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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005291
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】吐出ユニット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240110BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240110BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/165 303
B41J2/175 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105399
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖隆
(72)【発明者】
【氏名】宮越 直人
(72)【発明者】
【氏名】中野 一成
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】水谷 祐司
(72)【発明者】
【氏名】宮原 崇
(72)【発明者】
【氏名】野元 実咲希
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056HA07
2C056JB04
2C056JB08
2C056KB37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワイピング時の記録ヘッドの側面へのインクの堆積を低減できるインクジェット式画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、複数のインク吐出口が下向きに開口するノズル領域Nが設けられた記録ヘッド31と、前記ノズル領域Nに接触して所定の拭き取り方向に移動することで前記インク吐出口を拭き取るワイパー67と、を備え、前記拭き取り方向に沿った前記記録ヘッド31の側面には、前記拭き取り方向に沿ったヘッド取り付け部材41が設けられ、前記ヘッド取り付け部材41の表面は、前記側面よりも高い撥水性を有し、前記ヘッド取り付け部材41の下端部には、凹部45と凸部43とが交互に形成されている。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインク吐出口が下向きに開口するノズル領域が設けられた記録ヘッドと、
前記ノズル領域に接触して所定の拭き取り方向に移動することで前記インク吐出口を拭き取るワイパーと、を備え、
前記拭き取り方向に沿った前記記録ヘッドの側面には、前記拭き取り方向に沿ったヘッド取り付け部材が設けられ、
前記ヘッド取り付け部材の表面は、前記側面よりも高い撥水性を有し、前記ヘッド取り付け部材の下端部には、凹部と凸部とが交互に形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記凸部は下方に向けて幅が狭くなるように形成され、前記凹部は下方に向けて幅が広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ヘッド取り付け部材の下端部は、波状、鋸刃状、又は矩形波状であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ヘッド取り付け部材の下側の側面と前記記録ヘッドの側面とが成す角が鋭角であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
一方方向に長く、複数のインク吐出口が下向きに開口するノズル領域が設けられた記録ヘッドを備え、
前記ノズル領域における前記記録ヘッドの側面には、前記記録ヘッドの長手方向に沿ったヘッド取り付け部材が設けられ、
前記ヘッド取り付け部材の表面は、前記側面よりも高い撥水性を有し、前記ヘッド取り付け部材の下端部には、凹部と凸部とが交互に形成されていることを特徴とする吐出ユニット。
【請求項6】
前記凸部は下方に向けて幅が狭くなるように形成され、前記凹部は下方に向けて幅が広くなるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の吐出ユニット。
【請求項7】
前記ヘッド取り付け部材の下端部は、波状、鋸刃状、または矩形波状であることを特徴とする請求項5に記載の吐出ユニット。
