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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000528
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20231225BHJP
【FI】
G06T7/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098799
(22)【出願日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2022098670
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520305432
【氏名又は名称】株式会社SoftRoid
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】野▲埼▼ 大幹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 岳人
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096CA02
5L096DA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2以上の階層を有する構造物における測定装置の軌跡を示すための測定の手間を減らす情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システムは、通信回線2と、自撮り棒3と、外付けバッテリー4と、外部電源5と、ブレーカ6と、サーバ装置10と、現場端末20と、撮像装置30と、遠隔端末40とを備える工事支援システム1であって、サーバ装置10の制御部は、物体から届く電磁波を測定するセンサを有する測定装置(例えば撮像装置30)が構造物の内部又は外部を移動しながら移動経路の各位置において測定した測定データを取得する測定取得部と、取得した測定データに基づき測定装置の軌跡を示す軌跡データを出力する軌跡出力部と、を含む。軌跡は、構造物が2以上の階層を有する場合、測定装置が測定を行った位置が2以上の異なる高さの範囲にそれぞれ収まる2以上の部分軌跡を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
測定取得ステップでは、物体から届く電磁波を測定するセンサを有する測定装置が構造物の内部又は外部を移動しながら移動経路の各位置において測定した測定データを取得し、
軌跡出力ステップでは、取得された前記測定データに基づき前記測定装置の軌跡を示す軌跡データを出力し、前記軌跡は、前記構造物が2以上の階層を有する場合、前記測定装置が測定を行った位置が2以上の異なる高さの範囲にそれぞれ収まる2以上の部分軌跡を有する、もの。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
階層取得ステップでは、前記構造物の階層を示す階層データを取得し、
対応出力ステップでは、取得された前記階層データが示す階層と前記部分軌跡との対応関係を示す対応データを出力する、もの。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記階層データは、前記構造物の各階層の図面を示し、
特定ステップでは、前記図面において所定の特徴を有する箇所を特定し、
対応付けステップでは、前記階層に対応する前記部分軌跡の端の位置を当該階層の図面において特定された前記箇所に対応付ける、もの。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理システムにおいて、
前記特定ステップでは、前記図面が示す各階層の間を繋ぐ接続経路を前記箇所として特定する、もの。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記特定ステップでは、前記図面において前記測定が開始される開始位置を前記箇所として特定し、
前記対応付けステップでは、前記開始位置が特定された階層に対応する前記部分軌跡の端の位置を前記開始位置に対応付ける、もの。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理システムにおいて、
前記特定ステップでは、取得された前記測定データが示す特徴量のうち前記開始位置として定められた特徴量が測定された位置を前記開始位置として特定する、もの。
【請求項7】
請求項2~請求項6の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、
前記階層データは、前記構造物の各階層の図面を示し、
前記対応出力ステップでは、取得された前記階層データが示す階層よりも前記部分軌跡の数が少ない場合、前記階層の図面に前記部分軌跡を配置させたときの合致度が最も高くなる前記階層と前記部分軌跡との対応関係を示すデータを前記対応データとして出力する、もの。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、
画像出力ステップでは、前記部分軌跡が示す前記測定装置が測定を行った位置ごとに、当該位置の高さに応じた態様で表された画像を出力する、もの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、周囲の物体の位置関係を取得する位置センサと、フロアマップを取得するマップ取得部と、位置センサに基づきフロアマップにおける自己位置の推定を行う自己位置推定部と、フロアにおいて掃除機が掃除を行う領域である掃除領域の境界を示す境界情報を自己位置に基づき取得する境界情報生成部と、境界情報生成部に境界を指示する境界指示部と、境界情報に基づき掃除領域を作成する掃除領域作成部と、作成された掃除領域に基づき掃除のための走行経路を作成する走行経路作成部とを備える掃除機システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-58961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、工事現場を撮影した画像から自己位置を推定して現場の状況を伝える場合、工事現場が2以上のフロアに跨っていると、特許文献1の技術では、フロアごとに撮影を行わなければならない。
