(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052887
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】石膏系建築材料
(51)【国際特許分類】
C04B 28/14 20060101AFI20240405BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240405BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20240405BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20240405BHJP
C04B 14/30 20060101ALI20240405BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20240405BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20240405BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C04B28/14
C04B28/02
C04B14/04 Z
C04B14/28
C04B14/30
C04B22/06 A
C04B22/06 Z
C04B22/10
C09K21/02
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024029181
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2021535990の分割
【原出願日】2018-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュットナー、マティーアス
(72)【発明者】
【氏名】リュームラー、ヴォルフガング
(57)【要約】
【課題】耐火性を、好ましくは低コストで、組み込むことができ、建築材料の既知の取り扱いに影響を与えることのない、代替の耐火性建築材料を提供する。
【解決手段】無機結合剤-反応性ケイ素源-反応性カルシウム源を含む建築材料。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-無機結合剤
-反応性ケイ素源
-反応性カルシウム源、を含む、建築材料。
【請求項2】
前記無機結合剤が、セメント質材料、特にセメント、コンクリート、または硫酸カルシウムを含み、前記硫酸カルシウムが、硫酸カルシウム二水和物、スタッコ、α-および/またはβ-硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム無水石膏から選択される、請求項1に記載の建築材料。
【請求項3】
前記反応性ケイ素源が、非晶質二酸化ケイ素、特に発熱性二酸化ケイ素もしくはマイクロシリカ、またはそれらの混合物である、請求項1または2に記載の建築材料。
【請求項4】
(i)前記反応性ケイ素源の粒子サイズD50volが、0.01~400μm、好ましくは0.01~200μm、もしくは0.01~50μm、もしくは0.01~5μmであるか、または
(ii)前記反応性カルシウム源の粒子サイズD50volが、0.1~800μm、好ましくは0.1~200μm、もしくは0.1~50μm、もしくは0.1~10μmであるか、または
(iii)両方の組み合わせである、請求項1~3のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項5】
反応性ケイ素源の量が、前記建築材料中の無機結合剤の量に対して、0.5~20重量%、好ましくは2~15重量%、特に好ましくは3~10重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項6】
前記反応性カルシウム源が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびそれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項7】
反応性カルシウム源の量が、前記建築材料中の無機結合剤の量に対して、0.5~40重量%、好ましくは2~30重量%、特に好ましくは3~20重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項8】
前記反応性ケイ素源の量に対する前記反応性カルシウム源の量が、2.5:1~1:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項9】
前記石膏建築製品が、建築ボード、プラスター、パテ、ジョイントコンパウンド、スクリード、充填材、または充填剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項10】
前記建築ボードが、石膏繊維ボード、プラスターボード、セメントボード、またはビルディングブロックである、請求項9に記載の建築材料。
【請求項11】
前記建築製品が、600℃超での加熱時に、ウォラストナイトを形成することができる、請求項1~10のいずれか一項に記載の石膏系建築材料。
