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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052871
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】水性液剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20240405BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240405BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240405BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240405BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K31/498
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/18
A61P27/06
A61K47/12
A61K47/16
A61K47/34
A61K9/08
A61J1/05 313H
A61J1/05 313B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028248
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2021212111の分割
【原出願日】2019-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000199175
【氏名又は名称】千寿製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】家本 涼香
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に関する製剤技術を提供することである。
【解決手段】ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤は、フィルターを通過させても、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、フィルター付き容器に収容したり、製造時にフィルター処理による滅菌工程に供したりしても、水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤が、フィルター付き容器に収容されてなる、医薬製品。
【請求項2】
前記金属塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の医薬製品。
【請求項3】
前記金属塩化物が、塩化ナトリウムである、請求項1又は2に記載の医薬製品。
【請求項4】
前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載の医薬製品。
【請求項5】
前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬製品。
【請求項6】
前記水性液剤が、点眼液である、請求項1~5のいずれかに記載の医薬製品。
【請求項7】
前記フィルターの素材が、ポリエーテルスルホン、又はポリフッ化ビニリデンである、請求項1~6のいずれかに記載の医薬製品。
【請求項8】
緑内障の治療に使用される、請求項1~7のいずれかに記載の医薬製品。
【請求項9】
フィルターを通過させる水性液剤に、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含有させる、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制方法。
【請求項10】
ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤を調製する工程、並びに
前記工程で得られた水性液剤を、フィルターを用いたろ過滅菌工程に供する工程、
を含む、水性液剤の製造方法。
【請求項11】
フィルターを通過させる水性液剤に、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の保存剤とを含有させる、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制方法。
【請求項12】
前記水性液剤が粘稠剤を含まない、請求項11に記載の吸着抑制方法。
【請求項13】
ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の保存剤とを含む水性液剤を調製する工程、並びに
前記工程で得られた水性液剤を、フィルターを用いたろ過滅菌工程に供する工程
を含む、水性液剤の製造方法。
【請求項14】
前記水性液剤が粘稠剤を含まない、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩を含み、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着が抑制されている水性液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼液や洗眼液等の水性液剤には、微生物の繁殖を防止するために、通常、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン等の保存剤が配合されている。このような水性液剤は、通常、製造時にフィルター処理による滅菌工程に供されている。
【0003】
保存剤は、細菌の繁殖を防止できる一方、刺激性や細胞毒性を示すことが報告されている(非特許文献1参照)。そこで、従来、保存剤の悪影響を回避するために、保存剤を含まない水性液剤が開発されている。保存剤を含まない水性液剤を収容するマルチドーズ型容器では、使用時に細菌が容器内部に侵入することを防ぐために容器内部と容器外部を無菌的に隔離する構造を有しており、ノズルにフィルターが設けられている容器(フィルター付き容器)が多用されている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
一方、ブリモニジン及びその塩は、アドレナリンα2受容体作動薬として知られており、眼房水産生抑制と共にぶどう膜強膜流出路を介した眼房水の流出を促進することによって、眼圧を低下させる作用があり、従来、緑内障や高眼圧症の治療に使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本の眼科、第58巻、第10号、945~950頁、1987年
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-51170号公報
【特許文献2】特開2002-80055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤に関する製剤技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤は、フィルターを通過させても、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、フィルター付き容器に収容したり、製造時にフィルター処理による滅菌工程に供したりしても、水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制できることを見出した。
【0009】
更に、本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、特定の保存剤(クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種)とを含む水性液剤は、フィルターを通過させても、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、製造時にフィルター処理による滅菌工程に供しても、水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制できることを見出した。
【0010】
本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の医薬製品を提供する。
項1-1. ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤が、フィルター付き容器に収容されてなる、医薬製品。
項1-2. 前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、項1-1に記載の医薬製品。
項1-3. 前記ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.05~0.2w/v%である、項1-1又は1-2に記載の医薬製品。
項1-4. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1-1~1-3のいずれかに記載の医薬製品。
項1-5. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤である、項1-1~1-4のいずれかに記載の医薬製品。
項1-6. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤であり、ホウ酸緩衝剤の濃度が0.01~10w/v%である、項1-1~1-5のいずれかに記載の医薬製品。
項1-7. 前記緩衝剤が、リン酸緩衝剤であり、リン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項1-1~1-4のいずれかに記載の医薬製品。
項1-8. 前記緩衝剤が、トリス酸緩衝剤であり、トリス酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項1-1~1-4のいずれかに記載の医薬製品。
項1-9. 前記緩衝剤が、クエン酸緩衝剤であり、クエン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項1-1~1-4のいずれかに記載の医薬製品。
項1-10. 前記金属塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1-1~1-9のいずれかに記載の医薬製品。
項1-11. 前記金属塩化物が、塩化ナトリウムである、項1-1~1-10のいずれかに記載の医薬製品。
項1-12. 前記金属塩化物の濃度が、0.01~5w/v%である、項1-1~1-11のいずれかに記載の医薬製品。
