(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052785
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】歯付ベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 1/28 20060101AFI20240405BHJP
F16G 1/08 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
F16G1/28 E
F16G1/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022787
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2019147477の分割
【原出願日】2019-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】大田 隆史
(57)【要約】
【課題】本発明は、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる歯付ベルトの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の歯付ベルトは、ベルト本体と、上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部と、上記長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されるn本(nは3以上の整数)の芯体コードとを備え、上記n本の芯体コードのうち、一部の隣接する芯体コードが導電性を有し、かつ上記ベルト本体の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードの平均間隔を(n-1)で除した値より上記一部の隣接し導電性を有する芯体コードの平均間隔が小さくなるように配列されており、上記ベルト本体の主成分が、ゴム又は樹脂であり、上記一部の隣接し導電性を有する芯体コードに電気信号あるいは電源が割り当てられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体と、
上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部と、
上記長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されるn本(nは3以上の整数)の芯体コードと
を備え、
上記n本の芯体コードのうち、一部の隣接する芯体コードが導電性を有し、かつ上記ベルト本体の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードの平均間隔を(n-1)で除した値より上記一部の隣接し導電性を有する芯体コードの平均間隔が小さくなるように配列されており、
上記ベルト本体の主成分が、ゴム又は樹脂であり、
上記一部の隣接し導電性を有する芯体コードに電気信号あるいは電源が割り当てられる歯付ベルト。
【請求項2】
上記一部の隣接する芯体コード同士が実質的に接している束コードを形成する請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項3】
複数の上記束コードを備える請求項2に記載の歯付ベルト。
【請求項4】
上記束コードが3本以上の芯体コードを有する請求項2又は請求項3に記載の歯付ベルト。
【請求項5】
上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードが上記束コードに含まれない単線コードである請求項2、請求項3又は請求項4に記載の歯付ベルト。
【請求項6】
上記n本の芯体コードが上記束コードに含まれない単線コードを含み、
上記束コードを形成する芯体コードの電気抵抗率が上記単線コードの電気抵抗率より低い請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の歯付ベルト。
【請求項7】
上記n本の芯体コードの平均径が実質的に等しい請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の歯付ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯付ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等での物の昇降や搬送に、歯付ベルトが用いられている。この歯付ベルトは、ベルト本体と、このベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔に配置される歯部と、ベルトの幅方向に等間隔に配列され、長さ方向に沿ってベルト本体に埋設される複数の芯体コードとを備えている。
【0003】
