(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052931
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】細胞認識およびインテグレーションのための核酸
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240405BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240405BHJP
A61K 49/12 20060101ALI20240405BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240405BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240405BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240405BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240405BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20240405BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20240405BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20240405BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240405BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240405BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20240405BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240405BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240405BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K51/04 310
A61K51/04 320
A61K49/12
A61K35/76
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K47/30
A61K47/56
A61K38/00
A61K39/00 G
C12N15/63 Z
C40B40/08
C12Q1/6869 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031208
(22)【出願日】2024-03-01
(62)【分割の表示】P 2021540384の分割
【原出願日】2019-09-24
(31)【優先権主張番号】62/736,323
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/875,887
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504391260
【氏名又は名称】エモリー ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】521123943
【氏名又は名称】コディカズ セラピューティック ソリューションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】レオン バナール-ミズラチ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー チャールズ ティンダール
(57)【要約】
【課題】標的細胞(例えば、がん細胞などの疾患を有する細胞)または細胞集団(例えば、組織)にホーミングする、それらを標的とする、それらの細胞質を通過する、および/またはそれらの核膜を通過する「zipコード」配列、ならびにそのような標的細胞のゲノムへのそのような核酸または核酸送達システムの少なくとも一部のインテグレーションを可能にするインテグレーション配列を含む核酸配列および核酸送達構築物を提供すること。
【解決手段】本開示はまた、そのようなZipコードおよびインテグレーション配列ならびにそのような核酸構築物およびシステムに共有結合または非共有結合によってカップリングされ得る1つまたは複数のカーゴ分子を含む天然に存在しない核酸構築物および送達システムも提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、その出願が全ての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年7月18日に出願された米国仮出願第62/875,887号、および2018年9月25日に出願された米国仮出願第62/736,323号に基づく利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子出願されている配列表を含有し、配列表はその全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。前記ASCIIコピーは、2019年9月23日に作成され、名称は54774-702_601_SL.txtであり、サイズは793,770バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
転位因子(TEまたはトランスポゾン)は、ゲノム内でその位置を変化させることができるDNA配列であり、時に突然変異を生成するかまたは突然変異からの復帰を生じ、細胞の遺伝的同一性およびゲノムサイズを変更する。転位因子は、これまでがんを含む様々な疾患に関連付けられているが、疾患の発症に対するその関係は、存在する場合、よりよく理解する必要がある。例えば、がんは、米国における死因の第2位であり、がん関連死は1日あたり1,600例を超えており、年間ではほぼ600,000例である。2015年に診断されたがんの新規症例はおよそ165万人であり、がんの発生率は、人口統計学的要因およびライフスタイルの要因により増加しつつある。このように、がんおよび他の慢性の感染性または加齢関連疾患の検出および処置のための感度がよく、有効で、特に細胞、組織、および/または臓器特異的な組成物および方法に対するアンメットニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
様々な態様では、本開示は、in vivoで標的組織への構築物の移行を方向付ける(向性)デオキシリボ核酸配列を含む核酸構築物を提供する。構築物は、標的組織の細胞にインテグレートするためにトランスポゾンに由来する2つまたはそれより多くの配列、例えば3’配列および5’配列を含み得る。
【0005】
様々な態様では、本開示は、in vivoでの標的組織または標的細胞への構築物の移行を方向付ける(向性)配列を含む様々な医薬組成物を記載する。一部の例では、本開示は、核酸構築物の治療有効量を含む医薬組成物であって、核酸構築物が、a)in vivoでの予め選択された組織への前記核酸構築物の移行を方向付ける第1のデオキシリボ核酸(DNA)配列、およびb)in vivoでの前記予め選択された組織からの細胞のゲノムへの前記核酸構築物の領域のインテグレーションを方向付ける第2のデオキシリボ核酸配列を含み、この医薬組成物は、対象に投与するために製剤化されている、医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、前記第1のデオキシリボ核酸配列は、前記予め選択された組織からの前記細胞と同じ細胞型に由来する。一部の実施形態では、前記対象はヒトである。一部の実施形態では、前記第1のデオキシリボ核酸配列は、白血球へと移行する。一部の実施形態では、前記第1のデオキシリボ核酸配列は、膵細胞へと移行する。一部の実施形態では、前記第1のデオキシリボ核酸配列は、肺細胞へと移行する。一部の実施形態では、前記核酸構築物は、前記対象に投与した場合、前記予め選択された組織からの前記細胞の核膜を通過する。一部の実施形態では、前記第1のデオキシリボ核酸配列は、配列番号203~配列番号277および配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態では、前記第1のデオキシリボ核酸配列は、長さが少なくとも400塩基対である。一部の実施形態では、前記第1のデオキシリボ核酸配列は、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である。一部の実施形態では、前記第2のデオキシリボ核酸配列は、トランスポゾン配列と少なくとも90%の相同性を有する。一部の実施形態では、前記トランスポゾンは、クラスIIトランスポゾンである。一部の実施形態では、前記クラスIIトランスポゾンは、遺伝子の水平伝播を介して前記予め選択された組織からの前記細胞の前記ゲノムにそれ自身をインテグレートする。一部の実施形態では、前記核酸構築物は、少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列(deoxyribonucleic nucleic acid)を含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列は、組織選択的プロモーターを含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列は、前記ゲノムへの組み込みのために第2のインテグレーションシグナルを含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列は、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列は、前記ペプチドまたはタンパク質が、前記予め選択された組織からの前記細胞に限って発現されることを確実にする配列を含む。一部の実施形態では、前記ペプチドまたは前記タンパク質は、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質をコードする。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、肺がん腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである。一部の実施形態では、前記ペプチドまたは前記タンパク質は、抗原性タンパク質をコードする。一部の実施形態では、前記抗原性タンパク質は、前記対象に投与されると前記細胞において特異的に翻訳される。一部の実施形態では、前記医薬組成物はカーゴをさらに含む。一部の実施形態では、前記カーゴはフルオロフォアまたは放射性同位体である。一部の実施形態では、前記カーゴは治療薬である。一部の実施形態では、カーゴは、前記核酸構築物に共有結合されている。一部の実施形態では、前記製剤は、ナノ粒子またはカチオン性ポリマーを含む。
【0006】
様々な態様では、本開示は、配列番号203~配列番号277または配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の配列同一性を有する第1の配列、または追加の核酸配列を含むベクターを提供する。一部の実施形態では、前記追加の核酸配列は、本明細書に記載されるトランスポゾン配列と少なくとも90%の相同性を有する。一部の実施形態では、前記トランスポゾンは、クラスIIトランスポゾンである。一部の実施形態では、前記クラスIIトランスポゾンは、遺伝子の水平伝播を介して前記予め選択された組織からの前記細胞の前記ゲノムにそれ自身をインテグレートする。一部の実施形態では、前記ベクターは、少なくとも2つの追加の核酸配列を含む。一部の実施形態では、前記少なくとも2つの追加の核酸配列は、組織選択的プロモーターおよびトランスポゾン配列を含む。一部の実施形態では、前記少なくとも2つの追加の核酸配列は、少なくとも2つのトランスポゾン配列を含む。一部の実施形態では、前記追加の核酸配列は、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む。一部の実施形態では、前記ペプチドまたは前記タンパク質は、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質をコードする。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、肺がん腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである。一部の実施形態では、前記ベクターは、カーゴに共有結合により連結される。一部の実施形態では、前記カーゴは、フルオロフォアまたは放射性同位体である。一部の実施形態では、前記カーゴは治療薬である。
【0007】
様々な態様では、本開示は、2つまたはそれより多くの前記ベクターのライブラリを提供する。
【0008】
様々な態様では、本開示は、がんを処置する方法であって、前記がんに罹患している対象の組織へのカーゴの移行を方向付ける核酸配列を含む核酸構築物の治療有効量を投与することを含み、組成物が、対象に投与するために製剤化されている、方法を提供する。一部の実施形態では、がんは肺がんである。一部の実施形態では、がんは多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、がんは膵臓がんである。一部の実施形態では、前記核酸構築物は、前記対象に投与されると前記組織細胞の細胞における核膜を通過する。一部の実施形態では、前記組織への前記カーゴの移行を方向付ける前記核酸配列は、配列番号203~配列番号277または配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態では、前記核酸構築物は、前記組織の細胞のゲノムへのインテグレーションのためにトランスポゾンを含む。一部の実施形態では、前記トランスポゾンは、長さが少なくとも400塩基対である。一部の実施形態では、前記トランスポゾンは、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である。一部の実施形態では、前記トランスポゾンは、クラスIIトランスポゾンである。一部の実施形態では、前記核酸構築物は、前記組織の細胞に対して異種である少なくとも1つの追加の核酸配列を含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加の核酸配列は、組織選択的プロモーターを含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加の核酸配列は、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加の核酸配列は、標的ゲノムへの組み込みのためのインテグレーションシグナルを含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加の核酸配列は、前記細胞を標的とするためのガイド配列を含む。一部の実施形態では、前記少なくとも1つの追加の核酸配列は、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む。一部の実施形態では、前記ペプチドまたは前記タンパク質は、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質をコードする。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、肺がん腫瘍抑制遺伝子である。一部の実施形態では、前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質は、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである。一部の実施形態では、前記ペプチドまたは前記タンパク質は、抗原性タンパク質をコードする。一部の実施形態では、前記抗原性タンパク質は、前記対象に投与されると前記組織の細胞において特異的に翻訳される。一部の実施形態では、前記核酸構築物は、フルオロフォアまたは放射性同位体に共有結合により連結される。一部の実施形態では、前記核酸構築物は、治療薬に共有結合により連結される。
【0009】
一部の例では、本開示は、第1のDNA配列および第2のDNA配列を含む核酸構築物であって、そのような第1のDNA配列が、構築物を特定の臓器、組織、および/または細胞に方向付けることが可能な標的化配列であり得、第2のDNA配列が、構築物の少なくとも領域または一部を特定の臓器または組織の細胞のゲノムにインテグレートすることが可能なインテグレーション配列であり得る、核酸構築物を提供する。一部の例では、第1の(細胞標的化/認識)および第2の(インテグレーション)DNA配列は、Zipコード配列(ZCS)、トランスポゾン、または転位因子の一部であり得る。そのようなZCSまたはトランスポゾンは、配列番号203~配列番号277もしくは配列番号282のいずれか1つと少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する、またはその断片と少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、99%、もしくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み得る細胞標的化および認識配列を含み得る。そのような断片は、少なくとも約8、10、12、15、20、25、または30ヌクレオチド長であり得る。一部の例では、そのようなトランスポゾンは、クラスIIトランスポゾンであり得る。
【0010】
一部の例では、そのような核酸構築物は、がん細胞間で遺伝子を伝播させるためのビヒクルとして役立つことができ、およびカーゴ(例えば、核酸、タンパク質、低分子、またはナノ粒子)を細胞に輸送するために使用することができ、そのような細胞は第1および/または第2の核酸配列がそれに由来する(またはそこから排泄された)細胞と同じ起源の細胞であり得る。本明細書において詳しく記載するように、ctDNAなどの遺伝物質の細胞(例えば、腫瘍細胞)への伝播は、細胞のクローン性の構造を変更することができ、そのような細胞(例えば、腫瘍細胞)の環境変化、例えば薬物処置に対する運命を決定し得る。
【0011】
一部の例では、本開示はまた、本明細書に記載される核酸構築物の様々な驚くべき意外な属性も提供する。そのようなユニークな属性は、向性を含み得るが、これは、本明細書において構築物が、第1の(標的化)配列および/または第2の(インテグレーション)配列が由来する細胞と同じまたは類似の起源の細胞である細胞を標的とするおよび/または細胞に侵入する能力として定義され得る。様々な例では、本明細書における核酸構築物のそのような標的化および/またはインテグレーション配列は、循環する腫瘍DNA(ctDNA)に由来し得る。本明細書に提供される構築物のそのような属性の別の例は、類似の起源の細胞と異なる組織または臓器を起源とする細胞とを識別する能力を含み得る。一例として、多発性骨髄腫(MM)腫瘍細胞を起源とするctDNAに由来する第1のDNA配列および第2のDNA配列を含む核酸構築物は、他の腫瘍、例えば膵臓がん(PC)、肺がん、または大腸がんの細胞と比較して高い特異性でMM細胞のゲノムを標的とする、ゲノムに侵入する、および/またはゲノムにインテグレートすることができる。そのような特異性は、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、または99%であり得る。さらに、そのような構築物は、異なる細胞系からのMM細胞を標的とすることができる。そのため、例えば、MM特異的核酸構築物を、in vitroで例えばカーゴをMM細胞(例えば、MM1S細胞)に輸送するために、またはin vivoで対象(例えば、齧歯類またはヒト)の腫瘍のMM細胞にカーゴを輸送するために使用することができる。
【0012】
本開示は、細胞(例えば、がん細胞)のゲノムへの細胞の標的化および認識および挿入をそれぞれ可能にするそのようなユニークな標的化および/またはインテグレーション配列(例えば、ZCSまたはトランスポゾン)を識別するために使用することができる機能的アッセイをさらに提供する。例えば、送達システムにおいて使用するための細胞特異的認識配列および/またはゲノムインテグレーション配列を、本明細書における実施例2に記載されるように識別することができる。一部の例では、そのような標的化および/またはインテグレーション配列を生成するために使用することができるctDNAは、対象、例えば対象の血漿から得ることができる。そのような対象はヒトであり得る。ヒト対象は、がんなどの疾患を有すると診断されている対象であり得る。一部の態様では、本開示は、実質的に類似の起源の組織または細胞へと移行する(向性)核酸配列を識別する方法であって、(a)循環する腫瘍核酸を生物試料から単離し、それによって単離された腫瘍核酸のセットを生成すること、(b)前記単離された循環する腫瘍核酸のセットにバーコードを付与して、それによって複数のバーコード化腫瘍核酸のセットを生成すること、(c)組織向性配列のインテグレーションを可能にする条件下で細胞の集団に、複数のバーコード化腫瘍核酸からの少なくとも1つのバーコード化腫瘍核酸を添加し、それによって培養細胞集団を生成すること、(d)培養細胞集団をシーケンシングして、それによって複数のシーケンシングリードを生成すること、(e)シーケンシングリードをコンピューターによって解析し、バーコードを含む複数のシーケンシングリードから少なくとも1つのシーケンシングリードの存在または非存在を識別すること、および(f)バーコードを含むシーケンシングリードを解析して、培養細胞集団には存在するが、細胞集団には存在しない配列の存在または非存在を識別し、それによって目的の組織または細胞に移行する核酸配列を識別することを含む方法を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、そのようなctDNAに由来し得、カーゴ(例えば、核酸、タンパク質、低分子、またはナノ粒子)を1つまたは複数の標的細胞に送達するために使用することができる、合成により生成されたトランスポゾンを提供する。一部の例では、および本明細書に記載されるように、そのような合成により生成されたトランスポゾンまたはZCS(例えば、オリゴ-ZCS)は、in vivoおよびin vitroの両方において細胞、例えばがん細胞に対して高い特異性でカーゴを送達するためのツールとして使用することができる核酸構築物の一部であり得る。このように、一部の例では、そのような核酸構築物は送達システムの一部であり得る。そのような送達システムは、1つまたは複数の構成成分を有し得る。そのような構成成分は、(i)ある特定の細胞、細胞集団、もしくは組織を標的とするための第1のDNA配列、およびそのような送達システムの少なくとも領域もしくは部分の、そのような標的細胞、細胞集団、もしくは組織のゲノムへのインテグレーションのための第2のDNA配列を含むZCS配列、(ii)プロモーター配列、ならびに(iii)1つもしくは複数のカーゴ、またはそのいずれかの組合せを含み得る。そのような1つまたは複数のカーゴは、(a)そのような標的細胞または組織において発現させることができる遺伝子または遺伝子断片などの1つまたは複数の核酸(例えば、DNA)配列、および(b)1つまたは複数の追加のカーゴ、例えばタンパク質、ナノ粒子、または低分子を含み得る。
図12は、本明細書に記載される送達システムの例を示す。そのようなシステムでは、標的細胞に送達されるカーゴ(本明細書では、抗原コード遺伝子などの遺伝子)を、(例えば、組織特異的)プロモーター配列およびガイド配列にカップリングすることができ、それらは第1および第2のDNA配列を含むZCSおよび/またはトランスポゾンに隣接し、第1のDNA配列(例えば、標的化配列またはZipコード配列)は、細胞標的化を可能にし、第2のDNA配列は、そのようなシステムが細胞の核に達するとシステムを標的細胞のゲノムにインテグレートすることが可能である。
【0014】
一部の例では、本開示は、ある特定の特性を標的細胞に伝播することができる核酸構築物およびシステムを提供する。そのような特性は、環境内での変化に対する標的細胞の応答を含む。そのような変化は、ある特定の分子に対する曝露を含み得る。そのような分子は、薬物分子、例えば低分子またはタンパク質、例えば抗体であり得る。そのような伝播または特性の例は、患者の血漿からin vitroでのがん細胞系への薬物に対する耐性または感受性を含む。そのような驚くべき意外な特性は、1つまたは複数(例えば、2、3、4個等)のZCS(またはトランスポゾン)配列と、1つまたは複数のカーゴ分子、例えばそのような構築物またはそのような構築物の一部の標的細胞のゲノムへの送達およびインテグレーションのための治療タンパク質および/または診断タンパク質をコードする追加の核酸配列とを含む天然に存在しない核酸構築物の設計を可能にし得る。そのような標的細胞は、がん細胞であり得、カーゴ核酸は、多様な治療タンパク質、例えばがん細胞のアポトーシスのためのカスパーゼ、免疫療法の免疫細胞の認識または増強のための抗原、または他のタンパク質、例えば抗体、酵素、サイトカイン、シグナル伝達分子等をコードすることができる。
【0015】
本明細書に記載されるZCSまたはトランスポゾン配列は、1つまたは複数の転位因子を含み得る。そのような転位因子としては、哺乳動物散剤性反復配列(MIR)およびArthrobacter luteus(ALU)、例えばALUsq、ならびにその誘導体または機能的断片が挙げられ得る。このように、一部の例では、本開示は、腫瘍細胞などの標的細胞にカーゴを送達することが可能であり得る合成MIRオリゴヌクレオチド(オリゴ)を提供する。
参照による組み込み
【0016】
本明細書において言及した全ての刊行物、特許、および特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に参照により本明細書に組み込まれることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
本出願ファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面を含む本特許または特許出願刊行物のコピーは、申請により必要な料金を支払うことにより当局によって提供される。
【0018】
本発明の新規特色は、添付の特許請求の範囲に詳しく記載される。本発明の特色および利点のよりよい理解は、本発明の原理を利用する例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および以下の添付の図面(本明細書においてまた「図」および「図(FIG)」)を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、特異的腫瘍細胞認識配列(例えば、Zipコード配列、本明細書において「ZCS」と省略もされる)を含む循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、多発性骨髄腫細胞(MM1s細胞)(MM細胞+MM ctDNAとして図示する)、肺がん細胞系(A549)(LC細胞+LC ctDNAとして図示する)、および膵臓がん細胞系(SPAC01)(PC細胞+PC ctDNAとして図示する)において細胞膜および核膜を通過することができることを示す。
【0020】
【
図2-1】
図2Aは、膵臓がん細胞におけるctDNAの捕捉および内部移行を実証する8枚の3D画像の時間経過を示す。
【0021】
【
図2-2】
図2Bは、膵臓がん細胞におけるctDNAの捕捉および内部移行を実証する8枚の単一面画像の時間経過を示す。
【0022】
【
図2-3】
図2Cは、膵細胞におけるエンドサイトーシスによるctDNAの捕捉および内部移行を実証する3Dビデオからの8枚の画像の時間経過を示す。
【0023】
【
図3-1】
図3Aは、ASPC-1細胞におけるctDNAの核局在を実証する単一面ビデオから得た8枚の画像の時間経過を示す。
【0024】
【
図3-2】
図3Bは、MM1S細胞におけるctDNAの核取り込みを図示する単一面の4時間の時間経過から得た6枚の画像を示す。細胞膜を緑色蛍光タンパク質(GFP)によって標識した。核はDAPIによって標識する。
【0025】
【
図4】
図4は、肺がんまたはMM患者から抽出した標識ctDNAと共に培養したA459(肺がん)およびMM1(多発性骨髄腫、MM)細胞を図示する。この図は、それぞれのctDNAが、ctDNA細胞起源と類似の細胞をほぼ排他的に標的とすることを示している。
【0026】
【
図5-1】
図5Aは、形質細胞の染色体へのctDNAインテグレーションを実証する染色体スプレッドを示す。
【0027】
【
図5-2】
図5Bは、DNA依存的タンパク質キナーゼ(例えば、DNAPKcs)、毛細血管拡張性運動失調症突然変異(ATM)、ポリ-(ADP-リボース)ポリメラーゼI(PARP-1)、およびラルテグラビル(インテグラーゼ阻害剤)が染色体へのctDNAインテグレーションに及ぼす効果を示すグラフである。
【0028】
【
図5-3】
図5Cは、ctDNAの染色体インテグレーションが、非相同末端結合(NHEJ)およびトランスポザーゼに依存し得ることを示す。標識ctDNAの組み込みは、DNAPKcs、ATM、PARP-1、およびインテグラーゼ(ラルテグラビル)の阻害剤が存在する場合には、有意に低減された。PARP-1阻害では、有意でない低減が観察された。
【0029】
【
図6】
図6は、コンセンサス配列(コンティグ)の識別を図示する概略図を示す。
図6は、配列番号280~281をそれぞれ出現順に開示する。
【0030】
【
図7】
図7は、2つの細胞認識シグナル配列を示す。左の赤色の枠は、多発性骨髄腫(MM)由来のctDNAに存在するが膵臓がん(PC)由来のctDNAには存在しない2つの類似のバリアントの領域を強調する。右側の赤色の枠は、MMおよびPCにおいて検出された追加の核酸配列(対照)を示す。
【0031】
【
図8-1】
図8Aは、多発性骨髄腫、膵臓がん、および対照細胞系からの識別されたコンティグ配列の系統樹を示す。指標となるコンティグは、Zipコード配列の局在、型、および存在を示す。
【0032】
【
図8-2】
図8Bは、染色体インテグレーション領域を示し、機構がトランスポゾンに関連し得るおよび/またはトランスポゾンによって媒介され得ることを示す。そのような指標は、ほとんどの挿入されたコンティグ配列が、高い含有量のトランスポゾンを有し得る;コンティグ配列が異なる型のトランスポゾンを有し得る;インテグレーションが立体構造依存的であり得る;ならびにコンティグおよび/またはZC配列の細胞認識が受容体媒介性であり得るという知見を含む。
【0033】
【
図9】
図9は、全身または局所投与後の核におけるctDNAの局在を含む、腫瘍に存在するローダミン標識ctDNA構築物の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0034】
図9Aは、腫瘍に直接注射した場合のローダミン標識ctDNA投与の24時間後の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0035】
図9Bは、尾静脈注射した場合のローダミン標識ctDNA投与の24時間後の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0036】
図9Cは、尾静脈注射した場合のローダミン標識ctDNA投与の48時間後の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0037】
図9Dは、収集の24時間前にリン酸緩衝食塩水(PBS)を尾静脈注射した、腫瘍を有する対照マウスの共焦点顕微鏡画像を示す。
【0038】
【
図10】
図10は、全身または局所投与後の腫瘍に存在するローダミン標識ctDNA構築物の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0039】
図10Aは、収集の24時間前にPBSを尾静脈注射した、腫瘍を有する対照マウスの共焦点顕微鏡画像を示す。
【0040】
図10Bは、収集の24時間前に尾静脈注射した場合のローダミン標識ctDNAの共焦点顕微鏡画像を示す。
【0041】
図10Cは、収集の48時間前に尾静脈注射した場合のローダミン標識ctDNAの共焦点顕微鏡画像を示す。
【0042】
【
図11】
図11は、組織特異的zipコードを含む構築物の内因性のインテグレーション機構を図示する図である。
【0043】
【
図12】
図12は、zipコード領域(すなわち、細胞標的化または細胞認識配列)、インテグレーション配列またはインテグレーション領域、目的の特定のタンパク質をコードする目的の遺伝子、および必要に応じて目的のタンパク質が標的細胞集団に限って発現されることを確実にするための追加の安全性手段として作用するガイド配列を含む、本明細書に記載される送達システム(例えば、目的の遺伝子または抗原のための)の例の描写である。ダイアグラムは、細胞標的化シグナル配列およびインテグレーションシグナル配列が3’末端もしくは5’末端、またはその組合せに存在し得ることを図示する。
【0044】
【
図13】
図13は、多発性骨髄腫(MM)ZCS核酸分子(配列番号282)およびHSV-TK遺伝子を含む遺伝子構築物の投与の48時間後に開始して1日1回5日間投与したガンシクロビルの併用療法によって誘導された腫瘍サイズの約50%の変化を示す。
【0045】
図13Aおよび
図13Bは、ガンシクロビルによる処置の前と5日後の腫瘍サイズの比較を示す。
【0046】
図13Cは、MM ZIPコード-HSV-TKによる遺伝子治療を受けた両方のマウス(マウス#1およびマウス#2)において測定した腫瘍体積の変化を示す。ガンシクロビルによる処置は、両方の動物において腫瘍体積の有意な低減をもたらした。
【0047】
【
図14】
図14Aおよび
図14Bは、MM ZIPコード-HSV-TKによる遺伝子治療を受けた後、ガンシクロビル(100μg/kg)による処置の48時間後、5日後のマウス#2からの様々な組織のPCR結果を示す。PCR結果から、腫瘍細胞および腫瘍組織に限って単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ-1に対応するバンドが明らかに示され、それらは本研究において分析した他の臓器のいずれにおいても認められず、本明細書に開示されるZipコード配列および関連構築物の高い細胞および組織特異性を実証している。番号は、(1)分子量ラダー、(2)腫瘍、(3)肺、(4)脾臓、(5)肝臓、(6)膵臓、(7)脳、および(8)腎臓を示す。
【0048】
【
図15】
図15は、組織および/または臓器特異的「Zipコード」配列の概略図である。本開示は、そのようなZCSを使用して、細胞、組織、および/または臓器特異的標的化および/または送達を可能にする細胞、組織、および/または臓器特異的「Zipコード」配列(本明細書において「ZCS」と省略もされる)を提供する。
【0049】
【
図16】
図16Aは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、細胞および組織特異的にMM細胞にホーミングすることを示す。赤色で強調した領域は、ローダミン標識DNAを示し、青色の領域はDAPI染色を示す。
【0050】
