(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052800
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/12 20060101AFI20240405BHJP
B32B 5/10 20060101ALI20240405BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20240405BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20240405BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20240405BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240405BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
B32B3/12 Z
B32B5/10
B29C70/68
B29C70/42
B29K101:12
B29K105:08
B29L9:00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023776
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2021567527の分割
【原出願日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019238138
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊崎 健晴
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰規
(72)【発明者】
【氏名】水本 和也
(57)【要約】
【課題】曲げ弾性率等の曲げ物性に優れる軽量な積層体及びその製造方法の提供。
【解決手段】円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状、及びそれらのうちの複数を組み合わせた形状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状の中空構造単位を複数有し、前記中空構造単位の断面形状の最大幅が3~15mmであるコア部材と、前記コア部材の表面及び裏面の少なくとも一方に配置された接着剤層と、前記接着剤層に接して配置された熱可塑性樹脂を含む一方向性繊維強化樹脂シートとを有する積層体及びその製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状、及びそれらのうちの複数を組み合わせた形状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状の中空構造単位を複数有し、前記中空構造単位の断面形状の最大幅が3~15mmであるコア部材と、
前記コア部材の表面及び裏面の少なくとも一方に配置された接着剤層と、
前記接着剤層に接して配置された熱可塑性樹脂を含む一方向性繊維強化樹脂シートと
を有する積層体。
【請求項2】
前記コア部材の厚みが3~30mmである請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記コア部材及び前記接着剤層が熱可塑性樹脂を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂である請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記コア部材が、前記中空構造単位の表面側及び裏面側の開口を被覆する被覆シートを有する請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記コア部材の前記中空構造単位の単位面積当たりの個数が5600~111200個/m2である請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記一方向性繊維強化樹脂シートにおける繊維が炭素繊維を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
曲げ弾性率が10~100GPaである請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記接着剤層が前記コア部材の表面及び裏面の各々に配置されており、前記一方向性繊維強化樹脂シートが各々の前記接着剤層に接して配置されている請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1に記載の積層体を製造する為の方法において、
円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状、及びそれらのうちの複数を組み合わせた形状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状の中空構造単位を複数有し、前記中空構造単位の断面形状の最大幅が3~15mmであるコア部材と、熱可塑性樹脂を含む一方向性繊維強化樹脂シートのうちの一方又は両方に接着剤を付与する工程、
前記コア部材の表面及び裏面の少なくとも一方に、前記接着剤を介して、前記一方向性繊維強化樹脂シートを配置する工程、並びに、
前記接着剤の融点以上に加熱する工程
を有する積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ弾性率等の曲げ物性に優れる軽量な積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量で且つ強度が高い部材として、例えばハニカムコア又はハニカム材と呼称される中空部材が知られている。このハニカムコア又はハニカム材としては、ハニカム状の中空構造を有する板状部材が知られている。
【0003】
特許文献1には、熱可塑性樹脂製中空板状体の少なくとも一方の主面に、繊維シート及び熱可塑性樹脂フィルムを貼り合せた積層構造体が記載されている。この熱可塑性樹脂製中空板状体は、例えばハニカム材である。そして、この積層構造体は軽量であり且つ折り曲げても折り曲げ部分に座屈による突出シワや凹部が発生しにくいと説明されている。
【0004】
特許文献2には、ハニカムコアの両面に表面板を配設して一体的に成形して成るハニカムサンドイッチパネルにおいて、ハニカムコアと表面板との間に一方向に繊維を配列した繊維強化樹脂層を一体的に形成したハニカムサンドイッチパネルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-233796号公報
【特許文献2】特開平7-180281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明は、積層構造体に座屈が生じることを前提とし、この座屈による突出シワを抑制することを課題とする発明である。したがって、座屈を防止する為の曲げ物性の改良については何ら検討されていない。そして、この積層構造体は、本発明者らの検討によれば、曲げ物性(例えば曲げ弾性率)に劣る場合があることが分かった。
【0007】
特許文献2に記載のハニカムサンドイッチパネルにおける繊維強化樹脂層には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されている。本発明者らの検討によれば、このような熱硬化性樹脂を繊維強化樹脂層に使用するとハニカムコアに接着することが難しく、剥離が生じて曲げ特性が劣る場合があることが分かった。
【0008】
すなわち本発明の目的は、曲げ弾性率等の曲げ物性に優れる軽量な積層体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の構成を有する積層体が非常に有効であることを見出し、本発明を完成した。即ち本発明は以下の事項により特定される。
【0010】
[1]円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状、及びそれらのうちの複数を組み合わせた形状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状の中空構造単位を複数有し、前記中空構造単位の断面形状の最大幅が3~15mmであるコア部材と、
前記コア部材の表面及び裏面の少なくとも一方に配置された接着剤層と、
前記接着剤層に接して配置された熱可塑性樹脂を含む一方向性繊維強化樹脂シートと
を有する積層体。
【0011】
[2]前記コア部材の厚みが3~30mmである[1]に記載の積層体。