この歯付ベルトの構成としては、無端状のエンドレスベルトと両端部を有するオープンベルトとがある。このうちオープンベルト構成の歯付ベルトは、例えばその歯部が歯付プーリーと嵌合可能となるように台車に固定され、歯付プーリーを回転駆動することでこの台車を上下あるいは左右に移動させるために使用される。
【0004】
上記台車には、例えば積み込んだ荷が台車から滑り落ちないようにストッパーが搭載されているものがある。このストッパーは台車に荷を搭載する時や荷を積み降ろす時には障害とならないように格納可能に電気制御される場合がある。このように台車には電気により制御される付加機能が搭載されている場合が少なくない。
【0005】
このような付加機能を制御する電気信号や電源の配線(以下、単に「配線」ともいう)を、芯体コードと兼用する歯付ベルトが提案されている(特開2019-60403号公報参照)。この歯付ベルトでは、芯体コードを通電可能な材質とすることで、給電ケーブルとしても兼用しているので、歯付ベルトの厚みの増加を抑止しつつ、配線を歯付ベルト内に埋設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
歯付ベルトの芯体コードを配線としても用いる場合、芯体コードの本数は歯付ベルトに必要な強度により決まる本数と、必要な配線数とのうちの多い方の本数で決まることとなる。このため、配線数が多くなると芯体コードの本数は配線数で決まることとなり、歯付ベルトの幅が不必要に大きくなり易い。歯付ベルトの幅が不必要に大きくなると、この歯付ベルトを組み込んだ装置、例えば台車の小型化が困難となる場合がある。
【0008】
本発明はこのような不都合に鑑みてなされたものであり、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる歯付ベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、芯体コードを配線と兼用する歯付ベルトについて鋭意検討した結果、以下の点に着目した。つまり、芯体コードを配線と兼用する従来の歯付ベルトでは、隣接する芯体コードの間隔は、絶縁性が担保されるように決定されている。一方、芯体コードは一般に径が細いため、1本の芯体コードでは電気抵抗が高く、数本の芯体コードに対して同一の電気信号あるいは電源が割り当てられている。これらの事実から、本発明者は、同一の電気信号あるは電源を割り当てる芯体コードについては、互いの絶縁性を担保する必要がなく、それらの間隔を狭められることに着目して本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の歯付ベルトは、ベルト本体と、上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部と、上記長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されるn本(nは3以上の整数)の芯体コードとを備え、上記n本の芯体コードのうち、一部の隣接する芯体コードが導電性を有し、かつ上記ベルト本体の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードの平均間隔を(n-1)で除した値よりその平均間隔が小さくなるように配列されている。
【0011】
当該歯付ベルトは、一部の隣接する芯体コードの平均間隔を小さくとることで、芯体コードの本数に対して当該歯付ベルトの幅の増加を小さく抑えることができる。また、当該歯付ベルトでは、この平均間隔が小さい一部の隣接する芯体コードに対しては同じ電気信号あるいは電源を割り当てることで、これら一部の隣接する芯体コード間の絶縁性の問題を回避できるから、配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【0012】
上記一部の隣接する芯体コード同士が実質的に接している束コードを形成するとよい。このように上記一部の隣接する芯体コード同士を、実質的に接している束コードとして形成することで、芯体コードの本数に対して当該歯付ベルトの幅の増加をさらに小さく抑えることができる。ここで、「実質的に接している」とは、実際にその一部又は全部が接している場合に加え、不可避的に生じるわずかな空隙、例えば0.1mm以下の間隔を有する場合も含む概念である。
【0013】
当該歯付ベルトが複数の上記束コードを備えるとよい。このように当該歯付ベルトは複数の上記束コードを備えることにより、複数の電気信号あるいは電源に対してそれぞれ束コードを割り当てられるので、芯体コードの本数に対して当該歯付ベルトの幅の増加をさらに小さく抑えることができる。
【0014】
上記束コードが3本以上の芯体コードを有するとよい。上記束コードは2本に限定されるものではなく、3本以上とすることができる。このように束コードが3本以上の芯体コードを有することで、電気抵抗をさらに低減できるので、電気信号あるいは電源の配線に好適に用いることができる。
【0015】