図16Bは、肺がん(LC)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、細胞および組織特異的にLC細胞にホーミングすることを示す。赤色で強調した領域は、ローダミン標識DNAを示し、青色の領域はDAPI染色を示す。
【0051】
図16Cは、大腸がん(CC)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、細胞および組織特異的にCC細胞にホーミングすることを示す。赤色で強調した領域は、ローダミン標識DNAを示し、青色の領域はDAPI染色を示す。
【0052】
図16Dは、膵臓がん(PC)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、細胞および組織特異的にPC細胞にホーミングすることを示す。赤色で強調した領域は、ローダミン標識DNAを示し、青色の領域はDAPI染色を示す。
【0053】
【
図17】
図17Aは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、競合する大腸がん(CC)ctDNA(緑色で示す)の存在下であっても細胞および組織特異的にMM細胞にホーミングすることを示す(MM ctDNAを赤色で示す)。MM ctDNAのみがMM細胞において観察され、CC ctDNAは観察されなかった。
【0054】
図17Bは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、競合する膵臓がん(PC)ctDNA(緑色で示す)の存在下であっても細胞および組織特異的にMM細胞にホーミングすることを示す(MM ctDNAを赤色で示す)。MM ctDNAのみがMM細胞において観察され、PC ctDNAは観察されなかった。
【0055】
図17Cは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)の色素ローダミンによる標識が、MM由来ctDNAが細胞および組織特異的にMM細胞に蓄積する能力に影響を及ぼさなかったことを示す(MM ctDNA-ローダミン構築物を赤色で示す)。
【0056】
図17Dは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)の色素Cy5による標識が、MM由来ctDNAが細胞および組織特異的にMM細胞に蓄積する能力に影響を及ぼさなかったことを示す(MM ctDNA-Cy5構築物を緑色で示す)。
【0057】
【
図18】
図18は、MM ctDNAがMM細胞の染色体DNAにインテグレートしたことを示す。MM ctDNAを赤色の点として示す。MM ctDNAの染色体インテグレーションを、シーケンシングを使用して検証した。
【0058】
【
図19】
図19は、例えば、腫瘍の染色体にインテグレートされたctDNAおよびctDNA単独からの配列の配列アライメントマッチを実証することによる染色体インテグレーションの検証の概略図である。
図19は、出現順に配列番号280~281をそれぞれ開示する。
【0059】
【
図20】
図20は、本開示の合成されたMM特異的Zipコードオリゴヌクレオチド構築物の概略図である。そのような構築物は、2つのZipコード配列(例えば、長さ約300bp)を含み得、これらはいずれかの部位で翻訳エレメント(例えば、IRES)、GFPコード配列、プロモーター、ルシフェラーゼコード配列、ならびに構築物に沿って分布し得、in vitroおよび/またはin vivoでの構築物(またはその断片)の動きを追跡するために使用され得る1つまたは複数のローダミン色素分子を含む構築物に隣接する。
【0060】
【
図21】
図21Aは、ZCS構築物(MMZipコード-PGK-GFP-MMZipコード)のGFP(緑色、左上)の発現およびローダミンの検出が、MM細胞内でのその局在に対応したことを示しており、ZCS構築物のMM細胞への効率的な送達、トランスジーンの送達、および前記トランスジーンの発現を示している。
【0061】
図21Bは、線状のPGK-GFP構築物単独を使用しても、シグナルのいかなる細胞特異的位置も示さないことを示しており、Zipコード配列が、MMZipコード-PGK-GFP-MMZipコード構築物のMM細胞特異的取り込みの原因であることを確認する。
【0062】
【
図22】
図22は、MMZipコード-ファージ-GFP-IRES-Luc構築物のMM細胞への細胞取り込みの拡大画像を示す。画像の評価から、この構築物を使用してMM細胞への最大100%の遺伝子送達が示され、最大で、分析したあらゆるMM細胞によってGFPが生成されたことが示された。
【0063】
【
図23】
図23は、PC異種移植マウスモデルにおけるPC由来ZCSのin vivoホーミング研究の結果を示す。
図23Aは、いかなる構築物も注射しない陰性対照を示す2つの画像を、一番左の縦列に示す。
図23Bは、投与(尾静脈を介して)の24時間後のPC細胞におけるPC由来ZCSの蓄積を示す2つの画像を、中央の縦列に示す。
図23Cは、投与(尾静脈を介して)の48時間後のPC細胞におけるPC由来ZCSの蓄積を示す2つの画像を、右の縦列に示す。この動物からの肝臓および脾臓から得た組織試料は、PC由来のZCSの取り込みを示さず、本開示のZCSの細胞特異性を確認した。
【0064】
【
図24】
図24は、PC異種移植マウスモデルにおけるPC由来細胞標的化核酸配列の膵臓がん(PC)in vivoホーミング研究の結果を示す。
図24Aは、尾静脈注射した24時間後および特に48時間後のPC細胞におけるこれらのPC標的化核酸分子の有意な蓄積および取り込みを実証するデータを示す。
図24Bは、PC由来核酸分子を腫瘍に直接注射した場合に腫瘍細胞における取り込みが有意に低減されたことを示し、本開示の細胞標的化および/またはインテグレートする核酸分子が、全身投与した場合に改善された細胞および/または組織認識および取り込みを提供し得ることを示唆している。
図24Cは、ctDNAを注射しなかった対照実験を示す。
【0065】
【
図25-1】
図25Aは、ボルテゾミブ耐性患者の血清によって処置したボルテゾミブ感受性細胞(OMP1およびMM1)およびボルテゾミブ感受性患者の血清によって処置したボルテゾミブ耐性細胞(OMP1およびMM1)において測定した細胞生存率を示す。細胞生存率はまた、血清をDNアーゼによって10分間処置した後の類似の細胞においても測定した。
【0066】
【
図25-2】
図25Bは、MM、ならびに肺、膵臓、および大腸がん細胞系におけるローダミン標識ctDNA(赤色)の核局在を示す指標となる写真を示す。
【0067】
図25Cは、ベースラインctDNA単独の密度と比較した、複数の細胞系および患者由来のctDNAの核密度測定の倍数変化を示す。
図25A~25Cのデータは、患者のボルテゾミブに対する臨床での感受性を、ctDNAを介して細胞系に伝達することができることを示す。
【0068】
【
図26-1】
図26Aは、ASPC1およびMM1細胞におけるローダミン-ctDNAの細胞質局在および核局在を実証する経時的測定を示す。MM:多発性骨髄腫、CC:大腸がん、およびPC:膵臓がん。
【0069】
図26Bは、尾注射の48時間後のローダミン-ctDNAの腫瘍局在の指標となる例を示す(n=3)。
【0070】
【
図26-2】
図26Cは、患者のがんの型とマッチするまたはマッチしない細胞系における指標となる画像を示す。
【0071】
図26Dは、患者のがんの型とマッチするまたはマッチしない細胞系におけるctDNA核密度測定の倍数変化を示す。
【0072】
【
図26-3】
図26Eは、マッチするおよびマッチしない腫瘍型ctDNAと細胞系との同時培養の指標となる画像を示す。
【0073】
図26Fは、マッチするおよびマッチしない腫瘍型ctDNAと細胞系との同時培養の核密度測定の倍数変化を示す。
【0074】
【
図27】
図27Aは、MM、PC、およびCC細胞系の染色分体へのctDNAインテグレーションの指標となる画像を示す。
【0075】
図27Bは、ctDNAインテグレーションを有する染色分体の測定を示す(三連の実験、中期n=10)。
【0076】
図27Cは、サイトメガロウイルス-緑色蛍光タンパク質(CMV-GFP)をコードするカーゴ核酸配列がctDNA配列に隣接し、カーゴ(CMV-GFP-コード)配列の細胞標的化およびゲノムインテグレーションを可能にするctDNA-CMV-GFP-ctDNA構築物と同時培養した腫瘍細胞におけるGFPの発現を示す(右の画像)。左の画像(対照)は、ctDNAなしでCMV-GFPコードカーゴ核酸配列を使用した場合にCMV-GFPが腫瘍細胞において発現されなかったことを示し、ctDNA部分がカーゴ核酸配列の細胞標的化および発現にとって必要であったことを示唆した。
【0077】
【
図28-1】
図28Aは、細胞(MM1S、ASPC-1、およびHCT 116細胞)をKU-55933(ATM阻害剤、10μM)、DNA-PKCS阻害剤I(DNAPKcs阻害剤、30μM)、NU1025(PARP阻害剤、200μM)、およびラルテグラビル(MANASE SETMAR/インテグラーゼ阻害剤、100nM)によって処置した後の、ctDNAインテグレーション(3連の実験、中期n=10)を有する染色分体の数を示す。
【0078】
【
図28-2】
図28Bは、TE-CMV-GFP断片との細胞同時培養物におけるGFP発現を示す。
【0079】
図28Cは、HSV-TKベクター、腫瘍対照またはTE-CMV-HSV-TKを注射したマウスの腫瘍、およびTE-CMV-HSV-TKを注射したマウスの1つの指標となる例の臓器から抽出したDNAのPCRを示す。
【0080】
【
図29-1】
図29Aは、ボルテゾミブ感受性患者の血清、もしくはボルテゾミブ耐性患者からのctDNAを培養培地に添加した同じ血清によって処置した、または同じ血清をDNアーゼによって処置した場合のボルテゾミブ感受性細胞系MM1sにおいて測定した細胞生存率を示す。加えて、生存率を、ボルテゾミブ耐性血清単独または異なるボルテゾミブ耐性患者のctDNAと共にMM1s細胞の同時培養において測定した。
【0081】
図29Bは、RNアーゼ、DNアーゼ、およびプロテイナーゼによる処置の存在下または非存在下での多発性骨髄腫(MM)、膵臓がん(PC)、および大腸がんctDNAからのctDNAのアガロースゲルを示す。
【0082】
【
図29-2】
図29Cは、膵臓がんの全ゲノムシーケンシング(n=10)およびMMエクソンシーケンシング(n=10)から測定された腫瘍とctDNAとの間の一致率単一ヌクレオチドバリアントを示す。
【0083】
図29Dは、異なるMM細胞系および複数のMM患者からのctDNAの指標となる画像を示す。
【0084】
【
図30-1】
図30Aは、ローダミン-膵臓がんctDNAを尾注射したマウスからの膵臓がん腫瘍の共焦点顕微鏡画像を示す。腫瘍を注射の24および48時間後に収集した。
【0085】
【
図30-2】
図30Bは、尾注射の48時間後にローダミン-ctDNA(MM、大腸および膵臓がん)を注射した異種移植マウスの異なる臓器からの指標となる画像を示す(n=3)。
【0086】
【
図31】
図31Aは、ローダミン-MM ctDNAおよびCY5-膵臓がんctDNAを尾注射したマウスからのMMまたは膵臓がん腫瘍の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0087】
図31Bは、MM、大腸がん、または膵臓がんを有する患者に由来するctDNAと共に培養したMM1s(MM)、HTC116(大腸がん)、およびASPC1(膵臓がん)細胞系の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0088】
図31Cは、2つの大腸がん細胞系(HT29およびRKO)および2つの膵臓がん細胞系(MIAおよびPANC1)の核におけるctDNAのインテグレーションを例示する指標となる中期の例を示す。
【0089】
【
図32】
図32は、ATM、DNAPKcs、PARP、およびトランスポザーゼ阻害剤によって処置した様々ながん細胞系(MM1s、ASPC1、およびHT116)の指標となる中期の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
詳細な説明
本開示の様々な実施形態が本明細書において示され、記載されているが、そのような実施形態が例として提供されることは、当業者に明白であろう。複数の変形形態、変化、および置換が、本開示から逸脱することなく当業者に想起され得る。さらに、本明細書に記載した本開示の実施形態に対する様々な代替物を用いてもよい。
【0091】
本開示は、カーゴ分子の細胞、組織、および/もしくは臓器特異的標的化、取り込み、核局在化、ならびに/またはゲノムインテグレーションのための組成物および方法を提供する(例えば、
図15を参照されたい)。そのようなカーゴ分子は、核酸配列(例えば、治療タンパク質などのタンパク質をコードするDNA配列)、アミノ酸配列(例えば、ペプチド、タンパク質、またはその断片)、および/または低分子もしくは有機分子(例えば、低分子治療薬または蛍光色素)を含み得る。そのような例において、本明細書における組成物および方法は、カーゴ(例えば、核酸分子、タンパク質、ペプチド、または低分子、例えば治療および/もしくは診断用分子等)を標的細胞に細胞特異的に送達するために使用することができる。そのような標的細胞は、原核細胞または真核細胞(例えば、腫瘍細胞)であり得る。
【0092】
本明細書に記載される組成物は、核酸構築物を含み得る。そのような核酸構築物は、カーゴ分子の細胞、組織、および/または臓器特異的標的化、取り込み、核局在、および/またはゲノムインテグレーションを提供することができる。そのような核酸構築物は、認識および/またはインテグレーション配列を含む核酸配列を含み得る。本明細書における様々な例において、そのような核酸配列は、核酸構築物の細胞特異的標的化および取り込みを提供することができるZipコード配列(本明細書において「ZCS」と省略もされる)を含み得る。そのようなZCSはまた、核酸またはその一部の、細胞のゲノムへのインテグレーションを可能にするインテグレーション配列も含み得る。一部の例では、細胞標的化および/またはゲノムインテグレーションを提供するそのような核酸配列は、トランスポゾン配列であり得るか、またはトランスポゾン配列を含み得る。
【0093】
本開示の細胞標的化(認識)およびインテグレーション配列は、生物試料(例えば、対象の血液または組織試料)の核酸配列に由来し得る。そのような細胞標的化およびインテグレーション配列は、循環する腫瘍DNA(本明細書において「ctDNA」と省略もされる)に由来し得る。本開示のZCSを使用して、1つまたは複数の細胞を標的とする、細胞に侵入する、および/または細胞に蓄積することができ、例えば、そのような細胞の核を標的とする、核に侵入する、および/または核に蓄積することができる。ZCSは、そのようなctDNAにまた由来し得るインテグレーション配列を含み得る。認識/標的化およびインテグレーション配列が由来し得るこれらの1つまたは複数の細胞は、そのようなZCSを生成するために使用されるctDNAと同じ起源の細胞であり得る。例えば、多発性骨髄腫(MM)細胞の核酸分子から生じる、および/またはそれに由来するDNA分子を使用して、MM細胞にカーゴを標的化および/または送達することができる。そのようなMM由来ctDNA分子は、本開示のMM由来標的化およびインテグレーション配列のMM細胞認識、細胞取り込み、核局在、および/またはゲノム(例えば、染色体)インテグレーションを可能にする1つまたは複数の配列を含み得る。一部の例では、標的化およびインテグレーション配列は、核酸構築物の一部であり得る。
【0094】
一部の例では、本開示は、送達システムを提供する。そのような送達システムは、(i)1つまたは複数の細胞標的化配列および1つまたは複数のインテグレーション配列(例えば、ZCS)を含む核酸構築物、(ii)治療および/または診断用分子、例えばペプチドまたはタンパク質をコードする1つまたは複数のカーゴ核酸配列、ならびに(iii)1つまたは複数の非核酸カーゴ分子、例えば低分子(例えば、治療低分子、色素等)、タンパク質、ペプチド、またはそのいずれかの組合せのうちのいずれか1つまたは複数を含み得る。このように、本開示の核酸構築物は、ある特定の核酸配列、例えばZCSが細胞レベルで高い標的化特異性を提供する(例えば、ある特定の起源の細胞のみ、またはある特定の遺伝子型、組織型、および/もしくは臓器型の細胞のみを標的化し得る)という驚くべき知見により、ならびに治療タンパク質(例えば、腫瘍抑制因子、アポトーシスタンパク質、抗原性ペプチド、抗体、酵素等)などのタンパク質のゲノムインテグレーションおよびその後の発現を可能にするインテグレーション配列により、遺伝子を細胞に非常に特異的にかつ最少の侵襲性で送達するために特に有用であり得る。
【0095】
本開示は、細胞型および組織型特異的ヒト細胞標的化核酸構築物の識別、特徴付け、単離、合成、in vitroおよびin vivo試験のための組成物および方法を提供する。一部の例では、そのような核酸は、腫瘍細胞または腫瘍組織の1つまたは複数の領域から単離されたDNA分子を含む。そのような核酸配列(本明細書において、Zipコード配列、ZCS、または細胞標的化シグナルとも呼ぶ)は、前記腫瘍細胞から単離された1つまたは複数のトランスポゾンの一部であり得る。一部の例では、トランスポゾン配列は、ctDNAに由来し得、細胞標的化配列およびゲノムインテグレーション配列を含み得るそのようなZCSからなり得るか、またはそのようなZCSを含み得る。他の例では、本明細書におけるトランスポゾンは、細胞標的化またはゲノムインテグレーション配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
【0096】
本開示は、細胞標的化およびゲノムインテグレーション配列を含み得、および生物などのシステム内を循環することができ、分解酵素(例えば、DNアーゼ)の活性を許容することができ、および排他的に、またはほぼ排他的に(例えば、標的細胞に関して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、または99%の特異性で)結合することができる核酸構築物であって、そのような標的細胞が、細胞標的化およびゲノムインテグレーション配列が由来する細胞と同じまたは類似(例えば、同じ臓器または組織型)の細胞であり、そのような特異性が、異なる組織または臓器型の細胞と比較される、核酸構築物を提供する。一例として、MM由来ZCSは、MM細胞を標的化(かつインテグレート)することができ、膵臓がん(PC)由来ZCSは、PC細胞を標的化(かつインテグレート)することができる等である。そのような認識は、in vitroまたはin vivoであり得、類似の起源であるが異なる細胞系の細胞間であり得、例えばMM由来認識配列は異なる細胞系のMM細胞を標的化してこれに侵入することができる。一部の例では、本開示の核酸構築物は、そのようなctDNA分子の一部または断片を含み得る。一部の例では、核酸構築物が由来し得るctDNA分子は、対象(例えば、ヒト対象)から得てもよい。そのような循環する腫瘍DNA断片は、ある特定の細胞または細胞集団を標的とする能力を有し、細胞ゲノムへのそのインテグレーションを誘導することができる核酸配列を含み得る。様々な例では、そのような核酸配列は、トランスポゾン(トランスポゾン配列)であり得るか、またはトランスポゾンを含み得る。そのような例では、本明細書における核酸構築物は、1つまたは複数のトランスポゾン配列を含み得る。驚くべきことに、本明細書において「zipコード」とも呼ばれるこれらの循環する腫瘍DNA断片の特定の領域は、特異的な細胞標的化シグナルとして機能し得、その特定の細胞起源、例えばそのzipコード配列を「認識する」細胞を認識し得る。一例として、膵臓がん(PC)細胞を起源とするctDNAに由来する本開示のZCSは、高い特異性でPC細胞を標的とする能力を有し得る。そのようなzipコードシグナルは、所与の細胞型(例えば、MM細胞、PC細胞、または他の細胞型の他の任意のがん細胞)の特異的「シグネチャー」の一部であり得る。本開示の核酸構築物は、1つまたは複数のZCSを含み得る。
【0097】
本開示のZipコード配列(ZCS)は、ある特定の細胞を高い特異性で標的とすることができる。本開示のZCSは、1つまたは複数の他の細胞の存在下で、約50%より高い、55%より高い、60%より高い、65%より高い、70%より高い、75%より高い、80%より高い、85%より高い、90%より高い、91%より高い、92%より高い、93%より高い、94%より高い、95%より高い、96%より高い、97%より高い、98%より高い、または約99%より高い特異性で、ある特定の細胞の核を標的とする、核に侵入する、および核に局在することができる。一例として、PC特異的ZCSは、試料中または生物(例えば、齧歯類またはヒト)中に存在し得る他の細胞と比較して、少なくとも95%、96%、97%、98%、または約99%より高い特異性でPC細胞の核を標的とする、核に侵入する、および核に局在する。
【0098】
Zipコード配列およびインテグレーション配列を含む本明細書における核酸システムおよび構築物は、細胞および組織特異的なカーゴ送達(例えば、カーゴまたは核酸構築物、例えばトランスジーンの送達)を可能にし得、このように例えば従来のカーゴ送達システム(例えば、ナノ粒子またはウイルス)と比較して、オフターゲットおよび望ましくない副作用を有意に低減し得る。本開示の方法および組成物は、がん細胞からの内因性の生物機構(例えば、循環する腫瘍DNA)から当初単離および精製された配列に由来しており、このため有意な免疫応答を誘発しない可能性がある。本開示の方法および組成物は、慢性疾患、感染疾患、および免疫疾患を含む多様な疾患においてこの技術の応用を可能にし得る。
【0099】
本開示の核酸送達システムは、標的細胞のゲノムにインテグレートされるようになる追加の核酸配列に依存し得る1つまたは複数の細胞/組織特異的Zipコード配列を含み得る。したがって、ヒト細胞標的化配列またはzipコード配列は、一部の例ではカーゴを特定の細胞へと方向付けるために直接使用することができ、他の例ではそれらは、例えばインテグレーション配列を使用することによって、標的細胞のゲノムにインテグレートされるようになるように操作される、より大きい構築物の一部であり得る。一部の例では、本開示の核酸構築物は、特定の細胞の標的化を可能にし得るZipコード認識配列を含む。核の内部に入ると、本開示の核酸構築物は、インテグレーション配列を介してカーゴ核酸配列のトランスポゾン様のインテグレーションを可能にし得る。
【0100】
一部の例では、本開示の核酸構築物は、細胞のゲノム内の特異的挿入部位で核酸構築物の挿入を確実にするために使用される1つまたは複数のガイド核酸配列を含み得る。本明細書における核酸送達システムは、核酸構築物、プロモーター、およびその発現が前記プロモーターの調節的制御下であり得る目的の遺伝子(例えば、治療タンパク質をコードするカーゴ核酸)を含み得る。記載のシステムの自己調節的性質を利用すると、無作為な転位および望ましくない二本鎖DNA切断のリスクが、従来のベクターベースの技術と比較して有意に低減されると予想される。
【0101】
一部の例では、本開示の核酸構築物は、がんおよび例えば血球に関連するある特定の障害(例えば、貧血、サラセミア、血友病、または血小板障害)を含む様々な慢性、感染性、または遺伝性(例えば、遺伝子)疾患において診断およびモニタリング目的のために使用することができる。一部の例では、本明細書に開示される細胞および/または組織特異的認識配列の存在は、特定の疾患または状態のバイオマーカーとして使用することができ、特定の治療介入(例えば、化学療法、標的化治療、免疫療法、または細胞および遺伝子治療)に対する応答をモニターするために使用され得る。他の例では、ZCSをコンパニオン診断として使用することができる。そのような例では、例えば細胞のゲノムへのZCSのインテグレーションを、そのようなゲノムへのカーゴ核酸配列(例えば、治療遺伝子配列)のインテグレーションの程度を決定するための尺度またはマーカーとして使用することができる。他の例では、本明細書に記載される核酸構築物(または送達システム)の細胞標的化およびゲノムインテグレーションは、特定の生物効果のマーカーとして使用することができる。一例では、治療遺伝子配列のゲノムインテグレーションの程度は、送達システムのZCSまたはトランスポゾン配列のインテグレーションに比例し得、このように、測定されたインテグレートされた物質の量は、治療効果、例えば細胞死滅のマーカーまたは尺度であり得る。
【0102】
一部の例では、本開示の核酸構築物は、がん、炎症疾患、自己免疫疾患等の疾患を防止および処置するための新規治療戦略の開発のために使用され得る。例えば、がんの型特異的(例えば、膵臓がん特異的、多発性骨髄腫特異的、肺がん特異的等)ZCSまたはトランスポゾンを特異的に標的とする薬物分子を設計して、腫瘍細胞間の連絡を中断してもよく、このように腫瘍の不均一性を低減させることができ、これは治療介入に対する耐性を腫瘍が発達させる能力を低減させ得る。別の例では、本開示の核酸構築物を使用して、核酸構築物の投与時に対象において免疫応答を誘発することができる。そのような免疫応答は、1つまたは複数の抗原性または免疫原性のペプチドまたはタンパク質をコードするカーゴ核酸配列を含む核酸構築物を投与することによって誘発することができ、発現されると、そのような免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、対象において免疫応答を誘発することができる。このように、一部の例では、本開示のZCSを、ワクチン、例えばがんワクチンとして使用することができる。
【0103】
一部の態様では、本開示の核酸構築物は、多様なカーゴ(例えば、薬物化合物)のための送達ビヒクルとして使用され得る。一部の例では、本開示の方法および組成物を、他のモダリティ、例えばナノ粒子と組み合わせて使用して、送達をさらに増強することができる。
【0104】
一部の態様では、本開示の核酸構築物は、疾患または状態の治療および/または診断のために使用され得る。一部の例では、本明細書に記載される核酸構築物を使用して、治療的および/または診断用カーゴを、目的の特定の細胞、組織、または臓器に送達することができる。例えば、本明細書に記載されるZipコード配列を使用して、例えば化学的色素(例えば、蛍光色素)または放射活性同位体を、疾患または状態(例えば、がん)に関連する1つまたは複数の細胞に送達することによって、in vivoで疾患または状態を可視化および/または追跡することができる。さらに別の例では、本開示に記載されるZipコード配列を使用することによって、化学的色素(例えば、蛍光色素)、放射活性同位体、または造影剤等を腫瘍部位(例えば、原発腫瘍部位および転移部位)に高い特異性で送達することによって、腫瘍細胞をin vivoで可視化および追跡することができる。
【0105】
別の態様では、本開示の組成物および方法を使用して、遺伝子不安定性およびその後の細胞死を引き起こすことによって、疾患または状態(例えば、がん)を処置することができる。例えば、1つまたは複数のZipコード配列を含む核酸配列を、細胞のゲノムへの挿入を通して遺伝子不安定性を引き起こすように操作することができる。一部の例では、1つまたは複数の核酸構築物をゲノムに組み込むことができる。一部の例では、少なくとも2つの核酸構築物をゲノムに組み込むことができる。一部の例では、少なくとも2つの核酸構築物をゲノムに組み込むことができる。一部の例では、少なくとも5つの核酸構築物をゲノムに組み込むことができる。一部の例では、少なくとも10個の核酸構築物をゲノムに組み込むことができる。このように、一部の例では、本開示の核酸構築物は、例えば細胞のゲノムに挿入された場合に、その細胞内濃度が、例えば遺伝子不安定性を引き起こすのに十分に高い場合、それ自身細胞傷害性であり得る。
【0106】
一部の例では、本明細書に記載される1つまたは複数の核酸構築物が、単一の細胞によって取り込まれ得る。一部の例では、本明細書に記載される少なくとも2つの核酸構築物が、単一の細胞によって取り込まれ得る。一部の例では、本明細書に記載される少なくとも5つの核酸構築物が、単一の細胞によって取り込まれ得る。一部の例では、本明細書に記載される少なくとも10個の核酸構築物が、単一の細胞によって取り込まれ得る。一部の例では、本明細書に記載される少なくとも20個の核酸構築物が、単一の細胞によって取り込まれ得る。一部の例では、本明細書に記載される少なくとも100個の核酸構築物が、単一の細胞によって取り込まれ得る。
【0107】
一部の例では、本開示の核酸構築物は、細胞傷害性カーゴ、例えば放射活性カーゴの細胞への送達を介して細胞傷害性であり得る。一部の例では、放射標識化核酸構築物は、細胞の外部(例えば、ベータ放射線)または細胞内(例えば、アルファ放射線)のいずれかからDNA損傷を引き起こし得る。
【0108】
本開示はまた、本明細書に記載の方法および組成物と組み合わせて使用することができる合成核酸Zipコード配列も提供する。そのような合成核酸Zipコード配列は、ctDNAに由来し得る。そのような合成核酸Zipコード配列(本明細書において「オリゴZCS」と省略もされる)は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、もしくはルシフェラーゼなどの蛍光タンパク質をコードする配列などの1つもしくは複数の他の核酸配列、1つもしくは複数のプロモーター配列、ならびに/または例えば治療用分子および/もしくは診断用分子をコードする1つもしくは複数の遺伝子を含む核酸構築物の一部であり得、1つまたは複数の遺伝子は前記プロモーターの調節的制御下にあり得る。
図12は、様々なタンパク質(例えば、GFP、ルシフェラーゼ等)をコードする核酸配列に隣接する2つのMM特異的合成ZCSを含む本開示の核酸構築物を概略的に示している。
【0109】
そのような合成オリゴZCSは、長さが約50塩基対(bp)~約1000bpであり得る。オリゴZCSは、長さが約100塩基対(bp)~約900bpであり得る。オリゴZCSは、長さが約200bp~約800bpであり得る。オリゴZCSは、長さが約300bp~約700bpであり得る。オリゴZCSは、長さが約400bp~約600bpであり得る。オリゴZCSは、長さが少なくとも約100bpであり得る。オリゴZCSは、長さが少なくとも約200bpであり得る。オリゴZCSは、長さが少なくとも約300bpであり得る。オリゴZCSは、長さが少なくとも約400bpであり得る。オリゴZCSは、長さが少なくとも約500bpであり得る。オリゴZCSは、長さが少なくとも約1000bpであり得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書において互換的に使用することができ、一般的にリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかである任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはリボ核酸のDNAコピー(cDNA)の配列を含む。この用語はまた、化学改変ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドポリマーも指す。ポリヌクレオチドは、天然に見出され得るD-リボース糖および天然に見出されないL-リボース糖で形成することができる。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「ゲノム」は、一般的に、例えば、対象の遺伝情報の少なくとも一部または全体であり得る、対象からのゲノム情報を指す。ゲノムはDNAまたはRNAのいずれかでコードされ得る。ゲノムは、コード領域(例えば、タンパク質をコードする)および非コード領域を含み得る。ゲノムは生物における全ての染色体の配列を共に含み得る。例えば、ヒトゲノムは、通常、全体で46本の染色体を有する。これらの配列は全て、共にヒトゲノムを構成し得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、別のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対してある特定のパーセント(%)「配列同一性」を有し、このことは、整列させた場合に、塩基またはアミノ酸のパーセンテージが同じであること、および2つの配列を比較した場合に同じ相対的位置にあることを意味する。配列同一性は、複数の異なる方法において決定することができる。配列同一性を決定するために、配列を様々な方法およびコンピュータープログラム(例えば、BLAST、T-COFFEE、MUSCLE、MAFFT等)を使用して整列させることができる。
【0113】
本明細書で使用される場合、用語「核酸システム」、「核酸送達システム」、および「核酸構築物」は本明細書において互換的に使用することができ、一般的に追加の核酸分子、ペプチド、ポリペプチド、検出可能部分(例えば、蛍光標識)、低分子部分、またはそのいずれかの組合せであり得るカーゴ部分に会合している(例えば、共有結合または非共有結合により連結された)本開示の核酸分子を含む核酸分子-カーゴコンジュゲートまたは構築物を指す。この用語はまた、遺伝子治療目的のために使用される核酸システム、例えばzipコード領域、インテグレーション領域、目的の遺伝子をコードする配列、および必要に応じてガイド配列を含むシステムも指し得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「カーゴ」は、一般的に本開示の標的特異的核酸分子にカップリングすることができる分子を指す。そのようなカーゴ分子は、核酸、タンパク質、ペプチド、低分子、放射性核種、ポリマー、またはナノ粒子であり得る。そのようなカーゴ分子は、標的特異的核酸に共有結合または非共有結合によりカップリングされ得る。一部の例では、本明細書におけるカーゴは、治療用分子であり得、本明細書において「治療用カーゴ」と呼ぶことができる。治療用分子は、例えば、標的細胞ゲノムへの挿入を通してアポトーシスを引き起こすことによって、または治療タンパク質をコードすることによって、治療的機能を有する核酸を含む。治療用カーゴは、タンパク質、例えば抗体またはその機能的結合性断片、サイトカイン、シグナル伝達分子等、および低分子、例えばキナーゼ阻害剤または他の抗がん剤をさらに含む。他の例では、カーゴは、診断用分子であり、本明細書において「診断用カーゴ」と呼ぶことができる。そのような診断用カーゴは、フルオロフォア、放射性核種、造影剤等であり得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「カップリングされた」は、一般的に第1の分子を第2の分子に共有結合または非共有結合によって結合させることを指す。本明細書における様々な例では、1つまたは複数の分子を互いにカップリングさせることができる。一例では、本開示の核酸構築物は、第1のDNA配列(例えば、細胞標的化配列)および第2のDNA配列(例えば、ゲノムインテグレーション配列)を含み得、第1のDNA配列は、ホスホジエステル結合を介して第2のDNA配列に共有結合によりカップリングさせることができる。別の例では、本明細書における送達システムは、細胞標的化およびゲノムインテグレーションのための核酸構築物、ならびに1つまたは複数の他の核酸配列、例えば治療タンパク質をコードする治療遺伝子配列、そのような遺伝子配列の発現を調節することができるプロモーター配列、および他の適切な核酸配列を含み得る。一部の例では、そのような送達システムの1つまたは複数の異なる核酸部分(例えば、核酸構築物、遺伝子配列、プロモーター等)を共有結合によりカップリングさせて、線状の核酸分子を形成することができる。