【0012】
[3]前記コア部材及び前記接着剤層が熱可塑性樹脂を含む[1]に記載の積層体。
【0013】
[4]前記熱可塑性樹脂が、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂である[3]に記載の積層体。
【0014】
[5]前記コア部材が、前記中空構造単位の表面側及び裏面側の開口を被覆する被覆シートを有する[1]に記載の積層体。
【0015】
[6]前記コア部材の前記中空構造単位の単位面積当たりの個数が5600~111200個/m2である[1]に記載の積層体。
【0016】
[7]前記一方向性繊維強化樹脂シートにおける繊維が炭素繊維を含む[1]に記載の積層体。
【0017】
[8]曲げ弾性率が10~100GPaである[1]に記載の積層体。
【0018】
[9]前記接着剤層が前記コア部材の表面及び裏面の各々に配置されており、前記一方向性繊維強化樹脂シートが各々の前記接着剤層に接して配置されている[1]に記載の積層体。
【0019】
[10][1]に記載の積層体を製造する為の方法において、
円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状、及びそれらのうちの複数を組み合わせた形状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状の中空構造単位を複数有し、前記中空構造単位の断面形状の最大幅が3~15mmであるコア部材と、熱可塑性樹脂を含む一方向性繊維強化樹脂シートのうちの一方又は両方に接着剤を付与する工程、
前記コア部材の表面及び裏面の少なくとも一方に、前記接着剤を介して、前記一方向性繊維強化樹脂シートを配置する工程、並びに、
前記接着剤の融点以上に加熱する工程
を有する積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、曲げ弾性率等の曲げ物性に優れる軽量な積層体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)は、本発明の積層体の実施形態を示す模式的断面図であり、(B)は、コア部材と一方向性繊維強化樹脂シートを接着剤層を介して接着する前の状態を説明する為の模式的斜視図である。
【
図2】
図1に示す積層体に用いたコア部材の内部構造を説明する為の模式的斜視図である。
【
図3】(A)~(C)は、本発明におけるコア部材の中空構造単位の断面形状の例を示す模式図である。
【
図4】(A)~(C)は、本発明におけるコア部材の中空構造単位の形状の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の積層体は、特定の形状の中空構造単位を複数有するコア部材と、接着剤層と、熱可塑性樹脂を含む一方向性繊維強化樹脂シートとを有する積層体である。
図1(A)は、本発明の積層体の実施形態を示す模式的断面図であり、
図1(B)は、コア部材と一方向性繊維強化樹脂シートを接着剤層を介して接着する前の状態を説明する為の模式的斜視図である。
【0023】
図1に示す積層体1は、コア部材11と、コア部材11の表面及び裏面の各々に配置された接着剤層12と、接着剤層12の各々に接して配置された熱可塑性樹脂を含む一方向性繊維強化樹脂シート(
図1に示す実施形態においては内側の一方向性繊維強化樹脂シート13aと外側の一方向性繊維強化樹脂シート13bの積層体)を有する。すなわち、この実施形態における積層体1は、コア部材11が一方向性繊維強化樹脂シート13a及び13bの積層体により挟まれたサンドウィッチ構造を有する積層体である。各接着剤層12は、コア部材11の表面及び裏面の各々と内側の各一方向性繊維強化樹脂シート13aとを接着する為の層である。なお、
図1に示す積層体1においては、コア部材11の表面及び裏面の各々に配置された接着剤層12及び一方向性繊維強化樹脂シートを示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明の積層体は、コア部材11の表面及び裏面の少なくとも一方に配置された接着剤層12及び一方向性繊維強化樹脂シートを含む態様であっても良い。
【0024】
なお、
図1に示す積層体1は、コア部材11の表面及び裏面の両方に接着剤層12と一方向性繊維強化樹脂シート(
図1においては一方向性繊維強化樹脂シート13a及び13bの積層体)を有するので、5層構成の積層体である。この5層構成は、具体的には、「一方向性繊維強化樹脂シート/接着剤層/コア部材/接着剤層/一方向性繊維強化樹脂シート」である。ただし、本発明はこの5層構成に限定されない。例えば、コア部材11の表面及び裏面のうちの一方のみに接着剤層12と一方向性繊維強化樹脂シートを有する3層構成の積層体であっても良い。この場合の3層構成は、具体的には「一方向性繊維強化樹脂シート/接着剤層/コア部材」である。
【0025】
<一方向性繊維強化樹脂シート>
図1においては、コア部材11を挟む一方向性繊維強化樹脂シートとして、内側の一方向性繊維強化樹脂シート13aと外側の一方向性繊維強化樹脂シート13bの積層体(すなわち2枚のシートを一体化した積層体)を用いている(後述する実施例1~3に対応する構成)。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、3枚以上の一方向性繊維強化樹脂シートの積層体を用いても良いし、1枚だけの一方向性繊維強化樹脂シート(非積層体)を用いても良い。複数枚の一方向性繊維強化樹脂シートを一体化した積層体を用いる場合、その形態は特に限定されない。例えば、クロスプライ積層体であっても良いし、アングルプライ積層体であっても良いし、一方向性繊維強化樹脂シートが平織や綾織などに織られた一方向性繊維強化樹脂シートの織物であっても良いし、一方向性繊維強化樹脂シートの小片がランダムに一体化された一方向性繊維強化樹脂シートのランダムシートであっても良い。これらの中でも、軽さと曲げ物性を両立する観点から、非積層体、クロスプライ積層体、及びアングルプライ積層体が好ましい。クロスプライ積層体は一方向性繊維強化樹脂シートの繊維方向を直交するように積層した積層体を意味し、アングルプライ積層体は一方向性繊維強化樹脂シートの繊維方向を任意の角度で積層した積層体を意味する。
【0026】
図1においては、外側の一方向性繊維強化樹脂シート13bの繊維方向は0°方向であり、内側の一方向性繊維強化樹脂シート13aの繊維方向は0°又は90°方向である(後述する実施例1~3に対応する構成)。ただし、本発明はこれに限定されない。一方向性繊維強化樹脂シート13a及び13bの繊維方向は、必要に応じて任意の方向にすることができる。また、
図1においては、コア部材11の表面側の内側の一方向性繊維強化樹脂シート13aの繊維方向と裏面側の内側の一方向性繊維強化樹脂シート13aの繊維方向は互いに同じ方向であり、コア部材11の表面側の外側の一方向性繊維強化樹脂シート13bの繊維方向と裏面側の外側の一方向性繊維強化樹脂シート13bの繊維方向は互いに同じ方向である(後述する実施例1~3に対応する構成)。これらの繊維方向は必要に応じて互いに異なる方向にすることができる。
【0027】
一方向性繊維強化樹脂シートに含まれる繊維及び熱可塑性樹脂の種類は、特に限定されない。ただし、その熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。一方向性繊維強化樹脂シートが熱可塑性樹脂を含む場合は、曲げ特性がより向上する傾向にある。また、その熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂(より好ましくはポリプロピレン系樹脂)である場合は、曲げ特性が特に向上する傾向にある。一方向性繊維強化樹脂シートに含まれる熱可塑性樹脂及び繊維については、後に詳述する。
【0028】
一方向性繊維強化樹脂シートの厚み(複数の一方向性繊維強化樹脂シートの積層体を用いる場合はその積層体の厚み)は、特に限定されず、コア部材11の厚みに依存して適宜選択するものであるが、積層体全体の軽量化の観点からシートの厚みは薄いことが好ましい。一方向性繊維強化樹脂シートの厚みは、好ましくは0.05~1.0mm、より好ましくは0.1~0.5mmである。
【0029】
<コア部材>
図2は、
図1に示す積層体に用いたコア部材の内部構造を説明する為の模式的斜視図である。
図2に示すように、この実施形態におけるコア部材11は、ハニカム状断面を有する六角柱形状(すなわち多角柱形状)の中空構造単位11aを複数(具体的には多数)有する板状の部材である。
図2に示す中空構造単位11aは、その中空の空間を中空構造用壁材11bで囲うことにより形成されている。また、中空構造単位11aの表面側及び裏面側の開口は被覆シート11c(例えばラミネートシート)により被覆されている。