上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードが上記束コードに含まれない単線コードであるとよい。上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードは、当該歯付ベルトの側面からの擦れによる摩耗等により電気抵抗が経年増加するおそれがある。このため、上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コードを束コートに含めず、電気信号あるいは電源の配線に用いないことで、配線としての信頼性を高めることができる。
【0016】
上記n本の芯体コードが上記束コードに含まれない単線コードを含み、上記束コードを形成する芯体コードの電気抵抗率が上記単線コードの電気抵抗率より低いとよい。このように束コードに用いられる芯体コードの電気抵抗率を低くすることで、上記束コードに含まれる芯体コード数を減らすことができる。従って、当該歯付ベルトの幅の増加をさらに小さく抑えることができる。
【0017】
上記n本の芯体コードの平均径が実質的に等しいとよい。このように上記n本の芯体コードの平均径を実質的に等しくすることで、当該歯付ベルトの強度を確保し易い。ここで、「実質的に等しい」とは、製造ばらつき等により生じ得る差異、例えば5%以下のばらつきを許容することを意味している。
【0018】
なお、本明細書において「平均」とは、任意の10箇所を測定した数値の平均を指すものとする。また、「芯体コードの平均間隔」とは、芯体コードの中心軸間の距離の平均を言う。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の歯付ベルトは、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯付ベルトを示す模式的斜視図である。
【
図2】
図1の歯付ベルトのA-A線での模式的断面図である。
【
図3】
図1の歯付ベルトのB-B線での模式的断面図である。
【
図4】
図3とは異なる歯付ベルトを示す模式的断面図である。
【
図5】
図3及び
図4とは異なる歯付ベルトを示す模式的断面図である。
【
図6】
図3から
図5とは異なる歯付ベルトを示す模式的断面図である。
【
図7】
図3から
図6とは異なる歯付ベルトを示す模式的断面図である。
【
図8】
図3から
図7とは異なる歯付ベルトを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について適宜図面を参照しつつ詳説する。
【0022】
図1、
図2及び
図3に示す歯付ベルト1は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部20と、上記長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設される12本の芯体コード30とを備える。
【0023】
<ベルト本体>
ベルト本体10の主成分は、ゴム又は樹脂である。上記ゴムとしては、エチレン-プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)等のエチレン-α-オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)等を挙げることができる。上記ゴムは、これらのうちの1種でもよいが、2種以上をブレンドしたものであってもよい。上記樹脂としては、熱可塑性のポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を挙げることができる。ベルト本体10の主成分としては、低発塵性の観点から樹脂が好ましく、中でも耐摩耗性に優れる熱可塑性ウレタンが好ましい。ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味し、好ましくは含有量が50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の成分をいう。
【0024】
ベルト本体10の平均厚さは、当該歯付ベルト1に要求される強度等により適宜決定されるが、例えば1mm以上10mm以下とできる。
【0025】
ベルト本体10の長さは、当該歯付ベルト1の用途に応じて適宜決定される。なお、当該歯付ベルト1は、両端部を有するオープンベルトとして主に用いられる。
【0026】
ベルト本体10は、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、防曇剤、難燃剤、表面調整剤、顔料、フィラー、ワックス等が挙げられる。
【0027】
<歯部>
歯部20は、断面が台形、三角形、半円形、山形、波形、正規分布曲線状等の凸条部である。また、歯部20は、その稜線(軸方向)がベルト本体10の幅方向と一致するように配設されている。
【0028】
歯部20の平均高さ及び歯部20間のピッチは、当該歯付きベルト1の用途に応じて適宜決定される。歯部20の平均高さは、例えば1.0mm以上10mm以下とできる。また、歯部20間のピッチは、例えば2mm以上25mm以下とできる。
【0029】
歯部20の主成分は、ベルト本体10と同様とできる。また、歯部20にはベルト本体10と同様の添加剤を含めてもよい。
【0030】
<芯体コード>
12本の芯体コード30は、円形断面を有する線状体である。12本の芯体コード30は、
図3に示すように、ベルト本体10の幅方向に並べられている。
