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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052867
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】加圧分注容器
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024028119
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2022548181の分割
【原出願日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】2001537.6
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2020387.3
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】522314706
【氏名又は名称】ベスパク ユーロップ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】アルソップ ポール
(72)【発明者】
【氏名】ボガイタ ジェイスクラル モハンラル
(72)【発明者】
【氏名】サプスフォード アンドリュー イアン
(57)【要約】
【課題】本発明は、1,1-ジフルオロエタンに基づく推進剤と共に使用することができる加圧分注容器を提供する。
【解決手段】分注されることになる製品のための容器と容器に固定された弁とを備え、容器が1,1-ジフルオロエタン又はその誘導体及び任意的にエタノールを備える推進剤を含有する加圧分注容器である。弁は、弁軸、弁本体、及び1又は2以上のシールを備え、弁軸は、弁本体内で摺動可能であり、1又は2以上のシールは、流体の排出を調整するために弁軸と協働する。弁は、弁を分注容器に対して密封するための密封ガスケットを更に備える。1又は2以上のシールは、(i)エラストマー組成物、好ましくは、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備えるエラストマー組成物から形成される。密封ガスケットは、(ii)イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物から形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注されることになる製品のための容器と該容器に固定された弁とを備え、該容器が1,1-ジフルオロエタン又はその誘導体及び任意的にエタノールを備える推進剤を含有する加圧分注容器であって、
前記弁は、弁軸、弁本体、及び1又は2以上のシールを備え、該弁軸は、該弁本体内で摺動可能であり、該1又は2以上のシールは、流体の排出を調整するために該弁軸と協働し、
前記弁は、該弁を分注容器に対して密封するための密封ガスケットを更に備え、
前記1又は2以上のシールは、(i)エラストマー組成物、好ましくは、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備えるエラストマー組成物から形成され、
前記密封ガスケットは、(ii)イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物から形成される、
ことを特徴とする加圧分注容器。
【請求項2】
前記推進剤は、
(a)HFA152a及び任意的にエタノール、
(b)HFA152a及びHFA134aの組合せ及び任意的にエタノール、又は
(c)HFA152a及びHFA227aeの組合せ及び任意的にエタノール、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の加圧分注容器。
【請求項3】
前記(ii)エラストマー組成物は、その誘導体を含むポリイソブチレン、ポリブテン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムのうちの1又は2以上を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加圧分注容器。
【請求項4】
前記(ii)エラストマー組成物は、ブロモブチルゴムを備えることを特徴とする請求項3に記載の加圧分注容器。
【請求項5】
前記(i)エラストマー組成物は、45から65重量%のエチレン、40から50重量%のプロピレン、及び0.5から9重量%の量のENB(エチリデンノルボルネン)を備えるエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備え、
前記ターポリマーは、10から90のムーニー粘度(ML 1+4,125℃)を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項6】
前記1又は2以上のシール及び/又は前記密封ガスケットは、好ましくは1から10重量%の量の鉱物充填剤及び/又は無機物充填剤を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項7】
前記鉱物充填剤及び/又は無機物充填剤は、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、及び粘土のうちの1又は2以上から選択されることを特徴とする請求項6に記載の加圧分注容器。
【請求項8】
前記1又は2以上のシール及び/又は前記密封ガスケットは、加工助剤、好ましくは、低分子量ポリエチレン、ステアリン酸、又は有機又は非有機ステアリン酸塩を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項9】
前記1又は2以上のシール及び/又は前記密封ガスケットは、硬化剤を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項10】
前記1又は2以上のシール及び/又は前記密封ガスケットは、補強剤、可塑剤、バインダー、安定剤、遅延剤、結合剤、酸化防止剤、潤滑剤、顔料、ワックス、樹脂、オゾン劣化防止剤、1次促進剤、2次促進剤、又は活性剤のうちの1又は2以上を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項11】
