程を含む、方法。
(項目41)
方法であって、
液体中で金属イオンを含む金属塩、多座配位子、および化学調節物質を組み合わせて分岐ナノ粒子を形成する、組み合わせる工程であって、前記分岐ナノ粒子が金属-有機構造体を含み、前記金属-有機構造体が前記金属イオンおよび前記多座配位子を含む、組み合わせる工程
を含み、
ここで、前記多座配位子の濃度に対して前記化学調節物質が少なくとも0.1当量存在すると、前記分岐ナノ粒子のアスペクト比が、前記化学調節物質の非存在下での同一条件下で形成された粒子に対して少なくとも3倍に増加するように、前記金属塩、多座配位子、および/または化学調節物質を選択し、
前記方法が、前記分岐ナノ粒子をポリマーと組み合わせてポリマーネットワークを含む混合マトリックス膜を形成する、組み合わせる工程をさらに含む、方法。
(項目42)
前記分岐ナノ粒子が、2μmまたはそれ未満の流体力学的直径、少なくとも5のアスペクト比、および直径が200nmまたはそれ未満の枝を有する、項目41に記載の方法。(項目43)
前記化学調節物質がカチオンおよびアニオンを含む塩であり、前記アニオンが少なくとも1つのカルボキシラート基を有する、項目41~42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記アニオンがアセタートである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記化学調節物質がアミンを含む、項目41~42のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記化学調節物質が式NRを有するアミンを含み、ここで、各Rが、水素、必要に応じて置換されたC1~8分岐および非分岐のアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、および必要に応じて置換されたアリールから独立して選択される、項目41~42および45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記化学調節物質がトリエチルアミンを含む、項目41~42および45のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
前記化学調節物質の液体中のpKが、前記金属-有機構造体中の前記金属イオンに結合する前記多座配位子部分のpKまたはそれを超える、項目41~47のいずれか1項に記載の方法。
(項目49)
前記化学調節物質の液体中のpKaが、3.0またはそれを超える、項目41~48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
前記化学調節物質の液体中のpKaが、15.0またはそれ未満である、項目41~49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
前記化学調節物質が、前記分岐ナノ粒子の形成後に前記分岐MOFナノ粒子と会合する、項目41~49のいずれか1項に記載の方法。
(項目52)
前記分岐ナノ粒子が、前記金属-有機構造体と会合したアミンを含む、項目41~51のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
前記分岐ナノ粒子が前記金属-有機構造体と会合したアミンを含み、前記アミンが式NRを有し、ここで、各Rが、水素、必要に応じて置換されたC1~8分岐および非分岐のアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、および必要に応じて置換されたアリールから独立して選択される、項目41~52のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
前記分岐ナノ粒子が、前記金属-有機構造体と会合するトリエチルアミンを含む、項目41~53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
前記液体が、少なくとも99体積%メタノールである、項目41~54のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
前記組み合わせる工程が、前記液体を、15℃またはそれを超え、かつ60℃またはそれ未満の温度で少なくとも10分間混合することを含む、項目41~55のいずれか1項に記載の方法。
(項目57)
前記多座配位子が、少なくとも2つのカルボキシラート基を含む、項目41~55のいずれか1項に記載の方法。
(項目58)
前記金属イオンが遷移金属イオンである、項目41~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目59)
前記金属イオンが銅である、項目41~58のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
前記金属-有機構造体がHKUST-1である、項目41~59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記多座配位子がイミダゾラートを含む、項目41~56および58~59のいずれか1項に記載の方法。
(項目62)
前記金属イオンが亜鉛である、項目41~58および61のいずれか1項に記載の方法。
(項目63)
前記金属-有機構造体がゼオライト様イミダゾラート構造体である、項目41~56、58~59、および61~62のいずれか1項に記載の方法。
(項目64)
前記金属-有機構造体がZIF-8である、項目41~56、58~59、および61~63のいずれか1項に記載の方法。
(項目65)
前記分岐ナノ粒子が、前記混合マトリックス膜中に少なくとも部分的に浸出性のネットワークを形成する、項目41~64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
前記デバイスが、第1のガスおよび第2のガスを含むガス混合物から前記第1のガスの一部分を分離することができる、項目41~65のいずれか1項に記載の方法。
(項目67)
前記混合マトリックス膜のCO可塑化圧力点が、前記金属-有機構造体を欠く実質的に同一の膜のCO可塑化圧力点の少なくとも1.5倍である、項目41~66のいずれか1項に記載の方法。
図1A-1B】
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A-4B】
図5A-5E】
図6A-6D】
図7A-7C】
図8A-8C】
図9A-9B】
図10A-10B】
図11A-11D】
図12A-12D】
図13A-13B】
図14A-14B】
図15A-15D】
図16A-16B】
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A-18B】
【外国語明細書】