IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイセルの特許一覧

<>
  • 特開-エアバッグ装置 図1
  • 特開-エアバッグ装置 図2
  • 特開-エアバッグ装置 図3
  • 特開-エアバッグ装置 図4
  • 特開-エアバッグ装置 図5
  • 特開-エアバッグ装置 図6
  • 特開-エアバッグ装置 図7
  • 特開-エアバッグ装置 図8
  • 特開-エアバッグ装置 図9
  • 特開-エアバッグ装置 図10
  • 特開-エアバッグ装置 図11
  • 特開-エアバッグ装置 図12
  • 特開-エアバッグ装置 図13
  • 特開-エアバッグ装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052873
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/261 20110101AFI20240405BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20240405BHJP
   B60N 2/427 20060101ALI20240405BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B60R21/261
B60R21/207
B60N2/427
B60N2/68
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028375
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2019211819の分割
【原出願日】2019-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浮田 信一朗
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 智樹
(72)【発明者】
【氏名】福本 健二
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 征幸
(72)【発明者】
【氏名】勝田 信行
(57)【要約】
【課題】車両用シートの背もたれ部を薄型化することができ、且つ、エアバッグをより迅速に膨張展開させることができるエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置は、車両の乗員が着座する車両用シートの骨格を形成するシートフレームと、車両用シートのうち乗員の背部を支持する背もたれ部に配置され、ガスの供給により展開するエアバッグと、車両用シートのうち乗員の臀部を支持する座面部に配置され、エアバッグへ供給されるガスを発生させるガス発生器と、を備え、シートフレームの一部の部位であって、背もたれ部の骨格を形成するバックフレームの少なくとも一部を含む部位は、ガス発生器により発生したガスをエアバッグへ供給するようにエアバッグに繋がる、流通管として形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が着座する車両用シートの骨格を形成するシートフレームと、
前記車両用シートのうち前記乗員の背部を支持する背もたれ部に配置され、ガスの供給により展開するエアバッグと、
前記車両用シートのうち前記乗員の臀部を支持する座面部に配置され、前記エアバッグへ供給されるガスを発生させるガス発生器と、を備え、
前記ガス発生器は、第1のガス発生器であって、
前記第1のガス発生器に対して前記車両用シートの幅方向に間隔を空けて前記座面部に配置された第2のガス発生器と、を備え、
前記第1のガス発生器及び前記第2のガス発生器は、前記シートフレームのうち前記座面部の骨格を形成するクッションフレームで囲まれた領域内に配置され、且つ、前記クッションフレームのうち前記乗員の臀部の側方に配置されるサイドフレームに沿って取り付けられ、
前記クッションフレームには、前記第1のガス発生器を前記座面部の座面側から覆う第1カバー部と、前記第2のガス発生器を前記座面側から覆う第2カバー部と、が設けられ、
前記第1カバー部及び前記第2カバー部は、前記クッションフレームに取り付けられたクッションに覆われることで、前記乗員の側臀部を前記車両用シートの幅方向の両側から保持する保持部を、前記座面部に形成し、
前記シートフレームの一部の部位であって、前記背もたれ部の骨格を形成するバックフレームの少なくとも一部を含む部位は、前記ガス発生器により発生したガスを前記エアバッグへ供給するように前記エアバッグに繋がる、流通管として形成されている、
エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ガスを前記ガス発生器から前記流通管へ導く導管を更に備え、
前記導管は、前記流通管のうち、前記エアバッグが繋がる部位よりも前記座面部に近い部位に繋がっている、
請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ガスを前記ガス発生器から前記流通管へ導く導管を更に備え、
前記シートフレームは、前記背もたれ部を傾倒させるための前記バックフレームの回動軸を形成する回動軸部を含み、
前記シートフレームの一部の部位であって、前記バックフレームの少なくとも一部と前記回動軸部の少なくとも一部とを含む部位が、前記流通管として形成され、
前記導管は、前記流通管のうち、前記回動軸部の少なくとも一部に繋がっている、
請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記流通管における前記ガスの流路の断面積が、前記導管における前記流路の断面積よりも大きく設定されている、
請求項2又は3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグは、前記ガスの供給により膨張することで前記乗員の胸部を保護する第1膨張部と、前記ガスの供給により膨張することで前記乗員の腰部を保護する第2膨張部と、を含み、
前記流通管において、前記第2膨張部に前記ガスを供給する第2供給口が、前記第1膨張部に前記ガスを供給する第1供給口よりも前記ガスの流れの上流の部位に形成されている、
請求項1から4の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグは、前記ガスの供給により展開することで前記乗員の胸部を保護する胸部用エアバッグであり、
前記エアバッグ装置は、前記ガスの供給により展開することで前記乗員の腰部を保護する腰部用エアバッグを更に備え、
前記流通管は、前記胸部用エアバッグに加え、前記ガス発生器により発生したガスを前記腰部用エアバッグへ供給するように前記腰部用エアバッグにも繋がっており、
前記流通管において、前記腰部用エアバッグが繋がる部位は、前記胸部用エアバッグが繋がる部位よりも前記ガスの流れの上流に位置している、
請求項1から4の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
車両の乗員が着座する車両用シートであって、
エアバッグ装置を備え、
前記エアバッグ装置は、
前記車両用シートの骨格を形成するシートフレームと、
前記車両用シートのうち前記乗員の背部を支持する背もたれ部に配置され、ガスの供給により展開するエアバッグと、
前記車両用シートのうち前記乗員の臀部を支持する座面部に配置され、前記エアバッグへ供給されるガスを発生させるガス発生器と、を備え、
前記シートフレームの一部の部位であって、前記背もたれ部の骨格を形成するバックフレームの少なくとも一部を含む部位は、前記ガス発生器により発生したガスを前記エアバッグへ供給するように前記エアバッグに繋がる、流通管として形成されており、
前記ガス発生器は、第1のガス発生器であって、
前記エアバッグ装置は、前記第1のガス発生器に対して前記車両用シートの幅方向に間隔を空けて前記座面部に配置された第2のガス発生器を更に備え、
前記第1のガス発生器及び前記第2のガス発生器は、前記シートフレームのうち前記座面部の骨格を形成するクッションフレームで囲まれた領域内に配置され、且つ、前記クッションフレームのうち前記乗員の臀部の側方に配置されるサイドフレームに沿って取り付けられ、
前記クッションフレームには、前記第1のガス発生器を前記座面部の座面側から覆う第1カバー部と、前記第2のガス発生器を前記座面側から覆う第2カバー部と、が設けられ、
前記座面部には、前記クッションフレームに取り付けられたクッションに前記第1カバー部と前記第2カバー部とが覆われることで、前記乗員の側臀部を前記車両用シートの幅方向の両側から保持する保持部が形成されている、
車両用シート。
【請求項8】
前記サイドフレームは、前記乗員の臀部の側方において前記車両用シートの奥行方向に延びており、
前記第1のガス発生器及び前記第2のガス発生器は、径方向の寸法よりも軸方向の寸法が長い筒形状を有し、前記第1カバー部及び前記第2カバー部と共に前記サイドフレームが延びる方向に延在するように、取り付けられている、
請求項7に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置、及びエアバッグ装置を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるエアバッグ装置として、側面衝突時に乗員を拘束して保護するサイド(側面衝突保護用)エアバッグ装置が知られている。サイドエアバッグ装置は、通常、車両用シートの背もたれ部(シートバック)に配設されており、ガス発生器(インフレータ)からエアバッグへ作動ガスが供給されることによって、エアバッグが膨張展開するように構成されている。
【0003】