図12は、そのような線状の送達システムの例を図示している。そのような線状物の送達は、共有結合または非共有結合のいずれかによりそれにカップリングされた1つまたは複数の追加のカーゴ分子を有し得る。
図20は、様々な部分(例えば、核酸構築物配列、遺伝子配列、プロモーター等)を含む線状の核酸配列が、それにカップリングされた1つまたは複数のカーゴ分子(この場合、蛍光色素)を有するそのような送達システムの例を図示している。そのような1つまたは複数のカーゴ分子は、そのような配列の長さに沿って(例えば、
図20に描写したように)、ならびに/またはそのような核酸配列の3’および/もしくは5’末端(end)(末端(termini))で核酸配列にカップリングさせることができる。
【0116】
本明細書で使用される場合、用語「細胞型」は、一般的に属または種内の形態学的または表現型が異なる細胞形態の間を識別するために使用される分類を指す。多細胞生物は、複数の広く異なる特殊な細胞型、例えばヒトでは、膵細胞、肺細胞、筋細胞、および皮膚細胞を含有し得るが、これらは外観および機能の両方が異なるがなおも遺伝的に同一である。細胞は、それらが含有する遺伝子の示差的調節により、同じ遺伝子型であるが異なる細胞型の細胞であり得る。特定の細胞型の分類は、顕微鏡法、細胞表面マーカー、機能性、または他の適切な方法を使用することを通して行うことができる。
【0117】
用語「約」は、数値または範囲の文脈において本明細書で使用される場合、特に明記していなければ、列挙または主張される数値または範囲の±10%を指す。
【0118】
用語「少なくとも」、「より大きい」、または「より大きいかまたはそれに等しい」が、一連の2つまたはそれより多くの数値における第1の数値の前にある場合は常に、用語「少なくとも」、「より大きい」、または「より大きいかまたはそれに等しい」は、その一連の数値における数値の各々に当てはまる。例えば、1、2、または3より大きいかまたはそれに等しいは、1より大きいかもしくはそれに等しく、2より大きいかもしくはそれに等しく、または3より大きいかもしくはそれに等しいことと等価である。
【0119】
用語「以下」、「未満」、または「未満またはそれに等しい」が、一連の2つまたはそれより多くの数値における第1の数値の前にある場合は常に、用語「以下」、「未満」、または「未満またはそれに等しい」が、その一連の数値における数値の各々に当てはまる。例えば、3、2、もしくは1未満またはそれに等しいは、3未満もしくはそれに等しく、2未満もしくはそれに等しく、または1未満もしくはそれに等しいことと等価である。
【0120】
用語「薬学的に許容される塩」は、一般的に本開示の化合物の生理学的および薬学的に許容される塩、例えば親化合物の生物活性を保持するが、それに対する毒性作用を付与しない塩を指す。オリゴマーの場合、薬学的に許容される塩およびその使用の例は、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,287,860号に詳しく記載されている。
【0121】
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、一般的に動物界の生きているメンバーを指す。対象は、疾患または障害に罹患していても、罹患していることが疑われていてもよい。対象は、自然に疾患に罹患している個体を含む種のメンバーであり得る。対象は哺乳動物であり得る。哺乳動物の非制限的な例としては、齧歯類(例えば、マウスおよびラット)、霊長類(例えば、キツネザル、サル、類人猿、およびヒト)、ウサギ、イヌ(例えば、コンパニオン犬、介助犬、または使役犬、例えば警察犬、軍用犬、競技用犬、およびショー用の犬)、ウマ(例えば、競走馬および役馬)、ネコ(例えば、ペットとしてのネコ)、家畜(例えば、ブタ、ウシ、ロバ、ラバ、水牛、ヤギ、ラクダ、およびヒツジ)、ならびにシカが挙げられ得る。対象はヒトであり得る。対象は、非哺乳動物、例えば七面鳥、アヒル、またはニワトリであり得る。対象は農場動物(例えば、ブタ、ヤギ、またはウシ)であり得る。対象は、本明細書に提供されるキット、方法、およびシステムを使用して診断および/または処置することができる疾患または状態に罹患しているまたは罹患しやすい、生きている生物であり得る。対象は、医療従事者(例えば、プライマリケア医)によって処置またはモニタリングされる患者であり得る。あるいは、対象は、患者でなくてもよい。
【0122】
用語「診断」は、本明細書で使用される場合、一般的に疾患(例えば、自己免疫疾患、炎症性自己免疫疾患、がん疾患、感染疾患、免疫疾患、腸内菌共生バランス失調疾患等)が対象に存在し得る相対的確率を指す。同様に、用語「予後」は一般的に、ある特定の将来の転帰が疾患状態に関連して対象に起こり得る相対的確率を指す。
【0123】
用語「実質的に同じ」は、組織向性核酸の文脈において本明細書で使用される場合、特に明記していなければ、機能または能力が類似または同一であることを意味する。
細胞型および組織型特異的腫瘍認識核酸配列(すなわち、Zipコード配列またはZCS)
【0124】
本開示は、分子(例えば、核酸分子)の細胞、組織、および/もしくは臓器特異的標的化、取り込み、ならびに/または核局在化のための組成物および方法を提供する。そのような分子は、Zipコード配列(ZCS)のような核酸配列を含み得る。そのようなZCSは、がん細胞の核を標的とする、核に侵入する、および核に局在化することができる。本開示のがん細胞特異的ZCSは、ctDNAに由来し得る。ctDNAは、がん細胞を起源とし得る。がん細胞は、多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病、膵臓がん、肺がん、大腸がん(例えば、結腸直腸がん)、または脳がんを含むがこれらに限定されない、任意の型のがん(例えば、血液のがん、骨髄を起源とするがん、固形腫瘍等)の細胞であり得る。このように、そのような1つまたは複数のZCSを含む本明細書に記載される核酸構築物は、様々なカーゴ、例えば核酸配列(例えば、治療用分子および/または診断用分子をコードする遺伝子)のための特異的標的化および送達構築物、ならびに/または標的化および送達ビヒクルとして使用することができる。
【0125】
本開示のZCSは、1つまたは複数の細胞型および/もしくは組織型特異的腫瘍細胞認識ならびに/または染色体インテグレーション配列を含み得る。これらの配列は、ZCSが細胞を細胞特異的に認識することを可能にし得る。例えば、PC特異的ZCSは、PC特異的ZCSが高い特異性(例えば、>95%特異性)でPC細胞の核を標的とする、核に侵入する、核に蓄積する、および/または核に局在化することを可能にし得る1つまたは複数のPC特異的認識および/またはインテグレーション配列(本明細書においてそれぞれ、「認識シグナル」および「インテグレーションシグナル」とも呼ぶ)を含み得る。
【0126】
本開示の細胞特異的ZCSは、同じおよび/または他の細胞または細胞型に関して特異性を有するZCSの存在下であっても、高い細胞特異性を示し得る。例えば、PC特異的ZCSは、MM特異的ZCSの存在下でPC細胞の核への高い取り込み、蓄積、局在化、およびPC細胞の染色体へのインテグレーションを示し得る(例えば、
図17A~17Dを参照されたい)。
【0127】
一部の例では、本開示は、組成物、例えば配列番号1~配列番号277のいずれか1つまたは複数と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、またはその断片と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含む医薬組成物を提供する。一部の例では、単離された核酸配列は、長さが少なくとも200塩基対であり得る。一部の例では、単離された核酸配列は、長さが少なくとも400塩基対であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約200塩基対~約800塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約400塩基対~約2,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約400塩基対~約5,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約1,500塩基対~約7,200塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約1,900塩基対~約5,800塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約2,000塩基対~約10,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約5,000塩基対~約15,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約600塩基対~約16,900塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約8,000塩基対~約18,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約10,000塩基対~約20,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約400塩基対~約20,000塩基対の範囲であり得る。
【0128】
一部の例では、本開示は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して少なくとも1つの核酸塩基置換改変を含有する、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも95%の同一性を有する配列を有する単離された核酸を含む組成物を提供する。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して少なくとも10個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して少なくとも50個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して少なくとも100個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して少なくとも250個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して約1~約20個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して約20~約100個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して約50~約250個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して約150~約500個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して約250~約700個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して約500~約750個の核酸塩基置換改変を含み得る。一部の例では、本開示の単離された核酸配列は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して約500~約1,000個の核酸塩基置換改変を含み得る。
【0129】
一部の例では、本開示の核酸構築物およびシステムは、核酸に結合された(例えば、共有結合により連結またはコンジュゲートされた)少なくとも1つの検出可能部分(例えば、蛍光標識または放射活性標識)を含み得る。そのような場合、検出可能部分は、核酸の3’もしくは5’末端、またはその任意の適した組合せに連結することができる。検出可能部分は、フルオロフォア、例えば蛍光色素または量子ドットを含み得る。一部の例では、検出可能部分は、低分子(例えば、蛍光色素)を含み得るが、他の例では検出可能部分は、蛍光標識化ポリペプチド、蛍光標識化核酸プローブ、および/または蛍光標識化ポリペプチド複合体を含み得る。一部の例では、検出可能部分は、任意の色素分子、例えばQuasar Dye(例えば、Q570およびQ670)であり得る。検出剤または部分はまた、追加の標識化プローブ(例えば、標識化ポリペプチドまたは抗体)にさらにコンジュゲートすることができる非標識化プローブでもあり得る。一部の例では、例えば検出可能部分を、コンジュゲート部分によって核酸に間接的にコンジュゲートまたは結合させてもよい。本明細書に記載されるように、検出可能部分は、核酸に直接コンジュゲートまたは結合され得る低分子(例えば、色素)であり得る。検出可能部分は、例えばクリックケミストリーを使用して核酸のコンジュゲート部分(例えば、ハプテン基、アジド基、アルキン基、またはテトラジン)に結合され得る蛍光標識化タンパク質または分子であり得る。
【0130】
一部の例では、本明細書に記載される蛍光低分子は、ローダミン、ロードール、フルオレセイン、チオフルオレセイン、アミノフルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、クロロフルオレセイン、メチルフルオレセイン、スルホフルオレセイン、アミノロードール、カルボキシロードール、クロロロードール、メチルロードール、スルホロードール;アミノローダミン、カルボキシローダミン、クロロローダミン、メチルローダミン、スルホローダミン、チオローダミン、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン、シアニン2、シアニン3、シアニン3.5、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7、オキサジアゾール誘導体、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ピレン誘導体、カスケードブルー、オキサジン誘導体、ナイルレッド、ナイルブルー、クレジルバイオレット、オキサジン170、アクリジン誘導体、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、アリールメチン誘導体、オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、テトラピロール誘導体、ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビン1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホネート、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホネート、2-p-トルイジニル(touidinyl)-6-ナフタレンスルホネート、3-フェニル-7-イソシアナトクマリン、N-(p-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル)マレイミド、スチルベン、ピレン、6-FAM(フルオレセイン)、6-FAM(NHSエステル)、5(6)-FAM、5-FAM、フルオレセインdT、5-TAMRA-カダバリン、2-アミノアクリドン、HEX、JOE(NHSエステル)、MAX、TET、ROX、TAMRA、TARMA(商標)(NHSエステル)、TEX615、ATTO(商標)488、ATTO(商標)532、ATTO(商標)550、ATTO(商標)565、ATTO(商標)Rho101、ATTO(商標)590、ATTO(商標)633、ATTO(商標)647N、TYE(商標)563、TYE(商標)665、またはTYE(商標)705を含み得る。
【0131】
蛍光部分は、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、Q570、Alexa488、Alexa555、Alexa594、Alexa647、Alexa680、Alexa750、Alexa790、Atto488、Atto532、Atto647N、テキサスレッド、CF610、ヨウ化プロピジウム、Quasar570(Q570)、Quasar670(Q670)、IRDye700、IRDye800、インドシアニングリーン、パシフィックブルー色素、パシフィックグリーン色素、またはパシフィックオレンジ色素を含み得る。
【0132】
一部の例では、蛍光部分は、量子ドット(QD)を含み得る。量子ドットは、ナノスケール半導体発光材料であり得る。例示的なQDとしては、これらに限定されないが、CdS量子ドット、CdSe量子ドット、CdSe/CdSコア/シェル量子ドット、CdSe/ZnSコア/シェル量子ドット、CdTe量子ドット、PbS量子ドット、および/またはPbSe量子ドットが挙げられる。本明細書で使用される場合、CdSe/ZnSは、ZnSシェルがCdSeコア表面でコーティングされていること(「コア-シェル」量子ドット)を意味し得る。コア-シェルQDのシェル材料は、より高いバンドギャップを有し、コアQD表面を不動態化し、それによってコアQDより高い量子収率およびより高い安定性およびより広い応用が得られ得る。本明細書に提供される量子ドットは、QDot525、QDot545、QDot565、QDot585、QDot605、またはQDot655を含み得る。一部の例では、本明細書に記載される核酸は、量子ドット、例えばQDot525、QDot545、QDot565、QDot585、QDot605、またはQDot655を含み得る。本明細書に記載のプローブはQDot525を含み得る。本明細書に記載のプローブはQDot545を含み得る。本明細書に記載のプローブはQDot565を含み得る。本明細書に記載のプローブはQDot585を含み得る。本明細書に記載のプローブはQDot605を含み得る。本明細書に記載のプローブはQDot655を含み得る。
【0133】
一部の例では、核酸は、コンジュゲート部分を含み得る。コンジュゲート部分は、5’末端、3’末端、または核酸の長さに沿った内部位置に結合し得る。コンジュゲート部分は、ヌクレオチドアナログ(例えば、ブロモデオキシウリジン)であり得る。コンジュゲート部分は、コンジュゲート官能基であり得る。コンジュゲート官能基は、アジド基またはアルキン基であり得る。プローブは、クリックケミストリーなどの化学反応または他の任意のバイオコンジュゲーション反応を通してさらに誘導体化され得る。クリックケミストリーは、1,2,3-トリアゾールをもたらす、アルキンおよびアジドの銅(I)触媒化[3+2]-ヒュスゲン1,3-双極子付加環化であり得る。クリックケミストリーは、上記の反応の銅フリーのバリアントであり得る。クリックケミストリーは、trans-シクロオクタジエンとテトラジンとの間の逆電子要請型ディールス-アルダー反応であり得る。
【0134】
一部の例では、コンジュゲート部分は、本明細書で使用される場合、ハプテン基を含み得る。ハプテン基は、ジゴキシゲニン、2,4-ジニトロフェニル、ビオチン、アビジンを含み得るか、またはアゾール、ニトロアリール化合物、ベンゾフラザン、トリテルペン、ウレア、チオウレア、ロテノン、オキサゾール、チアゾール、クマリン、シクロリグナン、ヘテロビアリール化合物、アゾアリール化合物、もしくはベンゾジアゼピンから選択される。ハプテン基は、ビオチンを含み得る。コンジュゲート部分を含む核酸はさらに、第2の核酸、蛍光部分(例えば、量子ドットなどの色素)、またはコンジュゲートパートナー、例えばポリマー(例えば、PEG)、高分子(例えば、炭水化物、脂質、ポリペプチド)等に連結され得る。
【0135】
一部の態様では、本明細書に記載される検出可能な標識または部分は、光学顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、またはクロマトグラフィーによって検出され得る。プローブの検出可能な標識の検出は、プローブまたはその一部(例えば、検出可能な標識)を放射線源(例えば、光源、例えばレーザー)によって刺激することを含み得る。プローブの検出可能な標識の検出はまた、酵素反応も含み得る。
【0136】
一部の例では、検出可能な標識は、陽電子放射断層撮影(PET)または単一光子放射断層撮影(SPECT)を介して本明細書に開示の核酸構築物の分布の可視化を可能にする放射活性標識(例えば、放射活性同位体)であり得る。それらの核検出方法論を、コンピューターX線断層撮影(CT)とカップリングさせてもよい(例えば、PET/CTまたはSPECT/CT)。一部の例では、検出可能部分は、少なくとも1つの元素の放射性同位体を含み得る。例示的な適切な放射標識としては、これらに限定されないが、本明細書に記載される放射標識が挙げられる。一部の例では、放射性同位体は、99mTc、111In、64Cu、67Ga、186Re、188Re、153Sm、177Lu、67Cu、123I、124I、125I、11C、13N、15O、18F、186Re、188Re、153Sm、166Ho、177Lu、149Pm、90Y、213Bi、103Pd、109Pd、159Gd、140La、198Au、199Au、169Yb、175Yb、165Dy、166Dy、67Cu、105Rh、111Ag、89Zr、225Ac、および192Irを含む。
【0137】
本開示の一部の態様では、放射活性同位体は、キレート剤を使用して本明細書に記載される核酸分子に結合することができる。例示的なキレート部分としては、2,2’,2’’-(3-(4-(3-(1-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-1-オキソ-5,8,11,14,17,20,23-ヘプタオキサ-2-アザペンタコサン-25-イル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;2,2’,2’’-(3-(4-(3-(1-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-1-オキソ-5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-ウンデカオキサ-2-アザヘプタトリアコンタン-37-イル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;2,2’-(7-(4-(3-(1-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-1-オキソ-5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-ウンデカオキサ-2-アザヘプタトリアコンタン-37-イル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジイル)二酢酸;2,2’,2’’-(3-(4-(3-(1-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-3,7-ジオキソ-11,14,17,20,23,26,29-ヘプタオキサ-2,8-ジアザヘントリアコンタン-31-イル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;2,2’,2’’-(3-(4-(3-(1-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-3,7-ジオキソ-11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41-ウンデカオキサ-2,8-ジアザトリテトラコンタン-43-イル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;2,2’,2’’-(3-(4-(3-(25,28-ジオキソ-28-((6-(6-(ピリジン-2-イル)-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ピリジン-3-イル)アミノ)-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサ-24-アザオクタコシル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;2,2’,2’’-(3-(4-(3-(37,40-ジオキソ-40-((6-(6-(ピリジン-2-イル)-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ピリジン-3-イル)アミノ)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-ウンデカオキサ-36-アザテトラコンチル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;2,2’,2’’-(3-(4-(1-(4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-3-オキソ-6,9,12,15,18,21,24-ヘプタオキサ-2-アザヘプタコサン-27-アミド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;2,2’,2’’-(2-(4-(1-(4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェノキシ)-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-ウンデカオキサヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4,7-トリイル)三酢酸;2,2’,2’’-(3-(4-(3-(5-アミノ-6-((4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ベンジル)アミノ)-6-オキソヘキシル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;2,2’-(7-(4-(3-(5-アミノ-6-((4-6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ベンジル)アミノ)-6-オキソヘキシル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジイル)二酢酸;2,2’,2’’-(3-(4-(3-(5-アミノ-6-((5-アミノ-6-((4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ベンジル)アミノ)-6-オキソヘキシル)アミノ)-6-オキソヘキシル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸;および2,2’,2’’-(3-(4-(3-(5-アミノ-6-((5-アミノ-6-((5-アミノ-6-((4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ベンジル)アミノ)-6-オキソヘキシル)アミノ)-6-オキソヘキシル)アミノ)-6-オキソヘキシル)チオウレイド)ベンジル)-1,4,7-トリアゾナン-2,5,8-トリイル)三酢酸が挙げられ得る。
【0138】
一部の例では、本開示の核酸分子を、細胞および/または組織特異的標的化のために粒子(例えば、ナノ粒子)または小胞(例えば、エクソソーム)に会合(例えば、コンジュゲートまたは共有結合による連結)してもよい。例えば、カーゴ含有ナノ粒子またはエクソソームを、非常に特異的なカーゴ送達を可能にするその表面上の細胞標的化核酸分子によって官能化することができる。
【0139】
一部の例では、本開示は、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも95%の同一性を有する配列を含む単離された核酸、および異種核酸配列を含むベクターを提供する。一部の例では、異種配列は、インテグレーションシグナルをさらに含む。一部の例では、異種配列は、目的の遺伝子をコードする配列、例えば免疫原をコードする配列またはゲノムから発現させることができるタンパク質をコードする配列をさらに含む。そのようなタンパク質配列は、タンパク質の組織特異的発現をさらに促進するために組織選択的プロモーターの制御下であり得る。
【0140】
本開示の一部の態様では、本明細書に記載される核酸配列およびシステムは、特定の機能に関連し得る様々な部分を含み得る。例えば、本開示のシステムは、細胞標的化シグナル、インテグレーションシグナル、ガイド配列、および目的の遺伝子をコードする部分を含む目的の遺伝子(例えば、トランスジーン)のための核酸送達システムであり得る。必要に応じて、本開示の送達構築物は、核酸配列の3’および5’末端を識別するために1つまたは両方の末端でバーコード配列(例えば、PACbio配列)を含み得る。例えば
図12のダイアグラムは、細胞標的化シグナル配列が、本明細書に記載される核酸送達システムの3’末端および5’末端に存在し得ることを図示している。構築物はまた、インテグレーションシグナル配列も含み得、そのようなインテグレーションシグナル配列の存在は、そのような核酸配列またはその少なくとも一部のゲノムへのインテグレーションを促進することができる。一部の例では、本明細書に記載されるZCSまたはトランスポゾンは、細胞標的化配列およびインテグレーション配列を含む。一部の例では、本開示の送達システムは、
図12および
図20に示すように、目的の遺伝子の両端で、このように両側で目的の遺伝子、例えばZCSまたはトランスポゾンに隣接する少なくとも1つの追加の配列を含み得る。
【0141】
本開示の一部の実施形態では、ZCSは、1つまたは複数のトランスポゾン、例えばクラスIIトランスポゾンからなり得るか、またはそれを含み得る。そのような例では、トランスポゾンは、ある特定の細胞、細胞集団、もしくは組織(例えば、血球、肺組織、膵組織、大腸組織等)を標的とすることが可能な、ならびに/またはそれ自身および/もしくは追加のカーゴ核酸分子を標的細胞のゲノムにインテグレートすることが可能な任意の分子であり得る。一部の例では、トランスポゾンは核酸である。そのような核酸はDNAを含み得るか、またはDNAからなり得る。本開示のトランスポゾンがDNA配列である例では、トランスポゾンは、配列番号203~配列番号277、または配列番号282のいずれか1つと少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、99%、もしくは100%の配列同一性、またはその断片と少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、99%、もしくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み得る。そのような断片は、少なくとも約8、10、12、15、20、25、または30ヌクレオチド長であり得る。一部の実施形態では、トランスポゾンは、配列番号203~配列番号277または配列番号282のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み得るか、またはそれからなり得る
【化1】
配列番号282)一例では、配列番号282に記載の核酸配列からなるかまたはそれを含む核酸構築物は、他の起源または組織の細胞と比較して非常に選択的に多発性骨髄腫(MM)細胞を標的とすることができ、MM細胞のゲノムにインテグレートすることができる。そのような核酸構築物を使用して、カーゴ分子をMM細胞に方向付けることができる。
【0142】
一部の例では、本開示の送達システムは、核酸送達システムの3’または5’末端のいずれかで少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または別の適切な数の細胞標的化配列を含み得る。本開示の組成物は、複数のそのような送達システムを含み得、各々の送達システムは1つまたは複数の細胞型を標的とすることができる。このように、本開示の方法および組成物を使用して、1つもしくは複数の異なる標的細胞、1つもしくは複数の異なる標的細胞集団、および/または1つもしくは複数の異なる標的組織を同時に標的とすることができる。
【0143】
一部の例では、配列の1つの部分(例えば、半分)を、目的の遺伝子の5’末端に連結させ、配列の他の部分(例えば、半分)を目的の遺伝子の3’末端に連結させることができる。一部の例では、配列を、目的の遺伝子に直接または間接的に連結させることができる。例えば、一部の例では、第1の配列を、目的の遺伝子を含む核酸配列の5’末端に直接連結させることができ、第2の配列を、目的の遺伝子を含む核酸配列の3’末端に間接的に連結させることができる。一部の例では、本開示の組成物は、1つの末端(例えば、3’末端)で目的の遺伝子に直接連結し、他方の末端(例えば、5’末端)でZCSまたはトランスポゾン配列に直接連結し、このようにトランスポゾンまたはZCS配列と目的の遺伝子とを間接的に接続するガイド配列を含み得る(例えば、
図12、
図20を参照されたい)。
【0144】
一部の例では、細胞標的化シグナル配列およびインテグレーションシグナル配列は、細胞および/または組織特異的であり、このように1つまたは複数の標的細胞集団および/または1つまたは複数の標的組織における目的の遺伝子の発現を可能にする。一部の例では、本開示の核酸システムは、目的の遺伝子をコードする核酸配列をさらに含む。目的の遺伝子は、ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳において細胞によって使用されるリボ核酸(すなわち、mRNA)をコードし得る。言い換えれば、目的の遺伝子は、異種タンパク質またはポリペプチドをコードし得る。
【0145】
さらなる例では、本開示は、1つまたは複数のガイド核酸配列を含み得る核酸構築物および核酸送達システムを提供する。そのようなガイド核酸は、インテグレーションシグナル配列、ガイドRNA、ガイドDNA、またはその組合せであり得る。そのようなガイド核酸配列は、例えばそのような構築物または送達システムをゲノムインテグレーションのために細胞のゲノム内の特定の位置に方向付けるために使用することができる。このように一部の例では、本明細書におけるガイド核酸配列を使用して、細胞(例えば、がん細胞)のゲノム内の特異的インテグレーション部位を選択することができる。
【0146】
目的の遺伝子は、特定の機能を実施するタンパク質またはポリペプチドをコードし得る。例えば、目的の遺伝子は、細胞によって生成されていないタンパク質またはポリペプチドをコードし得る。目的の遺伝子は、治療的処置のために抗原としてさらに使用することができる治療タンパク質をコードし得る。あるいは、目的の遺伝子は、遺伝子治療において使用することができる治療タンパク質をコードし得る。そのような治療タンパク質は、本開示の核酸システムによって標的にされる細胞の成長および/または生存を低減させる、防止する、および/または取り除くことができる。そのような細胞はがん細胞であり得る。標的細胞は、疾患または状態に関連してもよく、目的の遺伝子の標的細胞特異的発現は、本明細書に記載されるZipコード配列を使用することによって達成することができる。一部の例では、本開示の送達システムは、目的の遺伝子をコードする配列の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または別の適切な数を含み得る。
【0147】
一部の例では、目的の遺伝子のインテグレーションは、遺伝子座特異的または遺伝子座非特異的であり得る。本開示の一部の態様では、目的の遺伝子を細胞において発現させることができ、得られた内因性または外因性の治療タンパク質を細胞内に保持することができる。さらに別の態様では、本発明の治療タンパク質を、細胞から放出させることができる。一部の例では、目的の遺伝子を発現させることができる速度は、どのプロモーターを使用するか、および/または目的の遺伝子が標的細胞のゲノムに遺伝子座特異的にインテグレートされるか否かに応じて変化し得る。一部の用途では、タンパク質を構成的プロモーターから発現させることが望ましい場合がある。他の例では、タンパク質を誘導型プロモーターから発現させることが望ましい場合がある。