項1-13. 前記水性液剤が、保存剤を実質的に含まない、項1-1~1-12のいずれかに記載の医薬製品。
項1-14. 前記水性液剤が、点眼液である、項1-1~1-13のいずれかに記載の医薬製品。
項1-15. 前記フィルターの素材が、ポリエーテルスルホン、又はポリフッ化ビニリデンである、項1-1~1-14のいずれかに記載の医薬製品。
項1-16. 前記フィルター付き容器が、マルチドーズ型容器である、項1-1~1-15のいずれかに記載の医薬製品。
項1-17. 緑内障の治療に使用される、項1-1~1-16のいずれかに記載の医薬製品。
項1-18. ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤が、フィルター付き容器に収容されてなる、医薬製品であって、
ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩であり、
ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.05~0.2w/v%であり、
緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤であり、
水性液剤が、点眼液であり、
フィルターの素材が、ポリエーテルスルホンであり、
フィルター通過後の水性液剤におけるブリモニジン含量をフィルター通過前の水性液剤におけるブリモニジン含量で除して求められる薬物回収率が、95%以上であり、且つ
フィルター付き容器が、マルチドーズ型容器である、医薬製品。
項1-19. ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤が、フィルター付き容器に収容されてなる、医薬製品であって、
ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩であり、
ブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.05~0.2w/v%であり、
緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤であり、
水性液剤が、点眼液であり、
フィルターの素材が、ポリフッ化ビニリデンであり、
フィルター通過後の水性液剤におけるブリモニジン含量をフィルター通過前の水性液剤におけるブリモニジン含量で除して求められる薬物回収率が、90%以上であり、且つ
フィルター付き容器が、マルチドーズ型容器である、医薬製品。
【0012】
また、本発明は、下記に掲げる態様の吸着抑制方法を提供する。
項2-1. フィルターを通過させる水性液剤に、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含有させる、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制方法。
項2-2. 前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、項2-1に記載の吸着抑制方法。
項2-3. 前記水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.05~0.2w/v%である、項2-1又は2-2に記載の吸着抑制方法。
項2-4. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、項2-1~2-3のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-5. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤である、項2-1~2-4のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-6. 前記緩衝剤がホウ酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるホウ酸緩衝剤の濃度が0.01~10w/v%である、項2-1~2-5のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-7. 前記緩衝剤がリン酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるリン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項2-1~2-4のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-8. 前記緩衝剤がトリス酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるトリス酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項2-1~2-4のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-9. 前記緩衝剤がクエン酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるクエン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項2-1~2-4のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-10. 前記金属塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、項2-1~2-9のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-11. 前記金属塩化物が、塩化ナトリウムである、項2-1~2-10のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-12. 前記水性液剤における金属塩化物の濃度が、0.01~5w/v%である、項2-1~2-11のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-13. 前記水性液剤が、保存剤を実質的に含まない、項2-1~2-12のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-14. 前記水性液剤が、点眼液である、項2-1~2-13のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-15. 前記フィルターの素材が、ポリエーテルスルホン、又はポリフッ化ビニリデンである、項2-1~2-14のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-16. 前記フィルターが、フィルター付き容器のフィルターである、項2-1~2-15のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項2-17. 前記フィルターが、ろ過滅菌工程で使用されるフィルターである、項2-1~2-15のいずれかに記載の吸着抑制方法。
【0013】
また、本発明は、下記に掲げる態様の製造方法を提供する。
項3-1. ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤を調製する工程、並びに
前記工程で得られた水性液剤を、フィルターを用いたろ過滅菌工程に供する工程、
を含む、水性液剤の製造方法。
項3-2. 前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、項3-1に記載の製造方法。
項3-3. 前記水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.05~0.2w/v%である、項3-1又は3-2に記載の製造方法。
項3-4. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、項3-1~3-3のいずれかに記載の製造方法。
項3-5. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤である、項3-1~3-4のいずれかに記載の製造方法。
項3-6. 前記緩衝剤がホウ酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるホウ酸緩衝剤の濃度が0.01~10w/v%である、項3-1~3-5のいずれかに記載の製造方法。
項3-7. 前記緩衝剤がリン酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるリン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項3-1~3-4のいずれかに記載の製造方法。
項3-8. 前記緩衝剤がトリス酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるトリス酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項3-1~3-4のいずれかに記載の製造方法。
項3-9. 前記緩衝剤がクエン酸緩衝剤であり、前記水性液剤における前記水性液剤におけるクエン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項3-1~3-4のいずれかに記載の製造方法。
項3-10. 前記金属塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、項3-1~3-9のいずれかに記載の製造方法。
項3-11. 前記金属塩化物が、塩化ナトリウムである、項3-1~3-10のいずれかに記載の製造方法。
項3-12. 前記水性液剤における金属塩化物の濃度が、0.01~5w/v%である、項3-1~3-11のいずれかに記載の製造方法。
項3-13. 前記水性液剤が、保存剤を実質的に含まない、項3-1~3-12のいずれかに記載の製造方法。
項3-14. 前記水性液剤が、点眼液である、項3-1~3-13のいずれかに記載の製造方法。
項3-15. 前記フィルターの素材が、ポリエーテルスルホン、又はポリフッ化ビニリデンである、項3-1~3-14のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
また、本発明は、下記に掲げる態様の吸着抑制方法を提供する。
項4-1. フィルターを通過させる水性液剤に、
ブリモニジン及び/又はその塩と、
緩衝剤と、
クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の保存剤とを含有させる、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制方法。