しかしながら、エアバッグ装置を背もたれ部に配設する構造では、背もたれ部の薄型化が困難であった。これに関連して、サイドエアバッグ装置において、背もたれ部にエアバッグを配設し、背もたれ部を傾倒させる際に回動軸となるリクライニングロッド内にガス発生器を配設し、ガス発生器とエアバッグとを導管によって繋げる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-201298号公報
【特許文献2】特開2013-133079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているエアバッグ装置は、中空状のリクライニングロッド内にガス発生器を配設する構造であるため、ガス発生器を配設する位置、範囲等の設計の自由度が低いと考えられる。また、比較的断面積の小さな導管によってガス発生器とエアバッグとを直接繋げる構造であるため、ガス発生器からのガスがエアバッグへ供給されるまでに時間を要し、エアバッグを迅速に膨張展開させることが困難となる虞がある。
【0006】
本願開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両用シートの背もたれ部を薄型化することができ、且つ、エアバッグをより迅速に膨張展開させることができるエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願開示の技術は以下の構成を採用した。すなわち、本願開示の技術は、車両の乗員が着座する車両用シートの骨格を形成するシートフレームと、前記車両用シートのうち前記乗員の背部を支持する背もたれ部に配置され、ガスの供給により展開するエアバッグと、前記車両用シートのうち前記乗員の臀部を支持する座面部に配置され、前記エアバッグへ供給されるガスを発生させるガス発生器と、を備え、前記シートフレームの一部の部位であって、前記背もたれ部の骨格を形成するバックフレームの少なくとも一部を含む部位は、前記ガス発生器により発生したガスを前記エアバッグへ供給するように前記エアバッグに繋がる、流通管として形成されている、エアバッグ装置である。
【0008】
本願開示のエアバッグ装置によると、車両用シートの背もたれ部にガス発生器を配置しない構造とすることで、背もたれ部にエアバッグとガス発生器の両方を配置する従来のエ
アバッグ装置と比較して、背もたれ部を薄型化することができる。ここで、車両用シートの骨格を形成するためのシートフレームは、通常、構造体として必要な強度を確保するために、十分な太さ(断面積)を有している。本願開示のエアバッグ装置は、シートフレームの一部の部位であって、バックフレームの少なくとも一部を含む部位を流通管として形成することで、流通管におけるガスの流路の断面積を大きく確保することができる。これにより、通気抵抗を小さくし、流通管内を流れるガスの流量や流速を大きくすることができる。その結果、エアバッグに速やかにガスを供給することができ、エアバッグを迅速に展開させることができる。
【0009】
また、本願開示のエアバッグ装置は、前記ガスを前記ガス発生器から前記流通管へ導く導管を更に備え、前記導管は、前記流通管のうち、前記エアバッグが繋がる部位よりも前記座面部に近い部位に繋がっていてもよい。
【0010】
これによると、導管は、流通管のうちエアバッグが繋がる部位よりもガス発生器が配置されている座面部に近い部位に繋がることとなる。そのため、ガス発生器と流通管における導管が繋がる部位との距離を短くすることができる。これにより、導管の長さを短くすることができる。これにより、早期に流通管へガスを導くことができ、エアバッグに速やかにガスを供給することができる。その結果、エアバッグをより迅速に展開させることができる。また、導管の長さが短くなるため、シート内における導管の取り回しが容易になり、導管のもつれ等を抑制できる。更に、材料コストの低減やシート自体の軽量化も可能となる。
【0011】
また、前記導管を備えるエアバッグ装置において、前記シートフレームは、前記背もたれ部を傾倒させるための前記バックフレームの回動軸を形成する回動軸部を含み、前記シートフレームの一部の部位であって、前記バックフレームの少なくとも一部と前記回動軸部の少なくとも一部とを含む部位が、前記流通管として形成され、前記導管は、前記流通管のうち、前記回動軸部の少なくとも一部に繋がっていてもよい。
【0012】
これによると、導管は、座面部に配置されたガス発生器とバックフレームの座面部に対する回動の軸となる回動軸部とを繋げることとなる。そのため、ガス発生器と流通管における導管が繋がる部位との距離を短くすることができる。これにより、導管の長さを短くすることができる。これにより、早期に流通管へガスを導くことができ、エアバッグに速やかにガスを供給することができる。その結果、エアバッグをより迅速に展開させることができる。
【0013】
また、本願開示のエアバッグ装置において、前記流通管における前記ガスの流路の断面積が、前記導管における前記流路の断面積よりも大きく設定されていてもよい。
【0014】
これによると、流通管におけるガスの流量や流速を、導管におけるガスの流量や流速よりも大きくすることができる。その結果、より速やかにエアバッグにガスを供給することができ、エアバッグをより迅速に展開させることができる。なお、ここでいう断面積とは、ガスの流れる方向と直交する断面の面積のことを指す。
【0015】
また、本願開示のエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記ガスの供給により膨張することで前記乗員の胸部を保護する第1膨張部と、前記ガスの供給により膨張することで前記乗員の腰部を保護する第2膨張部と、を含み、前記流通管において、前記第2膨張部に前記ガスを供給する第2供給口が、前記第1膨張部に前記ガスを供給する第1供給口よりも前記ガスの流れの上流の部位に形成されていてもよい。
【0016】
これによると、ガス発生器により発生したガスが流通管を流れるとき、第2膨張部への
ガスの供給の方が第1膨張部へのガスの供給よりも早期に開始される。これにより、第2膨張部の方を第1膨張部よりも先に膨張させることができる。このようなエアバッグ装置が作動する場合、先ず、第2膨張部が膨張することで、乗員の腰部が拘束される。次いで、第1膨張部が膨張することで、乗員の胸部が拘束される。腰部から胸部の順で乗員の体を拘束することで、車両の衝突時に乗員の体の振れを好適に抑制し、以て乗員をより好適に保護することができる。
【0017】
本願開示のエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記ガスの供給により展開することで前記乗員の胸部を保護する胸部用エアバッグであり、前記エアバッグ装置は、前記ガスの供給により展開することで前記乗員の腰部を保護する腰部用エアバッグを更に備え、前記流通管は、前記胸部用エアバッグに加え、前記ガス発生器により発生したガスを前記腰部用エアバッグへ供給するように前記腰部用エアバッグに繋がっており、前記流通管において、前記腰部用エアバッグが繋がる部位は、前記胸部用エアバッグが繋がる部位よりも前記ガスの流れの上流に位置していてもよい。
【0018】
これによると、ガス発生器により発生したガスが流通管を流れるとき、腰部用エアバッグへのガスの供給の方が胸部用エアバッグへのガスの供給よりも早期に開始される。これにより、腰部用エアバッグの方を胸部用エアバッグよりも先に展開させることができる。このエアバッグ装置では、腰部用エアバッグは胸部用エアバッグとは別個に設けられる。このようなエアバッグ装置が作動する場合、先ず、腰部用エアバッグが展開することで、乗員の腰部が拘束される。次いで、胸部用エアバッグが展開することで、乗員の胸部が拘束される。腰部から胸部の順で乗員の体を拘束することで、車両の衝突時に乗員の体の振れを好適に抑制し、以て乗員をより好適に保護することができる。また、胸部の保護と腰部の保護とを別個のエアバッグにより実現することから、乗員の胸部に対応する位置と腰部に対応する位置にそれぞれエアバッグを設置すれば足りる。そのため、エアバッグを小型化することができ、必要なガス量も少なくて済む。その結果、エアバッグ装置全体を小型化することができる。
【0019】
また、本願開示の技術は、上述までの何れかのエアバッグ装置を備える車両用シートとしても特定することができる。即ち、本願開示の車両用シートにおいて、前記ガス発生器は、第1のガス発生器であって、前記エアバッグ装置は、前記第1のガス発生器に対して前記車両用シートの幅方向に間隔を空けて前記座面部に配置された第2のガス発生器を更に備え、前記第1のガス発生器及び前記第2のガス発生器は、前記シートフレームのうち前記座面部の骨格を形成するクッションフレームで囲まれた領域内に配置され、且つ、前記クッションフレームのうち前記乗員の臀部の側方に配置されるサイドフレームに沿って取り付けられ、前記クッションフレームには、前記第1のガス発生器を前記座面部の座面側から覆う第1カバー部と、前記第2のガス発生器を前記座面側から覆う第2カバー部と、が設けられ、前記座面部には、前記クッションフレームに取り付けられたクッションに前記第1カバー部と前記第2カバー部とが覆われることで、前記乗員の側臀部を前記車両用シートの幅方向の両側から保持する保持部が形成されていてもよい。
【0020】
本願開示の車両用シートによると、第1のガス発生器及び第2のガス発生器をサイドフレームに沿って取り付け、これらを第1カバー部及び第2カバー部によって覆うことで保持部を形成することから、乗員の側臀部を保持部によって幅方向の両側から保持することができる。その結果、車両用シートのホールド性を高めることができる。
【0021】