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、2以上の階層を有する構造物における測定装置の軌跡を示すための測定の手間を減らすこととした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムにおける測定取得ステップでは、物体から届く電磁波を測定するセンサを有する測定装置が構造物の内部又は外部を移動しながら移動経路の各位置において測定した測定データを取得する。軌跡出力ステップでは、取得された測定データに基づき測定装置の軌跡を示す軌跡データを出力し、軌跡は、構造物が2以上の階層を有する場合、測定装置が測定を行った位置が2以上の異なる高さの範囲にそれぞれ収まる2以上の部分軌跡を有する。
【0007】
このような態様によれば、2以上の階層を有する構造物における測定装置の軌跡を示すための測定の手間を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工事支援システム1の全体構成を示す図である。
図2】サーバ装置10のハードウェア構成を示す図である。
図3】現場端末20のハードウェア構成を示す図である。
図4】撮像装置30のハードウェア構成を示す図である。
図5】遠隔端末40のハードウェア構成を示す図である。
図6】各装置の制御部の機能構成を示す図である。
図7】部分軌跡の一例を示す図である。
図8】図面データの一例を示す図である。
図9】取得処理の一例を示すアクティビティ図である。
図10】解析処理の一例を示すフロー図である。
図11】軌跡データの一例を示す図である。
図12】部分軌跡を示す軌跡データの一例を示す図である。
図13】階層データの一例を示す図である。
図14】対応データの一例を示す図である。
図15】マーカ90の一例を示す図である。
図16】対応データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.ハードウェア構成
本節では、本実施形態に係る工事支援システムのハードウェア構成について説明する。
【0014】
図1は、工事支援システム1の全体構成を示す図である。図1においては、工事支援システム1が備える各装置と、それらの装置を使用するユーザとの概要が示されている。各概要については、他の図も参照しながら随時説明する。
【0015】
工事支援システム1は、建築等の工事を支援するための処理を実行する情報処理システムである。工事支援システム1は、通信回線2と、自撮り棒3と、外付けバッテリー4と、外部電源5と、ブレーカ6と、サーバ装置10と、現場端末20と、撮像装置30と、遠隔端末40とを備える。
【0016】
通信回線2は、インターネット等を含み、自回線に接続する装置同士のデータのやり取りを仲介する。通信回線2には、サーバ装置10が有線で接続され、現場端末20及び遠隔端末40が無線で接続されている。本実施形態では、現場端末20は、移動体通信で通信回線2と通信を行う。また、現場端末20は、撮像装置30と2通りの通信方法を用いて無線通信を行う。2通りの通信方法は、本実施形態では、Wi-Fi通信及びBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信である。
【0017】
現場端末20及び撮像装置30は、工事現場に設置され、例えば、現場作業員W1によって利用される。遠隔端末40は、例えば、工事現場を担当する工事監督W2によって利用され、工事現場から離れた場所でも利用されることが想定される端末である。
【0018】
現場端末20は、ケーブルによって、外付けバッテリー4を介して外部電源5と接続されている。撮像装置30は、ケーブル及びコネクタ7によって、外付けバッテリー4を介して外部電源5と着脱可能に接続されている。言い換えると、外部電源5は、着脱可能に接続される撮像装置30にも電力を供給する。外付けバッテリー4は、充電しながら給電を行うことが可能ないわゆるパススルー機能を有しており、ブレーカ6がオンになった状態では外部電源5から供給される電力で充電されながら現場端末20及び撮像装置30への給電を行う。
【0019】
撮像装置30は、イメージセンサを備えるデジタルカメラであり、イメージセンサにより測定された光が示す画像を撮影する。撮像装置30は、本実施形態では、上下左右前後の全方位を撮影可能な360度カメラである。撮像装置30は、センサを備える測定装置の一例である。撮像装置30は、自撮り棒3に取り付けられており、その自撮り棒3は、工事現場に設置されたスタンド8に差し込んで固定することができるようになっている。
【0020】
マーカ板9は、マーカ91及びマーカ92(それぞれを区別しない場合「マーカ90」と言う)が表面に表された板部材であり、スタンド8に固定されている。マーカ90は、工事現場に設置され、3次元空間内の位置及びサイズの目安になる目印である。マーカ90は、例えば、各辺の長さがサーバ装置10に登録されている矩形の模様である。マーカ板9は、マーカ90が形成する矩形の平面が鉛直に沿った状態になるようにスタンド8に固定される。
【0021】
現場作業員W1がコネクタ7を外してスタンド8から抜き取った自撮り棒3を持って工事現場を歩き回ることで、工事現場を360度カメラで撮影した画像を示す画像データが生成される。工事支援システム1においては、撮像装置30が撮影する画像は、本実施形態では動画像であるが、工事現場の各所の画像を得ることができるのであれば、連続して撮影される静止画像であってもよい。撮像装置30は、生成した画像データを現場端末20に送信する。
【0022】
現場端末20は、現場作業員W1への主なユーザインターフェースとなる端末であり、例えば、スマートフォンである。現場端末20は、例えば、上記の2通りの通信方法のうちの一方(本実施形態ではBLE通信)を用いて、撮像装置30の動作を制御する。また、現場端末20は、上記の2通りの通信方法のうちの一方(本実施形態ではWi-Fi通信)により撮像装置30から送信されてきた画像データを、さらに別の無線通信(本実施形態では移動体通信)を用いてサーバ装置10に転送する。
【0023】
サーバ装置10は、現場端末20から送信されてきた画像データが示す工事現場の画像を用いた画像処理を行い、工事現場を立体的に示す立体画像データを生成する。遠隔端末40は、生成された立体画像データを参照し、立体的に表された工事現場の画像を表示する。工事監督W2は、表示された工事現場の画像から現場の様子を把握し、必要に応じて現場の現場作業員W1に対して作業の指示を行う。
【0024】
