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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005292
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】積層体、眼鏡用レンズ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240110BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20240110BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20240110BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B27/00 101
C08G77/26
G02B1/115
G02B1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105400
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】300035870
【氏名又は名称】株式会社ニコン・エシロール
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】伊神 優香
(72)【発明者】
【氏名】脇保 英之
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 将吾
(72)【発明者】
【氏名】石村 圭
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
4J246
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009BB11
2K009CC03
2K009CC26
2K009CC42
2K009DD02
2K009DD03
2K009DD06
2K009EE05
4F100AG00B
4F100AH06D
4F100AK01B
4F100AK52C
4F100AK52D
4F100AR00A
4F100AT00B
4F100BA04
4F100BA07
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100JB06D
4F100JK12
4F100JN06A
4J246AA11
4J246AA19
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB320
4J246BB321
4J246BB32X
4J246CA460
4J246CA469
4J246CA46X
4J246FA131
4J246FA171
4J246GC49
4J246GD08
4J246HA22
(57)【要約】
【課題】 耐傷性に優れる積層体を提供すること。
【解決手段】 反射防止層を有する基材(s)と、上記基材(s)の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体であって、上記中間層(c)は、ケイ素原子を有すると共に、アミノ基、及び/又はアミン骨格を有する有機ケイ素化合物(C)、並びに、フルオロアルキル基を有すると共に、Si-NH結合を有する有機ケイ素化合物(G)、上記有機ケイ素化合物(G)の加水分解物、及び、上記有機ケイ素化合物(G)の加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む混合組成物(cc)の硬化層であり、上記撥水層(r)は、所定の有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)の硬化層である、積層体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止層を有する基材(s)と、前記基材(s)の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体であって、
前記中間層(c)は、ケイ素原子を有すると共に、アミノ基、及び/又はアミン骨格を有する有機ケイ素化合物(C)、並びに、フルオロアルキル基を有すると共に、Si-NH結合を有する有機ケイ素化合物(G)、前記有機ケイ素化合物(G)の加水分解物、及び、前記有機ケイ素化合物(G)の加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む混合組成物(cc)の硬化層であり、
前記撥水層(r)は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が連結基を介して又は連結基を介さずにケイ素原子に結合すると共に、前記ケイ素原子に連結基を介して又は連結基を介さずに加水分解性基が結合している有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)の硬化層である、積層体。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物(G)が、下記式(g1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物である、請求項1に記載の積層体。
【化1】

上記式(g1)中、Rfg10は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
g11、Rg12、Rg13及びRg14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rg11が複数存在する場合は複数のRg11がそれぞれ異なっていてもよく、Rg12が複数存在する場合は複数のRg12がそれぞれ異なっていてもよく、Rg13が複数存在する場合は複数のRg13がそれぞれ異なっていてもよく、Rg14が複数存在する場合は複数のRg14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfg11、Rfg12、Rfg13及びRfg14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfg11が複数存在する場合は複数のRfg11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfg12が複数存在する場合は複数のRfg12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfg13が複数存在する場合は複数のRfg13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfg14が複数存在する場合は複数のRfg14がそれぞれ異なっていてもよく、
g15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rg15が複数存在する場合は複数のRg15がそれぞれ異なっていてもよく、
g1は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、前記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、Ag1が複数存在する場合は複数のAg1がそれぞれ異なっていてもよく、
g11、g12、g13、g14及びg15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
gは、1~3の整数であり、
Rfg10-、-Si(NH(Rg153-g、g11個の-{C(Rg11)(Rg12)}-、g12個の-{C(Rfg11)(Rfg12)}-、g13個の-{Si(Rg13)(Rg14)}-、g14個の-{Si(Rfg13)(Rfg14)}-、g15個の-Ag1-は、Rfg10-、-Si(NH(Rg153-gが末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【請求項3】
前記混合組成物(cc)における、前記有機ケイ素化合物(C)の含有量に対する、前記有機ケイ素化合物(G)、前記有機ケイ素化合物(G)の加水分解物、及び、前記有機ケイ素化合物(G)の加水分解縮合物の合計含有量の質量比が0.0002~0.02である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【化2】

上記式(a1)中、
Rfa1は、両端が酸素原子である2価のパーフルオロポリエーテル構造であり、
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基であり、R11が複数存在する場合は複数のR11がそれぞれ異なっていてもよく、R12が複数存在する場合は複数のR12がそれぞれ異なっていてもよく、R13が複数存在する場合は複数のR13がそれぞれ異なっていてもよく、
、E、E、E、及びEは、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であり、Eが複数存在する場合は複数のEがそれぞれ異なっていてもよく、Eが複数存在する場合は複数のEがそれぞれ異なっていてもよく、Eが複数存在する場合は複数のEがそれぞれ異なっていてもよく、Eが複数存在する場合は複数のEがそれぞれ異なっていてもよく、
及びGは、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~10価のオルガノシロキサン基であり、
、J、及びJは、それぞれ独立して、加水分解性基又は-(CHe6-Si(OR14であり、e6は1~5であり、R14はメチル基又はエチル基であり、Jが複数存在する場合は複数のJがそれぞれ異なっていてもよく、Jが複数存在する場合は複数のJがそれぞれ異なっていてもよく、Jが複数存在する場合は複数のJがそれぞれ異なっていてもよく、
及びLは、それぞれ独立して、酸素原子、窒素原子、又はフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1~12の2価の連結基であり、Lが複数存在する場合は複数のLがそれぞれ異なっていてもよく、Lが複数存在する場合は複数のLがそれぞれ異なっていてもよく、
d11は、1~9であり、
d12は、0~9であり、
a10及びa14は、それぞれ独立して0~10であり、
a11及びa15は、それぞれ独立して0又は1であり、
a12及びa16は、それぞれ独立して0~9であり、
a13は、0又は1であり、
a21、a22、及びa23は、それぞれ独立して0~2であり、
e1、e2、及びe3は、それぞれ独立して1~3である。
【請求項5】
前記混合組成物(ca)が、下記式(b1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物(B)を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【化3】

上記式(b1)中、Rfb10は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
b11、Rb12、Rb13及びRb14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rb11が複数存在する場合は複数のRb11がそれぞれ異なっていてもよく、Rb12が複数存在する場合は複数のRb12がそれぞれ異なっていてもよく、Rb13が複数存在する場合は複数のRb13がそれぞれ異なっていてもよく、Rb14が複数存在する場合は複数のRb14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfb11、Rfb12、Rfb13及びRfb14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfb11が複数存在する場合は複数のRfb11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb12が複数存在する場合は複数のRfb12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb13が複数存在する場合は複数のRfb13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb14が複数存在する場合は複数のRfb14がそれぞれ異なっていてもよく、
b15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rb15が複数存在する場合は複数のRb15がそれぞれ異なっていてもよく、
は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、前記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、Aが複数存在する場合は複数のAがそれぞれ異なっていてもよく、
は、加水分解性基であり、Aが複数存在する場合は複数のAがそれぞれ異なっていてもよく、
b11、b12、b13、b14及びb15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
cは、1~3の整数であり、
Rfb10-、-Si(A(Rb153-c、b11個の-{C(Rb11)(Rb12)}-、b12個の-{C(Rfb11)(Rfb12)}-、b13個の-{Si(Rb13)(Rb14)}-、b14個の-{Si(Rfb13)(Rfb14)}-、b15個の-A-は、Rfb10-、-Si(A(Rb153-cが末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【請求項6】