項4-2. 前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、項4-1に記載の吸着抑制方法。
項4-3. 前記水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.05~0.2w/v%である、項4-1又は4-2に記載の吸着抑制方法。
項4-4. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、項4-1~4-3のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-5. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤である、項4-1~4-4のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-6. 前記緩衝剤がホウ酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるホウ酸緩衝剤の濃度が0.01~10w/v%である、項4-1~4-5のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-7. 前記緩衝剤がリン酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるリン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項4-1~4-4のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-8. 前記緩衝剤がトリス酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるトリス酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項4-1~4-4のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-9. 前記緩衝剤がクエン酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるクエン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項4-1~4-4のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-10. 前記保存剤が、クロルヘキシジングルコン酸塩、塩化ベンザルコニウム、及び塩酸ポリヘキサニドよりなる群から選択される少なくとも1種である、項4-1~4-9のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-11. 前記保存剤がクロルヘキシジン及び/又はその塩であり、前記水性液剤におけるクロルヘキシジン及び/又はその塩の濃度が0.0001~0.1w/v%である、項4-1~4-10のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-12. 前記保存剤が塩化ベンザルコニウムであり、前記水性液剤における塩化ベンザルコニウムの濃度が0.0001~0.1w/v%である、項4-1~4-10のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-13. 前記保存剤がポリヘキサニド及び/又はその塩であり、前記水性液剤におけるポリヘキサニド及び/又はその塩の濃度が0.00001~0.1w/v%である、項4-1~4-10のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-14. 前記水性液剤が粘稠剤を含まない、項4-1~4-13のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-15. 前記水性液剤が、点眼液である、項4-1~4-14のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-16. 前記フィルターの素材が、ポリエーテルスルホン、又はポリフッ化ビニリデンである、項4-1~4-15のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-17. 前記フィルターが、ろ過滅菌工程で使用されるフィルターである、項4-1~4-16のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-18. 前記水性液剤が、製造時にろ過滅菌工程でフィルターを通過させる水性液剤であって、ろ過滅菌工程後にフィルターを備えていないマルチドーズ型容器に収容して提供される、項4-1~4-17のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項4-19. 前記フィルターが、フィルター付き容器のフィルターである、項4-1~4-16のいずれかに記載の吸着抑制方法。
【0015】
また、本発明は、下記に掲げる態様の製造方法を提供する。
項5-1. ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の保存剤とを含む水性液剤を調製する工程、並びに
前記工程で得られた水性液剤を、フィルターを用いたろ過滅菌工程に供する工程、
を含む、水性液剤の製造方法。
項5-2. 前記ブリモニジン及び/又はその塩が、ブリモニジン酒石酸塩である、項5-1に記載の製造方法。
項5-3. 前記水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の濃度が、0.05~0.2w/v%である、項5-1又は5-2に記載の製造方法。
項5-4. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、及びクエン酸緩衝剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、項5-1~5-3のいずれかに記載の製造方法。
項5-5. 前記緩衝剤が、ホウ酸緩衝剤である、項5-1~5-4のいずれかに記載の製造方法。
項5-6. 前記緩衝剤がホウ酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるホウ酸緩衝剤の濃度が0.01~10w/v%である、項5-1~5-5のいずれかに記載の製造方法。
項5-7. 前記緩衝剤がリン酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるリン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項5-1~5-4のいずれかに記載の製造方法。
項5-8. 前記緩衝剤がトリス酸緩衝剤であり、前記水性液剤におけるトリス酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項5-1~5-4のいずれかに記載の製造方法。
項5-9. 前記緩衝剤がクエン酸緩衝剤であり、前記水性液剤における前記水性液剤におけるクエン酸緩衝剤の濃度が0.01~5w/v%である、項5-1~5-4のいずれかに記載の製造方法。
項5-10. 前記保存剤が、クロルヘキシジングルコン酸塩、塩化ベンザルコニウム、及び塩酸ポリヘキサニドよりなる群から選択される少なくとも1種である、項5-1~5-9のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項5-11. 前記保存剤がクロルヘキシジン及び/又はその塩であり、前記水性液剤におけるクロルヘキシジン及び/又はその塩の濃度が0.0001~0.1w/v%である、項5-1~4-10のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項5-12. 前記保存剤が塩化ベンザルコニウムであり、前記水性液剤における塩化ベンザルコニウムの濃度が0.0001~0.1w/v%である、項5-1~5-10のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項5-13. 前記保存剤がポリヘキサニド及び/又はその塩であり、前記水性液剤におけるポリヘキサニド及び/又はその塩の濃度が0.00001~0.1w/v%である、項5-1~5-10のいずれかに記載の吸着抑制方法。
項5-14. 前記水性液剤が粘稠剤を含まない、項5-1~5-13のいずれかに記載の製造方法。
項5-15. 前記水性液剤が、点眼液である、項5-1~5-14のいずれかに記載の製造方法。
項5-16. 前記フィルターの素材が、ポリエーテルスルホン、又はポリフッ化ビニリデンである、項5-1~5-15のいずれかに記載の製造方法。
項5-17. 前記水性液剤が、ろ過滅菌工程後にフィルターを備えていないマルチドーズ型容器に収容して提供される、項5-1~5-16のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤において、緩衝剤、及び金属塩化物を含有させることにより、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、フィルター通過後の水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制することができる。そのため、本発明の一態様では、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤をフィルター付き容器に収容しても、使用時にフィルターを通過して容器外に注出された水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制することができる。本発明の他の一態様では、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤の製造時にフィルター処理による滅菌工程に供しても、ろ過滅菌後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制することができる。
【0017】
また、本発明によれば、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤において、緩衝剤、及び特定の保存剤(クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種)を含有させることにより、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、フィルター通過後の水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制することができる。そのため、本発明の一態様では、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤の製造時にフィルター処理による滅菌工程に供しても、ろ過滅菌後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.定義