前記密封ガスケットは、それが前記弁の非可動部品の間を密封するという点で静的であるとして定められることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項12】
前記1又は2以上のシールは、それが又はそれらが前記弁の可動部品の間を密封するという点で動的であるとして定められることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項13】
前記1又は2以上のシールは、前記弁本体上に装着されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項14】
前記1又は2以上のシールは、前記弁軸上に装着されることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項15】
第1のシールが、前記弁本体上に装着され、第2のシールが、前記弁軸上に装着されることを特徴とする請求項14に記載の加圧分注容器。
【請求項16】
前記弁は、連続噴霧弁であることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項17】
前記弁は、計量チャンバを更に備え、該弁は、絞り弁であることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項18】
前記絞り弁の前記計量チャンバは、恒久的であることを特徴とする請求項17に記載の加圧分注容器。
【請求項19】
前記計量チャンバは、ポリエステル、ナイロン、又はアセタールなど、ステンレス鋼、セラミック、又はガラスなどから選択される1又は2以上の材料から形成された構成要素のような剛性構成要素から全体的に構成されることを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の加圧分注容器。
【請求項20】
任意的に医薬定量エアロゾル吸入器デバイスである医薬分注デバイスであることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧分注容器及びそこに使用するためのエラストマーシール材料に関する。加圧分注容器は、エアロゾルの形態の加圧流体を分注するために使用される場合がある。加圧分注容器は、加圧定量エアロゾル吸入器デバイス(pMDI)のような医薬分注デバイスとして及び医薬を分注するのに適する健康診断デバイスに用途を見出す。
【背景技術】
【0002】
加圧分注容器からの流体が制御方式で弁によって放出される分注装置を提供することは例えばGB1201918から公知であり、弁は、環状であって流体ポートを開閉するために摺動式弁軸と協働するエラストマーシールを含む。FR-A-2,549,568、WO95/02651、及びGB2148912、及びPCT/GB96/01551の各々は、そのような分注装置の更に別の例を開示している。
【0003】
医薬用途のための良好なシール性能に必要な要求される材料特性は、化学的適合性(膨脹)、引張強度、圧縮永久歪み、応力緩和、弾性率、規制遵守、流体及び気体に対する低い浸透性、低レベルの抽出物及び浸出物、及び抽出後の特性安定性を含む。
【0004】
良好な工学特性の要件と同様に、他に製剤の不純物を許容不能レベルまで増大するかもしれず、同じく潜在的に製剤、賦形剤、又は添加剤と反応する低レベルの抽出物及び浸出物を含む衛生特性に関する要件がある。これに関連して、pMDIから分注されることになる製品は、一般的に推進剤溶剤内の溶液又は懸濁液で提供され、これは、吸入療法のための医薬化合物の分注では特に一般的である。pMDIのような分注デバイスに使用される絞り弁は、典型的に金属及び/又は熱可塑性部品とエラストマーゴム部品との混合物から構成される。
【0005】
医薬定量エアロゾル吸入器を密封するための公知のゴム化合物は、合成又は天然ゴムポリマーを加硫する従来の技術に基づくものを含む。
【0006】
分注されることになる製品は、一般的にアルコール又はノンアルコール溶剤内の溶液又は懸濁液で提供され、これは、吸入療法のための医薬化合物の分注では特に一般的である。
【0007】
典型的な装置は、ヒドロフルオロアルカン(HFA)揮発性推進剤、例えば、HFA134aのような従来の推進剤を含み、かつ製品がアルコール担体と共に容器内で容易に可溶性である液相を有する。弁シールに使用するための典型的な材料は、クロロプレンゴムのような合成ゴムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】GB1201918
【特許文献2】FR-A-2,549,568
【特許文献3】WO95/02651
【特許文献4】GB2148912
【特許文献5】PCT/GB96/01551
【特許文献6】WO03/078538 A1
【特許文献7】WO2017/021698 A1
【特許文献8】US6,095,182
【特許文献9】GB2401099
【特許文献10】GB2340477
【特許文献11】EP0803449
【特許文献12】EP0801009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、1,1-ジフルオロエタンに基づく推進剤と共に使用することができる加圧分注容器を提供することである。これに加えて、加圧分注容器は、他の低地球温暖化推進剤又はその組合せと共に使用するのにも適切とすることができる。これに加えて、加圧分注容器は、例えばHFA134a及びHFA227のうちの1又は2以上が1,1-ジフルオロエタンとの組合せで使用される時に、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)又は1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227)のような推進剤と共に使用するのにも適切とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、第1の態様では、本発明は、分注されることになる製品のための容器と容器に固定された弁とを備える加圧分注容器を提供し、容器は、1,1-ジフルオロエタン又はその誘導体と任意的にエタノールのようなアルコールとを備える推進剤を閉じ込め、弁は、弁軸、弁本体、及び1又は2以上のシールを備え、弁軸は、弁本体内で摺動可能であり、1又は2以上のシールは、流体の排出を調整するために弁軸と協働し、弁は、弁を分注容器に対して密封するための密封ガスケットを更に備え、1又は2以上のシールは、(i)エラストマー組成物、好ましくは、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備えるエラストマー組成物から形成され、密封ガスケットは、(ii)イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物から形成される。