【0030】
図2に示すコア部材11の中空構造単位11aは、以上説明した通り六角柱形状であるが、本発明はこれに限定されない。中空構造単位11aは、円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状、及びそれらのうちの複数を組み合わせた形状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状の中空構造単位であれば良い。またコア部材11中に、2種類以上の中空構造単位11aが混在していても良い。
【0031】
図3(A)~(C)は、本発明におけるコア部材の中空構造単位の断面形状(中空構造単位11aの深さ方向に直交する面の断面形状)の例を示す模式図である。中空構造単位11aの断面形状は、例えば、
図3(A)に示すような六角形(
図2に示したハニカム状)であっても良いし、
図3(B)に示すような四角形であっても良いし、
図3(C)に示すような円形でも良い。さらに、それ以外の任意の形状であっても良い。
【0032】
本発明において、コア部材11の中空構造単位11aの断面形状の最大幅は3~15mmであり、好ましくは4~9mmである。この「断面形状の最大幅」とは、断面形状の内部に引くことができる線分のうち最も長い線分の長さを意味する。例えば、
図3(A)に示した六角形や
図3(B)に示した四角形の場合は、その対角線が断面形状の最大幅Wである。また、
図3(C)に示した円形の場合は、その直径が断面形状の最大幅Wである。なお、後述する
図4(B)及び(C)のように深さによって断面形状の大きさが異なる場合は、最も大きい部分の断面形状の最大幅が本発明における断面形状の最大幅Wである。断面形状の最大幅が上記上限値以下であると、コア部材11の圧縮弾性率、圧縮強度が高まる傾向にあるため好ましい。断面形状の最大幅が上記下限値以上であると、コア部材11の座屈、局所的な凹みが起こりにくく、曲げ物性が向上する傾向があるため好ましい。
【0033】
図4(A)~(C)は、本発明におけるコア部材11の中空構造単位の形状の例を示す模式的断面図である。本発明における中空構造単位11aは、円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状、及びそれらを組み合わせた形状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状の中空構造単位である。例えば、
図4(A)に示すような断面形状の幅が均一である多角柱形状又は円柱形状であっても良いし、
図4(B)に示すような徐々に幅が変化する円錐形状又は多角錐形状であっても良い。さらに、
図4(C)に示すような円錐形状又は多角錐形状を上下対称に2つずつ組み合わせた2層構造の形状であっても良い。
【0034】
本発明において複数の中空構造単位11aは、コア部材11中で規則的に配列していることが好ましい。また、中空構造単位11aの構造としては、例えば、断面形状が六角形(又は他の多角形や円形の場合もある)のハニカム構造、断面形状が円形の円錐構造(シングルコーン構造)、円錐形状を上下対称に2つずつ組み合わせた2層構造(ダブルコーン構造)、断面形状が四角形(又は他の多角形場合もある)の格子構造が好ましく、特にハニカム構造が最も好ましい。なおハニカム構造とは、通常、複数の中空構造単位が配列された蜂の巣の如き構造を意味する。中空構造単位11aが規則的に配置していると、コア部材11としての圧縮弾性率、圧縮強度が優れる傾向にあり、その結果として、積層体の曲げ物性が向上する傾向にあるため好ましい。
【0035】
コア部材11の中空構造単位11aの単位面積当たりの個数は、好ましくは5600~111200個/m2、より好ましくは14000~72000個/m2である。中空構造単位11aの単位面積当たりの個数が上記上限値以下であると、コア部材11として軽量化できる傾向にあるため好ましい。中空構造単位11aの単位面積当たりの個数が上記下限値以上であると、コア部材11としての圧縮弾性率、圧縮強度が優れる傾向にあり、その結果として、積層体の曲げ物性が向上する傾向にあるため好ましい。
【0036】
図2に示したコア部材11は、先に述べたように中空構造単位11aの表面側及び裏面側の開口を被覆する被覆シート11cを有している。これは好ましい実施形態であるが、本発明はこれに限定されない。必要に応じて、被覆シート11cの無いコア部材11を用いても良い。
【0037】
コア部材11の目付量(単位面積当たりの質量)は、好ましくは500~4000g/m2、より好ましくは800~3000g/m2である。
【0038】
コア部材11の見かけ密度は、積層体の軽量性と曲げ物性とを両立する観点から、好ましくは0.10~0.50g/cm2、より好ましくは0.15~0.30g/cm2である。見かけ密度は、単位面積当たりの質量を厚みで除して求めることができる。
【0039】
コア部材11(例えば中空構造用壁材11bや被覆シート11c)を構成する材料の種類は特に限定されないが、軽量化及び一方向性繊維強化樹脂シートとの接着性などの点から、樹脂製のコア部材が好ましく、特にコア部材が熱可塑性樹脂を含むことがより好ましい。その具体例としては、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、オレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂が軽量化の観点からより好ましい。
【0040】
コア部材11の厚みは、特に限定されないが、高い剛性を得るためには厚い方が望ましい。ただし、厚すぎると重量が増え、空間を圧迫するので用途に応じて適切な厚さを適宜選択することが出来る。軽量性と曲げ物性とを両立する観点から、コア部材11の厚みは、好ましくは3~30mm、より好ましくは3.5~20mmである。
【0041】
<接着剤層>
本発明において接着剤層は、コア部材11と一方向性繊維強化樹脂シート(2枚以上の一方向性繊維強化樹脂シートの積層体を用いる場合は内側の一方向性繊維強化樹脂シート13a)とを接着して一体化する為の層である。接着剤の種類や層の厚みは特に限定されず、コア部材11と一方向性繊維強化樹脂シートを接着できるものであれば良い。
【0042】
接着剤は、熱溶融性を有することが好ましい。接着剤の融点は、コア部材11を融解させない温度、さらにはコア部材11の熱変形が生じない温度範囲で接着できる観点から、好ましくは40~160℃、より好ましくは60~140℃である。
【0043】
接着剤の種類は特に限定されないが、熱可塑性樹脂を含む接着剤が好ましい。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。接着剤の具体的な種類としては、オレフィン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤が挙げられる。特に、オレフィン系接着剤が好ましい。また、接着剤と一方向性繊維強化樹脂シートが同種の樹脂を含むと、接着性が向上する傾向にあるので好ましい。なお、同種の樹脂とは、具体的には、例えば、接着剤と一方向性繊維強化樹脂シートの両方が熱可塑性樹脂を含む場合、両方がオレフィン系樹脂を含む場合が挙げられる。同様に、接着剤とコア部材11とが同種の樹脂を含むと、接着性が向上する傾向にあるので好ましい。
【0044】
接着剤層の厚みは特に限定されず、コア部材11と一方向性繊維強化樹脂シートとを接着可能な厚さであれば良い。具体的には、接着剤層の厚みは、1μm~1000μmが好ましく、1μm~100μmがより好ましい。ただし、本発明の積層体を製造する工程において、コア部材11と一方向性繊維強化樹脂シートとを接着剤層を介して熱プレス等の手段により加圧接着すると、この加圧(又は、加圧及び加熱)によって接着剤層が非常に薄くなる場合もある。したがって、そのような場合も考慮すると、接着剤層の厚みは1μm未満であっても構わない。
【0045】
<繊維強化樹脂組成物>
本発明において、一方向性繊維強化樹脂シートを構成する繊維強化樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と繊維を含む組成物である。
【0046】
繊維強化樹脂組成物は、特に、融点及び/又はガラス転移温度が50~300℃の重合体(I)20~80質量%、及び、強化繊維(C)20~80質量部[但し、成分(I)と成分(C)の合計を100質量部とする]を含むことが好ましい。重合体(I)の量は、好ましくは25~70質量部、より好ましくは30~65質量部、特に好ましくは35~60質量部、最も好ましくは40~60質量部である。強化繊維(C)の量は、好ましくは30~75質量部、より好ましくは35~70質量部、特に好ましくは35~60質量部、最も好ましくは40~60質量部である。