【0148】
本開示の一部の態様では、目的の遺伝子は、対象において欠如しているかまたは機能が損なわれている内因性のタンパク質または機能的RNA分子をコードし得る。一部の例では、遺伝子に突然変異、例えばがん性の突然変異を有する対象を、欠如しているまたは機能的に損なわれているタンパク質を供給することによって本発明によって処置することができる。
【0149】
一部の態様では、本開示の組成物および方法は、細胞内で特定の機能を実施し得る分子の細胞、組織、または臓器特異的送達のために使用され得る。例えば、一部の例では、本開示の核酸構築物を使用して、ある特定の機能を示すタンパク質をコードする目的のある特定の遺伝子を送達することができる。さらに別の例では、本明細書に記載の組成物を使用して、ある特定の標的遺伝子を不活化することができる。例えば、本明細書に記載される組成物を使用して、RNA干渉(RNAi)を介してその標的遺伝子を沈黙化するために使用され得る干渉RNA、例えば低分子ヘアピンRNA(shRNA)を標的細胞に送達することができる。
【0150】
一部の例では、カーゴは核酸であり得る。そのような核酸は、目的の遺伝子であり得る。そのような目的の遺伝子は、ある特定の機能を示し、特定の生物効果、例えば治療効果を引き起こすことができる1つまたは複数のタンパク質をコードし得る。一部の例では、カーゴは、ケラチン7、ヒトコレシストキニンA受容体(膵臓がんの起源である膵管細胞)、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4、卵巣がん)、GATA2およびWASP(造血幹細胞)、前立腺特異抗原、GFAB(星細胞)、CD20およびCD19(Bリンパ球)であり得るか、または標的細胞に送達されるトランスジーンはそれらをコードし得る。一部の例では、目的の遺伝子は、HER2、HER3、CD20、VEGF、EGF、CD38、SLAM7、CD52、CD30、CD19、CD3、PD1、またはPDL1をコードし得る。一部の例では、本明細書に開示される目的の遺伝子は、核因子-カッパB(NF-カッパB)、もしくはp53(例えば、野生型p53またはスーパー抑制因子p53)、またはそのいずれかの組合せをコードし得る。一部の例では、本明細書に開示される目的の遺伝子は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV、例えば、RSV-AおよびRSV-B)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デングウイルス(DENV)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)および2型(HSV-2)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)に由来する抗原などの細菌抗原、またはヘマグルチニン融合ペプチド(HA-fp)エピトープ、ヘマグルチニン疎水性ポケットペプチド(HA-hp)エピトープ、ヘマグルチニンヘリックスAエピトープ、ノイラミニダーゼエピトープ、M2エクトドメイン(M2e)エピトープ、およびヌクレオタンパク質(NP)エピトープを含むインフルエンザ由来抗原をコードし得る。
【0151】
一部の例では、本開示の組成物および方法は、ガイド配列として機能し得、ゲノムの特定の標的部位で核酸配列の挿入を可能にし得るある特定の核酸配列を含み得る。
【0152】
本開示の一部の態様では、本明細書に記載される組成物は、標的細胞、1つもしくは複数の標的細胞集団、または1つもしくは複数の標的組織において目的の遺伝子の発現を調節し得るプロモーター(例えば、転写プロモーター)を含み得る。一部の例では、転写プロモーターは、その各々が標的細胞内で生成される1つまたは複数の因子(例えば、p16、p21、またはp53)に応答して活性化される。目的の遺伝子は、転写プロモーターに作動可能に連結され、その調節的制御下であり得る。他の例では、本明細書に記載されるプロモーターは、組織特異的であり得、SP1、ETS1、および/またはETS2を含む転写因子による活性化に応答し得る。一部の例では、転写プロモーターは、p21cip1/waf1プロモーター、p27kip1プロモーター、p57kip2プロモーター、TdTプロモーター、Rag-1プロモーター、B29プロモーター、Blkプロモーター、CDE19プロモーター、BLNKプロモーター、HSP(例えば、HSP70)プロモーター、TYRプロモーター、および/またはλ5プロモーターを含み得る。一部の例では、プロモーターは、グロビンプロモーターであり得る。一部の例では、プロモーターは、アルファ-グロビン、ベータ-グロビン、またはガンマ-グロビンプロモーターであり得る。
【0153】
本開示の一部の態様では、核酸は、天然もしくは非天然のヌクレオチドアナログもしくは塩基、またはその組合せを含み得る。非天然のヌクレオチドアナログまたは塩基は、リボース部分、ホスフェート部分、ヌクレオシド部分、またはその組合せの1つまたは複数において改変を含み得る。非天然のヌクレオチドアナログまたは塩基は、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、または2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)改変、ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、または2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイトを含み得る。本開示の核酸は、1つまたは複数の脱塩基部位をさらに含み得る。脱塩基部位は、検出可能部分によってさらに官能化され得る。
【0154】
本明細書で使用される場合、用語「転写プロモーター」は、特定の遺伝子の転写を開始する核酸配列の領域を指す。プロモーターは一般的に、遺伝子の転写開始部位近傍で、DNAの同じ鎖上の上流(アンチセンス鎖の3’領域に対して、同様に鋳型鎖および非コード鎖とも呼ぶ)に位置する。プロモーターは、長さが約100~1000塩基対であり得る。プロモーターは、特定のDNA配列、ならびにRNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを動員する転写因子と呼ばれるタンパク質のための安全な初回結合部位を提供する応答エレメントを含有する。これらの転写因子は、特異的プロモーターに結合して遺伝子発現を調節する対応するヌクレオチドの特異的活性化因子またはリプレッサー配列を有する。プロセスはより複雑であり、RNAポリメラーゼIIがプロモーターに結合するためには少なくとも7つの異なる因子が必要である。プロモーターは、他の調節領域(エンハンサー、サイレンサー、境界エレメント/インスレーター)と協調して作用し、所与の遺伝子の転写レベルを方向付けることができる重要なエレメントを表す。真核生物転写プロモーターは、複数の必須のエレメントを含み、これらは集合的にコアプロモーター(すなわち、転写を開始するために必要なプロモーターの最小部分)を構成する。それらのエレメントは一般的に、(1)転写開始部位(TSS)、(2)RNAポリメラーゼ結合部位(特に、メッセンジャーRNAをコードする遺伝子のプロモーターにおけるRNAポリメラーゼII結合部位)、(3)基本転写因子結合部位(例えば、TATA結合タンパク質(TBP)のための結合部位であるコンセンサス配列TATAAAを有するTATAボックス)、(4)B認識エレメント(BRE)、(5)調節エレメントを含有するおよそ250bpの近位プロモーター、(6)転写因子結合部位(例えば、BMAL11-ClockおよびcMycを含む塩基性ヘリックスループヘリックス(bHLH)転写因子の結合部位である配列CACGTFを有するE-ボックス)、ならびに(7)追加の調節エレメントを含有する遠位プロモーターを含む。本明細書で使用される場合、用語「転写プロモーター」は、転写開始部位から離れた調節エレメントを指す用語「エンハンサー」とは異なる。真核生物プロモーターはしばしば、以下のクラスに従って分類される:(1)ATベースのクラス、(2)CGベースのクラス、(3)ATCGコンパクトクラス、(4)ATCGバランスクラス、(5)ATCGミドルクラス、(6)ATCGレスクラス、(7)ATレスクラス、(8)CGスパイククラス、(9)CGレスクラス、および(10)ATスパイククラス。Gagniuc and Ionescu-Tirgoviste, BMC Genomics 13:512 (2012)を参照されたい。真核生物プロモーターは、「単方向性」または「二方向性」であり得る。単方向性プロモーターは、単一の遺伝子の転写を調節し、TATAボックスの存在によって特徴付けられる。二方向性プロモーターは、二方向性遺伝子対(すなわち、互いの方向を向く5’末端を有する反対鎖上にコードされた2つの隣接する遺伝子)における遺伝子の5’末端の間のDNAの短い(<1キロ塩基対(kbp))遺伝子間領域である。二方向性遺伝子はしばしば、機能的に関連し、それらが単一のプロモーターを共有することから、同時調節および同時発現させることができる。単方向性プロモーターとは異なり、二方向性プロモーターは、TATAボックスを含有しないが、GpCアイランドを含有し、1つの側のドミナントのCおよびAと、他方の側のGおよびTとの中点付近で対称性を示す。CCAATボックスは、NRF-1、GABPA、YY1、およびACTACAnnTCCC(配列番号278)モチーフと同様に二方向性プロモーターにおいて共通である。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「転写因子」は、転写プロモーター内の特異的配列に結合し、それによってプロモーターの近位および下流で作動可能である核酸の転写を調節する配列特異的DNA結合因子を指す。転写因子は、転写を促進する活性化剤、およびRNAポリメラーゼの動員または結合を防止することによって転写を遮断するリプレッサーを含む。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「自殺遺伝子」は、p53媒介性アポトーシス細胞死滅を誘導するタンパク質を生成する遺伝子のクラスを指す。本開示の発現構築物およびシステムにおいて使用することができる自殺遺伝子としては、カスパーゼ、CASP3、CASP8、CASP9、BAX、DNA断片化因子(DFF)40、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、およびシトシンデアミナーゼ、ならびにCASP3、CASP8、CASP9、BAX、DFF40、ヘルペスHSV-TK、およびシトシンデアミナーゼの誘導型バリアントが挙げられる。
【0157】
単離された核酸は、トランスポゾン機能性、例えばクラスIIトランスポゾンを有し得る。
生物試料のスクリーニングによる細胞特異的がんZipコード配列の検出
【0158】
一部の例では、本開示は、生物試料中の細胞型および組織型特異的無細胞ヒト細胞標的化配列(時に1つまたは複数のZCSを含む)を検出することによって、対象(例えば、齧歯類またはヒト)におけるがんをスクリーニングする方法を提供する。一部の例では、本開示は、対象の生物試料を得ること;プローブを前記生物試料と接触させて、プローブと核酸配列との間のハイブリダイゼーションを検出することによって、配列番号1~配列番号277または配列番号282と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列が、前記生物試料中に存在するか否かを検出すること;および前記核酸が前記ハイブリダイゼーションによって検出されるか否かに基づいて前記対象の前記生物試料の健康状態を特徴付けることを含む方法を提供する。他の例では、本開示は、対象の生物試料を得ること;逆転写、ポリヌクレオチド増幅、またはシーケンシングから選択される1つまたは複数のプロセスによって、前記生物試料中の配列番号1~配列番号277、または配列番号282と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列のレベルを定量すること;コンピューターシステムにおいて、前記核酸配列の前記定量レベルを参照と比較すること;および前記核酸が前記1つまたは複数のプロセスによって検出されるか否かに基づいて前記対象の前記生物試料の健康状態を特徴付けることを含む方法を提供する。
【0159】
一部の例では、単離された核酸配列は、長さが少なくとも200塩基対であり得る。一部の例では、単離された核酸配列は、長さが少なくとも400塩基対であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約200塩基対~約800塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約400塩基対~約2,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約400塩基対~約5,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約1,500塩基対~約7,200塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約1,900塩基対~約5,800塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約2,000塩基対~約10,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約5,000塩基対~約15,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約600塩基対~約16,900塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約8,000塩基対~約18,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約10,000塩基対~約20,000塩基対の範囲であり得る。一部の例では、前記核酸配列は、長さが約400塩基対~約20,000塩基対の範囲であり得る。
疾患または状態のin vivoでの処置
【0160】
様々な態様では、本開示のヒト細胞標的化核酸配列を使用して、投与後に特定の細胞、細胞集団、組織、または臓器をin vivoで(すなわち、生きている生物または対象において)標的とすることができる。一部の例では、および特定の細胞、細胞集団、組織、または臓器に対するその高い特異性のために、本開示のヒト細胞標的化核酸配列は、生物または対象内の特定の位置にそれらのカーゴを送達するために、カーゴと組み合わせて使用され得る。一部の例では、そのようなカーゴの送達は、治療および/または診断目的のために、例えば疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の発症をin vivoで高い特異性で処置および/または検出するために使用することができる。一部の例では、本開示のヒト細胞標的化核酸配列は、高度に標的化された処置を可能にし得る。一部の例では、本開示のヒト細胞標的化核酸配列は、疾患もしくは状態、または疾患もしくは状態の促進因子を含む疾患もしくは状態の発症の高度に特異的な検出を可能にし得る。一部の例では、疾患または状態の診断は非侵襲性であり得、このように特定の疾患または状態は、侵襲性の方法(例えば、手術)を使用することによって生きている生物または対象において検出され得る。
【0161】
本明細書において以下にさらに詳細に記載するように、例えばカーゴは、治療タンパク質、またはタンパク質、ペプチドおよび低分子薬、または多様な検出可能部分、例えば本明細書に開示されるヒト細胞標的化核酸配列のin vivo追跡を可能にする蛍光標識もしくは放射活性標識をコードする核酸分子を含み得る。
【0162】
そのモジュール性の性質により(例えば、
図12または
図20を参照されたい)、本開示のヒト細胞標的化核酸配列およびシステムを使用して、慢性、代謝、および感染性の疾患または状態、例えばがんまたは糖尿病を含み得る多様な疾患および状態を防止、処置、および/または診断することができる。
【0163】
様々な態様では、本開示のヒト細胞標的化核酸配列は、医薬組成物として製剤化され、全身および局所投与を含む多様な投与経路を使用して対象の生物に投与され得る。投与されると、ヒト細胞標的化核酸配列は対象の生きている生物内に分布し、循環中および臓器取り込みの際に、蛍光色素または放射活性同位体などの検出可能部分によって放出されたシグナルの検出を介して検出され得る。細胞、細胞集団、組織、または臓器による細胞標的化核酸配列がin vivoで取り込まれると、細胞標的化核酸配列は、本明細書に記載されるカーゴを標的部位または複数の標的部位に送達し得る。特定の細胞、細胞集団、組織、または臓器に対するその高い特異性のために、本開示の核酸構築物は、標的部位に主に蓄積し、そのため、多様なカーゴに関して非常に特異的な送達ビヒクルであり得る。がんの処置におけるzipコード配列の使用
【0164】
多くのがん、特にいくつかの型の固形腫瘍は、正常な組織における薬物の負の副作用を管理しながらそのような腫瘍において有効な薬物を十分に高いレベルで達成することが難しいために、処置することが難しい。その結果、他の組織における負の副作用レベルを最小限にしながら腫瘍における薬物のより高い有効用量を達成するためには、薬物を例えば固形腫瘍を特異的に標的とすることが必要である。その上、急速に成長しつつあるがん性細胞に対して薬物を特異的に標的にすることも必要である。典型的ながんの薬物レジメンはしばしば、用量制限毒性のために制限され、一部の抗体-薬物コンジュゲートは、標的部位以外での毒性を制限するために薬物を特定の腫瘍に標的とするために使用されるが、そのような特異的治療は多くの固形腫瘍では利用できない。本明細書では、カーゴ、例えば薬物を細胞に特異的に送達することができる核酸構築物および送達システムを提供する。ある特定の例では、zipコードそのものを含む核酸構築物は、治療応答を保有するかまたは誘導する。
【0165】
本開示は、がん性細胞または疾患を有する細胞にホーミングする、細胞を標的とする、細胞に方向付ける、細胞に蓄積する、細胞の細胞質および核に侵入することができる無細胞腫瘍DNA特異的試料に由来する1つまたは複数の細胞/組織特異的ZCSを含み得る、あるクラスの細胞標的化核酸配列を記載する。本開示のそのような細胞標的化核酸は、1つまたは複数のヒト細胞型を特異的に標的とすることができる。このように、それらはがん性のまたは疾患を有する細胞を処置するために直接、または活性薬、核酸構築物、もしくは分子の担体として使用することができる。1つまたは複数の特定のがん性のまたは疾患を有する領域、組織、構造、または細胞に特異的にホーミングする、それらを標的とする、それらに方向付けられる、それらに蓄積する、それらにおける細胞質および核に侵入することができる核酸配列は、より少ないオフターゲット効果およびおそらくより少ない負の効果を有し得る。
【0166】
本開示はまた、治療目的およびイメージング目的のいずれかまたは両方のために使用することができる活性剤または検出可能剤を、特定の領域、組織、構造、または細胞に送達することができる新規種類の担体も提供する。本明細書で使用される場合、活性剤または検出可能剤は、1つまたは複数の本開示のZipコード配列を含む核酸配列に連結することができる。
【0167】
本開示はまた、対象の状態を処置する方法であって、対象の領域、組織、または細胞に、例えば特定の標的細胞、例えば多発性骨髄腫、膵臓がん、または肺がん細胞の細胞質または核内にホーミングする、標的とする、移行する、方向付けられるZCSを対象に投与することを含む方法も提供する。一部の例では、投与された核酸構築物は、対象の標的細胞の核を通過して、対象の細胞にインテグレートされるようになり得る。
【0168】
一部の実施形態では、方法は、それを必要とする対象に、必要に応じて治療用カーゴを含み得るZCS核酸構築物の有効量を投与することを含む。
【0169】
用語「有効量」は、本明細書で使用される場合、処置される疾患または状態の症状の1つまたは複数をある程度緩和する、投与される作用剤または化合物の十分量を指す。結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因の低減および/もしくは軽減、または生物システムの他の任意の所望の変更であり得る。そのような作用剤または化合物を含有する組成物は、予防的処置、増強処置、および/または治療的処置のために投与することができる。任意の個々の症例における適正な「有効」量は、用量漸増研究などの技術を使用して決定され得る。一部の例では、核酸Zipコード配列の治療有効量(例えば、疾患または障害を防止および/または処置するための)は、約1ピコグラム(pg)~約1gであり得る。ZCSの治療有効量は、約1ナノグラム(ng)~約100mgであり得る。ZCSの治療有効量は、約100ng~約10mgであり得る。ZCSの治療有効量は、約1マイクログラム(μg)~約10mgであり得る。ZCSの治療有効量は、約100μg~約1mgであり得る。
【0170】
ZCSまたは1つもしくは複数のZCSを含む構築物は、1つもしくは複数の他のZCSまたは1つもしくは複数のZCSを含む構築物と組み合わせて投与され得る。ZCSまたは1つもしくは複数のZCSを含む構築物は、1つまたは複数の他の治療用分子(例えば、低分子薬、免疫療法剤(例えば、免疫チェックポイント遮断剤)、治療抗体等)と組み合わせて投与され得る。
【0171】
本開示の方法、組成物、およびキットは、状態の症状を防止、処置、停止、逆転、または改善する方法を含み得る。処置は、本開示のシステムを含む核酸構築物またはZCSによって、対象(例えば、疾患または状態に罹患している個体、家畜動物、野生動物、または実験動物)を処置することを含み得る。疾患は、がんまたは腫瘍であり得る。疾患を処置する場合、本開示の核酸分子は、腫瘍またはがん性細胞と接触し得る。対象はヒトであり得る。対象は、ヒト;非ヒト霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;農場動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;ペット動物、例えばウサギ、イヌ、およびネコ;齧歯類を含む実験動物、例えばラット、マウスおよびモルモット等であり得る。対象は任意の年齢の対象であり得る。対象は、例えば高齢の成体、成体、青年、前青年、子供、小児、乳児、および子宮内胎児であり得る。
【0172】
処置は、疾患の臨床発症前に対象に提供され得る。処置は、疾患の臨床発症後に対象に提供され得る。処置は、疾患の臨床発症の1日後、1週間後、6ヶ月後、12ヶ月後、または2年後またはそれより後に対象に提供され得る。処置は、疾患の臨床発症後、1日より長く、1週間より長く、6ヶ月より長く、12ヶ月より長く、または2年より長くまたはそれより長く対象に提供され得る。処置は、疾患の臨床発症後、1日未満の間、1週間未満の間、1ヶ月未満の間、6ヶ月未満の間、12ヶ月未満の間、または2年未満の間、対象に提供され得る。処置はまた、臨床試験においてヒトを処置することも含み得る。本明細書に記載のZCSを使用する処置は、ZCSまたは1つもしくは複数のZCSを含む構築物を、1日に1回または複数回投与することを含み得る。一部の例では、そのような毎日投与は、ZCSまたは1つもしくは複数のZCSを含む構築物の同じまたは異なる量を含み、および/あるいは本明細書に記載される1つまたは複数の他の治療用分子を含む。
【0173】
処置は、医薬組成物、例えば本開示を通して記載される医薬組成物の1つまたは複数を対象に投与することを含み得る。処置は、本開示の核酸分子または核酸送達システムを対象に、静脈内で、皮下で、筋肉内で、吸入により、皮内で、局所適用で、経口で、舌下で、髄腔内で、経皮で、鼻腔内で、腹腔内経路を介して、または例えば大脳室内経路を介して、脳に直接送達することを含み得る。処置は、核酸分子-活性剤複合体または核酸送達システム-活性剤複合体を対象に、静脈内で、皮下で、筋肉内で、吸入により、皮内で、局所適用で、経口で、髄腔内で、経皮で、鼻腔内で、非経口で、経口で、腹腔内経路を介して、鼻で、舌下で、または脳に直接投与することを含み得る。
【0174】
一部の実施形態では、本開示は、がんまたは腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に、本開示の核酸送達システムの有効量を投与することを含む方法を提供する。本開示の核酸分子(または核酸分子-カーゴコンジュゲート)によって処置することができるがんまたは状態の一例は、固形腫瘍または血液腫瘍である。本開示のシステムを含む核酸構築物またはZCSによって処置することができるがんまたは状態のさらなる例としては、トリプルネガティブ乳がん、乳がん、乳がんの転移、ER/PR陽性乳がん、本明細書に記載される任意のがんの転移、大腸がん、大腸がんの転移、肉腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連がん、例えばカポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門がん、虫垂がん、小児星細胞腫、星細胞腫、小児非定型奇形腫様/ラブドイド(rhabdiod)腫瘍、CNS非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、皮膚がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、骨肉腫、軟骨腫、軟骨肉腫、原発性および転移性骨がん、悪性線維性組織球腫、小児脳幹神経膠腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、脳および脊髄の腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、小児中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系胚細胞腫瘍、小児中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、小児頭蓋咽頭腫、上衣腫、小児上衣腫、乳がん、気管支腫瘍、小児気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、胃がん(gastric cancer)、原発不明癌、心臓腫瘍、小児心臓腫瘍、原発性リンパ腫、子宮頸がん、胆管癌、脊索腫、小児脊索腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性腫瘍、大腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性乳管癌、子宮内膜がん、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、小児鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼のがん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管がん、骨の線維性組織球腫、胆嚢がん、胃がん(gastric cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、卵巣がん、精巣がん、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、ヘアリーセル白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、組織球症、ランゲルハンス細胞組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、黒色腫、黒色腫の転移、島細胞腫瘍、膵臓内分泌腫瘍、腎臓がん、腎細胞腫瘍、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍、口唇および口腔がん(oral cavity cancer)、肝臓がん、肺がん、非ホジキンリンパ腫、マクログロブリン血症(macroglodulinemia)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、男性乳がん、メルケル細胞癌、原発不明転移性頭頸部扁平上皮がん、NUT遺伝子を伴う正中線管癌、口腔がん(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、小児多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄増殖性腫瘍、鼻腔および副鼻腔のがん、鼻咽頭がん、神経芽腫(neuorblastoma)、非小細胞肺がん、中咽頭がん、低悪性度腫瘍、膵臓がん、膵臓神経内分泌腫瘍、乳頭腫症、小児乳頭腫症、パラガングリオーマ、副鼻腔および鼻腔のがん、副甲状腺がん、陰茎がん、褐色細胞腫、咽頭がん(pharyngeal cancer)、下垂体腫瘍、胸膜肺芽種、小児胸膜肺芽種、原発性腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、妊娠関連がん、横紋筋肉腫、小児横紋筋肉腫、唾液腺がん、セザリー症候群、小細胞肺がん、小腸がん(caner)、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、精巣がん、咽頭がん(throat cancer)、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺がん、腎臓、腎盂、および尿道の移行上皮がん、子宮がん、尿道がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、ならびに外陰がんが挙げられる。
【0175】
例示的な癌細胞試料としては、これらに限定されないが、肛門がん、虫垂がん、胆管がん(すなわち、胆管癌)、膀胱がん、脳腫瘍、肺がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、原因不明がん(CUP)、食道がん、眼のがん、卵管がん、消化管がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、髄芽腫、黒色腫、口腔がん(oral cancer)、卵巣がん、膵臓がん、副甲状腺疾患、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、皮膚がん、胃がん(stomach cancer)、精巣がん、咽頭がん(throat cancer)、甲状腺がん、子宮がん、膣がん、または外陰がんから得られる細胞試料が挙げられ得る。
【0176】
がん性細胞試料は、血液悪性腫瘍から得た細胞を含み得る。血液悪性腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、またはホジキンリンパ腫を含み得る。血液悪性腫瘍は、T細胞に基づく血液悪性腫瘍であり得る。血液悪性腫瘍は、B細胞に基づく血液悪性腫瘍であり得る。例示的なB細胞に基づく血液悪性腫瘍としては、これらに限定されないが、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、高リスクCLL、非CLL/SLLリンパ腫、前リンパ球性白血病(PLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット高悪性度B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、またはリンパ腫様肉芽腫症が挙げられ得る。例示的なT細胞に基づく血液悪性腫瘍としては、これらに限定されないが、非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、芽球性NK細胞リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、血液脾臓ガンマ-デルタT細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、鼻型NK/T細胞リンパ腫、処置関連T細胞リンパ腫、またはヘアリーセル白血病が挙げられ得る。
Zipコード配列媒介性遺伝子送達は標的細胞の表現型を変更することができる
【0177】
本開示の方法および組成物は、標的細胞および/または標的細胞集団の表現型を変更するために有用であり得る。一部の例では、対象における標的細胞の表現型の変更は、治療介入に対する対象の治療応答および/または臨床応答を改善し得る。
【0178】
本明細書に記載されるヒト細胞標的化配列(Zipコード)は、目的の1つまたは複数の遺伝子に連結させることができ、このようにウイルスベクターシステムを必要とすることなく、それらの遺伝子の細胞および/または組織特異的送達のために使用され得る。一部の例では、目的の遺伝子は、標的細胞において発現されると、細胞がこれまで非応答性であったかまたはそれに対して細胞が耐性機構を発達させた細胞外刺激に対して細胞を応答性にすることができる表面受容体などの特定のタンパク質またはポリペプチドをコードし得る。このように、本開示の方法および組成物を使用して、ある特定の細胞外刺激または外因性刺激に対する細胞における耐性機構を逆転させるか、または細胞の応答性を誘導することができる。例えば、目的の遺伝子は、表面受容体、例えばエストロゲン受容体(ER)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)および/もしくは3(HER3)、または分化抗原群(CD)表面タンパク質(例えば、CD19、CD22、CD138、CD34、PD1、CD38、またはSLAM7)を含む他の表面マーカー(またはバイオマーカー)をコードし得る。そのような人為的に導入された遺伝子の発現は、細胞の表現型を、例えばHER陰性からHER2陽性へと変化させ得る。一部の例では、例えばHER2陽性原発腫瘍は、トラスツズマブなどの抗HER2抗体の投与を含む抗HER2治療に対して応答を示さないかまたは非常に限定的な応答のみを示すHER2陰性の遠位病変を発生させ得る。このように、本開示の方法および組成物を使用して、HER2陰性腫瘍をHER2陽性腫瘍へと変換することができ、このように、抗HER2処置に対するその感受性を増加させることができる。別の例として、腫瘍細胞は、標的化治療または化学療法、例えばゲムシタビンに応答してある特定の経路(例えば、ヌクレオチド合成またはDNA修復)をダウンレギュレートし、このようにこれらの処置アプローチを回避することにより低い応答率および全生存をもたらし得る。したがって、本開示の方法および組成物を使用して、それらの耐性機構を逆転させ、治療薬分子と組み合わせて、処置に対する腫瘍の感受性を有意に増加させ得るある特定のタンパク質を過剰発現させることができる。
【0179】