【請求項12】
遅延剤、促進剤、疎水剤、液化剤、強化剤、加熱したときに結晶水を遊離する物質(ATH)、または増粘剤から選択される補助剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項13】
少なくとも
-無機結合剤
-反応性ケイ素源
-反応性カルシウム源、を組み合わせるステップを含む、建築製品を作製する方法。
【請求項14】
ボードを形成するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
建築製品が火に暴露されたときにその場で前記建築製品中にウォラストナイトを形成するための反応性ケイ素源と反応性カルシウム源との混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された耐火性を有する建築材料に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏または一般のセメント質材料のような火災時に消費されない様々な種類の建築材料は、火災の場合に亀裂が入り始めることが多い。これは、部分的には、石膏の無水石膏への変質および鉱物の関係する焼結プロセスによる体積損失に典型的に関係するマトリックス材料の収縮によるものである。
【0003】
火災時のそのような亀裂は、材料への熱の進入およびさらなる破壊を加速させる。熱および煙は、隣接する部屋に亀裂を介して進入する場合がある。例えば、壁建造物の破壊が進行するとき、炎が近接する部屋に侵入する。
【0004】
材料の種類に依存して、機械的安定性の喪失は、建築物の安定性および住民の安全に対する関連リスクとなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改善された耐火性を有する数多くの材料があるが、好ましくは低コストで耐火性を組み込むことができ、建築材料の既知の取り扱いに影響を与えることのない代替材料が依然として必要である。
【0006】
本発明の目的は、そのような代替の耐火性建築材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は、無機結合剤、反応性ケイ素源、および反応性カルシウム源を含む建築材料によって解決される。
【0008】
好ましい無機結合剤は、セメント質材料または硫酸カルシウムに基づく材料である。
【0009】
好ましいセメント質材料は、セメントまたはコンクリートである。好ましい硫酸カルシウム材料は、硫酸カルシウム二水和物、スタッコ、α-および/もしくはβ-硫酸カルシウム半水和物、または硫酸カルシウム無水石膏である。
【0010】
反応性ケイ素源は、火災の場合に反応性二酸化ケイ素を生成することができる材料である。適切な材料は、非晶質二酸化ケイ素、特に発熱性二酸化ケイ素(ヒュームドシリカ)もしくはマイクロシリカ(シリカフューム)、またはそれらの混合物である。
【0011】
反応性カルシウム源は、火災の場合に反応性酸化カルシウムを生成することができる材料である。適切な材料は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびそれらの混合物である。
【0012】
反応性ケイ素源の量は、好ましくは、建築材料中の無機結合剤の量の0.5~20重量%の範囲である。
【0013】
反応性ケイ素源の好ましい量は、2~15重量%または3~10重量%である。
【0014】
反応性カルシウム源の量は、建築材料中の無機結合剤の量に対して、好ましくは0.5~40重量%である。
【0015】
反応性カルシウム源の好ましい量は、2~30重量%または3~20重量%である。
【0016】
一例として、建築製品が100キロの無機結合剤を含む場合、反応性ケイ素源の量は、0.5~20キロであり得る。
【0017】
無機結合剤の量が100キロであるとき、反応性カルシウム源の量は0.5~40キロであり得る。
【0018】
例を参照すると、材料は、100キロの無機結合剤、10キロの反応性ケイ素源、および20キロの反応性カルシウム源を含むことができる。
【0019】
材料の全重量に基づいて、反応性カルシウム源および反応性ケイ素源の量を計算することも可能である。
【0020】
建築材料の総重量に基づいて、適切な量は、反応性カルシウム源については0.5~30重量%、および反応性ケイ素源については0.5~18重量%の範囲である。
【0021】
D50volとして測定される、0.01~400μm、好ましくは0.01~200μm、または0.01~50μm、または0.01~5μmの場合の反応性ケイ素源の適切な粒子サイズ。
【0022】
反応性カルシウム源の適切な粒子サイズは、D50volとして測定される、0.1~800μm、好ましくは0.1~200μm、または0.1~50μm、または0.1~10μmである。
【0023】
「D50vol」は、粒子の50体積%がそれぞれの値よりも大きく、粒子の体積の50%がそれぞれの値よりも小さい粒子サイズを表す。そのような値は、(例えば、Mastersizer2000を用いたレーザ粒度分析による測定、溶媒:イソプロパノール)に従って測定することができる。
【0024】