工事現場によっては、作業の終了後に節電等の理由でブレーカ6がオフにされる場合がある。その場合、ブレーカ6をオフにしたあとは外部電源5から電力が供給されなくなる。このように、外部電源5は、電力供給の有無が切り替えられる。現場端末20及び撮像装置30にも内蔵バッテリーがあるのですぐに停止する訳ではないが、画像データの送信など時間がかかる処理もある。そこで、本実施形態では、外付けバッテリー4を設けることで、ブレーカ6がオフにされたあとの現場端末20及び撮像装置30の稼働時間を増やすようにしている。
【0025】
図2は、サーバ装置10のハードウェア構成を示す図である。サーバ装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、バス14とを備える。バス14は、サーバ装置10が備える各部を電気的に接続する。
【0026】
(制御部11)
制御部11は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部11は、記憶部12に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、工事支援システム1に係る種々の機能を実現するコンピュータである。すなわち、記憶部12に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部11によって具体的に実現されることで、制御部11に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、次節においてさらに詳述する。なお、制御部11は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部11を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0027】
(記憶部12)
記憶部12は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部11によって実行される工事支援システム1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部12は、制御部11によって実行される工事支援システム1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0028】
(通信部13)
通信部13は、サーバ装置10から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成される。また、通信部13は、外部の構成要素からサーバ装置10への種々の電気信号を受信可能に構成される。さらに好ましくは、通信部13がネットワーク通信機能を有し、これにより通信回線2を介して、サーバ装置10と外部機器との間で種々の情報を通信可能に実施してもよい。
【0029】
図3は、現場端末20のハードウェア構成を示す図である。現場端末20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、入力部24と、出力部25と、内部電源部26と、バス27とを備える。バス27は、現場端末20が備える各部を電気的に接続する。制御部21及び記憶部22は、図2に示す制御部11及び記憶部12と性能の違いはあるが同様のハードウェアである。
【0030】
(通信部23)
通信部23は、第1通信部231と、第2通信部232と、第3通信部233とを備え、3通りの無線通信を行う無線通信部の一例である。第1通信部231は、第1無線通信として、本実施形態ではWi-Fi通信による無線通信を行う。第2通信部232は、第1無線通信よりも通信速度が遅く且つ消費電力が小さい第2無線通信として、本実施形態ではBLEによる無線通信を行う。第3通信部233は、第1無線通信及び第2無線通信よりも通信可能なエリアが広い第3無線通信として、本実施形態では移動体通信による無線通信を行う。
【0031】
(入力部24)
入力部24は、キー、ボタン、タッチスクリーン及びマウス等を有し、ユーザによる入力を受け付ける。
(出力部25)
出力部25は、ディスプレイ(タッチスクリーン含む)及びスピーカ等を有し、表示面に画面、画像、アイコン、テキスト等といった、ユーザが視認可能な態様で生成された視覚情報を表示し、音声を含む音を出力する。
【0032】
(内部電源部26)
内部電源部26は、自装置に内蔵されているバッテリー、すなわち、繰り返し充電可能な電池であり、蓄積した電力を自装置の各部に供給する。内部電源部26は、自装置とともに持ち運びが可能な可搬電池の一例である。内部電源部26は、外部電源5から供給される電力により充電される。内部電源部26は、外付けバッテリー4と同様にパススルー機能を有しており、ブレーカ6がオンになった状態では外部電源5から供給される電力で充電されながら各部に給電を行う。
【0033】
図4は、撮像装置30のハードウェア構成を示す図である。撮像装置30は、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、入力部34と、出力部35と、内部電源部36と、撮像部37と、バス38とを備える。バス38は、撮像装置30が備える各部を電気的に接続する。制御部31から内部電源部36までの各部は、図3に示す制御部21から内部電源部26までの各部と性能の違いはあるが同様のハードウェアである。
【0034】
ただし、通信部33は、第1通信部331及び第2通信部332のみを備える。第1通信部331は、通信部23の第1通信部231と同様に、第1無線通信として、本実施形態ではWi-Fi通信による無線通信を行う。第2通信部332は、通信部23の第2通信部232と同様に、第1無線通信よりも通信速度が遅く且つ消費電力が小さい第2無線通信として、本実施形態ではBLEによる無線通信を行う。また、出力部35は、ディスプレイ等に加えてライトを有し、撮影に必要な光量を確保するための光を照射する。入力部34は、そのライトを点灯させるためのスイッチを有する。
【0035】
(撮像部37)
撮像部37は、レンズを含む光学系及びイメージセンサ等を有し、レンズから入射する光を測定して画像データを生成するセンサである。撮像部37は、本実施形態では、前述したように、超広角レンズ及び複数のイメージセンサを使用して、上下、左右及び前後の全方位を撮影した画像データを生成する。
【0036】
図5は、遠隔端末40のハードウェア構成を示す図である。遠隔端末40は、制御部41と、記憶部42と、通信部43と、入力部44と、出力部45と、バス46とを備える。バス46は、遠隔端末40が備える各部を電気的に接続する。制御部41から出力部45までの各部は、図4に示す制御部31から出力部35までの各部と性能の違いはあるが同様のハードウェアである。