【0031】
また、12本の芯体コード30の平均径は実質的に等しい。このように12本の芯体コード30の平均径を実質的に等しくすることで、当該歯付ベルト1の強度を確保し易い。芯体コード30の平均径は、後述する束コード31に必要とされる電気抵抗等に応じて適宜決定されるが、例えば0.2mm以上2.5mm以下とできる。
【0032】
また、この12本の芯体コード30は、
図2に示すように、ベルト本体10の長さ方向と平行で、かつベルト本体10の他方の面(歯部20が配設されていない面)からの距離が一定となるように配設されている。つまり、12本の芯体コード30は平面状に配設され、この芯体コード30が形成する平面は、ベルト本体10の表面と平行である。
【0033】
12本の芯体コード30は、
図1及び
図3に示すように、一部の隣接する芯体コード30同士が実質的に接している束コード31と、束コード31に含まれない単線コード32とを含む。
【0034】
束コード31は、主に当該歯付ベルト1の補強に加えて電気信号あるいは電源の配線として用いられ、
図1に示すように、ベルト本体10の端部から引き出されて使用される。一方、単線コード32は、主に当該歯付ベルト1の補強として用いられ、
図1に示すように、その端部はベルト本体10の端部と一致している。
【0035】
(束コード)
束コード31は、導電性を有する芯体コード30で構成されている。このような芯体コード30としては、例えばスチールコードや銅コード等を挙げることができる。このうち、当該歯付ベルト1の強度の観点からはスチールコードが好ましく、導電性の観点からは銅コードが好ましい。
【0036】
上述のように束コード31は、一部の隣接する芯体コード30同士が実質的に接して形成されている。このように一部の隣接する芯体コード30同士を、実質的に接している束コード31として形成することで、芯体コード30の本数に対して当該歯付ベルト1の幅の増加をさらに小さく抑えることができる。
【0037】
また、当該歯付ベルト1は、複数の束コード31を備えるとよい。束コード31の本数としては、電気信号あるいは電源の種類の数と同じとすることが好ましい。このように当該歯付ベルト1が複数の束コード31を備えることにより、複数の電気信号あるいは電源に対してそれぞれ束コード31を割り当てられるので、芯体コード30の本数に対して当該歯付ベルト1の幅の増加をさらに小さく抑えることができる。
【0038】
図3に示す歯付ベルト1では4本の束コード31(第1束コード31a、第2束コード31b、第3束コード31c及び第4束コード31d)を備えるが、束コード31の本数は、これに限定されるものではなく、3本以下、あるいは5本以上であってもよい。
【0039】
複数の束コード31の間及び束コード31と単線コード32との間は、間隔が開けられている。複数の束コード31の間、及び束コード31と単線コード32との間の平均間隔の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記平均間隔の上限としては、4mmが好ましく、1mmがより好ましい。上記平均間隔が上記下限未満であると、複数の束コード31間の絶縁性が十分に確保できないおそれや、当該歯付ベルト1の可撓性が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均間隔が上記上限を超えると、当該歯付ベルト1が幅方向に不要に大きくなるおそれや、芯体コード30による当該歯付ベルト1の強度、耐久性、駆動の正確性等の向上効果が不十分となるおそれがある。
【0040】
上述のように複数の束コード31の間及び束コード31と単線コード32との間は、間隔が開けられている。一方、束コード31を構成する芯体コード30同士は接している。従って、12本の芯体コード30のうち、束コード31を構成する一部の隣接する芯体コード30は、ベルト本体10の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30(
図3では2本の単線コード32に相当)の平均間隔を11(=12-1)で除した値(隣接する芯体コード30の平均間隔の平均値)よりも小さくなるように配列されている。
【0041】
束コード31は、第1束コード31a及び第2束コード31bのように2本の芯体コード30を有する構成とすることもできるが、第3束コード31c及び第4束コード31dのように3本以上(
図3では3本)の芯体コード30を有する構成とすることもできる。このように束コード31が3本以上の芯体コード30を有することで、電気抵抗をさらに低減できるので、電気信号あるいは電源の配線に好適に用いることができる。
【0042】
この1つの束コード31に含まれる芯体コード30の本数は、その束コード31に割り付けられる電気信号あるいは電源に必要とされる抵抗値に応じて適宜決定することができる。
【0043】
(単線コード)
単線コード32は、束コード31を構成する芯体コード30と同じ種類のコードとすることもできるが、異なる種類のコードとしてもよい。この場合、束コード31を形成する芯体コード30の電気抵抗率が単線コード32の電気抵抗率より低いとよい。このように束コード31に用いられる芯体コード30の電気抵抗率を低くすることで、必要とされる抵抗値とするために束コード31に含まれる芯体コード30の本数を減らすことができる。従って、当該歯付ベルト1の幅の増加をさらに小さく抑えることができる。