【請求項8】
前記ヘッド取り付け部材の下側の側面と前記記録ヘッドの側面とが成す角が鋭角であることを特徴とする請求項5に記載の吐出ユニット。
【請求項9】
前記記録ヘッドは、前記インク吐出口が設けられた吐出部と、前記吐出部の上方に配置されて前記吐出部に液体を供給するリザーバーと、を有し、
前記リザーバーの側面には、前記記録ヘッドの長手方向に沿った下向きの段差が形成され、
前記ヘッド取り付け部材は、前記段差に突き当てられていることを特徴とする請求項5に記載の吐出ユニット。
【請求項10】
前記ヘッド取り付け部材の上端部は、直線状であることを特徴とする請求項9に記載の吐出ユニット。
【請求項11】
前記ヘッド取り付け部材の側面は、前記リザーバーの段差よりも内側に位置していることを特徴とする請求項9に記載の吐出ユニット。
【請求項12】
前記ヘッド取り付け部材の下端部は、前記記録ヘッドの前記ノズル領域よりも上方に位置していることを特徴とする請求項9に記載の吐出ユニット。
【請求項13】
請求項5~12のいずれか1項に記載の吐出ユニットと、
前記ノズル領域に接触して所定の拭き取り方向に移動することで前記インク吐出口を拭き取るワイパーと、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを有する吐出ユニット及び記録ヘッドのインク吐出口を拭き取るワイパーを備えるインクジェット式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の画像形成装置は、記録ヘッドのノズルのインク吐出口を拭き取るワイパーを備えている。ワイパーは、インク吐出口が開口するノズル領域に接触しながら拭き取り開始位置から拭き取り終了位置まで一方向に移動して、インク吐出口を拭き取る。
【0003】
このような拭き取り動作時(ワイピング時)、拭き取られたインクがワイパーからはみ出して、記録ヘッドの側面に回り込み、側面に沿ってせり上がって付着して堆積することがある。ワイピングを繰り返すと、堆積するインクの量が増加し、堆積したインクがシートに落下して画像不良を起こしたり機内を汚染したりするという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、記録ヘッドの側面部を覆うヘッドカバーを備えるインクジェット式の画像形成装置が開示されている。ヘッドカバーの側面部と表面部とには、撥水処理が施されている。これにより、記録ヘッドの側面部にインクが回り込んだ場合でも、ヘッドカバーによってインクが弾かれるので、記録ヘッドの側面部へのインクの付着を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-310476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のインクジェット式記録装置では、ヘッドカバーと記録ヘッドとの間に少なからず隙間が形成され、この隙間に拭き取られたインクが入り込むことがある。入り込むインクの量が多くなると、インクが落下して、前述のような画像不良や機内汚染を起こす虞がある。
【0007】
そこで、本発明は上記事情を鑑み、ワイピング時の記録ヘッドの側面へのインクの堆積を低減できるインクジェット式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、複数のインク吐出口が下向きに開口するノズル領域が設けられた記録ヘッドと、前記ノズル領域に接触して所定の拭き取り方向に移動することで前記インク吐出口を拭き取るワイパーと、を備え、前記拭き取り方向に沿った前記記録ヘッドの側面には、前記拭き取り方向に沿ったヘッド取り付け部材が設けられ、前記ヘッド取り付け部材の表面は、前記側面よりも高い撥水性を有し、前記ヘッド取り付け部材の下端部には、凹部と凸部とが交互に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置において、前記凸部は下方に向けて幅が狭くなるように形成され、前記凹部は下方に向けて幅が広くなるように形成されていることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明の画像形成装置において、前記ヘッド取り付け部材の下端部は、波状、鋸刃状、又は矩形波状であることを特徴としてもよい。
【0011】
本発明の画像形成装置において、前記ヘッド取り付け部材の下側の側面と前記記録ヘッドの側面とが成す角が鋭角であることを特徴としてもよい。
【0012】