【0011】
第1の態様では、推進剤は、好ましくは、HFA152aと任意的にエタノールのようなアルコールとを含む又はそれで構成される。従来のクロロフルオロカーボン推進剤と比較して、HFA152aは、ゼロのオゾン層破壊係数、低地球温暖化係数、及びより短い大気寿命を有すると報告されている。
【0012】
第1の態様では、推進剤は、これに代えて、HFA152a及びHFA134aの組合せと任意的にエタノールのようなアルコールとを含む又はそれで構成される場合がある。第1の態様では、推進剤は、これに代えて、HFA152a及びHFA227eaの組合せと任意的にエタノールのようなアルコールとを含む又はそれで構成される場合がある。
【0013】
以下の図面は、本発明のある一定の態様の理解を助けるために一例として提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】加圧分注容器を単に一例として示す図である。
図2】密封ガスケットがエチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)を備える充填されたキャニスターの安定貯蔵に関連する水分含有量(ppm)データを示す図である。
図3】1次大気ガスケットシールとしてEPDMのみを含有する類似の弁構成と比較してブロモブチル(典型的に、例えば、イソブチレンポリマー)ガスケットを含有する本発明による混成弁構成を用いてより低量の静的漏出を達成することができることを明らかにするデータを示す図である。
図4】1次大気ガスケットシールとしてEPDMのみを含有する類似の弁構成と比較してブロモブチル(典型的に、例えば、イソブチレンポリマー)ガスケットを含有する本発明による混成弁構成を用いてより低量の水分侵入を達成することができることを明らかにするデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
密封ガスケット(静的シールとしても公知)
本発明では、密封ガスケットは、(ii)イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物から形成される。
【0016】
密封ガスケットは、1又は複数の動的シールと呼ばれる場合がある弁軸と協働する1又は2以上のシールとは対照的に静的シールと呼ばれる場合もある。
【0017】
密封ガスケットの目的は、弁と分注容器の間にシールを提供することであり、それにより、分注容器の内容物の脱出、例えば、推進剤の漏出を防止する。ほぼ間違いなく重要なことに、少なくとも、密封ガスケットは、分注されることになる製品、例えば、薬剤又は医薬に悪影響を有する可能性がある容器の中への望ましくない成分、例えば、水分の侵入を防止する。例えば、推進剤懸濁液内の過剰な水分の存在は、薬物粒子凝集を通して微粒子塊の減少に至る可能性があり、活性医薬成分(API)の治療効果を低減する。水分は、API製剤の酸化をもたらす可能性もある。
【0018】
本発明者は、(ii)イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物が、推進剤が1,1-ジフルオロエタン(例えば、HFA152a)又はその誘導体である又はそれを備える時に特に有効なシールを提供することを見出した。理論に束縛されることは望まないが、HFA152aは、HFA134aのような従来の推進剤よりも高い双極子モーメントを有し、従って、より吸湿性であるとすることができ、それにより、容器の中へのより高い水分浸入に至る。驚くべきことに、本発明者は、従来のEPDMポリマーが、1,1-ジフルオロエタンに基づく推進剤に対する水分浸入試験で十分な性能ではなかったことを見出した。推進剤は、多くの場合に、エタノールのようなアルコールと共に提供される。本発明者は、アルコールが存在した時に容器の中への水分浸入の度合いが増したことを更に見出した。本明細書に説明するエラストマー組成物(ii)は、驚くべきことに、推進剤がエタノールのようなアルコールを含む時に有効な水分障壁を提供する。
【0019】
本発明による密封ガスケットはまた、ヘリウムガス浸透性、低い双極子モーメント、温度による浸透性及びクリープ挙動の変化の低さ、推進剤内の溶解に対する抵抗性、及び低い吸水性の観点から本明細書に説明する推進剤に適合すると考えられる。
【0020】
(ii)イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物
(ii)エラストマー組成物は、イソブチレンポリマー又はそのコポリマー、例えば、その誘導体を含むポリイソブチレン、ポリブテン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムのうちの1又は2以上を備える。より好ましくは、エラストマー組成物は、ブチルゴム又はブロモブチルゴムを備える。ブチルゴムは、イソブチレンから及び例えばイソプレン(2-メチルブタ-1,3-ジエン)のような少量のジオレフィンから作られたコポリマーである。
【0021】
典型的に、ブチルゴムは、約97%のイソブチレン及び約3%のイソプレンを備え、それは、塩化アルミニウム触媒を使用して重合することができる。
【0022】
ブロモブチルゴム及びクロロブチルゴムのようなハロゲン化ブチルゴムは、イソプレン-イソブチレンゴムを臭素/塩素で処理することによって作ることができる。本明細書に使用する場合の用語イソブチレンポリマーは、ハロゲン化ポリマーを網羅するように意図することは理解されるであろう。
【0023】
(ii)エラストマー組成物は、(a)イソブチレンポリマー又はそのコポリマーのための架橋剤及び任意的に(b)架橋剤のための促進剤を更に備えることができる。
【0024】