また、本願開示の車両用シートにおいて、前記サイドフレームは、前記乗員の臀部の側方において前記車両用シートの奥行方向に延びており、前記第1のガス発生器及び前記第2のガス発生器は、径方向の寸法よりも軸方向の寸法が長い筒形状を有し、前記第1カバー部及び前記第2カバー部と共に前記サイドフレームが延びる方向に延在するように、取
り付けられていてもよい。
【0022】
これによると、保持部を奥行方向に長くすることができる。そのため、乗員の側臀部における、保持部によって保持される範囲を広くすることができる。その結果、車両用シートのホールド性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本願開示に係る技術によれば、車両用シートの背もたれ部を薄型化することができ、且つ、エアバッグをより迅速に膨張展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態1に係るエアバッグ装置を備えた車両用シートの斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るエアバッグ装置の斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るエアバッグの概略構成図である。
図4図4は、実施形態1に係る流通管を説明するための概略構成図である。
図5図5は、実施形態1に係るエアバッグ装置の動作を説明するための概略構成図である。
図6図6は、実施形態1の変形例1に係るエアバッグ装置の斜視図である。
図7図7は、実施形態1の変形例2に係るエアバッグ装置の斜視図である。
図8図8は、実施形態1の変形例3に係るエアバッグ装置の斜視図である。
図9図9は、実施形態1の変形例4に係るエアバッグ装置の斜視図である。
図10図10は、実施形態1の変形例5に係る流通管を説明するための概略構成図である。
図11図11は、実施形態1の変形例5に係るエアバッグ装置の動作を説明するための概略構成図である。
図12図12は、実施形態1の変形例6に係る流通管を説明するための概略構成図である。
図13図13は、実施形態2に係るエアバッグ装置を備えた車両用シートの概略構成図である。
図14図14は、実施形態2に係るエアバッグ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して本願開示に係るエアバッグ装置の実施形態について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0026】
<実施形態1>
実施形態1として、車両が備えるエアバッグ装置について説明する。図1は、実施形態1に係るエアバッグ装置を備えた車両用シートS10の斜視図である。車両用シートS10は、車両の乗員が着座するものである。なお、本明細書において、車両用シートS10の前後方向(奥行方向)、左右方向(幅方向)、上下方向(高さ方向)の各方向は、車両用シートS10に着座した乗員(着座者)から見た、前後、左右、上下の各方向を基準として説明する。
【0027】
[全体構成]
図1に示すように、車両用シートS10は、着座する乗員の体の各部に対応して、乗員の臀部を支持するシートクッション(座面部)S1と、乗員の背部を支持するシートバッ
ク(背もたれ部)S2と、乗員の頭部を支持するヘッドレストS3と、を備える。シートクッションS1は、乗員が着座する座面S11を有する。シートバックS2は、シートクッションS1の後端部に傾倒可能に接続されている。ヘッドレストS3は、シートバックS2の上端部に上下動可能に接続されている。
【0028】
図1に示す符号10は、車両用シートS10の骨格を形成するシートフレームである。シートフレーム10は、本実施形態においては金属材料によって形成されている。符号P10は、シートフレーム10を覆うパッドである。パッドP10は、例えばウレタンフォーム等によって形成されている。符号U10は、車両用シートS10の外面を形成する表皮材である。表皮材U10は、例えば布地や皮革等といった適宜の材料から形成されている。シートフレーム10がパッドP10に覆われ、更にパッドP10が表皮材U10に覆われることで、車両用シートS10が形成されている。
【0029】
パッドP10は、シートクッションS1に設けられるクッションパッドP1とシートバックS2に設けられるバックパッドP2とを含んでいる。また、表皮材U10は、シートクッションS1に設けられてクッションパッドP1を覆う表皮材U1とシートバックS2に設けられてバックパッドP2を覆う表皮材U2を含んでいる。クッションパッドP1と表皮材U1とによって、クッションC1が形成されている。
【0030】
本実施形態に係る車両用シートS10は、車両の衝突時にエアバッグを膨張展開させて乗員を拘束し、保護するエアバッグ装置を備える。図2は、本実施形態に係るエアバッグ装置100の斜視図である。図2に示すように、エアバッグ装置100は、シートフレーム10とエアバッグ20とガス発生器30と導管40とを備える。エアバッグ20は、胸部用のエアバッグであり、シートバックS2に配置され、ガスの供給により展開することで、乗員の胸部を保護する。但し、本願開示の技術に係るエアバッグは、胸部用のものに限定されない。ガス発生器30は、シートクッションS1に配置され、エアバッグ20へ供給されるガスを発生させる。詳細については後述するが、図2に示すように、シートフレーム10の一部の部位は、ガス発生器30により発生したガスをエアバッグ20へ供給するようにエアバッグに繋がる、流通管X1として形成されている。そして、導管40は、ガス発生器30により発生したガスを流通管X1に導くように、ガス発生器30と流通管X1とを繋いでいる。以下、エアバッグ装置100の各構成について説明する。
【0031】
[シートフレーム]
図2に示すように、シートフレーム10は、クッションフレーム1とバックフレーム2と第1連結フレーム3Rと第2連結フレーム3Lとリクライニングロッド(回動軸部)4と、を含む。
【0032】
クッションフレーム1は、シートクッションS1の骨格を形成するフレームである。クッションフレーム1は、フロントフレーム11と第1クッションサイドフレーム12Rと第2クッションサイドフレーム12Lとリアフレーム13とを含む。フロントフレーム11は、左右方向に延び、クッションフレーム1の前端を形成する。第1クッションサイドフレーム12Rは、フロントフレーム11の右端部から後方に延び、クッションフレーム1の右側端を形成する。第2クッションサイドフレーム12Lは、フロントフレーム11の左端部から後方に延び、クッションフレーム1の左側端を形成する。第1クッションサイドフレーム12R及び第2クッションサイドフレーム12Lは、車両用シートS10に着座した乗員の臀部の側方に位置するように、シートフレーム10に配置されている。より詳細には、第1クッションサイドフレーム12Rと第2クッションサイドフレーム12Lとの間に乗員の臀部が位置するようになっている。フロントフレーム11と第1クッションサイドフレーム12Rと第2クッションサイドフレーム12Lとは、中空形状を有する金属製のパイプ材をU字状に屈曲することで、一体の管状に形成されている。本実施形
態において、フロントフレーム11、第1クッションサイドフレーム12R、及び第2クッションサイドフレーム12Lは、円筒断面を有しているが、これらの断面形状は特に限定されない。リアフレーム13は、フロントフレーム11よりも後方に設けられ、左右方向に延びて第1クッションサイドフレーム12Rと第2クッションサイドフレーム12Lとを連結する。リアフレーム13は、例えば、板金によって形成され、右端部が第1クッションサイドフレーム12Rに溶接などによって接続され、左端部が第2クッションサイドフレーム12Lに溶接などによって接続されている。リアフレーム13は、ガス発生器30を支持する支持部材としても機能する。なお、以下の説明において第1クッションサイドフレーム12Rと第2クッションサイドフレーム12Lとを区別せずに説明する場合には、単にクッションサイドフレーム12と称する。ここで、図2に示すように、クッションフレーム1によって囲まれる領域を第1領域A1とする。第1領域A1は、詳細には、クッションフレーム1においてシートクッションS1の骨格の外形を形成する部位であるフロントフレーム11、第1クッションサイドフレーム12R、及び第2クッションサイドフレーム12Lによって囲まれる領域である。
【0033】
なお、クッションフレーム1には、車両用シートS10に着座する着座者を支持するためのスプリング、ワイヤー等といった支持部材(図示せず)が、例えば第1クッションサイドフレーム12Rと第2クッションサイドフレーム12Lとの間に架け渡され、この支持部材上にクッションパッドP1が載置されていてもよい。
【0034】
バックフレーム2は、シートバックS2の骨格を形成するフレームであり、中空形状を有する金属製のパイプ材をU字状に屈曲することで管状に形成されている。バックフレーム2は、アッパーフレーム21と第1バックサイドフレーム22Rと第2バックサイドフレーム22Lとを含む。アッパーフレーム21は、左右方向に延び、バックフレーム2の上端を形成する。なお、アッパーフレーム21には、ヘッドレストS3のピラー(図示せず)を差し込んで取り付けるためのブラケット(図示せず)が溶接等によって取り付けられている。第1バックサイドフレーム22Rは、アッパーフレーム21の右端部から下方(即ち、シートクッションS1側)に延び、バックフレーム2の右側端を形成する。第2バックサイドフレーム22Lは、アッパーフレーム21の左端部から下方(即ち、シートクッションS1側)に延び、バックフレーム2の左側端を形成する。第1バックサイドフレーム22R及び第2バックサイドフレーム22Lは、車両用シートS10に着座した乗員の背部の側方に位置するように、車両用シートS10に配置されている。より詳細には、第1バックサイドフレーム22Rと第2バックサイドフレーム22Lとの間に乗員の背部が位置するようになっている。本実施形態におけるバックフレーム2は、円筒断面を有しているが、これらの断面形状は特に限定されない。なお、以下の説明において第1バックサイドフレーム22Rと第2バックサイドフレーム22Lとを区別せずに説明する場合には、単にバックサイドフレーム22と称する。図2に示すように、バックサイドフレーム22の一部は、流通管X1として形成されており、車両用シートS10の骨格としての機能の他にも、ガスの流路としての機能も兼ねている。流通管X1の詳細については後述する。ここで、図2に示すように、バックフレーム2によって囲まれる領域を第2領域A2とする。第2領域A2は、詳細には、バックフレーム2においてシートバックS2の骨格の外形を形成する部位であるアッパーフレーム21、第1バックサイドフレーム22R、及び第2バックサイドフレーム22Lによって囲まれる領域である。