前記混合組成物(ca)における、前記有機ケイ素化合物(A)に対する前記有機ケイ素化合物(B)の質量比が0.05~2.0である、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記有機ケイ素化合物(C)における少なくとも1つのケイ素原子には、加水分解性基又はヒドロキシ基が結合している、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記有機ケイ素化合物(C)が、下記式(c2)で表される有機ケイ素化合物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【化4】

上記式(c2)中、
x20及びRx21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx20が複数存在する場合は複数のRx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rx21が複数存在する場合は複数のRx21がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx20及びRfx21は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx20が複数存在する場合は複数のRfx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx21が複数存在する場合は複数のRfx21がそれぞれ異なっていてもよく、
x22及びRx23はそれぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx22及びRx23が複数存在する場合は複数のRx22及びRx23がそれぞれ異なっていてもよく、
20及びX21はそれぞれ独立して、加水分解性基であり、X20及びX21が複数存在する場合は複数のX20及びX21がそれぞれ異なっていてもよく、
p20は、1~30の整数であり、p21は、0~30の整数であり、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位の少なくとも1つは、アミン骨格-NR100-に置き換わっており、前記アミン骨格におけるR100は水素原子又はアルキル基であり、
p22及びp23はそれぞれ独立して、1~3の整数であり、
p20個の-{C(Rx20)(Rx21)}-、p21個の-{C(Rfx20)(Rfx21)}-は、p20個又はp21個が連続である必要はなく、任意の順で並んで結合し、両末端が-Si(X20p22(Rx223-p22及び-Si(X21p23(Rx233-p23となる。
【請求項9】
前記有機ケイ素化合物(A)が下記式(a3)又は(a4)で表される化合物であり、かつ、前記有機ケイ素化合物(C)が下記式(c2-2)で表される化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
【化5】

上記式(a3)中、R30は炭素数が2~6のパーフルオロアルキル基であり、R31及びR32はそれぞれ独立していずれも炭素数が2~6のパーフルオロアルキレン基であり、R33は炭素数が2~6の3価の飽和炭化水素基であり、R34は炭素数が1~3のアルキル基である。
【化6】

上記式(a4)中、R40は炭素数が2~5のパーフルオロアルキル基であり、R41は炭素数が2~5のパーフルオロアルキレン基であり、R42は炭素数2~5のアルキレン基の水素原子の一部がフッ素に置換されたフルオロアルキレン基であり、R43、R44はそれぞれ独立に炭素数が2~5のアルキレン基であり、R45はメチル基又はエチル基である。k1、k2、k3はそれぞれ独立に1~5の整数である。
【化7】

上記式(c2-2)中、X22及びX23は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、X22及びX23が複数存在する場合は複数のX22及びX23がそれぞれ異なっていてもよく、Rx24及びRx25は、それぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx24及びRx25が複数存在する場合は複数のRx24及びRx25がそれぞれ異なっていてもよく、-C2w-は、その一部のメチレン基の少なくとも1つがアミン骨格-NR100-に置き換わっており、R100は水素原子又はアルキル基であり、wは1~30の整数であり(ただし、アミン骨格に置き換わったメチレン基の数を除く)、p24及びp25は、それぞれ独立して、1~3の整数である。
【請求項10】
前記反射防止層を有する基材(s)が、ガラス層又は樹脂層の上に反射防止層が形成されたものである、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の積層体を含む、眼鏡用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体及び眼鏡用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材の少なくとも一方の面にハードコート層(X)、プライマー層(Y)及び表面層(Z)が順に積層されたハードコートフィルムであって、表面層(Z)が110°以上の水接触角を有するハードコートフィルムが開示されている。また、表面層(Z)を形成するためには、ポリパーフルオロポリエーテル鎖を有するフッ素系化合物を用いるのが好ましいこと、またプライマー層(Y)を形成するためには、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物が好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-120253号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示は、反射防止層を有する基材(s)と、基材(s)の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体であって、上記中間層(c)は、ケイ素原子を有すると共に、アミノ基、及び/又はアミン骨格を有する有機ケイ素化合物(C)、並びに、フルオロアルキル基を有すると共に、Si-NH結合を有する有機ケイ素化合物(G)、上記有機ケイ素化合物(G)の加水分解物、及び、上記有機ケイ素化合物(G)の加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む混合組成物(cc)の硬化層であり、上記撥水層(r)は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が連結基を介して又は連結基を介さずにケイ素原子に結合すると共に、上記ケイ素原子に連結基を介して又は連結基を介さずに加水分解性基が結合している有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)の硬化層である、積層体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本開示の積層体について詳述する。
積層体は、耐傷性に優れることが望まれている。本開示の積層体は、耐傷性に優れる。
なお、本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
以下、本開示の積層体を構成する反射防止層を有する基材(s)、中間層(c)、及び撥水層(r)について説明する。
【0006】
<反射防止層を有する基材(s)>
反射防止層を有する基材(s)の反射防止層(ar)以外の部分の材質は、特に限定されず、有機系材料、無機系材料のいずれでもよく、少なくとも片側面に反射防止層(ar)を備えていればよい。有機系材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂(ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ビニルベンジルクロライド系樹脂、ポリビニルアルコール等)等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。無機系材料としては、鉄、シリコン、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属、又はこれら金属を含む合金、セラミックス、ガラス等が挙げられる。
【0007】
積層体は、例えば眼鏡用レンズに好適に用いることができ、この場合には反射防止層を有する基材(s)はガラス層(sg)又は樹脂層(sp)の上に、反射防止層(ar)が形成されたものとすることが好ましい。反射防止層(ar)は、少なくとも中間層(c)側に形成されていることが好ましい。樹脂層(sp)に含まれる材料としては、アリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂、チオウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂等が挙げられる。ガラス層(sg)又は樹脂層(sp)と、反射防止層(ar)の間には、プライマー層及び/又はハードコート層が形成されていてもよい。
上記プライマー層とは、プライマー層を介して積層される2つの層の密着性を向上させる層であり、公知の材料を用いることができる。
上記ハードコート層は、ガラス層(sp)又は樹脂層(sg)に耐傷性を付与する層であり、JIS K5600において定められた試験法による鉛筆硬度でH以上の硬度を示すものである。ハードコート層としては、公知のハードコート層を用いることができ、例えば有機系ハードコート層、無機系ハードコート層、及び有機-無機ハイブリッドハードコート層を挙げることができる。
上記プライマー層及びハードコート層は、例えば、前駆組成物を基材に塗布して硬化する方法により形成することができ、後記する撥水層(r)を形成する方法が使用できる。
反射防止層(ar)は、入射した光の反射を防止する機能を有する層であり、具体的には、530nmの可視光領域において、反射率が5.0%以下程度に低減された反射特性を示す層であることが好ましい。
反射防止層(ar)の構造は特に限定されず、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造の場合、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した構造が好ましい。高屈折率層を構成する材料としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、タンタル及びランタンの酸化物等が挙げられ、低屈折率層を構成する材料としてはシリカ等が挙げられる。多層構造の反射防止層(ar)としては、SiOとZrOが交互に積層され、ガラス層(sg)又は樹脂層(sp)と反対側の最外層がSiOである構造が好ましい。反射防止層(ar)は、例えば蒸着法によって形成することができる。
【0008】
基材(s)の厚さは、例えば0.9~10mmである。なお、基材(s)の厚さが均一でない場合は、基材(s)の重心での厚みが上記範囲となればよい。
【0009】
<中間層(c)>
中間層(c)は、ケイ素原子を有すると共にアミノ基又はアミン骨格(-NR100-であり、R100は水素原子又はアルキル基)を有する有機ケイ素化合物(C)、並びに、フルオロアルキル基を有すると共に、Si-NH結合を有する有機ケイ素化合物(G)、有機ケイ素化合物(G)の加水分解物、及び、有機ケイ素化合物(G)の加水分解縮合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む混合組成物(cc)の硬化層であり、中間層(c)はアミノ基又はアミン骨格を有する。
好ましい態様においては、有機ケイ素化合物(C)のケイ素原子には加水分解性基又はヒドロキシ基が結合しており、有機ケイ素化合物(C)が有するSi-OH基又はケイ素原子に結合した加水分解性基の加水分解で生じた有機ケイ素化合物(C)の-SiOH基同士が脱水縮合するため、中間層(c)は、有機ケイ素化合物(C)由来の縮合構造を有することが好ましい。
また、有機ケイ素化合物(G)にはSi-NH結合が含まれており、Si-NH結合と有機ケイ素化合物(C)の-SiOH基とが縮合するか、Si-NH結合が加水分解して生じた-SiOH基同士、Si-NH結合が加水分解して生じた-SiOH基と有機ケイ素化合物(C)の-SiOH基とが脱水縮合するため、中間層(c)は、有機ケイ素化合物(G)由来の縮合構造を有することが好ましい。
中間層(c)は撥水層(r)のプライマー層として機能することができる。
有機ケイ素化合物(C)のケイ素原子に結合する加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アセトキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。有機ケイ素化合物(C)のケイ素原子には、炭素数1~4のアルコキシ基又はヒドロキシ基が結合していることが好ましい。
以下、有機ケイ素化合物(C)及び有機ケイ素化合物(G)の好ましい態様について説明する。
【0010】
有機ケイ素化合物(C)としては、例えば、下記式(c1)で表される有機ケイ素化合物(C1)、下記式(c2)で表される有機ケイ素化合物(C2)、及び下記式(c3)で表される有機ケイ素化合物(C3)が挙げられる。
【0011】
[有機ケイ素化合物(C1)]
【0012】
【化1】
【0013】
上記式(c1)中、