(ii)エラストマー組成物は、イソブチレンポリマー又はそのコポリマーの塩素置換ジエンポリマーのような別のポリマーとの配合物を備えることができることは認められるであろう。例えば、ブチルゴム(例えば、ブロモブチルゴム)及びポリクロロプレンの配合物を使用することができる。ポリクロロプレンの非極性ブチルとの配合は、それが静電荷の散逸を可能にするので有利である。自動弁組立工程中及び/又はプラスチックバッグ内の貯蔵中の静電荷蓄積は、シールを自己付着させて弁組立での問題を呈する可能性がある。
【0025】
存在する場合に、架橋剤(硬化剤としても公知)は、3次元ポリマー網目構造をもたらすための網目形成を提供する又は容易にする。架橋剤は、ポリマー鎖上で官能基と反応することによって作用することができる。架橋剤は、典型的に硫黄又は硫黄含有化合物を備えることになる。架橋剤は、好ましくは、例えば過酸化ジクミルのようないずれの過酸化物硬化剤も実質的に含まない。
【0026】
促進剤は、存在する場合に、好ましくは、置換ジチオ炭酸又はその誘導体から導出されるポリ硫化物化合物を含む。ポリ硫化物化合物は、好ましくは、置換キサントゲン酸又はその誘導体、好ましくは、ROC(S)SH型のものから導出され、ここで、Rは典型的にアルキル基である。ポリ硫化物化合物内の置換基は、典型的にイソプロピル基を備える。ポリ硫化物化合物は、好ましくは、3又は4以上の架橋硫黄原子、より好ましくは、3、4、又は5個の架橋硫黄原子を備える。ポリ硫化物化合物は、好ましくは、窒素、リン、及び金属元素を実質的に含まない。有意には、ポリ硫化物化合物は、ジイソプロピルキサントゲンポリ硫化物を備える又はそれで構成される。
【0027】
エラストマー組成物(ii)は、典型的に、組成物内の促進剤及びポリマーの総重量に基づいて3重量%までの促進剤、より典型的には、組成物内の促進剤及びポリマーの総重量に基づいて1.5重量%までの促進剤、更により典型的には、促進剤及びポリマーの総重量に基づいて1重量%までの促進剤を備える。
【0028】
エラストマー組成物(ii)内の促進剤対架橋剤の重量比は、好ましくは、1:1から3:1、より好ましくは、1:1から2:1の範囲にある。
【0029】
(ii)エラストマー組成物は、1又は2以上の添加剤、加工助剤、架橋剤、促進剤、及び/又は充填剤を更に含有する場合があることは理解されるであろう。それはまた、追加のポリマー又はコポリマーと配合することができる。
【0030】
(ii)エラストマー組成物を備える密封ガスケットは、例えば、圧縮成形及び/又は押出のような従来の形成技術によって生成することができる。
【0031】
架橋反応の開始は、公知の従来の技術のいずれか、例えば、典型的に130から200℃の範囲の少なくとも硬化反応温度に製剤を加熱することによって達成することができる。好ましい工程は、圧縮成形によってゴム化合物ストリップ(典型的に約1mm厚)を形成する段階を伴う。成形温度は、典型的に160-180℃の範囲にある。硬化時間は、典型的に1-10分の範囲にある。成形ストリップは、好ましくは、150℃で典型的に1時間にわたって空気乾燥器内で後硬化される。
【0032】
次に、ストリップは、打ち抜きデバイスを使用してガスケットに作ることができる。
【0033】
本発明による(ii)エラストマー組成物内での本明細書に説明するような促進剤の使用は、架橋工程での遊離硫黄に対する必要性を排除することができる。本明細書に説明するような促進剤は、好ましくは、液体として提供され、好ましくは、ポリマーと混じり合って均一な分散を提供する。そのような促進剤の使用は、充填剤分散を容易にし、個別の可塑剤に対する必要性を取り除くことができることが見出されている。可塑剤の存在は、これらが材料から漏出する傾向があるということで望ましくない。対照的に、本明細書に説明するような促進剤は、架橋網目を形成するか又はその一部であり、従って、薬物媒体の中に浸出しない。本発明によるシール組成物では、促進剤は、典型的に架橋反応中にほぼ完全に消費される。これは、より清浄なゴムをもたらし、抽出物は低減される。典型的に、架橋反応中にニトロソアミンは実質的に発生しない。
【0034】
イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物は、例えば、WO03/078538 A1に説明されている。
【0035】
1又は2以上のシール(1又は複数の動的シールとしても公知)
1又は2以上のシールは、(i)エラストマー組成物、好ましくは、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備えるエラストマー組成物から形成される。
【0036】
1又は2以上のシールは、弁本体内で摺動可能な弁軸と協働し、従って、そのようなシールは、動的シールとも呼ばれ場合がある。これらのシールの機械的特性は、製品及び推進剤の耐久性及び一貫した計量を提供するために重要である。ブチルゴムは、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)と比較して劣った圧縮永久歪み特性を示す場合があり、従って、本明細書に説明するタイプの加圧分注容器で動的シールとして使用する時に、これらを最適でないものにする。対照的に、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備えるエラストマー組成物(i)は、非常に良好な機械的特性を有し、動的シールとしてそれをより有効にする圧縮永久歪みの低減を示している。更に、本発明者は、イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物が、1,1-ジフルオロエタン(例えば、HFA152a)を備える又はそれで構成される推進剤を使用する時に、有効な漏出及び水分シール(すなわち、静的シール)を提供することを見出した。
【0037】
(i)エラストマー組成物に使用するのに適切なエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーは、40から70重量%のエチレン、30から50重量%のプロピレン、及び0.5から9重量%の量のENB(エチリデンノルボルネン)を備える。
【0038】
より好ましくは、ターポリマーは、好ましくは、45から65重量%のエチレン、35から45重量%のプロピレン、及び2から8重量%のENBを備える。より好ましくは、ターポリマーは、50から60重量%のエチレン、38から43重量%のプロピレン、及び3から7重量%のENBを備える。最も好ましくは、ターポリマーは、約50重量%のエチレン、約45重量%のプロピレン、及び約5重量%のENBを備える。