本開示のさらなる態様では、本明細書に記載される組成物を使用して、標的細胞における免疫調節タンパク質の発現を増加させることができる。例えば、本開示の核酸構築物およびシステムを使用して、免疫チェックポイント、例えばプログラム細胞死受容体-1(PD-1)および/またはプログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1)の生成を増加させることができる。その上、本開示の核酸配列は、CTLA-4、BTLA、TIM-3、CCR5、CXCR4、TCR、B2M、キメラ抗原受容体(CAR)、生体タンパク質生成に関与する遺伝子、肝臓におけるアルブミン、ヘモグロビンサブユニットベータ遺伝子、ヘモグロビンサブユニットアルファ1遺伝子、トランスサイレチン(TTR)、CCR5、グルココルチコイド(GR)、T細胞受容体(TCR)、CD52、BCL11A、アルファ-Lイズロニダーゼ(IDUA)、イズロネート-2-スルファターゼ(IDS)、第9因子、PD-1/TCR-A/TCR-B、TCR/CS-1、TCR、CEP290、TCR/B2M、CBLB、TGFbR、ジストロフィン、CFTR、serpina1、IL2Rg、またはHBVが挙げられるがこれらに限定されないタンパク質をコードする遺伝子を含み得る。
ネオ抗原のZipコード配列媒介性のおよび細胞特異的生成
【0180】
本開示のヒト細胞標的化配列を使用して、標的細胞、標的細胞集団、および/または標的組織においてネオ抗原を生成させることができ、次にこれらを、それらのネオ抗原に対して親和性を示す特異的に設計した薬物分子(例えば、治療抗体または抗体-薬物コンジュゲート)によって標的とすることができる。言い換えれば、本開示のZCSを使用して、薬物に対する標的細胞の感受性を増加させるかまたは人為的に誘導し、このように新規かつ有効な処置選択肢を提供することができる。本明細書に記載されるように、ネオ抗原は一般的に、腫瘍特異的な突然変異遺伝子によってコードされる抗原として理解される。
【0181】
本開示の一部の態様では、方法および組成物は、免疫治療アプローチの有効性を増加させるために有用であり得る。例えば、現行の免疫療法の標的化のみでは、有望な転帰を示すのは一部の患者(およそ15~25%)に過ぎない。対象自身の免疫系が腫瘍細胞をより有効に認識して攻撃する能力を増強するために本明細書に記載される組成物を使用する一例は、腫瘍細胞を免疫系に異物と認識させることが可能なネオ抗原をがん細胞において生成させることによることであり得る。例えば、本明細書に記載される組成物をまた使用して、対象がそれに対して自然免疫または後天性免疫を有し得る(例えば、過去にその特定の抗原に対してワクチン接種されている)腫瘍細胞において細菌またはウイルスの発現を誘導することができ、このようにメモリーB細胞がそれぞれの細菌またはウイルス抗原を発現するがん細胞を認識および破壊することが可能になり得る。
【0182】
本明細書に開示される方法および組成物は、既存の薬物、例えばPD-1/PD-L1軸を標的とする免疫チェックポイント阻害剤、または他の免疫チェックポイント剤、例えば細胞傷害性Tリンパ球関連分子4(CTLA-4)またはLAG-3、TIM-3、TIGIT、VISTA、またはB7/H3と組み合わせて使用され得る。現在利用可能な免疫療法は、高い突然変異負荷(例えば、喫煙によって引き起こされる肺がん)を有する、および免疫系のT細胞が異物として検出することができる表面のネオ抗原の存在が増加している腫瘍では、より有効であることが示されている。このように、免疫細胞が認識することができる非天然のポリペプチド断片(すなわち、ネオ抗原)の量を人為的に増加させるために本開示の組成物を使用することは、がんおよび他の疾患の防止および処置に関する免疫療法の有効性を増加させ得る。
【0183】
他の例では、本開示は、対象における標的細胞に対する免疫応答を誘発するために、対象(例えば、齧歯類またはヒト)のそのような標的細胞にウイルス、細菌、真菌、または他の外来抗原を送達するために使用することができる核酸構築物および送達システムを提供する。一部の例では、そのような標的細胞はがん細胞であり得る。そのような外来抗原は、例えば細胞標的化配列、インテグレーション配列、およびそのような外来抗原をコードするカーゴ核酸配列を含む本開示の送達システムを使用することによって、そのような標的配列に送達することができる。カーゴ核酸配列は、標的細胞のゲノムへのそのような配列のインテグレーションの際に標的細胞によって発現させることができる。
Zipコード配列媒介性のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の生成
【0184】
一部の態様では、本開示のヒト細胞標的化配列は、Zipコード配列を含むことができ、標的細胞において内因性または人工受容体を発現させるために使用され得る。一部の例では、人工受容体は、特定の標的細胞集団(例えば、Tリンパ球)において発現され得るキメラ抗原受容体(CAR)であり得る。特定の標的細胞または細胞集団に対する高い特異性および自己インテグレート能によって、Zipコード配列は、CAR遺伝子の効率的かつ再現可能なインテグレーションのための標的化配列として使用することが可能となり得る。多様なウイルスベクターシステム(例えば、アデノウイルスまたはレンチウイルスベクター)を使用してT細胞においてCAR(すなわち、CAR T細胞)を生成するための現在利用可能なアプローチは、一般的にT細胞集団内のex vivo CAR遺伝子インテグレーションの高い不均一性により臨床での有用性が限定的であり、複数のバッチ生成と比較すると、低い再現性をもたらす。このように、本明細書に記載される組成物および方法を使用して、臨床的に適切な細胞集団(例えば、T細胞)内でCAR遺伝子トランスフェクションの有効性および均一性を増加させることができる。
Zipコード配列は腫瘍成長および疾患の再発を防止する
【0185】
本明細書に記載される核酸Zipコード配列(ZCS)をまた使用して、腫瘍の成長および疾患の再発を防止することができる。一部の例では、本開示のZCSを使用して、がんを有するまたはがんを有することが疑われる対象に投与した場合に、循環する腫瘍核酸分子に結合することができ、および/または循環する腫瘍核酸分子を捕捉することができる。
【0186】
本開示の組成物および方法は、がんの型特異的ZCSの単離および/または合成を可能にする。同じ腫瘍型に由来する循環する腫瘍核酸分子に対するこれらのZCSの特異性により、本開示のZCSを対象における循環する腫瘍核酸分子と接触させると、ハイブリダイゼーション複合体が形成され得る。これによって、循環する腫瘍核酸分子(例えば、ctDNA)がその目的地である組織または臓器に到達するのを防止することができ、このように、転移形成の頻度、腫瘍細胞間の細胞クロストーク、ならびに腫瘍の成長および発達に関連する他の機構を防止または低減し得る。
【0187】
一部の例では、本明細書に記載される腫瘍特異的コンセンサス配列またはコンセンサスZCSを使用して、対象におけるがんを防止する、および/またはがん性疾患の再発を防止することができる。本明細書に記載の方法の汎用性は、実質的にいかなる腫瘍型にも使用することができるZCSの生成および/または合成を可能にし得る。
【0188】
一部の例では、本開示のZCSは、循環する腫瘍核酸分子の結合または捕捉を改善することを可能にし得る1つまたは複数の分子にコンジュゲートする、結合する、または連結させることができる。そのような分子は、特定の腫瘍型に関連する循環する腫瘍核酸分子に対するZCSの結合親和性を増強する分子を含み得る。これらの分子は、ZCSの生体分布、薬物動態、および/または薬力学を変更する化学部分をさらに含み得る。一部の例では、循環する腫瘍核酸分子の循環からの除去が、例えば排泄、代謝的(例えば酵素的)変換または不活化を介して増強または加速されるように、ZCSを改変することができる。
【0189】
ZCSを使用して、対象における循環する腫瘍核酸分子の生体分布、および前記対象の血液中の循環する腫瘍核酸分子の量を決定することができる(例えば、色素によって標識され得る結合またはハイブリダイズしたZCSの量を測定することによって)。
カーゴ送達のための核酸ZCSの使用
【0190】
本明細書に開示される核酸配列およびシステムは、イメージング、研究、治療、セラノスティクス、薬剤、化学療法薬、キレート療法、標的化薬物送達、および放射線療法において使用される作用剤にコンジュゲートすることができる。
【0191】
一部の実施形態では、細胞型または組織型特異的ZCSを、検出可能剤、例えばフルオロフォア、近赤外線色素、造影剤、ナノ粒子、金属含有ナノ粒子、金属キレート、X線造影剤、PET剤、金属、放射性同位体、色素、放射性核種キレート剤、またはイメージングにおいて使用することができる別の適切な材料にコンジュゲートまたは融合する。一部の例では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の検出可能剤を、細胞型または組織型特異的ZCSに連結させることができる。放射性同位体の非制限的な例としては、アルファ放射体、ベータ放射体、陽電子放射体、およびガンマ放射体が挙げられる。一部の例では、金属または放射性同位体は、アクチニウム、アメリシウム、ビスマス、カドミウム、セシウム、コバルト、ユーロピウム、ガドリニウム、イリジウム、鉛、ルテチウム、マンガン、パラジウム、ポロニウム、ラジウム、ルテニウム、サマリウム、ストロンチウム、テクネチウム、タリウム、およびイットリウムからなる群から選択される。一部の例では、金属は、アクチニウム、ビスマス、鉛、ラジウム、ストロンチウム、サマリウム、またはイットリウムである。
【0192】
一部の例では、フルオロフォアは、波長650nm~4000nmの間の電磁放射線を放射する蛍光剤であり、そのような放射は、そのような作用剤を検出するために使用される。本開示のコンジュゲート分子として使用することができる蛍光色素の非制限的な例としては、DyLight-680、DyLight-750、VivoTag-750、DyLight-800、IRDye-800、VivoTag-680、Cy5.5、またはインドシアニングリーン(ICG)が挙げられる。一部の例では、近赤外線色素はしばしば、シアニン色素(例えば、Cy7、Cy5.5、およびCy5)を含む。本開示のコンジュゲート分子として使用するための蛍光色素の追加の非制限的な例として、アクリジン(acradine)オレンジまたはイエロー、Alexa Fluor(例えば、Alexa Fluor 790、750、700、680、660、および647)およびそのいずれかの誘導体、7-アクチノマイシンD、8-アニリノナフタレン-1-スルホン酸、ATTO色素およびそのいずれかの誘導体、オーラミン-ローダミン染料およびそのいずれかの誘導体、ベンズアントロン(bensantrhone)、ビマン、9-10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、5,12-ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、ビスベンズイミド、ブレインボウ、カルセイン、カルボキシフルオレセイン(carbodyfluorescein)およびそのいずれかの誘導体、1-クロロ-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセンおよびそのいずれかの誘導体、DAPI、DiOC6、DyLight Fluorおよびそのいずれかの誘導体、エピココノン、エチジウムブロミド、FlAsH-EDT2、Fluo色素およびそのいずれかの誘導体、FluoProbeおよびそのいずれかの誘導体、フルオレセインおよびそのいずれかの誘導体、Furaおよびそのいずれかの誘導体、GelGreenおよびそのいずれかの誘導体、GelRedおよびそのいずれかの誘導体、蛍光タンパク質およびそのいずれかの誘導体、mアイソフォームタンパク質およびそのいずれかの誘導体、例えばmCherry、ヘタメチン(hetamethine)色素およびそのいずれかの誘導体、ヘキスト(hoeschst)染色、イミノクマリン、インディアンイエロー、インド-1およびそのいずれかの誘導体、laurdan、ルシファーイエローおよびそのいずれかの誘導体、ルシフェリンおよびそのいずれかの誘導体、ルシフェラーゼおよびそのいずれかの誘導体、メルコシアニン(mercocyanine)およびそのいずれかの誘導体、ナイル色素およびそのいずれかの誘導体、ペリレン、フロキシン、フィコ色素およびそのいずれかの誘導体、ヨウ化プロピジウム、ピラニン、ローダミンおよびそのいずれかの誘導体、リボグリーン、RoGFP、ルブレン、スチルベンおよびそのいずれかの誘導体、スルホローダミンおよびそのいずれかの誘導体、SYBRおよびそのいずれかの誘導体、シナプト-pHluorin、テトラフェニルブタジエン、トリス四ナトリウム、Texas Red、Titan Yellow、TSQ、ウンベリフェロン、ビオラントロン、黄色蛍光タンパク質、およびYOYO-1が挙げられる。他の適した蛍光色素としては、これらに限定されないが、フルオレセインおよびフルオレセイン色素(例えば、フルオレセインイソチオシアニンまたはFITC、ナフトフルオレセイン、4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセインまたはFAM等)、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、フィコエリスリン、エリスロシン、エオジン、ローダミン色素(例えば、カルボキテトラメチル-ローダミンまたはTAMRA、カルボキシローダミン6G、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、リサミンローダミンB、ローダミン6G、ローダミンGreen、ローダミンRed、テトラメチルローダミン(TMR)等)、クマリンおよびクマリン色素(例えば、メトキシクマリン、ジアルキルアミノクマリン、ヒドロキシクマリン、アミノメチルクマリン(AMCA)等)、Oregon Green Dye(例えば、Oregon Green488、Oregon Green500、Oregon Green514等)、Texas Red、Texas Red-X、SPECTRUM RED、SPECTRUM GREEN、シアニン色素(例えば、CY-3、Cy-5、CY-3.5、CY-5.5等)、ALEXA FLUOR色素(例えば、ALEXA FLUOR 350、ALEXA FLUOR 488、ALEXA FLUOR 532、ALEXA FLUOR 546、ALEXA FLUOR 568、ALEXA FLUOR 594、ALEXA FLUOR 633、ALEXA FLUOR 660、ALEXA FLUOR 680等)、BODIPY色素(例えば、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665等)、IRDye(例えば、IRD40、IRD 700、IRD 800等)等が挙げられる。追加の適切な検出可能剤は、PCT/US第14/56177号に記載されている。放射性同位体の非制限的な例としては、アルファ放射体、ベータ放射体、陽電子放出体、およびガンマ放射体が挙げられる。一部の例では、金属または放射性同位体は、アクチニウム、アメリシウム、ビスマス、カドミウム、セシウム、コバルト、ユーロピウム、ガドリニウム、イリジウム、鉛、ルテチウム、マンガン、パラジウム、ポロニウム、ラジウム、ルテニウム、サマリウム、ストロンチウム、テクネチウム、タリウム、およびイットリウムからなる群から選択される。一部の例では、金属は、アクチニウム、ビスマス、鉛、ラジウム、ストロンチウム、サマリウム、またはイットリウムである。一部の実施形態では、放射性同位体は、アクチニウム-225または鉛-212である。
【0193】
本開示は、放射線増感剤または光増感剤にコンジュゲートされた細胞型または組織型特異的ヒト細胞標的化核酸配列を提供する。放射線増感剤の例としては、これらに限定されないが、ABT-263、ABT-199、WEHI-539、パクリタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、エタニダゾール、ミソニダゾール、チラパザミン、および核酸ベースの誘導体(例えば、ハロゲン化プリンまたはピリミジン、例えば5-フルオロデオキシウリジン)が挙げられる。光増感剤の例としては、これらに限定されないが、照射されると熱を生成する蛍光分子またはビーズ、ナノ粒子、ポルフィリンおよびポルフィリン誘導体(例えば、クロリン、バクテリオクロリン、イソバクテリオクロリン、フタロシアニン、およびナフタロシアニン)、メタロポルフィリン、メタロフタロシアニン、アンゲリシン、カルコゲンピリリウム(chalcogenapyrrillium)色素、クロロフィル、クマリン、フラビンおよび関連化合物、例えばアロキサジンおよびリボフラビン、フラーレン、フェオホルビド、ピロフェオホルビド、シアニン(例えば、メロシアニン540)、フェオフィチン、サフィリン、テトラフィリン、プルプリン、ポルフィセン、フェノチアジニウム、メチレンブルー誘導体、ナフタルイミド、ナイルブルー誘導体、キノン、ペリレンキノン(例えば、ヒペリシン、ヒポクレリン、およびセルコスポリン)、ソラレン、キノン、レチノイド、ローダミン、チオフェン、バーディン、キサンテン色素(例えば、エオジン、エリスロシン、ローズベンガル)、ポルフィリンの二量体およびオリゴマー型、ならびにプロドラッグ、例えば5-アミノレブリン酸が挙げられる。都合のよいことには、このアプローチは、治療剤(例えば、薬物)と電磁エネルギー(例えば、放射線または光)の両方を同時に使用して、疾患を有する細胞(例えば、がん細胞)の非常に特異的な標的化を可能にする。
【0194】
一部の態様では、本開示の組成物および方法を使用して、標的細胞においてDNA損傷および/またはゲノム不安定性を誘導することができる。例えば、放射活性標識化核酸構築物を使用して、疾患または状態に関連する細胞内に放射線誘導DNA損傷を引き起こすことができる。一部の例では、核酸構築物の特定の治療量の投与は、例えば腫瘍組織において増殖中の細胞の測定可能な低減を引き起こし得る。
細胞型および組織型特異的Zipコード配列を含む医薬組成物
【0195】
本開示は、本明細書に記載される1つまたは複数のZCSを含む医薬組成物を提供する。本開示の医薬組成物は、本明細書に記載される細胞標的化および/またはゲノムインテグレーション核酸配列(例えば、ZCS)の1つまたは複数を含む任意の核酸構築物と、他の化学および/または薬学的に許容される構成成分、例えば担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、濃化剤、抗酸化剤、溶解剤、緩衝剤、オスモライト、塩、界面活性剤、アミノ酸、カプセル化剤、充填剤、凍結保護剤、および/または賦形剤との組合せであり得る。組成物は、本明細書に記載される任意の核酸構築物またはZCSの生物への投与を容易にすることができる。組成物は、様々な形態、ならびに例えば静脈内、皮下、筋肉内、直腸内、エアロゾル、非経口、眼科、肺、経皮、膣、眼、鼻、経口、舌下、吸入、皮膚、気管内、鼻腔内、および局部投与(例えば、黒色腫において使用する場合)を含む経路によって、医薬組成物として治療有効量を投与することができる。医薬組成物は、局所または全身に、例えば本明細書に記載される核酸分子の臓器への直接注射を介して、必要に応じてデポーによって投与することができる。
【0196】
非経口注射は、ボーラス注射または連続注入のために製剤化することができる。本明細書に記載される医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液、またはエマルジョンとしての非経口注射にとって適切な形状であり得、処方剤、例えば懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤を含有し得る。非経口投与のための医薬製剤は、本明細書に記載されるヒト細胞標的化核酸配列の水溶性型の水溶液を含む。本明細書に記載されるヒト細胞標的化核酸配列の懸濁液は、油性注射用懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームを含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランを含有し得る。懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、適切な安定化剤、または本明細書に記載されるそのような核酸分子の溶解度を増加させおよび/もしくは凝集を低減させる作用剤も含有し得る。あるいは、本明細書に記載される核酸分子および核酸-カーゴ構築物は、使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌発熱物質フリー水によって復元するための凍結乾燥または粉末形態であり得る。一部の例では、核酸構築物またはZCSは、組織に直接注射される。本明細書に記載される核酸構築物またはZCSを対象に投与して、臓器、例えば膵臓または細胞、例えば多発性骨髄腫の細胞にホーミングする、それらを標的とする、それらへと移行する、それらに侵入することができる。
【0197】
本開示の核酸分子および核酸-カーゴ構築物は、外科的手順の間に、臓器または臓器組織または細胞、例えば肺または膵臓に直接適用することができる。本明細書に記載されるヒト細胞標的化核酸配列を含む核酸構築物またはZCSは、局部投与することができ、多様な局部投与可能な組成物、例えば、溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、バーム、クリーム、および軟膏に製剤化することができる。そのような医薬組成物は、溶解剤、安定化剤、等張性増強剤、緩衝剤、および保存剤を含有し得る。
【0198】
本明細書に提供される処置の方法または使用の実践において、本明細書に記載される核酸構築物またはZCSの治療有効量を、がんに罹患している対象に医薬組成物として投与することができる。一部の実施形態では、対象はヒトなどの哺乳動物である。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康、使用する化合物の効力、ならびに他の要因に応じて広く異なり得る。
【0199】
医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用することができる調製物に加工することを容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理的に許容される担体を使用して製剤化することができる。製剤は、選択した投与経路に応じて改変することができる。本明細書に記載される核酸分子または核酸送達システムを含む医薬組成物は、例えば組換え系においてペプチドを発現させることによって、ペプチドを精製することによって、核酸分子を凍結乾燥することによって、混合、溶解、造粒、糖衣錠の作製、粉末化、乳化、カプセル化、捕捉、または打錠するプロセスによって、製造することができる。医薬組成物は少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤、ならびに本明細書に記載の化合物を、遊離の塩基または薬学的に許容される塩の形態として含み得る。
【0200】
本明細書に記載の化合物を含む本明細書に記載の核酸および核酸システム(例えば、カーゴ部分に結合したZCS)を調製する方法は、本明細書に記載される核酸構築物またはZCSを1つまたは複数の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体と共に製剤化して、固体、半固体、または液体組成物を形成することを含む。固体組成物は、例えば散剤、錠剤、分散顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤、および坐剤を含む。これらの組成物はまた、微量の非毒性の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤、および他の薬学的に許容される添加剤も含有し得る。
【0201】
薬学的に許容される賦形剤の非制限的な例は、例えばその各々の全体が参照により本明細書に組み込まれている、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975;Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage
Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見出され得る。
核酸配列のin vivo取り込み
【0202】
本開示の核酸分子および核酸コンジュゲート(例えば、カーゴ部分に結合したZCS)の特定の細胞、細胞集団、組織、または臓器への取り込みは、ex vivo(例えば、組織染色、蛍光、PCR等を介して)またはin vivo(例えば、組織試料(例えば、血液試料、生検)、非侵襲性イメージング等)で決定され得る。同様に、カーゴ送達の有効性は、ex vivoまたはin vivoで決定され得る。ex vivo分析は、分析前に臓器の収集および収集した組織の固定(例えば、4%ホルムアルデヒドを使用して)を含む。組織試料は、顕微鏡法、分光法、フローサイトメトリー、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む多様な分析方法、および超音波、電磁放射線(例えば、UV/VIS、X線)、または放射活性の測定を介して分析され得る。例えば、組織取り込みは、細胞、細胞集団、組織、もしくは臓器試料の発光もしくは生物発光を測定することによって、または細胞、細胞集団、組織、もしくは臓器試料の放射活性を測定することによって、および取り込み値、例えば1グラムあたり(またはモルあたりまたは体積あたり)のパーセント注射用量を計算することによって決定され得る。
実施形態
【0203】
実施形態1.一部の実施形態では、本開示は、がん性細胞によって放出された循環する腫瘍DNAに由来する単離された核酸配列の治療有効量を含む医薬組成物であって、前記単離された核酸配列が、前記がん性細胞と同じ細胞型の細胞である細胞を標的化し、前記医薬組成物が、対象に投与するために製剤化されている、医薬組成物を提供する。
【0204】
実施形態2.前記細胞がヒト細胞である、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0205】
実施形態3.前記単離された核酸配列が肺細胞を標的とする、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0206】
実施形態4.前記単離された核酸配列が膵細胞を標的とする、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0207】
実施形態5.前記単離された核酸配列が白血球を標的にする、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0208】
実施形態6.前記単離された核酸配列が、前記細胞に投与されると前記細胞の核膜を通過する、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0209】
実施形態7.前記単離された核酸配列が、配列番号203~配列番号277、または配列番号282のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有する、実施形態6に記載の医薬組成物。
【0210】
実施形態8.前記単離された核酸配列が核膜を通過後、前記対象のゲノムにそれ自身をインテグレートする、実施形態7に記載の医薬組成物。
【0211】
実施形態9.前記単離された核酸配列が、長さが少なくとも400塩基対である、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0212】
実施形態10.前記単離された核酸配列が、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0213】
実施形態11.前記がん性細胞によって放出された前記循環する腫瘍DNAがトランスポゾンを含む、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0214】
実施形態12.前記トランスポゾンがクラスIIトランスポゾンである、実施形態11に記載の医薬組成物。
【0215】
実施形態13.前記単離された核酸配列が、前記クラスIIトランスポゾンに由来する、実施形態12に記載の医薬組成物。
【0216】
実施形態14.前記単離された核酸配列が、前記細胞に対して異種である少なくとも1つの追加の核酸配列を含む核酸構築物の一部である、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0217】
実施形態15.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、組織選択的プロモーターを含む、実施形態14に記載の医薬組成物。
【0218】
実施形態16.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、実施形態14に記載の医薬組成物。
【0219】
実施形態17.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、標的ゲノムへの組み込みのためのインテグレーションシグナル配列を含む、実施形態14に記載の医薬組成物。
【0220】
実施形態18.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、前記細胞を標的とするためのガイド配列を含む、実施形態14に記載の医薬組成物。
【0221】
実施形態19.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、実施形態14に記載の医薬組成物。
【0222】
実施形態20.前記ペプチドまたは前記タンパク質が、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパクをコードする、実施形態19に記載の医薬組成物。
【0223】
実施形態21.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である、実施形態20に記載の医薬組成物。
【0224】
実施形態22.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態20に記載の医薬組成物。
【0225】
実施形態23.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、肺がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態20に記載の医薬組成物。
【0226】
実施形態24.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである、実施形態20に記載の医薬組成物。
【0227】
実施形態25.前記ペプチドまたは前記タンパク質が抗原性タンパク質をコードする、実施形態19に記載の医薬組成物。
【0228】
実施形態26.前記抗原性タンパク質が、前記対象に投与されると前記細胞において特異的に翻訳される、実施形態25に記載の医薬組成物。
【0229】
実施形態27.カーゴをさらに含む、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0230】
実施形態28.前記カーゴが、フルオロフォアまたは放射性同位体である、実施形態27に記載の医薬組成物。
【0231】
実施形態29.前記カーゴが治療薬である、実施形態27に記載の医薬組成物。
【0232】
実施形態30.前記製剤が、ナノ粒子またはカチオン性ポリマーを含む、実施形態27に記載の医薬組成物。
【0233】
実施形態31.一部の実施形態では、本開示は、a)3’核酸配列を含む第1の領域であって、前記3’細胞核酸配列ががん細胞から単離されたトランスポゾンに由来する第1の領域、b)遺伝子コード配列を含む第2の領域、およびc)5’核酸配列を含む第3の領域であって、前記5’細胞核酸配列が前記がん細胞から単離された前記トランスポゾンに由来する第3の領域を含む遺伝子送達システムを提供する。
【0234】
実施形態32.前記トランスポゾンに由来する前記3’細胞核酸配列または前記5’核酸配列が、細胞標的化シグナルを含む、実施形態31に記載の遺伝子送達システム。
【0235】
実施形態33.前記トランスポゾンに由来する前記3’細胞核酸配列または前記5’核酸配列が、細胞インテグレーションシグナルを含む、実施形態31に記載の遺伝子送達システム。
【0236】
実施形態34.前記第1の領域が、必要に応じたガイド配列をさらに含む、実施形態31に記載の遺伝子送達システム。
【0237】
実施形態35.前記第2の領域が、前記目的の遺伝子の発現を駆動する組織特異的プロモーターをさらに含む、実施形態31に記載の遺伝子送達システム。
【0238】
実施形態36.一部の実施形態では、本開示は、がん性細胞によって放出された循環する腫瘍DNAに由来する配列を含む単離された核酸であって、前記単離された核酸配列は、前記がん性細胞と同じ細胞型の細胞である細胞によって取り込まれる、単離された核酸を提供する。
【0239】
実施形態37.前記がん性細胞と同じ細胞型の細胞ではない第2の細胞型によって取り込まれない、実施形態36に記載の単離された核酸。
【0240】
実施形態38.前記細胞の核膜を通過する、実施形態36に記載の単離された核酸。
【0241】
実施形態39.肺細胞によって取り込まれる、実施形態36に記載の単離された核酸。
【0242】
実施形態40.膵細胞によって取り込まれる、実施形態36に記載の単離された核酸。
【0243】
実施形態41.肺細胞によって取り込まれる、実施形態36に記載の単離された核酸。
【0244】
実施形態42.配列番号1~配列番号277、または配列番号282と少なくとも80%の類似性を有する配列を有する、実施形態36に記載の単離された核酸。
【0245】
実施形態43.配列番号1~配列番号277、または配列番号282と少なくとも80%の類似性を有する配列を有し、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と比較して少なくとも1つの置換改変を含有する、実施形態42に記載の単離された核酸。
【0246】
実施形態44.一部の実施形態では、本開示は、実施形態36に記載の単離された核酸配列および異種核酸配列を含むベクターを提供する。
【0247】
実施形態45.一部の実施形態では、本開示は、実施形態36に記載の2つまたはそれより多くの単離された核酸配列を含む2つまたはそれより多くの単離された核酸配列のライブラリを提供する。
【0248】
実施形態46.一部の実施形態では、本開示は、がん性細胞によって放出された循環する腫瘍DNAに由来する配列を含む単離された核酸であって、前記がん性細胞と同じ細胞型の細胞である細胞の核膜を通過し、前記細胞のゲノムにそれ自身をインテグレートする、単離された核酸を提供する。
【0249】
実施形態47.前記がん性細胞と同じ細胞型の細胞ではない第2の細胞型によって取り込まれない、実施形態46に記載の単離された核酸。
【0250】
実施形態48.肺細胞のゲノムにそれ自身をインテグレートする、実施形態46に記載の単離された核酸。
【0251】
実施形態49.膵細胞のゲノムにそれ自身をインテグレートする、実施形態46に記載の単離された核酸。
【0252】
実施形態50.肺細胞のゲノムにそれ自身をインテグレートする、実施形態46に記載の単離された核酸。
【0253】
実施形態51.配列番号203~配列番号277、または配列番号282と少なくとも80%の類似性を有する配列を有する、実施形態46に記載の単離された核酸。
【0254】
実施形態52.配列番号203~配列番号277、または配列番号282と少なくとも80%の類似性を有し、配列番号203~配列番号277、または配列番号282と比較して少なくとも1つの置換改変を含有する、実施形態51に記載の単離された核酸。
【0255】
実施形態53.一部の実施形態では、本開示は、実施形態46に記載の単離された核酸配列および異種核酸配列を含むベクターを提供する。
