(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052801
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】蓄電デバイス、及び、蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/119 20210101AFI20240405BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240405BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240405BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240405BHJP
【FI】
H01M50/119
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/178
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/536
H01M50/557
H01G11/78
H01G11/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023944
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2023076690の分割
【原出願日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2021107646
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】高萩 敦子
(72)【発明者】
【氏名】林 慎二
(72)【発明者】
【氏名】平木 健太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
(72)【発明者】
【氏名】山崎 昌保
(57)【要約】
【課題】複数の蓄電デバイスを積み重ねた場合に下方の蓄電デバイスに掛かる圧力の分布のムラを抑制可能であり、かつ、耐腐食性を有する蓄電デバイス及び該蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】蓄電デバイスは、電極体と、外装体とを備える。外装体は、電極体を封止する。外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されている。外装体は、電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面同士が接合することによって封止された第1封止部を含む。第1面の面積は、第2面の面積よりも大きい。第1封止部は、平面視において、第1面と重なっていない。外装部材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されている。バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を封止する外装体とを備え、
前記外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されており、
前記外装体は、前記外装部材が前記電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面同士が接合することによって封止された第1封止部、第1面、及び、第2面を含み、
前記第1面の面積は、前記第2面の面積よりも大きく、
前記第1封止部は、平面視において、前記第1面と重なっておらず、
前記外装部材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含む、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記第1封止部は、前記第2面に接するように折り曲げられている、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記第1封止部は、前記第2面に接するように折り曲げられた状態で、前記第2面の略全体を覆う、請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記電極体と電気的に接続された電極端子をさらに備え、
前記外装体は、前記電極端子を挟んだ状態で封止された第2封止部をさらに含み、
前記電極端子の一部分は、前記外装体の外側にあり、
前記一部分の付け根部分は、前記蓄電デバイスの厚み方向において、前記蓄電デバイスの厚みの略半分の位置にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記第1封止部においては、前記面同士の接合力が強い領域と、前記面同士の接合力が弱い領域とが前記第1面と前記第2面との境界に沿って並んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記第1封止部においては、厚みが薄い領域と、厚みが厚い領域とが前記第1面と前記第2面との境界に沿って並んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記電極体と電気的に接続された電極端子をさらに備え、
前記第1封止部は、前記電極端子を挟んだ状態で封止される
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
前記電極体と電気的に接続された電極端子と、
前記電極端子が取り付けられた蓋体と、をさらに備え、
前記外装体は、前記蓋体と接合された状態で封止された第2封止部をさらに含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項9】
前記蓋体は、前記電極体と面する第1面、及び、前記第1面と反対側の第2面を含み、
前記第2封止部は、前記外装体と前記第2面とが接合される部分を含む
請求項8に記載の蓄電デバイス。
【請求項10】
蓋体をさらに備え、
前記外装体は、前記蓋体と接合された状態で封止された第2封止部をさらに含み、
前記蓋体は、表面に金属層が露出した部分、又は、金属材料によって構成される部分である金属部を含み、
前記金属部と前記電極体とが溶接される
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項11】
前記電極体と電気的に接続された電極端子をさらに備え、
前記外装体は、外方に突出する張出部、及び、前記張出部によって前記電極端子を挟んだ状態で封止された第2封止部をさらに含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項12】
前記第1面と前記第2面との境界に沿う方向は、前記外装部材の流れ方向に直交する方向である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項13】
電極体と、
前記電極体と電気的に接続された電極端子と、
前記電極体を封止する外装体とを備え、
前記外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されており、平面視において、長辺及び短辺を含み、
前記電極端子は、前記長辺に沿うように配置され、
前記外装部材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含む、蓄電デバイス。
【請求項14】
電極体と、
前記電極体を封止する外装体とを備え、
前記外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されており、
前記外装体は、前記外装部材が前記電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面の周縁同士が接合した片部を含み、
前記片部内には、前記互いに向き合う面同士が接合していない空間が形成されており、
前記片部においては、面と面との境界近傍に、前記互いに向き合う面同士が接合した領域と、前記互いに向き合う面同士が接合していない領域とが並んでおり、
前記外装部材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含む、蓄電デバイス。
【請求項15】
前記アルミニウム合金箔の組成は、Si:0.5質量%以下を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項16】
前記アルミニウム合金箔の組成は、Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下を満たし、
前記アルミニウム合金箔の少なくとも一方の表面に5.0原子パーセント以上のMgを含み、かつ、前記アルミニウム合金箔の少なくとも一方の表面に厚みが80Å以上の酸化皮膜を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項17】
前記アルミニウム合金箔の組成は、Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下を満たし、
前記アルミニウム合金箔は、引張強さが110MPa以上180MPa以下、破断伸びが10%以上ある、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項18】
前記アルミニウム合金箔の組成は、Mg:1.5質量%超5.0質量%以下を満たし、
前記アルミニウム合金箔の少なくとも一方の表面に15.0原子パーセント以上のMgを含み、かつ、前記アルミニウム合金箔の少なくとも一方の表面に厚みが120Å以上の酸化皮膜を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項19】
前記アルミニウム合金箔の組成は、Mg:1.5質量%超5.0質量%以下を満たし、
前記アルミニウム合金箔は、引張強さが180MPa以上、破断伸びが15%以上である、請求項1~3のいずれか一項、または、請求項18に記載の蓄電デバイス。
【請求項20】
前記アルミニウム合金箔は、集合組織の、Copper方位、R方位のそれぞれの方位密度が15以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項21】
前記アルミニウム合金箔は、平均結晶粒径が25μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項22】
前記アルミニウム合金箔は、残部としてAl及び不可避不純物を含み、後方散乱電子回折法により測定される単位面積あたりの大角粒界の長さL1と小角粒界の長さL2との比が、L1/L2>3.0の関係を充足する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス。
【請求項23】
前記アルミニウム合金箔は、前記不可避不純物としてMn:0.1質量%以下を含む、請求項22に記載の蓄電デバイス。
【請求項24】
未完成品から蓄電デバイスを製造する製造方法であって、
前記未完成品は、
電極体と、
前記電極体を封止する外装体とを備え、
前記外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されており、
前記外装体は、前記外装部材が前記電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面の周縁同士が接合した片部を含み、
前記片部内には、前記互いに向き合う面同士が接合していない空間が形成されており、
前記片部においては、面と面との境界近傍に、前記互いに向き合う面同士が接合した領域と、前記互いに向き合う面同士が接合していない領域とが並んでおり、
前記外装部材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含み、
前記製造方法は、
前記片部において前記外装体の封止状態を解除して、ガスを前記外装体の外部へ排出するステップと、
前記片部の少なくとも一部分において、前記互いに向き合う面同士を接合することによって前記外装体を再び封止するステップとを含む、蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス、及び、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4509242号(特許文献1)は、二次電池を開示する。この二次電池においては、外装部材(ラミネートフィルム)によって構成された袋体内に電極体が封止されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている二次電池においては、面積の大きい面上に外装部材のシール部が設けられている。シール部は、外装部材が重なった領域であるため、他の領域と比較して分厚い。シール部が設けられた面上に他の二次電池が積み重ねられると、上方の二次電池がシール部を支点に傾き得る。その結果、下方の二次電池に掛かる圧力の分布のムラが大きくなる。
【0005】
また、蓄電デバイスの外装部材が折り曲げられた部分において、最内層に位置する熱融着性樹脂層に微細なクラックやピンホールが発生し、かつ、外部端子と蓄電デバイスの外装部材のアルミニウム合金箔とが近接もしくは接触して短絡すると、熱融着性樹脂層に接触した電解液及び電解質を介して蓄電デバイスの外装部材のアルミニウム合金箔と外部端子との間で通電し、アルミニウム合金箔が電解液中のリチウムイオンと合金化腐食する可能性がある。特に、アルミニウム合金箔と負極端子とが電解液を介して短絡すると、アルミニウム合金箔が腐食しやすい。アルミニウム合金箔が腐食すると、アルミニウム合金箔が膨張するなどの不具合が生じて、蓄電デバイスの性能の劣化に繋がる。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の蓄電デバイスを重ねた場合に隣接する蓄電デバイスに掛かる圧力の分布のムラを抑制可能であり、かつ、耐腐食性を有する蓄電デバイス及び該蓄電デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面に従う蓄電デバイスは、電極体と、外装体とを備える。外装体は、電極体を封止する。外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されている。外装体は、外装部材が電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面同士が接合することによって封止された第1封止部、第1面、及び、第2面を含む。第1面の面積は、第2面の面積よりも大きい。第1封止部は、平面視において、前記第1面と重なっていない。外装部材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されている。バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含む。
【0008】
この蓄電デバイスにおいては、第1封止部が、平面視において、面積の大きい第1面と重なっていない。すなわち、面積の大きい第1面上には第1封止部が存在しない。したがって、第1面に他の蓄電デバイスが上又は横に並べて配置されたとしても該他の蓄電デバイスは傾かない。その結果、この蓄電デバイスによれば、複数の蓄電デバイスを重ねた場合に隣接する蓄電デバイスに掛かる圧力の分布のムラを抑制することができる。また、外装部材のアルミニウム合金箔が上記構成を有するため、アルミニウム合金箔が腐食しにくい。
【0009】
上記蓄電デバイスにおいて、第1封止部は、第2面に接するように折り曲げられていてもよい。
【0010】
上記蓄電デバイスにおいて、第1封止部は、第2面に接するように折り曲げられた状態で、第2面の略全体を覆ってもよい。
【0011】
この蓄電デバイスによれば、第1封止部が第2面の略全体を覆うことによって、第1封止部における接合幅を広く確保することができる。
【0012】
上記蓄電デバイスは、電極体と電気的に接続された電極端子をさらに備え、外装体は、電極端子を挟んだ状態で封止された第2封止部をさらに含み、電極端子の一部分は、外装体の外側にあり、上記一部分の付け根部分は、蓄電デバイスの厚み方向において、蓄電デバイスの厚みの略半分の位置にあってもよい。
【0013】
この蓄電デバイスにおいては、電極端子のうち外装体の外側にある一部分が、蓄電デバイスの厚み方向において、蓄電デバイスの厚みの略半分の位置にある。したがって、この蓄電デバイスによれば、たとえば、該一部分が蓄電デバイスの厚み方向において上記第1面と略同じ位置にある場合と比較して、電極体に含まれる複数の電極の各々と電極端子との間の距離のうち最も長い距離と最も短い距離との差を小さくすることができる。
【0014】
上記蓄電デバイスにおいて、第1封止部においては、上記面同士の接合力が強い領域と、上記面同士の接合力が弱い領域とが第1面と第2面との境界に沿って並んでいてもよい。
【0015】
上記蓄電デバイスにおいて、第1封止部においては、厚みが薄い領域と、厚みが厚い領域とが第1面と第2面との境界に沿って並んでいてもよい。
【0016】
上記蓄電デバイスにおいて、電極体と電気的に接続された電極端子をさらに備え、第1封止部は、電極端子を挟んだ状態で封止されていてもよい。
【0017】
上記蓄電デバイスにおいて、電極体と電気的に接続された電極端子と、電極端子が取り付けられた蓋体と、をさらに備え、外装体は、蓋体と接合された状態で封止された第2封止部をさらに含んでいてもよい。
【0018】
上記蓄電デバイスにおいて、蓋体は、電極体と面する第1面、及び、第1面と反対側の第2面を含み、第2封止部は、外装体と第2面とが接合される部分を含んでいてもよい。
【0019】
上記蓄電デバイスにおいて、蓋体をさらに備え、外装体は、蓋体と接合された状態で封止された第2封止部をさらに含み、蓋体は、表面に金属層が露出した部分、又は、金属材料によって構成される部分である金属部を含み、金属部と電極体とが溶接されていてもよい。
【0020】
上記蓄電デバイスにおいて、電極体と電気的に接続された電極端子をさらに備え、外装体は、外方に突出する張出部、及び、張出部によって電極端子を挟んだ状態で封止された第2封止部をさらに含んでいてもよい。