【0047】
重合体(I)は融点及び/又はガラス転移温度が50~300℃の熱可塑性樹脂であれば良く、その種類は限定されないが、炭素数2~20のオレフィン単位を含むポリオレフィンが好ましい。
【0048】
繊維強化樹脂組成物を調製する際、強化繊維(C)は、通常、強化繊維束として用いられる。この強化繊維束は、プロピレンから導かれる構成単位が好ましくは50モル%以上であるプロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、強化繊維(C)とを含むことが好ましい。
【0049】
プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン由来の構造単位を有する樹脂であり、代表的にはプロピレンの重合体である。また、α-オレフィン、共役ジエン及び非共役ジエンから選ばれる少なくとも一種のオレフィンやポリエン由来の構造単位が含まれる共重合体であっても良い。
【0050】
α-オレフィンの具体例としては、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4ジメチル-1-ヘキセン、1-ノネン、1-オクテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等のプロピレンを除く炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられる。中でも1-ブテン、エチレン、4-メチル―1-ペンテン、1-ヘキセンが好ましく、1-ブテン、4-メチル―1-ペンテンがより好ましい。
【0051】
共役ジエン及び非共役ジエンの具体例としては、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエンが挙げられる。
【0052】
プロピレン系樹脂(A)がプロピレンと他の単量体との共重合体である場合、プロピレンから導かれる構成単位の量は好ましくは50モル%以上、より好ましくは50~99モル%、特に好ましくは55~98モル%、最も好ましくは60~97モル%である。
【0053】
プロピレン系樹脂(A)は、ショアA硬度が60~90であるか、又はショアD硬度が45~65であることが好ましい。ショアA硬度は、より好ましくは65~88、特に好ましくは70~85である。ショアD硬度は、より好ましくは48~63、特に好ましくは50~60である。
【0054】
プロピレン系樹脂(A)は、重量平均分子量が5万を超えるプロピレン系樹脂成分(A-1)60質量%を超え100質量%以下と、重量平均分子量が10万以下のプロピレン系樹脂成分(A-2)0~40質量%未満とを含むことが好ましい(但し、成分(A-1)と成分(A-2)の合計が100質量%であり、その重量平均分子量は(A-1)>(A-2)である)。プロピレン系樹脂成分(A-1)のより好ましい含有率は70質量%を超え100質量%以下、特に好ましい含有率は73~100質量%である。
【0055】
プロピレン系樹脂成分(A-1)の重量平均分子量とプロピレン系樹脂成分(A-2)との重量平均分子量との差は、好ましくは20,000~300,000、より好ましくは30,000~200,000、特に好ましくは35,000~200,000である。
【0056】
プロピレン系樹脂(A)の融点もしくはガラス転移温度は、通常0~165℃である。融点を示さない樹脂を用いる場合もある。
【0057】
プロピレン系樹脂(A)100質量部に対するプロピレン系樹脂(B)の量は、好ましくは3~50質量部、より好ましくは5~45質量部、特に好ましくは10~40質量部である。
【0058】
プロピレン系樹脂(B)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂である。このカルボン酸塩は、強化繊維、特に炭素繊維との相互作用が高める点で効果的である。
【0059】
プロピレン系樹脂(B)の原料としては、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体で代表される、プロピレンとα-オレフィンの単独又は2種類以上との共重合体がまず挙げられる。次いで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、及び/又はケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体が挙げられる。用いられるオレフィンの具体例は、プロピレン系樹脂(A)の共重合成分として挙げたものと同様である。
【0060】
ここで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、及びケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、たとえば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物が挙げられ、またこれらのエステル、さらにはオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物なども挙げられる。
【0061】
エチレン系不飽和カルボン酸の具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸が挙げられる。その無水物の具体例としては、ナジック酸 TM(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸が挙げられる。
【0062】
オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2-メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類が挙げられる。
【0063】
これらの単量体は単独で用いることもできるし、また2種類以上のものを用いることもできる。中でも、酸無水物類が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0064】
プロピレン系樹脂(B)のカルボン酸基の含有率は、NMRやIR測定で決定できる。また、例えば別の方法として、酸価で評価することもできる。プロピレン系樹脂(B)の酸価は、好ましくは10~100mg-KOH/g、より好ましくは20~80mg-KOH/g、特に好ましくは25~70mg-KOH/g、最も好ましくは25~65mg-KOH/gである。
【0065】
プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量は、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~80,000、特に好ましくは5,000~50,000、最も好ましくは5,000~30,000である。
【0066】
プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)との重量平均分子量の関係は、プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量の方が大きいことが好ましい。具体的には、プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量と、プロピレン系樹脂(B)との重量平均分子量との差は、好ましくは10,000~380,000、より好ましくは120,000~380,000、特に好ましくは130,000~380,000である。
【0067】
なお、本発明における重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0068】
プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(ASTM1238規格、230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは3~500g/10分である。より好ましい下限値は5g/10分、特に好ましくは7g/10分であり、より好ましい上限値は400g/10分、特に好ましくは350g/10分である。
【0069】
また、好ましいメルトフローレート範囲としては、ASTM1238規格、190℃、2.16kg荷重での測定値が上記と同様の数値範囲である場合もある。
【0070】
プロピレン系樹脂(B)の量は、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは3~50質量部、より好ましくは5~45質量部、特に好ましくは7~40質量部である。
【0071】