本発明の吐出ユニットは、一方方向に長く、複数のインク吐出口が下向きに開口するノズル領域が設けられた記録ヘッドを備え、前記ノズル領域における前記記録ヘッドの側面には、前記記録ヘッドの長手方向に沿ったヘッド取り付け部材が設けられ、前記ヘッド取り付け部材の表面は、前記側面よりも高い撥水性を有し、前記ヘッド取り付け部材の下端部には、凹部と凸部とが交互に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の吐出ユニットにおいて、前記凸部は下方に向けて幅が狭くなるように形成され、前記凹部は下方に向けて幅が広くなるように形成されていることを特徴としてもよい。
【0014】
本発明の吐出ユニットにおいて、前記ヘッド取り付け部材の下端部は、波状、鋸刃状、または矩形波状であることを特徴としてもよい。
【0015】
本発明の吐出ユニットにおいて、前記ヘッド取り付け部材の下側の側面と前記記録ヘッドの側面とが成す角が鋭角であることを特徴としてもよい。
【0016】
本発明の吐出ユニットにおいて、前記記録ヘッドは、前記インク吐出口が設けられた吐出部と、前記吐出部の上方に配置されて前記吐出部に液体を供給するリザーバーと、を有し、前記リザーバーの側面には、前記記録ヘッドの長手方向に沿った下向きの段差が形成され、前記ヘッド取り付け部材は、前記段差に突き当てられていることを特徴としてもよい。
【0017】
本発明の吐出ユニットにおいて、前記ヘッド取り付け部材の上端部は、直線状であることを特徴としてもよい。
【0018】
本発明の吐出ユニットにおいて、前記ヘッド取り付け部材の側面は、前記リザーバーの段差よりも内側に位置していることを特徴としてもよい。
【0019】
本発明の吐出ユニットにおいて、前記ヘッド取り付け部材の下端部は、前記記録ヘッドの前記ノズル領域よりも上方に位置していることを特徴としてもよい。
【0020】
本発明の画像形成装置は、前記吐出ユニットと、前記ノズル領域に接触して所定の拭き取り方向に移動することで前記インク吐出口を拭き取るワイパーと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ワイピング時に記録ヘッドの側面にせり上がって凹部に入り込んだインクが、凸部に沿って下方に移動して凸部の下端から自重によって落下しやすくなるので、記録ヘッドの側面へのインクの蓄積を防ぎ、画像不良や機内汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、吐出ユニットを示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、クリーニングユニットを示す平面図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、記録ヘッドを示す側面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、記録ヘッドを示す正面図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、第1の変形例に係る記録ヘッドを示す側面図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、第2の変形例に係る記録ヘッドを示す側面図である。
図5C】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、第3の変形例に係る記録ヘッドを示す側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、第4の変形例に係る記録ヘッドを示す正面図である。
図7A】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、第5の変形例に係る記録ヘッドを示す側面図である。
図7B】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、第5の変形例に係る記録ヘッドを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0024】
図1を参照して、画像形成装置1について説明する。図1は、画像形成装置1(画像形成時)の内部構成を模式的に示す正面図である。各図に示されるFr、Rr、L、Rは、画像形成装置1の前方向、後方向、左方向、右方向を示す。
【0025】