【0039】
エチレン含有量は、ASTM D3900によって決定することができる。プロピレン含有量は、ASTM D3900によって決定することができる。ENB含有量は、ASTM D6047によって決定することができる。
【0040】
ターポリマーは、制約形状触媒システムを使用して製造することができる。例えば、好ましくはシラン基が組み込まれたチタンモノシクロペンタジエニルに基づくもののようなメタロセン制約形状触媒システムがある。
【0041】
ターポリマーは、好ましくは、10から90、より好ましくは、20から80、より好ましくは、30から70、より好ましくは、30から50のムーニー粘度(ML 1+4,125℃)を有する。最も好ましくは、ターポリマーは、約40のムーニー粘度(ML 1+4,125℃)を有する。ムーニー粘度は、ASTM D1646によって決定することができる。ムーニー粘度の単位は、ムーニー単位、MUである。
【0042】
好ましくは、ターポリマーは、0.84から0.90g/cm3、より好ましくは、0.85から0.87g/cm3、より好ましくは、約0.86g/cm3の密度を有する。密度は、ASTM D297によって決定することができる。
【0043】
好ましくは、ターポリマーは、<0.1重量%の灰含有量及び<0.4重量%の総揮発性物質含有量を有する。
【0044】
好ましくは、ターポリマーは、中間分子量分布を有する。
【0045】
(i)エラストマー組成物、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーは、1又は2以上の添加剤、加工助剤、架橋剤、促進剤、及び/又は充填剤を更に含有することができることは理解されるであろう。それはまた、追加のポリマー又はコポリマーと配合することができる。
【0046】
(i)エラストマー組成物、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備えるシールは、例えば、圧縮成形及び/又は押出のような従来の形成技術によって生成することができる。
【0047】
エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備えるエラストマー組成物は、例えば、WO2017/021698A1に説明されている。
【0048】
概要
以下の説明は、他に示されない限り、本発明の全ての態様に適用可能である。
【0049】
ここで本発明を以下に更に説明する。以下の節では、本発明の様々な態様をより詳細に定める。そのように定められた各態様は、その反対が明確に示されない限り、1又は複数のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示されたいずれの特徴も、好ましい又は有利であると示された1又は複数のいずれの他の特徴とも組み合わせることができる。
【0050】
本明細書に使用される場合に用語シールは、以下に限定されないが、静的であるか又は動的であるかに関わらず、ガスケット及びシールを含む定量吸入器のような例えば医薬分注デバイス内に存在するあらゆる密封部材又はその一部を網羅するように意図している。シールは、個別の構成要素として提供することができ、又は弁と一体的に形成することができ、すなわち、共成形することができる。本明細書に使用される場合に用語密封ガスケットは、主として静的シールを指すのに使用される。
【0051】
シール又はガスケットは、充填剤、好ましくは、鉱物及び/又は無機物充填剤を更に含むことができる。鉱物充填剤は、多核芳香族炭化水素化合物の形成を最小にするためにはカーボンブラックよりも好ましい。適した例は、その2又は3以上の組合せを含むケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、及び粘土のいずれかを含む。好ましくは、充填剤は、ケイ酸マグネシウム、タルク、焼成粘土、ナノ粒子粘土、カオリン及び/又はアミノシラン被覆粘土、又はチタン又はジルコン酸カプリング剤で被覆した粘土のうちの1又は2以上である又はそれを備える。充填材は、典型的に、1から65重量%、好ましくは、2から60重量%、より好ましくは、5から55重量%の量でシール材料に存在する。
【0052】
適する場合に、シール又はガスケットは、加工助剤、好ましくは、低分子量ポリエチレン、ステアリン酸、又は有機又は非有機ステアリン酸塩を更に含むことができる。加工助剤、例えば、ステアリン酸は、1重量%までの量でガスケットシールに提供することができる。
【0053】
適する場合に、シール又はガスケットは、硬化又は架橋剤を更に含むことができる。例えば、シール又はガスケットは、過酸化物硬化剤、硫黄、又は硫黄含有化合物を更に含むことができる。しかし、例えば、ジアルキル過酸化物のような過酸化物硬化剤は、その使用が、使用中に材料とアルコールの間の接触から導出される抽出物(例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、N-ニトロソアミン、メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド)の形成を最小にし、従って、硫黄のような他の硬化剤よりも好ましい。硬化又は架橋剤(例えば、ジアルキル過酸化物)は、7重量%までの量でシールに提供することができる。
【0054】
シール又はガスケットは、補強剤、可塑剤、バインダー、安定剤、加工助剤、遅延剤、結合剤、酸化防止剤、潤滑剤、顔料、ワックス、樹脂、オゾン劣化防止剤、1次促進剤、2次促進剤、及び/又は架橋活性剤のうちの1又は2以上を更に備えることができる。これらのうちの1又は2以上は、1重量%までの量でシールに提供することができる。例えば、例えばオクチル化ジフェニルアミンのような抗酸化剤は、0.7重量%までの量で含めることができる。
【0055】
ある一定の構成成分は、1よりも多い効果を有する場合があることは認められるであろう。例えば、酸化亜鉛は、活性剤として及び充填剤として作用とすることができる。同様に、酸化マグネシウムは、酸吸収剤として及び充填剤として作用とすることができる。
【0056】