強化繊維束中、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の含有率は、好ましくは0.3~5質量%である。その下限値は、より好ましくは0.4質量%である、また、その上限値は、より好ましくは4質量%、特に好ましくは3質量%である。
【0072】
強化繊維束には、上述したプロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の他に、他の成分を併用しても構わない。例えば、プロピレン系樹脂をエマルジョン形態として強化繊維束に付与する場合は、エマルジョンを安定化させる界面活性剤を別途加えても構わない。このような他の成分は、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の合計100質量%に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0073】
強化繊維(C)の例としては、炭素繊維及びガラス繊維が挙げられる。強化繊維(C)としては、曲げ物性をより向上させる観点から、炭素繊維が好ましい。炭素繊維としては、具体的には、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上の観点から好ましく、強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がより好ましい。
【0074】
強化繊維(C)の平均繊維径は特に限定されないが、力学特性と表面外観の観点から1~20μmが好ましく、3~15μmがより好ましい。強化繊維束の単糸数は特に制限されず、通常は100~350,000本、好ましくは1,000~250,000本、より好ましくは5,000~220,000本である。
【0075】
繊維強化樹脂組成物は、通常、マトリックス樹脂(X)を含む。マトリックス樹脂(X)としては、後述するプロピレン系重合(D)が好ましい。その他、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリーレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、さらにはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を用いても良く、これらの1種又は2種以上を併用しても良い。特に極性の低いポリオレフィン系の樹脂が好ましく、中でもコスト、軽量性の観点からはエチレン系の重合体やプロピレン系の重合体が好ましく、後述するプロピレン系樹脂(D)がより好ましい。即ち、強化繊維束含有プロピレン系樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0076】
プロピレン系樹脂(D)は、未変性のプロピレン系樹脂であっても良いし、変性などの方法でカルボン酸構造やカルボン酸塩構造を含むプロピレン系樹脂を含んでいても良い。好ましくは後者の変性プロピレン系樹脂を含む態様である。その質量比は、未変性体/変性体比で、好ましくは80/20~99/1、より好ましくは89/11~99/1、特に好ましくは89/11~93/7、最も好ましくは90/10~95/5である。プロピレン系樹脂(D)の種類としては、先に説明したプロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)の説明で記載した種類のものが好ましい。プロピレン系樹脂(D)は、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、変性ポリプロピレンと言われるプロピレン重合体である。
【0077】
プロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量は、先に説明したプロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量と以下のような関係にあることが好ましい。
プロピレン系樹脂(A)>プロピレン系樹脂(D)>プロピレン系樹脂(B)
【0078】
プロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量は、好ましくは5万~35万、より好ましくは10万~33万、特に好ましくは15万~32万である。また、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(D)との分子量の差は、好ましくは1万~40万、より好ましくは2万~20万、特に好ましくは2万~10万である。
【0079】
プロピレン系樹脂(D)の立体規則性は特に限定されないが、イソタクチックもしくはシンジオタクチックであることが好ましい。
【0080】
繊維強化樹脂組成物は、繊維[強化繊維(C)等]と樹脂[プロピレン系樹脂(D)等]を含む。繊維(C)の量は好ましくは25~75質量部、より好ましくは30~68質量部、特に好ましくは35~65質量部である。樹脂の量は好ましくは25~75質量部、より好ましくは32~70質量部、特に好ましくは35~65質量部である。但し、これらは強化繊維(C)とマトリックス樹脂(X)の合計を100質量部とした場合の値である。
【0081】
繊維強化樹脂組成物に含まれる樹脂の融点もしくはガラス転移温度は好ましくは50~300℃である。その下限値はより好ましくは70℃、特に好ましくは80℃であり、上限値はより好ましく280℃、特に好ましくは270℃、最も好ましくは260℃である。また、融点がこれら範囲内であることが好ましく、特に融点の上限値は好ましくは250℃、より好ましくは240℃である。
【0082】
繊維強化樹脂組成物に含まれる樹脂には、カルボン酸基が含まれていることが好ましい。繊維強化樹脂組成物に含まれる強化繊維(C)と重合体(I)の合計を100質量部として、カルボン酸基を含む構造単位の含有率は、好ましくは0.010~0.045質量部、より好ましくは0.012~0.040質量部、特に好ましくは0.015~0.035質量部である。カルボン酸基を含む構造単位としては、例えば先に述べたプロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、プロピレン系樹脂(D)等の樹脂に含まれるカルボン酸基由来の構造単位やカルボン酸塩由来の構造単位が挙げられる。
【0083】
繊維強化樹脂組成物に含まれる樹脂にカルボン酸基が含まれている場合、その含有率を酸価で把握することも可能である。その酸価は、好ましくは0.1~0.55mg-KOH/g、より好ましくは0.12~0.45mg-KOH/g、特に好ましくは0.13~0.40mg-KOH/gである。
【0084】
繊維強化樹脂組成物に含まれる樹脂の好ましいメルトフローレート(ASTM1238規格、230℃、2.16kg荷重)は、1~500g/10分、より好ましくは、3~300g/10分、特に好ましくは5~100g/10分である。樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5万~40万、より好ましくは10万~37万、特に好ましくは15万~35万である。
【0085】
繊維強化樹脂組成物は、波長が300~3000μmの光を吸収する色素(II)を含んでいても良い。この色素(II)としては、公知の物を制限なく使用できる。好ましい色素(II)は、例えばカーボン系の色素であり、より好ましくはカーボンブラックである。
【0086】
色素(II)を含む場合、その含有量は、繊維強化樹脂組成物全体100質量%中、好ましくは0.01~5質量%である。その下限値はより好ましくは0.1質量%、特に好ましくは0.2質量%である。上限値はより好ましくは3質量%、特に好ましくは2質量%である。
【0087】
本発明に用いる一方向性繊維強化樹脂シートは、代表的には、連続繊維を一方向に引きそろえて樹脂と複合化したシート状の一方向性繊維強化樹脂成形体である。この一方向性繊維強化樹脂シートの製造方法としては、例えば、開繊された繊維束を引き揃えた後、溶融したマトリックス樹脂(X)と接触させる方法が挙げられる。一方向性繊維強化樹脂シートは一つのシートを単独で使用することもできるし、複数のシートを積層して一体化することにより一方向性繊維強化樹脂シートの積層体を作製し、これを使用することもできる。
【0088】
<積層体>
本発明の積層体は、以上説明した一方向性繊維強化樹脂シートと、コア部材と、接着剤層とを有する積層体である。
【0089】
本発明の積層体の見かけ密度は、積層体の軽量性と曲げ物性とを両立する観点から、好ましくは0.055~0.58g/cc、より好ましくは0.08~0.58g/ccである。積層体の見かけ密度は、例えばコア部材の見かけ密度や積層体の厚みを変更したり、プレス条件を変更することで調整できる。