画像形成装置1は、給紙部3と、インクジェット方式の画像形成部5と、給紙部3で給紙されたシートSが画像形成部5を通って排出口(図示省略)まで搬送される搬送経路7と、を備えている。給紙部3は、シートSを収容する給紙カセット9と、給紙カセット9から搬送経路7にシートSを給送する給紙装置11と、を備えている。画像形成部5は、ヘッドユニット13と、搬送ユニット15と、メンテナンスユニット17と、を備えている。
【0026】
まず、ヘッドユニット13について説明する。ヘッドユニット13は、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のインクに対応する4つの吐出ユニット21を備えている。4つの吐出ユニット21は、搬送経路7に沿ったシートSの搬送方向(左方向)に沿って並列して配置されている。
【0027】
次に、各吐出ユニット21について、図2を参照して説明する。図2は吐出ユニット21を示す斜視図である。
【0028】
各吐出ユニット21は、3個の記録ヘッド31と、3個の記録ヘッド31が支持されるヘッドベース33と、を有している。
【0029】
各記録ヘッド31は、前後方向に長い直方体形状を有し、前後方向及び左右方向に配列された多数個のノズルを備えている。前後方向は、本発明の一方方向の一例である。各ノズルのインク吐出口は、記録ヘッド31の下面に開口している。各ノズルは、ピエゾ式又はサーマル式等のインク吐出方法によって、インク吐出口から下方にインクを吐出する。記録ヘッド31の下面にインク吐出口が開口する領域をノズル領域Nとする。
【0030】
ヘッドベース33は、前後方向に長い平板状の部材である。3個の記録ヘッド31は、ヘッドベース33に、前後方向に沿った千鳥状に配列されて支持されている。各記録ヘッド31は、ノズル領域Nがヘッドベース33の下面から下方に突き出すように支持されている。記録ヘッド31は、例えば、SUSなどの金属で形成されている。記録ヘッド31の構成については後述する。
【0031】
再度図1を参照して、ヘッドユニット13は、画像形成を行う印字位置(図1の実線参照)と、印字位置よりも上方に退避してヘッドユニット13のメンテナンス及び保護を行う退避位置(図1の二点鎖線参照)とに、昇降可能に支持されている。
【0032】
次に、搬送ユニット15について、図1を参照して説明する。搬送ユニット15は、左右方向に離れて配置されたローラー間に巻き掛けられて、図1の反時計回り方向に循環走行する搬送ベルト51を備えている。搬送ベルト51の上側の走行面は、画像形成部5を通過する搬送経路7の一部を形成する。ヘッドユニット13が印字位置に下降すると、4つの吐出ユニット21の各記録ヘッド31のノズル領域Nが、搬送ベルト51の上側の走行面に近接する。
【0033】
画像形成時、ヘッドユニット13は印字位置に下降する。また、給紙部3で給紙されたシートSは搬送経路7に沿って画像形成部5に搬送される。画像形成部5において、搬送ベルト51によって搬送されるシートSに、各吐出ユニット21の記録ヘッド31から画像データに基づいてインクが吐出されて、シートSに画像が形成される。
【0034】
次に、メンテナンスユニット17について、図1を参照して説明する。メンテナンスユニット17は、キャップユニット61及びワイプユニット63と、を備えている。
【0035】
キャップユニット61は、ヘッドユニット13の各吐出ユニット21の各記録ヘッド31に対応するキャップを備えている。キャップユニット61は、ヘッドユニット13の左側の退避位置と、退避位置に上昇したヘッドユニット13の下方のキャッピング位置と、の間を左右方向に移動可能に支持されている。キャップユニット61をキャッピング位置に移動させた後、ヘッドユニット13を下降させることで、各キャップがヘッドベース33に押し当てられて、各記録ヘッド31のノズル領域Nを覆うようになっている。
【0036】
ワイプユニット63について、図1図3を参照して説明する。図3は、ワイプユニット63を示す平面図である。ワイプユニット63は、ヘッドユニット13の4つの吐出ユニット21に対応する4つのワイパーキャリッジ65を備えている。ワイパーキャリッジ65は、前後方向に移動可能に支持されている。ワイパーキャリッジ65には、吐出ユニット21の3つの記録ヘッド31に対応する3つのワイパー67と、各ワイパー67で拭き取られたインクが回収されるトレイ69と、が備えられている。ワイパー67は、例えば、弾性部材で形成されたブレードや、弾性部材で形成されたブレードやローラーの周囲にクロスを貼り付けたものを使用できる。ワイプユニット63は、ヘッドユニット13の左側の退避位置と、退避位置に上昇したヘッドユニット13の下方のワイピング位置と、の間を左右方向に移動可能に支持されている。