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書において、「水性液剤」とは、水を基剤として含み液状を呈する製剤である。
【0020】
本明細書において、「医薬製品」とは、水性液剤が任意の容器に収容されている状態にある製品を指す。
【0021】
本明細書において、「ブリモニジン」とは、アドレナリンα2受容体作動薬として公知の化合物であり、5-ブロモ-N-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)キノキサリン-6-アミンを指す。
【0022】
本明細書において、「緩衝剤」とは、水性液剤の水素イオン濃度(pH)の変動を和らげる作用を持つ化合物又は混合物のことを指す。
【0023】
本明細書において、「金属塩化物」とは、金属イオンと塩化物イオンがイオン結合した化合物のことを指す。
【0024】
本明細書において、「クロルヘキシジン」とは、保存剤として公知の化合物であり、1-[アミノ-[6-[アミノ-[アミノ-(4-クロロフェニル)アミノ-メチリデン]アミノ-メチリデン]アミノヘキシリミノ]メチル]イミノ-N-(4-クロロフェニル)-メタンジアミンを指す。
【0025】
本明細書において、「塩化ベンザルコニウム」とは、保存剤として公知の化合物であり、アルキル(C8~C18)ベンジルジメチルアンモニウムの塩化物を指す。
【0026】
本明細書において、「ポリヘキサニド」とは、保存剤として公知の化合物であり、下記一般式(1)に示される化合物であり、ポリヘキサメチレンビグアニジン(PHMB)とも称されるグアニジン誘導体である。
【化1】
[一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異なって、アミノ基又は下記一般式(2)に示される基である。一般式(1)中、nは、1~500の整数を示す。]
【化2】
【0027】
本明細書において、「保存剤」とは、細菌や真菌に対する十分な殺菌作用を有し、保存効力を有する成分であって、微生物汚染を防止する目的で配合される化合物又は混合物を指す。但し、本発明において、保存剤には、ホウ酸及びその塩は包含されない。
【0028】
本明細書において、「保存剤を実質的に含まない」とは、保存剤の濃度が、保存剤のみでは保存効力を発揮し得ない濃度であることを指し、具体的には、保存剤のみを含む水溶液にした場合、当該水溶液が第十七改正日本薬局方 参考情報「保存効力試験法」においてカテゴリー「IC」で定められた基準に基づいて「適合」となる保存剤の最小濃度よりも少ないことを指す。
【0029】
本明細書において、「フィルター」とは、水性液剤を通過させるが、細菌及び真菌を通過させない多孔性膜を指す。フィルターの細孔径としては、通常5μm以下であればよいが、好ましくは0.1~2.5μm、更に好ましくは0.2~1μmが挙げられる。
【0030】
本明細書において、「フィルター付き容器」とは、水性液剤を収容する容器であって、容器内部と容器外部がフィルターで隔離されており、使用時に容器内部の水性液剤がフィルターを通過して容器外部に注出される構造になっている容器を指す。フィルター付き容器の一態様として、開口部を有する容器本体と、水性液剤を容器外部に注出するための流路が設けられたノズルとを有し、前記容器本体の開口部に前記ノズルが装着されており、当該ノズルの流路を塞ぐようにフィルターが設けられている容器が挙げられる(例えば、特許文献1及び2等)。
【0031】
本明細書において、「マルチドーズ型容器」とは、複数回分の使用量の水性液剤が充填され、繰返し使用される容器を指す。
【0032】
本明細書において、「ユニットドーズ型容器」とは、単回分の使用量の水性液剤が充填され、1回の点眼で使い終わる容器を指す。
【0033】
本明細書において、「ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制方法」とは、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着を抑制することによって、フィルターを通過した水性液剤中でブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制する方法を指す。ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制の効果は、フィルター通過後の水性液剤におけるブリモニジン含量をフィルター通過前の水性液剤におけるブリモニジン含量で除して求められる薬物回収率(算出式:{フィルター通過後の水性液剤におけるブリモニジン含量/フィルター通過前の水性液剤におけるブリモニジン含量}×100)を指標として評価され、金属塩化物(又は保存剤)を含む水性液剤の薬物回収率が、金属塩化物(又は保存剤)を含まないこと以外は前記水性液剤と同じ水性液剤の薬物回収率より高いときは、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制の効果があると言える。本明細書では、「ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制方法」を単に「吸着抑制方法」と表記することもある。
【0034】
2.好ましい実施形態の説明
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
【0035】
3.医薬製品
フィルター付き容器に収容される水性液剤については、容器のフィルターに薬物が吸着すると、容器から注出された水性液剤中の薬物の含量が低下し、所期の効果を奏し得なくなることにつながる。そのため、フィルター付き容器に収容される水性液剤については、薬物がフィルターに吸着しないように設計されることが求められる。
【0036】
本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤をフィルター付き容器に収容した医薬製品について種々検討を行ったところ、容器のフィルターにブリモニジン及び/又はその塩が吸着し、容器から注出される水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の含量が低下することを知見した。そこで、本発明者は、鋭意検討を行ったところ、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤は、フィルター付き容器に収容しても、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、容器から注出される水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制できることを見出した。
【0037】
一つの態様において、本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含み水性液剤が、フィルター付き容器に収容されてなる、医薬製品を提供する。以下、本発明の医薬製品について詳述する。
【0038】
本発明の医薬製品では、水性液剤にブリモニジン及び/又はその塩が含まれる。ブリモニジンの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、酒石酸塩、酢酸塩等の有機酸塩;塩酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。また、ブリモニジン又はその塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。ブリモニジン及びその塩の中でも、好ましくはブリモニジン酒石酸塩が挙げられる。
【0039】
本発明で使用される水性液剤において、ブリモニジン又はその塩のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本発明で使用される水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩の濃度については、特に制限されず、水性液剤の用途、適用対象となる患者の症状の程度、1回当たりの適用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.05~0.2w/v%、好ましくは0.1~0.2w/v%、特に好ましくは0.1w/v%が挙げられる。本明細書において、ブリモニジン及び/又はその塩の濃度は、ブリモニジン酒石酸塩に換算された濃度である。
【0041】
本発明の医薬製品では、更に水性液剤に緩衝剤が含まれる。緩衝剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、アミノ酸緩衝剤等が挙げられる。
【0042】
ホウ酸緩衝剤としては、具体的には、ホウ酸及び/又はその塩が挙げられる。ホウ酸としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、テトラホウ酸等が挙げられる。これらのホウ酸の中でも、好ましくはオルトホウ酸及びテトラホウ酸が挙げられる。これらのホウ酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ホウ酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン等の有機アミン塩等が挙げられる。また、ホウ酸/又はその塩は、ホウ砂等のように、水和物の形態であってもよい。
【0043】
ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸及びその塩の中から、1種を選択して単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ホウ酸及びその塩の中でも、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはホウ酸及びホウ砂の少なくとも1種、更に好ましくはオルトホウ酸及びホウ砂の少なくとも1種が挙げられる。
【0044】
また、ホウ酸緩衝剤の好適な一態様として、ホウ酸とホウ砂を組み合わせが挙げられる。このようにホウ酸とホウ砂を組み合わせて使用することによって、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させることが可能になる。ホウ酸とホウ砂を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、ホウ酸100質量部当たり、ホウ砂が0~100質量部、好ましく20~80質量部、更に好ましくは40~60質量部が挙げられる。