【0044】
特に、単線コード32としては絶縁性のコードを用いることが好ましい。単線コード32を絶縁性のコードとすることで、仮に束コード31と接触した場合であっても、束コード31の電気信号あるいは電源としての機能に影響が生じ難い。このような絶縁性のコードとしては、アラミドコード、ガラスコード、ポリエステルコード等を挙げることができる。
【0045】
当該歯付ベルト1では、ベルト本体10の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30が束コード31に含まれない単線コード32である。上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30(単線コード32)は、当該歯付ベルト1の側面からの擦れによる摩耗等により電気抵抗が経年増加するおそれがある。このため、上記幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30を束コード31に含めず、電気信号あるいは電源の配線に用いないことで、配線としての信頼性を高めることができる。
【0046】
最も外側に配設される単線コード32の中心軸と、これと近接するベルト本体10の側面との平均距離(「単線コード32とベルト本体10の側面との平均距離」ともいう)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記単線コード32とベルト本体10の側面との平均距離の上限としては、1mmが好ましく、0.7mmがより好ましい。上記単線コード32とベルト本体10の側面との平均距離が上記下限未満であると、当該歯付きベルト1の製造時に、最も外側に配設される単線コード32がベルト本体10の側面から露出するおそれがある。逆に、上記単線コード32とベルト本体10の側面との平均距離が上記上限を超えると、ベルト本体10の側縁が駆動時にばたつき易くなり、芯体コード30による駆動の正確性の向上効果が不十分となるおそれがある。
【0047】
<歯付ベルトの製造方法>
当該歯付ベルト1は、例えば押出成形工程と、歯部形成工程とを備える製造方法により製造することができる。
【0048】
(押出成形工程)
押出成形工程では、押出成形により芯体コード30が埋設されたゴム又は樹脂組成物を主成分とする押出成形体を形成する。
【0049】
具体的には、複数の芯体コード30を押出機のシリンダ先端に取り付けたクロスヘッドに挿通しながら、その両側を溶融したゴム又は樹脂組成物で被覆するように押出成形する。あるいは、溶融押出したゴム又は樹脂組成物と複数の芯体コード30とを一対のロールで挟み込み加圧することで、複数の芯体コード30をゴム又は樹脂組成物内に埋め込んでもよい。
【0050】
このとき、束コード31を構成する芯体コード30同士は接するように配置される一方、隣接する束コード31間及び束コード31と単線コード32との間は、間隔を開けて配置されている。
【0051】
押出成形においてゴム又は樹脂組成物を溶融させるための加熱温度は、ゴム又は樹脂の種類や硬化剤の利用の有無等に依存するが、上記加熱温度の下限としては、150℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、250℃が好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、ゴム又は樹脂組成物が十分に溶融せず、押出成形が困難となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、押出成形体が不要に熱くなるため、冷却時間が不要に長くなり、当該歯付ベルト1の製造効率が低下するおそれがある。
【0052】
(歯部形成工程)
歯部形成工程では、上記押出成形工程後の押出成形体に歯部20を形成する。これにより当該歯付ベルト1を得ることができる。
【0053】
具体的には、例えば歯部20に対応した凹部を外周面に有する円筒状の金型ロールを準備し、上記押出成形体の一方の面を加熱しながら上記金型ロールに巻き付けることで、歯部20を形成できる。
【0054】
歯部形成工程での加熱温度としては、押出成形体が溶融して一方の面に歯部20を形成できる温度に応じて適宜決定されるが、上記加熱温度の下限としては、150℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、250℃が好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、押出成形体の軟化が不足し、歯部20の形成が困難となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、当該歯付ベルト1全体が熱により変形し易くなるおそれがある。
【0055】
<利点>