【0256】
実施形態54.一部の実施形態では、本開示は、実施形態46に記載の2つまたはそれより多くのヒト核酸トランスポゾン配列を含む2つまたはそれより多くの単離された核酸配列のライブラリを提供する。
【0257】
実施形態55.一部の実施形態では、本開示は、a)対象の生物試料を得ること、b)プローブを前記生物試料と接触させて、プローブと核酸配列との間のハイブリダイゼーションを検出することによって、配列番号1~配列番号277、または配列番号282と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列が前記生物試料中に存在するか否かを検出すること、およびc)前記核酸が前記ハイブリダイゼーションによって検出されるか否かに基づいて、前記対象の前記生物試料の健康状態を特徴付けることを含む方法を提供する。
【0258】
実施形態56.前記核酸がデオキシリボ核酸である、実施形態55に記載の方法。
【0259】
実施形態57.前記核酸が無細胞デオキシリボ核酸である、実施形態55に記載の方法。
【0260】
実施形態58.前記核酸配列が、長さが少なくとも400塩基対である、実施形態55に記載の方法。
【0261】
実施形態59.前記核酸配列が、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である、実施形態58に記載の方法。
【0262】
実施形態60.前記健康状態ががんである、実施形態55に記載の方法。
【0263】
実施形態61.前記がんが膵臓がんである、実施形態60に記載の方法。
【0264】
実施形態62.前記がんが骨髄腫である、実施形態60に記載の方法。
【0265】
実施形態63.前記生物試料が尿、唾液、または喀痰である、実施形態55に記載の方法。
【0266】
実施形態64.前記生物試料が組織学用組織である、実施形態55に記載の方法。
【0267】
実施形態65.前記プローブが前記核酸配列の領域と相補的である、実施形態55に記載の方法。
【0268】
実施形態66.一部の実施形態では、本開示は、a)対象の生物試料を得ること、b)逆転写、ポリヌクレオチド増幅、またはシーケンシングから選択される1つまたは複数のプロセスによって、前記生物試料中の配列番号1~配列番号277、または配列番号282と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列のレベルを定量すること、c)コンピューターシステムにおいて、前記核酸配列の前記定量レベルを参照と比較すること、およびd)前記核酸が前記1つまたは複数のプロセスによって検出されるか否かに基づいて前記対象の前記生物試料の健康状態を特徴付けることを含む方法を提供する。
【0269】
実施形態67.前記核酸がデオキシリボ核酸である、実施形態66に記載の方法。
【0270】
実施形態68.前記核酸が無細胞デオキシリボ核酸である、実施形態66に記載の方法。
【0271】
実施形態69.前記核酸配列が、長さが少なくとも400塩基対である、実施形態66に記載の方法。
【0272】
実施形態70.前記核酸配列が、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である、実施形態66に記載の方法。
【0273】
実施形態71.前記健康状態ががんである、実施形態66に記載の方法。
【0274】
実施形態72.前記がんが膵臓がんである、実施形態71に記載の方法。
【0275】
実施形態73.前記がんが骨髄腫である、実施形態71に記載の方法。
【0276】
実施形態74.前記がんが肺がんである、実施形態71に記載の方法。
【0277】
実施形態75.前記生物試料が尿、唾液、または喀痰である、実施形態66に記載の方法。
【0278】
実施形態76.前記生物試料が、組織学用組織である、実施形態66に記載の方法。
【0279】
実施形態77.一部の実施形態では、本開示は、がんを処置する方法であって、ヒトトランスポゾン配列に由来する核酸配列およびカーゴを含む医薬組成物の有効量を、前記がんに罹患している対象に投与することを含み、組成物が対象に投与するために製剤化されている、方法を提供する。
【0280】
実施形態78.がんが肺がんである、実施形態77に記載の方法。
【0281】
実施形態79.がんが多発性骨髄腫である、実施形態77に記載の方法。
【0282】
実施形態80.がんが膵臓がんである、実施形態77に記載の方法。
【0283】
実施形態81.前記単離された核酸配列が、前記細胞に投与されると前記細胞の核膜を通過する、実施形態77に記載の方法。
【0284】
実施形態82.前記ヒトトランスポゾンに由来する前記核酸配列が、配列番号1~配列番号277、または配列番号282のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有する、実施形態77に記載の方法。
【0285】
実施形態83.前記ヒトトランスポゾンに由来する前記核酸配列が、核膜を通過後、前記対象のゲノムにそれ自身をインテグレートする、実施形態77に記載の方法。
【0286】
実施形態84.前記ヒトトランスポゾンに由来する前記核酸配列が、長さが少なくとも400塩基対である、実施形態77に記載の方法。
【0287】
実施形態85.前記ヒトトランスポゾンに由来する前記核酸配列が、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である、実施形態77に記載の方法。
【0288】
実施形態86.前記ヒトトランスポゾンがクラスIIトランスポゾンである、実施形態77に記載の方法。
【0289】
実施形態87.前記ヒトトランスポゾンに由来する前記核酸配列が、前記細胞に対して異種である少なくとも1つの追加の核酸配列を含む核酸構築物の一部である、実施形態77に記載の方法。
【0290】
実施形態88.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、組織選択的プロモーターを含む、実施形態87に記載の方法。
【0291】
実施形態89.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、実施形態87に記載の方法。
【0292】
実施形態90.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、標的ゲノムへの組み込みのためのインテグレーションシグナル配列を含む、実施形態87に記載の方法。
【0293】
実施形態91.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、前記細胞を標的とするためのガイド配列を含む、実施形態87に記載の方法。
【0294】
実施形態92.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、実施形態87に記載の方法。
【0295】
実施形態93.前記ペプチドまたは前記タンパク質が、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパクをコードする、実施形態92に記載の方法。
【0296】
実施形態94.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である、実施形態93に記載の方法。
【0297】
実施形態95.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態93に記載の方法。
【0298】
実施形態96.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、肺がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態93に記載の方法。
【0299】
実施形態97.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである、実施形態93に記載の方法。
【0300】
実施形態98.前記ペプチドまたは前記タンパク質が抗原性タンパク質をコードする、実施形態89に記載の方法。
【0301】
実施形態99.前記抗原性タンパク質が、前記対象に投与されると前記細胞において特異的に翻訳される、実施形態98に記載の方法。
【0302】
実施形態100.前記組成物がカーゴをさらに含む、実施形態77に記載の方法。
【0303】
実施形態101.前記カーゴが、フルオロフォアまたは放射性同位体である、実施形態100に記載の方法。
【0304】
実施形態102.前記カーゴが治療薬である、実施形態100に記載の方法。
【0305】
実施形態103.前記製剤が、ナノ粒子またはカチオン性ポリマーを含む、実施形態77に記載の方法。
【0306】
実施形態104.一部の実施形態では、本開示は、核酸構築物の治療有効量を含む医薬組成物であって、医薬組成物が、a)in vivoでの予め選択された組織への前記核酸構築物の移行を方向付ける第1のデオキシリボ核酸配列、およびb)in vivoでの前記予め選択された組織からの細胞のゲノムへの前記核酸構築物の領域のインテグレーションを方向付ける第2のデオキシリボ核酸配列を含み、医薬組成物が、対象に投与するために製剤化されている、医薬組成物を提供する。
【0307】
実施形態105.前記第1のデオキシリボ核酸配列が、前記予め選択された組織からの前記細胞と同じ細胞型に由来する、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0308】
実施形態106.前記対象がヒトである、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0309】
実施形態107.前記第1のデオキシリボ核酸配列が白血球に移行する、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0310】
実施形態108.前記第1のデオキシリボ核酸配列が膵細胞に移行する、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0311】
実施形態109.前記第1のデオキシリボ核酸配列が肺細胞に移行する、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0312】
実施形態110.前記核酸構築物が、前記対象に投与した場合に、前記予め選択された組織からの前記細胞の核膜を通過する、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0313】
実施形態111.前記第1のデオキシリボ核酸配列が、配列番号203~配列番号277および配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の同一性を有する、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0314】
実施形態112.前記第1のデオキシリボ核酸配列が、長さが少なくとも400塩基対である、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0315】
実施形態113.前記第1のデオキシリボ核酸配列が、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0316】
実施形態114.前記第2のデオキシリボ核酸配列が、トランスポゾン配列と少なくとも90%の相同性を有する、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0317】
実施形態115.前記トランスポゾンがクラスIIトランスポゾンである、実施形態114に記載の医薬組成物。
【0318】
実施形態116.前記クラスIIトランスポゾンが、遺伝子の水平伝播を介して前記予め選択された組織からの前記細胞の前記ゲノムにそれ自身をインテグレートする、実施形態105に記載の医薬組成物。
【0319】
実施形態117.前記核酸構築物が、少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列を含む、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0320】
実施形態118.前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列が、組織選択的プロモーターを含む、実施形態117に記載の医薬組成物。
【0321】
実施形態119.前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列が、前記ゲノムへの組み込みのための第2のインテグレーションシグナルを含む、実施形態117に記載の医薬組成物。
【0322】
実施形態120.前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、実施形態117に記載の医薬組成物。
【0323】
実施形態121.前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列が、前記ペプチドまたはタンパク質が前記予め選択された組織からの前記細胞に限って発現されることを確実にする配列を含む、実施形態120に記載の医薬組成物。
【0324】
実施形態122.前記ペプチドまたは前記タンパク質が、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質をコードする、実施形態120に記載の医薬組成物。
【0325】
実施形態123.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である、実施形態122に記載の医薬組成物。
【0326】
実施形態124.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態122に記載の医薬組成物。
【0327】
実施形態125.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、肺がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態122に記載の医薬組成物。
【0328】
実施形態126.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである、実施形態122に記載の医薬組成物。
【0329】
実施形態127.前記ペプチドまたは前記タンパク質が抗原性タンパク質をコードする、実施形態120に記載の医薬組成物。
【0330】
実施形態128.前記抗原性タンパク質が、前記対象に投与されると前記細胞において特異的に翻訳される、実施形態127に記載の医薬組成物。
【0331】
実施形態129.カーゴをさらに含む、実施形態104に記載の医薬組成物。
【0332】
実施形態130.前記カーゴが、フルオロフォアまたは放射性同位体である、実施形態127に記載の医薬組成物。
【0333】
実施形態131.前記カーゴが治療薬である、実施形態127に記載の医薬組成物。
【0334】
実施形態132.前記カーゴが前記核酸構築物に共有結合されている、実施形態127に記載の医薬組成物。
【0335】
実施形態133.前記製剤が、ナノ粒子またはカチオン性ポリマーを含む、実施形態127に記載の医薬組成物。
【0336】
実施形態134.一部の実施形態では、本開示は、配列番号203~配列番号277および配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の同一性を有する第1の配列、ならびに追加の核酸配列を含むベクターを提供する。
【0337】
実施形態135.前記追加の核酸配列が、トランスポゾン配列と少なくとも90%の相同性を有する、実施形態134に記載のベクター。
【0338】
実施形態136.前記トランスポゾンがクラスIIトランスポゾンである、実施形態135に記載のベクター。
【0339】
実施形態137.前記クラスIIトランスポゾンが、遺伝子の水平伝播を介して前記予め選択された組織からの前記細胞の前記ゲノムにそれ自身をインテグレートする、実施形態136に記載のベクター。
【0340】
実施形態138.少なくとも2つの追加の核酸配列を含む、実施形態134に記載のベクター。
【0341】
実施形態139.前記少なくとも2つの追加の核酸配列が、組織選択的プロモーターおよびトランスポゾン配列を含む、実施形態138に記載のベクター。
【0342】
実施形態140.前記少なくとも2つの追加の核酸配列が、少なくとも2つのトランスポゾン配列を含む、実施形態138に記載のベクター。
【0343】
実施形態141.前記追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、実施形態134に記載のベクター。
【0344】
実施形態142.前記ペプチドまたは前記タンパク質が、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質である、実施形態141に記載のベクター。
【0345】
実施形態143.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である、実施形態142に記載のベクター。
【0346】
実施形態144.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態142に記載のベクター。
【0347】
実施形態145.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、肺がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態142に記載のベクター。
【0348】
実施形態146.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである、実施形態142に記載のベクター。
【0349】
実施形態146.カーゴに共有結合により連結されている、実施形態134に記載のベクター。
【0350】
実施形態147.前記カーゴが、フルオロフォアまたは放射性同位体である、実施形態146に記載のベクター。
【0351】
実施形態148.前記カーゴが治療薬である、実施形態146に記載のベクター。
【0352】
実施形態149.一部の実施形態では、本開示は、実施形態134に記載の2つまたはそれより多くのベクターのライブラリを提供する。
【0353】
実施形態150.一部の実施形態では、本開示は、がんを処置する方法であって、前記がんに罹患している対象の組織へのカーゴの移行を方向付ける核酸配列を含む核酸構築物の有効量を投与することを含み、組成物が対象に投与するために製剤化されている、方法を提供する。
【0354】
実施形態151.前記がんが肺がんである、実施形態150に記載の方法。
【0355】
実施形態152.前記がんが多発性骨髄腫である、実施形態150に記載の方法。
【0356】
実施形態153.前記がんが膵臓がんである、実施形態150に記載の方法。
【0357】
実施形態154.前記核酸構築物が、前記対象に投与されると、前記組織細胞の細胞における核膜を通過する、実施形態150に記載の方法。
【0358】
実施形態155.前記組織への前記カーゴの移行を方向付ける前記核酸配列が、配列番号203~配列番号277、および配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の同一性を有する、実施形態150に記載の方法。
【0359】
実施形態155.前記核酸構築物が、前記組織の細胞のゲノムへのインテグレーションのためにトランスポゾンを含む、実施形態150に記載の方法。
【0360】
実施形態156.前記トランスポゾンが、長さが少なくとも400塩基対である、実施形態155に記載の方法。
【0361】
実施形態157.前記トランスポゾンが、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である、実施形態155に記載の方法。
【0362】
実施形態158.前記トランスポゾンがクラスIIトランスポゾンである、実施形態155に記載の方法。
【0363】
実施形態159.前記核酸構築物が、前記組織の細胞に対して異種である少なくとも1つの追加の核酸配列を含む、実施形態155に記載の方法。
【0364】
実施形態160.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が組織選択的プロモーターを含む、実施形態159に記載の方法。
【0365】
実施形態161.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、実施形態159に記載の方法。
【0366】
実施形態162.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、標的ゲノムへの組み込みのためのインテグレーションシグナルを含む、実施形態159に記載の方法。
【0367】
実施形態163.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、前記細胞を標的とするためのガイド配列を含む、実施形態159に記載の方法。
【0368】
実施形態164.前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、実施形態159に記載の方法。
【0369】
実施形態165.前記ペプチドまたは前記タンパク質が、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質をコードする、実施形態164に記載の方法。
【0370】
実施形態166.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である、実施形態165に記載の方法。
【0371】
実施形態167.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態165に記載の方法。
【0372】
実施形態168.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、肺がん腫瘍抑制遺伝子である、実施形態165に記載の方法。
【0373】
実施形態169.前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである、実施形態165に記載の方法。
【0374】
実施形態170.前記ペプチドまたは前記タンパク質が抗原性タンパク質をコードする、実施形態164に記載の方法。
【0375】
実施形態171.前記抗原性タンパク質が、前記対象に投与されると、前記組織の細胞において特異的に翻訳される、実施形態170に記載の方法。
【0376】
実施形態172.前記核酸構築物が、フルオロフォアまたは放射性同位体に共有結合により連結されている、実施形態150に記載の方法。
【0377】
実施形態173.前記核酸構築物が、治療薬に共有結合により連結されている、実施形態150に記載の方法。
【0378】
実施形態174.一部の実施形態では、本開示は、実質的に類似の起源の組織または細胞へと移行する核酸配列を識別する方法であって、(a)循環する腫瘍核酸を生物試料から単離して、それによって単離された腫瘍核酸のセットを生成すること、(b)前記単離された循環する腫瘍核酸のセットにバーコードを付与して、それによって複数のバーコード化腫瘍核酸を提供すること、(c)組織向性配列のインテグレーションを可能にする条件下で細胞の集団に、複数のバーコード化腫瘍核酸からの少なくとも1つのバーコード化腫瘍核酸を添加し、それによって培養細胞集団を生成すること、(d)培養細胞集団をシーケンシングして、それによって複数のシーケンシングリードを生成すること、(e)シーケンシングリードをコンピューターによって解析し、バーコードを含む複数のシーケンシングリードから少なくとも1つのシーケンシングリードの存在または非存在を識別すること、および(f)バーコードを含むシーケンシングリードを解析して、培養細胞集団には存在するが、細胞集団には存在しない配列の存在または非存在を識別し、それによって目的の組織または細胞へと移行する核酸配列を識別することを含む、方法を提供する。
【実施例0379】
以下の実施例は、本開示のある特定の態様を詳しく記載するために含められ、本開示の範囲を制限するために使用されるものではない。
【0380】
(実施例1)
多発性骨髄腫(MM)、肺がん、および膵臓がんを有する患者の血清中の組織起源を反映するctDNAの識別
【0381】
ウイルス抽出DNAキット(QIAamp UltraSens Virus Kit、Quiagen、Germantown、MD)の後にローリングサークル増幅(Genomiphi V2,GE Healthcare)を使用して、がん患者の循環中に見出される大きいDNA断片(およそ10kBより大きい)を抽出した。多発性骨髄腫(MM)を有する患者2人からのCD138(+)選別細胞、末梢血白血球(PBL)細胞、および血清試料の突然変異全体像の配列を、診断時および4サイクルの処置後に再度比較した。
【0382】
試料をさらに処理してシーケンシングした。簡単に説明すると、MMを有する患者は、非MM患者(すなわち、肺がんまたは膵臓がん)からの対照試料と比較して、診断試料中のctDNAをより高いレベルで有した(
図1)。全ての試料に対して約50×10
6個のリード/エクソンのカバレッジの平均深度で、ベースコールと各々の位置での正規化配列深度との対比較を実施した。varscanアルゴリズム(http://dkoboldt.github.io/varscan)を使用して、腫瘍またはPBLにおいてctDNAあたり平均で23,146個のコード単一ヌクレオチドバリアント(SNV)および24,000個のコードSNVが識別され、このようにctDNAを、全エクソームの突然変異解析の良好な起源として特徴付けた。さらに、増幅したctDNAと、腫瘍またはPBLからの非増幅DNAのSNVの数の比較によって、本発明者らは、本発明者らの増幅方法によって導入された(増幅エラー)のはSNVの約0.03%であったことを決定することができた。
【0383】
次に、ctDNAにおける体細胞突然変異の検出レベル(LOD)を上昇させると、体細胞突然変異の89.8%が、CD138(+)細胞に由来する診断DNAに存在し、7%が生殖系列突然変異であり、3%はctDNAにおいて見出されない突然変異であることが見出された。
【0384】
(実施例2)
細胞認識およびゲノムインテグレーションシグナルの識別
【0385】
本実施例は、細胞および/または組織認識(Zipコード)ならびに細胞の核への移行時の細胞のゲノムへの核酸のインテグレーションを可能にする核酸配列の識別を実証する(例えば、
図6~
図7を参照されたい)。
【0386】
細胞認識シグナル(CRS)およびインテグレーションシグナル(IS)を識別するプロセスを、並行実験で実施した。第1の実験(A)は、循環する腫瘍DNA(ctDNA)、例えば実施例1に記載される循環する腫瘍DNAの3’および5’末端に位置するDNAの配列を識別することに重点を置いた。第2の実験(B)は、標的細胞ゲノムへの組み込みを生じる、および標的細胞ゲノムにインテグレートすることが可能であるDNAを識別することに重点を置いた。
【0387】
A.ctDNAの3’および5’末端に位置するDNAの配列の識別
【0388】
試料の処理。ctDNAを、多発性骨髄腫患者6人、膵臓がん患者1人、および対照として健康なボランティア1人から抽出した。次に、Abm DNAライブラリ調製キットを使用して、ctDNAの両端を修復し、「A」テーリングを実施した。このプロセスの終了後、特異的PACBio配列バーコード(GCGCTCTGTGTGCT(配列番号279))を、核酸配列のいずれかの末端にライゲーションした。これらのステップの後、試料を、Illuminaアダプターライゲーションを使用するライブラリ調製にかけた。全ゲノムシーケンシング(WGS)を、Illumina MiSeq機器を使用して1億コピーの深度カバレッジで実施した。
【0389】
WGSデータの解析。ヒトミトコンドリアゲノムに対して整列した全てのリードを除去した。リードをサブサンプリングした後、Spadesを使用してアセンブルし、それによって全体で1700万個のコンティグを得た。アセンブルしたコンティグを、CD-HITを使用して99%同一性でクラスター化した。全ての多発性骨髄腫試料を含有するが、対照も膵臓がん試料も含有しないクラスターの重心を選択することによって、3’または5’末端のいずれかにPacBioバーコードも有する残りのコンティグは180個となった。
【0390】
B.細胞および核膜を通過することが可能で細胞ゲノムにインテグレートすることが可能であるDNA配列の識別。多発性骨髄腫細胞系からの細胞、多発性骨髄腫患者(772)から抽出したドナーctDNA、および抽出したctDNAと同時培養した多発性骨髄腫細胞系からの細胞(772)を使用して全ゲノムシークエンシングを実施した。Kmerを、それらの3つの細胞腫からのfastq file中の全てのリードに関して生成した。次に、772の同時培養物およびドナーctDNA試料に存在するが、多発性骨髄腫細胞系の形質細胞試料には存在しないk-merを含有するもの(bowtie2を介してマッピングする)を維持することによって、コンティグをさらにフィルタリングした。これらのステップ後、コンティグの数は75に低減された。
【0391】
細胞認識シグナルの識別
【0392】
この目的のため、実験(A)で見出されたリードを、Burrows-Wheeler Aligner(BWA)を使用して、実験(B)において識別された75個のコンティグと整列させ、コールされたバリアントを、samtools/bcftoolsを使用して識別した。次に、コールされたバリアントに基づいて、コンセンサス配列(コンティグ)を各試料についてbcftoolsを使用して識別し、対照または膵臓がんと比較した場合に多発性骨髄腫に対してのみ特異的である多様性の領域を発見した。骨髄腫において突然変異していないが、膵臓がんまたは対照ctDNAにおいて高度に突然変異している領域を、可能性がある細胞認識シグナルである目的の領域としてラベルした。
【0393】
(実施例3)
循環する腫瘍DNAは細胞膜および核膜を通過することができる
【0394】
MM、肺がん、または膵臓がんを有する患者からのctDNAを、CX-ローダミンによって共有結合により標識した。培地に100ng ctDNAをロードした後、細胞を
図3Bに示す異なる時点で収集した。MMでは、ctDNAの出現が細胞質において導入後30分もの早期に観察され、核局在が24時間後に観察された。膵臓がん細胞系の場合、ctDNAの細胞質内部移行は15分以内、核局在は50分以内に観察された(
図2A~2Cおよび
図3A~3B)。興味深いことに、本発明者らの3Dおよび単一面ビデオは、細胞内部移行後にctDNAがGFP(+)細胞膜に取り囲まれることを明白にし、ctDNA内部移行がエンドサイトーシスによって媒介されることを示唆する。
【0395】
(実施例4)
ctDNAはDNA損傷を誘導する
【0396】
MM細胞およびその対応するctDNAを評価し、ctDNAが、あらゆる細胞の核膜を通過することが可能ではないことが観察された。一部の例では、核の断片化が観察され、細胞質または核に導入されたctDNAの負荷量が、標的細胞の運命を決定することができることを示唆した。興味深いことに、二本鎖DNA(dsDNA)切断が識別され、これらの細胞における陽性のH2AX病巣によって確認された。
【0397】
(実施例5)
ctDNAは、その細胞起源と類似である細胞のみを標的とする
【0398】
本実施例は、標的細胞と同じ起源からのctDNAが標的細胞の核膜に急速に侵入するが、同じctDNAが異なる起源からの細胞(例えば、細胞型または組織)の核には侵入しないことを実証する。
【0399】
MM、肺がん、または膵臓がんを有する患者から得た標識化ctDNAを、マッチするがん細胞系(すなわち、MM、肺がん、または膵臓がん細胞系)の培養培地に添加した。以下の実施例に示すように、ctDNAは導入後24時間で核において検出された。
【0400】
しかし、ctDNAを、それぞれのctDNAが由来するがんの型とは異なる細胞系に添加すると、ctDNAは、細胞質および核に移行することができなかったことが見出された。このことは、細胞の認識においてある程度の特異性が存在することを示唆している。さらに、およびいかなる理論にも拘束されないが、血清からのctDNA抽出は非常にストリンジェントな手順であることから、ctDNAを有する細胞膜(エクソソーム)またはタンパク質の断片ではなくctDNAの配列または固有の改変(例えば、DNAメチル化パターン)が、細胞認識を駆動し得ると仮定された。
【0401】
このように、これらの結果は、MM細胞からのctDNAがMM細胞の核に検出されたが、MM由来ctDNAは、肺がんまたは膵臓がん細胞の核内に局在しなかったことを実証している。同様に、肺がん患者(腺癌)からのctDNAはMM細胞の核に検出されたが、腺癌由来ctDNAはMMまたは膵臓がん細胞には移行しなかったかまたは導入されなかったことが示された。最後に、膵臓がん患者からのctDNAは、膵臓がん細胞の細胞質および核に限って導入されたが、肺がんまたは多発性骨髄腫細胞系には導入されなかったことが示された(例えば、
図1、
図4を参照されたい)。
【0402】
追加の実験では、腫瘍由来ctDNAは腫瘍特異的に腫瘍細胞にホーミングして、それぞれのctDNAが由来する腫瘍細胞のみが標的にされることが実証された。
図16Aは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍細胞DNA(ctDNA)が、細胞および組織特異的にMM細胞にホーミングすることを示している。赤色で強調した領域は、ローダミン標識化DNAを示し、青色の領域はDAPI染色を示す。
図16Bは、肺がん(LC)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、細胞および組織特異的にLC細胞にホーミングすることを示している。赤色で強調した領域は、ローダミン標識化DNAを示し、青色の領域はDAPI染色を示す。
図16Cは、大腸がん(CC)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、細胞および組織特異的にCC細胞にホーミングすることを示している。赤色で強調した領域は、ローダミン標識化DNAを示し、青色の領域はDAPI染色を示す。
図16Dは、大腸がん(PC)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、細胞および組織特異的にPC細胞にホーミングすることを示している。赤色で強調した領域は、ローダミン標識化DNAを示し、青色の領域はDAPI染色を示す。
【0403】
これらの結果は、腫瘍由来ctDNAが腫瘍細胞に腫瘍特異的にホーミングして、それぞれのctDNAが由来する腫瘍細胞のみが標的にされるという驚くべき知見を実証している。このように、本明細書に記載されるZipコード配列を、細胞、組織、および/または臓器特異的標的化構築物として使用して、治療用および/または診断用カーゴを細胞に非常に特異的に送達することができる。
Zipコード配列の細胞特異的取り込みは、競合するctDNAの存在下で影響を受けない
【0404】
第1の腫瘍型のctDNAに由来するZipコード配列の細胞(例えば、起源の細胞)特異的取り込みが、第2の腫瘍型に由来するctDNAの存在下で影響を受けないことを実証する実験を設計した。
【0405】