ほとんどの医薬用途では、硬化反応及び成形工程から導出される表面残留物及び副産物を除去するために、硬化エラストマーを抽出又は洗浄することも必要である。従って、シール又はガスケットは、好ましくは、抽出物及び/又は浸出物を減少又は排除するのに洗浄及び/又は抽出を受ける。例えば、溶媒抽出及び/又は超臨界流体抽出がある。アルコール抽出が好ましい。シール又はガスケットのアルコール抽出(例えば、エタノール抽出)は、好ましくは、シール又はガスケットが製造された後に及び弁が組み立てられる前に行われる。この段階は、抽出物及び/又は浸出物を減少又は排除する。この工程では、シール/ガスケット構成要素は、ガラス円柱の中に装填され、かつエタノールを還流させることによって洗浄される。
【0057】
適する場合に、シール又はガスケットはまた、PBT、ナイロン、及び/又はポリアセタールのような熱可塑性プラスチックと必要に応じて共成形することができる。
【0058】
本発明は、加圧分注容器に関する。例は、医薬定量エアロゾル吸入器デバイス、シリンジ、及び自動注射器を含む。本明細書に説明するシール及びガスケットの好ましい使用は、医薬を分注するための加圧医薬定量エアロゾル吸入器デバイスにある。
【0059】
容器は、例えば、本質的にガス及び水不浸透性であるあらゆる適したプラスチック又は金属又はガラス材料から作ることができる。適したプラスチック材料の例は、ポリエステルである。
【0060】
図1は、加圧分注容器10を単に一例として示している。加圧分注容器10は、本発明の可能な用途の一例として単に示されている。熟練した読者は、本発明の他の用途が可能であることを理解すると考えられ、従って、加圧分注容器10の以下の説明は、限定的であると取るべきではない。
【0061】
加圧分注容器10は、定量で分注されることになる製品12が貯蔵される分注容器11を備えることができる。弁は、分注容器11の開放ネック部に圧着されたフェルール13によって分注容器11を密封するために定位置に保持することができる。弁は、分注容器11に弁を密封するための密封ガスケット14を更に備える。密封ガスケット14は、静的シールとすることができる。
【0062】
弁は、弁軸15、弁本体16、18、及び1又は2以上のシール20、21を備え、弁軸15は、弁本体16、18内で摺動可能であり、1又は2以上のシール20、21は、流体の排出を調整するための弁軸15と協働する。
【0063】
1又は2以上のシール20、21は、内側シール20及び外側シール21を備えることができる。内側シール20及び外側シール21の両方は、弁軸15を有する動的摺動シールを形成することができる。
【0064】
本発明は、一連の絞り弁と共に使用するのに適しており、図1の例は、単に1つの可能な設計である。本発明は、以下に限定されないが、毛細管保持弁及び高速充填高速放出弁を含む絞り弁と共に使用するのに適している。そのような絞り弁の作動は、文献US6,095,182、GB2401099、GB2340477、EP0803449、及びEP0801009により詳細に説明されており、読者は、絞り弁及び一般的にMDIの作動をより完全に理解するためにこれらの文献を参照されたい。
【0065】
本明細書に使用する場合の用語医薬は、人間又は動物に送出又は投与することができるあらゆる医薬、化合物、組成物、薬剤、薬品、又は製品、例えば、医薬、薬物、生物学的及び医薬品を網羅するように意図している。例は、例えば、そのうちの2又は3以上の組合せを含む血管収縮性アミン、酵素、アルカロイド、又はステロイドのような抗アレルギー薬、鎮痛剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン薬、治療のためのタンパク質及びペプチド、鎮咳剤、狭心症製剤、抗生物質、抗炎症製剤、ホルモン、又はスルホンアミドを含む。特に、例は、そのうちの2又は3以上の組合せを含むイソプロテレノール[α-(イソプロピルアミノメチル)プロトカテクイルアルコール]、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、グルカゴン、アドレノクロム、トリプシン、エピネフリン、エフェドリン、ナルコチン、コデイン、アトロピン、ヘパリン、モルヒネ、ジヒドロモルフィノン、エルゴタミン、スコポラミン、メタピリレン、シアノコバラミン、テルブタリン、リミテロール、サルブタモール、フルニソリド、コルヒチン、ピルブテロール、ベクロメタゾン、オルシプレナリン、フェンタニル、及びジアモルヒネ、ストレプトマイシン、ペニシリン、プロカインペニシリン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン及びヒドロキシテトラサイクリン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン及びプレドニゾロン、インスリン、クロモリンナトリウム、及びモメタゾンのような副腎皮質刺激ホルモン及び副腎皮質ホルモンを含む。
【0066】
医薬は、例えば、その2又は3以上の組合せを含む酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、フルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムケート、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、(エンボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、及びトリエチオダイドのような当業技術で従来的な遊離塩基又は1又は2以上の塩のいずれかとして使用することができる。例えば、アルカリ金属、例えば、Na及びK、並びに薬学的に許容される当業技術で公知のアミンのアンモニウム塩及び塩、例えば、グリシン、エチレンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、オクタデシルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1-アミノ-2-プロパノール-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、及び1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2イソプロピルアミノエタノールの陽イオン塩も使用することができる。
【0067】