当該歯付ベルト1は、一部の隣接する芯体コード30の平均間隔を小さくとることで、芯体コード30の本数に対して当該歯付ベルト1の幅の増加を小さく抑えることができる。また、当該歯付ベルト1では、この平均間隔が小さい一部の隣接する芯体コード30に対しては同じ電気信号あるいは電源を割り当てることで、これら一部の隣接する芯体コード30間の絶縁性の問題を回避できるから、配線として必要な芯体コード30の本数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【0056】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0057】
上記実施形態では、平均径が実質的に等しい複数の芯体コードが、一部の隣接する芯体コード同士が実質的に接している束コードと、束コードに含まれない単線コードを含む場合を説明したが、芯体コードの構成はこれに限定されるものではない。以下にいくつかの変形例を説明する。なお、各変形例で
図3に示す歯付ベルト1と同様である構成要素については、同一符号を付して詳細説明を省略する。
【0058】
<変形例1>
図4に示す歯付ベルト2は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部20と、上記長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設される12本の芯体コード30とを備える。
【0059】
当該歯付ベルト2では、複数の芯体コード30が、一部の隣接する芯体コード30同士が実質的に接している束コード31と、束コード31に含まれない単線コード33とを含む。また、当該歯付ベルト2では、ベルト本体10の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30が束コード31に含まれない単線コード33である。
【0060】
当該歯付ベルト2では、12本の芯体コード30の平均径が同一ではない。
図4に示す当該歯付ベルト2では、束コード31を構成する芯体コード30と、単線コード33との平均径が異なっており、束コード31を構成する芯体コード30の方が、単線コード33より平均径が大きい。このように束コード31を構成する芯体コード30の平均径を大きくすることで、束コード31の電気抵抗をさらに低減できるので、電気信号あるいは電源の配線に好適に用いることができる。
【0061】
逆に、束コード31を構成する芯体コード30の平均径を、単線コード33の平均径より小さくしてもよい。この場合、束コード31の電気抵抗を芯体コード30の本数によりきめ細かく調整することが可能となる。
【0062】
また、束コード31ごとに芯体コード30の平均径を変える等、任意の芯体コード30の平均径を変えた構成も本発明の意図するところである。
【0063】
なお、芯体コード30の平均径が同一ではない場合、芯体コード30は、歯部20側が同一平面上に並ぶように配置されることが好ましい。このように配置することで、当該歯付ベルト2の製造が容易化される。
【0064】
<変形例2>
図5に示す歯付ベルト3は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部20と、上記長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設される13本の芯体コード30とを備える。
【0065】
当該歯付ベルト3では、複数の芯体コード30が、一部の隣接する芯体コード30同士が実質的に接している束コード31と、束コード31に含まれない単線コード33とを含む。
【0066】
当該歯付ベルト3では、ベルト本体10の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30が束コード31に含まれない単線コード33であるほか、隣接する束コード31の間に単線コード33が配置されている。このように隣接する束コード31の間に単線コード33を配置することで、芯体コード30による当該歯付ベルト3の強度、耐久性、駆動の正確性等を向上させることができる。
【0067】
隣接する束コード31の間に単線コード33を配置する場合、単線コード33は絶縁性のコードであることが好ましい。このように単線コード33を絶縁性のコードとすることで、束コード31と単線コード33との間隔を狭めても導電性を有する束コード31に短絡等の不具合が発生し難いので、芯体コード30の本数に対して当該歯付ベルト3の幅の増加をさらい小さく抑えることができる。上記絶縁性のコードとしては、
図3に示す当該歯付ベルト1で説明した絶縁性のコードと同様のコードを用いることができる。
【0068】
なお、
図5では隣接する束コード31の間に単線コード33を1本ずつ配置する場合を示しているが、複数本配置してもよい。また、配置位置により本数を変えてもよい。
【0069】
また、
図5では束コード31はすべて2本の芯体コード30を有する場合を示しているが、束コード31に含まれる芯体コード30の本数は3本以上であってもよく、また束コード31ごとに異なってもよい。
【0070】
<変形例3>