【0021】
上記蓄電デバイスにおいて、第1面と第2面との境界に沿う方向は、外装部材の流れ方向に直交する方向であってもよい。
【0022】
この蓄電デバイスにおいては、第1封止部が第1面と第2面との境界に沿って折り曲げられる場合に、第1面と第2面との境界に沿う方向が外装部材の流れ方向に直交する方向である。したがって、この蓄電デバイスによれば、外装部材の流れ方向に直交する方向に折り目が形成されても外装部材は破断しにくいため、第1封止部が折り曲げられることによって第1封止部が破断する可能性を低減することができる。
【0023】
本発明の他の局面に従う蓄電デバイスは、電極体と、電極体と電気的に接続された電極端子と、電極体を封止する外装体とを備える。外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されており、平面視において、長辺及び短辺を含む。電極端子は、長辺に沿うように配置される。
【0024】
本発明の他の局面に従う蓄電デバイスは、電極体と、外装体とを備える。外装体は、電極体を封止する。外装体は、外装部材がフィルム状の外装部材によって構成されている。外装体は、電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面の周縁同士が接合した片部を含む。片部内には、上記互いに向き合う面同士が接合していない空間が形成されている。片部においては、面と面との境界近傍に、上記互いに向き合う面同士が接合した領域と、上記互いに向き合う面同士が接合していない領域とが並んでいる。外装部材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されている。バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含む。
【0025】
外装体内ではガスが発生し得る。この蓄電デバイスにおいては、片部内に空間が形成されており、面と面との境界近傍に、上記互いに向き合う面同士が接合した領域と、上記互いに向き合う面同士が接合していない領域とが並んでいる。したがって、この蓄電デバイスによれば、片部において外装体の封止状態を解除することによって、片部を介して外装体内のガスを排出することができる。そして、再び外装体を封止することによって、ガス抜き後の蓄電デバイスを製造することができる。また、外装部材のアルミニウム合金箔が上記構成を有するため、アルミニウム合金箔が腐食しにくい。
【0026】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔の組成は、Si:0.5質量%以下を満たしていてもよい。
【0027】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔の組成は、Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下を満たし、アルミニウム合金箔の少なくとも一方の表面に5.0原子パーセント以上のMgを含み、かつ、前記アルミニウム合金箔の少なくとも一方の表面に厚みが80Å以上の酸化皮膜を有していてもよい。
【0028】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔の組成は、Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下を満たし、アルミニウム合金箔は、引張強さが110MPa以上180MPa以下、破断伸びが10%以上であってもよい。
【0029】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔の組成は、Mg:1.5質量%超5.0質量%以下を満たし、アルミニウム合金箔の少なくとも一方の表面に15.0原子パーセント以上のMgを含み、かつ、アルミニウム合金箔の少なくとも一方の表面に厚みが120Å以上の酸化皮膜を有していてもよい。
【0030】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔の組成は、Mg:1.5質量%超5.0質量%以下を満たし、アルミニウム合金箔は、引張強さが180MPa以上、破断伸びが15%以上であってもよい。
【0031】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔は、集合組織の、Copper方位、R方位のそれぞれの方位密度が15以下であってもよい。
【0032】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔は、平均結晶粒径が25μm以下であってもよい。
【0033】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔は、残部としてAl及び不可避不純物を含み、後方散乱電子回折法により測定される単位面積あたりの大角粒界の長さL1と小角粒界の長さL2との比が、L1/L2>3.0の関係を充足してもよい。
【0034】
上記蓄電デバイスにおいて、アルミニウム合金箔は、不可避不純物中としてMn:0.1質量%以下を含んでもよい。
【0035】
本発明の他の局面に従う蓄電デバイスの製造方法は、未完成品から蓄電デバイスを製造する製造方法である。未完成品は、電極体と、外装体とを備える。外装体は、電極体を封止する。外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されている。外装体は、外装部材が電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面の周縁同士が接合した片部を含む。片部内には、上記互いに向き合う面同士が接合していない空間が形成されている。片部においては、面と面との境界近傍に、上記互いに向き合う面同士が接合した領域と、上記互いに向き合う面同士が接合していない領域とが並んでいる。外装部材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されている。バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含む。上記製造方法は、片部において外装体の封止状態を解除して、ガスを前記外装体の外部へ排出するステップと、片部の少なくとも一部分において、上記互いに向き合う面同士を接合することによって外装体を再び封止するステップとを含む。
【0036】
この蓄電デバイスの製造方法によれば、片部を介してガスを排出し、再び外装体を封止することによって、ガス抜き後の蓄電デバイスを製造することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、複数の蓄電デバイスを積み重ねた場合に下方の蓄電デバイスに掛かる圧力の分布のムラを抑制可能であり、かつ、耐腐食性を有する蓄電デバイス及び該蓄電デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施の形態1に従う蓄電デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図3A】蓄電デバイスを模式的に示す側面図である。
【
図3F(A)】耐腐食性の評価に用いたアルミニウム合金箔の表面を示す顕微鏡写真であり、腐食のない表面を示す顕微鏡写真。
【
図3F(B)】耐腐食性の評価に用いたアルミニウム合金箔の表面を示す顕微鏡写真であり、腐食のある表面を示す顕微鏡写真。
【
図4】実施の形態1に従う蓄電デバイスの製造途中において、電極体に外装部材が巻き付けられた状態を側方から示す図である。
【
図5】実施の形態1に従う蓄電デバイスの製造途中において、電極体に外装部材が巻き付けられた状態を下方から示す図である。
【
図6】
図2のVI-VI断面の一部を模式的に示す図である。
【
図7】第2封止部の形成方法を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1に従う蓄電デバイスの製造手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態2に従う蓄電デバイスを模式的に示す平面図である。
【
図10】蓄電デバイスを模式的に示す側面図である。
【
図12】蓋体と電極端子とが一体的に形成された第1の例を示す図である。
【
図13】蓋体と電極端子とが一体的に形成された第2の例を示す図である。
【
図14】実施の形態2に従う蓄電デバイスの製造手順を示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態2に従う蓄電デバイスの別の製造手順を示すフローチャートである。
【
図16】実施の形態3において、電極体に外装部材が巻き付けられた状態を側方から示す図である。
【
図17】実施の形態3において、電極体に外装部材が巻き付けられ、外装部材に蓋体が取り付けられた状態を下方から示す図である。
【
図18】実施の形態3に従う蓄電デバイスの製造手順を示すフローチャートである。
【
図19】実施の形態4に従う蓄電デバイスを模式的に示す平面図である。
【
図20】実施の形態4に従う蓄電デバイスを模式的に示す側面図である。
【
図21】変形例において、電極体に外装部材が巻き付けられた状態を側方から示す図である。
【
図22】変形例の蓄電デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図23】変形例の蓋体及び蓋体に取り付けられる電極端子を模式的に示す斜視図である。
【
図24】
図23の蓋体が取り付けられた蓄電デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図25】別の変形例の蓋体を模式的に示す正面図である。
【
図26】さらに別の変形例の蓋体を模式的に示す正面図である。
【
図27】別の変形例の蓄電デバイスを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
【0040】
[1.実施の形態1]
<1-1.蓄電デバイスの構成>
図1は、本実施の形態1に従う蓄電デバイス10を模式的に示す斜視図である。
図2は、蓄電デバイス10を模式的に示す平面図である。
図3Aは、蓄電デバイス10を模式的に示す側面図である。
図3B~
図3Eは、蓄電デバイス10の外装部材101の層構成を示す断面図である。なお、
図2及び
図3Aの各々において、矢印UD方向は蓄電デバイス10の厚み方向を示し、矢印LR方向は蓄電デバイス10の幅方向を示す。また、矢印FB方向は、蓄電デバイス10の奥行方向を示す。矢印UDLRFBの各々が示す方向は、以後の各図においても共通である。
【0041】
図1、
図2及び
図3を参照して、蓄電デバイス10は、電極体200と、外装体100と、複数(2つ)の電極端子300とを含んでいる。電極体200は、リチウムイオン電池、キャパシタ又は全固体電池等の蓄電部材を構成する電極(正極及び負極)及びセパレータ等を含む。電極体200の形状は、略直方体である。なお、「略直方体」は、完全な直方体の他に、たとえば、外面の一部の形状を修正することによって直方体とみなせるような立体を含む意味である。
【0042】
電極端子300は、電極体200における電力の入出力に用いられる金属端子である。電極端子300の一方の端部は電極体200に含まれる電極(正極又は負極)に電気的に接続されており、他方の端部は外装体100の端縁から外側に突出している。
【0043】
電極端子300を構成する金属材料は、たとえば、アルミニウム、ニッケル、銅等である。たとえば、電極体200がリチウムイオン電池である場合、正極に接続される電極端子300は、通常、アルミニウム等によって構成され、負極に接続される電極端子300は、通常、銅、ニッケル等によって構成される。
【0044】
外装体100は、フィルム状の外装部材101(
図4等)で構成されており、電極体200を封止する。蓄電デバイス10においては、外装部材101を電極体200に巻き付け、開放部分を封止することによって、外装体100が形成されている。
【0045】
たとえば、冷間成形を通じて外装部材101に電極体200を収容する収容部(窪み)を形成する方法がある。しかしながら、このような方法によって深い収容部を形成することは必ずしも容易ではない。冷間成形によって収納部(窪み)を深く(たとえば成形深さ15mm)形成しようとすると外装部材にピンホールやクラックが発生し電池性能の低下を招く可能性が高くなる。一方、外装体100は、外装部材101を電極体200に巻き付けることによって電極体200を封止しているため、電極体200の厚みに拘わらず容易に電極体200を封止することができる。なお、蓄電デバイス10の体積エネルギー密度を向上させるべく電極体200と外装部材101との間のデッドスペースを削減するためには、外装部材101が電極体200の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。また、全固体電池においては、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされている観点からも電極体200と外装部材101との間の空間を無くすことが必要とされるため、外装部材101が電極体200の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。
【0046】
外装部材101は、例えば、
図3Bから
図3Eに示すように、少なくとも、基材層101A、バリア層101C、及び、熱融着性樹脂層101Dをこの順に備える積層体から構成されている。外装部材101において、基材層101Aが最外層側になり、熱融着性樹脂層101Dは最内層になる。外装部材101と蓄電デバイス素子を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、外装部材101の熱融着性樹脂層101D同士を対向させた状態で、周縁部を熱融着させることによって形成された空間に、電極体200が収容される。
【0047】
バリア層101Cは、アルミニウム合金箔を含んでいる。すなわち、バリア層101Cは、アルミニウム合金箔により構成することができる。後述する所定の組成及び特性を満たすアルミニウム合金箔を用いた本実施形態の外装部材101は、角部等における外装部材の追従性に優れ、アルミニウム合金箔の腐食が効果的に抑制され、さらには機械的強度に優れる。
【0048】
外装部材101は、例えば
図3Bから
図3Eに示すように、基材層101Aとバリア層101Cとの間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着剤層101Bを有していてもよい。また、例えば
図3D及び
図3Eに示すように、バリア層101Cと熱融着性樹脂層101Dとの間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着層101Eを有していてもよい。また、
図3Eに示すように、基材層101Aの外側(熱融着性樹脂層101D側とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層101Fなどが設けられていてもよい。
【0049】
外装部材101を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、例えば190μm以下、好ましくは約180μm以下、約155μm以下、約120μm以下が挙げられる。また、外装部材101を構成する積層体の厚みとしては、電極体200を保護するという外装部材101の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上が挙げられる。また、外装部材101を構成する積層体の好ましい範囲については、例えば、35~190μm程度、35~180μm程度、35~155μm程度、35~120μm程度、45~190μm程度、45~180μm程度、45~155μm程度、45~120μm程度、60~190μm程度、60~180μm程度、60~155μm程度、60~120μm程度が挙げられ、特に60~155μm程度が好ましい。
【0050】
外装部材101において、外装部材101を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、基材層101A、必要に応じて設けられる接着剤層101B、バリア層101C、必要に応じて設けられる接着層101E、熱融着性樹脂層101D、及び、必要に応じて設けられる表面被覆層101Fの合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。具体例としては、外装部材101が、基材層101A、接着剤層101B、バリア層101C、接着層101E、及び熱融着性樹脂層101Dを含む場合、外装部材101を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。
【0051】
なお、外装部材101において、後述のバリア層101Cについては、通常、その製造過程におけるMD(Machine Direction)とTD(Transverse Direction)を判別することができる。バリア層101Cがアルミニウム合金箔により構成されている場合、金属箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、金属箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、金属箔の表面を観察することによって、金属箔の圧延方向を把握することができる。また、積層体の製造過程においては、通常、積層体のMDと、金属箔のRDとが一致するため、積層体の金属箔の表面を観察し、金属箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMDを特定することができる。また、積層体のTDは、積層体のMDとは垂直方向であるため、積層体のTDについても特定することができる。
【0052】