【0037】
2.機能構成
本節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、各装置の記憶部に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部によって具体的に実現されることで、制御部に含まれる各機能部が実行されうる。
【0038】
図6は、各装置の制御部の機能構成を示す図である。サーバ装置10の制御部11は、情報記憶部111と、画像処理部112と、データ生成部113と、データ出力部114と、測定取得部115と、軌跡出力部116と、階層取得部117と、対応出力部118と、特徴特定部119と、対応付部120と、画像出力部121とを備える。現場端末20の制御部21は、表示制御部211と、操作受付部212と、稼働制御部213と、送信制御部214とを備える。撮像装置30の制御部31は、表示制御部311と、操作受付部312と、撮影制御部313と、送信制御部314とを備える。遠隔端末40の制御部41は、表示制御部411と、操作受付部412とを備える。
【0039】
サーバ装置10の情報記憶部111は、撮像装置30により撮影された工事現場の画像を示す画像データや上述した立体画像データを記憶する。画像処理部112は、工事現場の画像に基づいて、自己位置の推定及び環境地図の作成を同時に行ういわゆるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術に関する処理を行う。データ生成部113は、画像処理部112が行った処理に基づいて上述した立体画像データを生成する。データ出力部114は、生成された立体画像データを出力する。
【0040】
測定取得部115は、撮像装置30が構造物の内部又は外部を移動しながら移動経路の各位置において測定した測定データを取得する。構造物の内部又は外部とは、例えば、工事現場である。軌跡出力部116は、撮像装置30の軌跡を示す軌跡データを出力する。階層取得部117は、構造物の階層を示す階層データを取得する。階層データは、例えば、建物のフロア(1階、2階及び3階等)を示すデータである。なお、階層データは、同じフロアの天井裏、床上及び床下等を階層として示すデータであってもよい。対応出力部118は、階層取得部117により取得された階層データが示す階層と部分軌跡との対応関係を示す対応データを出力する。
【0041】
特徴特定部119は、構造物の各階層の図面を示す階層データが取得された場合に、その図面において所定の特徴を有する箇所を特定する。対応付部120は、階層データが示す階層に対応する部分軌跡の端の位置をその階層の図面において特定された箇所に対応付ける。画像出力部121は、部分軌跡が示す撮像装置30が測定を行った位置ごとに、その位置の高さに応じた態様で表された画像を出力する。
【0042】
遠隔端末40の表示制御部411は、自装置の表示手段への表示処理を制御する。表示制御部411は、例えば、サーバ装置10から出力されてきた立体画像データが示す工事現場の画像を表示させる。操作受付部412は、ユーザ(例えば工事監督W2)の操作を受け付ける。工事監督W2は、工事現場のうちの表示される場所を移動させる操作を行って現場の現状を確認し、現場の現場作業員W1等に対して工事の手順等を指示する。
【0043】
現場端末20の表示制御部211は、自装置の表示手段への表示処理を制御する。操作受付部212は、ユーザ(例えば現場作業員W1)の操作を受け付ける。稼働制御部213は、撮像装置30の稼働を制御する。送信制御部214は、自装置及び撮像装置30による画像データの送信処理を制御する。
【0044】
撮像装置30の表示制御部311は、自装置の表示手段への表示処理を制御する。操作受付部312は、ユーザ(例えば現場作業員W1)の操作を受け付ける。撮影制御部313は、撮像部37による撮影処理を制御する。送信制御部314は、自装置による画像データの送信処理を制御する。
【0045】
3.情報処理
本節では、本実施形態において、プログラムがコンピュータに実行させる情報処理について説明する。
【0046】
工事支援システム1における測定取得部115は、物体から届く電磁波を測定するセンサを有する撮像装置30が構造物の内部又は外部を移動しながら移動経路の各位置において測定した測定データを取得する。軌跡出力部116は、測定取得部115により取得された測定データに基づき撮像装置30の軌跡を示す軌跡データを出力する。撮像装置30の軌跡は、構造物が2以上の階層を有する場合、撮像装置30が測定を行った位置が2以上の異なる高さの範囲にそれぞれ収まる2以上の部分軌跡を有する。
【0047】
測定データは、例えば、移動経路の各位置での測定結果の集合を示すデータである。軌跡データは、例えば、3次元座標又は2次元座標を示すデータ(スケールあり又はスケールなし)である。部分軌跡は、例えば、測定データを分割してから軌跡を生成したものである。その場合、分割方法は、測定データから階段を認識して階段の前と後で分割する方法である。
【0048】
また、部分軌跡は、測定データに基づいて軌跡を生成してからその軌跡を分割したものである。その場合の分割方法は、2フロアなら高さの平均値で分割する方法又はk-maens等の周知のクラスタリング手法を用いる方法である。なお、軌跡データ以外の撮影画像、フロア数及びフロア図面(スケール・初期値あり)等については後述する。
【0049】
図7は、部分軌跡の一例を示す図である。図7では、X軸、Y軸、Z軸を有する3次元座標系のグラフG10が示されている。グラフG10には、部分軌跡C11及び部分軌跡C12を有する全体軌跡C10が示されている。部分軌跡C11は、撮像装置30が測定を行った位置が、Z軸方向の座標(すなわち高さ)がz1(m:メートル)未満の範囲に収まる軌跡である。また、部分軌跡C12は、撮像装置30が測定を行った位置が、Z軸方向の座標がz1(m:メートル)以上の範囲に収まる軌跡である。
【0050】
階層取得部117は、構造物の階層を示す階層データを取得する。対応出力部118は、階層取得部117により取得された階層データが示す階層と部分軌跡との対応関係を示す対応データを出力する。
【0051】