医薬は、典型的に、吸入に適するものであることになり、かつこの目的のためにあらゆる適した形態で、例えば、粉末として又は溶媒又は担体液体、例えば、エタノール中の溶液又は懸濁液として提供することができる。
【0068】
医薬は、例えば、喘息の治療に適するものである場合がある。例は、その2又は3以上の組合せを含むサルブタモール、ベクロメタゾン、サルメテロール、フルチカゾン、ホルモテロール、テルブタリン、クロモグリク酸ナトリウム、ブデソニド及びフルニソリド、並びに生理学的に許容される塩(例えば、硫酸サルブタモール、キシナホ酸サルメテロール、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、及び硫酸テルブタリン)、溶媒和物及びエステルを含む。例えば、R-サルブタモールのような個々の異性体も使用することができる。認められるように、医薬は、その例がフルチフォームである1又は2以上の活性成分を備えることができ、かつ任意的に適した担体、例えば、液体担体と共に提供することができる。1又は2以上の界面活性剤は、必要に応じて含めることができる。
【0069】
2つの活性成分を含む製剤の更に別の例は、ベクロメタゾン及びホルモテロール、ブデソニド及びホルモテロール、サルメテロール及びフルチカゾン、サルブタモール及び臭化イプラトロピウム、並びにホルモテロール及びモメタゾンを含む。3つの活性成分を含む製剤の例は、ホルモテロール、グリコピロレート、及びモメタゾンと、ベクラメタゾン、グリコピロレート、及びホルモテロールとを含む。
【0070】
本明細書に説明する加圧分注容器では、分注されることになる流体は、典型的に担体液体内の溶液又は懸濁液として液体又は粒子状製品を備える。担体液体は、好ましくは、アルコール、例えば、エタノールを備えることができる。1又は2以上の界面活性剤が存在する場合がある。オレイン酸及び/又はグリセロールの一方又は両方も担体液体に含まれる場合がある。
【0071】
ここで本発明を以下の実施例を参照して以下で更に説明する。
【0072】
実施例
図2は、密封ガスケットがEPDMを備える充填キャニスターの安定貯蔵に関連する水分含有量(ppm)データを示している。時間:T03=3ヶ月、及びT06=6ヶ月である。条件:40/75=40℃の温度及び75%の相対湿度である。
【0073】
40℃/75%RHで3ヶ月及び6ヶ月にわたって貯蔵した後に、水分侵入は、従来のHFA134a推進剤を使用した時に予想されるよりも高い。これは、潜在的にそのより大きい双極子モーメンのためにHFA152aがHFA134aよりも吸湿性であることを示唆すると考えられる。結果は、従来のEPDMポリマーがこの推進剤に対する水分侵入試験では十分に性能を発揮しないことを示している。
【0074】
対照的に、本発明者は、密封ガスケットが本明細書に説明するようにイソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備える(ii)エラストマー組成物を備える場合に水分含有量が類似の条件下で減少することを見出した。本発明による密封ガスケットはまた、低いヘリウムガス浸透性、低い双極子モーメント、温度による浸透性及びクリープ挙動の変化の低さ、推進剤内での溶解に対する抵抗、及び低吸水性の観点から本明細書に説明する推進剤に適合すると考えられる。
【0075】
以下の更に別の例示は、2つの主要な性能要件の6か月の分析に基づいている:
1.静的漏出-主大気ガスケットシールを通じた漏出を最小にすることを通した製品の在庫保存期間にわたるキャニスターでの推進剤蒸気の汚染、及び
2.水分侵入-主大気ガスケットシールを通じた侵入を最小にすることを通した製品の在庫保存期間にわたるキャニスターに浸透する大気水分の防止。
【0076】
全EPDM弁は、代わりの低GWP(地球温暖化係数)推進剤(HFA152a)により、必要なUSP(米国薬局方)漏出仕様を満足することができるが、EPDM/ブロモブチル混成弁オプションが本発明で開発されており、(i)優れた静的漏出性能を提供し、かつ(ii)典型的に、添加剤、例えば、エタノールを含有する推進剤HFA152a及びHFA152a混合物のような吸湿性材料の使用に関連する水分侵入の量を低減する。
【0077】
図3に提供する研究データは、1次大気ガスケットシールとしてEPDMのみを含有する類似の弁構成と比較してブロモブチル(典型的に、例えば、イソブチレンポリマー)ガスケットを含有する本発明による混成弁構成ではより低量の静的漏出を達成することができることを示している。推進剤HFA152aそれ自体及びエタノールと組み合わせたものに関するデータが示されている。
【0078】
図4に提供する研究データは、1次大気ガスケットシールとしてEPDMのみを含有する類似の弁構成と比較してブロモブチル(典型的に、例えば、イソブチレンポリマー)ガスケットを含有する本発明による混成弁構成では、より低量の水分浸入を達成することができることを示している。推進剤HFA152aそれ自体及びエタノールと組み合わせたもののデータが示されている。
【0079】
HFA152aが、pMDI用途に使用された以前の推進剤とは有意に異なる分子(分子サイズ、拡散係数、及び双極子モーメント)であることを用いて、本発明は、HFA推進剤152aに関連付けられた課題の性能特性に対処するためにpMDI弁エラストマーの有利な組合せを解析及び実験を通して識別した。
【0080】
使用した方法
充填:
パックターゲット充填重量:10g(エタノールの有無に関わらず)
エタノール含有パック:15%
【0081】
試験:
漏出試験n=30パック/時点
水分試験n=3パック/時点
【0082】
貯蔵:
全てのパックは、2週間隔離にわたって周囲条件下で、続いて列挙した試験期間にわたって40℃/75%RHで貯蔵された。
漏出及び水分浸入試験は、欧州医薬品庁規格ICHトピックQ 1A(R2)/段階5/新薬物質及び製品の安定性試験/安定性試験に関するガイダンスのための注意:新薬物質及び製品の安定性試験(CPMP/ICH/2736/99)(2003年8月)に従って行われる。
【0083】
漏出:
T0=パックは、2週間周囲貯蔵後に試験された。
T6=パックは、40℃/75RHで6ヶ月後に試験された。初期重量は、24時間安定後に、次に、第2の重量は、7日周囲貯蔵後に取られた。
【0084】
水分侵入:
電量計を使用したカールフィッシャー滴定法。
T3=試験は、40℃/75%RHオーブン内で3ヶ月後に行った。