【0045】
ホウ酸緩衝剤の濃度については、緩衝作用の観点から、通常0.01~10w/v%、更に好ましくは0.1~5w/v%、更に好ましくは0.1~2w/v%、特に好ましくは0.1~1w/v%が挙げられる。本明細書において、ホウ酸緩衝剤の濃度は、ホウ酸に換算された濃度である。
【0046】
リン酸緩衝剤としては、具体的には、リン酸及び/又はその塩が挙げられる。リン酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸水素二アルカリ金属塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸二水素アルカリ金属塩;リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等のリン酸三アルカリ金属塩等が挙げられる。また、リン酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよく、例えば、リン酸水素二ナトリウムの場合であれば十二水和物の形態、リン酸二水素ナトリウムの場合であれば二水和物の形態等であってもよい。
【0047】
リン酸緩衝剤として、リン酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。リン酸及びその塩の中でも、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはリン酸塩、更に好ましくはリン酸水素二アルカリ金属塩及びリン酸二水素アルカリ金属塩の少なくとも1種、特に好ましくはリン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムの少なくとも1種が挙げられる。
【0048】
また、リン酸緩衝剤の好適な一態様として、リン酸水素二アルカリ金属塩とリン酸二水素アルカリ金属塩を組み合わせが挙げられる。このようにリン酸水素二アルカリ金属塩とリン酸二水素アルカリ金属塩を組み合わせて使用することによって、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させることが可能になる。リン酸水素二アルカリ金属塩とリン酸二水素アルカリ金属塩を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、リン酸水素二アルカリ金属塩100質量部当たり、リン酸二水素アルカリ金属塩が1~120質量部、好ましく5~80質量部、更に好ましくは10~40質量部が挙げられる。
【0049】
リン酸緩衝剤の濃度については、緩衝作用の観点から、通常0.01~5w/v%、好ましくは0.1~3w/v%、更に好ましくは0.1~2w/v%が挙げられる。本明細書において、リン酸緩衝剤の濃度は、リン酸に換算された濃度である。
【0050】
トリス緩衝剤としては、具体的には、トロメタモール及び/又はその塩が挙げられる。トロメタモールの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、スルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0051】
トリス酸緩衝剤として、トロメタモール及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。トロメタモール及びその塩の中でも、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはトロメタモールが挙げられる。
【0052】
トリス緩衝剤の濃度については、緩衝作用の観点から、通常0.01~5w/v%、好ましくは0.1~3w/v%、更に好ましくは0.1~2w/v%が挙げられる。本明細書において、トリス緩衝剤の濃度は、トロメタモールに換算された濃度である。
【0053】
クエン酸緩衝剤としては、具体的には、クエン酸及び/又はその塩が挙げられる。クエン酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、クエン酸及びその塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。
【0054】
クエン酸緩衝剤として、クエン酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。クエン酸及びその塩の中でも、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはクエン酸が挙げられる。
【0055】
クエン酸緩衝剤の濃度については、緩衝作用の観点から、通常0.01~5w/v%、好ましくは0.05~3.5w/v%、更に好ましくは0.1~1w/v%が挙げられる。本明細書において、クエン酸緩衝剤の濃度は、クエン酸に換算された濃度である。
【0056】
酒石酸緩衝剤としては、具体的には、酒石酸及び/又はその塩が挙げられる。酒石酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、酒石酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。酒石酸緩衝剤として、酒石酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
酢酸緩衝剤としては、具体的には、酢酸及び/又はその塩が挙げられる。酢酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。また、酢酸の塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。酢酸緩衝剤として、酢酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
アミノ酸緩衝剤としては、具体的には、酸性アミノ酸及び/又はそれらの塩が挙げられる。酸性アミノ酸としては、具体的には、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられる。酸性アミノ酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。アミノ酸緩衝剤として、酸性アミノ酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
これらの緩衝剤の中でも、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、クエン酸緩衝剤、更に好ましくはホウ酸緩衝剤が挙げられる。
【0061】
本発明の医薬製品では、更に水性液剤に金属塩化物が含まれる。金属塩化物としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物;塩化マグネシウム、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属の塩化物;塩化亜鉛、塩化鉄等が挙げられる。
【0062】
これらの金属塩化物は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの金属塩化物の中でも、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、より好ましくは塩化ナトリウムが挙げられる。
【0063】
本発明で使用される水性液剤における金属塩化物の濃度としては、通常0.01~5w/v%が挙げられる。ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、本発明で使用される水性液剤における金属塩化物の濃度として、好ましくは0.05~2.5w/v%、より好ましくは0.1~2w/v%、特に好ましくは0.2~1w/v%、更に好ましくは0.4~1w/v%が挙げられる。
【0064】
本発明の医薬製品では、水性液剤がフィルター付き容器に収容され、使用時や保存中に細菌が水性液剤中に侵入することが防止されているため、水性液剤が保存剤を実質的に含まずとも、保存安定性を具備し得る。また、保存剤は刺激性や細胞毒性等の悪影響を及すことがあり、水性液剤が保存剤を実質的に含まない場合には、このような悪影響を回避することができる。そのため、本発明で使用される水性液剤の好適な一態様として、保存剤を実質的に含まないことが挙げられる。
【0065】
保存剤としては、具体的には、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩;ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸及びその塩;メチルパラベン、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラオキシ安息香酸エステル;安息香酸及びその塩;クロルクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ポリドロニウム、チメロサール、クロロブタノール、クロルヘキシジン、ポリヘキサニド、ポリクワトリウム等が該当する。
【0066】
本発明で使用される水性液剤が保存剤を実質的に含まない態様において、許容される保存剤の濃度については、保存の種類等に応じて異なるが、具体的には、0.00001w/v%未満、好ましくは0.000005w/v%以下、特に好ましくは0.000001w/v%以下、更に好ましくは0w/v%が挙げられる。
【0067】
本発明で使用される水性液剤には、前記成分の他に、必要に応じて、等張化剤(金属塩化物以外)、界面活性剤、粘稠剤、キレート剤、清涼化剤、安定化剤、pH調整剤等の添加剤を含有してもよい。
【0068】
等張化剤(金属塩化物以外)としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の金属塩等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
界面活性剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、チロキサポール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オクトキシノール等の非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤;アルキル硫酸塩、N-アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルピリジニウム塩、アルキルアミン塩等の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