また、アルミニウム合金箔の圧延痕により外装部材101のMDが特定できない場合は、次の方法により特定することができる。外装部材101のMDの確認方法として、外装部材101の熱融着性樹脂層の断面を電子顕微鏡で観察し海島構造を確認する方法がある。当該方法においては、熱融着性樹脂層の厚み方向に対して垂直な方向の島の形状の径の平均が最大であった断面と平行な方向を、MDと判断することができる。具体的には、熱融着性樹脂層の長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面に対して垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ、電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面において、それぞれ、個々の島の形状を観察する。個々の島の形状について、熱融着性樹脂層の厚み方向に対して垂直方向の最左端と、当該垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を径yとする。各断面において、島の形状の当該径yが大きい順に上位20個の径yの平均を算出する。島の形状の当該径yの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。
【0053】
<1-1-1.基材層>
基材層101Aは、外装部材101の基材としての機能を発揮させることなどを目的として設けられる層である。基材層101Aは、外装部材101の外層側に位置する。
【0054】
基材層101Aを形成する素材については、基材としての機能、すなわち少なくとも絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されない。基材層101Aは、例えば樹脂を用いて形成することができ、樹脂には後述の添加剤が含まれていてもよい。
【0055】
基材層101Aが樹脂により形成されている場合、基材層101Aは、例えば、樹脂により形成された樹脂フィルムであってもよいし、樹脂を塗布して形成したものであってもよい。樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などがあげられる。
【0056】
基材層101Aを形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、基材層101Aを形成する樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。
【0057】
基材層101Aを形成する樹脂としては、これらの中でも、好ましくはポリエステル、ポリアミドが挙げられる。
【0058】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミドPACM6(ポリビス(4‐アミノシクロヘキシル)メタンアジパミド)等の脂環式ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’-ジフェニルメタン-ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等のポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
基材層101Aは、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエステルフィルム、及び延伸ポリアミドフィルム、及び延伸ポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。
【0061】
基材層101Aは、単層であってもよいし、2層以上により構成されていてもよい。基材層101Aが2層以上により構成されている場合、基材層101Aは、樹脂フィルムを接着剤などで積層させた積層体であってもよいし、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体であってもよい。また、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体を、未延伸のまま基材層101Aとしてもよいし、一軸延伸または二軸延伸して基材層101Aとしてもよい。
【0062】
基材層101Aにおいて、2層以上の樹脂フィルムの積層体の具体例としては、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとの積層体、2層以上のナイロンフィルムの積層体、2層以上のポリエステルフィルムの積層体などが挙げられ、好ましくは、延伸ナイロンフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの積層体、2層以上の延伸ナイロンフィルムの積層体、2層以上の延伸ポリエステルフィルムの積層体が好ましい。例えば、基材層101Aが2層の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムとポリエステル樹脂フィルムの積層体、ポリアミド樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体、またはポリエステル樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムの積層体、ナイロンフィルムとナイロンフィルムの積層体、またはポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体がより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、基材層101Aが2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムが基材層101Aの最外層に位置することが好ましい。
【0063】
基材層101Aが、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、2層以上の樹脂フィルムは、接着剤を介して積層させてもよい。好ましい接着剤については、後述の接着剤層101Bで例示する接着剤と同様のものが挙げられる。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着剤としてポリウレタン接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着剤の厚みとしては、例えば2~5μm程度が挙げられる。また、樹脂フィルムにアンカーコート層を形成し積層させても良い。アンカーコート層は、後述の接着剤層101Bで例示する接着剤と同様のものがあげられる。このとき、アンカーコート層の厚みとしては、例えば0.01~1.0μm程度が挙げられる。
【0064】
また、基材層101Aの表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0065】
外装部材101の角部等における外装部材の追従性を高める観点からは、基材層101Aの表面には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
基材層101Aの表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4~15mg/m2程度、さらに好ましくは5~14mg/m2程度が挙げられる。
【0067】
基材層101Aの表面に存在する滑剤は、基材層101Aを構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層101Aの表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0068】
基材層101Aの厚みについては、基材としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、3~50μm程度、好ましくは10~35μm程度が挙げられる。基材層101Aが、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、各層を構成している樹脂フィルムの厚みとしては、それぞれ、好ましくは2~25μm程度が挙げられる。
【0069】
<1-1-2.接着剤層>
外装部材101において、接着剤層101Bは、基材層101Aとバリア層101Cとの接着性を高めることを目的として、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
【0070】
接着剤層101Bは、基材層101Aとバリア層101Cとを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層101Bの形成に使用される接着剤は限定されないが、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、2液硬化型接着剤(2液性接着剤)であってもよく、1液硬化型接着剤(1液性接着剤)であってもよく、硬化反応を伴わない樹脂でもよい。また、接着剤層101Bは単層であってもよいし、多層であってもよい。
【0071】
接着剤に含まれる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;ポリエーテル;ポリウレタン;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;セルロース;(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン接着剤が挙げられる。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。
【0072】
ポリウレタン接着剤としては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。接着剤層101Bがポリウレタン接着剤により形成されていることで外装部材101に優れた電解液耐性が付与され、側面に電解液が付着しても基材層101Aが剥がれることが抑制される。
【0073】
また、接着剤層101Bは、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層101Bが着色剤を含んでいることにより、外装部材101を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0074】
顔料の種類は、接着剤層101Bの接着性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン-ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
【0075】
着色剤の中でも、例えば外装部材101の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。
【0076】
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.05~5μm程度、好ましくは0.08~2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
【0077】
接着剤層101Bにおける顔料の含有量としては、外装部材101が着色されれば特に制限されず、例えば5~60質量%程度、好ましくは10~40質量%が挙げられる。
【0078】
接着剤層101Bの厚みは、基材層101Aとバリア層101Cとを接着できれば、特に制限されないが、下限については、例えば、約1μm以上、約2μm以上が挙げられ、上限については、約10μm以下、約5μm以下が挙げられ、好ましい範囲については、1~10μm程度、1~5μm程度、2~10μm程度、2~5μm程度が挙げられる。
【0079】
<1-1-3.着色層>
着色層は、基材層101Aとバリア層101Cとの間に必要に応じて設けられる層である(図示を省略する)。接着剤層101Bを有する場合には、基材層101Aと接着剤層101Bとの間、接着剤層101Bとバリア層101Cとの間に着色層を設けてもよい。また、基材層101Aの外側に着色層を設けてもよい。着色層を設けることにより、外装部材101を着色することができる。
【0080】
着色層は、例えば、着色剤を含むインキを基材層101Aの表面、接着剤層101Bの表面、又は、バリア層101Cの表面に塗布することにより形成することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0081】
着色層に含まれる着色剤の具体例としては、接着剤層101Bで例示したものと同じものが例示される。
【0082】
<1-1-4.バリア層>
外装部材101において、バリア層101Cは、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。
【0083】
外装部材101のバリア層101Cは、アルミニウム合金箔を含んでいる。以下に、アルミニウム合金箔の特徴について説明する。
【0084】
・Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下
Feは、鋳造時にAl-Fe系金属間化合物として晶出し、前記化合物のサイズが大きい場合は焼鈍時に再結晶のサイトとなるため、再結晶粒を微細化する効果がある。Feの含有量が下限を下回ると、粗大な金属間化合物の分布密度が低くなり、結晶粒微細化の効果が低く、最終的な結晶粒径分布も不均一となる。含有量が上限を超えると、結晶粒微細化の効果が飽和もしくは却って低下し、さらに鋳造時に生成されるAl-Fe系金属間化合物のサイズが非常に大きくなり、箔の伸びと圧延性が低下する。このため、Feの含有量を上記範囲に定める。同様の理由でFeの含有量は下限0.5質量%とするのが好ましく、さらに同様の理由でFeの含有量は下限1.0質量%、上限1.8質量%とすることが一層好ましい。
【0085】
・Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下
Mgはアルミニウムに固溶し、固溶強化によって軟質箔の強度を高める事が出来る。またMgはアルミニウムに固溶し易い為、Feと共に含有しても金属間化合物が粗大化し角部等における外装部材の追従性や圧延性が低下する危険性は低い。Mgの含有量が下限を下回ると強度の向上が不十分となり、Mgの含有量が上限を超えるとアルミニウム合金箔が硬くなり圧延性の低下や成形性の低下を招く。Mgの含有量の特に好ましい範囲は0.5質量%以上5.0質量%以下である。
【0086】
またMgを添加する事でリチウムイオン二次電池の電解液に対する耐食性が向上する事も確認された。メカニズムの詳細は明らかではないが、Mg添加量が多いほどアルミニウム合金箔と電解液中のリチウムが反応しにくくなり、アルミニウム合金箔の微粉化や貫通孔の発生を抑制する事が出来る。角部等における外装部材の追従性は若干低下するが、特に明瞭な耐食性向上を期待する場合にもMgの含有量の下限を0.5質量%とすることが望ましい。
【0087】
・好ましくはSi:0.5質量%以下
Siは微量であれば箔の強度を高める目的で添加されることもある。本実施形態では、アルミニウム合金箔の組成は、Siの含有量を0.5質量%以下としている。このため、鋳造時に生成されるAl-Fe-Si系金属間化合物のサイズが小さくなり、箔の延び、及び、角部等における外装部材の追従性が高められる。また、箔厚みが薄い場合であっても、金属間化合物を起点とした破断が生じにくく、圧延性も良好となる。また、Siを多量に添加しないことでMg-Si系析出物の生成量が少なくなり、圧延性の低下やMgの固溶量の低下が生じ難く、強度低下を招きにくくなる。同様の理由でSiの含有量を0.2質量%以下に抑える事が望ましい。Siが低い程、角部等における外装部材の追従性、圧延性、結晶粒の微細化度合い、そして延性が良好になる傾向を有している。
【0088】
・不可避不純物
その他に、アルミニウム合金箔は、CuやMnなどの不可避不純物を含むことができる。これらの不可避純物の各元素の量は、0.1質量%以下とするのが望ましい。なお、本実施形態としては、前記不可避不純物の含有量の上限が上記数値に限定されるものではない。
【0089】
ただし、Mnはアルミニウムに固溶し難いため、Mgと異なり固溶強化によって軟質箔の強度を大きく高めることは期待できない。またFe含有量の多い合金にMnを多量に添加すると、金属間化合物の粗大化やAl-Fe-Mn系の巨大金属間化合物が生成する危険性が高くなり、圧延性や角部等における外装部材の追従性の低下を招く恐れがある。このため、Mn含有量は0.1質量%以下とするのが望ましい。
【0090】
・集合組織のCopper方位、R方位のそれぞれの方位密度が15以下
集合組織は箔の機械的性質や角部等における外装部材の追従性に大きな影響を及ぼす。Cоpper方位とR方位の密度がいずれかが15を超えると、成形時に均一な変形が出来ず角部等における外装部材の追従性が低下する懸念がある。角部等における外装部材の追従性を得るためにCоpper方位とR方位の密度をそれぞれ15以下に保つのが望ましい。より好ましくはそれぞれの方位密度が10以下である。
【0091】
・表面のMg濃度が5.0原子パーセント以上、かつ、酸化皮膜厚み80Å以上(Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下の場合)
メカニズムの詳細は明らかではないが、箔表面のMg濃度と酸化皮膜厚みはリチウムイオン二次電池の電解液に対する耐食性に寄与することが確認されている。箔表面のMg濃度が高く、且つ厚い酸化皮膜が形成されることで耐食性が向上する。このため、Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下の場合、アルミニウム箔表面のMg濃度を5.0原子パーセント以上、且つ酸化皮膜厚み80Å以上とするのが望ましい。より好ましくは表面のMg濃度が15.0原子パーセント以上、且つ酸化皮膜厚み200Å以上である。さらに望ましくは表面のMg濃度が20.0原子パーセント以上である。ここで、表面のMg濃度は、最表面から深さ8nmまでの表面部のMg濃度であり、Mg濃度は、全ての元素の合計100原子%に対する量である。
【0092】
・表面のMg濃度が15.0原子パーセント以上、且つ酸化皮膜厚み120Å以上(Mg:1.5質量%超5.0質量%以下の場合)