図6に示す歯付ベルト4は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部20と、上記長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設される15本の芯体コード30とを備える。
【0071】
当該歯付ベルト4では、複数の芯体コード30が、一部の隣接する芯体コード30同士が実質的に接している束コード31を含み、束コード31に含まれない単線コードを含まない。このように単線コードを含まない構成も本発明の意図するところである。
【0072】
当該歯付ベルト4では、束コード31が配線と同時に当該歯付ベルト4の補強としても機能するので、単線コードを省略することができる。このように単線コードが省略された当該歯付ベルト4では、束コード31を構成する導電性の芯体コード30としては、強度の高いスチールコードを用いることが好ましい。
【0073】
<変形例4>
図7に示す歯付ベルト5は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部20と、上記長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設される21本の芯体コード30とを備える。
【0074】
当該歯付ベルト5では、複数の芯体コード30が、一部の隣接する芯体コード30同士が実質的に接している束コード34を含む。
【0075】
束コード34は、3本の芯体コード30から構成される。束コード34は、
図7に示すように、2本の芯体コード30がベルト本体10の幅方向に接するように配置され、他の1本の芯体コード30が上記2本の芯体コード30にベルト本体10の表面側から接するように配置されている。
【0076】
このようにベルト本体10の表面側から接するように配置される芯体コード30を設けることで、ベルト本体10の幅方向に広がらずに複数の芯体コード30を束コード34に含めることができる。従って、芯体コード30の本数に対して当該歯付ベルト5の幅の増加をさらに小さく抑えることができる。
【0077】
図7では、1つの束コード34に3本の芯体コード30が含まれる場合を説明したが、1つの束コード34に含まれる芯体コード30の本数は3本に限定されるものではなく、例えば4本以上であってもよい。また、束コード34ごとに含まれる本数が異なってもよい。
【0078】
また、
図7では複数の芯体コード30が単線コードを含まない場合を説明したが、単線コードを含んでもよい。
【0079】
<変形例5>
図8に示す歯付ベルト6は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部20と、上記長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設される8本の導電性を有する芯体コード30とを備える。
【0080】
当該歯付ベルト6では、
図8に示すように、8本の芯体コード30は、ベルト本体10の幅方向の最も外側に位置する芯体コード30から順に、隣接する芯体コード30との平均間隔が狭い/広いを繰り返している。つまり、8本の芯体コード30のうち、一部の隣接する芯体コード30が導電性を有し、かつベルト本体10の幅方向の最も外側に位置する2本の芯体コード30の平均間隔を7(=8-1)で除した値よりその平均間隔が小さくなるように配列されている。
【0081】
このような構成も本発明の意図するところであり、平均間隔が狭い隣接する2本の芯体コード30に対して同一の電気信号あるいは電源が割り当てられる。
【0082】
隣接する2本の芯体コード30のうち狭い平均間隔(
図8のD1)と、広い平均間隔(
図8のD2)との比の下限としては、2:3が好ましく、1:4がより好ましく、1:10がさらに好ましい。上記比が上記下限未満であると、当該歯付ベルト6の幅の低減効果が不十分となるおそれがある。一方、上記比の上限としては、特に限定されない。つまり、隣接する2本の芯体コード30のうち狭い平均間隔は0であってもよい。
【0083】
なお、
図8に示す歯付ベルト6では、隣接する芯体コード30との平均間隔が狭い/広いを繰り返す場合を説明したが、例えば2本おきに狭い/広いを繰り返してもよく、また繰り返し数は芯体コード30の配置位置によって異なってもよい。
【0084】
<その他>
上記実施形態では、特定の本数の芯体コードを備える場合を説明したが、芯体コードの本数は3本以上であれば各実施形態の本数に限定されるものではない。
【0085】
上記実施形態では、束コードを電気信号あるいは電源の配線として用い、単線コードを補強に用いる場合を説明したが、配線として用いられない束コードがあってもよく、また逆に配線として用いる単線コードがあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の歯付ベルトは、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【符号の説明】
【0087】
1、2、3、4、5、6 歯付ベルト
10 ベルト本体
20 歯部
30 芯体コード
31、34 束コード
31a 第1束コード
31b 第2束コード
31c 第3束コード
31d 第4束コード
32、33 単線コード