x11、Rx12、Rx13、Rx14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx11が複数存在する場合は複数のRx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rx12が複数存在する場合は複数のRx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rx13が複数存在する場合は複数のRx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rx14が複数存在する場合は複数のRx14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx11、Rfx12、Rfx13、Rfx14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx11が複数存在する場合は複数のRfx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx12が複数存在する場合は複数のRfx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx13が複数存在する場合は複数のRfx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx14が複数存在する場合は複数のRfx14がそれぞれ異なっていてもよく、
x15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx15が複数存在する場合は複数のRx15がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、加水分解性基であり、X11が複数存在する場合は複数のX11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、-NH-、又は-S-であり、Y11が複数存在する場合は複数のY11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、ビニル基、α-メチルビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、エポキシ基、ウレイド基、又はメルカプト基であり、
p1は、1~20の整数であり、p2、p3、p4は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p5は、1~10の整数であり、
p6は、1~3の整数であり、
11がアミノ基でない場合はY11の少なくとも1つが-NH-であり、Y11が全て-S-である場合はZ11がアミノ基であり、
11-、-Si(X11p6(Rx153-p6、p1個の-{C(Rx11)(Rx12)}-、p2個の-{C(Rfx11)(Rfx12)}-、p3個の-{Si(Rx13)(Rx14)}-、p4個の-{Si(Rfx13)(Rfx14)}-、p5個の-Y11-は、Z11-及び-Si(X11p6(Rx153-p6が末端となり、-O-が-O-と連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【0014】
x11、Rx12、Rx13、及びRx14は、水素原子であることが好ましい。
【0015】
Rfx11、Rfx12、Rfx13、及びRfx14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子であることが好ましい。
【0016】
x15は、炭素数が1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0017】
11は、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はイソシアネート基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが更に好ましい。
【0018】
11は、-NH-であることが好ましい。
【0019】
11は、メタクリロイル基、アクリロイル基、メルカプト基又はアミノ基であることが好ましく、メルカプト基又はアミノ基がより好ましく、アミノ基が更に好ましい。
【0020】
p1は1~15が好ましく、より好ましくは2~10である。p2、p3及びp4は、それぞれ独立して、0~5が好ましく、より好ましくは全て0~2である。p5は、1~5が好ましく、より好ましくは1~3である。p6は、2~3が好ましく、より好ましくは3である。
【0021】
有機ケイ素化合物(C1)としては、上記式(c1)において、Rx11及びRx12がいずれも水素原子であり、Y11が-NH-であり、X11がアルコキシ基(特にメトキシ基又はエトキシ基)であり、Z11がアミノ基又はメルカプト基であり、p1が1~10であり、p2、p3及びp4がいずれも0であり、p5が1~5(特に1~3)であり、p6が3である化合物を用いることが好ましい。
【0022】
有機ケイ素化合物(C1)は、下記式(c1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
上記式(c1-2)中、
12は、加水分解性基であり、X12が複数存在する場合は複数のX12がそれぞれ異なっていてもよく、
12は、-NH-であり、
12は、アミノ基、又はメルカプト基であり、
x16は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx16が複数存在する場合は複数のRx16がそれぞれ異なっていてもよく、
pは、1~3の整数であり、qは2~5の整数であり、rは0~5の整数である。
【0025】
12は、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はイソシアネート基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。
【0026】
12は、アミノ基であることが好ましい。
【0027】
x16は、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましい。
【0028】
pは、2~3の整数であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0029】
qは2~3の整数であることが好ましく、rは2~4の整数であることが好ましい。
【0030】
[有機ケイ素化合物(C2)]
【0031】
【化3】
【0032】
上記式(c2)中、
x20及びRx21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx20が複数存在する場合は複数のRx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rx21が複数存在する場合は複数のRx21がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx20及びRfx21は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx20が複数存在する場合は複数のRfx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx21が複数存在する場合は複数のRfx21がそれぞれ異なっていてもよく、
x22及びRx23はそれぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx22及びRx23が複数存在する場合は複数のRx22及びRx23がそれぞれ異なっていてもよく、
20及びX21はそれぞれ独立して、加水分解性基であり、X20及びX21が複数存在する場合は複数のX20及びX21がそれぞれ異なっていてもよく、
p20は、1~30の整数であり、p21は、0~30の整数であり、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位の少なくとも1つは、アミン骨格-NR100-に置き換わっており、上記アミン骨格におけるR100は水素原子又はアルキル基であり、
p22及びp23はそれぞれ独立して、1~3の整数であり、
p20個の-{C(Rx20)(Rx21)}-、p21個の-{C(Rfx20)(Rfx21)}-は、p20又はp21個が連続である必要はなく、任意の順で並んで結合し、両末端が-Si(X20p22(Rx223-p22及び-Si(X21p23(Rx233-p23となる。
【0033】
x20及びRx21は、水素原子であることが好ましい。
【0034】
Rfx20及びRfx21は、は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子であることが好ましい。
【0035】
x22及びRx23は、炭素数が1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0036】
20及びX21は、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はイソシアネート基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが更に好ましい。
【0037】
アミン骨格-NR100-は、上記の通り分子内に少なくとも1つ存在すればよく、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位のいずれかが上記アミン骨格に置き換わっていればよいが、p20を付して括弧でくくられた繰り返し単位の一部であることが好ましい。上記アミン骨格は、複数存在してもよく、その場合のアミン骨格の数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~5であることが更に好ましい。また、この場合、隣り合うアミン骨格の間にアルキレン基を有することが好ましく、アルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。隣り合うアミン骨格の間のアルキレン基の炭素数は、p20又はp21の総数に含まれる。
【0038】
アミン骨格-NR100-において、R100がアルキル基である場合、炭素数は5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。アミン骨格-NR100-は、-NH-(R100が水素原子)であることが好ましい。
【0039】
p20は、アミン骨格に置き変わった繰り返し単位の数を除いて、1~15が好ましく、より好ましくは1~10である。
【0040】
p21は、アミン骨格に置き変わった繰り返し単位の数を除いて、0~5が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0041】
p22及びp23は、2~3が好ましく、より好ましくは3である。
【0042】
有機ケイ素化合物(C2)としては、上記式(c2)において、Rx20及びRx21がいずれも水素原子であり、X20及びX21がアルコキシ基(特にメトキシ基又はエトキシ基)であり、p20を付して括弧でくくられた繰り返し単位が、少なくとも1つアミン骨格-NR100-に置き換わっており、R100が水素原子であり、p20が1~10であり(ただし、アミン骨格に置き変わった繰り返し単位の数を除く)、p21が0であり、p22及びp23が3である化合物を用いることが好ましい。
【0043】
有機ケイ素化合物(C2)は、下記式(c2-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0044】
【化4】
【0045】
上記式(c2-2)中、
22及びX23は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、X22及びX23が複数存在する場合は複数のX22及びX23がそれぞれ異なっていてもよく、
x24及びRx25は、それぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx24及びRx25が複数存在する場合は複数のRx24及びRx25がそれぞれ異なっていてもよく、
-C2w-は、その一部のメチレン基の少なくとも1つがアミン骨格-NR100-に置き換わっており、R100は水素原子又はアルキル基であり、
wは1~30の整数であり(ただし、アミン骨格に置き換わったメチレン基の数を除く)、
p24及びp25は、それぞれ独立して、1~3の整数である。
【0046】
22及びX23は、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はイソシアネート基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基(特にメトキシ基又はエトキシ基)であることが更に好ましい。
【0047】
アミン骨格-NR100-は、複数存在してもよく、その場合のアミン骨格の数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~5であることが更に好ましい。また、この場合、隣り合うアミン骨格の間にアルキレン基を有することが好ましい。上記アルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。隣り合うアミン骨格の間のアルキレン基の炭素数は、wの総数に含まれる。
【0048】
アミン骨格-NR100-において、R100がアルキル基である場合、炭素数は5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。アミン骨格-NR100-は、-NH-(R100が水素原子)であることが好ましい。
【0049】
x24及びRx25は、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましい。
【0050】
p24及びp25は、2~3の整数であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0051】