階層データは、例えば、階層の数と順番、階層の高さ又は各階層の図面等を示すデータである。対応データは、例えば、対応関係を示すテーブル、階層数をヘッダに追加した部分軌跡データ又はその元動画等を示すデータである。部分軌跡は、高さ座標の統計値(平均値等)が大きいほど高い階層を示す。部分軌跡の数と階層数が一致していれば、単純に対応関係を決めることができる。
【0052】
階層データは、構造物の各階層の図面を示す。特徴特定部119は、図面において所定の特徴を有する箇所を特定する。対応付部120は、階層に対応する部分軌跡の端の位置をその階層の図面において特定された箇所に対応付ける。
【0053】
対応付部120は、図面が示す各階層の間を繋ぐ接続経路を、その図面において所定の特徴を有する箇所として特定する。図面が示す各階層の間を繋ぐ接続経路は、例えば、階段又はスロープ等である。
【0054】
特徴特定部119は、図面において撮像装置30による測定が開始される開始位置を箇所として特定する。対応付部120は、特徴特定部119により開始位置が特定された階層に対応する部分軌跡の端の位置を開始位置に対応付ける。
【0055】
測定が開始される開始位置は、例えば、マーカーの設置位置、カメラの設置位置又は手動で設定した位置等である。
【0056】
特徴特定部119は、測定取得部115により取得された測定データが示す特徴量のうち開始位置として定められた特徴量が測定された位置を開始位置として特定する。
【0057】
測定データが示す特徴量は、直線の長さ、直線のなす角度等である。マーカーを開始位置に設置した場合は、特徴量が示す直線の長さ及び角度がマーカー形状を示した場合、その特徴量を示す測定データが測定された位置が開始位置として特定される。
【0058】
階層データは、構造物の各階層の図面を示す。対応出力部118は、階層取得部117により取得された階層データが示す階層よりも部分軌跡の数が少ない場合、階層の図面に部分軌跡を配置させたときの合致度が最も高くなる階層と部分軌跡との対応関係を示すデータを対応データとして出力する。
【0059】
対応出力部118は、図面上で壁に重ねないで部分軌跡を配置する。その場合、スケールが大きいほど図面の形状と合致していないと部分軌跡を配置することができない。そこで、対応出力部118は、図面上に配置する軌跡のスケールを大きくしていった場合に最大スケールが大きいほど合致度が高いと判断する。
【0060】
図8は、図面データの一例を示す図である。図8では、ある工事現場となっているフロアの図面D10が示されている。図面D10には、各階層の間を繋ぐ接続経路である階段D11が示されている。図8の例では、図面D10に示す工事現場の壁に重ねないで部分軌跡C21が配置され、部分軌跡C21の端の位置C211及びC212のうち、位置C211が、階段D11に対応付けられている。部分軌跡C21は、図面D10が示すフロアのほぼ全ての領域を通過しているので、他のフロアの図面に配置される場合に比べて、スケールを大きくすることができて合致度が最も高くなると判断される。
【0061】
画像出力部121は、部分軌跡が示す撮像装置30が測定を行った位置ごとに、その位置の高さに応じた態様で表された画像を出力する。
【0062】
画像出力部121は、例えば、高さ(天井裏・床下)に応じた色・形のマーク画像を出力する。また、画像出力部121は、ワープポイント(360画像の中に表される測定ポイント又は近接するポイント)を測定位置の高さに応じた態様で表してもよい。また、画像出力部121は、イメージポイント(図面で表した測定ポイント)を測定位置の高さに応じた態様で表してもよい。
【0063】
画像出力部121は、ワンフロアだけの軌跡データに基づいて測定位置の高さに応じた態様で表された画像を出力してもよい。また、画像出力部121は、これらの画像を上から見たイメージを示す画像データを出力し、例えばユーザが上空から見る視点を横から見る視点に変化させる操作を行うと、これらの画像を横から見たイメージを示す画像データを出力する。
【0064】
工事支援システム1は、まず、構造物の内部(例えば建築中の建物の内部)を測定装置(例えば撮像装置30)が測定した測定結果を示す測定データを取得する取得処理を実行する。
【0065】
図9は、取得処理の一例を示すアクティビティ図である。図9に示すアクティビティは、現場作業員W1が現場端末20に対して撮像装置30による測定を開始させる測定開始操作を行うことを契機に開始される。なお、撮像装置30による撮影は、イメージセンサを用いた光の強さの測定である。まず、現場端末20は、操作受付部212により、現場作業員W1による測定開始操作を受け付ける(A11)。
【0066】
操作受付部212は、測定開始操作を受け付けると、測定(図9の例では撮影)の開始を指示する指示データを撮像装置30に送信する。撮像装置30は、送信されてきた指示データを受信すると、撮影制御部313により、測定、すなわち撮影、を開始する(A12)。撮像装置30は、撮影制御部313により、現場作業員W1によって工事現場を移動しながら周囲を撮影し、撮影した画像を測定結果として示す測定データを自装置の内部の記憶部32に記憶させる(A13)。
【0067】
次に、現場作業員W1が、工事現場の測定が終わって現場端末20に対して測定を終了させる測定終了操作を行うと、現場端末20は、操作受付部212により、その測定終了操作を受け付ける(A14)。操作受付部212は、測定終了操作を受け付けると、測定の終了を指示する指示データを撮像装置30に送信する。撮像装置30は、送信されてきた指示データを受信すると、撮影制御部313により、測定を終了する(A15)。A11からA15までの処理が行われることで、作業現場の測定データが撮像装置30に記憶される。
【0068】
次に、現場端末20は、送信制御部214により、測定データを自装置に送信する指示を示す指示データを所定のタイミングで撮像装置30に送信する(A21)。所定のタイミングは、例えば、予め定められた時刻になったタイミング、測定が終了してから所定時間が経過したタイミング、又は、現場作業員W1によって送信の操作が行われたタイミング等である。撮像装置30は、指示データを受信すると、撮影制御部313により、記憶部32に記憶させてある測定データを読み出し、現場端末20に送信する(A22)。
【0069】
現場端末20は、送信制御部214により、送信されてきた測定データを受信して自装置の記憶部32に記憶させる(A23)。次に、現場端末20は、送信制御部214により、記憶部32から所定のタイミングで測定データを読み出し、サーバ装置10に送信する(A31)。所定のタイミングは、例えば、予め定められた時刻になったタイミング等である。サーバ装置10は、測定取得部115により、送信されてきた測定データを取得する(A32)。サーバ装置10は、取得した測定データに基づいて、撮像装置30の軌跡を解析する解析処理を実行する。