前記の通り、メカニズムの詳細は明らかではないが、箔表面のMg濃度と酸化皮膜厚みはリチウムイオン二次電池の電解液に対する耐食性に寄与することが確認されている。箔表面のMg濃度が高く、且つ厚い酸化皮膜が形成されることで耐食性が向上する。このため、Mg:1.5質量%超5.0質量%以下の場合、アルミニウム箔表面のMg濃度を15.0原子パーセント以上、且つ酸化皮膜厚み120Å以上とするのが望ましい。より好ましくは表面のMg濃度が20.0原子パーセント以上、且つ酸化皮膜厚み220Å以上である。さらに望ましくは表面のMg濃度25.0原子パーセント以上である。
【0093】
・後方散乱電子回折法により測定される単位面積あたりの大角粒界の長さをL1、小角粒界の長さをL2としたとき、L1/L2>3.0
焼鈍後の再結晶粒組織における大角粒界(HAGB;High-Angle Grain Boundary)と小角粒界(LAGB;Low-Angle Grain Boundary)の割合が箔の伸びや角部等における外装部材の追従性に影響を及ぼす。最終焼鈍後の再結晶粒組織においてLAGBの割合が高い場合には、変形の局在化を生じやすくなり伸びや角部等における外装部材の追従性が低下する。この為L1/L2>3.0としてHAGBの割合を高くすることで高い伸びや良好な角部等における外装部材の追従性が期待できる。より好ましくはL1/L2>5.0である。
【0094】
・引張強さ:110MPa以上180MPa以下(Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下の場合)
Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下の場合、既存のJIS A8079や8021等の箔に対し、劇的に耐衝撃性や突き刺し強さを向上させるためには110MPa以上の引張強さが必要である。特に、角部等における外装部材の追従性を良好にするためには、引張強さは、180MPa以下であることが好ましい。引張強さは、組成の選定と、結晶粒サイズの最適化により達成することができる。
【0095】
・引張強さ:180MPa以上(Mg:1.5質量%超5.0質量%以下の場合)
Mg:1.5質量%超5.0質量%以下の場合、既存のJIS A8079や8021等の箔に対し、劇的に耐衝撃性や突き刺し強さを向上させるためには180MPa以上の引張強度が好ましい。同様の理由で引張強さは200MPa以上であることが望ましい。ただし角部等における外装部材の追従性は、引張強さが高い程低下する為、追従性を重視する場合は引張強さを押さえた方が良い。前記の通り、引張強さは、組成の選定と結晶粒サイズの最適化により達成することができる。
【0096】
・破断伸び:10%以上(Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下の場合)
角部等における外装部材の追従性に対する伸びの影響はその成形方法によって大きく異なり、また伸びだけで角部等における外装部材の追従性が決定されるわけではない。アルミニウム包装材で良く用いられる張出し加工においては、アルミニウム合金箔の伸びが高い程角部等における外装部材の追従性は有利であり、Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下の場合、10%以上の伸びを有する事が望ましい。伸びの特性は、組成の選定と、結晶粒サイズの微細化により達成することができる。
【0097】
・伸び:15%以上(Mg:1.5質量%超5.0質量%以下の場合)
前記の通り、角部等における外装部材の追従性に対する伸びの影響はその成形方法によって大きく異なり、また伸びだけで角部等における外装部材の追従性が決定されるわけではないが、アルミニウム包装材で良く用いられる張出し加工においては、アルミニウム合金箔の伸びが高い程、追従性は有利であり、Mg:1.5質量%超5.0質量%以下の場合、15%以上の伸びを有する事が望ましい。前記の通り、伸びの特性は、組成の選定と結晶粒サイズの微細化により達成することができる。
【0098】
・平均結晶粒径:25μm以下
軟質アルミニウム合金箔は結晶粒が微細になることで、変形した際の箔表面の肌荒れを抑制することができ、高い伸びとそれに伴う高い角部等における外装部材の追従性が期待できる。なお、この結晶粒径の影響は箔の厚みが薄い程大きくなる。高い伸び特性やそれに伴う高角部等における外装部材の追従性を実現するには平均結晶粒径が25μm以下であることが望ましい。平均結晶粒径は、組成の選定と、均質化処理や冷間圧延率の最適化を図った製造条件により達成することができる。
【0099】
以下に、アルミニウム合金箔の調製法について説明する。
アルミニウム合金の鋳塊を半連続鋳造法等の常法によって鋳造する。アルミニウム合金の鋳塊は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下を含有し、残部がAlと不可避不純物を含み、所望によりMn:0.1質量%以下とした組成を有する。得られた鋳塊に対しては、480~550℃で6~12時間の均質化処理を行う。
【0100】
・均質化処理:450~550℃
均質化処理は鋳塊内のミクロ偏析の解消と金属間化合物の分布状態を調整する事を目的としており、最終的に狙いの結晶粒組織を得る為に非常に重要な処理である。
一般にアルミニウム材料の均質化処理は400~600℃で長時間行われるが、本発明ではFe添加による結晶粒微細化を考慮する必要がある。
均質化処理において、450℃未満の温度ではFeの析出が不十分となり、最終焼鈍時に結晶粒の粗大化が懸念される。また、その場再結晶の割合が増加する事でLAGBの割合が多くなり、L1/L2の低下が懸念される。また、Copper方位とR方位の各方位密度の増加による角部等における外装部材の追従性の低下が懸念される。また550℃を超える温度では晶出物が顕著に成長し、最終焼鈍時の結晶粒の粗大化や角部等における外装部材の追従性の低下に繋がる。均質化処理の時間は最低3時間以上確保する必要がある。3時間未満では析出が十分でなく、微細な金属間化合物の密度が低下してしまう。望ましくは温度は480~520℃で時間は5時間以上である。
【0101】
均質化処理後、熱間圧延を行い、所望の厚さのアルミニウム合金板を得る。熱間圧延は常法によって行うことができるが、熱間圧延の巻取り温度は、再結晶温度以上、具体的には300℃以上とすることが望ましい。300℃未満では0.3μm以下の微細なAl-Fe系金属間化合物が析出する。また、熱間圧延後に再結晶粒とファイバー粒が混在し、中間焼鈍や最終焼鈍後の結晶粒サイズが不均一化し伸び特性が低下する懸念があり、望ましくない。
【0102】
熱間圧延の後には、冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延を行い、厚さを5~100μmとすることで、本発明のアルミニウム合金箔を得る。
中間焼鈍にはコイルを炉に投入し一定時間保持するバッチ焼鈍(Batch Annealing)と、連続焼鈍ライン(Continuous Annealing Line、以下CAL焼鈍という)により材料を急加熱・急冷する2種類の方式がある。中間焼鈍を負荷する場合、いずれの方法でも良いが、結晶粒の微細化を図り高強度化をする場合はCAL焼鈍が望ましい。しかしCAL焼鈍の後の最終冷間圧延を経て最終焼鈍後に集合組織が発達し、Cоpper方位とR方位の密度が高くなり角部等における外装部材の追従性が低下する懸念がある。このため、角部等における外装部材の追従性を優先するならばバッチ焼鈍が好ましい。
【0103】
例えば、バッチ焼鈍では、300~400℃で3時間以上の条件を採用することが出きる。CAL焼鈍では、昇温速度:10~250℃/秒、加熱温度:400℃~550℃、保持時間なしまたは保持時間:5秒以下、冷却速度:20~200℃/秒の条件を採用することができる。ただし、本発明としては、中間焼鈍の有無、中間焼鈍を行う場合の条件等は特定のものに限定されるものではない。
【0104】
・最終冷間圧延率:84.0%以上97.0%以下
中間焼鈍後から最終厚みまでの最終冷間圧延率が高い程、材料に蓄積されるひずみ量が多くなり最終焼鈍後の再結晶粒が微細化される。またその場再結晶を抑制する効果もあり、L1/L2の増加に伴う角部等における外装部材の追従性の向上も期待される。具体的には最終冷間圧延率を84.0%以上とすることが望ましい。しかし最終冷間圧延率が高すぎる場合には、最終焼鈍後でもCopper方位とR方位の各方位密度の増加による角部等における外装部材の追従性の低下が懸念される。またその結果としてL1/L2の低下も生じる事から、具体的には最終冷間圧延率97.0%以下とする事が望ましい。また最終冷間圧延率が低い場合には、結晶粒の粗大化やL1/L2の低下に伴う角部等における外装部材の追従性の低下が懸念される。同様の理由でさらに望ましい最終冷間圧延率の範囲は90.0%以上93.0%以下である。
【0105】
箔圧延後には、最終焼鈍を行って軟質箔とする。箔圧延後の最終焼鈍は一般に250℃~400℃で実施すればよい。しかしMgによる耐食性の効果を高める場合には300℃以上の高温で5時間以上保持する事が望ましく、温度は、350℃~400℃がさらに望ましい。
最終焼鈍の温度が低いと軟質化が不十分であり、L1/L2の低下やCopper方位とR方位の各方位密度の増加の懸念がある。またMgの箔表面への濃化や酸化皮膜の成長も不十分となり耐食性も低下する懸念がある。400℃を超えると、箔表面へMgが過度に濃化し箔の変色や、酸化皮膜の性質が変化し微小なクラックを生じる事で耐食性が低下する懸念がある。最終焼鈍の時間は、5時間未満では、最終焼鈍の効果が不十分である。
【0106】
得られたアルミニウム合金箔は、室温において、Mg:0.1質量%以上1.5質量%以下の場合については、例えば、引張強さが110MPa以上180MPa以下、伸びが10%以上である。Mg:1.5質量%超5.0質量%以下の場合については、例えば、引張強さが180MPa以上、伸びが15%以上である。また、平均結晶粒径は、25μm以下である。平均結晶粒径は、JIS G0551で規定された切断法により求めることができる。
【0107】
アルミニウム合金箔の厚みは、外装部材101において、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、下限については約9μm以上、上限については約200μm以下が挙げられる。外装部材101の厚みを薄くする観点から、アルミニウム合金箔の厚みは、例えば、上限については、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約45μm以下、特に好ましくは約40μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上が挙げられ、当該厚みの好ましい範囲としては、10~85μm程度、10~50μm程度、10~45μm程度、10~40μm程度、20~85μm程度、20~50μm程度、20~45μm程度、20~40μm程度、25~85μm程度、25~50μm程度、25~45μm程度、25~40μm程度が挙げられる。
【0108】
また、アルミニウム合金箔の溶解や腐食の抑制などのために、アルミニウム合金箔の少なくとも片面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。アルミニウム合金箔は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、ニッケルやクロムなどのメッキ処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をアルミニウム合金箔の表面に行い、アルミニウム合金箔に耐腐食性を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行ってもよいし、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。また、1層だけではなく多層化することもできる。さらに、これらの処理のうち、熱水変成処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、アルミニウム合金箔が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてアルミニウム合金箔とする。
【0109】
耐腐食性皮膜は、外装部材101の成形時において、アルミニウム合金箔と基材層との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム合金箔表面の溶解、腐食、アルミニウム合金箔表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム合金箔表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層とアルミニウム合金箔とのデラミネーション防止、成形時の基材層とアルミニウム合金箔とのデラミネーション防止の効果を示す。
【0110】
化成処理によって形成される耐腐食性皮膜としては、種々のものが知られており、主には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物、及び希土類酸化物のうち少なくとも1種を含む耐腐食性皮膜などが挙げられる。リン酸塩、クロム酸塩を用いた化成処理としては、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸-クロム酸塩処理、クロム酸塩処理などが挙げられ、これらの処理に用いるクロム化合物としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどが挙げられる。また、これらの処理に用いるリン化合物としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などが挙げられる。また、クロメート処理としてはエッチングクロメート処理、電解クロメート処理、塗布型クロメート処理などが挙げられ、塗布型クロメート処理が好ましい。この塗布型クロメート処理は、バリア層(例えばアルミニウム合金箔)の少なくとも内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後、脱脂処理面にリン酸Cr(クロム)塩、リン酸Ti(チタン)塩、リン酸Zr(ジルコニウム)塩、リン酸Zn(亜鉛)塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液、または、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液、あるいは、これらと合成樹脂などとの混合物からなる処理液をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法等の周知の塗工法で塗工し、乾燥する処理である。処理液は例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。また、このとき用いる樹脂成分としては、フェノール系樹脂やアクリル系樹脂などの高分子などが挙げられ、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。本実施形態において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万程度であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。アミノ化フェノール重合体は、例えば、フェノール化合物又はナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して上記一般式(1)又は一般式(3)で表される繰返し単位からなる重合体を製造し、次いでホルムアルデヒド及びアミン(R1R2NH)を用いて官能基(-CH2NR1R2)を上記で得られた重合体に導入することにより、製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0116】
耐腐食性皮膜の他の例としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理によって形成される薄膜が挙げられる。コーティング剤には、さらにリン酸またはリン酸塩、ポリマーを架橋させる架橋剤を含んでもよい。希土類元素酸化物ゾルには、液体分散媒中に希土類元素酸化物の微粒子(例えば、平均粒径100nm以下の粒子)が分散されている。希土類元素酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジウム、酸化ランタン等が挙げられ、密着性をより向上させる観点から酸化セリウムが好ましい。耐腐食性皮膜に含まれる希土類元素酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。希土類元素酸化物ゾルの液体分散媒としては、例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノ化フェノールなどが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、あるいは(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記リン酸またはリン酸塩が、縮合リン酸または縮合リン酸塩であることが好ましい。
【0117】
耐腐食性皮膜の一例としては、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをバリア層の表面に塗布し、150℃以上で焼付け処理を行うことにより形成したものが挙げられる。
【0118】
耐腐食性皮膜は、必要に応じて、さらにカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも一方を積層した積層構造としてもよい。カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーとしては、上述したものが挙げられる。
【0119】
なお、耐腐食性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。
【0120】