【0035】
第1連結フレーム3R及び第2連結フレーム3Lは、クッションフレーム1とバックフレーム2とを連結するための部材である。第1連結フレーム3Rと第2連結フレーム3Lとは、左右に離間して設けられている。以下、第1連結フレーム3Rと第2連結フレーム3Lとを区別せずに説明する場合には、単に連結フレーム3と称する。連結フレーム3は、クッションフレーム1のクッションサイドフレーム12の後端部に接続されて後方に延びるクッション側連結フレーム31と、バックフレーム2のバックサイドフレーム22の
下端部に接続されて下方に延びるバック側連結フレーム32とを含む。クッション側連結フレーム31は、例えば、板金によって形成されており、溶接などによってクッションサイドフレーム12と接続されている。同様にバック側連結フレーム32は、例えば、板金によって形成されており、溶接などによってバックサイドフレーム22と接続されている。第1連結フレーム3Rのクッション側連結フレーム31と第2連結フレーム3Lのクッション側連結フレーム31の後端部同士は、左右方向に延びるリクライニングロッド4によって連結されている。リクライニングロッド4は、シートバックS2を傾倒させるためのバックフレーム2の回動軸を形成する部材であり、中空形状を有する金属製のパイプ材により形成されている。リクライニングロッド4は、その右端部が第1連結フレーム3Rのクッション側連結フレーム31を貫通した状態で、溶接などによって第1連結フレーム3Rのクッション側連結フレーム31と接続されている。そして、リクライニングロッド4のうち、第1連結フレーム3Rのクッション側連結フレーム31から右側に突出した部位には、第1連結フレーム3Rのバック側連結フレーム32の下端部が回動可能に軸支されている。同様にして、リクライニングロッド4は、その左端部が第2連結フレーム3Lのクッション側連結フレーム31を貫通した状態で、溶接などによって第2連結フレーム3Lのクッション側連結フレーム31と接続されている。そして、リクライニングロッド4のうち、第2連結フレーム3Lのクッション側連結フレーム31から左側に突出した部位には、第2連結フレーム3Lのバック側連結フレーム32の下端部が回動可能に軸支されている。これにより、クッションフレーム1とバックフレーム2とが、バックフレーム2がクッションフレーム1に対して回動可能となるように、連結されている。
【0036】
[エアバッグ]
図1に示すように、車両用シートS10のシートバックS2には、乗員の胸部に対応して、エアバッグ20が左右に1つずつ配置されている。以下、2つのエアバッグ20を区別して説明する場合には、右側のエアバッグ20を第1エアバッグ20Rと称し、左側のエアバッグ20を第2エアバッグ20Lと称し、これらを区別しないで説明する場合には、単にエアバッグ20と称する。図2に示すように、エアバッグ20は、シートフレーム10におけるバックフレーム2に取り付けられている。より具体的には、第1エアバッグ20Rがバックフレーム2の第1バックサイドフレーム22Rに取り付けられ、第2エアバッグ20Lがバックフレーム2の第2バックサイドフレーム22Lに取り付けられている。エアバッグ20は、上下方向において、バックフレーム2におけるバックサイドフレーム22の中途部位に取り付けられている。但し、エアバッグ20の取付位置は、これらに限定されず、エアバッグ20は、例えば、バックフレーム2のアッパーフレーム21に取り付けられてもよい。
【0037】
図3は、エアバッグ20の概略構成図である。図3に示すように、エアバッグ20は、ケース210と、ケース210をバックフレーム2に取り付けるための取付ブラケット220と、ケース210内に収容され、ガス発生器30から供給されるガスにより膨張するエアバッグ袋体230と、を含む。
【0038】
ケース210は、背面プレート201とケース本体202とを含み、全体として箱型状に形成されている。背面プレート201は、例えば金属製の板部材であり、取付ブラケット220によってバックフレーム2のバックサイドフレーム22に締結固定されている。背面プレート201には、導入孔203が、板厚方向に貫通する貫通孔として形成されている。導入孔203は、エアバッグ袋体を膨張させるためのガスをケース210の内部に導入するための開口部である。導入孔203は、背面プレート201における、バックフレーム2のバックサイドフレーム22と対向する位置に形成されている。更に、背面プレート201における導入孔203の周縁部には、ゴム等の弾性材料により環状に形成されたシール部材203aが設けられている。シール部材203aは、例えば、背面プレート201に対して加硫接着されていてもよい。
【0039】
ケース210のケース本体202は、例えば樹脂等によって形成され、側面部2021と正面部2022とを含む。側面部2021は、背面プレート201から立設しており、ケース210の側面を形成している。正面部2022は、背面プレート201と対向するように各側面部2021の先端に接続されており、ケース210の正面を形成している。なお、ケース本体202と背面プレート201は適宜の方法によって一体に固定することができる。図1に示すように、車両用シートS10では、ケース本体202の正面部2022の表面が、シートバックS2の表皮材U2に形成された開口部から外部に露出し、表皮材U2の表面と面一となっている。
【0040】
エアバッグ袋体230は、ケース210の内部にエアバッグ袋体が折り畳まれた状態で収容されている。エアバッグ袋体は、公知の折り畳み態様でケース210内に収容することができる。例えば、エアバッグ袋体は、蛇腹折りで折り畳まれても良いし、ロール折りで折り畳まれても良いし、これらの組み合わせで折り畳まれてもよい。
【0041】
[ガス発生器]
図1に示すように、車両用シートS10のシートクッションS1には、左右のエアバッグ20に対応して、ガス発生器30が左右に1つずつ配置されている。以下、2つのガス発生器30を区別して説明する場合には、右側のガス発生器30を第1ガス発生器30Rと称し、左側のガス発生器30を第2ガス発生器30Lと称し、これらを区別しないで説明する場合には、単にガス発生器30と称する。第1ガス発生器30Rは、第1エアバッグ20Rに供給されるガスを発生させる。第2ガス発生器30Lは、第2エアバッグ20Lに供給されるガスを発生させる。第1ガス発生器30Rと第2ガス発生器30Lは、左右方向(即ち、車両用シートS10の幅方向)に間隔を空けて配置されており、クッションフレーム1のリアフレーム13に支持されている。
【0042】
ガス発生器30は、軸方向に長尺な筒形状を有している。より詳細には、ガス発生器30は、径方向の寸法よりも軸方向の寸法が長い筒形状を有している。図2に示すように、ガス発生器30は、その軸方向が前後方向と一致するように、第1領域A1内に配置されている。ガス発生器30の後端部には、ガスを噴出させる噴出孔301が形成されている。ガス発生器30は、車両に搭載されたエアバッグECUの制御により作動することで、ガスを発生させる。なお、本願開示に係るガス発生器がガスを発生させる方式は、特に限定されない。ガス発生器の方式は、固形ガス発生剤を燃焼させることでガスを発生させるパイロ方式、加圧ガスを使用するストアードガス方式、パイロ方式とストアードガス方式とを組み合わせたハイブリッド方式等が挙げられる。
【0043】
[導管]
導管40は、その内部にガスを流すことのできる管状部材である。図2に示すように、エアバッグ装置100は、第1ガス発生器30Rと第2ガス発生器30Lに対応して、導管40を2つ備えている。第1ガス発生器30Rに対応する導管40を第1導管40Rと称し、第2ガス発生器30Lに対応する導管40を第2導管40Lと称し、これらを区別しないで説明する場合には、単に導管40と称する。第1導管40Rは、一端が第1ガス発生器30Rの噴出孔301に繋がり、他端がバックフレーム2の第1バックサイドフレーム22Rの下端部221に繋がっている。第2導管40Lは、一端が第2ガス発生器30Lの噴出孔301に繋がり、他端がバックフレーム2の第2バックサイドフレーム22Lの下端部221に繋がっている。導管40がガス発生器30の噴出孔301に繋がることで、ガス発生器30から噴出されたガスは、導管40内に流入する。ここで、導管40は、少なくとも一部が可撓性を有する材料によって形成されており、任意方向へ曲げることができる。これにより、シートバックS2の傾倒に伴うバックフレーム2のクッションフレーム1に対する回動が、ガス発生器30とバックフレーム2とを接続する導管40に
よって阻害されないようになっている。
【0044】
[流通管]
上述のように、本実施形態では、シートフレーム10の一部であって、バックフレーム2のバックサイドフレーム22の一部が、ガス発生器30により発生したガスをエアバッグ20へ供給するようにエアバッグ20に繋がる、流通管X1として形成されている。図4は、実施形態1に係る流通管を説明するための概略構成図である。図4では、前後方向(奥行方向)に直交する断面が示されている。