【0070】
図10は、解析処理の一例を示すフロー図である。解析処理は、測定取得部115が測定データを取得することから始まる(S11=A32)。図10の例では、サーバ装置10は、まず、軌跡出力部116により、取得された測定データに基づき撮像装置30の軌跡を示す軌跡データを生成する(S12)。軌跡出力部116は、例えば、上記のように測定データが画像である場合、VisualSLAMの技術を用いて軌跡データを生成する。
【0071】
軌跡データは、上述したように、3次元座標又は2次元座標により軌跡を示すデータである。図7の例では、3次元座標により軌跡を示すデータが軌跡データとして生成されている。
図11は、軌跡データの一例を示す図である。図11に示す軌跡データD1は、測定時刻と、その測定時刻における測定データの測定位置を示す3次元座標とを互いに対応付けて示すデータである。軌跡データD1では、測定時刻が早い3次元座標から順番に並べられている。
【0072】
次に、サーバ装置10は、軌跡出力部116により、部分軌跡処理を実行する(S13)。軌跡出力部116は、例えば、上述したように、2フロアなら、高さの平均値で分割する方法によって2つのフロアをそれぞれ示す部分に軌跡を分割する。また、軌跡出力部116は、3フロア以上なら、k-maens等の周知のクラスタリング方法によって、3以上のフロアをそれぞれ示す部分に軌跡を分割する。軌跡出力部116は、分割した部分軌跡を示す軌跡データを生成する。
【0073】
図12は、部分軌跡を示す軌跡データの一例を示す図である。図12に示す軌跡データD2は、軌跡データD1に示す測定時刻及び3次元座標と、各3次元座標が属する部分軌跡が示す階層とを互いに対応付けたデータである。図12の例では、測定時刻が早い3次元座標から順番に、「第1階層」、「第2階層」及び「第3階層」という3つの部分軌跡を示す階層が対応付けられている。以下では、各階層に対応付けられている3次元座標を、E01~E99(第1階層)、F01~F99(第2階層)、G01~G99(第3階層)と呼ぶものとする。
【0074】
続いて、サーバ装置10は、軌跡出力部116により、分割した部分軌跡を示す軌跡データ(例えば図12のように測定時刻、3次元座標及び階層を互いに対応付けて示すデータ)を出力する(S14)。軌跡出力部116は、例えば、記憶部12の所定の領域に軌跡データを出力する。この領域は、解析処理を行うための作業用に確保された領域である。
【0075】
次に、サーバ装置10は、階層取得部117により、構造物の階層を示す階層データを取得する(S15)。階層データは、上述したように、構造物の各階層に関する情報(階層の数と順番、階層の高さ又は各階層の図面等)を示すデータである。階層データは、例えば、工事支援システム1の利用者又は運用者によって予め入力され、サーバ装置10に記憶されている。
【0076】
図13は、階層データの一例を示す図である。図13に示す階層データD3は、階層数と、フロア番号(階層の順番)と、高さと、図面とを互いに対応付けたデータである。階層データD3においては、「3」という階層数、「5階」、「4階」、「3階」というフロア番号、「xxm」という高さと、各図面データとが対応付けられている。この階層データD3は、例えば、マンションのような高層の構造物の3階から5階までが工事現場であることを示している。続いて、サーバ装置10は、対応出力部118により、取得された階層データが示す階層と部分軌跡との対応関係を示す対応データを出力する(S16)。
【0077】
図14は、対応データの一例を示す図である。図14に示す対応データD4は、軌跡データD2に示す測定時刻、3次元座標及び部分軌跡の階層と、フロア番号とを互いに対応付けたデータである。対応出力部118は、図14の例では、「第1階層」に「5階」を、「第2階層」に「4階」を、「第3階層」に「3階」を対応付けている。対応出力部118は、例えば、3次元座標のうち高さを示すz座標から、各階層の上下関係を判断する。
【0078】
そして、対応出力部118は、各階層の上下関係に基づき、各階層がどのフロア番号になるかを判断する。対応出力部118は、図14の例では、「第1階層」が一番高く、「第3階層」が一番低いと判断し、一番高い「第1階層」が「5階」であり、一番低い「第3階層」が「3階」であると判断している。このような態様によれば、部分軌跡がどの階層のものかを把握することができる。
【0079】
なお、階層データが示す階層数と部分軌跡の階層数は常に一致するとは限らない。例えば、部分軌跡の階層数が「3」(工事現場だけの階層数)であるのに対し、階層データが示す階層数が「10」(例えば構造物全体の階層数)というように異なる場合がある。その場合、対応出力部118は、階層データが示す各階層の図面に部分軌跡を配置させ、それらの図面及び部分軌跡の合致度を算出する。
【0080】
合致度は、例えば、上述したように、図面上において壁に重ねずに配置される部分軌跡の最大スケールが用いられる(最大スケールが大きいほど合致度も大きい)。なお、合致度の求め方はこれに限らない。対応出力部118は、例えば、部分軌跡を示す座標のうち互いの距離が最も長くなる2つの座標を特定し、特定した座標間の最長距離を、図面が示す構築物の内部空間における同様の最長距離の7~9割の長さにして、実空間とスケールを合わせる。
【0081】
部分軌跡の最長距離が図面の内部空間の最長距離よりも短くなるのは、撮像装置30が内部空間の端に到達することは少なく、内部空間の端よりも内側を移動することが多いためである。そして、対応出力部118は、スケールを合わせた状態で図面に重ねたときに最も壁と重なる割合を1から減算した値を合致度として算出する。この場合、スケールを合わせた状態で図面上の壁に全く重ならない部分軌跡の合致度は最大値の「1」となり、壁と重なる割合が大きいほど小さな値になり合致度が小さくなる。
【0082】
このように合致度に基づいて階層データが示す階層と部分軌跡との対応関係を判断することで、構造物が形成する階層のうち、一部の階層のみが測定された場合でも、部分軌跡の階層を把握することができる。
【0083】
次に、サーバ装置10は、特徴特定部119により、各階層の図面において所定の特徴を有する箇所(以下「特徴箇所」と言う)を特定する(S17)。特徴特定部119は、例えば、図面において撮像装置30による測定が開始される開始位置及び終了する終了位置を特徴箇所として特定する。
【0084】