図17Aは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、競合する大腸がん(CC)ctDNA(緑色で示す)の存在下であっても、MM細胞に細胞および組織特異的に(MM ctDNAを赤色で示す)ホーミングすることを示す。MM ctDNAのみがMM細胞において観察され、CC ctDNAは観察されなかった。
図17Bは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)が、競合する膵臓がん(PC)ctDNA(緑色で示す)の存在下であっても、MM細胞に細胞および組織特異的に(MM ctDNAを赤色で示す)ホーミングすることを示す。MM ctDNAのみがMM細胞において観察され、PC ctDNAは観察されなかった。
カーゴをctDNAにコンジュゲートしても、細胞の取り込みおよび核局在に影響を及ぼさない
【0406】
カーゴ(例えば、蛍光色素などの分子)のctDNAへのコンジュゲーションが、ctDNA分子がその起源の腫瘍細胞に局在化してそのような細胞の核にさらに局在化する能力に影響を及ぼさないことを実証する実験を設計した。
【0407】
図17Cは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)を色素ローダミンで標識しても、MM由来ctDNAがMM細胞に細胞および組織特異的に蓄積する能力に影響を及ぼさなかったことを示す(MM ctDNA-ローダミン構築物を赤色で示す)。
図17Dは、多発性骨髄腫(MM)由来の循環する腫瘍DNA(ctDNA)を、色素Cy5で標識しても、MM由来ctDNAがMM細胞に細胞および組織特異的に蓄積する能力に影響を及ぼさなかったことを示す(MM ctDNA-Cy5構築物を緑色で示す)。
【0408】
(実施例6)
ctDNAは形質細胞の染色体にインテグレートする
【0409】
第1のMM患者からのローダミン標識化ctDNAを、異なるMM患者に由来する形質細胞の培養物に入れた。24時間後、細胞の細胞周期をカリケアミシンによって1時間停止させ、染色体スプレッドを実施した。次に、細胞DNAをDAPI染色によって標識した。
図5Aに示すように、ctDNA標識化バンドは染色体の複数の領域、中期あたり平均で5つのインテグレーション部位で組み込まれる。
【0410】
ctDNAの標的細胞ゲノムへのインテグレーションは、非相同末端結合修復システムのメンバーの存在を必要とし得、非相同末端結合修復を使用するトランスポゾン媒介性機構を介して機能し得る。
【0411】
さらなる評価のために、MM細胞および肺がん細胞系からの染色体スプレッドを、MM患者から得て共有結合により標識したctDNAと共に培養した。結果は、ローダミンバンドが形質細胞の染色体に組み込まれたことを示した。標識化ctDNAの組み込みは、DNAPKcs(DNA-PKCS阻害剤I、200nM)、ATM(KU-55933)、またはManase SETMAR/インテグラーゼ(ラルテグラビル、30nM)阻害剤を使用した場合には有意に低減されたが、ポリADPリボースポリメラーゼ阻害剤(PARP、NU1025、200nM)を使用した場合には低減は弱かった(
図5B)。加えて、
図5Cは、ctDNAの染色体インテグレーションが非相同末端結合(NHEJ)およびトランスポザーゼに依存し得ることを示している。標識化ctDNAの組み込みは、DNAPKcs、ATM、PARP-1、およびインテグラーゼ(ラルテグラビル)の阻害剤が存在する場合には、有意に低減された。PARP-1阻害では、有意ではない低減が観察された。
【0412】
ctDNAに由来する配列番号99を有するコンティグ配列は、ctDNAおよび形質細胞の同時培養の間に形質細胞のゲノムに挿入されることが意外にも見出された。
【0413】
例えば、
図18は、MM ctDNAがMM細胞の染色体DNAにインテグレートされたことを示す(MM ctDNAを赤色の点で示す)。MM ctDNAの染色体インテグレーションを、本研究においてシーケンシングを使用して検証した。
図19は、例えば腫瘍染色体にインテグレートされたctDNAとctDNA単独からの配列アライメントマッチを実証することによる染色体インテグレーションの検証を概略的に示している。
【0414】
(実施例7)
ctDNAの5’および3’末端はしばしば転位因子を含有し、そのような転位因子(ZCS)からの領域は1つまたは複数の細胞集団を特異的に標的とする
【0415】
本実施例は、ctDNAの5’および3’末端がしばしば、アダプター(PACbio)をctDNAの両方の末端に結合させて、5’および3’末端を標識することによって転位因子(TE)を含有し、それによってシーケンシングの際にctDNAの開始および終了の認識を可能にすることを示している。次いで、ライゲーションを行った後、通常のIlluminaベースのライブラリ調製方法論を行った。
【0416】
PACbioバーコードを、MM患者4人(MM 2025、MM 910、MM 2024、およびMM 772)、膵臓がん患者1人、および対照(健康なボランティア)から得たctDNAの5’および3’末端にライゲーションした。PACbio標識化ctDNAに、Illuminaライブラリ調製キット(例えば、Illumina TruSeq Stranded DNAライブラリ調製キット)を使用して標準的なライブラリ調製を行った。目的の配列を、PACbioバーコードの存在に関して検索することによって識別した。配列の識別および選別後、de novoアセンブリを実施した。次に、連続する(すなわち、コンティグ)配列を、試料間で比較し、99%より高い配列類似性で全てのMM試料に共通であった一群のコンティグを識別した。
図8A~8Bは、各試料のコンティグ上でコールされたバリアントに由来するコンセンサス配列を使用するクラスタリング解析の結果を示す。MM試料は、対照または膵臓がんと比較して共にクラスター化し、MMコンティグの構造が互いに非常に類似であり、MM細胞に限って存在することを示唆した。循環するDNAの抽出および複数回の増幅方法を実施することによって、骨髄腫のような疾患では、循環する腫瘍DNA(ctDNA)が腫瘍ゲノムの97%を反映することも示された。
【0417】
全てのコンティグのトランスポゾンの存在、位置、および型を分析および識別するためのGiri repbaseソフトウェア。分析結果は、全てのコンティグが高い含有量のトランスポゾンを有することを実証した。興味深いことに、コンティグの大多数は、トランスポゾンの位置および型を示す指標となるコンティグにおいて示されるように、配列の最末端でトランスポゾンを有する(
図6)。
【0418】
(実施例8)
ctDNA配列は、異種移植片モデルにおいて腫瘍細胞を特異的に標的化し、オフターゲット組織での取り込みを回避する
【0419】
本実施例は、がん由来のZCSを含むヒト細胞標的化核酸配列が、in vivoで同じ起源の腫瘍細胞を特異的に標的とするが、オフターゲット組織の取り込みは非常に低いかまたは示さないことを実証する。
【0420】
ctDNAが特異的標的組織をin vivoで認識する能力を評価するために、ヒト由来膵細胞系MT5を使用する異種移植片マウスモデルを開発した。具体的には、細胞100万個を、免疫欠損BNXマウスの両側の背側に注射した。腫瘍体積がおよそ0.5cmに達すると、マウスを特定の実験アームに割付した。コホート#1および#2のマウスにローダミン標識化膵臓がん患者由来ctDNAを尾静脈注射した。腫瘍を注射の24および48時間後にそれぞれ収集した。コホート#3には、腫瘍収集の24時間前に腫瘍にローダミン-ctDNA構築物の直接注射を行った。コホート#4は、陰性対照であり、腫瘍収集の24時間前にPBSの尾注射を行った。収集時に、腫瘍および選択した臓器(肝臓、肺、および脾臓)を単離し、凍結切片を行った。組織スライドをパラホルムアルデヒド(4v/v%)によって固定し、その後4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。
【0421】
共焦点顕微鏡法は、ローダミン標識化ctDNA構築物の様々なレベルが腫瘍に存在するが他の組織には存在しなかったことを実証した。収集の48時間前に注射した場合(
図9C、
図10C)、腫瘍細胞は、PBSのみを投与した対照マウス(
図9D、
図10A)と比較して、尾静脈注射を介して(
図9B、
図10B)、および直接腫瘍注射(
図9A)を介して投与した24時間後に収集した腫瘍細胞と比較して標識化ctDNAのかなり高い濃度を示した。同様に、ローダミン-ctDNA構築物の核局在は、投与の24時間後に収集した腫瘍(
図9A~
図9B)と比較して、注射の48時間後に収集した腫瘍(
図9C)では有意に高かった。肝臓、肺、または脾臓などの潜在的排泄臓器におけるローダミン-ctDNA取り込みの評価では、それらの臓器におけるローダミン-ctDNA構築物の検出可能な取り込みを示さなかった。
【0422】
このように、これらの結果は、同じ起源の腫瘍組織(この場合、膵臓がん)に関してctDNAの高い特異性を実証する。in vivoモデルは、膵臓がん患者から得たctDNAが、肝臓または他の細網内皮系を含む他の臓器におけるいかなる取り込みも示すことなく、膵臓がん細胞を排他的に標的とすることを示している。したがって、ctDNAのZipコード配列は、同じ起源の組織の非常に特異的な標的化を可能にし得る。
【0423】
(実施例9)
複数の疾患を処置およびモニタリングするためのZIPコード遺伝子送達の使用
【0424】
本実施例は、複数の疾患を処置およびモニタリングするためにZIPコード遺伝子送達を使用することが、ウイルスベクター送達システムを用いる既存の技術に優るどのように有意な利点を提供し得るかを実証する。
【0425】
循環するDNA(cDNA)が、細胞間の遺伝情報の交換を可能にすることはこれまでに示されている。上記の以前の実施例に示すように、cDNAはさらに、標的細胞の核に侵入することが可能で、染色体にインテグレートすることが実証された(例えば、
図11を参照されたい)。これは、脂質膜内包(例えば、エクソソーム、マイクロ小胞)を必要とすることなく起こり得る。その上、cDNA細胞標的化が同じ起源の細胞に関して選択的であることは、上記で示された。例えば、肺を起源とするcDNAは、肺組織からの(またはそれに由来する)細胞の核膜のみに侵入するが、他の組織型からの細胞の核膜には侵入しないことが示された。その上、cDNAは、二本鎖DNA切断を引き起こすことによって核への侵入時にゲノム不安定性を生じ、このように細胞ゲノムへのそのインテグレーションを促進する。
【0426】
オフターゲット突然変異誘発のリスクなどの、従来のウイルスベクターシステムを遺伝子送達ビヒクルとして使用する欠点を考慮すると、新たに識別された組織/細胞特異的認識配列(すなわち、Zipコード配列)を使用する本開示の新規アプローチは、組織標的化および/またはカーゴ送達の際のオフターゲット効果の有意な低減を提供し得る。
【0427】
(実施例10)
疾患診断および処置モニタリングのためのZipコード配列の使用
【0428】
本開示の細胞および組織特異的核酸配列(すなわち、ZCS)は、疾患の診断および病期分類において、ならびに治療介入に対する応答をモニタリングするために有用であり得る。例えば、腫瘍を有する対象から抽出したctDNAは、疾患の病期および重症度のバイオマーカーとして役立ち得る。
【0429】
対象から抽出したctDNAを、細胞および組織特異的認識シグナルおよびインテグレーションシグナルに関して分析する。検出されたこれらの認識およびインテグレーションシグナルを含む核酸配列の血清1mLあたりの量を使用して、疾患の病期を評価することができる。例えば、ctDNA由来ZCSの濃度は、転移性疾患の病期に関連し得る。
【0430】
さらに、対象の血液において識別された細胞型および組織型特異的認識シグナルならびにその濃度は、原発腫瘍の組織起源および可能性がある転移部位または転移ニッチ形成に関する情報を提供することができる。
【0431】
投与されると、標的組織の細胞における本明細書に記載される核酸構築物の取り込みが、対象の血液試料のPCRを介してモニタリングされる。循環する核酸構築物の低減は、標的組織におけるその取り込みの尺度である。あるいは、および上記のように、放射標識化核酸構築物の使用は、全身投与後の構築物のin vivo追跡(例えば、目的の標的組織における取り込み)に関する非侵襲性のアプローチを提供する。
【0432】
(実施例11)
治療薬としての細胞特異的Zipコード配列
【0433】
本実施例は、本開示のZCSを、治療的および/または診断用カーゴ(例えば、治療タンパク質またはポリペプチド、低分子治療薬、放射性核種)の細胞および/または組織特異的送達のために使用することができることを実証する。具体的には、本実施例は、治療タンパク質をコードする目的の遺伝子の細胞特異的送達およびインテグレーションを実証する。
【0434】
細胞特異的認識配列およびゲノムインテグレーション配列は、実施例2において上記のように識別される。治療タンパク質(例えば、表面抗原CD19)をコードする目的の遺伝子は、3’および5’末端でインテグレーションシグナル配列に隣接し、次にこれに細胞認識配列(例えば、
図12を参照されたい)が隣接して、治療核酸構築物を生成することができる。
【0435】
標的化およびインテグレーションシグナルを識別するために使用したctDNAと同じ組織型または起源の細胞を、治療核酸構築物と共にインキュベートする。CD19コードトランスジーンの場合では、細胞を収集し、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用してCD19表面発現に関して分析する。細胞をまた、抗CD19抗体によって染色し、細胞あたりの発現密度を決定し、これは、核酸構築物のインテグレーション効率の尺度として間接的に役立つ。
【0436】
in vitro結果で示された核酸構築物の成績に基づき、核酸送達システムのいくつかのパラメーターを、様々な認識およびインテグレーション配列によるin vitro実験を数ラウンド実施することによって、必要に応じて増強された細胞特異的標的化およびタンパク質発現のためのガイド配列を使用することによって、最適化することができる。
【0437】
(実施例12)
腫瘍細胞特異的Zipコード配列は、腫瘍に自殺遺伝子を送達し、腫瘍退縮を誘導する
【0438】
本実施例は、本開示の腫瘍特異的ZCSが、ほぼ排他的に腫瘍細胞を標的として蓄積することを実証する。その上、そのような腫瘍特異的ZCSは、自殺遺伝子を腫瘍に送達し、腫瘍サイズの有意な低減を誘導する。本実施例は、多発性骨髄腫(MM)ZIPコード配列が、多発性骨髄腫異種移植片モデルにおいて自殺遺伝子を腫瘍細胞に送達し、腫瘍の退縮を誘導することをin vivoで実証する。
【0439】
本実施例では、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(例えば、HSV-TK)を、がん治療の自殺遺伝子として使用した。ヒト単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ1型遺伝子(例えば、HSVtk)を、哺乳動物腫瘍細胞における条件的致死マーカーとして使用した。酵素であるチミジンキナーゼ-1に転写および翻訳されると、この酵素は、ヌクレオシドアナログ(例えば、ガンシクロビル、ゲムシタビン等)を毒性のDNA複製阻害剤へと変換することができる。このように、本明細書に提示される研究では、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を、本明細書に開示される腫瘍特異的ZCSを使用して腫瘍を有するマウスのがん細胞に移入した後に、ガンシクロビル(GCV)による処置を行った。
腫瘍異種移植片モデル
【0440】
ヒト由来多発性骨髄腫細胞系(例えばMM1s)の細胞およそ500万個をBNXマウス2匹の背側に注射することによって、腫瘍を誘導した。腫瘍体積が2cmに達すると、マウスに、CMV-HSV-TK含有核酸断片にライゲーションしたMM zipコード配列(配列番号282)2μgを注射した。注射の48時間後、両方のマウスを、ガンシクロビル(100μg/kg)によって毎日腹腔内処置した。腫瘍測定は、電子キャリパーを使用して毎日実施した。腫瘍体積は、腫瘍の長径および短径ならびに腫瘍の幅の測定に基づいて計算した(例えば、
図13を参照されたい)。
結果
【0441】
腫瘍測定は、両方の動物において腫瘍サイズの一定の低減を実証した。マウス#1は、不明原因により処置の4日後に死亡した。
図13Aおよび
図13Bは、ガンシクロビル処置を5日間行った後にHSV-TK遺伝子送達によって処置したマウス#2において観察された腫瘍体積の変化を示す。
図13Cおよび以下の表1は、ガンシクロビルによる処置と組み合わせて遺伝子治療を行った両方の動物において測定された腫瘍体積の変化を示す。
表1-治療遺伝子送達実験における腫瘍体積の測定
【表1】
【0442】
これらの結果から、本開示に提供したZipコード配列の特異性が明らかに検証された。MM標的化Zipコード配列は、MM腫瘍を標的化し、in vivoモデルにおいて機能的トランスジーンを送達した。その後に投与したヌクレオシドアナログであるガンシクロビルとの併用療法は、腫瘍サイズの有意な低減を明らかに実証し、ZIPコード配列が自殺遺伝子を腫瘍細胞に送達したことを示した。
【0443】
(実施例13)
多発性骨髄腫(MM)特異的Zipコード配列は、MM腫瘍細胞に対して非常に特異的である
【0444】
本実施例は、本開示の多発性骨髄腫(MM)特異的ZCSが、腫瘍を有するマウスの他の組織と比較して、腫瘍細胞をほぼ排他的に標的化し、蓄積することを実証する。
【0445】
腫瘍異種移植片を誘導し、腫瘍を有するマウスを、実施例12に上記のように遺伝子治療-ヌクレオシドアナログの組合せを使用して処置した。
【0446】
動物を安楽死させ、腫瘍、肺、および他の臓器を含む臓器を得た。各臓器からの組織試料を、PCR分析のために調製し、各組織において発現された単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ-1(HSV-TK-1)のレベルを評価した。
【0447】
図14Aおよび
図14Bは、MM Zipコード-HSV-TKによる遺伝子治療後で、ガンシクロビル(100μg/kg)による処置の48時間後、5日後のマウス#2からの様々な組織のPCR結果を示す。PCR結果は、腫瘍細胞および腫瘍組織に限って単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ-1に対応するバンドを示すが、本研究において分析した他の臓器のいずれにおいてもバンドを示さないことを明らかに示し、本明細書に開示されるZipコード配列および関連構築物の高い細胞および組織特異性を実証している。数字は、(1)分子量ラダー、(2)腫瘍、(3)肺、(4)脾臓、(5)肝臓、(6)膵臓、(7)脳、および(8)腎臓を示す。
【0448】
これらのデータは、本開示のzipコード配列の高い細胞および組織特異性を実証する。それぞれの細胞および/または組織起源に対して観察された高い特異性により、本明細書に記載されるzipコード核酸配列を使用して改善された遺伝子送達ならびに遺伝子治療および診断方法論が可能となり得る。
【0449】
(実施例14)
多発性骨髄腫(MM)特異的Zipコード配列は、MM細胞にトランスジーンを送達し、その後のトランスジーン発現を可能にする
【0450】
本実施例は、本明細書に記載の多発性骨髄腫(MM)特異的Zipコード配列が、トランスジーンをMM細胞に送達し、その後のトランスジーン発現を可能にすることを実証する。
【0451】
図20は、本開示のMM特異的Zipコード配列構築物を概略的に示している。そのような構築物は、いずれかの側に翻訳エレメント(例えば、IRES)、GFPコード配列、プロモーター、ルシフェラーゼコード配列、ならびに構築物のルシフェラーゼコード部分および/またはIRESコード部分に結合した1つまたは複数のローダミン色素に隣接する2つのZipコード配列(例えば、長さ約300bp)を含み、構築物(またはその断片)のin vitroおよび/またはin vivoでの移動を追跡するために使用した。
【0452】
図20に記載されるMM特異的Zipコード構築物を、それがトランスジーンをMM腫瘍細胞に送達し、トランスジーンをその後発現させる能力に関して評価した。
【0453】
図21Aは、ZCS構築物(MMZipコード-PGK-GFP-MMZipコード)のGFP(緑色、左上)発現およびローダミン検出が、MM細胞内のその位置に対応したことを示し、ZCS構築物のMM細胞への効率的な送達、トランスジーンの送達、および前記トランスジーンの発現を示している。これは、本開示のZCS構築物を、前記トランスジーンの効率的な遺伝子送達およびその後の発現のために使用することができることを実証する。
【0454】
Zipコード配列を含まない線状のPGK-GFP構築物を含む陰性対照構築物は、いかなるトランスジーン発現も示さなかった。
図21Bは、線状のPGK-GFP構築物単独の使用では、シグナルのいかなる細胞特異的位置も示さないことを示し、Zipコード配列が、MMZipコード-PGK-GFP-MMZipコード構築物のMM細胞特異的取り込みの原因であることを確認している。
【0455】
図22は、MMZipコード-ファージ-GFP-IRES-Luc構築物のMM細胞への細胞取り込みの拡大画像を示す。画像の評価から、この構築物を使用してMM細胞への最大100%の遺伝子送達が示され、これは分析したあらゆるMM細胞までによるGFPの生成によって示された。
【0456】
これらの結果は、本明細書に記載されるZipコード配列を非常に特異的かつ非常に効率的な遺伝子送達構築物として使用することができることを実証している。これらの構築物は、標的細胞の核に局在するのみならず、前記トランスジーンの効率的な染色体インテグレーションおよびそのその後の発現を可能にする。したがって、本明細書に記載されるZipコード配列は、様々な適用のための遺伝子送達構築物として、例えば多様な疾患に適用可能な治療および/または診断構築物として使用することができる。重要なことに、そのような効率的かつ特異的な遺伝子送達は、送達ベクター(例えば、ウイルスベクター)を使用することなく達成することができる。
【0457】
(実施例15)
膵臓(PC)由来Zipコード配列は、in vivoで膵臓がん細胞を標的化し、膵臓がん細胞において核局在を示す
【0458】
本実施例は、本明細書に開示されるPC由来Zipコード配列が、in vivoで膵臓腫瘍細胞を標的化し、高い核局在を示すことを実証する。
【0459】
ヒト由来膵臓がん細胞およそ500万個をBNXマウス2匹の背側に注射することによって、腫瘍を誘導した。腫瘍体積が2cmに達した後、マウスに、PC由来Zipコード配列構築物2μgを注射した。
【0460】
図23は、PC異種移植片マウスモデルにおけるPC由来ZCSのin vivoホーミング研究の結果を示す。
図23Aは、いかなる構築物も注射しない陰性対照を示す2枚の画像を一番左の縦列に示す。
図23Bは、投与(尾静脈を介して)の24時間後のPC細胞におけるPC由来ZCSの蓄積を示す2枚の画像を中央の縦列に示す。
図23Cは、投与(尾静脈を介して)の48時間後のPC細胞におけるPC由来ZCSの蓄積を示す2枚の画像を右の縦列に示す。この動物の肝臓および脾臓から得た組織試料は、PC由来ZCSの取り込みを示さず、本開示のZCSの細胞特異性を確認した。
【0461】
その上、本明細書における尾静脈を介しての構築物の投与によって示される全身投与により、PC細胞においてこれらの構築物の高い取り込みおよび核局在が起こることが示された。
図24は、PC異種移植片マウスモデルにおけるPC由来ZCSの膵臓がん(PC)in vivoホーミング研究の結果を示す。
図24Aは、尾静脈注射した24時間後、および特に48時間後のPC細胞における有意な蓄積および取り込みを実証するデータを示す。
図24Bは、PC由来ZCSを腫瘍に直接注射すると、腫瘍細胞における取り込みが有意に低減したことを示しており、ctDNAに由来するZCSが、全身投与した場合に改善された細胞および/または組織認識および取り込みを提供し得ることを示唆している。
図24Cは、ctDNAを注射しなかった対照実験を示す。
【0462】
このデータは、本明細書に記載される構築物の高い細胞、組織、および/または臓器特異性を実証する。これらの結果はさらに、これらの構築物のin vivoでのゲノム送達およびインテグレーションを示し、これらの構築物の治療的および/または診断的有用性を示している。
【0463】
(実施例16)
Zipコード配列は、免疫原性ペプチドまたはタンパク質のin vivo生成のためのがんワクチンとして使用することができる
【0464】
本実施例は、本明細書に開示される核酸Zipコード配列を使用して、がんに罹患している対象におけるがん細胞に対して免疫応答を誘発することが可能な1つまたは複数の免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を前記がん細胞に送達することができることを実証する。
【0465】
核酸配列をコードする免疫原性ペプチドを送達するために使用される核酸Zipコード配列を、実施例1および2に記載のように得る。Zipコード配列を使用して、1つまたは複数の細胞認識および染色体インテグレーションシグナルを含む1つまたは複数のZipコード配列が隣接する、1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸配列を含む核酸構築物(例えば、Zipコード構築物)を生成する。
【0466】
Zipコード構築物は、がんに罹患しているまたは罹患することが疑われる対象に投与される。Zipコード構築物は、対象に投与されるとがん細胞にホーミングする。Zipコード構築物は、がん細胞のゲノムにインテグレートされ、その後、がん細胞によって免疫原性ペプチドまたはタンパク質が発現される。免疫原性分子の発現は、GFPコード配列を含む構築物を使用して追跡される。がん細胞によって生成された免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、対象において免疫応答を誘発する。がんは、サイズが有意に低減され、その後まもなく取り除かれる(例えば、がん/がん細胞の存在は検出不能となる)(例えば、核のイメージングおよび/または標識化Zipコード配列を使用するイメージングによって決定した場合)。
【0467】
このデータは、本明細書に記載される構築物ががん性疾患を防止および/または処置するためのがんワクチンとして使用することができることを示している。
【0468】
(実施例17)
オリゴヌクレオチドZipコード配列(オリゴ-ZCS)、核酸構築物、および送達システムの合成、特徴付け、および精製
【0469】
本実施例は、本明細書に記載されるオリゴヌクレオチドZipコード配列(オリゴ-ZCS)、核酸構築物、および送達システム、例えば配列番号1~202を有する単離されたコンセンサス配列のいずれか、および/または配列番号203~277、または282を有する自己インテグレート核酸配列のいずれかの任意の1つまたは複数を含むかまたはそれからなるものの合成、特徴付け、および精製を実証する。
【0470】
一般的に、二本鎖核酸配列は、社外の供給業者が化学または酵素的に合成した。受領時に、核酸分子を、例えば脱塩法を使用して精製し、その後に配列および構造を分析的に確認した。
【0471】
(実施例18)
本明細書に記載される核酸Zipコード配列を使用するがんおよびがんの再発の防止
【0472】
本実施例は、1つまたは複数のZipコード配列を含む本明細書に記載される核酸構築物を使用して、処置後のがんの形成を防止する、および/またはがんの再発を防止することができることを実証する。
【0473】
本研究は、本開示のZipコード配列(例えば、オリゴ-ZCS)を使用して、対象の体(例えば、循環系および/または他の臓器もしくは組織)における腫瘍関連核酸分子を結合および/または捕捉することによって、がんの形成を防止することができることを実証する。対象は齧歯類またはヒトである。
【0474】
この目的のために、膵臓がん患者のctDNAに由来する膵臓がん(PC)特異的ZCS分子を、膵臓がんを発症するリスクを有する対象の群に(例えば、処置の成功後および再発を防止するために)投与する(例えば、医薬組成物として)。(PC)特異的ZCSを投与した対象のコホートは、有意に低いPCの発症率(例えば、再発率)を示す。
【0475】
これらの対象の血清試料の分析から、(PC)特異的ZCSが、対象における循環する腫瘍由来核酸分子に結合して捕捉することが示され、この治療機構を介して疾患の防止を達成することができることを示唆している。
【0476】
このように、本明細書に記載されるZCSは、がんの処置のためのみならず、がんの防止のためにも使用することができる。いかなる理論にも拘束されないが、本明細書に記載されるZCSは、循環する腫瘍DNAに結合して捕捉し、それによって、(i)そのようなctDNAが遠位組織および/または臓器に到達するのを防止または低減させ、転移形成を阻害する、および(ii)原発腫瘍の成長および増殖を阻害または低減する(例えば、細胞間クロストーク、腫瘍血管系の形成を阻害または低減すること等によって)と仮定される。
【0477】
(実施例19)
全般的実験方法
【0478】
本実施例は、本明細書に記載される標的(例えば、細胞)特異的核酸分子の構築、分析、および評価のために本明細書に使用される実験方法を記載する。
臨床検体および試料の調製
【0479】
多発性骨髄腫(MM)および膵臓がん(PC)患者10人、肺がん患者4人、および大腸がん患者4人のレトロスペクティブな血漿試料を、Winship Cancer Instituteの組織および獲得バンクにおいて利用可能な保存試料から得た。多発性骨髄腫患者10人は、ボルテゾミブ含有レジメンによって処置され、または膵臓がん患者はゲムシタビンによって処置され、使用した試料を、その疾患状態(応答または進行性の疾患)に従って選択した。MMにおける応答は、International Uniform Response Criteria for Multiple Myelomaを使用して決定し、膵臓がん患者ではRECIST基準を使用した。血漿は、遠心分離法を使用して単離した。血液を1500RPMで10分間遠心分離した。上清を回収して保存した。
細胞系およびアポトーシス研究
【0480】
多発性骨髄腫(OPM、RPMI、JK6L、KMS11、KMS12、JJN3、およびMM1S)、膵臓がん(ASPC1、PANC1、MIA)、大腸がん(HCT-116、RK8、およびHCT)、および肺がん(A549)細胞系を、10%ウシ胎児血清、1%L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、および50μg/mlペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で成長させた。
【0481】
アポトーシス研究の場合、細胞104個を、滴定用量のボルテゾミブ(用量:0.15、0.25、0.5、0.750、1、1.5、および2.5mg/mL;Sigma Aldrichから得た)またはゲムシタビンによって処置した。24時間後、細胞を、YO-PRO-1およびヨウ化プロピジウム(Invitrogen)によって染色した。生存細胞を、ImageXpress 5000A自動獲得分析システム(PI、Molecular Devices)を使用して測定し、YO-PRO-1、およびヨウ化プロピジウム陰性細胞を定量した。
ctDNA抽出および免疫蛍光標識
【0482】
循環する腫瘍DNAを、施設内で開発したctDNA単離および増幅キットを使用して血漿から得た。DNAを、増幅ステップを除き、製造元のプロトコールに従って抽出した。ctDNAの蛍光標識は、Label IT(登録商標)核酸標識、Cx-ローダミン、またはCY5を使用して実施した。
免疫蛍光
【0483】
細胞約106個を、10%FBSを有するRPMI培地1ml中でローダミンまたはCY5標識化DNAと共に、本明細書に記載の異なる時点でインキュベートした。生存細胞イメージングのために、細胞膜を、cellLight Plasma Membrane-GFP、Bacman 2.0プロトコール(TermoFisherカタログ番号10607)に従って標識した。示した写真は、三連の実験からの代表的な画像である。染色体スプレッドおよびctDNAバンド形成の識別
【0484】
MM、PC、大腸がん(CC)、および肺がんを有する3人の異なる患者からのローダミン標識化ctDNAを、MM、PC、CC、および肺がん(LC)の培養培地に添加した。細胞約106個を、培養培地1.5mL中で100ng/mLローダミン-ctDNA構築物と同時培養した。培養24時間後、細胞を15mlチューブに移し、コルセミド15μL(10μg/mL)と共に培地10mL中、37℃で20分間インキュベートした後、収集した。遠心分離して培地を除去後、細胞を、予め加温した0.075M KCl 10mL中に再懸濁させ、37℃で20分間インキュベートした。固定液(2mL、3:1メタノール:酢酸)を添加して10分間インキュベートした後、遠心分離および吸引した。次に、試料を固定液10mLに再懸濁させ、室温で10分間インキュベートした後、固定液によってさらに2回洗浄した。スライドをThermotron中で調製し、温度および湿度を最適な中期スプレッドとなるように制御する。DAPI褪色防止剤10μl液滴3滴を各スライドに添加し、カバーガラスを載せた。倍率20倍で視野あたり少なくとも細胞25個が可視化可能となるまで、固定した細胞を、3μLの連続マイクロピペッティングを使用してスライドに一度に載せた。室温で1時間乾燥後、核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。接触および重なり合う細胞を除いて、実験あたり中期の核10個を計数した。ローダミンバンドが組み込まれた染色体の数を計数した。
非相同末端結合修復、代替経路、およびトランスポザーゼ阻害剤によるctDNAインテグレーションの評価
【0485】
細胞約10
6個のMM1s、PANC1、およびHCT-116細胞を、非相同末端結合(NHEJ)修復系の阻害剤、例えばKU-55933(ATM阻害剤、10μM)およびDNA-PKCS阻害剤I(30μM)、代替修復経路の阻害剤、例えばポリADPリボースポリメラーゼ阻害剤NU1025(PARP、200μM)、およびインテグラーゼ/トランスポザーゼ阻害剤(ラルテグラビル、100nM)によって2時間処置した。阻害剤による処置後、ローダミン標識化ctDNA構築物を培養培地に添加し24時間おいた。次に、細胞を停止させ、染色体スプレッドを上記のように得た。少なくとも20個の中期を計数した後、細胞あたりのインテグレーション部位の計数を得た(
図32)。異種移植片の実験
【0486】
異種移植片モデルを、ヒト由来膵細胞系(MT5)、MM細胞系(MM1S)、および大腸がん(HCT-116)を使用して開発した。この目的のため、それぞれの細胞系の腫瘍細胞およそ100万個を、J:NU(007850)非近交系ヌードマウスの背部両側に注射した。腫瘍体積が約0.5cmに達した後、マウスを特定の実験群に割付した。マウス3匹にローダミン標識化ctDNA構築物の尾注射を行い、腫瘍を、それぞれ注射の24時間および48時間後に収集した。第4のマウスには、ローダミンのみ(標的特異的ctDNA、すなわちZCSにカップリングされていない)を尾注射し、第5のマウスにはPBS(対照)を注射した。収集時に、腫瘍および臓器(肝臓、肺、小腸および大腸、膵臓、ならびに脾臓)に凍結切片のための解剖を行った。各スライドを4%パラホルムアルデヒドによって固定し、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した後、カバーガラスを載せた。
全ゲノムシーケンシング
【0487】