【0045】
図4に示すように、バックフレーム2の第1バックサイドフレーム22Rの一部が、第1ガス発生器30Rからのガスを第1エアバッグ20Rに供給するための第1流通管X1Rとして形成されている。また、バックフレーム2の第2バックサイドフレーム22Lの一部が、第2ガス発生器30Lからのガスを第2エアバッグ20Lに供給するための第2流通管X1Lとして形成されている。以下、第1流通管X1Rと第2流通管X1Lとを区別しないで説明する場合には、単に流通管X1と称する。流通管X1は、バックフレーム2のバックサイドフレーム22の中空形状をガスの流路として利用するものである。流通管X1は、バックサイドフレーム22のうち、導管40が繋がる下端部221からエアバッグ20が取り付けられる部位まで亘って連続する部位によって形成されている。ここで、バックサイドフレーム22の下端部221には、導管40と連通する流入孔h1が形成されている。これにより、導管40から流れてくるガスが流入孔h1を通じて流通管X1内に流入するように、流通管X1と導管40とが繋がっている。また、バックサイドフレーム22におけるエアバッグ20が取り付けられる部位の、エアバッグ20の導入孔203に対応する位置には、導入孔203と連通する供給孔h2が形成されている。これにより、流通管X1内を流れるガスが供給孔h2と導入孔203とを通じてエアバッグ20に供給されるように、流通管X1とエアバッグ20とが繋がっている。以上のようにして、流通管X1は、ガス発生器30により発生したガスがガス発生器30からエアバッグ20へ流れるための流路の一部を形成する。以下、ガスの流路のうち、流通管X1により形成された流路を流路F1と称し、導管40により形成された流路を流路F2と称する。ここで、図4の符号d1は、バックサイドフレーム22の内径、即ち、流通管X1の内径を示す。また、符号d2は、導管40の内径を示す。本実施形態に係るエアバッグ装置100では、d1がd2よりも大きな寸法となるように設定されている。これにより、流通管X1におけるガスの流路F1の断面積が、導管40における流路F2の断面積よりも大きくなっている。なお、ここでいう断面積とは、ガスの流れる方向と直交する断面の面積のことを指し、具体的には、流通管X1の延伸方向と直交する断面となる。
【0046】
また、図4に示すように、第1バックサイドフレーム22Rの内部には、第1バックサイドフレーム22R内の空間を上下に隔てる第1隔壁23Rが設けられている。第1隔壁23Rは、第1バックサイドフレーム22Rの内径と等しい外径を有する金属製の円盤部材であり、第1バックサイドフレーム22Rに形成された供給孔h2よりも上方の位置において、第1バックサイドフレーム22Rの内壁に全周溶接されている。また、第2バックサイドフレーム22Lの内部には、第2バックサイドフレーム22L内の空間を上下に隔てる第2隔壁23Lが設けられている。第2隔壁23Lは、第2バックサイドフレーム22Lの内径と等しい外径を有する金属製の円盤部材であり、第2バックサイドフレーム22Lに形成された供給孔h2よりも上方の位置において、第2バックサイドフレーム22Lの内壁に全周溶接されている。これにより、第1流通管X1R及び第2流通管X1Lの終端(上端)が画定され、第1流通管X1Rと第2流通管X1Lとが隔てられる。その結果、第1流通管X1Rに流入した第1ガス発生器30Rからのガスがアッパーフレーム21内を通って第2エアバッグ20Lに供給されることが防止されている。また、第2流通管X1Lに流入した第2ガス発生器30Lからのガスがアッパーフレーム21内を通って第1エアバッグ20Rに供給されることも防止されている。
【0047】
[動作]
図5は、実施形態1に係るエアバッグ装置100の動作を説明するための概略構成図である。以下、実施形態1に係るエアバッグ装置100のエアバッグの展開動作について説明する。図示しない衝突センサからの信号に基づいてエアバッグECUが車両の衝突を検出すると、ガス発生器30に作動電流(着火電流)が供給される。これにより、ガス発生器30が作動し、噴出孔301からガスが噴出される。噴出孔301から噴出されたガスは、導管40内に流入する。導管40内に流入したガスは、導管40内を流れ、流入孔h1を通じて流通管X1内に流入する。流通管X1内に流入したガスは、流通管X1内をバックサイドフレーム22の延在方向(軸方向)に沿って上方に流れ、供給孔h2と導入孔203とを通じてケース210内に流入する。これにより、ガス発生器30により発生したガスが、エアバッグ20に供給される。エアバッグ20に対するガスの供給が開始されると、ケース210内において折り畳まれた状態のエアバッグ袋体230が膨張する。そうすると、エアバッグ袋体230の膨張圧によって、ケース210が開裂し、エアバッグ袋体230が膨張しながらケース210から外部に飛び出す。以上のようにして第1エアバッグ20Rと第2エアバッグ20Lとが展開し、乗員の胸部が拘束される。その結果、乗員が保護される。なお、エアバッグ装置100は、第1ガス発生器30Rと第2ガス発生器30Lとを独立に作動させ、衝撃の加わり方に応じて第1エアバッグ20Rと第2エアバッグ20Lとを独立に展開させるようにしてもよい。
【0048】
[作用・効果]
以上のように、本実施形態に係るエアバッグ装置100は、車両用シートS10のうち、シートバックS2にエアバッグ20を配置し、シートクッションS1にガス発生器30を配置する構造を採用している。これによると、シートバックS2にガス発生器30を配置しないことで、シートバックにエアバッグとガス発生器の両方を配置する従来のエアバッグ装置と比較して、シートバックを薄型化することができる。また、シートクッションは、その構造上、内部に部品を配置することのできるスペースがシートバックと比較して広いため、シートクッションを大幅に大型化しなくともガス発生器を配置することができる。更に、本実施形態に係るエアバッグ装置100では、シートフレーム10におけるバックフレーム2の一部が、ガス発生器30により発生したガスをエアバッグ20へ供給するようにエアバッグ20に繋がる、流通管X1として形成されている。つまり、エアバッグ装置100は、シートクッションS1に配置されたガス発生器30からシートバックS2に配置されたエアバッグ20へガスを供給するための流路の一部を、バックフレーム2によって形成している。車両用シートの骨格を形成するためのシートフレームは、通常、構造体として必要な強度を確保するために、十分な太さ(断面積)を有している。このようなシートフレーム10の一部を流通管X1として形成することで、流通管X1におけるガスの流路の断面積を大きく確保することができる。これにより、通気抵抗を小さくし、流通管X1内を流れるガスの流量や流速を大きくすることができる。その結果、エアバッグ20に速やかにガスを供給することができ、エアバッグ20を迅速に展開させることができる。また、車両用シートS10の骨格を形成するシートフレーム10の一部を流通管X1としても利用することで、材料コストの低減やシート自体の軽量化に資することができる。特に、シートバックS2の骨格を形成するためのバックフレーム2の一部を流通管X1として利用することで、バックフレーム2とは別の部材をシートバックS2内に設けて当該別の部材によりエアバッグ20にガスを供給する場合と比較して、シートバックS2内に必要なスペースを低減することができる。その結果、シートバックS2をより薄型化、及び軽量化することができる。
【0049】
なお、上述の例では、流通管X1をバックフレーム2のバックサイドフレーム22の一部のみによって形成したが、本願開示の技術は、これに限定されない。シートフレームにおいて流通管を形成する部位は、エアバッグを取り付ける位置や、乗員のどの部位を保護
するかに応じて変更することができる。流通管は、シートフレームの一部の部位であって、バックフレームの少なくとも一部を含む部位によって形成されていればよい。例えば、流通管X1は、アッパーフレーム21の一部を含んでもよいし、バックフレーム2の一部に加えて、リクライニングロッド4の一部やクッションフレーム1の一部を含んでもよい。また、上述の例では、エアバッグ20をバックフレーム2に直接取り付けた場合について説明したが、エアバッグは、バックフレームに直接取り付けられていなくともよい。例えば、エアバッグをバックフレームとは別の部材に取り付けておき、流通管とエアバッグとを管部材等によって繋いでもよい。
【0050】
また、本実施形態に係るエアバッグ装置100では、エアバッグ20が流通管X1を形成するバックサイドフレーム22の中途部位に繋がっており、導管40がバックサイドフレーム22の下端部221に繋がっている。つまり、ガス発生器30からのガスを流通管X1へ導く導管40は、流通管X1のうち、エアバッグ20が繋がる部位よりも、ガス発生器30が配置されているシートクッションS1に近い部位に繋がっている。これにより、ガス発生器30と流通管X1における導管40が繋がる部位との距離を短くすることができ、導管40の長さを短くすることができる。これにより、早期に流通管X1へガスを導くことができ、エアバッグ20に速やかにガスを供給することができる。その結果、エアバッグ20をより迅速に展開させることができる。また、導管40を短くすることができるため、シート内における導管40の取り回しが容易になり、導管40のもつれ等を抑制できる。更に、材料コストの低減やシート自体の軽量化に資することができる。特に、エアバッグ装置100では、流通管X1がバックフレーム2におけるシートクッションS1側の端部である下端部221を含み、且つ、下端部221に導管40を繋げる構成としている。つまり、バックフレーム2において、最もシートクッションS1に近い部位に導管40を繋げる構成としている。そのため、導管40の長さをより一層短くすることができる。