化成処理においてアルミニウム合金箔の表面に形成させる耐腐食性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、塗布型クロメート処理を行う場合であれば、アルミニウム合金箔の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で例えば0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、リン化合物がリン換算で例えば0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が例えば1.0~200mg程度、好ましくは5.0~150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
【0121】
耐腐食性皮膜の厚みとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層や熱融着性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm~20μm程度、より好ましくは1nm~100nm程度、さらに好ましくは1nm~50nm程度が挙げられる。なお、耐腐食性皮膜の厚みは、透過電子顕微鏡による観察、または、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐腐食性皮膜の組成の分析により、例えば、CeとPとOからなる2次イオン(例えば、Ce2PO4
+、CePO4
-などの少なくとも1種)や、例えば、CrとPとOからなる2次イオン(例えば、CrPO2
+、CrPO4
-などの少なくとも1種)に由来するピークが検出される。
【0122】
化成処理は、耐腐食性皮膜の形成に使用される化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、アルミニウム合金箔の表面に塗布した後に、アルミニウム合金箔の温度が70~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、アルミニウム合金箔に化成処理を施す前に、予めアルミニウム合金箔を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、アルミニウム合金箔の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。また、脱脂処理にフッ素含有化合物を無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、このような場合には脱脂処理だけを行ってもよい。
【0123】
<1-1-5.熱融着性樹脂層>
外装部材101において、熱融着性樹脂層101Dは、最内層に該当し、蓄電デバイス10の組み立て時に熱融着性樹脂層101D同士が熱融着して電極体200を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
【0124】
熱融着性樹脂層101Dを構成している樹脂については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。熱融着性樹脂層101Dを構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。また、熱融着性樹脂層101Dを構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。熱融着性樹脂層101Dが無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0125】
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0127】
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記の
ポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
【0128】
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
【0129】
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0130】
熱融着性樹脂層101Dは、1種の樹脂単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層101Dは、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。
【0131】
また、熱融着性樹脂層101Dは、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層101Dが滑剤を含む場合、外装部材101の角部等における外装部材の追従性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0132】
滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。滑剤の具体例としては、基材層101Aで例示したものが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0133】
熱融着性樹脂層101Dの表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、外装部材101の角部等における外装部材の追従性を高める観点からは、好ましくは10~50mg/m2程度、さらに好ましくは15~40mg/m2程度が挙げられる。
【0134】
熱融着性樹脂層101Dの表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層101Dを構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層101Dの表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0135】
また、熱融着性樹脂層101Dの厚みとしては、熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~85μm程度が挙げられる。なお、例えば、後述の接着層101Eの厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層101Dの厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~45μm程度が挙げられ、例えば後述の接着層101Eの厚みが10μm未満である場合や接着層101Eが設けられていない場合には、熱融着性樹脂層101Dの厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35~85μm程度が挙げられる。
【0136】
<1-1-6.接着層>
外装部材101において、接着層101Eは、バリア層101C(又は耐酸性皮膜)と熱融着性樹脂層101Dを強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
【0137】
接着層101Eは、バリア層101Cと熱融着性樹脂層101Dとを接着可能である樹脂によって形成される。接着層101Eは、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されていることが好ましい。硬化性樹脂とは、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂など硬化性を有する樹脂を意味しており、例えば硬化後に明確な融解ピーク温度を有しないものである。接着層101Eの形成に使用される樹脂としては、例えば接着剤層101Bで例示した接着剤と同様のものが使用できる。なお、接着層101Eの形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましく、前述の熱融着性樹脂層101Dで例示したポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンが挙げられる。接着層101Eを構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層101Eを構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0138】
バリア層101Cと熱融着性樹脂層101Dとを強固に接着する観点から、接着層101Eは、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
【0139】
さらに、外装部材101の厚みを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた外装部材101とする観点からは、接着層101Eは、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。この場合、酸変性ポリオレフィン及び硬化剤が硬化性樹脂を構成する。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
【0140】
また、接着層101Eは、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層101Eは、ポリウレタン、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリウレタン及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層101Eは、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層101Eに、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
【0141】
また、バリア層101Cと接着層101Eとの密着性をより高める観点から、接着層101Eは、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C-O-C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ポリウレタンなどが挙げられる。接着層101Eがこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
【0142】
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、バリア層101Cと接着層101Eとの密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
【0143】
接着層101Eにおける、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層101Eを構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層101Cと接着層101Eとの密着性を効果的に高めることができる。
【0144】
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
【0145】
接着層101Eにおける、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層101Eを構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層101Cと接着層101Eとの密着性を効果的に高めることができる。
【0146】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50~2000程度、より好ましくは100~1000程度、さらに好ましくは200~800程度が挙げられる。なお、第1の開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
【0147】
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0148】
接着層101Eにおける、エポキシ樹脂の割合としては、接着層101Eを構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層101Cと接着層101Eとの密着性を効果的に高めることができる。
【0149】
ポリウレタンとしては、特に制限されず、公知のポリウレタンを使用することができる。接着層101Eは、例えば、2液硬化型ポリウレタンの硬化物であってもよい。
【0150】
接着層101Eにおける、ポリウレタンの割合としては、接着層101Eを構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層101Cと接着層101Eとの密着性を効果的に高めることができる。
【0151】
なお、接着層101Eが、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
【0152】
接着層101Eの厚さは、上限については、好ましくは、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約5μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、約0.1μm以上、約0.5μm以上が挙げられ、当該厚さの範囲としては、好ましくは、0.1~50μm程度、0.1~40μm程度、0.1~30μm程度、0.1~20μm程度、0.1~5μm程度、0.5~50μm程度、0.5~40μm程度、0.5~30μm程度、0.5~20μm程度、0.5~5μm程度が挙げられる。より具体的には、接着剤層101Bで例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合は、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層101Dで例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。なお、接着層101Eが接着剤層101Bで例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、例えば、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層101Eを形成することができる。また、熱融着性樹脂層101Dで例示した樹脂を用いる場合、例えば、熱融着性樹脂層101Dと接着層101Eとの押出成形により形成することができる。
【0153】
<1-1-7.表面被覆層101F>
外装部材101は、意匠性、耐電解液性、耐傷性、角部等における外装部材の追従性などの向上の少なくとも一つを目的として、必要に応じて、基材層101Aの上(基材層101Aのバリア層101Cとは反対側)に、表面被覆層101Fを備えていてもよい。表面被覆層101Fは、外装部材101を用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、外装部材101の最外層側に位置する層である。
【0154】
表面被覆層101Fは、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂により形成することができる。
【0155】
表面被覆層101Fを形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも2液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0156】
2液硬化型ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタンが挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタンが挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。表面被覆層101Fがポリウレタンにより形成されていることで外装部材101に優れた電解液耐性が付与される。
【0157】
表面被覆層101Fは、表面被覆層101Fの表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層101Fやその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、前述した滑剤や、アンチブロッキング剤、艶消し剤、難燃剤、酸化防止剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、平均粒子径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
【0158】
添加剤、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、鱗片状などが挙げられる。
【0159】
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0160】
表面被覆層101Fを形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層101Fを形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層101Fに添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
【0161】
表面被覆層101Fの厚みとしては、表面被覆層101Fとしての上記の機能を発揮すれば特に制限されず、例えば0.5~10μm程度、好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
【0162】
<1-1-8.外装部材の製造方法>
外装部材101の製造方法については、本実施形態の外装部材101が備える各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層101A、バリア層101C、及び、熱融着性樹脂層101Dがこの順となるように積層する工程を備える方法が挙げられる。前記の通り、バリア層101Cとしては、前述した所定の組成を満たすアルミニウム合金箔を用いることができる。