ctDNAを、本実施例において上記の方法を使用して多発性骨髄腫(MM)患者5人および膵臓がん(PC)患者10人から抽出した。CD138(+)細胞からのDNAをBlood&Cell Culture DNAミニキット(Qiagen、MD)を使用して抽出し、膵臓がん原発性腫瘍DNAを、腫瘍スライドの再検討および腫瘍含有領域のコア抽出後にFFPE試料から得た。得られたこれらの試料におけるDNAを、QIAamp DNA FFPE組織キット(Qiagen、MD)を使用して抽出した。抽出後、ctDNAを、IlluminaシーケンシングのためのABM DNAライブラリ調製キット(Applied Biological Materials Inc.Canada)に従ってPACBIOアダプター(GCGCTCTGTGTGCT(配列番号279))にライゲーションした。その後、PACBio標識化ctDNAに、ライブラリ調製のための標準的な方法を行い、Illuminaプロトコールを使用してシーケンシングした。Applied Biological Materials Incが、ライブラリ調製および全ゲノムシーケンシングを実施した。平均標的カバレッジは50倍であった。解析のために、ヒトミトコンドリアゲノムに割付された全てのリードを除去した。全ゲノムシーケンシングの未加工データを、Spadesソフトウェアを使用して処理し、de novoアセンブリを実施した。この解析によって、全体で1700万個のコンティグが得られた。次に、アセンブルしたコンティグを、CD-HITを使用して腫瘍型毎に99%の同一性でクラスター化した。全てのMM試料を含有するがPC試料を含有しない、およびその逆のクラスターの重心を選択した。それらのコンティグから、PacBioバーコードを3’または5’末端のいずれかに含有する配列のみを選択した。転位因子(TE)の識別
【0488】
コンティグ配列(コンティグ)を解析し、コンティグにおける転位因子様領域の位置の決定を可能にするCENSOR GiriおよびRepeatMasker法を使用して、TEを識別および分類した。
トランスポゾン線状化ベクター
【0489】
全てのMM試料によって共有される突然変異を含有するトランスポゾンの配列
【化2】
(配列番号282)は、Integrated DNA Technologies,Inc(IDT)によって生成された。このオリゴは、ポリTセグメントの克服を可能にするために2つのブロックで生成した。同様に、EcoRI相補性部位を末端に付加し、CMV-緑色蛍光タンパク質(GFP)または単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)線状化ベクターとのライゲーションを促進した。
【0490】
(実施例20)
ボルテゾミブまたはゲムシタビンによって処置した多発性骨髄腫(MM)および膵臓がん(PC)患者からの血漿は、薬物感受性または耐性をMMまたはPC細胞系に伝播する
【0491】
本実施例は、ボルテゾミブまたはゲムシタビンによってそれぞれ処置した多発性骨髄腫(MM)および膵臓がん(PC)患者由来の血漿が、それらの患者において観察された薬物感受性または薬物耐性をin vitroでMMまたはPC細胞に伝播することができることを実証する。
【0492】
この実験に関して、MMまたはPC患者から得た血漿を、ボルテゾミブまたはゲムシタビンに対するその応答状態に従って抽出した。次に、ボルテゾミブに対するMM感受性細胞系(OPM1およびMM1s)およびゲムシタビンに対するPC感受性細胞系(MIA)を、対応する薬物に対する耐性を既に示している患者の血漿と共に24時間培養した。次に、ボルテゾミブまたはゲムシタビンの滴定用量を培養培地に添加し、細胞の生存を24時間後に測定した。
【0493】
これらの結果は、ボルテゾミブに対して耐性の患者の血漿を添加すると、MM1sおよびOPM1の耐性の増加をもたらしたことを実証する(
図25A、右上および左上のグラフ)。これに対し、ボルテゾミブ耐性MM細胞系(RPMI、JK6L)を、ボルテゾミブに応答した患者の血漿と共に培養すると、細胞はボルテゾミブに対するその感受性を有意に回復した(
図25A、右下および左下のグラフ)。これらの知見は、膵細胞(PANC1およびMIA)をゲムシタビン感受性および耐性患者の血漿と同時培養した場合に確認された。
【0494】
その上、ctDNAが患者の血漿によって誘導された処置に対する応答の伝達に寄与したか否かを調べるために、上記と同じ患者の血漿をDNアーゼによって処置した。データは、この処置が、処置に対する細胞の固有の感受性を回復したことを示している(
図29A)。薬物応答の細胞への伝達に対するctDNAの関与をさらに検証するために、ボルテゾミブ耐性細胞から無細胞ctDNAを抽出し、ボルテゾミブ感受性患者のDNアーゼ処置血漿を含有する培地に添加した(
図29A)。さらに、ボルテゾミブ耐性患者から抽出したctDNAを異なるボルテゾミブ耐性患者の血清に添加すると、ボルテゾミブ耐性の有意な増加が観察された(
図29A)。
図25Cは、ベースラインctDNA単独の密度と比較した複数の細胞系および患者由来のctDNAの核密度測定の倍数変化を示す。
図25A~25Cのデータは、ボルテゾミブに対する患者の臨床感受性がctDNAを介して細胞系に伝達され得ることを示している。
【0495】
併せて考慮すると、これらの知見は、細胞(例えば、腫瘍細胞)が、情報、例えば薬物処置に対する細胞の運命を定義する情報を伝播することができる遺伝物質をctDNAが伝達することができることを示唆している。これらのデータは、本明細書に記載されるZCSを使用してカーゴ分子を標的細胞に非常に特異的に送達することができることも実証している。いかなる理論にも拘束されないが、本明細書に記載されるZCS構築物の高い細胞特異性(例えば、MM細胞に対するMM由来ZCSの特異性)は、本明細書に記載される、薬物処置患者のMM由来ctDNAからの薬物耐性情報のin vitroにおけるMM細胞への伝播を可能にする同じ機構に基づくと仮定される。
(実施例21)
ctDNAは、ctDNA細胞起源に類似する腫瘍細胞に組み込まれる
【0496】
本実施例は、ctDNAがctDNA細胞起源に類似する腫瘍細胞に組み込まれることを実証する。
【0497】
この目的のために、MMおよび膵細胞系における薬物処置に対する応答(例えば、耐性、感受性等)の伝達におけるctDNAの役割が遺伝物質の水平伝播によるか否かを評価した。このように、ヒト患者から得たctDNAがDNAを実際に表し、それぞれのがん患者における腫瘍のゲノムを反映することを最初に確認した。MM、膵臓がん、および大腸がんを有する患者の血漿から得られたそのようなDNAは、DNアーゼによる処置のみがこれらのウェスタンブロットにおいて認められたバンドを分解したことを実証している(
図29B)。その上、MMからの10対の腫瘍およびctDNAエクソンシーケンシングならびにPCからの全ゲノムシーケンシングは、高い類似率を実証し、この場合、突然変異全体像の約90%の類似率であった(
図29C)。これらの知見に基づき、ctDNAによって媒介される遺伝子の水平伝播(HGT)を、MM患者4人、PC患者3人、大腸がん患者3人、および肺がん(LC)患者1人のローダミン標識化ctDNAを使用して評価し、次にこれらを、ctDNA腫瘍型にマッチする異なる細胞系MM1S、ASPC1、HCT116、およびA549の培養物にそれぞれ導入した(
図25B)。
図29Dは、異なるMM細胞系および複数のMM患者からのctDNAの指標となる画像を示す。
【0498】
これらの結果は、24時間後、ctDNAがほとんどの実験条件において高レベルで核に局在したことを実証した。同様に、必ずしもあらゆる単一のctDNAががん細胞系によって捕捉されなかったことも観察され、一部のctDNA断片が、がん細胞間での移行および伝播を可能にし得る、例えば情報の交換を可能にし得る固有の特徴を有し得ることを示唆した。
【0499】
次に、ctDNAが固形(PC)腫瘍および血液(MM)腫瘍細胞の核に到達するために必要な時間を評価した。膵細胞系ASPC1を使用して、PC患者からのctDNAが細胞膜を急速に標的化して(例えば、ローダミン標識化ctDNAが膜および細胞内部にも局在することを示す、
図26AのASPC1パネルの左上の画像を参照されたい)、数分以内に内部移行し、約10分後に核に到達することが識別された。その上、MM1s細胞(「MM1S」と標識化される画像パネルによって示される)は、ctDNAを2時間以内に取り込み(
図26AのMMM1Sパネルの一番左の画像)、約6時間後にctDNAの細胞質への内部移行を示し、核には8時間という早期に到達し、最大の核局在化は約24時間で起こった(
図26AのMMM1Sパネルの一番右の画像)ことを示した。
(実施例22)
ctDNAは、ctDNAの細胞起源に類似する腫瘍異種移植片に優先的に移行する
【0500】
本実施例は、ctDNAが、それらが起源とする同じ腫瘍型に類似する腫瘍異種移植片へと優先的に移行することを実証し、これは本明細書において「向性」と呼ばれ得る。
【0501】
この実験に関して、ヒト由来膵臓がん(MT5)、MM(MM1s)、および大腸がん(HCT-116)細胞系を使用する異種移植片モデルを開発した。全ての腫瘍異種移植片実験を実施する前に予備実験を実施して、腫瘍部位でのctDNAの最高濃度の時期を決定した。この目的のために、PC異種移植片を有するマウス3匹に、ローダミン標識化PC由来ctDNAを尾静脈注射した。この研究から、ローダミン-ctDNA構築物の注射後48時間での最大腫瘍局在化が識別された(
図30A)。
【0502】
次に、MM、PC、およびCC(腫瘍型毎にn=5)のマウス腫瘍異種移植片に、対応する診断を有するローダミン-ctDNA(それぞれのがんに罹患している患者から得たctDNA)を注射した(腫瘍型毎にn=3)。対照異種移植片マウス2匹に、対照としてローダミン単独を注射した。48時間後、腫瘍および様々な臓器(肝臓、脾臓、肺、腎臓、大腸、および膵臓)を収集して凍結切片を作製した。標識化ctDNAの濃度を調べる共焦点顕微鏡法から、対照マウスと比較して腫瘍において高濃度であることが実証された(
図26Bおよび
図30B)。ctDNAの生体分布の評価では、他のいかなる臓器においてもいかなる免疫蛍光も示されず、所与のctDNAのその自身の起源細胞に対する高い特異性を実証した。
(実施例23)
ctDNAはctDNAの細胞起源とは異なる細胞型の細胞である細胞に組み込まれない
【0503】
本実施例は、ctDNAが、ctDNAの細胞起源とは異なる細胞型の細胞には組み込まれないまたは有意に組み込まれないことを実証する。
【0504】
腫瘍細胞の循環する腫瘍DNA(ctDNA)特異的標的化は、ctDNAがctDNAのその起源とする細胞と類似である細胞に対して選択的な向性を有し得る可能性を生じた。したがって、このことを、ctDNAを抽出した患者の診断とはミスマッチである細胞系の同時培養を実施することによって試験した。2つのMM細胞系を、PC、LC、またはCC患者に由来するctDNAと同時培養すると、ctDNAが細胞膜辺縁部にクラスター化し、内部移行できなかったことを示した(
図26Cおよび
図26D)。膵臓がんおよび大腸がん細胞系を、ミスマッチ腫瘍型から抽出したctDNAと同時培養した他の実験でも、類似のデータが得られた。
【0505】
これらの驚くべき予想外の知見を、細胞系の腫瘍型がマッチするまたはミスマッチである患者からのctDNAを含有する培養培地に添加して、ctDNAの核局在を測定することによってさらに検証した。ctDNAをCY5またはローダミンのいずれかによって標識後、ctDNAを、MM(MM1sおよびJK6L)、CC(HT29およびHCT-116)、ならびにPC(PANC1およびPANC1)細胞系と24時間同時培養した。
図26Eおよび
図26Fは、ctDNA起源および細胞系腫瘍型がマッチした場合、ctDNAが細胞の核に有意に蓄積することを示す。これに対し、細胞系およびctDNAの腫瘍型がミスマッチである場合、ctDNAは細胞の外部に留まる。
【0506】
類似の起源の細胞の特異的細胞標的化(向性)に関するctDNAの特性をin vivoで再現するために、ctDNAの選択的向性を、2つの異種移植片モデル(MMおよびPC)において試験した。各動物の尾にローダミン標識化MM ctDNAおよびCY5標識化PC ctDNAを注射することによって三連の実験を実施した。腫瘍の顕微鏡法から、ローダミン-MM ctDNA(赤色の蛍光)がMM異種移植片を標的とするが、PCの異種移植片を標的化できなかったことが実証された。同様に、CY5標識化PC
ctDNA(黄色の蛍光)は、PC異種移植片において高度に濃縮されたが、MM-ctDNAは濃縮されなかった(
図31A)。
【0507】
併せて考慮すると、これらのデータは、ctDNAがin vivoでその細胞起源と類似のがん細胞型を選択的に標的とするという強い証拠を提供する。
(実施例24)
ctDNAの染色体インテグレーション
【0508】
本実施例は、ctDNAが細胞およびそのような細胞の核を標的化して侵入するのみならず、ctDNAの細胞起源に類似するそのような細胞の染色体にもインテグレートされ得ることを実証する。
【0509】
本研究では、ctDNAの断片が、それらが核に到達すると細胞ゲノムにインテグレートすることが可能であるか否かを評価した。この目的のために、MM(MM1s、RPMI、OPM1)、PC(MIA、ASPC1、PANC1)およびCC(HCT-116、HCT-11、RKO)細胞系の中期染色体スプレッドを、ctDNAを培養培地に添加することによって実施した(腫瘍型毎にN=3)。
図27Aおよび
図27B、ならびに
図31Bおよび
図31Cに示すように、いくつかの染色分体に組み込んだ複数のローダミン-ctDNAバンドが識別された。
【0510】
細胞ゲノムへのctDNAのインテグレーションをさらに確認するために、全ゲノムシークエンシング(WGS)を、本明細書に記載されるように3つの異なる実験条件で実施した:細胞系(MM、PC、およびCC)、細胞系と類似のがんの診断を有する対象から抽出したctDNA、およびその対応する腫瘍細胞系と同時培養したctDNA。ctDNA断片の配列を、de novoアセンブリによって生成し、これによって約1700万個のコンティグ配列(コンティグ)を得た。次にコンティグのリストを、MM、PC、またはCCにおいて99%より高い配列相同性を有する配列を有するコンティグを選択すること、およびその重心領域が各腫瘍カテゴリーにクラスター化する能力によってフィルタリングした(コンティグ毎にn=180)。このコンティグの配列を、同時培養ctDNA細胞系および細胞系単独に存在するK-merと共にマッピングした後、細胞ゲノムにインテグレートされたctDNA断片を識別した。Circusプロットは、MM1sおよびASPC1細胞系におけるいくつかのコンティグの挿入およびその対応する挿入部位を実証する。最後に、ctDNAが遺伝物質を標的細胞に輸送してインテグレートする能力を、GFPをコードするCMV-GFPベクターの各々の側にMM ctDNA分子が隣接するように、線状化CMV-GFPベクターをその中央に導入したMM ctDNAと同時培養したMM1s細胞におけるGFP発現を評価することによってさらに検証した。
図27Cは、サイトメガロウイルス-緑色蛍光タンパク質(CMV-GFP)をコードするカーゴ核酸配列がctDNA配列に隣接し、カーゴ(CMV-GFP-コード)配列の細胞標的化およびゲノムインテグレーションを可能にするctDNA-CMV-GFP-ctDNA構築物と同時培養した腫瘍細胞におけるGFPの発現を示す(右の画像)。左の画像(対照)は、ctDNAなしでCMV-GFPコードカーゴ核酸配列を使用した場合に、腫瘍細胞においてCMV-GFPが発現されなかったことを示しており、ctDNA部分がカーゴ核酸配列の細胞標的化および発現にとって必要であったことを示唆している。
【0511】
このように、これらのデータは、ctDNAががん細胞間の遺伝物質の水平伝播を媒介することができることを示している。このように、これらのデータは、本明細書に記載されるctDNAおよびそれに由来する核酸、例えば、標的化配列およびインテグレーション配列を含むZCSを使用して、おそらく目的の遺伝子を標的細胞に導入するためにウイルスベクターまたは他の従来の方法を使用する必要なく、標的遺伝子(例えば、治療標的遺伝子)を、非常に細胞特異的に細胞に輸送することができることを示している。
【0512】
加えて、ctDNAの細胞標的化の特異性を、ctDNAおよび細胞型が腫瘍診断とマッチする条件と、ctDNAが細胞系の腫瘍型とマッチしない条件での挿入数を比較することによって調べた。
【0513】
これらの研究は、ctDNAの細胞起源、例えば同じがん型等にマッチする細胞のゲノムにおけるctDNA挿入の有意な増加を確認し、ctDNAの組織標的化の選択性を検証した。
(実施例25)
5’および3’トランスポゾンはctDNAの挿入を媒介する
【0514】
本実施例は、5’および3’トランスポゾンが標的細胞、例えばctDNAが由来する細胞と同じがんの型の細胞のゲノムへのctDNAの挿入を媒介することができることを実証する。
【0515】
転位因子(TE)は、原核生物および少数の例の真核生物(昆虫および植物)において観察されるHGTの機構において重要な役割を果たし得る。このため、転位因子の阻害が、染色分体へのctDNAのインテグレーションを低減または防止することができるか否かを調べた。この目的に関して、細胞を、トランスポザーゼ阻害剤であるラルテグラビルによって2時間処置した後に、ctDNAを培養培地に添加した。対照に関して、ATM阻害剤(KU-55933)、DNPkc阻害剤(DNA-PKCS阻害剤I)およびPARP阻害剤(NU1025)を使用した。
図28Aは、MM(MM1S)、PC(ASPC-1)、およびCC(HCT 116)細胞系の染色体へのローダミン(ローダミン標識化ctDNAからの)バンドの組み込みレベルを実証する。データは、ctDNAのインテグレーションが、対照またはPARP阻害剤(NU1025、200μM)処置細胞と比較した場合に、DNAPKcs阻害剤(DNA-PKCS阻害剤I、30μM)、ATM阻害剤(KU-55933、10μM)、またはトランスポザーゼ阻害剤(ラルテグラビル、100nM)によって有意に低減されたことを示し、転位因子が細胞のゲノムへのctDNAの挿入において役割を果たし得ることを確認する。これらの結果に基づいて、細胞ゲノムへのインテグレーションにおいて役割を果たし得るctDNA断片の配列特徴を識別するために一連の実験を設計した。この目的のために、各ctDNA断片の5’末端および3’末端を標識するためにPACBIOプローブに予めライゲーションされているMM ctDNA試料5例およびPC ctDNA試料10例をシーケンシングした。MMおよびPC配列の識別のためのアルゴリズムに従って、ctDNA de novoアセンブリから生成されたコンティグリストを、本明細書に記載される同時培養実験からのctDNA挿入として識別された配列と比較することによって、どのctDNA断片が細胞ゲノムへのctDNAの挿入において役割を果たし得るかを調べた。これらの分析により、細胞ゲノムに埋もれたまたは埋もれていないコンティグが識別された。DNA配列におけるTE含有量を検出および分類することが可能な複数のソフトウェアを使用して、ctDNA断片を、細胞ゲノムへのそのインテグレーション能、TEの含有量、およびコンティグ配列におけるTEの局在化に従って分類した。解析から、細胞ゲノムにインテグレートされたctDNA断片ではTEが高度に濃縮され、その局在は主に、5’および3’末端に向かうほど濃縮されることが実証された。加えて、挿入されなかったctDNA断片は、TEが有意に欠如していることを実証し、存在する場合であっても、ctDNA断片の末端のいずれにも有意に局在しなかった。原核細胞および植物において観察されたHGTにおけるTEの重要な役割と、がん細胞における本明細書に記載した知見を組み合わせると、TEはがん細胞間での遺伝子の伝播において有意な役割を果たし得ることを示唆している。このように、これらのTE配列を、ctDNAまたはctDNA由来構築物において使用して、目的の核酸または遺伝子(例えば、治療遺伝子、アポトーシス遺伝子等)を標的細胞に輸送することができる。
【0516】
インテグレートされたctDNA断片のその後の解析から、それらの断片に存在する転位様因子の約40%を構成する2つの型のTEの識別が可能となった。それらの約半数は、MIRレトロトランスポゾンであり、残りの半分はALUsqであった。興味深いことに、MIRは、遺伝子編集において広く使用されているTEである、Drosophila gypsyエレメントと非常に類似の転位因子(TE)由来インスレーターである。遺伝物質のがん細胞間での伝播におけるMIRの役割をさらに検証するために、TEを化学合成し、線状化サイトメガロウイルス-緑色蛍光タンパク質(CMV-GFP)断片にライゲーションした(
図28B)。ライゲーションおよび精製後、TE-CMV-GFP
DNAをMM細胞系培養物(MMs1)に添加し、生存イメージングを実施した。結果から、12時間以内に、MM1s細胞がGFPを発現したことが実証され、合成されたTEがカーゴ遺伝物質を細胞ゲノムに伝播およびインテグレートすることが可能であることを示唆している(
図28B、右の画像、緑色蛍光は細胞内でのGFP生成を示す)。この結果は、TEをCMV-HSVTKにライゲーションして、MM異種移植片マウスの尾に注射した場合にin vivoでさらに検証された。腫瘍および種々のマウス臓器のPCRから、腫瘍組織のみに存在するHSVTK遺伝子が検出された(
図28C)。これらの結果は、ctDNAにおける高濃度のTEおよびラルテグラビル処置細胞において観察されたインテグレーションの欠如と組み合わせると、TEががん細胞間のctDNAの水平の遺伝子伝播を媒介する上で中心的な役割を果たすことを示唆している。このように、そのような転位因子を含む核酸構築物を使用して、ウイルスベクターおよび/またはTALENもしくはCRISPRなどの遺伝子編集ツールを使用する必要なく、目的の遺伝子を細胞において非常に細胞特異的に発現させることができる。
【0517】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載してきたが、そのような実施形態は単なる例として提供されることは当業者に明らかであろう。本発明から逸脱することなく、数多くの変形形態、変化、および置換が当業者に想起されるであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替物を本発明の実践において用いてもよいと理解すべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにその均等物はそれによって含まれると意図される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
核酸構築物の治療有効量を含む医薬組成物であって、前記核酸構築物が、
a)in vivoでの予め選択された組織への前記核酸構築物の移行を方向付ける第1のデオキシリボ核酸配列、および
b)in vivoでの前記予め選択された組織からの細胞のゲノムへの前記核酸構築物の領域のインテグレーションを方向付ける第2のデオキシリボ核酸配列
を含み、
前記医薬組成物が、対象に投与するために製剤化されている、医薬組成物。
(項目2)
前記第1のデオキシリボ核酸配列が、前記予め選択された組織からの前記細胞と同じ細胞型に由来する、項目1に記載の医薬組成物。
(項目3)
前記対象がヒトである、項目1に記載の医薬組成物。
(項目4)
前記第1のデオキシリボ核酸配列が白血球に移行する、項目1に記載の医薬組成物。
(項目5)
前記第1のデオキシリボ核酸配列が膵細胞に移行する、項目1に記載の医薬組成物。
(項目6)
前記第1のデオキシリボ核酸配列が肺細胞に移行する、項目1に記載の医薬組成物。
(項目7)
前記核酸構築物が、前記対象に投与した場合に、前記予め選択された組織からの前記細胞の核膜を通過する、項目1に記載の医薬組成物。
(項目8)
前記第1のデオキシリボ核酸配列が、配列番号203~配列番号277および配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の同一性を有する、項目1に記載の医薬組成物。
(項目9)
前記第1のデオキシリボ核酸配列が、長さが少なくとも400塩基対である、項目1に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記第1のデオキシリボ核酸配列が、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である、項目1に記載の医薬組成物。
(項目11)
前記第2のデオキシリボ核酸配列が、トランスポゾン配列と少なくとも90%の相同性を有する、項目1に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記トランスポゾンがクラスIIトランスポゾンである、項目11に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記クラスIIトランスポゾンが、遺伝子の水平伝播を介して前記予め選択された組織からの前記細胞の前記ゲノムにそれ自身をインテグレートする、項目12に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記核酸構築物が、少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列が、組織選択的プロモーターを含む、項目14に記載の医薬組成物。
(項目16)
前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列が、前記ゲノムへの組み込みのための第2のインテグレーションシグナルを含む、項目14に記載の医薬組成物。
(項目17)
前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、項目14に記載の医薬組成物。
(項目18)
前記少なくとも1つの追加のデオキシリボ核酸配列が、前記ペプチドまたはタンパク質が前記予め選択された組織からの前記細胞に限って発現されることを確実にする配列を含む、項目14に記載の医薬組成物。
(項目19)
前記ペプチドまたは前記タンパク質が、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質をコードする、項目17に記載の医薬組成物。
(項目20)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である、項目19に記載の医薬組成物。
(項目21)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である、項目19に記載の医薬組成物。
(項目22)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、肺がん腫瘍抑制遺伝子である、項目19に記載の医薬組成物。
(項目23)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである、項目19に記載の医薬組成物。
(項目24)
前記ペプチドまたは前記タンパク質が抗原性タンパク質をコードする、項目17に記載の医薬組成物。
(項目25)
前記抗原性タンパク質が、前記対象に投与されると前記細胞において特異的に翻訳される、項目24に記載の医薬組成物。
(項目26)
カーゴをさらに含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目27)
前記カーゴが、フルオロフォアまたは放射性同位体である、項目26に記載の医薬組成物。
(項目28)
前記カーゴが治療薬である、項目26に記載の医薬組成物。
(項目29)
前記カーゴが前記核酸構築物に共有結合されている、項目26に記載の医薬組成物。
(項目30)
製剤が、ナノ粒子またはカチオン性ポリマーを含む、項目26に記載の医薬組成物。
(項目31)
配列番号203~配列番号277および配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の同一性を有する第1の配列、ならびに追加の核酸配列を含むベクター。
(項目32)
前記追加の核酸配列が、トランスポゾン配列と少なくとも90%の相同性を有する、項目31に記載のベクター。
(項目33)
前記トランスポゾンがクラスIIトランスポゾンである、項目31に記載のベクター。(項目34)
前記クラスIIトランスポゾンが、遺伝子の水平伝播を介して前記予め選択された組織からの前記細胞の前記ゲノムにそれ自身をインテグレートする、項目33に記載のベクター。
(項目35)
少なくとも2つの追加の核酸配列を含む、項目31に記載のベクター。
(項目36)
前記少なくとも2つの追加の核酸配列が、組織選択的プロモーターおよびトランスポゾン配列を含む、項目35に記載のベクター。
(項目37)
前記少なくとも2つの追加の核酸配列が、少なくとも2つのトランスポゾン配列を含む、項目35に記載のベクター。
(項目38)
前記追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、項目31に記載のベクター。
(項目39)
前記ペプチドまたは前記タンパク質が、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質をコードする、項目38に記載のベクター。
(項目40)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である、項目39に記載のベクター。
(項目41)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である、項目39に記載のベクター。
(項目42)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、肺がん腫瘍抑制遺伝子である、項目39に記載のベクター。
(項目43)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである、項目39に記載のベクター。
(項目44)
カーゴに共有結合により連結されている、項目31に記載のベクター。
(項目45)
前記カーゴが、フルオロフォアまたは放射性同位体である、項目44に記載のベクター。
(項目46)
前記カーゴが治療薬である、項目44に記載のベクター。
(項目47)
項目31に記載の2つまたはそれより多くのベクターのライブラリ。
(項目48)
がんを処置する方法であって、
前記がんに罹患している対象の組織へのカーゴの移行を方向付ける核酸配列を含む核酸構築物の有効量を投与することを含み、組成物が対象に投与するために製剤化されている、方法。
(項目49)
前記がんが肺がんである、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記がんが多発性骨髄腫である、項目48に記載の方法。
(項目51)
前記がんが膵臓がんである、項目48に記載の方法。
(項目52)
前記核酸構築物が、前記対象に投与されると、組織細胞の細胞における核膜を通過する、項目48に記載の方法。
(項目53)
前記組織への前記カーゴの移行を方向付ける前記核酸配列が、配列番号203~配列番号277および配列番号282のいずれか1つの少なくとも12塩基と少なくとも90%の同一性を有する、項目48に記載の方法。
(項目54)
前記核酸構築物が、前記組織の細胞のゲノムへのインテグレーションのためにトランスポゾンを含む、項目48に記載の方法。
(項目55)
前記トランスポゾンが、長さが少なくとも400塩基対である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記トランスポゾンが、長さが400塩基対~20,000塩基対の間である、項目54に記載の方法。
(項目57)
前記トランスポゾンがクラスIIトランスポゾンである、項目54に記載の方法。
(項目58)
前記核酸構築物が、前記組織の細胞に対して異種である少なくとも1つの追加の核酸配列を含む、項目48に記載の方法。
(項目59)
前記少なくとも1つの追加の核酸配列が組織選択的プロモーターを含む、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む、項目58に記載の方法。
(項目61)
前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、標的ゲノムへの組み込みのためのインテグレーションシグナルを含む、項目58に記載の方法。
(項目62)
前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、前記細胞を標的とするためのガイド配列を含む、項目58に記載の方法。
(項目63)
前記少なくとも1つの追加の核酸配列が、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列
を含む、項目60に記載の方法。
(項目64)
前記ペプチドまたは前記タンパク質が、腫瘍抑制ペプチドまたは腫瘍抑制タンパク質をコードする、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、多発性骨髄腫腫瘍抑制遺伝子である、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、膵臓がん腫瘍抑制遺伝子である、項目64に記載の方法。
(項目67)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、肺がん腫瘍抑制遺伝子である、項目64に記載の方法。
(項目68)
前記腫瘍抑制ペプチドまたは前記腫瘍抑制タンパク質が、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)、ウィルムス腫瘍(WT1)、神経線維腫症1型(NF1)、家族性大腸腺腫症(FAP)、フォンヒッペル-リンドウ症候群(VHL)、野生型p53、またはスーパーリプレッサーp53のいずれか1つである、項目64に記載の方法。
(項目69)
前記ペプチドまたは前記タンパク質が抗原性タンパク質をコードする、項目60に記載の方法。
(項目70)
前記抗原性タンパク質が、前記対象に投与されると、前記組織の細胞において特異的に翻訳される、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記核酸構築物が、フルオロフォアまたは放射性同位体に共有結合により連結されている、項目48に記載の方法。
(項目72)
前記核酸構築物が、治療薬に共有結合により連結されている、項目48に記載の方法。(項目73)
実質的に類似の起源の組織または細胞へと移行する核酸配列を識別する方法であって、
(a)循環する腫瘍核酸を生物試料から単離して、それによって単離された腫瘍核酸のセットを生成すること、
(b)前記単離された循環する腫瘍核酸のセットにバーコードを付与して、それによって複数のバーコード化腫瘍核酸を提供すること、
(c)組織向性配列のインテグレーションを可能にする条件下で、細胞の集団に、前記複数のバーコード化腫瘍核酸からの少なくとも1つのバーコード化腫瘍核酸を添加し、それによって培養細胞集団を生成すること、
(d)前記培養細胞集団をシーケンシングして、それによって複数のシーケンシングリードを生成すること、
(e)前記シーケンシングリードをコンピューターによって解析し、前記バーコードを含む前記複数のシーケンシングリードから少なくとも1つのシーケンシングリードの存在または非存在を識別すること、および
(f)前記バーコードを含む前記シーケンシングリードを解析して、前記培養細胞集団には存在するが、前記細胞集団には存在しない配列の存在または非存在を識別し、それによって目的の前記組織または前記細胞へと移行する前記核酸配列を識別すること
を含む、方法。