反応性ケイ素源の量に対する反応性カルシウム源の量は、重量で2.5:1~1:1である。
【0025】
適切な実施形態では、建築製品は、建築ボード、プラスター、パテ、ジョイントコンパウンド、スクリード、充填材(fill)、または充填剤(filler)であり得る。
【0026】
ボードの形態で使用される場合、ボードは、石膏繊維ボード、繊維補強材を含むまたは含まないプラスターボード、およびライナー、セメントボード、もしくはビルディングブロックとしての紙ライナーまたは繊維のマットであり得る。
【0027】
本発明によれば、建築製品は、600℃超に加熱するとウォラストナイトを形成することができる。
【0028】
ウォラストナイトは、建築材料の機械的特性を安定化し、亀裂を阻止するインターロッキング結晶を形成する難燃性材料である。ウォラストナイトへの反応はエネルギーを消費するため、その場での反応は、建築製品の温度が100℃未満になる時間枠を増加する利点を有する。
【0029】
本発明の建築材料は、建築材料の製造に使用される補助試薬をさらに含むことができる。適切な補助試薬は、遅延剤、促進剤、疎水剤、液化剤、強化剤(例えばトリメタリン酸ナトリウム、デンプン)、加熱するときに結晶水を遊離する物質(アルミニウム三水和物のような)、または増粘剤である。
【0030】
本発明の建築材料は、機械的特性を改善するために繊維を含むことができる。適切な繊維は、ガラス繊維、鉱物繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、セルロース繊維、およびそれらの混合物である。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも無機結合剤、反応性ケイ素源、および反応性カルシウム源を組み合わせるステップを含む建築製品を作製する方法である。
【0032】
好ましい実施形態では、この方法は、現況技術に従って建築ボードを形成するステップをさらに含む。
【0033】
本発明のさらなる実施形態は、建築製品が火に暴露されたときにその場で建築製品中にウォラストナイトを形成するための反応性ケイ素源と反応性カルシウム源との混合物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】入熱時の異なる組成を有する試料の収縮(本発明による実施形態)の図である。
【
図2】入熱時の異なる組成を有する試料の収縮(比較例)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明について、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【0036】
実施例1
収縮測定用に120mm×40mm×20mmおよび安定性測定用に160mm×40mm×20mmのサイズの石膏角柱を、以下の材料を含有するスラリーから調製した:
硫酸カルシウム:スタッコ(主にβ形態の硫酸カルシウム半水和物)、Iphofen
反応性ケイ素源:マイクロシリカ(SiO2)の水中での50%懸濁液、EMSAC500、ELKEM、d50vol:0.15μm、ブレーン法による比表面積:15~30m2/g
反応性カルシウム源:石灰石粉(CaCO3)、Kalkstein-Fuller KSF60/3、Fels-Werke、d50vol:8.4μm、ブレーン法による比表面積:0.54m2/g
繊維:ガラス繊維、DuraCore(登録商標)M300、Johns Manville
【0037】
【0038】
収縮測定は、試料を加熱し、それらの長さの変化を継続的に記録するマッフル炉内で実施した。測定方法および必要な装置は、WO2017/000972(A1)に詳細に記載されている。要するに、試料は、試料ホルダに水平な向きで移動可能に取り付ける。試料の一方の端部は、カウンターベアリングと当接している。試料の反対側の端部では、検出器ロッドが試料に圧力をかけ、試料が常にカウンターベアリングと当接することを保証する。検出器ロッドは、圧力をかけられる試料の端部の動きを測定する。加熱前の元の試料の長さに関係するこの測定は、
図1および2に示す長さの変化(パーセント)である。
【0039】
試験片の長さの変化は、EN1363-1に従って標準的な温度/時間曲線を通過しながら測定される。任意のウォラストナイトまたはその抽出物を含有せず、ガラス繊維のみを含有する比較試料7は、他の全ての試料と同様に、最初の約20分間で膨張する(
図1を参照)。この時間範囲中、試料を加熱し、石膏内に含まれる結晶水はゆっくりとガス状になる。その結果、試料本体が膨張する。水蒸気がガス放出を開始するとき、試料本体は収縮を開始する。約40分後、全ての結晶水が蒸発し、試料が焼結を開始する。2時間後、比較試料の本体はその元の長さの11%以上を喪失した。
【0040】
この収縮はかなり大きく、この材料がしっかりと固定された乾式壁建造物、例えばプラスターボードで使用する場合、深刻な問題をもたらす。プラスターボードは通常、多数のねじを介して金属スタッドに固定する。ボードの長さまたは幅における11%の収縮、すなわちプラスターボードの場合に数センチメートルの収縮により、体積損失によってすでに脆化している硫酸カルシウム材料が、破損および/またはその固定具からの断裂、ならびに部屋の中への少なくとも部分的な落下を引き起こす。