【0163】
本実施形態の外装部材101の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層101A、接着剤層101B、バリア層101Cが順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層101A上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層101Cに接着剤層101Bの形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布、乾燥した後に、当該バリア層101C又は基材層101Aを積層させて接着剤層101Bを硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
【0164】
次いで、積層体Aのバリア層101C上に、熱融着性樹脂層101Dを積層させる。バリア層101C上に熱融着性樹脂層101Dを直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層101C上に、熱融着性樹脂層101Dをサーマルラミネート法、押出ラミネート法などの方法により積層すればよい。また、バリア層101Cと熱融着性樹脂層101Dの間に接着層101Eを設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層101C上に、接着層101E及び熱融着性樹脂層101Dを押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法、タンデムラミネート法)、(2)別途、接着層101Eと熱融着性樹脂層101Dが積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層101C上にサーマルラミネート法により積層する方法や、積層体Aのバリア層101C上に接着層101Eが積層した積層体を形成し、これを熱融着性樹脂層101Dとサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層101Cと、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層101Dとの間に、溶融させた接着層101Eを流し込みながら、接着層101Eを介して積層体Aと熱融着性樹脂層101Dを貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)、(4)積層体Aのバリア層101C上に、接着層101Eを形成させるための接着剤を溶液コーティングし、乾燥させる方法や、さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層101E上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層101Dを積層する方法などが挙げられる。
【0165】
表面被覆層101Fを設ける場合には、基材層101Aのバリア層101Cとは反対側の表面に、表面被覆層101Fを積層する。表面被覆層101Fは、例えば表面被覆層101Fを形成する上記の樹脂を基材層101Aの表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層101Aの表面にバリア層101Cを積層する工程と、基材層101Aの表面に表面被覆層101Fを積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層101Aの表面に表面被覆層101Fを形成した後、基材層101Aの表面被覆層101Fとは反対側の表面にバリア層101Cを形成してもよい。
【0166】
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層101F/基材層101A/必要に応じて設けられる接着剤層101B/バリア層101C/必要に応じて設けられる接着層101E/熱融着性樹脂層101Dをこの順に備える積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層101B及び接着層101Eの接着性を強固にするために、さらに、加熱処理に供してもよい。
【0167】
外装部材101において、積層体を構成する各層には、必要に応じて、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施すことにより加工適性を向上させてもよい。例えば、基材層101Aのバリア層101Cとは反対側の表面にコロナ処理を施すことにより、基材層101A表面へのインクの印刷適性を向上させることができる。
【0168】
外装部材101は、熱融着性樹脂層101Dよりも外側に、より好ましくは、バリア層101Cよりも外側に1又は複数の緩衝機能を有する層(以下では、「緩衝層」という)を有していることが好ましい。緩衝層は、基材層101Aの外側に積層されてもよく、基材層101Aが緩衝層の機能を兼ね備えてもよい。外装部材101が複数の緩衝層を有する場合、複数の緩衝層は、隣接していてもよく、基材層101A又はバリア層101C等を介して積層されてもよい。
【0169】
緩衝層を構成する材料は、クッション性を有する材料から任意に選択可能である。クッション性を有する材料は、たとえば、ゴム、不織布、又は、発泡シートである。ゴムは、たとえば、天然ゴム、フッ素ゴム、又は、シリコンゴムである。ゴム硬度は、20~90程度であることが好ましい。不織布を構成する材料は、耐熱性に優れる材料であることが好ましい。緩衝層が不織布によって構成される場合、緩衝層の厚さの下限値は、好ましくは、100μm、さらに好ましくは、200μm、さらに好ましくは、1000μmである。緩衝層が不織布によって構成される場合、緩衝層の厚さの上限値は、好ましくは、5000μm、さらに好ましくは、3000μmである。緩衝層の厚さの好ましい範囲は、100μm~5000μm、100μm~3000μm、200μm~3000μm、1000μm~5000μm、又は、1000μm~3000μmである。この中でも、緩衝層の厚さの範囲は、1000μm~3000μmが最も好ましい。
【0170】
緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの下限値は、好ましくは、0.5mmである。緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの上限値は、好ましくは、10mm、さらに好ましくは、5mm、さらに好ましくは、2mmである。緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの好ましい範囲は、0.5mm~10mm、0.5mm~5mm、又は、0.5mm~2mmである。
【0171】
外装部材101が緩衝層を有する場合、緩衝層がクッションとして機能するため、蓄電デバイス10が落下したときの衝撃、又は、蓄電デバイス10の製造時のハンドリングによって、外装部材101が破損することが抑制される。
【0172】
図4は、蓄電デバイス10の製造途中において、電極体200に外装部材101が巻き付けられた状態を側方から示す図である。
図4に示されるように、電極体200の周囲には、外装部材101が巻き付けられている。この場合に、電極体200の最外層は、必ずしも電極である必要はなく、たとえば、保護テープやセパレータであってもよい。電極体200の周囲に外装部材101が巻き付けられた状態で、外装部材101の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層)同士がヒートシールされることによって、第1封止部110が形成されている。
【0173】
本実施形態では、第1封止部110の付け根部分は、外装体100の辺135上にある。辺135は、第1面130と、第1面130よりも面積が小さい第2面140との境界に形成されている。すなわち、第1封止部110の付け根部分は、第1面130と第2面140との境界に形成されているといえ、第1面130及び第2面140のいずれの上にも存在しないといえる。なお、第1封止部110の付け根部分は、第2面140上に存在していてもよい。蓄電デバイス10において、第1封止部110は、辺135を中心として第2面140側に折り曲げられている。蓄電デバイス10においては、第1封止部110が、第2面140に接し、第2面140の略全体を覆っている。なお、「第2面140の略全体」とは、第2面140のうち75%以上の面積を占める領域を意味する。
【0174】
すなわち、蓄電デバイス10においては、面積の大きい第1面130上に第1封止部110が形成されていない。第1面130は、第1面130に第1封止部110のような封止部が接している場合と比較して平坦である。したがって、第1面130上に他の蓄電デバイス10が載置されたとしても該他の蓄電デバイス10は傾かない。その結果、蓄電デバイス10によれば、複数の蓄電デバイス10を積み重ねた場合に下方の蓄電デバイス10に掛かる圧力の分布のムラを抑制することができる。換言すると、複数の蓄電デバイス10を積み重ねてモジュールが形成される場合に、隣接する蓄電デバイス10と隣り合う面(第1面130)上には第1封止部110が配置されないということもできる。また、全固体電池においては、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされている観点からもこのような構成が好ましい。
【0175】
また、本実施形態の蓄電デバイス10においては、第1封止部110の付け根部分が外装体100の辺135上にある。したがって、蓄電デバイス10によれば、第1封止部110の付け根部分が第2面140上(たとえば、矢印UD方向において、第2面140の中央部分)にあるときと比較して、第1封止部110における接合領域を広く確保することができる。なお、第1封止部110の接合領域は、必ずしも第1封止部110の全領域である必要はなく、たとえば、第1封止部110の付け根部分近傍のみ等の第1封止部110の一部分であってもよい。
【0176】
また、蓄電デバイス10においては、第2面140の略全体が第1封止部110によって覆われている。すなわち、蓄電デバイス10においては、たとえば、第1封止部110が第2面140の半分以下の領域しか覆わない場合と比較して、第1封止部110の矢印UD方向の長さが長い(
図3参照)。したがって、蓄電デバイス10によれば、第1封止部110における接合領域を広く確保することができる。また、第2面140の略全体が第1封止部110によって覆われているため、仮に第2面140が載置面に接するように蓄電デバイス10が立てて配置されたとしても蓄電デバイス10は安定する。すなわち、蓄電デバイス10は載置面に対して傾きにくい。したがって、このような構成は、たとえば、複数の蓄電デバイス10を横に並べてモジュールを形成する場合に有効である。
【0177】
図5は、蓄電デバイス10の製造途中において、電極体200に外装部材101が巻き付けられた状態を下方から示す図である。
図5に示されるように、蓄電デバイス10においては、辺135に沿う方向が外装部材101のTD(Transverse Direction)であり、辺135に直交する方向が外装部材101のMD(Machine Direction)である。すなわち、辺135に沿う方向は、外装部材101の流れ方向(MD)に直交する方向(TD)である。
【0178】
蓄電デバイス10においては、第1封止部110が辺135に沿って折り曲げられ、辺135に沿う方向が外装部材101の流れ方向に直交する方向である。したがって、蓄電デバイス10によれば、外装部材101の流れ方向に直交する方向に折り目が形成されても外装部材101は破断しにくいため、第1封止部110が折り曲げられることによって第1封止部110が破断する可能性を低減することができる。
【0179】
外装部材101の流れ方向(MD)は、外装部材101に含まれるバリア層の金属箔(アルミニウム合金箔等)の圧延方向(RD)に対応する。外装部材101のTDは金属箔のTDに対応する。金属箔の圧延方向(RD)は圧延目により判別できる。
【0180】
また、外装部材101の熱融着性樹脂層の複数の断面を電子顕微鏡で観察して海島構造を確認し、熱融着性樹脂層の厚み方向に垂直な方向(以下、「熱融着性樹脂層の長さ方向」とも称する。)の島の径の平均が最大であった断面と平行な方向をMDと判断することができる。金属箔の圧延目により外装部材101のMDを特定できない場合に、この方法によりMDを特定することができる。
【0181】
具体的には、熱融着性樹脂層の長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面と垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面上の個々の島について、熱融着性樹脂層の厚み方向に垂直な方向の両端を結ぶ直線距離によって島の径dを計測する。次に、断面毎に、大きい方から上位20個の島の径dの平均を算出する。そして、島の径dの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。
【0182】
図6は、
図2のVI-VI断面の一部を模式的に示す図である。
図6に示されるように、第2封止部120は、外装体100が電極端子300を挟んだ状態で封止されている。
【0183】
図7は、第2封止部120の形成方法を説明するための図である。
図7に示されるように外装部材101が折り畳まれ、外装部材101の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層)同士がヒートシールされることによって第2封止部120が形成される。なお、
図7においては省略されているが、外装部材101の互いに向き合う面の間には、電極端子300が位置する。なお、電極端子300と外装部材101との間には、金属及び樹脂の双方と接着する接着性フィルムが配置されてもよい。
【0184】
再び
図6を参照して、電極体200は、複数の電極210(正極及び負極)を含む。各電極210から延びる集電体215は、電極端子300に接続されている。蓄電デバイス10においては、電極端子300のうち外装体100の外側にある一部分が、蓄電デバイス10の厚み方向において、蓄電デバイス10の厚みの略半分の位置にある。すなわち、長さL2は長さL1の略半分である。なお、「蓄電デバイス10の厚みの略半分」とは、蓄電デバイス10の厚みの35%~65%を意味する。
【0185】
したがって、蓄電デバイス10によれば、たとえば、電極端子300が蓄電デバイス10の厚み方向において第1面130と略同じ位置にある場合と比較して、複数の電極210の各々と電極端子300との間の距離のうち最も長い距離と最も短い距離との差を小さくすることができる。
【0186】
<1-2.蓄電デイバスの製造方法>
図8は、蓄電デバイス10の製造手順を示すフローチャートである。
図8に示される工程は、たとえば、蓄電デバイス10の製造装置によって行なわれる。
【0187】
製造装置は、電極体200へ外装部材101を巻き付ける(ステップS100)。製造装置は、外装部材101の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層)同士をヒートシールすることによって第1封止部110を形成する(ステップS110)。これにより、
図4、
図5に示される未完成品が出来上がる。
【0188】
製造装置は、第1封止部110が第2面140に接するように第1封止部110を折り曲げる(ステップS120)。製造装置は、電極体200を収納した状態で外装部材101を折り畳み、外装部材101の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層)同士をヒートシールすることによって第2封止部120を形成する(ステップS130)。これにより、蓄電デバイス10が完成する。
【0189】
<1-3.特徴>
以上のように、本実施の形態1に従う蓄電デバイス10においては、面積の小さい第2面140側に第1封止部110が折り曲げられている。すなわち、面積の大きい第1面130上には第1封止部110が存在しない。したがって、第1面130上に他の蓄電デバイス10が載置されたとしても該他の蓄電デバイス10は傾かない。その結果、蓄電デバイス10によれば、複数の蓄電デバイス10を積み重ねた場合に下方の蓄電デバイス10に掛かる圧力の分布のムラを抑制することができる。また、全固体電池に使用される場合には、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされるため、本発明の包装形態が好ましい。また、蓄電デバイス10においては、第1封止部110の付け根部分が外装体100の辺135上にある。したがって、蓄電デバイス10によれば、第1封止部110を第2面140上に納まらせる場合に、第1封止部110の付け根部分が第2面140上にあるときと比較して、第1封止部110における接合幅を広く確保することができる。
【0190】
[2.実施の形態2]
上記実施の形態1に従う蓄電デバイス10においては、外装部材101を折り畳み、外装部材101の互いに向き合う面同士をヒートシールすることによって第2封止部120が形成された。しかしながら、第2封止部120の形状及び形成方法はこれに限定されない。なお、以下では実施の形態1と異なる部分を中心に説明し、実施の形態1と共通する部分については説明を省略する。
【0191】
<2-1.蓄電デバイスの構成>
図9は、本実施の形態2に従う蓄電デバイス10Xを模式的に示す平面図である。
図10は、蓄電デバイス10Xを模式的に示す側面図である。
図11は、蓋体400を模式的に示す斜視図である。
【0192】
図9、
図10及び
図11を参照して、外装体100Xは、電極体200に巻き付けられた外装部材101の両端の開口部の各々に蓋体400を嵌め込むことによって構成されている。蓋体400が嵌め込まれた状態で、外装部材101と蓋体400とをヒートシールすることによって第2封止部120Xが形成されている。
【0193】