wは、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、また20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0052】
[有機ケイ素化合物(C3)]
【0053】
【化5】

上記式(c3)中、
31、Z32は、それぞれ独立に、加水分解性基及びヒドロキシ基以外の、反応性官能基である。反応性官能基としては、ビニル基、α-メチルビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アミノ基、エポキシ基、ウレイド基、及びメルカプト基が挙げられる。Z31、Z32としては、アミノ基、メルカプト基、又はメタクリロイル基が好ましく、特にアミノ基が好ましい。
【0054】
x31、Rx32、Rx33、Rx34は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx31が複数存在する場合は複数のRx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rx32が複数存在する場合は複数のRx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rx33が複数存在する場合は複数のRx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rx34が複数存在する場合は複数のRx34がそれぞれ異なっていてもよい。Rx31、Rx32、Rx33、Rx34は、水素原子又は炭素数が1~2のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0055】
Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rfx34は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx31が複数存在する場合は複数のRfx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx32が複数存在する場合は複数のRfx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx33が複数存在する場合は複数のRfx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx34が複数存在する場合は複数のRfx34がそれぞれ異なっていてもよい。Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rfx34は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子であることが好ましい。
【0056】
31は、-NH-、-N(CH)-又は-O-であり、Y31が複数存在する場合は複数のY31がそれぞれ異なっていてもよい。Y31は-NH-であることが好ましい。
【0057】
31、X32、X33、X34は、それぞれ独立に、-OR(Rは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はアミノC1-3アルキルジC1-3アルコキシシリル基である)であり、X31が複数存在する場合は複数のX31がそれぞれ異なっていてもよく、X32が複数存在する場合は複数のX32がそれぞれ異なっていてもよく、X33が複数存在する場合は複数のX33がそれぞれ異なっていてもよく、X34が複数存在する場合は複数のX34がそれぞれ異なっていてもよい。X31、X32、X33、X34は、Rが水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基である-ORであることが好ましく、Rは水素原子がより好ましい。
【0058】
p31は、0~20の整数であり、p32、p33、p34は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p35は、0~5の整数であり、p36は、1~10の整数であり、p37は0又は1である。p31は1~15が好ましく、より好ましくは3~13であり、更に好ましくは5~10である。p32、p33及びp34は、それぞれ独立して、0~5が好ましく、より好ましくは全て0~2である。p35は、1~5が好ましく、より好ましくは1~3である。p36は、1~5が好ましく、より好ましくは1~3である。p37は1が好ましい。
【0059】
有機ケイ素化合物(C3)は、Z31及びZ32の少なくとも一方がアミノ基であるか、又はY31の少なくとも一つが-NH-又は-N(CH)-であるという条件を満たし、かつ末端がZ31-及びZ32-であり、-O-が-O-と連結しない限り、p31個の-{C(Rx31)(Rx32)}-、p32個の-{C(Rfx31)(Rfx32)}-、p33個の-{Si(Rx33)(Rx34)}-、p34個の-{Si(Rfx33)(Rfx34)}-、p35個の-Y31-、p36個の-{Si(X31)(X32)-O}-、p37個の-{Si(X33)(X34)}-が任意の順で並んで結合して構成される。p31個の-{C(Rx31)(Rx32)}-は、-{C(Rx31)(Rx32)}-が連続して結合している必要はなく、途中に他の単位を介して結合していてもよく、合計でp31個であればよい。p32~p37で括られる単位についても同様である。
【0060】
有機ケイ素化合物(C3)としては、上記式(c3)において、Z31及びZ32がアミノ基であり、Rx31及びRx32が水素原子であり、p31が3~13(好ましくは5~10)であり、Rx33及びRx34がいずれも水素原子であり、Rfx31~Rfx34がいずれも1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子であり、p32~p34がいずれも0~5であり、Y31が-NH-であり、p35が0~5(好ましくは0~3)であり、X31~X34がいずれも-OHであり、p36が1~5(好ましくは1~3)であり、p37が1である化合物が好ましい。
【0061】
有機ケイ素化合物(C3)は、下記式(c3-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0062】
【化6】
【0063】
上記式(c3-2)中、
31、Z32、X31、X32、X33、X34、Y31は、式(c3)中のこれらと同義であり、p41~p44は、それぞれ独立に1~6の整数であり、p45、46はそれぞれ独立に0又は1である。
【0064】
式(c3-2)において、Z31及びZ32は、アミノ基、メルカプト基、又はメタクリロイル基が好ましく、特にアミノ基が好ましい。X31、X32、X33、X34は、Rが水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基である-ORであることが好ましく、Rが水素原子であることがより好ましい。Y31は-NH-であることが好ましい。p41~p44は、2以上が好ましく、また5以下が好ましく、4以下がより好ましい。p45、p46はいずれも0であることが好ましい。
【0065】
有機ケイ素化合物(C)としては1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
有機ケイ素化合物(C)としては、有機ケイ素化合物(C1)及び有機ケイ素化合物(C2)からなる群から選択される少なくとも1種類が好ましく、有機ケイ素化合物(C2)がより好ましく、式(c2-2)で表される化合物が更に好ましい。
【0066】
フルオロアルキル基を有すると共に、Si-NH結合を有する有機ケイ素化合物(G)としては、例えば、下記式(g1)で表される有機ケイ素化合物(G1)が挙げられる。
【0067】
[有機ケイ素化合物(G1)]
【0068】
【化7】
【0069】
上記式(g1)中、Rfg10は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
g11、Rg12、Rg13及びRg14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rg11が複数存在する場合は複数のRg11がそれぞれ異なっていてもよく、Rg12が複数存在する場合は複数のRg12がそれぞれ異なっていてもよく、Rg13が複数存在する場合は複数のRg13がそれぞれ異なっていてもよく、Rg14が複数存在する場合は複数のRg14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfg11、Rfg12、Rfg13及びRfg14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfg11が複数存在する場合は複数のRfg11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfg12が複数存在する場合は複数のRfg12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfg13が複数存在する場合は複数のRfg13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfg14が複数存在する場合は複数のRfg14がそれぞれ異なっていてもよく、
g15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rg15が複数存在する場合は複数のRg15がそれぞれ異なっていてもよく、
g1は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、Ag1が複数存在する場合は複数のAg1がそれぞれ異なっていてもよく、
g11、g12、g13、g14及びg15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
gは、1~3の整数であり、
Rfg10-、-Si(NH(Rg153-g、g11個の-{C(Rg11)(Rg12)}-、g12個の-{C(Rfg11)(Rfg12)}-、g13個の-{Si(Rg13)(Rg14)}-、g14個の-{Si(Rfg13)(Rfg14)}-、g15個の-Ag1-は、Rfg10-、-Si(NH(Rg153-gが末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【0070】
Rfg10は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~10(より好ましくは炭素数1~8)のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0071】
g11、Rg12、Rg13、及びRg14は、水素原子が好ましい。
【0072】
g15は、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0073】
g1は、-O-、-C(=O)-O-、又は-O-C(=O)-が好ましい。
【0074】
g11は1~30が好ましく、1~25がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~5が特に好ましく、最も好ましくは1~2である。
【0075】
g12は、0~15が好ましく、より好ましくは0~10である。
【0076】
g13は、0~5が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0077】
g14は、0~4が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0078】
g15は、0~4が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0079】
gは、1~3が好ましく、より好ましくは3である。
【0080】
g11、g12、g13、g14、及びg15の合計値は、3以上が好ましく、5以上が好ましく、また80以下が好ましく、より好ましくは50以下であり、更に好ましくは20以下である。
【0081】
特に、Rfg10がフッ素原子又は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rg11、Rg12がいずれも水素原子であり、g11が1~5、g12が0~5であり、g13、g14、及びg15が全て0であり、gが1~3であることが好ましい。
【0082】
有機ケイ素化合物(G1)は、下記式(g1-1)で表される化合物であることも好ましい。
【0083】
【化8】
【0084】
上記式(g1-1)中、Rfg10、Rfg11、Rfg12、Rg11、Rg12、Ag1、g11、g12、g15、及びgは、上記式(g1)と同様である。また、式(g1-1)中の各記号の好ましい態様は、上記式(g1)の各記号の好ましい態様と同様である。
【0085】
また、有機ケイ素化合物(G1)は、下記式(g1-2)で表される化合物であることも好ましい。
【0086】
【化9】
【0087】
上記式(g1-2)中、Rfg10、Rg11、Rg12、Rg15、及びg12は、上記式(g1)と同様である。また、式(g1-2)中の各記号の好ましい態様は、上記式(g1)の各記号の好ましい態様と同様である。
特に、Rfg10がフッ素原子又は炭素数1~8のパーフルオロアルキル基であり、Rg11、Rg12がいずれも水素原子であり、g12が1~5であり、gが1~3であることが好ましい。
【0088】
有機ケイ素化合物(G)の加水分解物としては、上記式(g1)、上記式(g1-1)、又は上記式(g1-2)中のSiに結合するNH基のうちの1つ以上がヒドロキシ基に置き換わった化合物が挙げられる。