【0051】
更に、本実施形態に係るエアバッグ装置100では、流通管X1におけるガスの流路F1の断面積が、導管40における流路F2の断面積よりも大きくなるように設定されている。これによると、流通管X1におけるガスの流量や流速を、導管40におけるガスの流量や流速よりも大きくすることができる。その結果、より速やかにエアバッグ20にガスを供給することができ、エアバッグ20をより迅速に展開させることができる。その場合、導管40の長さを短くすることで、流れるガスの流量や流速の大きい流通管X1へ早期にガスを導くことできるため、エアバッグ20をより一層迅速に展開させることができる。
【0052】
[変形例]
以下、実施形態1の変形例に係るエアバッグ装置について説明する。変形例の説明では、図1図5で説明したエアバッグ装置100との相違点を中心に説明し、エアバッグ装置100と同様の点については詳細な説明は割愛する。
【0053】
[変形例1]
図6は、実施形態1の変形例1に係るエアバッグ装置100Aの斜視図である。図6に示すように、エアバッグ装置100Aでは、導管40が、第2領域A2側から流通管X1の当該部位に繋がっている。つまり、変形例1に係るエアバッグ装置100Aは、クッションフレーム1によって囲まれる領域である第1領域A1内にガス発生器30を配置し、導管40をバックフレーム2によって囲まれる領域である第2領域A2側から流通管X1に繋げる構造としている。そのため、導管40は、第1領域A1と第2領域A2とを含む領域の外に出ることなくガス発生器30と流通管X1とを繋げることができる。このような変形例1に係るエアバッグ装置100Aによると、導管40をシートフレーム10の内側に収めることができる。その結果、車両用シートS10をコンパクトにすることができ
る。
【0054】
[変形例2]
図7は、実施形態1の変形例2に係るエアバッグ装置100Bの斜視図である。図7に示すように、エアバッグ装置100Bのバックフレーム2は、第1バックサイドフレーム22Rの下端部221から第2バックサイドフレーム22Lに向かって左方向へ延びる第1ロウアーフレーム24Rと、第2バックサイドフレーム22Lの下端部221から第1バックサイドフレーム22Rに向かって右方向へ延びる第2ロウアーフレーム24Lと、を更に有する。第1ロウアーフレーム24Rは第1バックサイドフレーム22Rと連続する中空形状を有し、第2ロウアーフレーム24Lは第2バックサイドフレーム22Lと連続する中空形状を有している。また、第1ロウアーフレーム24R及び第2ロウアーフレーム24Lの先端は、共に閉塞されており、互いに離間している。以下、第1ロウアーフレーム24Rと第2ロウアーフレーム24Lとを区別しないで説明する場合には、単にロウアーフレーム24と称する。なお、エアバッグ装置100Bでは、シートフレーム10がリクライニングロッド4を有さず、連結フレーム3のバック側連結フレーム32がクッション側連結フレーム31によって回動可能に軸支されている。
【0055】
変形例2に係るエアバッグ装置100Bでは、第1導管40Rが第1ロウアーフレーム24Rに繋がっており、第2導管40Lが第2ロウアーフレーム24Lに繋がっている。また、変形例2の第1流通管X1Rは、バックフレーム2のうち、第1導管40Rが繋がる部位から第1エアバッグ20Rが繋がる部位まで亘って連続する部位によって形成されている。第2流通管X1Lは、バックフレーム2のうち、第2導管40Lが繋がる部位から第2エアバッグ20Lが繋がる部位まで亘って連続する部位によって形成されている。図7に示すように、ロウアーフレーム24は、バックフレーム2の回動軸付近であって、車両用シートS10により形成される骨格の外形の内側に配置されている。このようなロウアーフレーム24と第1領域A1内に配置されたガス発生器30とを導管40によって繋げるエアバッグ装置100Bによると、導管40の長さをより短くすることができる。これにより、早期に流通管X1へガスを導くことができ、エアバッグ20に速やかにガスを供給することができる。その結果、エアバッグ20をより迅速に展開させることができる。
【0056】
[変形例3]
図8は、実施形態1の変形例3に係るエアバッグ装置100Cの斜視図である。図8に示すように、エアバッグ装置100Cでは、シートフレーム10の一部の部位であって、シートバックS2の骨格を形成するバックフレーム2の一部とシートバックS2の回動軸を形成するリクライニングロッド4の一部とを含む部位が、流通管X1として形成されている。
【0057】
エアバッグ装置100Cのシートフレーム10は、バックフレーム2とリクライニングロッド4とが、一体に形成されている。変形例3に係るリクライニングロッド4は、バックフレーム2の第1バックサイドフレーム22Rの下端部221から第2バックサイドフレーム22Lに向かって左方向へ延びる第1ロッド41Rと、第2バックサイドフレーム22Lの下端部221から第1バックサイドフレーム22Rに向かって右方向へ延びる第2ロッド41Lと、を有する。第1ロッド41Rは第1バックサイドフレーム22Rと連続する中空形状を有し、第2ロッド41Lは第2バックサイドフレーム22Lと連続する中空形状を有している。また、第1ロッド41R及び第2ロッド41Lの先端は、共に閉塞されており、互いに離間している。なお、エアバッグ装置100Cでは、連結フレーム3がバック側連結フレーム32を有さず、バックフレーム2と一体に形成されたリクライニングロッド4がクッション側連結フレーム31によって回動可能に軸支されている。
【0058】
変形例3に係るエアバッグ装置100Cでは、第1導管40Rが第1ロッド41Rに繋がっており、第2導管40Lが第2ロッド41Lに繋がっている。また、変形例3の第1流通管X1Rは、シートフレーム10のうち、第1導管40Rが繋がる部位から第1エアバッグ20Rが繋がる部位まで亘って連続する部位によって形成され、第2流通管X1Lは、シートフレーム10のうち、第2導管40Lが繋がる部位から第2エアバッグ20Lが繋がる部位まで亘って連続する部位によって形成されている。つまり、変形例3に係るエアバッグ装置100Cは、シートクッションS1に配置されたガス発生器30とバックフレーム2のシートクッションS1に対する回動の軸となるリクライニングロッド4とを導管40によって繋げる構成としている。このような変形例3に係るエアバッグ装置100Cによると、導管40の長さをより短くすることができる。これにより、早期に流通管X1へガスを導くことができ、エアバッグ20に速やかにガスを供給することができる。その結果、エアバッグ20をより迅速に展開させることができる。なお、上述の例では、シートフレーム10の一部の部位であって、バックフレーム2の一部にリクライニングロッド4の全部を加えた部位を流通管X1として形成したが、本願開示の技術は、これに限定されない。シートフレーム10の一部の部位であって、バックフレーム2の少なくとも一部とリクライニングロッド4の少なくとも一部とを含む部位が、流通管X1として形成されてもよい。
【0059】
[変形例4]
図9は、実施形態1の変形例4に係るエアバッグ装置100Dの斜視図である。図9に示すように、エアバッグ装置100Dでは、シートフレーム10の一部の部位であって、バックフレーム2の一部とクッションフレーム1の一部とを含む部位が流通管X1として形成されている。
【0060】
エアバッグ装置100Dのシートフレーム10は、クッションフレーム1とバックフレーム2とを繋ぐ第1連結チューブ5R及び第2連結チューブ5Lを有する。第1連結チューブ5Rは、クッションフレーム1の第1クッションサイドフレーム12Rの後端部121とバックフレーム2の第1バックサイドフレーム22Rの下端部221とを繋いでいる。第2連結チューブ5Lは、クッションフレーム1の第2クッションサイドフレーム12Lの後端部121とバックフレーム2の第2バックサイドフレーム22Lの下端部221とを繋いでいる。以下、第1連結チューブ5Rと第2連結チューブ5Lとを区別しないで説明する場合には、単に連結チューブ5と称する。
【0061】
連結チューブ5は、その内部にガスを流すことのできる管状部材である。連結チューブ5は、クッションサイドフレーム12内を流れるガスをバックサイドフレーム22内に導くように、クッションサイドフレーム12の後端部121とバックサイドフレーム22の下端部221とを繋いでいる。また、連結チューブ5は、シートバックS2の傾倒に伴うバックフレーム2のクッションフレーム1に対する回動を阻害しないように、少なくとも一部が可撓性を有する材料によって形成されており、任意方向へ曲げることができる。
【0062】
図9に示すように、変形例4に係るエアバッグ装置100Dでは、導管40がクッションフレーム1のクッションサイドフレーム12に繋がっている。より詳細には、第1導管40Rによって第1ガス発生器30Rと第1クッションサイドフレーム12Rとが繋がり、第2導管40Lによって第2ガス発生器30Lと第2クッションサイドフレーム12Lとが繋がっている。そして、変形例4の第1流通管X1Rは、シートフレーム10のうち、第1導管40Rが繋がる部位から第1エアバッグ20Rが繋がる部位まで亘って連続する部位によって形成され、第2流通管X1Lは、シートフレーム10のうち、第2導管40Lが繋がる部位から第2エアバッグ20Lが繋がる部位まで亘って連続する部位によって形成されている。エアバッグ装置100Dでは、導管40によりガス発生器30から流通管X1に導かれたガスは、クッションサイドフレーム12、連結チューブ5、バックサ
イドフレーム22を通ってエアバッグ20に供給される。
【0063】