粘稠剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類等が挙げられる。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
キレート剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、エデト酸、コハク酸、アスコルビン酸、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、フィチン酸、チオ硫酸、これら塩等が挙げられる。塩の形態としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのキレート剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
清涼化剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、l-メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油等が挙げられる。これらの清涼化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
安定化剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、亜硫酸塩、モノエタノールアミン、シクロデキストリン、デキストラン、アスコルビン酸、タウリン、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。これらの安定化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
pH調整剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、塩酸、酢酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン-アミノカプロン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリが挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
これらの添加剤の濃度は、使用する添加剤の種類や水性液剤に付与すべき特性等に応じて適宜設定すればよい。
【0076】
更に、本発明で使用される水性液剤には、ブリモニジン及び/又はその塩以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、緑内障や高眼圧症に対して治療効果を示す薬理成分が含まれていてもよい。
【0077】
このような薬理成分としては、例えば、タフルプロスト、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン等のプロスタグランジン類;ピロカルピン塩酸塩等の副交感神経刺激薬;ジスチグミン臭化物等の抗コリンエステラーゼ薬;ジピベフリン塩酸塩等の交感神経刺激薬;ベタキソロール塩酸塩等のβ1遮断薬;チモロールマレイン酸塩等のβ遮断薬;ニプラジロール、レボブノロール塩酸塩等のα1・β遮断薬;ブナゾシン塩酸塩等のα1遮断薬等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
これらの薬理成分の濃度は、使用する薬理成分の種類や付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよい。
【0079】
本発明で使用される水性液剤のpHについては、特に制限されないが、例えば、pH6~8、好ましくは7~8、更に好ましくはpH7が挙げられる。
【0080】
本発明で使用される水性液剤の浸透圧比については、特に制限されないが、例えば、0.5~4、好ましくは0.7~1.3、更に好ましくは0.9~1.1が挙げられる。当該浸透圧比は、0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する比率であり、浸透圧は第十七改正日本薬局方に規定されている「浸透圧法(オスモル濃度測定法)」に準じて測定される。
【0081】
本発明で使用される水性液剤の製剤形態については、特に制限されず、水溶液状、乳液状等のいずれであってもよいが、好ましくは水溶液状が挙げられる。
【0082】
本発明で使用される水性液剤は、点眼液、洗眼液等の眼科用製剤等として使用することができる。特に、本発明で使用される水性液剤は、ブリモニジン及び/又はその塩の作用によって、眼圧を低下させることができるので、点眼液として提供され、緑内障又は高眼圧症の治療用途に好適に使用できる。
【0083】
本発明で使用される水性液剤は、その用途に応じて、公知の調製法に従って製造すればよく、例えば、第十七改正日本薬局方 製剤総則に記載された方法を用いて製造することができる。
【0084】
本発明の医薬製品では、水性液剤を収容する容器として、フィルター付き容器を使用する。フィルター付き容器の構造は公知(特許文献1及び2等)であり、本発明では、公知のフィルター付き容器を使用できる。また、フィルター付き容器は、水性液剤の用途に応じて、点眼容器、洗眼容器等であればよい。
【0085】
また、本発明で使用されるフィルター付き容器におけるフィルターの素材については、特に制限されないが、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース混合エステル、ナイロン、ポリアミド等が挙げられる。これらの素材の中でも、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、更に好ましくはポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0086】
本発明で使用されるフィルター付き容器は、フィルターにより細菌の侵入を防止できる機能を備えていることを鑑みれば、マルチドーズ型容器であることが好ましい。
【0087】
本発明の医薬製品は、前記水性液剤を調製してろ過滅菌等の滅菌処理に供した後に、前記フィルター付き容器に充填することにより製造される。
【0088】
本発明の医薬製品においてポリエーテルスルホン製のフィルター付き容器を使用する場合の一態様として、ポリエーテルスルホン製フィルター(例えば、STERIVEX-GP 0.22μm/Merck Millipore(細孔径:0.22μm,高さ:67mm,直径:10cm2,カタログ番号:SVGP01050))通過後の水性液剤(フィルターを通過した最初の0.6g)におけるブリモニジン含量をフィルター通過前の水性液剤におけるブリモニジン含量で除して求められる薬物回収率が95%以上であることが挙げられる。また、本発明の医薬製品においてポリフッ化ビニリデン製のフィルター付き容器を使用する場合の一態様として、ポリフッ化ビニリデン製フィルター(例えば、STERIVEX-GV 0.22μm/Merck Millipore(細孔径:0.22μm,高さ:67mm,直径:10cm2,カタログ番号:SVGV010RS))通過後の水性液剤(フィルターを通過した最初の1.0g)におけるブリモニジン含量をフィルター通過前の水性液剤におけるブリモニジン含量で除して求められる薬物回収率が90%以上であることが挙げられる。
【0089】
4.吸着抑制方法(1)
前述の通り、従来技術では、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤をフィルター付き容器に収容すると、容器のフィルターにブリモニジン及び/又はその塩が吸着するという問題点があるが、このような問題点は、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤の製造において、フィルターを用いたろ過滅菌工程でも生じる。即ち、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤をフィルター付き容器に収容して使用する場合やフィルターを用いたろ過滅菌工程を行う場合に、ブリモニジン及び/又はその塩がフィルターに吸着するという課題がある。
【0090】
これに対して、水性液剤に、ブリモニジン及び/又はその塩と共に、緩衝剤と金属塩化物とを含有させることによって、フィルターを通過させても、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、フィルター通過後の水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制することが可能になる。
【0091】
そこで、一つの態様において、本発明は、フィルターを通過させる水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含有させる、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制方法を提供する。
【0092】
本発明の吸着抑制方法において、使用されるブリモニジン及び/又はその塩、緩衝剤、及び金属塩化物の種類や濃度等については、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。また、本発明の吸着抑制方法において、水性液剤に配合可能な他の成分の種類、水性液剤のpH、浸透圧比、製剤形態等についても、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。
【0093】
本発明で使用されるフィルターは、フィルター付き容器のフィルターであってもよく、また、ろ過滅菌工程で使用されるフィルターであってもよい。即ち、フィルターを通過させる水性液剤は、フィルター付き容器に収容され、使用時に容器のフィルターを通過させて容器外に注出される水性液剤であってもよく、また、水性液剤の製造時のろ過滅菌工程でフィルターを通過させる水性液剤であってもよい。フィルター付き容器の種類やフィルターの素材等につては、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。また、製造時のろ過滅菌工程で使用されるフィルターの素材については、前記「3.医薬製品」の欄に記載のフィルター付き容器におけるフィルターの素材と同様である。
【0094】
本発明の吸着抑制方法において、フィルターを通過させる水性液剤が、フィルター付き容器に収容される場合には、当該水性液剤には、必ずしも保存効力が必要とはされないため、保存剤を実質的に含まないことが好ましい。また、本発明の吸着抑制方法において、フィルターを通過させる水性液剤が、ろ過滅菌工程でフィルターを通過させる水性液剤であって、ろ過滅菌工程後にユニットドーズ型容器に収容して提供する場合でも、当該水性液剤は、必ずしも保存効力が必要とはされないため、保存剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0095】