【0041】
対照的に、試料1は、約4%のみの長さの収縮を示す。XRDリートベルト(Rietveld)解析によれば、この試料は、加熱中に8重量%のマイクロシリカ懸濁液および8重量%の石灰石から形成された6重量%のウォラストナイトを含有する。さらに、膨張期間後の低収縮期間は、約10分だけ遅延する。ゆっくりとした収縮は開始後50分まで継続し、その後中程度の収縮まで低下する。約50~60分の収縮の低下は、結晶水のガス放出の終了に関係している。ここで、硫酸カルシウム材料が焼結を開始する。焼結プロセスは、対策が講じられない場合、硫酸カルシウム材料中でさらなる強力な体積減少をもたらす。
【0042】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、ウォラストナイト抽出物
の添加が、試料本体を加熱する間にウォラストナイトのその場での形成をもたらすと推定している。ウォラストナイトへの反応は吸熱であり、したがって、そうでなければ結晶水の蒸発に作用しているエネルギーを消費する。結晶水が蒸発し、ウォラストナイトが形成される限り、本体は冷却される。したがって、試料本体が最初に膨張し、次いでただゆっくりと収縮し、元の体積に近いままである期間(最初の50~60分の範囲)が延長される。この時間範囲内で、燃えている建築物から人を避難させることが容易に可能であるため、これは非常に重要な期間である。構造は無傷のままであり、温度が制御不能に上昇することはない。したがって、この期間が長いほど、人々の命を救う可能性が高くなる。
【0043】
ウォラストナイトは、一度形成されると、収縮に別のプラスの効果を有し、その効果が、焼結プロセスの開始によって発生する収縮を減少させる。本発明者らの近年の理解は、ウォラストナイトが焼結プロセスによって影響を受けないか、またはわずかに影響を受けるだけであり、おそらく石膏表面の焼結を妨害し、全体的な試料収縮を減少させる剛性の足場を提供することである。ウォラストナイトの抽出物を含有する全ての試料では、約11%収縮する比較試料7と比較して、収縮は4%よりも低い。したがって、収縮は約1/3まで減少する。
【0044】
最小の収縮値は、最大量のウォラストナイト前駆体材料(8重量%のマイクロシリカおよび16重量%の石灰石花)ならびにさらに0.3%の繊維を含有する試料6で達成した。収縮は、実際にわずかである(0.2%)。
【0045】
試料1および4の組成は同一である。試料4は、試料1との唯一の違いであるガラス繊維をさらに含有する。試料2および5、ならびに3および6についても同じことが言える。ガラス繊維を含有する試料、すなわち試料4、5、および6では、ガラス繊維を含まない参照試料と比較して、収縮がさらに約1%だけ減少した。したがって、ガラス繊維の存在により、さらに収縮が減少する。
【0046】
表1による試料の耐破壊性および耐垂れ性は、930℃まで加熱されたマッフル炉内で測定した。それらの長さの端部が支持体上で静止するように、試料を2つの支持体上に位置付け、支持体を互いに11cmの距離に配置した。それらが前に破損しなかったという前提で、試料を60分間炉内に留めた。試料が壊れた場合、測定を中止した。
【0047】
表2には、測定の結果を示す。列挙するウォラストナイト含有量は、XRDリートベルト解析を介した試験片の試験後に決定した。縦列の「破損」は、破損が発生するまでに経過した測定時間を列挙している。全測定の60分以内に破損が発生しなかった場合、結果を「>60」と列挙する。縦列「最大垂れ」は、熱処理による垂れ値、すなわち、熱処理前の垂れを減算した熱処理後の垂れ(存在する場合)を含有する。
【0048】
【0049】
試料ごとに、試験1および試験2の2つの複製を調査した。比較試料7の複製のうちの一方が破損した。もう一方は17mmの垂れを示した。本発明による全ての試料の最も少量のウォラストナイト前駆体材料を含有する試料1は、破損しなかったが、それぞれ2および4mmの垂れであった。他の全すべての試料は、少しだけ、すなわち2mmおよびほとんどが1mm未満の垂れであった。したがって、ウォラストナイトの形成は、加熱下での垂れ安定性を高める。
【0050】
実施例2
材料
硫酸カルシウム:スタッコ、Iphofen
反応性ケイ素源:水中でのマイクロシリカ(SiO2)の50%懸濁液、EMSAC500、ELKEM
ガラス粉、MWT Mineralwerk Thuringen
反応性カルシウム源:石灰石粉(CaCO3)、Kalkstein-Fuller KSF60/3、Fels-Werke、
生石灰(CaO)、DIN4188に従って最大15%>90μm
ガラス繊維:ガラス繊維、M300、Johns Manville
ウォラストナイト:Tremine939-010、Quarzwerke Gruppe
液化剤:Viscocrete G2、Sika
【0051】
【0052】
記載した長さの測定、ならびに垂れおよび破損の測定は、実施例1に記載したように行った。
【0053】
表3に列挙する試料は、試料11を除いた比較例である。試料11は、反応性カルシウム源としての生石灰(CaO)、および反応性ケイ素源としてのマイクロシリカを含有する。試料11は、表3で試験した全ての試料を加熱した後、最も低い収縮(約1.3%)を有する(