【0037】
ワイプユニット63をワイピング位置に移動させた後、ヘッドユニット13を下降させてノズル領域Nにワイパー67を接触させ、各ワイパーキャリッジ65を前方の拭き取り開始位置(図3の実線参照)から後方の拭き取り終了位置(図3の二点鎖線参照)に移動させることで、各吐出ユニット21の各記録ヘッド31(図2参照)のノズル領域Nが、ワイパーキャリッジ65のワイパー67で拭き取られるようになっている。ワイパー67で拭き取られたインクは、トレイ69に落下して回収口(図示省略)を通して回収される。ワイパーキャリッジ65の移動方向を拭き取り方向Xとする。本実施形態では、拭き取り方向Xは前から後へ向かう方向である。
【0038】
次に、図4A及び図4Bを参照して、記録ヘッド31について説明する。図4Aは記録ヘッド31を左側から見た図であり、図4Bは記録ヘッド31を前側から見た図である。
【0039】
拭き取り方向X(前後方向)に沿った記録ヘッド31の側面31aには、ヘッド取り付け部材41が形成されている。より具体的には、拭き取り方向Xにおいて、ノズル領域Nの両側の側面31aには、記録ヘッド31の長手方向(前後方向、すなわち、拭き取り方向X)に沿ってヘッド取り付け部材41が形成されている。ヘッド取り付け部材41は、図4Bに示されるように、前後方向から見た断面形状が縦長の矩形の直方体状であり、ノズル領域Nよりも高い位置に形成されている。一例として、ヘッド取り付け部材41のノズル領域Nからの距離は0.1mmである。なお、この場合の記録ヘッド31の側面31aとは、ノズル領域Nが存在する下面に隣接する面であり、概ね上方に延びる面である。
【0040】
ヘッド取り付け部材41の下端部は、図4Aに示されるように、左右方向から見て略半円状の下に凸の凸部43と上に凹の凹部45とが交互に形成された波型の凹凸状を有している。詳細には、凸部43は、下方に向かって幅が狭くなるように形成され、凹部45は、下方に向かって幅が広くなるように形成されている。ヘッド取り付け部材41は、記録ヘッド31の側面31aよりも高い撥水性を有する材料(例えば、シリコン樹脂やフッ素系樹脂)で形成されている。言い換えると、ヘッド取り付け部材41の表面に対するインクの接触角が、記録ヘッド31の側面31aに対するインクの接触角よりも大きい。あるいは、ヘッド取り付け部材41は、表面のみが高い撥水性を有する材料でコーティングされていてもよい。一例として、ヘッド取り付け部材41の厚さは0.2~0.3mmである。
【0041】
ヘッド取り付け部材41は、例えば、両面テープ、接着剤、熱融着等の方法で、記録ヘッド31の側面31aから突出するように固定される。より詳細には、ヘッド取り付け部材41は、側面31aに隙間なく固定される。
【0042】
上記構成を有する画像形成装置1におけるワイピングについて、図4A及び図4Bを参照して説明する。ワイピングは、例えば、記録ヘッド31のノズル内のインクのパージ後に行われる。ワイピング時には、前述のように、ワイプユニット63のワイパーキャリッジ65(図3参照)が拭き取り方向Xに移動して、ワイパー67がノズル領域Nを拭き取る。ワイパー67は、所定の圧力でノズル領域Nに押し付けられるので、図4Aに示されるように、拭き取り方向Xの下流側に湾曲する。また、ワイパー67の幅はノズル領域Nの幅よりもやや広いので、ノズル領域Nに押し付けられた際、図4Bに示されるように、ワイパー67の両端部はノズル領域Nよりも上方に突出する。
【0043】
ワイパー67で拭き取られたインクLは、ワイパー67の両端部から記録ヘッド31の側面31aに押し上げられる(せり上がる)。せり上がったインクは、やがてヘッド取り付け部材41に達し、凹部45に入り込む。
【0044】
しかし、ヘッド取り付け部材41は、記録ヘッド31の側面31aよりも撥水性が高くインクと馴染み難いので、インクが凹部45から弾かれる。凹部45から弾かれたインクは、凹部45の両側面、すなわち、凹部45に隣接する2つの凸部43の側面に沿って下方に移動する。この結果、隣接する2つの凹部45に入り込んだインクが、2つの凹部45間の1つの凸部43の先端(下端)に集まる。すると、集まったインクの量が増え、自重によって凸部43の下端から落下しやすくなる。このように、インクは凹部45から落下し、記録ヘッド31の側面31aに蓄積されにくくなる。