【0089】
また、有機ケイ素化合物(G)の加水分解縮合物としては、有機ケイ素化合物(G)の加水分解物に含まれるSiに結合するヒドロキシ基同士が縮合して生じる縮合物、及び、有機ケイ素化合物(G)の加水分解物に含まれるSiに結合するヒドロキシ基とSiに結合するNH基とが縮合して生じる縮合物が挙げられる。
【0090】
混合組成物(cc)において、有機ケイ素化合物(C)の含有量に対する、有機ケイ素化合物(G)の加水分解物、及び、有機ケイ素化合物(G)の加水分解縮合物の合計含有量の質量比は、0.00005~0.1が好ましく、0.0001~0.05がより好ましく、0.0002~0.02が更に好ましい。
なお、混合組成物(cc)において、有機ケイ素化合物(C)及び有機ケイ素化合物(G)の添加量が判明している場合、上記質量比は、添加量の質量比から算出できる。
【0091】
混合組成物(cc)は、溶剤(E)が混合されていることが好ましい。溶剤(E)は特に限定されず、例えば水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤などを用いることができ、特に水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤、又はエステル系溶剤が好ましい。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノールなどが挙げられる。
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどが挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
混合組成物(cc)の全体を100質量%としたときの、有機ケイ素化合物(C)の合計量は、0.005質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.02質量%以上であり、また5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下である。上記の有機ケイ素化合物(C)の量は、組成物の調製時に調整できる。有機ケイ素化合物(C)の量は、組成物の分析結果からから算出してもよい。なお、本明細書において、各成分の量、質量比又はモル比の範囲を記載している場合、上記と同様に、上記範囲は、組成物の調製時に調整できる。
【0092】
中間層(c)の厚みは、例えば1~1000nm程度である。
【0093】
<撥水層(r)>
撥水層(r)は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が連結基を介して又は連結基を介さずにケイ素原子に結合すると共に、ケイ素原子に連結基を介して又は連結基を介さずに加水分解性基が結合している有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)の硬化層である。なかでも、混合組成物(ca)が有機ケイ素化合物(A)と後述する有機ケイ素化合物(B)の混合組成物であることが好ましい。
以下、有機ケイ素化合物(A)及び有機ケイ素化合物(B)の好ましい態様について説明する。
【0094】
[有機ケイ素化合物(A)]
有機ケイ素化合物(A)は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が連結基を介して又は連結基を介さずにケイ素原子に結合すると共に、ケイ素原子に連結基を介して又は連結基を介さずに加水分解性基が結合している化合物である。撥水層(r)は混合組成物(ca)を塗布して硬化させることにより得られ、有機ケイ素化合物(A)由来の構造を有している。上述の通り、上記有機ケイ素化合物(A)はケイ素原子に結合した(連結基を介して結合していてもよい)加水分解性基を有しており、加水分解で生じた有機ケイ素化合物(A)の-SiOH基(SiとOHが連結基を介して結合していてもよい)同士が脱水縮合するため、撥水層(r)は、通常有機ケイ素化合物(A)由来の縮合構造を有する。加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アセトキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0095】
パーフルオロポリエーテル構造は、パーフルオロオキシアルキレン基ともいうことができる。パーフルオロポリエーテル構造は、撥水性又は撥油性等の撥液性を有する。パーフルオロポリエーテル構造の最も長い直鎖部分に含まれる炭素数は、例えば5以上であることが好ましく、10以上がより好ましく、更により好ましくは20以上である。炭素数の上限は特に限定されず、例えば200程度であってもよい。有機ケイ素化合物(A)のパーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基は、更に自由末端にパーフルオロアルキル基を有することが好ましい。
【0096】
撥水層(r)は、パーフルオロポリエーテル構造とポリシロキサン骨格を有する層として示すこともでき、好ましくは、パーフルオロアルキル基を更に有する。撥水層(r)は、ポリシロキサン骨格の一部のケイ素原子に、自由末端がパーフルオロアルキル基であり、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が結合した構造を有していることが好ましい。パーフルオロアルキル基は自由末端側に存在することで、撥水性が向上する。
【0097】
パーフルオロアルキル基の炭素数(特に最も長い直鎖部分の炭素数)は、例えば3以上であることが好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。なお、炭素数の上限は特に限定されず、例えば20程度であっても優れた撥水性を示す。
【0098】
パーフルオロアルキル基は、炭化水素基及び/又は炭化水素基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換した基と結合してフルオロアルキル基等の含フッ素基を形成していてもよく、例えば、CF(CF-(CH-、CF(CF-C-(mはいずれも1~10であり、好ましくは3~7であり、nはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)があげられ、CF(CF-(CH-(mはいずれも1~10であり、好ましくは3~7であり、nはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)が好ましい。パーフルオロアルキル基は、直接パーフルオロポリエーテル構造に結合していることがより好ましい。
【0099】
有機ケイ素化合物(A)では、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基とケイ素原子は、適当な連結基を介して結合していてもよく、当該連結基なしで上記パーフルオロポリエーテルを有する1価の基が直接ケイ素原子に結合してもよい。連結基としては、例えば、アルキレン基、芳香族炭化水素基等の炭化水素基、(ポリ)アルキレングリコール基、又はこれらの水素原子の一部がF又は置換基に置換された基、及びこれらが適当に連結した基等が挙げられる。連結基の炭素数は、例えば1以上、20以下であり、好ましくは2以上、15以下である。
【0100】
加水分解性基は、加水分解・脱水縮合反応を通じて、有機ケイ素化合物(A)同士を、又は有機ケイ素化合物(A)と基材表面の活性水素(水酸基等)とを結合する作用を有する。こうした加水分解性基としては、例えばアルコキシ基(特に炭素数1~4のアルコキシ基)、ヒドロキシ基、アセトキシ基、ハロゲン原子(特に塩素原子)等が挙げられる。好ましい加水分解性基は、アルコキシ基及びハロゲン原子であり、特にメトキシ基、エトキシ基、塩素原子が好ましい。
【0101】
加水分解性基は連結基を介してケイ素原子に結合していてもよいし、連結基を介さずに直接ケイ素原子に結合していてもよい。ケイ素原子に結合する加水分解性基の数は、1つ以上であればよく、2又は3であってもよいが、2又は3であるのが好ましく、3であるのが特に好ましい。2つ以上の加水分解性基がケイ素原子に結合している場合、異なる加水分解性基がケイ素原子に結合していてもよいが、同じ加水分解性基がケイ素原子に結合しているのが好ましい。ケイ素原子に結合する含フッ素基と加水分解性基との合計数は、通常4であるが、2又は3(特に3)であってもよい。3以下の場合、残りの結合手には、加水分解性基以外の1価の基が結合していてもよく、例えば、アルキル基(特に炭素数が1~4のアルキル基)、H、NCO等が結合できる。
【0102】
有機ケイ素化合物(A)のパーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基は、直鎖状であってもよいし、側鎖を有していてもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0103】
有機ケイ素化合物(A)の一例としては、例えば、下記式(a)で表される化合物が挙げられる。
【0104】
【化10】
【0105】
上記式(a)中、
はパーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基であり、DにおけるDと結合する側の末端は-CF-O-*、-CFD-*であり(*はD側の結合手)、Dは単結合又はフッ素原子に置換されていない2価の炭化水素基であり、Dはフッ素原子に置換されていない3価の炭化水素基であり、炭化水素基のメチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよく、Dは水素原子又はフッ素原子であり、Dは単結合又は2価の炭化水素基であり、Dは加水分解性基以外の1価の基であり、Dは2価の基又は単結合であり、Dは加水分解性基であり、Dは水素原子、フッ素原子、又は炭化水素基であり、n1は1~30であり、n2は1~3である。Dの加水分解性基としては上述のものが挙げられる。
【0106】
有機ケイ素化合物(A)は、下記式(a1)で表される化合物であることが好ましい。
【0107】
【化11】
【0108】
上記式(a1)中、
Rfa1は、両端が酸素原子である2価のパーフルオロポリエーテル構造であり、
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して(すなわち、R11とR12とR13は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよく)炭素数1~20のアルキル基であり、R11が複数存在する場合は複数のR11がそれぞれ異なっていてもよく、R12が複数存在する場合は複数のR12がそれぞれ異なっていてもよく、R13が複数存在する場合は複数のR13がそれぞれ異なっていてもよく、
、E、E、E、及びEは、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であり、Eが複数存在する場合は複数のEがそれぞれ異なっていてもよく、Eが複数存在する場合は複数のEがそれぞれ異なっていてもよく、Eが複数存在する場合は複数のEがそれぞれ異なっていてもよく、Eが複数存在する場合は複数のEがそれぞれ異なっていてもよく、
及びGは、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~10価のオルガノシロキサン基であり、
、J、及びJは、それぞれ独立して、加水分解性基又は-(CHe6-Si(OR14であり、e6は1~5であり、R14はメチル基又はエチル基であり、Jが複数存在する場合は複数のJがそれぞれ異なっていてもよく、Jが複数存在する場合は複数のJがそれぞれ異なっていてもよく、Jが複数存在する場合は複数のJがそれぞれ異なっていてもよく、
及びLは、それぞれ独立して、酸素原子、窒素原子、又はフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1~12の2価の連結基であり、Lが複数存在する場合は複数のLがそれぞれ異なっていてもよく、Lが複数存在する場合は複数のLがそれぞれ異なっていてもよく、
d11は、1~9であり、
d12は、0~9であり、
a10及びa14は、それぞれ独立して0~10であり、
a11及びa15は、それぞれ独立して0又は1であり、
a12及びa16は、それぞれ独立して0~9であり、
a13は、0又は1であり、
a21、a22、及びa23は、それぞれ独立して0~2であり、
e1、e2、及びe3は、それぞれ独立して1~3である。
【0109】
有機ケイ素化合物(A)は、上記式(a1)で表される通り、Rfa1で表されるパーフルオロポリエーテル構造を有すると共に、Jで表される加水分解性基又は-(CHe6-Si(OR14(但し、R14はメチル基又はエチル基)を少なくとも1つ有している。パーフルオロポリエーテル構造は、ポリオキシアルキレン基の全部の水素原子がフッ素原子に置き換わった構造であり、パーフルオロオキシアルキレン基ともいえ、得られる皮膜に撥水性を付与できる。また、Jによって、有機ケイ素化合物(A)同士、又は他の単量体と共に重合反応(特に重縮合反応)を通じて結合することによって、得られる皮膜のマトリックスとなり得る化合物である。
【0110】
Rfa1は、-O-(CFCFO)e4-、又は-O-(CFCFCFO)e5-が好ましい。e4、e5は、いずれも15~80である。
【0111】
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
【0112】
及びLは、それぞれ独立して、フッ素原子を含んだ炭素数1~5の2価の連結基が好ましい。
【0113】
及びGは、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~5価のオルガノシロキサン基が好ましい。