図2を参照)。
【0054】
次に、加熱後に2%~3%の範囲の収縮を示す試料10、9、および8が最良である。これらの試料は、反応性ケイ素源のみを添加し、反応性カルシウム源を添加しないことによって生成した。ケイ素含有量は、試料8から試料10まで増加した。比較的低い収縮は、使用されたスタッコ中の炭酸カルシウム不純物の結果であると考えられる。天然石膏は、典型的には純粋な材料ではなく、多かれ少なかれ不純物を含有している。石灰石は、蒸発により水の塩分負荷が増加すると、石膏が沈殿する直前に高塩水から沈殿するため、石膏中の豊富な不純物である。したがって、試料8、9、および10の低収縮は、添加されたマイクロシリカおよび不純物の炭酸カルシウムからのウォラストナイトの形成によるものと推定される。試料9および10は、加熱後の収縮に関してわずかに異なるだけであるため、炭酸カルシウム不純物は、ほぼ完全にウォラストナイトと反応しているとさらに推定される。
【0055】
試料12は、火災の場合にその場でウォラストナイトが形成されるかどうか、または事前形成されたウォラストナイトが添加剤として使用されるかどうかが重要であることを示すために試験した。試料12に、5重量%の事前形成したウォラストナイトを添加した。試料12を加熱した後、約6%の収縮を示す。試料12に添加されたウォラストナイトの量は、試料8で形成したことがわかったウォラストナイトの量と等しい。しかしながら、試料8は、試料12の約半分の収縮(2.8%)しか示していない。
【0056】
試料14では、ガラス粉を石灰石粉と一緒にケイ素源として使用した。ケイ素およびカルシウム源の含有量は比較的高かった。それでもなお、加熱後の収縮は7%以上になる。したがって、それは任意の粉砕されたケイ素源を提供するのに十分ではないが、反応性源、すなわち熱暴露による収縮に関して本当に効果的である非晶質ケイ素源でなければなら
ないと結論付けた。
【0057】
試料13は、反応性ケイ素も反応性カルシウム源も含有しておらず、約11%の加熱後の収縮を示す。
【0058】
【0059】
表4には、表3に示すように構成された試料の破損および垂れ測定の結果を列挙する。3.比較試料12~14は、温度適用後に、破損するか、高い垂れ値を示した(表4を参照)。4.また、試料8の両方の複製が破損した。驚くべきことに、試料9については、1つの試験片が破損し、1つの試験片が1mm未満の垂れ値を示した。
【0060】
本発明による実施形態である試料11は、加熱した60分後に1mm未満の非常に低い垂れ値を示した。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
本発明による実施形態である試料11は、加熱した60分後に1mm未満の非常に低い垂れ値を示した。
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1>
-無機結合剤
-反応性ケイ素源
-反応性カルシウム源、を含む、建築材料。
<2>
前記無機結合剤が、セメント質材料、特にセメント、コンクリート、または硫酸カルシウムを含み、前記硫酸カルシウムが、硫酸カルシウム二水和物、スタッコ、α-および/またはβ-硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム無水石膏から選択される、<1>に記載の建築材料。
<3>
前記反応性ケイ素源が、非晶質二酸化ケイ素、特に発熱性二酸化ケイ素もしくはマイクロシリカ、またはそれらの混合物である、<1>または<2>に記載の建築材料。
<4>
(i)前記反応性ケイ素源の粒子サイズD50volが、0.01~400μm、好ましくは0.01~200μm、もしくは0.01~50μm、もしくは0.01~5μmであるか、または
(ii)前記反応性カルシウム源の粒子サイズD50volが、0.1~800μm、好ましくは0.1~200μm、もしくは0.1~50μm、もしくは0.1~10μmであるか、または
(iii)両方の組み合わせである、<1>~<3>のいずれか一つに記載の建築材料。
<5>
反応性ケイ素源の量が、前記建築材料中の無機結合剤の量に対して、0.5~20重量%、好ましくは2~15重量%、特に好ましくは3~10重量%である、<1>~<4>のいずれか一つに記載の建築材料。
<6>
前記反応性カルシウム源が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびそれらの混合物から選択される、<1>~<5>のいずれか一つに記載の建築材料。<7>
反応性カルシウム源の量が、前記建築材料中の無機結合剤の量に対して、0.5~40重量%、好ましくは2~30重量%、特に好ましくは3~20重量%である、<1>~<6>のいずれか一つに記載の建築材料。
<8>
前記反応性ケイ素源の量に対する前記反応性カルシウム源の量が、2.5:1~1:1である、<1>~<7>のいずれか一つに記載の建築材料。
<9>
前記石膏建築製品が、建築ボード、プラスター、パテ、ジョイントコンパウンド、スクリード、充填材、または充填剤である、<1>~<8>のいずれか一つに記載の建築材料。
<10>
前記建築ボードが、石膏繊維ボード、プラスターボード、セメントボード、またはビル
ディングブロックである、<9>に記載の建築材料。