【0045】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、ワイピング時に記録ヘッド31の側面31aにせり上がって凹部45に入り込んだインクは、凸部43に沿って下方に移動して凸部43の下端から自重によって落下しやすくなる。このため、ワイピング終了時に、記録ヘッド31の側面31aへのインクの付着又は蓄積を防止、あるいは、記録ヘッド31の側面31aへ付着又は蓄積するインクの量を低減できる。したがって、画像形成時に記録ヘッド31の側面31aからのインクの落下を防止又は低減でき、画像不良や機内汚染を防止できる。
【0046】
また、凹部45は下方に向かって幅が広くなるように形成されているので、凹部45の側面とインクとの接触面積が比較的狭くなり、入り込んだインクが凹部45に保持されにくい。また、凸部43は下方に向かって幅が狭くなるように形成されているので、両側の凹部45から凸部43の下端にインクが集まりやすい。したがって、凹部45に入り込んだインクの落下を促進できる。さらに、せり上がったインクが、ヘッド取り付け部材41と記録ヘッド31の側面31aとの間に入り込むことがないので、インクの蓄積をより確実に防止できる。
【0047】
次に、図5A図5Cを参照して、記録ヘッド31の第1~第3の変形例について説明する。図5A図5Cは、記録ヘッド31を左側からみた側面図である。
【0048】
まず、図5Aを参照して、第1の変形例について説明する。第1の変形例において、ヘッド取り付け部材41の下端部は、左右方向から見て三角形状の下に凸の凸部43と上に凹の凹部45とが交互に形成された三角波型の凹凸形状を有している。詳細には、凸部43は、下方に向かって幅が狭くなるように形成され、凹部45は、下方に向かって幅が広くなるように形成されている。
【0049】
第1の変形例においても、上記の実施形態と同様に、隣接する2つの凹部45に入り込んだインクLが、2つの凹部45間の1つの凸部43に沿って下方に移動して、凸部43の下端に集まる。そして、集まったインクの量が増えると、自重によって凸部43から落下するので、インクが記録ヘッド31の側面31aに蓄積されにくくなる。
【0050】
次に、図5Bを参照して、第2の変形例について説明する。第2の変形例において、ヘッド取り付け部材41の下端部は、左右方向から見て鋸刃状に形成されている。すなわち、直角三角形状の下に凸の凸部43と上に凹の凹部45とが交互に形成されている。凸部43は、下方に向かって幅が狭くなるように形成され、凹部45は、下方に向かって幅が広くなるように形成されている。また、凹部45は、拭き取り方向Xの下流側の側面が垂直で、上流側の側面が傾斜するように形成される。
【0051】
第2の変形例においては、記録ヘッド31の側面31aにせり上がったインクは、拭き取り方向Xへのワイパー67の移動に伴って拭き取り方向Xの下流側に押され、凹部45の傾斜側面に押し付けられて、傾斜側面に沿って凸部43の先端に集まりやすくなる。このようにインクを凸部43の先端に集まりやすくすることで、凸部43の先端からのインクの落下を促進できる。
【0052】
次に、図5Cを参照して、第3の変形例について説明する。第3の変形例において、ヘッド取り付け部材41の下端部は、左右方向から見て矩形状の凸部43が、拭き取り方向Xに沿って所定の間隔で形成されている。これにより、隣接する凸部43の間に左右方向から見て矩形状の凹部45が形成される。拭き取り方向Xに沿った凸部43の幅は、凹部45の幅よりも狭い。
【0053】
第3の変形例においては、記録ヘッド31の側面31aにせり上がって凹部45に入り込んだインクLは、拭き取り方向Xへのワイパー67の移動に伴って拭き取り方向Xの下流側に押され、凸部43に堰き止められる。堰き止められたインクLは凸部43の下端に集まり、自重によって凸部43から落下しやすくなる。
【0054】
次に、図6を参照して、第4の変形例について説明する。図6は記録ヘッド31を正面から見た図である。
【0055】
第4の変形例においては、ヘッド取り付け部材41の下側の側面と記録ヘッド31の側面31aとの成す角αが鋭角に形成されている。ヘッド取り付け部材41は、例えば、接着剤47によって記録ヘッド31の側面31aに固定されている。接着剤47は、ヘッド取り付け部材41の上部に塗布されている。第4の変形例においては、記録ヘッド31の側面31aに沿ってせり上がったインクとヘッド取り付け部材41との接触面積が狭くなるので、ヘッド取り付け部材41と記録ヘッド31の側面31aとの間の隅にインクLが保持されにくくなり、インクの落下を促進できる。
【0056】
次に、記録ヘッド31の第5の変形例について、図7A及び図7Bを参照して説明する。図7Aは記録ヘッド31を示す側面図、図7Bは記録ヘッド31を示す正面図である。