蓋体400は、平面視矩形状の有底トレイ状部材であり、外装部材101をたとえば冷間成形することによって形成されている。なお、蓋体400は、必ずしも外装部材101で構成されている必要はなく、金属成形品であってもよいし、樹脂成形品であってもよい。蓄電デバイス10Xにおいては、蓋体400の底面側が外装体100Xの内側に位置するように蓋体400が配置されている。なお、蓄電デバイス10Xにおいては、必ずしも蓋体400の底面側が外装体100Xの内側に位置していなくてもよい。蓄電デバイス10Xにおいて、蓋体400の底面側が外装体100Xの外側に位置していてもよい。
【0194】
また、電極体200が収納された状態で電極端子300は、蓋体400と外装部材101との間を通って外装体100Xの外部に突出している。すなわち、蓋体400と外装部材101とは、電極端子300を挟んだ状態でヒートシールされている。なお、蓄電デバイス10Xにおいて、電極端子300が外部に突出する位置は、必ずしも蓋体400と外装部材101との間である必要はない。たとえば、電極端子300は、外装体100Xが有する6面のうちいずれかの面に形成された孔から外部に突出していてもよい。この場合には、外装体100Xと電極端子300との間の僅かな隙間が、たとえば、樹脂によって埋められる。
【0195】
また、蓄電デバイス10Xにおいては、蓋体400と電極端子300とが別体として設けられている。しかしながら、蓋体400と電極端子300とは必ずしも別体として設けられなくてもよい。例えば、蓋体400と電極端子300とは一体的に形成されていてもよい。
【0196】
図12は、蓋体400と電極端子300とが一体的に形成された第1の例を示す図である。
図12に示されるように、第1の例においては、蓋体400の側面に電極端子300が予めヒートシールされている。なお、たとえば蓋体400が外装部材101で構成されている場合には、蓋体400と電極端子300との間に、金属及び樹脂の双方と接着する接着性フィルムが配置されてもよい。
【0197】
図13は、蓋体400と電極端子300とが一体的に形成された第2の例を示す図である。
図13に示されるように、第2の例においては、蓋体400の底面部分に形成された孔を電極端子300が貫通している。蓋体400の底面の孔における僅かな隙間は、たとえば、樹脂によって埋められている。
【0198】
また、蓄電デバイス10Xにおいては、第2封止部120X、又は、外装体100Xが有する6面のうちいずれかの面に形成された孔にガス弁が取り付けられていてもよい。ガス弁は、たとえば、逆止弁又は破壊弁で構成され、蓄電デバイス10Xの内部において発生したガスに起因して外装体100Xの内部の圧力が上昇した場合に該圧力を低下させるように構成されている。
【0199】
<2-2.蓄電デバイスの製造方法>
図14は、蓄電デバイス10Xの製造手順を示すフローチャートである。
図14に示される工程は、たとえば、蓄電デバイス10Xの製造装置によって行なわれる。
【0200】
製造装置は、電極体200へ外装部材101を巻き付ける(ステップS200)。製造装置は、外装部材101の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層)同士をヒートシールすることによって第1封止部110を形成する(ステップS210)。これにより、
図4、
図5に示される未完成品が出来上がる。
【0201】
製造装置は、第1封止部110が第2面140に接するように第1封止部110を折り曲げる(ステップS220)。製造装置は、ステップS220において出来上がった未完成品に電極体200を収納しその両端の開口部の各々に蓋体400を取り付ける(ステップS230)。製造装置は、外装部材101と蓋体400とをヒートシールすることによって第2封止部120Xを形成する(ステップS240)。これにより、蓄電デバイス10Xが完成する。
【0202】
<2-3.特徴>
本実施の形態2に従う蓄電デバイス10Xにおいても、面積の小さい第2面140側に第1封止部110が折り曲げられている。したがって、蓄電デバイス10Xによれば、複数の蓄電デバイス10Xを積み重ねた場合に下方の蓄電デバイス10Xに掛かる圧力の分布のムラを抑制することができる。
【0203】
<2-4.他の特徴>
なお、本実施の形態2に従う蓄電デバイス10Xにおいて、第1封止部110は、必ずしも面積の小さい第2面140側に折り曲げられていなくてもよい。たとえば、第1封止部110は、面積の大きい第1面130側に折り曲げられていてもよい。また、第1封止部110の付け根部分は、必ずしも外装体100Xの辺135上になくてもよい。第1封止部110の付け根部分は、たとえば、外装体100Xにおける蓋体400以外の面上に位置していてもよい。この場合であっても、本実施の形態2に従う蓄電デバイス10Xには、たとえば、以下のような特徴が含まれている。
【0204】
蓄電デバイス10Xは、電極体(電極体200)と、電極体(電極体200)を封止する外装体(外装体100X)とを備え、外装体(外装体100X)は、電極体(電極体200)に巻き付けられており、両端部に開口が形成された外装部材(外装部材101)と、上記開口を封止する蓋体(蓋体400)とを備える。
【0205】
蓄電デバイス10Xにおいては、実施の形態1のように外装部材101の互いに向き合う面同士がヒートシールされることによって第2封止部120Xが形成されているわけではない(
図7参照)。蓄電デバイス10Xにおいては、電極体200に巻き付けられた外装部材101の開口が蓋体400によって封止されている。すなわち、蓋体400と外装部材101とが重なる部分に第2封止部120Xが形成されている(
図9及び
図10参照)。このような構成によれば、蓋体400の深さL3(
図11)を調整することで、第2封止部120Xの領域を容易に狭くすることができる。
【0206】
また、蓄電デバイス10Xにおいては、外装部材101のうち電極体200の角C1(
図9及び
図10)を覆う位置において、角C1が外装部材101に突き刺さることによる過度な負荷が生じない。上述のように、蓄電デバイス10Xにおいては、実施の形態1のように外装部材101の互いに向き合う面同士がヒートシールされることによって第2封止部120Xが形成されているわけではないためである。
【0207】
また、蓄電デバイス10Xの製造手順は、
図14のフローチャートに示される手順に限定されない。例えば、
図15のフローチャートに示される手順で蓄電デバイス10Xが製造されてもよい。
【0208】
図15は、実施の形態2に従う蓄電デバイス10Xの別の製造手順を示すフローチャートである。
図15に示される工程は、たとえば、蓄電デバイス10Xの製造装置によって行なわれる。製造装置は、電極端子300と蓋体400とが一体となった部材(例えば、
図12,13に示される部材)を電極体200へ取り付ける(ステップS250)。例えば、電極端子300が電極体200へ溶接される。その後、製造装置は、電極体200へ外装部材101を巻き付ける(ステップS260)。製造装置は、外装部材101の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層)同士をヒートシールすることによって第1封止部110を形成するとともに、外装部材101と蓋体400とをヒートシールすることによって第2封止部120Xを形成する(ステップS270)。これによって、蓄電デバイス10Xが完成する。蓄電デバイス10Xは、このような手順によって製造されてもよい。
【0209】
[3.実施の形態3]
電池製造工程の電極体に電解液を浸透させるなどを目的として仮封止状態の蓄電デバイスを所定温度環境で所定時間エージングする工程(以下、エージング工程という)を経ることが一般的であり、エージング工程で電極体200からガスが発生し当該ガスを電池外部に排出することが必要となる。上記実施の形態2に従う蓄電デバイス10Xにおいては、エージング工程で発生したガスを蓄電デバイス10Xの製造の最終段階で抜くための機構が設けられていなかった。本実施の形態3に従う蓄電デバイス10Yにおいては、電極体200から発生したガスを蓄電デバイス10Yの製造の最終段階で抜くための機構が設けられている。なお、以下では実施の形態2と異なる部分を中心に説明し、実施の形態2と共通する部分については説明を省略する。
【0210】
<3-1.蓄電デバイスの構成>
図16は、蓄電デバイス10Yの製造途中において、電極体200に外装部材101Yが巻き付けられた状態を側方から示す図である。
図17は、蓄電デバイス10Yの製造途中において、電極体200に外装部材101Yが巻き付けられ、外装部材101Yに蓋体400が取り付けられた状態を下方から示す図である。
【0211】
図16及び
図17に示されるように、電極体200に外装部材101Yが巻き付けられた状態で、片部150が形成されている。片部150は、電極体200に外装部材101Yが巻き付けられた状態で外装部材101Yの互いに向き合う面同士を接合することによって形成されている。より詳細には、片部150は、外装部材101Yが電極体200に巻き付けられた状態で互いに向き合う面の周縁同士を接合(ヒートシール)することによって形成されている。すなわち、片部150においては、周縁に第1封止部154が形成されている。
【0212】
また、片部150においては、外装部材101Yの互いに向き合う面同士が接合していない空間152が形成されている。辺135の近傍においては、外装部材101Yの互いに向き合う面同士が接合した接合領域151と、外装部材101Yの互いに向き合う面同士が接合していない未接合領域153とが交互に並んでいる。すなわち、片部150においては、辺135に沿って、接合領域151のパターンが形成されている。
【0213】
電極体200から発生したガスは、片部150の一部分を切り取る等して、外装体100Yの封止状態を解除することによって、外装体100Yの外部へ排出される。なお、ここで外装体100Yの外部へ排出されるガスは、必ずしも電極体200から発生したガスに限定されず、空気、水蒸気又は硫化水素等の電極体200から発生したガス以外のガスであってもよい。
【0214】
その後、辺135付近を含む部分を帯状にヒートシールすることによって、再び外装体100Yが封止状態となる。これにより、蓄電デバイス10Yが完成する。完成した蓄電デバイス10Yにおいては、辺135の近傍において、外装部材101Yの互い向き合う面同士の接合力が強い領域と、面同士の接合力が弱い領域とが辺135に沿って交互に並んでいる。換言すると、辺135近傍のヒートシールされた部分においては、薄い部分と厚い部分とが辺135に沿って交互に並んでいる。これは、辺135付近が再度ヒートシールされることによって、未接合領域153は一重シールされることになるが、接合領域151は二重シールされることになるためである。
【0215】
<3-2.蓄電デバイスの製造方法>
図18は、蓄電デバイス10Yの製造手順を示すフローチャートである。
図18に示される工程は、たとえば、蓄電デバイス10Yの製造装置によって行なわれる。
【0216】
製造装置は、電極体200へ外装部材101Yを巻き付ける(ステップS300)。製造装置は、外装部材101Yの互いに向き合う面(熱融着性樹脂層)の周縁同士をヒートシールすることによって第1封止部154を形成する(ステップS310)。製造装置は、辺135の近傍の外装部材101Yの互いに向き合う面同士をヒートシールすることによって接合領域151のパターンを形成する(ステップS320)。
【0217】
製造装置は、ステップS320において出来上がった未完成品に電極体200を収納した状態で両端の開口部の各々に蓋体400を取り付ける(ステップS330)。製造装置は、外装部材101Yと蓋体400とをヒートシールすることによって第2封止部120Xを形成する(ステップS340)。その後、エージング工程を経る。
【0218】
製造装置は、片部150を切り取る等することによってエージング工程で発生したガスのガス抜きを行なう(ステップS350)。製造装置は、片部150の接合領域151を含む部分を帯状にヒートシールするとともに端縁部を除去することによって外装体100Yを再封止する(ステップS360)。その後、片部150が第2面140側に折り曲げられることによって、蓄電デバイス10Yが完成する。
【0219】
<3-3.特徴>
本実施の形態3に従う蓄電デバイス10Yにおいても、面積の小さい第2面140側に第1封止部154を含む片部150が折り曲げられている。したがって、蓄電デバイス10Yによれば、複数の蓄電デバイス10Yを積み重ねた場合に下方の蓄電デバイス10Yに掛かる圧力の分布のムラを抑制することができる。全固体電池に使用される場合には、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされるため、本発明の包装形態が好ましい。
【0220】
[4.実施の形態4]
上記実施の形態2に従う蓄電デバイス10Xにおいては、電極端子300が外部に突出する位置は、蓋体400と外装部材101との間であった。しかしながら、電極端子300が外部に突出する位置は、これに限定されない。なお、以下では実施の形態2と異なる部分を中心に説明し、実施の形態2と共通する部分については説明を省略する。
【0221】
<4-1.蓄電デバイスの構成>
図19は、本実施の形態4に従う蓄電デバイス10XAを模式的に示す平面図である。
図20は、蓄電デバイス10XAを模式的に示す側面図である。蓄電デバイス10XAの外装体100Xは、平面視において、一対の長辺100XA、及び、一対の短辺100XBを含む。外装体100Xは、電極体200に巻き付けられた外装部材101の長辺100XAに沿う開口部の各々に蓋体400を嵌め込むことによって構成されている。蓋体400が嵌め込まれた状態で、外装部材101と蓋体400とをヒートシールすることによって第2封止部120Xが形成されている。蓋体400には、貫通孔(図示略)が形成される。2つの電極端子300は、蓋体400の貫通孔から外装体100Xの外部に突出する。2つの電極端子300は、外装体100Xの長辺100XAに沿う形状である。貫通孔と電極端子300との僅かな隙間は、例えば樹脂によって埋められる。本実施の形態4では、第1封止部110は、一対の短辺100XBのうちの一方側に形成される。
【0222】
蓄電デバイス10XAの厚み方向(矢印UD方向)において、蓋体400のうちの電極端子300が突出する位置は、任意に選択可能である。本実施の形態4では、
図20に示されるように、電極端子300は、蓄電デバイス10XAの厚み方向において、蓋体400の概ね中央から外装体100Xの外部に突出する。蓄電デバイス10XAの奥行方向(矢印FB方向)における電極端子300の長さは、任意に選択可能である。本実施の形態4では、蓄電デバイス10XAの奥行方向(矢印FB方向)における電極端子300の長さは、電極体200の長さと実質的に同じである。
【0223】
<4-2.特徴>
本実施の形態4に従う蓄電デバイス10XAでは、奥行方向の長さが長い長辺100XAに沿うように電極端子300が配置されているため、より大きな電極端子300を用いることができる。このため、高出力の蓄電デバイス10XAを提供できる。
【実施例0224】
以下に実施例及び比較例の蓄電デバイスを示して本実施形態を詳細に説明する。但し、本実施形態は、実施例に限定されるものではない。
【0225】
表1、2に示す各組成(残部はAlおよびその他の不可避不純物)からなるアルミニウム合金の鋳塊を用意した。表1、2に示す条件で均質化処理を施し、次いで仕上がり温度330℃での熱間圧延にて厚さ3mmの板材とした。その後、冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延、最終焼鈍を経て、厚み40μm、幅1200mmのアルミニウム合金箔の試料を作製した。なお、中間焼鈍と最終焼鈍の条件については表1、2に示した。実施例11では、中間焼鈍として、CAL焼鈍を行った。CALは、昇温速度:70℃/秒、加熱温度:420℃、保持時間:0秒、冷却速度:50℃/秒の条件で実施した。表1、2の冷間圧延の項目では、中間焼鈍直前の板厚及び前記板厚までの冷間圧延率を示している。作製したアルミニウム合金箔を含む外装部材に対して以下の試験または測定を行い、その結果を表1~表4に示した。
【0226】
・引張強さ、破断伸び
引張強さ、破断伸びのいずれも引張試験にて測定した。引張試験はJIS Z2241に準拠し、圧延方向に対して0°方向の伸びを測定できるように、JIS5号試験片を試料から採取し、万能引張試験機(島津製作所社製 AGS-X 10kN)で引張り速度2mm/minにて試験を行った。
【0227】
伸びは破断伸びであり、以下の方法で算出した。まず試験前に試験片の長手中央に試験片の垂直方向に2本の線を標点距離である50mm間隔でマークした。試験後にアルミニウム合金箔の破断面をつき合わせてマーク間の距離を測定した。そのマーク間の距離から標点距離(50mm)を引いて伸び量(mm)を算出し、伸び量を標点間距離(50mm)で除して伸び(%)を求めた。
【0228】
・平均結晶粒径
アルミニウム合金箔の表面に対して、20容量%過塩素酸+80容量%エタノール混合溶液を用い、電圧20Vで電解研磨を行った。次いで、バーカー氏液中にて電圧30Vの条件で陽極酸化処理した。処理後の供試材について、光学顕微鏡にて結晶粒を観察した。撮影した写真からJIS G0551で規定された切断法により平均結晶粒径を算出した。
【0229】
・L1(HAGB長さ)/L2(LAGB長さ)
箔表面を電解研磨し、次いで、SEM-EBSD装置にて結晶方位の解析を行い、結晶粒間の方位差が15°以上の大角粒界(HAGB)と、方位差2°以上15°未満の小角粒界(LAGB)を観察した。倍率×500で視野サイズ170×340μmを4視野測定し、視野内の単位面積あたりのHAGBの長さ(L1)とLAGBの長さ(L2)を求め、その比を算出した。算出した比はL1/L2として表3、4に示した。
【0230】
・結晶方位
Copper方位は{112}<111>、R方位は{123}<634>を代表方位とした。それぞれの方位密度は、以下の方法により得た。X線回折法にて、{111}、{200}、{220}の不完全極点図を測定した。その結果を用いて結晶方位分布関数(ODF;Orientation Distribution Function)を求め、Copper方位とR方位の方位密度を得た。
【0231】
・表面分析