【0114】
、J、及びJは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基又は-(CHe6-Si(OR14が好ましい。
【0115】
a10は0~5が好ましく(より好ましくは0~3)、a11は0が好ましく、a12は0~7が好ましく(より好ましくは0~5)、a14は1~6が好ましく(より好ましくは1~3)、a15は0が好ましく、a16は0~6が好ましく、a21~a23はいずれも0又は1が好ましく(より好ましくはいずれも0)、d11は1~5が好ましく(より好ましくは1~3)、d12は0~3が好ましく(より好ましくは0又は1)、e1~e3はいずれも3が好ましい。また、a13は1が好ましい。
【0116】
有機ケイ素化合物(A)としては、上記式(a1)のRfa1が-O-(CFCFCFO)e5-であり、e5が35~50であり、L及びLがいずれも炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、E、E、及びEがいずれも水素原子であり、E、及びEが水素原子又はフッ素原子であり、J、J、及びJがいずれもメトキシ基又はエトキシ基(特にメトキシ基)であり、a10が1~3であり、a11が0であり、a12が0~5であり、a13が1であり、a14が2~5であり、a15が0であり、a16が0~6であり、a21~a23が、それぞれ独立して、0又は1であり(より好ましくはa21~a23が全て0)、d11が1であり、d12が0又は1であり、e1~e3がいずれも3である化合物を用いることが好ましい。
【0117】
有機ケイ素化合物(A)としては、上記式(a1)のRfa1が-O-(CFCFCFO)e5-であり、e5が25~40であり、Lがフッ素原子及び酸素原子を含む炭素数3~6の2価の連結基であり、Lが炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、E、Eがいずれも水素原子であり、Eがフッ素原子であり、Jが-(CHe6-Si(OCHであり、e6が2~4であり、a10が1~3であり、a11が0であり、a12が0であり、a13が0であり、a14が2~5であり、a15が0であり、a16が0であり、a21~a23が、それぞれ独立して、0又は1であり(より好ましくはa21~a23が全て0)、d11が1であり、d12が0であり、e2が3である化合物を用いることも好ましい。
【0118】
また、有機ケイ素化合物(A)は、下記式(a2-1)で表される化合物であることも好ましい。
【0119】
【化12】
【0120】
上記式(a2-1)中、
Rfa21は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
Rfa22、Rfa23、Rfa24、及びRfa25は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfa22が複数存在する場合は複数のRfa22がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa23が複数存在する場合は複数のRfa23がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa24が複数存在する場合は複数のRfa24がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa25が複数存在する場合は複数のRfa25がそれぞれ異なっていてもよく、
20、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、R20が複数存在する場合は複数のR20がそれぞれ異なっていてもよく、R21が複数存在する場合は複数のR21がそれぞれ異なっていてもよく、R22が複数存在する場合は複数のR22がそれぞれ異なっていてもよく、R23が複数存在する場合は複数のR23がそれぞれ異なっていてもよく、
24は、炭素数1~20のアルキル基であり、R24が複数存在する場合は複数のR24がそれぞれ異なっていてもよく、
は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Mが複数存在する場合は複数のMがそれぞれ異なっていてもよく、
は、水素原子又はハロゲン原子であり、
は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-(Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基)であり、Mが複数存在する場合は複数のMがそれぞれ異なっていてもよく、
は、加水分解性基であり、Mが複数存在する場合は複数のMがそれぞれ異なっていてもよく、
f11、f12、f13、f14、及びf15はそれぞれ独立して0~600の整数であり、f11、f12、f13、f14、及びf15の合計値は13以上であり、
f16は、1~20の整数であり、
f17は、0~2の整数であり、
g1は、1~3の整数であり、
Rfa21-、M-、f11個の-{C(R20)(R21)}-、f12個の-{C(Rfa22)(Rfa23)}-、f13個の-{Si(R22)(R23)}-、f14個の-{Si(Rfa24)(Rfa25)}-、f15個の-M-、及びf16個の-[CHC(M){(CHf17-Si(Mg1(R243-g1}]-は、Rfa21-、M-が末端となり、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造を形成する順で並び、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。すなわち、式(a2-1)は、必ずしもf11個の-{C(R20)(R21)}-が連続し、f12個の-{C(Rfa22)(Rfa23)}-が連続し、f13個の-{Si(R22)(R23)}-が連続し、f14個の-{Si(Rfa24)(Rfa25)}-が連続し、f15個の-M-が連続し、f16個の-[CHC(M){(CHf17-Si(Mg1(R243-g1}]-が連続して、この順で並ぶという意味ではなく、-C(R20)(R21)-Si(Rfa24)(Rfa25)-CHC(M){(CHf17-Si(Mg1(R243-g1}-C(Rfa22)(Rfa23)-M-Si(R22)(R23)-C(Rfa22)(Rfa23)-等のように、それぞれが任意の順番で並ぶことが可能である。
【0121】
Rfa21は、好ましくは1個以上のフッ素原子で置換された炭素数1~10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基である。
【0122】
Rfa22、Rfa23、Rfa24、及びRfa25は、好ましくはそれぞれ独立して、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~2のアルキル基であり、より好ましくはすべてフッ素原子である。
【0123】
20、R21、R22、及びR23は、好ましくはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
【0124】
24は、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0125】
は、好ましくはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
【0126】
は、好ましくは水素原子である。
【0127】
は、好ましくは、-C(=O)-O-、-O-、-O-C(=O)-であり、より好ましくはすべて-O-である。
【0128】
は、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子がより好ましい。
【0129】
好ましくは、f11、f13、及びf14は、それぞれf12の1/2以下であり、より好ましくは1/4以下であり、更に好ましくはf13又はf14は0であり、特に好ましくはf13及びf14は0である。
【0130】
f15は、好ましくはf11、f12、f13、f14の合計値の1/5以上であり、f11、f12、f13、f14の合計値以下である。
【0131】
f12は、20~600が好ましく、より好ましくは20~200であり、更に好ましくは50~200である(一層好ましくは30~150、特に50~150、最も好ましくは80~140)。f15は4~600が好ましく、より好ましくは4~200であり、更に好ましくは10~200である(一層好ましくは30~60)。f11、f12、f13、f14、f15の合計値は、20~600が好ましく、20~200がより好ましく、50~200が更に好ましい。
【0132】
f16は、好ましくは1~18である。より好ましくは1~15である。更に好ましくは1~10である。
【0133】
f17は、好ましくは0~1である。
【0134】
g1は、2~3が好ましく、3がより好ましい。
【0135】
f11個の-{C(R20)(R21)}-、f12個の-{C(Rfa22)(Rfa23)}-、f13個の-{Si(R22)(R23)}-、f14個の-{Si(Rfa24)(Rfa25)}-、及びf15個の-M-の順序は、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造を形成する順で並ぶ限り、式中において任意であるが、好ましくは最も固定端側(ケイ素原子と結合する側)のf12を付して括弧でくくられた繰り返し単位(すなわち、-{C(Rfa22)(Rfa23)}-)は、最も自由端側のf11を付して括弧でくくられた繰り返し単位(すなわち、-{C(R20)(R21)}-)よりも自由端側に位置し、より好ましくは最も固定端側のf12及びf14を付して括弧でくくられた繰り返し単位(すなわち、-{C(Rfa22)(Rfa23)}-、及び-{Si(Rfa24)(Rfa25)}-)は、最も自由端側のf11及びf13を付して括弧でくくられた繰り返し単位(すなわち、-{C(R20)(R21)}-、及び-{Si(R22)(R23)}-)よりも自由端側に位置する。
【0136】
上記式(a2-1)において、Rfa21が炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfa22、Rfa23、Rfa24、Rfa25が全てフッ素原子であり、Mが全て-O-であり、Mが全てメトキシ基、エトキシ基又は塩素原子(特にメトキシ基又はエトキシ基)であり、M、Mがいずれも水素原子であり、f11が0、f12が30~150(より好ましくは80~140)、f15が30~60、f13及びf14が0、f17が0~1(特に0)、g1が3、f16が1~10であることが好ましい。
【0137】
また、有機ケイ素化合物(A)は、下記式(a2-2)で表される化合物であることも好ましい。
【0138】
【化13】
【0139】
上記式(a2-2)中、
Rfa26、Rfa27、Rfa28、及びRfa29は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfa26が複数存在する場合は複数のRfa26がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa27が複数存在する場合は複数のRfa27がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa28が複数存在する場合は複数のRfa28がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa29が複数存在する場合は複数のRfa29がそれぞれ異なっていてもよく、
25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、R25が複数存在する場合は複数のR25がそれぞれ異なっていてもよく、R26が複数存在する場合は複数のR26がそれぞれ異なっていてもよく、R27が複数存在する場合は複数のR27がそれぞれ異なっていてもよく、R28が複数存在する場合は複数のR28がそれぞれ異なっていてもよく、
29、及びR30は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、R29が複数存在する場合は複数のR29がそれぞれ異なっていてもよく、R30が複数存在する場合は複数のR30がそれぞれ異なっていてもよく、
は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、上記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、Mが複数存在する場合は複数のMがそれぞれ異なっていてもよく、
、Mは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Mが複数存在する場合は複数のMがそれぞれ異なっていてもよく、Mが複数存在する場合は複数のMがそれぞれ異なっていてもよく、
、及びM10は、それぞれ独立して水素原子又はハロゲン原子であり、
、及びM11は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、Mが複数存在する場合は複数のMがそれぞれ異なっていてもよく、M11が複数存在する場合は複数のM11がそれぞれ異なっていてもよく、
f21、f22、f23、f24、及びf25はそれぞれ独立して0~600の整数であり、f21、f22、f23、f24、及びf25の合計値は13以上であり、
f26、及びf28は、それぞれ独立して、1~20の整数であり、
f27、及びf29は、それぞれ独立して、0~2の整数であり、
g2、g3は、それぞれ独立して、1~3の整数であり、