【0057】
第5の変形例の記録ヘッド31は、吐出部91とリザーバー93とを備えている。吐出部91の下面には、ノズルのインク吐出口が開口している。吐出部91の下面にインク吐出口が開口する領域をノズル領域Nとする。リザーバー93は、吐出部91の上方に、インクを吐出させるための圧電素子を間に挟んで積み重ねられて、吐出部91にインクを供給する。
【0058】
リザーバー93は直方体状であり、上部と、吐出部91に連通する下部とを有し、左右方向の幅が、上部よりも下部の方が広く形成されている。これにより、リザーバー93の側面には、下向きの平坦な段差面93xが形成される。
【0059】
リザーバー93の下部の両側面93aと吐出部91の両側面91aとには、拭き取り方向Xに沿ってヘッド取り付け部材41が形成されている。ヘッド取り付け部材41は、記録ヘッド31の側面、より具体的には、吐出部91の両側面91aよりも撥水性が高い。ヘッド取り付け部材41は、前後方向から見た断面形状が縦長の矩形の直方体状である。ヘッド取り付け部材41の上端面は直線状の平坦な面であり、下端部は凸部43と凹部45とが交互に配置された波状に形成されている。また、ヘッド取り付け部材41の厚さ(左右方向に沿った長さ)は、段差面93xの高さ(左右方向に沿った長さ)よりも大きい。
さらに、ヘッド取り付け部材41の高さ(上下方向に沿った長さ)は、リザーバー93の下部及び吐出部91の高さ(上下方向に沿った長さ)よりも短い。すなわち、リザーバー93の下部の両側面93aは、ヘッド取り付け部材41で覆われている。ヘッド取り付け部材41は、リザーバー93の下部の両側面93aの全体を覆っている方がよいが、必ずしもそうでなくてもよい。ヘッド取り付け部材41の下に、リザーバー93の下部の両側面93aが露出している場合、ヘッド取り付け部材41は、リザーバー93の下部の両側面93aよりも撥水性が高い方がよいが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0060】
ヘッド取り付け部材41の上端面は、段差面93xに突き当てられて、接着剤や両面テープを用いて段差面93xに固定されている。また、ヘッド取り付け部材41の側面は、リザーバー93の上部の側面よりも内側に位置している。さらに、ヘッド取り付け部材41の下端面は、吐出部91のノズル領域Nよりも上方に位置している。
【0061】
上記構成を有する記録ヘッド31においても、ワイパー67で拭き取られたインクLは、ワイパー67の両端部から記録ヘッド31の吐出部91の側面91aに押し上げられる(せり上がる)。せり上がったインクは、前述のように、凹部45に入り込み、凹部45から弾かれて、凹部45に隣接する2つの凸部43の側面に沿って下方に移動し、自重によって凸部43の下端から落下しやすくなる。このように、インクは凹部45から落下し、記録ヘッド31の側面に蓄積されにくくなる。
【0062】
上記説明したように、本発明の記録ヘッド31によれば、ヘッド取り付け部材41の上端面が段差面93xに突き当てられているので、ヘッド取り付け部材41の記録ヘッド31への位置合わせを容易に行うことができる。さらに、ヘッド取り付け部材41の上端面が平坦な直線状に形成されているので、上端面と段差面93xとの接触面積を増加させることでき、ヘッド取り付け部材41と記録ヘッド31とを強固に固定できる。さらには、ヘッド取り付け部材41の両側面は、記録ヘッド31の両側面よりも内側に位置するので、ヘッド取り付け部材41と周囲の部品との接触が防止され、ヘッド取り付け部材41を剥がれにくくできる。さらには、ヘッド取り付け部材41の下端部はノズル領域Nよりも上方に位置するので、ヘッド取り付け部材41がシート等の記録媒体に接触する可能性を低減でき、ヘッド取り付け部材41の破損を抑制できる。
【0063】
ヘッド取り付け部材41は、記録ヘッド31に一体に設けられ、表面が、記録ヘッド31の側面31aよりも高い撥水性を有するように加工されてもよい。
【0064】
本発明は特定の実施形態について記載されてきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者は上記実施形態を改変可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
21 吐出ユニット
31 記録ヘッド
41 ヘッド取り付け部材
43 凸部
45 凹部
67 ワイパー
91 吐出部
93 リザーバー
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B