【0090】
本発明の積層体の厚み(全体厚み)は、好ましくは3~32mm、より好ましくは3~22mmである。
【0091】
本発明の積層体の曲げ弾性率の具体的なレベルは特に限定されず、積層体を使用する具体的な用途において最も適したレベルに調整すれば良い。ただし、JIS K7171に準拠した曲げ弾性率(MD方向)は、好ましくは10~100GPa、より好ましくは12~60GPaである。積層体の曲げ弾性率は、例えば一方向性繊維強化樹脂シートの積層枚数を変更することで調整することができる。
【0092】
本発明の積層体の曲げ強度の具体的なレベルは特に限定されず、積層体を使用する具体的な用途において最も適したレベルに調整すれば良い。ただし、JIS K7171に準拠した曲げ強度(MD方向)は、好ましくは70~500MPa、より好ましくは100~450MPaである。積層体の曲げ強度は、例えば一方向性繊維強化樹脂シートの積層枚数を変更することで調整できる。
【0093】
本発明の積層体の耐衝撃性の具体的なレベルは特に限定されず、積層体を使用する具体的な用途において最も適したレベルに調整すれば良い。ただし、通常は、ASTM規格に準拠したハイレートインパクト試験において、パンクチャー点のエネルギーが8J以上であることが好ましく、10J以上であることがより好ましい。一方、パンクチャー点でのエネルギーが高い方が好ましいことは自明であるが、衝撃強度が余りに高過ぎると予期せぬ不具合が発生する場合があるので、好ましい上限値は20J、より好ましい上限値は15Jである。
【0094】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は特に限定されず、少なくともコア部材と一方向性繊維強化樹脂シートとを、接着剤層を介して一体化できる方法であれば良い。
【0095】
好ましい製造方法は、円柱形状、多角柱形状、円錐形状、多角錐形状、及びそれらのうちの複数を組み合わせた形状からなる群より選ばれる少なくとも1種の形状の中空構造単位を複数有するコア部材と、一方向性繊維強化樹脂シートのうちの一方又は両方に接着剤を付与する工程、前記コア部材の表面及び裏面の少なくとも一方に、前記接着剤を介して、前記一方向性繊維強化樹脂シートを配置する工程、並びに、前記接着剤の融点以上に加熱する工程を有する積層体の製造方法である。
【0096】
この製造方法において、コア部材の表面及び裏面の両方に接着剤層を付与し、その表面及び裏面の両方に接着剤を介して一方向性繊維強化樹脂シートを配置する場合は、例えば
図1に示したような5層構成の積層体が得られる。一方、コア部材の表面及び裏面のうちの一方のみに接着剤層を付与し、その表面及び裏面のうちの一方のみに接着剤を介して一方向性繊維強化樹脂シートを配置する場合は、3層構成の積層体が得られる。
【0097】
接着剤を付与する工程において、その接着剤は、例えば、コア部材の表面及び裏面の少なくとも一方における全体面又は一部の面にのみ付与しても良いし、一方向性繊維強化樹脂シートの接着すべき面における全体面又は一部の面にのみ付与しても良いし、その両方の全体面又は一部の面に付与しても良い。
【0098】
一方向性繊維強化樹脂シートを配置する工程において、その一方向性繊維強化樹脂シートの配置位置はコア部材の表面及び裏面の少なくとも一方であり、その表面及び裏面の少なくとも一方の全体面に配置しても良いし、一部の面に配置しても良い。
【0099】
加熱する工程における温度は、少なくとも接着剤の融点以上であれば良い。その加熱温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60~140℃である。また、加熱の際には必要に応じて加圧することが好ましい。その圧力は、好ましくは0.1~10MPa、より好ましくは0.5~5MPaである。圧力が0.1MPaより低いと接着性が悪くなる傾向にある。圧力が10MPaを超えるとコア部材が座屈し潰れてしまう傾向にある。加圧時間は、通常1~10分である。
【0100】
<積層体の用途>
本発明の積層体の用途は特に限定されない。ただし、本発明の積層体は以上説明した構成を有することにより、特定の用途(例えば輸送機器用途、家電装置用途、建築用途)に適した特有の物性を有し、しかも軽量である。また、本発明の積層体は、樹脂成分として熱可塑性樹脂を含むため、樹脂成分として熱硬化性樹脂を含む積層体と異なり、三次元形状に賦形することができる。
【0101】
本発明の積層体は、例えば、輸送機器用途、家電装置用途及び建築用途から選ばれる用途に用いられる外装材であることが好ましい。「外装材」とは、内部と外部の間を隔てるように配置して内部を守る又は外部を守る為の部材を意味し、装飾目的の有無は問わない。本発明の積層体は、高い剛性が必要であるが、同時に軽量性も要求される用途、例えば、移動体の構造材料、大型構造体、仮設の構造体、高エネルギー物体の保護に用いることが好ましい。高エネルギー物体とは、輸送車両などのエンジンやモーター、高性能電池や、家電製品や通信機器のモーターやコンプレッサー、高性能電池が挙げられる。また工事用車両などの大型車両などは、それ自身が高エネルギー物体と考えられる場合もある。
【0102】
輸送機器用途に用いられる外装材の具体例としては、車両の床材、ルーフ、トランク、ボンネット、ドア、フェンダー等が挙げられる。家電装置用途に用いられる外装材の具体例としては、パーソナルコンピュータ、タブレットの筐体、洗濯機、冷蔵庫、テレビ等が挙げられる。建築用途に用いられる外装材の具体例としては、壁材、パーティション、床材、天井材、ドア等が挙げられる。中でも、飛翔した小石やその他の異物が当たる面に位置する外装材(車両の床材、アンダーガード、マットガード等)や、防音壁、工事現場の養生などとして用いることが非常に有用である。
【実施例0103】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例に使用した材料は以下のとおりである。
【0104】
<炭素繊維>
炭素繊維束(三菱レイヨン株式会社製、商品名:パイロフィル(登録商標)TR50S12L、フィラメント数:12000本、ストランド強度:5000MPa、ストランド弾性率:242GPa)をアセトン中に浸漬し、10分間超音波を作用させた後、炭素繊維束を引き上げさらに3回アセトンで洗浄し、室温で8時間乾燥することにより付着しているサイジング剤を除去して用いた。
【0105】
<製造例1(エマルションの製造)>
プロピレン系樹脂(A)として、ショアD硬度が52、GPCで測定した重量平均分子量Mwが35万、融点が80℃のプロピレン・ブテン共重合体を100質量部、プロピレン系樹脂(B)として、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体(重量平均分子量Mw:20,000、酸価:45mg-KOH/g、無水マレイン酸含有率:4質量%、融点:140℃)10質量部、界面活性剤として、オレイン酸カリウム3質量部を混合した。この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、装置名:PCM-30、L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出した樹脂混合物を、押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入してエマルジョンを得た。得られたエマルジョンの固形分濃度は45%であった。
【0106】
なお、上記の無水マレイン酸変性プロピレン系重合体は、プロピレン・ブテン共重合体96質量部、無水マレイン酸4質量部、及び重合開始剤としてパーヘキシ25B(日本油脂株式会社製)0.4質量部を混合し、温度160℃で2時間加熱して変性することにより得たものである。
【0107】
<製造例2(一方向性繊維強化樹脂シートの製造)>
製造例1で得たエマルションを、ローラー含浸法を用いて、サイジング剤を除去した前記炭素繊維に付着させた。次いで、オンラインで130℃、2分乾燥して低沸点成分を除去し、炭素繊維束を得た。エマルションの付着量は0.87質量%であった。
【0108】
次いで、この炭素繊維束66.7質量部と、マトリックス樹脂(X)として、市販の未変性プロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、商品名:プライムポリプロ(登録商標)J106MG、融点:160℃)及び無水マレイン酸を0.5質量%グラフトした変性ポリプロピレン(ASTM D1238に準じて190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート:9.1g/10分、融点:155℃)33.3質量部を含む樹脂組成物を調製し、常法により平均厚み160μmの一方向性繊維強化樹脂シートを作製した。なお、この未変性プロピレン樹脂と変性ポリプロピレンとの質量比が90/10(重量平均分子量は33万に相当)となるように条件を調整した。樹脂の融点は160℃、樹脂組成物全体に対する無水マレイン酸含有率は0.023質量%、繊維体積分率Vfは0.5、密度は1.13g/ccであった。