10-、M-、f21個の-{C(R25)(R26)}-、f22個の-{C(Rfa26)(Rfa27)}-、f23個の-{Si(R27)(R28)}-、f24個の-{Si(Rfa28)(Rfa29)}-、f25個の-M-、f26個の-[CHC(M){(CHf27-Si(Mg2(R293-g2}]、及びf28個の-[CHC(M){(CHf29-Si(M11g3(R303-g3}]は、M10-、M-が末端となり、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造を形成する順で並び、-O-が-O-と連続しない限り、任意の順で並んで結合する。任意の順で並んで結合することについては、上記式(a2-1)にて説明したのと同様であり、各繰り返し単位が連続して上記式(a2-2)に記載の通りの順に並ぶ意味に限定されない。
【0140】
上記式(a2-2)において、Rfa26、Rfa27、Rfa28、及びRfa29が全てフッ素原子であり、Mが全て-O-であり、M及びM11が全てメトキシ基、エトキシ基又は塩素原子(特にメトキシ基又はエトキシ基)であり、M、M、M、及びM10がいずれも水素原子であり、f21が0、f22が30~150(より好ましくは80~140)、f25が30~60、f23及びf24が0、f27及びf29が0~1(特に好ましくは0)、g2及びg3が3、f26及びf28が1~10であることが好ましい。
【0141】
有機ケイ素化合物(A)として、より具体的には下記式(a3)で表される化合物が挙げられる。
【0142】
【化14】
【0143】
上記式(a3)中、
30は炭素数が2~6のパーフルオロアルキル基であり、R31及びR32はそれぞれ独立していずれも炭素数が2~6のパーフルオロアルキレン基であり、R33は炭素数が2~6の3価の飽和炭化水素基であり、R34は炭素数が1~3のアルキル基である。R30、R31、R32、R33の炭素数は、それぞれ独立に2~4が好ましく、2~3がより好ましい。h1は5~70であり、h2は1~5であり、h3は1~10である。h1は10~60が好ましく、20~50がより好ましく、h2は1~4が好ましく、1~3がより好ましく、h3は1~8が好ましく、1~6がより好ましい。
【0144】
有機ケイ素化合物(A)としては、下記式(a4)で表される化合物も挙げることができる。
【0145】
【化15】
【0146】
上記式(a4)中、
40は炭素数が2~5のパーフルオロアルキル基であり、R41は炭素数が2~5のパーフルオロアルキレン基であり、R42は炭素数2~5のアルキレン基の水素原子の一部がフッ素に置換されたフルオロアルキレン基であり、R43、R44はそれぞれ独立に炭素数が2~5のアルキレン基であり、R45はメチル基又はエチル基である。k1、k2、k3はそれぞれ独立に1~5の整数である。
【0147】
有機ケイ素化合物(A)の数平均分子量は、2,000以上が好ましく、より好ましくは4,000以上であり、更に好ましくは6,000以上、特に好ましくは7,000以上であり、また40,000以下が好ましく、より好ましくは20,000以下であり、更に好ましくは15,000以下である。
【0148】
有機ケイ素化合物(A)としては、例えば下記式(1)で表される化合物、又は上記化合物の類似構造を有する化合物が挙げられ、ダイキン工業株式会社製のオプツール(登録商標)UF503等が挙げられる。
【0149】
【化16】
【0150】
上記式(1)で示される化合物としては、特開2014-15609号公報の合成例1、2に記載の方法により合成したものが挙げられ、rは43、sは1~6の整数であり、数平均分子量は約8000である。
【0151】
類似構造としては、上記式(1)の炭化水素基の炭素数又はフッ素原子で置換された炭化水素基の炭素数が異なる構造、パーフルオロポリエーテル構造とケイ素原子が連結基を介さずに結合している構造、パーフルオロポリエーテル構造とケイ素原子の間の連結基の任意の位置に他の炭化水素基(少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換された炭化水素基も含む)が介在する構造、ケイ素原子と加水分解性基が連結基を介して結合する構造、r及びsの値が異なる構造、等が挙げられるが、これらの構造に限定されない。
【0152】
有機ケイ素化合物(A)としては、式(a1)で表される化合物が好ましく、式(a2-1)で表される化合物がより好ましく、式(a3)で表される化合物が更に好ましい。
【0153】
有機ケイ素化合物(A)としては1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0154】
[有機ケイ素化合物(B)]
有機ケイ素化合物(B)は、式(b1)で表される化合物である。
下記式(b1)で表される有機ケイ素化合物(B)は、後述する通り、Aで表される加水分解性基を有しており、通常、加水分解で生じた有機ケイ素化合物(B)の-SiOH基が、加水分解で生じた有機ケイ素化合物(A)の-SiOH基及び/又は加水分解で生じた有機ケイ素化合物(B)の-SiOH基と脱水縮合するため、好ましい態様において、混合組成物(ca)の硬化層である撥水層(r)は有機ケイ素化合物(A)由来の縮合構造と共に、有機ケイ素化合物(B)由来の縮合構造を有する。加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アセトキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0155】
【化17】
【0156】
式(b1)中、
Rfb10は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
b11、Rb12、Rb13、Rb14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rb11が複数存在する場合は複数のRb11がそれぞれ異なっていてもよく、Rb12が複数存在する場合は複数のRb12がそれぞれ異なっていてもよく、Rb13が複数存在する場合は複数のRb13がそれぞれ異なっていてもよく、Rb14が複数存在する場合は複数のRb14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfb11、Rfb12、Rfb13、Rfb14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfb11が複数存在する場合は複数のRfb11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb12が複数存在する場合は複数のRfb12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb13が複数存在する場合は複数のRfb13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb14が複数存在する場合は複数のRfb14がそれぞれ異なっていてもよく、
b15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rb15が複数存在する場合は複数のRb15がそれぞれ異なっていてもよく、
は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、上記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、Aが複数存在する場合は複数のAがそれぞれ異なっていてもよく、
は、加水分解性基であり、Aが複数存在する場合は複数のAがそれぞれ異なっていてもよく、
b11、b12、b13、b14、b15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
cは、1~3の整数であり、
Rfb10-、-Si(A(Rb153-c、b11個の-{C(Rb11)(Rb12)}-、b12個の-{C(Rfb11)(Rfb12)}-、b13個の-{Si(Rb13)(Rb14)}-、b14個の-{Si(Rfb13)(Rfb14)}-、b15個の-A-は、Rfb10-、-Si(A(Rb153-cが末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【0157】
Rfb10は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~10(より好ましくは炭素数1~5)のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0158】
b11、Rb12、Rb13、及びRb14は、水素原子が好ましい。
【0159】
b15は、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0160】
は、-O-、-C(=O)-O-、又は-O-C(=O)-が好ましい。
【0161】
は、炭素数1~4のアルコキシ基、又はハロゲン原子が好ましく、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、塩素原子である。
【0162】
b11は1~30が好ましく、1~25がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~5が特に好ましく、最も好ましくは1~2である。
【0163】
b12は、0~15が好ましく、より好ましくは0~10である。
【0164】
b13は、0~5が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0165】
b14は、0~4が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0166】
b15は、0~4が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0167】
cは、2~3が好ましく、より好ましくは3である。
【0168】
b11、b12、b13、b14、及びb15の合計値は、3以上が好ましく、5以上が好ましく、また80以下が好ましく、より好ましくは50以下であり、更に好ましくは20以下である。
【0169】
特に、Rfb10がフッ素原子又は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rb11、Rb12がいずれも水素原子であり、Aがメトキシ基又はエトキシ基であると共に、b11が1~5、b12が0~5であり、b13、b14、及びb15が全て0であり、cが3であることが好ましい。
【0170】
なお、後記する実施例にて、化合物(B)として用いるFAS13Eを上記式(b1)で表すと、Rb11、Rb12がいずれも水素原子、b11が2、b13、b14、及びb15が全て0、cが3、Aがエトキシ基であり、Rfb10-{C(Rfb11)(Rfb12)}b12-が末端となり、C13-となるように定められる。
【0171】
上記式(b1)で表される化合物としては、具体的に、CF-Si-(OCH、C2j+1-Si-(OC(jは1~12の整数)が挙げられ、この中で特にC-Si-(OC、C13-Si-(OC、C15-Si-(OC、C17-Si-(OCが好ましい。また、CFCHO(CHSiCl、CFCHO(CHSi(OCH、CFCHO(CHSi(OC、CF(CHSi(CH(CHSiCl、CF(CHSi(CH(CHSi(OCH、CF(CHSi(CH(CHSi(OC、CF(CHSi(CH(CHSiCl、CF(CHSi(CH(CHSi(OCH、CF(CHSi(CH(CHSi(OC、CFCOO(CHSiCl、CFCOO(CHSi(OCH、CFCOO(CHSi(OCが挙げられる(kはいずれも5~20であり、好ましくは8~15である)。また、CF(CF-(CHSiCl、CF(CF-(CHSi(OCH、CF(CF-(CHSi(OCを挙げることもできる(mはいずれも1~10であり、好ましくは3~7であり、nはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)。CF(CF-(CH-Si-(CHCH=CHを挙げることもできる(pは2~10であり、好ましくは2~8であり、qは1~5であり、好ましくは2~4である)。更に、CF(CF-(CHSiCHCl、CF(CF-(CHSiCH(OCH、CF(CF-(CHSiCH(OCが挙げられる(pはいずれも2~10であり、好ましくは3~7であり、qはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)。
【0172】
有機ケイ素化合物(B)は、下記式(b2)で表される化合物であることが好ましい。
【0173】
【化18】
【0174】
上記式(b2)中、R60は炭素数3~8のパーフルオロアルキル基であり、R61は炭素数1~5のアルキレン基であり、R62は炭素数1~3のアルキル基である。
【0175】
有機ケイ素化合物(B)としては1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0176】
なお、混合組成物(ca)は、有機ケイ素化合物(A)が混合された組成物であり、好ましくは有機ケイ素化合物(A)と有機ケイ素化合物(B)が混合された組成物であり、有機ケイ素化合物(A)と必要に応じて有機ケイ素化合物(B)を混合することにより得られ、また有機ケイ素化合物(A)と有機ケイ素化合物(B)以外の成分が混合されている場合は、有機ケイ素化合物(A)と、必要に応じて有機ケイ素化合物(B)と、他の成分とを混合することにより得られる。混合組成物(ca)は、混合後、例えば保管中に反応が進んだものも含む。
【0177】
[溶剤(D)]
混合組成物(ca)は、溶剤(D)を含むことが好ましい。