一方、本発明の吸着抑制方法において、フィルターを通過させる水性液剤が、ろ過滅菌工程でフィルターを通過させる水性液剤であって、ろ過滅菌工程後にフィルターを備えていないマルチドーズ型容器に収容して提供する場合には、当該水性液剤には、所望の保存効力を具備できるように、保存剤が含まれていることが好ましい。保存剤の種類については、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。また、水性液剤に保存剤を含有させる場合、水性液剤中での保存剤の濃度としては、所望の保存効力を備え得る範囲で適宜設定すればよいが、例えば、0.00001~0.01w/v%、好ましくは0.00005~0.01w/v%、更に好ましくは0.001~0.01w/v%が挙げられる。
【0096】
5.水性液剤の製造方法(1)
前述の通り、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤の製造時に、フィルターを用いたろ過滅菌工程を行うと、ブリモニジン及び/又はその塩がフィルターに吸着し、フィルターを通過した水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含量が低下するという課題がある。
【0097】
これに対して、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤を、フィルターを用いたろ過滅菌工程に供することにより、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、ろ過滅菌後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制できる。
【0098】
そこで、一つの態様において、本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤を調製する工程、並びに前記工程で得られた水性液剤を、フィルターを用いたろ過滅菌工程に供する工程を含む、水性液剤の製造方法を提供する。
【0099】
本発明の製造方法において、ブリモニジン及び/又はその塩、緩衝剤、及び金属塩化物の種類や濃度等については、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。また、本発明の製造方法において、水性液剤に配合可能な他の成分の種類、水性液剤のpH、浸透圧比、製剤形態等についても、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。また、本発明の製造方法において、ろ過滅菌工程で使用するフィルターの素材については、前記「3.医薬製品」の欄に記載のフィルター付き容器におけるフィルターの素材と同様である。
【0100】
本発明の製造方法で得られた水性液剤は、フィルター付き容器に収容して提供してもよく、フィルターを備えていないマルチドーズ型容器又はユニットドーズ型容器に収容して提供してもよい。
【0101】
本発明の製造方法で得られた水性液剤をフィルター付き容器又はユニットドーズ型容器に収容して提供する場合であれば、当該水性液剤自体には、保存効力は必ずしもも必要にはならないため、保存剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0102】
一方、本発明の製造方法で得られた水性液剤を、フィルターを備えていないマルチドーズ型容器に収容して提供する場合であれば、当該水性液剤には、所望の保存効力を具備できるように、保存剤が含まれていることが好ましい。保存剤の種類については、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りであり、水性液剤中での保存剤の濃度については、前記「4.吸着抑制方法(1)」の欄に記載の通りである。
【0103】
6.吸着抑制方法(2)
前述の通り、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤をフィルターを用いたろ過滅菌工程を行う場合やフィルター付き容器に収容して使用する場合に、ブリモニジン及び/又はその塩がフィルターに吸着するという課題がある。
【0104】
これに対して、水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩と共に、緩衝剤と、特定の保存剤(クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種)とを含有させることによって、フィルターを通過させても、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、フィルター通過後の水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制することが可能になる。
【0105】
そこで、一つの態様において、本発明は、フィルターを通過させる水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種とを含有させる、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制方法を提供する。
【0106】
本発明で使用される水性液剤には、ブリモニジン及び/又はその塩が含まれる。ブリモニジン及び/又はその塩の種類や濃度等については、前記「3.医薬製品」の場合と同様である。
【0107】
本発明で使用される水性液剤には、緩衝剤が配合される。緩衝剤の種類や濃度等については、前記、前記「3.医薬製品」の場合と同様である。
【0108】
本発明で使用される水性液剤には、更にクロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の保存剤が配合される。
【0109】
本発明で使用されるクロルヘキシジンの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、塩酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、グルコン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。また、クロルヘキシジン又はその塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。クロルヘキシジン及びその塩の中でも、好ましくはクロルヘキシジンの塩、更に好ましくはクロルヘキシジングルコン酸塩が挙げられる。
【0110】
本発明で使用されるポリヘキサニドとしては、具体的には、以下の一般式(1)に示す化合物が挙げられる。
【化3】
【0111】
一般式(1)において、R1及びR2は、同一又は異なって、アミノ基又は下記一般式(2)に示される基である。R1及びR2として、好ましくは、R1がアミノ基であり、且つ
2がアミノ基又は下記一般式(2)に示される基;より好ましくはR1がアミノ基であり、且つR2が下記一般式(2)に示される基が挙げられる。
【化4】
【0112】
一般式(1)において、nは1~500の整数を示す。nとして、好ましくは2~200の整数、より好ましくは4~100の整数、特に好ましくは8~20の整数が挙げられる。
【0113】
また、ポリヘキサニドの塩としては、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、無機酸塩又は有機酸塩が挙げられる。無機酸塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸塩としては、具体的には、酢酸、グルコン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
【0114】
ポリヘキサニド及びその塩の中でも、好ましくはポリヘキサニドの塩、より好ましくはポリヘキサニドの無機酸塩、特に好ましくは塩酸ポリヘキサニドが挙げられる。
【0115】
本発明の吸着抑制方法において、クロルヘキシジン、クロルヘキシジンの塩、塩化ベンザルコニウム、ポリヘキサニド、及びポリヘキサニドの塩の中から1種を使用してもよく、また、これらの中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ブリモニジン及び/又はその塩のフィルターへの吸着抑制効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは、クロルヘキシジンの塩、塩化ベンザルコニウム、ポリヘキサニドの塩、更に好ましくはクロルヘキシジンの塩、ポリヘキサニドの塩が挙げられる。
【0116】
クロルヘキシジン及び/又はその塩を使用する場合、水性液剤中のクロルヘキシジン及び/又はその塩の濃度としては、例えば、0.001~0.01w/v%、好ましくは0.003~0.01w/v%、更に好ましくは0.005~0.01w/v%が挙げられる。本明細書において、クロルヘキシジン及び/又はその塩の濃度は、クロルヘキシジングルコン酸塩に換算された濃度である。
【0117】
塩化ベンザルコニウムを使用する場合、水性液剤中の塩化ベンザルコニウムの濃度としては、例えば、0.001~0.01w/v%、好ましくは0.003~0.01w/v%、更に好ましくは0.005~0.01w/v%が挙げられる。
【0118】
ポリヘキサニド及び/又はその塩を使用する場合、水性液剤中のポリヘキサニド及び/又はその塩の濃度としては、例えば、0.00001~0.01w/v%、好ましくは0.00005~0.01w/v%、更に好ましくは0.001~0.01w/v%が挙げられる。本明細書において、ポリヘキサニド及び/又はその塩の濃度は、塩酸ポリヘキサニドに換算された濃度である。
【0119】
本発明で使用される水性液剤には、更に、金属塩化物が配合されていてもよい。金属塩化物の種類や濃度等については、前記「3.医薬製品」の場合と同様である。
【0120】
本発明で使用される水性液剤において、配合可能な他の成分については、前記「3.医薬製品」の場合と同様であるが、本発明で使用される水性液剤の一実施態様では、粘稠剤が0.05w/v%未満であることが挙げられるが、好ましい一実施態様では、ブリモニジンの吸着抑制効果、ブリモニジンの安定性(水性液剤中でのブリモニジン含量低下抑制効果)、又は水性液剤のろ過性の観点から、粘稠剤が含まれないことが挙げられる。粘稠剤の種類については、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。
【0121】