【0109】
以下、実施例及び比較例の積層体の評価方法を示す。
【0110】
<曲げ試験>
JIS K7171に準拠して曲げ弾性率(MD方向)及び曲げ強度(MD方向)を測定した。
【0111】
<実施例1>
(2枚の一方向性繊維強化樹脂シートの積層体の製造)
離型フィルム(ポリイミドフィルム)の上に、製造例2で得た160μm厚の一方向性繊維強化樹脂シートシート(200×200mm)を2枚、繊維方向が同じ方向(0°)となるように積層した。これを180℃に設定したプレス装置(東洋精機株式会社製、商品名:ミニテストプレス)の上に乗せ、8MPaの圧力を印加しながら3分間保持し、その後圧力を開放した。圧力解放後すぐに、20℃の冷却水を通した冷却用プレス装置に移動し、8MPaの圧力を印加しながら1分間保持し、その後圧力を開放した。次いで、これを装置から取り出し、離型フィルムを除去し、2枚の一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)を得た。以下、この積層体を「一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)」と称す。
【0112】
(接着剤層の形成)
一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)の片方の表面に、液状ポリオレフィン系接着剤(三井化学株式会社製、商品名:ユニストール(登録商標)XP01B、固形成分:変性ポリプロピレン、融点:75℃)をメイヤーバーで塗布した。次いで、これを100℃に設定した防爆仕様のオーブンに1分間入れて乾燥し、10μm~20μm程度の厚みの接着剤層を形成した。
【0113】
(コア部材の準備)
ポリプロピレン樹脂製の板状ハニカム部材(岐阜プラスチック工業株式会社製、商品名:TECCELL(登録商標)T5-1300、総厚:5.4mm、目付量:1320g/m2、見かけ密度:0.24g/cm3、平面圧縮強度:1.6MPa、ハニカムを構成するシート(中空構造用壁材)の厚み:0.2mm、ラミネートシート(被覆シート)の厚み:0.3mm、中空構造単位の断面形状の最大幅:4~9mmの範囲内、中空構造単位の単位面積当たりの個数:14000~72000個/m2の範囲内)を200×200mmのサイズに切り出し、これをコア部材として用いた。
【0114】
(積層体の製造)
コア部材の表側面及び裏側面の各々に対して、片方の表面に接着剤層が形成された一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)を、その接着剤層側がコア部材に接するようにして積層した。表側面及び裏側面の各一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)の繊維方向は同じ方向にした。次いで、両方の一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)の外面に離型フィルムを配置した。これを80℃に設定したプレス装置の上に乗せ、1MPaの圧力を印加しながら1分間保持し、その後圧力を開放した。圧力解放後すぐに、20℃の冷却水を通した冷却用プレス装置に移動し、1MPaの圧力を印加しながら3分間保持し、その後圧力を開放した。次いで、これを装置から取り出し、離型フィルムを除去した。これにより、繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)とコア材とが接着剤層を介して一体化された積層体を得た。この積層体は、「一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)/接着剤層/コア部材(ハニカム部材)/接着剤層/一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)」という層構成のハニカムサンドウィッチ板であり、その厚みは4.4mm、見かけ密度は0.48g/ccであった。また、このハニカムサンドウィッチ板の厚み4.4mm中、コア部材の厚みは3.8mm、一方向性繊維強化樹脂シートの積層体の厚みは各々0.3mmであった。なお、接着剤層の厚みは、積層体全体の厚みに比べて非常に薄くなったので測定しなかった(後述する実施例2及び3と比較例3も同様である)。
【0115】
このハニカムサンドウィッチ板の曲げ弾性率は27867MPa、曲げ強度は253MPaであった。
【0116】
<実施例2>
(2枚の一方向性繊維強化樹脂シートの積層体の製造)
離型フィルム(ポリイミドフィルム)の上に、製造例2で得た150μm厚の一方向性シート(200×200mm)を2枚、繊維方向が直交(0°/90°)するように積層した。これを実施例1の繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)の製造方法と同様の条件及び方法でプレス成形して、2枚の一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)を得た。
【0117】
(接着剤層の形成)
一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)の片方の表面に、実施例1と同様にして接着剤層を形成した。
【0118】
(コア部材の準備)
実施例1と同じポリプロピレン樹脂製のハニカム部材(200×200mm)を、コア部材として用いた。
【0119】
(積層体の製造)
一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)の代わりに、一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)とコア材とが接着剤層を介して一体化された積層体を得た。各々の一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)の繊維方向は、内側を90°、外側を0°にした。この積層体は、「一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)/接着剤層/コア部材(ハニカム部材)/接着剤層/一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(90°/0°)」という層構成のハニカムサンドウィッチ板であり、その厚みは4.4mm、見かけ密度は0.48g/ccであった。また、このハニカムサンドウィッチ板の厚み4.4mm中、コア部材の厚みは3.8mm、一方向性繊維強化樹脂シートの積層体の厚みは各々0.3mmであった。
【0120】
このハニカムサンドウィッチ板の曲げ弾性率は18133MPa、曲げ強度は118MPaであった。
【0121】
<実施例3>
ポリプロピレン樹脂製のハニカム部材の代わりに、ポリプロピレン樹脂製の板状シングルコーン部材(宇部エクシモ株式会社製、シングルコーン(登録商標)TSC-5-1003N、総厚:5.1mm、目付量:1000g/m2、見かけ密度:0.2g/cm3、中空構造単位の断面形状の最大幅:4~9mmの範囲内、中空構造単位の単位面積当たりの個数:14000~72000個/m2の範囲内)を200×200mmのサイズに切り出し、これをコア部材として用いたこと以外は、実施例2と同様にして、一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)とコア材とが接着剤層を介して一体化された積層体を得た。この積層体は、「一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)/接着剤層/コア部材(シングルコーン部材)/接着剤層/一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(90°/0°)」という層構成のシングルコーンサンドウィッチ板であり、その厚みは4.4mm、見かけ密度は0.41g/ccであった。また、このシングルコーンサンドウィッチ板の厚み4.4mm中、コア部材の厚みは3.8mm、一方向性繊維強化樹脂シートの積層体の厚みは各々0.3mmであった。
【0122】
このシングルコーンサンドウィッチ板の曲げ弾性率は12543MPa、曲げ強度は87MPaであった。
【0123】
<比較例1>