変形例4に係るエアバッグ装置100Dは、シートクッションS1に配置されたガス発生器30とシートクッションS1の骨格を形成するクッションフレーム1とを導管40によって繋げる構成としている。このような変形例4に係るエアバッグ装置100Dによると、導管40の長さをより短くすることができる。これにより、早期に流通管X1へガスを導くことができ、エアバッグ20に速やかにガスを供給することができる。その結果、エアバッグ20をより迅速に展開させることができる。
【0064】
[変形例5]
図10は、実施形態1の変形例5に係る流通管を説明するための概略構成図である。図11は、実施形態1の変形例5に係るエアバッグ装置100Eの動作を説明するための概略構成図である。図11に示すように、変形例5に係るエアバッグ20のエアバッグ袋体230は、その内部に設けられた仕切材2301によって、第1膨張部230aと第2膨張部230bとに分割されている。第1膨張部230aは、エアバッグ袋体のうち、乗員の胸部に対応する部位であり、ガスの供給により膨張することで乗員の胸部を保護する。第2膨張部230bは、エアバッグ袋体のうち、乗員の腰部に対応する部位であり、ガスの供給により膨張することで乗員の腰部を保護する。第2膨張部230bは、第1膨張部230aが膨張する位置よりも下方の位置において膨張する。つまり、変形例5に係るエアバッグ20は、胸部用のエアバッグと腰部用のエアバッグの機能を兼ねるものである。また、図10に示すように、変形例5に係るエアバッグ20のケース210には、第1導入孔204と第2導入孔205とが形成されている。第1導入孔204は、第1膨張部230aを膨張させるためのガスをケース210の内部に導入するための開口部である。第2導入孔205は、第2膨張部230bを膨張させるためのガスをケース210の内部に導入するための開口部である。
【0065】
また、変形例5に係る流通管X1には、第1導入孔204と連通することで第1膨張部230aにガスを供給する第1供給孔h3と、第2導入孔205と連通することで第2膨張部230bにガスを供給する第2供給孔h4と、が形成されている。ここで、第2供給孔h4は、流通管X1において、第1供給孔h3よりも下方の部位、つまり、第1供給孔h3よりもガスの流れの上流に位置する部位に形成されている。
【0066】
このようなエアバッグ装置100Eによると、ガス発生器30により発生したガスが流通管X1を流れるとき、第2供給孔h4からのガスの流出の方が第1供給孔h3からのガスの流出よりも早期に開始される。そのため、第2膨張部230bへのガスの供給の方が第1膨張部230aへのガスの供給よりも早期に開始される。その結果、変形例5に係るエアバッグ装置100Eによると、第2膨張部230bの方を第1膨張部230aよりも先に膨張させることができる。変形例5に係るエアバッグ装置100Eが作動する場合、先ず、第2膨張部230bが膨張することで、乗員の腰部が拘束される。次いで、第1膨張部230aが膨張することで、乗員の胸部が拘束される。変形例5に係るエアバッグ装置100Eによると、腰部から胸部の順で乗員の体を拘束することで、車両の衝突時に乗員の体の振れを好適に抑制し、以て乗員をより好適に保護することができる。なお、第2膨張部230bを第1膨張部230aよりも優先的に膨張させるために、第2供給孔h4の大きさを第1供給孔h3よりも大きくしてもよい。これにより、第1膨張部230aよりも第2膨張部230bの方が短時間で多量のガスが供給され、第2膨張部230bが優先的に膨張する。
【0067】
[変形例6]
図12は、実施形態1の変形例6に係る流通管を説明するための概略構成図である。図12に示すように、変形例6に係るエアバッグ装置100Fは、胸部用のエアバッグとし
ての第1エアバッグ20R及び第2エアバッグ20Lに加え、ガスの供給により展開することで乗員の腰部を保護する腰部用の第3エアバッグ50R及び第4エアバッグ50Lを備える。図12に示すように、腰部用の第3エアバッグ50Rは、シートフレーム10におけるバックフレーム2の第1バックサイドフレーム22Rに取り付けられ、腰部用の第4エアバッグ50Lは、シートフレーム10におけるバックフレーム2の第2バックサイドフレーム22Lに取り付けられている。以下、腰部用の第3エアバッグ50Rと腰部用の第4エアバッグ50Lとを区別しないで説明する場合には、単に腰部用のエアバッグ50と称する。腰部用のエアバッグ50は、胸部用のエアバッグ20と同様の構造を有しており、シートフレーム10に対して取り付けられる位置が胸部用のエアバッグ20とは異なる。より具体的には、腰部用のエアバッグ50は、バックフレーム2のバックサイドフレーム22の一部により形成された流通管X1において、胸部用のエアバッグ20よりも下方の位置に取り付けられている。そのため、腰部用のエアバッグ50は、胸部用のエアバッグ20が膨張する位置よりも下方の位置において膨張する。
【0068】
ここで、図12に示すように、流通管X1における腰部用のエアバッグ50が取り付けられる部位の、腰部用のエアバッグ50の導入孔203に対応する位置には、腰部用のエアバッグ50の導入孔203と連通する腰部用の供給孔h5が形成されている。これにより、流通管X1内を流れるガスが腰部用の供給孔h5と腰部用のエアバッグ50の導入孔203とを通じて腰部用のエアバッグ50に供給されるように、流通管X1と腰部用のエアバッグ50とが繋がっている。そして、腰部用の供給孔h5は、流通管X1において、導管40から流れてくるガスが流入する流入孔h1よりも上方の位置であって、胸部用のエアバッグ20へガスを流出する胸部用の供給孔h2よりも下方の位置に形成されている。つまり、流通管X1において、腰部用のエアバッグ50が繋がる部位は、胸部用のエアバッグ20が繋がる部位よりもガスの流れの上流に位置している。
【0069】
このようなエアバッグ装置100Fによると、ガス発生器30により発生したガスが流通管X1を流れるとき、腰部用の供給孔h5からのガスの流出の方が胸部用の供給孔h2からのガスの流出よりも早期に開始される。そのため、腰部用のエアバッグ50へのガスの供給の方が胸部用のエアバッグ20へのガスの供給よりも早期に開始される。その結果、変形例6に係るエアバッグ装置100Fによると、腰部用のエアバッグ50の方を胸部用のエアバッグ20よりも先に展開させることができる。変形例6に係るエアバッグ装置100Fが作動する場合、先ず、腰部用のエアバッグ50が展開することで、乗員の腰部が拘束される。次いで、胸部用のエアバッグ20が展開することで、乗員の胸部が拘束される。変形例6に係るエアバッグ装置100Fによると、変形例5に係るエアバッグ装置100Eと同様に、腰部から胸部の順で乗員の体を拘束することで、車両の衝突時に乗員の体の振れを好適に抑制し、以て乗員をより好適に保護することができる。また、エアバッグ装置100Fでは、胸部用のエアバッグ20と腰部用のエアバッグ50とが別個に設けられる。つまり、胸部の保護と腰部の保護とを別個のエアバッグにより実現するため、乗員の胸部に対応する位置と腰部に対応する位置にそれぞれエアバッグを設置すれば足りる。そのため、エアバッグを小型化することができ、必要なガス量も少なくて済む。その結果、エアバッグ装置全体を小型化することができる。なお、腰部用のエアバッグ50を胸部用のエアバッグ20よりも優先的に膨張させるために、腰部用の供給孔h5の大きさを胸部用の供給孔h2よりも大きくしてもよい。これにより、胸部用のエアバッグ20よりも腰部用のエアバッグ50の方が短時間で多量のガスが供給され、腰部用のエアバッグ50が優先的に膨張する。
【0070】
<実施形態2>
実施形態2として、エアバッグ装置を備えた車両用シートについて説明する。図13は、実施形態2に係るエアバッグ装置を備えた車両用シートS10Gの概略構成図である。図13では、前後方向(奥行方向)に直交する断面が示されている。図13中、符号M1
で示す二点鎖線は、乗員を表している。図14は、実施形態2に係るエアバッグ装置100Gの斜視図である。以下、実施形態2の説明では、図1図5で説明した実施形態1に係る車両用シートS10及びエアバッグ装置100との相違点を中心に説明し、車両用シートS10及びエアバッグ装置100と同様の点については詳細な説明は割愛する。
【0071】
図14に示すように、実施形態2に係るエアバッグ装置100Gでは、ガス発生器30がシートフレーム10におけるクッションフレーム1のクッションサイドフレーム12に沿って取り付けられている。より具体的には、第1ガス発生器30R及び第2ガス発生器30Lは、第1領域A1内に配置され、且つ、その長手方向(軸方向)がクッションサイドフレーム12の延びる方向(即ち、車両用シートS10の前後方向)と一致するようにして設けられている。また、図13に示すように、エアバッグ装置100Gのクッションフレーム1には、第1ガス発生器30RをシートクッションS1の座面S11側から覆う第1カバー部14Rと第2ガス発生器30LをシートクッションS1の座面S11側から覆う第2カバー部14Lとが設けられている。以下、第1カバー部14Rと第2カバー部14Lとを区別しないで説明する場合には、単にカバー部14と称する。カバー部14は、金属材料により形成され、概ね上側(座面S11側)に凸となる円弧状の断面を有して前後方向(奥行方向)に延びている。カバー部14の側縁は、溶接などによってクッションフレーム1のクッションサイドフレーム12に接続されている。
【0072】