T6=試験は、40℃/75%RHオーブン内で6ヶ月後に行った。
【符号の説明】
【0085】
10 加圧分注容器
12 製品
14 密封ガスケット
16、18 弁本体
20、21 シール
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注されることになる製品のための容器と該容器に固定された弁とを備え、該容器が1,1-ジフルオロエタン又はその誘導体及び任意的にエタノールを備える推進剤を含有する加圧分注容器であって、
前記弁は、弁軸、弁本体、及び1又は2以上のシールを備え、該弁軸は、該弁本体内で摺動可能であり、該1又は2以上のシールは、流体の排出を調整するために該弁軸と協働し、
前記弁は、該弁を分注容器に対して密封するための密封ガスケットを更に備え、
前記1又は2以上のシールは、(i)エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備えるエラストマー組成物から形成され、
前記密封ガスケットは、(ii)イソブチレンポリマー又はそのコポリマーを備えるエラストマー組成物から形成され
前記エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーは、0.84から0.90g/cm 3 の密度を有する、
ことを特徴とする加圧分注容器。
【請求項2】
前記推進剤は、
(a)HFA152a及び任意的にエタノール、
(b)HFA152a及びHFA134aの組合せ及び任意的にエタノール、又は
(c)HFA152a及びHFA227aeの組合せ及び任意的にエタノール、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の加圧分注容器。
【請求項3】
前記(ii)エラストマー組成物は、その誘導体を含むポリイソブチレン、ポリブテン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムのうちの1又は2以上を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加圧分注容器。
【請求項4】
前記(ii)エラストマー組成物は、ブロモブチルゴムを備えることを特徴とする請求項3に記載の加圧分注容器。
【請求項5】
前記(i)エラストマー組成物は、45から65重量%のエチレン、40から50重量%のプロピレン、及び0.5から9重量%の量のENB(エチリデンノルボルネン)を備えるエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーを備え、
前記ターポリマーは、10から90のムーニー粘度(ML 1+4,125℃)を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項6】
前記1又は2以上のシール及び/又は前記密封ガスケットは、1から10重量%の量の鉱物充填剤及び/又は無機物充填剤を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項7】
前記鉱物充填剤及び/又は無機物充填剤は、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、及び粘土のうちの1又は2以上から選択されることを特徴とする請求項6に記載の加圧分注容器。
【請求項8】
前記1又は2以上のシール及び/又は前記密封ガスケットは、低分子量ポリエチレン、ステアリン酸、又は有機又は非有機ステアリン酸塩を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項9】
前記1又は2以上のシール及び/又は前記密封ガスケットは、硬化剤を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項10】
前記1又は2以上のシール及び/又は前記密封ガスケットは、補強剤、可塑剤、バインダー、安定剤、遅延剤、結合剤、酸化防止剤、潤滑剤、顔料、ワックス、樹脂、オゾン劣化防止剤、1次促進剤、2次促進剤、又は活性剤のうちの1又は2以上を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項11】
前記密封ガスケットは、それが前記弁の非可動部品の間を密封するという点で静的であるとして定められることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項12】
前記1又は2以上のシールは、それが又はそれらが前記弁の可動部品の間を密封するという点で動的であるとして定められることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項13】
前記1又は2以上のシールは、前記弁本体上に装着されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項14】
前記1又は2以上のシールは、前記弁軸上に装着されることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項15】
第1のシールが、前記弁本体上に装着され、第2のシールが、前記弁軸上に装着されることを特徴とする請求項14に記載の加圧分注容器。
【請求項16】
前記弁は、連続噴霧弁であることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項17】
前記弁は、計量チャンバを更に備え、該弁は、絞り弁であることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【請求項18】
前記絞り弁の前記計量チャンバは、恒久的であることを特徴とする請求項17に記載の加圧分注容器。
【請求項19】
前記計量チャンバは、ポリエステル、ナイロン、又はアセタールなど、ステンレス鋼、セラミック、又はガラスなどから選択される1又は2以上の材料から形成された構成要素のような剛性構成要素から全体的に構成されることを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の加圧分注容器。
【請求項20】
任意的に医薬定量エアロゾル吸入器デバイスである医薬分注デバイスであることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の加圧分注容器。
【外国語明細書】