特徴特定部119は、具体的には、測定取得部115により取得された測定データが示す特徴量のうち開始位置として定められた特徴量(以下「開始特徴量」と言う)が測定された位置を開始位置として特定する。開始特徴量は、例えば、図1に示すマーカ板9のマーカ90が示す特徴量である。
【0085】
図15は、マーカ90の一例を示す図である。図15の例では、マーカ91の水平方向の長さL11及び鉛直方向の長さL12と、マーカ92の水平方向の長さL13及び鉛直方向の長さL14とが示されている。また、マーカ92は床面100から高さL15のところに設置され、マーカ91はマーカ92よりも高さL16だけ高い位置に設置されている。サーバ装置10は、これらの長さ及び高さの情報をマーカ90のサイズに関する情報として記憶している。
【0086】
特徴特定部119は、例えば、エッジを検出する画像処理により撮影画像に映っている輪郭を認識し、認識した輪郭により鉛直方向に並べて配置された2つの矩形が示される場合は、その撮影画像の撮影位置を、マーカ90を示す開始特徴量が測定された開始位置として特定する。このように、特徴特定部119は、特徴が予め分かっているマーカ90を認識することで、開始特徴量が測定された開始位置を特定する。なお、特徴特定部119は、認識された矩形の縦横比や矩形同士の距離にも基づいてマーカ90を認識してもよい。このような態様によれば、開始特徴量を用いない場合に比べて、移動軌跡の位置合わせを容易に行うことができる。
【0087】
また、特徴特定部119は、推定された軌跡全体において最後の測定位置を、測定が終了した終了位置として特定する。なお、図14の例では、現場作業員W1は、5階から測定を開始して3階で測定を終了しているが、3階で折り返して5階のスタンド8の設置位置まで戻って撮影を終了する場合もある。その場合、特徴特定部119は、開始特徴量を終了特徴量として用いて、終了特徴量が測定された位置を終了位置として特定してもよい。
【0088】
また、特徴特定部119は、上述したように、図面が示す各階層の間を繋ぐ接続経路を、その図面において所定の特徴を有する箇所として特定する。特徴特定部119は、例えば、図面において階段(連続する矩形と矢印により表されている)が示されている箇所を特徴箇所として特定する。
【0089】
次に、サーバ装置10は、対応付部120により、階層に対応する部分軌跡の端の位置をその階層の図面において特定された特徴箇所に対応付ける(S18)。対応付部120は、例えば、図14に示すような対応データにおいて、特徴箇所の対応付けを示す。
【0090】
図16は、対応データの一例を示す図である。図16に示す対応データD5は、図14に示す対応データD4に、特徴箇所の列を追加したデータである。例えば、開始位置が特定された第1階層(5階)において測定時刻が最も早い最初の3次元座標E01及び測定時刻が最も遅い最後の3次元座標E99は、それぞれ第1階層に対応する部分軌跡の端の位置を示す。対応付部120は、端を示す3次元座標E01を第1階層について特定された開始位置に対応付け、3次元座標E99を第1階層について特定された接続経路に対応付ける。
【0091】
また、第2階層(4階)における最初の測定位置を示す3次元座標F01及び最後の測定位置を示す3次元座標F99は、それぞれ第2階層に対応する部分軌跡の端の位置を示す。対応付部120は、3次元座標F01及びF99を、いずれも、第2階層について特定された接続経路に対応付ける。詳細には、対応付部120は、測定時刻が早い3次元座標F01は、先に測定された第1階層との接続経路に対応付け、測定時刻が遅い3次元座標F99は、後で測定される第3階層との接続経路に対応付ける。
【0092】
また、第3階層(3階)における最初の測定位置を示す3次元座標G01及び最後の測定位置を示す3次元座標G99は、それぞれ第3階層に対応する部分軌跡の端の位置を示す。対応付部120は、3次元座標G01及びG99を、第3階層について特定された接続経路に対応付ける。詳細には、対応付部120は、3次元座標G01を第3階層について特定された接続経路に対応付ける。また、対応付部120は、3次元座標G99を第3階層について特定された終了位置に対応付ける。
【0093】
このように、部分軌跡の端の位置と特徴箇所との対応付けを行うことで、移動軌跡の図面での位置を自動的に合わせることができる。また、接続経路を特徴箇所として部分軌跡の端の位置と対応付けることで、接続経路が多いほど位置合わせの精度を高めることができる。
【0094】
そして、サーバ装置10は、画像出力部121により、部分軌跡が示す撮像装置30が測定を行った位置ごとに、その位置で撮影された現場を示す現場画像を出力する。画像出力部121は、上述したように、撮像装置30が測定を行った位置ごとに、その位置の高さに応じた態様で表された画像を出力する。画像出力部121は、例えば、撮影位置が床面よりも低いことを示す場合、撮影位置が床下であることを示す画像(例えば「床下」という文字列を含む画像)を作成して出力する。
【0095】
また、画像出力部121は、撮影位置が天井よりも高いことを示す場合、撮影位置が天井裏であることを示す画像(例えば「天井裏」という文字列を含む画像)を作成して出力する。また、画像出力部121は、撮影位置が床面よりも高く、現状よりも低い場合、撮影位置が部屋の内部であることを示す画像(例えば「部屋内部」という文字列を含む画像)を作成して出力する。部分軌跡が示す測定位置は、同じ階層における測定位置であるから、上記のとおり画像を出力することで、同一階層でも軌跡における高さの違いを示すことができる。
【0096】
なお、図10に示す解析処理では、軌跡出力部116が、軌跡データを生成してから部分軌跡処理を実行したが、これらの処理の順番を反対にしてもよい。その場合、軌跡出力部116は、例えば、取得された測定データから階段を認識して階段の前と後で分割し、分割した測定データに基づいて各階層の部分軌跡を示す軌跡データを生成する。いずれの方法でも、現場作業員W1は撮像装置30で一度だけ工事現場を撮影すればよいので、構造物の階層毎の移動軌跡を一度の測定で得ることができる。
【0097】
<構成のバリエーション>
また、工事支援システム1は、撮像装置30とは異なる測定装置を備えていてもよい。測定装置は、例えば、対象物までの距離を測定する距離画像センサを備え、測定結果を示す点群データを測定データとして出力するものであってもよい。また、測定装置は、対象物の温度を測定する赤外線センサ又は対象物までの距離や対象物の速度を測定するミリ波センサを備えるものであってもよい。また、測定装置は、より高解像度な撮影が可能な広角カメラ等であってもよい。