図13に示すように、車両用シートS10Gでは、エアバッグ装置100Gのクッションフレーム1にクッションC1が取り付けられ、クッションフレーム1がクッションC1によって覆われることで、シートクッションS1が形成されている。このとき、車両用シートS10Gでは、ガス発生器30がカバー部14によって座面S11側から覆われているため、ガス発生器30が乗員の着座による荷重から保護されている。また、ガス発生器30がクッションサイドフレーム12に沿って取り付けられているため、第1ガス発生器30R、第2ガス発生器30L、第1カバー部14R、及び第2カバー部14Lも、クッションサイドフレーム12と同様に、車両用シートS10Gに着座した乗員M1の臀部H1の側方に位置するようになっている。より詳細には、第1ガス発生器30R及び第1カバー部14Rと第2ガス発生器30L及び第2カバー部14Lとの間に乗員M1の臀部H1が位置するようになっている。このとき、車両用シートS10Gでは、クッションC1が、左右方向(幅方向)において、第1カバー部14Rを覆う領域である第1側方部C11Rと、第1側方部C11Rに対して離間すると共に第2カバー部14Lを覆う領域である第2側方部C11Lと、第1側方部C11Rと第2側方部C11Lとによって挟まれた領域である着座部C12と、に区分される。クッションC1は、乗員M1の臀部H1を支持する領域であり、スプリングSP1によって下方から支持されている。また、車両用シートS10Gでは、第1カバー部14Rが第1側方部C11Rによって覆われることで第1保持部HD1Rが形成され、第2カバー部14Lが第2側方部C11Lによって覆われることで第2保持部HD1Lが形成されている。第1カバー部14R及び第2カバー部14Lが乗員M1の臀部H1を車両用シートS10Gの左右方向から挟む位置に位置するため、第1保持部HD1R及び第2保持部HD1Lは、乗員の側臀部SH1を左右方向の両側から保持するように形成される。
【0073】
実施形態2に係るエアバッグ装置100Gによると、実施形態1に係るエアバッグ装置100と同様の効果を得ることができる。具体的には、図13及び図14に示すように、車両用シートS10Gのうち、シートクッションS1にガス発生器30を配置することで、シートバックS2を薄型化することができる。また、シートフレーム10におけるバックフレーム2の一部を流通管X1として形成するため、エアバッグ20に速やかにガスを供給し、エアバッグ20を迅速に展開させることができる。また、材料コストの低減やシート自体の軽量化にも資することができる。更に、シートバックS2の骨格を形成するためのバックフレーム2の一部を流通管X1として利用することで、シートバックS2をよ
り薄型化することができる。
【0074】
更に、実施形態2に係る車両用シートS10Gによると、乗員M1の側臀部SH1を車両用シートS10Gの左右方向(幅方向)の両側から保持する第1保持部HD1R及び第2保持部HD1Lが形成することで、車両用シートS10Gのホールド性を高めることができる。
【0075】
ここで、クッションC1は、第1側方部C11R及び第2側方部C11Lの厚みT1が着座部C12の厚みT2よりも薄い寸法となるように設定されている。これによると、着座部C12を相対的に厚くすることで着座部C12に適度な柔軟性や弾力性を付与しつつも、第1側方部C11R及び第2側方部C11Lを相対的に薄くすることで第1保持部HD1R及び第2保持部HD1Lを固くすることができる。その結果、乗員M1の側臀部SH1をより強固に保持することができ、車両用シートS10Gのホールド性を更に高めることができる。
【0076】
更に、車両用シートS10Gでは、第1ガス発生器30R及び第2ガス発生器30Lが、第1カバー部14R及び第2カバー部14Lと共に、クッションサイドフレーム12が延びる方向(即ち、車両用シートS10Gの前後方向)に延在するように取り付けられている。これにより、第1保持部HD1R及び第2保持部HD1Lを前後方向(奥行方向)に長くすることができる。そのため、乗員M1の側臀部SH1における、第1保持部HD1R及び第2保持部HD1Lによって保持される範囲を広くすることができる。その結果、車両用シートS10Gのホールド性を更に高めることができる。
【0077】
以上、本願開示に係るエアバッグ装置及び車両用シートの実施形態及び変形例について説明したが、上述した各実施形態及び変形例は可能な限り組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0078】
1・・・・・・クッションフレーム
14R・・・第1カバー部
14L・・・第2カバー部
2・・・・・・バックフレーム
4・・・・・・リクライニングロッド(回動軸部)
10・・・・・シートフレーム
20・・・・・エアバッグ(胸部用のエアバッグ)
30・・・・・ガス発生器
40・・・・・導管
50・・・・・腰部用のエアバッグ
100・・・・エアバッグ装置
S1・・・・・シートクッション(座面部)
S11・・・座面
S2・・・・・シートバック(背もたれ部)
S3・・・・・ヘッドレスト
C1・・・・・クッション
S10・・・・車両用シート
X1・・・・・流通管
HD1R・・・第1保持部
HD1L・・・第2保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が着座する車両用シートの骨格を形成するシートフレームと、
前記車両用シートのうち前記乗員の背部を支持する背もたれ部に配置され、ガスの供給により展開する第1エアバッグと、
前記車両用シートのうち前記乗員の臀部を支持する座面部に配置され、前記第1エアバッグへ供給されるガスを発生させるガス発生器と、を備え、
前記シートフレームの一部の部位であって、前記背もたれ部の骨格を形成するバックフレームの少なくとも一部を含む部位は、前記ガス発生器により発生したガスを前記第1エアバッグへ供給するように前記第1エアバッグに繋がる、第1流通管として形成されており、
前記バックフレームは、前記バックフレームの一端側を形成する第1バックサイドフレームを含み、
前記第1バックサイドフレームには、前記第1バックサイドフレーム内の空間を上下に隔てる第1隔壁が設けられ、前記第1流通管の上端が、前記第1隔壁により画定される、
エアバッグ装置。
【請求項2】
前記バックフレームは、前記バックフレームの他端側を形成する第2バックサイドフレームを更に含み、
前記第2バックサイドフレームには、前記ガス発生器によって発生したガスの供給により展開する第2エアバッグが取り付けられ、
前記第2バックサイドフレームの一部は、前記第2エアバッグに繋がる第2流通管として形成され、
前記第2バックサイドフレームには、前記第2バックサイドフレーム内の空間を上下に隔てる第2隔壁が設けられ、前記第2流通管の上端が、前記第2隔壁により画定された、
請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1エアバッグおよび前記第2エアバッグは、前記第1バックサイドフレームおよび前記第2バックサイドフレームに形成された各供給孔に通じて、それぞれが前記第1流通管および前記第2流通管との内部と連通しており、
前記第1隔壁および前記第2隔壁は、前記供給孔よりも上方に配置され、前記第1バックサイドフレームの内部と前記第2バックサイドフレームの内部との各々が隔てられている、
請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記バックフレームは、前記第1バックサイドフレームと前記第2バックサイドフレームとの間に延在するアッパーフレームを更に含み、
前記第1隔壁および前記第2隔壁が、前記アッパーフレームに前記ガスが流通することを防止する、
請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記ガスを前記ガス発生器から前記第1流通管および前記第2流通管へ導く各々の導管を更に備え、
前記各々の導管は、前記第1流通管および前記第2流通管のうち、前記第1エアバッグおよび前記第2エアバッグが繋がる部位よりも前記座面部に近い部位に繋がっている、
請求項2から4の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ガスを前記ガス発生器から前記第1流通管および前記第2流通管へ導く各々の導管を更に備え、
前記シートフレームは、前記背もたれ部を傾倒させるための前記バックフレームの回動軸を形成する回動軸部を含み、
前記シートフレームの一部の部位であって、前記バックフレームの少なくとも一部と前記回動軸部の少なくとも一部とを含む部位が、前記第1流通管および前記第2流通管として形成され、
前記各々の導管は、前記第1流通管および前記第2流通管のうち、前記回動軸部の少なくとも一部に繋がっている、
請求項2から4の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記第1流通管および前記第2流通管における前記ガスの流路の断面積が、前記各々の導管における前記流路の断面積よりも大きく設定されている、
請求項に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記第1エアバッグは、前記ガスの供給により膨張することで前記乗員の胸部を保護する第1膨張部と、前記ガスの供給により膨張することで前記乗員の腰部を保護する第2膨張部と、を含み、
前記第1流通管において、前記第2膨張部に前記ガスを供給する第2供給口が、前記第1膨張部に前記ガスを供給する第1供給口よりも前記ガスの流れの上流の部位に形成されている、
請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
前記第1エアバッグは、前記ガスの供給により展開することで前記乗員の胸部を保護する胸部用エアバッグであり、
前記エアバッグ装置は、前記ガスの供給により展開することで前記乗員の腰部を保護する腰部用エアバッグを更に備え、
前記第1流通管は、前記胸部用エアバッグに加え、前記ガス発生器により発生したガスを前記腰部用エアバッグへ供給するように前記腰部用エアバッグにも繋がっており、
前記第1流通管において、前記腰部用エアバッグが繋がる部位は、前記胸部用エアバッ
グが繋がる部位よりも前記ガスの流れの上流に位置している、
請求項1に記載のエアバッグ装置。