溶剤(D)としてはフッ素系溶剤を用いることが好ましく、例えばフッ素化エーテル系溶剤、フッ素化アミン系溶剤、フッ素化炭化水素系溶剤等を用いることができ、特に沸点が100℃以上であることが好ましい。フッ素化エーテル系溶剤としては、フルオロアルキル(特に炭素数2~6のパーフルオロアルキル基)-アルキル(特にメチル基又はエチル基)エーテル等のハイドロフルオロエーテルが好ましく、例えばエチルノナフルオロブチルエーテル又はエチルノナフルオロイソブチルエーテルが挙げられる。エチルノナフルオロブチルエーテル又はエチルノナフルオロイソブチルエーテルとしては、例えばNovec(登録商標)7200(3M社製、分子量約264)が挙げられる。フッ素化アミン系溶剤としては、アンモニアの水素原子の少なくとも1つがフルオロアルキル基で置換されたアミンが好ましく、アンモニアの全ての水素原子がフルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)で置換された第三級アミンが好ましく、具体的にはトリス(ヘプタフルオロプロピル)アミンが挙げられ、フロリナート(登録商標)FC-3283(3M社製、分子量約521)がこれに該当する。フッ素化炭化水素系溶剤としては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン等のフッ素化脂肪族炭化水素系溶剤、1,3-ビス(トリフルオロメチルベンゼン)等のフッ素化芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとしては、例えばソルブ55(ソルベックス社製)等が挙げられる。
【0178】
フッ素系溶剤としては、上記の他、アサヒクリン(登録商標)AK225(AGC社製)等のハイドロクロロフルオロカーボン、アサヒクリン(登録商標)AC2000(AGC社製)等のハイドロフルオロカーボン等を用いることができる。
【0179】
溶剤(D)として、少なくともフッ素化アミン系溶剤を用いることが好ましい。また溶剤(D)としては、2種以上のフッ素系溶剤を用いることが好ましく、フッ素化アミン系溶剤とフッ素化炭化水素系溶剤(特にフッ素化脂肪族炭化水素系溶剤)を用いることが好ましい。
【0180】
[その他成分]
混合組成物(ca)は、本開示の効果を阻害しない範囲で、シラノール縮合触媒、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、抗菌剤、生物付着防止剤、消臭剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤等、各種の添加剤が混合されていてもよい。
【0181】
混合組成物(ca)における有機ケイ素化合物(A)の含有量は、混合組成物(ca)の全体を100質量%に対して、例えば0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、また1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.6質量%以下である。
【0182】
混合組成物(ca)における有機ケイ素化合物(B)の含有量は、混合組成物(ca)の全体を100質量%に対して、例えば0.01質量%以上であり、好ましくは0.03質量%以上であり、また0.3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0183】
有機ケイ素化合物(A)の含有量に対する有機ケイ素化合物(B)の含有量の質量比は、0.05以上が好ましく、より好ましくは0.08以上であり、更に好ましくは0.10以上であり、また2.0以下が好ましく、より好ましくは1.0以下であり、更に好ましくは0.6以下である。
【0184】
上記の有機ケイ素化合物(A)及び(B)の量は、組成物の調製時に調整できる。有機ケイ素化合物(A)及び(B)の量は、組成物の分析結果から算出してもよい。
【0185】
撥水層(r)の厚みは、例えば1~1000nmである。
【0186】
<積層体の製造方法>
本開示の積層体の製造方法について説明する。
本開示の積層体の製造方法としては、例えば以下に示す方法が挙げられる。
(i)上記反射防止層を有する基材(s)の反射防止層面に上記混合組成物(cc)を塗布する工程と、(ii)上記混合組成物(cc)の塗布面に、上記混合組成物(ca)を塗布する工程と、(iii)上記混合組成物(cc)と上記混合組成物(ca)とを硬化させ、上記混合組成物(cc)の塗布層から上記中間層(c)を形成し、上記混合組成物(ca)の塗布層から上記撥水層(r)を形成する工程とを含む方法。
【0187】
上記混合組成物(cc)を塗布する方法としては、公知の方法で行うことができるが、ディップコート法が好ましい。
【0188】
次に、撥水層(r)形成用の上記混合組成物(ca)を上記混合組成物(cc)の塗布面に塗布し、乾燥することで上記混合組成物(cc)の塗布層から上記中間層(c)を形成し、上記混合組成物(ca)の塗布層から上記撥水層(r)を形成できる。上記中間層(c)は、上記混合組成物(cc)の塗布中に形成してもよいし、塗布後に形成してもよく、上記中間層(c)と上記撥水層(r)の形成が同時に進行してもよい。上記撥水層(r)形成用の組成物を塗布する方法としては、例えばディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0189】
撥水層(r)形成用の組成物を塗布した後、常温、大気中で、例えば1時間以上(通常24時間以下)静置することで本開示の積層体を製造できる。本開示において常温とは、5~60℃であり、好ましくは15~40℃の温度範囲である。常温で静置する際の湿度条件は50~90%RHとしてもよい。
【0190】
<積層体の用途>
本開示の積層体は、種々の用途に適用できる。
基材として眼鏡用レンズ用基材を用いた場合、眼鏡用レンズとして好適に使用できる。
また、本開示の積層体は、好ましくはフレキシブル表示装置において前面板として用いることができ、上記前面板はウインドウフィルムと称されることがある。上記フレキシブル表示装置は、フレキシブル表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなることが好ましく、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル表示装置用積層体は、更に偏光板(好ましくは円偏光板)、タッチセンサ等を含有していてもよく、それらの積層順は任意であるが、視認側からウインドウフィルム(すなわち、本製造方法によって得られる積層体)、偏光板、タッチセンサの順、又は、ウインドウフィルム、タッチセンサ、偏光板の順に積層されていることが好ましい。タッチセンサよりも視認側に偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、フレキシブル表示装置は、ウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一方の面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【実施例0191】
以下、上記形態に関して実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、これらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0192】
<実施例1>
下記手順で、実施例1に用いた積層体(眼鏡用レンズ)を得た。
【0193】
[中間層の形成]
まず、中間層形成用組成物(混合組成物(cc)に該当)の調製を行った。
具体的には、酢酸ブチル(440質量部、溶剤(E)に該当)に、X12-5263HP(信越化学工業社製)(1.1質量部)と、10質量%KP-911(信越化学工業社製)酢酸ブチル溶液(1.1質量部)と、を加えて攪拌し、中間層形成用組成物を調製した。
なお、X-12-5263HPは、下記構造式で表される化合物からなる組成物であり、上記有機ケイ素化合物(C)に該当する。
【0194】
【化19】
【0195】
また、KP-911は、下記構造式で表される化合物が3質量%含まれるフッ素系溶剤の溶液であり、下記構造式で表される化合物は、上記有機ケイ素化合物(G)に該当する。
また、10質量%KP-911酢酸ブチル溶液は、酢酸ブチル(4.5質量部)と、KP-911(0.5質量部)とを混合し、よく撹拌して得た。
【0196】
【化20】
【0197】
[中間層の形成]
反射防止膜付き眼鏡用レンズとして、屈折率1.60の眼鏡用レンズ(ケミ・コーポレーション社製、S-4.00、反射防止膜付き)を用いた。上記眼鏡用レンズに対し、ディップコーター(島田理化工業株式会社製、ACA-001A-78A)を用いて、上記中間層形成用組成物を液浸漬時間:3秒、引き上げ速度6.0mm/秒の条件で塗布した。塗布後、空気中(室温:25℃、相対湿度:50%RH)で数分間静置し、反射防止膜の両面に中間層(中間層(c))を有する、中間層付き眼鏡用レンズを得た。
【0198】
[撥水層の形成]
撥水層形成用組成物(混合組成物(ca)に該当)として、以下の成分が含まれる組成物ca1を用いた。
撥水層形成用組成物には、上記有機ケイ素化合物(A)としてオプツール(登録商標)UF503(ダイキン工業株式会社製)、及び、上記有機ケイ素化合物(B)としてFAS13(C13-C-Si(OC、東京化成工業株式会社製)、溶剤(D)としてFC-3283(C21N、フロリナート(登録商標)、3M社製)が含まれていた。
【0199】
[撥水層の形成]
上記中間層付き眼鏡用レンズに対し、ディップコーター(島田理化工業株式会社製、ACA-001A-78A)を用いて、上記撥水層形成用組成物を液浸漬時間:3秒、引き上げ速度3.5mm/秒の条件で塗布した。
撥水層形成用組成物の塗布後、得られた眼鏡用レンズを50℃のオーブンで20分間熱処理した。上記熱処理において、湿度調整処理は行わなかった。熱処理後、更に、50℃、相対湿度80%の条件で30分間湿熱硬化し、撥水層(撥水層(r)に該当)を形成した。上記手順により、反射防止層を有する基材(s)、中間層(c)、及び撥水層(r)を有する、積層体(眼鏡用レンズ)を得た。
【0200】
<実施例2及び3、比較例1~5>
中間層形成用組成物の成分2を下記表に示す種類及び量に変更した以外は、実施例1と同様にして用いた積層体(眼鏡用レンズ)を得た。
【0201】
【表1】
【0202】
なお、上記表中の各成分2は、以下のようにして得た。
【0203】
KP-911(希釈無し)は、上記KP-911をそのまま用いた。
1質量%オクチルシラン酢酸ブチル溶液は、酢酸ブチル(4.95質量部)と、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルシラン(東京化成社製)(0.05質量部)とを混合し、よく撹拌して得た。
10質量%KY-164酢酸ブチル溶液は、酢酸ブチル(4.5質量部)と、KY-164(0.5質量部、信越化学工業社製)とを混合し、よく撹拌して得た。なお、KY-164は、固形分が20質量%含まれるフッ素系溶剤の溶液であり、上記固形分は、有機ケイ素化合物(G)に該当しない。
10質量%UD-100酢酸ブチル溶液は、酢酸ブチル(4.5質量部)と、UD-100(0.5質量部、ダイキン工業社製)とを混合し、よく撹拌して得た。なお、UD-100は、固形分が20質量%含まれるフッ素系溶剤の溶液であり、上記固形分は、有機ケイ素化合物(G)に該当しない。
10質量%KY-1903酢酸ブチル溶液は、酢酸ブチル(4.5質量部)と、KY-1903(0.5質量部、信越化学工業社製)とを混合し、よく撹拌して得た。なお、KY-1903は、固形分が20質量%含まれるフッ素系溶剤の溶液であり、上記固形分は、有機ケイ素化合物(G)に該当しない。
【0204】
<評価>
以下に示す手順で、積層体(眼鏡用レンズ)の耐傷性を評価した。
まず、積層体の可視光透過率を分光光度計(日立ハイテクサイエンス株式社製、U-4100)で測定し、JIS Z8701の2度視野(光源:C光源)の定義に基づいて換算し、視感透過率Y(%)を得た。
【0205】
次に、金属製の平面部を有する押し付け部の平面部に、8mm×120mmのゴムシートと、同サイズの研磨剤入りプラスチックシートとをこの順で重ねて固定した。積層体の撥水層(r)側の表面が上になるようにして積層体を置き、押し付け部に固定した研磨剤入りプラスチックシートと、積層体の撥水層(r)側の表面とが接するように押し付け部をセットした。この際、研磨剤入りプラスチックシートと積層体とが平行になるように調整した。
上記調整後、押し付け部に対して1kgの荷重をかけ、かつ、積層体を固定した状態で、100回/67秒の速度で、研磨剤入りプラスチックシート及びゴムシートを直線方向に往復運動させた。上記往復運動は、積層体と研磨剤入りプラスチックシートとの相対移動距離が30mmとなるようにし、100往復行った。
上記往復運動後、積層体のみを反時計回りに45°回転して積層体を置き直し、研磨剤入りプラスチックシート及びゴムシートを上記と同様の条件で往復運動させた。上記積層体の回転及び置き直し、並びに、往復運動を更に2回行い、合計400往復させた。
【0206】
上記往復運動後の積層体の視感透過率Y(%)を、上記視感透過率Yと同様の方法で得た。
上記手順で得られたY-Yの値(Y値差)(%)に基づいて、耐傷性を評価した。Y値差が小さいほど、積層体の耐傷性が高いことを示す。
また、Y値差に基づいて、以下の基準で耐傷性を評価した。
・A:Y値差が1.6%未満
・B:Y値差が1.6%以上
【0207】
<結果>
以下、実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0208】
【表2】
【0209】
表1に示すように、所定の要件(具体的には、中間層が有機ケイ素化合物(G)を含む組成物の硬化層)を満たす実施例1~3の積層体は、耐傷性に優れることを確認した。
一方、中間層形成用組成物に有機ケイ素化合物(G)を含まない比較例1~5の積層体は、実施例1~3に対して耐傷性に劣っていた。