本発明で使用される水性液剤において、水性液剤のpH、浸透圧比、製剤形態等については、前記「3.医薬製品」の場合と同様である。
【0122】
本発明で使用されるフィルターは、ろ過滅菌工程で使用されるフィルターであってもよく、また、フィルター付き容器のフィルターであってもよい。即ち、フィルターを通過させる水性液剤は、水性液剤の製造時のろ過滅菌工程でフィルターを通過させる水性液剤であってもよく、また、フィルター付き容器に収容され、使用時に容器のフィルターを通過させて容器外に注出される水性液剤であってもよい。製造時のろ過滅菌工程で使用されるフィルターの素材については、前記「3.医薬製品」の欄に記載のフィルター付き容器におけるフィルターの素材と同様である。また、フィルター付き容器の種類やフィルターの素材等については、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。
【0123】
本発明の吸着抑制方法では、使用する水性液剤に特定の保存剤(クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種)が含まれることにより所望の保存効力を具備し得るので、本発明で使用される水性液剤の好適な一形態として、製造時のろ過滅菌工程でフィルターを通過させる水性液剤であって、ろ過滅菌工程後にフィルターを備えていないマルチドーズ型容器に収容して提供されるものが挙げられる。
【0124】
7.水性液剤の製造方法(2)
前述の通り、ブリモニジン及び/又はその塩を含む水性液剤の製造時に、フィルターを用いたろ過滅菌工程を行うと、ブリモニジン及び/又はその塩がフィルターに吸着し、フィルターを通過した水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含量が低下するという課題がある。
【0125】
これに対して、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、特定の保存剤(クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種)とを含む水性液剤を、フィルターを用いたろ過滅菌工程に供することにより、フィルターへのブリモニジン及び/又はその塩の吸着を抑制でき、ろ過滅菌後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含量の低下を抑制できる。
【0126】
そこで、一つの態様において、本発明は、ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種とを含む水性液剤を調製する工程、並びに前記工程で得られた水性液剤を、フィルターを用いたろ過滅菌工程に供する工程を含む、水性液剤の製造方法を提供する。
【0127】
本発明の製造方法において、使用されるブリモニジン及び/又はその塩、及び緩衝剤の種類や濃度等については、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。
【0128】
本発明の製造方法において、使用されるブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩の種類や濃度等については、前記「6.吸着抑制方法(2)」の欄に記載の通りである。
【0129】
本発明の製造方法において、水性液剤には、更に金属塩化物が配合されていてもよい。金属塩化物の種類や濃度等については、前記「3.医薬製品」の場合と同様である。
【0130】
また、本発明の製造方法において、水性液剤に配合可能な他の成分の種類、水性液剤のpH、浸透圧比、製剤形態等についても、前記「3.医薬製品」の欄に記載の通りである。また、本発明の製造方法において、ろ過滅菌工程で使用するフィルターの素材については、前記「3.医薬製品」の欄に記載のフィルター付き容器におけるフィルターの素材と同様である。
【0131】
本発明の製造方法で得られた水性液剤は、フィルター付き容器に収容して提供してもよく、フィルターを備えていないマルチドーズ型容器又はユニットドーズ型容器に収容して提供してもよい。本発明の製造方法で得られた水性液剤には、特定の保存剤(クロルヘキシジン及びその塩、塩化ベンザルコニウム、並びにポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種)が含まれることにより所望の保存効力を具備し得るので、フィルターを備えていないマルチドーズ型容器に収容して提供することが好ましい。
【実施例0132】
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下の試験例において、ホウ酸は、全てオルトホウ酸を使用した。
【0133】
試験例1:フィルターへの薬物吸着抑制の評価(緩衝剤及び金属塩化物が及ぼす影響の検討)
表1に示す組成の水性液剤を調製した。調製後の水性液剤を孔径0.22μmのフィルター(ポリエーテルスルホン膜;PES膜)を用いてろ過し、フィルターを通過した最初のろ液0.6gを回収した。また、別途、調製後の水性液剤を孔径0.22μmのフィルター(ポリフッ化ビニリデン膜;PVDF膜)を用いてろ過し、フィルターを通過した最初のろ液1.0gを回収した。なお、PES膜は、STERIVEX-GP 0.22μm/Merck Millipore(細孔径:0.22μm,高さ:67mm,直径:10cm2,カタログ番号:SVGP01050)を、PVDF膜は、STERIVEX-GV 0.22μm/Merck Millipore(細孔径:0.22μm,高さ:67mm,直径:10cm2,カタログ番号:SVGV010RS)を使用した。
【0134】
ろ過前の水性液剤とろ過後の水性液剤(ろ液)におけるブリモニジン含量を、下記の条件で液体クロマトグラフィー(島津製作所製 高速液体クロマトグラフ:Prominence)による測定を行った。
(測定条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230nm)
カラム:Symmetry C18, 4.6 mm I.D.×150mm, 3.5μm,
Waters社製
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相A:4.3mMリン酸水溶液/メタノール/アセトニトリル(容量比:84/8/8)の混液
移動相B:4.3mMリン酸水溶液/メタノール/アセトニトリル(容量比:40/30/30)の混液
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比率を以下のように変えて直線濃度勾配制御した。
注入後の時間(分) 移動相A(vol%) 移動相B(vol%)
0.0~20.0 100 0
20.0~25.0 100→0 0→100
25.0~30.0 0 100
30.0~30.1 0→100 100→0
30.1~60.0 100 0
流量:1.0mL/min
オートサンプラ内温度:5℃
【0135】
フィルター通過前の水性液剤とフィルター通過後の水性液剤におけるブリモニジン含量から、下記式に従って、フィルター通過後の薬物回収率を算出した。
【数1】
【0136】
結果を表1に示す。ブリモニジン酒石酸塩を含む水性液剤は、緩衝剤及び金属塩化物を含まない場合(比較例1)には、PES膜によるフィルター通過後の薬物回収率が94%であり、PES膜によるろ過によって6%ものブリモニジン酒石酸塩が吸着していた。また、ブリモニジン酒石酸塩及び緩衝剤(ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トロメタモール、又はクエン酸緩衝剤)を含む水性液剤でも、金属塩化物を含まない場合(比較例2、比較例6~8)では、PES膜によるフィルター通過後の薬物回収率は比較例1と同等であった。更に、ブリモニジン酒石酸及びホウ酸緩衝剤と共に、エデト酸ナトリウム又は水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドン)を含む水性液剤でも、金属塩化物を含まない場合(比較例3~5)では、PES膜によるフィルター通過後の薬物回収率は比較例1と同等であった。
【0137】
これに対して、ブリモニジン酒石酸及び緩衝剤(ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トロメタモール、又はクエン酸緩衝剤)と共に、金属塩化物(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウム)を含む水性液剤では、PES膜によるフィルター通過後の薬物回収率は、比較例1に比べて大幅に上昇しており、金属塩化物には、薬物吸着抑制効果があることがわかった。また、実施例3と比較例2、実施例9と比較例6、実施例11と比較例7、及び実施例12と比較例8のそれぞれの対比から明らかなように、緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤を使用した場合に、PES膜によるフィルター通過後の薬物回収率を改善する効果が最も高くなっていた。
【0138】
また、PVDF膜を使用した場合も、PES膜の場合と同様の傾向が認められた。
【0139】
【表1】
【0140】
試験例2:フィルターへの薬物吸着抑制の評価(界面活性剤及び保存剤が及ぼす影響の検討)
表2に示す組成の水性液剤を調製し、前記試験例1と同様の方法で、フィルター通過後の薬物回収率を求めた。
【0141】
結果を表2に示す。ブリモニジン酒石酸及びホウ酸緩衝剤と共に、界面活性剤(ポリソルベート80、POE(60)硬化ヒマシ油、チロキサポール、ポロクサマー407又はモノステアリン酸ポリエチレングリコール(40EO))を含む水性液剤(比較例9~13)では、PES膜及びPVDF膜によるフィルター通過後の薬物回収率は、界面活性剤を含まない水性液剤(比較例1及び2)に比べて同等以下であった。また、ブリモニジン酒石酸及びホウ酸緩衝剤と共に、保存剤として使用されるクロロブタノール又はソルビン酸を含む水性液剤(比較例14及び15)でも、PES膜及びPVDF膜によるフィルター通過後の薬物回収率は、比較例1及び2と同等であった。これに対して、ブリモニジン酒石酸及びホウ酸緩衝剤と共に、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジングルコン酸塩又は塩酸ポリヘキサニドを含む水性液剤(実施例13~15)では、PES膜及びPVDF膜によるフィルター通過後の薬物回収率は、比較例1及び2に比べて向上しており、PES膜及びPVDF膜への薬物吸着抑制の効果が認められた。
【0142】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリモニジン及び/又はその塩と、緩衝剤と、金属塩化物とを含む水性液剤が、フィルター付き容器に収容されてなる、医薬製品。