【0098】
また、工事支援システム1は、ブレーカ6がオフにされない工事現場であれば、現場端末20及び撮像装置30が外付けバッテリー4を介さずに外部電源5と接続されていてもよい。また、現場端末20は、実施形態では、ブレーカ6がオフされた場合でも移動体通信でサーバ装置10に測定データを送信していたが、ブレーカ6がオフされない場合は、Wi-Fiルータを工事現場に設置することで、Wi-Fi通信によりサーバ装置10に測定データを送信してもよい。
【0099】
また、例えば、サーバ装置10は、2台以上の装置に分散されてもよいし、クラウドコンピューティングシステムに代替されてもよい。また、現場端末20及び撮像装置30が統合されてもよい。また、図4に示す機能構成も一例であり、これに限られない。例えば、サーバ装置10、現場端末20及び撮像装置30の機能がそれぞれ2台以上の装置に分散して実現されてもよい。
【0100】
また、1つの機能が行う動作を2以上の機能が分散して行ってもよいし、2以上の機能が1つの機能に統合されてもよい。要するに、工事支援システム1の全体で図6に示す各機能が実現されていれば、それらの機能を実現する装置はどのような構成であってもよい。
【0101】
上述した実施形態の態様は、サーバ装置10のような情報処理装置や、サーバ装置10を備える工事支援システム1のような情報処理システムであったが、情報処理方法であってもよい。その情報処理方法は、その情報処理システムが実行する各処理のステップを備える。また、上述した実施形態の態様は、プログラムであってもよい。そのプログラムは、コンピュータに、同様の情報処理システムが実行する各処理を実行させる。
【0102】
<付記>
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0103】
(1)情報処理システムであって、測定取得ステップでは、物体から届く電磁波を測定するセンサを有する測定装置が構造物の内部又は外部を移動しながら移動経路の各位置において測定した測定データを取得し、軌跡出力ステップでは、取得された前記測定データに基づき前記測定装置の軌跡を示す軌跡データを出力し、前記軌跡は、前記構造物が2以上の階層を有する場合、前記測定装置が測定を行った位置が2以上の異なる高さの範囲にそれぞれ収まる2以上の部分軌跡を有する、もの。
【0104】
このような態様によれば、構造物の階層毎の移動軌跡を一度の測定で得ることができる。
【0105】
(2)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、階層取得ステップでは、前記構造物の階層を示す階層データを取得し、対応出力ステップでは、取得された前記階層データが示す階層と前記部分軌跡との対応関係を示す対応データを出力する、もの。
【0106】
このような態様によれば、部分軌跡がどの階層のものかを把握することができる。
【0107】
(3)上記(2)に記載の情報処理システムにおいて、前記階層データは、前記構造物の各階層の図面を示し、特定ステップでは、前記図面において所定の特徴を有する箇所を特定し、対応付けステップでは、前記階層に対応する前記部分軌跡の端の位置を当該階層の図面において特定された前記箇所に対応付ける、もの。
【0108】
このような態様によれば、移動軌跡の図面での位置を合わせることができる。
【0109】
(4)上記(3)に記載の情報処理システムにおいて、前記特定ステップでは、前記図面が示す各階層の間を繋ぐ接続経路を前記箇所として特定する、もの。
【0110】
このような態様によれば、接続経路が多いほど位置合わせの精度を高めることができる。
【0111】
(5)上記(3)又は(4)に記載の情報処理システムにおいて、前記特定ステップでは、前記図面において前記測定が開始される開始位置を前記箇所として特定し、前記対応付けステップでは、前記開始位置が特定された階層に対応する前記部分軌跡の端の位置を前記開始位置に対応付ける、もの。
【0112】
このような態様によれば、移動軌跡の図面での位置を合わせることができる。
【0113】
(6)上記(5)に記載の情報処理システムにおいて、前記特定ステップでは、取得された前記測定データが示す特徴量のうち前記開始位置として定められた特徴量が測定された位置を前記開始位置として特定する、もの。
【0114】
このような態様によれば、移動軌跡の位置合わせを容易に行うことができる。
【0115】
(7)上記(2)~(6)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、前記階層データは、前記構造物の各階層の図面を示し、前記対応出力ステップでは、取得された前記階層データが示す階層よりも前記部分軌跡の数が少ない場合、前記階層の図面に前記部分軌跡を配置させたときの合致度が最も高くなる前記階層と前記部分軌跡との対応関係を示すデータを前記対応データとして出力する、もの。
【0116】
このような態様によれば、一部の階層のみが測定された場合でも部分軌跡の階層を把握することができる。
【0117】
(8)上記(1)~(7)の何れか1つに記載の情報処理システムにおいて、画像出力ステップでは、前記部分軌跡が示す前記測定装置が測定を行った位置ごとに、当該位置の高さに応じた態様で表された画像を出力する、もの。
【0118】
このような態様によれば、同一階層でも軌跡における高さの違いを示すことができる。
もちろん、この限りではない。
また、上述した実施形態及び変形例を任意に組み合わせて実施するようにしてもよい。
【0119】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
1 :工事支援システム
10 :サーバ装置
11 :制御部
20 :現場端末
21 :制御部
30 :撮像装置
31 :制御部
40 :遠隔端末
41 :制御部
111 :情報記憶部
112 :画像処理部
113 :データ生成部
114 :データ出力部
115 :測定取得部
116 :軌跡出力部
117 :階層取得部
118 :対応出力部
119 :特徴特定部
120 :対応付部
121 :画像出力部
211 :表示制御部
212 :操作受付部
213 :稼働制御部
214 :送信制御部
311 :表示制御部
312 :操作受付部
313 :撮影制御部
314 :送信制御部
411 :表示制御部
412 :操作受付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16