箔表面のMg濃度はXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)にて見積もった。最表面から深さ8nmまでの表面部において、ナロースキャン測定で得られたナロースペクトルを波形分離し、各元素の原子濃度を定量した。尚、Mg量の定量ではMg2pスペクトルを用いた。分析条件の詳細は以下の通りである。
測定装置:アルバックファイ社製PHI5000-VersaProbeIII
入射X線:Al Kα 単色化X線、hν=1486.6ev
X線源出力:100W、20kV、5.8mA
パスエネルギー:26eV
ステップ:0.05eV
分析領域(ビーム径):100μm×1.4mm
検出角度:45°
光電子取込角度:45度
測定領域:100μφでX方向に1.4mm
ピークシフト補正:C1sピークにおいて、C-Cのピークが285.0eVとなるように補正
帯電中和:Arイオンと電子線によるデュアルビームで帯電中和
【0232】
・酸化皮膜厚み測定
酸化皮膜厚さはFE-EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)装置にて測定した。元々厚みの分かっている酸化皮膜サンプルにて得られたX線強度の検量線を用いて試料の酸化皮膜厚みを算出した。使用したFE-EPMA装置は日本電子社のJXA-8530Fであった。分析条件は加速電圧10kV、照射電流100nA、ビーム径50μmであった。
【0233】
・アルミニウム合金箔の突き刺し強さ
厚さ40μmのアルミニウム合金箔を含む外装部材に対し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの針を50mm/minの速度で突き刺し、針が箔を貫通するまでの最大荷重(N)を突き刺し強さとして測定した。ここでは突き刺し強さが9.0N以上の場合を耐突き刺し性が良好と判定し、表3、4にて「A」と示した。突き刺し強さが9.0N未満の場合を耐突き刺し性に劣ると判定し、表3、4にて「C」と示した。
【0234】
・電解液に対する腐食性の評価
実施例及び比較例で使用した各アルミニウム合金箔を、長さ45mm×幅15mmの長方形に裁断した。次に、アルミニウム合金箔の表面及び裏面の一方の面に1cmφの露出部が形成されるように、アルミニウム合金箔の表面及び裏面に長さ50mm×幅20mmの長方形のポリエチレンフィルムをアルミニウム合金箔に重ねて熱溶着し取付け被覆して、試験サンプルとした。なお、試験サンプルにおける耐腐食性の評価は、アルミニウム合金箔ALが露出した1cmφの部分で行い、試験サンプルの電解液に浸漬されない端部については、作用極に接続するために露出させた。次に、試験サンプルALを作用極、金属リチウムLi(直径15mm×厚み0.35mmの円盤状)を対極にセットし、電解液(1mol/lのLiPF
6と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネート(容量比1:1:1)の混合液とからなる)に浸漬させた。この状態で、20℃の環境下、電圧0.1Vで1時間印加した後、アルミニウム合金箔の表面を観察した。
図3F(B)のように、表面が腐食したものを評価C、
図3F(A)のように、変化しなかったものを評価Aとし、結果を表3、4に示す。腐食したアルミニウム合金箔表面はリチウムとの化合物が生成し、体積膨張により表面が盛り上がっている様子が観察される。
【0235】
・アルミニウム合金箔の全固体電解質に対する耐腐食性
グローブボックス内で、圧粉成型にて厚さ800μm、φ10mmの固体電解質(Li2S-P2S5(75:25))を作成した。次に、固体電解質の上にインジウム箔(厚さ0.3mm・φ9mm)、リチウム箔(厚さ0.2mm・φ8mm)、インジウム箔(厚さ0.1mm・φ9mm)をインジウム箔(厚み0.1mm)が固体電解質側になるように重ねて箔を置き、拘束して1晩放置した。 その後、拘束を解いて、箔とは反対側の固体電解質に、実施例及び比較例で使用した各アルミニウム合金箔を、φ9mmに打ち抜いて、積層した。得られた積層体を拘束して、リード付きガラスセルに封入した。積層体をグローブボックスから取り出して1時間放置し、安定化させた。この状態で、25℃の環境下、電圧-0.53Vで3時間印加又は10時間印加した後、単位面積当たりの電気量を算出した。電気量が4C/cm2未満であった場合を評価A、4C/cm2であった場合を評価B、4C/cm2超であった場合を評価Cとした。結果を表3、4に示す。
【0236】
・外装部材の追従性評価
上記で得られた各外装部材を長さ(MD)100mm×幅(TD)100mmの正方形に裁断して試験サンプルとした。この試験サンプルを幅方向の中央で熱溶着樹脂層が内側になるように2つ折にして、長さ(MD)100mm×幅(TD)50mmの長方形の2つ折りサンプルを作成した。この2つ折りサンプルを、幅200mm×長さ200mm×厚さ15mmの2枚の金属板の間に、長さ(MD)方向の中央の位置で幅(TD)方向に平行に挟む。挟んだサンプルを180℃左右に往復で折り曲げ、アルミにクラックが入るまでの往復折り返し回数を測定した。クラックはLEDライトの光を当てて、確認した。評価はN=5回行いその平均値を算出した。クラックの発生する回数が10回以上であった場合を評価A、10回未満であった場合を評価Cとした。結果を表3、4に示す。
【0237】
・外装部材の突き刺し強さ
上記で得られた外装部材について、それぞれ、JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により、基材層側から突き刺し強さを測定した。具体的には、23±2℃、相対湿度(50±5)%の測定環境において、中央に15mmの開口部を有する直径115mmの台と押さえ板で試験片を固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50±5mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定した。試験片の数は5個であり、その平均値を求めた。なお、試験片の数が足りず5個測定できない場合は測定可能な数を測定し、その平均値を求める。突き刺し強さの測定装置としては、イマダ社製のZP-50N(フォースゲージ)とMX2-500N(測定スタンド)を用いた。結果を表3、4に示す。突き刺し強さが30N以上であった場合を評価A、30N以下であった場合を評価Cとした。結果を表3、4に示す。
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
<外装部材の製造>
基材層としてポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/接着剤層(2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)、厚さ3μm)/二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)が順に積層された積層フィルムを用意した。次に、基材層の二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成した前記のアルミニウム合金箔(表1、2の組成及び表3、4の特性を有し、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜(クロメート処理によって形成された皮膜であり、クロム量が30mg/m2)を形成したアルミニウム合金箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム合金箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム合金箔上の接着剤層と二軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ40μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ40μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/接着剤層(3μm)/二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)/接着層(40μm)/熱融着性樹脂層(40μm)がこの順に積層された外装部材を得た。
【0243】
なお、外装部材の両面には、それぞれ、滑剤としてエルカ酸アミドを存在させて、滑剤層を形成した。
【0244】
実施例1~15、22~40の蓄電デバイスの外装部材は、それぞれ、少なくとも、基材層、バリア層、及び、熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、バリア層は、Fe:0.2質量%以上2.0質量%以下、Mg:0.1質量%以上5.0質量%以下の組成を満たすアルミニウム合金箔を含む。実施例1~15、22|40の外装部材は、角部等における外装部材の追従性に優れ、かつ、電解液が付着した状態で通電が生じた場合のアルミニウム合金箔の腐食が効果的に抑制され、さらに高い機械的強度を有する。
【0245】
[5.変形例]
以上、実施の形態1-4について説明したが、本発明は、上記実施の形態1-4に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0246】
<5-1>
上記実施の形態1-4において、電極体200には1枚の外装部材が巻き付けられた。しかしながら、電極体200に巻き付けられる外装部材は必ずしも1枚である必要はない。たとえば、電極体200には、2枚以上の外装部材が巻き付けられてもよい。
【0247】
図21は、変形例における蓄電デバイスの製造途中において、電極体200に外装部材101Z1,101Z2が巻き付けられた状態を側方から示す図である。
図21に示されるように、電極体200は、外装部材101Z1,101Z2によって周囲を覆われている。外装部材101Z1,101Z2の対向する面同士が接合することによって第1封止部110Zが形成されている。この例では、各第1封止部110Zが、第1面130Z側ではなく、第2面140Z側に折り曲げられる。このような構成であっても、複数の蓄電デバイスを積み重ねた場合に下方の蓄電デバイスに掛かる圧力の分布のムラを抑制可能という効果を奏することができる。全固体電池に使用される場合には、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされるため、本発明の包装形態が好ましい。なお、この例において、各第1封止部110Zは必ずしも折り曲げられる必要はない。また、この変形例において、各封止部110Zは、電極端子300の一部を挟んだ状態で封止されてもよい。さらに、この変形例では、各第1封止部110Zは、辺135Zに形成される必要はなく、蓄電デバイスの厚み方向において、第2面140Zの概ね中央から外部に突出していてもよい。
【0248】
<5-2>
また、上記実施の形態1-4において、電極体200は、複数の電極210を積層することによって構成された所謂スタック型であったが、電極体200の形態はこれに限定されない。電極体200は、たとえば、セパレータを介して正極及び負極を巻回することによって構成された所謂巻回式であってもよい。また、電極体200は、所謂巻回式の電極体を複数積層することによって構成されてもよい。
【0249】
<5-3>
また、上記実施の形態1-4において、第2面140は第1面130から略直角に下方に延びる平面とされた。しかしながら、第2面140の形態はこれに限定されない。たとえば、電極体200が巻回式の電極体であり外周に平面と曲面とが形成されている場合を考える。ここで、平面の面積が曲面の面積よりも大きく、第1面130が電極体の平面を覆い、第2面140が電極体の曲面を覆うとする。この場合には、第2面140が曲面で構成されていてもよい。この場合には、第1面130から第2面140が下方に延びだす境界部分が辺135ということになる。
【0250】
<5-4>
また、上記実施の形態3において、接合領域151は4箇所に形成された。しかしながら、接合領域151が形成される箇所の数はこれに限定されない。たとえば、接合領域151は、辺135に沿った両端近傍の2箇所や、辺135の中央近傍の1箇所にのみ形成されてもよいし、5箇所以上に形成されてもよい。
【0251】
<5-5>
また、上記実施の形態1において、電極端子300は、第2封止部120に配置されたが、外装体100において、電極端子300が配置される位置は、これに限定されない。たとえば、
図22に示されるように、電極端子300は、第1封止部110に配置することもできる。換言すれば、第1封止部110は、電極端子300を挟んだ状態で封止される。この変形例では、2つの電極端子300の少なくとも一方は、第2面140側に折り曲げられてもよく、第2面140と反対側に折り曲げられてもよく、又は、辺135から外方に突出するように折り曲げられていなくてもよい。この変形例では、電極端子300と第1封止部110とを容易にシールできるため、外装体100の密封性が高められる。また、外装体100に電極体200を容易に収容できる。なお、この変形例では、たとえば、上記実施の形態2のように外装部材101の両端の開口部の各々に蓋体400が嵌め込まれる。蓋体400が嵌め込まれた状態で、外装部材101と蓋体400とをヒートシールすることによって第2封止部120が形成される。
【0252】
<5-6>
また、上記実施の形態2において、蓋体400の構成は、任意に変更可能である。
図23は、蓋体400の変形例の蓋体500を示す斜視図である。蓋体500は、たとえば、板状であり、電極体200(
図9参照)と面する第1面500A、及び、第1面500Aと反対側の面500Bを含む。蓋体500の中央には、第1面500A及び第2面500Bを貫通する孔500Cが形成される。蓋体500を構成する材料は、例えば、樹脂である。この変形例では、電極端子300のうちの蓋体500と接合される部分を含む所定範囲に電極端子300及び蓋体500の双方と接着する接着フィルム530が取り付けられることが好ましい。蓋体500は、第1部分510と第2部分520とに分割された部材によって構成され、第1部分510及び第2部分520が、電極端子300及び接着フィルム530を挟み込むように接合することによって製造してもよい。また、蓋体500は、接着フィルム530が取り付けられた状態の電極端子300に対して蓋体500をインサート成形することによって製造してもよい。また、この変形例では、蓋体500の表面の少なくとも一部に、バリア層が積層されることが好ましい。又は、蓋体500が複数の層を有する場合、任意の層にバリア層を形成してもよい。バリア層を構成する材料は、たとえば、アルミニウムである。なお、この変形例では、接着フィルム530と孔530Cとの間に隙間が生じる場合、この隙間は、たとえば、ホットメルト等の樹脂材料によって埋められることが好ましい。
【0253】
また、この変形例では、
図24に示されるように、外装体100Xは、蓋体500が嵌め込まれた状態で、外装部材101と蓋体500の第2面500Bとを接合することによって第2封止部120Xが形成される。外装部材101と蓋体500の第2面500Bとの接合手段は、たとえば、ヒートシールである。この変形例では、外装部材101が蓋体500のより広い範囲と接合されるため、外装体100Xの密封性が高められる。
【0254】
図25は、上記実施の形態2における蓋体400の別の変形例の蓋体600の正面図である。蓋体600は、表面に金属が露出した部分である金属部610を含み、金属部610と電極体200の電極210とが溶接される。蓋体600は、全体が金属部610のみで構成されてもよく、金属部610が部分的に形成されてもよい。金属部610が部分的に形成される場合、蓋体600は、金属層を含む多層構造の材料によって構成される。蓋体600が金属層を中間層とする多層構造の材料によって構成される場合、金属部610は、金属層が露出するように、金属層以外の層が部分的に除去された部分である。
図25に示される例では、蓋体600の金属部610が電極端子として機能するため、蓋体600と電極210との間のスペースが不要となる。このため、蓄電デバイス10X(
図9参照)を小型に構成できる。
【0255】
図26は、上記実施の形態2における蓋体400の別の変形例の蓋体700の正面図である。蓋体700は、金属材料によって構成される金属部710、及び、金属部710と繋がり、樹脂材料によって構成される非金属部720を含む。金属部710は、電極体200の電極210と溶接される。
図26に示される例では、蓋体700の金属部710が電極端子として機能するため、蓋体700と電極210との間のスペースが不要となる。このため、蓄電デバイス10X(
図9参照)を小型に構成できる。
【0256】
<5-7>
また、上記実施の形態1において第2封止部120は、外装部材101が折り畳まれ、外装部材101の熱融着性樹脂層同士がヒートシールされることによって形成された。しかしながら、第2封止部120の形成方法は、これに限定されない。
図27は、変形例の第2封止部120Yを有する蓄電デバイス10を模式的に示す平面図である。外装部材101は、外装体100の外方に延ばされた張出部101Xを有し、張出部101Xの熱融着性樹脂層同士がヒートシールされることによって第2封止部120Yが形成される。張出部101Xのうちの電極端子300が配置される部分は、張出部101Xの熱融着性樹脂層と電極端子300とがヒートシールされる。この変形例によれば、第2封止部120Yをより強固にヒートシールできるため、外装体100の密封性が高められる。なお、この変形例では、張出部101Xのうちの電極端子300とヒートシールされている部分以外は、必要に応じで切断されてもよい。なお、この変形例は、
図22に示される変形例にも適用できる。
10,10X,10XA,10Y,10Z 蓄電デバイス、100,100X、100Y 外装体、101,101Y,101Z1,101Z2 外装部材、101A 基材層、101C バリア層、101D 熱融着性樹脂層、101X 張出部、110,110Z,154 第1封止部、120,120X,120Y 第2封止部、130,130Z 第1面、135,135Z 辺、140,140Z 第2面、150 片部、151 接合領域、152 空間、153 未接合領域、200 電極体、210 電極、215 集電体、300 電極端子、500A 第1面、500B 第2面、400,500,700 蓋体、610,710 金属部、C1 角。