一方向繊維強化樹脂シートを使用せずに、実施例1で使用したものと同じコア部材(ポリプロピレン樹脂製の5.4mm厚の板状ハニカム部材)単体に対して、曲げ試験及びハイレートインパクト試験を行った。
【0124】
このコア部材(ハニカム部材)の曲げ弾性率は369MPa、曲げ強度は8MPaであった。
【0125】
<比較例2>
一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)の表面に接着剤層は形成せずに、コア部材の両方の表面の各々に対して、一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)を直接積層し、プレス装置の設定温度を80℃から180℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)とコア材とが一体化された積層体を得た。この積層体は、「一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(0°/90°)/コア部材(ハニカム部材)/一方向性繊維強化樹脂シートの積層体(90°/0°)」という層構成のハニカムサンドウィッチ板であり、その厚みは4.4mm、見かけ密度は0.39g/ccであった。また、このハニカムサンドウィッチ板の厚み4.4mm中、コア部材の厚みは3.8mm、一方向性繊維強化樹脂シートの積層体の厚みは各々0.3mmであった。
【0126】
このハニカムサンドウィッチ板の表面には、ハニカムの熱収縮と思われる凸凹パターンが存在していた。すなわち、平滑な表面が得られなかった。
【0127】
このハニカムサンドウィッチ板の曲げ弾性率は6805MPa、曲げ強度は46MPaであった。
【0128】
<比較例3>
(不連続繊維強化樹脂シートの製造)
離型フィルム(ポリイミドフィルム)の上に、厚み300μmの金属板からなる200×200mmの穴が開いている金型を置き、さらにその上に不連続炭素繊維強化ポリプロピレン系樹脂(ダイセルポリマー株式会社製、商品名:プラストロン(登録商標)PP-CF40-11、炭素繊維含有率:40重量%、密度:1.12g/cm3)を置き、これを180℃に設定したプレス装置(東洋精機株式会社製、商品名:ミニテストプレス)の上に乗せ、8MPaの圧力を印加しながら1分間保持し、その後圧力を開放した。次いで、上面の離型フィルムを剥がし、シートを4つに折りたたみ、再び離型フィルムを置き、8MPaの圧力を印加しながら1分間保持する操作を2回繰り返した。その操作後すぐに、20℃の冷却水を通した冷却用プレス装置に移動し、4MPaの圧力を印加しながら1分間保持し、圧力を開放した。次いで、これを装置から取り出し、離型フィルムを除去し、0.3mm厚の不連続繊維強化樹脂シート(200×200mm)を得た。
【0129】
(接着剤層の形成)
不連続繊維強化樹脂シートの片方の表面に、実施例1と同様にして接着剤層を形成した。
【0130】
(コア部材の準備)
実施例1と同じポリプロピレン樹脂製のハニカム部材(200×200mm)を、コア部材として用いた。
【0131】
(積層体の製造)
一方向繊維強化樹脂シートの積層体(0°/0°)の代わりに、不連続繊維強化樹脂シートを用い、80℃に設定したプレス装置における圧力印加時間を1分から3分に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、不連続繊維強化樹脂シートとコア材とが接着剤層を介して一体化された積層体を得た。この積層体は、「不連続繊維強化樹脂シート/接着剤層/コア部材(ハニカム部材)/接着剤層/不連続繊維強化樹脂シート」という層構成のハニカムサンドウィッチ板であり、その厚みは4.4mm、見かけ密度は0.46g/ccであった。また、このハニカムサンドウィッチ板の厚み4.4mm中、コア部材の厚みは3.8mm、不連続繊維強化樹脂シートの積層体の厚みは各々0.3mmであった。
【0132】
このハニカムサンドウィッチ板の曲げ弾性率は5430MPa、曲げ強度は42MPaであった。
【0133】
<比較例4>
(2枚の一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体の製造)
炭素繊維(東レ株式会社製、商品名T300)がエポキシ樹脂に含浸されている150μm厚の一方向性プリプレグ(200×200mm、繊維体積分率Vf=55%)を2枚、繊維方向が直交(0°/90°)するように積層し、さらに離型紙を挟んで、同じ一方向性プリプレグ2枚を(90°/0°)となるように積層し、オートクレーブにて硬化させた。これにより、一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体(0°/90°)と、一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体(90°/0°)を得た。
【0134】
(接着剤層の形成)
一方向性繊維強化熱硬化樹脂シートの積層体(0°/90°)の90°側の表面に、二液性エポキシ系接着剤(スリーボンド株式会社製、商品名:TB2082C)を50μm程度の厚みになるように塗布した。
【0135】
(コア部材の準備)
実施例1と同じポリプロピレン樹脂製のハニカム部材(200×200mm)を、コア部材として用いた。
【0136】
(積層体の製造)
コア部材の表側面及び裏側面の各々に対して、片方の表面に接着剤層が形成された一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体(0°/90°)を、その接着剤層側がコア部材に接するようにして積層した。各々の一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体(0°/90°)の繊維方向は、実施例2と同じように内側を90°、外側を0°にした。次いで、室温のプレス装置にて1MPaの圧力を印加しながら30分保持した。これにより、一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体(0°/90°)とコア材とが接着剤層を介して一体化された積層体を得た。この積層体は、「一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体(0°/90°)/接着剤層/コア部材(ハニカム部材)/接着剤層/一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体(90°/0°)」という層構成のハニカムサンドウィッチ板であり、その厚みは6.1mm、見かけ密度は0.31g/ccであった。また、このハニカムサンドウィッチ板の厚み6.1mm中、コア部材の厚みは5.4mm、一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの積層体の厚みは各々0.35mmであった。なお、接着剤層の厚みは、一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートの厚みに含まれる。
【0137】
このハニカムサンドウィッチ板の曲げ弾性率は1927MPa、曲げ強度は18MPaであった。
【0138】
以上の各結果を、表1及び2に示す。
【0139】
【0140】
表1中の略号は以下の意味を示す。
「UDS(P)」:一方向性繊維強化樹脂シート(熱可塑性樹脂)
「UDS(S)」:一方向性繊維強化樹脂シート(熱硬化性樹脂)
「RS」:不連続繊維強化樹脂シート
「PO」:ポリオレフィン系接着剤層
「EP」:エポキシ系接着剤層
「HNC」:ハニカム部材(コア部材)
「SCC」:シングルコーン部材(コア部材)
【0141】
【0142】
<評価>
以上の結果から明らかなように、実施例1~3の積層体は曲げ特性が優れていた。
【0143】
一方、比較例1のコア部材(板状ハニカム部材)単体は、実施例1~3の積層体に比べて曲げ特性が劣っていた。
【0144】
比較例2の積層体は、接着剤を使用せずに、繊維強化樹脂シートの積層体をコア部材に対して直接積層してプレス成形して得た積層体なので、実施例1~3の積層体に比べて曲げ特性が劣っていた。
【0145】
比較例3の積層体は、一方向繊維強化樹脂シートの積層体の代わりに、不連続繊維強化樹脂シートを使用して得た積層体なので、実施例1~3の積層体に比べて曲げ特性が劣っていた。
【0146】
比較例4の積層体は、一方向繊維強化樹脂シートの積層体の代わりに、一方向性繊維強化熱硬化性樹脂シートを使用して得た積層体なので、実施例1~3の積層体に比べて曲げ特性が劣っていた。
本発明の積層体は、例えば、輸送機器用途、家電装置用途及び建築用途から選ばれる用途に有用であり、中でも、飛翔した小石やその他の異物が当たる面に位置する外装材(車両の床材、アンダーガード、マットガードなど)や、防音壁、工事現場の養生などとして用いることが非常に有用である。