<11>
前記建築製品が、600℃超での加熱時に、ウォラストナイトを形成することができる、<1>~<10>のいずれか一つに記載の石膏系建築材料。
<12>
遅延剤、促進剤、疎水剤、液化剤、強化剤、加熱したときに結晶水を遊離する物質(ATH)、または増粘剤から選択される補助剤を含む、<1>~<11>のいずれか一つに記載の建築材料。
<13>
少なくとも
-無機結合剤
-反応性ケイ素源
-反応性カルシウム源、を組み合わせるステップを含む、建築製品を作製する方法。
<14>
ボードを形成するステップをさらに含む、<13>に記載の方法。
<15>
建築製品が火に曝露されたときにその場で前記建築製品中にウォラストナイトを形成するための反応性ケイ素源と反応性カルシウム源との混合物の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-建築材料に対して少なくとも68重量%の無機結合剤であって、硫酸カルシウムをベースとする、前記無機結合剤、
-建築材料に対して0.5~18重量%の反応性ケイ素源、および
-建築材料に対して0.5~30重量%の、前記無機結合剤とは異なる反応性カルシウム源、を含み、
前記反応性ケイ素源はヒュームドシリカ、シリカフューム、又はこれらの混合物である、建築材料。
【請求項2】
前記無機結合剤が硫酸カルシウムを含み、前記硫酸カルシウムが、硫酸カルシウム二水和物、スタッコ、α-および/またはβ-硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム無水石膏、およびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の建築材料。
【請求項3】
(i)前記反応性ケイ素源の粒子サイズD50volが、0.01~50μmである、または
(ii)前記反応性カルシウム源の粒子サイズD50volが、0.1~800μmである、または
(iii)前記(i)および(ii)の両方の組み合わせである、請求項1または2に記載の建築材料。
【請求項4】
前記反応性ケイ素源の粒子サイズD50volが0.01~5μmである、請求項3に記載の建築材料。
【請求項5】
前記反応性カルシウム源の粒子サイズD50volが0.1~200μmである、請求項3に記載の建築材料。
【請求項6】
前記反応性カルシウム源の粒子サイズD50volが0.1~50μmである、請求項
3に記載の建築材料。
【請求項7】
前記反応性カルシウム源の粒子サイズD50volが0.1~10μmである、請求項3に記載の建築材料。
【請求項8】
前記反応性カルシウム源が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびそれらの混合物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項9】
遅延剤、促進剤、疎水剤、液化剤、強化剤、加熱したときに結晶水を遊離する物質(ATH)、または増粘剤から選択される補助剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項10】
前記反応性ケイ素源の量に対する前記反応性カルシウム源の量が、重量で2.5:1~1:1である、請求項1~9のいずれか一項に記載の建築材料。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の建築材料を含み、建築ボード、プラスター、パテ、ジョイントコンパウンド、スクリード、充填材(fill)、または充填剤(filler)である、建築製品。
【請求項12】
前記建築ボードが、石膏繊維ボード、プラスターボード、セメントボード、またはビルディングブロックである、請求項11に記載の建築製品。
【請求項13】
前記建築製品が、600℃超に加熱されるとウォラストナイトを形成することができる、請求項11または12に記載の建築製品。
【請求項14】
少なくとも
-建築材料に対して少なくとも68重量%の無機結合剤であって、硫酸カルシウムをベースとする、前記無機結合剤、
-建築材料に対して0.5~18重量%の反応性ケイ素源、および
-建築材料に対して0.5~30重量%の、前記無機結合剤とは異なる反応性カルシウム源、
を組み合わせて建築材料を調製するステップを含み、
前記反応性ケイ素源はヒュームドシリカ、シリカフューム、又はこれらの混合物である、建築製品を作製する方法。
【請求項15】
ボードを形成するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記反応性ケイ素源の量に対する前記反応性カルシウム源の量が、重量で2.5:1~1:1である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
建築製品が火に曝露されたときにその場で前記建築製品中にウォラストナイトを形成するための反応性ケイ素源と反応性カルシウム源との混合物の使用であって、前記反応性ケイ素源はヒュームドシリカ、シリカフューム、又はこれらの混合物である、前記使用。
【請求項18】
前記反応性ケイ素源の量に対する前記反応性カルシウム源の量が、重量で2.5:1~1:1である、請求項17に記載の使用。
【外国語明細書】